JP2009531038A - タンパク質強化冷凍デザート - Google Patents

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Abstract

本発明は、栄養バランスのとれた冷凍デザート、詳細には、高タンパク質含量を有する低温殺菌冷凍デザート、及びそれらを製造するための方法に関する。乳清タンパク質ミセル、その濃縮液、及び/又はその粉末は、冷凍デザートの製造において使用可能である。
【選択図】 図1

Description

発明の分野
本発明は、冷凍デザート、詳細には、高タンパク質含量を有する低温殺菌冷凍デザート、及びそれらを製造するための方法に関する。本発明はまた、冷凍デザートの製造における乳清タンパク質ミセル、その濃縮液、及び/又はその粉末の使用に関する。
背景
冷凍ソルベ、特に脂肪含有アイスクリームの栄養価を改良しようとする試みが多数行われてきた。
健康によい冷凍菓子を消費者に提供することを目的として、多数の異なる解決策が、今日まで示唆されてきた。こうしたものとして、脂肪低減冷凍菓子の提供、従来の冷凍菓子中に存在する炭水化物量の低減、添加剤の量の低減、等が挙げられる。
例えば、米国特許第5308628号は、増粘剤を含まないヨーグルト系冷凍乳製品を調製するための方法に関する。
低脂肪アイスクリームは、数十年間市場に出ている。これらのレシピは、一般に、炭水化物含量がより高く、人工甘味料を利用し、又はタンパク質含量がより高い。高タンパク質冷凍食品は、例えば、米国特許出願公開第2006/0008557号に開示されている。同様に、タンパク質系マクロコロイドを含む無脂肪又は低脂肪冷凍デザートは、米国特許第4855156号に開示されている。
米国特許第4853246号には、凍結でき、ラクトース及び脂肪含量が低い乳製品が記載されている。
国際公開第01/64065号パンフレットは、低カロリーであり、多量のタンパク質を含むので、理想的にダイエット向けにふさわしい冷凍菓子組成物をさらに提供する。
しかし、しばしば、これらの解決策が、栄養的にバランスのとれた冷凍菓子をもたらさないのは、タンパク質、炭水化物又は脂肪のうちの1つが、適量存在しないか、又は過剰量存在するからである。実際、現在の解決策は、1つの栄養分(例えば、脂肪)の欠乏を過剰の他のもの(例えば、炭水化物)によって補償する場合が多い。
栄養バランスが改良された菓子を提供しようとする試みでは、欧州特許第1676486号は、全エネルギー含量の55〜75%の炭水化物、全エネルギー含量の10〜15%のタンパク質、及び全エネルギー含量の15〜40%の脂肪の使用を教示し、全エネルギー含量の15%未満が飽和脂肪酸によって供給される。しかし、存在するタンパク質の量が依然として非常に少なく、炭水化物の量が、非常に多い。
アイスクリームのタンパク質含量は、多様な市販の富タンパク質乳成分を選択することによって向上させ得る。しかし、この解決策には、その限界があり、冷凍菓子で使用されるタンパク質量を増加させると、アイスクリームミックスを熱加工する際に、多数の問題が随伴される場合が多い。例えば、高タンパク質含量は、最終の冷凍菓子製品の望ましくないテクスチャー及び安定性の低下をもたらす粘度上昇、不安定化、及びゲル化を誘起する場合がある。
実際に、タンパク質、詳細には乳清タンパク質が、脂肪に対する部分的な代替品として、及び食品用途の乳化剤としても益々使用されつつある。
米国特許第6767575B1号には、乳清タンパク質凝集化製品の調製が開示され、そこでは、乳清タンパク質は、酸性化及び加熱によって変性されている。こうして得られたタンパク質凝集体は、食品用途で使用される。
独国特許第1079604号には、チーズ製造の改良が記載され、そこでは、その後原料乳に添加される不溶性乳清タンパク質を得る目的で、乳清タンパク質は、最適pH値で熱処理を受ける。
国際公開第93/07761号パンフレットは、脂肪代替物として使用し得る乾燥微粒子化タンパク質製品の提供に関する。
米国特許第5750183号には、脂肪を含有しない脂肪代替物として有用であるタンパク質系微粒子を製造するための方法が開示されている。
欧州特許第0412590号ではまた、アイスクリーム等の食品組成物における脂肪置換体として変性乳清タンパク質が使用されている。
国際公開第91/17665号パンフレットにはまた、タンパク質系脂肪代替物が開示され、そこでは、タンパク質は、水分散性の微粒子化変性乳清タンパク質の形態で存在する。
米国特許第4107334号は、乳清タンパク質の熱変性が、望ましい特性を備えるアイスクリームを提供するには不十分であることをさらに示唆し、アイスクリーム中に組込む前に、タンパク質分解によって変性タンパク質を改変することをさらに示唆する。
しかし、球形タンパク質、特に乳清タンパク質を含有する製品を製造する際に遭遇する問題の1つは、その加工性における制限である。実際、加熱される場合、又は酸性若しくはアルカリ性環境にさらされる場合、又は塩の存在下で、タンパク質分子は、その自然の構造を失い、多様なランダム構造(例えば、ゲル)に再構築される傾向がある。
乳清タンパク質のゲル化水性組成物の調製は、欧州特許第1281322号の主題である。
Elofssonらは、International Dairy Journal、1997、p.601〜608で、乳清タンパク質濃縮液の低温ゲル化を記載している。
同様に、Kilaraらは、Journal of Agriculture and Food Chemistry、1998、p.1830〜1835で、pHが乳清タンパク質の凝集及びそのゲル化の及ぼす効果を記載している。
このゲル効果は、加工性(例えば、タンパク質含有製品の製造で使用される機械の詰まり)の面だけでなく、こうして得られるテクスチャーの面でも制約事項を提供し、冷凍デザート用途に対して望ましくない恐れがある、
したがって、タンパク質の使用を拡げるためには、タンパク質の変性を制御することが望ましい。
International Dairy Federation、1998、189〜196で報告された、Proceedings of the Second International Whey Conference、Chicago、October 1997では、Britten Mは、乳清タンパク質の機能性を改良するための熱処理を議論している。乳清タンパク質微粒子分散液を95℃で製造するための方法が記載されている。
Erdmanは、Journal of American College of Nutrition、1990、p.398〜409で、高せん断及び高熱を使用しても、微粒子化タンパク質の性質は影響されないことを記載している。
欧州特許第0603981号にはまた、タンパク質を含有する熱安定性の水中油エマルジョンが記載されている。
米国特許第5882705号で、Satoらは、加水分解された乳清タンパク質溶液を熱処理することによってミセル状乳清タンパク質を得た。ミセル状乳清タンパク質は、不規則形状であることを特徴とする。
乳清タンパク質を使用することによって遭遇するさらなる問題は、最終製品の味覚プロフィールに対するその影響であり、例えば、それらは、渋み感覚を残す恐れがある。
したがって、本発明の目的は、消費者に対する冷凍デザートの効果(例えば、冷凍デザートの栄養プロフィール)の改良、及び/又はタンパク質含有冷凍デザートの感覚プロフィールの改良、のための方法を提供することである。
発明の概要
したがって、本目的は、独立クレームの特徴によって実現される。従属クレームは、本発明の中心概念をさらに発展させる。
本目的を実現するために、本発明の第1の態様では、乳清タンパク質ミセルを含む低温殺菌冷凍デザートが提供される。
第2の態様では、本発明は、8%を超えるタンパク質含量を有し、タンパク質の少なくとも一部が、乳清タンパク質ミセルとして存在する冷凍デザートを提供する。
さらなる態様は、6%を超える、好ましくは8%を超える、最も好ましくは10%を超えるタンパク質含量、及び本質的に中性のpH値を有し、脂肪のカロリー値が、45%未満である、低温殺菌冷凍デザートに関する。
少なくとも8重量%のタンパク質と、15〜28重量%の炭水化物と、3〜7重量%の脂肪と、を含む低温殺菌冷凍アイスクリームは、本発明の別の態様下に含まれる。
冷凍デザートにおける乳清タンパク質ミセルの使用は、本発明の別の態様を構成する。
最後に、さらなる態様において、本発明は、冷凍デザートを製造するための方法であって、少なくとも、
a.乳清タンパク質ミセル、その濃縮液、又はその粉末を含む成分ミックスをブレンドするステップと、
b.ミックスを低温殺菌するステップと、
c.任意選択でミックスをホモジナイズするステップと、
d.ミックスを冷凍するステップと、
を含む方法を提供する。
本発明は、添付の図に示される一部の好ましい実施形態を参照して、以降さらに説明される。
発明の詳細な説明
一態様において、本発明は、乳清タンパク質ミセルを含む冷凍デザートに関する。
図1は、本発明の冷凍デザートで使用し得る乳清タンパク質ミセルの概略図であり、乳清タンパク質は、タンパク質の親水性部分が凝集体の外側部分に向かって配向し、タンパク質の疎水性部分がミセルの内部「コア」に向かって配向するような仕方で配置されている。こうしたエネルギー的に有利な立体配置は、親水性環境においてこれらの構造に良好な安定性を与える。
特定のミセル構造は、図、特に図3、4、5及び6から知ることができ、本発明で使用されるミセルは、変性乳清タンパク質の球状集合体から本質的になる。本発明のミセルは、特に、その規則的な球状の形状を特徴とする。
その二重性(親水性及び疎水性)のために、タンパク質のこの変性状態によって、疎水相、例えば、脂肪滴又は空気、と親水相の相互作用が可能になるように思われる。したがって、乳清タンパク質ミセルは、完全な乳化及び発泡特性を有する。
さらに、ミセルは、80%を超える生成ミセルが、1ミクロン未満、好ましくは100〜900nm、より好ましくは100〜770nm、最も好ましくは200〜400nmの粒径を有する鋭い粒径分布を示すような仕方で生成し得る。
ミセルの平均直径は、透過型電子顕微鏡法(TEM)を使用して測定し得る。理論に拘束されることを望むものではないが、ミセル形成の間、いかなる追加のタンパク質分子もはじくミセルの全体的な帯電のために、ミセルは「最大」径に到達するので、ミセル径のそれ以上の成長が不可能であると考えられている。これによって、観測される狭い粒径分布を説明し得る。
本発明で使用し得る乳清タンパク質ミセルは、例えば、以下で詳細に説明される方法によって取得可能である。
ミセル製造で使用される乳清タンパク質として、任意の市販の乳清タンパク質分離物又は濃縮液、すなわち、乳清タンパク質を調製するための当技術分野で知られている任意の方法によって得られる乳清タンパク質、並びに、それらから調製される乳清タンパク質画分、又はβ−ラクトグロブリン(BLG)、α−ラクトアルブミン、及び血清アルブミン等のタンパク質を使用し得る。特に、チーズ製造の副生品として得られる甘味乳清、酸カゼイン製造の副生品として得られる酸乳清、ミルク精密濾過によって得られる天然乳清、又はレンネットカゼイン製造の副生品として得られるレンネット乳清を、乳清タンパク質として使用し得る。乳清タンパク質は、単一供給源からでも任意の供給源の混合物からであってもよい。乳清タンパク質は、ミセルを形成する前にいずれの加水分解ステップも受けないことが好ましい。したがって、乳清タンパク質は、ミセル化の前に、いずれの酵素処理にも掛けない。本発明によれば、乳清タンパク質をミセル形成過程で使用し、その加水分解物を使用しないことが重要である。
乳清タンパク質の天然供給源は、ウシ起源の乳清分離物に限定されず、あらゆる哺乳類動物種からの乳清分離物(例えば、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ラクダからのもの)が適合する。また、本明細書で記載の方法は、ミネラル化した、又は脱ミネラル化した、又はわずかにミネラル化した乳清製剤にも適用し得る。「わずかにミネラル化した」とは、透析可能又は透析濾過可能である遊離ミネラルを除去した後の任意の乳清製剤であるが、例えば、乳清タンパク質濃縮液又は分離物を調製した後、天然のミネラル化によってそれに随伴した鉱物を維持する任意の乳清製剤を意味する。これらの「わずかにミネラル化した」乳清製剤は、特定のミネラル化がなされていない。
乳清タンパク質は、例えば、カゼイン(PER=100)よりも良好なタンパク質効率比(PER=118)を有する。PERは、かかるタンパク質が、どの程度体重増加を支持するかを求めることによって評価されるタンパク質品質の目安である。それは次の式によって計算し得る。
PER=体重増加(g)/タンパク質摂取重量(g)
例: PER 対カゼイン%
カゼイン 3.2 100
卵 3.8 118
乳清 3.8 118
全大豆 2.5 78
小麦グルテン 0.3 9
乳清タンパク質ミセルを生成させるために、乳清タンパク質は、水溶液中に、溶液の全重量基準で0.1〜12重量%、好ましくは0.1〜8重量%、より好ましくは0.2〜7重量%、さらにより好ましくは0.5〜6重量%、最も好ましくは1〜4重量%の量で存在し得る。
ミセル化ステップの前に存在する乳清タンパク質製剤の水溶液はまた、追加の化合物(例えば、各乳清生成プロセスの副生品、他のタンパク質、ガム、炭水化物)を含み得る。溶液はまた、他の食品成分(例えば、脂肪、炭水化物、植物抽出体)を含有し得る。好ましくは、かかる追加の化合物の量は、溶液の全重量の50重量%を超えず、好ましくは20重量%を超えず、より好ましくは10重量%を超えない。
乳清タンパク質、並びにその画分及び/又はその主タンパク質は、精製形態で使用することができ、また、同様に粗生成物の形態で使用することができる。乳清タンパク質ミセルを調製するための、乳清タンパク質中の二価カチオン含量は、2.5%未満、より好ましくは2%未満、さらにより好ましくは0.2%未満であり得る。最も好ましくは、乳清タンパク質は、完全に脱ミネラル化されている。
乳清タンパク質ミセルの製造では、pH及びイオン強度が重要な因子である。したがって、Ca、K、Na、Mg等の遊離カチオンが実質的に含まれない、又は激減した徹底的に透析された試料では、5.4未満のpHで10秒〜2時間熱処理を行う場合、凝乳が得られるが、6.8を超えるpHでは、可溶性乳清タンパク質が生成することが分かった。したがって、こうしたかなり狭いpH領域でのみ、直径が1μm未満である乳清タンパク質ミセルが得られることになる。これらのミセルは、全体として負電荷を持つことになる。同じミセル形態はまた、対称的に等電pH未満、すなわち3.5〜5.0、より好ましくは3.8〜4.5で得ることができ、正に帯電したミセルが生成する。
したがって、正に帯電したミセルを得ることを目的として、乳清タンパク質のミセル化は、タンパク質源の鉱物含量に応じて3.8〜4.5に調整されたpH値で塩を含まない溶液中で行い得る。
好ましくは、本発明で使用されるミセルは、全体として負電荷を有することになる。したがって、加熱する前の水溶液のpHは、乳清タンパク質粉末中に含まれた0.2〜2.5%の二価カチオン含量では、6.3〜9.0に調整される。
より具体的には、負に帯電したミセルを得るために、pHは、低二価カチオン含量(例えば、最初の乳清タンパク質粉末の0.2%未満)では、5.6〜6.4、より好ましくは5.8〜6.0に調整される。pHは、乳清タンパク質源(濃縮液又は分離物)の鉱物含量に応じて最高8.4まで上昇させ得る。特に、pHは、大量の遊離ミネラルの存在下で負に帯電したミセルを得るために、7.5〜8.4、好ましくは7.6〜8.0であり得、pHは、中程度の量の遊離ミネラルの存在下で負に帯電したミセルを得るために、6.4〜7.4、好ましくは6.6〜7.2であり得る。一般規則として、最初の乳清タンパク質粉末のカルシウム及び/又はマグネシウム含量が高くなるほど、ミセル化のpHは、高くなる。
乳清タンパク質ミセル形成条件を標準化するために、任意の既知の脱ミネラル化の方法(例えば、透析、限外濾過、逆浸透、イオン交換クロマトグラフィー)によって、タンパク質濃度が、甘味乳清、乳汁精密濾過濾液又は酸乳清の濃度(タンパク質含量0.9%)からタンパク質含量30%の濃縮液の濃度までの範囲にある任意の天然液体乳清タンパク質源を脱ミネラル化することが最も好ましい。透析は、水(蒸留水、脱イオン水又は軟水)に対して行い得るが、水では、乳清タンパク質に弱く結合したイオンの除去しか可能にならないので、pH4.0未満の(有機又は無機の)酸に対して透析することによって乳清タンパク質のイオン組成をより良好に制御することがより好ましい。そうすることによって、乳清タンパク質ミセル形成のpHは、7.0未満、より好ましくは5.8〜6.6となる。
乳清タンパク質水溶液を加熱する前に、pHは、一般に、酸(例えば、塩酸、リン酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸又は乳酸)(好ましくは食品級)を添加することによって調整される。鉱物含量が大きい場合、pHは、一般に、アルカリ溶液(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウム)(好ましくは食品級)を添加することによって調整される。
或いは、いかなるpH調整ステップも望ましくない場合、pHを一定に保持しながら、乳清タンパク質製剤のイオン強度を調整することも可能である。次いで、イオン強度は、ミセル化が一定のpH値7で可能になるような仕方で有機又は無機イオンによって調整し得る。
乳清タンパク質が熱処理されるときにpH値が大きく変化するのを避けるように、乳清タンパク質の水溶液に緩衝液をさらに加え得る。原理的には、緩衝液は、任意の食品級緩衝系、すなわち、例えば、酢酸及びその塩(例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム)、リン酸及びその塩(例えば、NaHPO、NaHPO、KHPO、KHPO)、クエン酸及びその塩、等から選択し得る。
水溶液のpH及び/又はイオン強度を調整すると、100〜900nm、好ましくは100〜700nm、最も好ましくは200〜400nmの粒径を有するミセルが得られる制御されたプロセスがもたらされる。好ましくは、本明細書に記載のミセル化プロセスを行う場合、100〜700nmの寸法を有するミセルの分布は80%を超える。
規則的な形状のミセルを得るために、本発明によれば、乳清タンパク質が、ミセル形成の前にいかなる加水分解ステップをも受けないことも重要である。
乳清タンパク質ミセルを形成するための方法の第2のステップでは、次いで、乳清タンパク質の出発水溶液を熱処理にかける。この点に関しては、乳清タンパク質ミセルを得るために、約70〜95℃未満、好ましくは約82〜約89℃、より好ましくは約84〜約87℃の温度、最も好ましくは85℃であることが重要であることが見出された。工業規模では、温度は、好ましくは95℃未満、より好ましくは80〜90℃、最も好ましくは約85℃であることが重要であることも見出された。
所望の温度に到達したら、乳清タンパク質水溶液は、この温度で、最短10秒間、最長2時間保持される。好ましくは、乳清タンパク質水溶液が所望の温度範囲で保持される時間間隔は、12〜25分、より好ましくは12〜20分であり、最も好ましくは約15分である。
濁度測定は、ミセル形成の指標である。500nmでの吸収度によって測定される濁度は、1%タンパク質溶液で、少なくとも3吸収度単位であってよく、ミセル化の収率が80%を超える場合、16吸収度単位に達する場合もある。
物理化学的な視点からミセル形成の効果をさらに例示するために、Bipro(登録商標)の1重量%分散液が、MilliQ 水中pH6.0及び6.8、85℃で15分間加熱された。熱処理をした後に得られた凝集体の流体力学直径は、動的光散乱によって測定された。凝集体の見かけの分子量は、いわゆるデバイプロットを使用して静的光散乱によって求められた。疎水性ANSプローブ及び標準アミノ酸としてシステインを用いるDTNB法による、遊離のアクセス可能なチオール基を使用して、表面疎水性が調査された。最後に、凝集体の形態は、ネガティブ染色TEMによって調査された。結果を表1に示す。
Figure 2009531038
表1から、pH6.0で形成された乳清タンパク質ミセルは、その固有のANS表面疎水性を、pHが6.8であること以外は、同じ条件で加熱された非ミセル化乳清タンパク質に比較して、1/2に減少させることが可能になることは明白である。ミセルが形成されたことは、非ミセル化タンパク質の0.64×10g.mol−1に比較して非常に大きい分子量27×10g.mol−1でも分かり、ミセル内の物質状態が非常に凝縮されていることを示している(水の量が少ない)。十分興味あることには、ミセルのζ電位は、非ミセル化タンパク質が、ミセルよりも高塩基性pHで形成されたにもかかわらず、それよりもさらに負である。これは、溶媒に曝露されているミセル表面がより親水性であることの結果である。最後に、ミセルのチオール反応性は、熱処理のpHが異なるために非ミセル化タンパク質の反応性よりもはるかに低いことに留意されたい。
pH調整及び熱処理の前に最初のタンパク質濃度が増加すると、天然乳清タンパク質のミセルへの転換収率が減少することが見出された。例えば、乳清タンパク質分離物Prolacta 90(Lactalisからのロット番号673)から出発した場合、乳清タンパク質ミセルの形成収率は、85%(タンパク質4%から出発した場合)から50%(タンパク質12%から出発した場合)まで低下する。乳清タンパク質ミセルの形成を最大にする目的では(最初のタンパク質含量は>85%)、タンパク質濃度が12%未満、好ましくは4%未満の乳清タンパク質水溶液で出発する方がよい場合がある。所望の最終用途に応じて、タンパク質濃度を熱処理の前に調整することによって最適の乳清タンパク質ミセル収率に管理し得る。
本明細書に記載の方法によって取得可能な乳清タンパク質ミセルの粒径は、直径1μm未満、好ましくは100〜990nm、より好ましくは100〜700nm、最も好ましくは200〜400nmとなるようにする。
所望の用途に応じて、ミセルの収率は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも80%とすることができ、残りの可溶性凝集体又は可溶性タンパク質含量は、好ましくは20%未満である。ミセルの平均粒径は、多分散性指数が0.200未満であることを特徴とする。乳清タンパク質ミセルは、pH約4.5で凝集体を形成することができるが、4℃で少なくとも12時間後では、巨視的な相分離の兆候がないことが観察された。
乳清タンパク質ミセルの純度は、残留可溶性タンパク質の量を求めることによって得ることができる。ミセルは、20℃、26900gで15分間遠心分離することによって除去される。上清を使用することによって、280nmで石英キュベット中(光路長1cm)のタンパク質量を求める。値は、熱処理前の初期値の百分率として表される。
ミセルの割合=(最初のタンパク質量−可溶性タンパク質量)/最初のタンパク質量
本明細書に記載のミセル化方法によって取得可能な乳清タンパク質ミセルは、形成中の粒径の減少をもたらすいかなる機械的応力の作用も受けていない。本方法は、無せん断下での熱処理中に乳清タンパク質の自発的なミセル化を誘起する。
本発明で使用された乳清タンパク質ミセルは、本明細書に記載の方法によって生成させ得るが、それに限定されない。
乳清タンパク質ミセルは、本発明の冷凍デザートにおいてそのままで使用し得る。それらは、乳清タンパク質ミセルの濃縮液、又はその粉末形態でも使用し得る。さらに、乳清タンパク質ミセルは、活性成分を充填し得る。前記成分は、コーヒー、カフェイン、緑茶抽出体、植物抽出体、ビタミン、ミネラル、生理活性物質、塩、砂糖、甘味剤、香気成分、脂肪酸、油、タンパク質加水分解物、ペプチド等、及びそれらの混合物から選択し得る。
また、(純粋の、又は活性成分が充填されている)乳清タンパク質ミセルは、乳化剤(例えば、リン脂質)又は他のコーティング剤、例えば、タンパク質、ペプチド、タンパク加水分解物又はガム(例えば、アカシアガム)、でコーティングすることによって乳清タンパク質ミセルの機能性及び味覚を調節し得る。タンパク質をコーティング剤として使用する場合、乳清タンパク質より有意に高いか又は低い等電点を有する任意のタンパク質から選択し得る。これらは、例えば、プロタミン、ラクトフェリン、及びある種の米タンパク質である。タンパク質加水分解物をコーティング剤として使用する場合、それは、好ましくは、タンパク質(例えば、プロタミン、ラクトフェリン、米、カゼイン、乳清、小麦、大豆タンパク質、又はそれらの混合物)の加水分解物である。好ましくは、コーティングは、硫酸化ブチルオレエート、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリドのクエン酸エステル、ステアロイルラクチレート、及びそれらの混合物から選択される乳化剤である。さらに、本明細書でさらに説明されるのと同様の同時噴霧乾燥(co−spraydrying)も乳清タンパク質ミセルのコーティングを生成し得る。
したがって、熱処理後に得られる乳清タンパク質ミセル分散液は、濃縮することによって乳清タンパク質ミセル濃縮液を得ることができる。
乳清タンパク質ミセルの濃縮は、例えば、蒸発、遠心分離、沈降、限外濾過及び/又は精密濾過によって行い得る。
ミセルの蒸発は、熱処理後に得られる乳清タンパク質ミセルを、真空下で50〜85℃の温度を有する蒸発器に供給することによって行い得る。生成物は、一般に、図8に示されるようなゲル又はクリームの態様を有することになる。蒸発によって得られるタンパク質濃縮液は、クリーム状の準固体テクスチャーを有し、乳酸を使用して酸性化することによって、のびのよいテクスチャーを付与することができる。この液状でクリーム状のペーストテクスチャーを使用することによって酸っぱい、甘い、塩辛い、芳香のある、タンパク質強化冷凍デザートを調製し得る。
好ましくは、乳清タンパク質ミセルの濃縮は、ミセル分散液の精密濾過によって実現し得る。この濃縮方法によって、溶媒を除去することによって乳清タンパク質ミセルを濃縮することが可能になるだけでなく、非ミセル化タンパク質(例えば、天然タンパク質、可溶性凝集体)の除去も可能になる。したがって、最終生成物はミセルのみからなる(透過型電子顕微鏡法によって調査された場合−図3及び4を参照)。この場合、実現可能な濃度因子は、メンブランからの透過物の最初の流速が、その最初の値の20%に低下した後に得られる。
このようにして得られた乳清タンパク質濃縮液は、少なくとも12%のタンパク質濃度を有し得る。さらに、濃縮液は、タンパク質の少なくとも50%をミセルの形態で含有し得る。タンパク質の少なくとも90%がミセルの形態として存在するのが好ましい。
濃縮液は、所望の冷凍デザートに応じて、そのまま又は希釈して使用し得る。
例えば、液体又は乾燥形態の乳清タンパク質ミセル濃縮液は、甘いコンデンスミルクの場合と同様にタンパク質含量9%まで希釈し得る。最終生成物が、乳と類似の栄養プロフィールを有することになるが、タンパク質源が乳清タンパク質のみであるように、乳ミネラル、ラクトース及びスクロースを添加し得る。
乳清タンパク質ミセルの乾燥粉末形態は、任意の既知の方法(例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、ローラー乾燥)によって取得し得る。したがって、乳清タンパク質ミセルは、さらなる成分を添加して、又は添加しないで噴霧乾燥又は凍結乾燥をすることができ、本発明の冷凍デザートの製造に用いるために輸送用システム又は構築ブロックとして使用し得る。
図2は、噴霧乾燥中に行われるミセルの凝集のために1ミクロンを超える平均粒子直径を有し、さらなる成分を全く添加しないで噴霧乾燥することによって得られた粉末を示す。1ミクロンを超える平均サイズを有するかかる乳清タンパク質粉末は、本発明の冷凍デザートで使用し得る。これらの粉末の典型的な平均体積メジアン直径(D43)は45〜55ミクロン、好ましくは51ミクロンである。乳清タンパク質ミセル粉末の表面メジアン直径(D32)は、好ましくは3〜4ミクロン、より好ましくは3.8ミクロンである。
噴霧乾燥後得られた粉末の水分含量は、好ましくは10%未満、より好ましくは4%未満である。
さらなる成分を添加して又は添加しないで噴霧乾燥することによって生成した乳清タンパク質ミセル粉末は、少なくとも35%の乳清タンパク質ミセルから、少なくとも80%の乳清タンパク質ミセルまで含み得る。
乳清タンパク質ミセル粉末は、水、グリセリン、エタノール、油等の溶媒に対して大きい結合容量を有する。水に対する粉末の結合容量は、少なくとも50%、好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも100%である。グリセリン、エタノール等の溶媒に対しては、結合容量は、少なくとも50%である。油に対しては、それは、少なくとも30%である。この特性によって、粉末がさらなる活性物質を噴霧又は充填され、本発明の冷凍デザートで使用されることが可能になる。
かかる活性成分は、ビタミン、ミネラル、酸化防止剤、ポリ不飽和脂肪酸、ペプチド、植物抽出体、タンパク質加水分解物、生理活性物質、香気成分、甘味剤、砂糖、ポリサッカライド、スクロース、サプリメント、医薬品、薬剤、乳、乳タンパク質、スキムミルク粉末、ミセル状カゼイン、カゼイン塩、植物性タンパク質、アミノ酸、色素成分等、及びそれらの任意の可能な混合物、化粧成分、並びに、熱、UV放射線、光、酸素、金属、湿度、温度等に敏感な成分から選択し得る。活性成分は、不安定な化合物、例えば、ポリフェノール(コーヒー、緑茶等に由来)、リコペン及び他のカロチノイド、であってもよい。それらとして、カフェイン、ヘスペリジン、可溶性又は不溶性塩、共生細菌、染色剤、マルトデキストリン、脂肪、乳化剤、配位子等の化合物を挙げ得る。
活性成分は、粉末中に0.1〜50%の量で含まれていてもよい。したがって、粉末は、機能性成分の担体として働くこともできる。これによって、例えば、活性成分としてのカフェインが、乳清タンパク質ミセル中に充填され、例えば、カフェイン強化冷凍デザートで使用される場合、カフェインの苦味認識が低減されるという利点が提供される。
追加の成分は、噴霧乾燥する前に、乳清タンパク質ミセル濃縮液と混合し得る。これらとして、可溶性又は不溶性塩、共生細菌、染色剤、砂糖、マルトデキストリン、脂肪、乳化剤、甘味剤、香気成分、植物抽出剤、配位子、又は生理活性物質(カフェイン、ビタミン、ミネラル、薬剤等)、及びそれらの混合物が挙げられる。生成した乳清タンパク質ミセル混合粉末は、乳清タンパク質ミセルと追加の成分とを1:1〜1:1000の重量比で含む。この場合、得られた乳清タンパク質ミセル粉末は、本発明の冷凍デザートで活性成分の担体としても働き得る。
この同時噴霧乾燥によって、追加の成分によって凝集化した、又はそれでコーティングされた乳清タンパク質ミセルからなる粉末が得られる。好ましくは、乳清タンパク質ミセルと追加の成分の重量比は1:1である。これは、これらの粉末の可溶化をさらに促進することができ、アイスクリーム製造において特に重要になり得る。
本発明によって得られた乳清タンパク質ミセル粉末は、主として中空球からなるが、崩壊球からもなる内部構造(図9を参照)を特徴とする。この中空球構造は、噴霧乾燥中におけるWPM濃縮液小滴内の蒸気小滴の形成によって容易に説明し得る。100℃を超える温度のために蒸気小滴がWPM小滴から去ると、中空球が残る。「骨形状」は、小滴からの水の蒸発と小滴内の外圧の組合せのためである。
球状の中空球の内部構造は、粒子をその直径付近で切断した後のSEMによって調査された(図10左)。粒子の壁厚は約5μmであり、非常に平滑であるように見えたが、内部の構造は、よりザラザラとしているように見えた。倍率を拡大すると、このザラザラは、実際、融合することによって粉末粒子の内部マトリックスを形成した最初のWPMの存在のためであることが分かった。興味があることには、ミセルの球状形状、並びに均一な粒径分布は、噴霧乾燥中保持された(図10右)。
したがって、顕微鏡基準では、乳清タンパク質ミセル粉末は、原型を保った個別化された乳清タンパク質ミセルを含有する中空の又は崩壊した球の独特の顆粒状形態を特徴とする。
これらの乳清タンパク質ミセル粉末の重要な特徴は、乳清タンパク質の基本的なミセル構造が保存されることである。図6は、切断された乳清タンパク質粉末粒を示し、個別の乳清タンパク質ミセルが観察可能である。さらに、ミセル構造は、溶媒中で容易に再構成し得る。乳清タンパク質ミセル濃縮液から得られた粉末は、室温又は50℃で水中に容易に再分散し得ることが分かった。乳清タンパク質ミセルの粒径及び構造は、最初の濃縮液と比較して、十分保存されている。例えば、図5では、タンパク質濃度20%で噴霧乾燥された乳清タンパク質濃縮液は、タンパク質濃度50%で50℃の脱イオン水中で再分散した。ミセルの構造は、TEMによって調査され、図4と比較することができる。ミセルの類似の形状が得られた。ミセルの直径は、動的光散乱法によって315nmであり、多分散性指数が0.2であることが分かった。図7はまた、凍結乾燥乳清タンパク質ミセル粉末の分散を示し、ミセルは再構成されている。
乳清タンパク質ミセル及び少量の凝集画分のみが、噴霧乾燥又は凍結乾燥粉末を再構成した後の溶液中に観察されたという事実は、乳清タンパク質ミセルが、噴霧乾燥、凍結乾燥等に関しては物理的に安定であることを裏付けるものである。
本発明で開示の任意の形態で本発明において使用される乳清タンパク質ミセルは、乳化剤、脂肪代替物、ミセル状カゼインの代替物、又は発泡剤として使用するのに理想的に適していることが分かった。というのは、それらは、水性系で脂肪及び/又は空気を長期間安定化することができるからである。
したがって、乳清タンパク質ミセルは、この材料が理想的に適している乳化剤として使用し得る。というのは、それが、中性の味を有し、かかる材料の使用によって異臭が全く創出されないからである。それらは、又、ミセル状ガセインの代替物として使用され得る。
また、1つの化合物として数種の仕事を実行するために、乳清タンパク質ミセルは、白色化(whitening)剤として働く条件を有する。濃縮液の白色化力は、天然タンパク質粉末と比較して極めて増加している。例えば、乳清タンパク質ミセルの15%濃縮液4mlの白色化力は、2%水溶きコーヒー1カップ、100ml中の酸化チタン0.3%と等価である。
同じタンパク質全含量に対する乳系の白色化力の増加はもとより、食品マトリックス中の脂肪含量も低減し得る。この特徴は、そのために低脂肪含量の冷凍デザートを製造することが可能になるので、乳清タンパク質ミセル使用の特別の利点である。
さらに、乳清タンパク質ミセルを単独で、又は他の活性材料、例えばポリサッカライド(例えば、アカシアガム、カラギーナン)と一緒に使用することによってマトリックス、例えば乳発泡マトリックスを安定化し得る。その中性味、白色化力、及び熱処理後の安定性のために、乳清タンパク質ミセルを使用することによってスキムミルクの白色度及び舌ざわりの良さを増加させ得る。
乳清は、豊富に利用可能な材料であるので、その使用によって、同時にその栄養価を高めつつ、乳化、充填、白色化又は発泡剤を必要とする製品のコストが低減する。実際、本発明で使用されるミセルは、出発の乳清タンパク質に等しい少なくとも100、好ましくは少なくとも110のタンパク質効率比を有し、このために、該ミセルは重要な栄養成分になっている。
したがって、乳清タンパク質ミセルは、本発明による任意の種類の冷凍デザート、例えば、アイスクリーム、ミルクセーキ、スムージー、ソルベ(sorbet)、ウォーターアイス、メロリン(mellorine)、ソフトアイスを調製するために本明細書記載の任意の形態で使用し得る。
乳清タンパク質ミセルは、タンパク質強化低温殺菌製品が、これまで達成不可能であった濃度で得られるという稀有な利点をさらに提供する。したがって、6%を超える、好ましくは10%を超えるタンパク質を含有する冷凍デザートが得られる。さらに、乳清タンパク質ミセルは、望ましい構造上、テクスチャー上及び官能上の特性を維持しつつ脂肪代替品として働き得るので、多様な低脂肪製品が得られる。
したがって、乳清タンパク質ミセルは、本発明の低温殺菌冷凍デザート中に含ませ得る。本発明による低温殺菌冷凍デザートは、高タンパク質含量、好ましくは6%を超える含量を有する。天然タンパク質に比較して加工に対して非常に安定である乳清タンパク質ミセルが存在するために、高タンパク質低温殺菌冷凍デザートを取得することができ、これは、従来技術のタンパク質源を使用しても実現不可能である。
したがって、別の実施形態によれば、本発明は、8%を超えるタンパク質含量を有し、タンパク質の少なくとも一部が、乳清タンパク質ミセルとして存在する冷凍デザートを提供する。好ましくは、タンパク質含量は、10重量%を超え、より好ましくは12重量%を超え、さらにより好ましくは14重量%を超え、最も好ましくは16重量%を超える。
本発明の冷凍デザートでは、少なくとも15〜30%のエネルギーがタンパク質によって供給され、0〜45%のエネルギーが脂肪によって供給され、25〜85%のエネルギーが炭水化物によって供給される。脂肪のカロリー値は、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満、さらにより好ましくは20%未満、最も好ましくは10%未満である。全タンパク質含量の少なくとも50%は、乳清タンパク質ミセルとして供給し得る。
本発明の冷凍デザートで使用される乳清タンパク質ミセルは、懸濁液、濃縮液、又は粉末の形態で含有され、これらの形態のすべてが、上記で説明されている。乳清タンパク質ミセルは、1ミクロン未満、好ましくは100〜900nmの平均サイズを有し得る。乳清タンパク質ミセルの粉末が使用される場合、これらは1ミクロンを超える平均サイズを有し得る。さらに、乳清タンパク質ミセルは、活性成分の担体又は送達ビヒクルとして働き得る。
乳清タンパク質ミセル又はその粉末は、乳清タンパク質ミセルの機能性及び味を調節するために、乳化剤(例えば、リン脂質)又は他のコーティング剤(例えば、アカシアガム)でさらにコーティングすることができる。好ましくは、コーティングは、硫酸化ブチルオレエート、モノ及びジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、モノグリセリドのクエン酸エステル、ステアロイルラクチレート、及びそれらの混合物から選択される乳化剤である。
本発明の冷凍デザートは、アイスクリーム、ミルクセーキ、ソルベ、メロリン、スムージー、ウォーターアイス、ソフトアイス等から選択されるいずれの冷凍デザートであってもよい。それらは空気を含ませ得る。空気を含ませる場合、所望の冷凍デザートに応じて、20〜200%、好ましくは70〜150%のオーバーランを有し得る。
冷凍デザートは、乳脂肪、1種以上の植物性脂肪、又はそれらの混合物を含み得る。或いは、それは、脂肪を含有しなくてもよい。
本発明の一実施形態によれば、6%を超える、好ましくは8%を超える、最も好ましくは10%を超えるタンパク質含量、及び本質的に中性のpH値、好ましくは6〜8を有し、脂肪のカロリー値が45%未満である低温殺菌冷凍デザートが提供される。好ましくは、タンパク質含量は本質的に乳清タンパク質からなる。乳清タンパク質は、乳清タンパク質ミセルの形態で少なくとも部分的に存在する。
好ましい実施形態によれば、冷凍デザートの脂肪のカロリー値は、35%未満、好ましくは25%未満、さらにより好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満である。好ましくは、冷凍デザートはいくらかの脂肪を含む。
乳清タンパク質含量は、好ましくは12%を超え、より好ましくは14%を超え、さらにより好ましくは16%を超え、最も好ましくは18%を超える。
本発明の低温殺菌冷凍アイスクリームは、重量で少なくとも8%のタンパク質と、15〜28%の炭水化物と、3〜7%の脂肪と、を含む。
好ましくは、アイスクリームは、10%を超える、好ましくは12%を超えるタンパク質含量、20〜26%の炭水化物含量、及び4〜6%の脂肪含量を有する。
本発明のアイスクリームのタンパク質含量の少なくとも一部は、乳清タンパク質ミセルとして存在する。
したがって、冷凍デザート中の乳清タンパク質ミセルの使用は、本発明の一部である。好ましくは、前記乳清タンパク質ミセルは、冷凍デザートの全タンパク質含量の少なくとも50%を構成する。
本発明の冷凍デザートの栄養プロフィールは、グラス一杯の乳に匹敵し得る(絶対数及び/又は百分率で表された場合)。
したがって、本発明は、栄養があり、健康スナックとして毎日消費してもよい新規な冷凍デザートを提供する。
乳清タンパク質ミセルが存在するために、本発明の冷凍デザートは、栄養的なバランスをとりつつ、良好な食感、すなわちクリーミーなテクスチャーを有するようになる。それは、健康に有利な他の剤(例えば、ビタミン、ミネラル、共生細菌)をさらに含有し得る。
本発明の冷凍デザートの製造では、乳清タンパク質ミセル、その濃縮液、又はその粉末を含む成分ミックスをブレンドする第1のステップが実施される。乳清タンパク質ミセルは、好ましくは100〜900nmの平均径を有する。乳清タンパク質ミセル粉末が使用される場合、前記粉末の平均径は、好ましくは1ミクロンを超える。
好ましくは、ブレンド中の乳清タンパク質ミセル含量は、乾物基準(dry matter basis)で10〜40%、好ましくは15〜35%、より好ましくは30%である。このようにして生成した冷凍デザートは、6%を超える、好ましくは8%を超えるタンパク質含量を有し得る。
ブレンドの他の成分は、冷凍デザートの製造で使用される成分(例えば、MSNF、乳化剤、砂糖、脂肪源、香気成分、安定剤、包含物)のいずれであってもよい。
次いで、ブレンドは、80〜87℃の温度で、少なくとも10秒間低温殺菌される。好ましくは、低温殺菌は、本質的に中性pH、例えば6〜8で実施される。例えば、天然果実(パルプ又はジュース)がブレンドに添加される場合、低温殺菌は、4〜6の中程度の酸性pHで実施することもできる。任意選択で、果実系の酸性ブレンドを低温殺菌後に添加し得る。
次いで、低温殺菌ブレンドは、冷凍前に、温度50℃でホモジナイズし得る。ホモジナイズした後、ブレンドは、冷凍前に、最高24時間熟成又は「エージング」してもよい。
次いで、乳清タンパク質ミセル系の冷凍デザートは、2層冷凍デザートにおいて果実系の層に合わせることができるか、又は果実系コーティングを含み得る。
好ましくは、このようにして生成した冷凍デザートは、6%を超える、より好ましくは8%を超えるタンパク質含量を有することになる。
本発明の方法によって、高タンパク質含量、優れた食感、及びバランスのとれた栄養プロフィールを有する冷凍デザートが得られる。
本発明では、成分のリストの任意の開示は、任意の可能な比での前記成分の任意の可能な組合せを開示するものとする。
本発明では、冷凍デザートのタンパク質、脂肪又は炭水化物の含量及び/又はカロリー値が挙げられる場合、これらの値は、冷凍デザートのマトリックスを対象とするものであって、冷凍デザートマトリックス中に存在してもよい追加の成分(例えば、コーティング、含有物)を含まない。
以下の実施例は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
以下の実施例では、本発明の文脈において任意選択で使用し得るミセルの調製が説明される。
〔実施例1: β−ラクトグロブリンのミセル化〕
β−ラクトグロブリン(ロット JE002−8−922、13−12−2000)をDavisco(Le Sueur、MN、USA)から得た。限外濾過及びイオン交換クロマトグラフィーによって、タンパク質を甘味乳清から精製した。粉末の組成は、タンパク質89.7%、水分8.85%、灰分1.36%(Ca2+0.079%、Mg2+0.013%、K0.097%、Na0.576%、Cl0.050%)である。使用された他の試薬はすべて、分析試薬級(Merck Darmstadt、Germany)であった。
MilliQ(登録商標)水(Millipore)中でβ−ラクトグロブリンを溶媒和させ、20℃で2時間撹拌することによって、タンパク質溶液を濃度0.2%で調製した。次いで、HCl添加によって、各分取液のpHを5.0、5.2、5.4、5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、6.6、6.8、7.0に調整した。溶液を20mlガラスバイアル中に充填し(Agilent Technologies)、ケイ素/PTFEシーリングを含有するアルミニウムカプセルでシールした。溶液を85℃で15分間(2.30〜3.00分でこの温度に到達する時間)加熱した。熱処理後、試料を氷水中で20℃まで冷却した。
生成物の外観から、ミセル化の最適pHは5.8であることが示される。
〔実施例2: 乳清タンパク質分離物のミセル化〕
乳清タンパク質分離物(WPI)(Bipro(登録商標)、バッチJE032−1−420)をDavisco (Le Sueur、MN、USA)から得た。粉末の組成を表2に報告する。
MilliQ(登録商標)水(Millipore)中で乳清タンパク質粉末を溶媒和させ、20℃で2時間撹拌することによって、タンパク質溶液を濃度3.4%で調製した。最初のpHは7.2であった。次いで、0.1NHClを添加することによって、分取液のpHを5.6、5.8、6.0、6.2、6.4、及び6.6に調整した。
溶液を20mlガラスバイアル中に充填し(Agilent Technologies)、ケイ素/PTFEシーリングを含有するアルミニウムカプセルでシールした。溶液を85℃で15分間加熱した(この温度に到達する時間は2.30〜2.50分)。熱処理後、試料を氷水中で20℃まで冷却した。
加熱した乳清タンパク質の濁度を、25℃、500nmで測定した。試料を0.1〜3の吸光度単位で測定できるように希釈した(Spectrophotometer Uvikon 810、Kontron Instrument)。最初のタンパク質濃度3.4%に対する値を計算した。
ミセル化のpHは、同じ試料を10分間隔内で、500nmで測定した吸収度が安定(最初の値からの変動が5%未満)になるところとみなされた。この生成物では、ミセル化の最適pHは、6.0〜6.2であった。熱処理前に調整されたこのpHでは、安定な濁度は、21であり、遠心分離後280nmでの吸収度によって推定された残留可溶性タンパク質は、1.9%であった。最初のタンパク質の45%が、pH6.0でミセルに変換されたと結論することができる。
Figure 2009531038
〔実施例3: 乳清タンパク質強化低脂肪アイスクリーム〕
材料:
タンパク質含量が90%である乳清タンパク質分離物(WPI;Lactalis、Retiers、FranceからのProlacta90(登録商標))
タンパク質含量が35%であるスキムミルク粉末
スクロース
マルトデキストリンDE39
無水乳脂肪
乳化剤
脱イオン水
食用1M塩酸
乳清タンパク質ミセルのインライン生成を使用する方法:
二重ジャケット80Lタンクを使用して、泡が形成されるのを防ぐために静かに撹拌しながら、タンパク質濃度11.6重量%で、Prolacta90(登録商標)粉末を脱イオン水中に50℃で分散させた。1時間分散させた後、分散液のpHをHClの添加によってミセル化pHに調整した。分散液の温度を85℃まで上昇させ、15分間維持することによって乳清タンパク質ミセルを生成させた。15分後、温度を50℃まで下降させ、追加の成分を逐次ミセル分散液に加えた(すなわち、スキムミルク粉末、マルトデキストリンDE39、スクロース、乳化剤及び無水乳脂肪)。混合物の最終量は、50kgであり、全固体含量が39.4%、脂肪含量が5重量%であった。水和の30分後、ミックスを2段階でホモジナイズし(80/20バール)、低温殺菌してから(86℃/30秒)終夜エージングした。
翌日、アイスクリームミックスを、Hoyer MF50装置を使用して100%オーバーランで冷凍し、−40℃で硬化させた後、−20℃で貯蔵した。最終アイスクリームは、アイスクリームミックス基準でタンパク質10重量%(カゼイン17%、乳清タンパク質83%)及び脂肪5重量%を含有していた。このアイスクリームのカロリー寄与は、砂糖から51.4%、脂肪から27.9%、タンパク質から20.7%である。
粉末化乳清タンパク質ミセルを使用する方法:
二重ジャケット80Lタンクを使用して、泡が形成されるのを防ぐために静かに撹拌しながら、乳清タンパク質ミセル粉末を脱イオン水中に50℃で分散させた。15分間分散後、追加の成分を逐次、乳清タンパク質ミセル分散液に加えた(すなわち、スキムミルク粉末、マルトデキストリンDE39、スクロース、乳化剤/安定剤、及び無水乳脂肪)。ミックスの最終量は、50kgであり、全固体含量が37.5%、脂肪含量が5重量%であった。水和の30分後、ミックスを2段階でホモジナイズし(80/20バール)、低温殺菌してから(86℃/30秒)終夜エージングした。
翌日、アイスクリームミックスを、Hoyer MF50装置を使用して100%オーバーランで冷凍し、−40℃で硬化させた後、−20℃で貯蔵した。最終アイスクリームは、アイスクリームミックス基準でタンパク質12.8重量%(カゼイン13%、乳清タンパク質87%)及び脂肪5重量%を含有していた。このアイスクリームのカロリー寄与は、砂糖から44.9%、脂肪から29.4%、タンパク質から25.7%である。
〔実施例4: 噴霧乾燥によって得られた粉末化乳清タンパク質ミセル〕
材料:
タンパク質含量が90%である乳清タンパク質分離物(WPI;Lactalis、Retiers、FranceからのProlacta90(登録商標))
食用ラクトース
マルトデキストリンDE39
脱イオン水
食用1M塩酸
方法:
二重ジャケット100Lタンクを使用して、泡が形成されるのを防ぐために静かに撹拌しながら、タンパク質濃度10重量%、50℃で、Prolacta90(登録商標)粉末を脱イオン水中に分散させた、すなわち、Prolacta90(登録商標)11kgを脱イオン水89kg中に分散させた。1時間分散させた後、分散液のpHをHClの添加によってミセル化pHに調整した(その場合、約6.3)。分散液の温度を85℃まで上昇させ、15分間維持することによって乳清タンパク質ミセルを生成させた。15分後、温度を50℃まで下降させ、10重量%乳清タンパク質ミセル分散液を50kgの2つのバッチに分割した。第1の試験では、ラクトース20kgを50℃でミセル分散液50kg中に分散させ、30分間撹拌した。同様に、マルトデキストリンDE39の20kgを残りの乳清タンパク質ミセル分散液50kgに加えた。
次いで、2つの混合物を流速15L/hでNIRO SD6.3N塔内に送り噴霧乾燥した。送入空気温度は140℃、送出空気温度は80℃であった。得られた粉末の水分含量は5%未満であった。
乳清タンパク質ミセルの粒径を、噴霧乾燥の前後で動的光散乱を使用して水中のラクトース及びマルトデキストリン(DE39)の存在下で測定した。タンパク質の全濃度を、噴霧乾燥前の分散液の希釈、又は粉末の再構成により0.4重量%に設定することによって乳清タンパク質ミセルに対する粘度を低い状態にした。Nanosizer ZS装置(Malvern Instruments)を使用し、ミセル直径を20回の測定から平均した。
ラクトース及びマルトデキストリン(DE39)の存在下で乳清タンパク質ミセルについて測定された粒径は、それぞれ、310.4nm及び306.6nmであった。粉末の再構成後では、それぞれの直径は、それぞれ、265.3nm及び268.5nmであった。これらの測定によって、乳清タンパク質ミセルは、噴霧乾燥に関しては物理的に安定であることが確認された。pH7の1%リンタングステン酸の存在下でのネガティブ染色を使用して乳清タンパク質ミセルの0.1重量%水分散液をTEM顕微鏡観察することによってこれらの結果が裏付けられた。80kVで操作されるPhilips CM12透過型電子顕微鏡を使用した。噴霧乾燥前、及び噴霧乾燥した粉末の再構成後の溶液中の乳清タンパク質ミセルを観察した。形態及び構造の差異を検出することはできなかった。
〔実施例5: 蒸発による濃縮〕
Lactalis(ロット500648)からの乳清タンパク質分離物Prolacta90をタンパク質濃度4%、15℃で軟水中に再構成することによって最終のバッチの大きさが2500kgに到達した。最終pH値が5.90になるように1M塩酸を添加してpHを調整した。乳清タンパク質分散液は、流速500l/hでプレート−プレートAPV−混合熱交換機中をポンプ輸送された。60℃で予熱した後、85℃で15分間熱処理した。動的光散乱、及び500nmでの濁度測定を使用して、粒径を測定することによって乳清タンパク質ミセルの形成を調査した。得られた乳清タンパク質ミセル4%分散液は、粒子の流体力学半径が250nm、多分散性指数が0.13、及び濁度が80であることを特徴とした。次いで、乳清タンパク質ミセル分散液を使用することによって、流速500l/hでScheffers蒸発器に供給した。タンパク質濃度20%を有する乳清タンパク質ミセル濃縮液が約500kg製造され、4℃まで冷却されるように、蒸発器中の温度及び真空を調節した。
〔実施例6: 精密濾過による濃縮〕
Lactalis(ロット500648)からの乳清タンパク質分離物Prolacta90をタンパク質濃度4%、15℃で軟水中に再構成することによって最終のバッチの大きさが2500kgに到達した。最終pH値が5.90になるように1M塩酸を添加してpHを調整した。乳清タンパク質分散液は、流速500l/hでプレート−プレートAPV−混合熱交換機中をポンプ輸送された。60℃で予熱した後、85℃で15分間熱処理した。動的光散乱、及び500nmでの濁度測定を使用して、粒径を測定することによって乳清タンパク質ミセルの形成を調査した。得られた乳清タンパク質ミセル4%分散液は、粒子の流体力学半径が260nm、多分散性指数が0.07、及び濁度が80であることを特徴とした。タンパク質のミセル形態もTEMによって調査し、平均直径150〜200nmを有するミセル構造を、明白に見ることが可能であった(図3)。乳清タンパク質ミセル分散液は、貯蔵するために4℃で冷却することができるか、又は直接使用して、6.8mCarbosep M14メンブランを備えた濾過ユニットに流速180l/hで供給することができた。その場合、乳清タンパク質ミセルの濃縮は、透過流速が70l/hに到達するまで10〜70℃で行った。その場合、最終の乳清タンパク質濃縮液は、20%のタンパク質を含有した。濃縮液中のミセルの構造をTEMによって調査したが、精密濾過前の乳清タンパク質4%分散液に比較して目に見える有意な変化がないことは明白であった(図4)。
〔実施例7: 少なくとも90%の乳清タンパク質を含む乳清タンパク質ミセル粉末〕
精密濾過によってタンパク質20%(上記の実施例を参照)で得られた乳清タンパク質ミセル濃縮液200kgを、生成物流速25kg/hでアトマイゼーションノズル(φ=0.5mm、噴霧角=65°、圧力=40バール)を使用してNiro SD6.3N塔内に射出した。生成物の入口温度は、150℃、出口温度は、75℃であった。塔中の空気流は、150m/hであった。粉末中の水分含量は4%未満であり、粉末は、流動性が非常に良好であることを特徴とした。粉末の走査電子顕微鏡では、10〜100μmの見掛けの直径を有する非常に球状の粒子が示された(図2)。
〔実施例8: 混合乳清タンパク質ミセル粉末〕
最終の乳清タンパク質ミセル/マルトデキストリン比が70/30になるように、乳清タンパク質ミセル濃縮液20kgを、DE39を有するマルトデキストリン1.7kgと混合した。この混合物を、生成物流速25kg/hでアトマイゼーションノズル(φ=0.5mm、噴霧角=65°、圧力=40バール)を使用してNiro SD6.3N塔内に射出した。生成物の入口温度は150℃、出口温度は75℃であった。塔中の空気流は150m/hであった。粉末中の水分含量は4%未満であり、粉末は、流動性が非常に良好であることを特徴とした。
実施例7及び8の粉末は、水中で再構成された場合、乳清タンパク質ミセル濃縮液と同じ構造及び形態を有するミセルを本質的に含む。
〔実施例9: 凍結乾燥によって得られた乳清タンパク質ミセル粉末〕
材料:
タンパク質含量90%を有する、実施例6の精密濾過によって生成したタンパク質20%の乳清タンパク質ミセル濃縮液
方法:
乳清タンパク質ミセル濃縮液100gをプラスチックビーカー中に導入し、−25℃で1週間冷凍した。次いで、このビーカーを、真空ポンプを備えた実験室規模の凍結乾燥器Virtis内に置いた。試料を7日間放置したら、凍結乾燥器内の圧力が約30ミリバールで一定になった。凍結乾燥乳清タンパク質ミセル約20gを回収した。
〔実施例10: 硫酸化ブチルオレエート(SBO)又は任意の他の負帯電乳化剤を用いてコーティングされた乳清タンパク質ミセルの水性分散液〕
材料:
タンパク質含量90%を有する実施例7からの乳清タンパク質ミセル(WPM)粉末
SBO
塩酸(1M)
方法:
実施例7で記載のWPM粉末を、MilliQ水中に分散させることによって最終タンパク質濃度0.1重量%を実現した。この分散液を0.45μmフィルターで濾過することによって存在する可能性のあるWPM凝集体を除去した。1M塩酸を添加することによってこのWPM分散液のpHを3.0まで下げた。SBOの1重量%分散液をpH3.0で調製した。
これらのWPMの流体力学半径及びゼータ電位を、Nanosizer ZS装置(Malvern Instruments Ltd.)を使用して測定した。直径は、250nmであり、電気泳動移動度は、+2.5μm.cm.V−1.s−1.であった。pH3.0でのSBO分散液の流体力学半径及び電気泳動移動度は、それぞれ、4nm及び−1.5/−2.0μm.cm.V−1.s−1であった。
この予備的な特性調査を実施した後、混合物の流体力学半径及び電気泳動移動度の漸進的変化を追跡しつつ、SBO分散液を使用することによってWPM分散液を滴定した。WPM/SBOの混合重量比が5:1に到達するまでは、流体力学半径は約250〜300nmで一定であることが見出された。この点で、流体力学半径は、20000nmまで劇的に変化し、WPM SBO複合体の沈殿が起こる。SBOをさらに添加し、混合比が5:1を超えると、流体力学半径は、徐々に減少して250nmになり、これは最初のWPMと同じであり、比4:1からは同じ水準が続く。混合物の電気泳動移動度の追跡では、SBOの添加で減少し、混合比5:1ではゼロ値に到達することが分かった。次いで、電気泳動移動度は、SBOの添加で低下を継続し、比4:1から−3.0μm.cm.V−1.s−1での同一水準の維持が開始される。
これらの結果に対する説明は、第1のステップで正に帯電したWPMは、SBOの負の頭部で静電的にコーティングされた後、完全な荷電中和が実現する(混合比5:1)ということである。この点で、SBOの疎水性尾部は、自己会合することが可能であり、非常に大きい流体力学直径を有する過剰凝集及び複合体の沈殿がもたらされる。SBOをさらに添加すると、疎水性尾部がさらに会合することによって二重コーティングを形成し、その負の頭部を溶媒に暴露する。これによって、完全タンパク質コアリポソームに匹敵する、SBO二重コーティングを有する負帯電WPMがもたらされる。
主としてアニオン形態(COO化学基)でイオン化されているpH4.2の水溶液中で他の酸性食品級乳化剤(例えば、DATEM、CITREM、SSL(Danisco))を用いても、類似の結果が得られた。
乳清タンパク質ミセルの高度に簡略化した構造を示す図である。 精密濾過後のタンパク質含量20%の分散液を噴霧乾燥して得られた乳清タンパク質ミセル粉末のSEM(走査電子顕微鏡法)顕微鏡写真を示す図である。 タンパク質含量4%で得られた乳清タンパク質ミセル分散液のネガティブ染色TEM顕微鏡写真である。 精密濾過後タンパク質含量20%で得られた乳清タンパク質ミセル分散液のネガティブ染色TEM顕微鏡写真である。 脱イオン水中に50℃で分散後、純乳清タンパク質ミセルを噴霧乾燥した粉末に基づく乳清タンパク質ミセル4%分散液からのネガティブ染色TEM顕微鏡写真である。 図2に示された噴霧乾燥粉末顆粒を切断後の内部構造を示すSEM顕微鏡写真である。 脱イオン水中に室温で分散後、純乳清タンパク質ミセルを凍結乾燥した粉末に基づく乳清タンパク質ミセル4%分散液のネガティブ染色TEM顕微鏡写真である。スケールバーは0.5マイクロメートルである。 NaClを4%添加して蒸発させた後に得られた20%の乳清タンパク質ミセル濃縮液の写真である。 トルイジンブルー染色後の乳清タンパク質ミセル粉末の準薄片の明視野光学顕微鏡写真である。スケールバーは50ミクロンである。 切断後の中空乳清タンパク質ミセル粉末粒子のSEM顕微鏡写真である。左:内部構造。右:粉末粒子マトリックスを含む乳清タンパク質ミセルの詳細。スケールバーはそれぞれ、10及び1ミクロンである。

Claims (39)

  1. 乳清タンパク質ミセルを含む低温殺菌冷凍デザート。
  2. 6重量%を超えるタンパク質含量を有する、請求項1に記載の冷凍デザート。
  3. 8重量%を超えるタンパク質含量を有し、タンパク質の少なくとも一部が、乳清タンパク質ミセルとして存在する冷凍デザート。
  4. 10重量%を超える、好ましくは12重量%を超える、より好ましくは14重量%を超える、さらにより好ましくは16重量%を超えるタンパク質含量を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  5. 少なくとも15〜30%のエネルギーがタンパク質によって供給され、0〜45%のエネルギーが脂肪によって供給され、25〜85%のエネルギーが炭水化物によって供給される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  6. 乳清タンパク質ミセルが、全タンパク質含量の少なくとも50%を構成する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  7. 乳清タンパク質ミセルが、懸濁液、濃縮液又は粉末の形態で含有される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  8. 乳清タンパク質ミセルが、100〜900nmの平均サイズを有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  9. 乳清タンパク質ミセル粉末が、1μmを超える平均サイズを有する、請求項7に記載の冷凍デザート。
  10. 乳清タンパク質ミセル粉末が活性物質の担体である、請求項9に記載の冷凍デザート。
  11. 乳清タンパク質ミセル又はその粉末が、乳化剤によってさらにコーティングされている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  12. 冷凍デザートが、アイスクリーム、ミルクセーキ、ソルベ、メロリン、スムージー、ウォーターアイス又はソフトアイスである、請求項1〜11のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  13. 冷凍デザートが空気入りである、請求項1〜12のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  14. 冷凍デザートが、20〜200%、好ましくは70〜150%のオーバーランを有する、請求項13に記載の冷凍デザート。
  15. 乳脂肪を含む、請求項12に記載の冷凍デザート。
  16. 1種以上の植物性脂肪を含む、請求項12に記載の冷凍デザート。
  17. 脂肪を含まない、請求項12に記載の冷凍デザート。
  18. 6重量%を超える、好ましくは8重量%を超える、最も好ましくは10重量%を超えるタンパク質含量、及び本質的に中性のpH値を有し、脂肪のカロリー値が45%未満である低温殺菌冷凍デザート。
  19. タンパク質含量が、本質的に乳清タンパク質によって構成されている、請求項18に記載の冷凍デザート。
  20. 脂肪のカロリー値が、35%未満、好ましくは25%未満、さらにより好ましくは15%未満、最も好ましくは10%未満である、請求項18又は19に記載の冷凍デザート。
  21. 乳清タンパク質含量が、12%を超える、より好ましくは14%を超える、さらにより好ましくは16%を超える、最も好ましくは18%を超える、請求項18〜20のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  22. pH値が6〜8である、請求項18〜21のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  23. 脂肪を含む、請求項18〜22のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  24. 乳清タンパク質が、少なくとも部分的に乳清タンパク質ミセルとして存在する、請求項18〜23のいずれか一項に記載の冷凍デザート。
  25. 少なくとも8重量%のタンパク質と、
    15〜28重量%の炭水化物と、
    3〜7重量%の脂肪と、
    を含む低温殺菌冷凍アイスクリーム。
  26. タンパク質含量が、10%を超える、好ましくは12%を超える、請求項25に記載のアイスクリーム。
  27. 炭水化物含量が20〜26%である、請求項25又は26に記載のアイスクリーム。
  28. 脂肪含量が4〜6%である、請求項25〜27のいずれか一項に記載のアイスクリーム。
  29. タンパク質含量の少なくとも一部が乳清タンパク質ミセルとして存在する、請求項25〜28のいずれか一項に記載のアイスクリーム。
  30. 冷凍デザートにおける乳清タンパク質ミセルの使用。
  31. 乳清タンパク質ミセルが、冷凍デザートの全タンパク質含量の少なくとも50%を構成する、請求項30に記載の使用。
  32. 冷凍デザートを製造するための方法であって、少なくとも、
    a.乳清タンパク質ミセル、その濃縮液、又はその粉末を含む成分ミックスをブレンドするステップと、
    b.ミックスを低温殺菌するステップと、
    c.任意選択でミックスをホモジナイズするステップと、
    d.ミックスを冷凍するステップと、
    を含む方法。
  33. 低温殺菌が、本質的に中性のpH値で行われる、請求項32に記載の方法。
  34. 低温殺菌が、弱酸性pH4〜6で行われる、請求項32に記載の方法。
  35. 冷凍デザートが、6%を超える、好ましくは8%を超えるタンパク質含量を有する、請求項32〜34のいずれか一項に記載の方法。
  36. 追加の熟成ステップがステップcの後に行われる、請求項32〜35のいずれか一項に記載の方法。
  37. タンパク質ミセルが、100〜900nmの平均直径を有する、請求項32〜36のいずれか一項に記載の方法。
  38. 乳清タンパク質ミセル粉末が、1ミクロンを超える平均直径を有する、請求項32〜36のいずれか一項に記載の方法。
  39. ステップaで得られたブレンドが、乾物基準で10〜40%、好ましくは15〜35%、最も好ましくは30%の乳清タンパク質ミセルを含む、請求項32〜38のいずれか一項に記載の方法。
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