JP2009524654A - 有機化合物の沈殿方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、非常に小さな平均サイズ及び非常に狭いサイズ分布を有する結晶を提供する、有機化合物の制御された沈殿のための方法に関する。

Description

本発明は、物質の沈殿の分野に関する。本発明は、概して、結晶の制御された核形成及び成長、特に有機物質の結晶化のための方法の技術分野に関する。
溶液からの結晶化は、化学プロセス産業において重要な分離及び精製プロセスである。これは、炭酸カルシウムやソーダ灰などの無機化合物から薬剤や特殊化学製品などの高付加価値材料にわたる、多種多様の材料の製造のための主要な方法である。
製薬産業において、薬学的に活性な化合物又はその中間体の溶液からの結晶化は、典型的な精製方法である。この産業において、活性成分の、所望の結晶平均サイズ、サイズ分布、形態、多形及び純度を得ることは非常に重要である。水にわずかに可溶性である薬剤の場合、結晶サイズは、水中での溶解速度及び平衡溶解度に強く影響する。これらの要因は、人体における薬剤のバイオアベイラビリティーを反映する。
溶液からの結晶化は、結晶の核形成から始まり、これらの核の有限サイズへの成長が続く。核形成及び成長は、別々の動的形態に従い、核形成は、高い駆動力(過飽和)で通常起こり、成長は、すべてのレベルの過飽和で起こる。成長速度は、過飽和レベルが増大しつつある際に、通常ではより速い。臨界過飽和を超えると、新しい核の自然核形成が存在することになる。小サイズ高表面積粒子の直接結晶化は、高飽和環境において通常達成され、これは不十分な結晶構造の形成のために、低純度、高脆砕性及び減少した安定性の物質を多くの場合もたらす。有機結晶格子における結合力は、高度にイオン性の無機固体において見出される無定形よりも、はるかに高い頻度の無定形を引き起こすので、過飽和物質の「オイルアウト(oiling out)」は、珍しくなく、そのような油性物は、構造を有さないで多くの場合固化する。
遅い結晶化は、生成物の純度を増大させ、より安定な結晶構造を生じさせるのに用いられる、一般的な技法であるが、これは、晶析装置の生産性を減少させ、引き続いて高負荷の粉砕を必要とする大きな低表面積の粒子を生じさせる方法である。現在、薬剤化合物は、粒子表面積を増大させ、それによってそのバイオアベイラビリティーを向上させるために、結晶化後の粉砕ステップをほぼ必ず必要とする。しかし、高エネルギーの粉砕は、欠点を有する。粉砕は、物質の劣化の原因となる過剰局所温度、収率損失、騒音及び発塵並びに非常に強力な薬剤化合物への望まれない個人の暴露をもたらす恐れがある。さらに、粉砕の間に結晶表面上に生じる応力は、不安定な化合物に不利に影響する場合がある。全体的に、1)高表面積、2)高化学純度及び3)高安定性の3つの最も望ましい最終生成物の目標を、高エネルギーの粉砕をすることなく、現在の結晶化技術を用いて同時に最適化することは、周知のように困難である。
最小の可能な結晶を得るために、過飽和を最大にし、臨界過飽和値を見出すことが必要である。臨界過飽和は、それぞれの沈殿化合物及びそれぞれの沈殿条件(溶媒の種類、温度など)について決定される必要がある。有機化合物の通常の結晶化方法に関する主要な問題は、高過飽和を得ることが困難になり得ることである。高過飽和(S)(ここでSは、ある特定の温度で特定の溶媒中の物質が、ちょうど飽和されるときの濃度によって除された、物質の実際の濃度として定義される)は、例えば、1.5より高いSの値を意味する。
別の問題は、混合時間よりも速い、極端に急速な核形成速度である場合がある。ミリ秒、又はマイクロ秒、又はさらにナノ秒の推定核形成速度は、溶媒/抗溶媒沈殿に関して、及び反応沈殿に関して珍しくない。核形成速度は、古典的な核形成理論(非特許文献1及び非特許文献2を参照されたい)を用いて、粒子−溶液の界面エネルギーについての改善された推定(非特許文献3)を参照されたい]を考慮して推定できる。溶媒抗溶媒沈殿の場合、過飽和は、特にいわゆる「逆」添加順序を適用する場合、極端に高くなり得る。逆添加は、抗溶媒に有機化合物の溶液を加えることを意味する。これにより、通常、有機化合物の溶液に抗溶媒を加えることよりも高い過飽和がもたらされる。この脈絡において、10以上の過飽和Sは、極端に高いと見なされる。
写真の分野において、ハロゲン化銀結晶の調製のための方法及び装置が知られている。これらの結晶の調製のための特定の方法では、混合チャンバーが使用され、この中にハロゲン化物の水溶液及び銀塩の水溶液が、別々に且つ同時に加えられる。この混合チャンバーは、より大きな成長又はチャンバー内に配置され、この中にハロゲン化銀の核が放出されることによって、さらに成長して所望のハロゲン化銀結晶になる。ハロゲン化銀結晶を作製するためのこのような方法を実施するのに適当な装置は、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7及び特許文献8に記載されている。上記に引用された方法及び装置は、特定の構造を有し、狭い結晶サイズ分布を伴ったハロゲン化銀結晶を得ることの課題に常に取り組んでいる。
有機物の、薬学的に活性な化合物の結晶化の分野において、特許文献9では、衝突噴流ミキサーを用いることによって、大部分の結晶が3〜20ミクロン(μm)のサイズ範囲内である、小さな結晶サイズが生成される。この方法は、個々の粒子の凝集を阻害するために界面活性物質の使用を必要とする。凝集は、有効粒子サイズを増加させ、したがって生成物のバイオアベイラビリティーを低下させる。
特許文献10では、反応沈殿と共に衝突噴流装置が用いられる。流体接触領域でのマイクロ混合を高めるための超音波処理プローブの使用が示されているが、その好ましい効果についての例は提供されていない。
特許文献11では、衝突噴流のごく近傍において超音波処理プローブを用いることによって、1ミクロン未満の小さな結晶サイズが生成される。しかし、この出願では、沈殿プロセスの間の粒子の凝集を軽減するために、界面活性物質の使用が提唱されている。さらに、特許請求されている溶媒抗溶媒系は、それぞれDMSO及び水である。しかし、DMSOは、その毒性のために、薬剤化合物の沈殿における溶媒として好ましくない。
米国特許第4289733号明細書 欧州特許第523842号明細書 欧州特許第708362号明細書 欧州特許第1357423号明細書 欧州特許第0709723号明細書 米国特許出願公開第2003/0224308号明細書 米国特許第6050720号明細書 米国特許第5202226号明細書 米国特許第5314506号明細書 欧州特許第1157726号明細書 米国特許第6302958号明細書 D. Kashchiev, Nucleation, Basic Theory with Applications, Butterworth-Heinemann, 2000 D. Kashchiev and G.M. van Rosmalen, Review: Nucleation in solutions revisited, Cryst.Res.Technol., 38, No. 7-8, 555-574, 2003 R.A. Granberg, C. Ducreux, S. Gracin and A.C. Rasmuson, Primary Nucleation of paracetamol in acetone-water mixtures, Chem.Eng.Sci., 56, 2305-2313, 2001
一般に有機化合物、及びより具体的には薬剤化合物の結晶化のために現在用いられている方法は、多くの短所を有しているため、界面活性物質若しくはポリマーの補助又は有毒な化学物質の使用を伴わないで、小さな平均サイズ及び再現性のある狭いサイズ分布を有する有機粒子の生成を提供する方法の必要性が残っている。
有機物の薬学的に活性な化合物の、狭い結晶サイズ分布を有する非常に小さな結晶への結晶化のための、効率的で再現性のある方法の探索において、本発明者らは、最適な結果は、非溶媒を含むより大きな容器と共に配置され、この容器と開放連結した混合チャンバーであって、有機化合物の溶液が加えられ、前記混合チャンバー内で等方性乱流混合を提供する撹拌手段を備えた混合チャンバーを用いて達成できるという驚くべき洞察に達した。さらに、この混合チャンバーにおいて、有機化合物の沈殿核の形成を可能にするために、沈殿する物質の過飽和溶液が形成又は導入されることが不可欠である。
特に、少なくとも誘導時間よりも長い、混合チャンバー内での有機化合物の滞留時間と共に、前記混合チャンバー内で高過飽和の条件が提供されるべきであり、これによって核形成及び成長が、実質的に容器内の混合チャンバー内でのみ起こり、混合チャンバーの外側では起こらないことが見出された。誘導時間を測定する方法は、Kashchiev and van Rosmalen, Review: Nucleation in solutions revisited, Cryst.Res.Technol., 38, No. 7-8, 2003に記載されている。
容器は、本質的に非溶媒を含み、混合チャンバーは、この容器の非溶媒液面の下に配置される。混合チャンバー内での十分な混合、及びそれでもなお混合チャンバー内で核形成を起こさせるための十分に長い滞留時間を有するために、本発明者らは、強力な等方性混合を提供する混合手段を、有利に用いることができることを見出した。好ましい混合手段は、非常に高い回転速度での低い軸流を特徴とし、これによって混合チャンバー内の混合は、非常に効率的であり、混合チャンバー内での有機化合物の滞留時間を調節できる。
したがって特に、本発明は、有機化合物の制御された沈殿のための方法であって、前記有機化合物の溶液を提供するステップ、それぞれがシャフト及び1又は複数の撹拌ブレードを備えた撹拌手段であって、等方性混合を提供することのできる1又は複数の前記撹拌手段を備え、有機化合物が溶解しない、又は言い換えれば非溶媒である液体を含む容器の内側に配置され、この容器と開放連結されており、前記非溶媒の液面下に配置されている混合チャンバー中に、1又は複数の注入口を介して前記溶液を加えるステップであって、この混合チャンバーへの前記溶液の添加により、前記混合チャンバー内の混合物中で、前記有機化合物の過飽和が提供され、前記有機化合物の結晶の結晶化及び成長がもたらされ、この撹拌手段は、動作可能であり、等方性混合を提供し、前記混合チャンバー内において0.1ミリ秒より長い前記有機化合物の滞留時間を提供するステップを含む方法に関する。
本発明の方法の主な利点は、狭いサイズ分布を有する非常に小さな結晶サイズが得られ、それによってさらなる粉砕がこれ以上必要とされないことである。この技術の別の利点は、一般的な結晶化技術の場合よりも、小さな平均サイズ及び狭いサイズ分布を有する結晶を作製できることである。したがって、本発明の成果は、小さな平均サイズ及び狭いサイズ分布を有する結晶を作製できることである。
本方法では、核形成及び/又は成長ステップの間に、界面活性物質及び/又はポリマーが存在できるが、本発明の利点は、凝集を防止するために、結晶化の間にこれらの化合物を使用する必要がないことである。結晶核形成段階の間の界面活性物質の存在は、生成される初期の粒子サイズが過度に小さく、その粒子を第2ステップにおいてある程度より大きなサイズに成長させる必要のある場合に不利である。界面活性物質又はポリマーのような表面吸着添加剤は、結晶面の成長を阻害する恐れがある。これは、所望のサイズが、沈殿ステップの間に得られる初期サイズよりも大きい場合、好ましくない。本発明では、界面活性物質及び/又はポリマーは、核形成及び成長が終了した直後に加えることができる。界面活性物質及び/又はポリマーの目的は、懸濁液を沈降及び凝結から保護するためである。
本発明の別の利点は、有機化合物は、不純物を含むことなく、非常に純粋に結晶化することである。
「有機化合物が溶解しない、又は言い換えれば非溶媒である液体」という句は、絶対的に解釈されるべきではない。当業者は、溶解度は、例えば温度などのある特定の条件に依存することを理解するだろう。前記句は、プロセスが正常に実施される下での興味対象の有機化合物の沈殿を指す。好ましくは、沈殿は、興味対象の化合物の経済的に実行可能な収率を得ることができる程度までである。
その最も広い意味での用語「有機化合物」は、炭素原子を含有する化合物を指す。通常、有機化合物は、水素原子も含有する。非常に多くの場合、有機化合物は、酸素原子及び/又は窒素原子並びにより少ない程度に硫黄原子も含有する。特に、用語「有機化合物」は、薬剤、染料、農業及び化学の産業の分野において有機化合物と通常見なされるものを指す。これには、ホルモン、タンパク質などの「生物学的」有機化合物が含まれる。以下の本明細書では、有機化合物(複数も)は、物質(複数も)とも呼ばれる。
用語「沈殿」は、溶液結晶化の分野のサブクラスを指す。沈殿は、1又は複数の以下の特徴によって認識される。(i)結晶化する化合物の低溶解度、(ii)高速プロセス、(iii)小さな結晶サイズ及び(iv)プロセスの不可逆性(W. Gerhartz in: Ullmans encyclopedia of Industrial Chemistry, vol. B2 5th ed., VHC Verlagsgessellschaft mbH, Weinheim, FGR, 1988)。本発明の脈絡において、沈殿についての適当な定義は、液体溶液相からの難溶性固相の比較的急速な形成である。(Handbook of Industrial crystallization, Edited by Allan S. Myerson, Butterworth Heinemann, Oxford, p141)。
一般に、沈殿をもたらす2種類のプロセスを認識できる。
− 第1の種類のプロセスは、抗溶媒(非溶媒とも呼ばれる)沈殿である。溶解した物質は、その溶解度を低下させる溶媒と混合され、その結果沈殿物を形成することになる。抗溶媒沈殿の改変は、溶解した物質は、必ずしも抗溶媒と混合されないが、沈殿溶媒の溶解度が低下するように混合され、その結果核が形成されることである。これは、例えば、温度、pH(酸又はアルカリ溶液の添加)、イオン強度など、及びそのような要因の組合せの変化によって実現できる。
− 第2の種類のプロセスは、反応沈殿である。2つの成分が混合され、新規に形成される物質の形成をもたらし、用いた混合条件又は反応条件下での形成した物質の低溶解度のために、沈殿物が形成することになる。
用語「過飽和」で、所与の条件、即ち溶媒又は溶媒混合物、温度、pH、イオン強度などの下で、過剰な飽和状態にある物質の濃度を意味する。
沈殿する物質(複数も)の溶液は、混合チャンバー中に入れられる。この混合チャンバーは、かき混ぜ手段(agitation means)、特に撹拌手段(stirring means)を備え、軸流及び半径流を提供する。好ましくは、撹拌手段は制御することができる。好ましくは、混合チャンバー及び/又は容器は、温度制御手段を備える。この混合チャンバーは、容器の内側に配置され、この容器と開放連結している。混合チャンバーの位置は、混合チャンバーの容器との開放連結、放出口が存在する限り、容器内の任意の場所にすることができる。好ましくは、混合チャンバーは、容器内の溶媒表面の下である。やはり好ましくは、混合チャンバーは、容器の側方中央部にあり、そこで垂直方向の位置は、底部から溶媒表面の直下まで変更することができる。沈殿の前に、同じ溶媒が、混合チャンバー内及び容器内に存在する。1又は複数の注入口を介して、好ましくは溶媒又は溶媒混合物中に溶解した、沈殿する物質、又は沈殿する物質を形成する成分が、混合チャンバー中に導入され、撹拌手段によって提供される軸流と共に、混合チャンバーから容器中への正味の流出がもたらされる。2つ、3つ、4つ又はさらに多くの注入口(ノズル)が存在してよい。
一実施形態では、過飽和溶液、又は結晶を含有しているバルク溶液と接触している、核形成装置のすべての部分は、粘着、付着、堆積(incrustation)などを防止する材料の層で被覆される。例えば、溶液と接触する容器の内壁並びにかき混ぜ機及び混合チャンバーのすべての部分は、例えば、ポリテトラフオロエチレン(PTFE,polytetrafuoroethylene)、特にテフロン(登録商標)などで被覆される。一般に、低表面張力を有する被覆材料を有利に用いることができる。本発明においては、適切な条件を選択することにより、付着又は堆積(encrustation)はそれほど重要でないので、これは厳密な要求条件ではない。
本発明の方法の一実施形態では、沈殿する物質の溶液は、1又は複数の注入口を通じて混合チャンバー中に導入される。さらなる実施形態では、同時に別々に、沈殿する物質のための非溶媒が、混合チャンバー中に導入される。
したがって、沈殿物は、混合チャンバー内での沈殿する物質の溶液及び非溶媒の同時添加によっても形成される。一実施形態では、沈殿プロセスの開始時に、容器及び混合チャンバー内に存在する溶液は、用いられる溶媒及び非溶媒の混合物又は非溶媒の混合物である。特定の実施形態では、沈殿プロセスの開始時に容器及び混合チャンバー内に存在する溶液は、沈殿する物質で飽和している。用いられる溶媒と非溶媒の比は、用いられる溶媒及び非溶媒、結晶化される物質並びに得たい結晶サイズに依存する。重要な要因は過飽和の量である。この点における過飽和は、溶液がちょうど飽和している濃度を意味する平衡濃度で除された実際の濃度として定義される。結晶化される化合物に応じて、1.5超、さらに2.5超及び一部の化合物については10という高さ及びさらに高い過飽和レベルが有利となり得る。一部の物質については、100以上の過飽和レベルでさえ用いることができる。過飽和は、撹拌速度、滞留時間、温度、溶液中の有機化合物の濃度などによって制御できる。
本発明の方法のさらに別の実施形態では、沈殿する物質は、混合チャンバー内で化学反応で形成される。特定の実施形態では、沈殿する物質は、2種以上の成分からの反応によって形成される。より具体的には、沈殿する物質は、共有結合及び/又はイオン結合の形成を伴う実質的に瞬間的な化学反応、例えば、プロトン付加/脱プロトン、陰イオン/陽イオン交換、酸付加塩形成/遊離など、若しくは任意の他の種類の化学反応によって形成される。この実施形態では、容器内の液体は、形成される化合物の非溶媒でもある。
混合チャンバー及び容器の容積は、10ミリリットル未満から数リットル、1000リットル超まで変更することができる。適当なチャンバー/容器の容積比は、例えば、0.001未満から0.1まで変更できる。
混合チャンバーのサイズは、結晶化を実施したい規模に非常に依存する。上述したチャンバー容器比が維持される限り、小規模(1〜5dmの容器)では、10〜150cmの混合チャンバー、中規模(5〜500dmの容器)については、150〜500cmの混合チャンバーなどが典型的に用いられるだろう。混合チャンバーの形状は、自由に選択することができ、それが中心軸を中心に回転対称である場合、例えば、互いにx離れた、1つの上面と1つの底面の2つの同一の表面によって特定することができ、この表面は、適用可能な場合、Dminの最小直径を有する、矩形から12面体又はさらに円筒形まで任意の形状を有することができる。例えば、正方形を有する混合チャンバーについては、Dminは、相対する側同士間の距離である。この実施形態では、xは、Dminより大きくすることができ、或いはxは、Dminより小さくすることもできる。さらなる実施形態では、上面と底面は同一である必要がないが、1つの表面は、例えば、他方の面より小さいサイズにすることができる。
核形成の開始時に、核は過飽和流体で囲まれている。2個以上のこれらの粒子が、過度に長く接触して留まる場合、それらは、一緒に「固まって」凝集することになる。さらに、水媒体中の無機粒子と異なり、有機粒子は、最も多くの場合、帯電しておらず、したがって、これらの有機粒子は、反発機構を有さない。本発明では、乱流の流体運動によって核に課された、混合チャンバー内の抗力/せん断力が、粒子を凝集から防止する。本発明の目的は、過剰な乱流を用いることによって、周囲の流体は依然として過飽和であるが、凝集させない値まで粒子間接触時間を低減することである。この混合は、レイノルズ数NReによって特徴づけることができ、レイノルズ数は式
によって与えられる[式中、
Da=ブレード直径(m);
N=回転速度(r/s);
ρ=流体密度(g/cm);及び
μ=粘度(Pa・s)]。
典型的には、NReが10より小さい場合、撹拌される槽内の流れは層流である。10<NRe<10の場合、層流と乱流との間の遷移領域が存在し、NReが10より大きい場合、流れは、等方的に乱流である。Perry(Perry's Chemical Engineers' Handbook, Ed.: R.H. Perry and D.W. Green, McGraw-Hill, Ch18, 1999)を参照されたい。
理論に束縛されることなく、等方性乱流の点を越えてでもNReを最大化すると、粒子に及ぼされるせん断応力は増加することになり、脱凝集効果をもたらすことが仮定される。等方性高乱流の第2の利点は、等方性高乱流により、反応物がより速く混合した状態になり、これによって過飽和は、混合チャンバーを離れる混合物中で核形成がもはや起こらないレベルまで低減することになるということである。これは、混合チャンバー内で流体の混合が不完全である場合より、小さな平均サイズを有する結晶の狭いサイズ分布をもたらすと仮定される。例えば、球体様の結晶凝集が、不十分な混合で発生し、注入口から混合チャンバーに入る溶液の液滴の表面での核形成を示し、これは、不十分な混合によって非溶媒中で過度に遅く消散することが観察されている。
式から、レイノルズ数は、より大きな撹拌ブレード直径で増加すると結論することができる。本発明では、撹拌ブレードの好ましいサイズは、混合チャンバーの最小寸法の少なくとも50%、及びより好ましくは少なくとも70%、及び最も好ましくは80と95%の間であることが判明した。混合チャンバーの最小寸法の約90%の直径を有した撹拌ブレードで、非常に良好な結果が得られた。円筒形の混合チャンバーの場合、寸法は、円形の上面又は底面の直径を指す。例えば、立方体形の混合チャンバーの場合、寸法は、正方形の上面若しくは底面の辺部の長さを指すか、又は寸法は、矩形の上面若しくは底面の最短の辺部の長さを指す。
本発明において、少なくとも10、好ましくは10超、及びさらにより好ましくは10超のレイノルズ数を有する撹拌ブレードが用いられるべきである。本発明では、有機化合物の溶液と抗溶媒が最初に接触する領域において極端な乱流を引き起こすことによって、効率的で高速なマイクロ混合が保証され、これによって混合チャンバーにおいて、主に均一な混合を得ることができる。さらに、この乱流によって新たに生成される核に作用する力は、粒子間の接触時間が、これらの粒子の凝集を制限するのに十分短いほどである。
驚くべきことに、小さな混合チャンバーにおける非常に高い回転速度での撹拌により、狭い粒子(結晶)サイズ分布を伴った、非常に小さな結晶が得られる条件が提供されることが判明した。理論に束縛されることなく、核形成及び成長(誘導とも呼ばれる)は、本質的に分子レベルのプロセスであり、したがって分子規模での混合のみが、このプロセスに直接影響を及ぼすことができると仮定される。一般に混合チャンバー内で均一な混合が得られる時間である、マイクロ混合時間は、例えば、Baldyga et al, Chem. Eng. Sci., vol. 50, No. 8, pp 1281-1300, 1995によって記載されている。
その著者らは、マイクロ混合時間(τω)を式
(式中、ν=動粘性率、及びε=単位質量当たりのエネルギー散逸率)で説明している。
この式は、溶媒/抗溶媒混合物の低粘度と合わせて、最小の可能な混合チャンバーにおけるかき混ぜ装置、例えば撹拌手段によってパワー入力を最大にすることにより、マイクロ混合時間が最小になることを示す。
非常に高速な核形成の場合、マイクロ混合時間は、非常に短くあるべきである。後者の場合において混合時間が過度に長い場合、望まれない結晶の凝集が起こり得る。本発明は、結晶が安定なサイズまで成長し、結晶を取り囲んでいる溶液の過飽和が、核形成が停止する十分低いレベルまで、核形成及び成長を可能にするのに少なくとも十分長く、混合された反応物を混合チャンバー内に保持することをさらに目的とする。
選択される撹拌手段又は撹拌機は、所要のレイノルズ数に到達するために、非常に高速で回転するべきである。撹拌機の速度は、等方性乱流混合を提供する、少なくとも1000rpm超(1分当たりの回転)、より好ましくは5000rpm超、及びさらにより好ましくは10000rpm超であるべきである。15000rpmという高さの回転速度も、有利に用いることができる。
当業者にとって、これらの高い速度が小さな混合チャンバー内で用いられることは驚くべきことになろう。一般に、撹拌ブレードの形状は自由に、しかし、撹拌ブレードの形状が、とりわけ、軸流(撹拌ブレードに垂直)と半径(撹拌ブレードと平行)流との比を決定することを考慮して選択することができる。軸流のみでは、混合チャンバー内で混合は起こらず、一方半径流のみでは、混合チャンバーからの流出がないか、又は限定されることになる。混合ブレードは、高い撹拌速度及び高いせん断力で変形しない任意の材料で作製できる。好ましくは、材料は、テフロン(登録商標)のような表面エネルギー低下被膜で被覆されていても、被覆されていなくてもよいステンレス鋼である。複数のブレードを、同じ撹拌機の軸又は同一方向に回転するか、又は逆方向に回転する別個の撹拌機の軸上に据えることができる。別の実施形態では、2つのインペラが混合チャンバー内に据えられている。両方のインペラは、同じ又は異なる軸上に1つ若しくは複数の撹拌ブレードを含むことができ、一方インペラのブレードは、同じ高さであるか、混合チャンバーの全高の約50%以内で互いに距離を有することができる。
撹拌ブレードの適当な幾何学的配置は、以下の試験によって選択できる。モータに取り付けられたインペラ(シャフト及び撹拌ブレードを意味する)は、u字形の透明な容器内に据えられている(図10を参照されたい)。インペラを回転させると、両垂直管部分の流体の高さは、反対方向に変化することになる。全装置内の流体温度が一定に維持されている場合、周知のToricelliの法則(式1)を用いることによって、インペラにより軸方向に放出される平均流体速度を、流体面の変化と関連づける。
(式1)
式中、
は、平均二乗した軸方向に放出される流体速度であり、gは、重力定数であり、Δhは、両垂直管部分の間の全体の流体の高差である。
(式2)
式中、Aは、管の断面積であり、インペラの軸方向放出流量Q(l/分)は、
Q=Nq・N・Da (式3)
によって推定できる。
撹拌ブレードとして平坦な円盤の場合、軸流は0であろう。プロペラのような撹拌ブレードの場合、軸流は過度に高くなり、それによって混合チャンバー内の滞留時間は、過度に小さくなるであろう。チャンバーの滞留時間tresは、
(式4)
(式中、Vは、チャンバーの容積である)によって近似できる。
resは、少なくとも0.1ミリ秒であるべきであるという条件で、当業者は、何が適当な撹拌ブレードであるかを決定できる。
上記から、混合チャンバー内の有機化合物の滞留時間は、とりわけ型、例えば撹拌ブレードの形状及びサイズ、並びに混合強度の選択によって変更できることが分かる。混合チャンバー内での過度に短い滞留時間は、容器中への非常に過飽和な溶液の供給のために、混合チャンバー外での制御されていない核形成をもたらすことになる。混合チャンバー内での過度に長い滞留時間は、過剰な凝集及び成長をもたらす可能性がある。さらなる実施形態では、滞留時間は、混合チャンバーの上面及び/又は底面を(部分的に)遮断することによって影響される。
混合チャンバー内で引き起こされる非常に高い乱流は、作り出される可能性がある微結晶の凝集物に対して脱凝集効果をもたらすという追加の利点を有する。凝集は、典型的には、結晶密度及び過飽和の非常に強い作用である。本発明では、混合チャンバー内で非常に高い過飽和が作り出されることによって、多数で微細な結晶が生成される。これらの結晶の凝集は、通常の結晶化容器及び通常の撹拌速度を用いる場合のこれらの条件下で予期される。しかし、本発明の好ましい条件を用いて、凝集を防止でき、保護コロイドを用いることなどの、凝集を回避するための追加の対策を取る必要がない。撹拌手段の形状、1秒当たりの回転及び混合チャンバーのサイズの適切な選択によって、混合チャンバー内の推定滞留時間は、数マイクロ秒から数秒まで変更できる。多くの場合、溶媒及び非溶媒は、温度と共に、核形成が非常に速い、例えば1マイクロ秒及びさらに10−9秒未満より速いように選択できる。したがって、等方性乱流混合は、非常に重要な要因であるが、これは、こうした非常に速い核形成速度で、混合効率が低減された状態では、凝集はほとんど不可避であるためである。
また、このような速い核形成時間を有さない化合物については、混合チャンバー内での滞留時間は過度に長くないべきであるが、これは、結晶化プロセスの効率が低くなり、長い滞留時間によって、広い粒子サイズ分布を得ることになり、平均でより大きな結晶サイズを得ることになるためである。実際には、混合チャンバー滞留時間は、3秒を超えないことが好ましく、ほとんどの場合において、1秒未満であることが好ましい。
本発明者らの経験では、混合チャンバー内の滞留時間は、好ましくは少なくとも0.1ミリ秒であるが、これは、より短い滞留時間では、成長が不十分であり、合体し、凝集する傾向のある不安定な粒子を提供する場合があるためである。
核形成が、遅く、例えば10−3から10−6秒までで、進行する場合、滞留時間が10−1超であるが、例えば5秒未満及びより好ましくは3秒未満であるような条件が選択されることが好ましい。
核形成の間、混合チャンバー内で核形成を開始するのに十分な過飽和が存在することが重要である。非溶媒を含む混合チャンバー中への、有機化合物の溶液の添加を開始した後、核形成が始まる臨界過飽和レベルは、数分の1秒以内に得られる。全結晶化プロセスの間、この過飽和は維持されるべきである。等方性乱流混合によって、結晶化される化合物は、非常に短い時間で混合チャンバーにわたって等方的に分布する。これによって、核形成及び成長は、ほとんど専ら混合チャンバー内で起こることになり、流出液体中の濃度は、もはや核形成が起こらない値まで低減される。
混合チャンバー内の撹拌手段の高さの位置は、変更することができる。チャンバーの下端、チャンバーの中間部又は上部は、撹拌手段が有効となり得る位置である。好ましい位置は、注入口のできるだけ近くであり、好ましくは同じ高さであり、この注入口を介して、有機化合物の溶液及び又は非溶媒が混合チャンバー中に加えられる。注入口の好ましい位置は、撹拌ブレードまでの距離が最も短い位置である。これは、正方形の底部を有する混合チャンバーについて、注入口管は、辺部、好ましくは辺部の中央であり、角部でないところに配置されるべきであることを意味する。注入口が撹拌ブレードと同じ高さにあり、注入口が撹拌ブレードのできるだけ近くにある場合、1000rpmの回転速度を用いることができるが、より好ましくは、回転速度は10000rpm超である。この場合、レイノルズ数は、10超、好ましくは10超、及びさらにより好ましくは10超であるべきである。注入口管の好ましい位置は、撹拌ブレードと同じ高さであるが、依然として良好な結果を得ている限り、これらの位置は異なっていてもよい。しかし、後者の場合、注入口管と撹拌ブレードとの間の位置の差は、混合チャンバーの全高の30%より大きく異なっていないのが好ましく、これは、より大きな差では、好ましい小さな結晶を得ることが非常に困難であるためである。注入口の位置が、撹拌ブレードの位置と異なる場合、撹拌速度は、15000rpm以上の値まで増加させることが好ましく、10以上のレイノルズ数まで増加させることが好ましい。上記の本明細書で用いた、「同じ高さ」という句は、当業者が理解することになるように、いくらかのずれが許される。これは例えば、1又は複数の注入口の中心は、撹拌ブレードの高さの中心と共に、混合チャンバーの高さの10%又は8%又は6%又は5%又は4%又は3%又は2%又は1%未満の高さの差以内であることを意味する。
したがって特に、本発明は、有機化合物の制御された沈殿のための方法であって、前記有機化合物の溶液を提供するステップ、それぞれがシャフト及び1又は複数の撹拌ブレードを備えた撹拌手段であって、等方性混合を提供することのできる、1又は複数の撹拌手段を備え、有機化合物が溶解しない液体(非溶媒)を含む容器の内側に配置され、この容器と開放連結されており、前記非溶媒の液面下に配置されている混合チャンバー中に、1又は複数の注入口を介して前記溶液を加えるステップであって、この混合チャンバーへの前記溶液の添加により、前記混合チャンバー内の混合物中における1.5超の前記有機化合物の過飽和S10が提供され、前記有機化合物の結晶の結晶化及び成長がもたらされ、この撹拌手段は、動作可能であり、撹拌ブレード及び1又は複数の注入口が、混合チャンバー内で同じ高さ上にない場合、少なくとも10のレイノルズ数を特徴とする等方性混合を提供し、その高さの差は混合チャンバーの高さの30%以下であり、或いはこの撹拌手段は、撹拌ブレード及び1又は複数の注入口が、混合チャンバー内で同じ高さに配置されている場合、少なくとも10の撹拌ブレードのレイノルズ数を特徴とする等方性混合を提供し、前記混合チャンバー内において0.1ミリ秒より長い前記有機化合物の滞留時間を提供するステップを含む方法に関する。
流体供給速度及び注入口の直径は、決定的ではない。混合チャンバーに加えられる溶液の流量は、自由に選択することができるが、幾分多い流量で、最良の結果が得られる。可能である沈殿容器のサイズ、及び様々なサイズを有することのできる混合チャンバーを考慮すると、好ましい流量は、混合チャンバーのサイズに関連して、最良に表すことができる。好ましい1秒当たりの注入量は、混合チャンバーの容積の少なくとも1%であり、より好ましくは、混合チャンバーの容積の少なくとも5%である(混合チャンバーが100cmの容積を有する場合、適当な流量は、例えば5ml/秒=300ml/分とすることができる)。しかし、良好な結果は、混合チャンバー内の混合が等方性である限り、低減された流量でも得られる。管の注入口は、様々な直径を有することができる。直径は、混合チャンバーの高さの約10%未満であることが好ましい。
溶媒及び抗溶媒は、相互の混和性の制限のみを考慮して選択できる。また、1種の非溶媒と組み合わせた溶媒の混合物、又は1種の溶媒と組み合わせた非溶媒の混合物、又は非溶媒の混合物と組み合わせた溶媒の混合物を用いることができる。しかし、環境的な理由のため、1種の溶媒及び1種の抗溶媒を用いて、できる限り単純な系を作製することが好ましい。混合物は、もちろん、混合物中の有機化合物の溶解度が、純溶媒中よりも著しく低いように選択されるべきである。
高レベルの過飽和は、本発明による結晶化方法において有利であることが判明した。そのような過飽和は、定義することが困難であるため、また実用的な理由のため、本発明者らは、
(式中、C10は、添加開始後10秒での溶質の計算濃度に等しく、C10,eは、添加開始後10秒での溶質の平衡溶質濃度に等しい)として定義される、添加開始後10秒での過飽和比Sを用いた。S10は、1.5より高いことが好ましい。一実施形態では、S10は2.5より高く、別の実施形態では、S10は5より高い。結晶化させる有機化合物に応じて、S10のより高い値、例えば10以上又は100以上又はその中間の任意の値、も得ることができ、100超の値でさえも得ることができる。本発明の方法は、混合チャンバー内で過飽和を有することができ、それにより混合チャンバー内で核形成及び成長(誘導)が起こり、そのために容器のバルク液体中で、もはや成長又は核形成が起こらない、すべての化合物に用いることができる。
反応物の混合物は、混合チャンバー内での、短いが(通常1秒未満)、最適な滞留時間の後、混合チャンバーから容器中へ排出される。容器内では、過飽和がなく、したがって容器内で核形成又は成長は起こらない。この容器は、バルク混合を高め、必要であれば懸濁液を分散させ続けるために、アンカーインペラを備えていてもよい。
さらに必要に応じて、容器内の任意の位置にバッフルを加えることができることによって、回転する撹拌機の軸及びブレードによって引き起こされ得る渦による空気の同伴を阻害することができる。
渦を防止するためのさらなる方法は、混合チャンバーの中心に配置されたインペラ上に、反渦リング(anti vortex ring)(円形プレート)を適用することである。この反渦リングの、混合チャンバーの上部までの距離は、非常に小さくすることができ、例えば、1cm未満又はさらには0.5cm未満とすることができる。このようなリングを配置することは、滞留時間及び混合効率にも影響するだろう。
本発明の方法を用いて、ある特定の有機化合物について、特定の溶媒抗溶媒系において、混合チャンバー中への溶解した化合物の様々な添加流量、様々なサイズの混合チャンバー及び又は様々な撹拌速度及び又は撹拌ブレード(高レイノルズ数を得る)を選択することによって、様々なサイズの結晶を作製することが可能である。
一般にまた予想外に、過飽和の量、撹拌速度及び他の条件を同じに維持した場合、より小さな混合チャンバー容積は、より小さな結晶サイズをもたらすことになる。これは、現行のサイズの混合チャンバー及び混合手段を用いて、さらに小さなサイズの結晶を得ることができない場合に、特に興味深い。したがって、より大きな混合チャンバーを選択することにより、より大きな結晶が得られることになる。したがって、さらなる実施形態では、本発明は、様々なサイズの混合チャンバーを選択することによって、沈殿する物質のサイズを制御するための、上述した方法に関する。
本発明の一実施形態では、容器の温度、及びより具体的には、混合チャンバー内の温度は、温度変動が、所定の設定温度からプラスマイナス2℃以下となるような様式で制御されることが好ましいが、これは、温度はとりわけ、有機化合物の溶解度を決定するためである。例えば、放散されたかき混ぜパワーによる、混合チャンバー内の混合物の過度な温度上昇は、引き続く容器内での冷却によって凝集を引き起こす場合がある。本発明の別の実施形態では、混合容器内の温度は、容器内の混合物の温度より低く維持される。
温度差は、摂氏10度又は10度超、例えば摂氏20度若しくは30度若しくはさらに40度、若しくは50度若しくはさらに摂氏60度という高さ、若しくはそれ以上とすることができる。沈殿する物質又は沈殿する物質を形成する成分の溶液の温度は、混合チャンバー/容器内の温度より一般には高い。混合チャンバーの、容器の残り部分との開放接触のため、混合チャンバーと容器の残り部分との間に温度差を施すことは困難である。しかし、条件が良好に選択される場合、容器と比較して、混合チャンバー内で低い温度を生成することができる。かなりの量の非常に冷たい非溶媒及び沈殿する物質の、その溶媒中の暖かい溶液を、周囲温度で混合チャンバー内の出発溶液中に加える場合、この添加の時間の間に、混合チャンバーの外側の温度より低い、前記混合チャンバー内の温度を達成することが可能である。混合チャンバー内のより低い温度によって、沈殿する物質の溶解度が低下し、したがってすべての溶液の温度が同一である場合よりもさらに、混合チャンバー内での過飽和が増大することになる。
所望の結晶の種類、平均サイズ、サイズ分布及び収量に応じて、当業者は、条件、例えば、温度、pH、(抗)溶媒(複数も)、イオン強度、沈殿する物質(複数も)の添加流量、沈殿する物質(複数も)の濃度、かき混ぜ速度、かき混ぜ方向、混合チャンバーのサイズなどを選択することができ、この条件下で適切な過飽和が混合チャンバー内で確立される。例えば、高過飽和に有利である条件は、逆添加、低温、高添加流量、高濃度の有機化合物、小さなサイズの混合チャンバーである。例えば、低過飽和に有利である条件は、通常添加、低添加流量、低濃度の有機化合物、高温、大きなサイズの混合チャンバーなどである。
一般に、混合チャンバー内で形成される結晶は、結晶化が起こる条件の結果として、所望の平均サイズ及びサイズ分布を有することになる。形成される結晶は、容器中に排出され、適当な量が形成したらそこから結晶を採取できる。
本発明の方法により、従来方法によって到達できない、非常に小さな平均サイズ及び非常に狭いサイズ分布を伴った結晶がもたらされるが、サイズ分布を狭く維持しながら、沈殿結晶のサイズを増大させる必要のある状況が起こり得る。そのような場合、本発明の結晶化の後に、成長段階を続けることができる。通常、これは、再核形成が防止されるように、より遅い速度で結晶化される物質(複数も)を加えることで十分である。成長段階に影響を及ぼすための適当な手段は、容器の内容物の温度を変更することによるものである。再核形成を伴わないで結晶をより大きなサイズに成長させる別の手段は、容器中に非常に小さな粒子を加えることによるものである。これらの非常に微細な粒子は、最初の沈殿結晶よりもサイズが非常に小さくあるべきである。この非常に微細な粒子は、より大きな最初に存在する粒子より大きな溶解度を有する。より小さい粒子は、溶解し、比較的穏やかな過飽和を引き起こし、混合チャンバー又は容器内で、再核形成を伴うことなく、最初の粒子を成長させることになる。
上述した、沈殿をもたらす2つのタイプのプロセスを参照すると、抗溶媒タイプの沈殿プロセスの例は、以下の通りである。溶解した結晶化される物質を混合チャンバー中に注入する。混合チャンバー及び容器内に非溶媒が存在し、したがって沈殿物が形成する。混合チャンバー及び容器内に、両溶媒(溶媒及び非溶媒)の混合物が存在することも可能である。結晶化の間に、結晶化物質を含む溶媒及び非溶媒が同時に加えられる。場合により、例えば溶媒沈殿法で、有機化合物又は生化学的化合物を結晶化させる場合、結晶化を開始する前に存在するバルク量は、溶媒及び非溶媒の混合物である。無極性非溶媒中に極性溶質を用い、混合が非効率的である場合、堆積が起こり得る。本発明の方法では、乱流等方性混合を適用するため、堆積の発生は起こりそうにない。本方法において堆積が起こると思われる場合でも、結晶化液体と接触している、プロセス中の部分は、テフロン(登録商標)、PVDFなどのような表面エネルギー低下被膜で被覆することができる。
別の実施形態では、非溶媒は、別のpH、温度などであるだけの、結晶化化合物を溶解させるのに用いられるのと同じ溶媒である。この例は、L−グルタミン酸ナトリウムの沈殿反応である。これは、pH7の水中に十分に溶解するが、この溶液を、酸性水溶液の注入と組み合わせて混合チャンバー内に注入し、出発水溶液を結果としてpH=3.22にすると、L−グルタミン酸の沈殿物が形成する(pH=3.22で、L−グルタミン酸は難溶性である)。このタイプの沈殿は、1つの注入口(pH=3.22にする溶液中に注入されるL−グルタミン酸ナトリウムの溶液)を介して、又は2つの注入口(同時に加えられるL−グルタミン酸ナトリウムの溶液+酸性溶液)を介して起こり得る。
反応沈殿は、以下のように単純な形式で説明される。2種(又はそれ以上)の可溶性化合物、例えばA(aq)及びB(aq)が同時に且つ別々に混合チャンバー中に導入される。AとBの反応生成物の溶解度が低いために、沈殿物が形成されることになる。反応:A(aq)+B(aq)→AB(s)。
形成した結晶の容器からの採取は、当技術分野でそれ自体知られている方法によって行われ、デカンテーション、1回又は複数回の洗浄ステップ、濾過、遠心分離、乾燥及びこれらのステップの組合せを含むことができる。
結晶を調査し、特徴づけるための分析技法として、X線結晶解析、ラマン分光法、赤外線分光法、固体核磁気共鳴(SSNMR,solid state nuclear magnetic resonance)、走査電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法(AFM,atomic force microscopy)、走査トンネル顕微鏡法(STM,scanning tunnelling microscopy)及び/又は密度測定が挙げられる。
平均粒子サイズ及び粒子サイズ分布は、走査型電子顕微鏡写真の母集団分析及びレーザー回折測定技法で測定できる。
本発明の方法は、非常に小さなサイズ及び非常に狭いサイズ分布を有する結晶を提供し、医学的用途において活性薬剤成分として用いられる化合物の結晶を得るために用いることができる。これは、このような結晶性活性薬剤成分が、肺/経皮/非経口及び経口の用途において用いられる液体組成物中に分散される医薬に、特に有益である。また、本結晶は、徐放製剤において有利である。
一実施形態では、本方法は、ホルモン、特にステロイドホルモンの沈殿のためである。さらなる実施形態では、本方法は、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾン二ナトリウム、酢酸クロロプレドニゾン、コルチコステロン、コルチゾン、デスオキシコルチコステロン、酢酸デスオキシコルチコステロン、ピバル酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、酢酸ジクロリゾン(dichlorisone acetate)、フルオシノロンアセトニド、フルオロヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、フルプレドニゾロン、フルランドレノロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、パラメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ピバル酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、アンドロステロン、フルオキシメステロン、メタンドロステノロン、メチルアンドロステンジオール、メチルテストステロン、ノルエタンドロロン、オキサンドロロン、オキシメトロン、プロメトロン(prometholone)、テストステロン、シピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、フェニル酢酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、エキレニン、エキリン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、ジプロピオン酸エストラジオール、エストリオール、エストロン、安息香酸エストロン、エチニルエストラジオール、メストラノール、アセトキシプレグネノロン、酢酸アナゲストン(anagestone acetate)、酢酸クロルマジノン、ジメチステロン、エチステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸フルロゲストン(flurogestone acetate)、ヒドロキシメチルプロゲステロン、酢酸ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、酢酸ヒドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メレンゲストロール、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチノドレル、ノルメチステロン(normethisterone)、プレグネノロン、プロゲステロン、アルドステロン、ヒドロキシジオンナトリウム、スピロノラクトンからなる群から選択される化合物の沈殿のためである。
[実施例]
実施例において、4リットルの容器を、144cmの混合チャンバーと共に用いた。
比較例1:
通常のかき混ぜでの正方形の混合チャンバー中への液内供給(submerged feed)を用いた、エタノール及びn−ヘプタンからのパラセタモールの結晶化
容器を、900mlのn−ヘプタン中15%(容積)エタノールで満たした。温度は、25℃に制御した。混合チャンバー内に、100ml/分の供給速度でn−ヘプタンを添加するのと同時に、350mlのエタノールに溶解させた45.5グラムのパラセタモールを、25ml/分の供給速度で加えた。両溶液は、25℃に制御した。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置(agitating device)を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び撹拌手段(かき混ぜ装置)は、米国特許第4289733号明細書に記載されている。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、350rpmで撹拌しているかき混ぜ装置の下であった。インペラのレイノルズ数NReは、1.6×10であった。両反応物流体の同時供給を14分間続け、その後沈殿物を濾過し、n−ヘプタンで洗浄し、採取することによって、26.7gの固体のパラセタモール(55%の収率)を得た。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後280秒である。S10=0.12。
この低い値のSで、大きな結晶を得た(図1を参照されたい)。
比較例2
通常のかき混ぜでの正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、エタノール及びn−ヘプタンからのパラセタモールの結晶化
容器を900mlのn−ヘプタンで満たした。温度は、25℃に制御した。100ml/分の供給速度でn−ヘプタンを添加するのと同時に、350mlのエタノールに溶解させた45.5グラムのパラセタモールを、25ml/分の供給速度で加えた。両溶液は、25℃に制御した。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び撹拌手段(かき混ぜ装置)は、米国特許第4289733号明細書に記載されている。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、350rpmで撹拌しているかき混ぜ装置の下であった。インペラのレイノルズ数NReは、1.6×10であった。両反応物流体の同時供給を13分間続け、その後沈殿物を濾過し、n−ヘプタンで洗浄し、採取することによって、25.2gの浮遊固体及び5.5gの容器表面に「こびりついた」固体のパラセタモール(全体で74%の収率)を得た。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後20秒であった。S10=5.4。撹拌が不十分であるので、堆積が起こり、大きな結晶を得た(図2を参照されたい)。
比較例3
高S10であるが、通常のかき混ぜでの正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、エタノール及びn−ヘプタンからのパラセタモールの結晶化
容器を900mlのn−ヘプタンで満たした。初期温度は、マイナス15℃に制御した。100ml/分の供給速度でn−ヘプタンを添加するのと同時に、350mlのエタノールに溶解させた45.5グラムのパラセタモールを、25ml/分の供給速度で加えた。両溶液は、25℃に制御した。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー、容器及び撹拌手段(かき混ぜ装置)は、米国特許第4289733号明細書に記載された装置のPTFE被覆バージョンであった。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、350rpmで撹拌しているかき混ぜ装置の下であった。インペラのレイノルズ数NReは、1.6×10であった。両反応物流体の同時供給を14分間続け、その後沈殿物を濾過し、n−ヘプタンで洗浄し、採取することによって、「こびりついた」固体パラセタモールの存在しない、37.1gの、浮遊固体(89%の収率)を得た。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後14秒未満であった。S10=13.7。堆積は観察されなかったが、図3は、主に望まれない結晶凝集物が形成されたことを示す。
比較例4
本発明のかき混ぜ手段での正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、エタノール及びn−ヘプタンからのパラセタモールの結晶化(通常の添加順序)
容器を、162.5gのパラセタモールの1250mlのエタノール溶液で満たした。温度は、25℃に制御した。2500mLのn−ヘプタンを、25℃に制御し、2つの注入口を介して均等に分割して、1000ml/分の供給速度で加えた。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び容器は、米国特許第4289733号明細書に記載されている。この実施例において、撹拌手段として、図9に示す撹拌ブレードを用いた。撹拌は14000rpmで行い、混合チャンバー内で激しい乱流を引き起こした。インペラのレイノルズ数NReは、2.2×10であった。両注入口を通した同時供給を2.5分間続け、その後沈殿物を濾過し、n−ヘプタンで洗浄し、採取することによって、81gの浮遊固体(全体で50%の収率)を得た。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後80秒であった。S10=0.91。図4は、本実施形態においても大きな結晶が形成されたことを示すが、これはおそらく、所要の過飽和に到達できなかったためである。
比較例5
本発明のかき混ぜ手段での正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、中速のかき混ぜ速度での、エタノール及びn−ヘプタンからのパラセタモールの結晶化(逆添加順序)
容器を2333mlのn−ヘプタンで満たした。初期温度は、25℃に制御した。1167mlのエタノールに溶解させた151グラムのパラセタモールを、25℃に制御し、2つの注入口を介して均等に分割して、1000ml/分の供給速度で加えた。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び容器は、米国特許第4289733号明細書に記載されている。この実施例において、撹拌手段として、撹拌ブレードは、図9に示した通りである。撹拌は3000rpmで行い、混合チャンバー内でほとんど乱流を引き起こさなかった。インペラのレイノルズ数NReは、9.3×10であった。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、撹拌ブレードの高さより7mm低かった。インペラの高さに対する注入口の高さのこのオフセットは、このバッチのSEM写真で分かるように、効果のない混合をもたらす。両反応物流体の同時供給を70秒間続け、その後沈殿物を濾過し、n−ヘプタンで洗浄し、採取することによって、84.9gの、10μmより非常に大きな平均サイズを有する浮遊固体を得た。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後2秒未満であった。S10=4.5。
図5から、これらの条件下での結晶化速度(核形成時間)は、混合速度より明らかに速く、中空の球状結晶構造を生じさせていると結論することができるだろう。明らかに、パラセタモール/エタノール溶液の液滴と混合チャンバー内の溶液との界面で、速い核形成及び成長により、液滴が分散し、周囲と混合する前に、結晶が出現した。最終の結晶サイズは、本発明の実施例1より著しく大きかった。撹拌ブレードと注入口を同じ高さにして同じレイノルズ数を用いて、又はより大きな撹拌ブレードを用いることにより、若しくは回転速度を増加させることにより、レイノルズ数を増加させることによって、より良好な結果を得ることができるだろう。
本発明の実施例1
本発明のかき混ぜ手段での正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、エタノール及びn−ヘプタンからのパラセタモールの結晶化(逆添加順序)
容器を2333mlのn−ヘプタンで満たした。初期温度は、25℃に制御した。1167mlのエタノールに溶解させた151グラムのパラセタモールを、25℃に制御し、2つの注入口を介して均等に分割して、1000ml/分の供給速度で加えた。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び容器は、米国特許第4289733号に記載されている。この実施例において、撹拌ブレードは、図9に示した通りである。撹拌は、14000rpmで行い、混合チャンバー内で激しい乱流を引き起こした。インペラのレイノルズ数NReは、6.6×10であった。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、撹拌ブレードと同一の高さであった。両反応物流体の同時供給を70秒間続け、その後沈殿物を濾過し、n−ヘプタンで洗浄し、採取することによって、「こびりついた」固体パラセタモールが存在しない、76.2グラムの浮遊固体(50.2%の収率)を得、平均サイズは約10μであった。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後2秒未満であった。S10=4.5。
図6から、非常に小さな結晶が形成され、そのサイズは、結晶化プロセスのためにそれほど変化しなかったことが明らかである。この方法は、収率に関してまだ最適化されていない。
本発明の実施例2
本発明のかき混ぜ手段での正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、エタノール及び水からのプレグネノロンの結晶化(逆添加順序)
容器を2500mlの水で満たした。初期温度は、2℃に制御した。1250mlのエタノールに溶解させた42.5グラムのプレグネノロンを、55℃に制御し、2つの注入口を介して均等に分割して、1000ml/分の供給速度で加えた。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び容器は、米国特許第4289733号に記載されている。この実施例において、撹拌ブレードは、図9に示した通りである。撹拌は、15000rpmで行い、混合チャンバー内で激しい乱流を引き起こした。インペラのレイノルズ数NReは、3.9×10であった。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、かき混ぜ装置の下であった。両反応物流体の同時供給を75秒間続け、その後沈殿物を濾過し、水で洗浄し、採取した。図7は、平均サイズ1〜2μmを有する結晶が、著しく凝集することなく、装置表面上に固体がこびりつくことなく得られたことを示す。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後2秒未満であった。S10=200(推定)。
本発明の実施例3
本発明のかき混ぜ手段での正方形の混合チャンバー中への液内供給を用いた、中速度添加での、エタノール及び水からのプレグネノロンの結晶化(逆添加順序)
容器を1500mlの水で満たした。初期温度は、2℃に制御した。750mlのエタノールに溶解させた25.5グラムのプレグネノロンを、55℃にサーモスタットで調節し、2つの注入口を介して均等に分割して、100ml/分の供給速度で加えた。添加の開始時に、混合チャンバー及びかき混ぜ装置を、容器内に存在する流体中に完全に浸漬した。混合チャンバー及び容器は、米国特許第4289733号に記載されている。この場合において、PTFE被覆は適用しなかった。この実施例において、撹拌ブレードは、図9に示した通りであった。撹拌は、15000rpmで行い、混合チャンバー内で激しい乱流を引き起こした。インペラのレイノルズ数NReは、3.9×10であった。両反応物の注入口の位置は、混合チャンバーの相対する側で、かき混ぜ装置の下であった。両反応物流体の同時供給を450秒間続け、その後沈殿物を濾過し、水で洗浄し、採取した。1〜10μmの平均サイズを有する結晶が、著しく凝集することなく、装置表面上に固体がこびりつくことなく得られた。図8を参照されたい。視覚的に観察される結晶の誘導時間は、添加開始後2秒未満であった。S10=80(推定)。
本発明の実施例1、2及び3において適用したのと同一の条件下で、化合物プロゲステロン、コルテキソロン、テストステロン、ヒドロコルチゾン及びデスオキシコルチコステロンは、同様の小さな結晶及び狭い結晶サイズ分布及び形態をもたらした。
なし

Claims (18)

  1. 有機化合物の制御された沈殿のための方法であって、前記有機化合物の溶液を提供するステップと、それぞれがシャフト及び1又は複数の撹拌ブレードを備えた撹拌手段であって、等方性混合を提供することのできる1又は複数の前記撹拌手段を備え、前記有機化合物が溶解しない液体(非溶媒)を含む容器の内側に配置され、前記容器と開放連結されており、前記非溶媒の液面下に配置されている混合チャンバー中に、1又は複数の注入口を介して前記溶液を加えるステップであって、前記混合チャンバーへの前記溶液の添加により、前記混合チャンバー内の混合物中における1.5超の前記有機化合物の過飽和S10が提供され、前記有機化合物の結晶の結晶化及び成長がもたらされ、前記撹拌手段は、動作可能であり、前記撹拌ブレード及び1又は複数の注入口が前記混合チャンバー内で同じ高さにない場合、少なくとも10のレイノルズ数を特徴とする等方性混合を提供し、その高さの差は前記混合チャンバーの高さの30%以下であり、或いは前記撹拌手段は、前記撹拌ブレード及び1又は複数の注入口が前記混合チャンバー内で同じ高さに配置されている場合、少なくとも10の前記撹拌ブレードのレイノルズ数を特徴とする等方性混合を提供し、前記混合チャンバー内において0.1ミリ秒より長い前記有機化合物の滞留時間を提供するステップとを含む方法。
  2. 滞留時間が5秒未満、好ましくは3秒未満、より好ましくは1秒未満である、請求項1に記載の方法。
  3. 過飽和S10が5超である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 過飽和S10が100超である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. 非溶媒が溶媒の混合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 同時に、有機化合物の溶液の添加とは別に、沈殿する有機化合物のための非溶媒が混合チャンバー中に導入される、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 沈殿する有機化合物が混合チャンバー内で形成される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 有機化合物が、共有結合又はイオン結合の形成を伴う実質的に瞬間的な化学反応、例えば、プロトン付加/脱プロトンによって、陰イオン/陽イオン交換によって、酸付加塩形成/遊離などによって、又は任意の他の種類の反応によって形成される、請求項7に記載の方法。
  9. 撹拌ブレード及び1又は複数の注入口が、混合チャンバー内で同じ高さに配置されている、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 撹拌ブレードのレイノルズ数が、10超、より好ましくは10超である、請求項9に記載の方法。
  11. 撹拌ブレード及び1又は複数の注入口が、混合チャンバー内で同じ高さになく、その高さの差が前記混合チャンバーの高さの30%以下である、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  12. 撹拌ブレードの直径が、混合チャンバーの最小寸法の少なくとも50%、より好ましくは70%、さらにより好ましくは80と95%の間である、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 毎秒、混合チャンバーの容積の1%超、好ましくは5%超の量の結晶化される有機化合物の溶液が混合チャンバーに加えられる、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 混合チャンバー及び/又は容器が温度制御手段を備える、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 有機化合物がホルモン、好ましくはステロイドホルモンである、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. ホルモンが、ベタメタゾン、酢酸ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾン二ナトリウム、酢酸クロロプレドニゾン、コルチコステロン、コルチゾン、デスオキシコルチコステロン、酢酸デスオキシコルチコステロン、ピバル酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、酢酸ジクロリゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオロヒドロコルチゾン、フルオロメトロン、フルプレドニゾロン、フルランドレノロン、ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コハク酸ヒドロコルチゾンナトリウム、メチルプレドニゾロン、コハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム、パラメタゾン、酢酸パラメタゾン、プレドニゾロン、リン酸プレドニゾロンナトリウム、ピバル酸プレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニド、二酢酸トリアムシノロン、アンドロステロン、フルオキシメステロン、メタンドロステノロン、メチルアンドロステンジオール、メチルテストステロン、ノルエタンドロロン、オキサンドロロン、オキシメトロン、プロメトロン、テストステロン、シピオン酸テストステロン、エナント酸テストステロン、フェニル酢酸テストステロン、プロピオン酸テストステロン、エキレニン、エキリン、エストラジオール、安息香酸エストラジオール、シピオン酸エストラジオール、ジプロピオン酸エストラジオール、エストリオール、エストロン、安息香酸エストロン、エチニルエストラジオール、メストラノール、アセトキシプレグネノロン、酢酸アナゲストン、酢酸クロルマジノン、ジメチステロン、エチステロン、二酢酸エチノジオール、酢酸フルロゲストン、ヒドロキシメチルプロゲステロン、酢酸ヒドロキシメチルプロゲステロン、ヒドロキシプロゲステロン、酢酸ヒドロキシプロゲステロン、カプロン酸ヒドロキシプロゲステロン、酢酸メレンゲストロール、ノルエチンドロン、酢酸ノルエチンドロン、ノルエチステロン、ノルエチノドレル、ノルメチステロン、プレグネノロン、プロゲステロン、アルドステロン、ヒドロキシジオンナトリウム、スピロノラクトンからなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
  17. 請求項1〜16のいずれかに記載の方法における、等方性乱流混合ができる混合手段を備えた、US4289733、EP523842、EP708362、EP1357423、EP709723、US2003/0224308、US6050720及びUS5202226に開示されている沈殿チャンバーのいずれかの使用。
  18. 医薬中の活性薬剤成分としての、請求項1〜16のいずれかに記載の方法によって得られる沈殿物の使用であって、前記活性薬剤成分が、肺/経皮/非経口又は経口の用途において用いるための液体組成物中に分散される、使用。
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