JP2009528292A - 生物学的障壁を越える増強された放出特性を有する分子の輸送のための組成物および方法 - Google Patents

生物学的障壁を越える増強された放出特性を有する分子の輸送のための組成物および方法 Download PDF

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Abstract

カーゴ分子とトランスポーター分子とのコンジュゲートであって、カーゴ分子およびトランスポーター分子が放出可能な(releasable)リンカーによって共有結合されているコンジュゲートが開示される。コンジュゲートのカーゴは、生物活性物質またはレポーター分子であってよい。トランスポーターは、結合していないカーゴの輸送に比較して、生物学的障壁(例、細胞膜)を越えるカーゴの輸送を調節する。様々なタイプのカーゴおよびトランスポーターへの迅速かつ容易な結合に適する放出可能なリンカーもまた、コンジュゲートの合成におけるリンカーの使用方法とともに開示される。

Description

(関連出願への相互参照)
本願は、2006年2月27日に出願された米国仮特許出願第60/777,341号の利益を主張する。米国仮特許出願第60/777,341号の内容は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
(連邦政府が後援する研究または開発に関する声明)
本発明は、米国国立衛生研究所の助成金番号第CA31841号および第CA31845号ならびに米国立科学財団バイオフォトニクス科学&テクノロジーセンターからの助成金番号第002865−SU号の下で連邦政府による後援を受けて実施された。連邦政府は、本発明に所定の権利を有するものである。
(技術分野)
本出願は、生物学的障壁(例えば、細胞膜もしくは組織)を越える輸送に適する、放出可能な(releasable)成分によって連結されている、カーゴ分子(例えば、生物活性分子もしくはレポーター分子)とトランスポーター物質とのコンジュゲートを含む、カーゴ−リンカー−トランスポーターの形態を備える組成物に関する。本出願は、そのようなコンジュゲートを合成するための方法、そして細胞および動物においてそれらの有効性を試験するための方法にさらに関する。
背景
医薬品および他の生物活性分子は一般に、有効であるためには生物学的障壁を越える必要がある。例えば、細胞内標的と相互作用することが企図される薬物もしくはプローブは、所望の作用を生成するためには細胞の血漿膜を越える必要がある。所定の薬物は、局所適用される物質については皮膚の角質層などの他の生物学的障壁を横断する必要がある場合がある。血漿膜などの生物学的障壁は、一般に主として非極性成分から構成されるので、生物活性分子は、受動拡散によって障壁を横断できるためには相当に非極性である必要がある。しかし、薬物もしくはプローブは、さらに血漿もしくは細胞外流体に可溶性であるために十分に極性である必要がある。これらの拮抗する要件は、細胞内で機能することが企図される、または1つの作用を発揮するために生物学的膜もしくは他の生物学的障壁を横断する必要がある生物学的物質およびプローブまたはレポーター分子に対して相当に狭い範囲内の極性を生じさせる。
この問題にとっての様々な解決策は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5および特許文献6、ならびに非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7、および非特許文献8、特に487〜665頁に記載されている、様々な論文に記載されている。これらの刊行物は、送達強化トランスポーター、すなわち、例えば生物活性分子が細胞膜もしくは角質層などの生物学的障壁を越える能力を高めるトランスポーター分子について記載している。
生物活性分子などのカーゴ分子とトランスポーター分子とのコンジュゲートを産生するための効率的システムを有することが望ましい。カーゴとトランスポーター分子とのコンジュゲートは、望ましくは保管および投与条件下では安定であるが、細胞もしくは他の標的環境内ではカーゴを放出するリンカーによって達成される。さらにまた、それらが生物学的膜もしくは他の生物学的障壁を越えて生物活性分子を輸送する能力についてトランスポーター分子をスクリーニングするための、迅速で適切な経済的システムを有することもまた望ましい。本発明の実施形態は、これらの目的に取り組み、追加の利点を提供し、ならびに様々な組成物および方法を提供する。
米国特許第6,306,993号明細書 米国特許第6,495,663号明細書 米国特許第6,593,292号明細書 米国特許第6,669,951号明細書 米国特許第6,730,293号明細書 米国特許第6,759,387号明細書 Rothbardら、Nat.Med.6:1253(2000) Kirschbergら、Org.Lett.5:3459(2003) Samuelら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.100:14281(2003) Chenら、Chem.Biol.8:1123(2001) Kimら、J.Immunol.159:1666(1997) Robbinsら、BioTechniques 33:190,194(2002) Siprashviliら、Hum.Gene Ther.14:1225(2003) Advanced Drug Delivery Reviews(2005),volume 57
1つの実施形態では、本発明は、式:(カーゴ)−(放出可能なリンカー)−(トランスポーター)のコンジュゲートであって、コンジュゲートのカーゴは生物活性物質またはレポーター分子であってよく、そしてトランスポーター分子は結合していないカーゴの輸送に比較して生物学的障壁を越えるカーゴの輸送を調節するコンジュゲートを包含している。1つの実施形態では、トランスポーターは、結合していないカーゴの輸送に比較して生物学的障壁を越えるカーゴの輸送の量もしくは速度を増加させる。別の実施形態では、トランスポーターは、結合していないカーゴの輸送に比較して生物学的障壁を越えるカーゴの輸送の量もしくは速度を低下させる。1つの実施形態では、生物学的障壁は、生物学的膜である。別の実施形態では、生物学的障壁は、細胞膜である。別の実施形態では、生物学的障壁は、角質層である。別の実施形態では、本発明は、様々なタイプのカーゴおよびトランスポーターへの容易かつ安価な結合に適する放出可能なリンカーを包含している。別の実施形態では、本発明は、コンジュゲートの合成においてリンカーを使用する方法を包含している。別の実施形態では、本発明は、生物学的障壁、例えば細胞膜などの生物学的膜を越えるレポーター分子の輸送を実行する際のトランスポーターの有効性をアッセイする工程による、トランスポーターの有効性を決定するための方法を含有している。
1つの実施形態では、カーゴ分子およびトランスポーター分子は相違する分子である;すなわち、同一分子がカーゴ分子およびトランスポーター分子の両方として機能することはできない。別の実施形態では、カーゴ分子およびトランスポーター分子は、カーゴ−放出可能なリンカー−トランスポーターコンジュゲートの相違する部分である;すなわち、コンジュゲートの同一部分がカーゴおよびトランスポーターの両方として機能することはできない。1つの実施形態では、トランスポーター分子はポリアミンである。別の実施形態では、トランスポーター分子はポリアミンではない。
1つの実施形態では、本発明は、生物学的障壁を越えてカーゴ分子を輸送するための組成物であって、カーゴ分子;トランスポーター分子;ならびにカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する、式:
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−であり、このときMはカチオンの1つの等価物であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり;brは、1〜4までの整数であり、R基上の「分枝鎖」の数を示している)の放出可能なリンカーを含む組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を包含している。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。カーゴ分子は、生物活性物質およびレポーター分子からなる群から選択することができる。変量brは、好ましくは1もしくは2、より好ましくは1である。2つの(−W−V−)基が存在する場合は、それらはR基内の同一原子(からの分枝鎖)に結合させることができる、またはそれらはR基内の2つの相違する原子(からの分枝鎖)に結合させることができる。3つの(−W−V−)基が存在する場合は、全3つをR基内の同一原子(からの分枝鎖)に結合させることができ、またはそれらはR基内の3つの相違する原子(からの分枝鎖)に結合させることができ、または2つを同一原子(からの分枝鎖)に結合させ、1つを相違する原子(からの分枝鎖)に結合させることができる。4つの(−W−V−)基が存在する場合は、それらはR基内の2つ以上の相違する原子(からの分枝鎖)に結合させることができる。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、本発明は、生物学的障壁を越えてカーゴ分子を輸送するための組成物であって、カーゴ分子;トランスポーター分子;ならびにカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する、式:
−W−V−R−S−
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−であり、このときMはカチオンの1つの等価物であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルである)の放出可能なリンカーを含む組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を包含している。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。カーゴ分子は、生物活性物質およびレポーター分子からなる群から選択することができる。
別の実施形態では、VがO、HN、NR、もしくはSである場合は、Rは、V原子のすぐ隣で式:−C(CH−(すなわち、ジメチル置換炭素、またはジェム−ジメチル炭素)の炭素原子を含有している。別の実施形態では、VがC(Rである場合は、両R基はメチル(すなわち、ジメチル置換炭素、もしくはジェム−ジメチル炭素)である。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、リンカーは、式:
Figure 2009528292
のリンカーである。
1つの実施形態では、本発明は、生物学的障壁を越えてカーゴ分子を輸送するための組成物であって、カーゴ分子;トランスポーター分子;ならびにカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する、式:
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルである)の放出可能なリンカーを含む組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体を包含している。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。カーゴ分子は、生物活性物質およびレポーター分子からなる群から選択することができる。
また別の実施形態では、カーゴ分子、トランスポーター分子、ならびにカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する放出可能なリンカーを含む本組成物は、式:
Figure 2009528292
(式中、Carg−Nuは、カーゴ分子「Carg−NuH」の残基を表し;Transp−Sは式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子の残基を表し;Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−であり、Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり;Mはカチオンの1つの等価物であり;brは、1〜4までの整数であり、R基上の「分枝鎖」の数を示している)の組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体である。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、カーゴ分子、トランスポーター分子、ならびにカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する放出可能なリンカーを含む組成物は、式:
Figure 2009528292
(式中、Carg−Nuはカーゴ分子「Carg−NuH」の残基を表し;Transp−Sは式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子の残基を表し;Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−であり、Mはカチオンの1つの等価物であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルである)の組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体である。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、カーゴ分子、トランスポーター分子、ならびにカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する放出可能なリンカーを含む本組成物は、式:
Figure 2009528292
(式中、Carg−Nuはカーゴ分子「Carg−NuH」の残基を表す;Transp−Sは式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子の残基を表し;Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルである)の組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体である。1つの実施形態では、VはOである。1つの実施形態では、VはNHである。1つの実施形態では、VはCHである。1つの実施形態では、VはSである。1つの実施形態では、Rは、C−C炭化水素である。1つの実施形態では、Rは、C−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
また別の実施形態では、VはOであり、RはC−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは−CHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCHCH−である。
別の実施形態では、(カーゴ)−(放出可能なリンカー)−(トランスポーター分子)は、式:
Figure 2009528292
(式中、Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはS、好ましくはO、NH、もしくはCHであり;およびjは、1〜8から選択される整数であり、好ましくは1〜2である);または
Figure 2009528292
(式中、kは0〜8から選択される整数であり、好ましくは1もしくは2である)からなる。
別の実施形態では、−Nu−は、−O−、−NH−、−NR、−、もしくは−S−であり、Rは、C−Cアルキルである。
別の実施形態では、Carg−Nuは、ルシフェリンなどのレポーター分子の残基である。
別の実施形態では、Carg−Nuは、生物活性分子の残基である。1つの実施形態では、生物活性分子は、薬物、治療薬、および診断薬からなる群から選択される。薬物もしくは治療薬は、パクリタキセルもしくはポリアミンであってよい。薬物もしくは治療薬は、例えばシクロスポリンAなどのシクロスポリンであってよい。
別の実施形態では、カーゴ−放出可能なリンカー−トランスポーターは:
Figure 2009528292
Figure 2009528292
およびそれらの任意の立体異性体、塩、もしくは溶媒和物からなる群から選択される。
別の実施形態では、生物活性分子の残基は、C2’ヒドロキシルもしくはC7ヒドロキシルのどちらかで結合したシクロスポリンの残基である。
別の実施形態では、カーゴ−放出可能なリンカー−トランスポーターは、r8−Cys−S−S−(CHCHCH)−C(=O)−O−CH−O−C(=O)−OCsAおよびr8−Cys−S−S−(CHCHCHCH)−C(=O)−O−CH−O−C(=O)−OCsA(式中、r8−Cys−S−はアセチル−D−Cys−(D−Arg)−NHの残基を表し、−OCsAはシクロスポリンAの残基を示す)ならびにそれらのすべての塩、溶媒和物、および立体異性体からなる群から選択される。
別の実施形態では、トランスポーターは、脂肪酸などの脂質分子である。別の実施形態では、脂質分子は、式:(C−C32ヒドロカルビル)−C(=O)−OHおよびそれらのアシル形、または(C−C32アルキル)−C(=O)−OHおよび(C−C32アルケニル)−C(=O)−OHの脂質分子ならびにそれらのアシル形である。別の実施形態では、脂質トランスポーターは、カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、パルミトール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、エルカ酸、またはそれらのアシル形である。別の実施形態では、分子の「Transp−S」部分を含む脂質トランスポーターは、式:(C−C32ヒドロカルビル)−C(=O)−スペーサー−S−(式中、スペーサーは任意に置換されたC−C10アルキル、アルケニル、アルキニル、ヒドロカルビル、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、もしくはヘテロアルキニル基、または上記の基の任意の組み合わせである)の脂質トランスポーターである。別の実施形態では、分子の「Transp−S」部分を含む脂質トランスポーターは、式:
Figure 2009528292
(式中、脂肪酸はシステインのアミノ基(DもしくはLシステイン)へアシル化されており、システインのスルフヒドリル側鎖は、「Transp−S」部分の「S」部分として機能する)の化合物、およびそれらの任意の立体異性体、塩、もしくは溶媒和物である。
トランスポーターが脂肪酸などの脂質分子である別の実施形態では、カーゴは、シクロスポリンAなどのシクロスポリンであってよい。別の実施形態では、シクロスポリン−リンカー−トランスポーターコンジュゲートは:
Figure 2009528292
(式中、n=6である、n=10である、またはn=14である)、
Figure 2009528292
およびそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体からなる群から選択できる。
別の実施形態では、本発明は、カーゴ分子「Carg−NuH」と式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子とのコンジュゲートを作製する方法であって:
化合物Carg−NuH、アニオンCarg−Nu(−)、もしくは塩Carg−Nu(−)M(式中、−NuHもしくは−Nu(−)は求核成分であり、Mはカチオンの1つの等価物である)を式:Y−W−Y(式中、YおよびYは離脱基であり、同一であっても相違していてもよく、Wは−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)−、−−P(=O)(−O)−、−P(=O)(−O−PG)−(式中、PGは保護基である)、もしくは−S(=O)−である)の化合物と、式:
Carg−Nu−W−Y1 (IIA−gb)
の化合物を形成するために反応させる工程と;
式:(IIIA−gb)
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSである;およびRは、C−Cアルキルであり、brは1〜4の整数であり、R基上の「分子鎖」の数を示しており、TLGSはチオール離脱基安定剤である)の化合物を、式:Transp−SHのチオール基を有するトランスポーター基と、式:(IVA−gb)
Figure 2009528292
の化合物を形成するために反応させる工程と;
化合物(IIA−gb)を化合物(IVA−gb)と、式(Igb):
Figure 2009528292
のコンジュゲートを形成するために反応させる工程と
を含む方法を包含している。Wが−−P(=O)(−O−PG)−である場合、保護基をリン酸塩から除去する追加の工程を実施することができる。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
1つの実施形態では、VはOである。1つの実施形態では、VはNHである。1つの実施形態では、VはCHである。1つの実施形態では、VはSである。1つの実施形態では、RはC−C炭化水素である。1つの実施形態では、Rは、C−Cアルキルである。
別の実施形態では、VはOであり、RはC−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは−CHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCHCH−である。
別の実施形態では、−Nu−は、−O−、−NH−、−NR、−、もしくは−S−であり、このときRはC−Cアルキルである。
別の実施形態では、Mは、Li、Na、K、Mg+2、もしくはCa+2である。
別の実施形態では、TLGSは、
Figure 2009528292
である。
別の実施形態では、本発明は、カーゴ分子「Carg−NuH」と式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子とのコンジュゲートを作製する方法であって、式(IIgb):
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり、このときbrは1〜4の整数であり、R基上の「分子鎖」の数を示しており、TLGSはチオール離脱基安定剤である)の化合物を式:Y−W−Y(式中、Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)−、−−P(=O)(−O)−、−−P(=O)(−O−PG)−(式中、PGは保護基である)、または−S(=O)−である)の活性化試薬と、式(III−gb):
Figure 2009528292
(式中、YおよびYは離脱基であり、同一であっても相違していてもよい)の化合物を形成するために反応させる工程と;
(IIIg)を式:Carg−NuH、アニオンCarg−Nu(−)、または塩Carg−Nu(−)M(式中、−NuHもしくは−Nu(−)は求核成分であり、Mはカチオンの1つの等価物である)の求核化合物と、式(IVgb):
Figure 2009528292
の化合物を形成するために反応させる工程と;
(IVgb)をTransp−SHと、式(Igb):
Figure 2009528292
のコンジュゲートを形成するために反応させる工程と
を含む方法を包含している。Wが−P(=O)(−O−PG)−である場合は、保護基をリン酸塩から除去する追加の工程が実施される。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
1つの実施形態では、Wは−(C=O)−である。1つの実施形態では、VはOである。1つの実施形態では、VはNHである。1つの実施形態では、VはCHである。1つの実施形態では、VはSである。1つの実施形態では、Rは、C−C炭化水素である。1つの実施形態では、Rは、C−Cアルキルである。
別の実施形態では、VはOであり、RはC−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは−CHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCHCH−である。
別の実施形態では、−Nu−は、−O−、−NH−、−NR、−、もしくは−S−であり、このときRはC−Cアルキルである。
別の実施形態では、Mは、Li、Na、K、Mg+2、もしくはCa+2である。
別の実施形態では、TLGSは、
Figure 2009528292
である。
別の実施形態では、本発明は、カーゴ分子「Carg−NuH」と式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子とのコンジュゲートを作製する方法であって、式(IIg):
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり、そしてTLGSはチオール離脱基安定剤である)の化合物を式:Y−(C=O)−Yの活性化試薬と、式(IIIg):
Figure 2009528292
(式中、YおよびYは離脱基であり、同一であっても相違していてもよい)の化合物を形成するために反応させる工程と;
(IIIg)を式:Carg−NuH、アニオンCarg−Nu(−)、または塩Carg−Nu(−)M(式中、−NuHもしくは−Nu(−)は求核成分であり、Mはカチオンの1つの等価物である)の求核化合物と、式(IVg):
Figure 2009528292
の化合物を形成するために反応させる工程と;
(IVg)をTransp−SHと、式(I):
Figure 2009528292
のコンジュゲートを形成するために反応させる工程と
を含む方法を包含している。1つの実施形態では、VはOである。1つの実施形態では、VはNHである。1つの実施形態では、VはCHである。1つの実施形態では、VはSである。1つの実施形態では、Rは、C−C炭化水素である。1つの実施形態では、Rは、C−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、VはOであり、RはC−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは−CHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCHCH−である。
別の実施形態では、−Nu−は、−O−、−NH−、−NR、−、もしくは−S−であり、このときRはC−Cアルキルである。
別の実施形態では、Mは、Li、Na、K、Mg+2、もしくはCa+2である。
別の実施形態では、TLGSは、
Figure 2009528292
である。
別の実施形態では、本発明は、カーゴ分子「Carg−NuH」と式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子とのコンジュゲートを作製する方法であって、式(II):
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSである;Rは、C−Cアルキルである)の化合物を式:Y−(C=O)−Yの活性化試薬と、式(III):
Figure 2009528292
(式中、YおよびYは離脱基であり、同一であっても相違していてもよい)の化合物を形成するために反応させる工程と;
(IIIg)を式:Carg−NuH、アニオンCarg−Nu(−)、または塩Carg−Nu(−)M(式中、−NuHもしくは−Nu(−)は求核成分であり、Mはカチオンの1つの等価物である)の求核化合物と、式(IV):
Figure 2009528292
の化合物を形成するために反応させる工程と;
(IV)をTransp−SHと、式(I):
Figure 2009528292
のコンジュゲートを形成するために反応させる工程と
を含む方法を包含している。1つの実施形態では、VはOである。1つの実施形態では、VはNHである。1つの実施形態では、VはCHである。1つの実施形態では、VはSである。1つの実施形態では、Rは、C−C炭化水素である。1つの実施形態では、Rは、C−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、VはOであり、RはC−Cアルキルである。1つの実施形態では、Rは−CHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCH−である。1つの実施形態では、Rは−CHCHCHCH−である。
別の実施形態では、−Nu−は、−O−、−NH−、−NR、−、もしくは−S−であり、このときRはC−Cアルキルである。
別の実施形態では、Mは、Li、Na、K、Mg+2、もしくはCa+2である。
別の実施形態では、本発明は、細胞取り込みおよび細胞内遊離についてトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートをアッセイする方法であって、細胞もしくは組織サンプルをトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートと接触させる工程であって、このとき式:
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−であり、Mはカチオンの1つの等価物であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり;brは、1〜4までの整数であり、R基上の「分枝鎖」の数を示している)のリンカーはカーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合し、カーゴはある期間にわたってレポーター分子である工程と;および細胞もしくは組織内に輸送されているカーゴを検出する工程であって、それにより輸送を実行する際のトランスポーターの有効性が決定される工程とを含む方法を包含している。1つの実施形態では、brは1である。別の実施形態では、brは2である。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、本発明は、細胞取り込みおよび細胞内遊離についてトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートをアッセイする方法であって、細胞もしくは組織サンプルをトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートと接触させる工程であって、リンカーは、式:
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルである)のリンカーであり、そしてカーゴは、ある期間にわたりレポーター分子である工程と;および細胞もしくは組織内に輸送されているカーゴを検出する工程であって、それにより輸送を実行する際のトランスポーターの有効性が決定される工程とを含む方法を包含している。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、本発明は、細胞取り込みおよび細胞内遊離についてトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートをアッセイする方法であって、細胞もしくは組織サンプルを式:
Figure 2009528292
(式中、Carg−Nuはカーゴ分子「Carg−NuH」の残基を表し;およびTransp−Sは化学式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子の残基を表し;Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−でありVは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり;Mはカチオンの1つの等価物であり;brは、1〜4までの整数であり、R基上の「分枝鎖」の数を示している)のトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートと接触させる工程であって、カーゴは、ある期間にわたりレポーター分子である工程と;および細胞もしくは組織内に輸送されているカーゴを検出する工程であって、それにより輸送を実行する際のトランスポーターの有効性が決定される工程とを含む方法を包含している。1つの実施形態では、カーゴは、ルシフェリンである。1つの実施形態では、brは1である。別の実施形態では、brは2である。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
別の実施形態では、本発明は、細胞取り込みおよび細胞内遊離についてトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートをアッセイする方法であって、細胞もしくは組織サンプルを式:
Figure 2009528292
(式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換された鎖基であり;Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルである)のトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートと接触させる工程であって、カーゴは、ある期間にわたりレポーター分子である工程と;および細胞もしくは組織内に輸送されているカーゴを検出する工程であって、それにより輸送を実行する際のトランスポーターの有効性が決定される工程とを含む方法を包含している。1つの実施形態では、カーゴは、ルシフェリンである。1つの実施形態では、Rは、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意の置換基であり、VはOであり;好ましくは、C−Cヒドロカルビル基は、Cアルキル、Cアルキル、およびCアルキルから選択される。
トランスポーターが他に特に規定されていない場合の上記の任意のコンジュゲート、組成物、および方法のためには、トランスポーターは、Ac−D−Cys−(D−Arg)−CONHおよびそれらの任意の立体異性体、塩、もしくは溶媒和物から選択できるが、このときCys分子のチオール基は上記で言及した「HS−Transp」のチオール基に対応し、Ac−D−Cys−(D−Arg)−CONHの残りは「HS−Transp」の「Transp」部分に対応する。
上述した方法のすべてについて、工程の順序は、当該の再順序付けが同一の生成物もしくは結果を提供する限り変更することができる。
上述および本明細書に記載した化合物およびコンジュゲートすべてについて、本発明は、患者に前記化合物もしくはコンジュゲートを治療有効量で投与する方法を包含している。投与は、癌細胞を本発明の化合物もしくはコンジュゲートと接触させる工程、または患者の癌細胞が化合物もしくはコンジュゲートと接触させられるような方法で、本発明の化合物もしくはコンジュゲートを投与する工程を含むことができる。投与方法の別の実施形態では、本発明のリンカーによってトランスポーターへ結合された薬物は、通常は遊離薬に耐性がある細胞系、癌、または患者を治療するために使用できる。
発明の詳細な説明
「被験者」もしくは「患者」は、脊椎動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを意味する。
本発明の方法を用いて疾患を「治療する工程」もしくは「治療する」は、追加の治療薬を用いて、または用いずに、疾患もしくは疾患の症状のいずれかを緩和する、改善する、安定化させる、逆転させる、緩徐化させる、遅延させる、予防する、減少させる、もしくは排除するために、または疾患もしくは疾患の症状の進行を遅らせる、もしくは停止させるために、1つまたは複数の化合物を投与する工程であると規定されている。化合物の「治療使用」は、上記に規定した疾患を治療するために、1つまたは複数の化合物を使用することであると規定されている。「治療有効量」は、上記に規定した疾患を治療するために十分な量である。予防もしくは抑制は部分的または完全であってよい。
「診断薬」は、疾患の存在、程度、または病期を検出する、診断する、病期分類する、さもなければ同定する際に役立つ物質である。
「残基」は、それがリンカー基と反応した後に残留している分子の部分を意味する。例えば、Boc−NH−CH−CO−NH−CH(CH)−COOMeを生成するためのBoc−NH−CH−COOHとHN−CH(CH)−COOMe(アラニンメチルエステルを備えるBoc−グリシン)との反応において、「Boc−NH−CH−CO−」部分はBoc−グリシンの残基であり、「−NH−CH(CH)−COOMe」部分はアラニンメチルエステルの残基である。
「生物学的障壁」は、分子の自由拡散を妨害する生物学的構造であると規定されている。生物学的障壁には、細胞膜、核膜、オルガネラ膜、角質層、角膜上皮、および血液脳関門が含まれるが、それらに限定されない。
本発明は、本明細書に記載もしくは参照して組み込まれる化合物の任意およびすべての立体異性体、塩、水和物および溶媒和物を含む、本明細書に記載もしくは参照して組み込まれる化合物を含んでいる。本発明は、それらの非塩、非水和物/非溶媒和物形にある、本発明に記載もしくは参照して組み込まれる化合物もまた含んでいる。そこで、本明細書に開示した一部の化合物は塩として示されているが、本開示は、本明細書に記載した化合物の他のすべての塩、水和物、および溶媒和物、ならびに本化合物の非塩、非水和物/非溶媒和物形を包含すると理解されたい。特に好ましいのは、医薬上許容される塩である。医薬上許容される塩は、遊離化合物の生物活性を保持しており、生物学的または他の点で有害ではないそれらの塩である。塩基性化合物の所望の塩は、当業者には知られている方法によって、化合物を酸で処理する工程によって調製できる;そのような塩は、化合物を生成する反応の生成物であってよい。無機酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、およびリン酸が含まれるがそれらに限定されない。有機酸の例には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、スルホン酸、およびサリチル酸が含まれるがそれらに限定されない。例えばアスパラギン酸塩およびグルタミン酸塩などの塩基性化合物とアミノ酸との塩もまた調製できる。酸性化合物の所望の塩は、当業者には知られている方法によって、化合物を塩基で処理する工程によって調製できる;そのような塩は、化合物を生成する反応の生成物であってよい。酸性化合物の無機塩の例には、例えばナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、およびカルシウム塩などのアルカリ金属およびアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;およびアルミニウム塩などが含まれるがそれらに限定されない。酸性化合物の有機塩の例には、プロカイン、ジシクロヘキシルアミン、ジベンジルアミン、N−エチルピペリジン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、およびトリエチルアミン塩が含まれるがそれらに限定されない。例えばリシン塩などの酸性化合物とアミノ酸との塩もまた調製できる。溶媒和物の例には、水和物、半水和物(1/2 HO)、二水和物、三水和物、ならびにメタノラートおよびエタノラートなどのアルコラートが含まれるがそれらに限定されない。
本発明は、本明細書に開示した化合物のすべての多形体、結晶形、および非結晶形をさらに含んでいる。
本発明は、単離形にあるジアステレオマーおよびエナンチオマーを含む本明細書に開示した化合物のすべての立体異性体、ならびにラセミ混合物を含むがそれらに限定されない任意の比率にある立体異性体の混合物をさらに含んでいる。立体化学が構造で明確に指示されない限り、構造は、図示した化合物のすべての考えられる立体異性体を包含することが企図されている。特定の生物活性物質もしくはレポーター分子が指示される場合は、適切な生物学的機能またはレポーター/プローブの特性を保持している物質もしくはレポーターの立体異性体だけが企図されている。
用語「アルキル」は、規定した炭素原子数を有する、または数が規定されていない場合は12個までの炭素原子を有する直鎖状、分枝状、環式基、およびそれらの組み合わせを含む飽和脂肪族基を意味しており、C−C12、C−C10、C−C、C−C、およびC−Cアルキル基を含むサブセットのアルキル基が好ましい。「直鎖状アルキル」もしくは「線状アルキル」基は、環式でも分枝状でもない、一般には「n−アルキル」と指名されるアルキル基を意味する。アルキル基の例には、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、n−ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、ネオペンチル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびアダマンチルなどの基が含まれるが、それらに限定されない。環式基は、例えば、シクロヘプチルなどの基を含むがそれには限定されない1つの環、または例えばアダマンチルもしくはノルボニルなどの基を含むがそれらに限定されない複数の縮合環から構成されてよい。
「置換アルキル」は、例えばハロゲン(フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨード)、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシ、ベンジルオキシ、フェニル、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオアルコキシ、カルボキシアルデヒド、カルボアルコキシおよびカルボキサミドなどの基、または本発明の目的に必要であれば保護基を用いて適切にブロックできる官能基を含むがそれらに限定されない1つまたは複数の置換基で置換されたアルキル基を意味する。置換アルキル基の例には、−CF、−CF−CF、およびその他のパーフルオロおよびパーハロ基が含まれるがそれらに限定されない。
「ヒドロキシアルキル」は、詳細には1つの−OH基で置換された、指定炭素原子数を有するアルキル基を意味する。そこで、「C線状ヒドロキシアルキル」は、−CHCHCHOH−、−CHCHOHCH−、および−CHOHCHCH−を意味する。
用語「アルケニル」は、指定の炭素原子数を有する、または数が指定されていない場合は、少なくとも1つの二重結合(−C=C−)を含有する12個までの炭素原子を有する、直鎖状(線状)、分枝状、環式基、およびそれらの組み合わせを含む不飽和脂肪族基を意味する。アルケニル基の例には、−CH−CH=CH−CH;および−CH−CH−シクロヘキセニルが含まれるがそれらに限定されない;このときエチル基は、任意の利用可能な炭素原子価でシクロヘキセニル成分に結合させることができる。用語「アルキニル」は、指定の炭素原子数を有する、または数が指定されていない場合は、少なくとも1つの三重結合(−C≡C−)を含有する12個までの炭素原子を有する、直鎖状(線状)、分枝状、環式基、およびそれらの組み合わせを含む不飽和脂肪族基を意味する。「炭化水素」、「炭化水素基」、「炭化水素鎖」もしくは「ヒドロカルビル」は、直鎖状、分枝状、または環状アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル基、およびそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味する。炭化水素基は、指定の炭素原子数を有する、または数が指定されない場合は、1〜12個の炭素原子を有する。「置換アルケニル」、「置換アルキニル」、「置換炭化水素鎖」(もしくは「置換ヒドロカルビル」、「置換炭化水素基」、または「置換炭化水素」)は、例えばハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシ、ベンジルオキシ、フェニル、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオアルコキシ、カルボキシアルデヒド、カルボアルコキシおよびカルボキサミドなどの基、または本発明の目的に必要であれば保護基を用いて適切にブロックできる官能基を含むがそれらに限定されない1つまたは複数の置換基で置換された各基を意味する。
「アリール」もしくは「Ar」は、単一環(フェニルなどの基を含むがそれらに限定されない)または複数の縮合環(ナフチルもしくはアントリルなどの基を含むがそれらに限定されない)を有する芳香族炭素環基を意味しており、未置換および置換両方のアリール基を含んでいる。「置換アリール」は、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、炭化水素鎖、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシ、ベンジルオキシ、フェニル、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオアルコキシ、カルボキシアルデヒド、カルボアルコキシおよびカルボキサミドなどの基、または本発明の目的に必要であれば保護基を用いて適切にブロックできる官能基を含むがそれらに限定されない1つまたは複数の置換基で置換されたアリールを意味する。
「ヘテロアルキル」、「ヘテロアルケニル」、および「ヘテロアルキニル」は、各々が、基内の主鎖、分枝鎖、または環状鎖の一部として1つまたは複数のヘテロ原子を含有する、指定の炭素原子数を含有する(または数が指定されていない場合は、12個までの炭素原子を有する)アルキル、アルケニル、およびアルキニル基を意味する。ヘテロ原子には、N、S、O、およびPが含まれるがそれらに限定されない;NおよびOが好ましい。ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、およびヘテロアルキニル基は、ヘテロ原子(原子価を入手できる場合)または炭素原子のいずれかでその分子の残りに結合させることができる。ヘテロアルキニル基の例には、例えば、−O−CH、−O−CH−、−CH−O−CH−、−CH−CH−O−CH−、−S−CH−CH−CH−、−CH−CH(CH)−S−CH−、−CH−CH−NH−CH−CH−、1−エチル−6−プロピルピペリジノ、2−エチルチオフェニル、およびモルホリノが含まれるがそれらに限定されない。ヘテロアルケニル基の例には、例えば、−CH=CH−NH−CH(CH)−CH−などの基が含まれるがそれには限定されない。
「ヘテロ鎖」もしくは「ヘテロ鎖基」は、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、もしくはヘテロアルキニル基、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味しており、指定された炭素原子数を有する(数が指定されていない場合は、12個までの炭素原子を有する)。
「ヘテロアリール」もしくは「HetAr」は、単一環(例えばピリジル、チオフェン、もしくはフリルなどの例を含むがそれらに限定されない)または複数の縮合環(例えばイミダゾリル、インドロジニルもしくはベンゾチエニルを含むがそれらに限定されない)を有する、そして環内に例えばN、O、P、もしくはSなどのヘテロ原子を含むがそれらに限定されない少なくとも1つのヘテロ原子を有する芳香族炭素環基を意味する。他に特に指定しない限り、ヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、およびヘテロアリール基は、1〜5個のヘテロ原子および1〜12個の炭素原子を有する。「置換ヘテロアルキル」、「置換ヘテロアルケニル」、「置換ヘテロアルキニル」、「置換ヘテロ鎖」、および「置換ヘテロアリール」基は、例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、ベンジル、炭化水素鎖、ハロゲン、アルコキシ、アシルオキシ、アミノ、ヒドロキシル、メルカプト、カルボキシ、ベンジルオキシ、フェニル、ベンジル、シアノ、ニトロ、チオアルコキシ、カルボキシアルデヒド、カルボアルコキシおよびカルボキサミド、または本発明の目的に必要であれば、保護基を用いて適切にブロックすることのできる官能基を含むがそれらに限定されない1つまたは複数の置換基で置換されたヘテロアルキル、ヘテロアルケニル、ヘテロアルキニル、ヘテロ鎖、およびヘテロアリール基を意味する。そのような置換基の例には、フェニルもしくはベンジル基によって窒素もしくは炭素で置換され、そして炭素もしくは窒素上で任意の入手できる原子価によって分子の残りに結合されたピペラジン、−NH−SO−フェニル、−NH−(C=O)O−アルキル、−NH−(C=O)O−アルキル−アリール、および−NH−(C=O)−アルキルが含まれるがそれらに限定されない。化学的に可能であれば、その基のヘテロ原子および炭素原子を置換することができる。ヘテロ原子は、化学的に可能であれば、酸化形であってもよい。
用語「アルキルアリール」は、1つ、2つ、もしくは3つのアリール基に負荷された、指定の炭素原子数を有するアルキル基を意味する。
本明細書で使用する用語「アルコキシ」は、1つの酸素原子に連結された、そして指定の炭素原子数を有する、または数が指定されていない場合は、12個までの炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アルキニル、もしくは炭化水素鎖を意味する。アルコキシ基の例には、例えば、メトキシ、エトキシ、およびt−ブトキシなどの基が含まれるがそれらに限定されない。
本明細書で使用する用語「アルカノエート」は、例えば酢酸(CHC(=O)−O(−1))、プロピオン酸(CHCHC(=O)−O(−1))などのイオン化カルボン酸基を意味する。「アルキルアルカノエート」は、例えば酢酸エチル(CHC(=O)−O−CHCH)などのアルコキシ基を用いてエステル化されたカルボン酸を意味する。「ω−ハロアルキルアルカノエート」は、カルボキシ基から最も遠くのアルカノエート炭素原子上に1つのハロゲン原子を有するアルキルアルカノエートを意味する;そこで、エチルω−ブロモプロピオネートは、エチル3−ブロモプロピオネートを意味しており、メチルω−クロロn−ブタノエートはメチル4−クロロn−ブタノエートを意味する。
本明細書で使用する用語「ハロ」および「ハロゲン」は、Cl、Br、FもしくはI置換基を意味する。
「M」が「カチオンの1つの同等物」を示すために使用される場合は、これはそのカチオンの形式電荷もしくは化学的性質とは無関係に、任意のカチオンの1つの同等物を表すことが意図されている。すなわち、MはLi、Na、もしくはKなどの一価カチオンだけではなく、アニオンと適切な等量で、例えばCa+2、Mg+2もしくはFe+3などの多価カチオンもまた表す場合がある。Mは、金属もしくは非金属カチオンのいずれも表すことがある;非金属カチオンの例には、NH もしくは適切な等量にある多価カチオンが含まれるがそれらに限定されない。
「保護基」は、以下の特性を示す化学基を意味する:1)所望の官能基と選択的に反応して良好な収率で保護が所望である企図された反応に対して安定性である保護基質を生成する;2)所望の官能基を産生するために保護基質から選択的に除去可能である;および3)そのような保護された反応において存在する、もしくは生成される他の官能基と適合性である試薬によって良好な収率で除去できる。適切な保護基の例は、Greeneら、(1991)Protective Groups in Organic Synthesis.2nd Ed.(John Wiley & Sons社、ニューヨーク)の中に見いだすことができる。アミノ保護基には、メシチレンスルホニル(Mes)、ベンジルオキシカルボニル(CBzもしくはZ)、t−ブチルオキシカルボニル(Boc)、t−ブチルジメチルシリル(TBDIMSもしくはTBDMS)、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、トシル、ベンゼンスルホニル、2−ピリジルスルホニル、または例えば6−ニトロベラトリルオキシカルボニル(Nvoc)、ニトロピペロニル、ピレニルメトキシカルボニル、ニトロベンジル、ジメチルジメトキシベンジル、5−ブロモ−7−ニトロインドリニルなどの適切な光解離性保護基が含まれるがそれらに限定されない。ヒドロキシル保護基には、Fmoc、TBDIMS、光解離性保護基(例えばニトロベラトリルオキシメチルエーテル(Nvom))、Mom(メトキシメチルエーテル)、およびMem(メトキシエトキシメチルエーテル)、NPEOC(4−ニトロフェネチルオキシカルボニル)およびNPEOM(4−ニトロフェネチルオキシメチルオキシカルボニル)が含まれるがそれらに限定されない。
本発明のコンジュゲート
1つの実施形態では、本発明は、放出可能なリンカーによってカーゴ分子に連結されたトランスポーター分子のコンジュゲートを包含している。これらの様々な構成成分の各々について、詳細に考察する。
トランスポーター分子
トランスポーター分子は、カーゴ分子と呼ばれる別の分子が生物学的障壁(細胞膜など)を越えて通過することを可能にする、またはカーゴ分子が生物学的障壁を越えて通過する能力を調節するもしくは高める分子である。すなわち、カーゴ分子は、独力では、障壁を越えられないであろう、または準最適量もしくは準最適速度でしか越えられないであろう;トランスポーターへのカーゴの結合は、カーゴが障壁を越えることを可能にする、または障壁を(トランスポーターと結合して)越えるカーゴの量を増強する、またはカーゴが(トランスポーターと結合して)障壁を越える速度を調節する。そのような調節は、結合していないカーゴに比較したコンジュゲートによって輸送されるカーゴの量の増加;結合していないカーゴの輸送に比較したカーゴがコンジュゲートによって輸送される速度の増加;結合していないカーゴの輸送に比較したコンジュゲートによって輸送されるカーゴの量の減少;または結合していないカーゴの輸送に比較したカーゴがコンジュゲートによって輸送される速度の減少であってよい。
適切なトランスポーター分子については極めて多数の例が存在しており、以下の特許公報は、本発明においてトランスポーター分子として使用できる分子について記載している。米国特許第6,306,993号(第6段落第63行〜第9段落第47行)および米国特許第6,495,663号(第6段落第62行〜第10段落第59号)および米国特許出願公開第2002/0131965号、ならびに米国特許出願公開第2003/0162719号は、生物膜などの生物学的障壁を越える選択された化合物の輸送を増強するための組成物および方法について記載しているが、このとき生物膜は輸送ポリマー(輸送ポリマーは輸送分子として作用する)へ共有結合している生物活性分子を含有するコンジュゲートと接触される。1つの実施形態では、ポリマーは、6〜25個のサブユニットから構成され、それらの少なくとも50%はグアニジノもしくはアミジノ側鎖成分を含有している。米国特許第6,593,292号は、グアニジノもしくはアミジノ成分を含有する追加のトランスポーター分子について記載している;第10段落第40行〜第14段落第64行を参照されたい。米国特許第6,669,951号(第11段落第35行〜第18段落第36行)、米国特許第6,730,293号(第10段落第1行〜第15段落第36行)、および米国特許第6,759,387号(第10段落第44行〜第16段落第26行)は、上皮および内皮組織を越えて分子を輸送するために有用な、アルギニンアミノ酸などのグアニジノもしくはアミジノ分子を含有するトランスポーターについて記載している。言及した特許、特許公報、および上記に挙げた特定のセクションは、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
脂質もまた、様々な化合物のためのトランスポーター分子として使用できる。脂質には、(C−C32アルキル)−C(=O)−OHおよび(C−C32アルケニル)−C(=O)−OHならびに好ましいサブセットとしてのそれらのアシル形とともに、式:(C−C32ヒドロカルビル)−C(=O)−OHの脂肪酸およびそれらのアシル形が含まれるがそれらに限定されない。カプリル酸(オクタン酸)、カプリン酸(デカン酸)、ラウリン酸(ドデカン酸)、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、パルミトール酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、およびエルカ酸は、トランスポーター成分として使用できる脂質の例である。以下の実施例10は、本発明のリンカーを用いて脂質をカーゴに結合させるための1つの実施形態を示している。
本明細書に開示した放出可能なリンカーの実施形態と一緒に使用できる上記の知られているトランスポーター分子に加えて、新規のトランスポーターは、放出可能なリンカーの実施形態を用いて評価できる。トランスポーターをレポーター分子、例えばルシフェリンと結合しているリンカーに結合させると、生物学的障壁を越えてレポーター分子を輸送することにおけるトランスポーター分子の有効性を容易に測定することができる。
1つの実施形態では、コンジュゲートは、式:Transp−SHのチオール基を有するトランスポーター分子を組み込んでいる。チオール基が欠如するトランスポーターは、チオール基を組み込むように誘導体化することができる;例えば、トリチル−S−CHCHCOOHおよびトリチル−S−CHCHNHなどの化合物は、チオール基を組み込むために、各々アミノ含有およびカルボキシレート含有化合物を誘導体化するために使用できる。ペプチド性トランスポーターについては、天然型システイン残基はポリペプチド内に既に存在している可能性がある、または合成ペプチドについては、システイン残基もしくはアナログ(ホモシステインなど)の組み込みは、ペプチド合成中に容易に遂行される。チオール基をポリペプチド内へ組み込む他の方法は、Wong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking,CRC Press:Boca Raton,1991の中に見いだすことができる;これらの方法のいくつかは、非ペプチド性トランスポーターにも同様に適用することができる。
1つの実施形態では、本発明は、輸送の有効性について、様々なトランスポーター物質を試験する、またはアッセイする方法を包含している。レポーター分子は、放出可能なリンカーによってトランスポーター分子へ結合させることができる。生物学的障壁(細胞膜など)が、コンジュゲートと接触される;1つのそのようなアッセイの例示については、以下の実施例6を参照されたい。輸送されるレポーター分子の総量は、所与のトランスポーターについて容易に定量することができる。同一レポーター分子を用いて、様々なトランスポーター分子に関する繰り返しのアッセイを行うと、所与のトランスポーター分子の輸送の有効性を決定するための方法が提供される。
カーゴ分子
本コンジュゲートのカーゴ成分として、様々な分子を使用できる。生物活性分子は、カーゴとして使用できる1群の化合物である。生物活性分子(薬物、治療薬、および診断薬を含む)には、金属イオン(典型的には金属キレート剤として送達される);例えば(例、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン、マイトマイシン、エピポドフィロトキシン、エトポシド、テニポシド、抗微小管剤、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、他のビンカアルカロイド、タキサン、パクリタキセル(Taxol)、ドセタキセル(Taxotere)、他のタキソイド、ナイトロジェンマスタード、クロラムブシル、シクロホスファミド、エストラムスチン、イフォスファミド、メクロレタミン、メルファラン、アジリジン、チオテパ、スルホン酸アルキル、ブスルファン、ニトロソ尿素、カルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン、白金錯体、カルボプラチン、シスプラチン、アルキル化剤、アルトレタミン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾラミド、葉酸アナログ、メトトレキセート、プリンアナログ、フルダラビン、メルカプトプリン、チオグアニン;アデノシンアナログ、クラドリビン、ペントスタチン、ピリミジンアナログ、カペシタビン、シタラビン、フロクスウリジン、フルオロウラシル、5−フルオロウラシル、ゲムシタビン、置換尿素、ヒドロキシ尿素、カンプトセシンアナログ、イリノテカン、トポテカン、トポイソメラーゼI阻害剤、トポイソメラーゼII阻害剤、およびアントラサイクリン抗生剤)などの抗癌分子;抗生分子および抗菌分子(例、ペニシリン、セファロスポリン、イソニアジド、トリメトプリム、キノロン、フルオロキノロン、例えばエリスロマイシンおよびチロシンなどのマクロライド抗生剤)などの有機低分子;ならびに例えばポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアナログ、ポリペプチド(ペプチドおよびタンパク質)およびポリペプチドアナログ、そして多糖類および多糖類アナログなどの高分子が含まれるがそれらに限定されない。高分子の例には、低分子干渉型RNA(siRNAもしくはRNAi)、ショートヘアピンRNA(shRNA)、リボザイム(任意で増強した安定性のために1つまたは複数の2’−デオキシヌクレオチドサブユニットを含有する)、ペプチド核酸(PNA)、腫瘍抗原などのタンパク質抗原、およびシクロスポリンなどのペプチドなどが含まれるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドアナログおよびポリペプチドアナログは、例えば分解に対する抵抗性の増加もしくは変化した水溶性などの1つまたは複数の所望の特性を付与するために遺伝子操作された主鎖を有する可能性がある。生物活性分子は、好ましくは、約10kDa未満、より好ましくは約1kDa未満、いっそうより好ましくは600ダルトン未満の分子量を有する。以下では、適切なカーゴ分子についてより詳細に記載する。
A.有機低分子
カーゴとして、様々な有機低分子を本コンジュゲートに結合させることができる。有機低分子は、カーゴの−Nu部分として機能する求核成分さえ有していればよい。有機低分子はしばしば、既に適切な求核成分を有しており、一部の有機低分子は、複数の求核成分(この場合には所定の求核成分の保護が、1つの規定部位で有機低分子へのリンカーの結合を制限するために望ましいことがある)を有していることがあり、そして他の有機低分子は、求核成分を含有するように容易に誘導体化することができる。例えば、ドキソルビシン:
Figure 2009528292
は、その−OH基(例えば6−ヒドロキシ基もしくは11−ヒドロキシ基、8−ヒドロキシ基もしくは(8−ヒドロキシアセチル)成分のヒドロキシ基、−NH基に隣接するヒドロキシ基、または−NH基自体であって、それらのいずれもカーゴ−NuH基の−NuH成分として機能できる)のいずれかによってリンカーに結合させることができる。
タキサンおよびタキソイド系抗癌分子もまた、本コンジュゲートにおけるカーゴ分子として使用できる。そのようなコンジュゲートは、抗癌剤として有用である。用語「タキサン」は、パクリタキセル(ニューヨーク州ニューヨークに所在するBristol−Myers Squibb社の登録商標であるTAXOLとしても知られる)(例えば、米国特許第6,306,993号の図6F、および下記の構造式(式中、R’=アセチルおよびR’’=ベンゾイル)を参照されたい)および米国特許第6,306,993号の図6Gに例示されたパクリタキセルのA、B、CおよびD環を含有する主鎖中核を有する天然型、合成、もしくは遺伝子組み換えアナログを意味する。米国特許第6,306,993号の図6Fは、さらにいくらかより可溶性であるパクリタキセルの合成アナログである、TAXOTERE(フランス国のAventis Pharma社の登録商標)(式中、R’=H、R’’=t−ブチルオキシカルボニル(すなわち、Boc))の構造を示している。「タキソイド」は、米国特許第6,306,993号の図6Hに示された、そしてその中の第16段落第9〜26行に記載されたパクリタキセルの基本的A、BおよびC環を含有する天然型、合成もしくは遺伝子組み換えアナログを意味する。化学的方法、合成方法、および生物学的方法、ならびに抗癌活性をアッセイするための細胞系を含む、タキサンおよびタキソイドについての広範囲の情報は、Taxol:Science and Applications,Suffiness,M.,Ed.,CRC Press,New York NY(1995)に提示されている。
Figure 2009528292
パクリタキセルおよびその誘導体のC2’ヒドロキシル酸素もしくはC7ヒドロキシル酸素のいずれかは、カーゴ分子の−Nu部分として機能できる。C2’結合は抗癌活性を低下させる可能性があるので、本発明の1つの実施形態に提供した放出可能なリンカーは、生物学的障壁を越える輸送が発生した後にそれらがカーゴから完全に開裂されるという点で、高度に有益である。アミド窒素もまた、所望により、カーゴ分子の−Nu部分として使用できる。または、例えば米国特許第6,306,993号の実施例9もしくは第15〜16段落に記載された方法などの他の合成方法を使用できる。本発明のコンジュゲートを使用したパクリタキセル(TAXOL)のコンジュゲートの例は、実施例8に記載されている。
B.金属イオン
金属イオンは、キレート剤として輸送することができる。例えば、金属はジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)によってキレート化することができ、それはさらに、例えばカルボジイミドまたは例えばHATU、HBTUおよびTBTUなどのウロニウム試薬を用いてBoC−NH−CHCH−NHの遊離カルボキシルへの結合、その後のBoc基の除去によって誘導体化することができる;金属−DTPA−NH−CHCH−NH錯体の遊離窒素は、−NuH基として機能できる。または、金属は、ポルフィリンまたは遊離アミノ基を含有するフタロシアニンもしくはテキサフィリンなどのテトラピロール誘導体へ錯体化することができる。例えばメソポルフィリンIXのカルボン酸基は、放出可能なリンカーへのその後の結合のためにDTPAについて上述したように、BoC−NH−CHCH−NHを用いて誘導体化することができる。鉄、マグネシウム、亜鉛、銅(例、Cu67)、ニッケル、コバルト(例、Co57)、ユーロピウム、テクネチウム(例、Tc99m)、ユーロピウム、ルテチウム、イットリウム(例、Y90)、プラセオジム、ガドリニウム、ガリウム(例、Ga67)、もしくはインジウム(例、In111)。様々な実施形態では、金属は、例えばCa+2、Mn+2、Co+2、Ni+2、Zn+2、Cd+2、Hg+2、Sm+2およびUO +2などの二価金属イオン、もしくは例えばMn+3、Co+3、Ni+3、Y+3、In+3、Pr+3、Nd+3、Sm+3、Fe+3、Ho+3、Ce+3、Eu+3、Gd+3、Tb+3、Dy+3、Er+3、Tm+3、Yb+3、Lu+3、La+3およびU+3などの三価金属イオンあってよい。
C.高分子
高分子は、コンジュゲート内のカーゴとして輸送することもできる。高分子には、例えばポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアナログ、ポリペプチド(ペプチドおよびタンパク質)およびポリペプチドアナログ(ペプトイドなど)を含むがそれらに限定されないタンパク質、プラスミド、およびオリゴ糖、ならびに多糖類および多糖アナログが含まれるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドおよびポリヌクレオチドアナログの例には、DNA、cDNA、インビトロ重合DNA、プラスミドDNA、プラスミドDNAのフラグメント、線状DNA、ベクター(P1、PAC、BAC、YAC、人工染色体)、組換えDNA、染色体DNA、アンチセンスDNA、もしくはこれらのDNAの誘導体;低分子干渉RNA(siRNAもしくはRNAi)、tRNA(トランスファーRNA)、snRNA(核内低分子RNA)、rRNA(リボソームRUA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、リボザイム(安定性増強のために任意で1つまたは複数の2’−デオキシヌクレオチドサブユニットを含有する)、およびペプチド核酸(PNA)が含まれる。ポリペプチドおよびポリペプチドアナログの例には、ペプチドホルモン、ペプトイド、抗体、モノクローナル抗体、一本鎖抗体(scAb)、Fv、Fc、F(ab’)、およびFabなどの抗体フラグメント、一本鎖可変領域フラグメント(scFv)、酵素、毒素、および腫瘍抗原などのタンパク質抗原が含まれる。ポリヌクレオチドアナログおよびポリペプチドアナログは、例えば分解に対する抵抗性の増加もしくは変化した水溶性などの1つまたは複数の所望の特性を付与するために修飾された主鎖を有する可能性がある。アナログは、例えばホスホン酸塩(好ましくはホスホン酸メチル)、ホスホルアミデート、チオリン酸塩、非荷電モルホリノ系ポリマー、2’−O−メチルポリヌクレオチド、およびペプチド核酸(PNA)などの荷電および好ましくは非荷電の主鎖アナログを含むことができる。PNAは、N−(2−アミノエチル)グリシン単位から構成される主鎖がDNAのデオキシリボリン酸主鎖と構造的に類似であるDNAのアナログである;この単位はポリヌクレオチド内で自然に発生する塩基のいずれかを有する可能性がある。ポリペプチドは、カーゴの−Nu成分として機能できる様々な求核基を有している。または、求核基を導入するためのペプチドおよびタンパク質の誘導体化は、容易である;例えばWong,Chemistry of Protein Conjugation and Cross−Linking, CRC Press:Boca Raton,1991を参照されたい。
対象とする核酸の1つのタイプは、RNA干渉(RNAi)を生じさせる、低分子干渉RNA(もしくは低分子干渉RNA、siRNA)のクラスである。RNA干渉は、それが例えば感染患者におけるHIVもしくは肝炎ウイルス遺伝子などの重要な遺伝子の配列特異的サイレンシングに対する能力があるために、集中的な研究の主題となってきた。例えば、Hannonら、Nature 431:371(2004)およびGrunwellerら、Curr.Med.Chem.12:3143(2005)を参照されたい。ミクロRNA(miRNA)は、遺伝子調節に使用できるまた別のタイプのRNAである;例えばYeungら、Cell Res.15:935(2005)およびDuら、Development 132:4645(2005)を参照されたい。ショートヘアピンRNA(shRNA)もまた遺伝子調節のために使用できる;例えば、Pekarik,Brain Res.Bull.68:115−20(2005)を参照されたい。
siRNA、miRNA、およびshRNA、ならびにその他の核酸は、放出可能なリンカーを用いて本コンジュゲート内に容易に組み込むことができる。核酸の5’−ヒドロキシルもしくは3’−ヒドロキシルは、核酸カーゴ分子の−NuH成分として機能することができる。または、求核基は、当技術分野において容易に知られている方法を用いて核酸に容易に導入することができる;例えば、米国特許第5,594,118号、第5,843,650号、第6,537,783号、および第6,699,978号を参照されたい。
シクロスポリンは、カーゴとして使用するために適切な別の高分子の群である。シクロスポリンは、免疫抑制活性を示す環状ペプチドである。シクロスポリンA(Chemical Abstracts社のREGISTRY番号59865−13−3;シクロ[L−アラニル−D−アラニル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−ロイシル−N−メチル−L−バリル−(3R,4R,6E)−6,7−ジデヒドロ−3−ヒドロキシ−N,4−ジメチル−L−2−アミノオクタノイル−L−2−アミノブタノイル−N−メチルグリシル−N−メチル−L−ロイシル−L−バリル−N−メチル−L−ロイシル])は、臓器移植後拒絶反応を抑制するために臨床使用されている。2−アミノオクタノイルサブユニット上の3−ヒドロキシ基は、本コンジュゲート内のカーゴ結合の「Nu」単位として機能して、本発明のリンカー基を結合させるための便宜的部位を提供する。他のシクロスポリン、例えばシクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンG、シクロスポリンH、およびシクロスポリンM(例えば、米国特許第6,007,840号および第6,004,973号を参照されたい)もまた3−ヒドロキシ基で結合できる;その部位での誘導体化を防止するために、シクロスポリンCのトレオニンヒドロキシルの適切な保護が使用される(または、2−アミノオクタノイル成分の3−ヒドロキシ基の適切な保護が提供され、コンジュゲートはシクロスポリンCのトレオニンヒドロキシルで形成される)。
相違する「Nu」基が所望の場合は、それは例えば、3−ヒドロキシ基のクロロ酢酸エステルを作製し(シクロスポリンAのクロロ酢酸エステルは、Chemical Abstracts社のREGISTRY番号141749−42−0を有している;α−クロロアセチルシクロスポリンAの調製については、例えば、米国特許第6,730,293号の図1、および実施例5.A.1.を参照されたい)、そしてさらに所望の基を導入するためにクロロアセチル基を反応させる工程によって導入することができる。他のシクロスポリン、例えば、シクロスポリンB、シクロスポリンC、シクロスポリンD、シクロスポリンG、およびシクロスポリンHもまた結合のためにクロロ酢酸エステルとして誘導体化することができる;その部位でのクロロアセチル無水物の反応を防止するためには、シクロスポリンCのトレオニンヒドロキシルの適切な保護が使用される(または、2−アミノオクタノイル成分の3−ヒドロキシ基の適切な保護が提供され、そしてクロロアセチルエステルがシクロスポリンCのトレオニンヒドロキシルで形成される)。クロロアセチル基の塩素は、次に所望の求核保持基と置換することができる。
米国特許第6,730,293号の実施例5.A.1.は、クロロアセチル無水物の代りに、Boc−グリシンの対称無水物、またはBoc−グリシンの活性エステルを使用することによって変更することができる。他の保護されたグリシン誘導体もまた使用できる。保護されたグリシンをシクロスポリンの2−アミノオクタノイルサブユニットの3−ヒドロキシ基へ結合させた後、グリシンのアミノ基を脱保護すると、本発明のコンジュゲートにおける「Nu」基として使用するために適合する窒素求核基が産生する。
または、結合のために導入された基を備えるシクロスポリンの誘導体を使用できる;例えば、米国特許第6,207,398号を参照されたい。
D.ポリアミン
カーゴとして使用できるまた別のタイプの分子は、ポリアミンまたはポリアミンアナログである。ポリアミンは、様々な長さのアルキル鎖によって結合された2つ以上のアミノ基を有する天然型分子である。ポリアミンアナログは、2つ以上のアミノ基を有する非天然型分子であり、このとき1つまたは複数のアルキル鎖は立体配座的に制限されたポリアミンを生成するために、例えば立体配座的に制限されたヒドロカルビル単位などの非天然型成分と置換されている。「立体配座的に制限された」は、ポリアミンアナログでは、分子内の少なくとも2つのアミノ基が相互に対して空間的配置において固定もしくは制限されていることを意味する。分子内のアミノ基は、一級、二級、三級、もしくは四級であってよく、好ましくは一級もしくは二級アミノ基、より好ましくは二級アミノ基である。2つのアミノ基の相対運動は、例えば、それらの間に環状もしくは不飽和成分を組み込むことによって制限できる(三炭素環、四炭素環、五炭素環、六炭素環などの環、または二重もしくは三重炭素結合などの二重もしくは三重結合によって例示されるが、それらに限定されない)。立体障害によって立体配座的柔軟性を制限するが、それでもなお化合物の治療作用にとって好都合である基もまた使用できる。立体配座的に制限されたポリアミンアナログは、相互に対して立体配座的に制限されている少なくとも2つのアミノ基を含むことができる;ポリアミンアナログは、他のアミノ基に対しては立体配座的に制限されていないアミノ基をさらに含むこともできる。立体配座的に制限されたポリアミンアナログには、国際特許出願WO98/17624、米国特許第5,889,061号および米国特許第6,392,098号に開示された化合物;WO00/66587および米国特許第6,794,545号に開示された化合物;ならびに米国特許出願公開第2003/0072715号、第2003/0195377号、および国際特許出願WO02/10142、およびWO03/050072に開示された化合物が含まれるがそれらに限定されない。使用できる他のポリアミンは、飽和長鎖ポリアミン(その文書では「オリゴアミン」と呼ばれている)を開示した、米国特許出願公開第2003/0130356号に開示されたポリアミンである。その特許の明細書、特許請求項、表、実施例、図面、およびスキームを含むがそれらに限定されない上記の参考文献に開示されたすべての化合物は、これにより本明細書に参照して明示的に組み込まれる。
ポリアミン内の様々なアミノ基は、カーゴ分子の−Nu成分として機能できる。ポリアミン上の単一部位への結合を制限するために、ポリアミン化合物上のアミノ基の差別的保護を使用すると、望ましくない部位での反応を防止することができる。
本発明において有用なポリアミン化合物の例は、表1に示した。一部の化合物は、例えば塩酸塩などの塩として示されているが、表における開示は、当業者には明確に理解されるように、本明細書に記載した化合物のすべての塩、水和物、および溶媒和物、ならびに本化合物の非塩、非水和物/非溶媒和物形を包含すると理解されたい。表1は、立体配座的に制限されていないポリアミンアナログ(オリゴアミン)および立体配座的に制限されたポリアミンアナログの両方を含んでいる。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
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Figure 2009528292
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Figure 2009528292
E.レポーター分子
カーゴとして使用できるまた別のタイプの分子は、レポーター分子である。レポーター分子は、定量もしくは定性分析のために容易に検出できる分子である。レポーター分子の例には、診断薬、イメージング薬、および検出薬として使用できる、放射性分子、蛍光分子(例、ローダミン、クマリン、シアニン、フルオレセイン、キサンテン色素(例、オレゴン州に所在するMolecular Probes社の商標であるOREGON GREENとして知られている4−(2,7−ジフルオロ−6−ヒドロキシ−3−オキソ−キサンテン−9−イル)ベンゼン−1,3−ジカルボン酸)、ピレン、ランタニドキレート剤)、リン光分子(例、メタロポルフィリン、エオシン、エリスロシン)、重原子(典型的には有機担体へキレート化される)、化学発光分子、生物発光分子(例、ルシフェラーゼによって光線もしくは副産物に変換させると、細胞、組織もしくは動物中で検出されるルシフェリン)、標識アビジンもしくは標識ストレプトアビジンによって認識できるビオチン化分子(標識アビジンもしくは標識ストレプトアビジンが検出される)、標識抗体によって認識できる抗原分子(標識抗体が検出される)、ならびに上述したような金属イオンなどの金属イオンが含まれるがそれらに限定されない。
他のカーゴ分子と同様に、レポーター分子は、レポーター分子上の求核成分を利用することによってリンカーに結合させることができる。そこで、ルシフェリン:
Figure 2009528292
については、ベンゾ[b]チアゾール環上のフェノール酸素を脱プロトン化し(例えば、化合物の塩、例えばカリウム塩を水性塩基中に溶解させることができる)、Carg−Nu(−)成分の求核成分−Nu(−)として使用できる。他の化合物もまた、適切な求核基を介して結合させることができる;例えば、ローダミン110は、その芳香族−NH基を介して結合させることができる。
レポーター分子の検出は、当技術分野において知られている様々な手段、例えば、分光法による検出、放射能の検出、電気化学的検出、または酵素アッセイなどによって実施できる。レポーター分子によって生成されるシグナルについての検出閾値は、バックグラウンド雑音の標準偏差を10%、25%、50%、もしくは100%超える大きさのシグナルレベル、またはシグナルをバックグラウンド雑音から識別できるように合理的レベル、例えば、雑音ではなく信号に起因する約66%の確率、より好ましくは約95%の確率、いっそうより好ましくは約99%の確率を備えるシグナルレベルに設定する必要がある。
放出可能なリンカー
本発明においては、様々な放出可能なリンカーを使用できる。1つの好ましいリンカー系は、構造式:
Figure 2009528292
(式中、Rは、C−C炭化水素、好ましくはC−Cアルキル、より好ましくはC−Cアルキル、いっそうより好ましくは−CHCH−、−CHCHCH−、もしくは−CHCHCHCH−であり;およびVは、−O−、−NH−、−NR−、−CH−、−CHR−、−C(R−、もしくは−S−、好ましくは−O−であり;およびRは、C−Cアルキルである)によって表される。細胞の内部などの還元環境では、このリンカー系のジスルフィド結合は、その構成成分のチオールへ還元される。
例示するために、2つの分子Carg−NuおよびTranspがこのリンカー:
Figure 2009528292
によって結合されている場合は、細胞内へのコンジュゲートの輸送は、ジスルフィド結合の還元を生じさせ、生成物:
Figure 2009528292
を産生する。
Carg−Nu−(C=O)−V−R−SH生成物の遊離チオールは、今度は分子内で、遊離分子Carg−Nu(Carg−Nu(−)、Carg−Nu(−)M(式中、Mはカチオンの1つの同等物である)、またはCarg−NuHとして)を遊離させるために、カルボニル系の様々な構成成分と反応することができる。R基ならびにVおよびNuとして選択された基の性質に依存して、遊離チオールはカルボニル炭素で反応してCarg−Nuおよび環状生成物:
Figure 2009528292
を産生することができる。Rが−CHCH−もしくは−CHCHCH−である場合、各々5員環もしくは6員環が結果として生じ、分子内環化は相当に容易である。分子内反応の速度を「調整」するために、他の炭化水素基を選択できる。
または、遊離チオールは、V原子への炭素αで反応することができる。例えば、−CH−基がV原子に隣接していて、R1RがR基の残り:
Figure 2009528292
を表す場合は、チオールはS2型置換反応においてV原子に隣接する−CH−基を攻撃して、生成物:
Figure 2009528292
を産生することができる。R1Rが、−CHCHCH−もしくは−CHCHCHCH−である場合、各々5員環もしくは6員環が結果として生じ、S2機構による分子内環化は相当に容易である。
生成物:
Figure 2009528292
は、Carg−Nu(−)、Carg−Nu(−)M(式中、Mはカチオンの1つの同等物である)、もしくはCarg−NuHへ比較的迅速に分解する。例えば、NuおよびVがどちらもOである場合、生成物:
Figure 2009528292
は、迅速に脱カルボキシル化して、COの付随的発生を伴ってCarg−Nu(−)、Carg−Nu(−)M、もしくはCarg−NuHを産生する。
このリンカーを用いた、カーゴ分子Carg−NuHと、トランスポーター分子Transp−SHとのコンジュゲートの合成は、以下の一般スキームを用いて実施できる。
Figure 2009528292
分子HV−R−SHは、各硫黄原子上で優れたチオール離脱基安定剤(TLGS;2つのTLGS基は、同一であっても相違していてもよい)と置換されているジスルフィド化合物と反応させると、HV−R−S−S−TLGSが産生する。チオール離脱基安定剤は、ジスルフィドから置換されたチオール基を安定させるために機能する。各硫黄原子上で優れたチオール離脱基安定剤と置換されるジスルフィド化合物の例は、2,2’−ジピリジルジスルフィド(2,2’−ジチオジピリジン)およびEllman試薬(5,5’−ジチオ−ビス(2−ニトロ安息香酸)、DTNB)である;そのようなジスルフィド活性化試薬の他の例は、当技術分野において知られている。(Vが−S−である場合は、それはその後にジスルフィドを妨害せずに弱酸によって除去できる、トリチルもしくはp−メトキシトリチルなどの保護基を用いて保護される必要があることに留意されたい)。次にHV−R−S−S−TLGSは、式:Y−(C=O)−Y(式中、YおよびYは、優れた離脱基であり、同一であっても相違していてもよい)の化合物と反応される。これらの化合物の例には、ホスゲン(Cl−(C=O)−Cl)、ビス(p−ニトロフェニル)カーボネートもしくはカルボニルジイミダゾールが含まれる。これは、式:Y−(C=O)−V−R−S−S−TLGSの分子を産生する。この分子は、二重活性化される;Y基は求核基によって置換でき、他方(−S−TLGS)基はチオール含有成分によって置換できる。そこで、式:Carg−Nu(−)、Carg−Nu(−)M(式中、Mは、カチオンの1つの同等物である)、またはCarg−NuHとカーゴ分子との反応は、分子Carg−Nu−(C=O)−V−R−S−S−TLGSを産生する。この中間物と式:Transp−SHとの反応は、所望のコンジュゲートであるCarg−Nu−(C=O)−V−R−S−S−Transpを形成する。
また別の合成経路を下記に示したが、これはCarg−NuH分子を以下:
Figure 2009528292
のように修飾する。この生成物を次に以下の一連の反応:
Figure 2009528292
において使用すると、所望のコンジュゲートが産生する。
投与様式
本発明の方法において有用な化合物は、本明細書に開示した経路を含むが限定されない任意の経路を介して、患者もしくは被験者(好ましくはヒト患者もしくは被験者)へ投与できる。投与方法には、全身性、経胸膜、静脈内、経口、動脈内、筋肉内、局所、吸入(例、ミストもしくはスプレーとして)、経鼻粘膜、皮下(例、皮下注射)、経皮、腹腔内、眼内、経口腔、および経消化管が含まれるがそれらに限定されない。本明細書に記載した、もしくは本明細書で使用するために参照して組み込まれた化合物は、錠剤、ピル剤、粉末混合物、カプセル剤、顆粒剤、注射剤、クリーム剤、液剤、坐剤、エマルジョン剤、分散剤、食用プレミックス、およびその他の適切な形態で投与できる。本化合物は、リポソーム製剤で投与することもできる。化合物はプロドラッグとして投与することもできるが、プロドラッグは治療的に有効な形態に被験者の体内で形質変換される。追加の投与方法は、当技術分野において知られている。
本発明において使用するための化合物は、便宜的には、例えば非毒性医薬有機担体もしくは非毒性医薬無機担体などの医薬上許容される担体と混合される。典型的な医薬上許容される担体には、例えば、マンニトール、尿素、デキストラン、ラクトース、ジャガイモおよびトウモロコシデンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、植物油、ポリアルキレングリコール、エチルセルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、炭酸カルシウム、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、安息香酸ベンジル、炭酸ナトリウム、ゼラチン、炭酸カリウム、ケイ酸、および他の常套的に使用される許容できる担体が含まれる。本医薬製剤は、例えば、乳化剤、保存料、もしくは湿潤剤などの非毒性補助物質をさらに含有することもできる。適切な担体は、身体内で、容認し得ない副作用を誘発しないが、化合物が薬理学的活性を保持することを可能にする担体である。経口および非経口薬物送達のための製剤は、当技術分野において知られており、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,20th Edition,Lippincott,Williams & Wilkinsに定義されている。追加の製剤は、Rowe,Raymond C.,Paul J.Sheskey,and Sian C.Owen,eds.,Handbook of Pharmaceutical Excipients,5th Edition,New York:McGraw−Hill/APhA Publications,2005;およびGibson,Mark,Pharmaceutical Preformulation and Formulation:A Practical Guide from Candidate Drug Selection to Commercial Dosage Form,Boca Raton:CRC,2001に記載されている。本発明の組成物は、医薬上許容される塩の形態で投与できる;例えば、Heinrich Stahl,P.and Camille G.Wermuth,eds.,Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use,Hoboken,NJ:Wiley−VCH,2002を参照されたい。例えば錠剤、カプセル剤および散剤などの固体形は、当技術分野においてよく知られている常套の錠剤作製およびカプセル剤充填機械を用いて作製することができる。1回用量形にある経口投与のための錠剤およびカプセル剤を含む固体製剤は、例えば賦形剤;乾燥剤;着色剤;結合剤、例えばシロップ、アカシア、ゼラチン、ソルビトール、トラガンタガム、もしくはポリビニルピロリドン;充填剤、例えばラクトース、糖、トウモロコシデンプン、リン酸カルシウム、ソルビトールもしくはグリシン;例えばステアリン酸マグネシウム、タルク、ポリエチレングリコールもしくはシリカなどの錠剤化潤滑剤;錠剤崩壊剤、例えばジャガイモデンプン;またはラウリル硫酸ナトリウムなどの許容できる湿潤剤などの常套の添加物を含む当技術分野において知られる任意の数の追加の非活性成分を含有することができる。錠剤は、標準製薬実践においてよく知られている方法にしたがってコーティングすることができる。摂取用の液剤形は、無菌水、無菌食塩水、懸濁液、水中油/油中水エマルジョンなどの水性および非水性担体を含む既知の液体担体を用いて調製することができる。液体製剤は、着色剤、香料、香味料、粘度調整剤、保存料、安定剤などを含む任意の数の追加の非活性成分を含有することができる。非経口投与のためには、本発明において使用するための化合物は、追加の界面活性剤もしくはアジュバントを含めて、もしくは含めずに、水、食塩水、もしくは油などの生理学的に許容される希釈剤もしくは無菌液体担体中の化合物の液剤もしくは懸濁剤の注射製剤として投与できる。担体油の例示的リストは、動物油および植物油(例、落花生油、大豆油)、石油由来油(例、鉱物油)、ならびに合成油を含むであろう。
1つの実施形態では、本発明の化合物は、医薬単位製剤形に調製される。単位製剤は、治療有効量の本発明の化合物を含有している。
注射用単位製剤のためには、水、食塩水、リン酸緩衝食塩水、水性デキストロースおよび関連糖溶液などの無菌液体は、好ましい液体担体である。
選択した医薬単位製剤を作製して投与すると、血液中、または対象組織中のいずれかで薬物の規定最終濃度を提供することができる。本発明の化合物の最適有効濃度は、経験的に決定することができ、疾患のタイプおよび重症度、投与経路、疾患の進行および健康状態、患者の質量および体面積に依存するであろう。そのような決定は、当業者の技術の範囲内に含まれる。全身性投与(経口または非経口を含む)のために使用できる用量の例には、約0.1μg/kg〜約300mg/kg(体重)、または約1.0μg/kg〜約40mg/kg(体重)、または約10μg/kg〜約20mg/kg(体重)、または約0.1mg/kg〜約20mg/kg(体重)、または約1mg/kg〜約20mg/kg(体重)、または約0.1mg/kg〜約10mg/kg(体重)、または約1mg/kg〜約10mg/kg(体重)、または約0.1μg/kg〜約10mg/kg(体重)の範囲内の量が含まれるがそれらに限定されない。体表面積(平方メートル、もしくはmと表示する)に基づいた全身性投与(経口または非経口を含む)のために使用できる用量の例には、約0.1μg/m〜約300mg/m(体表面積)、または約10μg/m〜約300mg/m(体表面積)、または約100μg/m〜約300mg/m(体表面積)、または約1mg/m〜約300mg/m(体表面積)、または約10mg/m〜約300mg/m(体表面積)、または約10mg/m〜約200mg/m(体表面積)、または約10mg/m〜約120mg/m(体表面積)、または約40mg/m〜約120mg/m(体表面積)、または約60mg/m〜約100mg/m(体表面積)の用量範囲内の有効量が含まれるがそれらに限定されない。これらの用量は、1日1回投与で投与されてよく、または総1日量を1日2、3もしくは4回の分割用量で投与することができる。用量は、例えば週6回、週5回、週4回、週3回、週2回、約週1回、約2週に1回、約3週に1回、約4週に1回、約6週に1回、約2カ月に1回、約3カ月に1回、約4カ月に1回、または約6カ月に1回のように、1日1回より少ない回数で投与することもできる。
本発明の1つの実施形態では、用量は徐放性製剤で、または例えば長期間にわたって本発明において使用するための化合物を徐々に放出し、そして薬物を例えば1カ月に1回、約2〜6カ月に1回、約1年に1回、または繰り返す必要のない単回投与さえなどのより少ない回数で投与することを可能にするインプラントなどの徐放性インプラントで投与することができる。徐放性のインプラント、デバイスもしくは製剤(ペレット剤、ミクロスフェア剤など)は、局所適用、注射によって投与でき、または様々な場所に手術によって埋植することができる。
本発明の別の実施形態では、本発明のコンジュゲートおよび化合物は、局所投与によって投与することもできる。用語「局所投与」は、局所作用を達成するための活性物質の皮膚もしくは粘膜への適用を意味する常套の意味で使用される。本方法において使用するためのコンジュゲートおよび化合物は、治療有効濃度で局所製剤に含有されている。製剤は、例えば、約1mM〜約1,000mM、約10mM〜約500mM、または約10mM〜約100mMなどの任意の適切な総濃度で適切な局所用ビヒクル中に選択された化合物を含有することができる。
適切な濃度のコンジュゲートもしくは化合物は、製剤中のビヒクルおよび他の成分の密度に依存して変動してよい重量/容量%または重量/重量%で表示することもできる。例えば、コンジュゲートもしくは化合物は、少なくとも約0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、もしくは10%のいずれかの濃度(重量/容量)で製剤中に存在してよい。局所使用のための実施形態では、本コンジュゲートもしくは化合物の濃度は、皮膚の5cm×5cmの面積(25cm)への製剤の約0.5gの局所用量を適用できるような濃度である。典型的な局所的賦形剤中では、組成物は容易に調製され、皮膚に適用された場合に任意の有意な視認できる残留物を残さない。例えば飽和ペーストもしくは他の形態などのより高濃度の製剤もまた、特に視認できる外観が限定的な検討事項ではない場合は(治療適用におけるように)、成功裏に使用できる。
ルーチンの臨床的評価を使用すると、本発明のコンジュゲートもしくは化合物の濃度を容易に最適化し、所与の製剤もしくは障害のためにより低濃度もしくはより高濃度が適切かどうかを確認することができる。例えば、局所使用のための実施形態では、濃度は、典型的には使用者が局所投与する製剤の量を生じさせるように調整できるが、これは局所用ビヒクルの物理的性質の程度(例、液体スプレービヒクルに比較したローション剤)に依存するであろう。同様に、必要とされる化合物の量は、製剤が浸透強化成分もしくは角質層に化合物が浸透する能力を増加させる他の物質を含有するような場合には、減少させることができる。
本製剤は、適切な量の選択されたコンジュゲートもしくは化合物を適切なpHで選択された製剤ビヒクル内に混合する工程によって調製される。好ましくは、選択されたコンジュゲートもしくは化合物は、所望の物理的適用特性を有する一貫性のある製剤を許容するために製剤ビヒクル内では十分に可溶性である。
局所適用のためには、本発明の製剤とともに使用するために適合する局所用ビヒクルは、化粧品および医薬品分野においてよく知られており、水などのビヒクル(もしくはビヒクル成分);アルコール(詳細にはエタノールなどの皮膚から容易に蒸発できる低級アルコール)、グリコール(グリセリンなど)、脂肪族アルコール(ラノリンなど)などの有機溶媒;水と有機溶媒(水およびアルコールなど)との混合物;アルコールおよびグリセリン(任意でさらに水を含む)などの有機溶媒の混合物;脂肪酸、アシルグリセロール(鉱油などの油、および天然もしくは合成起源の脂肪を含む)、ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質およびろうなどの脂質をベースとする材料;コラーゲンおよびゼラチンなどのタンパク質をベースとする材料;シクロメチコン、デメチコノールおよびジメチコンコポリオール(Dow Corning社)などのシリコーンをベースとする材料(非揮発性および揮発性の両方);ペトロラタムおよびスクアランなどの炭化水素をベースとする材料;アニオン性、カチオン性および両性界面活性剤および石けん;マイクロスポンジおよびポリマーマトリックスなどの徐放性ビヒクル;安定剤および懸濁剤;そして局所投与のために適合する他のビヒクルおよびビヒクル成分、ならびに上記に同定した、または当技術分野において知られている局所用ビヒクル成分の混合物が含まれる。ビヒクルは、保存料、酸化防止剤、皮膚浸透増強剤、徐放性材料などの適用される製剤の安定性もしくは有効性を改善するために適する成分をさらに含むことができる。そのようなビヒクルおよびビヒクル成分の例は、当技術分野においてよく知られており、本明細書で言及した薬物製剤刊行物に記載されている。
本発明において使用するための化合物は、単独有効成分として投与でき、または他の有効成分と組み合わせて投与できる。
キット
本発明は、本発明の化合物を含有する製造品およびキットもまた提供する。製造品は、ラベルを備える容器を含んでいる。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、および試験管が含まれる。容器は、ガラスもしくはプラスチックなどの様々な材料から形成されてよい。容器は、疾患もしくは適応症を治療または予防するために有効である活性物質を有する組成物を保持する。容器上のラベルは、本組成物が疾患もしくは適応症を治療または予防するために使用されることを示しており、使用法もまた示すことができる。
本発明は、本発明の任意の1つまたは複数の化合物を含むキットをさらに提供する。一部の実施形態では、本発明のキットは、上述した容器を含んでいる。他の実施形態では、本発明のキットは、上述した容器および緩衝剤を含む第2の容器を含んでいる。本キットは、他の緩衝剤、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、および本明細書に記載した任意の方法を実施するための説明書を備える添付文書を含む、商業的および使用者の観点から望ましい他の材料をさらに含むことができる。
他の態様では、本キットは、例えば疾患もしくは適応症を有する患者もしくは被験者を治療するため、または疾患もしくは適応症を発生するリスク状態にある患者もしくは被験者に予防投与するためを含む、本明細書に記載した任意の方法のために使用できる。本キットは、本明細書に記載した任意の方法を実行するための説明書を含むことができる。
コンジュゲートの使用
本コンジュゲートは、米国特許第6,306,993号、第6,495,663号、第6,593,292号、第6,669,951号、第6,730,293号および第6,759,387号に記載されたものを含む様々な治療用途において使用できる;それらの出願において開示された疾患および治療用途は、これにより参照して全体として組み込まれる。これらの治療用途の一部を記載するために、本発明のコンジュゲートは、特に、皮膚を越えて生物活性剤および診断薬を送達するために有用である。本コンジュゲートは、角質層と一緒に表皮を作り上げる顆粒層、透明層および胚芽層から構成される様々な上皮内に侵入できる。本発明の一部の実施形態における送達は、表皮を通して真皮乳頭層および真皮網状層の一方もしくは両方を含む皮膚内に行われる。皮膚の1つもしくは複数の層への浸透を入手するこの能力は、抗菌剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗増殖剤、免疫抑制剤、ビタミン剤、鎮痛薬、ホルモン剤などの化合物の有効性を大きく増強することができる。多数のそのような化合物は当業者にはよく知られている(例えば、Hardman and Limbird,Goodman & Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York,1996を参照されたい)。一部の実施形態では、本作用物質は、上皮組織中に存在する血管内に送達されるので、したがって本作用物質を全身性で送達するための手段を提供する。送達は、濾胞内もしくは濾胞間のいずれか、または両方であってよい。本コンジュゲートを送達するためには、皮膚の前処置は必要とされない。他の実施形態では、本発明のコンジュゲートは、化粧品および皮膚の状態を治療できる作用物質を送達するために有用である。対象である皮膚内の標的細胞には、例えば、線維芽細胞、上皮細胞および免疫細胞が含まれる。例えば、トランスポーターは、抗炎症薬などの化合物を皮膚内で見いだされる免疫細胞へ送達する能力を提供する。
特にグルココルチコイド(アドレノコルチコイド系ステロイド)は、本発明のコンジュゲートによって増強できる、皮膚を越える送達のための化合物である。本発明の結合グルココルチコイドは、例えば、炎症性皮膚疾患を治療するために有用である。例示的なグルココルチコイドには、例えば、ヒドロコルチゾン、プレニゾン(Deltazone)およびプレドニゾロン(Hydeltasol)が含まれる。特定の状態の例には、湿疹(アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎)、水疱性疾患、膠原血管疾患、サルコイドーシス、スウィート病、壊疽性膿皮症、I型反応性ハンセン病、毛細管血管腫、扁平苔癬、剥奪性皮膚炎、結節性紅斑、ホルモン異常(アクネおよび多毛症を含む)、ならびに中毒性表皮壊死症、多形性紅斑、皮膚T細胞リンパ腫、円板状エリテマトーデスなどが含まれる。
レチノイドは、そのために皮膚の1つまたは複数の層または他の上皮もしくは内皮組織を越えて皮内への送達を増強するために、本発明のコンジュゲートを使用できる生物活性剤の別の例である。現在使用されているレチノイドには、例えば、レチノール、トレチノイン、イソトレチノイン、エトレチネート、アシトレチン、およびアロチノイドが含まれる。本発明のコンジュゲートに結合させたレチノイドを使用して治療可能な状態には、アクネ、角質化障害、皮膚癌、前癌状態、乾癬、皮膚老化、円板状エリテマトーデス、硬化性粘液水腫、疣状表皮母斑、角層下膿疱性皮膚炎、Reiter(ライター)症候群、疣、扁平苔癬、黒色表皮腫、サルコイドーシス、Grover(グロヴァー)病、汗孔角化症などが含まれるがそれらに限定されない。
細胞毒性薬および免疫抑制薬は、そのために本発明のコンジュゲートが有用である追加のクラスの薬物を構成する。これらの作用物質は、一般に乾癬などの過剰増殖性疾患を治療するため、ならびに水疱症および白血球破砕性血管炎などの免疫疾患を治療するために使用される。本発明のコンジュゲートへ結合させることのできるそのような化合物の例には、代謝拮抗薬およびアルキル化剤が含まれるがそれらに限定されない。有用な生物学的作用物質には、例えば、メトトレキセート、アザチオプリン、フルオロウラシル、ヒドロキシ尿素、6−チオグアニン、ミコフェノレート、クロラムブシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ダクチノマイシン、シクロホスファミド、塩酸メクロエタミン、カルムスチン、Taxol、タクロリムス、ビンブラスチン、ダプソン、およびスルファサラジンが含まれる。シクロスポリンおよび例えばFK506(タクロリムス)などのアスコマイシン、ならびにラパマイシン(例、米国特許第5,912,253号)およびそのような化合物のアナログなどの免疫抑制薬は、特に重要である(例、Mollinsonら、Current Pharm.Design 4(5):367−380(1998);米国特許第5,612,350号;第5,599,927号;第5,604,294号;第5,990,131号;第5,561,140号;第5,859,031号;第5,925,649号;第5,994,299号;第6,004,973号および第5,508,397号)。シクロスポリンには、シクロスポリンA、B、C、D、GおよびMが含まれる。例えば、米国特許第6,007,840号および第6,004,973号を参照されたい。例えば、そのような化合物は、乾癬、湿疹(アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、アレルギー性皮膚炎を含む)および円形脱毛症を治療する際に有用である。全身性投与もまた企図されている。
本発明のコンジュゲートは、エリテマトーデス(円板状および全身性の両方)、皮膚筋炎、晩発性皮膚ポルフィリン症および多形性光線疹などの状態を治療するために有用な作用物質に結合することができる。そのような状態を治療するために有用な作用物質には、例えば、キニン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、およびキナクリンが含まれる。
本発明のコンジュゲートは、抗感染剤の経皮送達のためにも使用できる。例えば、抗菌剤、抗真菌剤および抗ウイルス剤は、本発明のコンジュゲートと結合することができる。抗菌剤は、例えばアクネ、皮膚感染症などの状態を治療するために有用である。抗真菌剤は、体部白癬、足部白癬、爪真菌症、カンジダ症、癜風などを治療するために使用できる。本コンジュゲートの送達増強特性のために、これらのコンジュゲートは、局所性感染症および広汎性感染症の両方を治療するために有用である。抗真菌剤は、爪真菌症を治療するためにも有用である。抗真菌剤の例には、イトラコナゾール、ミコナゾールおよびフルコナゾールなどのアゾール系抗真菌剤が含まれるがそれらに限定されない。抗ウイルス剤の例には、アシクロビル、ファムシクロビル、およびバラシクロビルが含まれるがそれらに限定されない。そのような作用物質は、ウイルス疾患、例えばヘルペスを治療するために有用である。
そのために本発明のコンジュゲートへの結合による送達の増強が望ましい生物活性剤の別の例は、抗ヒスタミン剤である。これらの作用物質は、蕁麻疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、および他の多くに起因する掻痒などの状態を治療するために有用である。そのような試薬の例には、例えば、テルフェナジン、アステミゾール、ロロタミジン、セチリジン、アクリバスチン、テメラスチン、シメチジン、ラニチジン、ファモチジン、ニザチジンなどが含まれる。三環系抗うつ薬もまた、本発明のコンジュゲートを用いて送達することもできる。
局所的抗乾癬剤もまた対象となる。コルチコステロイド、カルシポトリエン、およびアントラリンなどの作用物質は、本発明のコンジュゲートに結合させて皮膚に適用することができる。
本発明のコンジュゲートは、1つまたは複数の層および他の上皮組織を越えてその中への光化学治療薬の送達を増強するためにもまた有用である。そのような化合物には、例えば、ソラレンなどが含まれる。日焼け止め成分もまた重要である;これらには、p−アミノ安息香酸エステル、桂皮酸塩およびサリチル酸塩、ならびにベンゾフェノン、アントラニル酸塩、およびアボベンゾンが含まれる。
鎮痛剤および局所麻酔剤は、そのために本発明のコンジュゲートが治療を増強する別のクラスの化合物を構成する。リドカイン、ブピバカイン、ノボカイン、プロカイン、テトラカイン、ベンゾカイン、コカイン、およびオピエートは、本発明のコンジュゲートへ結合できる化合物である。
他の対象とする生物活性剤には、例えば、ミノキシジル、角質溶解剤、例えばポドフィルムなどの神経破壊薬、ヒドロキノン、カプサイシン、マソプロコール、コルヒチン、および金が含まれる。
本発明のコンジュゲートは、消化管投与による結合薬剤の送達のためにも有用である。消化管投与は、全身性の活性薬剤、および消化器上皮内で作用する薬剤のどちらにも使用できる。本発明のコンジュゲートに結合させた適切な試薬を用いて治療できる消化器の状態は、特にCrohn(クローン)病(例、シクロスポリンおよびFK506)、潰瘍性大腸炎、消化管潰瘍、消化性潰瘍疾患、塩および水分吸収の不均衡(便秘、下痢、もしくは栄養不良を導くことがある)、異常増殖性疾患などである。潰瘍の治療には、例えば、Hヒスタミン阻害剤(例、シメチジンおよびラニチジン)およびプロトン−カリウムATPaseの阻害剤(例、ランソプラゾールおよびオメプラゾール)などの胃酸分泌を減少させる薬剤、ならびにヘリコバクターピロリを標的とする抗生物質が含まれる。
特に本発明のコンジュゲートに結合させた場合に有用である抗生物質は、特別には赤痢菌(Shigella)、サルモネラ菌(Salmonella)、およびエルシニア菌などの侵襲性細菌に作用する抗生物質である。そのような化合物には、例えば、ノルフロキサシン、シプロフロキサシン、トリメトプリム、スルファメトキサゾールなどが含まれる。
抗腫瘍薬もまた本発明のコンジュゲートに結合させ、消化器経路によって投与することができる。これらには、例えば、シスプラチン、メトトレキセート、Taxol、フルオロウラシル、メルカプトプリン、ドノルビシン、ブレオマイシンなどが含まれる。本発明のコンジュゲートは、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、皮膚癌、消化器癌、血液悪性腫瘍、および眼癌を含む癌を治療するために使用できる。それらは、例えば、皮膚上の良性腫瘍などの制御不能な細胞増殖を治療するためにもまた使用できる。
本発明のコンジュゲートは、呼吸路を通しての薬物の投与を増強するためにもまた使用できる。鼻粘膜、下喉頭、ならびに中枢および末梢気道構造を含む呼吸路は、薬物吸収のための大きな粘膜表面を提供する。本発明のコンジュゲートによって提供される上皮組織の1つまたは複数の層を越えてその中への結合作用物質の増強した浸透は、呼吸路送達が他の送達方法に比して優れた長所の拡大を生じさせる。例えば、所望の作用を入手するために必要とされる作用物質はより低用量となることが多く、局所的治療作用はより迅速に発生することができ、そして作用物質の全身性治療血中レベルは迅速に入手される。薬理学的活性の迅速な発生は、呼吸路投与の結果として生じる可能性がある。さらに、呼吸路投与は、一般には生じる副作用が比較的少ない。
本発明のトランスポーターは、肺の状態を治療するために有用である生物学的作用物質を送達するために使用できる。鼻腔投与によって治療できる状態の例には、例えば、喘息が含まれる。これらの化合物には、例えば、コルチコステロイド、クロモリン、およびネドクロミルなどの抗炎症薬、例えばβ−2−選択的アドレナリン作用薬およびテオフィリンなどの気管支拡張剤、ならびに免疫抑制剤(例、シクロスポリンおよびFK506)が含まれる。他の状態には、例えば、アレルギー性鼻炎(糖質コルチコイドを用いて治療できる)、および慢性閉塞性肺疾患(肺気腫)が含まれる。肺組織に作用することができ、本発明のトランスポーターを用いて送達できる他の薬剤には、β−アゴニスト、マスト細胞安定剤、抗生物質、抗真菌剤および抗ウイルス剤、界面活性剤、血管作用剤、鎮静剤およびホルモン剤が含まれる。
呼吸路投与は、肺の状態の治療のためにだけではなく、循環系を介して遠隔標的器官へ薬物を送達するためにもまた有用である。広範囲のそのような薬剤および診断薬は、本発明のコンジュゲートに結合させた後に呼吸路を通して投与することができる。
本発明のコンジュゲートは、血液脳関門を越えて生物活性剤および診断薬を送達するためにもまた有用である。これらの作用物質は、虚血症を治療するために(例えば、抗アポトーシス薬を使用する)、ならびに神経伝達物資および例えば統合失調症、パーキンソン病、疼痛などの様々な状態を治療するための他の作用物質(例、モルヒネおよびオピエート)を送達するために有用である。5−ヒドロキシトリプタミン受容体拮抗薬は、偏頭痛および不安などの状態を治療するために有用である。
本発明のコンジュゲートは、上皮および/または内皮組織の1つまたは複数の層を越えてその中への診断用イメージング剤および造影剤を送達するためにもまた有用である。診断薬の例には、例えば99mTcグルコヘプトネートなどの放射能で標識された物質、またはガドリニウムドープキレート剤(例、Gd−DTPA)などの磁気共鳴イメージング(MRI)手技に使用される物質が含まれる。他の診断薬の例には、細胞中で発現すると容易に検出可能なタンパク質(β−ガラクトシダーゼ、緑色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼなどを含むがそれらに限定されない)をコードするマーカー遺伝子が含まれる。例えば放射性核種、蛍光体、酵素、酵素基質、酵素補因子、酵素阻害剤、リガンド(特別にはハプテン)などの広範囲の標識を使用できる。
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示するために提供されるものであり、決して本発明を限定することは企図されていない。
他に特に言及しない限り、すべての試薬および溶媒は、市販の供給源から入手し、精製せずに使用した。分析的TLCは、蛍光指示薬を含む0.25mm径のシリカゲル60Fプレートを用いて実施した(254nm)。プレートは、紫外光線およびモリブデン酸アンモニウム染色(90gのモリブデン酸アンモニウム、6gの硫酸セリウム、および1,800mLの10%のHSOを結合することによって調製した)、または過マンガン酸カリウム染色(8gのKMnO、60gのKCO、16mLの5%のNaOH、および900mLのHOを結合することによって調製した)のいずれかを用いた処理によって視認した。逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)は、分取用カラム(Alltec Alltima C18、250×22mm)を用いるVarian ProStar 210/215 HPLCを使用して、または分析用カラム(Vydak C18、150×4.6mm)を用いるAgilent 1100分析用HPLC上で実施した。生成物は、溶媒勾配(溶媒A=0.1%のTFA/HO;溶媒B=0.1%のTFA/CHCN)を利用して溶出した。NMRスペクトルは、Varian INOVA 500(H NMRは500MHzで;13C NMRは125MHzで)またはVarian INOVA 400(H NMRは400MHzで;13C NMRは100MHzで)磁気共鳴分光計上で測定した。H NMRスペクトルについてのデータは以下のように報告されている:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、dd=二重線の二重線、t=三重線、q=四重線、およびm=多重線)、積分、ならびにカップリング定数(Hz)。13C NMRスペクトルについてのデータは、残留溶媒ピークに比した化学シフトによって報告されている(CDCl=77.3ppmおよびCDOD=49.1ppm)。赤外線スペクトルは、Perkin−Elmer 1600のFTIRシリーズ上で記録した。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、サンフランシスコに所在するカリフォルニア州立大学のNIH地域質量分析検査施設で記録した。エレクトロスプレーイオン化質量スペクトル(ES−MS)は、スタンフォード大学の質量分析研究所でFinnigan LCQ四重極イオントラップ質量分析計上で記録した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量スペクトル(MALDI)は、Applied Biosystems製のVoyager DE質量分析計で記録した。
実施例1
一連の化合物2の合成
Figure 2009528292
図1Aに示した化合物2aの合成は、以下のとおりに実施した。攪拌棒を装備した、オーブンで乾燥させた三ツ口フラスコに室温の窒素下で20mLの排気メタノール中の2’−アルドリチオール(4.71g、21.4mmol)を加えた。この混合液に、2−メルカプトエタノール(500μL、7.10mmol)を滴下した。溶液は黄色に変色し、2時間攪拌し続けた。次に溶媒を真空下で除去し、20%酢酸エチルおよび塩化メチレンを用いてフラッシュクロマトグラフィを実施した。生成物は黄色油(1.320g、7.06mmol、収率97%)であり、TLCによると均質であった(1スポット)。R=0.47(5%のEtOAc、DCM)。
Figure 2009528292
HRMS(m/z):[M]CNOSの計算値:187.0126;実測値:187.0123。
Figure 2009528292
図1Aに示した化合物2bは、3−メルカプト−プロパノールを用いて開始して、2aについて上述したように合成すると、収率91%で得られた。
Figure 2009528292
EI−MS(m/z):[M]C11NOSについての計算値:201.0282;実測値201.0275。
Figure 2009528292
図1Aに示した化合物2cは、3−メルカプト−ブタールを用いて開始して、2aについて上述したように合成すると、収率82%で得られた。
Figure 2009528292
HRMS(m/z):[M]C13NOSの計算値:215.0439;実測値:215.0433。
実施例2
一連の化合物4の合成
Figure 2009528292
図1Aに示した化合物4aの合成は、以下のとおりに実施した。攪拌棒およびTeflon製キャップを装備した、オーブン乾燥したフラスコに、塩化メチレン(3mL)中の2a(44.0mg、0.235mmol)、トリホスゲン(25.0mg、0.0842mmol)、およびピリジン(18.0μL、0.222mmol)を室温で加えた。溶液は透明のままであった。これを30分間攪拌し続け、次に溶媒を真空下で蒸発させると、白色泡状固体が得られた。これに食塩水および氷中で冷却しておいた水(3mL)中のルシフェリン(30.0mg、94.3μmol)およびNaOH(547μLの0.5M、0.273mmol)を加えた。溶液は濁った白色、紫色、次に濁った黄色に変色した。反応液を4℃で4時間攪拌し、1%のTFAおよび水(15mL)を用いてクエンチし、塩化メチレンを用いて3回抽出した。溶媒を真空下で蒸発させ、化合物は20%酢酸エチル、1%酢酸、および塩化メチレンを用いるフラッシュクロマトグラフィによって精製した。適切なフラクションを単離し、次にRP−HPLCによって精製した。適切なフラクションを凍結乾燥させると黄色固体(27mg、54.5μmol、58%)が得られたが、これはTLCによると均質(1スポット)であった。R=0.4(20%のEtOAc、1%酢酸、DCM)。
Figure 2009528292
[M+1]C1916についての計算値:493.9;(H)実測値:493.9。
Figure 2009528292
図1Aに示した化合物4bは、2bを用いて開始して、4aについて上述したように合成し、収率47%で得られた。分析的HPLCによると>99%の純度であった。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
EI−MS(m/z):[M+1]C2018についての計算値:508.00;実測値:508.06。
Figure 2009528292
化合物4cは、2cで始めて4aについて上述したように合成すると、収率67%で得られた。生成物は、TLCによると均質であった(1スポット)。R=0.56(20%のEtOAc、1%酢酸、DCM)。
Figure 2009528292
EI−MS(m/z):[M+1]C2120についての計算値:522.02;実測値:522.0。
上記の反応は、以下の構造式を参照して、クロロホルメート中間物である(1−クロロホルミルオキシ)エチル2−ピリジニルジスルフィド(3a、n=1)、(1−クロロホルミルオキシ)プロピル2−ピリジニルジスルフィド(3b、n=2)、および(1−クロロホルミルオキシ)ブチル2−ピリジニルジスルフィド(3c、n=3)を通して進行する。
Figure 2009528292
実施例3
一連の化合物5の合成
図1Bに示したコンジュゲート5aは、以下のとおりに合成した。攪拌棒を装備した、オーブン乾燥した試験管に窒素下で、排気した1:1のアセトニトリルおよび水(2mL)中のAc−D−Cys−(D−Arg)−CONH−8TFA(20mg、8.61μmol)を加えた。これに0.5mLのアセトニトリルおよびDMSO中の4a(7.10mg、14.4μmol)を加えた。反応液を16時間にわたり攪拌し続け、次にRP−HPLCによって精製した。適切なフラクションを凍結乾燥させると白色固体(15mg、5.54μmol、64%)が得られ、これは分析的HPLCによると>99%の純度であった。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+3]C671193615についての計算値:1795.8;実測値(MALDI):1795.8。
図1Bに示したコンジュゲート5bは、化合物4bおよびAc−D−CyS−(D−Arg)−CONHを用いて始めて、5aについて上述したように合成すると、収率66%で得られた。分析的HPLCによると>99%の純度であった。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1]C681193615についての計算値:1807.85;実測値(MALDI):1807.84。
図1Bに示したコンジュゲート5cは、化合物4cおよびAc−D−CyS−(D−Arg)−CONHを用いて始めて、5aについて上述したように合成すると、収率24%で得られた。分析的HPLCによると>99%の純度であった。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+2]C691223615についての計算値:1822.86;実測値(MALDI):1822.05(M+1)。
実施例4
コンジュゲート5a、5b、および5c由来および分解によるルシフェリンの遊離を測定するアッセイ
コンジュゲートの安定性は、分析的HPLCを用いて37℃でHEPES緩衝食塩水(HBS、pH7.4)中でインキュベートした場合にそれらの分解を測定することによってアッセイした。コンジュゲート5a、5b、および5c(0.2mg)の各々は、内標準物質として機能した、24mLのメタノール中の10mgの1−ナフタレンメタノールの10μLの溶液を含有する1.5mL微量遠心管チューブ中の250μLのHBS(pH7.4)中に溶解させ、37℃でインキュベートした。適切な時点に、20μLの溶液を除去し、逆相HPLCによって分析した。分解率はコンジュゲート、内標準物質、および様々な分解生成物の統合ピーク面積から計算した。
コンジュゲートの半減期は、カーボネート5aについての3時間からカーボネート5bについての11時間、カーボネート5cについての33時間までの範囲内で統計的有意に相違した。分解産物は、カーボネートの緩徐な加水分解から予想されるように、ルシフェリン、アルコール7、およびCOであった(図1C)。安定性を増加させるパターンは、カルボニル基と近接硫黄原子との間の距離増加と相関しており、これは加水分解工程において後者が果たす役割を示唆している。
実施例5
コンジュゲートからの作用物質の遊離を決定するための無細胞アッセイ
還元環境におけるコンジュゲート5bおよび5cからのルシフェリンの相対遊離率は、様々な濃度のコンジュゲートをホタルルシフェラーゼ(Promega社、ワイオミング州マディソン)とともにインキュベートし、照度計(Berthold Detection Systems社、Sinus型)を用いて結果として生じる発光を時間の関数として測定することによって測定した。ルシフェリンによって生成される光量を測定する標準曲線は、50μLの5mMのMgSO、200mMのNaCl、20mMのHEPES、1mMのEDTA(pH7.4)中の様々な濃度(20〜2,000nM)のルシフェリンのカリウム塩(Xenogen Corp.社、カリフォルニア州アラメダ)を1mMのDTT、2mMのATPを含有する50μLの同一緩衝剤中の100ngのホタルルシフェラーゼに加えることによって生成した。生成した光は、本試験で使用した濃度範囲内では線形であることが見いだされた(図2Bを参照されたい)。
還元環境内でのコンジュゲートからのルシフェリンの相対遊離比率を決定するために、5mMのMgSO、200mMのNaCl、20mMのHEPES、1mMのEDTA(pH7.4)中のカーボネート5bおよび5cの50μLの50μM溶液は、1mMのDTT、2mMのATPを含有する50μLの同一緩衝剤中の100ngのホタルルシフェラーゼに加え、結果として生じた光線を測定した。生成された光には有意差が見られ、カーボネート5cはカーボネート5bによって生成された光のおよそ12%しか生成しなかった(図3A)。酵素の添加前20分間に1mMのDTTを用いたプレインキュベーションによって確立されたように、各コンジュゲートから等モル量のルシフェリンが遊離した。これらの条件下では、発光のプロフィールは、精製ルシフェリンを用いて見られるプロフィールに類似であり(図2A)、両方のコンジュゲートについて等量の光が観察された。(図3B)。この相違について考えられる1つの説明は、5cの中間体の半減期は5bの半減期よりはるかに長く、このためルシフェラーゼの結合部位について遊離ルシフェリンと競合することを可能にしたというものである。この仮説は、同様にフェノールでアルキル化されたルシフェリンの6−Oメチルエーテルは、ルシフェラーゼの知られている阻害剤であるという事実によって支持されている(Denburgら、Arch.Biochem.Biophys.134:381(1969))。
実施例6
コンジュゲートからのルシフェリン遊離についての細胞アッセイ
細胞培養中の取り込みおよび遊離を試験するために、様々な濃度のルシフェリン、5b、および5cを、遺伝子PC3M−lucをコードするルシフェラーゼによって安定にトランスフェクトされた前立腺癌細胞系を用いて個別にインキュベートした。PC3M−luc前立腺腫瘍細胞系(Jenkinsら、Clin.Exp.Metastasis 20:733(2003))は、アッセイ前に12時間にわたり96ウエルの平底プレート内で1ウエルに付き細胞60,000個でプレーティングした。細胞は、HEPES緩衝食塩水(HBS)(pH7.4)もしくはK+HBS(全ナトリウム塩が等モル量のカリウム塩と置換されたHEPES緩衝食塩水)のいずれか中の様々な濃度のルシフェリンのカリウム塩(Xenogen Corp.社、カリフォルニア州アラメダ)もしくはカーボネート5bもしくは5cのいずれかと一緒に3回ずつ1分間にわたりインキュベートした。細胞は、細胞外ルシフェリンもしくはコンジュゲートを除去するために洗浄し、適切な緩衝剤を用いて再懸濁させ、結果として生じた発光は電荷結合素子カメラおよびLiving Imageソフトウエア(IVIS200、Xenogen Corp.社、カリフォルニア州アラメダ)(Caoら、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.101:221(2004)を参照されたい)を用いて測定した。
遊離ルシフェリンの細胞内遊離および細胞内ルシフェラーゼによるその代謝回転の尺度である、5bを用いてパルスされた細胞からの発光シグナルは、最初の数秒間はわずかに増加したが、徐々に減衰し、およそ1,000秒後にはバックグラウンド値に達した(図4A)。5cを用いて処置した細胞は、より少ない初期光、より緩徐な減衰率を備える相違する曲線を生成し、5bについて見られるものに比較して生成される全光子の3分の2に過ぎなかった(図4B)。観察された発光がルシフェリンの細胞内遊離およびルシフェラーゼとの反応に起因するが、コンジュゲートの細胞外加水分解およびルシフェリン取り込みには起因しないことを証明するために、本実験は、膜電位を除去し、それによりアルギニンリッチトランスポーターの取り込みを排除するが、遊離ルシフェリンの取り込みは排除しないための知られている条件である、全ナトリウム塩が等モル量のカリウム塩(K+HBS)と置換されたHEPES緩衝食塩水中で繰り返した(Rothbardら、J.Am.Chem.Soc.126:9506(2004))。これらの条件下で、本コンジュゲートからの発光(およびこのため取り込みおよび遊離)は、>>90%減少したが(図4A、図4B)、他方ルシフェリン自体からの発光はわずかに増加した(図4B)。結果として、大部分の光線は、細胞内へのコンジュゲート取り込みおよびその結果としてのルシフェリンの遊離から発生する。
実施例7
コンジュゲートからのルシフェリン遊離についてのマウスアッセイ
ホタルルシフェラーゼ(FVB−luc+)を発現するトランスジェニック動物は、前核インジェクション(Cao YAら、Transplant 80:134−139(2005))の標準方法を用いて作製し、本明細書では皮膚を越える放出可能なルシフェリンコンジュゲートの送達を評価するために使用した。導入遺伝子は、ハイブリッドCMV−ニワトリ−β−アクチンプロモーター、ホタルルシフェラーゼ遺伝子に基づく遺伝子組み換えコード配列(Promega社(ワイオミング州マディソン)からのpGL3ベクター中に存在する)、FMDV 2Aリボソームスリップ部位およびGFP遺伝子から構成された。Cao YAら、Proc Natl Acad Sci USA 101:221−226(2004)によって最初に記載された動物は、大多数の細胞タイプにおいてルシフェラーゼを発現し(赤血球中では発現しない)、皮内でGFP発現を示すが、多数の他の組織中では発現を示さないことが証明された。例えば、Cao YAら、Transplant 80:134−139(2005)を参照されたい。全方法は、スタンフォード大学の実験動物飼育管理委員会によって承認された。
皮膚輸送を評価するためのイメージングアッセイのために、右側腹上で大きなヘアクリッパーを用いて剃髪することによって動物から毛髪を取り除いた。引き続いて、Nair(登録商標)(NAIRは、Church & Dwight社(米国ニュージャージー州プリンストン)の脱毛クリームの登録商標である)を90秒間塗布し、拭き取り、ウェットペーパータオルで動物をしっかり洗浄し、乾燥させた。5日間にわたり角質層を再増殖させ、その後マウスをイメージングのために使用した。
ルシフェリンを皮内注射するために、ルシフェリンの2mM溶液は、0.62mgを1mLの水に溶解させることによって作製した(pH5.5)。この溶液は、HBS(pH7.4)(1:10)を用いて連続的に希釈して1mLの200、20、2、0.2、および0.02μM溶液を作製した。0.02および0.2μMのルシフェリン溶液(100μL)は、2匹の相違するマウスの皮内に注射した。発光を観察し、高用量は実験のために有用であるために十分に強度であることが証明された。引き続いて、別の3匹のマウスに注射し、できる限り迅速にイメージングした。
コンジュゲートを皮内注射するために、コンジュゲート5bの1mM溶液は、2.1mgを770μLの水に溶解させることによって作製した(pH5.5)。この溶液は、HBS(pH6.9)(1:10)を用いて連続的に希釈して1mLの200、20、2、0.2、および0.02μM溶液を作製した。0.2μMのコンジュゲート5bの溶液(100μL)は、2匹の相違するマウスの皮内に注射した。発光を観察し、この用量が実験のために有用であるために十分に強度であることが証明された。
コンジュゲートを局所適用するための製剤は、以下のとおりに調製した。エッペンドルフチューブ中で、25μLの200mMのNaOAc(pH6.0)、55μLのPEG400を各1mgのコンジュゲート5bおよびコンジュゲート5cと結合し、5b・8TFAの4.93mM、4.93mMの5c・8TFAおよび63mMの酢酸ナトリウムの最終濃度を生成した。5mMの5bおよび5cの溶液(15μL)は、標準ピペットチップ(1〜20μLのサイズ)を使用して4匹のマウス各々の2つの場所に局所適用した。発光は、およそ60分間にわたり観察した。
インビボ生物発光イメージングは、以下のとおりに実施した。動物は、以前に記載されたように(45)、冷却CCDカメラ(IVIS100、Xenongen社)を用いて暗室内でイメージングし、LivingImageソフトウエア(Xenogen Corp.社)を用いて分析した。データは、データがカメラの設定、チャンバの幾何学的形状もしくは積分時間には依存しないように、対象の各領域について光子/ステラジアン/秒として表示した。
皮内送達のためのこのマウスモデルのキャリブレーションは、遊離ルシフェリンを用いて実施した。FVB−luc+マウスの皮膚からのシグナル検出のために必要とされる遊離ルシフェリンの量、およびそれが用量依存性であるかどうかを確立するために、既知量の遊離ルシフェリン(HBS(Hepes緩衝食塩水)中の100μLの20nMもしくは200nMいずれかの溶液)をマウスの側腹部に皮内注射し、結果として生じる生物発光シグナル(光子/単位時間)を測定した。発光された光子の総数は、曲線下面積を積分することによって計算した;図6を参照されたい。時間の関数としての発光のパターンは再現性であり、両方の用量について類似であり、測定期間にわたって注射後に光放出の定常減少を示した。10倍の高用量についての曲線下面積は、低用量の曲線下面積に比較してほぼ正確に10倍であり、これは、これらの濃度では線形の用量依存性反応であることを示している。注射された既知量のルシフェリンおよび観察された発光に基づくと、注射されたルシフェリン400分子に付き1個(光子)の光がカメラによって検出された。
トランスポーター媒介性皮膚侵入とは関係なく、既知量のコンジュゲートから生成される光子数を決定するために、ルシフェリンコンジュゲート5bを遊離ルシフェリンについて上述したように皮内に注射した。コンジュゲート5bの皮内注射は、図7に示したように、遊離ルシフェリンについて観察された生物発光の時間的パターンに比して明確に相違する時間的パターンを生成した。注射直後には有意なシグナルが明白であったが、これは次の20分間にわたり増加し、次にその後50分間にわたって緩徐に減衰した。このプロフィールは、ルシフェリンの時間依存性の生成、細胞取り込みおよびリンカー開裂後の枯渇と一致している。コンジュゲート5bの注射サンプル中のルシフェリンの理論量のおよそ80%は、60分間に放出された総光子数に、検出された1光子当たりルシフェリン400分子という以前に計算された数字を掛けると明らかになった。
ルシフェリンコンジュゲートの局所適用:局所適用のために、FVB−luc+マウスの毛皮はコンジュゲートサンプルと皮膚との接触を妨害し、投与中の再現性問題を作り出す。トランスジェニックの無毛マウスは入手することができず、剃刀だけを使用した剃髪では毛皮を一様には取り除けなかった。さらに、局所適用にとっては極めて重要な障壁である角質層の高度に可変性の分解が観察され、取り込みを測定する際のまた別の再現性の問題を作り出した。代替の脱毛剤(Nair(登録商標))の使用は毛皮をより一様に除去したが、角質層の可変性のびらんもまた引き起こし、無傷皮膚内の取り込みを再現性で試験する能力を侵害した。ルシフェリンはその角質層が浸食されているマウスの皮膚内に容易に侵入し、生物発光シグナルを生成するという観察所見は、この再現性問題に対する解決策にとっての基礎を提供した。詳細には、ルシフェリンだけをトランスジェニックマウスの皮膚に適用することによって、角質層の完全性、および重要にも、経時的なその再増殖を決定することができる。図8に示されるように、Nair(登録商標)を用いた処置後の最初の時点に、大きく、高度に可変性のシグナルが観察される。しかし時間が進行するにつれて、角質層再増殖を伴うルシフェリンの浸透が減少することを示すシグナルが減少するだけではなく、シグナルにおけるより大きな再現性が生じる。この経時変化試験から、再現性シグナルを入手するための最適時間は脱毛剤を用いた処置の5日後であると決定された。
次の工程は、コンジュゲートの局所適用のために最善のビヒクルを決定することであった。オクタ−D−アルギニンルシフェリンコンジュゲートの5mMトリフルオロ酢酸塩の溶液は、2.0に近いpHを有する。緩衝剤を含む重要性は、25%の水中、または25%の200mMのNaOAc(pH6.0)によって緩衝し、75%のPEG400と結合した液中のいずれかでの5cの15μLの5mM溶液を局所適用することによって試験した(図9)。生成した光量には劇的な相違が生じ、緩衝ビヒクル中のコンジュゲートを適用した場合にのみ、定常的に増加する量の発光が観察された。緩衝剤の不在下での光の欠如は、おそらくルシフェラーゼの活性およびルシフェリンの遊離速度の両方を減少させるであろう、コンジュゲートによる皮膚の酸性化から生じるであろう。これらの結果は、ビヒクル中に適切な緩衝剤を含む必要があることを確証している。
適用のために適切なビヒクル、無傷の毛皮を含まない角質層を再現性で入手する方法、ならびにルシフェリンおよびルシフェリンコンジュゲートの皮内注射に基づくキャリブレーションを同定して、ルシフェリンおよびオクタ−D−アルギニンの2種の局所適用されたジスルフィド結合コンジュゲートからのルシフェリンの取り込みおよび遊離について調査した。トランスポーターおよびリンカーの相対性能を評価するために最も再現性のある方法は、麻酔をしたFVB−luc+マウスの側腹部へ1滴の各コンジュゲート溶液を適用することであった。この液滴は、アッセイ時間中は皮膚と接触したままにさせ、その間に動物からの発光を監視した。選択した実験において、投与された液滴の残留量を含有する洗浄サンプルを分析的HPLCによって試験すると、本コンジュゲートが完全に無傷であることが見いだされた。投与実験は、再現性のため、相違するコンジュゲートおよび遊離系を比較定量するため、ならびに撮影時間を節約するために設計されたが、最適治療レベルを達成するためではなかった。しかし、予想されるように、より大きな取り込みは、用量、露出時間もしくは投与面積を増加させる、または反復適用によって達成できる。図10に示すように、両方のコンジュゲートは、強力かつ再現性のある発光シグナルを生成した。観察されたシグナルと皮膚内に侵入するコンジュゲートの量との差は、コンジュゲートの非生産的結末(例えば、不完全な取り込み、不完全な開裂、皮膚からのクリアランス、代謝)を表す。皮内キャリブレーションに基づくと、1時間中に遊離したルシフェリンの総量は、曲線下面積に400個の分子/検出光子数を掛けることによって決定できる。アボガドロ(Avogadro)定数によって割ると、遊離したルシフェリンの量が、カーボネート5bについては3.62×10−12モルであり、カーボネート5cについては2.0×10−11モルであることを示している。適用面積およびマウス皮膚の厚さ(0.69mm)から、1時間にわたる皮膚露出の結果として生じる累積皮内濃度は、各々47nMおよび62nMであった。生成した光の量は、0.5〜4.5mMの範囲内の適用されたコンジュゲートの量と線形に比例しており(データは示していない)、299nMという高い皮内濃度が得られた。
ルシフェリンの遊離が投与および皮膚表面との接触中に発生するかどうかを決定するために、観察された光が細胞外ルシフェリンの分解および遊離に対して輸送および細胞内遊離にのみ起因したことを証明する必要があった。このために、各曝露期間後に、皮膚上に残留している材料は洗浄することによってマウスから除去し、洗浄液中の任意の遊離ルシフェリンを検出するために分析的HPLCによって分析した。図示した各アッセイにおいて、遊離ルシフェリンは観察されなかった。また別のコントロールは、正確に同一の放出可能なリンカーおよびルシフェリンカーゴとともに不十分なトランスポーターから構成されるコンジュゲートを試験することであった。リシンテトラマーは、皮膚侵入のためには不良なトランスポーターであることが知られている。このためにリシンテトラマーのコンジュゲート5dを合成し、コントロールとして使用した。
コンジュゲート5dは、以下のとおりに調製した:
Figure 2009528292
攪拌棒を装備した、オーブン乾燥した試験管に窒素下で、無水DMF(1mL)中のAc−D−Cys−(L Lys)CONH・4TFA(9.7mg、8.61μmol)を加えた。これに0.5mLのDMF中の4c(4.5mg、8.61μmol)を加えた。この反応液を12時間にわたり攪拌し続け、次にRP−HPLCによって精製した。適切なフラクションを凍結乾燥させると白色固体(8.1mg、5.25μmol、61%)が得られたが、これは分析的HPLCによると>99%の純度であった。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+2][C45741211]についての計算値:1086.5;実測値(MALDI):1086.5。
Ac−D Cys(L Lys)CONH・4TFAは、自動ペプチド合成のための一般方法を用いて合成した。このペプチドは、10倍過剰(1mmol)中で使用された全アミノ酸を用いて0.1mmolスケール上でFmoc−Rinkアミド樹脂上で組み立てた。ペプチドの同一性は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間(MALDI−TOF)質量分析を用いて確定した。MS(m/z):[M+2][C296O10S]についての計算値:676.4;実測値(MALDI):676.5。
この低有効性トランスポーターコンジュゲート5dをマウスアッセイにおいて対応する(Arg)コンジュゲート5bと比較すると、図11に示したように、はるかに少ない光が見られたので、そこで発光はプロドラッグの外部加水分解ではなく主として細胞内遊離から生じることを確証している。
実施例8
Taxol−リンカー−トランスポーターコンジュゲート
本実施例は、数種の相違する卵巣癌モデル中のTaxolのインビトロ治療指数(OVCA 429/429T/429TP、OVCA433/433T/433TP、UCI−101)、ならびにその水溶性は、本発明のリンカーを用いてオクタアルギニントランスポーターをTaxolのC2’およびC7位へ結合させることによって改善できる。これらのコンジュゲートは、Taxolに耐性の細胞において有意なインビトロ抗腫瘍活性を有することもまた証明されており(OVCA429T/429TP、およびOVCA433T/433TP)、これはこれらのコンジュゲートが多剤耐性(MDR)表現型を回避できることを示唆している。細胞系OVCA429はTaxolに対して感受性であるが、他方OVCA429Tはp−糖タンパク質(PGP)の過剰発現に起因してTaxolに対して耐性であり、そしてOVCA429TPは、未知の機構に起因してTaxolに対して耐性である。
本コンジュゲートは、以下のとおりに合成した:
Figure 2009528292
Figure 2009528292
他に特に言及しない限り、すべての試薬および溶媒は、市販の供給源から入手し、精製せずに使用した。NMP、DIEA、DMF、HOBT、HBTUを含むペプチド合成のための全試薬、およびピペリジンは、Aldrich社、NovaBiochem社(カリフォルニア州)、BaChem社(カリフォルニア州)、またはApplied Biosystems社(カリフォルニア州)から購入した。Fmoc−保護アミノ酸および樹脂は、それらの適切に保護された形状でNovaBachem社もしくはBaChem社から購入した。全自動ペプチド合成は、標準FastMocカップリング戦略を用いてPE Biosystems Model 433A自動ペプチド合成装置上で実施した。逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)は、分取用カラム(Alltec Alltima C18、250×22mm)を用いるVarian ProStar 210/215 HPLCを使用して、または分析用カラム(Vydak C18、150×4.6mm)を用いるAgilent 1100分析用HPLC上で実施した。生成物は、溶媒勾配(溶媒A=0.1%のTFA/HO;溶媒B=0.1%のTFA/CHCN)を利用して溶出した。NMRスペクトルは、Varian INOVA 500磁気共鳴分析計上で測定した(H NMR、500MHzで;13C NMR、125MHzで)。H NMRスペクトルについてのデータは以下のように報告されている:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、dd=二重線の二重線、t=三重線、q=四重線、およびm=多重線)、積分、ならびにカップリング定数(Hz)。H NMRスペクトルについてのデータは、残留溶媒ピークに比した化学シフトによって報告されている(CDOD:H NMRスペクトルについて4.97ppm)。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量スペクトル(MALDI)は、Applied Biosystems製のVoyager DE質量分析計上で記録した。
p−ニトロフェニルカーボネート53。p−ニトロフェニルクロロホルメートをAnderson,G.W.and McGregor,A.C,J.Am.Chem.Soc.1957,79,6180−6183によって記載された方法にしたがってアルコール52と反応させると(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527を参照されたい)、収率82%でカーボネート53が得られた。
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1][C1413]についての計算値:353.02;実測値:353.0。
Taxol C2’カーボネート54。C2’カーボネートリンカーの合成は、Groot,F.M.H.ら、J.Med.Chem.2000,43,3093−3102の研究に基づいて、p−ニトロフェニルカーボネート53をTaxolのC2’位と反応させると、ほぼ定量的収率(99%)でC2’カーボネート54が得られた。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1][C555916]についての計算値:1067.3;実測値(MALDI):1067.5。
Taxol C2’オクタアルギニンコンジュゲート55。カーボネート54をさらにJonesらの方法(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527)を用いてAc−NH−DCys(DArg)CONH(Kirschberg,T.A.ら、Org.Lett.2003,5,3459−3462)と結合させると、収率61%で最終コンジュゲートが得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+2][C1031613526]についての計算値:2368.2;実測値(MALDI):2368.1。
Taxol C2’テトラアルギニンコンジュゲート。この化合物は、Jonesらの方法(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527)を用いてAc−NH−DCys(D Arg)CONH2と結合させると、収率55%で得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1][C791121922]についての計算値:1742.8;実測値(MALDI):1742.9。
4−(ピリジン−2−イルジスルファニル)−酪酸(60)。酸60は、Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527によって記載されたように遊離チオール59から合成した(例えば、Blount,K.F.and Uhlenbeck,O.C.,Biochemistry,2002,41,6834−6841を参照されたい)。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
EI−EI−MS(m/z):[M+1][C12NO]についての計算値:230.02;実測値:230.0。
Taxol C2’エステル61。Rodriguesおよび共同研究者によって発表された方法(Rodrigues,M.L.ら、Chem Biol.1995,2,223−227)を使用して酸60とTaxolとを結合させると、収率71%で化合物61が得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+2][C566215]についての計算値:1066.3;実測値(MALDI):1066.7。
Taxol C2’オクタアルギニンコンジュゲート62。この化合物は、さらにJonesらの方法(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527)を用いてAc−NH−DCys(DArg)CONH(Kirschberg,T.A.ら、Org.Lett.2003,5,3459−3462)と結合させると、収率58%で得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+2][C1041623525]についての計算値:2365.2;実測値(MALDI):2365.8。
Taxol C2’テトラアルギニンコンジュゲート。この化合物は、Jonesらの方法(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,28,6526−6527)を用いてAc−NH−DCys(D Arg)CONHと結合させると、収率58%で得られた。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1][C801141921]についての計算値:1740.8;実測値(MALDI):1741.5。
Taxol C2’ TBSエステル64。C2’ TBS保護Taxol64の合成についてはMagri,N.F.ら、J.Nat.Prod.1988,51,298−306によって記載されており、それらの方法に正確に従うと、収率95%でTBS C2’エステル64が得られた。全スペクトルは、Magriらの公表されたデータと一致している。
Taxol C7エステル65。C7位でのエステル65の生成をDamenおよび共同研究者によって発表された方法(Damen,E.W.P.ら、Bioorg.Med.Chem.2000,8,427−432)にしたがって実施すると収率62%で所望のエステル65が得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+2][C627615Si]についての計算値:1180.4;実測値(MALDI):1180.1。
Taxol C7エステル66。化合物66を収率70%で得るためのC2’エステルのTBS脱保護は、Kirschberg,T.A.ら、Org.Lett.2003,5,3459−3462の方法を用いて実施した。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+Na][C566015Na]についての計算値:1087.3;実測値(MALDI):1087.4。
Taxol C7オクタアルギニンコンジュゲート67。Taxol C7エステル16をさらにJonesらの方法(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527)を用いてAc−NH−DCys(DArg)CONH(Kirschberg,T.A.ら、Org.Lett.2003,5,3459−3462)と結合させると、収率63%で所望の生成物が得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+Na][C1041613525Na]についての計算値:2387.2;実測値(MALDI):2387.4。
Taxol C7テトラアルギニンコンジュゲート。Taxol C7エステル16をJonesら)の方法(Jones,L.R.ら、J.Am.Chem.Soc.2006,128,6526−6527を用いてAc−NH−DCys(DArg)CONHと結合させると、収率51%で所望の生成物が得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+Na][C801131921Na]についての計算値:1762.8;実測値(MALDI):1763.3。
OVCA429/429T/429TPヒト卵巣癌細胞系における細胞増殖阻害アッセイ(GI50)の結果は、図12に示した。細胞には、20分間にわたりPBS(pH=7.4)中で投与されたコンジュゲートおよびTaxol(DMSO中で投与された)を用いてパルスした。次に溶液を除去し、細胞を2回洗浄し、72時間にわたり新鮮培地中でインキュベートした。生細胞の存在は、標準MTSアッセイに基づいて測定した。図から明らかなように、コンジュゲートはTaxol耐性細胞系中でさえ癌細胞の増殖を阻害したが、他方Taxolは、耐性細胞系429Tおよび429TP中の桁数によって低活性を示した。
実施例9
シクロスポリン−リンカー−トランスポーターコンジュゲート
Figure 2009528292
クロロメチルカーボネート−CsA(124)。Nでパージした、火力乾燥した25mLの丸底フラスコにシクロスポリンA(500.0mg、0.416mmol)を加えた。次に白色固体を無水CHCl(4mL)中に溶解させた。次にフラスコは氷/水浴中で0℃へ冷却し、その後にマイクロシリンジによってクロロギ酸クロロメチル(296μL、3.33mmol)を加えた。ピリジン(168μL、2.08mmol)を次に加え、反応液が室温へ加温するに任せた。溶液の色は青色がかった黄色からピリジン添加後に青色がかったピンク色、そしてわずかにオレンジ色がかった色相へ変化した。21.5時間にわたり攪拌し続け(色は、現在は淡褐色であった)、次にCHCl(20mL)および飽和NaHCO(25mL)水溶液を用いて希釈した。有機相は、飽和NaHCO(25mL×2)水溶液および飽和NaCl(40mL×1)水溶液を用いて連続的に洗浄し、MgSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(ペンタン−酢酸エチル、1:1〜1:3への勾配)によって精製すると、404.0mg(75%)の純粋24が得られた:
Figure 2009528292
ヨードメチルカーボネート−CsA(125)。Nを用いてパージした、オーブン乾燥丸底フラスコに無水CHCl(800μL)中の124の溶液(239.5mg、0.185mmol)を加えた。溶媒はN流下で排出し、次に真空下でさらに濃縮した。乾燥残留物を無水CHCN(1.8mL)中に送り込むと、わずかに濁った溶液が得られた。次に室温で、固体NaI(166.3mg、1.11mmol)を加えた。結果として生じた黄色透明溶液を油浴中で40℃へ加熱し、20時間にわたって攪拌し続けた。褐色溶液を真空下で濃縮し、酢酸エチル(20mL)中に送り込み、10%のNaOs(20mL×2)水溶液および飽和NaCl(20mL×1)水溶液を用いて連続的に洗浄し、MgSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮した。粗生成物は、それ以上精製または特性解析しなかった。これを次の反応に直接取り入れた。
4−トリチルチオ−酪酸(130)。Nを用いてパージした、オーブン乾燥試験管にトリチルメルカプタン(1.203g、4.35mmol)を加えた。固体を無水トルエン(3mL)中に溶解させ、磁気攪拌棒を用いて攪拌し、その後にシリンジによってメタノール中のメトキシドナトリウムの25%溶液(2.17mL、9.58mmol)を加えた。この溶液を氷/水浴中で0℃へ冷却し、次にMeOH(1mL)中の4−ブロモ酪酸(800.0mg、4.79mmol)の溶液を加えた。この溶液は黄褐色に変色し、室温へ加温するに任せ、6時間攪拌し続けた。これを次に油浴中で40℃へ加熱した。色は黄色がかった色相から24時間の反応時間後に濃オレンジ色に変色した。24時間後に、追加の4−ブロモ酪酸の同等物を加えた。さらに1時間攪拌した後、さらにメタノール溶液中のメトキシドナトリウム(500μL)を加えた。反応液を計30時間にわたり攪拌し続け、その後にこれを真空下で濃縮し、蒸留したHO(30mL)および1MのHSO(10mL)中に取り入れ、酢酸エチル(40mL×3)を用いて抽出し、MgSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生じた黄色油をシリカゲルクロマトグラフィ(ペンタン−酢酸エチル、84:15:1〜64:35:1への勾配)によって精製すると、873.6mg(50.3%)の純粋130が得られた:
Figure 2009528292
4−ピリジルジチオ−酪酸(131)。Nを用いてパージした、火力乾燥丸底フラスコに無水CHCl(10mL)中の130の溶液(436.8mg、1.205mmol)を加えた。これに計量紙によって4−アルドリチオール(796.4mg、3.615mmol)を加え、次にマイクロシリンジによってトリイソプロピルシラン(272.3μL、1.325mmol)を加えた。淡黄色が残存するまで、室温で攪拌しながらトリフルオロ酢酸(約2.5mL)を滴下した。この反応液を1時間にわたり攪拌し続け、その後真空下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィ(ペンタン−酢酸エチル−酢酸、69:30:1〜54:45:1への勾配)によって精製すると、251.6mg(91%)の純粋131が得られた:
Figure 2009528292
5−トリチルチオ−吉草酸(133)。Nを用いてパージした、火力乾燥丸底フラスコにトリチルメルカプタン(347mg、1.26mmol)を加えた。固体を無水トルエン(5.5mL)中に溶解させ、磁気攪拌棒を用いて攪拌し、その後にシリンジによってメタノール中のメトキシドナトリウムの25%溶液(860μL、3.77mmol)を加えた。この溶液を氷/水浴中で0℃へ冷却し、次にMeOH(3mL)中の5−ブロモ吉草酸(250.0mg、1.38mmol)の溶液を加えた。この溶液の色は淡褐色に変色し、これを室温に加温させるために8時間にわたり攪拌し続け、その後にこれを真空下で濃縮し、蒸留したHO(30mL)および1MのHSO(10mL)中に取り入れ、酢酸エチル(40mL×3)を用いて抽出し、MgSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、真空下で濃縮した。生じた黄色固体をシリカゲルクロマトグラフィ(ペンタン−酢酸エチル−酢酸、69:30:1〜64:35:1への勾配)によって精製すると、419.8mg(88.5%)の純粋133が得られた:
Figure 2009528292
5−ピリジルジチオ−吉草酸(134)。Nを用いてパージした、火力乾燥丸底フラスコに無水CHCl(6mL)中の133の溶液(248.5mg、0.66mmol)を加えた。これに計量紙によって4−アルドリチオール(436.3mg、1.98mmol)を加え、次にマイクロシリンジによってトリイソプロピルシラン(149.2μL、0.726mmol)を加えた。淡黄色が残存するまで、室温で攪拌しながらトリフルオロ酢酸(約1mL)を滴下した。この反応液を1時間にわたり攪拌し続け、その後真空下で濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィ(ペンタン−酢酸エチル−酢酸、64:35:1〜44:55:1への勾配)によって精製すると、142.1mg(88.5%)の純粋134が得られた:
Figure 2009528292
CsA−カーボネート−アセタール−エステル−S−アルドリチオール(135)。火力乾燥した10mLの円錐形の丸底フラスコに酢酸エチル中の131の溶液(50.0mg、0.218mmol)を加えた。溶媒は、真空下で蒸発させた。室温で乾燥残留物に、無水DMF(750μL)およびジイソプロピルエチルアミン(45.7μL、0.263mmol)を加えた。生じた溶液は、125(242.6mg、0.175mmol)を含有する丸底フラスコに加えた。反応液を室温で3時間攪拌し、その後にMeOH(1.5mL)を用いて希釈し、分取HPLC(30分間にわたり65〜100%のCHCN勾配、カラムは50℃に加熱した)によって精製すると、123.1mg(47.3%)の純粋の135が得られた。
CsA−カーボネート−アセタール−エステル−5−D−Arg−NH(136)。Nを用いてパージした、オーブン乾燥の600μLコニカルバイアルに無水CHCl中の135(16.13mg、0.0108mmol)を加えた。溶媒はN流下で蒸発させ、次に真空下でさらに濃縮した。バイアルに無水DMF(150μL)中のAc−D−Cys−D−Arg−NHの溶液(22.91mg、0.00986mmol)を加えた。溶液の色は、直ちに黄色に変色した。これを室温で24時間攪拌し続け、その後にMeOH(1.5mL)を用いて希釈し、分取HPLC(30分間にわたり30〜100%のCHCN勾配、カラムは50℃に加熱した)によって精製すると、10.4mg(28.5%)の純粋136が得られた。
CsA−カーボネート−アセタール−エステル−6−アルドリチオール(137)。オーブン乾燥バイアルに、無水CHCN(550μL)中の134の溶液(21.37mg、0.088mmol)を加えた。次にジイソプロピルエチルアミン(17.13μL、0.098mmol)をマイクロシリンジによって加えた。固体が砕けたので、それを溶解させるために無水DMF(80μL)を加えた。生じた溶液は、125(97.4mg、0.070mmol)を含有する無水丸底フラスコに加えた。この反応液を室温で24時間にわたり攪拌し、その後にこれを真空下で濃縮した。黄色残留物を酢酸エチル(40mL)中に送り込み、10%のNa(40mL×2)水溶液および飽和NaCl(40mL×1)水溶液を用いて連続的に洗浄し、MgSOの上方に通して乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮した。粗生成物をシリカゲルクロマトグラフィ(酢酸エチル−ペンタン、91:9〜95:5への勾配)によって精製すると、73.1mg(69.4%)の純粋137が得られた。
CsA−カーボネート−アセタール−エステル−6−D−Arg−NH(138)。Nを用いてパージした、オーブン乾燥の600μLコニカルバイアルに無水CHCl中の137(14.62mg、0.0097mmol)を加えた。溶媒はN流下で蒸発させ、次に真空下でさらに濃縮した。このバイアルに無水DMF(100μL)中のAc−D−Cys−D−Arg−NHの溶液(20.56mg、0.00885mmol)を加えた。溶液の色は、直ちに黄色に変色した。これを室温で25時間攪拌し続け、その後にMeOHを用いて希釈し、分取HPLC(20分間にわたり30〜90%のCHCN勾配、カラムは50℃に加熱した)によって精製すると、2.7mg(8.2%)の純粋138が得られた。
化合物136:
Figure 2009528292
は、以下のとおりに試験した。BL4.IL−2細胞を様々な濃度のCsAもしくはコンジュゲート136と一緒に37℃で一晩インキュベートし、CsAの活性形の取り込みおよび遊離を可能にした。翌日、10ng/mLのホルボール12−ミリステート13アセテートおよび1μMのヨードマイシンの添加によってIL−2を生成するためにT細胞を刺激した。培養は37℃で一晩インキュベートし、翌日上清を収集し、蛍光酵素結合イムノアッセイ(ELISAキット)を用いてIL−2を測定した。各試験は3回ずつ実施した。136のIC50は、1,900nMであると決定された。
図15Aおよび図15Bは、本発明のリンカーによって脂質に結合させたシクロスポリンAを示しており、このとき実施例10の脂質−システイン−SH分子205は、シクロスポリン−脂質コンジュゲートを作製するために、この実施例のシクロスポリン化合物135および137と反応している。BL4.IL−2細胞を様々な濃度のCsAもしくはコンジュゲートと一緒に37℃で一晩インキュベートし、CsAの活性形の取り込みおよび遊離を可能にした。翌日、10ng/mLのホルボール12−ミリステート13アセテートおよび1μMのヨードマイシンの添加によってIL−2を生成するためにT細胞を刺激した。培養を37℃で一晩インキュベートし、翌日上清を収集し、蛍光酵素結合イムノアッセイ(ELISAキット)を用いてIL−2を測定した。各試験は3回ずつ実施した。決定したIC50値は、図15Aおよび図15Bに列挙した。
実施例10
脂質トランスポーター
Figure 2009528292
本発明のリンカーを用いる脂質トランスポーター−リンカー−カーゴ分子の1つの実施形態は、便宜的には、本明細書に記載した方法によって合成することができる。他に特に言及しない限り、すべての試薬および溶媒は、市販の供給源から入手し、精製せずに使用した。分析的TLCは、蛍光指示薬を含む0.25mm径のシリカゲル60Fプレートを用いて実施した(254nm)。逆相高速液体クロマトグラフィ(RP−HPLC)は、分取用カラム(Alltec Alltima C18、250×22mm)を用いるVarian ProStar 210/215 HPLCを使用して、または分析用カラム(Vydak C18,150×4.6mm)を用いるAgilent 1100分析用HPLC上で実施した。生成物は、溶媒勾配(溶媒A=0.1%のTFA/HO;溶媒B=0.1%のTFA/CHCN)を利用して溶出した。NMRスペクトルは、Varian INOVA 500(H NMR、500MHzで;13C NMR、125 MHzで)磁気共鳴分析計上で測定した。H NMRスペクトルについてのデータは以下のように報告されている:化学シフト、多重度(s=一重線、d=二重線、dd=二重線の二重線、t=三重線、q=四重線、およびm=多重線)、積分、ならびにカップリング定数(Hz)。13C NMRスペクトルについてのデータは、残留溶媒ピークに比した化学シフトによって報告されている(CDCl=77.3ppmおよびCDOD=49.1ppm)。エレクトロスプレーイオン化質量分析(ES−MS)は、スタンフォード大学の質量分析研究所でFinnigan LCQ四重極イオントラップ質量分析計上で記録した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量スペクトル(MALDI)は、Applied Biosystems製のVoyager DE質量分析計上で記録した。
ルシフェリンオクタL−アルギニンコンジュゲート203〜207a〜eの合成および特性解析
S−トリチル−L−システインエチルエステル(203)。L−システインエチルエステル塩酸塩(5.0g、27.03mmol、1当量)および塩化トリチル(11.3g、40.55mmol、1.5当量)を室温で2日間にわたり20mLのDMF中で攪拌した。この反応液は、20分間かけて50〜100%の水/アセトニトリル勾配(TFAを添加せず)を用いてRP−HPLC内への直接注入によって精製した。真空下で乾燥させた後、9.3g(88%)の203が白色粉末として入手された。
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1]C2427NOSについての計算値:392.2;実測値:393.2。
化合物204a。3mLの無水DMF中のS−トリチル−L−システインエチルエステル(203)(67mg、0.176mmol)、パルミチン酸(50mg、0.194mmol)、DCC(36mg、0.176mmol)、およびHOBt(27mg、0.176mmol)の溶液にトリエチルアミン(54μL、0.352mmol)を加え、この反応液を室温の窒素雰囲気下で一晩攪拌し続けた。この反応液を1%のHCl水溶液を用いてクエンチし、酢酸エチルを用いて洗浄した。有機相をMgSOの上方に通して乾燥させ、真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(EtOAc−ペンタン、1:5、次に1:1)によって精製すると、油として純粋202a(85.3mg、77%)が得られた。
Figure 2009528292
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1]C4056NOSについての計算値:630.4;実測値:630.4。
化合物204b。化合物204bは、パルミチン酸の代りにラウリン酸を用いて、204aについて上述したように合成すると、収率71%で得られた。
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1]C3648NOSについての計算値:574.3;実測値:574.3。
化合物204c。化合物204cは、パルミチン酸の代りにオクタン酸を用いて、204aについて上述したように合成すると、収率85%で得られた。
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1]C3240NOSについての計算値:518.3;実測値:518.3。
化合物204d。化合物204dは、パルミチン酸の代りに酪酸を用いて、204aについて上述したように合成すると、収率80%で得られた。
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1]C2832NOSについての計算値:462.2;実測値:462.2。
化合物204e。3mLの氷温NaOH(1N)中のS−トリチル−L−システインエチルエステル(203)(17mg、0.043mmol)の溶液に100μLの酢酸無水物を1滴ずつ強力に攪拌しながら加え、氷浴中で持続的に冷却した。さらに氷温NaOH(1N)を加え、次に100μLの酢酸無水物を加えた。混合液を30分間攪拌した後、この溶液は濃HSOの添加によってpH3に調整し、酢酸エチルを用いて洗浄した。有機相をMgSOの上方に通して乾燥させ、真空下で濃縮し、20〜80%の水/アセトニトリル勾配(TFAを添加せず)を用いるRP−HPLCを用いて20分間かけて精製すると、白色粉末として純粋204e(mg、88%)が得られた。
Figure 2009528292
EI−MS:[M+1]C2628NOSについての計算値:434.2;実測値:434.2。
化合物207a。不活性雰囲気中で、化合物204a(28.5mg、0.045mmol)を1.5mLのCHC1中に溶解させた。その後、トリエチルシラン(28μL、0.18mmol)、およびトリフルオロ酢酸(1.5mL)を連続的に加えた。2時間後、溶媒を真空下で除去し、結果として生じた残留物は1時間にわたり高真空ポンプ上に置いた。残留物を1.5mLの無水DMF中に再懸濁させ、これに化合物206(22.8mg、0.045mmol)を加えた。室温の窒素雰囲気下で一晩攪拌した後、反応液を1%のHCl水溶液でクエンチし、酢酸エチルを用いて洗浄した。有機相をMgSOの上方に通して乾燥させ、真空下で濃縮し、カラムクロマトグラフィ(EtOAc−ペンタン、1:5、次に2:1)によって精製すると、黄色油として純粋207a(22.2mg、63%)が得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1]C3654についての計算値:784.3;実測値(MALDI):784.3。
化合物207b。化合物207bは、前駆体としての204bを用いて207aについて上述したように合成すると、収率67%で得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1]C3246についての計算値:728.2;実測値(MALDI):728.2。
化合物207c。化合物207cは、前駆体としての204cを用いて207aについて上述したように合成すると、収率72%で得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1]C2838についての計算値:672.1;実測値(MALDI):672.2。
化合物207d。化合物207dは、前駆体としての204dを用いて207aについて上述したように合成すると、収率65%で得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1]C2430についての計算値:616.1;実測値(MALDI):616.1。
化合物207e。化合物207eは、前駆体としての204eを用いて207aについて上述したように合成すると、収率68%で得られた。
Figure 2009528292
MS(m/z):[M+1]C2226についての計算値:588.1;実測値(MALDI):588.1。
化合物206および208。化合物206および208の合成および特性解析については以前に記載されている(Jonesら、J.Am.Chem.Soc.128:6526−6527(2006)。化合物206。
Figure 2009528292
コンジュゲート207a〜eからのルシフェリン遊離についての細胞アッセイ。細胞培養中の取り込みおよび遊離を試験するために、様々な濃度のルシフェリン(201)およびコンジュゲート(207a〜e、208)を細胞とともに別個にインキュベートした。測定を容易にするため、そして取り込みを最高化しないために選択した1分間のインキュベーション時間後に、あらゆる細胞外ルシフェリンもしくはコンジュゲートを除去するために細胞を洗浄し、電荷結合素子カメラ(IVIS100、Xenogen Corp.社、カリフォルニア州アラメダ)を用いて時間の関数として生じた光子数を分析した。遊離ルシフェリンの細胞内遊離および細胞内ルシフェラーゼによるその代謝回転の尺度である発光シグナルの量は、濃度に比例しており(データは示していない)、典型的取り込み曲線は図13に示した。207a〜cを用いてパルスした細胞からの発光シグナルは、徐々に減衰しておよそ15分後にバックグラウンド値に達した(図13)。207d〜eで処置した細胞は相違する曲線を生成し、その形状はルシフェリンに類似しており、207a〜cについて見られるものに比較してより少ない初期光、より緩徐な減衰速度を伴い、全光子のほんの一部分しか生成しなかった(図13)。化合物が適用されたビヒクルにわずかな変化を加えて、以前に記載された方法にしたがった(Jonesら、J.Am.Chem.Soc.128:6526−6527(2006))。ルシフェラーゼPC3M−lucによって安定にトランスフェクトされた前立腺癌細胞系は、アッセイ前の12時間にわたり96ウエルの平底プレート内で1ウエルに付き60,000個の細胞でプレーティングした。細胞は、様々な濃度のHepes緩衝食塩水(HPS)(pH7.4)中で1分間にわたり、ルシフェリンのカリウム塩(Xenogen Corp.社、カリフォルニア州アラメダ)もしくは脂質化カーボネート207a〜eのいずれかと1分間にわたりインキュベートした。各ウエル中で最終濃度10μMの試験化合物を得るために、化合物が水性緩衝剤中では不溶性であるために、化合物はDMSO中で投与した。DMSOの全濃度は、全部でウエル内で2%未満に維持した。インキュベーション後に細胞を洗浄し、適切な緩衝剤を用いて再懸濁させ、生じた発光は電荷結合素子カメラおよびLiving Imageソフトウエア(IVIS200、Xenogen Corp.社、カリフォルニア州アラメダ)を用いて測定した。図13は、様々な長さの脂質尾部を備える脂質化トランスポーターについての細胞取り込み実験(1分間のパルス、濃度:10μM)の結果を示している。図13に示した化合物は、次のとおりである:7aは、化合物207aである;7bは、化合物207bである;7cは、化合物207cである;7dは、化合物207dである;7eは、化合物207eである;8は、化合物208である。
動物実験:脂質化トランスポーターの皮膚取り込み実験の結果は、図14Aおよび図14Bに示した。適用方法における再現性を保証するために、100%のPEG(400)中の各コンジュゲートの15μLの5mmol溶液を標準ピペットチップ(1〜20μLのサイズ)から調製した皮膚表面に投与すると、適用面積の再現性制御を提供した(実施例7を参照されたい)。サンプルについてのこれ以上の操作は実施しなかったので、これにより方法における摩擦から生じるであろうグローブもしくはガラス棒へのサンプルの可変性消失が回避される。本方法は、標準セットの投与条件下で試験したコンジュゲートの性能比較を許容した。本方法を用いた取り込み性能は再現性であるが、最小限である。治療適用のために、方法において摩擦を使用してより大きな面積にわたる投与は、より大きな取り込みを生じさせるであろう。全実験は、完全な角質層再増殖に起因する優れた再現性を提示することが証明されている毛皮除去の5日後および12日前に実施した(実施例7を参照されたい)。陽性コントロールとして、75%のPEG400および25%の1mmolのNaOAc(pH=6.0)のルシフェリン208のポリアルギニンコンジュゲートを使用した(実施例7)。ラウリル酸コンジュゲート(207b)を用いて処置したトランスジェニックマウスは、より多い初期光、初期30分間にわたって同様に増加するシグナル速度およびより迅速な減衰率を備える相違する曲線を生成した(図14A)。オクタン酸コンジュゲート(207c)からのシグナルはポリアルギニンコントロール208に類似しており、これはシグナルのわずかに緩徐な速度が初期25分間において増加し、その後35分間にわたり安定性のシグナル生成が続いた。細胞データと一致して、コンジュゲート207d〜eは、207a〜cについて見られるものに比較した場合に全光子のほんの一部分しか生成しなかった。皮膚内へのトランスポーター媒介性侵入とは無関係に既知量のルシフェリンから生成された光子数は、以前に皮内注射およびキャリブレーション実験から決定した(実施例7を参照されたい)。このデータを使用して、相違する長さの脂肪酸を有するルシフェリンの局所投与された脂質化トランスポーターコンジュゲート(207a〜e)によって送達および遊離されたルシフェリンの量を決定し、そしてそれらを同一アッセイにおいて、多数の薬剤についての治療活性のために必要とされるよりはるかに高い、以前に1時間に299nMのルシフェリンを送達することが証明されているポリアルギニントランスポーター(208)と比較した。208と比較して、パルミチン酸(207a)およびラウリン酸(207b)トランスポーターコンジュゲートは、同一の1時間という時間枠で各々1.7倍および1.5倍多いルシフェリンを送達することができた(図14Bを参照されたい)。治療適用のために、遊離ルシフェリンから結果として生じるシグナル面積の読み出し値はコンジュゲートの適用面積より大きく、それは経時的に増加したので、これは本コンジュゲートが角質層を越えた通過後に内側および側方へ移動したことを示している。動物実験のためには、上記の実施例7において上述した方法を使用した。等モル濃度の各化合物はUV吸収に基づいて調製し、実験前にそれらの純度を決定した。動物は、実験の5〜10日間前に、Nair(登録商標)を用いて処置した。各化合物の15μLの5mmol溶液のアリコートは、100%のPEG(MW=400)ビヒクルを用いて各動物(動物1匹に付き2スポット)に適用した。各実験の終了時に、サンプルを動物から除去し、その純度を決定した。遊離ルシフェリンの存在は、サンプルのいずれにおいても観察されなかった。
本明細書に特定する引用によって言及した全刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
上記の発明は、明確に理解する目的のために例示および実施例によって詳細に記載されているが、当業者には所定の小さな変化および変更が実施されることは明白である。したがって、明細書および実施例は、本発明の範囲を限定すると見なすべきではない。
トランスポーターポリマーと結合させるためのジスルフィド活性化物質を調製するための合成経路を示した図である。 ジスルフィド活性化物質とトランスポーターポリマーとの結合を示した図である。 コンジュゲートの加水分解および脱カルボキシル化の結果として生じる反応生成物、およびコンジュゲートのジスルフィド開裂の結果として生じる反応生成物を示した図である。 5mMのMgSO、200mMのNaCl、20mMのHEPES、1mMのEDTA、1mMのDTT、2mMのATP(pH7.4)中の100ngのホタルルシフェラーゼへ既知量のルシフェリンを添加した結果として生じた発光の標準曲線を示した図である。総曲線下面積(AUC)の単位は、光子である。パーセンタイル値は、最高用量のルシフェリンへ標準化した光量を表している。 図2Aにおける条件についてのルシフェリン濃度と相対発光との関係を示した図である。濃度の対数をルシフェリン濃度の対数の関数としてプロットすると、線形関係が観察された。 カーボネート5bおよび5cがルシフェラーゼと混合された結果として生じた発光を示した図である;カーボネート5bおよび5cの1μM溶液が5mMのMgSO、200mMのNaCl、20mMのHEPES、1mMのEDTA、1mMのDTT、2mMのATP(pH7.4)中の100ngのホタルルシフェラーゼと混合された。総曲線下面積(AUC)の単位は、光子である。 図3Aのコンジュゲートがホタルルシフェラーゼへの曝露前に20分間にわたり1mMのDTTを用いてプレインキュベート(還元)された結果として生じた発光を示した図である;発光のプロフィールはルシフェリンについて所見されるプロフィールに類似しており、両方のコンジュゲートについて等しい光量が生成された。 HBS中もしくはK+HBS中のいずれかで、25μMのルシフェリン(6)もしくは15μMの放出可能なルシフェリンコンジュゲート5bもしくは5cを用いて処置されたルシフェラーゼ(PC3M−luc)によって安定にトランスフェクトされた前立腺癌細胞系由来の生物発光のリアルタイム測定を示した図である。 HBS中もしくはK+HBS中のいずれかで、25μMのルシフェリン(6)もしくは15μMの放出可能なルシフェリンコンジュゲート5bもしくは5cを用いて処置されたルシフェラーゼ(PC3M−luc)によって安定にトランスフェクトされた前立腺癌細胞系由来の全発光を示した図である。 ルシフェリン−放出可能なリンカー−トランスポーター−コンジュゲートの実施形態についての輸送および放出イベントの提案順序を示した図である。細胞は、ルシフェラーゼについての遺伝子で安定にトランスフェクトされている。細胞内への侵入後に放出される遊離ルシフェリンは、ルシフェラーゼと反応して、測定可能な光子を生成できるので、細胞内への取り込みおよび放出のリアルタイム定量を可能にする。 トランスジェニック(FVB−luC+)マウスへのHBS(pH7.4)中のルシフェリンの皮内注射後に結果として生じた生物発光を示した図である。ルシフェラーゼを発現するマウスに200nMのルシフェリンを注射すると、20nMに比して約10倍の光量が観察された;図6Aを参照されたい。200nMについての曲線下面積は3.02×1010個(光子)であったが、20nMについては3.11×10個(光子)であった(10.24%)。線形にプロットすると、生物発光は最初の30分間にわたり高速で減少する;図6Bを参照されたい。プロットは、別個の動物における3回の注射の平均値である。 トランスジェニック(FVB−luC+)マウスへのHBS(pH7.4)中の100μLの200nMのコンジュゲート5bの皮内注射後に結果として生じた生物発光を示した図である。2匹の相違する動物についての発光のパターンが示されている。曲線下面積は、2.54および2.01×1010個(光子)である。 皮内への遊離ルシフェリンの取り込みを示した図である。脱毛処置の直後の取り込みは大きく可変性であるが、角質層が自然に再建されるにつれて経時的に非有意なレベルに減少する。図は、Nair(商標)を用いた処置後の様々な時点に、ビヒクルである200mMのNaOAc(pH=6.0)中の15μLの5.5mMのルシフェリンの局所適用後に観察される全発光を示している。 緩衝および非緩衝コンジュゲート5cから結果として生じた生物発光を示した図である;非緩衝溶液中のコンジュゲート5cのトリフルオロ酢酸塩の固有の酸性度は、生物発光の減少を生じさせる。この図は、コンジュゲートが緩衝(黒い四角)もしくは非緩衝(白い四角)ビヒクル中で適用された場合に観察される示差的生物発光を示している。コンジュゲート5c(2mM)は、25%の水/75%のPEG400もしくは25%の200mMのNaOAc(pH=6.0)/75%のPEG400のどちらかで適用された。 ルシフェラーゼトランスジェニックマウスから、75%のPEG400/25%の200mMのNaOAc(pH=6.0)中の15μLの5mMのコンジュゲート5b(黒い四角)および5c(白い四角)の局所適用後の時間の関数として観察された生物発光を示した図である。 ルシフェラーゼトランスジェニックマウスから、75%のPEG400/25%の200mMのNaOAc(pH=6.0)中の15μLの2mMのコンジュゲート5c(黒い四角)およびリシンコンジュゲート5d(白い四角)の局所適用後の時間の関数として観察された生物発光を示した図である。 指示した化合物を用いた20分間のパルスで、429卵巣癌細胞系のGI50(nM)についてのアッセイを示した図である。細胞を20分間パルスし、洗浄し(2回)、そして新鮮培地中で72時間インキュベートした。各化合物について、429細胞、429T細胞、および429TP細胞について(左から右へ)3本の棒が示されている。GI50値(nM)は次のとおりである:「C2 Ester5 r8」(化合物62)と標識された棒の第1群については、12(429)、420(429T)、101(429TP);「C2 carbon5 r8」(化合物55)、47(429)、781(429T)、216(429TP);「C7 Ester5 r8」(化合物67)、125(429)、225(429T)、93(429TP);Taxol(DMSO中)、147(429)、15802(429T)、8485(429TP)。 様々な長さの脂質尾部を備える脂質化トランスポーターについての実施例10の細胞取り込み実験(1分間のパルス、10μM濃度)の結果を示した図である。図13に示した化合物は、次のとおりである:7aは、実施例10の化合物207aである;7bは、実施例10の化合物207bである;7cは、実施例10の化合物207cである;7dは、実施例10の化合物207dである;7eは、実施例10の化合物207eである;8は、実施例10の化合物208である。 様々な長さの脂質尾部を有する脂質化トランスポーターの取り込みを示した図である。 局所投与された脂質化トランスポーターコンジュゲートにより送達かつ放出されたルシフェリンの量の棒グラフ表示である。化合物は、図13の説明文に記載の番号によって表示されている。 本発明のリンカーを用いたシクロスポリンA−脂質コンジュゲートを示した図である。 本発明のリンカーを用いたシクロスポリンA−脂質コンジュゲートを示した図である。

Claims (50)

  1. 生物学的障壁を越えてカーゴ分子を輸送するための組成物であって:
    カーゴ分子;
    トランスポーター分子;ならびに
    カーゴ分子およびトランスポーター分子を共有結合する、式:
    Figure 2009528292
    (式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;
    Wは、−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)、−−P(=O)(−O)−、もしくは−S(=O)−であって、Mはカチオンの1つの等価物であり;
    Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり;brは、1〜4までの整数であり、R基上の「分枝鎖」の数を示している)の放出可能なリンカー
    を含む組成物、またはそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体。
  2. brは、1である、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記放出可能なリンカーは、式:
    Figure 2009528292
    のリンカーである、請求項2に記載の組成物。
  4. 前記カーゴ分子は、生物活性分子およびレポーター分子からなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
  5. 式(I):
    Figure 2009528292
    (式中、Carg−Nuはカーゴ分子「Carg−NuH」の残基を表し;そしてTransp−Sは、トランスポーター分子「Transp−SH」の残基を表す)の請求項3に記載の組成物、またはその任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体。
  6. VはOである、請求項5に記載の組成物。
  7. VはNHである、請求項5に記載の組成物。
  8. VはCHである、請求項5に記載の組成物。
  9. VはSである、請求項5に記載の組成物。
  10. は、C−Cアルキルである、請求項5に記載の組成物。
  11. VはOである、請求項10に記載の組成物。
  12. は、−CHCH−である、請求項11に記載の組成物。
  13. は、−CHCHCH−である、請求項11に記載の組成物。
  14. は、−CHCHCHCH−である、請求項11に記載の組成物。
  15. −Nu−は、−O−、−NH−、−NR−、もしくは−S−である、請求項11に記載の組成物。
  16. Carg−Nuは、レポーター分子の残基である、請求項5に記載の組成物。
  17. 前記レポーター分子の残基は、ルシフェリンの残基である、請求項16に記載の組成物。
  18. Carg−Nuは、生物活性分子の残基である、請求項5に記載の組成物。
  19. 前記生物活性分子は、薬物、治療薬、および診断薬からなる群から選択される、請求項18に記載の組成物。
  20. 前記生物活性分子の残基は、パクリタキセルの残基である、請求項18に記載の組成物。
  21. 前記組成物は:
    Figure 2009528292
    Figure 2009528292
    およびその任意の立体異性体、塩、もしくは溶媒和物からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物。
  22. 前記生物活性分子の残基は、C2’ヒドロキシルもしくはC7ヒドロキシルいずれかで結合したシクロスポリンの残基である、請求項18に記載の組成物。
  23. r8−Cys−S−S−(CHCHCH)−C(=O)−O−CH−O−C(=O)−OCsA、および
    r8−Cys−S−S−(CHCHCHCH)−C(=O)−O−CH−O−C(=O)−OCsA(式中、r8−Cys−S−は、アセチル−D−Cys−(D−Arg)−NHの残基を表し、−OCsAはシクロスポリンAの残基を示す)ならびにそれらのすべての塩、溶媒和物、および立体異性体からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
  24. カーゴ分子「Carg−NuH」と式「Transp−SH」のチオール基を有するトランスポーター分子とのコンジュゲートを作製する方法であって、化合物Carg−NuH、アニオンCarg−Nu(−)、もしくは塩Carg−Nu(−)M(式中、−NuHもしくは−Nu(−)は求核成分であり、Mはカチオンの1つの等価物である)を式:Y−W−Y(式中、YおよびYは離脱基であり、同一であっても相違していてもよく、Wは−(C=O)−、−P(=O)(−OH)−、−−P(=O)(−O)−、−−P(=O)(−O)−、−−P(=O)(−O−PG)−(式中PGは保護基である)、もしくは−S(=O)−である)の化合物と反応させ、式:
    Carg−Nu−W−Y1 (IIA−gb)
    の化合物を形成する工程と;
    式(IIIA−gb):
    Figure 2009528292
    (式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;
    Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;Rは、C−Cアルキルであり、このときbrは1〜4の整数であり、R基上の「分子鎖」の数を示しており、
    TLGSはチオール離脱基安定剤である)の化合物を、式:Transp−SHのチオール基を有するトランスポーター基と反応させ、式(IVA−gb):
    Figure 2009528292
    の化合物を形成する工程と;
    化合物(IIA−gb)を化合物(IVA−gb)と反応させ、式(Igb):
    Figure 2009528292
    のコンジュゲートを形成する工程、
    を含む方法であって、
    Wが−−P(=O)(−O−PG)−である場合は、保護基をリン酸塩から除去する追加の工程が実施される、方法
  25. brは1である、請求項24に記載の方法。
  26. 式(IIg):
    Figure 2009528292
    (式中、Rは、任意に置換されたC−C炭化水素基、式:−CH−O−(C=O)−C−Cヒドロカルビルの任意に置換された基、もしくは任意に置換されたC−Cヘテロ鎖基であり;
    Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;
    TLGSはチオール離脱基安定剤であり;および
    は、C−Cアルキルである)の化合物を式:Y−(C=O)−Yの活性化試薬と反応させ、式(IIIg):
    Figure 2009528292
    (式中、YおよびYは離脱基であり、同一であっても相違していてもよい)の化合物を形成する工程と;
    式(IIIg)を式:Carg−NuH、アニオンCarg−Nu(−)、または塩Carg−Nu(−)M(式中、−NuHもしくは−Nu(−)は求核成分であり、Mはカチオンの1つの等価物である)の求核分子と反応させ、式(IVg):
    Figure 2009528292
    の化合物を形成する工程と:
    および(IVg)をTransp−SHと反応させ、式(I):
    Figure 2009528292
    のコンジュゲートを形成する工程とを含む、請求項24に記載の方法。
  27. VはOである、請求項26に記載の方法。
  28. VはNHである、請求項26に記載の方法。
  29. VはCHである、請求項26に記載の方法。
  30. VはSである、請求項26に記載の方法。
  31. は、C−Cアルキルである、請求項26に記載の方法。
  32. VはOである、請求項31に記載の方法。
  33. は、−CHCH−である、請求項32に記載の方法。
  34. は、−CHCHCH−である、請求項32に記載の方法。
  35. は、−CHCHCHCH−である、請求項32に記載の方法。
  36. −NuHは、−OH、−NH、−NHR、もしくは−SHである、請求項26に記載の方法。
  37. −Nu(−)は、−O(−)、−NH(−)、−NR(−)、もしくは−S(−)である、請求項26に記載の組成物。
  38. は、Li、Na、K、Mg+2、もしくはCa+2である、請求項26に記載の方法。
  39. TLGSは:
    Figure 2009528292
    を含む群から選択される、請求項26に記載の方法。
  40. 前記カーゴ分子は、siRNA、miRNA、およびshRNAからなる群から選択される、請求項1に記載のコンジュゲート。
  41. 前記カーゴ分子は、siRNA、miRNA、およびshRNAからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
  42. トランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートを細胞取り込みおよび細胞内遊離についてアッセイする方法であって:
    細胞もしくは組織サンプルをある期間にわたってトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートと接触させる工程であって、該リンカーは請求項1に記載のリンカーであり、該カーゴはレポーター分子である工程と;および
    該細胞もしくは組織内に輸送されているカーゴを検出する工程であって、それにより輸送を実行する際のトランスポーターの有効性が決定される工程とを含む方法。
  43. トランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートを細胞取り込みおよび細胞内遊離についてアッセイする方法であって:
    細胞もしくは組織サンプルをある期間にわたってトランスポーター−リンカー−カーゴコンジュゲートと接触させる工程であって、該コンジュゲートは請求項5に記載のリンカーであり、該カーゴはレポーター分子である工程と;および
    細胞もしくは組織内に輸送されているカーゴを検出する工程であって、それにより輸送を実行する際のトランスポーターの有効性が決定される工程とを含む方法。
  44. 前記カーゴは、ルシフェリンである、請求項43に記載の方法。
  45. 前記コンジュゲートの「Transp−S」部分は、脂質を含む、請求項5に記載の組成物。
  46. 前記脂質は、脂肪酸を含む群から選択される、請求項45に記載の方法。
  47. 前記脂質トランスポーターは、式:
    Figure 2009528292
    のリンカーである、請求項46に記載の組成物。
  48. 前記カーゴは、シクロスポリンAである、請求項46に記載の化合物。
  49. 式:
    Figure 2009528292
    からなる群から選択される、請求項48に記載の組成物、およびそれらの任意の塩、溶媒和物、もしくは立体異性体。
  50. 式:
    Figure 2009528292
    (式中、Vは、O、NH、NR、CH、CHR、C(R、もしくはSであり;およびjは、1〜8から選択される整数であるか;
    または
    Figure 2009528292
    (式中、kは、0〜8から選択される整数である)の請求項5に記載の組成物。
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