JP2010007726A - モータ一体型の磁気軸受装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 小型化と、部品点数および組立コストの低減が可能で、固有振動数も高くできるモータ一体型の磁気軸受装置を提供する。
【解決手段】 コンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aが両端に取付けられた主軸13を、転がり軸受15,16と磁気軸受17,17Aを併用して支持し、主軸13に対してモータ28を配置する。転がり軸受15,16はラジアル負荷を支持し、磁気軸受17,17Aはアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持する。磁気軸受を構成する電磁石17を、コンプレッサ翼車6aまたはタービン翼車7aの背面に設けられた強磁性体20に対向するようにスピンドルハウジング14に設ける。
【選択図】 図1

Description

この発明は、圧縮機と膨張機が同一軸に設けられる圧縮膨張タービンユニット等に用いられる磁気軸受装置に関し、特に、転がり軸受と磁気軸受を併用し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するようにしたモータ一体型の磁気軸受装置に関する。
空気サイクル冷凍冷却システムは、冷媒として空気を用いるため、フロンやアンモニアガス等を用いる場合に比べてエネルギー効率が不足するが、環境保護の面では好ましい。また、冷凍倉庫等のように、冷媒空気を直接に吹き込むことができる施設では、庫内ファンやデフロストの省略等によってトータルコストを引下げられる可能性があり、このような用途で空気サイクル冷凍冷却システムが提案されている(例えば特許文献1)。
また、−30℃〜−60℃のディープ・コール領域では、空気冷却の理論効率は、フロンやアンモニアガスと同等以上になることが知られている。ただし、上記空気冷却の理論効率を得ることは、最適に設計された周辺装置があって、始めて成り立つとも述べられている。周辺装置は、圧縮機や膨張タービン等である。
圧縮機,膨張タービンとしては、コンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている(特許文献1)。
なお、プロセスガスを処理するタービン・コンプレッサとしては、主軸の一端にタービン翼車、他端にコンプレッサ翼車を取付け、前記主軸を電磁石の電流で制御するジャーナルおよびスラスト軸受で支承した磁気軸受式タービン・コンプレッサが提案されている(特許文献2)。
また、ガスタービンエンジンにおける提案ではあるが、主軸支持用の転がり軸受に作用するスラスト荷重が軸受寿命の短縮を招くことを回避するため、転がり軸受に作用するスラスト荷重をスラスト磁気軸受により低減することが提案されている(特許文献3)。
特許第2623202号公報 特開平7−91760号公報 特開平8−261237公報
上記のように、空気サイクル冷凍冷却システムとして、ディープ・コール領域で高効率となる空気冷却の理論効率を得るためには、最適に設計された圧縮機や膨張タービンが必要となる。
圧縮機,膨張タービンとしては、上記のようにコンプレッサ翼車および膨張タービン翼車を共通の主軸に取付けたタービンユニットが用いられている。このタービンユニットは、膨張タービンに生じる動力によりコンプレッサ翼車を駆動できることで空気サイクル冷凍機の効率を向上させている。
しかし、実用的な効率を得るためには、各翼車とハウジングとの隙間を微小に保つ必要がある。この隙間の変動は、安定した高速回転の妨げとなり効率の低下を招く。
また、コンプレッサ翼車やタービン翼車に作用する空気により、主軸にスラスト力が作用し、主軸を支持する軸受にスラスト荷重が負荷される。空気サイクル冷凍冷却システムにおけるタービンユニットの主軸の回転速度は、1分間に8万〜10万回転であり、一般的な用途の軸受に比べて非常に高速となる。そのため、上記のようなスラスト荷重は、主軸を支持する軸受の長期耐久性の低下、寿命低下を招き、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットの信頼性を低下させる。このような軸受の長期耐久性の課題を解消しなくては、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットの実用化が難しい。しかし、上記特許文献1に開示の技術は、この高速回転下におけるスラスト荷重の負荷に対する軸受の長期耐久性の低下については解決されるに至っていない。
特許文献2の磁気軸受式タービン・コンプレッサのように、主軸を磁気軸受からなるジャーナル軸受およびスラスト軸受で支承したものでは、ジャーナル軸受にアキシアル方向の規制機能がない。そのため、スラスト軸受の制御の不安定要因等があると、上記翼車とディフューザ間の微小隙間を保って安定した高速回転を行うことが難しい。磁気軸受の場合は、電源停止時における接触の問題もある。
そこで、本発明者等は、上記課題を解決するものとして、図8に示すようなモータ一体型の磁気軸受装置を開発した。このモータ一体型の磁気軸受装置は、主軸53の両端にコンプレッサ46のコンプレッサ翼車46aおよび膨張タービン47のタービン翼車47aを取付けた空気サイクル冷凍冷却用タービンユニットにおいて、主軸53のラジアル負荷を転がり軸受55,56で、アキシアル負荷を電磁石57でそれぞれ支持すると共に、主軸53に同軸に設けたモータ68による駆動力とタービン翼車47aの駆動力でコンプレッサ翼車46aを回転駆動するようにしたものである。アキシアル負荷を支持する電磁石57は、主軸53に垂直かつ同軸に設けられた2つののラスト板53a,53bのうち一方のスラスト板53bに非接触で対向するように配置され、アキシアル方向の力を検出するセンサ58の出力に応じて磁気軸受用コントローラ59で制御される。モータ68は、主軸53に垂直かつ同軸に設けた前記スラスト板53a,53bにモータロータ68aを形成すると共に、このモータロータ68aと軸方向に対向するようにモータステータ68bを配置して構成される。
上記構成のモータ一体型の磁気軸受装置によると、主軸53にかかるスラスト力を電磁石57で支持するため、非接触でトルクの増大を抑えながら、転がり軸受55,56に作用するスラスト力を軽減することができる。その結果、各翼車46a,47aとハウジング46b,47bとの微小隙間を一定に保つことができ、スラスト荷重の負荷に対する転がり軸受55,56の長期耐久性を向上させることができる。また、磁気軸受である電磁石57とモータロータ68aの一体化により、コンパクトな構成とできる。
しかし、上記構成のモータ一体型の磁気軸受装置において、スラスト力を支持する磁気軸受となる電磁石57は、主軸53に設けた強磁性体からなるフランジ状のスラスト板53bに非接触で対向するように配置する必要がある。このため、スラスト板53a,53bが設けられる主軸53において、軸長の増加や曲げ固有振動数の低下が生じ、高速回転を妨げる原因となる。
また、上記したように、主軸53の両端にコンプレッサ翼車46aとタービン翼車47aを取付けた圧縮膨張タービンユニットにおいては、スラスト板53a,53bを主軸53の中央付近に配置することになるため、スピンドルハウジング44を、スラスト板53a,53bの前後に2分割する必要が生じ、部品点数および組立コストを増加させる要因となる。
この発明の目的は、小型化と、部品点数および組立コストの低減が可能で、固有振動数も高くできるモータ一体型の磁気軸受装置を提供することである。
この発明のモータ一体型の磁気軸受装置は、コンプレッサ翼車およびタービン翼車が両端に取付けられた主軸を転がり軸受と磁気軸受を併用して支持し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、前記主軸に対してモータを配したモータ一体型の磁気軸受装置であって、前記磁気軸受を構成する電磁石を、前記コンプレッサ翼車またはタービン翼車の背面に設けられた強磁性体に対向するようにスピンドルハウジングに設けたことを特徴とする。
この構成によると、転がり軸受と磁気軸受を併用し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持するものであるため、アキシアル方向の精度の良い支持が行なえ、また転がり軸受の長期耐久性を確保できる。
特に、磁気軸受となる電磁石の磁石ターゲットとして、主軸にスラスト板を設けるのではなく、コンプレッサ翼車またはタービン翼車の背面に設けられた強磁性体に対向するように電磁石をスピンドルハウジングに設けているため、主軸の軸長を短くでき、モータ一体型の磁気軸受装置全体の小型化が可能となる。また、主軸にスラスト板を設けないので、部品点数および組立コストの低減が可能で、固有振動数も高くでき主軸を高速回転させることができる。
この発明において、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に強磁性体を設け、この強磁性体に対向するように前記スピンドルハウジングに永久磁石を設けて磁気吸引力を発生させても良い。
この発明において、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に永久磁石を設け、この永久磁石に対向するように前記スピンドルハウジングにも永久磁石を設けても良い。
この発明において、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に永久磁石を設け、この永久磁石に対向するように前記スピンドルハウジングに強磁性体を設けて磁気吸引力を発生させても良い。
この発明において、前記モータは、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に設けたモータロータと、このモータロータに対向するように前記スピンドルハウジングに設けたモータコイルとでなるアキシアルギャップ型モータであっても良い。
この発明において、前記モータロータが永久磁石からなるものであっても良い。
この発明において、前記永久磁石による磁気吸引力が、前記コンプレッサ翼車とタービン翼車とで発生する作動流体の差圧によるアシアル力をキャンセルする方向に作用するものとしても良い。
この発明において、前記モータ一体型の磁気軸受装置を備えた圧縮膨張タービンシステムが、流入空気に対して、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、前記タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張を順次行う空気サイクル冷凍冷却システムに適用されるものであっても良い。
このモータ一体型の磁気軸受装置を備えた圧縮膨張タービンシステムを、このような空気サイクル冷凍冷却システムに適用した場合、圧縮膨張タービンシステムにおいて、主軸の安定した高速回転が得られ、かつ軸受の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることから、圧縮膨張タービンシステムの全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としても信頼性が向上する。また、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっている圧縮膨張タービンシステムの主軸軸受の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上することから、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
この発明のモータ一体型の磁気軸受装置は、コンプレッサ翼車およびタービン翼車が両端に取付けられた主軸を転がり軸受と磁気軸受を併用して支持し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、前記主軸に対してモータを配したモータ一体型の磁気軸受装置であって、前記磁気軸受を構成する電磁石を、前記コンプレッサ翼車またはタービン翼車の背面に設けられた強磁性体に対向するようにスピンドルハウジングに設けたため、小型化と、部品点数および組立コストの低減が可能で、固有振動数も高くできる。
この発明の第1の実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1は、この実施形態のモータ一体型の磁気軸受装置を組み込んだタービンユニット5の断面図を示す。このタービンユニット5は圧縮膨張タービンシステムを構成するものであり、コンプレッサ6および膨張タービン7を有し、コンプレッサ6のコンプレッサ翼車6aおよび膨張タービン7のタービン翼車7aが主軸13の両端にそれぞれ嵌合して固定されている。
図1において、コンプレッサ6は、コンプレッサ翼車6aと隙間d1を介して対向するコンプレッサハウジング6bを有し、中心部の吸込口6cから軸方向に吸入した空気を、コンプレッサ翼車6aで圧縮し、外周部の出口(図示せず)から矢印6dで示すように排出する。
膨張タービン7は、タービン翼車7aと微小の隙間d2を介して対向するタービンハウジング7bを有し、外周部のノズル12から矢印7cで示すように吸い込んだ空気を、タービン翼車7aで断熱膨張させ、中心部の排出口7dから軸方向に排出する。
このタービンユニット5におけるモータ一体型の磁気軸受装置は、主軸13をラジアル方向に対し複数の転がり軸受15,16で支持し、主軸13にかかるアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を、それぞれ磁気軸受となる電磁石17と他の磁気軸受17Aとにより支持すると共に、主軸13を回転駆動するモータ28を設けたものである。このタービンユニット5は、主軸13に作用するスラスト力を検出する力検出センサユニット18と、この力検出センサユニット18の出力に応じて前記電磁石17による支持力を制御する磁気軸受用コントローラ19と、電磁石17とは独立に前記モータ28を制御するモータ用コントローラ29とを有している。
タービン翼車7aの背面には強磁性体22が設けられている。磁気軸受である電磁石17は、前記タービン翼車7aの背面の強磁性体22を磁石ターゲットとして、これに非接触で対向するようにスピンドルハウジング14に設けられている。また、他の磁気軸受17Aは、コンプレッサ翼車6aの背面に設けられた強磁性体20を磁石ターゲットとして、これに非接触で対向するように永久磁石21をスピンドルハウジング14に設けてなり、強磁性体20と永久磁石21との間に軸方向への磁気吸引力を発生させる。この場合の永久磁石21は、その磁気吸引力が、コンプレッサ翼車6aとタービン翼車7aとで発生する空気圧差によるアキシアル力をキャンセルする側に作用するように設置することが望ましい。
モータ28は、主軸13の軸方向中間部に配置される。このモータ28は、主軸13に設けられたモータロータ28aと、スピンドルハウジング14に設置されて前記モータロータ28aに対し径方向に対向するモータステータ28bとでなる。このモータ28は、前記モータロータ28aとモータステータ28b間に作用する磁気力ないしはローレンツ力により、主軸13を回転させる。
主軸13を支持する軸受15,16は転がり軸受であって、アキシアル方向位置の規制機能を有するものであり、例えば深溝玉軸受やアンギュラ玉軸受が用いられる。深溝玉軸受の場合、両方向のスラスト支持機能を有し、内外輪のアキシアル方向位置を中立位置に戻す作用を持つ。これら2個の転がり軸受15,16は、それぞれスピンドルハウジング14におけるコンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aの近傍に配置されている。
主軸13は、中間部の大径部13aと、両端部の小径部13bとを有する段付き軸とされている。両側の軸受15,16は、その内輪15a,16aが小径部13bに圧入状態に嵌合し、片方の幅面が大径部13aと小径部13b間の段差面に係合する。
前記力検出センサユニット18は、タービン翼車7a側の転がり軸受16における静止側に設けられている。この力検出センサユニット18は、転がり軸受16の外輪16bの両端面を挟み込んだ一対のリング状のセンサターゲット41,42と、これら各センサターゲット41,42を支持する一対のリング状の板ばね43,44と、センサターゲット41,42における軸受対面側の各片面に対向するようにスピンドルハウジング14における軸受ハウジング14bに設けられたギャップセンサ45とからなる。スピンドルハウジング14は、転がり軸受16の周囲に位置して転がり軸受16の外輪16bを支持する前記軸受ハウジング14bと、この軸受ハウジング14bに結合されたスピンドルハウジング本体14aとでなる。ギャップセンサ45は、センサターゲット41,42に対するギャップを検出するセンサである。転がり軸受16の外輪16bは、軸受ハウジング14bの内径面に軸方向に移動自在に支持される。
このように構成された力検出センサユニット18では、主軸13に作用するスラスト力に応じて変化するギャップセンサ45とセンサターゲット41,42とのギャップを、ギャップセンサ45で検出し、その検出値を磁気軸受用コントローラ19でスラスト力に換算する。
上記タービンユニット5におけるモータ一体型の磁気軸受装置の力学モデルは簡単なバネ系で構成することができる。すなわち、このバネ系は、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネと、磁気軸受17,17Aとモータ28で形成される合成バネとが並列となった構成である。このバネ系において、軸受15,16とこれら軸受の支持系とで形成される合成バネは、変位した方向と逆の方向に変位量に比例して作用する剛性となるのに対し、磁気軸受17,17Aとモータ28とで形成される合成バネは、変位した方向に変位量に比例して作用する負の剛性となる。
このため、上記した両合成バネの剛性の大小関係を、
軸受による合成バネの剛性値<磁気軸受・モータによる合成バネの負の剛性値…(1)とした場合、機械システムの位相は180°遅れとなり不安定な系となることから、電磁石17を制御する磁気軸受用コントローラ19において、予め位相補償回路を付加する必要が生じ、コントローラ19の構成が複雑なものになる。
そこで、この実施形態のモータ一体型の磁気軸受装置では、上記した両合成バネの剛性の大小関係を、
軸受による合成バネの剛性値>磁気軸受・モータによる合成バネの負の剛性値…(2)としている。
その結果、制御帯域において、機械システムの位相が180°遅れとなることを防止できるので、磁気軸受用コントローラ19の制御対象を安定なものとでき、コントローラ19の回路構成を図2のように比例もしくは比例積分を用いた簡単なものに構成できる。
ブロック図で示す図2の磁気軸受用コントローラ19では、力検出センサユニット18の検出出力P1,P2をセンサ出力演算回路30で加減算し、その演算結果を比較器31で基準値設定手段32の基準値と比較して偏差を演算し、さらに演算した偏差をPI補償回路(もしくはP補償回路)33によりタービンユニット5に応じて適宜設定される比例積分(もしくは比例)処理を行うことで、電磁石17の制御信号を演算するようにしている。PI補償回路(もしくはP補償回路)33の出力は、電磁石17を駆動するパワー回路34に入力される。
同じくブロック図で示す図3のモータ用コントローラ29では、回転同期指令信号を基に、モータロータ28aの回転角をフィードバック信号として位相調整回路38でモータ駆動電流の位相調整が行われ、その調整結果に応じたモータ駆動電流をモータ駆動回路39からモータステータ28bに供給することによって、定回転制御が行われる。前記回転同期指令信号は、モータロータ28aに設けられた回転角度検出センサ(図示せず)の出力に応じて演算される。
この構成のタービンユニット5は、図5や図6に示す例えば空気サイクル冷凍冷却システムに使用される。
このような使用例において、このタービンユニット5は、コンプレッサ翼車6aおよびタービン翼車7aが主軸13の両端に嵌合し、モータ28の動力とタービン翼車7aで発生した動力のどちらか一方または両方によりコンプレッサ翼車6aを駆動するものとしている。このため、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13の安定した高速回転が得られ、かつ軸受15,16の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られる。
タービンユニット5の圧縮,膨張の効率を確保するためには、各翼車6a,7aとハウジング6b,7bとの隙間d1,d2を微小に保つ必要がある。例えば、このタービンユニット5を空気サイクル冷凍冷却システムに適用する場合には、この効率確保が重要となる。これに対して、主軸13を転がり形式の軸受15,16により支持するため、転がり軸受の持つアキシアル方向位置の規制機能により、主軸13のアキシアル方向位置がある程度規制され、各翼車6a,7aとハウジング6b,7bとの隙間d1,d2を一定に保つことができる。
しかし、タービンユニット5の主軸13には、各翼車6a,7aに作用する空気の圧力でスラスト力がかかる。また、空気冷却システムで使用するタービンユニット5では、1分間に例えば8万〜10万回転程度の非常に高速の回転となる。そのため、主軸13を回転支持する転がり軸受15,16に上記スラスト力が作用すると、軸受15,16の長期耐久性が低下する。
この実施形態は、上記スラスト力を磁気軸受となる電磁石17と他の磁気軸受17Aとで支持するため、非接触でトルクの増大を抑えながら、主軸13の支持用の転がり軸受15,16に作用するスラスト力を軽減することができる。この場合に、主軸13に作用するスラスト力を検出する力検出センサユニット18と、この力検出センサユニット18の出力に応じて前記電磁石17による支持力を制御する磁気軸受用コントローラ19とを設けたため、転がり軸受15,16を、その軸受仕様に応じてスラスト力に対し最適な状態で使用することができる。
特に、磁気軸受となる電磁石17の磁石ターゲットとして、主軸13にスラスト板を設けるのではなく、タービン翼車7aの背面に強磁性体22を設け、この強磁性体22を磁石ターゲットとしてこれに対向するように電磁石17をスピンドルハウジング14に設けているため、主軸53の軸長を短くでき、モータ一体型の磁気軸受装置全体の小型化が可能となる。また、主軸13にスラスト板を設けないので、部品点数および組立コストの低減が可能で、固有振動数も高くでき主軸13を高速回転させることができる。
なお、この実施形態では、タービン翼車7aの背面に、磁気軸受となる電磁石17の磁石ターゲットである強磁性体22を設けた場合を示したが、この強磁性体22をコンプレッサ翼車6aの背面に設け、タービン翼車6aの背面に他の磁気軸受17Aの強磁性体20を設けても良い。
また、他の磁気軸受17Aとして、図4(A)に示すように、コンプレッサ翼車6aの背面に永久磁石21を設け、この永久磁石21に対向するように別の永久磁石21Aをスピンドルハウジング14に設けて、これら永久磁石21,21Aの間で磁気吸引力を発生させるようにしても良い。
さらには、他の磁気軸受17Aとして、図4(B)に示すように、コンプレッサ翼車6aの背面に永久磁石21を設け、この永久磁石21に対向するように強磁性体20をスピンドルハウジング14に設けて、これら永久磁石21と強磁性体20との間で磁気吸引力を発生させるようにしても良い。
図5は、図1に示すタービンユニット5を用いた空気サイクル冷凍冷却システムの一例の全体の構成を示す。この空気サイクル冷凍冷却システムは、冷凍倉庫等の被冷却空間4の空気を直接に冷媒として冷却するシステムであり、被冷却空間4にそれぞれ開口した空気の取入口1aから排出口1bに至る空気循環経路1を有している。この空気循環経路1に、空気サイクル冷凍冷却用タービンユニット5のコンプレッサ6、放熱用熱交換器2、熱回収用熱交換器3、および前記タービンユニット5の膨張タービン7が順に設けられている。
タービンユニット5のコンプレッサ6は、被冷却空間4からの戻り空気であって前記熱回収用熱交換器3を経て流入する空気を圧縮する。放熱用熱交換器2は、前記コンプレッサ6で圧縮されて高圧・高温となった空気が流入する高温流体流路1dと、外部冷媒である冷却空気が流入する低温流体流路8との間で熱交換を行なって、コンプレッサ6により圧縮された空気を1次冷却する。熱回収用熱交換器3は、前記放熱用熱交換器2と膨張タービン7の間の高圧・高温となった空気が流入する高温流体流路1eと、被冷却空間4とコンプレッサ6の間の冷却空気が流入する低温流体流路1cとの間で熱交換を行なって、膨張タービン7に入る前の圧縮空気を2次冷却する。タービンユニット5の膨張タービン7は、前記熱回収用熱交換器3で2次冷却された圧縮空気を断熱膨張させることで、さらに冷却して被冷却空間4に供給する。
この空気サイクル冷凍冷却システムは、被冷却空間4を0℃〜−60℃程度に保つシステムであり、被冷却空間4から空気循環経路1の空気取入口1aには圧力0.1Mpaで0℃〜−60℃程度の空気が流入する。なお、以下に示す温度および圧力の数値は、一応の目安となる一例である。空気取入口1aに流入した空気は、熱回収用熱交換器3での熱交換により空気循環経路1中の後段の空気冷却に使用され、30℃まで昇温する。この昇温した空気は圧力0.1Mpaのままタービンユニット5のコンプレッサ6に流入して、ここで圧力0.18Mpaに圧縮され、その圧縮により110℃まで昇温する。この圧縮空気は、放熱用熱交換器2により40℃に1次冷却される。
放熱用熱交換器2で1次冷却された40℃の圧縮空気は、熱回収用熱交換器3でさらに−20℃まで2次冷却される。圧力はコンプレッサ6から排出されたときの0.18Mpaに維持される。
熱回収用熱交換器3で−20℃まで冷却された空気は、タービンユニット5の膨張タービン7により断熱膨張され、−50℃まで冷却されて空気排出口1bから被冷却空間4に排出される。この空気サイクル冷凍冷却システムは、このような冷凍サイクルを行う。
この空気サイクル冷凍冷却システムでは、タービンユニット5において、各翼車6a,7aの適切な隙間d1,d2を保って主軸13の安定した高速回転が得られ、かつ軸受15,16の長期耐久性の向上、寿命の向上が得られることで、軸受15,16の長期耐久性が向上することから、タービンユニット5の全体として、しいては空気サイクル冷凍冷却システムの全体としての信頼性が向上する。このように、空気サイクル冷凍冷却システムのネックとなっているタービンユニット5の主軸軸受15,16の安定した高速回転、長期耐久性、信頼性が向上するため、空気サイクル冷凍冷却システムの実用化が可能となる。
図6は、図1に示すタービンユニット5を用いた空気サイクル冷凍冷却システムの他の例の全体の構成を示す。この空気サイクル冷凍冷却システムは、図5の空気サイクル冷凍冷却システムにおいて、空気循環経路1におけるタービンユニット5のコンプレッサ6の前段に、予圧縮手段となるの第2のコンプレッサ9と、第2の放熱用熱交換器10とが、これらの順に設けられている。第2のコンプレッサ9はブロア等からなり、動力部9aにより駆動される。第2の放熱用熱交換器10は、前記第2のコンプレッサ9で圧縮されて高圧・高温(0.1Mpa,70℃)となった空気が流入する高温流体流路1fと、外部冷媒である冷却空気が流入する低温流体流路11との間で熱交換を行なって、第2のコンプレッサ9により圧縮された空気を冷却(0.14Mpa,40℃)する。その他の構成は、図5の空気サイクル冷凍冷却システムの場合と同様である。
図7は、この発明の他の実施形態を示す。この実施形態では、図1に示すタービンユニット5を構成するモータ一体型の磁気軸受装置において、主軸13の中間位置に設けていたモータ28を、コンプレッサ翼車6aつまり磁気軸受となる電磁石17が設けられない側の翼車の背面に設けたモータロータ28Aaと、このモータロータ28Aaと軸方向に対向するようにスピンドルハウジグ14に設けたモータステータ28Abとでなるアキシアルギャップ型モータ28Aに置き換えている。この場合、磁気軸受である電磁石17が支持するアキシアル力には、前記アキシアルギャップ型モータ28Aで発生する磁気吸引力も含まれる。このモータ28Aの設置においては、モータロータ28Aaとモータステータ28Abとの間に発生する磁気吸引力が、コンプレッサ翼車6aとタービン翼車7aとで発生する空気圧差によるアキシアル力をキャンセルする側に作用するように設置することが望ましい。このアキシアル型モータ28AがDCブラシレス型である場合には、前記モータロータ28Aaとして永久磁石が用いられる。その他の構成は図1の実施形態の場合と同様である。
この発明の一実施形態にかかるモータ一体型の磁気軸受装置が組み込まれたタービンユニットの断面図である。 モータ一体型の磁気軸受装置に用いられる磁気軸受用コントローラの一例を示すブロック図である。 モータ一体型の磁気軸受装置に用いられるモータ用コントローラの一例を示すブロック図である。 (A)はモータ一体型の磁気軸受装置における磁気軸受の他の構成例の断面図、(B)は同磁気軸受のさらに他の構成例の断面図である。 図1のタービンユニットを適用した空気サイクル冷凍冷却システムの一例の構成図である。 図1のタービンユニットを適用した空気サイクル冷凍冷却システムの他の例の構成図である。 この発明の他の実施形態にかかるモータ一体型の磁気軸受装置が組み込まれたタービンユニットの断面図である。 従来例の断面図である。
符号の説明
2…放熱用熱交換器
3…熱回収用熱交換器
5…タービンユニット
6…コンプレッサ
6a…コンプレッサ翼車
7…膨張タービン
7a…タービン翼車
9…第2のコンプレッサ(予圧縮手段)
13…主軸
13a,13b…スラスト板
14…スピンドルハウジング
15,16…転がり軸受
17…電磁石(磁気軸受)
17A:磁気軸受
20…強磁性体
21,21A…永久磁石
28,28A…モータ
28a,28Aa…モータロータ
28b,28Ab…モータステータ

Claims (8)

  1. コンプレッサ翼車およびタービン翼車が両端に取付けられた主軸を転がり軸受と磁気軸受を併用して支持し、転がり軸受がラジアル負荷を支持し、磁気軸受がアキシアル負荷と軸受予圧のどちらか一方または両方を支持し、前記主軸に対してモータを配したモータ一体型の磁気軸受装置であって、
    前記磁気軸受を構成する電磁石を、前記コンプレッサ翼車またはタービン翼車の背面に設けられた強磁性体に対向するようにスピンドルハウジングに設けたことを特徴とするモータ一体型の磁気軸受装置。
  2. 請求項1において、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に強磁性体を設け、この強磁性体に対向するように前記スピンドルハウジングに永久磁石を設けて磁気吸引力を発生させたモータ一体型の磁気軸受装置。
  3. 請求項1において、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に永久磁石を設け、この永久磁石に対向するように前記スピンドルハウジングにも永久磁石を設けて磁気吸引力を発生させたモータ一体型の磁気軸受装置。
  4. 請求項1において、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に永久磁石を設け、この永久磁石に対向するように前記スピンドルハウジングに強磁性体を設けて磁気吸引力を発生させたモータ一体型の磁気軸受装置。
  5. 請求項1において、前記モータは、前記コンプレッサ翼車およびタービン翼車のうち、前記電磁石が設けられた翼車とは異なる翼車の背面に設けたモータロータと、このモータロータに対向するように前記スピンドルハウジングに設けたモータコイルとでなるアキシアルギャップ型モータであるモータ一体型の磁気軸受装置。
  6. 請求項5において、前記モータロータが永久磁石からなるモータ一体型の磁気軸受装置。
  7. 請求項2ないし請求項4、および請求項6のいずれか1項において、前記永久磁石による磁気吸引力が、前記コンプレッサ翼車とタービン翼車とで発生する作動流体の差圧によるアキシアル力をキャンセルする方向に作用するものとしたモータ一体型の磁気軸受装置。
  8. 請求項1ないし請求項7のいずれか1項において、前記モータ一体型の磁気軸受装置を備えた圧縮膨張タービンシステムが、流入空気に対して、タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張、もしくは予圧縮手段による圧縮、前記タービンユニットのコンプレッサによる圧縮、熱交換器による冷却、前記タービンユニットの膨張タービンによる断熱膨張を順次行う空気サイクル冷凍冷却システムに適用されるものであるモータ一体型の磁気軸受装置。
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