JP2009538449A - エタンデュ値が大きいディジタル映写システム - Google Patents

エタンデュ値が大きいディジタル映写システム Download PDF

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Abstract

本願で提案するディジタル映写機は、多色偏光を発生させる照明装置と、その光路上でその多色偏光から略テレセントリックな多色偏光ビームを発生させるレンズ素子と、その多色偏光ビームを複数本のテレセントリックな成分色光ビームに分割する色成分分離器と、それらの成分色光ビームを変調して複数本の変調済成分色光ビームを発生させる複数個の透光性空間光変調器と、それらの変調済成分色光ビームを共通光軸沿いに再結合して変調済多色光ビームを発生させる色成分結合器と、その変調済多色光ビームを表示画面に向ける投射レンズと、を備える。各透光性空間光変調器のエタンデュ値は、照明装置のエタンデュ値に対して15%以内の差に止め、或いは照明装置のエタンデュ値より大きな値にする。

Description

本発明は電子映写、特に複数枚の透光性光変調パネルを用いてフルカラー投射像を発生させる電子映写機に関する。
ディジタルシネマや類似した電子表示方式の普及に伴い、電子映写機の開発に多大な関心が集まりつつある。既存の劇場用フィルム映写機をディジタル映写機で置き換えるには高水準の性能、即ち2048×1080ピクセル以上の高解像度、広い色域、5000ルーメン以上の光束(輝度)、並びに1500:1超のフレームシーケンシャルコントラスト比を達成しなければならない。
他方、液晶デバイスは種々の分野で表示デバイスとして広く活用されている(LCD)。その用途は、モノクロキャラクタディスプレイからラップトップコンピュータ用ディスプレイ、更には大型フルカラーディスプレイまで拡がっている。液晶デバイスは、周知の通り、入射光の偏向状態をピクセル単位で選択的に変調し、それらピクセルのアレイとして像を発生させるデバイスであり、そのたゆみなき改良によって低価格化、歩留まり及び信頼性の向上、並びに省電力化がとみに進んでいる。更には、その画像特性例えば解像度、応答速度及び色特性も、順調に改良されている。
こうした多ピクセル型液晶デバイスとしては様々な種類のものが知られているが、その基本構造は次の二構造しかない。まず、第1の基本構造はマイクロディスプレイ構造である。これは、半導体ウェハへの集積回路デバイス形成に使用されるものと類似した高密度マイクロリソグラフィ技術によって、ピクセル制御機構を形成した構造である。この構造を採る液晶デバイス即ちマイクロディスプレイデバイスには、LCOS(liquid crystal on silicon)方式の液晶デバイスやHTPS(high temperature polysilicon)を用いる透光性液晶デバイスがある。これらのデバイスでは、そのピクセル寸法が50μm未満、通常は8〜20μmのオーダになる。次に、第2の基本構造は直視型液晶パネル構造である。この構造を採るデバイスには、アモルファスシリコン(ガラス)等の透明基板上にTFT(薄膜トランジスタ)等からなるピクセル制御機構を形成した直視型TFT液晶パネルがある。このデバイスではピクセル寸法が可視寸法例えば約50μmになる。
第1の基本構造を採る液晶デバイスのなかでは、その小型化が容易なLCOSデバイスが一歩ぬきんでている。即ち、光変調用の液晶素材をシリコン回路支持基板上に封止した空間光変調器を、マイクロリソグラフィ技術で超高密度形成できるという長所がある。LCOSデバイスは、基本的には、液晶形成技術にCMOS(complementary metal-oxide-semiconductor)製造プロセスを組み合わせたプロセスで製造できる。
LCOSデバイスには、高画質ディジタル映写機用空間光変調器として優れた点がある。例えば、最大約1.7インチ対角という扱いやすい寸法のデバイスであり、ピクセル間遊休部分が狭く、製造歩留まりも高い(1インチ=約0.025m)。LCOS技術で製造した液晶チップなら、例えば1平方インチ未満の画像発生領域で数百万個ものピクセルからなる像を発生させることができる。また、LCOSデバイスなら、割合にありきたりなレベルのシリコンエッチング技術でも、十分に高応答速度且つ高解像度なものを高速生産することができる。そのため、LCOSデバイスは、例えば背面投射型テレビジョン装置やビジネスユース映写機といった装置で、空間光変調器として用いられている。
図1Aに、従来のLCOSデバイス利用電子映写機10の構成を、やや簡略化したブロック図により示す。図中、その参照符号にr,g,bの添え字が付されている部材は順に赤色,緑色,青色の変調済光ビームを発生させるための光学部品であり、どの色の光路上でも同様の光学部品が使用されている。例えば赤色光路上では、まず、赤色光源20rから出射された無変調赤色光が照度むら補正用のむら補正器(ユニフォマイザ)22rによって補正される。偏向ビームスプリッタ24rは、その無変調赤色光中の所定偏向成分を空間光変調器30rに送る。この変調器30rは、入射してくるその赤色偏光ビームを部位選択的に変調する。変調器30rからの変調出力は、一群のピクセルからなるフルカラー画像中の赤色成分を表している。この変調済赤色光ビームは光軸Or沿いにスプリッタ24rを通過してダイクロイック結合器26、例えばX−cube(商標)やPhilips(登録商標)プリズムに到達する。この結合器26は、対応する光軸Or,Og,Obに沿って到来する赤、緑、青各色の変調済光ビームを互いに結合させて変調済多色光ビームを発生させる。投射レンズ32は、この変調済多色光ビームを共通光軸Oに沿って表示画面40例えば投射スクリーン上に投射する。また、緑色光路や青色光路もこれと同様の構成である。緑色光源20gで発生した無変調緑色光ビームはむら補正器22gでの補正後に偏向ビームスプリッタ24gを介して空間光変調器30gに送られる。変調器30gで発生した変調済緑色光ビームは光軸Og沿いに結合器26に達する。同様に、青色光源20bで発生した無変調青色光ビームはむら補正器22bでの補正後に偏向ビームスプリッタ24bを介し空間光変調器30bに送られる。変調器30bで発生した変調済青色光ビームは光軸Ob沿いに結合器26に達する。
なお、図1Aに示した映写機10と同じくLCOSデバイスを空間光変調器として使用する電子映写機は、特許文献1(発明者:Shimomura et al.)、特許文献2(発明者:Hattori et al.)、特許文献3(発明者:Ueda)、特許文献4(発明者:Maki et al.)特許文献5(発明者:Oikawa et al.)、特許文献6(発明者:Sampsell et al.)、特許文献7(発明者:Konno et al.)等にも記載されている。
また、LCOS型液晶空間光変調器と同程度のデバイス寸法を有する空間光変調器としては、透光性液晶を利用したマイクロディスプレイデバイスがある。その一例といえるのは過日セイコーエプソン株式会社が発表したHTPSデバイスである。このデバイスは、解像度が2048×1080ピクセルで対角寸法が1.6インチのデバイスであり、水晶ウェハ上にリソグラフィエッチングで形成されている。その形成手順は従前のLCOSデバイス形成手順と同様である。
次に、第2の基本構造を採る液晶デバイスとしては、液晶層を2枚の透明層例えばガラスシートで挟み込んだ液晶デバイス、即ち直視型液晶パネルと通称されラップトップコンピュータや大型表示装置の分野で広く用いられているデバイスがある。この種のデバイスは、パネル本体の他に、冷陰極蛍光管、LED(発光ダイオード)等を光源として用いるバックライトアセンブリ、並びに一群の光学部品及び光学膜を備えている。光学部品や光学膜としては、パネル本体に入射する光のむら、偏向状態、角度分布等を改質するものが使用される。TFT技術のたゆみなき進歩によって直視型液晶パネルの性能向上も進み、個々のガラス基板面に形成できるトランジスタの個数及び密度が飛躍的に増大向上したほか、薄くて応答時間が短い液晶層を形成できる新種の液晶素材が開発されたため、直視型液晶パネルの解像度や応答速度は高まっている。即ち、より大型でより応答速度、解像度及び発色性能が高い直視型液晶パネルが生み出され、ディスプレイデバイスとして広く普及しつつある。ただ、その開発の狙いは主にデスクトップディスプレイや家庭用テレビジョン装置の性能向上に置かれている。
前掲の各文献にも記されている通り、劇場向け映写機の開発では第1の基本構造を採るLCOS型液晶空間光変調器に注目及び努力が集中しており、第1の基本構造を採る直視型TFT液晶パネルにはさほど注意や努力が払われていない。これにはかなり自明な理由が多数ある。例えば、映写機の小型化には使用部品の小型化が必要だ、という観点がある。この観点からは、LCOSデバイス、DMD(digital micromirror device)等といったマイクロディスプレイデバイスを小型空間光変調器として採用することが、必須になってくる。例えばSMPTE(Society of Motion Picture and Television Engineers)でまとめたディジタルシネマ規格によれば、大型映写スクリーン上への映写に当たっては2048×1080ピクセル、4096×2160ピクセル又はそれ以上での高解像度表示を行わねばならない。高度にコンパクトなピクセル配置及び8〜20μm程度の小さなピクセル寸法を有するLCOSデバイスならば、それを1個使用するだけで、大型映写スクリーン上にこの規格に則った解像度で画像を映写することができる。また、直視型液晶パネルではなくLCOSデバイスに関心が寄せられるのはなぜか、という点では、後者の方が現状では性能的に優れているという理由がある。例えばその応答時間が4msec未満と短いこと、色域が広いこと、コントラスト比が2000:1を上回ること等である。なかでも反射性LCOSデバイスは、放熱器付なら照明光のエネルギ密度が多少高くても使用でき、70%超のNA(開口率)を実現でき、また原則として色フィルタアレイやバックライトアセンブリも必要ない。
更に、映写機開発の労力をますます小型空間光変調器の開発に向けさせている事情として、置き換え対象たるフィルムとの寸法相性がある。即ち、LCOS(又はDMD)型液晶空間光変調器上に形成される画像発生領域のサイズが、映写用フィルムプリント上の映写単位たる画像フレームのサイズに近いという事情である。映写機用光学系の設計を若干でも容易にするのに、例えば既存のフィルム式映写機用光学系からの設計変更という手段が使えるかもしれない。ただ、LCOS(又はDMD)型液晶空間光変調器に対するこうした期待は、画像発生部品はより小さい方がよい、という一部技術者の思いこみと相俟って生じているものである。即ち、開発者自身の思いこみがありきたりな根拠や需要と軌を一にしているため開発者達の間に臆断が生じ、小型なLCOS(又はDMD)型液晶空間光変調器が高画質ディジタル映写用画像発生部品として最適であるかの如く思われている。
また、ウェハ利用型のデバイス構造を採るため小型化及び応答速度向上が可能であるとはいえ、LCOS(又はDMD)型液晶空間光変調器には、大画面映写機での使用を妨げる本質的な問題点も幾つかある。特に問題なのはその輝度及び効率が低いことである。画像技術の分野で熟練を積まれた方々(いわゆる当業者)には周知の通り、およそどのような光学系でも幾何光学的条件に拘束されるものであり、またそうした条件の一つとしてはエタンデュ値乃至ラグランジュ不変量によって記述される条件がある。エタンデュ値とは光学系内の所与平面上での開口寸法を許容立体角に乗じたものであり、整合対称光学系ではこの積はラグランジュ不変量と同じ値になる。不整合光学系や非対称光学系ではこの積に拡がりがでるので、エタンデュ値としては、その光学系を光が透過できる最小値を使用する。この点については非特許文献1を参照されたい。
エタンデュ値やその代替量たるラグランジュ不変量は、ある直感的に明らかな原理についての数値的指標になる。その原理とは、ある寸法の開口を通過しうる光の量はその開口の寸法で制限される、という原理である。エタンデュ値の定義から明らかなように、小開口からの出射で高輝度を実現するには光出射範囲を角度的に拡げねばならないが、広角に拡がる照明光を扱える光学系は複雑且つ高価になる。この問題について触れた文献としては特許文献8(名称:テレセントリック光学系を用いた投射装置(Projection Apparatus Using Telecentric Optics);発明者:Cobb et al.;特許権者:本願出願人)、特許文献9(名称:空間光変調器を用いた投射装置(Projection Apparatus Using Spatial Light Modulator);発明者:Cobb)並びに特許文献10(名称:リレイレンズ及びダイクロイック結合器を伴う空間光変調器を用いた投射装置(Projection Apparatus Using Spatial Light Modulator with Relay Lens and Dichroic Combiner);発明者:Cobb et al.)があるが、これらはいずれも高密度LCOS液晶デバイスを使用した電子映写機についてのものであり、その対策法も、十分な出射光量が得られるよう空間光変調器のNAを高くすることで光学系内の要所で角度条件を緩和する、というものである。
液晶デバイスには、更に、角度的に拡がった変調光を発生させにくいという問題もある。照明光を広角にすることでそうした変調光を発生させようとすると、液晶デバイスを用いた画像発生の仕組みや液晶素材に備わる複屈折性が災いし、発生する変調光のコントラスト比や色特性が悪くなる。コントラスト比を十分なレベルまで高めようとすると、往々にして液晶デバイス近傍等に何個か補償器を組み込まねばならなくなるが、そのようにすると映写機の複雑さと価格が更に増してしまう。なお、特許文献11(名称:LCD用補償膜(Compensation Films for LCDs);発明者:Ishikawa et al.;特許権者:本願出願人)には、ワイヤグリッド偏光器及び液晶デバイスにて発生する角度偏向効果を補償するため補償器を用いる例が記載されている。このように、LCOS液晶デバイス、HTPSデバイス、DMD等といったマイクロディスプレイデバイスには、部品の寸法や光路の幾何形状に関する問題がある。
画像発生部品には、開口面積や光の角度のほかにエネルギ密度制限という問題もある。小型空間光変調器特に液晶空間光変調器が部品レベルで受け入れうるエネルギ密度は低く、その上限を超える輝度を得ようとすると変調器自体が損傷しかねない。通常、無機アライメント層付LCOSデバイスではエネルギ密度の上限が15W/cm2程度であり、従ってその直径が1.3インチのLCOSデバイスなら約15000ルーメンが出射光束の上限になる。とりわけ熱ビルドアップを防がないと画像にむらや色収差が発生し、その変調器及び関連部品の寿命が損なわれる。即ち、熱ビルドアップが生じると例えば吸光性偏光器の挙動が顕著に劣悪になるので、空間光変調器本体に対する効果的な除熱機構や、関連する光学部品に対する注意深い技術的検討が必要になる。ただ、それらはやはり、コスト増及び光学系複雑化の原因になる。
この問題に絡んで重視すべきことは、ウェハ型デバイス製造工程をより微細化して製造歩留まり及び製造効率を高めよう、という流れが連綿と続いていることである。いうまでもなく、液晶空間光変調器の開発もこの線で進められ、更なるコンパクト化及び小型化が追求されている。これまでに開発された変調器のなかには、前世代変調器の約1.3インチ対角に比べ劇的に小さな約0.5インチ対角のものもある。しかしながら、エタンデュ値乃至ラグランジュ不変量やエネルギ密度に関し、前述した問題点があるので、これ以上に小型化を進めてしまうと、液晶デバイスを利用した大画面劇場用映写機の開発にはむしろ支障になる。それは、変調器の小型化が進むにつれ加速度的に、所要輝度を得ることが難しくなるからである。更に、ピクセルが極端に小さくなり例えば8〜20μm程度になると、よりピクセルが大きいデバイスでは画質に影響を与えないような小さな欠陥、例えば高々1〜2μm程の欠陥でも、画質に対して大きな影響を与えるようになるので、欠陥の大きさや製造歩留まりも問題になる。
液晶デバイスには、更に、こうしたエタンデュ値由来の条件以外にNA上の制限がつきものである。通常、液晶デバイスの開口はブラックマトリクスをパターニングすることによって形成されており、そのブラックマトリクスは個々のピクセルの制御用トランジスタに対し入射光が悪影響を及ぼしコントラスト比が下がるのを防いでいる。しかし、HTPSデバイスのような透光性デバイスでは、ブラックマトリクスがあると実効透光率が下がり、LCOSデバイスの約90%より低い60%以下までNAが下がる。透光性パネルであってもその寸法が十分大きく従ってピクセル面積が大きければ、多少NAが低くても十分な輝度を提供できるが、HTPSデバイスのようなマイクロディスプレイデバイスではピクセル寸法が小さすぎ、NAが低いと大きな問題、例えば画質上の問題になる。即ち、その幅が約40フィート以上もあるのが普通の劇場用スクリーンのサイズに合わせ画像を拡大すると、HTPSデバイス程度のNAでは、スクリーンドア偽像が目立って発現してくる(1フィート=約0.30m)。加えて、HTPSアレイ規模のマイクロディスプレイデバイスではその活性領域も狭いので、光源からその開口に入射する光を吸収して発熱し、空間光変調器本体やその関連部品の性能に対し更なる悪影響が及ぶことがある。従って、この種のデバイスを好適に使用できるのは、狭所向けディジタル映写機例えば検査室向け映写機やビジネスプレゼンテーション用映写機だけであり、扱える光量が取扱所要光量に対して不足するため一般の劇場では使用できない。即ち、劇場で使用するには、普通のサイズのスクリーンでも最低10000ルーメンの光量が必要であり、最大サイズのスクリーンなら最低60000ルーメンの出射光束が必要になる。この条件は厳しく、液晶型マイクロディスプレイデバイス例えば2インチ対角未満のLCOSデバイスやHTPSデバイスで達成できる物理的限界を超克している。この限界を乗り越えるには、熱その他の要因への並はずれた補償手段が必要になり、それは映写機価格をひときわ押し上げる要因になる。
また、従来の映写機用光学系では、集光によってそのビーム幅をできるだけ細めてから、照明光ビームを色成分分離器や変調器に送り込むのが普通であった。こうしたやり方が好まれていたのは、レンズ、フィルタ、偏光器等の光学部品を小型化でき、光の補正、分岐、変調及び再結合に関わる光学系全体をコンパクトにまとめられるためである。例えば図1Aに示した従来のLCOS利用映写機でも、照明先たるLOCS型液晶空間光変調器が小さいため照明光ビームを細く絞る必要がある。
しかし、そのようにすると、従来のLCOS利用映写機では輝度上の問題が大きくなる。即ち、前述の通りラグランジュ不変量による制限が課されているので、ビーム幅(ビーム横断面積)が小さいと十分な光量を得ることができない。照明光ビームを広角にしたとしても、色成分分離器や色成分結合器で使用しているダイクロイック被覆(波長選択膜)によるスペクトルエッジシフト効果が角度の関数であるため、画質の低下が生じてしまう。光路上の要所で光ビームを拡幅/狭窄するにしても、各色光路上で照明光ビーム及び変調済光ビームを拡幅/狭窄するための補正用光学部品例えばレンズを差し挟まねばならない分、光学系の構成が複雑になりコストがかかってしまう。例えば図1Bに示す従来技術では、広い角度範囲から入射するようそのLCOSデバイスへの入射光を集光する一方、その前後で角度的な拡がりを抑えてダイクロイック被覆のスペクトルエッジシフト効果を減らしまた応答速度を高めている。しかし、こうした従来の光学系を利用し高輝度カラー電子映写機を実現しようとしても、使用する光学部品が多い分出射光が減り、画質と出射光強度のトレードオフが生じるので、それはかなり難しいことである。従来技術ではこのトレードオフを避けることができない。
また、ローエンドのLCOS利用電子映写機は既に広く市販されている。市販されているのは、その出射光束が1000ルーメン程もあればよい家庭用背面投写型テレビジョン装置や、ほどほどの光学効率及び出射光束並びに許容できる画質を低コストで実現できればよいビジネスプレゼンテーション用映写機である。画面輝度及び画質をフィルム式映写機並みに高めるよう求められてはいるが、それを達成するには厳しいトレードオフを克服しなければならない。まず、10%未満という低い光学効率を補うため、従来の液晶利用電子映写機では非常に明るい照明装置を用いる必要がある。例えば三洋電機株式会社製の映写機PLVHD20では、セイコーエプソン株式会社製の1.6インチ対角HTPS液晶チップを用いた液晶マイクロディスプレイデバイスを、300ワットUHPランプを4個も用いて照明し、その変調光の光束を7000ルーメンに高めている。低出力ランプを複数個用いるのはエタンデュ値を大きくすることなく出射光強度を高めるためである。即ち、アークランプの出力を大きくするためそのアークギャップを拡げると、出力だけでなくエタンデュ値(照明装置側エタンデュ値)も増大し、しかもその増大が出力増大より急に進むためである。同じ理由で、ソニー株式会社製の映写機SRX−R110でも、1.55インチサイズのLCOS型マイクロディスプレイデバイスを2個の高価な2.0kW光源で照明して10000ルーメンの出射光束を達成している。しかしながら、これらの映写機はいずれもそのランプ出力が液晶空間光変調器に対し不釣り合いで、熱、コスト及び光源寿命に関わる問題をもたらしている。例えば、高エネルギ密度に耐え所要輝度を達成しようとすると、照明光路上及び変調光路上に設ける光学部品が高価なものになってしまう。安価な吸光性偏光器ではなくて高価なワイヤグリッド偏光器を用いざるを得ない、といった具合である。このように、従来の映写機では、所要出射光束を得るのに、高性能だが高価な光学部品を使用するか、或いは安価だが低性能な光学部品を複数個使用するという途を採るほかなかったが、いずれもその信頼性が低くコストが嵩むものであった。
更に、電子映写機では、個々の成分色乃至スペクトル帯域を別々に変調し、変調後の光を再結合してフルカラー画像を生成するのが普通である。変調済の光ビームを色別に設けた投射光学系例えば投射レンズアセンブリで個々に投射し投射先画面上で直に再結合させてもよいし、変調後に光ビーム同士を再結合させ1個の投射レンズアセンブリで投射するようにしてもよい。後者の場合には、各成分色間で光路長を等しくしなければならない。従来における光路長等化方式としては、特許文献12(名称:光路長等化型表示システム(Display System with Equal Path Lengths);発明者:McKechnie et al.)に記載のものや、特許文献13(名称:成分色間光路長等化型三連レンズ式投射表示装置(Triple-Lens Type Projection Display with Uniform Optical Path Lengths for Different Color Components);発明者:Tiao et al.)に記載のものがある。
以上のように、LCOSデバイスやHTPSデバイスといった液晶マイクロディスプレイデバイスを用い高輝度映写機を実現することは困難であるので、大きな直視型液晶パネルを用い実現することを考えた方がよい。直視型液晶パネルの解像度、コントラスト比及び応答速度はかなり改善されてきており、以前に比べたらマイクロディスプレイデバイスに代替できる見込みが強まっている。ただ、現在製造されている直視型液晶パネルはフラットパネルディスプレイ用のものであるので、そのまま高輝度映写機で使用することは望ましくない。例えば、TFT液晶のパネルに吸光性偏光器を直付けした品が広く製造されているが、これは画質に悪影響がある。即ち、吸光性偏光器では入射光のエネルギのうち約20%以上も吸収し発熱するので、その熱によって液晶層が加熱されときとしてパネル全面にむらやコントラスト比損失が発生する。
同様に、専らデスクトップモニタやテレビジョン装置で用いられる高速高コントラスト比液晶パネルには、多くの場合吸光性色フィルタアレイが内蔵されている。このアレイはこの用途で要求される発色性能を実現のに役立つが、同じく吸光により発熱してむら乃至偽像を発生させデバイスに損傷も与える点で、高輝度映写機用としては望ましくない。更に、医療用高解像度白黒表示パネルもあるが、放射線撮影で得られた静止画の表示を主たる用途としているため普通は低応答速度である。また、その応答速度を高めて動画をより好適に表示できるようにした新種の表示パネルも開発されており、なかでも応答時間を2msオーダまで短縮できるOCB(登録商標)モードがその代表格であるが、これはフラットパネルディスプレイを念頭に置いて開発されたものである。フィールドシーケンシャルカラー照明を実行して直視型液晶パネルのバックライトコストを抑えることや、高価な色フィルタアレイを不要にしてパネルコストを抑えることができるとはいえ、高輝度ディジタル映写機での使用はまだ可能になっていない。
直視型TFT液晶パネルを代わりに用いた映写機は他にも何種類か提案されているが、それらの多くは特定用途専用のものであり、ハイエンドディジタル映写機向けに開発されたものではない。例えば特許文献14(発明者:Cobben et al.)に記載のオーバヘッドプロジェクタでは、投射する画像をTFT液晶パネルで発生させている。特許文献15(発明者:Haven)に記載の背面投写型テレビジョン装置では、1個のTFT液晶パネル上をRGB(赤、緑及び青)各色用に分割してその色の光源で照明し、色別に設けた投射レンズで投射させている。特許文献16(発明者:Gotham et al.;特許権者:本願出願人)に記載の低価格ディジタル映写機では、大画面液晶デバイスをスタンド内に設置して上下方向のスペースを節約している。これらの例は、いずれも大型液晶パネルを変調に用い画像を発生させる装置ではあるが、高解像度動画投射向けに構成されたものではない。即ち、十分な量の光束を提供できるものでもないし、従来のフィルム式映写機に比肩する発色性能や看取に耐えるコントラスト比等、全体として上映に適する総合画質を提供できるものでもない。つまるところ、これらの文献で提案されているどの装置も、従来の劇場用映写機と比べられるようなものではない。
TFT液晶パネルを用いる映写機は、更に特許文献17(名称:液晶投射ディスプレイ(Liquid Crystal Projection Display);発明者:Ogino et al.)でも提案されている。この文献に記載の映写機は、1個又は複数個のフレネルレンズによって平行光化した照明光を液晶パネルに入射させ、またそれとは別のフレネルレンズを集光器として用い投射光学系に光を送る構成である。その照度むらが補正された大断面積の照明光ビームを提供できるので、前述したラグランジュ不変量についての議論によれば、この文献に記載の映写機なら出射光の強度を高めることができる。但し、この文献に記載の映写機では、1枚の白黒液晶パネルをRGBの三原色で共用する構成、即ち照明光の色を順繰り且つ高速に切り替えてRGB各色の変調光を得る構成を採っている。従って、この映写機では、発色がうまくいかないこともあろうし、色別フレームの順繰り切替の速度が足らず動偽像が発生することもあろう。従って、特許文献17に記載の色別順繰り投射方式は、テレビジョンサイズ映写機や小型映写機で採用するには不足がなくても、5000ルーメン以上の大光束出射光を発生させねばならない高解像度映写機で採用するには、性能水準的にまだまだ不足である。
更に、指揮管制センター向けの直視型TFT液晶パネル利用映写機が、特許文献18(名称:複数個のアークランプ及びフライズアイレンズアレイ光ホモジナイザを用い多色光を液晶ディスプレイに送る画像投射システム(Image Projection System With Multiple Arc Lamps and Flyseye Lens Array Light Homogenizer Directing Polychromatic Light on a Liquid Crystal Display);発明者:Clifton et al.)にて提案されている。この映写機は、15インチ対角の色フィルタ付TFT液晶パネルを光変調器として用いており、67インチ対角の画面上に投射することができる。その狙いは、コントラスト比損失なしで画面輝度を向上させることであり、その手段としては、複数個の光源と複数個の反射面を適宜組み合わせて実現した小型高効率光源を使用している。即ち、その照明装置を構成している複数個の光源からの出射光を、風車型に配置した鏡によって互いに結合させることによって、液晶パネルに対しほぼ法線方向(最適コントラスト比方向)から照明光が入射するよう液晶パネルに対する照明光の入射角を抑え、ひいては映写機のコントラスト比を補償膜なしで高めている。また、この文献に記載の映写機では、コントラスト比が更に高まるよう直視型液晶パネルに工夫を施し、従来のパネルで必要であった広視野角膜を廃している。更に、この文献には、直視型液晶パネルに対する照明光入射方向をパネル法線方向からずらし、液晶素材に元々ある光変調特性を活用してコントラスト比を更に高める手法も記載されている。直視型液晶パネルへの入射側で照明光の方向をずらした分は、そのパネルの出射側にフレネルレンズを設けて補償することができる。
しかしながら、このように刮目すべき手だてを採ったにもかかわらず、特許文献18に記載の映写機で達成される効率はまだまだ低水準であり、またコントラスト比は高まったがその輝度は対ディジタル映写機要求輝度に達していない。特に、この文献に記載の映写機では、大型液晶パネルを用いることで大きくなるエタンデュ値を有効利用していない。しかも、その構成部品のなかには画質に悪影響を及ぼしかねないものがある。例えば液晶パネルの前面にある出射光用フレネルレンズは、この文献に記載の通りSXGAレベルの解像度で使用するなら問題ないが、最低でも2048×1080ピクセルの解像度と5000ルーメンの光束が求められる映写機では、顕著なコントラスト比低下や偽像の発生原因になる。使用するアークランプのアークギャップが7mm未満だと、液晶パネルを2インチ対角まで小さくしても高効率が得られない。更に、この文献に記載の単一パネルカラー/白黒映写機ではカラー表示をうまく行えない。例えば普通の吸光性色フィルタアレイを使用すると、高輝度映写機では問題が発生しかねないし、色分解シーケンシャル投射方式を使用すると、動偽像が発生することとなりかねない。加えて、液晶パネルの性能向上が進み、その総コントラスト比も高まっているため、この文献に記載されている手法のうち補償膜を廃してコントラスト比を高める手法や照明光入射方向をずらす手法は、最早その必要性を失っている。
このように、画像形成にLCOSデバイスを使用するディジタル映写機が既に何種類か提案されているが、そのために小型LOCSデバイスを使用するのでは、原理上、光束及び効率を十分に高めることができない。他方の直視型TFT液晶パネルは、LCOSデバイスよりエタンデュ値を大きくすることができるのでLCOS液晶利用時に比べ光束を増やせる可能性があるが、これまでに提案されているTFT液晶パネル利用映写機ではまだ不足である。即ち、その効率が期待水準より低く、所要輝度も得られておらず、SMPTEがディジタル映写機認証に際し課すであろうコントラスト比、色むら、色域及び解像度の付加要件も満足していない。
SMPTEは、現在、ディジタル映写機認証に関する一連の規格を策定中である。その根幹をなす条件は、DCI(Digital Cinema Initiative)と呼ばれる動画スタジオコンソーシアムにて作成されたものである。DCIでは、重要な性能パラメタとして、コントラスト比、ピクセル解像度、画面輝度、ANSI(米国規格協会)コントラスト比、並びに色域及び偽像発生率の許容値を定めている。これらの規格と自由競争市場がディジタル映写機に対し要求しているのは、2000:1オーダのシーケンシャルコントラスト比を色シフトなしで達成すること、大半のスクリーン上に約10000ルーメン以上の光束を提供できること、並びに2048×1080又は4096×2160のピクセル数で表示できることである。
映画興行事業は、そもそも家庭内映写や普通の事業所内での映写とは異質なものであり、従来からフィルム、フィルム式映写機及び有償配給システムを軸に成り立っていた。有償配給システムとは、様々な映画制作会社から作品の配給を受ける代わりに映画館が券売収入の一部を支払うシステムである。こうした経営が成り立つのは、技術革新が少ないため劇場設備の償却に概ね10〜30年もかけることができ、また故障した機械部品の交換や定期的なランプ交換があるだけで保守点検がほとんど必要ないからである。その損益分岐点は、映写機用ランプのワット数と映画配給元への支払い額との関係で決まる。
ディジタル映写機はこのビジネスモデルを一変させるものであり、その採用にはやや値の張る劇場用設備の導入が必須になる。既存のマイクロディスプレイデバイス利用映写機でディジタル映写を行う場合、高性能だが高価な部品を使用する関係上、フィルム式映写機に比べ3倍ものコスト高になる。更に、昨今のディジタル映写機がどの程度保つかは未知数であるが、ディジタルテレビジョン装置、コンピュータ、通信機器等の電子機器での実績を踏まえると、恐らくは従来のフィルム式映写機より短命で5〜10年程度の寿命になるであろう。既存の電子映写機における技術的陳腐化の進み方や部品故障の生じやすさ、収益上の不安を引き起こしている。従って、ディジタル映写機がフィルム式映写機と肩を並べるものであると早期に認めさせるには、コストメリット、出射光量及び光学的効率の各面で顕著な前進を得る必要があろう。
米国特許第5808795号明細書 米国特許第5798819号明細書 米国特許第5918961号明細書 米国特許第6010221号明細書 米国特許第6062694号明細書 米国特許第6113239号明細書 米国特許第6231192号明細書(B1) 米国特許第6758565号明細書(B1) 米国特許第6808269号明細書(B2) 米国特許第6676260号明細書(B2) 米国特許第6831722号明細書(B2) 米国特許第4864390号明細書 米国特許第6431709号明細書(B1) 米国特許第5889614号明細書 米国特許第6637888号明細書(B1) 米国特許第6505940号明細書(B1) 米国特許第5758940号明細書 米国特許第6924849号明細書(B1) 米国特許第6452724号明細書(B1) 米国特許第6585378号明細書(B2) 米国特許出願公開第2006/0061862号明細書(A1) 米国特許第6930797号明細書(B2) 米国特許第7198373号明細書(B2) "Polarization Engineering for LCD Projection," by Michael G. Robinson, Jianmin Chen, Gary D. Sharp, John Wiley& Sons Ltd, England, 2005, page 41 "Projection Displays" p.244, eq. 11.3 "Projection Display Throughput: Efficiency of Optical Transmission and Light Source Collection," by F. E. Doany et al. in IBM J. Research Development Vol. 42, No. 3 / 4 May/July 1998, pgs.387-399
このように、今求められているのは、ディジタルシネマ水準の性能を有するフルカラー映写機を液晶デバイスの有効活用により実現すること、それも低コストで光学的効率が高く且つ総合的な光スループットがよいものを実現することである。
このような要請に応えるため、本発明の一実施形態に係るディジタル映写機は、多色偏光を発生させる照明装置と、その光路上でその多色偏光から略テレセントリックな多色偏光ビームを発生させるレンズ素子と、その多色偏光ビームを複数本のテレセントリックな成分色光ビームに分割する色成分分離器と、それらの成分色光ビームを変調して複数本の変調済成分色光ビームを発生させる複数個の透光性空間光変調器と、それらの変調済成分色光ビームを共通光軸沿いに再結合して変調済多色光ビームを発生させる色成分結合器と、その変調済多色光ビームを表示画面に向ける投射レンズと、を備える。各透光性空間光変調器のエタンデュ値は、照明装置のエタンデュ値に対して15%以内の差に止め、或いは照明装置のエタンデュ値より大きな値にする。
本発明の特徴の一つは、既存の映写機で使用されている小型液晶デバイス例えばLCOSデバイスに代え、より大きなTFT液晶パネルを用いてハイエンド電子映写機を実現できる点にある。
そのため、本発明によれば、5000ルーメン以上の光束を有する投射像を得ることができる。また、様々な種類の光源を使用できる。
以下、上述のものもそれ以外のものも含め、いわゆる当業者が理解できるよう詳細に、また本発明の実施形態を示す図面を参照しつつ、本発明の構成及び効果について説明する。
なお、本発明の構成要件については別紙特許請求の範囲を参照されたい。以下の説明及び別紙図面は、本発明をより好適に理解頂くためのものである。
また、本明細書における説明は、本発明に係る装置の構成要素やその装置に密接な関連を有する要素についてのものであり、本明細書で明示説明していない要素についてはいわゆる当業者にとり周知の様々な形態を採りうるのでご理解頂きたい。
SMPTEは、現在、ディジタル映写機認証に関する一連の規格を策定中である。その根幹をなす条件は、DCIと呼ばれる動画スタジオコンソーシアムにて作成されたものである。DCIでは、重要な性能パラメタとして、コントラスト比、ピクセル解像度、画面輝度、ANSIコントラスト比、並びに色域及び偽像発生率の許容値を定めている。これらの規格と自由競争市場がディジタル映写機に対し要求しているのは、2000:1オーダのシーケンシャルコントラスト比を色シフトなしで達成すること、大半のスクリーン上で約10000ルーメン以上の光束を提供できること、並びに2048×1080又は4096×2160のピクセル数で表示できることである。
本発明では、例えば大型TFT液晶パネルを空間光変調器として用い高輝度ディジタル映写機を構成する。大型TFT液晶パネル以外の大型透光性パネルを用いることもできる。例えばPanorama Labs Inc.が開発しMPC(磁性フォトニック結晶)パネルと呼ばれている磁気光学的偏向スイッチング利用型表示パネル等である。小型LCOSデバイス又は小型透光性液晶パネルを使用する従来のディジタル映写機と異なり、本発明で変調器として使用するのは大型透光性パネル、例えば少なくとも約5インチの対角寸法を有する液晶パネル乃至MPCパネルである。液晶やMPCからなる大型透光性パネルはその面積が広い分多くの光を受光できるので、背景技術の欄で説明したエタンデュ値乃至ラグランジュ不変量原理によれば出射光量も多くなる。また、本発明の実施に必要な光学部品(レンズや鏡)の点数は少なく、それら光路上の光学部品をより緩慢な(光の絞り方が緩い)ものにすることができる。照明光ビームも変調済光ビームもより太くなるので、ダイクロイック面性能を損なうことなしに、また従来の高輝度映写機につきものであった急峻で(光の絞り方がきつくて)複雑な構成の光学系を使用することなしに、輝度を高めることができる。LCOSデバイス等のマイクロディスプレイデバイスを用いた映写機と違い、個々の変調用液晶乃至MPCパネルのエタンデュ値は、照明装置側エタンデュ値に密に整合させることやより大きな値にすることができる。
図2に本発明の一実施形態に係る大画面高輝度投映用映写機50を示す。この映写機50を構成する光学部品の点数は背景技術の欄で説明した従来の映写機と比べ少なく、LCOS型空間光変調器、小型透光性液晶型空間光変調器等のマイクロディスプレイデバイスを使用する従来の映写機に比べその構成はより簡素だがより高い輝度を実現できる。例えば、図1Bに示した特許文献8記載の従来システムのように、マイクロディスプレイデバイスからの光を中間結像させるリレイレンズを用い投射レンズの構成を簡素化する必要も、またその作動距離が長く且つそのFナンバーが小さな光円錐をもたらす投射レンズを用いる必要もないので、投射光学系をより簡素且つ非常に安価なものにすることができる。また、その色成分分離器及び偏光器で高エネルギ且つ広角の光を偏向むらなしに処理するため値の張る特殊ガラスやワイヤグリッド偏光器を用いる必要もない。加えて、従来の映写機では、マイクロディスプレイデバイスや偏光器(の一部)を十分に冷却しないと高エネルギ光を扱えなかったが、それに類する懸念はない。
図2に実施形態として示した映写機50は、照明装置28、色成分分離器76、色別変調系90、色成分結合器92及び投射レンズ70を備えている。その照明装置28は、むら補正された偏光を出射する多色光源20と、その偏光をテレセントリック化してテレセントリックな多色偏光ビームを発生させるテレセントリックレンズ62とを備え、その偏光ビームを変調器用ひいては表示用の照明光として出射する。低温鏡52は照明光路を屈曲させ、その光路に沿ってその多色偏光ビームを色成分分離器76に送る。
その色成分分離器76は第1ダイクロイック面54を有している。この面54は、テレセントリックな多色偏光ビームをスペクトル分割し、第1波長域成分例えば青色域に属する成分を反射させてテレセントリックな青色光ビームとして第1空間光変調器60bに送る一方、他の成分を透過させて第2ダイクロイック面56に送る。面56はその透過光を更にスペクトル分割し、第2波長域成分例えば緑色域に属する成分を反射させてテレセントリックな赤色光ビームとして第2空間光変調器60gに送る一方、他の成分を透過させて反射面58又はそれに代わるダイクロイック面に送る。面58は第3波長域成分に属するその成分を反射させ第3空間光変調器60rに送る。変調器60b、60g及び60rでは、送られてきたテレセントリックな成分色光ビームを変調し、それによって発生させた変調済成分色光ビームを色成分結合器92に送る。結合器92では、それらの変調済成分色光ビームを、ダイクロイック面68及び72によって共通光軸O沿いに再結合させる。反射面64及び66は、光路を屈曲させて再結合用のダイクロイック面68及び72に向ける面である。再結合によって生じた変調済多色光ビームは共通光軸Oの延長線上にある投射レンズ70に送られる。その投射レンズ70は例えば図8及び図9に示した構造のレンズであり、送られてくる変調済多色光ビームを図示しない表示画面40(図1A、図1B及び図8参照)上に投射する。
図3(ブロック図)及び図4(斜視図)に、図2に示した映写機50に適用される寸法関係及び位置関係を示す。図4に示すように、照明光路上に光路屈曲用の反射面102を設けてもよい。
特記すべきことに、図2〜図4に示した構成の映写機50では、照明装置28内のテレセントリックレンズ62から投射レンズ70へと強い光を導く光路上に光学部品を差し挟む必要がない。空間光変調器60に付随するフレネル視野レンズや、漏洩光を抑えるアパーチャ等を設けてもかまわないが、それ以外にレンズ62・70間光路にレンズ等を追加する必要がないので、その構成が簡素で軽量な高輝度映写機を、従来より低コストで製造することが可能になる。
効率とエタンデュ値の検討
背景技術の欄で述べた通り、従来のLCOS型マイクロディスプレイデバイス利用電子映写機は、その効率が低く10%にも達しないのが普通であった。これはエタンデュ値により記述される幾何光学的条件によるものであり、複数個のランプを用いて照明出力を高め輝度を上げようという試みも出射光増強にはあまり効果がなかった。
マイクロディスプレイデバイス利用映写機に適用される幾何光学的条件はエタンデュ値についての簡単な計算で検証できる。例えば、その寸法が1.2インチ即ち30.48mm対角、アスペクト比がディジタルシネマフォーマット規格値即ち1.9:1の変調用方形マイクロディスプレイパネルを作成し、それをFナンバー=f/2の光円錐で照明したとする。このパネルのエタンデュ値Eは、非特許文献2に記されている通り、次の式
E=πA/{4(f/#)2} (1)
で計算することができる。この式中、Aはパネルの面積であり、f/#は照明光円錐のFナンバーである。
この式に上掲の数値を入れるとエタンデュ値Eは0.12平方インチ・sr即ち75mm2・srになる。これは、映写機内光源から得られるエタンデュ値の上限を表している。実際にはf/2というFナンバーは急峻すぎるので、約f/2.3又はそれより若干急峻な程度の値が実用上の上限であろう。更に、後に例示する通り、光学系の効率を求める際にはNA性損失も考慮しなければならない。NA性損失とは面積Aひいてはエタンデュ値EがNA倍に減ることをいう。マイクロディスプレイデバイスのNAは通常は0.60〜0.90であるので、エタンデュ値Eの計算値が上記の如く75mm2・srなら、NA性損失を勘案した実際の値は、普通はおよそ45〜53mm2・srしかない。
こうしたマイクロディスプレイデバイスを用いたときのスループット効率に対し、より大きな直視型TFT液晶パネル或いはMPCパネルを用いたときのスループット効率が大差を有していることは、空間光変調器対角寸法に対する理論スループット効率の関係をプロットすればわかる。図14のグラフは、空間光変調器対角寸法を約1.3〜20インチの範囲内で切り替えてスループット効率の変化を調べた結果を示している。図中、4本の曲線はそれぞれそのFナンバーがf/2、f/4、f/6又はf/8の光学系についてのものである。前述の通りf/2の光学系はほとんど実用的でなく、むしろf/8未満の緩慢な光学系例えばf/16の光学系の方が実用的である。f/16の光学系についての曲線も、図示例と基本的には同じパターンになる。また、図中の縦破線は5インチ対角を表す線であり、本発明を実施する際にはこの線から右側の領域に属するパネルを変調器として使用する。それは、この寸法未満ではスループット効率が低いため、とりわけ緩慢な光学系では劇的に下がるためである。約5インチ対角以上の最適寸法パネルなら、そのFナンバーがf/8といった緩慢な光学系を用いたときでも70%以上のスループット効率が得られる。
Fナンバーが小さい緩慢な光学系を用いると、ダイクロイック被覆利用光学部品にて入射角依存性の色シフト及びコントラスト比変化が生じるという従来からの問題を、より容易に解決することができる。即ち、複数枚の薄膜からなる積層型ダイクロイック被覆では、光の入射角によってスペクトルエッジが偏倚し、入射角増大につれ普通は約2nm/度の割合で低下する。また、従来から、こうしたダイクロイック被覆を用い偏向性光学部品例えばビームスプリッタを形成することもしばしば行われている。そうした部品ではやはり入射角増大につれコントラスト比が低下していく。これらの問題を比較的容易に解決できるのに加え、場合によっては、Fナンバーをf/8から更に小さくすることで変調器側エタンデュ値(空間光変調器におけるエタンデュ値)を加増すること、即ち照明装置からより多く採光しより明るい画面にすることができる。
また、Fナンバーが小さな光学系を用いつつ映写機の効率を高めるには、照明装置側エタンデュ値と変調器側エタンデュ値を整合させること、即ち前者を後者と近い値又は後者より小さな値にすることが望ましい。しかし、マイクロディスプレイデバイスを用いた従来の映写機では、こうしたエタンデュ値整合を実現するとしたら非常に小さな光源が必要になり、ひいては提供可能光量(画面に到達する光束の量)が限られてしまう。これを補うには光源の出射光量を増さねばならず、既存のアークランプを光源として使用するならそのアークギャップ(放電間隙)を拡げねばならない。アークギャップを拡げると照明装置側エタンデュ値も増してしまうので、照明装置側に対する工夫で照明光束を増そうとするとほとんど必然的に、エタンデュ値が過剰化し変調器側エタンデュ値と整合させられなくなる。このように、マイクロディスプレイデバイスを用いる従来型の構成は、エタンデュ値を小さくせざるを得ないため、顕著な不効率、パワーの浪費及び熱の発生を伴う構成となりやすく、ひいてはその熱で小型電気光学部品が損傷を受けやすかった。
これに対し、本発明では、透光性パネル例えば白黒直視型TFT液晶乃至MPCパネルを空間光変調器として用い映写機を構成することができ、ひいては変調器側エタンデュ値を大きくすることができる。従来型の映写機で空間光変調器として使用していた液晶マイクロディスプレイデバイスより数倍も大きいパネルを使用することで、その出射光束を増せるだけでなく、各光学部品に作用するエネルギ密度が下がり、光学系の構成も単純になり、そして色分離/再結合用部品における光学的処理が良質になる。
また、映写機50ではその高輝度に加え高効率を割合に少数の光学部品で実現している。例えば、その光路上、図3に示した2個所におけるエタンデュ値を互いにほぼ等しくすること、即ち次の関係
照明装置側エタンデュ値=変調器側エタンデュ値
をほぼ成り立たせることで、LCOS型液晶を利用した従来の映写機では到底得られない高効率を実現することができる。
また、変調器側エタンデュ値を更に大きな値にすれば、出射光強度は増さないにしても各光学部品におけるエネルギ密度が下がり、またその解像度の割に空間光変調器内ピクセル寸法も大きくなる。後者のメリットについては後述する。
図19A〜図19Dに、光源の最適焦点位置における光強度位置及び角度分布計測結果を示す。光源として使用したのは、1.5kW及び2.4kWのCermax(商標;以下表記省略)キセノンアークランプ並びに1.9kWのキセノン管球ランプを複合面リフレクタと併用した光源である。Cermaxキセノンアークランプは米国マサチューセッツ州ウェルズレイ所在のPerkinElmer Inc.から入手できるランプであり、例えば2.4kW品ならそのアークギャップは1.9mm、発光部直径は20mmである。図19Aのグラフに示した強度正規化値対位置データ(焦点位置計測結果)のうち約1/e2ポイント分のデータを使用し、またリフレクタのFナンバーをf/1.3として前掲の式(1)による計算を行うと、照明装置側エタンデュ値E(レンズ62での値)は146mm2・srとなる(光学損失は無視)。
偏向反転器を使用すれば、この照明装置側エタンデュ値は実質的に倍加し292mm2・srになる。なお、このランプは、そのセラミクス構造を工夫してガス圧を高めたランプであるため、アークギャップが小さい割に定格パワーが高く、市販されてはいるものの平均的なランプとはいい難い。より典型的なランプ、例えば2kWのOsram(登録商標)キセノン管球ランプのアークギャップは5mmである。
変調用液晶パネルにおけるエタンデュ値即ち変調器側エタンデュ値をこの照明装置側エタンデュ値に近い値又はそれより大きな値にするには、同じく前掲の式(1)を用い変調器側エタンデュ値を求め、変調用液晶パネル例えばTFT液晶パネルの寸法及びFナンバーを、変調器側エタンデュ値が照明装置側エタンデュ値と整合するよう決めればよい。次の表
Figure 2009538449
は、前掲のCermaxランプについてのこの計算の結果を、偏向反転器有無に分けて示したものである。
映写機全体の効率を最高値に近づけるには、このようにして照明装置側エタンデュ値と変調器側エタンデュ値を整合させればよい。但し、変調用液晶パネルや光学系を更に大きくしても映写機の出射光量はさほど変化しない。パネル寸法を大きくすることは可能だが他のシステム要因による制約も加わってくる。従って、光学系を設計する際には、少なくともエタンデュ値に大きな損失が生じないようにしながら、パネルコスト(材料や製造工程で費やされるコスト)と、光路上光学部品コスト(材料や製造工程で費やされるコスト)とのトレードオフを考慮して、パネル寸法を決定するとよい。
LCOSデバイスを利用した従来の液晶マイクロディスプレイデバイス利用高輝度映写機でどの程度のエタンデュ値不整合が生じるか、またその程度が本発明の実施形態に係る高輝度映写機とどの程度違うかについては、例示説明するのが有益であろう。例えば、空間光変調器として1.55インチ対角LCOSデバイス、照明装置として2kW光源2個を使用し、10000ルーメンの光束を呈するディジタル映写機を製造したとする。最小規模の劇場スクリーンなら少なくとも5000ルーメンの光束があればディジタルシネマを好適に映写でき、米国内劇場スクリーンの約80%は10000ルーメンの光束で十分に映写できる。なお、市場には最大で1.7インチ対角寸法、アスペクト比4:3の液晶チップも出回っているが、今のところこれを使用した映写機は市販されていない。
このディジタル映写機の変調器側エタンデュ値は、照明用光学系のFナンバーを(比較のため極端に急峻な値である)f/2.3として計算すると95mm2・srになる。また、照明装置側エタンデュ値は、比較のためランプとして前掲のCermaxランプ即ちそのアークギャップが1.9mmのキセノン管球ランプを2個用いるとして計算すると、前掲の通り146mm2・srとなる(ランプ複数化や偏向反転によるエタンデュ値増大は無視)。この場合、照明装置側エタンデュ値・変調器側エタンデュ値間の不整合度は54%になる。照明装置に偏向反転器を設けでもしたらこの値は200%を超える。光源の複数個使用によるエタンデュ値増が加わったら更に大きくなる。
図20A及び図20Bに、キセノン管球ランプ複数個と偏向反転器を用いた映写機にて発生するスポット重複及びエネルギ密度特性曲線重複の例を示す。この構成では、図20Aに示す通りスポット206同士が僅かに重なって現れ、むら補正器より前段で計測した強度曲線208同士も図20Bに示す通り僅かに空間的に重なりあう。
不整合度の違いをより深く理解するには、この映写機をまた別の面から見てみるのがよいであろう。そのため、ここでは非特許文献3に記載のデータ、特にその第394頁図6に示されているデータを使用し、そのアークギャップが5mmのランプについて照明装置側エタンデュ値を求めることとする。使用するデータは、アークランプから得られる総パワーとエタンデュ類似パラメタ(センサエタンデュ値=NA×空間光変調器対角寸法DSLM)との関係がアークギャップの変化に応じてどのように変化するかを示すデータである。また、そのランプのエタンデュ値を求めるため、マイクロディスプレイデバイス利用映写機を稼働できるFナンバー値域内の2点を調べることとする。複数通りのFナンバーを調べるのは、そのランプの出力(照明光)が空間的及び方向的に全く均一でなく、実際にはだいぶガウス分布的であるからである。これについては、図19A〜図19Dに示した曲線のうち1.9kWの複合面リフレクタ付ORC(登録商標;以下表記省略)キセノン管球ランプについての曲線を参照されたい。使用するデータ中の総パワー値は、実質的に変調器側エタンデュ値・照明装置側エタンデュ値間不整合度の指標になりうるので、この文献に示されている計測値を利用しセンサエタンデュ値÷システム効率を計算することで、照明装置側エタンデュ値の粗推定値を得ることができる。計算すると、その値は次の値
Fナンバーがf/2.3の場合:
NA・DSLM(mm)=8.56(偏向反転器無)又は4.28(偏向反転器有)
Fナンバーがf/4の場合:
NA・DSLM(mm)=4.92(偏向反転器無)又は2.48(偏向反転器有)
となる。
他方、同文献の図6に示されている通り、そのアークギャップが5mmのアークランプからのパワー収得率は、Fナンバーがf/2.3で偏向反転器付なら約22%、Fナンバーがf/4で偏向反転器付なら約11%である。前述の通り、照明装置側エタンデュ値の粗推定値を得るには、上掲のセンサエタンデュ値をこのパワー収得率即ちシステム効率で除算すればよい。従って、そのアークギャップが5mmの光源における照明装置側エタンデュ値を計算すると、Fナンバーがf/2.3の場合は94.950/0.22=431.59mm2・sr、Fナンバーがf/4の場合は31.393/0.11=285.39mm2・srとなる。こうして別方法で計算した新たな推定値によれば、高輝度映写機用変調系に対する照明装置のエタンデュ値不整合度は更に高い。また、この推定値は、そのFナンバーとして控えめな値を想定し、複数ランプ併用による顕著なエタンデュ値増大がないとの仮定の下に現用照明装置について求めた推定値である。従って、実際のマイクロディスプレイデバイス利用高輝度ディジタル映写機では、エタンデュ値不整合によって更に顕著な光損失が生じるといえよう。
これに対し、本発明の実施形態に係る映写機では変調器側エタンデュ値が照明装置側エタンデュ値に対して整合している。即ち、その変調器側エタンデュ値が、照明装置側エタンデュ値との差が20%以内の値又は照明装置側エタンデュ値を上回る値になっている。これは、従来のマイクロディスプレイデバイス利用映写機にて照明装置側・変調器側間エタンデュ値差がおよそ50%以上もあったのと対照的である。
図13に本発明の別の実施形態を示す。この実施形態では、図2と同じ基本的構成を採りつつも、ケースに収めやすくするため部品の向きを変えている。例えば、図示の通り空間光変調器60bの向きを図2における向きから90°回してある。図26に本発明の更に別の実施形態を示す。この実施形態では、3個の直視型TFT液晶空間光変調器及びその後段にある3個の投射レンズを、ディジタルシネマ用映写室に設置しやすい形態で実装してある。
照明用の光源及び光学系
図2〜図4に示した映写機50には光源20に関わる利点もある。まず重要なのは、光源20としてはどのような種類のものを何個用いてもよく、従って市販ランプを光源20として用い低価格化や大量生産を容易に達成できることである。例えば、米国マサチューセッツ州ウェルズレイ所在のPerkinElmer Inc.から入手できるCermaxキセノンアークランプは、高圧ガス封入型であるため従前の管球ランプに比べそのアークギャップが狭く、従って小エタンデュ値システムに対し多量の光を供給できることからマイクロディスプレイデバイス利用映写機で重宝されてきたが、従前のキセノン管球ランプに比べ生産量が少ないため値が張りがちである。これに対して、そのエタンデュ値が大きな大型液晶パネルを使用する図2〜図4に示した構成では、よりもアークギャップが広い従前のキセノン管球ランプでも好適に用いることができ、しかもそのシステム効率を高水準にすることができる。このように市場に広く流通しているランプを使用できることは、大型TFT液晶パネルを使用するメリットの一つである。
第2に、キセノン管球ランプのなかには、フィルム式映写機で広く用いられている安上がりな楕円面リフレクタのそれを下回るように、その実効的なエタンデュ値を小さくしたものがある。その仕組みはいろいろあるが、複合面リフレクタを利用するものが比較的多い。例えばゼネラルエレクトリック社製映写機Taleria(商標)で使用されているランプがそれに該当する。これ以外の仕組みとしては、例えば米国ニューヨーク州ボヘミア所在のEELE社で採用している仕組み、即ちアークギャップ自体の方形輪郭を利用して方形スポットを発生させる仕組みがある。これらの仕組みは実効的な照明装置側エタンデュ値を小さくするためのものであり、例えば図19A〜図19Dとして示したグラフで1.5kWのCermaxキセノンアークランプと1.9kWの複合面リフレクタ付ORCキセノン管球ランプを対比した通り、Cermaxキセノンアークランプ並みの値まで照明装置側エタンデュ値を小さくすることができる。しかし、これらの仕組みは、照明装置の複雑化及び高コスト化の原因ともなっている。従って、本発明の実施に当たり採用するなら、例えばEELE社のランプを簡略化したものを光学的結合手段として採用し、コストを最低限に抑え且つ効率を最大限に高めるのが望ましい。具体的には、普通のキセノン管球ランプの側方にリフレクタを配置し、そのリフレクタによって形成される像の幅をパネル幅と略一致させ、更に偏向反転器で像の高さをパネルのアスペクト比に合うよう調整する。また、その後段にはむら補正器例えばレンズレットアレイを配置する。
図21A(平面図)に示すように、その照明装置では、例えばアークギャップ182を有する管球ランプ180を、図21B(側面図)に示すように点186を焦点とするリフレクタ184内に収容し、図21Cに示すような像188をなす光をむら補正器に入射させる。偏向反転器を用いているので丸みを帯びた像188が2個でき、それらによって所要アスペクト比を有する方形領域がほぼカバーされるので、光の損失を抑えることができる。
第3に、複数個のランプを併用する手法も、そのアークギャップが狭いランプでエタンデュ値が小さい照明装置を構成するため用いられてきた。個々のランプで発生する照明光の強度の位置及び角度特性はほぼガウス分布であるので、各照明光の分布ピークが他の照明光の分布裾部分と重なり1個の大きなピークができるよう、ひいては利用できる合計光量が増すよう、それらのランプを複数個設けるという手法である。本発明を実施する際には、この手法を利用できるのみならず、分布裾部分に属する照明光をかなり捉えることができる。ただ、小さなマイクロディスプレイデバイスを所要量の光で照明する際、こうした複雑な構成の光源又はその組合せ以外使用できなかったのとは対照的に、他種光源も使用できる。
第4に、高出力LEDも光源として使用できる。図22A及び図22Bに、そうしたLEDをアレイ化し偏向反転機能を付加した構成を示す。この図のLEDアレイ190は、複数個のLED200をチップ基板198上に並べた構成であり、更に、その除熱のための補助部材例えば放熱器196や、各LED200に対応して設けられた複数個の偏向ビームスプリッタ202からなる偏向ビームスプリッタアレイ192や、前述した偏向反転のための半波長板194を有している。
図23に、本発明の別の実施形態に係るディジタル映写機を示す。この実施形態は、空間光変調器60r、60g及び60bたる大型液晶パネルを照明するLEDアレイ190r、190g及び190bを、むら補正器22や照明光中継器204と共にRGB各原色用の光路250r、250g及び250b上に設け、各空間光変調器を対応するLEDアレイによって照明する構成である。図22A及び図22Bに示した通り、各LEDアレイは対応する波長域で発光する複数個のLEDを二次元アレイ化したものであり、例えばビームスプリッタ及び半波長板からなる偏向反転部材を有している。各LEDアレイで発生した照明光はレンズレットその他の部材からなるむら補正器22で照度むら補正され、中継器204を介し対応する液晶パネルに入射される。照明される液晶パネルの側も、対応するLEDアレイの発光波長域に感度を有する構成としておくのが望ましい。
その他、超高圧水銀ランプ等も光源として使用できるが、キセノンランプの次代を担う位置にあるのはやはりLEDアレイであろう。それは、複数種類のLEDを組み合わせることで白色光源を形成でき、またその照度むら補正や色分離も容易だからである。更に、Lumiled社のLuxeon(登録商標)シリーズ、Luminus社のPhlatLight(登録商標)シリーズ、Osram社のOstar(登録商標)シリーズといったハイパワーLEDチップでは、近年、その出射パワーが200〜400mW/mm2(色による)のものも現れている。また、LEDは、その発光波長を適宜定めることで、出射光を濾波することなく出射光の色域を所望色域にすることができ、その効率が高い点でも有利である。チップ1個のサイズが約4mm角と大きめで従ってそのエタンデュ値も大きいので、マイクロディスプレイデバイス利用映写機用には適さないが、本発明の実施用には適している。
図5に、テレセントリック多色偏光ビームを発生させる照明装置28の一例構成を示す。この装置28では、まず、光源20で多色無偏光(白色光)を発生させ、それを付随するコリメート系内の放物面鏡又は楕円面鏡によって平行光化(コリメート)し、得られた平行多色無偏光ビームを光源20の出力として広帯域偏光反射器34に入射する。偏光反射器34はその平行多色無偏光ビームをテレセントリックな多色偏光ビーム38に変換する。例えば、光ビーム38即ち照明光ビームとしてp偏光を得たいとする。その場合、偏光反射器34の偏向ビームスプリッタ36としては、光源20からの入射光のうちp偏向成分を透過させs偏向成分を反射させるものを使用する。同じく偏光反射器34内の偏向選択性反射膜44としては、s偏光を半波長板42方向に反射させるものを使用する。半波長板42ではそのs偏光をp偏光に変換する。このp偏光はスプリッタ36を透過したp偏向成分と偏向軸が揃っているので、偏光反射器34から出射される光ビーム38はその偏向状態が整ったビームになる。その後、例えば光の偏向状態を基本的に変化させない手段(図上省略しているレンズレットアレイ等)でその光ビーム38に照度むら補正を施すこともできる。このように、偏向反転を実行することにより、光源20からの出射光をほぼ全て、テレセントリックでその偏向軸が揃いその照度むらもない多色光に変換することができる。また、この処理で発生する光ビーム38の断面は広く、大面積の透光性(液晶)パネルを用いる本発明の実施に好都合である。なお、既存のLCOSデバイス利用映写機でもこれと似た偏向反転方式が用いられているが、それらには生来的に厳しいエタンデュ値制限が課されているので、ここで述べたような出射光量増強効果を全面的に得ることはできない。
また、偏向反転器34内偏向ビームスプリッタ36としては、例えば、特許文献19(名称:略偏光ビーム生成用偏光器(Polarizer Apparatus for Producing a Generally Polarized Beam of Light);発明者:Hansen et al.)に記載のワイヤグリッド偏光器を用いることもできる。ワイヤグリッド偏光器には様々な種類があり、それらは例えば米国ユタ州オーレム所在のMoxtek, Inc.から購入することができる。ワイヤグリッド偏光器の際だった利点とは、従前の薄膜型ビームスプリッタと違い強い光を処理でき、また角度に対し割合に不感なことである。図示例でワイヤグリッド偏光器を使用するとしたら、例えばそのワイヤ素子配設面上にあるワイヤ素子が系内光路に面するよう配置するとよい。このようにすると、特許文献20(名称:ディジタル映写機(Digital Cinema Projector);発明者:Kurtz et al.;特許権者:本願出願人)に記載されている熱誘起性複屈折が生じにくくなる。また、いわゆる当業者にはご理解頂ける通り、偏向ビームスプリッタ36を既存のプリズム偏光器、例えばマクニール偏光器にすることもできる。
そして、この偏向反転機能付照明装置には、光源20から得られる照明光をよりむらのない光にして大型TFT液晶パネルに供給するむら補正器12が設けられている。この補正器12は、照度むらのない照明光ビームが空間光変調器に供給されるよう光源20からの出射光を補正する部材であり、例えばインテグレーティングバー、レンズレットアレイ、レンズレットとインテグレーティングコンポーネントの組合せ等の形態で実現するとよい。
偏向
空間光変調器に達するまで光の偏向状態が良質に維持されるよう努めることは、1500:1超という高さの所要コントラスト比を実現する上で、重要なことである。照明光の偏向度を高めるための偏光器を追加するとしたら、むら補正器12、偏向反転器、或いはテレセントリックレンズ62の後段がよいであろう。エネルギ密度が高い場合や偏光器に対し角度条件の充足が厳しく要求される場合には、その偏光器として非吸光性偏光器例えばワイヤグリッド偏光器を用い、そのワイヤを空間光変調器側に向けて配置するのが望ましい。エネルギ密度が低く空間的にゆとりがある場合は、価格や入手の容易さを考慮し、吸光色素等の膜を用いた偏光器や、ヨウ素偏光器や、DBEF(登録商標;以下表記省略)膜等の散光反射性偏光膜を初めとするより複雑な構造の偏光器を、用いるのが望ましい。いずれにしても、光学部品に対する照明光の影響に十分注意を払うことが重要である。
また、より綿密に偏向を調整する必要があるときは、テレセントリックレンズ62の後段に更に微調整用の偏光器を配置するのが望ましい。但し、その位置は、液晶パネルから十分に離した方がよい。
補償
本発明の利点の一つは、補償器を設ける必要が(ほとんど)ないことである。本件技術分野で周知の通り、膜型の補償器即ち補償膜は数種類ある。そのうち光軸が膜面と平行な一軸膜はAプレート、垂直な一軸膜はCプレートと呼ばれる。その屈折軸が全三次元に亘り相違する二軸膜はOプレートと呼ばれることが多い。また、膜面内でXY複屈折を呈する膜(不等方性媒体から形成されていてXYリターダンスを伴う膜)を以てAプレートと呼び、補償器内ビーム伝搬方向に光軸沿いZ複屈折を呈する膜を以てCプレートと呼ぶこともある。一軸膜の素材には、neがnoより大きい正複屈折素材とneがnoより小さい負複屈折素材とがあるので、A,Cどちらのプレートにもそのne及びnoの値で決まる正負の二種類がある。また、本件技術分野で周知の通り、Cプレートがポリマの一軸圧縮や酢酸セルロースの注型で形成されるのに対し、Aプレートはポリビニルアルコールやポリカーボネート等といったポリマ膜のストレッチングで形成される。本発明の場合、空間光変調器60r、60b及び60gとして大きな液晶パネルを使用するので角度に対する感度を抑えられることができ、従ってCプレート型補償器は(ほとんど)必要なくなる。同様に、その屈折率がX,Y,Zの各方向で異なる二軸膜を使用して所要リターデーションを実現し、ひいては総コントラスト比を高めることもできる。
まず、照明光がほぼ直線偏光である場合は、照明先の液晶層を透過しうるようその偏向軸の向きを合わせる必要がある。液晶層の向きが光路屈曲方向に対し平行又は鉛直になる系構成を採っている場合、例えば各光学部品が上下に並んでいる場合には、Aプレートを用いたほんの僅かな補償だけで精密に、偏向軸の向きを合わせることができる。使用する液晶パネルがTN液晶パネルなら、入射してきた照明光の偏向軸に対して通常は45°、液晶層内で偏向軸が回転するので、半波長板際リターデーションを施しその偏向状態を補正する必要がある。そして、液晶パネル内に達する照明光円錐の頂角が例えば12°以下と小さい場合は、Cプレートを用いた補償が役立つかもしれない。液晶に入射する光の光円錐がそのように尖っていればそうした補償抜きでも高いコントラスト比が得られるけれども、例えばそのコントラスト比が1600:1の画面を有するLG Philips社製液晶ディスプレイのような市販品や、そのコントラスト比が3000:1の画面を有する100インチサイズ液晶ディスプレイパネルのデモ機に倣い、市販の補償器を使用することもできる。
光学補償が必要な場合、そのための補償器は、前掲の微調整用偏光器の後段か、液晶パネルの直後且つ偏光検光器よりも前段に、配置するのが望ましい。また、液晶パネルの前後双方に補償器を配置して補償を行うようにしてもよい。
エネルギ密度
マイクロディスプレイデバイスに代えて大きなTFT液晶パネルを用いることは、光路上に配置されている各種光学部品例えば空間光変調器に作用するエネルギ密度との関連で、非常に重要である。マイクロディスプレイデバイスを使用する装置でエネルギ密度が問題になるのは、主に、吸光発熱が多すぎると破壊される部品があるからである。マイクロディスプレイデバイス利用高輝度映写機では、このエネルギ密度問題があるために、高温耐性があるが高価な部品を使用するか、高性能の除熱装置を設ける必要があった。例えば、吸光性薄膜偏光器を用いたのでは高エネルギ光ビームに耐えきれないので、より熱に強いワイヤグリッド偏光器を用いねばならなかった。
これに対し、図2〜図4に示した実施形態等では、その出射光強度をかなり高めた仕様でも、空間光変調器60r、60b及び60gにおけるエネルギ密度が、マイクロディスプレイデバイス利用高輝度映写機におけるそれよりかなり低くなる。例えば1.3インチ対角液晶マイクロディスプレイデバイスを空間光変調器として用いる映写機にて、仮に約10000〜15000ルーメンの光束を出射させたとしたら、その映写機内の空間光変調器や偏光器におけるエネルギ密度がおよそ6W/cm2にも達する。液晶マイクロディスプレイデバイス等の部品が損傷を受けないぎりぎりのエネルギ密度は約15W/cm2であるので、光束を最大限増したとしても約20000ルーメンが限界である。対するに、15インチ対角大型液晶パネルを空間光変調器として用いる映写機では、70000ルーメンに及ぶ多量の光束を出射しているときでも、その映写機内の空間光変調器や偏光器におけるエネルギ密度は約1W/cm2という低さである。このようにエネルギ密度が低いので、安価ではあるが高熱に対する懸念があったためこれまで使用できなかった安価な補助光学部品、例えば吸光性薄膜偏光器を高輝度電子映写機にて使用することが可能になる。これは、より大出力の映写機を実現でき、それによってより大きな画面への投射も可能になるということである。また、本発明に係る映写機及び方法にてその大きなエタンデュ値で低コスト化及び高性能化が達成される理由も、これと同一の又は類似した理由である。
関連するエネルギ密度上の問題としては、テレセントリックレンズ62を形成する素材の選び方がある。即ち、その吸光率又は応力複屈折率が低い素材を選択し、熱誘起性複屈折の影響を抑えることが肝要である。例えばアクリルによって形成される高品質フレネルレンズは、通常は高い耐熱性及び透光性を呈するので、十分使用することができる。なかでもアクリルの加圧成型で形成された部品は、その製造プロセスの性質上複屈折率が低くなるので好適に使用できる。或いは、ガラスやより耐久性に優れたポリマ素材、例えば米国ケンタッキー州ルイビル所在のZeon Chemicals社から入手できるZeonex(商標)も、テレセントリックレンズ62の素材として使用することができる。
テレセントリックレンズ
前掲の図2中、テレセントリックレンズ62は照明光を補正しテレセントリックな光に変換するレンズである。テレセントリックレンズとは、そのレンズの実空間(対物空間)、像空間又はその双方における光挙動をテレセントリック化するレンズのことであり、テレセントリック化とは、被写体又は像を過ぎるあらゆる光線(主光線)をコリメートし、その方向を光軸に対し平行にすることをいう。テレセントリックレンズの入射瞳及び出射瞳のうちコリメートされた方の空間にある瞳は無限遠に位置するので、テレセントリックレンズ透過光のうちそちらに抜ける光の角度分布はかなり均一になる。図2に示した実施形態では、像空間のみ(特に液晶パネル近傍)のみで光挙動をテレセントリック化し、出射瞳のみを無限遠に引き離している。本実施形態でこうしたテレセントリック化が重要なのは、照明光路が色別分離されているためもしそれを怠ると色偽像(偽色)が生じかねないからである。また、空間光変調器たる液晶パネルに角度ばらつきがあると、空間光変調器から出射される変調光に別の角度からの変調光が混ざり、表示画面上に色むらが発生するため、これも多液晶パネル映写機では重要である。また、レンズ62として球面レンズを用いてもよいが、図示例では非球面レンズたるフレネルレンズを用いている。更に、フレネルレンズ等のレンズ62でテレセントリック化する構成ではなく、1個又は複数個の反射性素子でテレセントリック化する構成にしてもよい。反射性素子には、横方向色収差やモアレの干渉縞が発生しない、その製造が容易であり例えばプラスチックの成型で大型のものも形成できる、といった利点がある。そして、レンズ62によるテレセントリック化は本映写機を実現する上で確かに重要だが、ダイクロイック膜を有するビームスプリッタ内により細い光ビームを入射できるようにするため、テレセントリック性を若干犠牲にすることもまた有益である。そのようにする場合には、画面上でとるべきサイズに合うよう、ビームエキスパンダを用いその光ビームの太さを適宜調整するとよい。
同図に示した映写機50では、照明装置28からの照明光がテレセントリックレンズ62を経てテレセントリック多色偏光ビームになり色成分分離器76に入射する。その色成分分離器76ではその光ビームを複数個のスペクトル帯域に分割する。フルカラー投映の場合は少なくとも3個のスペクトル帯域、典型的には赤、緑及び青の三帯域に分割する。また、上述のように、その多色含有光ビームの入射角を絞り概ね制限範囲内に収めてあるので、角度ばらつきに起因するスペクトルシフト効果は小さい。
また、本実施形態の映写機50ではテレセントリックレンズ62がかなり大きくなり、通常は空間光変調器60r、60g又は60bの活性領域寸法とほぼ同程度の大きさになる。このようにその直径が大きなレンズ素子を用いる構成には、潜在的な難点として横方向色収差の発生という難点がある。横方向色収差とは、波長の違いで生じる像寸法の微差のことである。図6に、赤色光による像14r、緑色光による像14g及び青色光による像14bの重なり方及びその寸法差を平面的に示す。横方向色収差が生じているため、赤色光像14rは緑色光像14g及び青色光像14bより僅かに大きくなっている。青色光像14bはそれらのなかで最小の寸法である。図15にグラフとして示すように、こうした横方向色収差は、空間光変調器60r、60g乃至60bの対角寸法が大きいほど大きくなる。
横方向色収差を補正するには、例えば照明光路上に収差補正レンズを配置すればよい。例えば、光路のうち1本又は複数本の上にフレネルレンズを付加して横方向色収差を補正するとよい。その場所は、例えばテレセントリックレンズ62のすぐそばでもよいし、その光路に沿ってレンズ62と空間光変調器の間に位置する場所でもよい。
横方向色収差を補正するには、或いは、散光性の素子をテレセントリックレンズ62に前置し、補正したい横方向色収差と正負逆だが同じ大きさの横方向色収差を、その素子によってその光路上で発生させるようにしてもよい。通常、レンズ62は中心波長域たる緑色領域で最善の性能を発揮するよう設計されており、他の波長域即ち赤色や青色の領域では横方向色収差が発生するので、その横方向色収差を打ち消せるように散光特性を与えた横方向色収差補正レンズをレンズ62に付加すればよい。
いずれの手法を採るにせよ、肝要なのは、個々の光路上にある光学部品の縁だれ(エッジロールオフ)を含め、隣接光路間で照明光の強度及び均質性を最大限に整合させることによって、画面上での色むらで画質が損なわれることがないよう、照明光路を構成することである。
そして、一般論としていえば、液晶パネル・投射レンズ間距離即ち変調光路長を色間で等しくすることが望ましい。この点については、先に引用した特許文献12、13等でも述べられている。これに対し、その空間光変調器として大型のTFT液晶パネルを用いる本実施形態の映写機50では、変調光路長ではなく照明光路長を調整している。このように照明光路長の調整で足りるのは、本実施形態の装置が従来の装置ほど照明光の合焦位置に対して敏感でないからである。照明光の合焦位置に対して敏感でないということは、空間光変調器60r、60g及び60bの光軸O沿い位置をテレセントリックレンズ62の焦点にぴったり合わせる必要がなく、互いにずらして調整することができる、ということである。即ち、各空間変調器の光軸O沿い位置を調整することによって、空間光変調器間で変調光路長を精密に整合させることができる。
モアレ補償
モアレの干渉縞は、図17に示すフレネルレンズ84を大型液晶パネルのような繰り返し構造と併用するときに生じうる一種の偽像である。その発現を抑えるには、例えば、照明光を十分にデフォーカス(ピンぼけ)にしてフレネルレンズによる像の形成を抑え、強度ビートの発生を防げばよい。また、空間パターン間に周波数ビートが(ほとんど)生じないよう複数個のシリンダレンズを適当な角度差を付けて回転させてもよい。残留する縞は、図25に示すように非常に小さな散乱角を有する散光層146を設けることで、除去することができる。加えて、フレネル視野レンズ84を対応する液晶パネルから引き離すことによっても、モアレの干渉縞を抑え目に付かないようにすることができる。
フレネル視野レンズ84を対応する液晶パネルから引き離す場合、補強として、そのレンズ84に入射するテレセントリック光ビームの径を太くするのが望ましい。このようにすると、レンズ84・液晶パネル間の間隙で光ビームが若干収束しても、その液晶パネル全面がその光で照らされる。これを実現するやり方は少なくとも二通りある。第1のやり方は、テレセントリックレンズ62より後段で色成分分離用のダイクロイック面54等より前段にあるいずこかの場所に、レンズ62を補正する部材を配置し、その部材の出射光ビームの幅が液晶パネルの幅より太くなるようにする、というやり方である。第2のやり方は、ダイクロイック面54等より後段に負特性のレンズを配置し、ダイクロイック面を通過したテレセントリックな光ビームをそのレンズで若干発散させ、太くなった光ビームをフレネル視野レンズ84を介し投射レンズの瞳に送る、というやり方である。
また、図示例では、液晶パネルから見て照明側にフレネル視野レンズ84を配置している。この配置は上述の通り有益であるが、液晶パネルへの入射光がテレセントリックにならないため、例えば約12°の視野をカバーするようCプレートを設ける等して液晶パネルを好適に角度偏向補償しないと、液晶パネルの縁に近い部分でコントラスト比が低下してしまう。従って、空間光変調器たる液晶パネルの前方即ち像側に、フレネル視野レンズ84を移動させるやり方もあり得る。そのやり方を採るには、画質が割合に良好でなければならないので、モアレの干渉縞を何か別の手段で抑える必要がある。更に、これらの方法に加え又は代えて、散光層が吸光性偏光器・レンズ62間に位置することとなるよう散光層付吸光性偏光器をレンズ62・液晶パネル間に配置し、その散光層でモアレを抑えるようにしてもよい。
空間光変調器60r、60g及び60bの構成
図2〜図4に示した実施形態では、空間光変調器60r、60g及び60bとして透光性TFT液晶パネル、例えば5インチ以上の対角寸法を有するものを用いている。この種の液晶パネルは、例えば2048×1080又は4096×2160ピクセルといった高解像度にすることができるので、ディジタル映写等に好適に使用することができる。また、透光性TFT液晶パネルは従来から直視型パネルとして使用されているが、本実施形態における空間光変調器60r、60g及び60bは投射用であるので、より簡略化した構成のパネルを使用することができる。まず、図7Aに、空間光編著器として使用できる従来の液晶パネル118を示す。このパネル118はディスプレイ向けに製造されたものであり、液晶層120、それに付随する制御電極(薄膜トランジスタ122やITO層124を含む)、並びに色フィルタアレイ132を、ガラス板126とガラス板126の間に挟み込んだ構造を有している。その前後にある偏光膜128は吸光性シートであり、性能が劣化するので高熱が加わらないようにしなければならない。吸光性があるということは、光の吸収によって偏光膜128自体が損傷し、またコントラスト比やスペクトル透過率が低下するにとどまらず、熱の伝搬によって液晶層120の性能にも影響が及び、最終的にはその高熱でコントラスト比及び画質にむらが生じるということである。また、補償膜130はコントラスト比を高める膜であり、通常は、ディスプレイを二次元的に囲み全180°の範囲内のどこから直視しても十分なコントラスト比になるよう構成されているので、これを設けることによって対ディスプレイ視角を拡充することができる。図示は省略しているが、散光層、偏向の再生を支援する層、バックライトユニットから供給される照明光を均す層等、その他の補助膜を有するディスプレイも数多くある。そして、このパネル118と併用されるバックライトユニットとしては、例えば冷陰極蛍光管で発生させた光を内部全反射性光学部品即ち光導波路によって出射する構成のもの、即ち比較的均一な光をパネル118に向けて出射できるものを使用する。
図7Bに、本発明の一実施形態にて液晶空間光変調器60r、60g及び60bとして使用される液晶パネルを示す。この液晶パネルは、光を透過させる領域の縁に沿って配したトランジスタで各ピクセルを形成する多ピクセル構造を採っている。また、トランジスタの保護はブラックマトリクスで行うが、個々のピクセルを色別サブピクセルに分割することもまた色フィルタアレイを設けることも必要ないので、構造的には従来より簡素である。その液晶層120はある程度の剛性を有する2枚の透光性基板(例えばガラス板126)で挟み込まれており、更にその透光性基板の表面は抗反射被覆134及び136となる誘電体で覆われているが、ぎらつき防止処理等の散光処理は施されていない。被覆134及び136は、例えば、当該誘電体を被着させたフィルムベースをその透光性基板に付加して形成する。偏光膜、散光層、視角拡充膜等といった特殊機能膜は不要であり、補償膜130も廃止されている。液晶層120の表面から延ばした法線に対する光の角度偏差が極端に小さいので、補償膜130を設けるにしてもその性能及び費用はかなり抑えうる。また、従来の直視型ディスプレイでは、ユーザが(各方向最大180°の範囲内で)どのような向きで見てもコントラスト比が等しくなるよう、求められることが普通であったが、本実施形態の場合は約2°の視角があれば足りる(15インチ対角の液晶パネルの場合)。空間光変調器60r、60g及び60bの前後にその本体に密接するよう偏光膜128を設ける必要もない。また、前掲の特許文献18等には大型液晶パネルを用いる投射システムが記載されているが、これは低輝度映写機についてのものである。仮に、特許文献18に記載の手法で光束や実効エタンデュ値を増そうとしても、同文献に記載のシステムで使用する色フィルタアレイやサブピクセル別ブラックマトリクスにて問題が生じてしまう。更に、同文献には、液晶パネルに対する光の入射角を小さな角度に保つことでシーケンシャルコントラスト比を高められるよう、偏光器、補償膜、ぎらつき防止層等といった層を取り払う点について記載がある。高輝度映写機で使用する場合、偏光器を分離しておいた方が熱によるむらを防止できて望ましいが、補償膜についてはむしろ、うまく設計して使用した方がコントラスト比向上の面では望ましいであろう。また、同文献では抗反射被覆の必要性が認識されていない。抗反射被覆は、基板からの後方反射によってANSIコントラスト比が低下しチェッカーボード状になる現象、即ちその隣の白色ピクセルの影響で黒色ピクセルのコントラスト比が落ちる現象を防ぐ上で必要である。ディジタル映写機に対しては、200:1以上という高いANSIコントラスト比が求められる。加えて、同文献では、NAの悪影響でスクリーンドア偽像が発生し画質が劣化することも認識されていない。
また、液晶パネルの近傍にワイヤグリッド偏光器を配置するとよい。この種の偏光器は透過させるべき偏向状態の光以外を反射させるので、強い光を入射してもそのエネルギをほとんど吸収せず、従って映写機50内での強い光の処理に特に適している。使用する偏光器は安価なシート状のもの、例えば特許文献21(発明者:Mi et al.)に記載のものがよい。その前段に微調整用偏光器を配しある程度まで偏向状態を整えることができるので、そのコントラスト比は極端に高くする必要がなく100:1程度でかまわない。また、液晶パネルから見て像側にワイヤグリッド偏光器を設けることで、当該反射光が液晶パネルに戻ることを防ぎ、ひいてはその反射光によるANSIコントラスト比低下を防ぐこともできる。その実施形態は二通りある。一つ目は、ワイヤグリッド偏光器で反射される偏光成分を像の形成に回す形態である。二つ目は、その反射光が空間光変調器たる液晶パネルを迂回しアパーチャ絞りや単純な隔壁部材で阻止されるようワイヤグリッド偏光器を傾ける、という形態である。後者では、偏光器たるプレートの傾きで偏光器透過光が散開するので光学系に収差が発生するが、その収差は細めのワイヤグリッド構造を使用することで抑えられる。また、そのプレートとは逆の角度を採るよう光ビームの光路上にプレートをもう1枚配置することによって、その光ビームの非点収差を直に補正することもできる。その他の収差は、普通はあまり大きくなく補正なしでも画質を確保できる。
更に、液晶層120と偏光器の間に間隔があるので熱が偏光器から液晶層120へと伝搬しにくく、従って像にむらが生じにくい。光が波長域毎に空間分離されているので色フィルタアレイ132も必要ない。色フィルタアレイの廃止は、ディジタル映写機のような高輝度映写機ではひときわ有益なことである。例えば吸光型色フィルタアレイを使用すると、その色フィルタアレイにおける吸光発熱で性能や画質が劣化することがある。反射性型色フィルタアレイは使用できるが、反射光が生じる分損失が増すので、使用する場合は色再現系を設けてシステムレベルで輝度を確保するとよい。更に、色フィルタアレイはその構造の一部としてブラックマスクを備えており、そのブラックマスクはトランジスタ構造に直接光が当たらないようにする役割と、その色フィルタアレイを組成する素材を物理的に保持する役割とを有していた。前者の役割は存置してもよいが後者の役割は最早不要であるので、本実施形態では、ブラックマスクを引き続き使用するか或いは反射性のある被覆等の他種手段を設けることで、トランジスタを入射光から保護するようにしている。そして、各ガラス板126の外向き面上には抗反射被覆134及び136を設けることができる。これらの被覆134及び136は、隣接ピクセルからの漏洩光との相互作用ひいてはチェッカーボード効果の発生を抑え、ANSIコントラスト比を高めるのに有益である。
そして、液晶パネルから見て像側にその透光性が高い吸光性偏光器を設け、その光路用の偏光検光器として用いるとなおよい。光をこの偏光検光器に通すことでその偏向状態をほぼ直線にすることができ、従って映写機内部品の反射性で多少移相が生じてもその影響を抑えることができる。例えば、図17に示す偏光検光器137はそのエネルギ密度に相応しいワイヤグリッド偏光器等であり、投射レンズの実空間内に且つその偏光検光器137による反射光が空間光変調器に入射しないよう傾けて配置されている。従って、割合に小さな偏光検光器137を用いてコントラスト比を高めることができる。また、この図では偏光検光器137が投射レンズに前置されているが、小型の偏光検光器137であるので投射レンズのアパーチャ絞りの近傍に組み込んでもよい。
スクリーンドア偽像
直視型液晶デバイスのNAはマイクロディスプレイデバイスのNAに比べ高いので、ピクセル間境界線が画面上に偽像を呈することがある。また、そのデバイスを直視型ディスプレイとして使用するなら問題にならないようなものでも、大きな画面上に画像を拡大表示するとそうした偽像がひときわ目に付くようになる。この偽像は一般にスクリーンドア偽像と呼ばれており、高画質が求められるディジタル映写機では容認できないものである。これを抑えるには、例えば、各動画フレームを投映しているときに、個々のピクセルの減りと、それを囲むピクセル間境界線との境目を、各ピクセルの像を境界線間距離の約1/2に亘り偏倚させることで、ぼかすようにすればよい。人間の目は像を経時平均して捉えるので、このようにして各ピクセルの光エネルギを境界線上にも拡散させると、そのピクセルの像が境界線の全体に亘り拡がって見えるようになる。投映時偏倚分の制御は、その駆動信号の波形やタイミングの調整によって行うことができ、その波形としては例えば正弦波や矩形波を使用できる。この手法はディザリングとして知られており、特許文献22(発明者:Ramanujan;特許権者:本願出願人)に記載の通り、印刷の分野ではしばしば縁をぼかし或いは解像度を高める手段として使用されている。また、ディザリングの実行手法としては、液晶パネルを動かす手法、投射レンズを動かす手法、傾斜型プラノオプティカルプレートやオプティカルウェッジを光路上で回動させる手法等、様々な手法を採用できる。例えば、相直交する二方向から投射レンズの直前にワイヤグリッド偏光器を出し入れし、それによって各ピクセルの上下及び左右境界線双方を均しぼかすようにしてもよい。特に、図27に示す例では、摩擦レス屈曲回動ベアリング139を用い二軸ジンバルマウント上にディザ板138を実装しておき、モータ上のカム、圧電プッシャ、ソレノイド等のディザリングアクチュエータを制御してディザ板138を枢動させることにより、ディザリング動作を実行している。ディザリング動作における枢動範囲は、図示例の場合5°未満でよい。
光学部品を物理的に動かすことなくスクリーンドア偽像の発現を抑えるには、ディジタルカメラ等でよく用いられる偏向ブルアフィルタを用いればよい。スクリーンドア偽像の抑止という点ではデフォーカスが最善だが、デフォーカスさせると隣同士のピクセル間で部分的なエネルギ重複が生じ、エッジシャープネスが損なわれる結果、変調段の伝達関数が幾分劣化してしまう。また、その開口に応じた特定の周波数を遮断するフィルタを設計し、その光路に組み込むというやり方も採れる。
空間光変調器実装手段
図示しないが、3個の空間光変調器60r、60g及び60bは例えば所定の配置枠を有する位置決めアセンブリ内に実装されている。このアセンブリは、各変調器をいずれもほぼ同一面上に正しく位置決めするアセンブリである。このアセンブリを用いると、例えば、変調器60r、60g及び60bにおけるピクセル寸法を通常の直視型液晶パネルにおけるピクセル寸法100〜250μmにした場合でも、それらの変調器60r、60g及び60bを他の光学部品に対して所期通りに位置合わせし、現場で投射レンズの焦点を調整して正しく結像する状態にすることは、機械的には難しくないことである。このように現場可換ユニット化して使用するモジュール方式は、ディジタル映写機では有益なことである。例えば、液晶パネル等のアセンブリ内光学部品が損傷乃至陳腐化したときに、損傷していない又はより高性能の光学部品が組み込まれたアセンブリに交換することができる。マイクロディスプレイデバイス利用型映写機における交換はこれほど容易ではない。
また、そのアセンブリ内の空間光変調器から見て像側、照明側又はその双方に、変調器本体に対し間隔をおいて窓142又は143を設けてあるのは、稼働中に溜まっていく塵埃がそのアセンブリ内に侵入することを阻止するためである。それらの窓142及び143は、偏向乃至補償アセンブリの一部として利用すること、例えば窓自体を偏光器乃至補償器として機能させることや窓板上に偏光膜乃至補償膜を被着させることができるが、いずれにしろ、それらに抗反射被覆147及び148を設けることで後方反射光を阻止し光量損失を抑えることができる。更に、清掃によって寿命を延ばせるよう、それらの面の耐久性は高めてある。そして、図25に示すように、窓板等と液晶パネルとの隙間に通じるよう通気口144を設けてあるので、濾過済の空気をそこから導入して液晶パネルや偏光器を十分に除熱することができる。
更に、マイクロディスプレイデバイス利用映写機に比べパネル間隔公差がかなり緩くなる。即ち、マイクロディスプレイデバイス同士の間隔はピクセル寸法×1/2、例えば約5μmの公差で保持しなければならないが、大型液晶パネル同士の間隔は例えば約50〜100μmの公差で保持できればよい。従って、例えば製造時に液晶パネルに付しておいた位置決め基準標識を実装先アセンブリ枠上の対応する目印に対し位置合わせすることや、単純に他の2枚の液晶パネルに対して位置合わせすることで、映写機内の個々の液晶パネルを現場で交換することもできる。特に、その空間光変調器で使用する液晶素材やそのポリイミド製アライメント層が短波長域の光、即ち青色光や紫外光に対し最大の感度を呈する青色光路では、映写機本体他の空間光変調器に対する変調器位置の許容誤差も小さくなるので、このようにそれ1枚を現場で交換できることは重要である。また、図示例の構成において、液晶パネル型空間光変調器30の前に少なくとも偏光器を有する補助パネルを、また当該変調器30の後には少なくとも両面抗反射被覆型偏光器を有する補助パネルを、それぞれ変調器30に対し隙間をおいて配置してもよい。
液晶パネル型空間光変調器
まず、先に図14を参照して説明した通り、液晶パネル型空間光変調器60の寸法は、映写機50に対し求められる性能を満たす最適な寸法にすることができる。これは、従来用いられていた小型LCOS液晶利用映写機とは対照的である。具体的には、この映写機50で使用する変調器60のサイズは、通常のラップトップディスプレイより大きなサイズ、例えば約5〜20インチ又はそれ以上の対角寸法にすることができる。また、初期の液晶パネルはまことに応答が遅かったが、地道な改良によって100%以上もの応答速度向上が達成されており、更なる応答速度向上の見込みも立っている。ただ、4msec未満といった優れた応答時間も報告されているとはいえ、ディジタルシネマで要求される水準は高いので、個々のパネルで使用されるあらゆる符号値に対し応答時間をうまくバランスさせ、動偽像の発現を抑えることが肝要である。更に、シャッタリング即ちシャッタを用いたブランキングを実行し、コマの切り替わりの際に遮光するようにするとなおよい。
原理的には、液晶パネル型空間光変調器60のサイズは、照明系のエタンデュ値を余すところなく活用できる程度に広く、十分短かな応答時間が得られる程度に狭く、しかもそのピクセル及び電子回路のサイズが通常のTFT液晶パネル製造技術で好適に形成できるサイズになるように決める。また、変調器60のサイズは投射レンズのサイズにも大きく影響するので、投射レンズの製造及び仕組みに関わる要因を十分考慮に入れて検討する。その際重視すべき点の一つは、一般的なピクセル寸法を有する市販の液晶パネルを用いたディジタル映写機で所要の解像度を実現することである。これは、テレビジョン装置やモニタ装置の製造に使用されている大型液晶パネル製造設備を活用するためである。
ここに、従来型TFT液晶パネルのNAは、液晶型マイクロディスプレイデバイスのそれが約90%に達するのに比べ60〜70%程度とかなり低くかった。その一部は駆動用トランジスタ及び接続用導体での遮光による損失であるが、他の一部は図7A中の色フィルタアレイ132に設けられたブラックマトリクスでの遮光による損失である。本発明の各実施形態では、光路が色別に分かれていて液晶パネル毎の色フィルタアレイ132は必要ないので、色フィルタアレイ132を廃止すること、少なくともそのブラックマトリクス中の異色領域間仕切り部分を廃止することができる。その部分のブラックマトリクス、例えば赤色部分と緑色部分を隔てていた部分がない分、図7Bに示すように活性領域が広くてNAが高い。液晶パネルの設計によるが、NAの違いは8〜12%或いはそれ以上に達する。本発明でこうした効果が得られるのは、直視型医用ディスプレイ向け高解像度TFT液晶パネル等多くの白黒液晶パネルと違い、ブラックマトリクスが対ピクセル阻害物にならないようにしているためであるといえる。但し、従来の大型直視型ディスプレイに比べ照明光が強いので、それを遮ってトランジスタ構造を護ることが重要になる。
また、マイクロディスプレイデバイスに比べてNAが低い分、大型TFT液晶パネルの光量損失は20〜40%程多くなる。この損失を減らすには、ピクセル毎にマイクロレンズを設けて液晶パネル上の透光領域に光を集めればよい。このマイクロレンズアレイは、液晶パネルと別体に設けることも液晶パネル内ガラス板上に設けることもできる。後者の場合は、トランジスタや開口形成層を設ける工程でマイクロレンズアレイを設けることができ、各ピクセルに対するマイクロレンズの位置決めも同じ製造工程で行うことができる。また、液晶パネルから見て像側にもマイクロレンズアレイを設け、開口を形成する仕切りで生じる暗い間隙を埋めることもできる。
投射光学系
図8に、図2〜図4に示した実施形態における投射光学系の一例構成を示す。この図に示す例では、その直径がかなり大きなレンズ素子からなる投射レンズ70を用いている。例えば図9中で左端に位置している第1レンズ素子の直径は、変調済成分色光ビームを余さず捉えることができるよう、空間光変調器60r、60g及び60bの対角寸法とほぼ等しく設定されている。このように大きなレンズ素子をガラスで形成することは従来から難しいとされているが、注目すべきことに、これら空間光変調器及びレンズ素子が大きい割にそれらで処理する光は弱く、また要求される光学的表面品質も割合に低水準である。従って、成型等でも容易に製造できる薄いガラス製又はプラスチック製のレンズ素子を用いることができる。更に、フレネルレンズ、回折光学系、勾配屈折率レンズ、反射光学系等も採用に値する。
図10及び図11に、反射素子を用いた投射光学系の例を示す。この光学系では、空間光変調器60r、60g及び60b(図中60r及び60bを省略)で発生した変調済光ビームをダイクロイック面68及び72によって共通の出射光軸上に集め、その軸上での再結合で発生した変調済多色光ビームを反射素子によって屈曲及び集中させている。このように反射素子を使用すると、前述の通り横方向色収差や軸方向色収差が発現しなくなる反面、図12に示す非対称歪等の他種収差が発現することとなりかねない。そこで、図11に示すように、変調済多色光ビームの光路を第1湾曲反射面78によって屈曲させ、投射レンズ70の合焦面に配置した第2湾曲反射面80に送り、その反射面80によって光路を更に屈曲させる。反射面78は凹面、反射面80は凸面である。反射面78及び80のいずれも非球面でよい。反射面78をトロイダル面にすれば両主軸に沿った歪が更に減る。図12に、上下及び左右方向に亘る視野の歪を、実際の像14aとより理想的な近軸像14pとの対比で示す。なお、反射面としては、ダイクロイック被覆を含む様々な被覆を使用することができる。
図10及び図11に例示した投射光学系には、更に偏向に関わる長所もある。即ち、更なる偏向を施したい場合、この光学系ではワイヤグリッド偏光器等の偏光器を1個、追加するだけでよい。色別に投射レンズを設けた場合でも各光路に偏光器を配する必要はない。
光路上への部品追加以外では、例えば色プロファイルの修正が本発明の好適な実施に役立つ。即ち、図2、図3及び図13に示した映写機50では従来と同じく赤、緑及び青の三色で一組としているが、これとは異なる組合せを用いてもよい。例えば赤、緑及び青に加え別の色も含む組合せを用い色域を拡充することや、どれかを別の色に差し替えて投映像に色を付けることができる。いずれの場合も、別の組合せを使用するのに必要な修正を光路上に施せばよい。
そして、図1Aに示した従来の映写機10と比べると、図2以降に示した構成の映写機50はかなり高輝度の像を形成することができる。即ち、図1Aに示した映写機10では、その空間光変調器30r、30g及び30bが小型液晶デバイスであるためにラグランジュ不変量及びエネルギ搬送能力が厳しい制約を受けており、提供できる光束が約5000ルーメンから高々25000ルーメンまでの範囲にとどまっていた。これに対し、図2以降に示した映写機50で提供できる光束は多く、30000ルーメンを超え70000ルーメン超の光束を投射することができる。
多投射レンズ実施形態
図17に、本発明の一実施形態に係る映写機50を示す。この映写機は光路毎に投射光学系を分けた構成であり、投射レンズ70r、70g及び70bが順に赤色光、緑色光及び青色光の投射を担っている。また、各光路上には、投射レンズ70r、70g及び70bのうち対応するものに向けてその色の光を収束させるフレネル視野レンズ84が配されている。図18はこの実施形態における光学部品配置を示す斜視図である。この実施形態の利点の一つは、さほど大きなレンズ素子が必要にならないことである。従ってその製造がかなり容易であり、マイクロディスプレイデバイス利用型映写機に比べコスト的にも優れている。また、図示例では投射レンズ70r、70g及び70bを上下に並べて配置しているが、他の並べ方をすること、例えば左右に並べることや同一の円上に並べることも可能である。上下に並べる利点は、画面上でのアスペクト比を単一のアナモルフィックレンズで変えられる点にある。まず、ディジタルシネマでは、画面上でのアスペクト比を1.85から2.39の範囲内で映画毎に設定できる。従って、画面上でのアスペクト比が空間光変調器のアスペクト比と合わないときがある。そうした場合、例えば画面の縁に空白を入れて(レターボクシングして)アスペクト比を合わせればよいが、それでは本来使用できるはずのピクセルが無駄になってしまう。そこで、これを光学的処理で正すため、相直交する二軸間で像の倍率が異なるアナモルフィックレンズを使用する。上述の実施形態で複数個の投射レンズを上下に並べているのは、1個のアナモルフィックレンズアタッチメント)(シリンドリカルレンズ群)で像の幅を伸縮できるようにするためである。
また、空間光変調器60を大きくすると、複数個ある投射レンズ同士の間隔も自然に大きくなる。これは、各空間光変調器の光軸が真っ直ぐ映写機外に延びているためである。投射レンズ間隔が大きいと像に視差が生じやすくなる。これを抑えるにはアナモルフィックレンズアタッチメントを複数個使用するか、或いは非常に大きなものを1個使用するか、いずれかが必要になろう。同じ理由で、3個ある投射レンズの焦点を調整し合焦状態を維持するための機構も大きくなる。そこで、本実施形態では、図26に示すように潜望鏡構造152を用い投射レンズ間隔を抑えている。また、この構造152を回動させれば、各液晶パネルからもたらされる像の横位置合わせをその液晶パネル上の像を実際に回動させることなく行うことができる。
更に、偏向反転で光円錐を倍加してあるため各投射レンズに入射する光円錐の左右寸法はその上下寸法の2倍になっている。照明系に発するこうした光円錐を漏れなく捉えうる投射レンズを実現するには、例えば、最も急峻な方向における光円錐の窄まり方に応じてFナンバーを決め、そのFナンバーを呈する回転対称の投射レンズを作成すればよい。この方法は最も単純な方法であるが、作成される投射レンズのその上下寸法が照明光ビームのそれと違うため、その投射レンズは上下方向に沿って部分的に使用されない。
また、より慎重な検討が必要になるが、相直交する二方向でそのFナンバーが異なる投射レンズも作成可能である。例えば、その投射レンズに楕円形のアパーチャ絞りを設ければよい。このように上下方向のFナンバーを抑え窄まり方を緩くする手法は、第1に、上下方向の開口寸法が小さくなるため漏洩光が減りその系のコントラスト比が高まる点で有益であり、第2に、その開口が上下方向に狭い分投射レンズの上下を削れる点で有益である。個々の投射レンズの上下部分を削ることで投射レンズ実装間隔を狭めることが可能になり、ひいては3個ある投射レンズ間の視差を抑えることができる。
立体映写
立体映写は3D上映とも呼ばれており、映画上映の分野で多大な関心を獲得している。また、その関心は、劇場へのディジタル映写機の普及が進むにつれて増してきている。そのなかで最も高い画質が得られるシステムは、一方のレンズを透過する偏向状態の光が他方のレンズでは阻止されるよう左右のレンズが構成された眼鏡を看者に装着させ、右目用偏光と左目用偏光を送って右目・左目間に別々の像を届けるものである。この種の立体映写システムでは、通常、左旋偏光と右旋偏光を利用し左右の目に異なる像を送る。それら、偏向状態が異なる二種類の光が相互作用すると有色偽像(偽色)が生じるが、映写機出射光の偏向状態を液晶の作用で全波長に亘り回転させる偏向変換器を設ければ、その有色偽像をより好適に抑えることができる。また、本発明では、大型液晶パネルを空間光変調器として用いているので、その液晶の性質に応じた傾向で既に偏向されている光を変調系から得ることができる。従って、偏向変換器を投射レンズに併設し又は内蔵させ適宜制御することで、右目に適した偏向状態の光と左目に適した偏向状態の光を時分割で発生させることができ、DMD利用型映写機即ち偏向変換を行う前に偏向を施さねばならない映写機に比べ出射光束が多くなる。また、出射光束が少ない既存の映写機ではディジタル3D映写用大型スクリーンを僅かに5フィート・ランベルトにしか照らすことができない。この照度は、既存のディジタルシネマ投射規格即ち14フィート・ランベルトをかなり下回っており、既存の映写機ではこれを達成できないことが明らかである。これに対し、本発明の映写機であれば、大きなエタンデュ値を有する光学系を利用してそうした高い画像形成性能を実現することができる。
図16に、色別変調系90の像側に偏向変換器82を配置した実施形態を示す。ここで使用する偏向変換器82は例えば米国コネチカット州ボールダ所在のColorlinkから入手できるALPS(商標)シリーズのデバイスであり、図示しないがその後段には微調整用偏光器(検光器)がある。ただ、図示の映写機は投射レンズ70が1個であるので、この偏向変換器82は全可視光域に亘りアクロマティック即ち無彩色なものにしなければならない。それに対し、図17に示す映写機では、3個ある投射レンズに対応して偏向変換器を3個設け、各偏向変換器の偏向軸を右目用・左目用間で切り替える構成を採ることができる。この構成であれば、偏向変換器がアクロマティックでなければならない波長域が単一レンズの場合に比べ狭いため、直線偏向を利用することが可能になり、仕組みがより単純になる。即ち、円偏向利用時には普通は円偏光眼鏡がほぼ必須なのに対し、直線偏向利用時はリターデーション部材抜きの偏光器でよいので、直線偏向の方がコスト的に有利である。
図24に、直線偏向を利用し別の形態で立体映写を行う実施形態を示す。本実施形態では、右目向け直線偏光の偏向軸と左目向け直線偏光の偏向軸を互いに直交させ、また液晶パネル群も右目用と左目用で別々にする。即ち、偏向ビームスプリッタ210から出射される二種類の偏向成分のうち一方を第1色別変調系90aに、またそれと直交する方向の偏向成分を第2色別変調系90bに、それぞれ供給する。なお、この図では第2色別変調系90bが枠線のみで描かれているが、その構成は第1色別変調系90aとほぼ同じ構成でよい。前掲の実施形態では偏向軸切替に伴い左右交互に視野が暗くなり右目左目間ちらつきが目に留まる恐れがあるが、本実施形態ではその偏向軸方向が異なる二種類の光をユーザの目に同時に届けるのでそうしたちらつきが生じない。また、一組の液晶パネル群で左右の像を得る構成に比べると、右目用と左目用で液晶パネル群を分けるこの構成では液晶パネル群の駆動速度を1/2に落とすことができ、従って、動偽像の発現を抑えることができる。更に、右目用と左目用の二系統ある色別変調系90a及び90bのうち一方に、偏向状態を回転させることで変調用液晶パネルからの光路長の差を打ち消す半波長板を設けることで、各変調パネル及びその周辺の光学系に入射する光の偏向状態を一致させることができる。例えば、照明光の偏向状態を偏向反転して偏向状態を一状態に揃えるやり方に代え、右目用の大型TFT液晶パネル群に供給される偏光と左目用の大型TFT液晶パネル群に供給される偏光とが、その偏向状態(偏向軸)が互いに直交した偏光になるよう、照明光ビーム中の相直交する偏向成分を両液晶パネル群に配給するやり方を採るとよい。その場合、液晶パネルから見て照明側に半波長板を設けてパネル入射光変調状態を液晶パネル群間で揃える一方、液晶パネルから見て像側に別の半波長板を設けてパネル毎に偏向状態を回転させれば、右目に届く光と左目に届く光の偏向状態が相直交することとなる。
偏向を利用し右目と左目に別々の情報を届ける方法のほかには、帯域シフトを利用する方法がある。この方法では、例えば、照明装置を右目用と左目用とに分け互いに異なる帯域にて交互に発光させる一方、看者には右目用帯域光を右目に通し左目用帯域光を左目に通す装置を身につけさせておく。或いは、液晶パネル群を右目用と左目用とに分け、照明光の入射先を適宜切り替えるようにする。いずれのやり方でもよいが、右目と左目の間でうまく色バランスを確保しホワイトポイントをほぼ一致させることが重要である。
以上説明した通り、図2以降に示した映写機50によれば、大面積のTFT液晶パネルを画像発生用の空間光変調器60r、60g及び60bとして用い、明るい照明装置でそれを照明するようにしたため、総効率を40〜50%程まで高めることができる。図1Aに示した従来のLCOS液晶利用型映写機では、前述の通りこれよりかなり低い効率しか得られないのが普通である。更に、通例によればそのエタンデュ値を大きくすると光学系が複雑且つ高価になってしまうはずであるが、この映写機50では、従来の映写機と違いそうした障りなしに、従来の映写機より高い輝度及び大きなエタンデュ値を実現することができる。
また、以上の詳細説明は本発明の好適な実施形態のうちある特定の実施形態に関するものである。ご理解頂ける通り、いわゆる当業者ならば、本発明をこれ以外の形態で実施することや、本発明の技術的範囲を逸脱しないで様々な改良を施すことができる。それら、他の実施形態や改良発明も、別紙特許請求の範囲によって定義される本発明の技術的範囲に属するものとする。例えば、近年では新たな種類のTFTを形成できるようになっている。共役ポリマ、オリゴマ等の素材を使用したOTFT(有機TFT)や、単層内適正拡散させたカーボンナノチューブモノレイヤを有するTFTである。これらのTFTも使用することができる。空間光変調器としては、光変調用液晶デバイスのほか、より最近に開発されたもの、例えばファラデー効果を利用して光を変調するMPCデバイスも使用できる。従って、本発明は、TFT液晶パネルを利用して像を投射する電子映写機に限定されるものではない。
従来技術に係るLCOS液晶利用映写機を示すブロック図である。 その変形例に係る映写機を示すブロック図である。 本発明の一実施形態に係る大型TFT液晶パネル利用映写機を示すブロック図である。 図2に示した映写機に備わる特徴事項のうち幾つかを示すブロック図である。 図2に示した映写機における光ビームの光路を示す斜視図である。 本発明で使用する照明装置の一例を示すブロック図である。 テレセントリックレンズを用い本発明を実施する際に発生する横方向色収差を示す平面図である。 従来技術で使用される大型液晶パネルを示す断面図である。 本発明で使用する簡素な大型液晶パネルの一例を示す断面図である。 本発明で使用する投射レンズの一例を示す側面図である。 その構成要素を示す側面図である。 本発明で使用する投射レンズの別例、特に一組の反射面で変調光路を屈曲させるものを示す斜視図である。 その構成要素を図10とは別の角度から見た接近斜視図である。 反射面の使用で生じる視野歪みを示す平面図である。 空間光変調器のうち1個の向きを変えた実施形態を示すブロック図である。 Fナンバーの違いによる映写機スループット効率の違いを示すグラフである。 液晶パネルのサイズと横方向色収差の関係を示すグラフである。 検光器ポジションの別例を示すブロック図である。 投射レンズを各色光路に設けた実施形態を示すブロック図である。 図17に示した3投射レンズ式映写機の構成要素を示す斜視図である。 二種類のランプを例に強度対位置特性を示すグラフである。 同じくスポット径別パワー対位置を示すグラフである。 同じく強度対角度特性を示すグラフである。 同じく遠視野強度対角度特性を示すグラフである。 キセノン管球ランプ複数個と偏向反転器を用いた映写機で生じる重複スポットを示す図である。 同じくエネルギ密度特性曲線同士の重複を示す図である。 本発明で使用する照明装置の別例、特に管球ランプを使用するものを示す正面図である。 同じく側面図である。 それにより形成される像を示す図である。 偏向反転器付LEDアレイの側面図である。 同じく正面図である。 その光源としてLEDアレイを用いる実施形態を示す模式図である。 その偏向軸が異なる二種類の右目用の直線偏光と左目用の直線偏光を別々の光路を介し対応する目に届けて立体映写を行う実施形態を示す図である。 本発明で使用する空間光変調器の一例を示すブロック図である。 各色光路長が互いに異なる実施形態を示す斜視図である。 ディザリング機構を有する実施形態を示す斜視図である。
符号の説明
10,50 映写機、12 むら補正器、14a 実際の像、14p 近軸像、14r,14g,14b 赤色(R)、緑色(G)及び青色(B)の像、20 多色光源、20r,20g,20b RGB各色光源、22 むら補正器、22r,22g,22b RGB別むら補正器、24r,24g,24b RGB別偏向ビームスプリッタ、26 ダイクロイック結合器、28 照明装置、28r,28g,28b,82r,82g,82b RGB別レンズ、30r,30g,30b RGB別反射性空間光変調器、32,70 投射レンズ、34 偏光反射器、36,202,210 偏向ビームスプリッタ、38 照明光ビーム、38g,58,64,66,102 反射面、40 表示画面、42,64r,64g,64b,194 半波長板、44 偏向選択性反射膜、52 低温鏡、54,56,68,72 ダイクロイック面(波長選択面)、60r,60g,60b RGB別透光性空間光変調器(変調用液晶パネル)、62 テレセントリックレンズ、70r,70g,70b RGB別投射レンズ、76 色成分分離器、78,80 湾曲反射面、82 偏向変換器、84 フレネル視野レンズ、90,90a,90b 色別変調系、92 色成分結合器、118 変調用液晶パネル、120 液晶層、122 薄膜トランジスタ(TFT)、124 ITO層、126 ガラス板、128 偏光膜、130 補償膜、132 色フィルタアレイ、134,136,147,148 抗反射被覆、137 偏光検光器、138 ディザ板、139 摩擦レス屈曲回動ベアリング、140 媒体駆動回路、141 電源、142,143 窓、146 散光層、150 塵埃阻止シール、152 潜望鏡構造、180 管球ランプ、182 アークギャップ、184 リフレクタ、186 焦点、188 像、190 発光ダイオード(LED)アレイ、190r,190g,190b RGB各色LEDアレイ、192 偏向ビームスプリッタアレイ、196 放熱器、198 チップ基板、200 LED、204 照明光中継器、206 スポット、208 強度曲線、250r,250g,250b RGB各色光路、O 共通光軸、Or,Og,Ob RGB各色光軸。

Claims (58)

  1. a)多色偏光を発生させる照明装置と、
    b)その光路上でその多色偏光から略テレセントリックな多色偏光ビームを発生させるレンズ素子と、
    c)その多色偏光ビームを複数本のテレセントリックな成分色光ビームに分割する色成分分離器と、
    d)それらの成分色光ビームを変調して複数本の変調済成分色光ビームを発生させる複数個の透光性空間光変調器と、
    e)それらの変調済成分色光ビームを共通光軸沿いに再結合して変調済多色光ビームを発生させる色成分結合器と、
    f)その変調済多色光ビームを表示画面に向ける投射レンズと、
    を備え、各透光性空間光変調器のエタンデュ値を照明装置のエタンデュ値に対して15%以内の差に止め又は照明装置のエタンデュ値より大きな値にしたディジタル映写機。
  2. 請求項1記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個の表面にその対角寸法が約5インチ以上の活性領域があるディジタル映写機。
  3. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済多色光ビームの光束が5000ルーメン超のディジタル映写機。
  4. 請求項1記載のディジタル映写機であって、上記レンズ素子がフレネルレンズを含むディジタル映写機。
  5. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上にもレンズ素子を備えるディジタル映写機。
  6. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上に補償器を備えるディジタル映写機。
  7. 請求項6記載のディジタル映写機であって、その補償器と投射レンズの間に偏光検光器を備えるディジタル映写機。
  8. 請求項6記載のディジタル映写機であって、成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上にも補償器を備えるディジタル映写機。
  9. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上に偏向回転器を備えるディジタル映写機。
  10. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置と光学的に結合したむら補正器を備えるディジタル映写機。
  11. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置がLED、LEDアレイ、キセノンランプ、レーザ及び水銀ランプのうち少なくともいずれかを有するディジタル映写機。
  12. 請求項10記載のディジタル映写機であって、そのむら補正器がレンズレットアレイを有するディジタル映写機。
  13. 請求項10記載のディジタル映写機であって、そのむら補正器がインテグレーティングバーを有するディジタル映写機。
  14. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置が、多色偏光のうち少なくとも一部が通る偏向回転器を有するディジタル映写機。
  15. 請求項1記載のディジタル映写機であって、色再現用の反射性色フィルタアレイを備えるディジタル映写機。
  16. 請求項1記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が薄膜トランジスタを有する透光性液晶変調器であるディジタル映写機。
  17. 請求項16記載のディジタル映写機であって、その薄膜トランジスタが有機薄膜トランジスタであるディジタル映写機。
  18. 請求項16記載のディジタル映写機であって、その薄膜トランジスタがカーボンナノチューブを含むディジタル映写機。
  19. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置がワイヤグリッド偏光器を有するディジタル映写機。
  20. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上に偏光器を備えるディジタル映写機。
  21. 請求項20記載のディジタル映写機であって、その偏光器が吸光性偏光器又は反射性偏光器であるディジタル映写機。
  22. 請求項1記載のディジタル映写機であって、多色偏光ビームの光路上に散光反射性偏光膜を備えるディジタル映写機。
  23. 請求項1記載のディジタル映写機であって、成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上に散光性光学部品を備えるディジタル映写機。
  24. 請求項1記載のディジタル映写機であって、その透光性空間光変調器のうち少なくとも1個の表面にその対角寸法が約10インチ以上の活性領域があるディジタル映写機。
  25. 請求項1記載のディジタル映写機であって、その透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が非晶質基板上に形成された液晶空間光変調器であるディジタル映写機。
  26. 請求項1記載のディジタル映写機であって、色成分分離器が、成分色光ビームを少なくとも3本発生させ、透光性空間光変調器が、それら少なくとも3本の成分色光ビームを変調し少なくとも3本の変調済成分色光ビームを発生させるため少なくとも3個あり、色成分結合器が、それら少なくとも3本の変調済成分色光ビームを共通光軸沿いに再結合して変調済多色光ビームを発生させるディジタル映写機。
  27. 請求項1記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が抗反射被覆を有するディジタル映写機。
  28. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置から透光性空間光変調器までの光路長が、透光性空間光変調器のうち少なくとも2個の間で異なるディジタル映写機。
  29. 請求項9記載のディジタル映写機であって、その偏向回転器が積層偏光器を有するディジタル映写機。
  30. 請求項1記載のディジタル映写機であって、投射レンズがアナモルフィックレンズを含むディジタル映写機。
  31. 請求項1記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が塵埃阻止部材を有するディジタル映写機。
  32. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置が管球ランプを有するディジタル映写機。
  33. 請求項32記載のディジタル映写機であって、照明装置が、その管球ランプを側方から結像させる部材を有するディジタル映写機。
  34. 請求項1記載のディジタル映写機であって、照明装置が、その発光波長域が異なる少なくとも2個のLEDを有するディジタル映写機。
  35. 請求項1記載のディジタル映写機であって、モータ、圧電アクチュエータ及びソレノイドのうち少なくともいずれかを含むディザリングアクチュエータを少なくとも1個備えるディジタル映写機。
  36. 請求項35記載のディジタル映写機であって、ディザリングアクチュエータのうち少なくとも1個が、ガラス製のプラノオプティカルプレートを傾斜させるディジタル映写機。
  37. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済成分色光ビームのうち少なくとも1本の光路上にブルアフィルタを備えるディジタル映写機。
  38. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済多色光ビームの光路上にブルアフィルタを備えるディジタル映写機。
  39. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済多色光ビームの光路上に偏向回転用のオプティカルウェッジを備えるディジタル映写機。
  40. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済多色光ビームの光路上に板状の偏向回転器を備えるディジタル映写機。
  41. 請求項40記載のディジタル映写機であって、その偏向回転器が共通光軸に対し傾斜を有するディジタル映写機。
  42. 請求項1記載のディジタル映写機であって、多色含有光ビームの光路上にシャッタを備えるディジタル映写機。
  43. 請求項1記載のディジタル映写機であって、変調済多色光ビームを凸状反射面方向に送る凹状反射面を備えるディジタル映写機。
  44. 請求項43記載のディジタル映写機であって、その凸状反射面が投射レンズの合焦面近傍にあるディジタル映写機。
  45. 請求項43記載のディジタル映写機であって、その凸状反射面が非球面であるディジタル映写機。
  46. 請求項43記載のディジタル映写機であって、その凹状反射面がトロイダル面であるディジタル映写機。
  47. 請求項1記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が単一の現場可換ユニットとして実装されたディジタル映写機。
  48. 請求項35記載のディジタル映写機であって、そのディザリングアクチュエータのうち少なくとも1個がワイヤグリッド偏光器を傾斜させるディジタル映写機。
  49. 請求項1記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が磁性フォトニック結晶変調器であるディジタル映写機。
  50. 請求項1記載のディジタル映写機であって、実装時の投射レンズ間隔を狭める潜望鏡構造を少なくとも1個備えるディジタル映写機。
  51. a)レンズ素子を用いテレセントリックな多色偏光ビームを発生させる照明装置と、
    b)その多色偏光ビームを複数本のテレセントリックな成分色光ビームに分割する色成分分離器と、
    c)少なくとも
    i)成分色光ビームのうち1本目の光路上に配置されその成分色光ビームを変調して1本目の変調済成分色光ビームを発生させる第1透光性空間光変調器、並びに
    ii)成分色光ビームのうち2本目の光路上に配置されその成分色光ビームを変調して2本目の変調済成分色光ビームを発生させる第2透光性空間光変調器
    を有する色別変調系と、
    d)それらの変調済成分色光ビームを共通光軸沿いに再結合して変調済多色光ビームを発生させる色成分結合器と、
    e)その変調済多色光ビームを表示画面に向けられるようその共通光軸に対し同軸配置された投射レンズと、
    を備え、第1透光性空間光変調器のエタンデュ値を照明装置のエタンデュ値に対して15%以内の差に止めたディジタル映写機。
  52. 請求項51記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が磁性フォトニック結晶変調器であるディジタル映写機。
  53. a)レンズ素子を用いテレセントリックな多色偏光ビームを発生させる照明装置と、
    b)その多色偏光ビームを複数本のテレセントリックな成分色光ビームに分割する色成分分離器と、
    c)少なくとも
    i)成分色光ビームのうち1本目の光路上に配置されその成分色光ビームを変調して1本目の変調済成分色光ビームを発生させる第1透光性空間光変調器、並びに
    ii)成分色光ビームのうち2本目の光路上に配置されその成分色光ビームを変調して2本目の変調済成分色光ビームを発生させる第2透光性空間光変調器
    を有する色別変調系と、
    d)それらの変調済成分色光ビームを共通光軸沿いに再結合して変調済多色光ビームを発生させる色成分結合器と、
    e)変調済多色光ビームを凸状反射面方向に送る凹状反射面と、
    f)変調済多色光ビームを表示画面に向けられるよう共通光軸に対し同軸配置された投射レンズと、
    を備えるディジタル映写機。
  54. 請求項53記載のディジタル映写機であって、その凸状反射面が投射レンズの合焦面近傍にあるディジタル映写機。
  55. 請求項53記載のディジタル映写機であって、その凸状反射面が非球面であるディジタル映写機。
  56. 請求項53記載のディジタル映写機であって、その凹状反射面がトロイダル面であるディジタル映写機。
  57. 請求項53記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が非晶質基板上に形成された透光性液晶デバイスであるディジタル映写機。
  58. 請求項53記載のディジタル映写機であって、透光性空間光変調器のうち少なくとも1個が磁性フォトニック結晶変調器であるディジタル映写機。
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