JP2009525743A - キシロースでのトランスジェニックブラシカ・ユンセアの選択及び再生方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、単一の炭化水素源としてキシロースを利用するその能力に基く、遺伝的に形質転換されたブラシカ・ユンセア外植片を選択する方法に基いて、ブラシカ形質転換体の再生の改良法を記載する。本発明は、酵素キシロースイソメラーゼの発現用の構築ベクターを用いる標的宿主植物のアグロバクテリウム介在形質転換のプロセスを包含する。炭素源としてキシロースを利用する代謝的利益を得るために、前記ベクターでの形質転換の後の、推定的形質転換体の選択法も開示される。本発明は、ネガティブセレクション法の欠点を軽減する。選択のためにキシロースイソメラーゼを用いる34〜40%の安定な形質転換効率が報告される。

Description

発明の分野
本発明は、単一の炭水化物源としてキシロースを利用するその能力に基いて、遺伝子的に形質転換されたブラシカ・ユンセラ外植片を選択する方法に基く、ブラシカ形質転換体の再生の改良法を記載する。本発明は、酵素キシロースイソメラーゼの発現のための構築されたベクターでの、標的宿主植物のアグロバクテリム介在形質転換法を包含する。炭素源としてキシロースを利用する代謝的利点を得るために、前記ベクターでの形質転換に続く推定的形質転換体を選択する方法も開示される。本発明は、ネガティブセレクション法の欠点を補う。選択のためにキシロースイソメラーゼを用いて34〜40%の安定な形質転換効率が報告される。
発明の背景
トランスジェニック植物の生産は、通常、成功的に形質転換された細胞の再生及び成長を可能にする選択系の使用を必要とする。対象のヌクレオチド(NOI)又は対象の遺伝子(GOI)が形質転換によって細胞集団に導入されなければならない時に、ある細胞数のみは、成功的に形質転換される、すなわち、わずかな細胞のみがNOI又はGOIを受け入れる。形質転換された細胞は、形質転換されないままの大多数の細胞に対して、処理された細胞の小分画を構成するので、選択系は、特に形質転換率が必ず低い(10-3〜10-6)ので、選択剤の存在下でトランスジェニック植物を回収する可能性がその非存在下よりも大きいように、成功的に形質転換された細胞を選択する再に効率的なスクリーニングを可能にしなければならない。
選択法は、対象の遺伝子と共に選択マーカー遺伝子を導入することによって開始される。形質転換プロセスにおけるこの種の選択マーカー遺伝子の使用は、形質転換された細胞に対してそれらをより速く、より成功的に成長させるという選択的利点を与え、及び非-形質転換細胞を殺すことを目的としている。
理想的な選択マーカー遺伝子は、任意の細胞又は組織、及び非常に多数の植物種において発現できなければならない。この表現は、植物組織における任意の内因性活性とは容易に識別されるべきであり、それによって、形質転換組織の表現型と非-形質転換組織の表現型とを識別することができる。再生ステップの間に、形質転換細胞に対する、死にかかっている非-形質転換細胞によって奏される影響は、選択的培地では最小であるべきである。上記に加えて、簡便なアッセイは、マーカーの存在を確認できるべきである(ACNFP, 1994)。
今日、特定されている選択マーカーは、トランスジェニック植物又は細胞を形質転換後に同定させる2種に分離される。それらは、それぞれ、選択的利点又は欠点を与えるポジティブマーカー及びネガティブマーカーである。ネガティブセレクションは、導入されたDNAを含まず、かつ選択に基いて抗生物質及び除草剤を含む、細胞を殺す。それらは、抗生物質又は除草剤の存在下に成長するその能力によって、形質転換細胞又は組織外植片の選択を可能にする。
これまで、ほとんど広く使用されてきた選択性遺伝子は、アミノグリコシド、抗生物質カナマイシン、ネオマイシン及びG418 (Bevan et al. 1983) に耐性を与える、ネオマイシン・ホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子 (Fraley et al.1986) である。多数の他の選択系は、ブレオマイシン (Hille et al. 1986)、ブロモキシニル (Stalker et al. 1988)、クロラムフェニコール (Fraley et al. 1983)、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸 (Streber and Willmitzer 1989)、グリホサート (Shah et al. 1986)、ハイグロマイシン (Waldron et al. 1985) 又はホスフィノスリシン (De Block et al. 1987) に対する耐性に基いて開発された。
ネガティブセレクション法は、抗生物質及び除草剤の使用に依拠し、多数の欠点があった。抗生物質の毒性から死ぬ植物細胞は、成長阻害剤及び毒素を放出し、それらは、形質転換細胞に負の影響を与え、その成長を阻害すると考えられる (Haldrup et al.1988a)。非-形質転換細胞は、植物に有害な物質の存在下に死に、そして粘着性組織が使用される場合には、形質転換細胞も死ぬ危険性がある。それは、非-形質転換細胞の死が形質転換細胞に栄養供給を打ち切ることがあるという事実に因り、あるいは損傷された又は死にかかっている非-形質転換細胞が毒性化合物を分泌することがあり、それによってネガティブ系の形質転換効率を限定するからである。更に、ネガティブセレクションを用いる細胞又は組織の選択は、選択プロセスに関連して、導入された遺伝子の発現の正確なタイミングを必要とする。解毒遺伝子が発現される前に、又は毒性化合物の作用を緩和するために十分な遺伝子産物が産生される前に、トランスジェニック細胞が毒性化合物で処理される場合に、トランスジェニック細胞及び非-トランスジェニック細胞は死ぬ。選択が遅れる場合には、トランスジェニック細胞又は組織の選択は、例えば、形質転換細胞を選択するために使用される化合物の侵入に対するバリアを形成する、非-トランスジェニック細胞又は組織からの発芽又はカルス形成、によって妨害されることがある。それは、DNAメチル化においてゲノムの広い改変を起こす (Schmitt et al. 1997)。この非-可逆的現象は、遺伝子サイレンシングをもたらし、トランスジェニック細胞の選択及び植物再生プロセスを妨害すると考えられる。メチル化での変化は、容量依存的であり、配列変異をもたらすことがある (Bardini et al.2003)。
取り込まれた植物中の抗生物質耐性遺伝子の存在は、腸内微生物に抗生物質耐性を与える遺伝子の潜在的移動である重要な関心事に対する環境的関心事の問題である。原核生物が起源である抗生物質耐性マーカー遺伝子と、レシピエントのDNAとの間のホモロジーは、原核生物が起源である腸内微生物に見られる可能性が高い。そのため、マーカー遺伝子の統合及び発現の可能性は、腸上皮細胞においてよりも腸内微生物において高い。稀な移動事象は、選択的圧力の下で非常に急速に増福され得る。臨床的に重要な抗生物質に対して耐性を与える遺伝子が、該抗生物質で一般的に処理された病原微生物中に移動、発現される場合には、健康的な影響は重要になるだろう。このような生態的関心事は、トランスジェニック植物における抗生物質耐性遺伝子の使用に政府による制限をもたらすことがあり、そのため、このような遺伝子とは無関係である新しい選択法を開発することが望ましい。欧州連合は、2004年末に有効なトランスジェニック植物細胞の選択用の抗生物質耐性遺伝子に対する禁止令を制定した。よって、任意の将来遺伝的に亢進される植物及びEUで販売される食品は、別の選択マーカーを含まなければならないだろう。選択マーカーとしての除草剤耐性遺伝子の使用に関してさえ、異系交配によってひ弱な作物類に耐性が移動する可能性がある (Rieger et al.1999)。
上記の関心事は、その操作原理がネガティブセレクションとは反対であるポジティブセレクションの方法によって、かなりの程度で解消される。ネガティブセレクションとは反対に、ポジティブセレクションは、選択剤として特定の炭素、窒素又は成長調節因子を用いて成長する能力を形質転換細胞に与える (Joersbo and Okkels 1996; Bojsen et al. 1998; Haldrup et al 1998a)。トランスジェニック細胞は、該細胞に代謝的利点を与える遺伝子を獲得するが、非-トランスジェニック細胞は、死ぬよりもむしろ枯れる。
本発明で採用される選択法は、多数の植物種によって代謝されない炭水化物であるキシロースである選択剤を使用する (Bojsen et al. 1994)。一般的に採用された炭水化物をこれらの化合物の1つと置換することによって、それを代謝可能な異性体に変換することができる酵素をコードする遺伝子で形質転換された細胞は、成長の点で好ましいが、非-トランスジェニック細胞は枯れる。それによって、形質転換細胞は代謝的利点を与える。キシロースは、この系の選択マーカーとして機能するキシロースイソメラーゼによってキシルロースに変換され得る (Haldrup 1996)。ポジティブセレクションのためのこれらのマーカー遺伝子は、非-形質転換細胞集団の損傷又は死を起こすことなく、遺伝的に改変された細胞の同定及び選択を可能にする(ネガティブセレクション)。再生プロセスの間に栄養源として培養培地中の新しい化合物の添加は、形質転換された細胞の通常の成長及び分化を可能にするが、非-形質転換細胞は、denovo植物を成長させ又は再生することができないだろう。
一般的に知られている抗生物質耐性遺伝子又は除草剤耐性遺伝子のいずれかを利用しない選択法を採用する、トランスジェニック・ブラシカの作製法は、本発明に開示されている。ブラシカ・ユンセア種の形質転換体を選択及び再生する方法が記載され、形質転換された組織外植片に、ある炭素源、好ましくはキシロースを利用する能力を与えることを含むポジティブセレクション法を具体的に説明し、そして、形質転換された外植片は、好ましい選択剤を含む培地にそれらを単に供することによって選択され得る。
先行技術は、選択マーカー遺伝子として、サーモアエロバクテリウム・サーモスルフロジェン(Thermoaerobacterium thermosulfurogene)の又はストレプトマイセス・ルビギノサス(Streptomyces rubiginosus)から単離されたキシロースイソメラーゼ遺伝子(xylA)を用いて開発されたポジティブセレクション法を記載する (Haldrup et al., 1998a)。ジャガイモ、タバコ及びトマトのトランスジェニック植物は、キシロース-含有培地で成功的に選択された。本明細書に開示された選択法は、引用された先行技術文献と識別できるくらい十分に明確である。我々の発明は、特に、ブラシカ・ユンセア種に属する形質転換された植物の外植片のポジティブセレクション法を目的としている。選択マーカー遺伝子は、生物キスゾチトリウム(Schizochytrium)から単離され、成功的な形質転換後に宿主植物でのその発現のために好適に改変されている。
先行技術:
出願された我々の先行出願は、単一の炭素源としてのキシロースを利用するその能力に基いて、形質転換法、及び遺伝的に形質転換されたヒマワリの外植片の選択法を記載している。
「マンノース又はキシロースポジティブセレクション」の名称の米国特許出願第5,767,378号は、少なくとも1つの化合物を含む培地上で又は該培地中で培養された真核細胞であって、形質転換の結果としての代謝的利点を有する細胞の細胞集団から同定又は選択する方法に関する。本発明は、形質転換された砂糖大根又はジャガイモの細胞を特異的に選択する根拠を提供する。上記の好ましい先行技術は、ブラシカ・ユンセアそれ自体のポジティブセレクションに関する我々の発明に対して、砂糖大根及びジャガイモの細胞におけるポジティブセレクションの記載されたプロトコールを請求する。形質転換のプロトコールは、全ての植物種について特有である。更に、本発明に記載された形質転換法は、引用された先行技術に比較して完全に異なっている。更に、どの文献も、ブラシカ・ユンセアにおけるポジティブセレクションに基づく形質転換法を記載していない。
Haldrup et al., 1998は、生物サーモナンアエロバクテリウム・サーモスルフロジェン(Thermonanaerobacterium thermosulfurogene)由来のキシロースイソメラーゼ遺伝子が、選択剤としてのD-キシロースを用いてトランスジェニック植物の選択を可能にする、ことを確立した(Plant Molecular Biology (1998), 37(2), 287-296)。キシロースイソメラーゼ遺伝子は、アグロバクテリウム介在形質転換によって標的植物に移動された。非最適化選択研究は、ジャガイモ及びトマトにおいて、キシロースイソメラーゼ選択が、カナマイシン耐性選択よりもより効率的であったが、タバコ植物では、反対の効果が観察された、ことを示した。
本明細書に開示された選択法は、引用された先行技術と識別できるくらい十分明確である。一般的に知られた抗生物質又は除草剤耐性遺伝子のいずれかを利用しない選択法を採用するトランスジェニック・ブラシカの改良作製法が記載されている。また、ブラシカ・ユンセア種の形質転換体を選択及び再生する方法が記載され、これは、形質転換された組織外植片に、ある炭素源、好ましくはキシロースを利用する能力を与えることを含むポジティブセレクション法を具体的に説明する。そして、形質転換された外植片は、好ましい選択剤を含む培地にそれらを単に供することによって選択され得る。本発明で使用される選択マーカー遺伝子は、海洋生物キスゾチトリウム(Schizochytrium)から単離され、更に該遺伝子は、宿主植物での遺伝子の発現のために好適に最適化されたコドンであった。一般的に使用されたhptハイグロマイシン系選択法に対して、キシロースイソメラーゼXIを用いて、3〜4倍の非常に多くの再生する苗木が観察された。上記のポジティブセレクションを用いて、一般的に用いられた抗生物質耐性又は除草剤耐性の選択マーカーと関連した問題が軽減され、また、35〜40%の安定な形質転換効率も報告されている。
発明の概要
本発明は、植物ブラシカ・ユンセア種を形質転換し、それによってキシロースを利用するポジティブセレクションの方法で形質転換体を選択する、改良方法に関する。本発明の第1の局面によれば、総RNAの単離法及びmRNAからのcDNAの合成法が提供される。一次cDNAライブラリーから無作為に選ばれたESTクローンは、PCR増福に供され、それによって、1481 bpのORFを有する完全長キシロースイソメラーゼ(xylA)cDNAをコードする1.5 kbのcDNAクローンの同定をもたらす。
更になお、本発明の更なる局面は、キシロースイソメラーゼの生物活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド分子に関する。具体的には、その局面は、配列番号3に記載のポリヌクレオチドに関する。本発明のポリヌクレオチド分子によってコードされるポリペプチドも提供される。
本発明の具体的な局面は、キスゾチトリウム(Schizochytrium)から得られたキシロースイソメラーゼと、シロイヌナズナとのホモロジー、及びpGEM-T Easyへのそのクローニングを記載する。
更なる局面によれば、キシロースイソメラーゼの配列は、9個のヌクレオチドを置換する複数部位変異導入法にクローンを供することによって最適化されたコドンであり、宿主植物における遺伝子の成功的発現である。1つの好ましい局面では、コドン-最適化遺伝子は、発現ベクターにクローニングされ、E.コリに形質転換され、実験は、キシロースイソメラーゼ遺伝子の転写及び翻訳を検出するための機能の証拠として行われた。キシロースイソメラーゼ遺伝子は、次いでpCAMBIAにクローニングされ、宿主植物ブラシカ・ユンセアに更に形質転換される。
本発明の非常に好ましい局面に従って、感染に好適な条件下で、宿主植物の外植片への選択マーカー遺伝子を含む構築されたベクターのアグロバクテリウム介在遺伝子移動、それによって、選択剤を含む好適な培地上で一緒に培養する時に、非-形質転換細胞を超える代謝的利点を形質転換細胞に与えるポジティブ効果で形質転換細胞を誘導することを記載する。
本発明の最も重要な局面によれば、本明細書には、培地由来の細胞集団から、少なくとも1つの遺伝的に形質転換された細胞を選択する選択系であって、少なくとも1つの遺伝的に形質転換された細胞が、培地中に存在する成分又は前駆体を変換することができる発現産物をコードするヌクレオチド配列で形質転換される、前記選択系が記載される。より具体的には、本発明において好ましい選択的成分はキシロースである。用語「細胞」は、それから、個々の遺伝的に形質転換された細胞が本発明の方法を用いて同定及び単離され得る、任意の種類の細胞を意味する。
開示された形質転換法から報告された形質転換効率は34-40%であり、再生効率は、公知のハイグロマイシン系の方法よりも3〜4倍高かった。
発明の詳細な説明
用語「選択マーカー遺伝子」は、対象の遺伝子で好ましくは同時-導入される任意のヌクレオチド配列であって、選択的利点は、前記選択マーカー遺伝子で形質転換された細胞に与えられる、前記ヌクレオチド配列を意味する。
用語「マーカー化合物」又は「選択剤」は、成功的に形質転換された細胞のみが代謝することができ、それによって、選択マーカー遺伝子の形質転換及び発現により、非-形質転換細胞を超えて形質転換細胞の選択を可能にする、化合物又は栄養素である。
本明細書で用いられる用語「選択的利点」は、用語選択的な、代謝的及び生理学的な利点を含み、そして、形質転換された細胞が不利な条件に置かれた(非-形質転換)細胞よりも非常に速く成長することができることを意味するか、不利な条件に置かれた細胞が利用できない基質(例えば、栄養素前駆体等)を有利に利用することができることを意味する。
用語「選択すること」は、本発明の方法を用いて非-遺伝的に形質転換された細胞から遺伝的に形質転換された細胞を同定及び/又は単離するプロセスを意味する。
用語「遺伝的に形質転換された」は、組換えDNA法を用いる形質転換を含む。用語「ベクター」は、発現ベクター及び形質転換ベクターを含む。
実施例 1
スラウストキトリウム株SC-1由来のキシロースイソメラーゼのクローニング
総RNAは、キスゾチトリウムSC-1の3日間培養物から単離し、スラウストキトリウムは、ゴア(Goa)の逆流から単離した。cDNAは、スーパースクリプトRnase (GibcoBRL)を用いてmRNAから合成した。cDNAは、pSPORT1ベクターのNotI-SalI部位にクローニングし、E.コリ DH10Bに形質転換した。
一次的cDNAライブラリーは、2 x 106クローンからなるが、増幅されたライブラリーは、2 x 1010 クローン/mlの力価を有する。ESTクローンを無作為に選択し、インサートをSP6及びT7プライマーで増幅した。2000 cDNAクローンの5'末端を無作為に選択し、T7プライマーでシークエンスした。SC-1のcDNAライブラリー由来のクローンの5'末端シークエンシングは、158bpの5' UTR及び30 bpの 3' UTRを有する1511 bpの完全長キシロースイソメラーゼ(xylA)cDNAをコードする1.5 kbのcDNAクローンの同定をもたらした。それは、1481 bpのORFを有する。
CDSの配列は、配列番号1で示される。それは、SC-1の完全長キシロースイソメラーゼ転写物の配列である。その配列は、440アミノ酸のタンパク質に翻訳される。翻訳されたタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号2に示される。それは、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のキシロースイソメラーゼと74%のホモロジーを示す。それは、完全なキシロースイソメラーゼドメインを含み、SC-1のキシロースイソメラーゼとして表される。SC-1デサチュラーゼの1.5 kb配列中の完全なキシロースイソメラーゼドメインの存在は、図1に示される。
図2は、SC-1からキシロースイソメラーゼドメインまでのモチーフのホモロジーを示す。
実施例 2
キシロースイソメラーゼのコドン最適化
SC-1のキシロースイソメラーゼ(xylA)配列は、植物でほとんど使用されないコドンを使用する;SC-1は、Argの植物コドンのたった9%がCGCである場合に、アルギニンをコードするためにCGCを主に利用する。従って、CGCコドンは、頻繁にかなり使用されるアルギニン用コドンと置換した。クローンは、植物への導入の前に、9つのヌクレオチドと置換する複数部位突然変異導入法の2ラウンドに供した。最適化配列は配列番号3で示される。
実施例 3
pGEX発現ベクターへのキシロースイソメラーゼのクローニング
コドン最適化遺伝子が転写及び翻訳することを確認するために、pSPORT1由来のコドン最適化SC-I XylA遺伝子を、BamHI部位を含むフォワードプライマー(5'GCGCGGATCCATGGGTGAATTCTTTC3')及びXhoI部位を含むリバースプライマー(5'GAAACTCGAGCTTGTCGATTAAGAAATGTATTGGTT3')で増幅した。増福されたPCR産物(1323)は、BamHI及びXhoIで消化した。pGEX-4T-3は、Tacプロモーターの制御下に、26-kDaグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)で融合タンパク質としてタンパク質を発現させるために使用した発現ベクターである。pGEX-4T-3は、BamHI及びXhoIで消化し、PCR産物(BamHI及びXhoIで制限処理)を2つの部位間に方向的にクローニングした−得られたクローンをpGEX-XIと呼んだ。pGEX-XIのマップを図3に示す。
E.コリにおけるキシロースイソメラーゼ融合タンパク質の発現
キシロースイソメラーゼ遺伝子を有するpGEX-XIをE.コリBL21に形質転換した。100 μg/mlのアンピシリンを含むLB培地上で、形質転換された細胞を選択した。コロニーを無作為に選択し、100 μg/mlのアンピシリンを含むLBで終夜生育した。100 μg/mlのアンピシリンを含む5 mlのLBブロスを接種するためのスターター培養として、1%のこれらの終夜培養物を使用した。O.D. 600が約0.6〜0.7になるまで、培養物を接種した。これらの培養物の各々2 mlを、3時間、1 mM IPTGでインキュベートした。同時に、2 mlの培養物を、誘導無しの対照としてペレット化した。細胞ペレットを100μlの試料バッファー中に再懸濁し、50 μlを10% SDS-PAGEゲル上に充填した。その誘導を図4に示す。
76 KDのタンパク質、すなわちGST-キシロースイソメラーゼ融合タンパク質の予想されたサイズは、クローン1及び2の誘導細胞において観察されたが、一方、非誘導細胞には存在しなかった。従って、コドン最適化キシロースイソメラーゼは、右のリーディングフレームにあり、転写及び翻訳されることができる。
E.コリにおけるキシロースイソメラーゼの機能の証拠
E.コリ株AB477 (proA2、his-4、aroC1、thi-1、lacY1、galK2、xyl-5、mtl-1、lambda supE44) は、キシロースイソメラーゼ(XylA)欠損である (Haldrup et al, 1998 & 2001)。変異体におけるキシロースイソメラーゼ遺伝子の相補性は、この株を利用及び生育させることができ、それによって、その機能を与える。E.コリ株AB477は、E.coli Genetic Stock Center, USAから得た。pGEX-4T-3におけるキシロースイソメラーゼ遺伝子は、1%(w/v) D-キシロースを含むマッコンキーアガープレート上にアンピシリン (100 μg/ml)と共に播種されたE.コリ株AB477のコンピテント細胞に形質転換された。XylA遺伝子を有する形質転換体は、D-キシロースを発酵することができ、キシロースを含むマッコンキーアガープレート上で赤色に見えた。
AB477宿主細胞、pGEX4T-3で形質転換された細胞、及びpGEX-XIで形質転換された細胞をアンピシリン (100 μg/ml) を含むマッコンキー培地、及びキシロース (1% w/v) 及びアンピシリン (100 μg/ml) を含む培地上にそれぞれ播いた。赤色コロニーは、キシロースを含む培地中で、pGEX-XIで得た、一方、pGEX4-T3を有する宿主細胞及びAB477は、該培地中では生育しなかった。従って、SC-1から単離されたコドン最適化キシロースイソメラーゼ遺伝子を翻訳し、機能性であった。
実施例 4
pCAMBIAへのキシロースイソメラーゼのクローニング
pCAMBIA-1301は、pPZPベクターに由来する。該ベクターは、CaMV35Sプロモーター下で、ハイグロマイシン・ホスホトランスフェラーゼ(hpt)を含み、CaMV35S polyAシグナルにより終結されている。該遺伝子は、形質転換された細胞がハイグロマイシン含有培地中で選択されるので、ハイグロマイシンへの耐性を与える。
pSPORT中のコドン最適化キシロースイソメラーゼ(XylA)遺伝子のORFを、XhoI部位を各々含む、フォワードプライマー (5' CTCTCTCGAGCAACCATGGGTGAATTCTTTCC 3') 及びリバースプライマー (5'GAAACTCGAGCTTGTCGATTAAGAAATGTATTGGTT 3') で増福した。増幅した断片をXhoIで制限処理した。hpt遺伝子を放出するために、pCAMBIA 1301をXhoIで同時に制限処理し、アガロースゲルから精製したベクターを増幅した断片にライゲートした。キシロースイソメラーゼクローン由来のORFの増幅、及びXhoIによるpCAMBIA-XIの制限処理を図5に示す。
ライゲーション混合物をDH10Bに形質転換した。形質転換されたコロニーを選択し、これらのコロニーから単離されたプラスミドをXIプライマーで増幅し、それをシークエンスした。よって、右方向及び右フレームにXI遺伝子を有する構築物を同定した。右フレームでクローニングされた遺伝子の配列を配列番号4に示す。
図6は、pCAMBIAベクターのフレーム内のSC-1の完全長最適化キシロースイソメラーゼ転写物の配列、及びhptのpCAMBIA-CO-XIのXIによる置換を示す。ベクターpCAMBIA130のXho-I部位間でクローニングされた、ハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼをコードするhpt遺伝子は、ハイグロマイシンの代わりに、コドン最適化キシロースイソメラーゼにより置換し、得られた構築物をpCAMBIA-XIと命名した。
実施例 5
ポジティブ選択マーカーとしてのキシロースイソメラーゼを用いるブラシカの形質転換
遺伝子材料が形質転換により細胞集団に導入されることになる時に、ある数の細胞が成功的に形質転換されることが知られている。形質転換細胞の同定及び選択は、典型的には、ネガティブセレクションを用いて実行されてきた。それによって、形質転換細胞は、薬剤を含む培地で生存することができ、分解することができるが、一方、非-形質転換細胞は該培地で死ぬ。ハイグロマイシンは、最も一般的に使用される抗生物質であるが、形質転換に使用される構築物中のハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hpt)は、抗生物質を含む培地で生育する形質転換細胞に対して耐性を与える。カナマイシン及び除草剤(ホスフィノスリシン)耐性は、ブラシカ形質転換体の選択のために使用される別のマーカーである。
これらのネガティブセレクション法は、ある欠点を有する。非-形質転換細胞は生育培地中の抗生物質の存在のために死ぬことがあるが、それらは該培地に形質転換細胞に阻害的でかつ毒性でもある毒素を放出する。更に、取り込まれた植物及び微生物中の抗生物質耐性遺伝子の存在は、環境グループ及び政府の権威の問題である。加えて、ネガティブセレクションを用いる細胞又は組織の選択は、選択プロセスに関連して、導入された遺伝子の発現の正確なタイミングを必要とする。トランスジェニック細胞が、解毒遺伝子が発現する前に又は十分な遺伝子産物が毒性化合物の作用を軽減する前に、毒性化合物で処理される場合には、トランスジェニック細胞、非-トランスジェニック細胞のいずれも死ぬ。選択が遅れる場合には、トランスジェニック細胞又は組織の選択は、例えば、形質転換細胞を選択するために使用される化合物の透過に対してバリアを形成する、非-トランスジェニック細胞又は組織由来の苗条又はカルスによって妨害されることがある。
上記の欠点は、集団中の非-形質転換細胞を損傷又は殺すことなく、及び抗生物質又は除草剤の耐性遺伝子を導入することなく、形質転換細胞を選択的に生育させることができるポジティブセレクションの方法によって、相当の程度、解消される。
多くの植物種は、キシロースを代謝する生得的能力を有さないので、キシロースが単一の炭素源である培地で生存できない。選択マーカーとしてのキシロースイソメラーゼを有する構築物を用いるこのような種の形質転換は、炭素源としてキシロースを利用する能力を形質転換細胞に与えることになる。
ブラシカ・ユンセアにおける形質転換及び選択
植物材料:
我々の研究のために、我々は、ブラシカ・ユンセア バール’バルーナ’(var. 'varuna')を使用した−145〜155 cmの植物高で、まっすぐで太く中程度に分岐を有するバラナシ地域からの選択。その葉は、サイズが中くらいで、濃緑色で、下方の表面は毛が薄くはえ、葉の支持体には紫色の色素が付いている。バルーナは、アルテルナリア葉枯れ病及びアブラムシに適度に抵抗性である。それは、栽培期間が様々であり(135〜140日間)、43%の油分(21%リノール酸)を含み、20〜22 qtls/haの収量を有する。
ブラシカ・ユンセア’バルーナ’の種子を70%アルコールで2分間、0.1%塩化第二水銀で5分間殺菌した。殺菌された種子を殺菌水で4〜5回激しく洗浄し、ブロッティングにより乾燥した。次いで、これらの種子を、組織培養ボトル(30〜40種子/ボトル)中で、0.8%アガーで凝固させた半強度ホルモン無しのムラシゲ・スクーグ培地(MS培地)で生育した。子葉が十分に広がり、胚軸は4〜5 cm長になるまで、苗は、25℃でBOD中で、2日間の暗及び3日間の明(16時間明るく、8時間暗い)の光周期で生育させた。様々な外植片をその再生効率について試験した。これらの中で、子葉柄外植片は、再生に最大の能力を有することが判明し、形質転換のために使用した。
子葉柄外植片の単離
5日齢の健康な苗を集め、苗の底部分を切断し、除いた。葉の根本的組織が含まれないように、子葉柄を、胚軸の接合点及び成長点のちょうど上の葉柄で切断することによって単離した。十分に「きれいな」切断面(すなわち、組織が切断されていない)で単離された葉柄がうまく反応するように、刃は鋭いことが重要である。苗当たりの2つの外植片は、それぞれ、3〜5 mmの葉柄の長さを有した。外植片を集め、更に使用するまで、培地中に浸漬した葉柄を含む共培養培地中で保存した。
実施例 6
炭素源としてキシロースを利用する能力のスクリーニング
ブラシカ・ユンセアが炭素源としてキシロースを用いることができるか否かを決定するために、外植片をスクロース及びキシロースをそれぞれ含む培地で培養した。100個の子葉柄の外植片を単離し、a) 炭素源が3.5%スクロース;b) 炭素源が3%キシロース;c) 3週間炭素源無しの、MS塩、0.2 mg/l NAA、2 mg/1 BAP及び8 g/l アガーを含む培地で培養した。3週間の最後に外植片に対する炭素源の効果を観察した。図7に示す。
炭素源としてキシロースを含む培地中で培養した外植片は、2〜3週間内に白くなるか又は茶色になるかし、そして枯れた。該培地中で炭素源の非存在下で生育した外植片は、青白く見え、非健康的であり、カルスを形成しなかったが、一方、スクロースを含む培地中で生育した外植片は、健康的でかつよく発達した。従って、ブラシカ・ユンセア子葉片の外植片は、炭素源としてキシロースを使用できるとは考えられない。
実施例 7
pCAMBIA-XIを用いるブラシカの形質転換
アグロバクテリムによるトランスフェクション
子葉柄外植片は、先に記載された5日齢の苗から単離した。htp遺伝子を有するバイナリーベクターpCAMBIA 1301を有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)株GV3101(ネガティブセレクション)、及びベクターpCAMBIA XIを有する株(ポジティブセレクション)を比較のために使用した。
細菌活性化:個々のベクターを有するアグロバクテリウムGV3101細胞を塩化カリウム 10 g/1、トリプトファン10 g/1、酵母抽出物 5 g/l、リファマイシン (10 μg/ml)、ゲンタマイシン (10 μg/ml) 及びカナマイシン (50 μg/ml) を含むルリア・ベルターニ(LB)培地で終夜生育し、28℃のシェーカーで4〜6時間急激に増殖させ、O.D600= 1.0に達した。細胞を4℃で10分間、6000 rpmで遠心し、洗浄し、MS塩及び30 g/lスクロースを含むMS液体に再懸濁して、A600が0.3〜0.5の細菌濃度に調整した。
感染:子葉外植片を選択し、葉柄の先端を浸漬し、アグロバクテリウム懸濁液に10〜15秒間維持し、その後直ちに、該培地に浸漬した葉柄を用いて共培養培地に移した。子葉は、共培養培地に移す前に、懸濁液に浸漬するべきではない(2 cmの深さのペトリ皿は、細菌懸濁液を保持するのに理想的である)。外植片は、暗期で、28℃で3日間共培養した。外植片を選択培地に移す前に(接種後72時間)、葉柄は伸びてかつ厚くなっているだろう。その後に、選択培地に葉柄を埋めることができるはずであり、培地中の子葉ラメラは透明になっているはずである。
実施例 8
選択及び再生:
ポジティブセレクション及び再生
共培養の3日後に、外植片を、MS塩、30 g/1 スクロース及び250 mg/1 セフォタキシムを含むMS液体で15分間完全に3回洗浄した。これらを殺菌フィルター紙でボトル乾燥させ、次いでMS塩、0.2 mg/l NAA、2 mg/l BAP、25 g/l D-キシロース、5 g/l スクロース、250 mg/l セフォタキシム、8 g/l アガーを含むpH 5.6の第1選択培地に移し、16時間明で8時間暗条件の光周期で4週間維持した。次いで、MS塩、0.1 mg/1 NAA、3 mg/l BAP、29g D-キシロース、1 g/1 スクロース、250 mg/l セフォタキシム、8 g/1 アガーを含むpH 5.6の第2選択培地にサブカルチャーし、更に3週間維持した。この期間中、多数の苗芽がカルスから発達した。選択期間後に、伸長のために、半強度MS塩、15 g/l スクロース、250 mg/l セフォタキシム、8 g/l アガーを含むpH 5.6の1/2MS培地に、苗をサブカルチャーした。2週間後に、伸長された苗条を、半強度MS塩、0.01 mg/1 IBA、30 g/l スクロース、150 mg/l セフォタキシム、 8 g/l アガーを含むpH 5.6の発根培地に移した。発根植物を2日間水中で硬くし、その後に土壌とバーミュキュライト(1:2)の混合物に移した。
ネガティブセレクション及び再生
培養の3日後に、外植片を、MS塩、30 g/1 スクロース及び250 mg/1 セフォタキシムを含むMS液体で15分間完全に3回洗浄した。これらの外植片をMS塩、0.2 mg/l NAA、2 mg/l BAP、25 g/l ハイグロマイシン、250 mg/l セフォタキシム、30 g/lスクロース、8 g/lアガーを含むpH 5.6の選択培地に移した。選択期間後に、苗条を半強度MS塩、30 g/l スクロース、250 mg/l セフォタキシム、8 g/l アガーを含むpH 5.6の1/2MS培地に、2週間サブカルチャーした。伸長された苗条を、半強度MS塩、0.01 mg/1 IBA、30 g/l スクロース、150 mg/l セフォタキシム、 8 g/l アガーを含むpH 5.6の発根培地に移し、次いで発根植物を土壌に移した。
実施例 9
ポジティブセレクションとネガティブセレクションとの比較
外植片をpCAMBIA 1301 (hptを有する) 及びpCAMBIA-XI (キシロースイソメラーゼ置換hpt) で形質転換し、それぞれ、様々な濃度のハイグロマイシン及びキシロースを含む各々の選択培地で選択した。外植片生存第1選択を、第2ラウンド選択のために、21日間、同一培地に移した。外植片を次に伸張培地に移した。第2選択後に、苗条(shootlet)の葉由来の100 ng DNAを、以下のサイクル条件下にhpt及びXIプライマーでそれぞれ増幅した:94℃で1分間、55℃で1分間及び72℃で1.3分間を40サイクル。
観察を以下のように表に纏めた。
A) pCAMBIA-1301による外植片の形質転換。ハイグロマイシンを含む培地での選択。
Figure 2009525743
B) pCAMBIA-XIによる外植片の形質転換。キシロースを含む培地上での選択。
Figure 2009525743
表から明らかなように、ポジティブセレクションから得られたトランスジェニック再生物の数と、ネガティブセレクションの数にはかなりの差がある。ハイグロマイシンを含む培地中の外植片に対する淘汰圧は、形質転換細胞の発達を妨害することが見出される。また、培地を含むハイグロマイシンで生育する外植片による発芽は、発育阻害されることが示される。それらは、苗木には成長せず、伸長培地で非常に少数が生存する。再生効率は、低濃度のハイグロマイシンにおいてさえ、非常に低い。
キシロースは、ハイグロマイシンよりも外植片に対する毒性効果が低いようである。
様々な濃度のキシロースを含む培地で生育した外植片は、ハイグロマイシン選択と比べて高い発芽効率を示した。キシロースイソメラーゼによる選択で得られたトランスジェニック植物の数は、ハイグロマイシン選択よりも3〜4倍多かった。
再生効率を増加するための最適化:
Haldrup et al. (2001) は、キシロースと組み合わせた、スクロース又は任意の他の炭素源の最小量の使用が、数個の作物におけるポジティブセレクションの選択及び再生効率を増加させる、ことを報告した。形質転換された外植片の再生効率を増加させるために、培地最適化を行った。その最適化では、様々なキシロース及びスクロースの組み合わせは、スクロースが非形質転換細胞を生存させるためにまさに十分であるが非形質転換細胞を成長させるには十分でない選択培地で使用される。
総数100個の外植片の各々をpCAMBIA 1301-XIで感染し、MS塩、0.2 mg/1 NAA、2 mg/1 BAP、250 mg/l セフォタキシム及びアガー 8 g/lを含み(pH 5.6)、スクロース及びキシロースの様々な組み合わせを含む選択培地に置き、16時間の明、8時間の暗の光周期条件下で、25℃の温度、60%の湿度で4週間生育した。次いで、これらを、MS塩、0.2 mg/1 NAA、2 mg/1 BAP、29g/l キシロース、1 g/1 スクロース、250 mg/l セフォタキシム及びアガー 8 g/lを含むpH 5.6の第2選択培地にサブカルチャーし、3週間生育した。発達した苗条(shootlet)を、MS塩の半濃度、15g/l スクロース、250 mg/l セフォタキシム及びアガー 8 g/lを含む pH5.6の伸張培地に移した。次いで、伸長された苗条を、1/2 MS塩、0.01 mg/1 IBA、30 g/l スクロース、150 mg/l セフォタキシム及び8 g/l アガーを含むpH 5.6の発根培地に移した。これらの植物由来の葉試料を分子分析のために集めた。観察を以下のように行った。
Figure 2009525743
キシロース及びスクロースの組み合わせを含む培地中で、外植片が再生し、よく成長したことを観察した。より多くの苗条(shootlet)は、5及び10 g/1 スクロースと、キシロース (30 g/l) とを有する培地で得られた。しかし、スクロース濃度が増加するに伴い、PCR結果により明らかなように、より多くの逸脱が見られた。従って、第1選択における25 g/1 キシロース及び5 g/1 スクロースの使用は、ポジティブセレクションのために最適であることが見出された。
A) 選択の3週間後、及びB) 選択の6週間後に、キシロース (25 g/l) + スクロース (5 gm/l) 及びハイグロマイシン (25 mg/l) で培養された、形質転換された子葉柄外植片で観察された発芽を、図8に示す。
従って、ポジティブセレクションを用いるブラシカの形質転換及び再生のための以下のプロトコールは、ブラシカ・ユンセア’バルーナ’において約35%の形質転換効率をもたらした。
−種子は、70%アルコールで2分間殺菌し、次いで0.1%塩化第二水銀で5分間殺菌する。
−殺菌した種子は、殺菌水で4〜5回激しく洗浄し;ブロット乾燥し、半MS培地に置く。それれは、BOD中で25℃で2日間生育し、明期で3日間生育した。
−子葉柄を葉の原始的組織を含まないように切り取る。
−pCAMBIA 1301-XIを有する終夜生育したアグロバクテリウム培養物GV3101の2 mlを、リファマイシン (10μg/ml)、ゲンタマイシン (10μg/ml)、カナマイシン (50μg/ml) を含む25 mlのルリア・ベルターニ(LB)培地で接種し、4〜6時間、28℃で、200 rpmのシェーカーで、O.D600 = 1.0になるまで急激に生育する。細胞を4℃で10分間、6000 rpmで遠心し、次いでMS塩及び30 g/l スクロースを含む液体培地で洗浄し、再懸濁して、A600が0.3〜0.5の細菌濃度を調整する。
−子葉柄外植片の柄部位を10〜15秒間アグロ懸濁液に浸漬して感染させ、直ちに、共培養培地に置く。柄は培地に突き刺す。MS塩、0.2 mg/l NAA、2 mg/l BAP、15 g/l スクロース、8 g/l アガーを含むpH 5.6の共培養培地で3日間、共培養する。
−外植片は、MS塩、30g/l スクロース、250 mg/l セフォタキシムを含むpH 5.6の洗浄液で15分間洗浄し、ブロット乾燥する。
−16時間の明、8時間の暗、25℃の温度、及び60%の湿度の部屋条件で、4週間、MS塩、25 g/l キシロース、5 gm/l スクロース、0.2 mg/l NAA、2 mg/l BAP、250 mg/l セフォタキシム、8 g/l アガーを含むpH 5.6のI選択培地にサブカルチャーする。
−16時間の明、8時間の暗、25℃の温度、及び60%の湿度の部屋条件で、3週間、MS塩、29 g/l キシロース、1 gm/l スクロース、0.1 mg/l NAA、3 mg/l BAP、250 mg/l セフォタキシム、8 g/l アガーを含むpH 5.6のII選択培地にサブカルチャーする。
−16時間の明、8時間の暗、25℃の温度、及び60%の湿度の部屋条件で、1週間、半強度MS塩、15 g/l スクロース、250 mg/l セフォタキシム、8 g/l アガーを含むpH 5.6の伸張培地にサブカルチャーする。
−16時間の明、8時間の暗、25℃の温度、及び60%の湿度の部屋条件で、0.01 mg/1 IBA、30 g/l スクロース、150 mg/l セフォタキシム、及び8 g/l アガーを含むpH 5.6の発根培地にサブカルチャーする。
−最後に、根付いた植物をボトルから除き、根を水で洗浄する。これらの植物を2日間、水道水でボトル中に置き、明るい部屋条件で4日間、赤土(20%)及びバーミュキュライト(80%)の混合物を含むプラスチック製カップに移すことによって硬くする。赤土及び肥料を含むポットに移す前に完全に順応するまで、それらを温室に移し、維持する。
pCAMBIA+XI構築物で形質転換された外植片におけるポジティブセレクションを用いるトランスジェニック苗条の選択及び再生を図9に示す。
100個の外植片から始めて、pCAMBIA-1301による形質転換で、hpt遺伝子を有する2〜3個のトランスジェニック植物を得た。しかし、同一の数の外植片から始めて、80〜85個の外植片は、発芽を示し;外植片の内の40個は、伸張培地で苗条(shootlet)に発達し、約35個の植物は生き残って植物に成長した。これは、通常の開花及び種子の群を示す。十分に生育したT0トランスジェニック植物は、健康であり、外見的に対照植物と同様であった。それらは、健康で、非形質転換種子と同じ重さの、同数の種子(T1)を生成した。
実施例 11
植物の分子的分析
形質転換後に得られたT0植物由来の葉を、XIプライマー各々による増福によって選択マーカー遺伝子についてスクリーニングした。図11に示す。キシロースイソメラーゼ陽性ブラシカ・ユンセア植物の様々な段階を図10に示す。
Figure 2009525743
T0トランスジェニック植物の種子試料におけるXI遺伝子の増幅によって明らかなように、すべてのトランスジェニック植物は、そのゲノムへのXI遺伝子の統合を示す。図12に示す。
従って、我々は、選択マーカーとしてキシロースイソメラーゼを使用して、ブラシカの成功的な形質転換を報告する。これまで世界中の、除草剤及び抗生物質耐性遺伝子(ネガティブセレクション)を用いて報告された15〜23%の形質転換効率に対して、約35%の効率は、キシロースイソメラーゼ(ポジティブセレクション)を用いて選択系を用いて観察される。
従って、ブラシカは、ポジティブセレクションを用いて成功的に形質転換された。ポジティブセレクションのためのSC1のキシロースイソメラーゼの使用は、ブラシカ外植片の形質転換の効率的な方法である。この選択系は、典型的な抗生物質(カナマイシン、ハイグロマイシン)及び除草剤(ホスフィノスリシン)型の系よりも効率的であり、非常に多数のトランスジェニック植物をもたらす。最後に、それはまた、代わりの選択マーカーの需要を満たし、遺伝的に改変された植物の発達における抗生物質耐性遺伝子の使用に関連するリスク及び環境的問題を避ける。
培地組成
ムラシゲ・スクーグ(MS)塩:
1.9 g/l KNO3
1.65 g/l NH4NO3
370 mg/l MgSO4
170 mg/l KH2PO4
440 mg/l CaCl2.2H2O
15 mg/l MnSO4.7H2O
8.6 mg/l ZnSO4.7H2O
6.2 mg/l H3BO3
0.025 mg/l CuSO4.5H2O
0.025 mg/l CoCl2
0.83 mg/l KI
0.025 mg/l Na2MoO4.2H2O
36 mg/1 Na2EDTA
28 mg/l FeSO4
100 mg/1 ミオイノシトール
0.1 mg/1 ニコチン酸
1.0 mg/1 チアミン HCl
0.1 mg/1 ピリドキシン HCl
MS液体
MS塩
30 g/1 スクロース
半MS培地
半MS塩
30 g/1 スクロース
8 g/1 アガー
ルリア・ベルターニ(LBブロス)
10 g/1 トリプトファン
5 g/1 酵母抽出物
10 g/1 NaCl
ブラシカのゲノムDNAを増幅するためのPCR条件
DNA 100 ng
dNTP 200 μM
プライマー 0.25 μM
MgCl2 mM
10X バッファー 2.5 μl (Bangalore Genei)
Taqポリメラーゼ IU
総体積 25 μl
以下の増福条件
Figure 2009525743
配列表の簡単な説明
配列番号1: SCIのキシロースイソメラーゼ転写物の完全長の配列
配列番号2: SCIのキシロースイソメラーゼのタンパク質配列
配列番号3: 植物における発現最適化後のキシロースイソメラーゼの配列
配列番号4: pCAMBIAベクターのフレーム中の、SCIの完全長コドン最適化キシロースイソメラーゼ転写物の配列
図1は、SC-1デサチュラーゼの1.5 kb配列における完全キシロースイソメラーゼドメインを示す。 図2は、キシロースイソメラーゼドメインとの、SC-1由来のモチーフのホモロジーを示す。 図3は、pGEX-XIのマップである。pGEXのBamHI及びXhoIでキシロースイソメラーゼ遺伝子がクローニングされた。 図4は、E.コリでのキシロースイソメラーゼの誘導を示す。XIプライマーを用いる、形質転換されたSEA外植片の増幅。レーン I: 誘導された; U: 誘導されなかった; 1,2,3: キシロースイソメラーゼ遺伝子を有する様々なクローン; M: MWマーカー。 図5は、キシロースイソメラーゼクローン由来のORFの増幅を示す。 図6は、pCAMBIA-CO-XI中の、hptのXIによる置換を示す。 図7は、A) スクロース(35 gm/l)で培養された、b) D-キシロース(30 gm/l)で培養された、C)炭素源なしの培地で培養された、ブラシカ・ユンセア子葉柄外植片を示す。 図8は、A)選択の3週間、B)選択の6週間後に、pCAMBIA-CO-XI及びpCAMBIAで形質転換され、キシロース(25g/l)+スクロース(5gm/l)で培養された子葉柄外植片と、pCAMBIA-CO-XI及びpCAMBIAで形質転換され、ハイグロマイシン(25mg/l)で培養された子葉柄外植片との発芽比較を示す。 図9は、pCAMBIA+XI構築物で形質転換された外植片におけるポジティブセレクションを用いるトランスジェニック苗条の選択及び再生を示す。 図10は、XIプライマーを用いる、形質転換された子葉柄外植片の増幅を示す。pCAMBIA1301-XIを有する、選択された苗木の100 ngのゲノムDNAをXIプライマーで増幅した。レーン1:d15プラスミドDNA;レーン2〜6及び8〜13:様々な外植片由来のDNAサンプル;M:1 kbラダー。 図11は、ブラシカ・ユンセア バール’バルーナ’キシロースイソメラーゼポジティブ植物を示す。 図12は、トランスジェニック植物のXIプライマーによる増福を示す。XIポジティブT0植物のT1種子のゲノムDNAの増幅を示す。T1種子から単離された100 ngのゲノムDNAは、XIプライマーを用いて増幅した。レーン1:マーカー(1 kb)、レーン2〜7:6つの各々のパッドの種子由来のXI遺伝子の増幅産物(1.32 kb)、レーン8:陽性対照、レーン9:マーカー。

Claims (15)

  1. ブラシカ・ユンセア(Brassica juncea)形質転換体を作製する新規かつ改良された方法であって、以下のステップ:
    (a) 選択剤キシロースの代謝に必要とされる酵素キシロースイソメラーゼをコードする制御配列に作動可能に連結された核酸配列を導入する組換えベクターの構築;
    (b) 感染に適した条件下での、植物細胞又は植物組織への該ベクターの形質転換のアグロバクテリウム介在法;
    (c) ステップ(a)の選択剤を含むMS培地上に遺伝子的に非-形質転換された植物細胞又は植物組織の群から推定形質転換体の選択;及び
    (d) 該選択された植物細胞又は組織の再生、
    を含むポジティブセレクション及び再生の方法に基づく、前記方法。
  2. 前記の使用された植物がブラシカ・ユンセア種に属する、請求項1記載の方法。
  3. 前記の酵素キシロースイソメラーゼをコードする核酸配列が、生物スキゾキトリウム(Schizochytrium)から単離され、配列番号1で示される、請求項1記載の方法。
  4. 前記塩基配列の少なくとも1つが、このように改変されたDNAの発現が宿主植物外植片中で起こる点で改変されている、請求項3記載の核酸配列。
  5. 前記改変配列が配列番号3で示される、請求項4記載の核酸配列。
  6. 発現されたタンパク質の対応するアミノ酸配列が配列番号2で示される。
  7. 形質転換に供せられる前記植物細胞又は組織が、MS培地中で宿主細胞の種子の発芽後の子葉柄から得られる、請求項1記載の方法。
  8. ベクター構築物での形質転換の前に前記植物細胞/組織が、単一の炭素源としてキシロースを利用することができない、請求項1記載の方法。
  9. キシロースの代謝のために必要とされる酵素キシロースイソメラーゼをコードする核酸配列を含む組換えベクターで形質転換されたブラシカ属の植物が、形質転換のステップにおいて、以下:
    (a) 任意の原組織の封入を避ける子葉柄の切除による外植片を調製するステップ;
    (b) 前記のベクター構築物を有するアグロバクテリウムで該外植片を10秒間感染し、次いで該共培養培地に移すステップ;
    (c) 該外植片を28℃で3日間、暗条件で共培養するステップ;
    (d) 選択剤を含む選択培地を用いて外植片を移すステップ;
    (e) 次いで、選択及び伸長培地に選択された外植片を移すステップ;
    (f) 選択された形質転換体の再生を更に含むステップ、
    を含む、外植片の段階的(stagewise)な共培養が使用されることを特徴とする、請求項1記載の形質転換法。
  10. 前記再生された苗木における前記選択マーカー遺伝子の形質転換の確認が、公知の分子スクリーニング法を用いて行われる、請求項1〜3及び7〜9のいずれか1項記載の方法。
  11. 遺伝的に形質転換された植物外植片が請求項3の核酸配列を含むベクターを有し、その発現が、形質転換外植片に非-形質転換細胞を超える代謝的利益を与える、請求項1〜3及び7〜10のいずれか1項記載の方法。
  12. 前記形質転換細胞が、請求項3記載の核酸による該酵素の発現に寄与する炭水化物源としての選択剤キシロースを利用する競争的代謝性利益に基いて選択される、請求項1〜3及び7〜11のいずれか1項記載の方法。
  13. 得られた形質転換効率が35%より高い、請求項1記載の方法。
  14. 得られた形質転換効率が30%より高い、請求項1記載の方法。
  15. 得られた形質転換効率が25%より高い、請求項1記載の方法。
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