JP2010013308A - 窓用ガラス板およびその製造方法 - Google Patents

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義人 中井
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Abstract

【課題】昼間は優れた防汚性等を発揮し、昼夜および光強度を問わず1日24時間に亘り、優れた抗菌性および消臭性等を発揮する窓用ガラス板を提供する。
【解決手段】本発明の窓用ガラス板は、外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有し、第1の表面は、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒層を有し、光触媒層の表面粗さRaが、10nm以下であり、第2の表面は、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する無光触媒層を有し、無光触媒層の表面粗さRaが、7nm以下である。
【選択図】なし

Description

本発明は、人家の窓や室内の間仕切りに使用するガラス板、車両や船舶などの輸送機関の窓用ガラス板または豚舎もしくは鶏舎などの飼育棟の窓用ガラス板およびその製造方法に関する。
近年、TiO2は、光触媒として重要視されている。TiO2は、太陽光や蛍光灯などの照射により励起し、TiO2の表面で電子と正孔のペアが生じる。発生した電子は、空気中の酸素と結合し、O2 -(スーパーオキサイドイオン)となり、正孔は、空気中の水分子と結合し、OHラジカルを生成する。O2 -(スーパーオキサイドイオン)やOHラジカルは、活性酸素種と呼ばれ、活性酸素種には強い酸化力があり、表面に付着している細菌や有機物質を分解するため、抗菌、防汚、脱臭、空気浄化などの諸機能を発揮する。また、TiO2は、表面に吸着する疎水性の有機物質を分解し、除去するため、表面を親水化し、さらに、生成したOHラジカルが水分子と結合して滑らかな水膜を形成し、親水化するため、表面の水が水滴化するのを防ぎ、防曇機能を発揮する。また、親水化により表面の汚染物質が容易に脱落するため、防汚機能を促進する。
TiO2の光触媒作用を応用した例としては、ガラス板の両面を光触媒層で被覆した窓用ガラス板が知られている。この窓用ガラス板は、外面に形成する第1の光触媒層が、平均粒径30〜100nmの光触媒とフッ素系バインダーとからなり、厚さが0.5μm〜50μmである。また、窓用ガラス板の内面に形成する第2の光触媒層は、平均粒径5μm〜25μmの光触媒とセラミックス系バインダーからなり、厚さは0.5μm〜3μmである。かかる構成により、外面の光触媒層は、高い光活性、耐候性、耐久性および自浄性を有し、内面の光触媒層も高い光活性を有する窓用ガラス板を提供することができると記載されている(特許文献1参照)。
しかし、我が国における日照時間は、1日のうち夏場で60%程度、冬場で40%程度であり、日照があっても、朝は西側面に太陽光が当たらず、夕方は東側面に太陽光が当たらず、北面側はいつも太陽光が当たらない。また、冬季の東北地方や北海道では曇天の日が多く、太陽光の強度が弱い。したがって、活性化するために光を必須要件とし、光の強弱により効果に大小が生じる光触媒のみでは効果に限界がある。一方、外面に形成する第1の光触媒層にはフッ素系バインダーを使用するが、フッ素系バインダーを含め、有機系バインダーは経年変化が大きく、劣化によりコーティング皮膜が剥離し易く、実用に堪えない。また、フッ素樹脂は疎水性が大きいため、光触媒の親水化作用と逆行し、水滴化を助長し、防曇機能を阻害する。
一方、無光触媒は、光の照射がなくても、酸素と水により活性化するため、夜間でも、また屋内でも太陽光強度を問わず、1日24時間機能を発揮する。無光触媒は、空気中の酸素や水によりOHラジカルやO2 -(スーパーオキサイドイオン)などの活性基が触媒の表面に発生し、活性基により、臭い成分、細菌、カビや汚染物質などの有機物を酸化分解する。したがって、無光触媒は、光触媒と同様に、ホルムアルデヒドなどを分解することにより消臭性能を発揮し、大腸菌などに対して抗菌性を有する。また、汚れにくく、汚れても除去しやすいため、防汚性を有する。
無光触媒を使用した例としては、たとえば無光触媒を含有する布を表面に配置したプラスチック成型品が知られている。無光触媒としてリン酸チタニウム系化合物が例示され、このプラスチック成型品は、光がなくても、無光触媒により有害物質や悪臭源を分解することができると記載されている(特許文献2参照)。確かに、無光触媒は、光がなくても機能を発揮するが、光触媒に比べて効果が低い。また、無光触媒の分散液を布に噴霧し、含浸させ、この布を貼り付けたプラスチック成型品と異なり、平滑なガラス基板上にコーティングし、窓用ガラス板として利用する場合には、可視光線の十分な透過光強度が要求される。
特許3509462号公報 特開2006−305917号公報
本発明の課題は、昼間は優れた防汚性等を発揮し、昼夜および光強度を問わず1日24時間に亘り、優れた抗菌性および消臭性等を発揮する窓用ガラス板およびその製造方法を提供することにある。
本発明の窓用ガラス板は、外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有し、第1の表面は、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒層を有し、光触媒層の表面粗さRaが、10nm以下であり、第2の表面は、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する無光触媒層を有し、無光触媒層の表面粗さRaが、7nm以下である。
本発明の製造方法は、かかる窓用ガラス板の製造方法である。光触媒層および無光触媒層を形成する前のガラス基板の表面粗さRaは、4nm以下であり、第1の表面における光触媒層の形成方法は、光触媒層を形成する第1の表面を、プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第1の工程と、第1の表面が余熱を有する状態で、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒の分散液を第1の表面にスプレーコートする第2の工程と、第1の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第3の工程と、を備え、スプレーコートする第2の工程を、第3の工程を実施する前に1回または複数回実施する。
第2の表面における無光触媒層の形成方法は、プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で第2の表面を加熱する第4の工程と、第2の表面が余熱を有する状態で、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する無光触媒の分散液を第2の表面にスプレーコートする第5の工程と、第2の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第6の工程と、を備え、還元炎で加熱する第4の工程と、スプレーコートする第5の工程とからなる1組の工程を、第6の工程を実施する前に、1組または複数組実施する。
優れた防汚性を発揮し、昼夜および光強度を問わず、抗菌性および消臭性等を発揮し、透過光強度の高い窓用ガラス板を提供することができる。
(窓用ガラス板)
本発明の窓用ガラス板は、外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有し、第1の表面は、TiO2およびSiO2を含有する光触媒層を有し、光触媒層の表面粗さRaが10nm以下である。光触媒層中のTiO2が光触媒の機能を発揮し、光の照射により活性酸素種を形成し、表面に付着している細菌、カビおよび有機物質を分解するため、防汚性、抗菌性および消臭性を有する。また、TiO2の表面に吸着する疎水性の有機物質を分解し、TiO2の表面に生成したOHラジカルが、空気中の水分子と結合して滑らかな水膜を形成し、表面を親水化するため、防曇性を発揮する。
本発明のガラス板は、たとえば人家の窓や室内の間仕切りに使用するガラス板、車両や船舶などの輸送機関の窓用ガラス板、または豚舎もしくは鶏舎などに使用する窓用ガラス板である。したがって、外方向に露出する第1の表面に最も強く太陽光が照射し、本発明の窓用ガラス板は、外方向に露出する第1の表面に光触媒層を有するため、太陽光により効率良く触媒機能を発揮し、防汚性等の優れた特性を奏する。また、光触媒は、無光触媒より強力であるため、無光触媒のみからなる窓用ガラス板よりも効果が大きい。
光触媒である多くのTiO2は、特に波長388nm以下の紫外線により励起し、触媒機能を発揮する。かかるTiO2としては、たとえば、石原産業株式会社製のST−01(平均粒径7nm)、ST−21(平均粒径20nm)、ST−31(平均粒径7nm)、ST−41(平均粒径200nm)、ST−30L(平均粒径7nm)などを好ましく使用することができる。光触媒層における光触媒の含有量は、光触媒活性を高める点で、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が特に好ましい。一方、光触媒層における光触媒の含有量は、光触媒層の強度を高める点で、75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、30質量%以下が特に好ましい。
第1の表面の光触媒層はSiO2を含有し、SiO2はバインダーとして機能を発揮する。各種波長の可視光線を照射したときの屈折率を表1に示す。ホウケイ酸ガラスは典型的なガラス材料であり、パイレックス(登録商標)もホウケイ酸ガラスからなる。また、ホウケイ酸ガラスの組成は、80.9%がSiO2であるため、表1に示すとおり、SiO2の屈折率とホウケイ酸ガラスの屈折率は近似している。本発明の光触媒層は、バインダーとしてSiO2を使用し、光触媒層をコーティングするガラス基板と屈折率が近似するため、可視光線の透過光強度が高い窓用ガラス板を提供することができる。
光触媒層をコーティングするガラス基板の主要組成がSiO2であるため、光触媒層のバインダーであるSiO2とガラス基板とは相性が良い。したがって、少量のバインダーで強力な光触媒層を形成することができる。また、均一な光触媒層を形成しやすく、均一なコーティング層を形成できるため、透過光強度を高めることができる。したがって、光触媒層の表面粗さRaが好ましくは10nm以下であり、より好ましくは6nm以下である窓用ガラス板を提供することができる。また、平滑な光触媒層を得るために、光触媒層を形成する前のガラス基板の表面粗さRaは、4nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。本明細書において、表面粗さRaは、算術平均粗さで表し、触針式粗さ計(株式会社小坂研究所製Surfcorder−SE−3300)により測定する。
光触媒層におけるSiO2の含有量は、TiO2の光触媒活性を高める点で、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下が特に好ましい。一方、表1の屈折率から明らかなとおり、TiO2の可視光線に対する屈折率は2.2〜2.3前後であり、ガラスやSiO2の屈折率より大きいため、可視光線の透過光強度を高める点および光触媒層の強度を高める点で、SiO2の含有量は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、70質量%以上が特に好ましい。また、光触媒層を形成するガラス基板の組成は80%程度がSiO2であるため、ガラス材料の屈折率と光触媒層の屈折率を近似させることにより、高い透過光強度を得る点で、SiO2の含有量は、70質量%〜80質量%が好ましい。
内方向に露出する第2の表面は、無光触媒とSiO2を含有する無光触媒層を有する。無光触媒は、光の照射がなくても、酸素と水により活性化するため、1日24時間機能を発揮し、消臭性、抗菌性、抗黴性および防汚性を奏する。また、第2の表面は、内方向に露出するため、第2の表面に到達する太陽光は、第1の表面の光触媒層およびガラス基板を透過した後の太陽光であり、外方向に露出する第1の表面に比べて太陽光強度が小さい。したがって、光触媒層は、第1の表面に形成する場合より、第2の表面に形成する場合は、一般に効率的ではない。本発明の窓用ガラス板は、第2の表面に無光触媒層を有するため、太陽光の照射時間や照射強度にかかわりなく、消臭性、抗菌性および防汚性を1日24時間発揮することができる。
無光触媒としては、リン酸チタニウム系化合物、ケイ酸チタニウム系化合物もしくはホウ酸チタニウム系化合物またはこれらの縮合物、酸化チタン・アルカリケイ酸塩化合物、キレート銀イオンミネラルまたはチタニウム系化合物と鉄イオンミネラルなどを使用することができる。また、リン酸チタニウム系化合物としては、たとえば、Ti(OH)(H2PO42(OR)、Ti(OH)2(H2PO4)(OR)、Ti(OH)2(H2PO42、Ti(OH)3(H2PO4)などを使用することができる。ここに、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である。無光触媒層における無光触媒の含有量は、触媒活性を高める点で、15質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、25質量%以上が特に好ましい。一方、無光触媒層における無光触媒の含有量は、無光触媒層の強度を高める点で、75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、35質量%以下が特に好ましい。
第1の表面と同様に、第2の表面についても無光触媒層をコーティングするガラス基板の主要組成がSiO2であり、無光触媒層中のSiO2と相性が良い。このため、バインダーであるSiO2の相対量が少なくても強力な無光触媒層を形成することができる。また、均一な無光触媒層を形成しやすく、均一なコーティング層を形成できるため、透光性をさらに高めることができる。したがって、無光触媒層の表面粗さRaが好ましくは7nm以下であり、より好ましくは5nm以下である窓用ガラス板を提供することができる。また、平滑な光触媒層を得るために、無光触媒層を形成する前のガラス基板の表面粗さRaは、4nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。
無光触媒層におけるSiO2の含有量は、無光触媒の触媒活性を高める点で、85質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が特に好ましい。一方、無光触媒層の強度を高める点で、SiO2の含有量は、25質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、65質量%以上が特に好ましい。ガラス基板の主要組成がSiO2であり、ガラス基板の屈折率と無光触媒層の屈折率を近似させることにより、高い透過光強度を得る点で、無光触媒層のSiO2の含有量は、65質量%〜75質量%が好ましい。基材であるガラス基板には、シングルガラス板、複層ガラス板、合せガラス板、網入りガラスまたは強化ガラス板などを好ましく使用することができる。また、ガラス材料としては、アルミノケイ酸アルカリ系ガラス、アルカリケイ酸系ガラス、ホウケイ酸系ガラス、ソーダ石灰シリカ系ガラスなどを使用することができる。
固体層である触媒層に入射する光の散乱する方向と大きさは、光の波長と触媒層内の粒子の大きさにより変化する。粒子の直径をdとし、入射する光の波長をλとするとき、dとλに関わるサイズパラメータαは、
α=πd/λ
と表すことができ、α>3であるときは、回折散乱が生じるため、光の透過強度が著しく低下する。本発明のガラス板は窓用ガラス板であり、可視光線(λ=400nm〜800nm)の透過強度が重要であるため、可視光線のうち、最も低波長の紫色光(λ=400nm)について検討すると、α>3となるのは、
d>3×400÷3.14>380nm
である。この値は、最も低波長の紫色光の場合であるから、可視光線全体を考慮すると、粒径(d)が380nmより小径となるほど、可視光線の透過強度は大きくなる。
つぎに、0.4<α<3の場合にはミー散乱が生じる。この場合も同様に、最も低波長の紫色光(λ=400nm)について検討すると、0.4<α<3となるのは、50nm<d<380nmとなる。ミー散乱により、光の干渉と粒子の共振が同時に起こるため、これらを全て解析する必要があるが、通常、粒径が大きくなれば散乱光も複雑かつ大きくなるから、透過光強度が小さくなる。したがって、50nm<d<380nmにおいても、粒径dが小さいほど紫色光の透過光強度が大きくなり、長波長側の可視光線についても同様である。
つぎに、α<0.4の場合にはレイリー散乱が生じる。レイリーの散乱係数kは、粒子数n、反射係数mとすると、
が成立する。この関係式から、散乱係数kは、光の波長の4乗に反比例し、粒径dの5乗に正比例するため、可視光線のうち青色光などの短波長光の散乱が赤色光などの長波長光の散乱より大きくなり、透過光は青色が強調されることになるが、粒径dを十分に小さくすることにより、散乱光の全体量を小さくし、可視光線の透過強度を高めることができる。
以上の知見に基づき、第1の表面にTiO2およびSiO2を含有する光触媒層を有し、第2の表面に無光触媒およびSiO2を含有する無光触媒層を有する窓用ガラス板の場合を具体的に検討した結果、可視光線の透過効率を高める点で、第1の表面におけるTiO2の平均粒径は、200nm以下が好ましく、40nm以下がより好ましく、15nm以下が特に好ましいことが分かった。また、無光触媒の平均粒径は、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、20nm以下が特に好ましいが、光触媒と無光触媒ともに粒径が10nm以下になると、さらに粒径を小さくしても散乱光強度は変化しないことが分かった。一方、SiO2は、分極した酸素原子で覆われ、水を吸着して、水酸基を形成して安定化しているため、表面におけるイオン結合が大きく寄与する。したがって、SiO2の粒径が小さくなると、質量あたりの表面積が大きくなり、水酸基の相対量が多くなり、機械的強度が大きくなる。このため、バインダー力と可視光線の透過強度を高める点で、第1の表面に形成する場合も第2の表面に形成する場合もいずれも、SiO2の粒径は300nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、15nm以下がより好ましい。
また、平均粒径が小さくなると、触媒層の力学的強度および耐候性が低下する傾向にあるため、第1の表面におけるTiO2の平均粒径は5nm以上が好ましく、第2の表面における無光触媒の平均粒径は6nm以上が好ましく、SiO2については、第1の表面と第2の表面とも平均粒径は5nm以上が好ましい。
窓用ガラス板の使用環境によっては、太陽光の照射時間が長く、照射強度が大きい雰囲気もあり、そのような状況下では、第2の表面に光触媒層を形成する態様が好ましい。かかる態様において、無光触媒層と光触媒層とを積層すると、内層の触媒層が外界に接触しないため触媒効率が低下する。これに対して、無光触媒層を第2の表面に島状に配置し、さらにTiO2およびSiO2を含有する光触媒層を第2の表面に島状に配置する態様は、第2の表面上で、無光触媒層と光触媒層が混在して配置し、無光触媒層と光触媒層の両者が露出するため、触媒効率の低下を抑制し、消臭性、抗菌性および防汚性を保持することができる。第2の表面における光触媒層の面積は、無光触媒層の面積に対して、一般には、5%〜40%が好ましく、10%〜25%がより好ましい。また、かかる光触媒層は、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する態様が好ましい。一方、光触媒層の表面粗さRaは、10nm以下が好ましい。光触媒層における光触媒とSiO2の好ましい含有量については上述のとおりである。また、無光触媒層における無光触媒とSiO2の好ましい含有量については上述のとおりである。
光触媒には、可視光線により励起するタイプがあり、外界から入射する紫外線の強度が低く、室内燈などからの可視光線の照射時間が長いような環境に使用する窓用ガラス板では、第2の表面における光触媒層中の光触媒は、可視光応答型光触媒が好ましい。可視光応答型光触媒としては、たとえば、TiO2にPt化合物を担持した構造のもの(石原産業株式会社製MPT−621、MPT−623など)、NでドーピングしたTiO2(豊田中央研究所製TiO−Nなど)、Sイオンを導入したFe-TiO2などを使用することができる。
冬季の東北地方や北海道などのように曇天の日が多い地方、または建物の北面のように、十分な強度の太陽光を期待できない場合には、光触媒機能を補うために、第1の表面の光触媒層に、さらに無光触媒を配合した窓用ガラス板が好ましい。無光触媒の光触媒に対する割合は、得られる太陽光の強度により異なるが、一般には、5質量%〜40質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がより好ましい。また、配合する無光触媒の平均粒径は6nm〜50nmが好ましい。一方、十分な太陽光線が照射する場所に設置する窓用ガラス板においては、第1の表面の光触媒層とガラス基材を透過して、多量の太陽光線が第2の表面に届くため、透過する太陽光線の量に沿って、第2の表面の無光触媒層に光触媒が含有する態様が好ましい。かかる場合、光触媒の無光触媒に対する割合は、95質量%〜60質量%が好ましく、90質量%〜75質量%がより好ましい。
(窓用ガラス板の製造方法)
本発明の方法により製造する窓用ガラス板は、外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有し、第1の表面は、TiO2およびSiO2を含有する光触媒層を有し、光触媒層の表面粗さRaは10nm以下である。また、第2の表面は、無光触媒およびSiO2を含有する無光触媒層を有し、無光触媒層の表面粗さRaは7nm以下であり、光触媒層および無光触媒層を形成する前のガラス基板の表面粗さRaが、4nm以下である。
第1の表面における光触媒層の形成方法は、炭化水素ガスの還元炎で加熱する第1の工程と、光触媒の分散液をスプレーコートする第2の工程と、炭化水素ガスの還元炎で加熱する第3の工程とを備える。第1の工程では、触媒層を形成する第1の表面を、プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する。基材であるガラス基板の表面温度が、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜70℃、特に好ましくは50℃〜60℃となるように加熱することにより、ガラス表面を親水化することができるため、次工程で光触媒の分散液をスプレーコートすると、表面粗さRaが10nm以下の均一な光触媒層を形成することができる。本明細書において主成分とは、プロパンガスとブタンガスが、炭化水素ガス中に好ましくは75mol%以上、より好ましくは85mol%以上含まれることをいう。炭化水素ガス中に占めるブタンガスの比率は、70mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましい。
光触媒の分散液をスプレーコートする第2の工程は、第1の表面が余熱を有する状態で、光触媒TiO2およびSiO2を含有する光触媒の分散液を第1の表面にスプレーコートする。第1の表面を加熱する第1の工程の後、余熱を有する状態でスプレーコートすることにより、SiO2の3次元長鎖状網目構造の形成が促進されるため、光触媒層の硬化が促進する。また、スプレーコートするコーティング液をアルコール水分散液とすることによっても、光触媒層の硬化を促進することができる。光触媒の分散液としては、たとえば、石原産業株式会社製のSTS−01、STS−02、STS−21、STS−100などを好ましく使用することができる。また、株式会社鯤コーポレーション製のTPX−HP(CB)、TPX−HLなどを好ましく使用することができる。光触媒の分散液は、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有するものが好ましい。
コーティング液の固形分濃度は、薄いコーティング膜を形成し、ガラス板の透過光強度を高める点で、2質量%以下が好ましく、0.8質量%以下がより好ましい。一方、コーティング液の固形分濃度は、光触媒層の硬化を促進する点で、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。分散液としては、水分散液、アルコール水分散液またはセロソルブ分散液を好ましく使用することができる。アルコールとしては、エタノール、メタノール、イソプロパノールなどが好ましく、水としては、純水が好ましい。スプレーコートする第2の工程は、第3の工程を実施する前に、必要に応じて1回または複数回実施する。コーティング量は固形分換算で、触媒機能を高める観点から、0.04g/m2以上が好ましく、0.08g/m2以上がより好ましい。一方、コーティング量は固形分換算で、可視光線の光透過強度を高める観点から、1.00g/m2以下が好ましく、0.60g/m2以下がより好ましい。
SiO2からなるコロイダルシリカは、水分散液やアルコール水分散液として好ましく使用することができる。市販のコロイダルシリカには、日産化学工業株式会社製スノーテックスIPA-ST(平均粒子径10nm〜15nm)、触媒化成工業株式会社製OSCAL-1432(平均粒子径10〜20nm)または触媒化成工業株式会社製OSCAL-1632(平均粒子径11nm)などがある。コロイダルシリカは、乾燥すると、コロイド状のSiO2の凝集結合力により、SiO2の3次元長鎖状網目構造を有する多孔質体となる。コロイダルシリカをバインダーとして使用することにより、SiO2の3次元長鎖状網目構造の隙間に光触媒微粒子を保持するため、光触媒と分解対象物質との接触が妨害されず、光触媒の表面積や光活性を高く維持でき、光触媒層の機械的強度および耐久性を高めることができる。
スプレーコートする第2の工程の後、第1の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第3の工程を実施する。第3の工程は、光触媒層の硬化、乾燥および安定化を目的として実施する。かかる観点から、第1の表面の温度が、好ましくは80℃〜150℃となるように、より好ましくは100℃〜120℃となるように加熱する。プロパンガスおよびブタンガスの燃焼温度は、供給する酸素ガスの量によって異なるが、メタンガスなどの低分子量の炭化水素ガスに比べて燃焼温度が低い。また、還元炎は、酸化炎に比べて酸素量が低いため低温である。したがって、プロパンガスとブタンガスを主成分とする炭化水素ガスの還元炎は、他のバーナー処理と比較して低温処理に適し、低温域での温度調整が容易である。
第2の表面における無光触媒層の形成方法は、炭化水素ガスの還元炎で加熱する第4の工程と、無光触媒の分散液をスプレーコートする第5の工程と、第2の表面を炭化水素ガスの還元炎で加熱する第6の工程とを備える。第4の工程は、無光触媒層を形成する第2の表面を、プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する。表面温度が、好ましくは40℃〜80℃、より好ましくは50℃〜70℃、特に好ましくは50℃〜60℃となるように加熱することにより、つぎの第5の工程で無光触媒の分散液をスプレーコートすると、コーティング液が塗付面に接触すると、SiO2が直ちに3次元立体網状構造を形成するため、無光触媒層を瞬時に硬化することができる。また、炭化水素ガスの還元炎で加熱することにより塗付面の親水性および密着性が大きくなり、表面粗さRaが7nm以下の均一な層を形成することができる。炭化水素ガスは、前述の炭化水素ガスを同様のガスを使用することができる。
無光触媒の分散液をスプレーコートする第5の工程は、第2の表面が余熱を有する状態で、無光触媒の分散液を第2の表面にスプレーコートする。コーティング液の固形分濃度は、薄いコーティング膜を形成し、コーティングした無光触媒の剥離強度を高める点で、1質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。一方、コーティング液の固形分濃度は、無光触媒層の硬化を促進する点で、0.02質量%以上が好ましく、0.08質量%以上がより好ましい。分散液は、水分散液やアルコール水分散液を好ましく使用することができる。水としては、純水が好ましく、アルコールとしては、エタノールやメタノールが好ましい。また、アルコール水分散液を使用することにより、無光触媒の硬化を促進することができる。
還元炎で加熱する第4の工程と、スプレーコートする第5の工程とからなる1組の工程(以下、「工程I」ともいう。)は、コーティング量を調整するため、第6の工程を実施する前に、1組または複数組実施する。コーティング量は固形分換算で、触媒機能を高める観点から、0.005g/m2以上が好ましく、0.010g/m2以上がより好ましい。一方、コーティング量は固形分換算で、可視光線の光透過強度を高める観点から、0.10g/m2以下が好ましく、0.05g/m2以下がより好ましい。無光触媒の分散液としては、たとえば、株式会社YOOコーポレーション製のSW−50などを好ましく使用することができる。無光触媒の分散液は、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する
スプレーコートする第5の工程の後、第2の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第6の工程を実施する。第6の工程により、無光触媒層を硬化し、乾燥し、安定化する。かかる観点から、第2の表面の温度が、好ましくは80℃〜150℃となるように、より好ましくは100℃〜120℃となるように、加熱する。プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱することにより、従来の乾燥炉を使用する場合や風乾する場合と比べて、炭化水素ガスの還元炎の温度が乾燥炉の熱風温度や室温より高いため、SiO2の硬化と多孔質化を促進することができる。
無光触媒層を第2の表面に島状に形成し、さらにTiO2およびSiO2を含有する光触媒層を第2の表面に島状に形成する窓用ガラス板の製造方法は、無光触媒層の形成工程と、光触媒層の形成工程とを備える。無光触媒層の形成工程は、還元炎で加熱する第4の工程と、無光触媒の分散液を第2の表面に島状にスプレーコートする第5の工程と、還元炎で加熱する第6の工程とからなり、第4の工程と第5の工程とからなる1組の無光触媒層の形成工程Iは、コーティング量に応じて1組または複数組実施する。
光触媒層の形成工程は、1組の無光触媒層の形成工程Iの前または後または前後に実施する。光触媒層の形成工程は、第2の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第7の工程と、第2の表面が余熱を有する状態で、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒の分散液を第2の表面に島状にスプレーコートする第8の工程と、を備える。この第8の工程は、コーティング量などを調整するため、1回または複数回実施する。触媒層を島状に形成する態様には、基材の表面に触媒層を円形もしくは楕円形のスポット状に形成する態様、または所定の幅で帯状に形成する態様などが含まれる。光触媒層および無光触媒層は、スプレーコートにより形成するため、島状に容易に形成することができる。光触媒層の表面粗さRaは、10nm以下が好ましい。また、光触媒層中のSiO2の含有量が90質量%以下であり、無光触媒層中のSiO2の含有量が85質量%以下である態様が好ましい。
(実施例1)
外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有する窓用ガラス板であって、第1の表面に、TiO2およびSiO2を含有する光触媒層を有し、第2の表面に、無光触媒とSiO2を含有する無光触媒層を有する窓用ガラス板を製造した。まず、表面粗さRaが両面とも2nmで厚さ1.0mmの透明なシングルガラス板のうち光触媒層を形成する第1の表面を炭化水素ガスAの還元炎で加熱した(第1の工程)。炭化水素ガスAは、n−ブタンガス80mol%、プロパンガス15mol%、その他プロピレンガスなどからなる組成のガスである。炭化水素ガスAの還元炎で加熱することにより、ガラス板の第1の表面の温度が50℃〜60℃となるように調整した。
つぎに、第1の表面が余熱を有する状態で、光触媒TiO2およびSiO2を含有する分散液を第1の表面にスプレーコートした(第2の工程)。光触媒の分散液は、固形分濃度0.43質量%、比重0.92のアルコール水分散液であった。また、平均粒径は、光触媒TiO2が7nmであり、SiO2が10nmであった。スプレーコートは合計4回実施した結果、コーティング量は、コーティング液で80g/m2(固形分換算で0.34g/m2)であった。コーティング後の表面温度は40℃〜50℃であり、既に乾燥しており、指で擦っても光触媒層は剥離しなかった。つづいて、第1の工程で使用した炭化水素ガスAの還元炎で、第1の表面を加熱した(第3の工程)。加熱により、第1の表面の温度が100℃〜120℃となるように調整した。
つづいて、無光触媒層を形成する第2の表面を、炭化水素ガスAの還元炎で加熱した(第4の工程)。加熱は、第2の表面の温度が50℃〜60℃となるように調整した。その後、第2の表面が余熱を有する状態で、無光触媒とSiO2とを含有する分散液を第2の表面にスプレーコートした(第5の工程)。無光触媒は、リン酸チタニウム系化合物(Ti4623)およびその縮合物であり、分散液は、固形分濃度0.12質量%、比重0.98の分散液であった。また、平均粒径は、無光触媒が12nmであり、SiO2が10nmであった。還元炎で加熱する第4の工程と、スプレーコートする第5の工程とからなる1組の工程Iを3回実施した結果、コーティング量は、コーティング液で15g/m2(固形分換算で0.018g/m2)であった。つづいて、炭化水素ガスAの還元炎で第2の表面を加熱し(第6の工程)、第2の表面の温度が100℃〜120℃となるように調整した。
第1の表面の走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope)(以下、「SEM」という。)写真(倍率10,000倍)を図1に示す。図1に示すように、第1の表面の光触媒層は平滑であり、光触媒層の表面粗さRaは4nmであった。また、第2の表面のSEM写真(倍率10,000倍)を図2に示す。図2に示すように、第2の表面の無光触媒層は平滑であり、無光触媒層の表面粗さRaは3nmであった。比較のため、本実施例で使用した表面粗さRaが2nmのガラス基板を比較例1とし、そのSEM写真(倍率10,000倍)を図3に示す。図1〜図3に示すように、本発明の窓用ガラス板は、コーティング前のガラス基板(比較例1)と同様に表面が平滑であり、透過光の強度が大きく、透過による波長のシフトがなかった。
つぎに、比較例1のガラス基板と、実施例1で製造した窓用ガラス板について、(1)防汚性、(2)防曇性、(3)抗菌性および(4)消臭性をつぎの方法で評価した。
(1)防汚性は、試料を屋外に1ヶ月間放置した後、表面の汚れを目視により観察し、汚れが多少認められても透明度が維持されているときは「良」と評価し、汚れが多くて透明度がほとんどないとき「不良」と評価した。
(2)防曇性は、85℃〜90℃に維持した温浴上に、試料を30分間静置し、試料の表面に曇が全く発生していなかったときは「優」と評価し、曇が発生しても温浴から離すと曇が2秒〜3秒以内で直ぐに消失したときは「良」と評価し、発生した曇が3秒以上経過しても消失しないときは「不良」と評価した。評価は、紫外線照射下で試験する場合と、暗室で試験する場合の2通りを実施した。本明細書において、紫外線照射下とは、暗室において、東芝製ブラックライト蛍光ランプFL20S(20W)を照射する雰囲気をいう(試料表面での紫外線強度1mW/cm2)。
(3)抗菌性は、JISZ2911付属書3(光学部品・光学機器の試験)に基づき試験した。また、実用上の見地から培養器を暗室内に入れ、1日24時間のうち、10時間は紫外線照射下に置き、残りの14時間は光を照射せずに試験した。評価は、カビを接種した部分に菌糸の発育が認められないときは「良」と評価し、発育が認められたときは「不良」と評価した。
(4)消臭性は、200cm×200cm×50cmの透明アクリル板製密閉容器に、20cm×30cmに切り出した試料を入れた後、密閉容器内で5本のタバコに火を付け、5分間放置してから、タバコを取り出し、密閉容器内で8時間経過後、10人の被験者に密閉容器内の臭いを嗅いでもらい、タバコの臭い(アセトアルデヒド臭など)が残っているかどうかを評価した。官能評価は、10人全員が臭いを感じなかったときは「優」と評価し、臭いを感じた人数が1人〜3人のときは「良」と評価し、臭いを感じた人数が4人以上のときは「不良」と評価した。評価は、紫外線照射下と、暗室で試験する場合の2通りを実施した。
防汚性、防曇性、抗菌性および消臭性の評価の結果を表2に示す。表2に示すように、本実施例のガラス板は、比較例1に比べて、防汚性および抗菌性が良好であり、紫外線照射下における防曇性および消臭性が優れていた。また、本実施例の窓用ガラス板の第2の表面に形成した無光触媒は、暗室においても防曇性および消臭性を有するため、24時間に亘り防曇性および消臭性を発揮することが分かった。
(実施例2)
第2の表面を還元炎で加熱する第4の工程と、無光触媒の分散液を第2の表面にスプレーコートする第5の工程とからなる1組の無光触媒層の形成工程Iにおいて、分散液を幅10cmの直線状にスプレーコートした。無光触媒の分散液は、実施例1で使用したものを使用し、無光触媒層の形成工程Iは3回実施した。無光触媒層のコーティング量は、コーティング液で15g/m2(固形分換算で0.018g/m2)であった。また、無光触媒層の形成工程Iの前に、光触媒層を形成した。光触媒層の形成は、まず第2の表面を炭化水素ガスAの還元炎で加熱した(第7の工程)。炭化水素ガスAの還元炎で加熱することにより、ガラス板の第2の表面の温度が50℃〜60℃となるように調整した。
つぎに、第2の表面が余熱を有する状態で、光触媒を含有する分散液を第2の表面に島状にスプレーコートした(第8の工程)。光触媒の分散液は、実施例1で使用したものを使用し、島状のスプレーコートは、無光触媒のスプレーコートを予定している領域の隣に、幅10cmの直線状に行った。島状のスプレーコートを1回実施した結果、コーティング量は、コーティング液で20g/m2(固形分換算で0.086g/m2)であった。コーティング後の表面温度は40℃〜50℃であり、既に乾燥しており、指で擦っても光触媒層は剥離しなかった。つづいて、炭化水素ガスAの還元炎で第2の表面を加熱した(第6の工程)。それ以外は実施例1と同様にして窓用ガラス板を製造した。
得られた窓用ガラス板における第1の表面のSEM写真(倍率10,000倍)を図4に示す。図4に示すように、第1の表面の光触媒層は平滑であり、光触媒層の表面粗さRaは3nmであった。また、第2の表面の無光触媒層のSEM写真(倍率10,000倍)を図5に示し、第2の表面の光触媒層のSEM写真(倍率10,000倍)を図6に示す。図5および図6に示すように、第2の表面は平滑であり、第2の表面の無光触媒層の表面粗さRaは3nmであり、光触媒層の表面粗さRaは4nmであった。図3〜図6に示すように、本発明の窓用ガラス板は、コーティング前のガラス基板(比較例1)と同様に表面が平滑であり、透過光強度が大きく、透過による波長のシフトがなかった。
防汚性、防曇性、抗菌性および消臭性の評価を表1に示す。表1に示すように、本実施例のガラス板は、比較例1に比べて、防汚性および抗菌性が良好であった。また、第2の表面に光触媒を有するため、紫外線照射下において特に防曇性および消臭性が優れていた。また、第2の表面に形成した無光触媒は、暗室においても防曇性および消臭性を有するため、24時間に亘り防曇性および消臭性を発揮することが分かった。
防汚性、防曇性、抗菌性および消臭性が大きい窓用のシングルガラス板、複層ガラス板、合せガラス板、網入りガラスおよび強化ガラス板を提供することができる。
実施例1で製造した窓用ガラス板の第1の表面のSEM写真である。 実施例1で製造した窓用ガラス板の第2の表面のSEM写真である。 実施例1で使用したガラス基板の表面のSEM写真である。 実施例2で製造した窓用ガラス板の第1の表面のSEM写真である。 実施例2で製造した窓用ガラス板の第2の表面における無光触媒層のSEM写真である。 実施例2で製造した窓用ガラス板の第2の表面における光触媒層のSEM写真である。

Claims (8)

  1. 外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有する窓用ガラス板であって、
    前記第1の表面は、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒層を有し、該光触媒層の表面粗さRaが、10nm以下であり、
    前記第2の表面は、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する無光触媒層を有し、該無光触媒層の表面粗さRaが、7nm以下である窓用ガラス板。
  2. 前記無光触媒層を第2の表面に島状に配置し、さらに平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒層を前記第2の表面に島状に配置し、前記光触媒層の表面粗さRaが、10nm以下である請求項1に記載の窓用ガラス板。
  3. 前記第2の表面の光触媒層中の光触媒が、可視光応答型光触媒である請求項2に記載の窓用ガラス板。
  4. 前記第1の表面の光触媒層は、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の窓用ガラス板。
  5. 前記光触媒層は、SiO2の含有量が90質量%以下であり、前記無光触媒層は、SiO2の含有量が85質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の窓用ガラス板。
  6. 外方向に露出する第1の表面と、内方向に露出する第2の表面とを有する窓用ガラス板の製造方法であって、
    前記第1の表面は、TiO2およびSiO2を含有する光触媒層を有し、該光触媒層の表面粗さRaが、10nm以下であり、
    前記第2の表面は、無光触媒およびSiO2を含有する無光触媒層を有し、該無光触媒層の表面粗さRaが、7nm以下であり、
    前記光触媒層および前記無光触媒層を形成する前のガラス基板の表面粗さRaが、4nm以下であり、
    前記第1の表面における光触媒層の形成方法は、
    光触媒層を形成する第1の表面を、プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第1の工程と、
    前記第1の表面が余熱を有する状態で、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒の分散液を前記第1の表面にスプレーコートする第2の工程と、
    前記第1の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第3の工程と、
    を備え、前記スプレーコートする第2の工程を、第3の工程を実施する前に1回または複数回実施し、
    前記第2の表面における無光触媒層の形成方法は、
    無光触媒層を形成する第2の表面を、プロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第4の工程と、
    前記第2の表面が余熱を有する状態で、平均粒径6nm〜50nmの無光触媒および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する無光触媒の分散液を前記第2の表面にスプレーコートする第5の工程と、
    前記第2の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第6の工程と、
    を備え、還元炎で加熱する前記第4の工程と、スプレーコートする前記第5の工程とからなる1組の工程を、第6の工程を実施する前に1組または複数組実施する窓用ガラス板の製造方法。
  7. 前記無光触媒層を第2の表面に島状に配置し、さらにTiO2およびSiO2を含有する光触媒層を前記第2の表面に島状に配置し、前記光触媒層の表面粗さRaが、10nm以下である窓用ガラス板の製造方法であって、
    還元炎で加熱する前記第4の工程と、前記無光触媒の分散液を第2の表面に島状にスプレーコートする第5の工程とからなる1組の工程の前または後または前後に、さらに光触媒層を形成し、
    該光触媒層の形成方法は、
    前記第2の表面をプロパンガスとブタンガスとを主成分とする炭化水素ガスの還元炎で加熱する第7の工程と、
    前記第2の表面が余熱を有する状態で、平均粒径5nm〜200nmのTiO2および平均粒径5nm〜300nmのSiO2を含有する光触媒の分散液を前記第2の表面に島状にスプレーコートする第8の工程と、
    を備え、前記スプレーコートする第8の工程を1回または複数回実施する請求項6に記載の窓用ガラス板の製造方法。
  8. 前記光触媒層は、SiO2の含有量が90質量%以下であり、前記無光触媒層は、SiO2の含有量が85質量%以下である請求項6または7に記載の窓用ガラス板の製造方法。
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