JP2009537313A - 気相酸化による塩素の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、触媒が少なくとも1種の担体物質および少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる、酸素を用いた塩化水素の触媒的気相酸化による塩素の製造方法に関する。本発明はまた、少なくとも1種の担体物質および少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる新規な触媒に関する。
Description
本発明は、触媒が少なくとも1種の担体物質および少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる、酸素を用いた塩化水素の触媒的気相酸化による塩素の製造方法、並びに少なくとも1種の担体物質および少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる新規な触媒に関する。
1868年にDeaconにより開発された、発熱平衡反応による、酸素を用いた塩化水素の触媒的酸化方法は、工業的塩素化学の始まりであった。しかしながら、Deacon法は、塩素アルカリ電気分解にほとんど取って代わられた。実質的には、塩素の製造方法の全てが塩化ナトリウム水溶液の電気分解によるものとなった(Ullmann Encyclopedia of Industrial Chemistry, seventh release, 2006)。しかしながら、Deacon法の魅力は近年再び増している。なぜなら、塩素に対する世界的な需要が、水酸化ナトリウム溶液に対する需要よりも急速に伸びているからである。塩化水素の酸化による塩素の製造方法は、水酸化ナトリウム溶液の調製とは無関係であるので、この展開を満足する。更に、塩化水素は、例えばイソシアネートの調製におけるようなホスゲン化反応において、付随生成物として大量に得られる。
塩化水素の塩素への酸化は、平衡反応である。温度が上昇するにつれて、平衡位置は所望の最終生成物を損なう方向へシフトする。従って、低温での反応を可能にし、できる限り高い活性を有する触媒を使用することが有利である。
塩化水素の酸化のための最初の触媒は、活性成分として塩化銅または酸化銅を含有しており、既に1868年にDeaconにより記載されていた。しかしながら、該触媒は、低温(<400℃)で低い活性しか有していなかった。反応温度の上昇によって、活性を高めることは確かに可能ではあったが、高温での活性成分の揮発性により、触媒の活性が急速に低下するという欠点があった。
EP 0 184 413は、酸化クロム系触媒を用いた塩化水素の酸化を記載している。しかしながら、この方法により実現される工程は、不十分な活性および高い反応温度を有している。
触媒活性成分としてルテニウムを含有する、塩化水素の酸化のための最初の触媒は、既に1965年にDE 1 567 788に記載されていた。この場合、例えばRuCl3から出発して二酸化ケイ素および酸化アルミニウムに担持されている。しかしながら、これらRuCl3/SiO2触媒の活性は、非常に低い。更に、活性量の酸化ルテニウムまたはルテニウム混合酸化物、および担体物質としての各種酸化物(例えば二酸化チタン、二酸化ジルコニウムなど)を含有するルテニウム系触媒が、DE−A 197 48 299に特許請求されている。これに関して、酸化ルテニウムの含有量は0.1重量%〜20重量%であり、酸化ルテニウムの平均粒径は1.0nm〜10.0nmである。更に、二酸化チタンまたは二酸化ジルコニウムに担持されたルテニウム触媒は、DE−A 197 34 412から知られている。例えば、ルテニウム−カルボニル錯体、無機酸のルテニウム塩、ルテニウム−ニトロシル錯体、ルテニウム−アミン錯体、有機アミンのルテニウム錯体、またはルテニウム−アセチルアセトネート錯体のような多くのルテニウム出発化合物が、同特許に記載されている塩化ルテニウム触媒および酸化ルテニウム触媒の製造のために記載されており、該触媒は、酸化チタンおよび酸化ジルコニウムの少なくとも1種の化合物を含有している。好ましい態様では、ルチル型TiO2が担体として使用されている。この酸化ルテニウム触媒はかなり高い活性を有するが、その製造方法は、コストがかかり、沈殿、その後の沈殿を伴った含浸などのような複数の操作を必要とし、その製造方法のスケールアップは工業的に困難である。加えて、高温で、酸化ルテニウム触媒は焼結する傾向もあり、従って、失活する傾向がある。
WO 2004/031074は、担持金系触媒を記載している。ルテニウム触媒と比較して高い、低温(250℃未満)でのその活性が利点として示されているが、このことは、データまたは実施例によって明らかにされていない。
Deacon法のためにこれまで開発された触媒は、多くの欠点を有する。その活性は低温で不十分である。反応温度の上昇によって、活性を高めることは確かに可能ではあったが、これは、触媒成分の焼結/失活または損失を招いていた。更に、従来の触媒は、原料気体流れ中の微量の硫黄と敏感に反応し得る。
Ullmann Encyclopedia of Industrial Chemistry, seventh release, 2006
本発明の目的は、低温で高い活性を伴って塩化水素の酸化を実施でき、原料気体流れ中の硫黄に対して低い感受性を示す、触媒系を提供することである。
この目的は、触媒活性成分と担体物質との極めて特別な組み合わせの開発によって達成される。
酸素を用いた塩化水素の触媒的気相酸化において、担持金属硫化物触媒が活性であることが、意外にも見出された。
担体物質は、好ましくは、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、チタン混合酸化物、ジルコニウム混合酸化物、アルミニウム混合酸化物およびケイ素混合酸化物のような金属または半金属の酸化物および混合酸化物、並びにカーボンブラックおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される。カーボンナノチューブは、高温での酸化に対してかなり安定であるといった、カーボンブラックに優る利点を有する。好ましい態様では、二酸化錫(IV)、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブを、触媒活性成分のための担体として使用する。
触媒金属硫化物の金属は、好ましくは、Ru、Os、Cu、Au、Bi、Pd、Pt、Rh、Ir、Re、Agおよびそれらの混合物からなる群から選択される。触媒金属硫化物の触媒活性金属として、下記元素が特に適している:ルテニウム、イリジウムおよび白金、好ましくはイリジウムまたは白金と組み合わせたルテニウム。
触媒活性成分の適用量は、触媒中の金属の量に基づいて、通常0.1〜80重量%の範囲、好ましくは1〜50重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲である。
触媒成分は、様々な方法によって適用できる。例えば、溶液で存在する適当な出発化合物或いは液状またはコロイド状の出発化合物で担体を湿潤および湿式含浸する方法、沈殿法および共沈法、並びにイオン交換および気相コーティング(CVD、PVD)を使用できるが、それらに限定されない。含浸と、続く硫化物(好ましくは硫化ナトリウムまたは硫化水素)による沈殿との組み合わせが好ましい。
可能な促進剤は、塩基作用を有する金属であり、その例は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、好ましくはアルカリ金属(特にNaおよびCs)およびアルカリ土類金属、特に好ましくはアルカリ土類金属(特にSrおよびBa)である。
促進剤は、含浸およびCVD法によって触媒に適用され得るが、それらに限定されない。含浸が好ましく、特に好ましくは触媒主成分の適用後に含浸を行う。
触媒主成分の分散を安定化するため、例えば、酸化スカンジウム、酸化マンガンおよび酸化ランタンなどのような様々な分散安定剤を使用できるが、それらに限定されない。安定剤は、好ましくは、触媒主成分と一緒に含浸および/または沈殿させることによって適用される。
また、記載した安定剤は一般に、使用されている担体の比表面積を高温で安定化する。
触媒は、常圧下または好ましくは減圧下、好適には40〜200℃で乾燥され得る。乾燥時間は、好ましくは10分間〜6時間である。
カーボンナノチューブ、二酸化錫、二酸化チタンおよびカーボンブラックから選択された少なくとも1種の担体物質、並びにルテニウム、イリジウム、白金、ロジウムおよびそれらの混合物から選択された少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる触媒が好ましい。触媒金属硫化物がRu硫化物とPt硫化物との混合物およびRu硫化物とIr硫化物との混合物から選択される触媒が、特に好ましい。
非焼成型または焼成型で触媒を使用できる。焼成は、還元、酸化または不活性相で実施でき、好ましくは焼成は、空気、酸素または窒素の流れの中で、より好ましくは窒素雰囲気下で実施される。焼成は、150〜600℃の温度範囲、好ましくは200〜300℃の範囲で実施される。焼成時間は好ましくは1〜24時間である。酸化条件下での焼成の場合、金属硫化物の硫黄含有量は、含有酸化物のために低下され得る。
好ましくは、既に上記したように、Deacon法として知られている触媒法で触媒を使用する。Deacon法では、塩化水素が発熱平衡反応により酸素で酸化されて塩素を生成し、水蒸気が得られる。反応温度は、通常150℃〜500℃であり、通常の反応圧力は、1〜25barである。この反応は平衡反応なので、触媒がまだ十分な活性を有する可能な限り低い温度で実施することが好都合である。更に、塩化水素に対して化学量論量より過剰の酸素を使用することが好都合である。例えば、2倍〜4倍過剰の酸素を通常使用する。選択性が損なわれる危険性はないので、比較的高圧で、従って常圧下での場合より長い滞留時間で、操作することが経済的に有利であり得る。
触媒を用いた塩化水素の酸化は、断熱的または好ましくは等温的或いはほぼ等温的に、不連続式、しかしながら好ましくは流動床法または固定床法、好適には固定床法のような連続式で、特に好ましくは不均一触媒を含む多管式反応器で、180℃〜500℃、好ましくは200℃〜400℃、特に好ましくは220℃〜350℃の反応器温度で、1〜25bar(1,000〜25,000hPa)、好ましくは1.2〜20bar、特に好ましくは1.5〜17bar、とりわけ2.0〜15barの圧力で実施され得る。
触媒を用いた塩化水素の酸化を実施する常套の反応装置は、固定床反応器または流動床反応器である。触媒を用いた塩化水素の酸化は、好ましくは、複数の段階で実施することもできる。
断熱的、等温的またはほぼ等温的な方法において、複数個、即ち2〜10個、好ましくは2〜6個、特に好ましくは2〜5個、とりわけ2〜3個の、中間冷却を伴った直列反応器を使用できる。酸素は、第一反応器上流で塩化水素と一緒に添加され得るか、または各反応器に分配して添加され得る。この各反応器の直列配置は、1つの装置内で組み合わせることもできる。
該方法に適した器具の更に好ましい態様は、流れ方向に触媒活性が増大された、構造化触媒充填物の使用を含む。触媒充填物のこのような構造化は、触媒担体を活性物質で異なった程度に含浸することにより、または不活性物質で触媒を異なって希釈することにより達成され得る。不活性物質として、例えば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウムまたはそれらの混合物、酸化アルミニウム、ステアタイト、セラミック、ガラス、グラファイトまたはステンレス鋼の、リング、円筒体または球体を使用できる。触媒成形物品の好ましい使用にとっては、不活性物質は、好適には類似した外寸を有すべきである。
触媒成形物品として任意形状の成形物品が適しており、タブレット、リング、円筒体、星形、車輪または球体が好ましく、リング、円筒体または星形ストランドが特に好ましい。
好適には、単一のパスにおける塩化水素の転化率は、15〜90%、好ましくは40〜85%、特に好ましくは50〜70%に制限され得る。分離後、未反応塩化水素の一部分または全量を、触媒を用いた塩化水素の酸化に再循環できる。反応器入口における塩化水素と酸素との体積比は、好ましくは1:1〜20:1、より好ましくは2:1〜8:1、特に好ましくは2:1〜5:1である。
高圧水蒸気を生成するため、有利には、触媒を用いた塩化水素の酸化における反応熱を利用できる。この水蒸気は、ホスゲン化反応器および/または蒸留塔、特にイソシアネート蒸留塔を操作するために利用できる。
生成した塩素を、更なる工程で分離する。分離工程は通常、複数の工程、即ち、生成気体流れからの未反応塩化水素の分離および触媒を用いた塩化水素の酸化への任意の再循環、実質的に塩素および酸素を含有する得られた流れの乾燥、および乾燥した流れからの塩素の分離を含む。
未反応塩化水素と生成水蒸気との分離は、塩化水素の酸化により生成された気体流れからの、冷却による塩酸の凝縮によって実現され得る。塩化水素を、希塩酸または水に吸収させることもできる。
塩化水素の酸化のための本発明の触媒は、低温での高活性を特徴とする。
以下の実施例により本発明を説明する。
実施例1:カーボンブラックへの硫化ルテニウムの担持
10gのカーボンブラック(Vulcan XC72)を、撹拌機、還流冷却器、硫化水素または窒素用の注入管および排ガス用の排気口を備えた丸底フラスコ内で、超音波を用いて450mlの水に懸濁させ、市販塩化ルテニウムn水和物10gの水45ml溶液を添加し、窒素を流通させながら混合物を30分間撹拌した。次いで、40倍過剰の硫化水素を懸濁液に5時間にわたって流通させた。過剰の硫化水素を窒素で排出し、固体を濾取し、水で数回洗浄した。湿潤固体を真空下70℃で予備乾燥し、100℃で一晩乾燥した。
10gのカーボンブラック(Vulcan XC72)を、撹拌機、還流冷却器、硫化水素または窒素用の注入管および排ガス用の排気口を備えた丸底フラスコ内で、超音波を用いて450mlの水に懸濁させ、市販塩化ルテニウムn水和物10gの水45ml溶液を添加し、窒素を流通させながら混合物を30分間撹拌した。次いで、40倍過剰の硫化水素を懸濁液に5時間にわたって流通させた。過剰の硫化水素を窒素で排出し、固体を濾取し、水で数回洗浄した。湿潤固体を真空下70℃で予備乾燥し、100℃で一晩乾燥した。
触媒試験
80ml/分(STP)の塩化水素および80ml/分(STP)の酸素の気体混合物を、300℃で、石英製反応管(直径10mm)内の充填固定床における実施例1からの触媒に流通させた。電気的に加熱された流動床の砂によって石英製反応管を加熱した。30分後、生成気体流れを、16%濃度のヨウ化カリウム溶液に10分間流通させた。次いで、流通した塩素の量を測定するために、生成したヨウ素を0.1Nチオスルフェート標準溶液で逆滴定した。表1に示した更なる硫化物を同様に試験した。表1に示した塩素量が生じた。
80ml/分(STP)の塩化水素および80ml/分(STP)の酸素の気体混合物を、300℃で、石英製反応管(直径10mm)内の充填固定床における実施例1からの触媒に流通させた。電気的に加熱された流動床の砂によって石英製反応管を加熱した。30分後、生成気体流れを、16%濃度のヨウ化カリウム溶液に10分間流通させた。次いで、流通した塩素の量を測定するために、生成したヨウ素を0.1Nチオスルフェート標準溶液で逆滴定した。表1に示した更なる硫化物を同様に試験した。表1に示した塩素量が生じた。
硫化物化合物に加えて、選択した酸化物化合物の活性も試験した(表1参照)。
Claims (11)
- 触媒が少なくとも1種の担体物質および少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる、酸素を用いた塩化水素の触媒的気相酸化による塩素の製造方法。
- 担体物質が、酸化チタン、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、チタン混合酸化物、ジルコニウム混合酸化物、アルミニウム混合酸化物およびケイ素混合酸化物のような金属または半金属の酸化物および混合酸化物、並びにカーボンブラックおよびカーボンナノチューブからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 触媒金属硫化物の金属がRu、Os、Cu、Au、Bi、Pd、Pt、Rh、Ir、ReおよびAgからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
- 触媒金属硫化物化合物の水溶液または懸濁液を担体物質に適用し、次いで、好ましくは不活性ガス雰囲気下、乾燥および/または焼成することによって、触媒を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 実質的に硫黄不含有の触媒金属化合物の水溶液または懸濁液を担体物質に適用し、金属硫化物、好ましくはアルカリ金属硫化物および/またはアルカリ土類金属硫化物により触媒金属硫化物を沈殿させ、次いで、好ましくは不活性ガス雰囲気下、乾燥および/または焼成することによって、触媒を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- 触媒金属がルテニウムである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
- 担体が二酸化錫、カーボンブラックまたはカーボンナノチューブである、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
- 気相酸化の反応温度が450℃以下であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
- 触媒が少なくとも1種の担体物質および少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる、酸素を用いた塩化水素の触媒的気相酸化のための触媒。
- カーボンナノチューブ、二酸化錫、二酸化チタンおよびカーボンブラックから選択された少なくとも1種の担体物質、並びにルテニウム、イリジウム、白金、ロジウムおよびそれらの混合物から選択された少なくとも1種の触媒金属硫化物を含んでなる触媒。
- 触媒金属硫化物がRu/Pt硫化物およびRu/Ir硫化物から選択される、請求項10に記載の触媒。
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