JP2010010665A - 高保磁力NdFeB磁石およびその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高保磁力かつ高磁化のNdFeB純三元系磁石を得ることを目的とする。該磁石は、室温だけでなく、高温でも優れた磁気特性を有する。
【解決手段】単磁区粒子径以下の粒子径の粒子で構成される、孤立微細集合組織および/または等方性微細集合組織を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石を提供する。
【選択図】図1
【解決手段】単磁区粒子径以下の粒子径の粒子で構成される、孤立微細集合組織および/または等方性微細集合組織を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石を提供する。
【選択図】図1
Description
本発明は高保磁力の希土類永久磁石材料およびその作製方法に関する。本明細書において、特に断りがなければ、高保磁力とは室温において15kOe以上を意味するものとする。本明細書において、特に断りがなければ、室温とは略20℃±15℃(5〜35℃)を指す。
希土類永久磁石は、高い磁気特性を有することから電気製品や自動車部品の小型モータ等の用途に用いられている。かかるモータは近年さらに小型化、高速化あるいは耐熱性向上が求められており、これに伴ってさらに磁気特性も高いものが要求されてきている。そこでNd−Fe−B系希土類永久磁石においてその磁気特性を向上させるため、その成分についての研究が広く行われている。
NdFeB磁石において、TbやDyを添加して磁気特性を向上させることが知られている。しかしながらTbやDyは高価な希少金属である。そこで、TbやDyのかわりにCo等の元素を加えて急冷薄帯(リボン)を作製し、さらにアニーリングすることにより高保磁力材料を達成されることが報告されている。(特許文献1)
また、RFeB純三元系(ここでRはPrまたはNd等の希土類元素)の急冷薄帯の作製が試みられているが、その最大保磁力は15kOe未満で、高保磁力とはいえなかった。(非特許文献1)
一方で、NdFeB純三元系において、Ndをリッチにして高保磁力を得たものもある。しかしながら、この場合は磁化が低く、またアニーリングを必要とした。(非特許文献2)
磁石の製造方法としては、R−TM−B系(ここでRはNd、Prを主とする希土類元素、TMは遷移金属)の合金溶湯を、金属製の回転するロールに噴射して合金溶湯を急冷凝固させることからなる磁石合金薄帯の製造方法が知られている。特許文献2によると、この製法において磁石合金薄帯の寸法のばらつきが磁気特性のばらつきを生じると考えられ、これを解決すべく、合金溶湯噴射時の平均溶湯流速を0.2〜5m/sに規定する磁石合金薄帯の製造方法が開示されている。しかしながら、純三元系(Nd−Fe−B)合金において、高磁化と高保磁力(15kOe以上)を両立した磁石は得られていない。(現状ではCo、Cuなどの添加元素により両立を図っている。)
また、特許文献3でも急冷磁石において薄帯の形態を制御することによって、磁気特性を高める方法が開示されている。具体的には、Nd−Fe−B系合金溶湯を、非酸化性雰囲気中でノズルより所定の圧力で回転する片ロール表面に噴出して合金薄帯を製造するに際し前記ノズル径を0.3〜0.6mm、噴射圧力を0.2〜0.6kgf/cm2とすることを特徴とする永久磁石用合金薄帯の製造方法である。ただし、ここではNd2Fe14Bが主相とされており、明示はされていないが他元素が添加されている。(すなわち純三元系ではない。)
J.J.Croat et al., J.Appli.Phys.55,2078(1984)
D.C.Crew et al.,Phys.Rev.B,66,184418(2002)
以上を整理すると、従来型の焼結磁石の多くは、結晶粒径が数μm程度の多磁区Nd2Fe14B粒子を使用しているため、保磁力を発現させるために、磁壁の移動、発生を妨げる粒界相が必要である。この粒界相としてTb、DyまたはCo等が添加されるが、この場合にはTb、DyまたはCo等の添加元素によるコスト増は避けられない。
これに関して、NdFeB純三元系磁石の開発も試みられているが、高保磁力が出ないか、高保磁力を発現するものは磁化が小さい。これは高保磁力を得るために(粒界相として)Nd分率を多くしており、その分Feの分率が少なくなり、これが磁化を低下させている。(一般にFe分率が高いほど磁化は大きくなる。)
また、金属製の回転するロールに噴射して合金溶湯を急冷凝固させることからなる磁石合金薄帯の製造方法において、噴射流速や、噴射ノズル径と噴射圧力を制御する例が報告されている。しかしながら、噴射されるロール側の条件が凝固組織にとってより重要な因子と考えられる。
さらに、いくつかの先行技術ではアニーリングすることによって、組織を結晶化し磁気特性を向上させているが、これもコスト増につながる。
そこで本発明は、急冷速度を制御した高保磁力かつ高磁化のNdFeB純三元系磁石およびその製法を提供することを目的とする。
さらに、NdFeB系磁石において、これまでは室温保磁力で評価されていた。しかし実際にNdFeB系磁石が使用される温度は室温とは限らない。例えば、NdFeB系磁石が自動車のハイブリッド用モータで使用される場合、NdFeB系磁石は該モータの運転温度域である160℃付近で使用される。したがってNdFeB系磁石の保磁力を160℃のような高温においても評価する必要がある。
本発明により、下記(1)〜(14)が提供される。
(1) 単磁区粒子径以下の粒子径の粒子で構成される、孤立微細集合組織および/または等方性微細集合組織を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石。
(2) Nd-Fe-B磁石において、Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeである、(1)に記載の磁石。
(3) Ndが15at%以上および35at%以下である、(2)に記載の磁石。
(4) Nd-Fe-B磁石においてNdが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下である、(1)に記載の磁石。
(5) 20±15℃において保磁力が15kOe以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の磁石。
(6) 略160℃において保磁力が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い、(3)に記載の磁石。
(7) 純三元系Nd-Fe-B合金のインゴットを溶解し、急冷速度6×105K/s〜2×106K/sで急冷して作成される工程を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石の製造方法。
(8) 純三元系Nd-Fe-B合金のインゴットを溶解し、急冷速度2×106K/s以上の急冷によりアモルファス化した後、加熱処理により微結晶化する工程を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石の製造方法。
(9) 該加熱処理の条件は、加熱温度550℃〜650℃、昇温速度20℃/min以上である、(8)に記載の方法。
(10) Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeである、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(11) Ndが15at%以上および35at%以下である、(10)に記載の方法。
(12) Ndが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下である、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(13) 20±15℃において保磁力が15kOe以上である、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、請求項(7)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14) 略160℃において保磁力が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い磁石を製造する、(11)に記載の方法。
(1) 単磁区粒子径以下の粒子径の粒子で構成される、孤立微細集合組織および/または等方性微細集合組織を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石。
(2) Nd-Fe-B磁石において、Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeである、(1)に記載の磁石。
(3) Ndが15at%以上および35at%以下である、(2)に記載の磁石。
(4) Nd-Fe-B磁石においてNdが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下である、(1)に記載の磁石。
(5) 20±15℃において保磁力が15kOe以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載の磁石。
(6) 略160℃において保磁力が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い、(3)に記載の磁石。
(7) 純三元系Nd-Fe-B合金のインゴットを溶解し、急冷速度6×105K/s〜2×106K/sで急冷して作成される工程を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石の製造方法。
(8) 純三元系Nd-Fe-B合金のインゴットを溶解し、急冷速度2×106K/s以上の急冷によりアモルファス化した後、加熱処理により微結晶化する工程を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石の製造方法。
(9) 該加熱処理の条件は、加熱温度550℃〜650℃、昇温速度20℃/min以上である、(8)に記載の方法。
(10) Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeである、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(11) Ndが15at%以上および35at%以下である、(10)に記載の方法。
(12) Ndが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下である、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、(7)から(9)のいずれかに記載の方法。
(13) 20±15℃において保磁力が15kOe以上である、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、請求項(7)〜(12)のいずれかに記載の方法。
(14) 略160℃において保磁力が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い磁石を製造する、(11)に記載の方法。
本発明により以下の効果がもたらされる。
(1)添加元素を含まない純三元(Nd−Fe−B)合金で室温(略20±15℃)において保磁力が15kOe以上である磁石を作製することで、コストの低減が可能である。
(2)組成の最適化により、高保磁力・高磁化の磁石を作製可能である。
(3)アニーリングすることなく高保磁力の急冷リボン磁石を作製可能である。
(4)略160℃での保磁力がDyを添加した従来のDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い、耐熱性に優れた磁石が得られる。
(5)保磁力低下率がDyを添加した従来のDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも低い、耐熱性に優れた磁石が得られる。
(1)添加元素を含まない純三元(Nd−Fe−B)合金で室温(略20±15℃)において保磁力が15kOe以上である磁石を作製することで、コストの低減が可能である。
(2)組成の最適化により、高保磁力・高磁化の磁石を作製可能である。
(3)アニーリングすることなく高保磁力の急冷リボン磁石を作製可能である。
(4)略160℃での保磁力がDyを添加した従来のDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い、耐熱性に優れた磁石が得られる。
(5)保磁力低下率がDyを添加した従来のDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも低い、耐熱性に優れた磁石が得られる。
純三元系Nd-Fe-B磁石において、図1に示すように単磁区粒子径以下(<100nm)の結晶粒子径を有する結晶粒で構成される、孤立微細集合組織および/または等方性微細集合組織を作製することで、コヒーレントローテーションモデルに基づいた高保磁力化が実現される。
純三元系Nd-Fe-B磁石は、実質的にNd,Fe,及びBの純三元成分からなり、他の添加元素を必要としない。合金材料であるため、微量の不純物が混入することは止むを得ないが、不純物量は少量であるほど好ましい。
単磁区とは結晶粒の内部に磁壁の存在しない一つの磁区のみが存在する状態のことである。単磁区粒子の集合した組織では、各磁区の磁化の変化が磁化の回転の機構によってのみ生じる。単磁区に対して、多磁区とは結晶粒の内部に磁壁が存在し複数の磁区が存在する状態のことである。多磁区粒子の集合した組織では、磁壁の移動による各磁区の磁化の変化も生じる。したがって、多磁区の場合よりも単磁区の場合、磁壁の移動がないので磁化の変化が生じにくく、すなわち保磁力が高くなる。純三元系Nd-Fe-B磁石粒子において、結晶粒子径がおおよそ100nm未満であると、その結晶粒は単磁区となる。
孤立とは、粒界相によって磁区どうしが分離していることである。周囲の磁区の磁化の変化がある場合でも、粒界相の存在によって、その影響を受けにくくなり、結果として保磁力が高まる。純三元系成分の少なくとも一の成分を単磁区粒子の粒界相とすることにより保磁力がさらに高まる。
微細集合組織とは、結晶粒子径100nm未満の微細な単磁区の粒子が集まって構成された組織のことである。
等方性とは、磁化容易軸方向を決めずそのままの状態で着磁し、各単磁区粒子のc軸方向がランダムなものを意味する。また異方性とは、磁化容易軸方向に対し一定方向にて着磁し、各単磁区粒子のc軸方向が揃っているものを意味する。本発明では、異方性のものは前述した孤立状態にすることにより、高保磁力を保つことができる。
本発明において、Nd-Fe-B磁石において、Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeであることが好ましい。Ndが14at%以上では室温(略20±15℃)での保磁力がさらに向上するためである。Nd量が14at%未満では初晶がFe相となるため、凝固組織中に軟磁性成分(Fe)が混入してしまうこと、および粒界相(これにより単磁区粒子が孤立させられる)となるNdリッチ相が生成しないこと、から高保磁力化が達成できていないと考えられる。また磁化とのバランスを考えると(相対的にFe分が減ると磁化が下がる)、Ndは35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeであることが好ましい。
さらに、Nd-Fe-B磁石においてNdが15at%以上であることが好ましい。Ndが15at%以上であることにより、略160℃における保磁力が、一般的なDy含有焼結磁石(例えばDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石)の同温度での保磁力よりも高い磁石が得られる。また、磁石は概して温度が高くなるにつれて保磁力が低下する。ここで、保磁力減少率を、室温での保磁力を基準として、温度上昇に伴う保磁力の減少割合と定義する。Ndが15at%以上であることにより、略160℃までの保磁力減少率が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石のものよりも小さくなる。NdFeB磁石において、TbやDyを添加して磁気特性を向上させることが知られており、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石は、高温(例えば略160℃)での保磁力が高く、保磁力減少率も低いと考えられている。本発明の磁石はそのようなDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも優れた、高温での保磁力および保磁力減少率を有する。
Dy含有Ne−Fe−B系焼結磁石(Dy含有量4〜10wt%)は、材料合金粉末をジェットミル等により微粉砕し、その微粉砕粉末を成形、焼結、熱処理することにより得られる。
上記材料合金粉末は、公知の製造方法によって準備することができる。例えば、材料金属または合金を溶解、鋳造し、合金鋳片を得る。溶解、鋳造は、公知の手段を採用することができ、特に、ストリップキャスティング法は好ましい手段である。得られた合金鋳片は、公知の手段、例えば、水素粉砕などによって粗粉砕し、粗粉砕粉を得ることができる。得られた粗粉砕粉末をジェットミル等により微粉砕する。ジェットミルの粉砕条件は公知の条件を採用することができる。微粉砕後の微粉砕粉末の平均粒径は1μm〜10μm、好ましくは3μm〜6μmである。この微粉砕粉末を成形後、焼結、熱処理する。焼結工程には、公知の焼結磁石の製造方法に用いられる手段を採用することができる。例えば、焼結温度は1000℃〜1180℃、焼結時間は1〜6時間程度が好ましい。また、放電プラズマ焼結、ホットプレスなどの手段を用いることも可能である。これらの手段を用いると、比較的低温で焼結することが可能であり、保磁力向上に寄与するDyが濃縮された濃縮層を、効果的に主相の粒界相として形成することができる。焼結後の焼結体には、所定の熱処理を施す。熱処理条件は、温度400℃〜600℃、時間1〜8時間程度である。
上記材料合金粉末は、公知の製造方法によって準備することができる。例えば、材料金属または合金を溶解、鋳造し、合金鋳片を得る。溶解、鋳造は、公知の手段を採用することができ、特に、ストリップキャスティング法は好ましい手段である。得られた合金鋳片は、公知の手段、例えば、水素粉砕などによって粗粉砕し、粗粉砕粉を得ることができる。得られた粗粉砕粉末をジェットミル等により微粉砕する。ジェットミルの粉砕条件は公知の条件を採用することができる。微粉砕後の微粉砕粉末の平均粒径は1μm〜10μm、好ましくは3μm〜6μmである。この微粉砕粉末を成形後、焼結、熱処理する。焼結工程には、公知の焼結磁石の製造方法に用いられる手段を採用することができる。例えば、焼結温度は1000℃〜1180℃、焼結時間は1〜6時間程度が好ましい。また、放電プラズマ焼結、ホットプレスなどの手段を用いることも可能である。これらの手段を用いると、比較的低温で焼結することが可能であり、保磁力向上に寄与するDyが濃縮された濃縮層を、効果的に主相の粒界相として形成することができる。焼結後の焼結体には、所定の熱処理を施す。熱処理条件は、温度400℃〜600℃、時間1〜8時間程度である。
さらに本発明において、Nd-Fe-B磁石においてNdが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下が好ましい。上記のとおりNdが14at%以上とすることでより室温(略20±15℃)での高い保磁力が得られるが、Ndが14%未満であっても、B量を増加させることで室温(略20±15℃)での保磁力を高めることが可能である。この場合も磁化とのバランスを考慮して、B量は9at%以上および38at%以下が好ましい。
さらに、本発明による磁石は室温(略20±15℃)で15kOe以上の高保磁力を有することができる。磁石の保磁力等をVSMを用いて測定した。VSMとは、試料振動型磁力計(Vibrating Sample Magnetometer)のことであり、均一磁場中においた試料を一定の周波数・振幅で振動させ、試料近辺に配置した検出コイルに誘起される起電力をロックインアンプを用いて検出することにより、試料の磁化特性を測定する装置である。
本発明の別の態様によれば、純三元系のネオジム(Nd)、鉄(Fe)、およびホウ素(B)を含む合金のインゴットを溶解し、溶湯を急冷速度6×105K/s〜2×106K/sで急冷する、純三元系Nd-Fe-B希土類磁石の製造方法も提供される。この方法により、単磁区粒子径以下の粒子径の粒子で構成される、少なくとも等方性微細集合組織を含む、純三元系Nd-Fe-B磁石が得られ、この磁石は前述したとおり高保磁力を有することができる。
磁石の製造方法を具体的に説明する。先ず、合金原料を溶解させて母合金のインゴットを作製する。溶解方式にはアークによる溶解、ヒーターによる溶解、高周波誘導加熱による溶解等がある。前記合金原料は、実質的にNd,Fe,及びBの純三元成分からなる。合金材料であるため、微量の不純物が混入することは止むを得ないが、不純物量は少量であるほど好ましい。
急冷方式は、メルトスピニング、アトマイジング、単ロール法等がある。ここでは単ロール炉を用いて説明をする。前記母合金インゴットを単ロール炉にセットし、高周波誘導加熱で溶融させた後、その溶融している合金を回転するロールに噴射して、ロール上で急冷し、急冷リボンを得る。合金溶湯は、通常不活性ガス、例えばアルゴンや窒素を使用して、噴射ノズルから噴射される。溶湯温度、噴射圧力、噴射ノズル径等は適宜調整される。
前記の急冷法を用いるにあたって、その種類、ロールの材質、ロールの大きさなどについては、特に限定されない。例えば、前記ロールとしては、Crメッキを施した銅製のロールを用いることが可能である。前記ロールの大きさは、製造スケールに応じて決定することが望ましいものである。
急冷速度は6×105K/s〜2×106K/sに制御する。急冷速度がこの範囲より低いと、高い保磁力が得られない。これは、そのような低急冷速度では、ロールに噴射して凝固したリボンのフリー面側に粗大な粒子や柱状晶(>数μm)が見られ、すなわち多磁区粒子が多く生成するためと考えられる。また、急冷速度をこれ以上高くした場合も、保磁力が低下する。これは急冷速度が高すぎると微結晶(<100nm)による単磁区粒子の割合が減少し、アモルファスの割合が増加するためと考えられる。これらの様子は電子顕微鏡(SEMおよび/またはTEM)による組織観察によって確認される。ここで、急冷速度は、単位時間あたりのロールに噴射したリボンからロールへの熱移動量(K/s)である。急冷速度はロールに噴射してできたリボンの厚み、ロールとの接触面積、噴射から凝固までの、リボン(溶湯)の温度および熱容量ならびにロールの回転数、温度および熱容量等から求められる。
急冷速度は、溶湯噴射ノズル径、クリアランス(溶融噴射ノズル〜ロールまでの距離)、噴射圧力、ロール速度、溶湯温度、銅ロールの表面粗さ等によって制御される。発明者らの試験ではロールの回転速度を変化させ、それ以外は一定の条件とした。(図2参照)急冷して得られた磁石をアニーリングしてもよいが、本発明ではアニーリングをしなくとも高い磁気特性の磁石を得ることができる。ただし、アモルファス化したものについては、加熱処理により微結晶化することで保磁力を高めることもできる。加熱処理の条件は、加熱温度550℃〜650℃、昇温速度20℃/min以上であり、好ましい昇温速度の上限は100℃/minである。
本製法で得られるNd-Fe-B磁石において、Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeとすることが好ましい。Ndが14at%以上では室温(略20±15℃)での保磁力がさらに向上するためである。Nd量が14at%未満では初晶がFe相となるため、凝固組織中に軟磁性成分(Fe)が混入してしまうこと、および粒界相(これにより単磁区粒子が孤立させられる)となるNdリッチ相が生成しないこと、から高保磁力化が達成できていないと考えられる。また磁化とのバランスを考えると(相対的にFe分が減ると磁化が下がる)、Ndは35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeであることが好ましい。
さらに、本製法で得られるNd-Fe-B磁石においてNdが15at%以上であることが好ましい。Ndが15at%以上であることにより、略160℃における保磁力が、一般的なDy含有焼結磁石(例えばDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石)の同温度での保磁力よりも高い磁石が得られる。また、磁石は概して温度が高くなるにつれて保磁力が低下する。ここで、保磁力減少率を、室温での保磁力を基準として、温度上昇に伴う保磁力の減少割合と定義する。Ndが15at%以上であることにより、略160℃までの保磁力減少率が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石のものよりも小さくなる。NdFeB磁石において、TbやDyを添加して磁気特性を向上させることが知られており、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石は、高温(例えば略160℃)での保磁力が高く、保磁力減少率も低いと考えられている。本製法で得られる磁石はそのようなDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも優れた、高温での保磁力および保磁力減少率を有する。
さらに本製法で得られるNd-Fe-B磁石において、Ndが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下が好ましい。上記のとおりNdが14at%以上とすることでより室温(略20±15℃)での高い保磁力が得られるが、Ndが14%未満であっても、B量を増加させることで室温(略20±15℃)での保磁力を高めることが可能である。この場合も磁化とのバランスを考慮して、B量は9at%以上および38at%以下が好ましい。
さらに、本製法による磁石は室温(略20±15℃)での15kOe以上の高保磁力を有することができる。
例1:単ロール炉を用いた急冷リボンの作製(組成変化の室温磁気特性への影響確認)
概して以下の手順で試験を行った。
(1)Nd、FeおよびBを秤量し、アーク溶解炉にて合金インゴットを作製した。
(2)合金の組成は、Nd12Fe82B6を出発組成として、Nd量およびB量について増加させた。その様子を図3に示す。
(3)単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、銅ロールに噴射し急冷リボンを作製した。単ロール炉の使用条件は表1に示す。
(4)急冷リボンを回収し、VSMにて磁気特性を評価した。またTEMによる組織観察も行った。
(1)Nd、FeおよびBを秤量し、アーク溶解炉にて合金インゴットを作製した。
(2)合金の組成は、Nd12Fe82B6を出発組成として、Nd量およびB量について増加させた。その様子を図3に示す。
(3)単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、銅ロールに噴射し急冷リボンを作製した。単ロール炉の使用条件は表1に示す。
(4)急冷リボンを回収し、VSMにて磁気特性を評価した。またTEMによる組織観察も行った。
Nd量を変化させた場合の磁気特性評価結果を図4に示す。またNd量と保磁力、飽和磁化の関係について図5に示す。図5より、Nd量が14at%以上混入されると、室温(略20±15℃)において高保磁力化(15kOe以上)することが分かった。
特定の理論と結びつけることは意図しないが、図6に示されるNd−Fe−B状態図から判断すると、Nd量が14at%未満では初晶がFe相となるため、凝固組織中に軟磁性成分(Fe)が混入してしまうこと、および粒界相(これにより単磁区粒子が孤立させられる)となるNdリッチ相が生成しないこと、から室温(略20±15℃)での高保磁力化が達成できていないと考えられる。
B量を変化させた場合の磁気特性評価結果を図7に示す。またB量と保磁力、飽和磁化の関係について図8に示す。図8より、Nd量が14at%以下であっても、B量を増加させると室温(略20±15℃)において高保磁力化(15kOe以上)することが分かった。
TEM観察を、Nd15Fe77B8組成の急冷リボンの組織について行った。観察写真を図9および図10に示す。得られた1次粒子径の平均値は40nmであり、これは単磁区粒子径(<100nm)以下であることが分かった。また図10の高分解TEM像より、粒界相にNdリッチな相が存在し、粒子(単磁区)を孤立させている部分(図10(a))と、粒界相がなく孤立していない部分(図10(b))があることが分かった。これにより図11に示す、高保磁力の組織条件の2つ(孤立且つ等方性、孤立なし且つ等方性)を併せ持った急冷リボンが作製されていることが分かった。
例2:単ロール炉を用いた急冷リボンの作製(急冷速度変化の磁気特性への影響確認)
概して以下の手順で試験を行った。
(1)Nd、FeおよびBを秤量し、アーク溶解炉にて合金インゴット(Nd15Fe77B8)を作製した。
(2)単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、ロール回転速度を種々変化させた銅ロールに噴射し急冷リボンを作製した。単ロール炉の使用条件は表2に示す。
(3)急冷リボンを回収し、VSMにて磁気特性を評価した。またSEMおよびTEMによる組織観察も行った。
(1)Nd、FeおよびBを秤量し、アーク溶解炉にて合金インゴット(Nd15Fe77B8)を作製した。
(2)単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、ロール回転速度を種々変化させた銅ロールに噴射し急冷リボンを作製した。単ロール炉の使用条件は表2に示す。
(3)急冷リボンを回収し、VSMにて磁気特性を評価した。またSEMおよびTEMによる組織観察も行った。
ロール回転速度を変化させた場合の磁気特性評価結果を図12に示す。またロール回転速度と保磁力、飽和磁化の関係について図13に示す。図13より、ロール回転速度(急冷速度)が増加するにつれて、保磁力が増加していくが、急冷速度の大きい高回転領域(2000〜3000rpm)では保磁力がほぼ一定となり、好ましい急冷速度の範囲は2000〜3000rpm(急冷速度6×105K/s〜2×106K/s)であることが分かった。3000rpmを超えると急冷速度が大きすぎて、アモルファスの割合が増加し、単磁区結晶の割合が減少するために、保磁力が低下することがあると考えられる。
なお、ロール回転速度と急冷リボンの厚さの関係を図14に示した。またリボン厚さおよび粉末粒径と冷却速度の関係を図15(出典「Mg基急速凝固合金粉末の作製とその押出材の性質」加藤晃 東北大学博士論文(1994)、p29)に示した。これらの関係により、リボン厚さ、粉末粒径を測定することにより、冷却速度に換算することができる。
SEM観察結果を図16に示す。ロール回転速度500〜1500rpm(急冷速度:2×105K/s)まではフリー面において粒子径が数μmの粗大な粒子や柱状晶が見られる領域が存在し、ロール面側に微結晶組織があることが分かった。図17で、その様子を図解的に表した。これはロール回転速度が遅くなると急冷リボンの厚さが増加し、結果として急冷速度が十分でない領域が生成してしまうためと考えられる。一方で、2000rpm以上(急冷速度6×105K/s)では粗大粒領域が消失し、すべてが微結晶の組織(単磁区組織につながる)で作製可能であることが分かった。ただし回転速度が高すぎると、アモルファス部が増加して、磁気特性を低下させることがある。
TEM観察を、上記微結晶部について行った。そのTEM観察写真を図18に示す。2000rpmで作製した急冷リボン(図18(a))では、すべて結晶が100nm以下、すなわち単磁区粒子径以下であったのに対して、1000rpmで作製した急冷リボンの微結晶部(図18(b))では、100nm以上の粒子径の比較的大きな粒子も存在していることが分かった。しかし両者の微結晶部の粒子径に大きな差は見られないため、保磁力の低下に影響をあたえる因子は柱状晶、粗大粒子(>数μm)の存在であると考えられる。
例3:単ロール炉を用いた急冷リボンの作製(組成変化の高温磁気特性への影響確認)
概して以下の手順で試験を行った。
(1)Nd、FeおよびBを秤量し、アーク溶解炉にて合金インゴットを作製した。
(2)合金の組成は、Nd12Fe82B6を出発組成として、Nd量およびB量について増加させた。その様子を図19に示す。
(3)単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、銅ロールに噴射し急冷リボンを作製した。単ロール炉の使用条件は表3に示す。
(4)急冷リボンを回収し、VSMにて磁気特性を評価し、室温から昇温させたときの保磁力の変化を整理した。さらに、TEMによる組織観察も行った。
(1)Nd、FeおよびBを秤量し、アーク溶解炉にて合金インゴットを作製した。
(2)合金の組成は、Nd12Fe82B6を出発組成として、Nd量およびB量について増加させた。その様子を図19に示す。
(3)単ロール炉にて合金インゴットを高周波で溶解し、銅ロールに噴射し急冷リボンを作製した。単ロール炉の使用条件は表3に示す。
(4)急冷リボンを回収し、VSMにて磁気特性を評価し、室温から昇温させたときの保磁力の変化を整理した。さらに、TEMによる組織観察も行った。
比較用の試料を、以下の手順で用意した。
比較例(3)Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石:
Nd12Fe82B6を出発組成とする合金を、ストリップキャスティング法により作製した。得られた鋳片に粗粉砕を施し、0.5mm以下に整粒した合金粉末を準備した。次に、この合金粉末に対してDyF3粉末をDy量で4.2wt%になるように添加した後、ロッキングミキサーによって均質に混合した。該混合粉をジェットミルにより平均粒径4.5μmに微粉砕し、得られた微粉砕粉末を1.5Tの配向磁界において磁界中成形を行なった後、1020℃で2時間真空中で焼結し、焼結後、500℃で2時間熱処理を行い、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石を得た。
比較例(4)Dyフリー焼結磁石:
DyF3粉末を添加しない以外は、比較例(3)と同様な方法で、DyフリーNe−Fe−B系焼結磁石を得た。
比較例(3)Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石:
Nd12Fe82B6を出発組成とする合金を、ストリップキャスティング法により作製した。得られた鋳片に粗粉砕を施し、0.5mm以下に整粒した合金粉末を準備した。次に、この合金粉末に対してDyF3粉末をDy量で4.2wt%になるように添加した後、ロッキングミキサーによって均質に混合した。該混合粉をジェットミルにより平均粒径4.5μmに微粉砕し、得られた微粉砕粉末を1.5Tの配向磁界において磁界中成形を行なった後、1020℃で2時間真空中で焼結し、焼結後、500℃で2時間熱処理を行い、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石を得た。
比較例(4)Dyフリー焼結磁石:
DyF3粉末を添加しない以外は、比較例(3)と同様な方法で、DyフリーNe−Fe−B系焼結磁石を得た。
図20に各試料の保磁力の温度依存性を示す。比較例(3)のDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石に関して、室温での保磁力は本発明例(1)Nd15Fe70B15、(2)Nd15Fe77B8の磁石より高いものの、160℃になると、その関係は逆転し、Dyを含有しない本発明例(1)、(2)の磁石の方が比較例(3)の一般的なDy含有焼結磁石(例えばDy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石)よりも保磁力が高くなった。また、保磁力減少率(室温での保磁力を基準として、温度上昇に伴う保磁力の減少割合と定義される)について、本発明例(1)では0.35%/℃であり、本発明例(2)では0.39%/℃であるが、比較例(3)は、0.48%/℃であった。つまり、本発明による磁石は、保磁力減少率も小さくなり、耐熱性に優れていることが分かった。
特定の理論と結びつけることは意図しないが、本発明例(1)、(2)を比較した時(1)の方が保磁力が高く、且つ、保磁減少率が低い理由は以下によると考えられる。本発明例(1)と(2)では、Ndは15at%で同等である。一方、(1)は(2)よりもFeの比率が小さく、Bの比率が大きい。このため、粒界相となるNd相及びNd1.1Fe4B4相の体積分率が増加し、Nd2Fe14B相間の孤立性が高まったため、優れた保磁力および保磁減少率が得られたと考えられる。
次に、結晶等の組織について検討する。図21は、Nd12Fe82B6を出発組成として、Nd量を変化させた(A)13at%Nd(B)14at%Nd(C)17at%NdのSEM写真である。また、図22はこれらの試料の粒径をXRDにより算出したものである。図21のSEM像より、結晶粒径は(A):40〜50nm、(B):70〜100nm、(C):30〜50nmであり、Bの組成で粒径が大きいことが確認できた。これは図22に示すXRDから見積もられた粒径と良い対応をしていた。
特定の理論と結びつけることは意図しないが、図23に示されるNd−Fe−B状態図から判断すると、(A)Nd13at%では亜包晶組成(図23参照)であるため、初晶のγ−Feを核としてNd2Fe14B相(主相)が晶出する。このため、α−Feを取り囲んで主相が存在する構造になる(図21A円内において、明るい(白色)箇所がα−Feであり、その周りの暗い(灰色)箇所が主相のNd2Fe14Bである)。また、初晶の微細に分散したγ−Feが主相の核生成を促進し、生成した核は互いにその核の成長を抑制するため結晶(核)の粒径が微細になると考えられる。結晶の粒径が微細なため、高い保磁力が期待されるが、Mr(残留磁化)>0.5Ms(飽和磁化)であり、 α−Fe/主相間、及び、主相間の交換結合が生じていることがわかる(図24)。この事から、保磁力の低い部位が律則するため高い保磁力が発現していないと考えられる。
(B)Nd14at%では初晶が主相(Nd2Fe14B)でNdリッチ相が包晶的に晶出するが、図23からもわかる通り、Ndリッチ相の体積分率が低く、主相の成長を抑制するのに十分ではない。そのため、この組成では結晶の粒径が粗大になっていると考えられる(図22)。結晶の粒径が大きいため、保磁力も低い値にとどまっていると予測される(図24)。
(C)Nd17at%(Nd15at%も)では包晶反応によりNdリッチ相が主相(Nd2Fe14B)の結晶成長を抑制していると考えられる。また、粒界相(Ndリッチ相)により主相間が磁気的に分断され、微細な結晶粒径から期待される高い保磁力が実現されていると考えられる(図24)。
(B)Nd14at%では初晶が主相(Nd2Fe14B)でNdリッチ相が包晶的に晶出するが、図23からもわかる通り、Ndリッチ相の体積分率が低く、主相の成長を抑制するのに十分ではない。そのため、この組成では結晶の粒径が粗大になっていると考えられる(図22)。結晶の粒径が大きいため、保磁力も低い値にとどまっていると予測される(図24)。
(C)Nd17at%(Nd15at%も)では包晶反応によりNdリッチ相が主相(Nd2Fe14B)の結晶成長を抑制していると考えられる。また、粒界相(Ndリッチ相)により主相間が磁気的に分断され、微細な結晶粒径から期待される高い保磁力が実現されていると考えられる(図24)。
Claims (14)
- 単磁区粒子径以下の粒子径の粒子で構成される、孤立微細集合組織および/または等方性微細集合組織を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石。
- Nd-Fe-B磁石において、Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeである、請求項1に記載の磁石。
- Ndが15at%以上および35at%以下である、請求項2に記載の磁石。
- Nd-Fe-B磁石においてNdが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下である、請求項1に記載の磁石。
- 20±15℃において保磁力が15kOe以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の磁石。
- 略160℃において保磁力が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い、請求項3に記載の磁石。
- 純三元系Nd-Fe-B合金のインゴットを溶解し、急冷速度6×105K/s〜2×106K/sで急冷して作成される工程を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石の製造方法。
- 純三元系Nd-Fe-B合金のインゴットを溶解し、急冷速度2×106K/s以上の急冷によりアモルファス化した後、加熱処理により微結晶化する工程を含んでなる、純三元系Nd-Fe-B磁石の製造方法。
- 該加熱処理の条件は、加熱温度550℃〜650℃、昇温速度20℃/min以上である、請求項8に記載の方法。
- Ndが14at%以上35at%以下、Nd:B(原子分率比)が1.5:1〜2.5:1、かつ残部がFeである、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
- Ndが15at%以上でおよび35at%以下ある、請求項10に記載の方法。
- Ndが14at%以下であって、Bが9at%以上および38at%以下である、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、請求項7〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 20±15℃において保磁力が15kOe以上である、純三元系Nd-Fe-B磁石を製造する、請求項7〜12のいずれか1項に記載の方法。
- 略160℃において保磁力が、Dy4.2wt%含有Ne−Fe−B系焼結磁石よりも高い磁石を製造する、請求項11に記載の方法。
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