JP2009522281A - 翻訳機能障害に基づく治療法 - Google Patents

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Abstract

真核生物翻訳開始因子eIF4Eを阻害するための方法および組成物を提供する。そのような方法および組成物は、単体で使用してもよく、または遺伝子療法などの、細胞増殖の阻害および/または癌の処置のための他の療法と併用してもよい。

Description

政府支援
本願発明の一部は、NIHの研究補助費認可番号CA 88991、PO1 AI44236-01、S10 RRO 9145、CA 80728およびCA 98571、ならびにNSFの研究補助費認可番号DBI-9724504による米国政府からの補助によるものである。したがって、米国政府は本願発明の一定の権利を有する。
関連出願の相互参照
本出願は、本願明細書にその全体を引用によって引用される、2005年12月28日に提出の米国仮特許出願第60/754,461号、2006年4月22日に提出の第60/794,048号、2006年9月29日提出の第60/848,583号、および2006年10月25日提出の第60/854404号の優先権を主張する。
背景
真核生物翻訳開始因子eIF4E(4E)は、細胞成長の調節に関わっている。4Eの中程度の過剰発現によって無調節の成長と悪性形質転換が生じる。4Eの核と細胞質の機能はどちらも、細胞の形質転換の能力に寄与する。in vivoにおける4Eの過剰発現によって明らかな腫瘍形成が生じ、4Eの過剰発現がmycマウス背景の中に置かれた場合、腫瘍形成の開始が大きく促進されるので、4Eは他の腫瘍遺伝子と協調して新生物形質転換を促進すると考えられる。4Eは、癌によって上方調節される場合にその発現が転移性疾患の前兆となる7種類の遺伝子のうちの一つであると考えられている。切除縁内に4Eの高活性が存在することが予後不良の因子であることを実証するさまざまな研究が行われてきた。
細胞質では、4Eは、酵母菌からヒトまで高度に保存されているプロセスであるキャップ依存性翻訳に必要である。4Eは、mRNAの5’末端にあるメチル-7-グアノシンキャップ部分に結合し、その後mRNAをリボソームに補充すると考えられている。
核では、4Eは細胞周期の進行のほぼ全段階に影響を与える、RNA制御における重要な中心点である。具体的には、4Eは、細胞周期の進行に関与する数種類の遺伝子のmRNA搬出、および一部の場合において翻訳を協調的に促進する。たとえば、4Eは、核から細胞質への少なくとも2つのmRNA、シクリンD1、およびオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の搬出を促進するように機能しながら、GAPDHまたはアクチンmRNAの核から細胞質への輸送に影響を与えない。さらに、4EのmRNA搬出機能は発癌性形質転換活性に関連するというエビデンスもある。
悪性表現型を維持し促進する腫瘍サプレッサおよび腫瘍遺伝子の無制御発現が記述されている。これらの分子の中には、p53、RbおよびAPCのような腫瘍サプレッサ、およびmyc、シクリンD1、および4Eなどの腫瘍遺伝子がある。それらの相互作用が、自己強化型フィードバックループのネットワークを構成し、主要素の不活性化によって新生物表現型の逆転、時には持続的な喪失を引き起こすことができる。
4Eはさまざまな悪性細胞株、ならびに乳癌、大腸癌、頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、および慢性および急性骨髄性白血病を含む原発性ヒト腫瘍に過剰発現する。同様に、齧歯類細胞における4Eの中程度の過剰発現でも、無調節の成長と悪性形質転換が生じる。
4Eの上方調節は、キャップ依存性翻訳の重要な段階での作用と、5’7-メチルグアノシンmRNAキャップ構造との特定の相互作用の結果生じる転写物のリボソームへの補充による新生生物の成長と生存に必須であるにもかかわらず、すべてのキャップ依存性転写物を増やすのではなく、4E感受性転写物の特定のサブセットだけを増やす。
4Eの約70%が哺乳動物の細胞核に存在し、酵母菌、アフリカツメガエル、そしてヒトなど多種多様な生物の核小体と会合している。ここで、4Eは、BアクチンおよびGAPDHなどのハウスキーピング遺伝子のものではなく、シクリンD1などの転写物の特定のサブセットのmRNAの輸送を促進する。4Eが媒介するmRNA輸送と翻訳のレベルでの遺伝子発現の転写後制御は、異なる遺伝子特異性を呈す。ある遺伝子は輸送のレベルで制御され(たとえばシクリンD1)、あるものは翻訳のレベルで(VEGF)、またあるものは両方のレベルで制御され(ODC)、さらにあるものはいずれのレベルでも制御を受けない(GAPDH)。m7Gキャップへの結合は、4EによるmRNA輸送と翻訳の両方を必要とする。どちらも、細胞を形質変換するこの能力に寄与している。
過去の観察では、シクリンD1とGAPDHを判別する4Eの能力は驚くべきものだと示唆している。従来は、4Eは、他の配列特異的な特性にかかわらずすべてのmRNAに認められるm7Gキャップに結合すると見られていたからである。したがって、この機能的判別は、我々が理解する核における4E
mRNA認識から見ると謎である。
4Eの高活性は、細胞、組織、器官の中で発現するmRNAの全体の集合のサブセットの翻訳(転写ではない)を選択的に媒介するのが観察されている。具体的には、4E活性が高レベルで存在する細胞、腫瘍、および/または癌の中では、複合5’UTR領域を有するmRNA転写物の翻訳は選択的に上方制御されている。4Eの高活性が存在する環境において翻訳が上方制御されている遺伝子のレパートリは、細胞周期、血管新生、および増殖などの制御に関与することが知られる遺伝子の目録である。
既存の癌療法は、標的性/選択性が効率的ではないために患者が顕著な毒性や副作用を経験せざるを得ない状況にし、および/または多種多様な癌を解決することもできず、癌を終末期疾患のプロセスから、他の多くの疾患(いくつか例を挙げると心血管、糖尿病など)と同様に長期にわたって管理できる疾患に変えることもできない。既存の遺伝子療法は、溶解性ウイルス、プロドラッグ(aka自殺遺伝子)をコードするRNAを含有するベクター/ウイルス、抗血管新生剤、免疫制御サイトカイン、腫瘍サプレッサ毒素および溶解性ペプチドを条件付きで複製している。現在の遺伝子療法用ベクタ/ウイルスは、自殺遺伝子、毒素、溶解性ペプチド、および/またはタンパク質の輸送、並びに/またはプロセスについて、高レベルの4Eタンパク質の存在に依存している。
発明の概要
現在の治療方法および臨床処置のパラダイムでは、ウイルス性腫瘍崩壊の高度な管理、ウイルスまたはベクタ複製の高度な管理、または遺伝子治療用発現の高度な管理を提供できない。また、遺伝子療法の活性の高い効果および/または安全性を提供する方法もない。4E活性の小分子阻害物質など、遺伝子療法に代わる方法や補う方法はない。
提供するのは、mRNAの核から細胞質への輸送および/またはタンパク質翻訳プロセスを阻害する小分子阻害物質である。そのような阻害物質は、細胞、組織、腫瘍および/または癌の中で、4Eの高活性の生物学的影響、特に4E制御活性を選択的に標的とする。
さらに、本願明細書には、とりわけmRNAの核から細胞質への輸送および/またはmRNA翻訳の制御を促進する、遺伝子治療用ベクタおよびウイルスを含む組成物である。このベクタおよびウイルスは、ベクタおよび/またはウイルスの複製および/または溶解に必要な遺伝子治療用ベクタ/ウイルスの中に含有されるタンパク質をコードするmRNA、毒素、溶解性ペプチドおよび/またはタンパク質および/またはプロセスを含むがそれらに限定されない遺伝子治療用活性に必要な治療用タンパク質をコードするmRNA、およびプロドラッグ転換酵素(aka自殺遺伝子)、抗血管新生タンパク質、アポトーシスカスケード酵素、腫瘍サプレッサ、サイトカイン、および免疫学的に活性なタンパク質を含むがそれらに限定されない治療用タンパク質をコードするmRNA、ならびにRNAiアンチセンスなどを含んでよい。
小分子組成物ならびに遺伝子療法用ベクタおよびウイルスを含む組成物は、細胞および組織、特に癌および腫瘍細胞および組織の中、ならびに哺乳動物において、高4E活性、特に4Eレギュロン活性を阻害するために、単体でまたは組み合わせて使用してよい。さらに、小分子組成物ならびに遺伝子療法用ベクタおよびウイルスを含む組成物は、細胞および組織、特に癌および腫瘍細胞および組織の中、ならびに哺乳動物において、細胞増殖を阻害するために、単体でまたは組み合わせて使用してよい。そのような細胞、組織および哺乳動物は、好ましくは、高4E活性および/または高4Eレギュロン活性および/または4Eレギュロン成分を有してもよい。
高4E活性および/または4Eレギュロン活性および/または4Eレギュロン成分が存在する細胞増殖疾患の治療用の強化された方法および組成物であって、小分子および/または遺伝子療法を単体でまたは組み合わせて投与しても細胞増殖疾患または癌または腫瘍を消去することはできないが、持続する増殖と拡大を阻害して、宿主免疫系が細胞増殖疾患または腫瘍または癌のいずれかを消去する機会を提供するか、または追加の全身投与物質、生物製剤、または細胞毒の定期的な併用投与、および/または1つ以上の遺伝子療法論の併用処方を用いるかまたは用いないで、細胞増殖疾患または腫瘍または癌を小分子の定期投与によって管理できる、強化された方法および組成物を、本願明細書に開示する。
さらに、たとえば高4E活性を有するなどの細胞、組織、および腫瘍の、向上したイメージングおよび可視化組成物および方法を提供する。そのような向上されたイメージングおよび可視化組成物および方法は、たとえば高4E状態の検出などに用いてもよい。高4E状態の検出は、外科手術中、治療効果の臨床経過および疾患の進行/回帰の追跡の診断、検出の方法として用いてもよい。
本方法の実施のためのキットも本願明細書に記載する。
本願発明の実施態様、その他の実施態様、およびその特色並びに特徴は、以下に記載する説明、図、および請求項から明らかになるだろう。
発明の詳細な説明
A. 定義
便宜上、本願明細書、実施例、および添付される特許請求の範囲に用いられる特定の用語をここにまとめる。他に定義のない限り、本願明細書に用いられたすべての技術および科学用語は、本願発明が属する当業者によって普通に理解されるものと同じ意味を有する。
本願明細書で用いられる冠詞「a」および「an」は、その冠詞の文法上の物体1つまたは1つより多い(すなわち少なくとも1つ)を意味する。例として、「an element」は1つの要素または1つより多い要素を意味する。
「投与する」という用語には、薬学的組成物または治療用物質を含むがそれらに限定されない本願発明の化合物を被験体の全身または被験体の体内または体表の特定の領域に送達するいかなる方法も含む。本願明細書に用いられる「全身投与」、「全身に投与した」、「末梢投与」および「末梢に投与した」という文言は、中枢神経への直接投与ではない、化合物、薬物、またはそのほかの物質の投与方法であって、その化合物、薬物、またはそのほかの物質が被験体の全身に入り、代謝およびたとえば皮下投与などそのほかの同様のプロセスを経るような投与を意味する。「非経口投与」および「非経口に投与した」という文言は、経腸および局所投与をのぞく投与形態で通常は注射による投与を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、眼窩内、嚢内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜内、クモ膜下、脊髄内、および胸骨内注射および輸液が、それらに限定されずに含まれる。
「癌」という用語は一般に、悪性の新生物または細胞の自然発生的な成長もしくは増殖のいずれかを意味する。本願明細書に記載のこの用語は、十分に発達した悪性新生物と前癌病変のいずれもを包含する。「癌」を有する被験体は、たとえば腫瘍または白血病などの白血球増殖を有していてよい。ある実施態様では、癌を有する被験体は充実性腫瘍などの腫瘍を有する被験体である。癌には、非小細胞肺癌(NSCLC)、精巣癌、卵巣癌、子宮癌、子宮頸癌、膵臓癌、直腸癌(CRC)、乳癌、前立腺癌、胃(gastric)癌、皮膚癌、胃(stomach)癌、食道癌、膀胱癌、甲状腺癌、副甲状腺癌、脳癌、胆道癌、黄紋筋肉腫、頭頸部癌、結節硬化症、ならびに非ホジキンリンパ腫(NHL)、急性骨髄性白血病(AML)、および慢性骨髄性白血病の急性転化をそれらに限定せずに含む血液癌が、それらに限定されずに含まれる。
「含む(comprise)」および「含む(comprising)」は、包含的でオープンな意味での、さらなる要素が含まれるかもしれないという意味で用いられる。
「有効量」という用語は、たとえばin vitro またはin vivoのいずれかにおける腫瘍の低減などをそれに限定せずに含む、望ましい結果をもたらすのに十分な、本願発明の化合物を含む化合物、物質または組成物の量を意味する。本願発明の薬学的組成物の有効量は、たとえば患者における癌の進行の緩和、安定、予防または遅延をそれらに限定せずに含む、望ましい臨床成果をもたらすのに十分な、薬学的組成物の量である。いずれの場合にも、本願発明の化合物の有効量を、1回以上の投与回数で投与することができる。これら上述の指標の検出および測定は当業者に知られており、たとえば全身腫瘍組織量の低減、腫瘍サイズの阻害、続発性腫瘍の増殖の低下、腫瘍組織における遺伝子の発現、バイオマーカの存在、リンパ節転移、組織学的等級、および核等級がそれらに限定されずに含まれる。
「含まれる(含む)(including)」という用語は、「含まれるがそれらに限定されない」という意味で用いられる。「含まれる(含む)(including)」および「含まれるがそれらに限定されない」は、交換可能に用いられる。
「4E活性」または「4Eの活性」という用語には、4Eの高発現、4Eの高タンパク質量、4Eレギュロン活性、および/または4Eレギュロン要素、4Eレギュロンの制御下における要素の発現および/または活性もしくはレベル、選択されたメッセージの核から細胞質への大量輸送(特に実施例2および4に詳述するシクリンD1およびさらなるメッセージ)、並びに4Eのリン酸化状態およびe1F4eBPのレベルがそれらに限定されずに含まれる、4E遺伝子またはタンパク質の生物学的作用のいずれかが含まれる。
「4Eレギュロン活性」という用語は、4Eレギュロンの媒介体としての4E活性を意味し、4Eレギュロン活性化、4Eレギュロンの発現、輸送および/または活性が含まれる。
「患者」、または「被験体」、または「宿主」は、ヒトまたは非ヒト動物のいずれかを意味する。
「薬学的送達デバイス」という用語は、治療用物質または物質を被験体に投与するために用いることができるいずれのデバイスをも意味する。薬学的送達デバイスのこれに限定されない例には、皮下注射器、多チャンバ注射器、ステント、カテーテル、経皮パッチ、微小針、微小研磨器、および移植放出制御デバイスが含まれる。ある実施態様では、「薬学的送達デバイス」という用語は、注射前に2種類の化合物を混合することができる2チャンバ注射器を意味する。
「薬学的に許容な」という文言は、本願明細書では、適切な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、またはその他の問題もしくは合併症のない、妥当なベネフィット/リスク比に見合った、ヒトおよび動物の組織との接触に用いるのに好適な、化合物、物質、組成物および/または投与剤形を意味するために用いられる。
本願明細書に用いられる「薬学的に許容な担体」という文言は、当該化合物をある器官または体の部分から別の器官または体の部分へと運搬または輸送することに関与する、液体または固体充填剤、希釈剤、賦形剤、または物質を封入している溶媒などの、薬学的に許容な物質、組成物または賦形剤を意味する。各担体は、製剤の他の成分と適合性があるという意味において「許容」でなければならない。薬学的に許容な担体として用いることができる物質のいくつかの例には、(1)ラクトース、グルコース、およびスクロースなどの糖類、(2)トウモロコシデンプンおよびバレイショデンプンなどのデンプン、(3)カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体、(4)粉末状トラガカント、(5)モルト、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)カカオバター、および座剤用ロウなどの賦形剤、(9)ピーナツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、および大豆油などの油、(10)プロピレングリコールなどのグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、およびポリエチレングリコールなどのポリオール、(12)オレイン酸エチルおよびラウリル酸エチルなどのエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム、および水酸化アルミニウムなどの緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張生理食塩水、(18)リンガー溶液、(19)エチルアルコール、(20)pH緩衝溶液、(21)ポリカルボン酸エステルおよび/またはポリ無水物などのエステル、および(22)薬学的製剤に用いられるその他の無毒性適合性物質、が含まれる。
「薬学的に許容な塩」という用語は、化合物の比較的無毒な無機および有機酸付加塩を意味する。
「レギュロン」は、その制御タンパク質による制御下の遺伝子の集合である。「4Eレギュロン」は、実施例に記載され図24に示される4Eによる制御下の遺伝子の集合(「4Eレギュロン成分」)であって、4Eが成分として含まれる。
「小分子」は当業に知られる用語である。ある実施態様では、この用語は、分子量が約2000amu未満、または約1000amu未満、および約500amu未満の分子を意味する。
「脂肪族」という用語は当業に知られており、直鎖、分岐鎖、環状アルカン、アルケンまたはアルキンが含まれる。ある実施態様では、本願発明の脂肪族基は直鎖または分岐鎖であって、1乃至約20個の炭素原子を有する。
「アルキル」という用語は当業に知られており、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基、およびシクロアルキル置換アルキル基を含む、飽和脂肪族基が含まれる。ある実施態様では、直鎖または分岐鎖アルキルは、その骨格に約30個以下の炭素原子(たとえば直鎖の場合C1乃至C30、分岐鎖の場合はC3乃至C30)、代替的には約20個以下の炭素原子を有する。同様に、シクロアルキルはその環構造に約3乃至10個の炭素原子を有し、代替的には約5、6、または7個の炭素をその環構造に有する。
さらに、「アルキル」(または「低級アルキル」)という用語は「非置換アルキル」および「置換アルキル」の両方が含まれ、後者の場合、炭化水素骨格の1つ以上の炭素についている水素を置換する置換基を有するアルキル部分を意味する。そのような置換基には、たとえば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(たとえばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、またはアシルなど)、チオカルボニル(たとえばチオエステル、チオ酢酸、またはチオギ酸など)、アルコキシル、ホスホリル、ホスホン酸、ホスフィン酸、アミノ、アミド、アミジン、イミンシアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、硫酸、スルホン酸、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、または芳香族もしくはヘテロ芳香族基が含まれてよい。当業者は、炭化水素鎖上で置換された部分は、適宜それ自体置換されてもよいということを理解するだろう。たとえば、置換アルキルの置換基には、置換された、および置換されていない状態のアミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホン酸およびホスフィン酸を含む)、スルホニル(硫酸、スルホンアミド、スルファモイル、およびスルホン酸)、およびシリル基、ならびにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボン酸、およびエステル)、-CF3、および-CN などが含まれてよい。例示的な置換アルキルは後述の通りである。シクロアルキルは、さらにアルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、-CF3、および-CNなどで置換されてもよい。
「アラルキル」という用語は当業に知られており、アリール基で置換されたアルキル基(たとえば、芳香族基またはヘテロ芳香族基)が含まれる。
「アルケニル」および「アルキニル」という用語は当業に知られており、上述のアルキルと長さおよび可能な置換が類似する非飽和脂肪族基が含まれるが、少なくとも1つの二重結合または三重結合をそれぞれ含む、非飽和脂肪族基を含む。
炭素の数が他に指定されていない限り、「低級アルキル」は上に定義されたアルキル基であるが、骨格構造に1乃至10個の炭素、代替的には1乃至約6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。同様に、「低級アルケニル」および「低級アルキニル」は類似する鎖長を有する。
「ヘテロ原子」という用語は当業に知られており、炭素または水素以外の任意の元素が含まれる。具体的なヘテロ原子にはホウ素、窒素、酸素、リン、硫黄、およびセレン、さらに代替的には酸素、窒素、または硫黄が含まれる。
「アリール」という用語は当業に知られており、0乃至4個のヘテロ原子を含んでもよい5、6、および7員単環芳香族基が含まれ、たとえば、ベンゼン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジンおよびピリミジンなどが含まれてよい。環構造にヘテロ原子を有する当該アリール基はまた、「アリールヘテロ環」または「ヘテロ芳香族」ともよばれることがある。当該芳香族環は、たとえば、ハロゲン、アジド、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アルコキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族基もしくはヘテロ芳香族基、-CF3、または-CNなどの置換基と環上の1つ以上の位置が置換されてもよい。「アリール」という用語にはまた、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有する2つ以上の環を有する(当該環は「融合環」である)多環系であって、当該多環系において少なくとも1つの環は芳香族であって、たとえば他の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/またはヘテロシクリルであってもよい、多環系も含まれる。
オルソメタ、およびパラ(ortho、meta およびpara)という用語は当業に知られており、それぞれ1,2-、1,3- および1,4-二置換ベンゼンに用いる。たとえば、1,2-ジメチルベンゼンおよびortho-ジメチルベンゼンは同義である。
「ヘテロシクリル」および「ヘテロ環基」という用語は当業に知られており、約3乃至約10員環構造、たとえば3乃至約7員環が含まれ、当該環構造が1乃至4ヘテロ原子を含む環構造が含まれる。ヘテロ環は多環であってもよい。ヘテロシクリル基には、たとえば、チオフェン、チアントレン、フラン、ピラン、イソベンゾフラン、クロメン、キサンテン、フェノキサチン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、イソチアゾール、イソキサゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、インドリジン、イソインドール、インドール、インダゾール、プリン、キノリジン、イソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、カルバゾール、カルボリン、フェナントリジン、アクリジン、ピリミジン、フェナントロリン、フェナジン、フェナルサジン、フェノチアジン、フラザン、フェノキサジン、ピロリジン、オキソラン、チオラン、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、ラクトン、アゼチジノン及びピロリジノンなどのラクタム、スルタム、およびスルトンなどが含まれる。当該ヘテロ環は、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族基もしくはヘテロ芳香族基、-CF3、または-CNなどの、上述の置換基と環上の1つ以上の位置が置換されていてもよい。
「ポリシクリル」および「多環基」という用語は当業に知られており、2つ以上の環(たとえばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、及び/またはヘテロシクリル)が含まれ、2つの隣接する環が2つ以上の炭素を共有し、たとえば当該環が「融合環」である、2つ以上の環を意味する。隣接しない原子を介して結合している、たとえば3つ以上の原子が両方の環に共通である環は、「架橋」環とよばれる。多環の各環は、たとえば、ハロゲン、アルキル、アラルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、スルフヒドリル、イミノ、アミド、ホスホナート、ホスフィナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、エーテル、アルキルチオ、スルホニル、スルホンアミド、ケトン、アルデヒド、エステル、ヘテロシクリル、芳香族基もしくはヘテロ芳香族基、-CF3、または-CNなどの、上述の置換基と置換されていてもよい。
「炭素環」という用語は当業に知られており、環の各原子が炭素である芳香族または非芳香族環が含まれる。以下の当業に公知の用語は以下の意味を持つ。「ニトロ」という用語は-NO2を意味し、「ハロゲン」という用語は-F、-Cl、-Brまたは-Iを意味し、「スルフヒドリル」という用語は-SHを意味し、「ヒドロキシル」という用語は-OHを意味し、「スルホニル」という用語は-SO2-を意味する。
「アミン」および「アミノ」という用語は当業に知られており、非置換および置換アミンの両方が含まれ、たとえば、一般式
Figure 2009522281
であって、R50、R51およびR52はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61、またはR50およびR51がともにN原子に結合して4乃至8原子を有する環構造のヘテロ環を形成したものを表し、R61はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロ環または多環を表し、mはゼロまたは1乃至8の範囲内の整数である、一般式で表されてよい部分が含まれる。ある実施態様では、R50またはR51の片方だけがカルボニル基であってよく、たとえばR50、R51および窒素がともにイミドを形成しない。他の実施態様では、R50およびR51(ならびに任意でR52)はそれぞれ独立に水素、アルキル、アルケニル、または-(CH2)m-R61を表す。したがって、「アルキルアミン」という用語には、上述のアミン基であって、そこに結合する置換または非置換アルキルを有し、つまりR50およびR51の少なくとも1つがアルキル基である、アミン基が含まれる。
「アシルアミノ」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてR50は上に定義されたとおりであって、R54は水素、アルキル、アルケニル、または(CH2)m-R61であって、mおよびR61は上に定義されたとおりである、一般式によって表すことができる化学基が含まれる。
「アミド」という用語はアミノ置換カルボニルとして当業に認識されており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてR50およびR51は上述の定義の通りである、一般式で表すことができる化学基が含まれる。本願発明のアミドのある実施態様には、不安定である場合があるイミドは含まれないだろう。
「アルキルチオ」という用語は当業に認識されており、硫黄ラジカルが結合した、上述のとおりのアルキル基が含まれる。ある実施態様では、「アルキルチオ」基は、-S-アルキル、-S-アルケニル、-S-アルキニル、および-S-(CH2)m-R61の1つであって、mおよびR61が上に定義されたとおりである、化学基である。代表的なアルキルチオ基には、メチルチオ、およびエチルチオなどが含まれる。
「カルボニル」という用語は当業に認識されており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式において、X50は結合であるかまたは酸素もしくは硫黄を表し、R55は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R61、または薬学的に許容な塩を表す一般式によって表すこともできる化学基が含まれる。R56は水素、アルキル、アルケニル、または(CH2)m-R61であって、mおよびR61は上に定義されたとおりである。X50が酸素であってR55またはR56が水素ではない場合、当該式は「エステル」を表す。X50が酸素であって、R55が上に定義されたとおりの場合、当該化学基は本願明細書においてカルボキシル基であって、特にR55が水素の場合、当該式は「カルボン酸」を表す。X50が酸素であってR56が水素である場合、当該式は「ギ酸」を表す。一般に、上式の酸素原子が硫黄で置換されると、当該式は「チオカルボニル」基を表す。X50が硫黄であってR55またはR56が水素ではない場合、当該式は「チオエステル」を表す。X50が硫黄であってR55が水素である場合、当該式は「チオカルボン酸」を表す。X50が硫黄であってR56が水素である場合、当該式は「チオギ酸」を表す。一方で、X50が結合であってR55が水素ではない場合、上式は「ケトン」基を表す。X50が結合であってR55が水素である場合、上式は「アルデヒド」基を表す。
「アルコキシル」または「アルコキシ」という用語は当業に知られており、上述のとおり、酸素ラジカルが結合したアルキル基が含まれる。代表的なアルコキシル基には、メトキシ、エトキシ、プロピロキシ、およびtert-ブトキシなどが含まれる。「エーテル」は、2つの炭化水素が酸素によって共有結合したものである。したがって、アルキルをエステル化するアルキル基の置換基は、-O-アルキル、-O-アルケニル、-O-アルキニル、-O-(CH2)m-R61であってmまたはR61が上述の通りである化学基の1つによって表すことができるようなアルコキシルであるか、またはそのようなアルコキシルに似ている。
「スルホン酸」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてR57は電子対、水素、アルキル、シクロアルキル、またはアリールである、一般式によって表すこともできる部分が含まれる。
「硫酸」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該式においてR57は上述のとおりである、一般式で表すこともできる部分が含まれる。
「スルホンアミド」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてR50およびR56は上述の通りである、一般式で表すことができる部分が含まれる。
「スルファモイル」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてR50およびR51は上述の通りである、一般式で表すことができる部分が含まれる。
「スルホニル」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてR58は、以下の水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、またはヘテロアリールのうちの1つである、一般式によって表すこともできる部分が含まれる。
「スルホキシド」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該式においてR58は上述のとおりである、一般式で表すこともできる部分が含まれる。
「ホスホリル」という用語は当業に知られており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該式において、Q50がSまたはOを表し、R59が水素、低級アルキル、またはアリールを表す、式で表される部分が含まれる。たとえばアルキルなどを置換するために使われる場合、前記ホスホリルアルキルのホスホリル基は一般式、
Figure 2009522281
であって、当該式においてQ50およびR59はそれぞれ独立に上述のとおりであって、Q51はO、S、Nである一般式によって表すこともできる。Q50がSである場合、前記ホスホリル基は「ホスホロチオ酸基」である。
「亜ホスホルアミド」という用語は当業に認識されており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてQ51、R50、R51およびR59 は上述の通りである、一般式で表すことができる部分が含まれる。
「亜ホスホルアミド」という用語は当業に認識されており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてQ51、R50、R51およびR59 は上述の通りである、一般式で表すことができる部分が含まれる。
「亜ホスホンアミド」という用語は当業に認識されており、以下の一般式、
Figure 2009522281
であって、当該化学式においてQ51、R50、R51およびR59 は上述の通りであって、R60は低級アルキルまたはアリールである、一般式で表すことができる部分を含む。
類似する置換をアルケニル及びアルキニル基に施して、たとえばアミノアルケニル、アミノアルキニル、アミドアルケニル、アミドアルキニル、イミノアルケニル、イミノアルキニル、チオアルケニル、チオアルキニル、カルボニル置換アルケニルまたはアルキニルを生成することもできる。
他に明白に示されているかまたは文脈によって示されていない限り、たとえばアルキル、m、およびnなどの各表現が任意の構造に1回以上現れる場合、その定義は、同一の構造の他の箇所に現れる場合にはその定義とは独立であることを意図する。
Me、Et、Ph、Tf、Nf、Ts、およびMsという略語は、当業に認識されており、それぞれメチル、エチル、フェニル、トリフルオロメタンスルホニル、ノナフルオロブタンスルホニル、p-トルエンスルホニル、およびメタンスルホニルを表す。当業の有機化学者が利用する略語のさらに包括的なリストは、Journal of Organic
Chemistryの各巻の第1号に記載されており、このリストは典型的にはStandard List of Abbreviationsという表題の表に記載されている。
本願発明のある組成物は、特定の幾何学的形状または立体異性形状で存在していてよい。さらに、本願発明のある組成物は光学活性であってもよい。本願発明は、シス-およびトランス-異性体、R-およびS-鏡像異性体、ジアステレオマー、(D)-異性体、(L)-異性体、それらのラセミ混合物、およびその他のそれらの混合物を含むすべての化合物が、本願発明の範囲内に入ることを意図する。アルキル基などの置換基には、さらなる非対称炭素原子が存在する。そのようなすべての異性体、およびその混合物は本願発明に含まれることを意図する。
たとえば、本願明細書の化合物のある鏡像異性体が望ましい場合、非対称合成、またはキラル補助基を用いた誘導によって調製してもよく、その場合、得られたジアステレオマー混合物を分離して補助基を切断し、純粋な望ましい鏡像異性体を得る。代替的には、分子がアミノ基などの塩基性官能基、またはカルボキシル基などの酸性官能基を含む場合、適切な光学活性酸または塩基を用いてジアステレオマー塩を形成し、その後、当業に公知の分別再結晶法またはクロマトグラフィ法によって形成されたジアステレオマーを分解してから、純粋な鏡像異性体を回収する。
「置換」および「〜と置換した」という文言は当業に認識されており、そのような置換は置換された原子および置換基の許容された原子価に従っており、この置換によって再編成、環化、離脱またはその他の反応などの転換を自然発生的に生じない安定化合物が得られる、という暗黙の条件が含まれる。
「置換された」という文言には、有機化合物のすべての許容しうる置換基が含まれることも意図する。広い局面では、前記の許容しうる置換基には、有機化合物の非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環およびヘテロ環、芳香族および非芳香族置換基が含まれる。例示的な置換基には、たとえば上述の置換基が含まれる。前記の許容しうる置換基は、1つ以上の、同一のまたは異なる適切な有機化合物であってもよい。本願発明の目的のために、窒素などのヘテロ原子は水素置換基および/またはヘテロ原子の原子価を満たす本願明細書に記載の有機化合物の任意の許容しうる置換基を有していてもよい。本願発明は、いかなる形でも、有機化合物の許容しうる置換基によって限定されることを意図しない。
本願発明の目的のために、化学元素はPeriodic Table of the Elements,
CAS version, Handbook of Chemistry and Physics, 67th Ed., 1986-87の内表紙に従って同定される。「炭化水素」という用語は当業に認識されており、少なくとも1つの水素および1つの炭素原子を有するすべての許容しうる化合物が含まれる。たとえば、許容しうる炭化水素には、非環式および環式、分岐および非分岐、炭素環およびヘテロ環、芳香族および非芳香族の、置換または非置換であってよい有機化合物が含まれる。
「保護基」という用語は当業に認識されており、潜在的な反応性を有する官能基を望ましくない化学転換から保護する一時的な置換基が含まれる。そのような保護基の例には、カルボン酸のエステル、アルコールのシリルエーテル、ならびにアルデヒドのアセタールおよびケトンのケタールが含まれる。保護基化学の分野はまとめられている。 Greene et al., Protective Groups in Organic
Synthesis 2nd ed., Wiley, New
York, (1991)。
「ヒドロキシル保護基」という用語は当業に知られており、合成の過程中に望ましくない反応からヒドロキシ基を保護することを意図する化学基が含まれ、たとえばベンジル、または当業に知られるその他の好適なエステルもしくはエーテル基が含まれる。
「電子吸引基」という用語は、当業で認識されており、置換基が隣接する原子から荷電子を引き付ける置換基の傾向を意味する。電子吸引力の定量化は、ハメットシグマ(σ)定数による。この有名な定数は、たとえばMarch, Advanced Organic
Chemistry 251-259, (McGraw Hill Book Company, New York, 1977) など、多くの参考文献に記述されている。このハメット定数の値は、一般に電子供与基ではマイナス(NH2はσ(P) = - 0.66)、および電子吸引基ではプラス(ニトロ基はσ(P) = 0.78)であって、σ(P)はパラ置換を示す。例示的な電子吸引基には、ニトロ、アシル、ホルミル、スルホニル、トリフルオロメチル、シアノ、およびクロリドなどが含まれる。例示的な電子供与基には、アミノ、およびメトキシなどが含まれる。
B. 4E活性、細胞増殖、および癌を制御する小分子組成物
平行研究で、本願発明人らは、細胞内での4E活性の制御における、グアノシンリボヌクレオシド類似体と抗ウイルス剤リバビリン(Sidwell, R. W., et
al.(1972) Science 177:705-6)の潜在的な役割を調べた。リバビリンは現在、ラッサ熱ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、C型肝炎ウイルス、および重症急性呼吸器症候群コロナウイルスの感染症の処置に使われている。機構的には、リバビリンはグアノシンと化学的に類似しているために、ウイルスRNA依存性RNAポリメラーゼによってmRNAに誤って取り込まれることがあることが実証されており、この結果から、ポリオとHCVのゲノムの致死的な変異原性が生じることがわかっている。リバビリン三リン酸(RTP)はHCVポリメラーゼと解離定数0.58mMで結合することが認められており、これはHCVに対する治療効果を達成するのに必要なのがマイクロモル濃度であることと一致する。ミリモル濃度における効果とは対照的に、リバビリンがヒトリンパ球の成長を妨げるのはマイクロモルレベルだが、はっきりした作用のメカニズムはまだ報告されていない。
本願発明者らは、リバビリンはin vitroにおいてマイクロモルの親和性で4Eに直接結合し、この相互作用は以前実証されたリバビリンの活性に必要な濃度の1/500で生じ、リバビリンは高ナノモルから低マイクロモルの濃度でin vitroおよび細胞内で4Eのm7G mRNAキャップの結合と効率的に競合し、このような濃度ではリバビリンは細胞内において低マイクロモル濃度で4E制御遺伝子の輸送および翻訳における4E:m7G機能の阻害を特異的に媒介し、リバビリンの高ナノモルから低マイクロモル濃度の投与は特異的に発癌性タンパク質の産生を下方調節し、細胞周期を停止させてin vitro およびin vivoにおいて4Eの総活性を抑制することを明らかにした。
本願発明者らは、リバビリンとその新しい化学物質/誘導体が、細胞内、組織内、および腫瘍内の4E高活性の生物学的、増殖性、および発癌性特性を選択的に阻害する能力を有することを明らかにした。予想に反して、4E高活性のこの標的阻害は、細胞内の他の生物学的プロセスに影響を与えない。
特に、本願発明者らは、リバビリンおよびその新しい化学物質/誘導体が4Eレギュロン活性を阻害する能力を有することを明らかにした。リバビリンは、4Eレギュロン活性を妨害し、4Eレギュロン成分の細胞内レベルを低下させることが認められた。
したがって、以下の化学式
Figure 2009522281
であって、当該式において、
R1は直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニル、水素、およびアルキニルなどであってよい、化学式の小分子を含む小分子組成物を提供する。好ましくは、R1は-H、-CH3、またはCH2CH3である。
R2は、アミン(一次、二次、および三次、直鎖または分岐鎖)、芳香族アミン、アミノ基またはアミド基であってよい。好ましくは、R2は-NH2、-NH2CH3、-NH2CH2CH3、-NH2CH2CH2CH3、-NH2CH(CH3)2、-NH2CH2CH2CH2OH、- NH2CH2CH2CH(OH)CH3、または-NH2CH(CH2OH)CH3である。
R3は酸素または硫黄であってよく、
R4はヒドロキシ基、リン酸基、シロキサン、カルボン酸、カルボキシメチル、カルバミン酸、アミド、チオエーテル、酸化エチレンリンカ、スルホン酸、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノであってよい。リン酸基がある場合、少なくとも1つの塩基に任意に結合してよく、それは以下の式である。
Figure 2009522281
リバビリンおよびその類似体は7-メチルグアノシン(m7G)の物理的類似体である。7-メチルグアノシン(m7G)およびその類似体(以下の式18に示す)も4E活性、特に4Eレギュロン活性を阻害すると考えられている。
Figure 2009522281
当該式において、
R1およびR2は、それぞれ独立に直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニル、水素、およびアルキニルなどであってよい。好ましくは、R1は-H、-CH3、またはCH2CH3である。好ましくは、R2は-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)2、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH(OH)CH3、or -CH(CH2OH)CH3であって、
R3は酸素または硫黄であってよく、
R4はヒドロキシ基、リン酸基、シロキサン、カルボン酸、カルボキシメチル、カルバミン酸、アミド、チオエーテル、酸化エチレンリンカ、スルホン酸、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノであってよい。リン酸基がある場合、少なくとも1つの塩基に任意に結合してよく、それは以下の式である。
Figure 2009522281
R5は、アミン(一次、二次、および三次、直鎖または分岐鎖)、芳香族アミン、アミノ基またはアミド基であってよい。
物理的には、リバビリンは、それが由来する糖質D-リボースに似ている。水に大量に溶け、沸騰メタノールで再結晶化させると細かい銀の針状になる。無水エタノールには少ししか溶けない。古典的には、リバビリンは天然のD-リボースから調製する。ベンジル基で2’、3’、および5’OH基をブロックしてから、求核攻撃の際に好適な離脱基として作用するアセチル基で1’OHを誘導体化する。リボース1’炭素攻撃は、1,2,4トリアゾール-3-カルボキシメチルエステルで達成される。トリアゾールの1’窒素がリボースの1’炭素に、適切な1-β-D異性体位で直接結合する。かさ高いベンジル基が他の糖炭素への攻撃を妨げる。この中間体の精製後、メタノール状況下にあるアンモニアでの処置がリボースのヒドロキシル基を非ブロック化し、トリアゾールカルボキシメチルエステルをカルボキサミドに転換する。このステップ後、リバビリンは冷却と結晶化によって十分な量回収される場合もある。
リバビリンは不完全なプリン6員環を有するリボシルプリン類似体によく似ていると見なされる。この構造的な類似を利用して、トリアゾールの2’窒素の炭素への置換(その結果、イミダゾールの5’炭素になる)を組織学的に促進し、第二環を部分的に「穴埋め」しようとしたが、大きな効果は得られなかった。そのような5’イミダゾールリボシド誘導体は、5’水素またはハロゲン化物による抗ウイルス活性を示すが、置換基が大きくなるほど活性は小さくなり、すべて、リバビリンよりも活性が低くなることがわかった(Harris, S. &
Robins, R. K. (1980) Ribavirin: structure and antiviral activity relationships.
In Ribavirin: A Broad Spectrum Antiviral Agent (Smith, R. A. & Kirkpatrick,
W., Eds), pp.1-21. Academic Press, New York, NY, USA)。2種類の天然産生物はすでに、このイミダゾールリボシド構造を有することが知られていた。5’炭素をOHで置換すると、抗ウイルス特性とともに許容できない毒性を有する抗生物質ピラゾマイシン/ピラゾフリンになり、アミノ基で置換すると、中程度の抗ウイルス特性しかない天然プリン合成前駆体5-アミノイミダゾール-4-カルボキサミド-1-β-D-リボフラノシド(AICAR)になる。
トリアゾール5’炭素の誘導化、またはその窒素による置換(つまり1,2,4,5テトラゾール3-カルボキサミド)も、3’カルボキサミド窒素のアルキル誘導体化と同様に、実質的に活性を失わせる。
リバビリンの2’デオキシリボース版(DNAヌクレオシド類似体)は抗ウイルス物質としては活性ではなく、リバビリンの抗ウイルス活性にはRNA依存性酵素が必要であることを強く示唆している。
抗ウイルス活性は、三リン酸基および3’、5’環状リン酸基を含むリボースヒドロキシル基の酢酸およびリン酸誘導体化のために維持されるが、体内では、これらの化合物の活性は、エステラーゼおよびキナーゼの高い効果を反映して、親分子よりも低い。
化16と化18の修飾には、
(i) たとえば、結合していない(XとY)リン酸基の酸素の1つまたは両方、および/または結合している(WとZ)リン酸基の酸素の1つまたは両方の置換などの変化(リン酸基が末端位の場合、WまたはZの一つがリン酸基を天然のリボ核酸のさらなる要素に結合させない。しかし、用語を単純にするために、他に記載のない限り、核酸の5’末端のW位と核酸の3’末端の末端Z位は、本願明細書に記載の通り、「結合するリン酸基の酸素」という用語の範囲内とする)、
(ii) 本願明細書に記載の通り、たとえば、リボースの糖にある2’ヒドロキシル基などのリボース糖の構成要素の置換、またはたとえばリボース糖とRRMSなどリボース以外の構造との大規模な置換などの変化、
(iii) リン酸基と「脱リン酸化」リンカとの大規模な置換、
(iv) リボース-リン酸基骨格の置換または修飾(括弧II)、
(v) たとえば、除去、修飾、または末端リン酸基もしくはたとえば蛍光標識部分などの共役化した部分をRNAの3’または5’末端のいずれかと置換するなど、RNAの3’末端または5’末端の修飾、
の一つ以上の項目が含まれてよい。
本願明細書の文脈の中で使用される置換、修飾、および変化などの用語はプロセスの制限を示唆せず、たとえば修飾は基準または天然リボ核酸から開始して修飾リボ核酸をつくるために修飾しなくてはならないということを意味せず、修飾とは単に天然分子との違いを示唆している。
一部の化学物質の実際の電子構造は、一つだけの標準型(つまりルイス構造)では十分に表せないということは理解されている。理論によって制限されることは望まないが、実際の構造は、集合的に共鳴型または構造として知られる、2つ以上の標準型のハイブリッドまたは加重平均であってよい。共鳴構造は別個の化学物質ではなく、紙の上のみで存在する。その違いは、ある化学物質の結合および非結合電子の配置または「局在化」としてしか現れない。一つの共鳴構造が他のものよりも大きい割合でハイブリッドに寄与することは可能である。したがって、本願発明の実施態様の文書および図の記載は、当業者が特定の種の主要な共鳴型として認識するものに関して作成されている。たておば、ホスホロアミド酸(非結合酸素を窒素と置換)は、上述の図において、X = OおよびY = N として表されるだろう。
さらなる特異的な修飾は、さらに後述される。
リン酸基
リン酸基は陰性に荷電した種である。この電荷は2つの結合していない酸素原子(つまり、上述のXとY)に等しく分布している。しかし、リン酸基は、酸素の一つを別の置換基と置換することによって修飾することができる。RNAリン酸骨格のこの修飾の結果、オリゴリボヌクレオチドの核酸分解への抵抗性を上げることができる。したがって、理論に束縛されることを望まないが、ある実施態様では、非荷電リンカまたは非対称の電荷分布を持つ荷電リンカのいずれかを生じる変化を導入することが望ましい場合もある。
修飾リン酸基の例には、ホスホロチオ酸基、ホスホロセレン酸基、ボラノリン酸基、ボラノリン酸エステル基、ホスホン酸水素基、ホスホロアミド酸基、ホスホン酸アルキルまたはアリール基、およびホスホトリエステルが含まれる。ホスホロジチオ酸は、硫黄で置換した非結合酸素を両方持つ。XまたはYの一つだけを変化させた場合と異なり、ホスホロジチオ酸基の中心のリンはアキラルで、オリゴリボヌクレオチドジアステレオマの形成を除外する。ジアステレオマ形成は、個別のジアステレオマがヌクレアーゼにさまざまな耐性を示すような調製の結果生じる。さらに、キラルリン酸基を含むRNAのハイブリダイゼーションの親和性は、相当する非修飾のRNA種と比較して低い可能性がある。したがって、理論に束縛されることを望まないが、ジアステレオマ混合物を生成しないようにするために、たとえばホスホロジチオ酸基形成など、キラル中心を削除するXおよびYの両方への修飾が望ましい場合がある。したがって、XはS、Se、B、C、H、N、またはOR (Rはアルキルまたはアリール)のいずれか一つであってよい。したがって、YはS、Se、B、C、H、N、またはOR (Rはアルキルまたはアリール)のいずれか一つであってよい。Xおよび/またはYを硫黄で置換することが好ましい。
リン酸基リンカを、架橋酸素と窒素(架橋ホスホロアミド酸基)、硫黄(架橋ホスホロチオ酸基)、および炭素(架橋メチレンホスホン酸基)を置換させることによって修飾することもできる。置換は末端酸素(W(3’)またはZ(5’)の位置)に生じさせることができる。Wの炭素置換、またはZの窒素置換が好ましい。
ホスフィン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は米国特許第5,508,270号に記載されている。アルキルホスホン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は米国特許第4,469,863号に記載されている。亜ホスホルアミド酸オリゴリボヌクレオチドの調製は米国特許第5,256,775号または米国特許第5,366,878号に記載されている。ホスホトリエステルオリゴリボヌクレオチドの調製は米国特許第5,023,243号に記載されている。ボラノリン酸オリゴリボヌクレオチドの調製は米国特許第5,130,302号および5,177,198号に記載されている。3’-デオキシ-3’-アミノホスホルアミド酸オリゴリボヌクレオチドの調製は米国特許第5,476,925号に記載されている。3’-デオキシ-3’-メチレンホスホン酸オリゴリボヌクレオチドはAn,
H, et al. J. Org. Chem. 2001, 66, 2789-2801に記載されている。硫黄架橋ヌクレオチドの調製は、Sproat
et al. Nucleosides Nucleotides 1988, 7,651 and Crosstick et al.
Tetrahedron Lett. 1989, 30, 4693に記載されている。
糖基
修飾RNAには、リボ核酸の糖基のすべてまたは一部の修飾が含まれ、たとえば2’ヒドロキシル基(OH)は、数多くの異なる「オキシ」または「デオキシ」置換基で修飾されるかまたは置換することができる。理論によって制限はしないが、2’アルコキシドイオンを形成するためにヒドロキシル基を脱プロトン化できないようにするので、高い安定性が期待される。2’アルコキシドは、リンカのリン原子への分子内求核攻撃による分解を触媒することができる。この場合もやはり、理論に束縛されることを望まないが、ある実施態様では、2’位でのアルコキシド形成が不可能になるような変化を導入することが望ましい場合がある。
「オキシ」-2’ヒドロキシル基修飾の例には、アルコキシまたはアリーロキシ(OR、たとえばR=H、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、ポリエチレングリコール(PEG)、O(CH2CH2O)nCH2CH2OR、2’ヒドロキシルがたとえばメチレン架橋で同一のリボース糖の4’炭素に結合した「ロックされた」核酸(LNA)、O-AMINE(AMINE=NH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)、およびアミノアルコキシ、O(CH2)nAMINE(たとえばAMINE=NH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ、エチレンジアミン、ポリアミノ)が含まれる。メトキシエチル基(MOE)(OCH2CH2OCH3、PEG 誘導体)しか含有しないオリゴヌクレオチドが堅固なホスホロチオ酸修飾で修飾されたものに匹敵するヌクレアーゼ安定性を示すことは、注目に値する。
「デオキシ」修飾には、水素(つまり、部分的なds RNAのオーバーハング部分に特に関連するデオキシリボース糖)、ハロ(たとえばフルオロ)、アミノ(たとえばNH2;アルキルアミノジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジヘテロアリールアミノ、またはアミノ酸)、NH(CH2CH2NH)nCH2CH2-AMINE
(AMINE
= NH2、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ヘテロシクリル、アリールアミノ、ジアリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、またはジヘテロアリールアミノ)、-NHC(O)R (R=アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールまたは糖)、シアノ、メルカプト、アルキル-チオ-アルキル、チオアルコキシ、ならびに、たとえばアミノ官能性などで任意に置換されてもよいアルキルシクロアルキル、アリール、アルケニル、およびアルキニルが含まれる。好ましい置換基は、2’-メトキシエチル、2’-OCH3、2’-O-アリル、2’-C-アリル、および2’-フルオロである。
糖基は、リボースにある相当する炭素とは反対の立体化学構造を持つ1つ以上の炭素も含有しうる。したがって、修飾RNAには、たとえばアラビノースなどを含有するヌクレオチドが糖として含まれてもよい。
ヌクレアーゼ抵抗性を最大化するために、2’修飾を1つ以上のリン酸リンカ修飾(たとえばホスホロチオ酸基)と合わせて用いることができる。いわゆる「キメラ」オリゴヌクレオチドは2種類以上の異なる修飾を含むものである。
2’への修飾はVerma, S. et al.
Annu. Rev. Biochem. 1998, 67, 99-134、およびその中にあるすべての文献にみつけることができる。リボースへの特異的な修飾は、以下の文献にみつけることができる。2'-フルオロ (Kawasaki et. al., J.
Med. Chem., 1993, 36, 831-841)、 2'-MOE (Martin, P. Helv. Chim.
Acta 1996, 79, 1930-1938)、 “LNA” (Wengel,
J. Acc. Chem. Res. 1999, 32, 301-310)。
リン酸基の置換
リン酸基は、リンを含まない連結部によって置換することができる(たとえば、上述の化16の[I])。理論によって制限することを望まないが、荷電ホスホジエステル基は核酸分解の反応中心であると考えられており、それを中性の構造模倣体と置換すると高いヌクレアーゼ安定性が得られるはずである。この場合もやはり、理論に束縛されることを望まないが、ある実施態様では、荷電リン酸基が中性基によって置換されるような変化の導入が望ましい場合がある。
塩基
アデニン、グアニン、シトシン、およびウラシルは、RNAの中でもっともよく見られる塩基である。これらの塩基を修飾または置換して、向上した特性を有するRNAを提供することができる。たとえば、ヌクレアーゼ抵抗性オリゴリボヌクレオチドは、これらの塩基、または合成および天然核酸塩基(たとえば、イノシン、チミン、キサンチン、ヒポキサンチン、ヌブラリン、イソグアニシン、またはツベルシジン)、および上述の修飾のいずれか一つを用いて調製することができる。代替的には、上述の塩基および「ユニバーサル塩基」のいずれかの置換または修飾類似体を用いることができる。例には、2-アミノアデニン、アデニンおよびグアニンの6-メチルおよびその他のアルキル誘導体、アデニンおよびグアニンの2-プロピルおよびその他のアルキル誘導体、5-ハロウラシルおよびシトシン、5-プロピニルウラシルおよびシトシン、6-アゾウラシル、シトシンおよびチミン、5-ウラシル(偽ウラシル)、4-チオウラシル、5-ハロウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル、8-ハロ、アミノ、チオール、チオアルキル、ヒドロキシルおよびその他の8-置換アデニンおよびグアニン、5-トリフルオロメチルおよびその他の5-置換ウラシルおよびシトシン、7-メチルグアニン、5-置換ピリミジン、6-アザピリミジンおよび2-アミノプロピルアデニン、5-プロピニルウラシルおよび5-プロピニルシトシンを含むN-2、N-6およびO-6置換プリン、ジヒドロウラシル、3-デアザ-5-アザシトシン、2-アミノプリン、5-アルキルウラシル、7-アルキルグアニン、5-アルキルシトシン、7-デアザアデニン、N6、N6-ジメチルアデニン、2,6-ジアミノプリン、5-アミノ-アリル-ウラシル、N3-メチルウラシル、置換1,2,4-トリアゾール、2-ピリジノン、5-ニトロインドール、3-ニトリピロール、5-メトキシウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸、5-メトキシカルボニルメチルウラシル、5-メチル-2-チオウラシル、5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル、5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル、3-(3-アミノ-3カルボキシプロピル)ウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、N4-アセチルシトシン、2-チオシトシン、N6-メチルアデニン、N6-イソペンチルアデニン、2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン、N-メチルグアニン、またはO-アルキル化塩基が含まれる。さらなるプリンおよびピリミジンには、米国特許第3,687,808号に開示されるもの、Concise Encyclopedia Of
Polymer Science And Engineering, pages 858-859, Kroschwitz, J. I., ed. John Wiley & Sons, 1990に開示されるもの、およびEnglisch et al.,
Angewandte Chemie, International Edition, 1991, 30, 613に開示されるものが含まれる。
一般に、塩基の変化は安定性の向上にはあまり好ましくないが、その他の理由で有用であることもあり、たとえば、一部の、たとえば2,6-ジアミノプリンおよび2アミノプリンは蛍光性である。修飾した塩基は標的特異性を低下させることができる。
N-2置換プリンヌクレオシドアミジットは、米国特許第5,459,255号に記載されているとおり調製することができる。3-デアザプリンヌクレオシドアミジットは米国特許第5,457,191号に記載されているとおり調製することができる。5,6-置換ピリミジンヌクレオシドアミジットは米国特許第5,614,617号に記載されているとおり調製することができる。5-プロピニルピリミジンヌクレオシドアミジットは米国特許第5,484,908号に記載されているとおり調製することができる。
本願発明にしたがって用いられるオリゴリボヌクレオチドおよびオリゴリボヌクレオシドは固相合成であってよく、たとえば、“Oligonucleotide
synthesis, a practical approach”, Ed. M. J. Gait, IRL
Press, 1984、“Oligonucleotides and Analogues, A Practical Approach”, Ed. F. Eckstein, IRL Press, 1991 (特にChapter 1、 Modern machine-aided
methods of oligodeoxyribonucleotide synthesis、 Chapter 2、 Oligoribonucleotide
synthesis、
Chapter 3、
2'-O--Methyloligoribonucleotide- s: synthesis and applications、 Chapter 4、 Phosphorothioate oligonucleotides、 Chapter 5、 Synthesis of
oligonucleotide phosphorodithioates、 Chapter 6, Synthesis of
oligo-2'-deoxyribonucleoside methylphosphonates、およびChapter 7、Oligodeoxynucleotides
containing modified basesを参照のこと。その他の特に有用な合成方法、試薬、ブロッキング基、および反応条件は、Martin, P., Helv.
Chim. Acta, 1995, 78, 486-504; Beaucage, S. L. and Iyer, R. P., Tetrahedron,
1992, 48, 2223-2311 and Beaucage, S. L. and Iyer, R. P., Tetrahedron,
1993, 49, 6123-6194、またはその中に引用される文献に記載されている。
本願明細書に提供される方法および組成物のいずれかに特に用いることを目的としたその他のリバビリンプロドラッグおよび/または類似物/誘導体は、メチマゾール、カルビマゾール、メトロニダゾール、セラナゾフリン、ショウドマイシン、ピラゾマイシン、およびICN 3297、ならびにその類似体および誘導体である。
上述の構造に基づいて、4E活性を阻害する能力がある化学物質のスクリーニング、同定、選択、およびデザインに用いることができる技術は、数多くある。本願明細書に用いられる「化学物質」という用語は、化学化合物、2種類以上の化学化合物の複合体、およびそのような化合物または複合体の断片を意味する。ある例では、異なる形状を呈する化合物など(たとえば平坦な芳香環、くぼんだ脂肪族環、一重、二重、または三重結合をもつ直鎖および分岐鎖脂肪族)、広範囲の構造的および機能的多様性と、多様な官能基(たとえばカルボキシル酸、エステル、エーテル、アミン、アルデヒド、ケトン、および各種ヘテロシクリル環)を呈する化学物質を用いることが望ましい。
ある局面では、薬物デザインの方法は一般に、4E(またはその部分)と会合させるために、選択された化学物質の可能性を計算で評価するステップを含む。たとえば、本方法には、(a) 選択された化学物質と4Eの薬になりうる領域のフィッティング操作を行うための計算手段を用いるステップと、(b) 前記フィッティング操作の結果を解析して化学物質と4Eの会合を定量化するステップが含まれてよい。
化学物質は、目視か、またはGRAM、DOCK、またはAUTODOCK (Dunbrack et al., Folding
& Design, 2:27-42 (1997))などのドッキングプログラムを用いたコンピュータモデリングのいずれかを用いて検査してよい。この方法には、各化学物質の形状および化学構造が、当該ポリペプチドの構造をどれだけよく補足するかまたは妨げるかを確認するために、コンピュータで化学物質を標的にフィッティングするステップが含まれてよい。薬になりうる領域への化学物質の誘引、反発、および立体障害を推測するためのコンピュータプログラムを用いてもよい。一般に、フィッティングがタイトなほど(たとえば、立体障害が低いほど、および/または誘引力が大きいほど)、化学物質は強力だろう。なぜなら、これらの特性はタイトな結合定数と一致しているからである。さらに、化学物質のデザインの特異性が大きいほど、化学物質が関連タンパク質を妨げない可能性が高い。その結果、望ましくない相互作用による副作用の可能性を最小化できる可能性がある。
薬になりうる領域の立体および電子特性を用いて化学物質のデザインをガイドする分子デザインの計算方法は、さまざまなものが知られている。Cohen et al. (1990) J. Med. Cam. 33:883-894;
Kuntz et al. (1982) J. Mol. Biol 161: 269-288; DesJarlais (1988) J. Med. Cam.
31: 722-729; Bartlett et al. (1989) Spec.Publ., Roy. Soc. Chem. 78:
182-196; Goodford et al. (1985) J. Med. Cam. 28: 849-857; and DesJarlais
et al. J. Med. Cam. 29: 2149-2153.目的とする方法は一般に2つのカテゴリ、(1) 既知の化学物質の三次元構造(結晶学的データベースからなど)が薬になりうる領域に結合させて適合度検定で点数化した類推によるデザイン、および(2) 化学物質が薬になりうる領域で1片ずつ組み立てられていく新規デザイン、に分類される。その化学物質は、分子のライブラリまたはデータベースの一部としてスクリーニングすることもできる。使用してよいデータベースには、ACD (モレキュラーデザインズ社)、NCI (国立癌研究所)、CCDC (ケンブリッジ結晶学データセンタ)、CAST (Chemical Abstract
Service)、Derwent
(ダーウェントインフォメーション社)、Maybridge
(メイブリッジケミカル社)、Aldrich
(アルドリッチケミカル社)、DOCK
(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)、および the Directory of Natural Products (チャプマン&ホール)が含まれる。CONCORD (トリポスアソシエーツ) またはDB-Converter (モレキュラーシミュレーションズ社)などのコンピュータプログラムを用いて、二次元で表されているデータセットを三次元で表されるデータに転換できる。
薬になりうる領域またはその他の4E部分に空間的にフィットする化学物質の能力を試験することもできる。本願明細書に記載の通り、「空間的にフィットする」という文言は、化学物質の三次元構造が薬になりうる領域に幾何学的に収容されることを意味する。好ましい幾何学的なフィットは、化学物質の表面が薬になりうる領域の表面と、好ましくない相互作用を生じない程度に非常に近接している場合に生じる。好ましい相補的な相互作用は、化学物質が疎水力、芳香族力、イオン力、双極力、または水素供与力および受容力によって相互作用する場合に生じる。好ましくない相互作用は、化学物質の原子と薬になりうる領域の原子の間の立体障害であることもある。
本願発明のモデルがコンピュータモデルである場合、化学物質は計算ドッキングによって薬になりうる領域に配置されてよい。一方で、本願発明のモデルが構造モデルである場合、化学物質はたとえば手動ドッキングによって薬になりうる領域に配置されてよい。本願明細書に記載のとおり、「ドッキング」という用語は化学物質を薬になりうる領域の非常に近接した位置に配置するプロセスであるか、または化学物質/薬になりうる領域の複合体の低エネルギー立体配置を見つけるプロセスを意味する。
ある例示的な実施態様では、モジュレータになりうるデザインは本願発明のポリペプチドの薬になりうる領域に相補的な形状の一般的な透視図から出発し、標的となる薬になる領域に幾何学的にフィットする化学物質の既知の三次元構造の小分子のデータベースをスキャンすることができる、検索アルゴリズムを用いる。このタイプのアルゴリズムの大半は、当該ポリペプチドの薬になりうる領域の形状に相補的な化学物質の広い分類を見つける方法を提供する。ケンブリッジ結晶学データバンク(CCDB)(Allen et al.(1973) J.
Chem. Doc.13:119)などの、特定のデータベースにある化学物質のセットのそれぞれを、ドッキングアルゴリズムによって、幾何学的に許容される多数の配置の中にある本願発明のポリペプチドの薬になりうる領域に個別にドッキングする。ある実施態様では、DOCKとよばれるコンピュータアルゴリズムのセットを用いて、薬になりうる領域の活性部位と認識表面を形成する陥入および溝の形状を特徴付けることができる。このプログラムは、形状が本願発明のポリペプチドの特定の結合部位に相補的なテンプレートのための、小分子のデータベースも検索することができる
(DesJarlais et al.(1988) J Med Chem 31:722-729)。
そのような配向性を適合度検定で評価し、最良のものをAMBERまたはCHARMMなどの分子メカニクスプログラムを用いたさらなる検査のために保存する。そのようなアルゴリズムによって薬になりうる領域に相補的な形状であるさまざまな化学物質を見つけられることが、過去に証明されている。
Goodford (1985, J Med Chem 28:849-857) とBoobbyer et al.(1989, J Med Chem
32:1083-1094)は、薬になりうる領域の異なる化学基(プローブとよばれる)に親和性の高い領域を決定することを目的としたコンピュータプログラム(GRID)を作成した。したがって、GRIDは、結合を促進する可能性がある既知の化学物質への修飾を提案するためのツールを提供する。GRIDによって高親和性領域であると識別された部位の一部は、一連の既知のリガンドから推論的に決定される「ファーマコフォア(薬理作用団)パターン」と一致することは、予想されることかもしれない。本願明細書に記載の通り、「ファーマコフォアパターン」は結合に重要と考えられる化学物質の形状の幾何学的配置である。新規リガンドの検索スクリーニングとしてファーマコフォアパターンを使用することが試みられている(Jakes
et al. (1987) J Mol Graph 5: 41-48; Brint et al. (1987) J Mol Graph
5: 49-56; Jakes et al. (1986) J Mol Graph 4: 12-20)
本願発明のよりさらなる実施態様は、薬になりうる領域に配向可能な化学物質をCCDBのようなデータベースで検索するCLIXなどのコンピュータアルゴリズムを、立体的に許容で、化学物質と周囲のアミノ酸残基の間の好ましい化学相互作用を達成する可能性が高くなるように利用する。この方法は、さまざまな化学基の好ましい結合位置の集合に関して領域を特徴付けするステップと、その後、その集合をなす要素の個別の候補化学基の最大の空間的な一致を生じる化学物質の配向性を探索するステップに基づいている。CLIXのアルゴリズムの詳細は、Lawrence et al.(1992) Proteins 12:31-41に記載されている。
このように、化学物質が薬になりうる領域と結合するかまたは妨げるかもしれない効果は、計算による評価によって試験して最適化することもできる。たとえば、薬になりうる領域との好ましい会合のために、化学物質は、その結合状態と微細状態(つまり微小な結合の変形エネルギ)の間の比較的小さなエネルギー差を、好ましくは実証しなければならない。したがって、あるより好ましい化学物質は、結合の変形エネルギが約10kcal/mol以下、より好ましくは7kcal/mol以下になるようにデザインされるだろう。化学物質は、合計の結合エネルギが類似する、2つ以上の立体配置の中の薬になりうる領域と相互作用することがある。そのような場合、結合の変形エネルギーは、自由な物質のエネルギと、その化学物質が標的に結合するときに認められる立体配置の平均エネルギとの差と理解される。
このように、本願発明は、4Eの活性のモジュレータ候補を同定またはデザインするコンピュータ支援方法であって、コンピュータモデリングアプリケーションに分子または複合体であって、その分子または複合体には少なくとも4Eの薬になりうる領域の一部が含まれる、分子または複合体の構造座標を提供するステップと、化学物質の構造座標を有するコンピュータモデリングアプリケーションを供給するステップと、その化学物質がその分子または複合体に結合することが期待されるかどうかを決定し、その分子または複合体への結合が4Eの活性の修飾の可能性を示唆する、ステップが含まれる、方法を提供する。
別の局面では、本願発明は、4Eへのモジュレータ候補を同定またはデザインするコンピュータ支援方法であって、コンピュータモデリングアプリケーションに分子または複合体であって、その分子または複合体には少なくとも4Eの薬になりうる領域の一部が含まれる、分子または複合体の構造座標を提供するステップと、化学物質の構造座標を有するコンピュータモデリングアプリケーションを供給するステップと、その化学物質と分子または分子複合体の活性部分の間で生じうる結合相互作用の評価と、その化学物質を構造的に修飾して修飾された化学物質のための構造座標を得るステップと、その化学物質がその分子または複合体に結合することが期待されるかどうかを決定し、その分子または複合体への結合が4Eの活性の修飾候補を示唆するステップである方法を提供する。
当該方法に使用するための構造座標の例示的なセットである、4Eのキャップ-フリー構造は、Volpon, et al.(2006) EMBO
J. 25(21):5138-49 Epub 2006 Oct
12に記載されている。真核生物翻訳開始因子4Eの活性は、そのリガンドに対する立体配座応答によって調節される。たとえば、eIF4Gおよび4E-BPはキャップ親和性と、したがってm7Gキャップ結合部位から遠い部位に結合することによる4Eの生理学的活性を調節する。さらに、キャップ結合は実質的には4EのeIF4Gおよび 4E-BPへの親和性を調節する。Volpon, et alらの時まで、キャップ結合4E構造だけが報告されていた。アポ型についての構造情報がないので、この立体配置応答のメカニズムの分子基盤は確立できない。このキャップフリーの4E構造は、キャップ結合部位とキャップ-eIF4Eに関連する背面の構造的差異を示している。アポeIF4Eの構造およびダイナミクスの分析、ならびにリガンド結合に認められる変化によって、これらのリガンドに対するeIF4Eの立体配置応答の分子基盤が明らかになる。特に、キャップからもeIF4G結合部位からも遠位にあるS4-H4ループにおける変化は、これらの効果を調節する上で重要である。このループの突然変異はこれらの効果を模倣している。
Marcotrigiano, J., et al.(1997) Cell,
89:951-961, Tomoo, K., et al.(2005) Biochim Biophys Acta,
1753:191-208, Tomoo, K., et al.(2002) Biochem J, 362:539-544 and
Niedzwiecka, A., et al.(2002) J Mol Biol, 319:615-635に記載されたような、キャップが結合した4E構造も、本願明細書の方法に用いてよい。
他の実施態様では、モジュレータ候補はライブラリのスクリーニングで得ることができる。この方法で選択した候補モジュレータを、1つ以上の有力な候補薬が同定されるまで、コンピュータモデリングプログラムおよび/または合成方法によって系統的に修飾することができる。そのような分析は、HIVプロテアーゼ阻害物質の開発において効果を示した(Lam et al., Science
263:380-384 (1994); Wlodawer et al., Ann. Rev. Biochem. 62:543-585 (1993);
Appelt, Perspectives in Drug Discovery and Design 1:23-48 (1993); Erickson,
Perspectives in Drug Discovery and Design 1:109-128 (1993))。代替的には、候補モジュレータは、化学および製薬企業などの第三者機関からライセンスを受けることができる化学物質などのライブラリから選択することもできる。三番目の代替策は、新規の候補モジュレータを合成することである。
一度、候補モジュレータが同定されれば、4E活性もしくは4E発現およびタンパク質レベル、または4Eレギュロン成分の発現およびタンパク質レベルを、ハイスループットアッセイを含む標準的なアッセイのいずれかでテストすることができる。一般に、そのモジュレータの構造をさらに精製する必要があり、特定のスクリーニングアッセイによって提供されるステップのいずれかおよび/またはすべてを連続して繰り返すことによって行うことができる。これらの研究は、生化学アッセイと連動して行ってもよい。
実施態様のいずれかにおいて、候補化合物は化合物のライブラリから選択してよい。これらのライブラリはコンビナトリアル合成法を用いて作製することができる。候補化合物は、たとえば以下のクラスの化合物から選択してよい。それらは、リバビリンまたはリバビリング類似体、アンチセンス核酸、RNAi、小分子、ポリペプチド、抗体、疑似模倣体、もしくは核酸類似体を含むタンパク質である。
具体的で例示的な4E活性のアッセイは、後述の実施例に記載する。しかし、4E活性の少なくとも1つの候補化合物の作用を決定する方法はいずれが使われてもよい。ある実施態様では、候補併用治療薬または併用療法を同定するために、化合物または生物製剤の組み合わせを4Eへの作用についてスクリーニングすることもできる。たとえば、リバビリンまたはその類似物もしくはプロドラッグは、上述のとおりの細胞増殖、細胞分裂、および/または遺伝子発現の測定に加えて、インターフェロン、gmcsf、gcsf、il-12、il-2、チロシンキナーゼ活性を阻害または下方調節する化合物などとともにスクリーニングしてもよい。
4Eポリペプチドを用いて、in vitroアッセイにおける小分子およびその他のモジュレータの活性を評価することもできる。そのようなアッセイのある実施態様では、酵素活性などの、4E、4Eタンパク質の対象となる相互作用または4E複合体の相互作用の生物学的活性、その他の細胞要素への結合、細胞内コンパートメント化、およびシグナル伝達などを調節する物質を同定する。ある実施態様では、この試験物質は有機小分子である。たとえば4Eを発現しレギュロンを有する細胞株などにおける、4Eレギュロンの要素の活性および/または発現レベルの分析を用いて、4E活性へのモジュレータの作用を評価してもよい。
アッセイには、マイクロカロリメトリ、円二色性法、キャピラリゾーン電気泳動、核磁気共鳴分光法、蛍光分光法、およびそれらの組み合わせに限定されないがそれらを含むさまざまな技術を用いた、動力学的または熱力学的方法論を用いてよい。
さらに、4E活性を調節するものを同定するための化合物のスクリーニング方法を提供する。スクリーニングの方法には、ハイスループット技術が関与してもよい。たとえば、モジュレータをスクリーニングするために、合成反応混合物、膜などの細胞内コンパートメント、細胞外皮または細胞壁、または、4Eおよびそのようなポリペプチドの標識された基質またはリガンドを含むそれらのいずれかの調製物を、4E活性のモジュレータかもしれない候補分子の不在下と存在下においてインキュベートする。候補分子が4E活性を調節する能力は、標識されたリガンドの結合の低減、またはそのような基質からなる生成物の産生の低減として反映される。基質からの生成物の産生の速度またはレベルの検出は、レポータシステムを用いると向上することもある。この点に関して有用である可能性があるレポータシステムには、生成物に転換した比色分析用標識基質、4E活性の変化に応答するレポータ遺伝子、および当業に知られる結合アッセイが、それらに限定されないが含まれる。
4E活性のモジュレータのアッセイの別の例は、競合阻害アッセイの適切な条件下での、4Eと候補モジュレータを4E、4Eに結合する組換え分子、天然基質もしくはリガンド、または基質もしくはリガンド模倣体に結合する分子と組み合わせた競合アッセイである。4Eは、放射能または比色分析用化合物などで標識し、結合分子に結合するかまたは生成物に転換される4E分子の数を正確に決定して候補モジュレータの有効性を評価することができる。
4E活性を調節する分子を同定する多数の方法。たとえば、あるそのような方法では、本願ポリペプチドをテスト化合物と接触させ、テスト化合物の存在下での本願ポリペプチドの活性を決定するが、その場合、本願ポリペプチドの活性の変化がそのテスト化合物が本願ポリペプチドの活性を調節することを表す。ある場合には、テスト化合物は本願ポリペプチドの活性を刺激し、別の場合には、テスト化合物は本願ポリペプチドの活性を拮抗する。
他の実施態様では、培養液中の限定形質転換細胞種を用いて4E活性を評価することもできる。そのような細胞種は、1種類以上の癌遺伝子の人工的または天然の過剰発現によって産生するすることもできる。たとえば、その細胞種は4E、またはmycおよびcyclin
Dなどの細胞輸送、形質転換、および増殖に関与する4Eレギュロンの成分であるタンパク質を過剰発現することもできる。
過剰発現した癌遺伝子を有する細胞株を用いたモジュレータのスクリーニングは、以下のいずれか一つまたは組み合わせの解析によって実現することもできる。(1) 4E発現、タンパク質レベル、細胞増殖速度、(2) myc発現、タンパク質レベル、核/細胞質比、細胞増殖速度、(3) シクリンD1発現、タンパク質レベル、核/細胞質比、細胞増殖速度、(4) シクリンD1またはその他のレギュロン成分mRNA輸送(核から細胞質へ)、および/またはシクリンD1またはその他のレギュロン成分mRNA翻訳の阻害、(5) シクリンD1またはその他のレギュロン成分転写の阻害、(6) 4E-SE制御mRNA輸送(核から細胞質へ)、および/または4E-SE mRNA翻訳の阻害、(7) 4E-SE制御mRNA遺伝子転写の阻害。
一度同定されれば、候補モジュレータをモデル構造として用いてもよく、その化合物の類似物を得ることもできる。その後、上述のとおり、その類似物を4E活性を制御する能力についてスクリーニングする。
関連するアプローチでは、反復薬物デザインを用いて4E活性のモジュレータを同定する。反復薬物デザインは、タンパク質/モジュレータ複合体の連続するセットの三次元構造を決定および評価することによって、タンパク質とモジュレータの間の会合を最適化する方法である。反復薬物デザインでは、一連のタンパク質/モジュレータの結晶を得てから、各複合体の三次元構造を解析する。このようなアプローチだと、核複合体のタンパク質とモジュレータの間の会合を洞察することができる。たとえばこのアプローチは、阻害活性があるモジュレータを選択し、この新しいタンパク質/モジュレータ複合体の結晶を得て、その複合体の三次元構造を解析して、新しいタンパク質/モジュレータ複合体と前に解析したタンパク質/モジュレータ複合体の間の会合を比較することによって、実行することができる。タンパク質/モジュレータの会合にモジュレータの変化がどれだけ影響しているかを観察することによって、このような会合は最適化されることもある。
さらに、上述の化16および化18の化合物、および/または本願明細書に記載のさらなる化合物を含む薬学的組成物を提供する。ある局面では、本願発明は、治療上有効な量の1つ以上の上述の化合物を、1つ以上の薬学的に許容な担体(添加物)および/または希釈剤とともに調合したものを含む、薬学的に許容な組成物を提供する。別の局面、ある実施態様では、本願発明の化合物は、そのまま、または薬学的に許容な担体と混合して投与することができ、その他の物質とともに投与することもできる。したがって、接合(conjunctive)(併用)療法 には、第1の投与物質の治療効果が完全に消える前に次の投与を行うような、活性化合物の連続、同時、および個別または併用投与が含まれる。
選択された投与経路にかかわらず、好適な水和状で用いることもできる本願発明の化合物、および/または本願発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容の剤形に調製される。本願発明の化合物は単体で投与することも可能であるが、当該化合物は薬学的製剤(組成物)として投与することが好ましい。本願発明の化合物は、他の医薬品から類推される、ヒトまたは動物用医薬品に利用するための任意の使いやすい方法で投与するために調製することもできる。ある実施態様では、プロドラッグ型の化16および18の化合物は、本願発明の薬学的組成物を含む。
後述の通り、本願発明の薬学的組成物は、(1)たとえば水薬(水溶性および非水溶性溶液または懸濁液)、たとえば口腔内、舌下、および全身吸収などを狙った錠剤、ボーラス、粉末、顆粒、舌への塗布用のペーストなどの、経口投与、(2)たとえば皮下、筋肉内、静脈内、または硬膜外注射による、滅菌溶液もしくは懸濁液、または徐放製剤としての非経口投与、(3)たとえばのクリーム、軟膏、または皮膚への塗布用の制御放出パッチもしくはスプレーなどの局所投与、(4)たとえばペッサリー、クリームまたはフォームなどの膣内または直腸内、(5)舌下、(6)眼内、(7)経皮、または(8)経鼻、などに用いられる、固体状または液体状の投与用に特に調製することもできる。ある実施態様では、前記薬学的組成物は非経口投与用に調製する。ある実施態様では、前記薬学的組成物は動脈内注射用に調製する。別の実施態様では、前記薬学的組成物は全身投与用に調製する。
他の場合には、本願発明の化合物は、1つ以上の酸性官能基を含んでよく、薬学的に許容な塩基で薬学的に許容な塩を形成することができる。
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味料および香料、保存料および抗酸化剤もまた、当該組成物に存在してよい。
本願発明の製剤には、経口、経鼻、局所(口内および舌下)、直腸内、経膣および/又は非経口投与に好適なものが含まれる。当該製剤は、使いやすいように単回投与剤形になっていてよく、薬学の当業に公知の任意の方法で調製されてよい。単回投与剤形をつくるために担体物質と混合してもよい活性成分の量は、治療対象のホスト、特定の治療形態によって変化するだろう。単回投与剤形をつくるために担体物質と混合してもよい活性成分の量は、一般に、治療効果を生じる化合物の量であろう。ある実施態様では、前記担体物質は前記化合物または前記組成物のその他の物質に共有結合している。
本願発明の化合物の経口投与用の液体状剤形には、薬学的に許容な乳剤、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤、およびエリキシル剤が含まれる。液体状剤形は、活性成分に加えて、たとえば水またはそのほかの溶媒、たとえばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に綿実油、ラッカセイ油、コーン油、胚種油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタン脂肪酸エステル、並びにそれらの混合物などの可溶化剤または乳化剤など、当業で一般に用いられる不活性希釈剤を含有してよい。経口組成物はまた、不活性希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、着香剤、着色剤、芳香剤、および保存剤などのアジュバントを含んでもよい。 懸濁液は、活性化合物に加えて、たとえばエトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天およびトラガカント、並びにそれらの混合物を含有してよい。
経口投与に適する本発明の製剤の形状は、カプセル(capsule)、カプセル(cachet)、丸剤、錠剤、トローチ剤(通常はスクロースおよびアカシアまたはトラガカントなどの着香基剤を用いる)、粉剤、顆粒、または水性液もしくは非水性液を用いた溶液もしくは懸濁液、または水中油もしくは油中水液体状乳剤、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、またはトローチ(ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤を用いる)、および/または洗口剤などでよく、それぞれ本願発明の化合物を活性成分としてあらかじめ定めた量含有する。本願発明の化合物はまた、ボーラス、舐剤、またはペーストとして投与してもよい。
経口投与用の本願発明の固体状投与剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒など)の場合、活性成分を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの薬学的に許容な担体、またはシクロデキストリンおよびその塩、および/または以下に記載するもの、(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、および/またはケイ酸などの充填剤または増量剤、(2)たとえばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよび/またはアカシアなどの結合剤、(3)グリセロールなどの保湿剤、(4)寒天、炭酸カルシウム、バレイショまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、炭酸ナトリウムなどの崩壊剤、(5)パラフィンなどの液体緩染剤、(6)第4級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、(7)たとえばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤、(8)カオリンおよびベントナイトクレイなどの吸収剤、(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体状ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物などの潤滑剤、並びに(10)着色剤のいずれかと混合する。カプセル、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤も含んでもよい。同様の種類の固体状組成物はまた、ラクトースまたは乳糖、および高分子ポリエチレングリコールなどの賦形剤を用いて、軟ゼラチンカプセルおよび硬ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
錠剤は、任意の1種類以上の副成分と共に、圧縮または成形によって作製してもよい。圧縮錠剤は、結合剤(たとえばゼラチン、またはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、錠剤分解物質(たとえばデンプングリコール酸ナトリウム、または架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性剤または分散剤を用いて調製してよい。成形錠剤は、不活性液体状希釈剤で湿潤させた粉末状の化合物の混合物を、好適な機械で成形して作製してよい。 本願発明の薬学的組成物の錠剤、およびたとえば糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒などのそのほかの固体状剤形には、任意に刻印してもよく、腸溶コーティングおよび製剤業者に公知のそのほかのコーティングなど、コーティングおよびシェルで調製してもよい。それらはまた、たとえば望ましい放出プロフィールを提供するための様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、シクロデキストリンおよびその塩、そのほかのポリマー基質、リポソームおよび/またはマイクロスフェアなどを用いて、活性成分の持続放出または制御放出を提供できるように調剤してもよい。それらは、たとえば凍結乾燥など、迅速な放出のために調剤してもよい。それらは、たとえば細菌保持性フィルターで濾過するか、または滅菌水に溶解することができる滅菌個体組成物状の滅菌剤を組み入れるか、もしくはそのほかの滅菌注射可能溶媒を使用直前に組み入れることによって、滅菌してもよい。これらの組成物はまた、選択的に不透明化剤を含有してもよく、選択的に徐放的に消化管の特定の部分のみにまたは優先的に、活性成分のみを放出する組成物であってよい。使用してもよい埋包組成物の例には、高分子物質およびロウが含まれる。活性成分はまた、適宜、1種類以上の上記賦形剤を用いたマイクロカプセル封入剤形であってもよい。
本願発明の化合物の局所または経皮投与用の剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、および吸入剤が含まれる。滅菌条件下で、薬学的に許容な担体、および保存剤、緩衝剤、または必要であれば高圧ガスと混合してよい。 軟膏、ペースト、クリームおよびゲルは、本願発明の活性化合物に加えて、動物性および植物性脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルクおよび酸化亜鉛、ならびにそれらの混合物などの賦形剤を含有してよい。粉末およびスプレーは、本願発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはそれらの物質の混合物などの賦形剤を含んでもよい。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素、およびブタンおよびプロパンなどの揮発性非置換炭化水素など、通例の高圧ガスを含んでもよい。
非経口投与に好適な本願発明の薬学的組成物は、糖、アルコール、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、対象のレシピエントの血液と等張にするための溶質、または懸濁剤もしくは増粘剤を含んでよい、1種類以上の薬学的に許容な滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散液、懸濁液もしくは乳剤、または使用直前に注射可能な滅菌溶液もしくは分散液に再構築してよい滅菌粉末と混合した、本願発明の1種類以上の化合物を含む。 このような組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤などのアジュバントも含んでよい。微生物の活動を確実に防ぐために、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などの各種抗菌剤および抗真菌剤を含んでもよい。さらに、糖、および塩化ナトリウムなどの等張剤を前記組成物に含ませることが望ましい。さらに、注射可能な剤形の吸収を持続させるために、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収遅延剤を含んでもよい。
あるケースでは、薬物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射からの薬物の吸収を遅延させることが望ましい。これは、水への溶解度が低い結晶またはアモルファス物質の液体状懸濁液を使用することで実現してもよい。薬物の吸収速度は溶解速度に依存し、したがって結晶サイズおよび結晶の形状に依存することがある。代替的には、非経口投与剤形の吸収は、薬物を油状賦形剤に溶解または懸濁させると遅延させることができる。
注射可能なデポー剤形を作製するには、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解性ポリマーに入っている対象化合物のマイクロカプセル封入基質を形成する。薬物対ポリマーの比、および使用した特定のポリマーの性質によって、薬物の放出速度を制御することができる。そのほかの生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が含まれる。注射可能なデポー製剤はまた、体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョンの中に薬物を封入して調製する。
C. Bの小分子組成物の治療用途
細胞、組織、腫瘍および/または癌内で高4E活性を阻害するために必要な化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載のさらなる化合物のレベルは、マイクロモルである。したがって、リバビリンが4E活性を阻害する治療レベルは、化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載のさらなる化合物を、肝炎の治療用のインターフェロンとの併用治療として使用するために機構的に提供されると以前記述された量の1/500である。さらに、化16および18の化合物、および/または細胞、組織、腫瘍および/または癌内で4E活性を活発に阻害すると本願明細書に記載したさらなる化合物は、肝炎の治療用のIFNの併用投与と合わせた、ミリモルレベルで活性なものとは異なる形状および荷電空間である。確かに、Hairisiらによる転移のマウスモデルでは、リバビリンは肝臓転移症を低減することが認められた(Jeney,
A., et al.(2006) Magy. Onkol. 50:93-100)。
したがって、本願発明者らは、化16および18の化合物は、個体内の新/転移癌の成長、増殖、および播種を阻害し、罹患個体の体内での天然/内因性免疫学的プロセスで腫瘍の完全除去を攻撃、作用させるか、または化16および18の化合物に基づく癌治療で、肝炎治療に必要な量の1/500で、癌、および腫瘍などを含む高4E活性が作動している疾患の症状の長期管理に作用させるのに必要な化16および18の化合物の慢性投与中に毒性かもしれないレベルよりもはるかに少ない投与量の化16および18の化合物の慢性投与によって4E活性癌の長期管理を行えるであろうことを発見した。
既存の癌の連続した成長および増殖の予防(それらを停止状態にすること)は、とりわけ頭頸部、乳前立腺、肺、子宮頸を含む高4E活性を呈する数多くの癌の管理において大きな進展である。
さらに、癌が生じる血管新生および自己分泌因子の多くは翻訳レベルで4Eに制御されているので、化16および18の化合物および/または本願明細書に記載のさらなる化合物の投与を含む治療法は、転移癌の連続的な成長と確立に必要な血管新生のプロセスを阻害すると考えられる。
したがって、化16および18の化合物および/または本願明細書に記載のさらなる化合物の投与は、高4E活性が原因因子であることが明らかであるさらなる非癌症状に適切であることが明らかである治療介入を提供することもできる。
したがって、上述の化16および化18の化合物、および/またはに本願明細書に記載のさらなる化合物を含む組成物で、それを必要とする被験体を処置する方法を提供する。化16および18の化合物は、たとえば4Eを標的とすることによって、高4E活性を阻害する。特に、たとえば高4E活性の症状が存在する場合など、細胞、組織、および哺乳動物の細胞増殖および4Eレギュロン活性を阻害する。したがって、化16および18の化合物は、高4E活性の症状が存在する場合に、特に細胞、組織、哺乳動物の癌細胞増殖の阻害物質として作用することが期待される。したがって、それらは、細胞、組織、または哺乳動物の高4E活性を阻害する方法、または細胞、組織、または哺乳動物の細胞増殖を阻害する方法に使用してよい。
化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載のさらなる化合物を含む組成物は、癌を有する被験体の処置に用いてもよい。前記組成物は、上述のとおり、たとえば癌などの高4E活性が原因で生じる症状を処置するのに特に有用かもしれない。化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載の化合物を含む組成物は、あとで詳細に説明するであろう通り、後述の癌治療用ベクタの阻害物質および/またはいずれかの投与量依存性制御物質として用いることもできる。
ある実施態様では、化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載のさらなる化合物を含む組成物は、高4E活性が表す転移表現型を阻害して、予防的な抗転移を生じることがある。
ある実施態様では、化16および18の化合物の使用を含む治療法は、インターフェロン、キナーゼ阻害剤、後述のDにさらに説明する遺伝子療法用ベクタ、および/または化学療法剤、生物製剤および直下に記載の細胞毒素などの、その他の癌治療薬の使用も含んでよい。
「化学療法剤」という用語は、腫瘍細胞などの外来細胞または悪性細胞によって生じる疾患を処置するために使用する小分子または組成物のいずれかを意味する。化学療法剤の制限されない例には、DNA合成を阻害する物質が含まれ、トポイソメラーゼI阻害物質であるか、アルキル化剤であるか、または植物性アルカロイドである。「DNA合成を阻害する物質」という用語は、DNA合成のプロセスを低減または阻害することができる分子または化合物のいずれかを意味する。DNA合成を阻害する物質の例は、たとえばそれらに限定せずに含むゲムシタビンまたは代替的にはアントラシクリン化合物、たとえばアドリアマイシン、ダウノムビシン、ドキソラビシン、およびイダムビシンなどをそれらに限定せずに含む、ピリミジンまたはプリン類似物などのヌクレオシド類似物、およびエトポシドおよびテニポシドなどのエピポドフィロ毒素をそれらに限定せずに含む。「トポメラーゼI阻害物質」という用語は、トポメラーゼI酵素の生物学的活性を阻害または低減する分子または化合物を意味する。たとえば、カンプトサールがそれに限定されずに含まれる。「アルキル化剤」という用語は、(たとえばアミン、アルコール、フェノール、有機および無機酸などの)求核基と反応し、アルキル基(たとえばエチルまたはメチル基)をタンパク質または核酸などの別の分子に付加させることができる分子または化合物のいずれかを意味する。化学療法剤として使用されるアルキル化剤の例には、ビスルファン、クロラムブシル、シクロホスファミド、イフォスファミド、メクロレタミン、メルファラン、チオテパ、各種ニトロソウレア化合物、およびシスプラチンおよびカルボプラチンなどのプラチナ化合物が含まれる。「植物性アルカロイド」という用語は、生物学的に活性で細胞毒性な植物に由来するアルカリ性、窒素含有分子のファミリに属する化合物を意味する。植物性アルカロイドの例には、タキソール、ドセタキセル、およびパクリタキセル、ならいびにビンブラスチン、ビンクリスチン、およびビノレルビンなどのビンカが、それらに限定されずに含まれる。
生物製剤には、腫瘍細胞、腫瘍血管系、または腫瘍ストローマの標的化可能な要素に結合する、抗体またはその抗原結合断片が含まれてよい。腫瘍細胞、腫瘍血管系、または腫瘍ストーマの「標的化可能な要素」は、好ましくは、表面に発現するか、表面にアクセスできるか、または表面に局在化する要素であるが、細胞質および/または各腫瘍細胞抗原を含む、壊死などの損傷腫瘍細胞、または血管内皮細胞から放出される要素を標的化してもよい。
生物製剤には、B3 (ATCC HB 10573), 260F9 (ATCC HB 8488), D612 (ATCC HB
9796) and KS1/4からなるグループが例示する抗体であって、前記KS1/4 抗体はベクタpGKC2310 (NRRL B-18356)
またはベクタ
pG2A52 (NRRL B-18357)を含む細胞から得られる、抗体などの抗腫瘍性細胞免疫毒素またはコアギュリガンドも含まれてよい。生物製剤は、たとえば、フィブリン、RIBS、またはLIBSに例示される、連結組織要素、基底膜要素、または活性化血小板要素に結合する抗体などの抗腫瘍ストローマ免疫毒素またはコアギュリガンドであってよい。
抗腫瘍血管系免疫毒素またはコアギュリガンドなどの生物製剤は、血管形成された腫瘍の血管、好ましくは腫瘍内血管の表面に発現するか、表面にアクセスできるか、または表面に局在化した要素に結合する、リガンド、抗体、またはその断片も含んでよい。そのような抗体には、アミノリン脂質を含む血管形成された腫瘍の腫瘍内血管の表面発現要素、エンドグリン(TEC-4およびTEC-11抗体)、TGFβレセプタ、E-セレクチン、P-セレクチン、VCAM-1、ICAM-1、PSMA、VEGF/VPFレセプタ、FGFレセプタ、TIE、αvβ3インテグリン、プレイオトロピン、エンドシアリン、およびMHCクラスIIタンパク質などの腫瘍内血管系細胞表面レセプタに結合したものが含まれる。前記抗体は、腫瘍内血管のサイトカイン誘導性、または凝固物質誘導性要素にも結合してよい。
その他の抗腫瘍血管系免疫毒素またはコアギュリガンドは、腫瘍内血管系細胞表面レセプタに結合するリガンドまたは成長因子に結合する抗体またはその断片を含んでよい。そのような抗体には、VEGF/VPF (GV39およびGV97抗体)、FGF、TGFβ、TIEに結合するリガンド、腫瘍関連フィブロネクチンイソ型、散乱係数/肝細胞成長因子(HGF)、血小板因子4(PF4)、PDGFおよびTIMPに結合するものが含まれる。前記抗体またはその断片は、リガンド:レセプタ複合体、または成長因子:レセプタ複合体に結合してもよいが、前記リガンドもしくは成長因子または前記レセプタがリガンド:レセプタまたは成長因子:レセプタ複合体の中にない場合には、そのリガンドもしくは成長因子、またはそのレセプタには結合しないこともある。
植物、真菌、または細菌に由来する毒素などの細胞毒性物質(抗毒素)。リシンA鎖、脱グリコシル化リシンA鎖、ゲロニン、およびアンギオポエチンも、併用療法に使用してもよい。
投与量は、組成物の量/罹患体の体重kgに基づいてよい。その他の量は当業者に知られているので容易に決定できるであろう。代替的には、本願発明の投与量は、組成物の血漿濃度を参照して決定することもできる。たとえば、最大血漿濃度(Cmax)と、時間が0から無限まで(AUC(0-4))の血漿濃度-時間曲線下の面積を用いることもできる。本願発明の投与量には、それらのパラメータのより大きなまたは小さな値を生じる、上述のCmaxとAUC(0-4)の値、およびその他の投与量を生じるものが含まれる。
当業の医師または獣医師は、有効量の所要の薬学的組成物を容易に決定し処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、望ましい治療上の効果を達成するために、薬学的組成物に用いられる本願発明の組成物の投与量を所要レベルよりも少量から開始し、望ましい効果が得られるまで投与量を徐々に増加させることができる。
一般に、本願発明の化合物の好適な一日投与量は、治療上の効果を生ずるために有効な最低投与量の化合物の量であろう。このように有効な投与量は、一般に、上述の要因に依存するであろう。
約0.01乃至約5 mg/kg(体重)/日であって、好ましくは約0.1乃至約2.5mg/kg(体重)/日の本願明細書に記載のモジュレータの投与量が、4E活性に関連する疾患および症状の予防および処置に有用である。単回投与剤形をつくるために担体物質と混合してもよい活性成分の量は、治療対象のホスト、特定の治療形態によって変化するだろう。
特定の罹患体に最も有効な処置を得られるだろう、いずれかの化合物の、正確な投与時間および量は、特定の化合物の活性、薬物動態、およびバイオアベイラビリティ、前記罹患体の生理学的状態(年齢、性別、疾患のタイプおよび病期、一般的な物理状態、特定の投与量への応答、および薬物の種類)、および投与経路などに応じて変化させる。本願明細書に記載のガイドラインを用いて、当該罹患体のモニタリングからなる通常の実験しか要しない、たとえば最適な時間および/または投与量の決定などの処置を最適化してもよい。
被験体が処置されている間、罹患体の健康は、24時間の間に予め決められた時点で1つ以上の関連する指標を測定することによってモニターしてよい。投与の補足、量、時間、を含む処置は、そのようなモニタリングの結果に従って最適化してよい。罹患体は、同一のパラメータの測定によって向上の程度を決定するために定期的に再評価され、最初のそのような再評価は治療開始から4週間経過した時点で行い、次の再評価は治療中は4乃至8週間ごとに行い、その後は3ヶ月ごとに行う。治療は、人間の治療期間の典型的な長さである最低1ヶ月間、数ヶ月から何年にもわたって継続してよい。投与する物質の量と投与の時間の調節は、これらの再評価に基づいて決定されてよい。
処置は、当該化合物の最適量よりも少ない投与量から開始してよい。その後、その投与量を最適な治療効果が得られるまで少しずつ増加してよい。
本願発明のいくつかの化合物、または代替的にはその他の化学療法剤を併用する場合、異なる成分同士の効果の開始および持続時間は相補的なので、いずれかの個別の成分の必要投与量を減少させてもよい。そのような併用療法の場合、異なる活性物質を、一緒にまたは別々に、および、同時にまたは一日のうちの異なる時点で送達してもよい。当該化合物の毒性および治療効果は、たとえば、LD50およびED50などの決定のための細胞培養液または実験動物における標準的な薬学的方法によって決定してもよい。大きい治療指数を示す組成物が好ましい。有毒な副作用を示す化合物を用いてもよいが、副作用を減少させるために、当該化合物を望ましい部位に狙わせる送達システムをデザインするように注意が払われなければならない。
細胞培養アッセイおよび動物研究から得られるデータは、ヒトにおける使用のための用量の範囲を決定する際に用いることもできる。いずれかの補足物、または代替的にはその中のいずれかの成分の投与量は、好ましくは毒性が小さいかまたは皆無のED50を含む循環濃度の範囲内にある。前記用量は、用いられた投与剤形および使用された投与経路によって、この範囲内で変化させてもよい。本願発明の物質の場合、治療上有効な投与量は、最初に細胞培養アッセイで推定してもよい。1回投与量は、動物モデルにおいて、細胞培養物で決定したIC50(すなわち症状の最大半減抑制を達成する前記テスト化合物の濃度)を含む循環血漿濃度の範囲になるように調製してもよい。このような知見は、ヒトにおける有用な投与量をより正確に決定するために用いてもよい。血漿濃度は、たとえば高性能液体クロマトグラフィによって測定することもできる。
D. 遺伝子療法用の組成物
さらに、とりわけmRNAの核から細胞質への輸送および/またはmRNA翻訳の制御を促進する、遺伝子治療用ベクタおよびウイルスを含む組成物を提供する。このベクタおよびウイルスは、ベクタおよび/またはウイルスの複製および/または溶解に必要な遺伝子治療用ベクタ/ウイルスの中に含有されるタンパク質をコードするたとえばDNA作製物またはmRNAなどの核酸、毒素、溶解性ペプチドおよび/またはタンパク質および/またはプロセスを含むがそれらに限定されない遺伝子治療用活性に必要な治療用タンパク質をコードするmRNAなどの核酸、およびプロドラッグ転換酵素(aka自殺遺伝子)、抗血管新生タンパク質、アポトーシスカスケード酵素、腫瘍サプレッサ、サイトカイン、および免疫学的に活性なタンパク質を含むがそれらに限定されない治療用タンパク質をコードするmRNA、およびRNAiアンチセンスなどを含んでよい。
本願発明者らは、核の中でのmRNAの4E認識が細胞質の中とでは基本的に異なる可能性を調べ、核の中でこのmRNAを4Eに感作させ、この配列を含有するmRNAの核から細胞質への輸送に必要で、4E媒介細胞形質転換に関与する、シクリンD1 3-UTRの100nt配列を同定した。
したがって、図14C(配列番号1)に記載の4E-SE配列(本願明細書では”4E-SE”とよぶ)を提供する。この配列は、3’UTR、5’UTR、またはその他のmRNAもしくはDNAの制御要素、またはDNA作製物として働くことがあるが、ある実施態様では、高4E活性の存在に依存する前記mRNAを核から細胞質へ輸送および/または翻訳するように働くこともある。遺伝子コードの縮重を許すと、少なくとも約70%、通常約80%、好ましくは少なくとも約90%、および最も好ましくは約95%の配列番号1に同一のヌクレオチドを有する配列は、図19αの最小で約50ヌクレオチドの領域を含む場合、本願明細書に記載の作製物およびベクタの中に4E-SEを含んでよいポリペプチドである。
そのような4E-SEを含む作製物およびベクタは、以下の特性および用途を有してよい。ある実施態様では、ベクタおよびウイルス複製を4E-SEの制御下に配置してもよい。他の実施態様では、ベクタ/ウイルス誘発性細胞溶解を4E-SEのコントロール要素の制御下に配置してもよい。さらに他の実施態様では、1つ以上のベクタ/ウイルスコードmRNAの核から細胞質への輸送および/または翻訳は、4E-SEのコントロール要素の制御下に配置されてよい。他の実施態様では、細胞溶解に必要な1つ以上のベクタ/ウイルスコードmRNAの核から細胞質への輸送および/または翻訳は、4E-SEの制御下に配置されてよい。
上述のベクタのいずれかは、以下の物質の1つ以上に適切なRNAまたはmRNAをコードするイントロンを含んでよい。そのような物質は、毒素、溶解性ペプチドおよび/またはタンパク質/プロセス、血管新生の制御因子、アポトーシスカスケード酵素、腫瘍抑制因子、サイトカインおよび免疫学的に活性なタンパク質(インターフェロン、GMCSF、GCSF、および全身輸送が臨床上の著しい副/悪性作用を伴うことが多い、腫瘍への宿主免疫応答を促進することが実証されているその他の物質がそれらに限定されずに含まれる)、RNAi、およびRNAアンチセンスである。
得られたベクタは、遺伝子療法用の発現の高い選択性および制限、高4E活性を有する環境への遺伝子療法発現の高い選択性および制限、および/または高4E活性を有するために輸送およびまたは翻訳を上述の化16および18の化合物および/またはさらなる化合物のいずれかによる阻害に方向付けられた環境への遺伝子療法発現の高い選択性および制限を提供してよい。
本願明細書に記載の化16および18の化合物および/またはさらなる化合物のいずれかの投与による上述のベクタのいずれかの遺伝子療法活性の阻害は、遺伝子療法活性を阻害して、その結果遺伝子療法薬の投与が投与された対象哺乳動物に好ましくない影響を与える治療プロセスを停止させる方法を提供する。高4E細胞および/または組織環境内での標的化の提示は、高4E環境を有する細胞および/または組織への高い選択性および特異性を提供する。そのような物質の有効性を上昇させ、および/または全身性の毒性を低減させるためのそのような遺伝子治療剤の標的化の向上は、このようなクラスの物質の全身(非標的化)投与のあとにしばしば報告された。したがって、化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載の化合物を含む組成物は、本願明細書に開示するベクタのいずれかの阻害因子および/または投与量依存性制御因子として働くこともある。ベクタおよび上述の化16および化18の化合物および/または本願明細書に記載のさらなる化合物を含む併用療法のさまざまな実施態様は、次節で説明する。
高い効果プロフィールを呈する遺伝子療法ベクタは、改善したプロドラッグ代謝/転換酵素をコードするmRNAをコードするイントロンを含有する、上述のベクタのいずれかを含んでもよい。二重に改善したプロドラッグ代謝/転換酵素は、Black、Loebらが開示したもの(チミジンキナーゼおよび/またはシトシンデアミナーゼ)の中から(だがそれに限定せずに)選択されてよい。それは、プロドラッグ基質の高い親和性および/または選択性、および/または、プロドラッグの活性な望ましい細胞毒性産生物などへの速い転換速度を獲得するステップをそれに限定せずに提供する。
本願明細書に開示した遺伝子療法用イントロンまたはウイルス溶解性反復要素は、以下のクラスの物質をそれらに限定せずに含む、以下の治療用イントロンまたはRNAのいずれかで置換してもよい。それは、(1) アンチセンスRNA、RNAi、リボザイム、高4E環境内で発現したRNAおよびmRNAのいずれかを阻害するように、および/または細胞、組織、および動物の高4E環境内で発現したmRNAの翻訳産生物の活性を阻害するように標的化してデザインした一本鎖抗体、(2) 4E-SEコントロール要素配列に標的化したRNAi、アンチセンスおよび/またはリボザイムである。本願明細書では、そのような遺伝子療法剤を「阻害性遺伝子療法剤」とよぶ。それらは、当業に知られる方法を用いてin
vitroまたはin vivoで投与してもよい。
作製物およびベクタは、(a) 上述の転写コントロール要素、および(b) 転写コントロール要素の標的遺伝子を伴う宿主細胞への相同組換えを可能にする標的遺伝子の隣接DNA配列を含有してもよい。他の実施態様では、当該作製物またはベクタは、標的遺伝子の望ましい座位への相同組換えを可能にする標的座位の、望ましい遺伝子および隣接するDNA配列を含む。当該作製物またはベクタはまた、その座位によって提供されるかもしれない応答性転写コントロール要素、または応答性要素を含有してもよい。
当該作製物またはベクタはまた、当該作製物の宿主細胞へのトランスフェクション、および当該作製物またはベクタを含有するトランスフェクタントの選択を可能にする選択可能なマーカを含有してもよい。本願発明はさらに、エピソームのトランスフェクション用か、または宿主細胞染色体への組み込み用のいずれかのための、そのような作製物を含有するDNAベクタを包含する。前記ベクタは、たとえばアデノ、アデノ関連、またはレトロウイルスベクタなどを含む、ウイルスベクタであってよい。
ウイルスベクタなどのベクタは、多様な標的細胞に遺伝子を導入するために従来技術でも使用されてきた。典型的には、前記ベクタを標的細胞に曝露して、十分な割合の前記細胞に形質転換を生じさせ、望ましいポリペプチドの発現から有用な治療または予防効果を提供することができる。トランスフェクトした核酸は、各標的細胞のゲノムに永久的に取り込まれ、長期間持続する効果を提供するか、または代替的にはその処置を定期的に繰り返さなければならないこともある。
さまざまなベクタ、ウイルスベクタおよびプラスミドベクタの両方が当業に知られている。米国特許第5,252,479 号およびWO
93/07282号参照のこと。特に、SV40などのパポバウイルス、ワクシニアウイルス、HSVおよびEBVを含む肝炎ウイスル、ならびにレトロウイルスなど、多数のウイルスが遺伝子輸送ベクタとして用いられている。従来技術の多くの遺伝子療法プロトコルが、無能化マウスレトロウイルスを用いている。
最近発行されたいくつかの特許が、遺伝子療法を行うための方法および組成物を対象としている。米国特許第6,168,916号、6,135,976号、5,965,541号および6,129,705号を参照。前述の各特許は、引用により本願明細書に援用される。
E. さらなる併用療法と同時療法
Dに記載の併用療法に加えて、化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載の化合物を含む組成物は、上に開示する阻害遺伝子療法のいずれかの阻害因子および/または投与量依存性制御因子として働くこともある。たとえば、化16および18の化合物は、4E-SEがmRNAのコントロール要素である場合を含めて、上述のとおりの4E-SE阻害因子として働くこともある。
さらに、他の実施態様では、化16および18の化合物はmRNA輸送および/または翻訳の阻害因子として働くこともある。たとえば、化16および18の化合物は、4E-SEがmRNAのコントロール要素である場合を含めて、上述のとおりの4E-SEを含有するmRNAの輸送および/または翻訳の阻害因子として働くこともある。
さらに他の実施態様では、化16および18の化合物は4E-SE制御下でベクタまたはウイルス複製の阻害因子として働くこともある。さらに、他の実施態様では、化16および18の化合物は4E-SE制御下でのベクタまたはウイルス誘導性細胞溶解の阻害因子として働くこともある。さらに別の実施態様では、化16および18の化合物は、4E-SE制御下において細胞溶解に必要なものなど1つ以上のベクタまたはウイルスでコードされたmRNA、および/または4E-SE制御下において上述のベクタのいずれかの中に含有される1つ以上の治療用遺伝子mRNAまたはイントロンの核から細胞質への輸送および/または翻訳の阻害因子として働いてもよい。
本願明細書に記載の遺伝子療法剤、およびmRNAの核から細胞質への輸送および/または翻訳転写プロセスの小分子阻害因子(化16および18の化合物および/または本願明細書に記載のさらなる化合物など)は、細胞、組織、および哺乳動物の中の高4E活性を阻害したり、細胞、組織、および哺乳動物(たとえば、高4E活性を有するものなど)の中での細胞増殖を阻害したり、癌および/または腫瘍(たとえば高4E活性を有するものなど)の中での細胞増殖を阻害するために、一緒にまたは一斉に用いてもよい。
高4E活性が存在する細胞増殖疾患の治療用の強化された方法および組成物であって、小分子および/または遺伝子療法を単独または組み合わせて投与しても細胞増殖疾患または癌または腫瘍を消去することはできないかもしれないが、持続する増殖と拡大を阻害して、宿主免疫系が細胞増殖疾患または腫瘍または癌のいずれかを消去するきっかけを提供するか、または追加の全身投与物質/生物製剤の定期的な併用投与、および/または1つ以上の遺伝子療法論の併用処方を用いるかまたは用いないで、細胞増殖疾患または腫瘍または癌を小分子の定期投与によって管理できる、強化された方法および組成物を、本願明細書に開示する。条件が上述の実施態様と見合う場合、増殖性疾患、癌、または腫瘍の「表現型が関係づけられ」て、致死的な状態から慢性状態へ疾患プロセスが変化する。
F. タンパク質発現
本願明細書に開示するいずれの遺伝子療法および/または遺伝子診断も、高4E活性が存在する細胞環境内で4E-SE制御下においてタンパク質の選択的な核から細胞質への輸送および翻訳が生じる場合の、各種発現系(哺乳動物細胞、昆虫細胞および/または酵母など)の限定しないリストとしてのみ提供される、真核生物タンパク質発現系内での治療用タンパク質の産生を提供するために使用してもよい。
化16および18の化合物、および/または本願明細書に記載の化合物を含む組成物は、本願明細書に開示される遺伝子療法のいずれかの阻害因子および/または投与量依存性制御因子として働くこともある。治療用タンパク質の単離の前に化16および18の化合物の添加が有害なmRNAの輸送および翻訳を阻害するように働くように、有害要素内の4E-SEコントロール要素の導入によって向上できる、目的の治療用タンパク質の分離に有害な、構造タンパク質に翻訳されるmRNAの、in vitroにおける治療用タンパク質産生系。本願明細書に記載の化16および18の化合物および/またはさらなる化合物の付加(または除去)による非治療用タンパク質合成の阻害(または化16および18による阻害による除去)は、その次に行う目的の治療用タンパク質の単離を改善するように働く。
当該治療用タンパク質が誘発プロモータの制御下にあり、化16および18の化合物がその誘発プロモータによって媒介された基礎抑制を向上させるように働く(mRNA輸送および翻訳の阻害によって)ことができる、タンパク質発現系は、誘発プロモータ「リガンド」に付加したあとに投与量依存性にmRNA輸送および翻訳を制御するように働くか、または誘発後、治療用タンパク質の輸送および翻訳を阻害してもよい。
ある実施態様では、発現ベクタが用いられる。発現には、適切なシグナルが宿主細胞での当該遺伝子の発現を促進する、ウイルスおよび哺乳類療法のエンハンサ/プロモータなど、さまざまな制御要素を含んでいる、ベクタに提供される必要がある。宿主細胞におけるメッセンジャRNAの安定性および翻訳可能性を最適化するためにデザインされた要素も定義する。産生物を発現する永久的で安定な細胞クローンを確立するための、たくさんの主な薬物選択マーカを用いるための条件も、薬物選択マーカの発現をポリペプチドの発現と関連づける要素とともに提供する。
本願明細書全体に用いられる「発現作成物」という用語は、ポリヌクレオチドがコードする配列の一部またはすべてが転写可能な、遺伝子産生物をコードするポリヌクレオチドを含有するいずれの種類の遺伝子作成物も含むことを意味する。転写物はタンパク質に翻訳されてもよいが、必要ではない。ある実施態様では、発現には、遺伝子の転写およびmRNAの遺伝子産生物への翻訳の療法が含まれる。他の実施態様では、発現は、対象の遺伝子をコードするポリヌクレオチドの転写しか含まない。
遺伝子産生物をコードするポリヌクレオチドは、プロモータの転写制御下にあってよい。「プロモータ」は、細胞の合成機構によって認識されるか、または遺伝子の特異的な転写の開始に必要な合成機構を導入するDNA配列を意味する。「転写制御下」という文言は、そのプロモータがRNAポリメラーゼの開始および遺伝子の発現を制御するポリヌクレオチドに関連する、適切な位置および配向にあるということである。
各プロモータの少なくとも1モジュールが、RNA合成の開始部位をセットするように機能する。これについて最もよく知られた例は、TATAボックスだが、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のプロモータやSV40後期遺伝子のプロモータなど、TATAボックスがない一部のプロモータでは、開始部位に重複する別の要素が開始位置の固定を促進する。
さらなるプロモータ要素は、転写開始の頻度を制御する。典型的には、これらは開始部位の上流の30乃至110bp領域に位置しているが、最近、多くのプロモータが開始部位の下流にも機能的要素を含んでいることが明らかになっている。プロモータ要素間のスペースは可動的なので、要素がお互い相対的に入れ替わったり移動したりしても、プロモータ機能は保存される。tkプロモータの場合、プロモータ要素間のスペースは、活性が低くなり始める前に50bp離れることがある。プロモータによっては、個別の要素が協調して、または個別に、転写を活性化するように機能することができるようである。
目的のポリヌクレオチド配列の発現を制御するために用いられる特定のプロモータは、標的細胞の中でポリヌクレオチドの発現を方向付けることができるのであれば、重要ではないと考えられている。したがって、ヒト細胞を標的とする場合、ヒト細胞に発現する能力のあるプロモータに隣接しその制御下にあるポリヌクレオチドコード領域に配置することが好ましい。一般に、そのようなプロモータにはヒトまたはウイルスプロモータが含まれてよい。発現レベルが特定の目標に十分である場合には、目的のコード配列の発現を実現するために当業に知られるウイルスまたは哺乳類細胞またはバクテリアファージプロモータを使用することも意図される。当業に公知の特性を持つプロモータを用いることによって、目的のタンパク質の形質移入または形質転換後の発現レベルおよびパターンを最適化することができる。
特異的な生理学的または合成シグナルに応答して制御されるプロモータの選択によって、遺伝子産生物が誘発的に発現できるようになる。たとえば、(単数または複数の)導入遺伝子の発現が、マルチシストロンベクタが用いられる場合に、ベクタが産生される細胞に対して有毒である場合、1つ以上の導入遺伝子の発現が阻害されるか、または低下することが望ましいかもしれない。産生細胞株に対して毒性があるかもしれない導入遺伝子の例は、アポトーシス促進性およびサイトカイン遺伝子である。いくつかの誘発性プロモータ系を、導入遺伝子産生物が有毒かもしれないウイルスベクタの産生に用いることができる。
ある状況では、遺伝子治療における導入遺伝子の発現を制御するのが望ましいことがある。たとえば、望まれる発現のレベルによって、さまざまな活性強度を有するさまざまなウイルスプロモータを用いてもよい。哺乳動物細胞の場合、CMVは、頻繁に用いられる場合には、初期プロモータに強い転写活性を提供させるよう促す。導入遺伝子の発現レベルが低い方が望ましい場合、強度が低い修飾CMVプロモータも使用されている。造血細胞において導入遺伝子の発現が望ましい場合、MLVに由来するLTRまたはMMTV などのレトロウイルスプロモータが用いられることが多い。望ましい作用によって用いられることもあるその他のウイルスプロモータには、SV40、RSV LTR、HIV-1およびHIV-2 LTR、およびE1A、E2A、またはMLP領域に由来するアデノウイルスプロモータ、AAV LTR、カリフラワーモザイクウイルス、HSV-TK、ならびにトリ肉腫ウイルスが含まれる。
同様に、組織特異的なプロモータを用いて、特異的な組織または細胞の転写に作用させて、非標的組織への潜在的な毒性または望ましくない作用を低減させることもできる。たとえば、PSA、プロバシン、前立腺酸ホスファターゼ、または前立腺特異的腺性カリクレイン(hK2)などのプロモータを用いて、前立腺の遺伝子発現を標的として用いることもできる。
ある状況では、遺伝子療法用ベクタの投与後、一定の時点で転写を活性化することが望ましいことがある。これは、制御可能なホルモンまたはサイトカインのようなプロモータで行ってよい。使用することができるサイトカインおよび炎症性サイトカインに応答性のプロモータには、KおよびTキニノゲン、c-fos、TNFα、C反応性タンパク質、ハプトグロブリン、血清アミロイドA2、C/EBPリポタンパク質リパーゼ、アンギオテンシノーゲン、フィブリノーゲン、c-jun(ホルボールエステル、TNFα、紫外線、レチノイン酸、および過酸化水素によって誘発される)、コラゲナーゼ(ホルボールエステルおよびレチノイン酸)、メタロチオイン(重金属およびグルココルチコイドによって誘発される)、ストロメリシン(ホルボールエステル、インターロイキン-1、およびEGFによって誘発される)、α-2マクログロブリン、およびα-1抗キモトリプシンが含まれる。
オステオカルシン、低酸素症応答要素(HRE)、MAGE-4、αフェトタンパク質、GRP78/BiPおよびチロシナーゼも、腫瘍細胞での遺伝子発現を制御するために使用してよい。本願発明にしたがって用いることができるその他のプロモータには、Lac-誘発性、化学療法誘発性(たとえばMDR)、および熱(高熱症)誘発性プロモータ、放射線誘発性(たとえばEGR)、α誘発性、RNA polIII tRNA metおよびその他のアミノ酸プロモータ、U1 snRNA、MC-1、およびαグロビンが含まれる。有用かもしれない多くのその他のプロモータは、Walther and Stein
(1996) J. Mol. Med, 74:379-392に記載する。
エンハンサは、DNAの同じ分子上の遠位に位置するプロモータからの転写を増やす遺伝子要素である。エンハンサはプロモータとほぼ同じように構築されている。つまり、それぞれが1つ以上の転写タンパク質に結合するたくさんの別々の要素から構成されている。エンハンサとプロモータの基本的な差異は操作可能である。エンハンサ領域は総じて離れていても転写を刺激することができなければならないが、これはプロモータ領域またはその構成要素に関しては当てはまる必要はない。しかし、プロモータは、特定の部位および特定の配向におけるRNA合成の開始を指示する1つ以上の要素を有していなければならないが、エンハンサにはこのような特徴はない。プロモータとエンハンサは、重複して近接していることが多く、非常に類似するモジュラー組織を有しているように見えることが多い。
cDNAインサートを用いる場合、典型的には、遺伝子転写体の適切なポリアデニル化に作用するポリアデニル化シグナルが含まれることが望まれるだろう。ポリアデニル化シグナルの性質は本願発明をうまく実施するために重要であるとは考えられておらず、そのような配列は、ヒト成長ホルモンおよびSV40ポリアデニル化シグナルなどに用いることもできる。さらに発現カセットの要素として考えられているのはターミネータである。このような要素は、メッセージレベルを向上し、カセットからその他の配列への通読を最小化するように働く。
本願発明のある実施態様では、細胞は本願発明のポリヌクレオチド作成体を含み、細胞はin vitroまたはin vivoにおいて発現作成物の中にマーカを含めることによって同定することもできる。そのようなマーカは、細胞に同定できる変化を生じ、発現作成体を含有する細胞を容易に同定することができるようになる。通常、薬物選択マーカを包含すると形質転換体のクローニングおよび選択が促進され、たとえばネオマイシン、ピューロマイシン、ヒグロマイシン、DHFR、GPT、HPRT、ゼオシン、およびヒスチジノールをコードする遺伝子は選択可能なマーカとして有用である。代替的には、単純ヘルペスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)などの酵素を用いてもよい。免疫マーカも用いることができる。用いられる選択可能なマーカは、遺伝子産生物をコードするポリヌクレオチドと同時に発現する能力があれば、重要ではないと考えられている。選択可能なマーカのさらなる例は、当業者に公知である。
本願発明のある実施態様では、内部リボソーム結合部位(IRES)要素を、多遺伝子または多シストロン性のメッセージを生じさせるために用いる。IRES要素は、5’メチル化キャップ依存性翻訳のリボソームスキャニングモデルを回避して、内部部位の翻訳を開始させることができる(Pelletier and
Sonenberg, (1988) Nature 334:320 325)。ピカノウイルスファミリ(ポリオおよび脳心筋炎)の2メンバに由来するIRES要素は、哺乳動物メッセージに由来するIRESとともに記述されている。IRES要素は、非相同性オープンリーディングフレームに結合することができる。複数のオープンリーディングフレームを一緒に転写して、それぞれIRESによって分離し、多シストロン性メッセージを作り出すことができる。IRES要素のおかげで、各オープンリーディングフレームは効率的な翻訳のためにリボソームに近づきやすい。複数の遺伝子は、1プロモータ/エンハンサを用いて効率的に発現し、一つのメッセージを転写することができる。
どの異種オープンリーディングフレームも、IRES要素に結合することができる。これには、分泌タンパク質、別々の遺伝子でコードされた多サブユニットタンパク質の遺伝子、細胞内または膜結合タンパク質、および選択可能なマーカが含まれる。このように、いくつかのタンパク質の発現は1つの作成物、および1つの選択可能なマーカを有する細胞に同時に組み込むことができる。
発現ベクタを細胞内に導入する方法は多数ある。本願発明のある実施態様では、発現作成物はウイルスゲノムに由来するウイルスまたは組換え作成物を含む。あるウイルスの、レセプタ依存性エンドサイトーシスによって細胞内に入り、宿主細胞ゲノムに組み込まれてウイルス遺伝子を安定的かつ効率的に発現する能力が、外来遺伝子を哺乳動物細胞に輸送するための輸送体として魅力的な候補となっている。遺伝子ベクタとして用いられる最初のウイルスは、パポバウイルス(サルウイルス40、ウシパピローマウイルス、およびポリオーマ)およびアデノウイルスが含まれるDNAウイルスである。これらは、外来DNA配列への許容度が比較的低く、宿主スペクトルも限られている。さらに、許容細胞におけるその発癌性と細胞変性効果のせいで、安全性に関する懸念が出ている。それらは8kbまでの外来遺伝子物質しか収容することができないが、さまざまな細胞株および実験動物に容易に導入することができる。
レトロウイルスは、1本鎖RNAウイスルであって、感染細胞の中で逆転写のプロセスによって2本鎖DNAへ転換する能力を特徴とするウイルスである。得られたDNAはプロウイスルとして細胞染色体に安定に組み込まれ、ウイルスタンパク質の合成を指示する。組み込まれると、感染細胞とその子孫の中で、ウイルス遺伝子配列が維持される。レトロウイルスゲノムは、gag、pol、およびenvという3種類の遺伝子を含有しており、それぞれ、カプシドタンパク質、ポリメラーゼ酵素、およびエンベロープ要素をコードしている。gag遺伝子から上流に見られる配列は、ゲノムをビリオンにパッケージングするシグナルを含有する。2つの末端反復(LTR)配列が、ウイルスゲノムの5’および3’末端に存在する。これらは、強力なプロモータおよびエンハンサ配列を含有し、宿主細胞ゲノムの組み込みにも必要である。
レトロウイルスベクタを作成するために、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドを、ウイルスゲノムの特定のウイルス配列の場所に挿入し、複製能力のないウイルスを作成する。ビリオンを作成するために、gag、pol、およびenv遺伝子を含有するがLTRとパッケージング成分を持たないパッケージング細胞株を作成する。cDNAを含有する組換えプラスミドをレトロウイルスLTRとパッケージング配列とともにこの細胞株に導入(たとえばリン酸カルシウム沈降によって)する場合、パッケージング配列は、組換えプラスミドのRNA転写物を、ウイルス粒子にパッケージして培養培地に分泌するように働く。その後、組換えレトロウイルスを含有する培地は、収集して、任意で濃縮し、遺伝子伝達に用いる。レトロウイルスベクタは、多用な細胞種に感染することができる。しかし、組み込みと安定な発現には宿主細胞の分裂が必要である。
最近、レトロウイルスベクタを特異的に標的化できるようデザインされた新規のアプローチが開発された。それは、ウイルスのエンベロープにラクトース残基を化学的に付加することによってレトロウイルスを化学修飾する方法だ。この修飾によって、シアロ糖タンパク質レセプタによる肝炎細胞への特異的な感染を許してしまうことがある。
組換えレトロウイルスを標的化する異なるアプローチもデザインされた。それは、レトロウイルスエンベロープタンパク質、および特異的な細胞レセプタに対するビオチニル化抗体を使用したアプローチである。ストレプタビジンを用いて、ビオチン成分を介して抗体を結合させた。主要組織適合抗原クラスIおよびクラスIIに対する抗体を用いて、in
vitroにおいて、各種ヒト細胞の感染によって、その表面抗原にエコトロピックウイルスで穴が開くことを実証した。
本願発明のすべての局面において、レトロウイルスベクタの使用には限界がある。たとえば、レトロウイルスベクタは通常、細胞ゲノムのランダムな部位に組み込まれる。これによって、宿主遺伝子の阻害、または隣接する遺伝子の機能を阻害することができるウイルスの制御配列の挿入によって、挿入変異を生じる可能性がある。欠損レトロウイルスベクタの使用に関する別の懸念は、パッケージング細胞の野生種複製コンピテントウイルスが出現する可能性である。これは、組換えウイルスの無傷の配列が、宿主細胞ゲノムに組み込まれたgag、pol、env配列の上流に挿入されるという組換えイベントが原因で生じる可能性がある。しかし現在、新しいパッケージング細胞株を入手することができ、それによって組換えの可能性が大きく低下するはずである。
レンチウイルスも本願明細書においてベクタとして用いることができる。すべてのレトロウイスルによってもたらされるtran導入遺伝子の長期発現に加えて、レンチウイルスは非分裂細胞を形質導入し、制御された発現を実現しうるきっかけを提供する。レンチウイルスベクタの作成には、導入遺伝子RNAのキャプシド形成が効率的で、完全な発現能力をもつ導入遺伝子を運ぶ輸送ベクタと、トランスだがヘルパーウイルスを産生しないパッケージング機構を提供するためのパッケージングベクタのデザインが必要である。どちらのベクタも、パッケージングシグナルについて、輸送ベクタに誘発されるがパッケージベクタから除外されるシグナルであることを知る必要がある。例示的なヒトレンチウイルスは、ヒト免疫不全ウイルス1型および2型(HIV-1およびHIV-2)である。HIV-2は、HIV-1よりも遺伝子輸送に向いていると考えられる。病原性が低いのでデザインと生成の時に安全性が高く、望ましい核移入と望ましくない細胞周期停止機能が2種類の別々の遺伝子上に隔離されているためである。
in vivo送達に好ましい方法の1つには、アデノウイルス発現ベクタの使用が関与する。「アデノウイルス発現ベクタ」は、(a)アデノウイルス配列を含有する作成物のパッケージングをサポートし、(b)そこにクローニングされているアンチセンスポリヌクレオチドを発現するのに十分な、アデノウイルス配列を含有する作製物が含まれることを意味する。この文脈において、発現には、遺伝子産生物が合成されることを必要としない。
発現ベクタは、アデノウイルスの遺伝子操作型を含む。アデノウイスル、36 kb、直鎖、2本鎖DNAウイルスの遺伝子構造を知ることによって、アデノウイルスDNAの大きい部分を7kbまでの外来配列に置換することができる。レトロウイルスと対照的に、宿主細胞のアデノウイルス感染は、染色体の組み込みを生じない。なぜなら、アデノウイルスDNAは遺伝毒性のないエピソームによる方法で複製することができるからである。さらに、アデノウイルスは構造的に安定で、大規模な増幅後にもゲノム再編成が検出されたことがない。アデノウイルスは、細胞周期に関わらず、実質上すべての上皮細胞に感染することができる。これまでのところ、アデノウイルス感染は、ヒトの急性呼吸器疾患など軽度の疾患にしか関連していないらしいことがわかっている。
アデノウイルスは、遺伝子輸送ベクタとして使用するのに特に好適である。なぜなら、ゲノムのサイズが中程度で、操作が容易で、力価が高く、標的細胞の範囲が広く、感染性が高いからである。ウイルスゲノムの両端には、ウイルスDNA反復とパッケージングに必要なシス要素である、100乃至200塩基対の逆方向反復(ITR)が含まれている。ゲノムの前記(E)および後期(L)領域は、ウイルスDNA反復の開始によって分裂する、異なる転写ユニットを含んでいる。E1領域(E1AおよびE1B)は、ウイルスゲノムおよび少数の細胞遺伝子の転写の制御の原因であるタンパク質をコードする。E2領域(E2AおよびE2B)の発現によって、ウイルスDNA複製のためのタンパク質が合成される。このタンパク質は、DNA複製、後期遺伝子発現、および宿主細胞の遮断に関与する。ウイルスカプシドタンパク質の大半を含む後期遺伝子の産生物は、主要後期プロモータ(MLP)によって支給される単一の一次転写物の著しいプロセシングの後にしか発現しない。MLP(16.8m.u.に位置する)は感染の後期に特に有効で、このプロモータから支給されるmRNAはすべて、翻訳に好ましいmRNAに変える5’-三者間リーダ(TPL)配列を有する。
現在のシステムでは、組換えアデノウイルスは、シャトルベクタとプロウイルスベクタ間の相同な組換えによって作製される。2つのプロウイルスベクタ間で組換えが起こりうるので、野生種アデノウイルスはこのプロセスで作製することができるかもしれない。したがって、単一のプラークからウイルスのクローンを1つだけ単離してそのゲノム構造を調べることは重要である。
現在の、複製欠損性のアデノウイルスベクタの生成および増殖は、293と命名された固有のヘルパ細胞株に依存している、この細胞株は、Ad5 DNA 断片でヒト胚性腎細胞から形質転換されたもので、構造的にE1タンパク質を発現する。E3領域はアデノウイスルゲノムには欠失可能なので、現在のアデノウイルスベクタは293細胞の助力によって、外来性DNAをE1、D3、または両方の領域のいずれかに運ぶ。元来、アデノウイルスは、DNA収容量に約2kbのの余裕がある場合に、野生種ゲノムの約105%をパッケージすることができる。E1およびE3領域において置換可能なDNA約5.5kbと組み合わせて、現在のアデノウイルスベクタの最大収容量は7.5kb未満か、またはベクタの長さの合計の約15%である。80%を超えるアデノウイルスゲノムは、ベクタ骨格に残っており、ベクタ媒介性細胞毒性の供給源となっている。さらに、E1除去ウイルスの複製欠損は不完全である。たとえば、ウイルス遺伝子発現の漏れが、現在入手可能な高い感染効率(MOI)のベクタに認められている。
ヘルパ細胞株は、ヒト胚性細胞、筋細胞、造血細胞、またはその他のヒト胚性間葉もしくは上皮細胞などのヒト細胞に由来してもよい。代替的には、ヘルパ細胞はヒトアデノウイルスを許容するその他の哺乳動物種の細胞に由来してもよい。そのような細胞には、たとえばベロ細胞またはその他のサル胚性間葉または上皮細胞が含まれる。上述のとおり、好ましいヘルパ細胞株は293である。
293細胞の培養およびアデノウイルスの増殖の方法には、培地100 200 ml を含有する1リットルのシリコン処理したスピナーフラスコ(Techne社、英ケンブリッジ)に、個々の細胞を播種することによって、天然の細胞凝集体を成長させるステップを含む。40rpmで撹拌後、細胞生存率をトリパンブルーで評価した。別のフォーマットでは、Fibra-Cel マイクロキャリア(Bibby Sterlin社、英ストーン)を以下の通り用いる。細胞播種物を5mlの培地に再懸濁させ、それを250mlのエルレンマイヤーフラスコに入れた担体(50ml)に加え、たまに撹拌しながら1乃至4時間静置した。次に、その培地を新鮮な培地50mlと交換して、振とうを開始する。ウイルス産生のために、細胞を約80%の集密度まで成長させて、その後、培地を交換し(最終容量の25%まで)、アデノウイルスをMOIが0.05のときに加える。培養液を一晩静置してから、容量を100%まで増加させ、さらに72時間の振とうを開始する。
アデノウイルスベクタが複製欠損性であるか、または少なくとも条件付きで欠損性であるという要件以外に、アデノウイルスベクタの性質は本願発明の実施の成功には重要ではないと考えられている。アデノウイルスは42種類の既知の血清型またはサブグループA Fのいずれであってもよい。サブグループCのアデノウイルス5型は、本願発明で用いるための条件付き複製欠損アデノウイルスベクタを得るために、好ましい開始物質である。これは、アデノウイルス5型は、生化学的および遺伝学的なたくさんの情報が知られているヒトアデノウイルスで、歴史的にアデノウイルスをベクタとして用いた作製物のほとんどに用いられている。
アデノウイルスは、増殖および操作がしやすく、in vitroおよびin vivoにおいて幅広い宿主範囲を呈する。ウイルスのこのグループは、たとえば109 1011
プラーク形成ユニット/mlなど、高力価のものを得ることができ、感染力も高い。アデノウイルスのライフサイクルは、宿主細胞ゲノムへの組み込みを必要としない。アデノウイルスベクタによって送達される外来遺伝子はエピソーム性なので、宿主細胞への遺伝毒性が低い。野生種アデノウイルスのワクチン接種についての研究では、副作用は報告されておらず、in vivo遺伝子輸送ベクタとして安全性と治療に用いる可能性が実証されている。
アデノウイルスベクタは、真核細胞遺伝子発現およびワクチン開発に用いられてきた。最近、動物研究において、組換えアデノウイルスを遺伝子療法に使用できるということが示唆された(Stratford-Perricaudet
and Perricaudet, (1991) In: Human Gene Transfer, Eds, O.
Cohen-Haguenauer and M. Boiron, Editions John Libbey Eurotext, France,
pp. 51 61; Stratford-Perricaudet et al. (1990) Hum. Gene Ther., 1:241
256; and Rich et al.(1993) Hum. Gene Ther., 4:461 476)組換えアデノウイルスのさまざまな組織への投与についての研究には、気管点滴注入、筋注射、末梢静脈注射、および脳への定位固定接種が含まれる。
アデノ関連ウイルス(AAV)は、約4700塩基対の直線状一本鎖DNAを利用する。逆位末端配列がゲノムに隣接している。2つの遺伝子がゲノム内に存在し、多くの異なる遺伝子産生物を生じている。1つ目のcap遺伝子は、VP-1、VP-2およびVP-3と命名された3つの異なるビリオンタンパク質(VP)を産生する。2つめはrep遺伝子で、4種類の非構造タンパク質(NS)をコードする。1つ以上のこれらrep遺伝子産生物が、AAV転写のトランス活性化に関与している。
AAVの3種類のプロモータは、その位置、マップユニット、ゲノムによって命名されている。これらは、左から右へ、p5、p19、およびp40である。転写によって6種類の転写物が生じており、2種類がそれぞれ3種類のプロモータを開始させ、各ペアの1つがスプライスされる。マップユニット42 46に由来するスプライス部位は、それぞれの転写物にとって同じである。4種類の非構造タンパク質は、明らかに長い方の転写物に由来しており、3種類のビリオンタンパク質はすべて最小の転写物に起因している。
AAVはヒトのいずれの病理状態にも関連していない。興味深いことに、効率的な複製のためには、AAVは単純ヘルペスウイルスIおよびII、サイトメガロウイルス、仮性狂犬病ウイルス、およびもちろんアデノウイルスなどのウイルスに由来する「ヘルプ」機能を必要とする。最も特徴付けられたヘルパーはアデノウイルスで、このウイルスの多くの「初期」機能がAAV複製を支援することが示されている。AAV repタンパク質の低レベル発現はAAV構造発現を抑制すると考えられており、ヘルパーウイルス感染がこの抑制を除去すると考えられている。
AAVベクタの末端反復は、AAVまたは修飾AAVゲノムを含有するpsub201などのプラスミドの制限エンドヌクレアーゼの消化によって、または公開されたAAV配列に基づく末端反復の化学または酵素合成がそれらに限定されずに含まれる、当業者に知られるその他の方法で得ることができる。通常の当業者は、安定で部位特異的な組み込みなどの機能を可能にするために必要なAAV ITRの最小配列または部分である、欠失解析などの当業に公知の方法によって決定できる。通常の当業者は、どの配列のマイナー修飾が、末端リピートの安定的で部位特異的な組み込みを指示する能力を維持しながら寛容性を示すことができるのかについても決定することができる。
AAVを用いたベクタは、in vitroにおける遺伝子輸送用に安全で効率的な担体であることが証明されており、これらのベクタは最近開発され、ex vivoおよびin vivoの両方において、将来性のある遺伝子療法における広範囲な用途のために、前臨床および臨床段階での試験が行われている。
その他のウイルスベクタを、本願発明の発現作製物に用いることもできる。ワクシニアウイルス(Baichwal and Sugden
(1986) In:Gene Transfer, Kucherlapati R, ed., New York, Plenum Press,
117 148)、アデノ関連ウイルス(AAV)(Baichwal and Sugden, 1986)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV)、VSV-G 型レトロウイルス(本願明細書に援用することにより具体的に引用される米国特許第5,817,491号)、JC、SV40、ポリオーマ(本願明細書に援用することにより具体的に引用される米国特許5,624,820号)などのパポバウイルス、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、パピローマウイルス(本願明細書に援用することにより具体的に引用される米国特許5,674,703号)、およびより具体的には、ウシパピローマウイルスI型(BPV、本願明細書に援用することにより引用される米国特許第4,419,446号)、ポリオウイルスヘルペスウイルス、ならびにヒトおよび動物ウイルスなどのウイスルに由来するベクタを用いてもよい。このウイルスは、さまざまな哺乳動物細胞の魅力的な特徴をいくつか提供する。
センスおよびアンチセンス遺伝子作製物の発現を実行するために、発現作製物を細胞に輸送しなければならない。この輸送はin vitroにおいて、形質転換細胞株の実験室での供給源としても、または、in vivo もしくはex vivoにおいてある疾患状態の処置においても、実行することができる。ある送達のメカニズムは、発現作製物が感染性ウイルス粒子にカプセル封入されている場合、ウイルス感染による。
培養した哺乳動物細胞へ発現作製物を輸送するためのいくつかの非ウイルス法も、本願発明に意図される。これらには、リン酸カルシウム沈降、DEAEデキストラン、電気穿孔、直接マイクロ注入、DNA負荷リポソームおよびリポフェクタミンDNA複合体、細胞超音波処理、高速微粒子銃を用いた遺伝子照射、およびレセプタ媒介トランスフェクションが含まれる。これらの技術の一部は、in vivoまたはex vivoの使用にうまく適合していることもある。
発現作製物が細胞に輸送されれば、目的の遺伝子をコードするポリヌクレオチドは異なる部位に配置されて発現してもよい。ある実施態様では、遺伝子をコードするポリヌクレオチドは、細胞のゲノムに安定に組み込まれてもよい。この組み込みは、相同組換え(遺伝子置換)によって同族の位置と配向に生じてもよく、またはランダムで非特異的な位置に組み込まれてもよい(遺伝子増大)。よりさらなる実施態様では、前記ポリヌクレオチドはDNAのばらばらのエピソームセグメントとして細胞に安定に維持されていてもよい。そのような核酸セグメント、または「エピソーム」は、独立に、または宿主細胞周期と協調した維持と複製を許容するのに十分な配列をコードする。どのように発現作製物が細胞に輸送され、細胞の中のどこにポリヌクレオチドが残っているのかは、使用した発現作製物の種類に依存する。
本願発明のさらに別の実施態様では、発現作製物は単純に裸の組換えDNAまたはプラスミドで構成されていてよい。前記作製物の輸送は、物理的にも化学的にも細胞膜を透過処理する、上述の方法のいずれによっても行うことができる。目的の遺伝子をコードするDNAも、in vivoにおいて同様に輸送して遺伝子産生物を発現してよい。
本願発明のさらに別の実施態様では、裸の組換えDNA発現作製物の細胞への輸送には、粒子照射が関与してもよい。この方法は、DNAコーティングされた微粒子銃を高速まで加速して、細胞膜を貫通させ、細胞を殺すことなく細胞内に入る能力を利用している。小粒子を加速する装置はいくつか開発されている。そのような装置の1つは、高圧放電を利用して電流を発生させ、原動力を得る。使用された微粒子銃は、タングステンまたは金ビーズなどの生物学的に不活性な物質で構成されている。
ラットおよびマウスの肝、皮膚、および筋組織を含む特定の器官を、in vivoにおいて照射する。これは、銃と標的器官の間の邪魔な組織を取り除くために、組織または細胞の外科的曝露、つまりex vivo処置を必要とすることがある。この場合もやはり、ある遺伝子をコードするDNAはこの方法によって送達されてよく、本願発明によって組み込まれてよい。
本願発明のさらなる実施態様では、発現作製物はリポソームに封入することもできる。リポソームは、リン脂質二重層膜と内部の水性溶媒を特徴とする小胞構造体である。多重膜リポソームは、水性溶媒で隔てられた多数の脂質層を有する。リン脂質を過剰な水溶液中に懸濁させると、自然にできあがる。脂質成分は前に自己再編成を経てから閉構造を形成し、脂質二重層の間に水と溶解した溶質を捉える。さらに、リポフェクタミンDNA複合体も意図される。
本願発明のある実施態様では、前記リポソームはセンダイウイルス(HVJ)と複合体化することもできる。これは、細胞膜との融合を容易にし、リポソーム封入DNAの細胞への進入を促進する。その他の実施態様では、前記リポソームは核非ヒストン染色体タンパク質(HMG-1)と複合体化するか、またはそれを併用してもよい。さらなる実施態様では、前記リポソームはHVJとHMG-1の両方と複合体化するか、またはそれらを併用してもよい。これらの発現作製物は、in vitroおよびin vivoにおいてポリヌクレオチドの輸送および発現にうまく用いることができていたので、本願発明に適用できる。細菌プロモータがDNA作製物に用いられる場合、前記リポソーム内に適切な細菌性ポリメラーゼを含むことも望ましいだろう。
特定の遺伝子を細胞をコードするポリヌクレオチドに送達するために用いることができるその他の発現作製物は、レセプタ媒介送達担体である。これらは、ほぼすべての真核細胞での、レセプタ媒介エンドサイトーシスによる高分子の選択的な取り込みを利用する。各種レセプタの細胞種特異的分布のために、送達は高度に特異的である可能性がある。
担体を標的とするレセプタ媒介遺伝子は一般に、2つの成分、細胞レセプタ特異的リガンドとDNA結合物質からなる。いくつかのリガンドは、レセプタ媒介遺伝子輸送のために用いられてきた。最も詳しく特徴付けられたリガンドは、アシアロオロソムコイド(ASOR)とトランスフェリンである。最近、ASORを同じレセプタとして認識する合成ネオ糖タンパク質は、遺伝子送達担体として用いられてきており、上皮成長因子(EGF)も扁平上皮腫瘍細胞への遺伝子送達に用いられてきた。
その他の実施態様では、前記送達担体はリガンドおよびリポソームを含んでもよい。たとえば、上皮成長因子(EGF)はEGFレセプタの上方調節を呈する多くの腫瘍細胞において、遺伝子をコードするポリヌクレオチドの媒介送達用のレセプタとして用いてもよい。マンノースは、肝細胞のマンノースレセプタを標的とするために用いることができる。さらに、CD5 (CLL)、CD22 (リンパ腫)、CD25 (T-細胞白血病)およびMAA(メラノーマ)に対する抗体は、標的部分として同様に用いることができる。
ある実施態様では、遺伝子輸送はex vivo条件下において、より容易に行うこともできる。Ex vivo遺伝子療法は、動物からの細胞の単離を意味し、in vitroにおいてポリヌクレオチドを細胞に送達し、その修飾細胞を動物に戻すことを意味する。これは、動物または細胞および組織の一次培養物からの組織/器官の外科的除去を含んでもよい。
G. 高4E活性を診断する方法
上述の方法および組成物は、4E活性を検出する診断方法、たとえば高4Eレベル、4E発現、4Eレギュロン成分の活性または発現などを診断する方法に組み入れてもよい。そのような方法は、動物、組織または細胞における高4E状態の検出の改善、診断の新しい方法、手術中の検出、治療効果および疾患の進行/退行の臨床経過の追跡、ならびに輸送およびまたは翻訳を阻害する化合物および/または生物製剤の同定方法、本願明細書に記載の遺伝子診断のいずれか/すべて/一つを提供することができる。たとえば、癌を治療するための候補治療物質の同定方法は、(a) 細胞と前記候補治療物質との接触、(b) 細胞における、前記候補治療物質との接触前および接触後の 4E活性または4Eレギュロン成分の活性レベルの測定であって、4E活性または4Eレギュロン成分活性のレベルの調節が、候補治療物質が癌の処置または予防のための治療物質であるかもしれないことを示す測定、を含んでよい。このアプローチは、接触前接触後のサンプルが罹患体の生検およびサンプルなどからなる場合の、ヒトへの適切な投与レベルをさらに規定および/または改良するために用いてもよい。候補治療物質は、たとえばコンビナトリアル合成方法を用いて作製されたものなど、候補治療物質のライブラリの一部であってよい。
本願明細書に記載の遺伝子治療用イントロンまたはウイルス溶解複製要素を遺伝子治療物質と置換すると、高4E環境が細胞および/または組織内に存在する状況を同定することができる。そのような遺伝子診断イントロンは、in vitroまたはin vivoにおいて投与することができる。遺伝子診断イントロンには、以下のmRNAをコードするものが含まれるがそれらに限定されない。それは、(1) in
vivo診断用遺伝子投与、および本願明細書に開示されるとおりのイメージング方法(上記参照)、(2) 適切なイメージングプローブ(PETプローブなど)に転換し、高4E環境が存在する細胞および/または組織の内部にイメージング剤を集中および局在化させるように働く、プロドラッグを代謝する酵素、(3) 高4E活性を有する環境内に集中および局在化させて、細胞増殖を阻害するおよび/または細胞死を誘発する、活性な細胞毒性代謝物にプロドラッグを転換する、プロドラッグを代謝する酵素(GCV、ACV、および5FCなど)、(4) 高4E環境が存在する細胞および/または組織を同定するように働く蛍光タンパク質(たとえば緑色蛍光タンパク質など)、(5) 適切な基質とともにインキュベートした場合に高4E環境が存在する細胞および/または組織を同定するように働く、βガラクトシダーゼ、および(6) 細胞溶解による高4E活性の検出を可能にするウイルス複製要素、である。
4Eの活性を決定する方法は当業に公知である。本願明細書に定義される4E活性には、4Eレギュロン活性、4Eレギュロンの制御下における成分の発現および/または活性、核から細胞質への特定のメッセージ(特にシクリンD1)の高輸送、および4Eのリン酸化状態および/またはeIF4EBPレベル、およびeIF4EBP のリン酸化状態も含まれる。
たとえば、4Eレギュロン成分の発現レベルは、逆転写ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)、ドットブロット分析、ノーザンブロット分析、リアルタイムPCRによる総mRNA、およびインサイチュ・ハイブリダイゼーションによって決定することができる。代替的には、4Eレギュロン成分のレベルは、適切な抗体を用いて分析することができる。ある実施態様では、4Eレギュロン成分の量は、4Eレギュロン成分に対する抗体を用いて決定することができる。
ある実施態様では、目的のタンパク質のレベルは、たとえばAQUA(登録商標)自動化病理学システムを用いるなどして、そのAQUA(登録商標)スコアを決定することによって決定される。AQUA(登録商標)(Automated Quantitative
Analysis)はin
situにおけるタンパク質発現の絶対値を分析する方法である。この方法は、細胞下コンパートメント内のタンパク質の発現の測定を可能にし、単位面積あたりに発現した分子数に直接比例した数が得られる。たとえば、核エストロゲンレセプタ(ER)を測定するために、1チャンネルにおいてケラチンを用いて前記組織を「マスク」して、腫瘍の面積を正規化し、分析から間質性およびその他の非腫瘍物質を除去する。その後、DAPIを用いて画像を撮り、核コンパートメントを決定する。マスク内およびDAPIで規定されたコンパートメント内のピクセルは、核として定義される。それから、3番目のチャンネルを用いて、ERの発現強度を測定する。ピクセルのサブセットの強度をピクセル数で割る(スポット間の面積を正規化する)と、AQUA(登録商標)スコアが得られる。ERタンパク質発現の既知のレベルで細胞株の標準曲線を評価すると、このスコアは腫瘍の単位面積あたりのER分子数に直接比例している。焦点外光サブトラクションイメージング法の詳細を含むこの方法は、本願明細書にその全体を援用することにより引用するNature Medicine誌(Camp, R. L., Chung, G.
G. & Rimm, D. L. Automated subcellular localization and quantification of
protein expression in tissue microarrays.Nat Med 8, 1323-7 (2002))、および2002年2月1日に提出されたU.S.S.N. 10/062,308に、詳細が記載されている。
その他の実施態様では、4Eレギュロン成分、またはその他の目的分子の発現レベルを検出する方法は、マイクロアレイの使用を含んでよい。アレイは、マイクロアレイとマクロアレイに分けられることが多く、マイクロアレイは面積あたりの個別のプローブ種の密度がはるかに高い。マイクロアレイは1cm2あたり1000個以上のプローブを有してよい。マイクロおよびマクロアレイの差異を区別するための具体的な仕切はなく、どちらのタイプのアレイも本願発明での使用が考慮される。
マイクロアレイは当業に知られており、一般に、配列が遺伝子産生物に相当するプローブ(たとえばcDNA、mRNA、オリゴヌクレオチドなど)を既知の位置に結合させる表面から構成される。ある実施態様では、マイクロアレイは、それぞれの位置が遺伝子によってコードされた産生物への別々の結合部位であって(たとえばタンパク質またはRNA)、結合部位が生物のゲノムにある大半のまたはほぼすべての遺伝子の産生物のために存在している、アレイ(たとえば基質など)である。ある実施態様では、結合部位または部位は、特定の同族のcDNAが特異的にハイブリダイズできる核酸または核酸類似物である。結合部位の核酸または類似物は、たとえば合成オリゴマー、完全長cDNA、完全長より少し短いcDNA、または遺伝子断片などであってよい。
ある実施態様では、マイクロアレイは、標的の生物ゲノムのすべてまたはほぼすべての遺伝子の産生物への結合部位を含有するが、そのような包括性は必ずしも必要ではない。通常、マイクロアレイには少なくとも100、500、1000、4000、またはそれ以上の遺伝子に相当する結合部位があるだろう。ある実施態様では、アレイは、代表する特定の生物の遺伝子の約50、60、70、80、90、または95%以上があるだろう。マイクロアレイは典型的には、目的の生物学的ネットワークモデルのテストおよび確認に関連する遺伝子の結合部位がある。いくつかの例示的なヒトマイクロアレイは、公的に入手可能である。
アレイに固定するプローブは、典型的にはポリヌクレオチドである。これらのDNAは、たとえば、ゲノムDNA、cDNA(たとえばRT-PCR)、またはクローニング配列に由来する遺伝子セグメントのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅によって得ることができる。PCRプライマは、遺伝子またはcDNAの既知の配列を用いて選択し、固有の断片(たとえばマイクロアレイ状のその他の断片を有する同族的に同一の配列の10塩基超を共有しない断片)を増殖する。必要な特異性と最適な増殖特性を有するプライマのデザインにおいて、コンピュータプログラムは有用である。たとえばOligo pl version 5.0
(National Biosciences)を参照。代替的な実施態様では、結合(ハイブリダイゼーション)部位は、プラスミド、または遺伝子、cDNA、またはそこからのインサート(たとえば発現配列タグ)のファージクローン(Nguyen et al., 1995, Genomics
29:207-209)からできている。
核酸または類似物をアレイをつくる固相担体に固定する方法は、数多く当業に知られている(Schena et al.,
1995, Science 270:467-470、DeRisi et al., 1996, Nature
Genetics 14:457-460、Shalon et al., 1996, Genome Res.6:639-645、and Schena et al.,
1995, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:10539-11286)。
マイクロアレイを作製する別の方法は、高密度ヌクレオチドアレイの作製による(Fodor et al.,
1991, Science 251:767-773、Pease et al., 1994, Proc. Natl.
Acad. Sci. USA 91:5022-5026、Lockhart et al., 1996, Nature Biotech 14:1675、米国特許第 5,578,832号、第5,556,752号、および第5,510,270号、Blanchard et al., 1996,
11:687-90)。
たとえばマスキングによるものなど、マイクロアレイを作製する他の方法(Maskos and Southern,
1992, Nuc.Acids Res.20:1679-1684)も用いてよい。だが、当業者に知られるであろう通り、原則的には、たとえばナイロンハイブリダイゼーション膜上のドットブロットなど(Sambrook et al.,
Molecular Cloning - A Laboratory Manual (2nd Ed.), Vol. 1-3, Cold Spring Harbor
Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989参照)、どんな種類のアレイも用いることができる。
マイクロアレイに接触させる核酸は様々な方法によって調製することができ、本願発明のヌクレオチドも含んでよい。そのような核酸は、蛍光標識されることが多い。核酸ハイブリダイゼーションと洗浄条件は、標識された核酸群を、基質に固定した適切で相補的な核酸に特異的にハイブリダイズできるであろうように選択される。標識された核酸のアレイへの非特異的結合は、大量の非特異的DNAでアレイを処理することによって減らすことができる。いわゆる「ブロッキング」ステップである。
蛍光標識したプローブを用いる場合、転写物アレイの各部位の蛍光放射は、二焦点レーザー顕微鏡でのスキャンによって検出することもできる。2種類のフルオロフォアを用いる場合、適切な励起線を用いた別々のスキャンを、使用した2種類のフルオロフォアのそれぞれについて実行する。蛍光マイクロアレイスキャナはAffymetrix社、Packard BioChip
Technologies社、BioRobotics社、およびその他多くの企業から市販されている。さまざまなコンピュータソフトウェアを使って、シグナルを記録、定量化、そして分析する。
本願発明の方法によると、2つの細胞または細胞株の中のmRNAの相対存在量をかく乱としてスコア化し、その大きさを決定する(つまり、その存在量は、テストしたmRNAの2つの供給源について異なる)か、またはかく乱を受けていない(つまり、相対存在量は同じである)とする。本願明細書に用いられるとおり、RNAの2つの供給源の差異が少なくとも約25%(1つ供給源のRNAがもう一つの供給源よりも25%多い)、より通常には約50%、さらにより多い場合には約2倍(量が2倍)、3倍(量が3倍)または5倍(量が5倍)の場合に、かく乱としてスコアされる。現在の検出方法は、約2倍乃至約5倍の差異を検出する信頼性があるが、感度のより高い方法の開発が期待される。
かく乱をプラスかマイナスと同定するステップに加えて、そのかく乱の大きさを決定するステップも有用である。これは、異なる標識付与のために用いた2つのフルオロフォアの発光の割合を計算するか、または当業者にただちに明らかであろう類似の方法によって、実行することができる。
ある実施態様では、そのような実験から得られるデータは、マイクロアレイに示される各遺伝子の相対的な発現を反映する。現在、さまざまなサンプルおよび状態の発現レベルを、さまざまな統計学的方法を用いて比較することもできる。
ある実施態様では、前記細胞には、組織マイクロアレイ上に存在してもよい組織サンプルが含まれる。たとえば、パラフィン埋包ホルマリン固定標本を調製してもよく、パンチ「生検」コアをその標本の別々の領域から採取してもよい。各コアは別のレシピエントのブロックに並べることができ、たとえばKonenen, J. et al.,
Tissue microarrays for high-throughput molecular profiling of tumor specimens,
(1987) Nat. Med. 4:844-7 およびChung, G.G. et al., Clin.Cancer
Res.(印刷中)に記載のように、切片をカットして処理することもできる。
別の実施態様では、前記細胞は、細胞培養ペレットマイクロアレイ上に存在してもよい細胞培養ペレットを含む。
ある実施態様では、数百または数千の遺伝子ではなく、1つまたは数個の遺伝子の発現を決定するのに十分である。マイクロアレイはこのような実施態様に使用されてもよいが、遺伝子発現検出のその他の様々な方法が使用可能である。このセクションは、mRNAまたはそれによってコードされるポリペプチドを検出および定量化する、数種類の例示的な方法を説明する。この方法の最初のステップに細胞からのmRNAの単離が含まれる場合、このステップは上述のとおり実行されてよい。1つ以上の核酸の標識は、上述のとおり実行されてよい。
ある実施態様では、サンプルから得られたmRNAは、1つ目のcDNA鎖に逆転写され、たとえばRT-PCRなどのPCRにかけられる。ハウスキーピング遺伝子、または発現が変化しないその他の遺伝子は、内部対照および実験全体の対照として用いることができる。PCR反応後、増幅した産生物を電気泳動法で分離し、検出することもできる。定量的PCRを用いると、増幅した産生物のレベルは、サンプル中に存在したRNAのレベルに相関するだろう。この増幅サンプルを、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル上で分離して、フィルタに移し、そのフィルタを目的の遺伝子に特異的なプローブとハイブリダイズすることもできる。たとえば多重PCRによるなど、平行PCR増幅を行うことによって、数多くのサンプルを同時に分析することもできる。
「ドットブロット」ハイブリダイゼーションは広く使用されており、多くのバージョンが開発された(たとえば、M. L. M. Anderson and B. D. Young,
in Nucleic Acid Hybridization-A Practical Approach, B. D. Hames and S.
J. Higgins, Eds., IRL Press, Washington D.C., Chapter 4, pp.73-111, 1985参照)。
別の実施態様では、mRNAレベルは、ドットブロット分析法および関連する方法で決定する(たとえば、G. A. Beltz et al., in Methods
in Enzymology, Vol. 100, Part B, R. Wu, L. Grossmam, K. Moldave, Eds.,
Academic Press, New York, Chapter 19, pp.266-308, 1985参照)。ある実施態様では、細胞から抽出されたRNAの特定の量をフィルタ上にブロットし(つまり非共有結合)、そのフィルタを目的の遺伝子のプローブとハイブリダイズする。ブロットはたくさんのRNAスポットを含んでいてよいので、数多くのRNAサンプルを同時に分析することもできる。ハイブリダイゼーションは、プローブのラベルの種類によって変わる方法を用いて検出する。別のドットブロット法では、4Eの1つ以上のプローブを膜に結合させ、その膜を、被験体の細胞または組織のRNAから得られ任意に誘導される標識された核酸でインキュベートする。そのようなドットブロットは、基本的にはマイクロアレイよりも少ないプローブを含むアレイである。
いわゆる「サンドウィッチ」ハイブリダイゼーションとよばれる別のフォーマットは、オリゴヌクレオチドプローブを固体担体に共有結合させるステップと、それを複数の核酸標的を捕捉および検出するために使用するステップを含む(たとえば、M. Ranki et al.(1983) Gene,
21:77-85、A. M.
Palva, et al, in UK Patent Application GB 2156074A, Oct. 2, 1985、T. M. Ranki and H. E.
Soderlund in U.S. Pat. No. 4,563,419, Jan. 7, 1986、A. D. B. Malcolm and J.
A. Langdale, in PCT WO 86/03782, Jul. 3, 1986、Y. Stabinsky, in U.S. Pat. No. 4,751,177, Jan. 14,
1988、T. H.
Adams et al., in PCT WO 90/01564, Feb. 22, 1990、R. B. Wallace et al.(1979)
Nucleic Acid Res.6,11:3543、and B. J. Connor et al.(1983) PNAS 80:278-282, を参照)。これらのフォーマットの多重バージョンは、「逆ドットブロット」とよばれる。
mRNAレベルはノーザンブロットでも決定してよい。特定量のRNAをゲル電気泳動法で分離し、フィルタ上に移して、目的の遺伝子に相当するプローブとハイブリダイズさせる。この方法は、多数のサンプルと遺伝子を分離する場合には手間がかかるが、非常に正確であるという利点がある。
遺伝子発現のハイスループット分析の別の方法は、遺伝子発現連続分析(SAGE)技術であり、Velculescu et al.(1995)
Science 270, 484-487に初めて記述された。SAGEの利点には、特定の細胞タイプに発現するすべての遺伝子を検出する能力の可能性があり、そのような遺伝子の相対的な発現についての定量的な情報を提供し、2つの細胞の中の遺伝子の遺伝子発現の比較を容易にし、検出した遺伝子を同定するために用いることもできる配列情報が得られる。これまでのところ、SAGE方法論は、さまざまな細胞種の制御および非制御遺伝子の発現を容易に検出することが証明されている(Velculescu et al.(1997)
Cell 88, 243-251、Zhang et al.(1997) Science 276, 1268-1272およびVelculescu et al.(1999)
Nat. Genet. 23, 387-388)。
核酸を産生してプローブする技術は、さらに、たとえばSambrook et al., Molecular
Cloning:A Laboratory Manual (New York, Cold Spring Harbor Laboratory, 1989)に記載されている。
代替的には、4Eレギュロン成分またはその他の目的の遺伝子の発現レベルは、in situハイブリダイゼーションによって決定される。ある実施態様では、組織サンプルを被験体から採取し、その組織サンプルをスライスして、in situ当業に知られる方法に従ってハイブリダイゼーションを行い、発現レベルを決定する。
他の方法では、4Eレギュロン成分またはその他の目的の遺伝子の発現レベルは、遺伝子がコードするタンパク質レベルを測定することによって検出する。これは、たとえば免疫沈降法、ELISA、またはたとえばその遺伝子にコードされるタンパク質を特異的に検出する抗体などの物質を用いる抗体免疫組織化学によって行うこともできる。その他の技術には、ウェスタンブロット分析が含まれる。免疫測定法は細胞サンプル中のタンパク質レベルを定量化するために一般的に用いられており、多くの他の免疫測定技術が当業に知られる。本願発明は、特定のアッセイ法に限定されず、したがって均一なまたは不均一な方法の両方を含むことを意図する。本願発明にしたがって行うことができる例示的な免疫測定法には、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)、蛍光免疫測定法(FIA)、酵素免疫測定法(EIA)、比濁分析阻害免疫測定法(NIA)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、および放射性免疫測定法(RIA)が含まれる。指標部分または標識グループは、当該抗体に結合してよく、測定装置と、適合可能な免疫測定法の入手可能性によって決定されることが多い方法の様々な利用法の必要性と合致するように選択する。上述の各種免疫分析法を行うために用いられている一般の技術は、当業者に公知である。
細胞から分泌されたポリペプチドの場合、これらのポリペプチドの発現レベルは生物学的液体中で測定できるかもしれない。
上述の方法は、細胞培養液中か、または被験体の細胞または組織標本上で成長させた細胞を用いて行ってもよい。標本は、「侵襲的」または「非侵襲的」サンプル採取手段のいずれかを使って試験するために、個体から得てもよい。サンプル採取手段は、動物(特にマウス、ヒト、ヒツジ、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、またはネコを含む)の皮膚または器官内からの核酸の収集が関与する場合には、「侵襲的」という。侵襲的な方法の例には、血液採取、精液採取、針生検、胸部吸引、臍帯生検などが含まれる。そのような方法の例は、Kim, C. H. et al.(1992)
J. Virol. 66:3879-3882; Biswas, B. et al.(1990) Annals NY Acad. Sci. 590:582-583;
Biswas, B. et al.(1991) J. Clin. Microbiol.
29:2228-2233に検討されている。また、被験体から細胞サンプルを採取して、望ましい細胞種の中で濃縮することもできる。たとえば、望ましい細胞種の細胞表面上にあるエピトープに結合する抗体を用いた単離など、さまざまな技術を用いて細胞を他の細胞から分離してもよい。
ある実施態様では、単一の細胞をこの分析に用いる。RNAが抽出されるかもしれない大規模な細胞群を得るために、細胞を被験体から採取して、in vitroにおいて細胞を培養することもできる。比形質転換細胞の培養液、つまり一次細胞培養液を確立する方法は、当業に知られている。
個体から採取した組織サンプルまたは細胞を分析する場合、組織または細胞が被験体から除去された後で、遺伝子発現にさらなる変化が生じるのを防ぐことは重要かもしれない。発現レベルの変化は、たとえば熱ショックもしくはリポ多糖(LPS)による活性化、またはその他の試薬などのかく乱の後に生じる急速な変化であることが知られている。さらに、組織および細胞のRNAおよびタンパク質はすぐに分解するかもしれない。したがって、好ましい実施態様では、被験体から採取した細胞は、なるべく早く即時冷凍する。
H. キット
本願発明は、たとえばさまざまな癌を処理するなどのキットを提供する。たとえば、キットは、上述のとおり、1つ以上の薬学的組成物(たとえば化16および18の化合物並びに/または遺伝子治療用ベクタを含む)、および任意にその使用説明書を含んでよい。さらに他の実施態様では、本願発明は、1つ以上の薬学的組成物、およびそのような組成物の投与を実施するための1つ以上の装置を含むキットを提供する。
ある実施態様では、キットは、4Eに対する抗体または4Eレギュロンの成分を含んでよい。他の実施態様では、キットは、被験体の細胞のタンパク質活性のレベルを決定するための適切な試薬を含んでもよい。
さらに他の実施態様では、キットは、4E遺伝子または任意の4Eレギュロン成分のプローブを含むマイクロアレイを含んでもよい。目的の遺伝子の発現レベルを検出するための1つ以上のプローブまたはプライマ、および/またはプローブが結合して目的の遺伝子の発現を検出するために用いることができる固体担体を含んでよい。キットはさらに、対照、バッファ、および使用説明書を含んでよい。
キットはさらに、たとえば参照セットなど、さまざまな細胞または疾患状態に関連する遺伝子発現レベルの4Eまたは4Eレギュロン成分のライブラリを含んでよい。このキットは、高4E活性によって生じる疾患または障害の素因を持つ、またはそれらを発症する被験体を同定し、高4E活性によって生じる疾患または障害のための治療物質を同定および評価するために有用であってよい。ある実施態様では、そのキットはさまざまな細胞または疾患状態に関連する1つ以上の遺伝子発現パターン、または少なくともさまざまな細胞または疾患状態の4Eまたは4Eレギュロン成分の発現レベルを示す値を保存する、コンピュータで読み取ることができる培地を含む。このキットは、コンピュータシステムのメモリにロードすることができる、発現プロフィール解析ソフトウェアを含んでよい。
キットの構成要素は、上述の方法を手作業で、または部分的もしくは完全に自動化されたやり方で、パッケージしてもよい。キットに関与する他の実施態様では、本願発明は、本願発明の構成要素、および任意にその使用説明書を含むキットを目的とする。そのようなキットには、たとえば、イメージング、診断、療法、およびその他の用途などを含む、さまざまな用途があってよい。
本願発明は、以下の実施例によってさらに具体化されるが、それらはどのようにも本願発明を制限するものと解釈されてはならない。本願明細書全体に引用されているすべての参考文献、本願明細書全体に引用される文献、発行済み特許、および公開済みまたは未公開特許出願明細書は、引用により本願明細書に明白に援用される。本願発明の実施には、他に指示のない限り、当業の技術の範囲内である細胞生物学、細胞培養、分子生物学、組換え生物学、微生物学、ウイルス学、組換えDNA、および免疫学従来の技術を用いるだろう。そのような技術は、文献に十分に説明されている。 (たとえば、, Molecular Cloning A Laboratory Manual, 2nd Ed., ed. by
Sambrook, Fritsch and Maniatis (Cold Spring Harbor Laboratory Press: 1989)、DNA Cloning, Volumes I and II (D. N. Glover ed., 1985)、Oligonucleotide
Synthesis (M. J. Gait ed., 1984); Mullis et al. U.S. Patent No: 4,683,195; Nucleic Acid Hybridization (B. D.
Hames & S. J. Higgins eds. 1984)、Transcription And Translation (B. D.
Hames & S. J. Higgins eds. 1984); (R. I. Freshney, Alan R. Liss, Inc.,
1987)、Immobilized Cells And Enzymes (IRL Press, 1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular
Cloning (1984); the treatise, Methods In Enzymology (Academic Press,
Inc., N.Y.)、Gene Transfer Vectors For Mammalian
Cells (J. H. Miller and M. P. Calos eds., 1987,
Cold Spring Harbor Laboratory)、Vols. 154 and 155 (Wu et
al. eds.), Immunochemical Methods In Cell And Molecular Biology (Mayer
and Walker, eds., Academic Press, London, 1987)、Handbook
Of Experimental Immunology, Volumes I-IV (D. M.
Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986) (Cold Spring Harbor Laboratory Press,
Cold Spring Harbor, N.Y., 1986)を参照)。
例1 リバビリンは、7-メチルグアノシンmRNAキャップの物理的模倣によるeIF4E媒介発癌性形質転換を抑制する
真核生物翻訳開始因子eIF4Eは、多くのヒト癌において調節解除され、細胞における過剰発現によって悪性の形質転換が引き起こされる。eIF4Eの発癌性はmRNAの5’末端の7-メチルグアノシンに結合する能力に直接関連する。ここでは、本願発明者らは、抗ウイルス性グアノシン類似体、リバビリンは、7-メチルグアノシンmRNAキャップによって用いられる機能的部位におけるマイクロモル単位の親和性を有するeIF4Eに結合し、eIF4E:mRNA結合と競合誌、低マイクロモル濃度の場合には、選択的にeIF4E細胞内組織、および転写後にeIF4Eによって制御されたmRNAの輸送および翻訳を選択的に阻害し、それによってシクリンD1などの腫瘍遺伝子のレベルを低減する。リバビリンは、in vitroにおいてマウス細胞の、in vivoにおいてeIF4E依存性ヒト扁平上皮細胞腫瘍のマウスモデルの腫瘍成長の、およびヒト罹患体に由来するeIF4E依存性急性骨髄性白血病細胞のコロニー形成の、eIF4E媒介発癌性形質転換を抑制する。これらの発見によって、リバビリンの作用の特異的で、強力で、予見し得ないメカニズムが説明される。量子力学的およびNMR構造的な研究によって、高い細胞増殖抑制性、および抗ウイルス性特性を有する誘導体の開発の方向性が得られる。すべてにおいて、リバビリンとeIF4Eの会合は、ヒト癌において新生組織形成および悪性腫瘍を維持および増大させる、腫瘍遺伝子の転写後ネットワークを遮断する薬理学的手段を提供することもできる。
一般的な方法
試薬 試薬は、トリス-カルボキシエチルホスフィン(ピアス社)、ノニデットP-40(ICN)、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(ラブ・サイエンティフィック社)、およびリバビリン(カルビオケム社)であって、それ以外はすべてシグマ・アルドリッチ社のACS級である。市販のリバビリンには毒性の高い混入物が入っているため(データ非表示)、リバビリンと7-メチルグアノシン(m7G)は、半調製用C8カラム(バイダック社)と0.1%(vol/vol)水性トリフルオロ酢酸の直線アセトニトリル勾配用いた逆相高性能液体クロマトグラフィ(ウォーターズ社)で精製し、凍結乾燥して、使用まで-20℃のデシケータで保存した。これにより、酸化アルミニウムシリカ上での47:3ジクロロメタン:メタノールによる薄層クロマトグラフィと、エレクトロスプレイイオン化MSを用いて測定したところ、99.99%超の純度が得られた。(データは非表示)Zhi Hong (ICN)からの寄贈による、Rib4C(1-β-D-リボフラノシル-1,2,3-トリアゾール-4-4カルボキサミド)は純度99.9%だった。リバビリン-5’トリホスファート(RTP)は、ジェナ・バイオサイエンス社から得た。
タンパク質発現 蛍光滴定のために、4種類の非保存アミノ酸によるヒトeIF4Eとは異なるマウスeIF4Eを上述のとおり生成した。NMR分光のために、一つだけの窒素源としての1 g/l 15NH4Cl
を含有するM9培地(ケンブリッジアイソトープ社)中で18℃で20時間、0.8mMのイソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシドで誘導することによって、マウスeIF4Eを、BL21 (DE-3) 細胞の中でタンパク質GのB1ドメイン(G4E、ハーバード大学(マサチューセッツ州ケンブリッジ)のGerhard Wagnerからの寄贈)との融合体として発現させた。細胞を、0.1M NaCl/50 mMトリスHCl(pH 7.5/0.5 mM EDTA/.5%
(vol/vol) Nonidet P-40/10 mM 2-メルカプトエタノール/1 mM PMSF中で、4℃で超音波処理によって溶解した。ライセートを、30,000 × gで遠心分離して不純物を除き、m7Gジホスファート結合アガロース(アマシャム・ファルマシア社)上へ吸着させ、4℃で0.1 M NaCl/20 mM トリス・HCl (pH 7.5)/0.5
mM EDTA (バッファA) で広範囲に洗浄した。その後、ビーズを0.1 mM GTPを入れたバッファAで洗浄し、G4Eを5mMm7Gを入れたバッファAで溶出した。溶出液を20
mM Na2PO4 (pH 7.5) で希釈してNaCl濃度を50mMまで落とし、セファロースQ陰イオン交換カラム(アマシャム・ファルマシア社)にかけて、直線勾配のNaCl
の20 mM Na2PO4 (pH 7.5)溶液で4℃で溶出した。 溶出液を4℃で0.1 M NaCl/50 mM
Na2PO4 (pH 6.5)/5 mM DTT で広範囲に透析し、NMR分光および蛍光滴定を用いて検証した結果、アポG4Eが生じた。G4Eの純度および識別を、SDS/PAGE およびエレクトロスプレイイオン化MSを用いて検証した。タンパク質をアミコン濃縮器を用いて濃縮した。
蛍光分光 蛍光測定法は、上述のとおり、自作フルオリメータを用いて行った。滴定はすべて0.3 M NaCl/10 mM Na2PO4
(pH 7.5)/1 μ M 亜鉛を0.3 × 0.3 cm2 の蛍光キュベット(ヘルマ社)に入れ、2μMのeIF4E濃度を用いて行った。集めた発光スペクトルを、300乃至450nm間で積分し、eIF4Eのスペクトルの寄与を求めた。それは、リバビリンとRib4Cそれぞれの295nmにおける吸光係数740および970
M-1cm-1 を用いて(データは非表示)加えたリガンドの固有蛍光を差し引き、内部フィルタの作用と、滴定中のフルオロフォア希釈の結果生じるシグナルのわずかな減衰を修正して求めた。修正された相対蛍光強度を正規化し、蛍光消光曲線を発見的単一部位結合発現:
I/I0 = Kd n/(xn
+ Kd n)
にフィットさせた。ここで、xはリガンド濃度、Kd は見かけの解離定数、およびnはヒル係数である。
m7G セファロース親和性クロマトグラフィ m7Gセファロースビーズ(アマシャムファルマシア、20μlスラリー)を1.5mlの2 μ M G4Eに結合させ、上述のとおり、0.3 M NaCl/0.1 M リン酸ナトリウム(pH 7.5)/10μM 無プロテアーゼBSA (USB)/0.1% ノニデトP-40 (バッファB) で、30分間室温にて精製した。ビーズをバッファBで3回洗浄し、さまざまな濃度のRTPまたはm7GTPのバッファB溶液で室温で30分間インキュベートした。遊離G4EをバッファBで3回洗浄し、m7Gセファロースに結合させたG4E残留物をレムリバッファ(10% グリセロール/2% SDS/100 mM DTT/80
mM トリス・HCl/0.06% ブロモフェノールブルー, pH 6.8)で沸騰させ、SDS/PAGEにかけて、後述の通りウェスタンブロッティングを用いて可視化した。見かけの阻害定数をKi = IC50 ・ Kd / (P + Kd)を用いて決定した。この式において、IC50
は見かけの50%阻害ヌクレオチド濃度であって、Pは有効タンパク質濃度、およびKd は見かけの解離定数である。
細胞培養 NIH 3T3マウス線維芽細胞を、亜密集的な条件下で、DMEM (GIBCO/BRL)/10% (vol/vol)
FBS/2 mM グルタメート/0.1
mg/ml ペニシリン-ストレプトマイシンの中で、37℃、5%CO2で維持した。細胞の処理のために、薬物をPBS(pH 7.4)の中に溶解し、フィルタ滅菌した。未処理細胞には、フィルタ滅菌したPBSを加えた。
レーザスキャン二焦点免疫蛍光顕微鏡 細胞をPBSで洗浄し、20分間、-20℃でメタノール中に固定し、PBS、10% (vol/vol) FBS、および0.1% (vol/vol) ツイーン 20 で、室温でブロックした。ブロックされた細胞をNopp140[1:50 (2)]、Sc35 (1:50, ベクトン・ディキンソン社)、および eIF4E (1:50、トランザクションラボラトリーズ社)に対する一次抗体を入れたブロッキング溶液で、室温で3時間かけて染色した。PBSで洗浄後、細胞を30分間、二次抗体を入れたブロッキング溶液で染色した。適宜、FITC結合ロバ抗ウサギ抗体(ジャクソンイムノリサーチ社)、テキサスレッド結合ロバ抗マウス抗体、FITC結合ウサギ抗マウス抗体を用いた。次いで、細胞をPBSで洗浄し、DAPIを添加したヴェクタシールド(ヴェクタラボラトリーズ社)の中に組み込んだ。蛍光の観察には、吸光波長488、568、または351/364nmを用いたライカTCS-SP二焦点顕微鏡を用いて、100倍光学的ズームと2倍デジタルズームを用いた。すべてのチャンネルを別々に検出し、観測可能なクロストークはなかった。顕微鏡像は、厚さ300nmの単一光学切片であり、100細胞を表す。
細胞分画 細胞をPBSで二回洗浄し、0.14 M NaCl/10 mM トリス・HCl (pH 8.4)/1.5 mM MgCl2/0.5%
(vol/vol) ノニデト P-40/1 mM DTT/100 単位/ml RNasin (プロメガ社) に入れてゆっくり分注することによって溶解した。溶解した懸濁液を1,000×gで3分間4℃で遠心分離し、その上清を細胞質分画として保存した。核ペレットを溶解バッファに懸濁させて、3.3% (wt/vol) デオキシコール酸ナトリウムと6.6%(vol/vol) ツイーン40をゆっくりボルテックスしながら加え、4℃で5分間インキュベートした。核は、1,000×gで3分間4℃で遠心分離して沈降させ、その上清(核後分画)を細胞質分画を細胞質分画に加えた。これによって、光学顕微鏡を使って観察されるとおり無傷の核が得られ、tRNALys およびβ-アクチン内容物を使って評価されるとおり有意な細胞質混入物はなかった。U6 snRNAおよびSc35がないことから示されるとおり、分画化した細胞質には核混入物が入っていなかった。
ノーザン分析法 完全細胞または核および細胞質分画のRNAを、製造者(GIBCO)の指示に従って、トリゾールを用いて抽出した。単離RNAを無RNase DNase I (プロメガ社)で処理し、5μアリコートを1%ホルムアルデヒドアガロースゲル上で溶解し、プラスに帯電したナイロン膜(ロシュ社、ニュージャージー州ナットレイ)に移した。膜をULTRAhybバッファ(アンビオン社)で予めハイブリダイゼーションし、20pMシクリンD1 cDNAプローブ、5 pMβ-アクチンcDNA プローブ、 30 pM ビオチン化 tRNALys アンチセンスオリゴプローブ、および30 pM ビオチン化U6 小核RNAアンチセンスオリゴプローブでプローブした。バンド強度とフィルムレスポンスはNIH IMAGEを用いて定量化した。
ウエスタン分析法 完全細胞または核および細胞質分画のタンパク質を、0.15 M NaCl/50 mM トリス・HCl (pH 7.4)/1%
(vol/vol) ノニデトP-40/0.25% (wt/vol) sデオキシコールナトリウム酸/1 mM EDTA/1 mM PMSF を用いて、30分間4℃でインキュベートして抽出した。タンパク質濃度を、ビシンコニン酸-銅還元(ピアス社)を用いて決定し、20μgアリコートをSDS/PAGEを使って溶解し、イモビロンP膜(ミリポア社)に移して、ブロッキングし、eIF4E(1:5000、トランスダクション・ラボラトリーズ社)、シクリンD1(1:500、ベクトンディキンソン社)、βアクチン(1:5000、シグマ社)、c-myc(1:1000、ベクトンディキンソン社)およびSc35(1:5000、サンタクルーズ・バイオテクノロジー社)に対する一次抗体を用いてプローブした。結合抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(アマシャム・ファルマシア社)、およびスーパーシグナルウエストピコ試薬を製造者(ピアス社)の指示に従って用いて、化学発光を検出した。
eIF4Eの免疫精製および半定量的RT-PCR 3×107 個の細胞から単離したを、0.3 M NaCl/50 mM トリス・HCl (pH 7.4)/0.05%
(vol/vol) ノニデトP-40/4°C (wt/vol) に懸濁させて、手動のホモジナイザで物理的に破壊し、1分間4℃でインキュベートして、10,000×gで遠心分離して沈降させた。可溶性核抽出物を、セファロース結合タンパク質G(アマシャム・ファルマシア社)を用いて、30分間4℃で、予め不純物を取り除き、10μgの抗eIF4E抗体(トランスダクション・ラボラトリーズ社)で90分間4℃でインキュベートし、次いで0.5mgの酵母tRNA(シグマ-アルドリッチ)、200単位/mlのRNasin(アンビオン社)、およびセファロース結合タンパク質Gを加えて4℃で一晩インキュベートした。結合したセファロースを、1mg/mlヘパリン(シグマ・アルドリッチ社)を添加したNET-2バッファで、4℃で一回NET-2バッファだけで6回洗浄し、100 mM トリス・HCl (pH 6.8)/4%
(wt/vol) SDS/20% (vol/vol) グリセロール/12% (vol/vol) 2-メルカプトエタノールに懸濁させて、5分間98℃でインキュベートした。RNAを、25:24:1 のフェノール:クロロホルム:イソプロパノールで1回、クロロホルム:イソプロパノールで2回抽出し、2.5体積の無水エタノール、0.1体積の5M酢酸ナトリウム(pH5.2)、および20μgのグリコーゲン(シグマ・アルドリッチ社)で-20℃で一晩沈降させて、75%(vol/vol)エタノールで洗浄して、水に再懸濁させた。シクリンD1のメッセンジャRNAを、製造者(ストラタジーン社)の指示に従って、ProStar第一鎖RT-PCRシステムと、前向き5'-
TCTACACTGACAACTCTATCCG-3' (配列番号第2番) および逆向き5'- TAGCAGGAGAGGAAGTTGTTGG-3' (配列番号第3番) プライマを使って増殖させた。リバビリンは核のeIF4Eレベルを減少させるが、eIF4EはIPには容易に検出されなかったが(データ非表示)、重要なことに使用したリバビリン濃度と無関係に、同量のmRNAをRT-PCRに利用した。したがって、核分画からのeIF4E-RNA結合を評価することはできる。
リボソームの精製および定量的RT-PCR 細胞ペレット(500mg)を1mlのプロテアーゼ阻害剤(無EDTAコンプリート、ロシュ社)および400単位/mlのSUPERasine(アンビオン社)を添加した氷冷溶解バッファ(20 mM Hepes/10 mM 酢酸マグネシウム/100 mM 酢酸カリウム、pH7.5)にホモジナイズし、ときどきボルテックスしながら氷上で30分間インキュベートした。ライセートを10分間4℃で3,000×gで沈降させ、核と細胞デブリをペレット化した。上清を20分間4℃で12,000×gで沈降させ、ミトコンドリアをペレット化した。不純物を除いた上清を、50,000rpm(SW 50.1 ロータ、ベックマン社)で50分間4℃で沈降させ、リボソームをペレット化した。リボソームのペレットを200μlの氷冷溶解バッファに再懸濁させ、その溶解バッファで緩衝させた10-40%ショ糖勾配の上に層状にのせ、50,000rpmで80分間4℃で遠心分離した。分画のRNA含有量は、260:280nmの吸光度比を用いて確認した。RNAは、製造者の指示(GIBCO社)に従ってトリゾールを用いて単離した。各分画のRNAを分光光度法で定量化し、センシスクリプト・逆転写キット(キアゲン社、カリフォルニア州バレンシア)を用いて40ngをcDNAに転換した。オプティコン熱サイクラ(MJリサーチ社、マサチューセッツ州ウォルタム)の中でQuantiTect
SYBR グリーン・リアルタイムPCRキット(キアゲン社)を使って、定量的リアルタイムPCRを三回行った。以下の遺伝子特異的プライマを用いた。 前向き 5'- ACCACAGTCCATGCCATCAC-3' (SEQ ID NO: 4) および 後向き 5'-TCCACCACCCTGTTGCTGTA-3'
(GAPDH、SEQ ID NO: 5)、前向き 5'-CCTGACACCAATCTCCTCAACG-3' (SEQ ID NO: 6) および 後向き 5'- TCTTCGCACTTCTGCTCCTCAC-3'
(cyclin D1、SEQ ID NO:7)、前向き 5'-
TGCCAAGTGGTCCCAGGCTG-3' (SEQ ID NO: 8) および 後向き 5'-CGGCTTGAAGATGTACTCTAT-3' (VEGF、SEQ ID
NO: 9)、および 前向き 5'- GCATCAGCTTTCACGCTTG-3'
(SEQ ID NO: 10) および 後向き 5'- TCACCCACATGCATTTCAGG-3'
(ODC、SEQ ID NO:11). 得られたリアルタイムPCRプロフィールを、オプティコンソフトウェア(MJ リサーチ)を用いて解析した。
形質転換アッセイ 5 μgのpMV、pMV-eIF4E、またはpMV-eIF4E突然変異体を用いて、製造者(ストラタジーン社)の指示にしたがってGeneJammer試薬を使用して、細胞をトランスフェクトし、1 mg/ml G418 硫酸塩を使って48時間選択した。選択したトランスフェクト体を100-mm2
ディッシュにつき20,000細胞の密度で播種し、1 mg/ml G418 硫酸塩の存在下で10日間維持した。ディッシュをPBSで洗浄し、メタノールで固定して、ギムザ染色した。増殖巣を手動で計数し、実験を3回独立に繰り返した。増殖巣の形成の確率は、光の反射の低下と50細胞未満になることと定義される増殖層の数を、20,000(100-mm2ディッシュ1つにつき)で割ったものとして表される。
蛍光活性化細胞スキャニング 壊死およびアポトーシスの評価のために、細胞をPBSで2回洗浄し、0.14 M NaCl/10 mM
Na-Hepes (pH
7.4/2.5 mM CaCl2 に、4℃で106細胞/mlの密度に懸濁させ、5 μ g/ml ヨウ化プロピジウムとFITC-結合アネキシンV(ベクトン・ディキンソン社)で、室温で15分間染色した。その後ただちに、細胞を洗浄し、FACSCalibur蛍光活性細胞スキャナ(ベクトン・ディキンソン社)を用いて分析した。細胞周期プロフィールを評価するために、細胞をPBSで2回洗浄し、固定して、70%(vol/vol)エタノールで30分間4℃で透過処理し、10 μ g/ml ヨウ化プロピジウムと30 単位/ml RNase A を含有するPBS中で、30分間37℃でインキュベートした。両方の測定のために、検出器のゲインと補正の設定を調節して、未染色の細胞とチャンネルクロストークの自動蛍光を最小化した。細胞周期分析のために、ヨウ化プロピジウムチャンネルを光散乱に基づいてゲートでコントロールして、塊状になった細胞を除去した。その際、観測された蛍光強度を人工的に歪めてもよい。
テトラゾリウム色素の還元 細胞を1ウェルあたり5,000細胞の密度で播種し、96穴プレートの1ウェルあたり100μlに維持した。試薬を37℃まで温めてから、5mlのナトリウム3'-[1-(フェニルアミノ-カルボニル)-3,4-テトラゾリウム]-ビス (4-メトキシ-6-ニトロ) ベンゼンスルホン酸水和物(XTT、ロシュ社)をフェノールレッドを含まない1mg/mlのRPMI培地1640(GIBCO社)に溶解して、0.38mg/mlのPBSにN-メチルジベンゾピラジンメチルスルフェート(PMS、ロシュ社)を溶解した溶液0.1mlと混合した。混合後ただちに、50μlのXTT-PBS溶液を各ウエルに加え、細胞を2-4時間37℃でインキュベートした。ホルマザンの生成は、μ Quant プレートリーダ(バイオ-テクインスツルメンツ社)を用いて、492および690nmにおける吸光度の違いをモニタして、フェノールレッドを含まない50μlのRPMI培地1640を含有するサンプルの吸光度との差異と比較して、定量化した。すべての実験は、3回繰り返した。
一次ヒト白血病罹患体細胞を用いたクローン原性アッセイ 急性骨髄性白血病(AML)M1、M5および正常骨髄標本を、記述の通り、罹患体から単離して処理した。ケンタッキー大学医学センターのマーキー癌センター(ケンタッキー州レキシントン)で、一次AML細胞を罹患体の末梢血から入手した。正常骨髄を病理解析、外科手術骨髄収集後の廃棄物として、または国立疾病研究互助組織(National Disease
Research Interchange、フィラデルフィア)から入手した。組織はすべて、施設内倫理委員会の認可、および適切なインフォームドコンセントを得た。凍結CD34+前駆細胞は、10%(vol/vol)FBSを添加したイスコーブの改良ダルベッコ(IMD)培地で解凍した。生細胞をトリパンブルー排除で計数し、10% (vol/vol) BIT 9500 (ステムセルリサーチ社)、2mMグルタミン(シグマ社)、50μg/ml低密度リポタンパク質(シグマ社)、および50μM 2-メルカプトエタノールを添加した、1%(vol/vol)H4100メチルセルロースIMD培地(ステムセルリサーチ社)に再懸濁させた。細胞を、密度2,000生細胞/培地1.1ml/35mmディッシュで播蒔し、さまざまな濃度のリバビリン存在下で14日間培養した。20細胞超のコロニーを手動で計数し、実験を4回繰り返した。
ヒト扁平上皮細胞腫瘍のマウスモデル メス生後5乃至7週胸腺欠損NCr-nu/nuマウスをタコニックファームズ社から入手した。下咽頭扁平上皮細胞腫瘍に由来するヒトFaDu細胞は、アメリカンタイプカルチャーコレクションから入手した。マウスの右側に、0.5×106細胞の50μl PBS溶液を皮下接種し、それぞれマウス10匹ずつの2つのグループにランダムに分けた。移植から1週間後、一回投与量40μg/kgのリバビリンを一日おきに経口投与した。腫瘍サイズを腫瘍直径を測定することによって確認し、統計学的有意性をペアt検定を用いて確認した。
静電特性の計算 グアノシン、m7G、リバビリン(1-β -D-リボルラノシル-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)、Rib4C(1-β -D-リボルラノシル-1,2,3-トリアゾール- 4-カルボキサミド)、ICN3297 (1-β -D-リボルラノシル-1,2,4-トリアゾール-3-カルボキサミド)、およびティアゾフリン(2-β -D-リボフラノシル-4-チアゾールカルボキサミド)の分子構造は、AMBER94を用いて生成した。これは、INSIGHT
2000(アクセルリス、サンディエゴ)で実行し、Moller-Plesset (MP2)摂動理論を6-31G+(d) 軌道基準セット用いて最適化し、ガウシアン03(ガウシアン)で行ったとおり、真空中で転電荷フィッティングすることによってパラメータ化した。水溶液中の静電ポテンシャルは、誘電定数80のポアソン-ボルツマン近似を用いて、GRASPで実施したとおり計算した。
NMR 分光 1H、15N ヘテロ核単一量子相関(HSQC)スペクトルを、タンパク質濃度0.8mMを用いて288および298Kにおいて、0.1 M NaCl/50 mM Na2PO4
(pH 6.5)/5 mM DTT/5% (vol/vol) D2Oの中で、500 MHz ブルカー DRX分光器を用いて記録した。G4Eの1H、15N骨格の共鳴は、1Hおよび15Nの許容度がそれぞれ0.02および0.2 ppmでスペクトルを直接一致させることによって、ヒトeIF4Eの1H、13C、15N 共鳴の帰属から得て、eIF4E構造に広く分布しているG4Eのはっきりしない64共鳴を帰属させた。HSQC滴定を0.1 M NaCl/50 mM Na2PO4
(pH 6.5)/5 mM DTT/5% (vol/vol) D2Oの中でm7G とリバビリンを使って行い、リガンド:タンパク質比は0.3:1〜5:1だった。リバビリン結合の構造パラメタは、15N編集、15Nろ過、および二重15N編集ろ過1H、1H
NOESY分光を用いて決定した。オーバーハウザ効果の観測強度への、スピン分散の寄与は、50乃至250msecの範囲の混合時間を用いて評価した。核オーバーハウザー効果の移行の混合時間への線形の依存性から評価したところ、180msの混合時間ではスピン分散の有意な寄与は認められなかった。スペクトルは、NMRPIPE/NMRDRAW
を用いて処理し、NMRVIEWを用いて解析した。
結果と検討
哺乳動物eIF4Eへのm7GmRNAキャップの高親和性結合は、2つの保存されたトリプトファンW56およびW102によって、メチル化の後にプラスの荷電させた第4級アミン7Gbaseを特異的に認識することによって生じ、カチオン-パイ、およびパイ−パイ相互作用の結果、芳香族スタックを形成する。
非荷電第3級アミン、グアノシンのeIF4Eの結合の強さは、5000分の1よりも小さい。1,2,4トリアゾールのpKa値は12より大きく、生理学的pHの時にはプロトン化してプラス荷電されているため、本願発明者らは、eIF4Eがリバビリンの推定上の陽イオン性1,2,4トリアゾール-3-カルボキサミドに結合するかどうかを調べた(図1)。In vitroにおけるヌクレオシドリガンドへのeIF4Eの親和性は、トリプトファン蛍光発光を用いて、リガンドの結合がそれに積み重なるトリプトファンの蛍光を消光することによって、測定することができる。リバビリンは、m7Gヌクレオシドと同様に、見かけ上のKdが8.4uMのeIF4Eに結合する(図1aおよび1b)。キャップ結合部位にあるトリプトファンの1つ、W56Aの突然変異によって、親和性は14分の1に減少したが、キャップ結合部位から離れたeIF4Eの背面上にあるW73Aには、リバビリン親和性の有意な作用はなかった(図1aおよび1b)。同様の結果がm7Gを用いることによって得られる。さらに、リバビリン類似体1-B-D-リボフラノシル-1,2,3-トリアゾール-4-カルボキサミド(Rib4C)は、低い抗ウイルスおよび細胞作用を示し、低pKaの非荷電1,2,3-トリアゾールを含有するが、eIF4Eに結合しない。リバビリンは細胞でRTPにほぼ完全に転換されるため、本願発明者らはeIF4EのRTPへの親和性を測定した。eIF4Eは、RTPにもm7GTPにも、等しい見かけ上の解離定数約0.1uM(図1aおよび1b)で結合している。m7Gセファロースアフィニティクロマトグラフィを用いて、本願発明者らは、RTPはeIF4E:m7G
結合に見かけの阻害定数(Ki)約0.3uMで競合することを観察する。これは7GTP単体ともほぼ区別がつかない(図1c)。全体で、これらの結果は、キャップ結合トリプトファンとのカチオン性の相互作用の結果、リバビリンがeIF4Eに5’m7GmRNAキャップが使っている機能的部位において高親和性で結合することを示唆しており、リバビリンは細胞において、eIF4Eに結合するm7
5’mRNAキャップと競合することを示唆している。
哺乳類動物細胞では、eIF4Eの機能は細胞内組織に依存している。細胞質では、eIF4Eは、リボソームと会合し、m7Gキャップ依存性mRNA翻訳において機能する。eIF4Eの上方調節では、感受性が高いmRNAの特定のセット、つまりmRNA翻訳のレベルでeIF4Eによって翻訳後調節されるセットだけ翻訳が増える。核では、eIF4EはeIF4E核小体とよばれる多タンパク質構造を形成し、特定のセットのmRNA転写物の核細胞質mRNA輸送において役割を果たす。これらの構造の形成および機能は、eIF4EのmRNAキャップ結合に関連している。なぜなら、m7Gキャップ類似体を過剰に有する透過性細胞の処理は、eIF4E核小体を阻害するが、その他の核内構造を阻害しないからである。一貫して、eIF4E体の阻害は、核細胞質eIF4E依存性mRNA輸送を阻害する。
リバビリンは高親和性のeIF4Eに結合し、in vitroにおいてeIF4E:m7G 結合と競合するため、本願発明者らは、細胞におけるeIF4Eの細胞内組織に作用するかどうかを調べた。したがって、本願発明者らは、NIH 3T3線維芽胞をさまざまな濃度のリバビリンで48時間処理し、その細胞内組織を、免疫蛍光と二焦点顕微鏡を併用して監視した。
リバビリン処理は、クロマチン構造(DAPI)、核小体およびカハール体(核タンパク質Nopp140)の組織、スプライシング斑(Sc35領域)の構造、細胞の形態には、見かけ上作用しない(図2a)。反対に、リバビリン処理はeIF4E核小体を阻害し、この作用は1uMで現れ10uMでほぼ完全になる(図2a)。この作用を確認するために、本願発明者らは細胞を分画し、ウェスタンブロッティング法を用いて核と細胞質における相対的なタンパク質の存在量を調べた。上述の顕微鏡研究と一致して、リバビリン処理によって、主要な核Sc35および細胞質Bアクチンの分布に影響することなく、eIF4Eの再分配を生じる(図2b)。重要なことに、リバビリン処理はeIF4Eの総タンパク質レベルを変化させないが、むしろ大半のタンパク質を細胞質へ再局在化させる。したがって、リバビリンはeIF4Eによって転写後制御されるmRNA輸送と遺伝子の翻訳を阻害することもある。
この可能性を直接テストするために、本願発明者らは、リバビリンで処理した細胞を分画し、細胞内分画とノーザン法、または独立に定量的PCRを用いて、核と細胞質の分画のシクリンD1 mRNAレベルを監視することによって、核細胞質mRNA輸送への作用を評価した。リバビリン処理は、シクリンD1 mRNAの核細胞質輸送を見かけのEC50が約1uMで阻害し、100uMでほぼ完全に核内繋留する。
一方で、BアクチンとVEGF mRNAの核細胞質輸送は100uMでも影響を受けず(図3aおよび4b)、その輸送がeIF4E活性に不感受性であることと一致する。リバビリン処理は、mRNA前駆体のスプライシングと5’キャッピングには作用しないように見える。なぜなら、共転写キャップ付加にはmRNA前駆体スプライシングが必要で、シクリンD1とBアクチンmRNAは両方とも正しくスプライシングされるからである(図3a)。さらに、リバビリンは、U小核RNAなどのメチルリン酸キャップ構造を有する核RNAの発現または局在化に影響しているように見えない。なぜなら、U6小核RNAのレベルおよび分布が影響されていないからである(図3a)。同様に、リバビリン処理はmRNA転写および安定性に作用しない。なぜなら、シクリンD1、およびBアクチンの総定常状態レベルは影響を受けていないからである(図3bおよび4)。
本願発明者らは、eIF4Eによって転写を制御されるmRNAのポリソーム負荷を監視することによって、細胞質におけるmRNA転写へのリバビリンの作用を調べるために、自らの研究を拡張した。ポリソームの分画を調製し、mRNA含有物をリアルタイムPCRによって評価した。リバビリン処理は、シクリンD1 mRNAのポリソーム負荷プロフィールに有意に作用しない(図4a)。これは、翻訳レベルにおけるシクリンD1レベルのeIF4Eによる制御の欠如と一致する。反対に、リバビリン処理は、VEGFおよびODCの重いポリソーム分画から軽いモノソーム分画への変化を生じ、翻訳効率が低下した。ポリソーム負荷の低下は1,000分の1未満で(図4a)、eIF4EによるVEGFとODCの翻訳制御と一致する。したがって、遺伝子のリバビリンへの見かけの感受性は、影響を受ける遺伝子と制御のレベルに関して、eIF4Eによる制御への感受性に匹敵する。多くの遺伝子はeIF4Eによって転写後に制御されるため、本願発明者らは、モデル転写物としてシクリンD1に注目した。なぜなら、mRNA輸送を調節するeIF4Eの能力は十分に特徴付けられているためである。
リバビリン処理は、見かけのEC50が0.1-1uMのシクリンD1タンパク質のレベルを低下させるが(図3b)、これはEC50が約1uMの核細胞質シクリンD1
mRNAを阻害することと一致する(図3aおよび4)。反対に、in vitroでeIF4Eに結合しないRib4Cによる処理(図1)は、細胞でのシクリンD1タンパク質産生を抑制することができない。さらに、eIF4Eによって転写後に制御されないBアクチンおよびeIF4Eタンパク質のレベルは(図3a)、リバビリン処理によって減少しない(図3b)。したがって、リバビリンのeIF4Eとの特異的な相互作用は、リバビリンの、シクリンD1のeIF4E依存性mRNA輸送を抑制する能力に必要である。
本願発明者らは、リバビリンが、eIF4EがeIF4E依存性mRNA輸送に感受性のある転写物(たとえばシクリンD1)で、および翻訳レベルで(たとえばVEGF)リボヌクレオタンパク質をつくる能力を直接変化させる能力をテストした。したがって、本願発明者らは、リバビリン処理した細胞の核からeIF4Eを免疫精製し、そのmRNA含有量を判定量的RT-PCRを用いて評価した(図3d)。リバビリン処理によって、見かけのEC50が約1uMの、細胞のシクリンD1 mRNAに結合するeIF4Eの阻害を生じる(図3d)。これは、in
vitroにおけるその三リン酸塩のeIF4Eへの結合のKd(図1)、およびヌクレオ細胞質シクリンD1 mRNA輸送の阻害および細胞でのシクリンD1タンパク質の欠乏のEC50に類似する(図3)。同様に、細胞質eIF4E:VEGF
mRNA 複合体は、1uMのリバビリンでも部分的に無効になる。これは、リバビリンによるポリソーム負荷に認められた変化と一致する。
重要なことに、細胞質eIF4E:アクチンmRNA複合体は、100uMのリバビリンでも阻害されず、これは、リバビリンへのアクチンタンパク質への不感受性と一致する。リバビリンの作用は、シクリンD1 mRNA輸送およびVEGF mRNA翻訳のeIF4Eによる制御だけではないようで、eIF4Eによって転写後に制御されるその他の遺伝子を含む。
eIF4Eは、過剰発現すると細胞の悪性形質転換を生じる。変異原性の研究では、その発癌性は少なくとも部分的には、腫瘍遺伝子のmRNAの輸送とシクリンD1などの制御遺伝子の成長の制御解除が原因であることが示唆されている。したがって、本願発明者らは、リバビリン処理とそのeIF4E依存性mRNA輸送および翻訳の阻害が、eIF4Eによる発癌性形質転換を抑制するかどうかについて調べた。本願発明者らは、NIH 3T3細胞でeIF4Eを過剰発現させ、接触成長阻害の喪失の結果生じる増殖巣形成を監視することによって形質転換をアッセイした。トランスフェクトした細胞のeIF4Eレベルは、対照細胞の内因性レベルの10倍で(図5a)、形質転換と増殖巣形成における有意な増加を生じた(図6a)。eIF4E
W56Aキャップ結合突然変異体の過剰発現によって、細胞は形質転換しない(図6a)。これは、この変異体が野生種eIF4Eとして同様のレベルまで発現するにもかかわらず、初期の研究と一致している。リバビリンはeIF4Eによる見かけのEC50が0.1-1uMの形質転換を抑制する(図3aおよび3b)。反対に、Rib4Cを加えると100uMでも形成する増殖巣の数は減らず(図3a)、これは、in
vitroにおけるeIF4Eへの結合能力と細胞におけるmRNA輸送および翻訳のeIF4Eによる制御の阻害能力の欠如と一致する。観察された形質転換の抑制は、代謝毒性や細胞死などの非特異的な作用のせいではない(図5b)。さらに、低マイクロモル濃度のリバビリンはG1細胞周期停止を誘発し(図5c)、リバビリンによるシクリンD1の下方制御と一致する。
in vivoにおけるリバビリンの腫瘍成長への作用を調べるために、本願発明者らは、急性骨髄性白血病(AML)患者からの原発性骨髄系前駆細胞と、正常骨髄からのそれに匹敵する細胞の標本を得た。過去の研究では、AMLのサブセットは核eIF4Eを非常に高レベル有しており、これらの細胞ではシクリンD1 mRNA輸送が実質的に上方制御されていることが示唆された。核eIF4Eレベルの低下によって、シクリンD1 mRNA輸送が正常レベルに低下した。したがって、本願発明者らは、リバビリンが特異的にこのAMLのサブセットの成長を変化させるのかどうかを調べた。単離されたCD34+前駆細胞を、メチルセルロース媒体中に再懸濁させて、さまざまな濃度のリバビリンの存在下において14日間培養し、コロニー形成能力を評価した。リバビリンは、原発性AML-M5(仏米英分類)前駆細胞のコロニー形成を見かけのIC50が約1uMで強力に抑制した(図6b)。これは、eIF4Eの過剰発現と調節不全と一致する。
反対に、類似の濃度のリバビリンは、AML-M1前駆細胞のコロニー形成を抑制せず(図6b)、これらの細胞でeIF4Eレベルが上方制御されず、シクリンD1 mRNA輸送の制御不全がないことと一致する。マイクロモル濃度におけるこのリバビリンの腫瘍抑制作用は、ミリモル濃度における細胞毒性とは異なる(図5b)。これは、マイクロモル濃度における正常骨髄骨髄系前駆細胞のコロニー形成への作用がないことからも明らかである(図6b)。リバビリンによる処理は、ヒト扁平上皮細胞癌のマウスモデルにおける腫瘍成長の顕著な抑制を生じた(図5c)。本願発明者らは、下咽頭扁平上皮細胞癌に由来するFaDu細胞を用いた。なぜなら、この細胞は、悪性ではない上皮細胞と比較して、ヌードマウスにおいてeIF4Eを過剰発現し腫瘍を形成するからである。
重要なことに、eIF4Eのレベルが、アンチセンスRNAを用いると悪性ではないレベルまで低下する場合、この細胞の腫瘍原性は非常に低い。したがって、ヌードマウスに皮下注射を用いてeIF4E依存性FaDu細胞を移植し、リバビリン40 ug/kg を一日おきに経口投与して平均体内濃度約1uMにする。リバビリン処理から20日後、処理群の動物の平均腫瘍体積は、未処理対照群の6分の1だった(P=0.023、n=10、図6c)。この低濃度で、リバビリンは見かけ上寛容性が良好で毒性が最小だった。処理に関連する死亡および体重への影響がなかったことから、この結果が示唆された(データ非表示)。したがって、リバビリンによる低濃度におけるeIF4Eの阻害は、in
vitro およびin vivoにおけるeIF4Eによる発癌性形質転換の阻害および腫瘍抑制と相関する。
eIF4Eによるm7G mRNAキャップの結合は、核細胞質mRNA輸送、細胞質翻訳、および発癌性形質転換に必要である。ofm 7GのeIF4Eによる高親和性結合は、カチオン性メチル化塩基の特異的な認識の結果、達成される。リバビリンは、その中性類似体Rib4Cと異なり、in vitroにおいてm7Gキャップと同一の見かけの親和性でeIF4Eに結合し、eIF4EのmRNAへの結合能力、および細胞でのmRNA輸送および翻訳における機能を阻害するため、本願発明者らは、リバビリンとm7G mRNAキャップの、類似度およびeIF4Eによる分子認識度を評価した。したがって、本願発明者らは、m7Gおよびリバビリンを用いた、eIF4Eの1H、15N ヘテロ核単一量子相関NMR分光(HSQC NMR)滴定を行った。1H, 15N HSQC
NMR 分光によって、ポリペプチド骨格の個別の15NHアミドの化学環境を知ることができ、したがって、リガンド結合の感受性プローブを提供し立体配座の再編成を同時に生じさせる。
溶液中で、eIF4Eは低および高親和性立体配座の状態で存在しており、PMLなどパートナタンパク質およびm7G mNRAキャップなどのリガンドの結合によって制御される相互変換を行っている。これは、CD分光滴定によって観察されるとおりである。本願明細書では、本願発明者らは、HSQC
NMR 滴定を用いた、アポからm7Gが結合したeIF4Eへの転換において同様の現象を観察する。eIF4Eの217残基中帰属された64残基のうち19の構築および再組織化(図7a)が構造全体に分布しており(図7c)、CD測定値と一致する。これらの残基には、m7Gbaseおよびリボースを配位するK106と積み重なる、W102を有するS7/S8
ループが含まれる(図7c)。その一方で、S1/S2 ループは、高親和性立体配位のアポeIF4Eに予め組織化されており、W56はキャップが結合しても共鳴強度または化学シフトの有意な変化は見られなかった。驚くことに、アポeIF4Eのリバビリン結合eIF4Eへの転換には、ほぼ同一の立体配座再編成が関与しており、S1/S2
ループとW56のかく乱はわずかで、S7/S8 ループとW102の構築は顕著である(図7b)。これは、eIF4Eのキャップおよびリバビリン結合スペクトルがほぼ正確に重なっていることから示唆されるとおりである。これらのデータは、W56A突然変異の低リバビリン親和性と、リバビリンがeIF4Eと結合するためにm7Gと効率的に競合する能力と一致する。
ヌクレオシド飽和eIF4Eの二重15N編集ろ過1H, 1H NOESY スペクトルは、分子間NOE転移の結果生じる、ヌクレオシドに非常に近い(5Å未満)eIF4Eの15NH 基を特異的に同定するが、これは、リバビリンとm7Gの結合部位の重複と一致する(データ非表示)。したがって、eIF4Eは、m7Gキャップに似た様式でリバビリンに結合し認識する。これは、類似する結合活性と一致する(図1)。リバビリンのm7G模倣の物理的な基点を評価するために、本願発明者らは、ab
initio量子力学および連続静電法を用いて、グアノシンとリバビリン類似体の静電的特性を計算した。m7Gとリバビリンだけが、芳香環において顕著な電気的陽性特性を示す(図8)。その他のヌクレオシド塩基は、さまざまな程度およびパターンの電気的陰性を示す。それには、1,2,3-トリアゾールのために中性pHのときにプロトン化せず非荷電の不活性リバビリン類似体Rib4C、酸化カルボキサミドのために中性である不活性リバビリン代謝物ICN3297(データ非表示)、チアゾールのために中性であるグアノシン類似体およびイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害物質チアゾフラン、ならびに非荷電グアノシンが含まれる(図7)。したがって、リバビリンはm7Gの物理的模倣体である。
細胞にある主要なキャップ結合タンパク質には、eIF4Eおよびキャップ結合複合体(CBC)の2種類がある。どちらのタンパク質も2つの芳香族残基の間にm7Gが介入しているが、m7GpppGキャップへのCBCの親和性(Kd約10nM)は、eIF4E(Kd約200nM)と比較すると実質的に高い。なぜなら、eIF4Eと比較して、メチル化塩基ととも隣接するピロリン酸ヌクレオチドに有するCBCの相互作用がより広範囲だからである。リバビリンのトリアゾール環はCBCとのさらなる接触の多くを失っているために、本願明細書で観察されるとおり、リバビリンはeIF4Eの機能しか阻害せず、CBCのものは阻害しない。
結論
リバビリンの細胞作用のメカニズムとその抗ウイルス作用の起源は広く研究されているが、謎のままである。リバビリンは、グアノシンに似ていることから、グアニリルトランスフェラーゼについてはグアノシンと競合して5’mRNAキャップ形成を阻害し、イノシン一リン酸塩デヒドロゲナーゼとの相互作用についてはグアノシンを模倣してグアノシン生合成を阻害し、RNAポリメラーゼによるmRNA取り込みについてはグアノシンと競合して変異原となると考えられている。確かに、ミリモル濃度では、そのような作用が生じると、たとえばポリオウイルスの致死的な突然変異原性(EC50約0.2mM)や細胞のグアノシンプールの欠乏(EC50約0.1mM)が生じる。重要なことに、低マイクロモル濃度では、リバビリンはグアノシン代謝には関与しないようで、それは、m7Gおよび/または関与するタンパク質のグアノシン結合部位の構造およびエネルギー差によるようである。リバビリンは、代謝毒性の欠如から示唆されるように(図5)、グアノシンプールの生理学的欠乏を生じないようで、細胞死の欠如と産生されたタンパク質の合成と安定性が影響を受けないことから示唆されるように、変異原性ではないようだ(図3および5)。本願明細書では、本願発明者らは、リバビリンが、eIF4E感受性転写物のmRNA輸送および翻訳を、eIF4E:m7G mRNA キャップ結合を拮抗し、細胞内eIF4E組織を阻害することによって促進するeIF4Eの能力を阻害することを観察する。eIF4E過剰発現は、タンパク質合成を全体的に増やすのではなく、シクリンD1、ODC、およびVEGFなど本願明細書において研究したものを含むeIF4E感受性として定義される転写物のサブセットの発現に影響する。
この研究の主要な点はリバビリンの作用機序を明らかにして潜在的な抗癌活性を特徴付けることだが、本願発明者らの発見にはmRNA翻訳についての示唆もある。本願発明者らは、リバビリンによるeIF4Eの阻害の選択性が、特定のセットのeIF4E感受性転写物のeIF4Eによる転写後制御に関する、eIF4E活性の選択性に由来することを明らかにする。したがって、eIF4Eの過剰発現はタンパク質翻訳を全体的に増加させるわけではないので、リバビリンは全体的な阻害物質ではない。eIF4Eへの感受性は、相当する転写物のUTRの複雑さに反比例しているようである。したがって、eIF4Eのリバビリン誘導性阻害は、たとえばVEGF、c-mycおよびOCDなど多数の癌原性mRNAを含む、長く高度に構造化された5’UTRを含む転写物の転写を、特異的に減少させる。反対に、リバビリンは、構造化されていない短い5’UTRを有するGAPDHなどのハウスキーピングmRNAの翻訳速度には影響しない。グアノシン関連ヌクレオシドの静電特性は、細胞のグアノシン代謝における作用点に直接相関する。たとえば、チアゾフリンは、リバビリンと同一の分子構造をしているにもかかわらず、電気的にはグアノシンに似ており(図8)、したがって、強力なイノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ阻害物質であり、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼのグアノシンアロステリックエフェクタ部位に結合する。同様に、Rib4Cは中性で(図8)、eIF4Eに結合も阻害もしない。その一方で、リバビリンは、その電子構造のために(図8)生理学的pHではプラスに荷電し、その結果、eIF4Eによるm7G mRNAキャップ結合に拮抗する。リバビリンとその誘導体は、腫瘍サプレッサと新生物および悪性腫瘍を維持して拡大する癌遺伝子のネットワークを阻害する薬理学的手段を提供する。たとえば、eIF4Eの調節解除によって、シクリンD1およびmycなどの腫瘍遺伝子の調節が解除され、さらにeIF4Eが調節解除される。eIF4Eは細胞分裂促進刺激の標的であり、mycの直接的な転写標的である。そのような自己強化的なふるまいに一致して、mycの不活性化は骨肉腫の組換えマウスモデルにおける腫瘍の分化および持続的退縮を生じる。同様に、アンチセンスシクリンD1は、ヒト腫瘍細胞の表現型を正常な状態に戻し、マウスにおける腫瘍形成を防止する。相補的に、ラパマイシンはマウスリンパ腫モデルの化学耐性を抑制し、この作用はeIF4Eの調節解除によって逆転する。本願明細書では、本願発明者らは、eIF4E依存性核細胞質mRNA輸送および翻訳を阻害することによって、同様の作用を薬理学的に達成することができることを実証する。遺伝子発現の転写後制御は、真核生物の成長および発達の制御に決定的な役割を果たしており、このレベルの制御の阻害はさまざまなヒト癌に寄与していることが、明らかになりつつある。
本願発明者らの発見は、リバビリンが、転写後のeIF4Eによる成長制御遺伝子の制御のレベルで、かつて予想されていなかったような様式で作用することを示唆する。リバビリンによる、in vitroおよびin vivoにおけるeIF4E媒介発癌性形質転換の抑制の見かけ上の強度は、本願明細書で検討したモデル転写物としてのシクリンD1と発癌性遺伝子の組み合わせの下方調節に関与するようである。リバビリンの予期せぬ作用機序のさらなる特徴付けと高い抗ウイルス性および細胞増殖抑制性を有する誘導体の開発は、さらなる研究のための重要な方向性である。
例2キャップ結合部位を用いたリバビリンへのeIF4E特異的結合
トリアゾールカルボキサミドリボヌクレアーゼのリバビリン(ビラゾール)の作用機序は、1970年初めに発見されてからずっと謎のままだ。混乱の大部分は、関係ないように見える多種類のウイルスに対する見かけの活性と、濃度に依存する多面的な細胞の作用が原因だった。リバビリンとグアノシンの水素結合基の配置が類似していることから、リバビリンはグアノシン類似体であると仮定された。この考え方は、ミリモル濃度のリバビリンによる、グアニリルトランスフェラーゼ、イノシン一リン酸デヒドロゲナーゼ、およびRNA依存性RNAポリメラーゼへの作用と一致する。
前述の例では、これらの特異的な作用の特性の同定し、リバビリンの特異的な作用機序の定義を手助けすることを目指した。ab initio量子力学を用いて、本願発明者らはさまざまなグアノシン類似体の物理的特性を特徴付けして、リバビリンと7-メチルグアノシンの電子構造における顕著な類似性を指摘した。トリプトファン発光蛍光分光法とヌクレオチドアフィニティクロマトグラフィを用いて、本願発明者らは、リバビリンと7-メチルグアノシン(m7G)結合タンパク質eIF4Eが低マイクロモル範囲の範囲内におさまる解離および阻害定数を測定した。蛍光顕微法、細胞分画、ノーザンおよびウェスタン分析法、ならびに定量的PCRを用いて、本願発明者らは、リバビリンによる細胞内eIF4E局在化の阻害、核および細胞質eIF4E:mRNA結合の阻害、核細胞質eIF4E感受性mRNA輸送の阻害、および生細胞におけるeIF4E感受性mRNA翻訳の阻害を、すべて、同様の低マイクロモル濃度で観察した。フローサイトメトリ、コロニー形成、および腫瘍成長アッセイを用いて、本願発明者らは、in vitroおよびin vivoにおけるeIF4E依存性癌のモデルでのリバビリンの細胞増殖抑制作用および腫瘍抑制作用を低マイクロモル濃度で観察した。さらに、ヒト患者から単離したeIF4E過剰発現白血病正芽球を用いても行った。リバビリンが7メチルグアノシンの特性と類似する物理的特性を示した一方で、その円形に並べた化学類似体Rib4Cは示さず、eIF4Eに結合せず、mRNA輸送、翻訳および腫瘍原性における機能も阻害しなかった。これにより、リバビリンは7メチルグアノシンmRNAキャップの物理的模倣体であると結論した。
RNAの最近の発行物では、Yan et al. (2005)およびWestman et al. (2005) が、この結論と対立する発見を提示している。彼らの結果は2つの要素からなる:リバビリンはin
vitroにおいて組換えeIF4Eに結合せず、リバビリンは、細胞から調製した抽出物において、外因性mRNAのキャップ依存性翻訳を阻害しない。本願発明者らは、これらの実験がリバビリンの作用を引き出しておらず、上述の著者らと同様、考えうるこの結果の理由を検討したいと考える。第一に、m7GキャップのeIF4Eへの結合は、溶液の状態に高く依存している。イオン強度、pH、および温度の変化の結果、数桁の大きさ(ナノモルからマイクロモル)のばらつきが生じうる。これは、この条件下におけるアポ型のeIF4Eのキャップ結合部位の物理特性および正確な立体配置に依存するらしく(データ非表示)、それ自体が、アポeIF4Eが溶液に採用されることが知られるさまざまな構造的準安定状態の相対的な個体群に依存している。リバビリンがeIF4Eのキャップ結合部位に結合する場合、eIF4Eへの見かけの親和性も状態に依存するだろう。さらに、リバビリンのトリアゾールカルボキサミドが7メチルグアノシンと比較してeIF4Eとの原子の接触が少ない場合、リバビリンによるeIF4Eへの高親和性結合は、狭い範囲の溶液の状態に生じることが期待されるだろう。
これを考慮して、本願発明者らはYan et al.(2005)の実験と並行して、独立したオペレータと新しい試薬を用いた本願発明者らオリジナルのアフィニティクロマトグラフィ実験を再現した。本願発明者らは、本願発明者らが公開した実験条件(0.3 M NaCl、0.1 M リン酸ナトリウム、0.1% ノニデト P-40, 10 mM BSA 、pH 7.5、室温)と、Yan et al.(2005) が記述した実験条件(0.1 M KCl、10 mM HEPES-KOH、0.2 mM EDTA、pH 8.0, 推定4℃)を再現した。本願発明者らが報告した発見(Kentsis et al.2004)と一致して、マイクロモル濃度のリバビリン三リン酸塩(RTP)は、eIF4E:m7Gの結合と競合する。これはm7GTP自体のものと同様である。反対に、Yan
et al.(2005) のプロトコルでは、RTPはm7G結合と見かけ上競合していない(図9b)。さまざまな溶液条件下におけるeIF4Eの熱力学的メタ安定性は、文献(Matsuo
et al.1997; McGuire et al.1998; Kentsis et al.2001, 2004)に詳しく記載されており、特にYan et
al.(2005)の実験の通り、基質固定タンパク質を用いる場合、リガンドの見かけの結合を束縛しうる凝集および結合作用を生じる(Fletcher and
Wagner 1998; Cohen et al.2001)。さらに、NMR化学シフト摂動で評価したとおり(データは非表示)、アポeIF4Eの構造は、pH7.5乃至8における差異に感受性がある。したがって、Yan
et al.(2005) が報告したin vitroにおいてリバビリンがeIF4Eに結合できないという現象は、少なくとも部分的には、異なる溶液条件の使用が原因のようである。
リバビリンのeIF4Eへの結合を観察できないYan et al.(2005)とは対照的に、Westman et al.(2005) はin vitroにおいてリバビリンの組換えeIF4Eへの結合を観察しているが、親和性は本願発明者らが測定したものより2乃至4桁低い(Kentsis et al.2004;
Westman et al.2005)。蛍光発光の消光を用いたリガンド結合の測定は、加えたリガンドの固有の蛍光と内部フィルタ効果を補正する必要があることが多く(Lakowicz 1999)、どちらも、本願発明者Westman et
al.(Niedzwiecka et al.2002; Westman et al.2005)による読み取りに考慮されるようにみえるものではない。ヌクレオチドの蛍光量子収量はアミノ酸のものよりも低いが、上述の研究で用いられた濃度では顕著であることもあり、おそらく、特に、化合物の違いのせいでリバビリンの消光率が7メチルグアノシンの2分の1である場合に、結合後のタンパク質蛍光の消光を補っているのであろう(Kentsis et al.2001,
2004)。これに加えて、ヌクレオチドの滴定によって、入射および/または放射光の吸収を生じ、蛍光の見かけの発光を減少させる可能性がある。7メチルグアノシンと比較してリバビリンの吸光係数が低いので、これも見かけの消光の差に寄与しているのかもしれない。
残念なことに、直接的な方法論の比較は、本願発明者らの、7メチルグアノシンに直接結合するものも含むトリプロファンの蛍光発光の監視を除外しているが(Kentsis et al.2001,
2004)、Westman
et al. はトリプトファンとチロシンの両方による放出を測定しており(Niedzwiecka et al.2002; Westman et al.2005)、それらは選択的に消光されている場合もある(消光波長はそれぞれ295 nm と280 nm)。さらに、溶液の状態の差も、結合親和性の観察されている差に寄与しているかもしれない。Westman et al.(2005)が提唱しているように、これらの方法論の差が観察された親和性の見かけ上の差を説明するのかもしれない。
しかし、リバビリンのeIF4Eへの結合の決定的な実証であって、競合アフィニティクロマトグラフィおよび蛍光消光など、結合の間接的であいまいなプローブをふくまない実証を提供するために、本願発明者らは、エレクトロスプレー質量分光法を用いて、リバビリンとeIF4Eの結合を調べた。20mMの精製組換えeIF4Eと4倍過剰のリバビリンおよびGTPの混合物を直接エレクトロスプレーにかけて、その質量/イオン化スペクトルを測定した。記録されたスペクトルを図10aに示し、その中には、複数に重複して荷電したイオンを2セット、アポ-G4Eに相当する、個体数に重みをつけた平均分子量31,402Da(Zhou et al.2001;
Kentsis et al.2004)、および別の31,649 Da (図10b)を含む。この質量シフト246Daは、リバビリンの特異的な結合(243Da)によるものであって、GTP(523 Da)ではない。本願発明者らの公表済みの研究では、リバビリンのeIF4Eへの結合の特異性は、キャップ結合部位W56Aの突然変異を用いて確立した。この突然変異は、リバビリンの結合を阻害するがタンパク質の折り畳みは阻害せず、7メチルグアノシンキャップの結合の阻害に似ている(Kentsis
et al.2004)。
リバビリンを円形に順序を変えたRib4Cは、化学的には同一だがプラスに荷電しており、eIF4Eには結合しなかった。そして最後に、リバビリンの結合によって、NMR分光を用いて観察したとおり、類似のeIF4Eの立体配置の再編成が生じる。これは、7メチルグアノシンキャップによって誘発されたもので、リバビリンのキャップ結合部位への結合と一致する(Kentsis
et al.2004)。リガンド誘発性の立体配置の変化も、Volpon, et al.(2006) EMBO J.
25(21):5138-49 Epub 2006 Oct 12に報告された、無キャップ結晶学的構造に示唆される。さらなる特異性制御が、Kentsis
et al.(2004)に記載される。したがって、eIF4Eはキャップ結合部位を用いてリバビリンに特異的に結合し、この相互作用を実験的に観察できなかったのは、使用した技術の問題点によるものである可能性がある。
Yan et al. (2005)およびWestman et al. (2005) が検討したもう一つの疑問点は、リバビリンのeIF4E機能への影響に関する。どちらのグループも、in
vitroにおける機能的作用を調べているが、本願発明者らはリバビリンのin vivoにおける作用に関連した。in vitroにおける外因性mRNAの翻訳用の細胞抽出物は、生細胞と比較して、変化した組成、化学量論、および活性を有するというその固有な特性についてよく知られており、区画化、および分子組織が維持され、複雑でmRNA翻訳として制御されたプロセスとして非常に重要である。そのような抽出物は、翻訳因子の発見のために首尾よく使用されているが、翻訳機序の特徴付けの重要性については議論が続いている。この点に関して、7メチルグアノシンキャップの翻訳の効率と内部リボソーム結合部位(IRES)が誘導する転写の効率の区別によるeIF4E活性の評価は、数多くの理由のために困難である。それぞれの抽出物の活性は、リバビリンなどの新規活性の特徴付けのために絶対的に必要な全体的なメカニズムと機能的な忠実性を保証しないプロセスである、外因性mRNAの特定の特徴の翻訳寄与を最大化するために、経験的に最適化されている。
たとえば、Yan et al.(2005)とWestman et al.(2005)はどちらも細胞抽出物を使用しているが、異なる細胞から異なる修飾を用いて調製しており、50キャップおよび30ポリ(A)mRNA要素の間の翻訳の相乗効果を最大化しようとして慎重に最適化を行っている(Bergamini et al.2000;
Svitkin and Sonenberg 2004)。この特徴は、eIF4Eの活性のみに依存しているわけでも、特異的に依存しているわけでもない。この見かけの相乗効果は、eIF4Eの足場活性によるもので、同時にeIF4E、ポリ(A)結合タンパク質(PABP)、およびリボソーム(Michel
et al.2000)に結合し、それにより、それぞれeIF4EおよびPABPの50キャップおよび30ポリ(A)末端への親和性に結合する。しかし、ポリ(A)末端の存在のみでもin
vitroにおいてIRESからの翻訳を刺激することができ(Svitkin et al.2001)、eIF4Eはキャップ結合の欠如下においてもリボソームを動員することができる(De
Gregorio et al.2001)。したがって、Westman et al. (2005)の実験では、m7GpppGおよびm7GTPとの競合が、約0.1mMの類似体濃度のキャップ誘導性翻訳を阻害するのに、RpppGは阻害しないが、この違いの特異性およびその機構的な解釈は、m7GpppGキャップ転写物の濃度が約1nM(100,000倍超)であることを考慮すると、不確定である。
Yan et al. (2005)の発見の解釈はさらに複雑である。それは、速度制限翻訳因子の競合の結果、効率の相対的な差を最小化する50キャップおよびIRESの両方を含有する2シストロン性作成物を使用しているためである。したがって、1mM
m7GDPによる処理によって、約8Xから2X10^5光単位へのキャップ誘導性ホタルルシフェラーゼの活性の低減が生じる。これは、4倍の効果で、mRNAのキャップ類似体のモル倍数が1,000,000倍超(mRNA濃度5mg/mL)であることと比較すると、重要ではない(Yan
et al.2005)。同様に使用した細胞のeIF4Eの濃度が約400nMであると推定されている(Rau et al.1996)ことを考慮すると、そのようなキャップ類似体の高濃度の必要性から、この検討したプロセスは、mRNA翻訳中にはeIF4E活性に厳しく依存していないことが示唆される。
本願発明者らは、Yan et al.(2005)によるウイルス産生の測定とWestman et al.(2005)によるキャップ構造の慎重な分析に基づいて、リバビリンがミリモル濃度度で50mRNAキャップに誤って取り込まれることがあることについて異議は唱えないが、in vitroにおけるキャップとIRES誘導性作成物の間の翻訳効率の観察された差異の特異性と、リバビリンの作用機序に関する機構的な解釈と、本願発明者らによるin vivoにおけるeIF4E感受性翻訳の阻害の発見については、疑問を持っている。この文脈において、Yan et al.(2005)とWestman et al.(2005)の研究では、リバビリンはin vitroにおいてキャップ依存性翻訳を阻害しなかったが、この作用の欠如は、現在の細胞抽出物のeIF4E活性への感受性の欠如と関係があるのかもしれない。この観点から、キャップとeIF4E感受性翻訳の間の差には非常に重要な意味があるのかもしれない。5’ 7-メチルグアノシンキャップとeIF4Eとの相互関係はキャップ依存性mRNAの翻訳に必要だが、細胞におけるeIF4Eの上方制御によって、キャップ依存性転写物から産生されたすべてのタンパク質のレベルは上昇しないが、たとえばbアクチンおよびGAPDHではなくシクリンD1およびVEGFを含む特定のサブセットだけは上昇する。この作用は、一部のmRNAの核細胞質輸送のレベルにおいて、他については翻訳レベルにおいて、および一部は両方とものレベルにおいて生じる。したがって、eIF4Eの上方調節は細胞のタンパク質翻訳を全体的に増加させるわけではないので、リバビリンは全体的な阻害物質ではない。細胞における翻訳への細胞の作用のそのような特異性は、本願発明者らによるシクリンD1、GAPDH、VEGF、および ODC のmRNAのポリソーム負荷の測定に正確に観察された。
まとめると、7メチルグアノシンキャップと同様に、リバビリンのeIF4Eへの結合は、溶液の状態に依存するが、頑強で特異的に生じる。in vitroで評価した相互作用の生理学的関連性を決定するために、in vivoにおいてその機能性を評価するのは重要である。したがって、本願発明者らは、細胞におけるeIF4Eへのリバビリンの結合の生理学的関連性を、動物モデルとともにヒト患者から単離した組織でも評価した。これらのシステムすべてにおいて、リバビリンは、in vitroにおける精製されたeIF4Eから分離する濃度と類似する低マイクロモル濃度において、eIF4E感受性mRNAの輸送および翻訳におけるeIF4Eの機能を拮抗する。本願発明者らはさらに、この単純な化学的だが生物学的に複雑な薬物の特異的な機序および細胞作用を決定するために、共同研究を続けるだろう。
例3核においてこのmRNAのeIF4Eへの感受性を増加させeIF4E媒介細胞形質転換に関与するシクリンD1 3’UTRに由来する100-nt配列の同定
要約
真核生物翻訳開始因子eIF4E(4E)は、核と細胞質における機能を有する細胞成長の重要な調節因子である。細胞質では、すべてのmRNA上の5’ m7Gキャップ部分を認識することは、eIF4Eとの機能的な相互作用に十分である。反対に、本願発明者らは、核ではeIF4EはシクリンD1の核外輸送に関連し促進するが、GAPDHまたはアクチンmRNAにはそのようなことをしないことを示した。本願発明者らは、この判別相互作用の基盤は、eIF4E感受性要素(4E-SE)とよぶシクリンD1 mRNAの3’未翻訳領域(UTR)の100-nt配列であることを明らかにした。本願発明者らは、シクリンD1 mRNAはeIF4E核小体で濃縮されることを発見した。これにより、これらは特定のリボヌクレオタンパク質の組織化のための機能的部位であることが示唆される。4E-SE
は、eIF4Eが効率的に細胞を形質転換し、その結果この要素をeIF4E媒介発癌性形質転換への認識に結びつけるのに必要である。本願発明者らの研究は、核と細胞質の分画間のeIF4E-認識と、細胞増殖のさらなる新規の制御レベルの間の、これまで特徴付けされていなかった基本的な差異を実証する。
序文
真核生物翻訳開始因子eIF4Eは、細胞成長の調節に関わっている。eIF4Eの中程度の過剰発現によって無調節の成長と悪性形質転換が生じる。eIF4Eは、骨髄性白血病および乳癌のサブセットを含む数種類のヒト悪性腫瘍において高値である。重要なことに、eIF4Eの核と原形質の機能はどちらも、細胞の形質転換の能力に寄与する。細胞質では、eIF4Eは、酵母菌からヒトまで高度に保存されているプロセスであるキャップ依存性翻訳に必要である。ここでは、eIF4Eは、mRNAの5’末端にあるメチル7-グアノシン(m7G)キャップ基に結合し、その後mRNAをリボソームに導入すると考えられている。
核では、eIF4Eは、核から細胞質への少なくとも2つの報告されたmRNA、シクリンD1、およびオルニチンデカルボキシラーゼ(ODC)の搬出を促進するように機能するが、GAPDHまたはアクチンmRNAの搬出は変化しない。12年前、eIF4Eの核局在化が最初に報告されてから、約68%以上の細胞eIF4Eが核にあるが、酵母菌、アフリカツメガエル、そしてヒトなど多種多様な生物の核小体と会合していることが研究で明らかになった。これらの小体は、約30細胞株およびNIH3T3、HEK293T、U2OS、K562、およびU937などさまざまな系列に由来する一次細胞を含むすべての報告された細胞種に発見されている。哺乳類細胞では、eIF4E核小体の大きなサブセットは、前骨髄球性白血病タンパク質PMLに会合するものと一致する。PMLは、最初に同定された、eIF4E依存性mRNA搬出の制御因子である。PMLのRINGドメインは、eIF4Eの側表面に直接結合し、m7Gキャップへの親和性を100分の1未満に減少させる。このキャップ結合活性の損失は、mRNA搬出機能の損失と形質転換活性の損失に相関する。
eIF4EのmRNA搬出機能は発癌性形質転換活性に関連するというエビデンスがある。原発性ヒト骨髄性白血病標本のサブセットでは、eIF4E依存性のシクリンD1 mRNA搬出は実質的に上方制御されている。さらに、eIF4Eの突然変異体、W73Aは、内因性eIF4E核小体と共存する核の中に入り、シクリンD1 mRNAの細胞質への輸送を促進して、不死化細胞を形質転換する。これは、W73A eIF4E はeIF4Eに結合できず、したがって翻訳には作用できないという事実にもかかわらず生じる。
本願発明者らのグループとSonenberg研究室による、eIF4EがシクリンD1とGAPDHを機能的に判別するという観察は、驚くべきものである。それは、従来は、eIF4Eは、他の配列特異的な特性にかかわらずすべてのmRNAに認められるm7Gキャップに結合すると見られていたからである。したがって、この機能的判別は、核におけるeIF4E
mRNA認識についての我々の理解から見ると謎である。
本願発明者らは、核におけるeIF4EによるmRNAの認識は、細胞質におけるものとは基本的に異なるという可能性を調べる。ここでは、本願発明者らは、核においてこのmRNAのeIF4Eへの感受性を増加させeIF4E媒介細胞形質転換に関与するシクリンD1 3’UTRに由来する100-nt配列を同定する。
材料および方法
作成物: すべてのUTR-LacZ融合作成物は、pcDNA3.1LacZ ベクタ(インビトロゲン社)の中で作成し、LacZのコード領域の5’ または3’に適切に配置した。シクリンD1 3’UTRをクローニングするために、NotI制限部位をin vitro変異原性によってストップコドンの150bp上流のpD1-1作成物に作成し(クイックチェンジキット、ストラタジーン社)、完全長3’UTRをNotIおよびXbaIを用いてLacZの下流にクローニングした(本願明細書ではLacZ-3’UTRFullとよぶ)。シクリンD1 3’UTR の第一部分を含有する断片をNotIおよびEcoRIを用いて、およびシクリンD1 3’UTRの第二部分はEcoRIおよびXbaIを用いて作成し(ヒトシクリンD1 cDNAの2,824bpのEcoRI部位にある)、NotI-XbaIおよびEcoI-XbaI下においてLacAの下流にクローニングした(LacZ 3’UTRAおよびLacZ 3’UTRB)。個々の配列は、NotIまたはXbaI制限部位を5’末端に含有する特定のプライマを用いて増殖した。 LacZ
3’UTR2/3 はシクリンD1 mRNAに由来するセグメント2,091-2,459 bpを含有し、LacZ 3’UTR 3 は配列2,361-2,459 bpを含有し、LacZ3/4 はセグメント2,361-2,565 を含有し、LacZ 3’UTR4はヒトcDNAに由来する配列2,481-2,565 bp を含有する。5’UTRはシクリンD1 cDNA(ATCC MGC-2316)から増幅し、Xpress用のAUGコドンの上流のHindIII部位を用いてクローニングした。pcDNA2Flag-eIF4E 作成物は、eIF4E cDNA をEcoRI-NotI 部位に挿入して作成した(pcDNA2Fベクタは、Z. Ronai, バーンハム研究所(カリフォルニア州ラホーヤ)からの寄贈)。pcDNA2FlagのeIF4E突然変異体は、in vitro変異原性によって作成した(クイックチェンジキット、ストラタジーン社)。pMVベクタ、pMV-eIF4E
野生種(N. Sonenberg 、マギル大学(カナダ、ケベック州モントリオール)の寄贈)、または突然変異体pLINKSV40-PML およびバクテリア発現作成物は、既述されている。完全長3’UTRを持たないヒトシクリンD1
cDNA(ATCC MGC-2316)は、EcoRIおよびHindIIIを用いてpMVベクタにクローニングした(シクリンD1切断型)。シクリンD1完全作成物は、平滑末端でpMV-シクリン
D1Trunc 中のHindIII下でクローニングしたpCDNALacZ-3’TR のHindIII-XbaI フラグメントを用いて作成した。シクリンD1 3’TRからの4E-SE-4
をPCR増幅し、pMV-cyclin D1Trunc 中のHindIII 下でクローニングした(cycD14E-SE)。
抗体とウエスタン分析法: PMLに対して用いた抗体は、既述されている(P. Freemont インペリアルカレッジロンドン(英)およびL. de Jong アムステルダム大学(オランダ、アムステルダム)からの寄贈)。使用したさらなる抗体には、マウスモノクローナル抗eIF4E Ab (BDトランスダクション研究所)、ポリクローナル抗IF4E Ab (S. Morley サセックス大学(英ブライトン))、マウスモノクローナル抗シクリンD1 Ab(BDバイオサイエンシーズ社)、マウスモノクローナル抗Xpress Ab (インビトロゲン社)、マウスモノクローナル抗GAPDH抗体(MAB374、CHEMICON インターナショナル社)、抗CBP80 pAb (L. Maquat、ロチェスター大学(ニューヨーク州ロチェスター)からの寄贈、Ishigaki et al., 2001)、抗-CBP-20(E. Izaurralde、EMBL(ドイツ、ハイデルベルグ、ハイデルベルグ))が含まれる。ウェスタン分析は既述の通り行った(Topisirovic et al.,
2002, 2003)。
細胞培養およびトランスフェクション: NIH3T3、U2OS、HEK293T、およびNlog (H. Land, ロチェスター大学からの寄贈、シクリンD1-/- Perez-Roger et
al., 1999) 細胞は、5%
CO2中、37℃で、10% FBS、100 U/mlペニシリン、および100 U/ml ストレプトマイシンを添加した DME(GIBCO BRL、ライフテクノロジーズ社)中で維持した。安定にNIH3T3をトランスフェクトしたeIF4EおよびPMLは、既述の通り作成した(Topisirovic
et al., 2002, 2003a)。NIH3T3の一過性形質転換は、ジーンジャマー・トランスフェクション試薬(ストラタジーン社)、またはリポフェクタミンプラス試薬(インビトロゲン社)のいずれかを用いて、製造者の指示に従って行った。HEK293T細胞の一過性形質転換は、リン酸カルシウムトランスフェクションキット(インビトロゲン社)を用いて行った。シクリンD1-/-
細胞の安定な形質転換は、フュージーン6トランスフェクション試薬(ロシュ社)を用いて製造者の指示に従って行った。足場依存性増殖巣形成アッセイは、既述の通り行った(Cohen
et al., 2001; Topisirovic et al., 2003a)。
eIF4Eの免疫精製、eIF4Eに結合したRNAの単離、およびRT-PCR: 既述の通り(Topisirovic et al., 2002)、適切に分割した3 x 10^9 HEK293T 細胞から核を単離し、氷冷NET-2 バッファ(50 mM Tris-HCL, pH 7.4,
300 mM NaCl, 0.5% [vol/vol] NP-40, 1x 完全プロテアーゼ阻害剤(ロシュ社)、200 U/ml SUPERasein (アンビオン社))に再懸濁させて、氷上で加圧型細胞破砕装置(B型)で機械的に破壊した。得られた核抽出物を、20分間4℃で16,000gの遠心分離によって不要物を除去した。上清の1/20を2分して、それぞれを使って核RNAとタンパク質を得た。19/20を3分割して、文中に指示した場合には、そのうちの2つをNET-2バッファで30分間4℃で、50 uM m7GpppGおよび50 uM GpppG (NEB) とともにインキュベートした。上述の各アリコートを2分割して、以下の修飾を加えてから既述の通り免疫沈降させた(Ishigaki et al., 2001)。その修飾には、10uの抗eIF4EマウスmAb(トランスダクション・ラボラトリーズ社)または10uのマウスIgG(カルバイオケム社)を反応ごとに用いて、免疫沈降後、そのビーズを1
mg/ml のヘパリン(シグマ-アルドリッチ社)を添加したNET-2バッファで1回洗浄した。得られたRNAを、無RNase DNase(プロメガ社)で製造者の指示に従って処理した。RNAはSensiscript
Reverse Transcription kit (キアゲン社)を用いてcDNAに転換した。RT-PCRは、QuantiTect SYBR green
RT-PCRキットを用いてオプティコン熱サイクラで3回行った。得られたRT-PCRデータをオプティコンソフトウェア(MJR)で解析した。シクリンD1
RT-PCRに用いたプライマは、cycF, 5’cagcgagcagcagagtccgc-3’
(配列番号12) およびcycR, 5’-acaggagctggtgttccatggc-3’
(配列番号13)、ならびにGAPDH増幅GAPDHFには、5’-accacagtccatgccatcac-3’
(配列番号14) およびGAPDHR 5’-tccaccacccgttgctgta-3’
(配列番号15)である。RT-PCR法のために、アプライド・バイオシステムズ社が既述したとおりに計算を行った。半定量的PCRには、30サイクルを用い、RT-PCRには、標準法を用いた。GAPDH
の半定量的増幅に用いるプライマは、RT-PCR用のものと同一で、シクリンD1およびアクチン増幅には、以下のプライマを用いた: cycHMF, 5’-cacttcctctccaaaatgcca-3’ (配列番号16)、cycHMR,
5’-cctggcgcaggcttgactc-3’ (配列番号17)、ActF,
5’-atctggcaccacaccttctacaatgagctgcg-3’
(配列番号18)、およびActR, 5’-cgtcatactcctgcttgctgatccacatctgc-3’
(配列番号19)。
免疫沈降と分画化の質の制御: 実験間のばらつきが偽陽性または偽陰性の結果を生じないように、いくつかのステップを設けた。免疫沈降したサンプルをテストして、eIF4Eがそれ自体を免疫沈降し、ウェスタンブロットによって決定されるとおりIgGがeIF4Eに結合しないことを確認した。免疫沈降の特異性は、核分画中のeIF4Eの既知の陽性および陰性対照を用いて決定した。したがって、eIF4E抗体がeIF4Eを免疫沈降しCBP80(図11g)またはRNAポリメラーゼIIは免疫沈降しない能力を決定した(Lai and Borden, 2000)。これらの結果は、Maquatおよび本願発明者らの研究室で得られた、eIF4Eの核分画がこれらのタンパク質と会合しないことを示した発見と一致する。さらに、何回も報告されているように、eIF4Eの相互作用のための陽性対照には、PMLタンパク質と会合する能力が含まれている(Cohen et al., 2001;
Topisirovic et al., 2003a,b)。さらに、本願発明者らは、本願明細書に使用したeIF4Eに対する形質導入実験抗体が他の実験室で産生されたeIF4E抗体(Topisirovic et al.,
2004)と共存することを実証し、この抗体が頑強で信頼性があることを示す。重要なことに、これらの実験は、さまざまなmRNAとeIF4Eの会合の差は、実験間における免疫沈降の効率または分画の質の差の結果ではないということを確認する。
分画化の制御には、各核および細胞質分画の質は、本願発明者らが以前報告し本願明細書全体に示すとおり、U6snRNA(核)およびtRNALys(細胞質)の細胞内分布の監視によって評価した。核分画化のために行われたさらなる制御には、核マーカ(Sc35)として働いたスプライシング斑状タンパク質と細胞質マーカとして働いたBアクチンのウェスタン分析が含まれる(Topisirovic et al.,
2003 a,b)。さらなる分画制御は、十分な物質が使用可能な場合に行われた(Topisirovic et al., 2003 a,b)。SNAAPプロトコルは、以下のような修飾を用いて、既述の通り行った(Trifillis et al., 1999)。予め不要物を除去した250ugの核抽出物を、0.5% NP-40を含有するRBBバッファ500ulにGSTタンパク質ビーズ50ugを入れたものに加え、4℃で30分間インキュベーションした後、酵母tRNA 500ugを反応ごとに加えて、4℃で一晩インキュベーションした。ビーズの洗浄はすべて、0.25%
トリトンX-100および0.5% NP-40を含有するRBBバッファの中で行った。
細胞分画化とノーザン分析: 分画化とRNA単離は既述されている(Lai and Borden, 2000; Topisirovic et
al., 2002)。LacZは、オリゴテックスmRNAミニキット(キアゲン社)を使って、ポリA RNAを分画化したRNAから精製した。シクリンD1、GAPDH、U6、およびtRNALysのノーザンブロット分析用のプローブも既述されている(Topisirovic et al.,
2002)。LacZ
プローブは、プライマLacZF、5’-cggtcgctaccattaccagtt-3’ (配列番号20) およびLacZR、5’-gacgttgtaaaacgacgggat-3’ (配列番号21)を用いてPCR増幅することによって作成し、ブライトスター・ソラレン-ビオチンキット(アンビオン社)を用いて標識した。
免疫蛍光、in situハイブリダイゼーション、およびレーザースキャニング二焦点顕微鏡: 免疫蛍光実験は、既述の通り行った(Cohen et al., 2001;
Topisirovic et al., 2002)。蛍光の観察には、他に指示のない限り、吸光波長488、568、または351/364nm(室温)で励起させた倒立レーザスキャニング二焦点顕微鏡(モデルTCS-SP(UV)、ライカ社)で、100倍光学的ズームと2倍デジタルズームを用いた。すべてのチャンネルを別々に検出し、チャンネル間のクロストークは観察されなかった。顕微鏡像は、厚さ約300nmの細胞面の単一断面をあらわす。実験は、各サンプルに500個超の細胞を用いて3回繰り返した。In situハイブリダイゼーションは、Spector et al.(1998)にしたがって、ニックトランスレーションDIG-11-dUTP標識(ニックトランスレーションキット、ロシュ社)シクリンD1およびGAPDH PCR増幅断片(シクリンD1特異的5SA、5’-catggaacaccagctcctgt-3’ (配列番号22)と3SA, 5’-cgcagccaccacgctccc-3’ (配列番号23)、およびGAPDH 特異的GAPDHHF, 5’-accacagtccatgccatcac-3’ (配列番号24) とGAPDHMR, 5’-tccaccaccctgttgctgggg-3’ (配列番号25))を用いて行い、抗DIG Fab断片(ロシュ社)に次いでロバ抗ヒツジテキサスレッド(ジャクソンイムノリサーチラボラトリーズ社)を用いて検出した。PMLは、5E10 mAb (U2OS細胞)の後にAlexa Fluor 350結合ヤギ抗マウスAb(モレキュラープローブス社)、またはウサギポリクローナル抗PML Ab(NIH 3T3細胞)のあとにAlexa Fluor 350結合抗ウサギAb(モレキュラープローブス社)を用いて検出した。eIF4EはFITC結合マウスモノクローナル抗eIF4E
Ab(BDトランスダクションラボラトリーズ社)を用いて検出した。細胞は、DAPIを添加したヴェクタシールド(ヴェクタラボラトリーズ社)の中に乗せた。TCS-SPソフトウェアを用いて画像を得て、その画像をアドビーフォトショップCS8.0を用いて表示した。
結果
eIF4Eは核の中のシクリンD1 mRNAに物理的に会合している
eIF4EがmRNA搬出の促進に与える影響の特異性の基礎を理解するために、本願発明者らは、eIF4Eが核の中の特定のmRNAのみと物理的に会合する新規の可能性を調べた。このように、シクリンD1 mRNAの搬出のeIF4Eに依存した促進は、核の中のeIF4EとこのmRNAとの特定の物理的相互作用によって生じうる。まず、本願発明者らは、eIF4Eが、シクリンD1またはGAPDHおよびアクチンmRNAなどのハウスキーピング遺伝子とともに、U2OS, NIH3T3, K562,
U937,およびHEK293Tを含むさまざまな細胞株の中の、完全細胞ライセートの中で、次いで核および細胞質分画の中で、免疫沈降するかどうかを調べた。結果は、すべての細胞株について同じだったので、代表的な結果だけを本願明細書に記載する(図11)。ここで調べたmRNAとeIF4Eの両方とも内在性であることに留意されたい。RNAは、定量的RT-PCRおよび半定量的PCRを含む複数のPCR戦略を用いて、それぞれ独立の実験で検出した。これらの異なる方法論を用いても、常に一貫した結果が得られた。
免疫沈降研究は、完全細胞ライセートの中では、eIF4EはシクリンD1とGAPDH mRNAの両方に、これらのmRNAがキャップされていたことから予想される通り、結合したことが示唆された(図11a)。核分画の中では、eIF4Eは、容易に検出可能なシクリンD1 mRNAの分画と物理的に会合している(図11b)。しかし、eIF4EとGAPDH mRNA またはアクチンmRNAの検出可能な会合は、完全細胞ライセートまたは細胞質分画とは対照的に、核分画の中では観察されない(図11aおよび非表示)。これらの結果は、半定量的、および独立のRT-PCR分析によって確認する(図11b、d、およびe)。また、eIF4Eは、特定のプライマとRT-PCRを用いて観察されるとおり、核の中で処理されたシクリンD1 mRNAだけと会合している(描写せず)。重要なことに、eIF4EがGAPDHまたはシクリンD1 mRNAと会合する能力は、同一のeIF4E免疫沈降から得られた物質を用いて監視した。したがって、GAPDHとシクリンD1間の結合親和性の差は、免疫沈降の効率や、または実験間の分画化の質の差に起因するものではない。これらの免疫沈降および分画化の質の管理は後述し、物質と方法で検討する。
上述の発見から、核におけるeIF4EによるmRNAの認識は、細胞質におけるものとは実質的に異なることが示唆された。特に、核の中でのeIF4E-mRNA認識へのキャップ結合の重要性を確立することが重要だった。したがって、本願発明者らは、eIF4Eのどの特徴が核分画中のシクリンD1 mRNAとの相互作用に必要なのかを、タンパク質に会合する特異的核酸(SNAAP; Trifillis et
al., 1999)とよばれる、GSTプルダウンアプローチを用いて調べた。本が明細書では、核ライセートをグルタチオンセファロース結合野生種または突然変異型eIF4EGSTまたはGSTでインキュベートした(図11c)。免疫沈降法による発見と一致して、野生種eIF4EはシクリンD1と会合しているが、GAPDH mRNAとは会合していない。GST(図11c)、またはどちらのmRNAにも無関係のmRNA結合タンパク質α-CP1-GST(非表示)では、会合は認められなかった。キャップに結合しないW56A eIF4E 突然変異体はシクリンD1に結合せず、eIF4Eは、核分画中でmRNAと会合するために、そのキャップ結合活性を必要とすることを示唆している。本願発明者らは、これらの研究を拡大して、背面突然変異W73Aが核の中でシクリンD1 mRNAと会合するかどうかについてテストした。なぜなら、この突然変異体は、発現するとシクリンD1の輸送を容易に促進するからである(Topisirovic
et al., 2002, 2003a)。重要なことに、W73A突然変異体は翻訳が欠損しているが、輸送は欠損していない。この突然変異体は、野生種と比較して、シクリンD1
mRNAへの結合を検出できるほど低減しない。過去の生物物理学的研究では、W56AおよびW73A 突然変異体は野生種eIF4Eと区別できない構造を有していることが示唆されている(Kentsis
et al., 2001)。したがって、eIF4Eが核の中でシクリンD1 mRNAと物理的に会合する能力と、eIF4EがこれらのmRNAの輸送を促進する能力の相関が現れる。
本願発明者らは、これらの発見を拡張して、核の中でeIF4EとmRNAの会合にm7Gが必要であることをさらに実証した(図11dおよびe)。本願発明者らは、m7Gキャップ類似体(m7GpppG)がmRNA結合と競合する能力を、半定量的PCRおよび独立に定量的RT-PCR法を用いて監視した。W56A突然変異体を用いた上述の結果と一致して、キャップ類似体は、シクリンD1 mRNAのeIF4Eとの会合をうまく阻害する。これに対して、eIF4Eに結合しないGpppGは、シクリンD1との会合を阻害しない。どちらの場合にも、eIF4EはGAPDH mRNAと会合しない。まとめると、これらの発見から、eIF4Eは核の中で特定のmRNAと会合するためにm7Gキャップを必要とすることが示唆される。m7GpppGまたはGpppGによる処理によって、これらの反応において、eIF4E抗体によって免疫沈降したeIF4Eの量が変化しなかったことに留意されたい(非公開データ)。
興味深いことに、細胞の細胞質分画をeIF4E-GSTでインキュベートした場合、すべてのmRNAが結合しており、これは、本願発明者らが完全ライセートまたは細胞質分画を用いて免疫沈降実験をしたときに観察した結果と類似している(非公開データ)。興味深いことに、SNAAPアッセイにおいて、核のライセートを組換えeIF4Eでインキュベートした場合でも、本願発明者らにはGAPDH mRNA との会合は認められない。これにより、核ライセート中で、eIF4E-mRNA認識が、細胞質には存在しないその他の制御要素によって制限され、キャップ結合がこれらの相互作用を媒介するのに十分である可能性が高くなる。陽性対照として、本願発明者らは実験を拡張し、GAPDH およびシクリンD1 mRNAが他の核キャップ結合タンパク質であって一緒にキャップ結合複合体(CBC)を形成するCBP 80およびCBP 20に結合するかどうかを決定した。一般に、CBCは同時転写的にすべての転写物と会合する(Visa et al., 1996)。免疫沈降は、CBP80に対する抗体を用いて行った。結果は半定量的および独立のRT-PCR法によって監視した。並行して、同じ核分画を用いてeIF4E抗体で実験を行った。予想通り、CBCはシクリンD1およびGAPDH転写物と会合するが、eIF4EはシクリンD1
mRNAにしか関連しない(図11f)。本願発明者らはさらに、CBCがeIF4Eと会合するかどうかを決定した。免疫沈降(図11g)および別に免疫蛍光(描写せず)を用いて、本願発明者らは、CBCおよびeIF4Eの間に会合を観察しなかった。これらの発見は、CBCとeIF4Eの間に共免疫沈降が認められなかった過去の報告と一致する。しかし、本願発明者らは、これらの方法で検出できなかった、CBCとeIF4Eの間の一過性の相互作用の可能性を否定できない。合わせて、これらのデータから、eIF4E-シクリンD1
mRNAとCBC-シクリンD1 mRNA複合体は核の中で顕著な複合体であることが示唆される。
本願発明者らは、核の中でeIF4Eが低レベルのGAPDH mRNAと結合しており、それが本願発明者らのRT-PCR法の検出限界を超えている可能性を否定できない。これがそのケースだとしても、どちらの分画でもGAPDHがはるかに大量のmRNAであり相対的な量の差があるにもかかわらず、本願発明者らは、シクリンD1の量がGAPDH mRNAに対して最高で1000倍濃縮されていることを容易に検出できる。したがって、免疫沈降とSNAAPの2つの独立の方法を用いて、本願発明者らはeIF4Eが核分画の中で特定のmRNAと物理的に関連することを実証する。さらに、eIF4Eは、この会合のためにキャップ結合活性が必要であるが、背面上のW73では必要ない。別の研究室での最近の発見では、eIF4Eは核分画中のすべてのmRNAと会合することを示唆している(Lejeune et al., 2002)が、本願発明者らが本願明細書に公表したデータは明らかに、核分画中でeIF4EがシクリンD1に結合するがGAPDH またはアクチン mRNAには結合しないことを示唆している。 この矛盾点を説明する最も可能性の高い理由は、実験的なアプローチの差異である。一つの大きな差異は、本願発明者らはeIF4Eと内在性だが過剰発現していないmRNAとの会合を監視する点である(図11)。過剰発現は、内在性RNPとは異なるRNPの形成を引き起こすことがある。したがって、本願発明者らは、内在性eIF4Eとともに内在性mRNAを用いて研究を開始した。免疫沈降させた分画の結合mRNAの検出も、これらの実験の最適な解釈に重要である。本願発明者らは、mRNAのバックグラウンドの結合を誤って真の結合とみなしていないことを確認するために、自らの結果を定量的RT-PCR法で確認した。さらに、本願発明者らは、異なるeIF4E抗体またはeIF4E-GSTとの複合体の再構成を用いて、同じ結果を得る。明らかに、本願発明者らの特異性は、本願発明者らのグループおよびSonenbergグループによる、eIF4Eの過剰発現はシクリンD1を上方制御するがGAPDHまたはアクチンmRNA輸送は上方制御せず、したがってシクリンD1を上方制御するがGAPDHおよびアクチンタンパク質レベルは上方制御しないという、過去の観察結果とよく相関する。
シクリンD1 mRNAはeIF4E核小体のサブセットに局在化する
eIF4Eは核の中ではシクリンD1 mRNAと特異的に会合するために、本願発明者らは、シクリンD1 mRNAはeIF4E核小体と特異的に会合するかどうかを調べた。この場合、eIF4E核小体は、特定のRNPまたは機能的保存部位の集合体の部位であるかもしれない。研究は、U2OSおよびNIH3T3細胞の中で行った。シクリンD1またはGAPDH mRNAの局在化は、eIF4Eと核小体の別の成分PMLのin situハイブリダイゼーションおよび局在化を用い、免疫蛍光法によって決定した。その結果は、二焦点顕微鏡を用いて監視した。同様の結果が、U2OSおよびNIH3T3の両方の細胞において認められる(図12aおよびb)。これらの研究によって、シクリンD1 mRNA(赤)は細胞質および核質全体に認められるが、さらに核の中の小体にも濃縮されていることを明らかにする。このような濃縮の局在部位は、eIF4E核小体のサブセット(緑)と共局在化する。eIF4E核小体およびシクリンD1 mRNAの共局在化部位を黄色で示し、いくつかのそのような部位のうち2ヶ所を矢印で記した(図12)。図12のすべての実験の対象物は100倍し、さらに以下の通り拡大したことに留意されたい(A-Cは2倍、およびDは1.5倍)。これらの研究の現在の分解能では、シクリンD1
mRNAが認められるのがeIF4E小体の表面上なのか中なのかを区別することができない。過去の研究(Lai and Borden, 2000; Cohen et
al., 2001)と一致して、eIF4E核小体には2つの個体群があり、一つはPMLを含むもの、もう一つは含まないものである。eIF4E(緑)およびPML(青)の大半は、同一の核小体に共局在化しており(薄青)、多くの細胞でこれまで観察されてきたとおり、さらなるeIF4E小体がある(図12a、緑、Lai
and Borden, 2000; Cohen et al., 2001)。
重要なことに、mRNAがPML核小体と共局在化するところは全く認められず、RNAがPML核小体と局在化しないことを示した過去の研究と一致する(Boisvert et al., 2000)。したがって、シクリンD1 mRNAは、PMLを含まないeIF4E核小体のサブセットに局在化する。予想通り、GADPH mRNAはPMLともeIF4E核小体とも局在化しない(図12b)。これらの結果は、核のGAPDH mRNAがeIF4Eと物理的に会合せず、搬出もeIF4Eの過剰発現によって調節されないという観察結果と一致する(Topisirovic et al.,
2002, 2003a)。陰性対照として、シクリンD1 -/-細胞におけるin situハイブリダイゼーションのシクリンD1用のプローブからは、これらのプローブはシクリンD1に特異的であると示唆するシグナルがないことを明らかにした(図12c)。さらに、RNase処理では完全にシグナルがなくなる(描写せず)。上述の結果から予想されるとおり、PML抗体を用いた免疫沈降研究では、シクリンD1またはGAPDH mRNAのいずれとの会合もないことが明らかである。これらのデータは、PMLがeIF4Eのm7Gキャップへの親和性を100分の1未満に減少させ、RNA結合を不可能にするという、本願発明者らによる過去の発見と一致する。eIF4EはシクリンD1との相互作用のためのキャップ結合活性を必要とするため(図11dおよびe)、シクリンD1 mRNAがeIF4E核小体を含有するPMLでは認められないということと一致する。
まとめると、シクリンD1 mRNAはeIF4E核小体のサブセットに局在化する。mRNAの小体への局在化は特異的で、その後の細胞質への輸送に機能的に重要である可能性が高い。このように、eIF4E核小体は、細胞質への輸送を促進することができる、特定のeIF4E-RNPのための集合体の部位であるかもしれない。さらに、核の中では、観察されたeIF4Eの特異性を与える、結合したmRNAに固有の特徴がなければならないようである。
eIF4EのmRNAとの物理的会合は大量のmRNA輸送に相関する
上述のとおり、本願発明者らは野生種eIF4EとW73A突然変異体の両方ともが、核分画の中でシクリンD1 mRNAと物理的に会合するが、キャップ結合が欠損しているW56A突然変異体は会合しないということを実証する(図11c)。結合とmRNA輸送の間に相関があるかどうかを決定するために、本願発明者らはシクリンD1 mRNAの輸送を促進するこれら突然変異体の能力を評価した。突然変異または野生種タンパク質を発現する、安定に形質移入したNIH3T3細胞を分画化して、mRNAを既報の通り(Topisirovic et al.,
2002)ノーザン分析法で監視した(図13aおよび表I)。U6snRNAとtRNALys は分画対照とする。予想通り、GAPDHはどの場合にも変化しないことは留意されたい。さらに、この突然変異タンパク質は同様のレベルまで発現し(図13c)、シクリンD1 mRNAの総レベルはどの作成物によっても変化しない(図13b)。さらに、シクリンD1転写物の安定性はeIF4Eに影響されない(図13dおよび表II)。
重要なことに、eIF4EおよびW73A突然変異体はシクリンD1 mRNA輸送を促進し、ベクタ対照に対して細胞質分画の方が、より多くのシクリンD1転写物がはっきり見える。重要なことに、W56A突然変異体はシクリンD1 mRNA転写物の細胞内分布を変化させない(図13aおよび表I)。eIF4E依存性mRNA輸送の結果の一つは、細胞質中でこれらのmRNAが高濃度になるためにタンパク質レベルが高くなり、それによってこれらのmRNAが翻訳機構に使われる可能性も高くなることである。上述の分画化研究に一致して、シクリンD1タンパク質レベルは野生種とW73突然変異実験では高いが、W56A突然変異体が過剰発現している場合には増加しない。したがって、シクリンD1 mRNAとeIF4Eの核分画の物理的な会合は、核から細胞質へのシクリンD1 mRNAの大量の輸送に強く相関する。
PML過剰発現によって、シクリンD1の核内繋留が生じるがGAPDH mRNAでは生じず(図13a)、シクリンD1は減少するが、GAPDH またはアクチンタンパク質レベルは減少しない(図13c)。これは、免疫沈降とin situ研究の結果に一致し、PMLはeIF4E-シクリンD1 mRNA複合体の形成を阻害する(図11bおよび図12a)。再び、それはeIF4EがRNAと物理的に相互作用する能力と、mRNA輸送を促進する能力を関連づけている。過去の研究では、eIF4Eは4Eトランスポータタンパク質(4ET; Dostie et al.,
2000)との相互作用によって核に入ることができることを実証した。ここでは、背面の突然変異(W73A)が4ETとの会合を阻害し、核内進入を障害した(Dostie et al., 2000)。したがって、本願発明者らは、W73A突然変異体が核に進入し、核小体を形成することを確認するための実験を行った。二焦点顕微鏡を用いて、本願発明者らは、過剰発現したeIF4EまたはW73A突然変異体の細胞内分布を、内因性および過剰発現タンパク質の両方を認識するXpressエピトープタグとeIF4Eに対する抗体を用いて調べた。
二焦点顕微鏡像から、W73A突然変異体は、核の中で容易に検出することができ、内在性eIF4E核小体と会合することが明らかである(図13e)。したがって、W73A突然変異体が過剰発現する場合には、代替的なルートを使うか4ETへの弱い結合を克服して、核内に輸送されて核小体と会合するようである(図13e)。W56A突然変異体についての同様の研究も、野生種と比較して細胞内分布が変化しないことを示唆した(描写せず)。さらに、野生種および突然変異型のeIF4Eは同様のレベルまで発現する(図13c)。eIF4Eレベルは同様のレベルまで発現する(図13c)。これらの顕微鏡像の場合、対象物は100倍されており、さらに1.5倍に拡大されている。
Figure 2009522281
Figure 2009522281
核コンパートメント内でeIF4E感受性を媒介するRNA構造要素の同定
核においてmRNAとeIF4Eの会合およびeIf4E依存性mRNA輸送が一部特定のmRNA配列に媒介されるかどうかを明らかにするために、本願発明者らは、自らのモデルmRNAシクリンD1に由来する3’および5’ UTRを分析した。一連のキメラ作成物を、LacZ のコード領域をシクリンD1の5’または3’ UTRに融合して作成した(図14a)。本願発明者らは、これらの配列が、キメラmRNAが核の中で内在性eIF4Eと会合し、その搬出を調節しうるのに必要かつ十分かどうかを評価した。実験は、NIH3T3およびHEK293T 細胞の中で行い、同一の結果が得られた。HEK293T 細胞は、NIH3T3細胞で観察されたものと同様のサイズおよび形態の核小体を形成することに留意されたい(図12d)。初期の半定量的PCRの結果は、標準曲線法を用いた定量的RT-PCR法によって確認された。本願発明者らは、eIF4Eの核分画がこれらのmRNAと会合する能力を、PCRを併用した免疫沈降を用いて監視した(図14b)。重要なことに、eIF4EはLacZ mRNAで免疫沈降せず、Lac Z-シクリン D1 5’ UTR キメラmRNAでも免疫沈降しないが、シクリンD1の3’UTR全体を含有するキメラLacZ mRNA とは会合する。本願発明者らは、シクリンD1 cDNAの3’ UTR の中心にほぼ位置するEcoRI部位を用いた3’ UTR の異なる2ヶ所を有するキメラLacZ作成物をさらに作成し、シクリンD1 3’ UTR (3’ UTRA) の第一の部分を含有するキメラRNAは核eIF4Eで免疫沈降するが、第二の部分(3’ UTRB)はしないことを明らかにした。
シクリンD1 3’ UTRの第一の部分とは異なる要素を含有するさらなるキメラ作成物の分析から、シクリンD1の3’ UTRの100bp配列(ヒトシクリンD1 cDNAの2,471-2,565に位置する)は、eIF4Eとの会合に必要かつ十分だということが明らかになったので、本願発明者らはこれをeIF4E感受性要素(4E-SE)とよぶ。重要なことに、この要素は、ヒト、マウス、ラット、およびニワトリ配列の間で高度に保存されている(図14c)。実際、ヒトとニワトリの間の4E-SEは94%保存されていてほぼ同一であるが、3’ UTRの残りの部分は類似性が59%である。
哺乳動物とトリに4E-SEが存在することから、それは進化の過程で保存されていることが示唆される。キメラmRNAとeIF4Eとの相互作用が機能的かどうかを評価するために、本願発明者らは、eIF4Eの搬出における発現への作用を調べた(図15)。mRNA搬出は、細胞内分画化と半定量的RT PCR(図15a)、ノーザン法(図15b乃至15d)、または定量的RT-PCR(表III)を併用して監視した。eIF4Eは、4E-SEを含まないLacZまたはLacZキメラの輸送を調節せず(図15および表III)、eIF4EはこれらのmRNAと結合しないという観察と一致する(図14b)。同じ形質移入細胞から決定した総mRNAレベルから、LacZ mRNAレベルも(図16b)その安定性も(図16c)調節されないことが示唆されたことに留意されたい。したがって、eIF4EがこれらのmRNAの3’ UTRと(直接または間接的に)会合しその輸送を促進する能力と強い相関がある。4E-SEが存在するときのLacZ mRNAの搬出の増加とその結果生じる細胞質mRNAの高レベルは、LacZタンパク質の高レベルと相関がある(図16a)。本願発明者らの初期の観察と一致して、W56A突然変異の過剰発現は、野生種eIF4Eと比較してLacZまたはLacZ-4E-SEのいずれの輸送も変化させず、W56A突然変異体もLacZ作成物のいずれかのタンパク質産生を変化させなかった(図15dおよび図16a、表III)。したがって、mRNAはそのキャップ依存性を維持する。さらに、すべてのキメラ作成物は同様のレベルの総mRNAを有しており、そのタンパク質レベルにおいて観察された差異は転写後のものであって、eIF4Eと輸送の関連の差異は作成物の発現における差異のせいではなかったということが示唆される(図16b)。重要なことに、本願発明者らが内因性シクリンD1 mRNAで観察したとおり(図13a乃至c)、LacZ-4E-SE 輸送はPMLによって負に調節されている(図16a)総じて、これらの結果は、4E-SEとm7Gキャップの両方が、eIF4EがこれらのmRNAの輸送を促進するために必要であることを示唆している。
Figure 2009522281
4E-SE
はeIF4Eが媒介する発癌性形質転換に寄与する
本願発明者らは、これらの研究を拡張して、4E-SEがeIF4Eの生理学的活性に寄与したかどうかを確立し、それによってこのRNA要素の機能的重要性を評価した。本願発明者らの過去の研究では、シクリンD1 mRNA搬出のeIF4E依存性促進と、eIF4Eの形質転換活性を関係づけたので、本願発明者らは4E-SEのこの活性への寄与を調べた。形質転換活性は、シクリンD1 -/-線維芽細胞株におけるeIF4Eの過剰発現後に形成された増殖巣の数を監視することによって評価した。eIF4E核小体の分布は、他の細胞種と比較して、シクリンD1 -/-では変化しないことに留意されたい。第一に、本願発明者らはeIF4E形質転換シクリンD1 -/-細胞をベクタ対照と比較して測定した。完全長3’UTRを含有するシクリンD1作成物(cycFull)の再導入によって、実質的に、eIF4Eのみを形質移入した細胞よりもたくさんの病巣が生じる(図17a)。しかし、eIF4Eの形質転換活性は、3’UTRのないシクリンD1(cycTrunc)の導入によって増加せず、eIF4E過剰発現細胞のみと同一だった。重要なことに、100nt 4E-SEのみを有するeIF4E(cyc4E-SE)とシクリンD1の導入によって、完全長3’UTRを含有する細胞と作成物を形質転換した。したがって、シクリンD1 -/-細胞の文脈では、eIF4Eの形質転換活性は、4E-SEタンパク質がある場合に、シクリンD1の再導入によって増加する。一貫して、シクリンD1-3’UTR (cycFull)またはシクリンD1-4E-SE(cyc4E-SE) で形質転換したそれらの細胞のみが、ベクタ対照または3’UTRを切り落としたシクリンD1(cyc-Trunc; 図17b)をトランスフェクトした細胞とは対照的に、シクリンD1タンパク質の高レベルを示した。
したがって、4E-SEの存在は、シクリンD1を搬出してから効率的に細胞を形質転換するeIF4Eの能力に厳しく拘束される。これらの作用は、内在性eIF4Eに拡大することができる。過剰発現したeIF4Eの欠如下であっても、cycFullまたはcyc4E-SEを発現する細胞は、シクリンD1の切断型を発現する細胞よりもたくさんのシクリンD1を産生する。本願発明者らは、分画化とRT-PCR法によって、これがmRNA輸送レベルで生じていることを確認する(図17c)。本願発明者らは、細胞質に対する核のシクリンD1 mRNAの割合が、cycTrunc作成物を発現するシクリンD1 -/-細胞ではcycFullまたはcyc4E-SE作成物を発現するものの250倍であることを実証する。したがって、cycTruncは、cycFullおよびcyc4E-SEと同じように効率的に細胞質へ輸送するわけではない。重要なことに、GAPDHの分布はこれらの作成物のいずれにも変化を受けなかった(非公開データ)。ノーザン分析によってこれらの発見を確認し、分画には不純物を含まないことが示唆された。したがって、4E-SEの存在は、内在性または外来性eIF4Eのいずれかを用いて、シクリンD1 mRNAのより効率的な搬出を可能にする。
考察
これらの研究で、eIF4Eが、細胞質mRNAとは基本的に異なる様式で、核mRNAと会合し制御することを明らかにする。キャップ結合がmRNAと機能的な相互作用に十分であるeIF4Eの細胞質分画と異なり、核eIF4Eでは、4E-SEを欠損するmRNAとの会合を制限する制御因子と結合するようである。eIF4Eはm7Gキャップと結合するため、本願発明者らは、他の因子が3’UTRの4E-SEと直接結合し、eIF4Eとの物理的会合によってこのmRNAのサブセットへの親和性が上昇すると仮定する(図18)。mRNAループ形成モデルは、eIF4Eキャップ結合が4E-SEと直接接触することによって、未知の機序によって安定するという、もう一つの可能性である(図18)。シクリンD1だけでなく他の多くのmRNAもこのように制御することができるようで(非公開データ)、ODCもその輸送がこのように制御されている場合は特にそうである(Rousseau et al., 1996)。本願発明者らの研究および最近の報告から、eIF4EはCBCと会合しないし、スプライスされていないmRNAとも会合しないことが示唆されている(Ishigaki et al., 2001;
Lejeune et al., 2002)。これらの研究から、キャップされたシクリンD1 mRNA転写物のCBCからeIF4Eへの輸送は、スプライシング後とシクリンD1 mRNAが核から搬出される前に生じることが示唆されている。eIF4EとCBCは共免疫沈降も共局在化もしないので、この相互作用は一過性である可能性が高い。本願発明者らは、シクリンD1 mRNAのキャップがCBC RNPの離脱とeIF4Eとの会合の間で未知の手法によって保護されているという完全に新規な機序の可能性も否定できない。これは、将来の研究の分野である。
eIF4Eに依存する形で搬出されるmRNAには、代替的なeIF4E依存型のmRNAの質監視を行ってもよい。過去の研究では、eIF4Eの核分画がmRNAの質監視の一部として低レベルの核翻訳に関与しているかもしれないことが示唆された(Iborra et al., 2001)。しかし、本願発明者らがW73A突然変異体を用いて行った研究では、核翻訳は観察された輸送機能に必要ではないことが示唆されている。なぜなら、この突然変異体はeIF4Gに結合できないので、輸送には活性だが翻訳には活性ではないためである(Sonenberg
and Gingras, 1998; Gingras et al., 1999)。シクリンD1のような成長促進mRNAの輸送に特化された経路、およびPMLのような因子によるこのプロセスの制御は、遺伝子発現を細胞増殖と協調させるために発展したのかもしれない。eIF4E核小体は、mRNA搬出に作用するために無傷でなければならない。なぜなら、それが阻害されることは搬出活性の損失と相関するためである(Topisirovic
et al., 2003a; Kentsis et al., 2004)。本願発明者らのデータから、eIF4E輸送RNPの集合は、eIF4E本体の中、または周囲で生じることが示唆される。シクリンD1
mRNAとPML陰性eIF4E核小体の共局在化から、これらの部位は、このmRNAの制限されたサブセットの細胞質へのより効率的な搬出を可能にする、RNPの特定のサブタイプの集合のための領域であることが示唆される。このように、これらの標的mRNAの発現は、極めてすばやく調節することができる。W73A突然変異体が輸送に活性であることから、mRNA排出の促進に関与する核eIF4E
RNPは翻訳において機能しているものとは異なるようである。一貫して、eIF4Eは核の中のeIF4Gに結合しないようであるが(McKendrick et
al., 2001)、eIF4Gは細胞質内のeIF4E RNP の統合部分である(Sonenberg and Gingras, 1998)。明らかに、これらの結果から、相当する核および細胞質eIF4E RNPの機能性の主な差異が示唆される。mRNA排出のeIF4E依存性促進は、細胞が転写の再プログラム化前のストレスおよび/または成長状態に応答する、迅速な応答システムを提供することができる。
本願発明者らは、このプロセスがシクリンD1 mRNAだけに限定されているわけではなく、成長に関与する他のmRNAもODC(Rousseau et al., 1996)およびその他の多く(非公開データ)を含めてこのように制御されうると予測しているeIF4EがシクリンD1などの成長促進mRNAの搬出を促進する能力によって、細胞成長促進プログラムのスイッチを入れて、成長制御ネットワークの重要な中心点としてeIF4Eを配置することができる。PML(本願明細書)などのeIF4E制御タンパク質、およびeIF4Eに直接結合するPRHなどの核ホメオドメインタンパク質は、eIF4Eの上流で作用するようにうまく配置されている。このネットワーにもeIF4E結合タンパク質(4EBPs;
Sonenberg and Gingras, 1998)による翻訳の重要な制御が含まれているが、本願発明者らの発見から、これらの輸送および翻訳ネットワークは完全に重複しているわけではないことが示唆される。たとえば、シクリンD1
mRNAは輸送レベルではeIF4Rに感受性があるが、翻訳レベルではない(Rousseau et al., 1996)。対照的に、ODC mRNAはどちらのレベルでもeIF4Eに感受性がある(Rousseau
et al., 1996)。シクリンD1 mRNAなどのODC mRNAは、4E-SE要素を含有する(非公開データ)。PMLはこの核ネットワークの重要な陰性調節因子であるようで、多様な成長促進タンパク質の産生を同時に停止させ、eIF4E媒介成長および形質転換を阻害するようである。これらの活性は、m7Gキャップおよび4E-SEの両方によるeIF4E RNA認識に依存する。特定のmRNAの搬出のeIF4Eによる促進は、細胞における成長制御の興味深い新たな点であり、無調整である場合にヒト癌に寄与しうる新たな制御経路である。
例4 eIF4Eは細胞増殖を支配するRNAレギュロンの中心点である
要約
原核生物翻訳開始因子eIF4Eは細胞周期の進行のほぼ全段階に影響を与える、RNA制御における重要な中心点である。具体的には、eIF4Eは、細胞周期の進行に関与する数種類の遺伝子のmRNA搬出およびときどき翻訳を協調的に促進する。これらmRNAに共通の特徴は、eIF4E感受性要素(4E-SE)という名称の、3’UTRの構造的に保存された約50ヌクレオチドの要素である。この要素は、キャップしたmRNAのeIF4E核小体への局在化、核にeIF4E特異的RNPの形成、およびeIF4E依存性mRNA搬出に十分である。これらの研究から、翻訳およびmRNA搬出におけるeIF4Eの役割は顕著で、mRNAにある異なる配列要素と独特なRNPの形成に依存している。さらに、eIF4E依存性mRNA搬出は、進行中のRNAまたはタンパク質合成には依存しない。NXF1依存性のmRNAの塊の搬出とは異なり、eIF4E依存性mRNA搬出はCRM1媒介性である。これらのデータは、eIF4Eの増殖性および発癌性の分子機序に新たな展望を提供する。
序文
RNAレギュロンは、真核細胞が遺伝子発現を調節する手段として提唱された。遺伝子の調節された制御がゲノム組織によって達成されている原核生物とは対照的に、真核生物は、転写後レベルにおいて、同一の生物学的プロセスに関与するmRNAのサブセットの制御を、RNPの分離したサブセットの組成物と活性を操作することによって調節する。RNA局在化の郵便番号のような、「制御のための未翻訳配列要素」(USERコード)と命名された関連RNA配列は、転写後制御の異なるレベルに関与するさまざまな制御タンパク質と特異的に会合するために用いられると仮定されてきた。mRNA核搬出は、このように制御されうる制御の1レベルである。もともと、mRNA搬出は、すべてのmRNAが配列特異的な特徴に関係なく核から細胞質へ輸送される一般的なプロセスとして考えられた。さらに最近の発見では、mRNA搬出はRNA代謝における他のイベント、特に転写およびスプライシングと調節することができ、そのため、転写物の核の歴史が標的mRNAの細胞質の行く末を調節できることが示唆されている。このように、核搬出は、mRNP組織化によるコンパートメント化によって制御し、機能クラスのmRNAの調節された搬入と、増殖、分化、および発達などの生物学的プロセスにおけるその機能を結びつけることができる。
真核生物翻訳開始因子eIF4Eの研究は、mRNAのサブセットの発現に差別的に作用する因子の例を提供する。一般的な5’メチル-7-グアノシン(m7G)キャップ構造によってすべての転写物と会合しても、多くのグループが、eIF4Eの過剰発現はタンパク質発現の全体的な増加を引き起こさないということを示した。細胞質では、eIF4E感受性だと見なされるmRNAは、そのタンパク質レベルが、他のmRNAよりも多くeIF4Eによって調節される。この感受性の原因は、これらの転写物の5’UTRの複雑さである。最高で68%のeIF4Eが、酵母からヒトまで幅広い種の核に認められている。ここで、eIF4Eの過剰発現はシクリンD1の搬出を増加させるが、GAPDH mRNAでは増加しない。核のシクリンD1 mRNAとeIF4Eの特異的な会合は、m7G キャップ、およびIF4E感受性要素(4E-SE)とよばれる3’ UTR の小要素を必要とする。
eIF4Eの過剰発現は、組織培養物における発癌性形質転換、動物モデルの癌、および多数のヒト癌における予後不良と相関する。いくつかのエビデンスは、eIF4EのmRNA搬出機能はその発癌性に寄与することを示唆している。たとえば、シクリンD1 mRNA搬出は、ヒト白血病の特定の亜型では上方制御されている。これらの標本は、通常、高レベルのeIF4Eを含み、その大半が核にある。また、eIF4E依存性mRNA搬出の阻害物質、前骨髄急性白血病タンパク質(PML)およびホメオタンパク質PRHは、核の中でeIF4Eに結合し、eIF4E依存性mRNA搬出およびeIF4E媒介発癌性形質転換を阻害する。さらに、変異原性の研究は、mRNAのeIF4E活性と、細胞を発癌性に形質転換する能力を強く関連づける。
シクリンD1はeIR4Eの増殖性とそのmRNA搬出機能を関連づける細胞周期に主要な役割を果たしているが、eIF4Eは、その増殖能力を誘導するために、他の成長促進mRNAの発現も協調的に変化させることができる。この研究は、細胞周期の進行に関与するいくつかのmRNAはeIF4E依存性mRNA搬出の標的でもあって、eIF4E依存性mRNA搬出のレベルで制御されるmRNAのサブセットは細胞質で選択的に翻訳されるものとは異なることを示す。本願発明者らは、eIF4E感受性転写物の搬出のための基礎をなすUSERコードを同定した。このコードは、これらRNAの細胞内分布とともに、関連するeIF4E RNAの形成にも必要とされる。興味深いことに、4E-SE USERコードは、配列に基づく要素ではなく、構造的に保存されたコードである。最後に、eIF4E依存性mRNA搬出は、mRNA塊ではなく代替的なmRNA搬出経路によって生じる。これらの結果は、eIF4E媒介腫瘍原性の新規のパラダイムの基礎を提供する。
材料および方法
試薬および作成物: pcDNA3.1LacZベクタ(インビトロゲン社)のキメラ作成物を、LacZの3’のコード領域に配置した。シクリンD1最小4E-SE(c4E-SE)は、5’末端のEcoRIまたはXbaI制限部位を含有するプライマ、およびテンプレートとしてLacZ3’UTR作成物(Culjkovic et al, 2005)を用いて増殖した。同じアプローチを、Pim-1作成物のクローニングに用い、pRBK-Pim-1をテンプレート(Nancy Magnuson (Hoover
et al., 1997)からの寄贈)として用いた。プライマ配列は、補足表1に記載する。TetONシステムには、EcoRIおよびXbaIを用いて、キメラLacZ作成物をpTREMycベクタ(クロンテック社)にクローニングした。pcDNA2Flag-eIF4E、pMV、pMV-eIF4E野生種または突然変異体、pLINKSV40-PML,
MSCV, MSCV-eIF4E WT または突然変異体、およびバクテリア発現作成物は、既述されている(Cohen et al., 2001、
Culjkovic et al., 2005、 Topisirovic and Borden, 2005、 Topisirovic et al., 2003b)。使用した試薬は、他に記載のない限り、すべてシグマ社の分析級だった。
抗体: 免疫ブロッティング用の抗体: mAb 抗PML (5E10 (Stuurman et
al.、1992))、mAb 抗eIF4E (BD ファーミンゲン社)、mAb 抗シクリンD1 (BD ファーミンゲン社)、mAb 抗Xpress (インビトロゲン社)、ウサギpAb 抗シクリンE1 (M20、サンタクルズバイオテクノロジー社)、mAb 抗GAPDH (MAB374、ケミコン社)、mAb 抗c-Myc (9E10 サンタクルズバイオテクノロジー社)、ウサギpAb 抗シクリンA (C-19、サンタクルズ社)、ウサギpAb 抗ニブリン(セルシグナリング社)、mAb 抗Pim-1 (19F7 サンタクルズ社) and mAb シクリンB1 (GNS1 サンタクルズ社)。
細胞培養および形質移入: eIF4EおよびPMLを安定に形質移入したNIH3T3およびU937細胞は記述されるとおりである(Topisirovic et al., 2002; Topisirovic et
al., 2003a)。U937細胞を用いて、NIH3T3細胞に発現しない内在性Pim1を分析した。2Flag-eIF4EおよびTetONシステムを有するかまたは有さないLacZ LacZ/LacZ-4E-SEをU2OS細胞に安定に形質移入した。NXF1欠損のために、U2OS細胞にリポフェクタミン2000および10nm siRNA 二本鎖HSC.RNAI.N006362.1.3
(IDT) を製造者の指示に従って形質移入した。細胞は、形質移入から72時間後に分析した。アクチノマイシンD、シクロヘキシミド、およびレプトマイシンBはすべて培養級(シグマ社)だった。
eIF4Eの免疫精製およびRT-PCR: 免疫精製はすでに公表されたとおりである(Culjkovic et al., 2005)。リアルタイムPCR分析を、Mx3000PTM サーマルサイクラ(ストラタジーン社)で Sybr Green PCR Master
mix (ABI) を用いて行い、データの解析はMxProソフトウェア(ストラタジーン社)で行った。すべての条件は既述されている(Culjkovic et al., 2005)。すべての計算は、Applied Biosystems User
Bulletin #2に記載される相対標準曲線法を用いて行った。
免疫精製したRNAのディファレンシャルディスプレイは、RNAimage TMキット(ジーンハンター社)を用いて、製造者の指示に従って行った。
ディファレンシャルディスプレイに用いるSNAAPプロトコルは、記述の通り行った(Trifillis et al., 1999)。
ウェスタンブロットは、記述の通り行った(Topisirovic et al., 2002;
Topisirovic et al., 2003a)。
細胞分画化とノーザン分析: 分画化とRNA単離は記述の通り行った(Lai and Borden, 2000; Topisirovic et
al., 2002)。U6およびtRNALysのノーザンブロット分析用のプローブも既述されている(Topisirovic et al.,
2002)。
免疫蛍光とレーザスキャン二焦点免疫顕微鏡: 実験は、既述の通り行った(Cohen et al., 2001; Topisirovic et al.,
2002)。蛍光の観察には、指示の通り、吸光波長488、543または405 nm(室温)で励起したLSM 510 メタ (カール・ツァイス・イェナ) 倒立レーザスキャニング二焦点顕微鏡で、100倍光学的ズームと3または4倍デジタルズームを用いた。すべてのチャンネルを別々に検出し、チャンネル間のクロストークは観察されなかった。二焦点顕微鏡像は、細胞の平面の単一光学切断面をあらわす。
In situハイブリダイゼーションは、既報の通りで(Culjkovic et al., 2005)、ニック翻訳ビオチン-11-dUTP標識プローブを用いた(ニックトランスレーションキット、ロシュ社)。プローブはCy3 IgG分画マウスmAb抗ビオチン(1:100、ジャクソンイムノリサーチ・ラボラトリーズ社)を用いて検出した。
EMSA分析は、以下のような修飾を用いて、公表された通り行った(Trifillis et al., 2003)。20-50μgの核ライセートを32P- 3’ 末端標識LacZ、LacZ-c4E-SEまたはLacZ-p4E-SE転写物(~50000 cpm)で、5mg 酵母tRNA (シグマ社)および3mM MgCl2 を添加した25μl NET-2バッファの中で、30分間、室温でインキュベートし、2mg/mlのヘパリンを加えた後でさらに15分間、インキュベートした。競争研究のために、非標識競合RNAを10分間、核ライセートで予めインキュベートしてから、標識ラベルを加えた。スーパーシフト実験のために、核ライセートをmAb 抗eIF4E(BDファーミンゲン社)で、15分間予めインキュベートしてから、標識RNAを加えた。免疫除去したライセートは、ウサギpAb抗eIF4E(アブカム社)を有するIPに由来した。すべてのmRNAはin vitroで、mMessage mMachineTM T7 キット(アンビオン社)を用いて転写し、3’末端標識は [32P]pCpおよびT4 RNA リガーゼ (アマシャム社)で行った。サンプルは、1X Tris-Borate-EDTA バッファを用いて、250Vで2時間、5%未変性(19:1)ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動を行い、分離した。
UV架橋: 50μgの核ライセートを、EMSAと同一の条件を用いて、放射標識プローブ(1-2x105cpm)でインキュベートした。ヘパリンでインキュベーションした後、サンプルを氷上に置いて、ストラタリンカーUV 1800(ストラタジーン社)でUV照射を15分間行った。架橋RNA:タンパク質複合体を、10U RNase Aと10U RNase T1 で15分間、37℃で処理した。30μl 2xSDS サンプルバッファを加え、10分間95℃に加熱して、反応を停止させた。サンプルを10または12% SDSポリアクリルアミドゲルに乗せ、50Vで16時間、室温で分離した。
RNaseマッピング分析を、記述されたとおりに(Clever et al., 1995)、製造者の指示に従って(アンビオン社)行った。簡単に説明すると、約0,5-1x105 cpm の32P-5’末端標識c4ESEまたはp4ESE RNA オリゴプローブ(IDT)を3μg酵母tRNAと混合し、1、0.1または0.01U RNase V1 (アンビオン社)で室温で15分間、1、 0.1 または 0.01U RNase A(アンビオン社) で室温で5分間、1、0.1または0.01U RNase T1 (シグマ社)で室温で15分間、1、0.1または0.01U RNase T2 (インビトロゲン社)で室温で5分間、またはアルカリバッファで95℃で1、2または5分間(アルカリ加水分解)でインキュベートした。EtOH/NaAc 沈降で反応を停止させた。サンプルは、1xTris/Borate/EDTA バッファ中で6%ポリアクリルアミドゲル-8M尿素ゲル上で分解した。
結果と検討
eIF4Eは多様な転写物のmRNA輸送を変化させる
eIF4E依存性mRNA輸送は、eIF4Eが遺伝子発現を制御して、成長および増殖を調節するという広範囲にわたったメカニズムである可能性がある。本願発明者らは、シクリンD1以外のmRNAがeIF4E依存性の様式で制御されているのかどうかを決定したいと考えた。核ライセートを用いて、本願発明者らは、免疫沈降またはGTプルダウンベース法(Trifillis et al., 1999)を用いた組換えeIF4Eによって内因性eIF4Eと会合したmRNAを分知り、ディファレンシャルディスプレイで同定した。同定された遺伝子の多くが細胞周期の進行に関与している場合、eIF4E免疫沈降した分画もこのプロセスに関与することが知られている他の遺伝子と、既知の成長阻害mRNAについてテストした(表4)。標的の同定はすべて、eIF4E免疫沈降、および定量的または半定量的RT-PCR分析によって確認した(図8a)。重要なことに、表4に提供されたリストは、完全にすべてを包含することを目的としておらず、標的mRNA群のサンプル採取を代表している。なぜなら、ディファレンシャルディスプレイの結果では、何百ものmRNAはこのように制御されている可能性が高いことを示唆しており、ここで、本願発明者らはこれらのサブセットしか同定していなかったからである(データ非表示)。
細胞周期の進行と生存において作用する遺伝子産生物用のeIF4Eコードの核分画と物理的に会合するmRNAの多くは、eIF4Eと会合する生理学的機能と一致する。重要なことに、eIF4Eは、テストしたすべてのmRNAと結合しない(表4)。たとえば、eIF4Eは、PMLまたはp53などの成長の陰性制御因子、またはGAPDH、βアクチン、もしくはαチューブリンなどのハウスキーピング遺伝子に相当するmRNAと会合しない。また、この特異性は、翻訳レベルにおいて、mRNAの制御への感受性の単純な反映ではない。それは、翻訳レベルのみで感受性のあるmRNA(VEGF
(Clemens and Bommer, 1999)など)はeIF4Eの核分画と会合しないからである(表4)。 eIF4E免疫沈降分画において認められないmRNAを、本願発明者らの核ライセートでは容易に検出できたということは重要である(表4)。IPと抗eIF4E
mAbの推定される効率は最高80%であることに留意されたい。
eIF4EはmRNAのm7Gキャップと会合するので、本願発明者らは、これが核分画のmRNAとeIF4Eの会合に必要なのかどうかを調べた(図18a)。eIF4Eは核分画から免疫沈降させ、mRNAは過剰なm7GpppGまたはeIF4Eに結合しない類似体GpppGで処理した。テストしたすべてのmRNAは、キャップ依存的にeIF4Eと会合する。すなわち、m7GpppGは結合について競合するが、GpppGはしない。これらのデータは、核でのeIF4EとmRNAの会合はm7G
キャップ依存性であることを示唆する。
eIF4EのmRNAとの物理的会合は大量のmRNA搬出に相関する
核分画の中でeIF4EがmRNAと会合する能力と、eIF4E依存性mRNA搬出を促進するeIF4Eの過剰発現の能力の相関があるかどうかをテストするために、同定したmRNAの細胞内分布をeIF4E過剰発現の関数として分析した(表5)。eIF4Eまたは適切な突然変異体を過剰発現するU937およびNIH3T3細胞を分画化して、mRNAレベルをリアルタイムPCRまたはノーザン分析法でモニターした。eIF4E過剰発現は、細胞質分画におけるeIF4E感受性mRNAの量を、ベクタ対照に対して増加させる(表5)。反対に、核分画内でeIF4Eと会合しなかった転写物は、その搬出をeIF4E過剰発現によって変化させなかった(表5)。予想通り、βアクチン、GAPDH,
U6snRNA and tRNALysの細胞内分布は影響されなかった(表5)。総mRNAレベルに変化はない(データ非表示)。常に、キャップ結合部位における突然変異(W56A)のためにeIF4EがこれらのmRNAに結合できない場合、これらのmRNAの細胞内分布は変化しない(表5)。さらに、翻訳では作用しないがシクリンD1
mRNA搬出を促進する背面突然変異体(Sonenberg and Gingras, 1998; Topisirovic et al., 2002)も、その他のeIF4E感受性mRNAの搬出を促進する(表5)。したがって、すべての感受性のあるmRNAは、核のeIF4Eとの相互作用に、eIF4Eのm7G
キャップ結合活性を必要とするが、背面のw73は必要としないようである。重要なことに、円偏光二色性研究では、W73AおよびW56A突然変異体は野生種eIF4Eと区別できない構造を有していることが示唆されている(Kentsis
et al., 2001)。
mRNA搬出のeIF4E依存性の促進の結果の一つは、これらのmRNAの翻訳機構への高い有用性で、それによってタンパク質レベルが高くなる。したがって、本願発明者らは、同定された遺伝子のサブセットのタンパク質レベルがeIF4Eによって高くなるかどうかを調べた。mRNA搬出の促進と一致して、野生種eIF4EまたはW73A突然変異体の過剰発現は、調べた遺伝子のサブセットのタンパク質レベルを上昇させる(図18b)が、キャップ結合突然変異体(W56A)が過剰発現する場合にはタンパク質レベルは上昇しない。重要なことに、野生種eIF4EとW73AおよびW56A突然変異はすべての実験において同様のレベルまで発現した(図18b)。
これらのmRNAが同じ機序で制御されるかどうかを明らかにするために、標的mRNAの搬出への、eIF4E依存性シクリンD1 mRNA搬出(Cohen et al., 2001;
Topisirovic et al., 2002)の阻害物質であるPMLの作用を調べることが重要だった。本願発明者らは、PMLを過剰発現する細胞におけるODC、c-Myc、シクリンD1およびシクリンE1 mRNAの搬出の減少(データ非表示)およびタンパク質レベルの低下を観察した。また、PMLはeIF4E、βアクチン、またはGAPDHタンパク質のレベルを低下させず(図18c)、PMLが過剰発現した場合にも、これらの転写物のいずれかの総mRNAレベルには変化がなかった。したがって、PMLはeIF4E依存性mRNA搬出の阻害物質として作用し、シクリンD1 mRNA搬出の阻害因子としては働かない。
まとめると、eIF4Eの核分画とmRNAの物理的な会合は、核搬出の増加と強い相関がある。細胞質では、これらのmRNAは、翻訳レベルにおいてeIF4Eによる調節の対象であるかもしれず(つまりODC)、またはそうでないかもしれない(つまりシクリンD1)。したがって、核レベルでのeIF4Eによる調節は、細胞質レベルではそのような調節を排除もしないし、必要ともしない。
eIF4E依存性mRNA搬出のためのRNA USERコード
本願発明者らは以前、mRNA搬出レベルでのeIF4Eによる制御に対するシクリンD1と対応するキメラLacZ作成物の感受性を増加させる、シクリンD1の3’ UTRにおける、100ヌクレオチドeIF4E感受性要素(4E-SE)を同定したため(Culjkovic et al., 2005)、本願発明者らは、表4で同定したその他の標的RNAの4E-SE様要素を同定するための大規模バイオインフォマティクス分析を行った。配列分析によって、4E-SEはシクリンD1転写物に十分に保存されていることが示唆されたが(トリからヒトまで)(Culjkovic et al., 2005)、シクリンD1と本願明細書で同定されたその他のeIF4E感受性転写物を比較しても、共有する配列相同性を明らかにできなかった。したがって、本願発明者らは、4E-SE要素が構造的に保存された要素である可能性を調べた。
標的mRNAに共通の要素を同定するために、本願発明者らは、シクリンD1 4E-SEと新たに同定された標的mRNAの一つ、Pim-1に由来する4E-SEを比較することにした(本願発明者らはPim-1 3’UTRから機能的4E-SEまでの領域をマッピングした。図19c)。本願発明者らはシクリンD1の4E-SEとPim-1の4E-SEの最小約50ヌクレオチド領域をマッピングした(図19a)。このような最小ドメインを、非相同性LacZ mRNAに融合させて、eIF4Eで免疫沈降し、mRNA搬出をeIF4Eで促進する(図19c)。したがって、本願発明者らは、これら両方の最小約50ヌクレオチド要素は機能的4E-SEであるということを示す。配列の相同性は観察されなかったが、両方の要素とも、2つの予想された隣接するステムループ対を含有する。
本願発明者らは、この2つの機能的4E-SEが、予想されたステムループ構造などの二次構造の特徴を保存していたかどうかを明らかにするために、ヌクレアーゼ分解法を用いた。重要なことに、これらの研究によって、どちらの要素も同様の二次構造に折り畳まれることが明らかになった。本願発明者らは、この要素を隣接ステムループ対とよぶ(図19aおよび19b)。一貫して、生物物理的分析から、Pim-1およびシクリンD1 4E-SEが同様の生物物理的特性を有することが示唆される。たとえば、シクリンD1およびPim-1 4E-SEの精製されたRNAオリゴマを用いた熱融解曲線の円偏光二色分析から、異なるTmを有する複数の構造要素の存在と一致する多層的なふるまいが明らかになった。したがって、Pim-1およびシクリンD1 4E-SEの両方が、2隣接ステムループ要素からなる、類似の二次構造を有する。
本願発明者らがこれらの研究で遭遇した初期の問題は、ステムループ要素の存在がシクリンD1とPim-1の3’ UTRに共通だということである。シクリンD1単体では、PatSearchプログラム(Grillo
et al., 2003)が10個の潜在的なステムループ構造対を予想しているが、本願発明者らによる以前の研究では、eIF4E感受性を付与することができるシクリンD1
3’ UTRの一部分だけが、上に定義した4E-SEであると示唆している(Culjkovic et al., 2005)。同様に、Pim-1 3’ UTRは2つの予測された隣接ステムループ対を含有しているが、一つだけが機能的4E-SEである。したがって、本願発明者らは、Pim-1およびシクリンD1
4E-SEの二次構造を比較し、機能的4E-SEを他のステムループ対から区別することができるような特徴を決定した。二次構造の目視検査から、AとUヌクレオチドのセットが保存されていることが明らかである(UX2UX2A、図19aでハイライトされた部分)。重要なことに、これらのヌクレオチドのパターンは、シクリンD1またはPim-1
3’ UTRに認められた他のステムループ対のいずれにも認められなかった。したがって、これらは、類似する二次構造に折り畳む可能性を有する他の要素から、機能的4E-SEを区別するために用いることができる特徴である。
さらなる分析から、ヌクレオチドの保存パターンを有するステムループ対構造も、本願明細書で同定されたその他のeIF4E感受性標的のすべてに存在することが示された。重要なことに、eIF4Eに感受性がないmRNAはいずれも、機能的4E-SEに認められるヌクレオチドの保存パターンを有するステムループ対を含有しない。まとめると、本願発明者らは、2隣接ステムループ対からなり、eIF4E感受性を付与する構造モチーフを同定した。重要なことに、このモチーフ配列には、機能的4E-SEを他の対をなすステムループ構造から区別するために用いることができる4E-SEの特徴が存在する。
4E-SE はeIF4E核小体との局在化に十分である
4E-SEがeIF4E核小体のRNAの郵便番号として働いたかどうかを評価するために、Pim-1またはシクリンD1 4E-SEのいずれかとのLacZキメラ作成物を、U2OS細胞に発現させた。どちらのキメラmRNAもeIF4E核小体と共局在化する(図19d)。4E-SEの欠如下において、LacZ転写物のeIF4E核小体への局在化は観察されない(図19d)。重要なことに、LacZ-4E-SEは、陰性レギュレータPMLを含有するeIF4E小体と会合しない。これは、2種類の核小体、PMLと共局在化するものと、内在性シクリンD1 mRNAと共局在化するものがあることを示す、本願発明者らの過去の研究と一致する。したがって、内在性シクリンD1 mRNAは、PMLを含まないeIF4E核小体と共局在化する(Culjkovic et al., 2005)。このように、LacZ-4E-SE 転写物および内在性mRNAは同様にふるまう。
これらの実験は、4E-SEが、残りのmRNAには関係なく、キャップ付加したmRNAをeIF4E核小体に局在化させるのに十分だということを実証する。さらに、Pim-1およびシクリンD1の4E-SEは、局在化活性に関して機能的に同等である。したがって、4E-SE はeIF4E核小体に局在化するためのRNAのジップコード(郵便番号)を提供する。
4E-SEはeIF4E依存性複合体をつくる
4E-SEが単に局在化シグナルとして機能するかどうか、またはeIF4E依存性mRNPの形成に作用するかについて確立するために、本願発明者らはEMSAアッセイを行った。LacZ-cyclin D1-4E-SE
(c4E-SE) とLacZ-Pim-1-4E-SE
(p4E-SE)の両方を用いて、これらの複合体の集合体が4E-SEそのものに依存し、いずれかの4E-SEに特異的な特性に依存するわけではないということを確認するために、研究を実施した。RNAプローブは、32Pで 3’末端を標識し、m7Gでキャップ付加した。6kD可溶性タグを有するマウスeIF4E(m4E)か、またはタグを付けないヒトeIF4E(h4E)のいずれかを加えると、両方のLacZ-4E-SE 作成物のための遊走速度の遅い種の形成が引き起こされた(図20aおよび20b)。重要なことに、核ライセートの付加によって著しく高分子量の複合体が形成され、eIF4E以外のタンパク質が存在しそうだということが示唆された。複合体サイズは、両方の4E-SE作成物ともほぼ同一である。低温の競合物4E-SE RNAを付加するとシグナルが低減し、標識4E-SE含有転写物に競合する4E-SE要素と一致する(図20e)。核ライセートを、4E-SEを含まないLacZ転写物に加えても、これらの複合体は形成されなかった(図20b)。
核ライセートから形成された4E-SE複合体がeIF4Eに依存しているかどうかを明らかにするために、EMSAアッセイを、eIF4Eが欠如した核ライセートを用いて、免疫沈降で行った。本願発明者らは、ライセートはeIF4Eが少なくとも80%欠如していたと推定した(データ非表示)。eIF4Eが免疫除去されたライセートは、高分子量複合体を産生しなかった(図20b)。精製されたタグ付きeIF4Eを免疫除去したライセートに加えたところ、その複合体は部分的に回復した。これは予期しうる現象で、なぜなら、高eIF4E免疫沈降中に除去されたその他の因子ではなく、eIF4Eだけが再導入されたためである。したがって、eIF4Eと関連する因子は、これらのRNPの形成に必要である。さらに、eIF4Eに対する抗体によって、核ライセートから形成した複合体のスーパーシフトが生じた(図20b)。同一の結果が、LacZ-p4E-SEについても認められた。最後に、p4E-SEの第一のステムループ(CACに突然変異したG10C11G12
)が阻害した突然変異体は、複合体形成に欠陥がある(図20c)。したがって、4E-SE要素は、eIF4Eと4E-SEの構造に依存する複合体を形成する。
これらの複合体の特徴付けをさらにするために、LacZ-4E-SE 作成物をUV架橋し、その後、RNase分解とSDSゲル電気泳動法を行った(図20d)。EMSA研究の場合、転写物はm7Gのキャップを付加し3’末端を標識して、精製eIF4Eまたは核ライセートの添加が架橋複合体のサイズに与える作用を監視した。mRNAは3’末端標識されているため、精製eIF4Eのみによるキャップの結合は、残りのRNAをRNase分解から保護するには十分ではなかった。核ライセートを加えると、分子量の実質的なシフトが生じる。重要なことに、LacZ-c4E-SE およびLacZ-p4E-SE は同様のサイズの複合体を形成する。75乃至90kDの3種類の別々の種が観察される(矢印で表示)。同一の複合体はeIF4Eが欠如している核ライセートにはなく、これらがeIF4Eの形成に必要であることが示唆される。一貫して、核ライセートをm7GpppG キャップ類似体(ncキャップ)で処理すると、75-90kDの範囲の複合体も阻害する。これらの種は、4E-SEを含まないLacZ対象には欠如している。約64kDの低バンドはすべての実験で存在し、一部の一般的なRNPの形成はeIF4Eおよび4E-SEには直接関与していないということを示唆するようだ。まとめると、本願発明者らは2種類の複合体を観察した。eIF4Eの欠如下においても形成し、キャップにも4E-SEにも依存しないもの(星印参照)と、eIF4E、m7Gキャップ、および構造的に無傷な4E-SEに依存する第2の種類である。 EMSAを併用したUV架橋研究では、4E-SEはmRNAの小体へのジップコード局在化(図19d)、およびeIF4E核mRNAのUSERコード(図20)の両方として働くことが示唆される。
eIF4E依存性mRNA搬出は、進行中のタンパク質またはRNA合成には依存しない
本願発明者らは、eIF4E依存性mRNA搬出に対する、新規のタンパク質合成と転写の重要性を調べた。タンパク質合成を阻害するために、細胞を100μg/mlシクロヘキシミドで1時間処理した。(図20a)。さらに、内在性シクリンDa mRNAの搬出は、シクロヘキシミド処理によって調節されなかった(データは非表示)。同様に、アクチノマイシンD処理(10μg/ml)はこれらのmRNAの搬出に影響しなかった(図21a)。シクロヘキシミド処理は搬出を調節しなかったが、まだ、4E-SEがeIF4E依存性でポリソーム負荷を調節する可能性はある。したがって、本願発明者らは、4E-SEとeIF4E過剰発現の機能として、LacZ のポリソームプロフィールを監視した。LacZ およびLacZ-c4E-SEのプロフィールは区別がつかず、eIF4Eの過剰発現によって変化しない(データは非表示)。これは、eIF4E過剰発現がシクリンD1 mRNAポリソーム負荷を変化させないという発見(Rousseau et al., 1996)と一致している。eIF4E依存性mRNA搬出が進行中のタンパク質合成に依存せず、4E-SEがポリソーム負荷を変化させない場合、mRNA搬出と翻訳におけるeIF4Eの機能は切り離せないようである。
本願発明者らは以前、LacZ-c4E-SE 転写物は、数時間アクチノマイシンDを使っても、LacZ転写物と比較した安定性は変化しなかったということを実証した(Culjkovic et al., 2005)。しかし、mRNAのターンオーバが実質的に時間単位よりも速いかもしれない可能性はまだある。したがって、本願発明者らはLacZおよびLacZ-4E-SE TetON誘導性細胞株を作成し、ドキシシクリンを加えた直後に、これらのmRNAの安定性を調べた。4E-SEがあると、短時間(分)または長時間(時間)のいずれの単位でも、LacZ転写物の安定性は実質的に変化しない。
eIF4E依存性mRNA搬出経路は過剰の4E-SEで飽和する
本願発明者らは、4E-SEが搬出に必要なら、LacZ-c4E-SEまたはLacZ-p4E-SEの過剰発現は、4E-SE特異性搬出機構と競合することによって、mRNAを含有する他の(内在性)4E-SEの搬出を、特異的に阻害するはずであると判断した。本願発明者らのTetON誘導性LacZ、LacZ-p4E-SEまたはLacZ-c4E-SE作成物を用いて、本願発明者らは、キメラmRNAの搬出を、総mRNAレベルとして監視した。初期の時点では、LacZ mRNAのレベルが低い場合、4E-SE搬出は、核キメラmRNAに対する細胞質の割合が高く、より効率的である。これらのmRNAのレベルが上昇すると、4E-SE搬出は飽和して、核キメラmRNAに対する細胞質の割合は低下する(図21b)。同時に、内在性シクリンDa mRNAの搬出は、4E-SEキメラmRNAの発現によって競合(障害)された。さらに、VEGF mRNA の搬出は影響されず、mRNA搬出レベルではeIF4Eへの不感受性と一致した(図21b)。したがって、4E-SE要素の過剰発現は、4E-SE特異的搬出機構の競合を生じる。
4E-SE媒介搬出はNXF1には依存しないがCRM1には依存する
最も良く記述された細胞mRNA搬出経路は、バルクmRNA搬出を媒介すると考えられているNXF1/p15 ヘテロ二量体が関与ているので(Cullen, 2000; Cullen,
2003a)、4E-SE
mRNA搬出のNXF1への依存性を調べた(データは非表示)。過去の研究および本願発明者ら自身の研究とも一致して、eIF4Eは、細胞の核分画において、NXF1で免疫沈降しない((Lejeune et al., 2002)およびデータは非表示)。しかし、これは、eIF4EがNXF1と物理的に会合しないというNXF1依存性機序を排除することはない。4E-SE搬出へのNXF1の関与をさらに調べるために、フラッグでタグを付けたNXF1またはNXF1/p15過剰発現細胞を、抗フラッグ抗体で免疫沈降させ、LacZまたはLacZ-c4E-SE mRNAをリアルタイムPCRで監視した(図22a)。NXF1分画の中で濃縮されたLacZ mRNAと対照的に、LacZ-c4E-SE mRNAはむしろ排除されるようである。このような結果は、p15の有無に依存しない(データは非表示)。
本願発明者らは、これらの研究を拡張して、NXF1発現のノックダウンがLacZ-c4E-SE 搬出に与える影響を調べた(図21b)。NXF1レベルが実質的に低下しても、eIF4Eの過剰発現はLacZ-c4E-SE転写物の搬出を促進した。これは、過剰発現したeIF4Eの存在下におけるLacZ-c4E-SE
搬出がNXA1に依存しないことを示唆する。4E-SEの欠如下において、LacZ mRNA細胞質/核比はNXF1の欠乏によって実質的に低下する。LacZタンパク質の分析によって、上述の発見が確認された(図22c)。予想通り、siRNA処理によってNXF1レベルは低下したが、スクランブルした対照による処理ではそうならなかった(図22c)。さらに、eIF4Gのレベルは変化せず、eIF4Gレベルを低下させるにはより長時間のsiRNA処理が必要であることを示した研究(Herold
et al., 2001)と一致した。したがって、4E-SE含有転写物の搬出は、NXF1経路には依存しない。これは、4E-SE転写物のサブセットがこの経路を移行し、この経路は単純に搬出だけのために必要なわけではないという可能性を否定しない。
たくさんのRNAがCRM1経路を通って搬出されるため、本願発明者らはこの可能性を、CRM1の特異的阻害物質、レプトマイシンB(LMB)を用いて調べた(Cullen, 2003a; Cullen,
2003b)。過剰発現eIF4EとLMB処理に応じたLacZまたはLacZ-c4E-SE mRNAの搬出を、リアルタイムPCRを用いて監視した(データは非表示)驚くことに、LMBはLacZ-4E-SE 作成物の搬出を抑制したが、LacZ またはβアクチン転写物については抑制しなかった。LMBは18S rRNA の回復を生じ(図22c)、これは、リボソームRNA搬出がCRM1を必要とすることを示した過去の研究(Moy and Silver, 2002)と一致する。
eIF4Eおよび4E-SE含有mRNAに関与する新規搬出経路
それが記述されて以降、eIF4E依存性搬出の基礎メカニズムは決定されていない(Rousseau et al., 1996)。eIF4Eによる搬出をバルクmRNAに使用された経路と区別する、いくつかの特徴的な性質がある(図23にまとめる)。1) 4E-SEはeIF4E経路の搬出を飽和させるが、バルクmRNAの搬出には影響しない(図21b)、2) LMBはeIF4E依存性搬出を阻害する(図21d)、および3) m7GキャップはeIF4E経路に必要とされる(図18b、表V)。興味深いことに、eIF4E経路とUsnRNA搬出の間には多くの類似点があり、どちらもCRM1依存でm7Gキャップを必要とする。しかし、eIF4E経路と対照的に、UsnRNA搬出は、CRM1へのアダプタとして働くPHAXへの複合体においてCBCに結合したRNAに依存する(Cullen, 2000; Cullen,
2003a; Cullen, 2003b; Ishigaki et al., 2001; Izaurralde et al., 1995)。
一般に、CRM1媒介mRNA搬出は、搬出されるRNAの種類、つまり大きいrRNA、小さいrRNA、5S rRNA、またはUsnRNAに依存する、共因子を必要とする(Cullen, 2003a; Cullen,
2003b)。本願発明者らによる過去の研究では、eIF4Eの過剰発現は、CRM1に依存する18Sもしくは28S rRNA、またはエクスポーチン-tレセプタを用いて搬出するtRNAの搬出を調節しないことを示唆している(Sarkar and Hopper, 1998)。したがって、本願発明者らは、eIF4E、または4E-SE RNPと会合する因子の一部のサブセットは、eIF4E依存性経路に特異的なCRM-1アダプタタンパク質を必要とすると仮定する。さらに、これらのアダプタは、限られた量で、および4E-SE高レベルによるかまたはeIF4Eの免疫除去によって滴定可能な状態で発見される。そのようなアダプタタンパク質を同定するのは、将来重点的に研究されなければならない領域であろう。
eIF4E依存性mRNA搬出を理解する上での難問は、eIF4Eは、生理学的なeIF4Eレベルの元でもまだ搬出できるmRNAの搬出を刺激するという観察の結果から生じる。したがって、eIF4E依存性mRNA搬出は、細胞が急速に、効率は低いが他の経路を通って搬出されうるmRNAの搬出を刺激するという手段である。eIF4Eレベルが低い場合、またはm7Gキャップもしくは4E-SEが欠如している場合、転写物がNXF1経路を通って(おそらく)搬出される。この説は、NXF1経路は、特別な性質を持たないmRNAのための、デフォルトのmRNA搬出経路であるという、過去の示唆と一致する。このように、eIF4Eレベルは「細胞の抵抗器(レオスタット)」として働くことができる。レベルが上昇すると、eIF4E感受性mRNAは、組織的な様式で、本願明細書に記載されるeIF4E依存性CRM1感受性経路を通って、はるかに効率的に搬出される。最近の報告では、CRM1依存性mRNA搬出はT細胞活性化中に生じうることを示唆しており、外部細胞シグナルはmRNA搬出経路に変化を生じさせることができると示唆している(Schutz et al., 2006)。
eIF4Eの4E-SE含有mRNA搬出における役割および癌への示唆
本願明細書に報告された研究から、eIF4Eに関連する増殖および形質転換特性は、少なくとも部分的には、eIF4E依存性mRNA搬出の調節異常の結果生じている可能性があると示唆される。これらの研究から、eIF4Eの、細胞周期の進行、増殖、および生存に関与する、組織的な搬出および転写物の発現における役割が示唆される。重要なことに、eIF4Eは、それ自体の陰性制御因子、つまりPMLの発現を促進しない。eIF4Eは、一部の細胞成長の状態におけるeIF4Eの転写を制御する因子、c-Mycの発現も促進する(Schmidt,
2004)。したがって、eIF4Eは、細胞周期の進行の複数の時点に関与する多くの遺伝子の発現を調節する。
4E-SE は、eIF4E感受性の様式で、このような搬出用の転写物を標的とするUSERコードを提供する。その他の転写物は、翻訳レベルで、4E-SEとは異なるUSERコードを用いてeIF4Eによって制御されている可能性もある。さらに、4E-SE は、まだ同定されていないRNPである他の物質と会合しているかもしれない。このように、eIF4Eの効果と4E-SE含有転写物の制御は、複雑でコンビナトリアルである可能性が高い。たとえば、mRNAに感受性のある搬出の翻訳は、4E-SEに依存せず、むしろ5’UTRの複雑さに依存する。Pim-1およびODC(Hoover et al.,
1997; Rousseau et al., 1996)などの転写物は、遺伝子発現の調節のためのUSERコードのコンビナトリアルな使用の例となり、そのようなネットワークの使用の概念をサポートする。一貫して、本願発明者らの研究では、eIF4Eの翻訳と搬出機能は、3’および5’ UTRの組成に基づいて切り離すことができると示唆されている(つまり、eIF4EはシクリンD1の搬出を促進するが、VEGFの翻訳を促進する)。
eIF4E依存性mRNA搬出のいくつかの主要な制御因子は、PML (Cohen et al., 2001) 、および保存されたeIF4E結合部位を含有する数種類のホメオドメインタンパク質(Topisirovic et al.,
2003a; Topisirovic et al., 2005)を含めて、同定されている。これらの制御因子は、RNAレギュロン全体を調節するように配置され、細胞周期の進行および細胞の生存を強力に調節する。本願発明者らの研究は、PMLおよびPRHは、シクリンD1およびその他の4E-SE含有転写物のeIF4E依存性搬出を阻害することを実証する。この成長レギュロンの刺激因子には、そのレギュロンの遺伝子のmRNA搬出および翻訳の両方を促進する、HOXA9が含まれる。これらの制御因子の広範囲に及ぶ活性、特に複数のeIF4E機能を同時に制御する活性は、このレギュロンにおける主要なネクサスであるeIF4Eを調節する能力にあるようだ。
この制御の生理学的な重要性ははっきりしている。急性骨髄性白血病患者から得た一次標本では、PRHはeIF4E核小体を下方制御し、そこから非局在化させる(Topisirovic et al.,
2003b)。同時に、HOXA9は核および細胞質の両方のコンパートメントの中で上方制御されてeIF4Eと会合し、eIF4E依存性mRNA搬出および翻訳の両方を上方制御する(Topisirovic et al.,
2005)。
結論として、mRNA搬出のeIF4E依存性調節は、転写再プログラミングの前に、細胞が余分な細胞刺激に応答する、即時の応答システムを提供することがある。本願発明者らは、mRNA搬出の調節は、細胞増殖の組織的な調節を可能にし、ヒト疾患へに直接影響するように配置されるRNAレギュロンの第一の例の1つを提供することを示唆する。増殖および細胞生存経路に影響を与える、組織的な遺伝子発現を調節するeIF4Eの能力は、成長促進能力の最大効率を確保する。確実に、これらの発見は、mRNA代謝の他のレベルでの、特定の翻訳およびmRNA安定性/隔離における、eIF4Eによる遺伝子発現の重要な調節を、排除するのではなくむしろ補完する。まとめると、本願発明者らは、細胞周期の進行および生存を支配する遺伝子組織的発現に用いられる、新規のmRNA搬出経路を明らかにする。
治療用標的としてのRNAレギュロン
ネットワークの中心点の同定は、そのような中心点を、強力な薬物標的になりうる細胞の遺伝子発現回路における位置としてはっきりと決定する(図24)。
最近の研究では、mTOR阻害物質ラパマイシンが、タンパク質合成の下方制御の手段として注目されている。部分的に、eIF4E結合タンパク質のリン酸化を阻害することによって、これらを細胞質の中での相互作用とeIF4E活性の阻害を可能にする(Sarbassov, D. D., Ali,
S. M. & Sabatini, D. M. (2005) Curr Opin Cell Biol 17:596-603)。しかし、これらの罹患体をラパマイシンで処理すると、その罹患体の腫瘍において活性AKtレベルが上昇し、ラパマイシンが単剤癌療法としての使用に限定されるかもしれないことを示唆する臨床データをサポートする(O'Reilly, K. E. et
al.(2006) Cancer Res 66:1500-8)。さらに、eIF4Eを過剰発現する細胞は、ラパマイシンおよびこの薬物とドキソルビシンの併用投与への高耐性を示す。リバビリンは、m7Gキャップとの類似性によってeIF4Eを直接標的とするために、eIF4E活性を標的とする代替的な戦略を提供する(Kentsis, A., et al.(2004)
Proc Natl Acad Sci USA; Kentsis, A.et al.RNA 11:1762-6)。したがって、eIF4Eレギュロンを効率的に阻害するように配置される。
Figure 2009522281
Figure 2009522281
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例5
乳癌の新規両方としてのリバビリンの臨床前および臨床評価−机上実験例
乳癌は重要で生物学的に複雑なヒト疾患で、米国内では年間新たに200,000人が診断され、年間の死亡数が40,000人を超える。過去数十年間、臨床医師は、乳癌は単一形態の疾患ではなく、さまざまな臨床上のサブタイプに分けることができる疾患であることに気づいてきた。最近まで、サブタイプの名称は大きく臨床に基づいていたが、多重化された遺伝子発現と組織マイクロアレイ技術の導入で、乳癌環境全体の中で新しい臨床サブタイプを同定する能力が著しく増進した。この例の場合、乳癌は広く用いられるバイオマーカのセット(エストロゲンレセプタ(ER)、プロゲステロンレセプタ(PR)、erbB2/neu/HER2 レセプタ(HER2))、および/またはその病理学的等級(I乃至III)に基づく、別個の臨床サブタイプに属すると見なされるだろう。これらの特性である、年齢ならびに腫瘍サイズおよび腋窩リンパ節の状態は、乳癌を臨床的に管理する者にとって、重要な予後および予防の情報を提供する。たとえば、ER/PR 陽性状態は、短期の予後診断の向上と相関し、タモキシフェン療法への応答を予測することができるが、HER2増幅または過剰反応は、再発率の上昇、腫瘍の悪性度、節陽性患者の死亡率の上昇と相関し、トラスツズマブへの応答の陽性予知因子である。反対に、基底様サブタイプに属する乳癌(3種類のER/PR/HER2レセプタバイオマーカすべてがないのでaka「三重陰性」)は、他の種類すべてとも異なり、一般に予後が不良である。これらがサブタイプの相違を定義するにもかかわらず、等級の高い腫瘍(予後不良)は、ER/PR陽性(すべての乳癌の約15%)、HER2陽性(すべての乳癌の約20%)、および基底様(すべての乳癌の約20%)を含む、主要3種類すべてに存在する。
予後不良の乳癌(基底様、HER-2陽性、および等級の高い腫瘍)に対する有効な治療戦略の開発は、重要だが実現されていない医学のニーズである。アントラシクリン、タキサン、トラスツズバブ(HER2の細胞外ドメインに対するモノクローナル抗体)およびベバシズマブ(抗血管内皮成長因子モノクローナル抗体)、ならびにそれらの組み合わせは、乳癌治療に利用可能な確立されたおよび/または研究中の多くの療法を代表する。臨床的に有効であっても、その使用は、著しい心臓および神経毒性、好中球減少症、ならびに、ベバシズマブの場合には胃腸穿孔および出血を伴うことが多い。随伴する毒性が限られている/皆無の有効な乳癌療法の開発は、もう一つの重要だが実現されていない医学のニーズである。
乳癌を含むヒトの悪性腫瘍の場合、eIF4Eの過剰発現は、転移の高い可能性と全体的な予後不良とに相関する。乳癌に関連があるのは、eIF4Eレベルが侵襲性癌の血管新生した悪性導管を著しく増加させ、乳癌患者の切除縁内では高eIF4Eレベルは結節状態とは無関係な疾患の再発率の上昇に相関するという発見である。最近、Liらは、乳癌の高eIF4Eレベルが、高VEGFレベルおよび微小血管密度の上昇と相関することを突き止めた。さらに、翻訳開始複合体eIF4EのeIF4E依存性活性は、ヒト乳房上皮細胞の悪性表現型の発生および維持に必須であることを明らかにした。高eIF4E活性は、ヒト乳癌において重要な予後の役割を果たす。
eIF4E活性が乳癌において上昇するという本願発明者らの全体的な仮説に重要なのは、本願発明者らが臨床サブタイプがeIF4Eの高レベルを有する同定したことだろう。多重な遺伝子発現および組織マイクロアレイ分析法によって、乳癌のeIF4Eサブタイプを同定することができるだろう。現在まで、罹患体に基づく、罹患体の他の臨床サブタイプとの直接的な相関は得ることができない。
乳癌コホート分析には、イェール大学病理学科記録保管所から選択した浸潤性腺管癌の688サンプルを含む。この記録保管所は1961年から1983年までが利用可能で、ほぼ半数が節陽性標本、残り半分が節陰性である。分析は、免疫蛍光染色および蛍光顕微技術(AQUA(登録商標)分析)を用いたたんぱく質発現の客観的in
situ 定量のHistoRxロバスト法を用いて行われた。この方法は、もともとイェール大学のDr. Robert CampおよびDr. David Rimm が開発した。AQUA(登録商標)システムでは、ヒト組織、動物組織、異種移植片および細胞株の組織マイクロアレイ、全組織断片、およびコア生検標本のハイスループット定量的高分解能分析ができる。多くの自動化画像法と対照的に、AQUA(登録商標)分析は形態学的ではなく、異なる抗体または染色で決定されたコンパートメントにタグ付けされた異なるフルオロフォアの分子共局在化に基づいている。2つの異なる分析アルゴリズムを用いることによって、得られたAQUA(登録商標)スコアは客観的であり、ELISAと同等の連続スケールの面積あたりの濃度に比例するが、一方で組織サンプルの重要情報を維持する。
eIF4Eの発現は、エピトミクス抗eIF4E抗体を用いて、1:500に希釈して、AQUAで評価した。eIF4E発現は、腫瘍マーカとしてサイトケラチンを、および核マーカとしてDAPIを用いて区画化した。適切な画像はPM1000を用いて捕獲した。AQUAは、発現の区画化について検証された。AQUAスコアは、臨床データと関連づけて分析された。監視なし階層クラスタ化分析(図19、平均ベースZスコアの平均連結)を、エストロゲンレセプタ(ER)、プロゲステロンレセプタ(PR)、上皮成長因子レセプタ(EGFR)、Her2およびeIF4EのAQUAスコアを用いて行った。高eIF4Eが、圧倒的に基底(3重陰性腫瘍-ER/PR/Her2
陰性)表現型(本願明細書ではBASAL/eIF4E+と定義)でクラスタ化した。すべての基底様腫瘍が高eIF4E発現を示したわけではないことから、eIF4Eは基底様腫瘍に特異的な亜集団を規定する新規のバイオマーカーである可能性がある。eIF4E発現は明らかに特定の基底様亜集団に最も密接に関連している一方で、Her2+
分子亜型とER+/PR- 分子亜型にも程度は低いが関連している。
本願発明者らの一次遺伝子発現とAQUA分析に基づいて、本願発明者らは、eIF4E活性の臨床的阻害(リバビリンによる)が、基底様/eIF4E+乳癌と特定のHER2/eIF4E (+/+)およびER/eIF4E (+/+)癌を呈する患者に最大の利益をもたらすことを実証できるかもしれない。したがって、本願発明者らは、本願発明者らの初期の基底/eIF4E(+),
HER2(+)/eIF4E(+) 乳癌の臨床亜型、および関連性がより限られているために程度は低いがER(+)/eIF4E(+) 乳癌に関する前臨床および臨床開発研究に注目する。eIF4E臨床亜型の同定は、本願発明者らの前臨床および臨床研究の的を絞るのに役立ち、検出の方法論によって、確実に本願発明者らはヒト臨床サンプル内の変化を検出できるだろう。
臨床亜型を確立するための乳癌細胞株は、本願発明者らの発現および組織マイクロアレイコホートにおけるヒト臨床サンプルを特徴付けるために用いられる研究特性の同じセット、つまりIF4Eたんぱく質レベル、eIF4Eリン酸化状態、eIF4E-BP1レベル、およびそのリン酸化状態を用いて、eIF4E活性を獲得して評価するだろう。以下の細胞株は研究用に利用することができ、発現プロファイリングによってバイオマーカの状態に関して特徴付けた(D. Iglehart、ダナ-ファーバー癌研究所)。
Figure 2009522281
Code: (x)= 異種移植片としての成長、 (4E) = 高eIF4E、ラベルはなし= 決定される事項
高eIF4E活性を有すると決定された乳癌細胞株は、さらに、高eIF4E活性を有すると決定されたヒト臨床亜型に相当する細胞株に与えられる優先順位のさらなる研究のために選択されるだろう。本願発明者らの予備研究の結果に基づいて、本願発明者らは自らのBasal、HER2+/ER- および ER+/HER- に基づく研究に注目するだろう。
検討中の細胞株により、本願発明者らのeIF4E活性分析は+/-血清、+/-ホルモン除去血清培地、およびEGFRおよびHER2発現細胞株用のヘレグリンまたはEGFを含む、各種の条件下において細胞の培養を行うだろう。
本願発明者らは、リバビリンが用量依存性でeIF4E機能を数レベルにおいて阻害する能力を調べるだろう。具体的には、本願発明者らは、リバビリンが、(i) 特定のmRNAの、eIF4E依存性mRNA輸送および翻訳、および(ii) eIF4Eおよび特定のmRNAの核/細胞質分布に与える影響を調べるだろう。特定のmRNAには、シクリンD1、VEGF、FGF2 および保証されたHER2およびEGFRが少なくとも含まれるだろう。対照は、eIF4E不感受性mRNA(アクチンおよびGAPDHなどのハウスキーピング遺伝子)を用いるだろう。
最後に、本願発明者らは、確立された方法論を用いて、正常および乳癌細胞株を用いて、リバビリンがコロニー形成、細胞増殖、およびアポトーシスの誘導に与える影響を調べるだろう。
高レベルのeIF4Eたんぱく質(本願発明者らの予備研究結果ごとに、基底様、HER2+、ER+亜型)を有するヒト臨床亜型に相当する細胞株は、異種移植片研究に用いるために精査されるだろう。本願発明者らは、高eIF4E活性、つまりeIF4Eリン酸化、eIF4E-BP1レベルおよびリン酸化、またはたとえば、特にさらなる新規のeIF4E乳癌臨床亜型と相関することが明らかになる場合、核:細胞質局在化の著しい変化を有する亜型を提供する、より詳細なメカニズムのいずれか/すべてを利用すると決定した細胞株の研究に期待する。
本願発明者らは、リバビリンが、特にFGF2の存在下および欠如下において、eIF4Eの高アポトーシス活性を阻害すると期待する事実から予測されるとおり、リバビリンが乳癌細胞株の古典的な化学療法剤および/またはタキサンへの耐性を低下させるかどうかも調べるだろう。
リバビリンが古典的乳癌化学療法剤に与える相乗効果の研究に加えて、本願発明者らは、リバビリンが標的薬剤[すなわち、HER2、ERおよびEGFR、並びに/またはNFkB(特異的IKKペプチド阻害剤NBDを使用)およびPI3K/Akt (特異的PI3K阻害剤Ly294002)を含む細胞内キナーゼ活性]と相乗的に作用するかを調べるだろう。乳癌細胞株は、ATCC、またはD. Iglehart (ダナ-ファーバー社)の研究室から入手するだろう。.細胞は、確立された培養条件を用いて増殖させるだろう。ウェスタン(たんぱく質)分析には、eIF4E、ホスホ-eIF4E、eIF4E-BP1、およびホスホ-eIF4E-BP1
に対する市販の抗体と、適切な陽性および陰性対照を用いるだろう。同様に、(mRNA)分析には、市販のRNA抽出物とmRNAプローブを用いるだろう。必要な成長因子、化学療法剤、およびキナーゼ阻害剤は、市販されており、細胞周期分析およびアポトーシス分析は、確立された方法を用いて行われ、蛍光活性化細胞選別によって分析されるだろう。
リバビリンの乳癌臨床亜型に対する活性は、上述のとおり同定されたヒト乳癌eIF4E臨床亜型に相当する精査されたマウス異種移植片腫瘍モデル系および細胞株を用いて、in vivoにおいて決定されるだろう。具体的には、本願発明者らは、リバビリンがeIF4E感受性分子(少なくとも保証された状態のFGF2、VEGF、cyclin D1およびHer2/neuまたはEGFR )の腫瘍成長およびたんぱく質発現に与える効果を調べるだろう。3’UTRおよび/または5’UTR mRNA対照の構造を「内部」レポータ遺伝子(LacZ, GFP)と結合させた人工遺伝子レポータ作成物によって、本願発明者らのリバビリンeIF4E感受性mRNAをin vivoにおいて可視化させる能力が増大するだろう。適切な腫瘍のアポトーシスの状態について評価するだろう。分析される対照たんぱく質およびmRNAには、ハウスキーピング遺伝子(アクチンおよびGADPH)が含まれるだろう。
最初、本願発明者らは、異種移植片を目的のヒト乳癌細胞株を用いて均一に確立することができるだろう。異種移植片が均一にならない場合には、本願発明者らは動物に由来する腫瘍を継代し、その場合このような腫瘍は腫瘍異種移植片の確率を促進する一つの方法として証明されたものとされる。代替的に、本願発明者らは、異種移植片モデルシステムに有用であると証明されている、マトリゲルの存在下において、ヒト乳癌細胞を移植するだろう。
eIF4E関連ヒト臨床サブタイプに相当する適切な異種移植片モデルが確立したら、動物に投与されるリバビリン濃度と腫瘍成長への影響との用量関連性を確立することは重要だろう。対照動物は賦形剤対照を与えられるだろう。本願発明者らの最初の焦点は、異種移植片研究に用いる、高レベルのeIF4Eたんぱく質(本願発明者らの予備研究結果ごとに、基底様、HER2+、ER+亜型)を有するヒト臨床亜型に相当する乳癌異種移植片モデルの精査だろう。本願発明者らのさらなる目的は、高eIF4E活性、つまりeIF4Eリン酸化、eIF4E-BP1レベルおよびリン酸化、またはたとえば、特にさらなる新規のeIF4E乳癌臨床亜型と相関することが明らかになる場合、核:細胞質局在化の著しい変化を有する亜型を提供する、より詳細なメカニズムのいずれか/すべてを利用するのに対応する乳癌異種移植片モデルを調べることで、特に、これらの株は、本願発明者らが上述のように同定する新規のeIF4E乳癌臨床亜型に相当することが明らかになるはずである。さらに、本願発明者らは、本願発明者らのin vitroにおけるデータがこの線の研究を支持する場合、リバビリンが、乳癌異種移植片の古典的化学療法剤および/またはタキサンへの抵抗性を低下させるかどうかについて調べるだろう。 最後に、リバビリンが古典的乳癌化学療法剤に与える相乗効果の研究に加えて、本願発明者らは、リバビリンが標的薬剤(すなわち、HER2、ERおよびEGFR、並びに/またはNFkB(たとえば、特異的IKKペプチド阻害剤NBDを使用)およびPI3K/Akt (特異的PI3K阻害剤Ly294002)を含む細胞内キナーゼ活性 )と相乗的に作用するかを、適切なeIF4Eベースの乳癌異種移植片モデル系を用いて調べるだろう。これらの研究は、本願発明者らが、組織マイクロアレイおよび遺伝子発現分析を用いて、ヒト乳癌のeIF4Eベースの分類を分析することによって進むだろう。
ヌードマウス(「無胸腺」)は、ジャクソンラボラトリーから入手するだろう。その他の必要な試薬および備品は、上述した。
本願発明者らは、高eIF4Eレベルを特徴とする癌の患者におけるeIF4Eを標的とする戦略は適応であると仮定する。リバビリンは、十分に特徴付けられた、経口用に使用できる抗ウイルス薬である。リバビリンは、物理的にm7G mRNAキャップ構造を模倣し、eIF4E活性と機能を阻害することが明らかになっている。本願発明者らは、リバビリンを、eIF4E活性が高レベルであると特徴付けられた乳癌の患者の、新しい標的治療法として研究することを提案する。
参考文献
以下に記載の参考文献を含む、本願明細書に記載のすべての公表物、および特許は、各公表物、特許、または特許出願が具体的および個別にその全体を引用により援用されるのと同程度に、本願明細書にその全体を引用により援用される。対立の場合には、本願明細書に含まれる定義のいずれをも含む本願明細書が支配するだろう。
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等価物
当業者であれば、ごく普通の実験を用いるのみで、ここに説明した本願発明の特定の実施態様の等価物を数多く認識し、または確認できることであろう。本願発明の具体的な実施態様が検討されているが、上述の明細書は例示的であり制限的ではない。当業者がこの明細書を見れば、本願発明の多くのバリエーションが明らかになることであろう。本願発明の全範囲は、請求項とともにその等価物の全範囲、および明細書とともにそのバリエーションを参照することによって決定されるはずである。そのような等価物は、以下の請求項によって包含されることが意図される。
Rib4Cではないリバビリンは、eIF4Eの機能的m7Gキャップ結合部位と、m7G mRNAキャップと同一の親和性で結合する。(a) リバビリンのeIF4E野生種(黒四角)、W73A (白四角)、W56A (星)への結合、Rib4C の野生種eIF4Eへの結合(黒三角)、RTP の野生種 eIF4Eへの結合(黒ひし形)、およびm7GTPの野生種 eIF4Eへの結合(白ひし形)の、正規化修正トリプトファン傾向強度消光とそのフィット。(b) ヌクレオシド/ヌクレオチド:eIF4E結合の、マイクロモル単位の見かけの解離定数。(c) 各種濃度のm7GTPまたはRTPと競合させてからm7Gセファロースに結合させた残留eIF4Eのウェスタンブロット。m7GTPとRTPは両方とも、約1uMの濃度において結合を50%減少させる。(d) ケト型のm7G、リバビリン、およびRib4Cヌクレオシドの化学構造。注:プラス 陽性電荷、R リボース。 リバビリンは細胞内eIF4E組織を特異的に阻害する。(a) DAPI (クロマチン)、Nopp140 (カハール体と核)、Sc35 (スプライシング斑)、およびeIF4E (eIF4E核小体および細胞質eIF4E)で染色したリバビリン処理NIH 3T3細胞の二焦点免疫蛍光顕微鏡像。(b) リバビリン処理NIH 3T3細胞の核(N)および細胞質(C)分画のたんぱく質抽出物のウェスタンブロット。核および細胞質eIF4E、ならびに分画と負荷の対照として主な核Sc35、および主な細胞質βアクチンをプローブした。リバビリン処理によって、核eIF4E小体および細胞質によるeIF4Eの保持が0.1-1μMのEC50で特異的に阻害される。 リバビリンはeIF4E:mRNA結合を特異的に阻害し、mRNA輸送を阻害し、輸送制御たんぱく質のレベルを低下させる。(a) リバビリン処理NIH 3T3 細胞の核および細胞質分画のRNA抽出物のノーザンブロット。指示の通りプローブした。U6小核RNAおよびtRNALysは、分画の質を制御する働きをする。リバビリンは、BアクチンではなくシクリンD1の核細胞質mRNA輸送を阻害し、その見かけのEC50は、棒グラフによる定量化から判断して、約1uMである。N 核、C 細胞質。この効果は、定量的リアルタイムPCRによって確認された(図4b)。(b) リバビリン処理細胞の総抽出物のノーザンおよびウェスタンブロット。転写、mRNAの安定性、およびタンパク質合成に影響せずに、シクリンD1の減少を呈した。(c) シクリンD1をプローブしたRIb4C処理細胞の総たんぱく質抽出物のウェスタンブロット。(d) リバビリン処理細胞の核から精製したeIF4Eに含まれるシクリンD1 mRNAの半定量的RT-PCR。対照サンプルは、eIF4E(+)に特異的な抗体のかわりに、IgG抗体を用いて精製した。細胞質抽出物のVEGFの半定量的PCRは上述のとおり免疫精製した。 (a) リボソーム精製分画と、そのシクリンD1、GAPDH、ODC、およびVEGF mRNA内容物のRNAプロフィール(A260/A280)。定量的RT-PCRを用いて測定し、閾値周期(CT)を用いて表した。エラーバーは、3回の独立した実験の±1σを表す。細胞を1μMリバビリンで処理しても、シクリンD1およびGAPDHmRNAのリボソーム負荷およびmRNA翻訳開始には有意な作用はない。低CT 値は、高mRNA存在量を示す。nのCT差は、濃度のn2倍の差と同等である。cyclinD1 mRNA の細胞質レベルはリバビリン処理で低下するが、ものソームと比較したポリソームへの負荷の効率は作用されず、ポリソームへの負荷がものソーム負荷と比較して優位に低下するODCおよびVEGFmRNAとは対照的であるという点は留意されたい。(b) 各種濃度のリバビリンで処理したNIH 3T3細胞のシクリンD1(赤)およびVEGF(緑)の、細胞質(左)および総(右)mRNAレベルに対する核の、正規化された比率。シクリンD1mRNAの核の保持が2倍なのは、0.1μMリバビリンにおいて明らかである。 (a) eIF4Eをプローブするための、形質移入NIH 3T3細胞のたんぱく質抽出物のウェスタンブロット。(b) FACS(左軸)を用いて測定した、アネキシンVを結合し(アポトーシス)、ヨウ化プロピジウムを吸収する(ネクローシス)透過処理しないNIF 3T3細胞の割合と、ホルマザン(右軸)の光学密度を用いて、増殖巣形成アッセイ(実施例参照)として同一の時間リバビリン処理して測定したテトラゾリウム色素低下の効率(代謝)。エラーバーは、3回の独立した実験の±1σを表す。生存能力と代謝の有意な作用は、リバビリン濃度が100μM異常の場合のみ観察され、高ミリモル濃度のみで、mRNA誤取り込みなどのグアノシン経路の中毒が生じることと一致する。(c) 透過処理したNIH 3T3細胞のヨウ化プロピジウムを用いて測定したDNA含有ヒストグラム(左軸)、および未処理細胞(青)および0.1μMリバビリンで処理した(赤)細胞の累積確率分布(右軸)。リバビリン処理によって、G1期に限定される細胞の割合が58%から91%に上昇する。eIF4Eによって媒介されるNIH 3T3細胞の発癌性形質転換は、リバビリンによって見かけのEC50 が0.1-1μMで特異的に抑制され、G1細胞周期の停止と相関する。 リバビリンは、eIF4E媒介発癌性形質転換を抑制する。(a) (左) リバビリン処理し、空のベクタ(黒点線)、eIF4EWT(青線)、eIF4E W56A (赤線)を形質移入したNIH 3T3細胞と、Rib4Cで処理してeIF4E WT を形質移入した細胞(黒実線)の足場依存性増殖巣形成。エラーバーは、3回の独立した実験の±1σを表す。増殖巣形成の確率(Pfocus)は、形成された増殖層の数を播種された細胞の数で割ったものとして定義される。(右) eIF4Eで形質転換したリバビリン処理細胞のギムザ染色皿の写真。(b) リバビリン濃度の関数で表した、AML患者から単離した原発性ヒトCD34+骨髄系前駆細胞(M1 黒丸、M5 黒四角)と正常の骨髄(BM、白四角)のコロニー形成。リバビリンは、eIF4E依存性AML-M5のコロニー形成を約1uMの見かけのIC50で低下させるが、この濃度では、M1および正常骨髄系前駆細胞には影響しない。データは内部正規化され、AML骨髄系前駆細胞の絶対的なコロニー形成の効率はBMよりも大きい(データは非表示)。エラーバーは、4回の独立した実験の±1σを表す。(C) 下咽頭eIF4E依存性腫瘍に由来する細胞を移植したヌードマウスの平均腫瘍容積を、投与量40ug/kg/日の1uMリバビリンの連日経口投与の関数として表したもの。エラーバーは、マウス10匹の±1σを表す。(右) 処理の20日後に切除した腫瘍の写真。 リバビリンおよびm7G mRNA キャップは、eIF4Eによって同様に認識される。(a) 飽和濃度のm7Gヌクレオシドの欠如下(黒)および存在下(赤)におけるeIF4Eの1H, 15N HSQC NMRスペクトル。作成物の273残基のうち、207共鳴が観測されたことに留意されたい。(b) 飽和濃度のm7G(赤)およびリバビリンヌクレオシド(青)の存在下(赤)におけるeIF4Eの1H, 15N HSQC NMRスペクトル。(c) リバビリンおよびm7G mRNA キャップが結合した上で1H, 15N HSQC NMR化学シフト摂動を示す(赤)および示さない(青)eIF4E骨格残基。ここで観察されたマウスeIF4Eのキャップ結合の上での立体配座の再配置と、酵母eIF4Eについて報告されたものの差異は、マウスと酵母たんぱく質の差異とともに酵母eIF4Eへのミセル結合によるものであると考えられる。 リバビリンは7-メチルグアノシン(m7G)の物理的類似体である。グアノシン、m7G、リバビリン、Rib4C、およびチアゾフリン塩基の等高線静電ポテンシャル分子表面と、その化学構造。青から赤への色の勾配は、電気的陽性ポテンシャルが低下し、電気的陰性ポテンシャルが上昇する勾配に相当する。矢印は、芳香環の7番目の位置を表す。R リボース。 in vitroにおけるリバビリンの組換えeIF4Eへの見かけの結合は、方法および条件依存的である。(a) 既報の通り、20 uLのm7GTP-セファロース(アマシャム社)を、1ugのeIF4Eを入れた0.1 mM GTP を加えたバッファB(0.3 M NaCl、0.1 M リン酸ナトリウム、pH 7.5、10 uM 無プロテアーゼBSA [UBS]、0.1% NP-40)と、30分間、室温で混合した。洗浄したビーズ(75総容積で3回)を、指示のとおり、50uMの化合物で30分間室温でインキュベートした。ビーズを洗浄(75総容積で3回)し、分離したeIF4Eを除去して、ビーズに結合した残留eIF4EをSDS-PAGEを用いて分離し、ウェスタンブロッティングと化学蛍光法で可視化した。ここで、m7G:eIF4E 結合のリバビリンの競合の特異性を協調するために、バッファには0.1mM GTPを含有させたことに留意されたい。また、ここで、本願発明者らは、Gerhard Wagner (ハーバード大学医学部、マサチューセッツ州ボストン)からの寄贈された、Zhou et al.(2001) andKentsis et al.(2004)に記載のマウスeIF4Eとたんぱく質G(G4E)のB1ドメインとの融合体を用いた。(b) Yan et al.(2005)が記載するとおり、1ugのeIF4Eを、10uM無プロテアーゼBSA(UBS)、0.1% NP-40、および0.1 mM GTPを添加した50総容量のLCBバッファに入れた20uLのm7GTPセファロース(アマシャム社)と20分間、推定4℃で混合した。実験温度は記載されていなかった(Yan et al.2005)。洗浄したビーズ(50総容積のLBCバッファで5回)を、指示のとおり、5総容積の50uMの化合物で20分間4℃でインキュベートした。分離したeIF4Eを含有する上清20uLを新しい試験管に移し、結合したeIF4Eを含有する微量のビーズを取り除いて、SDS-PAGEを用いて分離し、ウェスタンブロッティングと化学蛍光法で可視化した。 in vitroにおける、精製したeIF4Eへのリバビリンの特異的結合の直接観察。質量スペクトルは、Agilent Technologies1100 LC/MSD統合液体クロマトグラフ単一四極子エレクトロスプレー質量分析器(ES-MS)を用い、陽イオンモードで操作して記録した。20uM精製G4Eの溶液(Zhou et al.2001;Kentsis et al.2004)を、80 uM リバビリン(カルバイオケム社)と80 uM GTP(シグマ社)の混合物を5%アセトニトリル水溶液、20mM酢酸アンモニウム(pH 6.5)に入れたもので、1分間、室温でインキュベートした。その溶液を、ネブライザ圧20psiの乾燥窒素ガスを用いて、200mL/分と10L/分で、200℃、キャピラリ電圧4.5kVで直接エレクトロスプレーした。(a) 上述の混合物20uL中のES-MSスペクトルプロッティングイオン存在量を、質量/電荷比の関数として示す。約1740amu/zのイオンを標識する。これは、アポG4E(高いピーク)とリバビリンとG4Eの複合体(低いピーク)の+18プロトン化状態に相当する。(b) 標準方法に従って、上に示されたスペクトルの高質量再構築を行い(DeHoffmann and Stroobant 2001)、個体群に加重した平均分子量31,402と31,649 Daの2種を含む。これは、それぞれ分子化学量論が1:1のアポG4Eおよびリバビリンに結合したG4E(243Da)に相当する。eIF4Eのアポ-およびリガンド-結合種のイオン化効率の差のせいで、総イオン化eIF4Eの分画だけがリバビリンに結合するように見えることに留意されたい。ここで、リガンド結合は、折り畳まれてさらに未変性様に、したがってイオン化しにくい状態に生じる(DeHoffmann and Stroobant 2001)。したがって、質量分光データから親和性を得るのは、イオン化におけるこれらの差異によって混乱する。比較のために、本願発明者らは、8.4uM のeIF4E-リバビリンと0.13uMのeIF4E-RTPのKdを、蛍光分光法を用いて得て、m7グアノシンおよびm7GTPについて以前観察された差異と比較した(Kentsiset al.2004)。 eIF4Eは、U2OSまたはHEK293T細胞の核分画の中で、シクリンD1と会合するが、GAPDH mRNA とは会合しない。(a) U2OS総細胞ライセートを、eIF4E抗体または対照としてマウス免疫グロブリン(IgG)のいずれかと免疫沈降(IP)させた。RNAは指示の通り、RT-PCRによって検出された。トットは、投入RNAの0.5%を表す。(b) U2OS核ライセートは、eIF4E(mAb eIF4E)、PML (mAb PG-M3)、またはマウスIgGに対する抗体を用いて免疫沈降させた。RNase A は、陰性対照としてのIP前の処理を示す。合計および核(nc)は、RNA投入量の5%を表す。(c) U2OS核ライセートには、eIF4EWT- GST と突然変異体(W56A and W73A) 融合タンパク質を用いたSNAAP分析を行った。GSTだけを陰性対照として使用した。結合RNAは、RT-PCRによって検出された。Ncは、指示の通り、投入量の割合を示す。A-CのためのRT-PCRは、臭化エチジウム染色によって検出した。(d) キャップ依存性用の対照として、50 uM 7GpppG キャップ類似体または50 uM GpppG 陰性対照の付加によるeIF4E結合への競合の能力を、HEK293T細胞の核分画でテストした。シクリンD1とGAPDH mRNA が指示の通りの処理後にeIF4Eで免疫沈降する能力を、半定量的PCRで監視した。(e) A-Cの実験と平行して、RT-PCR法によって、eIF4Eがキャップ依存性でシクリンD1を選択的に結合することを示唆する上述の結果を確認する。相対的な倍数値は、シクリンD1およびGAPDH mRNAの両方の「材料と方法」に記載の通り計算した。(f) U2OS核ライセートは、eIF4E(mAb eIF4E)、CBC (pAb CBP80)、またはマウスIgGに対する抗体を用いて免疫沈降させた。ncはRNA投入量の5%を表す。(g) eIF4EおよびCBP抗体またはマウスIgGによる免疫沈降から得たタンパク質は、ウェスタンブロット(WB)で分析した。白線は、介在レーンがスプライシングで切り出されたことを示す。 シクリンD1 はeIF4E核小体のサブセットに局在化するが、GAPDH mRNAはしない。(a) シクリンD1とPMLとeIF4Eタンパク質の共局在化を、U2OSまたはNIH3T3細胞で分析した。シクリンD1 mRNA を、シクリンD1に対するディゴキシゲニン標識ニック翻訳プローブを用いたin situハイブリダイゼーションを用いて検出した(赤)。細胞は、FITCに直接結合させたeIF4E mAb(緑)とPML mAb 5E10(青)を用いて免疫染色した。(b) GAPDHへのディオキシゲニン翻訳プローブ以外はAと同じものを、in situハイブリダイゼーションに用いた。これらのパネル内に、同一の顕微鏡像のオーバーレイの異なる組み合わせを示し、シクリンD1とeIF4E核小体の局在化を強調して表示した(矢印参照)。(c) シクリンD1-/-細胞において、シクリンD1 mRNAのin situハイブリダイゼーションとeIF4Eタンパク質の免疫染色を、上述のとおり行った。(d) HEK293T細胞は、他の細胞種で観察されるサイズ、数、および形態に似ているeIF4E小体を含む。細胞を、pAb でeIF4Eに対して染色した(Morley and Pain, 1995)。mAb eIF4E での染色では、同一の結果を得た(描写なし)。すべての図について、二焦点顕微鏡像は、細胞の平面の単一光学切断面をあらわす。 シクリンD1 RNAの核細胞質輸送を促進するeIF4E。(a) 核(n)および細胞質(c)分画は、eIF4E WT、eIF4E突然変異体(W56A およびW73A) またはPMLを安定に形質移入したNIH3T3細胞から単離し、RNAは記載のとおりノーザンブロット(NB)で検出した。U6snRNA(核)およびtRNALys(細胞質)は、分画の質のためのマーカとして用いられた。(b) Aに記載の通りに形質移入したNIH3T3細胞から単離した総RNAのノーザンブロット分析。AおよびBにおいて臭化エチジウムで染色したゲルは、単離したRNAの質を実証する。(c) eIF4Eで促進したmRNA輸送によって、相当するmRNAのタンパク質レベルが上方制御される。指示の通り形質移入したNIH3T3細胞からの総細胞ライセートをウェスタンブロット(WB)によってタンパク質含有物について分析した。(d) 半定量的PCRでは、eIF4Eの過剰発現はシクリンD1mRNA安定性が変化しないことを示す。Act Dは、アクチノマイシン処理の時間を示す。右図は、Rt-PCRに用いられるRNA量の減少を表し、条件は半定量的であることを示す。(e) それでも、突然変異および野生種eIF4Eタンパク質は核小体を形成する。Xpressでタグ付けしたeIF4E野生種またはW73A突然変異を過剰発現するNIH3T3細胞を、外来性eIF4E(赤)およびまたはFITCに直接結合させたmAbeIF4E(緑)を検出するためにXpress抗体で免疫染色し、内在性および外来性タンパク質の両方を検出した。二焦点顕微鏡像は、細胞の平面の単一光学切断面をあらわす。 eIF4Eは、シクリンD1の3’UTRから得た4E-SE と特異的に会合する。(a) 本研究で使用した、キメラ作成物の略図。ヒトシクリンD1 mRNAの完全5’および3’UTRと3’UTRのさまざまな部分を、それぞれ、LacZの上流および下流にクローニングした。数字は、シクリンD1 mRNAのUTR断片の位置を表す。(b) NIH3T3細胞には、シクリンD1 3’UTRの異なる部分のUTR-LacZ、LacZ-3’UTR、またはLacZを含有するキメラLacZ作成物を、一時的に形質移入した。形質移入細胞の核分画を、mAb eIF4E または対照のマウスIgGで免疫沈降させた。LacZおよびB-アクチンは、半定量的RT-PCRと臭化エチジウム染色(左)で検出した。Ncは、IP前の核分画を示し、核mRNAの投入量の5%である。RT-PCR法(右)のために、相対的な倍数の濃縮をIP eIF4E 分画対IP IgG分画のために示す。これはIPeIF4Eの中でのLacZ 3’UTR4の濃縮を示す。(c) ClustalWからのシクリンD1 4E-SE の配列アラインメント(Thompson etal., 1994)。GenBank/EMBL/DDBJ受託番号は、ヒトgi:16950654、マウスgi:6680867、およびラットgi:31377522である。アンサンブルデータベースから得た、トリのGenBank/EMBL/DDBJ 受託番号は、セキショクヤケイ|5.14792937-14795000およびgi:U40844である。 4E-SE はeIF4E媒介mRNA輸送に十分であるNIH3T3細胞の核(n)および細胞質(c)分画から精製し、eIF4E-2FlagおよびキメラLacZ作成物と同時形質移入したポリA RNA(指示の通り)を、(a) 半定量的RT-PCRと臭化エチジウム染色(左)または(b) ノーザンブロット(NB)で分析した。(cおよびd) HEK293T細胞の核(n)および細胞質(c)分画から精製し、eIF4EまたはW56A eIF4E とキメラLacZ作成物を同時形質移入したポリA RNA(指示の通り)のノーザンブロット(NB)分析。ポリA RNA精製の前に採取した相当するアリコートは、その分画の質を表す。 4E-SE の存在は、高LacZタンパク質レベルに相関する。(a) タンパク質レベルは、一時的にeIF4E-2Flag 作成物と指示されたキメラLacZ作成物またはPML、eIF4E-2Flag、およびキメラLacZ作成物と同時形質移入したHEK293T細胞からの総細胞ライセートのウェスタンブロット(WB)によって分析した。HEK293T細胞は、eIF4E核小体を有することに留意されたい(図13c)。(b) 指示されたとおりに同時形質移入したHEK293T細胞からの総RNAのノーザンブロット(NB)分析。総RNAレベルはいずれも、形質移入のいずれによっても変化しないことには留意されたい。(c) 半Q PCR分析は、4E-SE が存在しても、LacZ mRNA 安定性は検出できるほど変化しないことを示す。Act Dは、アクチノマイシンDで処理した時間を表す。GAPDHは負荷対照として示す。 4E-SE はeIF4Eが媒介する発癌性形質転換に寄与する。(a) シクリンD1-/- 細胞は、eIF4Eを安定に形質移入するか、または3’ UTR を含まないシクリンD1作成物のコード領域(cycTrunc)、完全長3’ UTRを有するシクリンD1のコード領域 (cycFull)、および100nt 4E-SE のみ有するシクリンD1のコード領域(cyc4E-SE)のいずれかと同時形質移入して、足場依存性増殖総形成アッセイについて分析した。3つの独立した試験を3回ずつ行い、エラーバーは±SDを表す。増殖巣の数は、ベクタ対照に対して相対的で、100%になるように設定された。(b) 指示の通り安定に形質移入したシクリンD1-/- 細胞の総細胞ライセートのウェスタンブロット分析法(WB)で、3’UTR配列がない切断型と比較して、完全長3’UTRまたは4E-SE を含有する作成物を形質移入した細胞におけるシクリンD1タンパク質の高レベルを示す。(c) シクリンD1-/- 細胞において、内在性eIF4Eを用いた定量的RT-PCR 実験の結果。核(N)/細胞質(C)シクリンD1 mRNAの相対比は、RT-PCR を用い、相対標準曲線法を用いて決定した。値は、その比を任意に1と設定することによってCycFullに正規化した。これらの実験からSDを広げるために、標準法を用いた。 促進されたmRNA搬出は、eIF4E感受性標的の高タンパク質レベルに相当する。(a) 核eIF4Eに結合したmRNAの相対的な倍数差。mRNAは、未処理の核ライセートまたはm7GpppGまたはGpppG(50μM)で処理されたライセートから免疫沈降した。値は、相対的な倍数±sd(1に設定された未処理IP IgGに対して正規化)を表す。倍数の計算は、相対標準曲線法(userbulletin#2 ABI Prism 7700)を用いて行った。標的mRNA=10[C (t)-b]/a の相対量は、各PCR反応について決定した。平均値±sdは、各セット3回で計算した。IPについて得られた平均値(つまり、IP-ed標的mRNAの平均相対量)を、5%核投入量について得られた値(つまり、標的mRNAの平均相対量は、IPに使用された核抽出物の量の5%である)で割った。得られた値±sd(つまり、平均IP/平均5%核)を、「未処理IgG IP値」を1にすることによって正規化した。BおよびC)eIF4E促進mRNA輸送によって、相当するmRNAのタンパク質レベルが上方制御される。指示の通り形質移入したU937(b)または NIH3T3(c)細胞からの総細胞ライセートをウェスタン法によってタンパク質内容物について分析した。ヒトPMLが過剰発現している図cでは、5E10 mAb PML 抗体はヒトPMLだけを認識し、内在性マウスPMLは認識しないことに留意されたい。 eIF4E核小体のジップコードとして働く、4E-SEの一般的な二次構造。(a) RNaseマッピング実験によって決定されたとおりの、シクリンD1 4E-SE (c4E-SE) およびPim-1 4E-SE (p4E-SE) の二次構造。AおよびUヌクレオチドの保存されたセット(UX2UX2A)は黄色で強調されている。図(b)はサンプルゲルを示す。(c) p4E-SEのマッピング:p4E-SE はeIF4Eで免疫沈降する(上図);eIF4Eは最小のp4E-SE を含有するLacZ mRNA の搬出を促進する(下図)。細胞質/核(c/n)値は、LacZ対照に正規化され1に設定された相対倍数±sdを表す。(d) LacZ-p4E-SE、LacZ-c4E-SEまたはLacZ転写物をPMLおよびeIF4Eタンパク質との共局在化を、LacZ/LacZ-4E-SEで形質移入したU2OS細胞で調べた。LacZmRNA を、LacZ (赤)に対するビオチン標識ニック翻訳プローブを用いたin situハイブリダイゼーションを用いて検出した。細胞は、FITC(緑)およびPMLmAb 5E10(青)に直接結合させたeIF4E mAbを用いて免疫染色した。重要なことに、シクリンD1またはPim-1いずれかに由来する4E-SE を含有するLacZmRNAをeIF4E核小体に共局在化させる(矢印参照)。本願発明者らが内在性シクリンD1 mRNAについて過去に示したとおり、eIF4E核小体には、LacZmRNA と共局在化させたものと、PMLと共局在化させたものの、2種類の個体群がある。倍率は100倍と3倍(LacZおよびc4ESE)、または4倍(p4ESE)デジタルズームだった。スケールバー= 10μM。 4E-SE はeIF4E依存性複合体の形成に必要である(a)および(b) EMSA分析は、シクリンD1 4E-SE (c4E-SE) またはPim-1 4E-SE(p4E-SE)のいずれかを含有するLacZ転写物が、核ライセート(nc)の存在下において高分子量複合体を形成したことを示す。4E-SE を含まないLacZ転写物(対照)はこれらの複合体を形成しなかった。6kD溶解度タグのある精製マウスeIF4E(m4E)またはタグを付けないヒトeIF4E(h4E)を加えると、ncライセートに認められるシフトに関連する部分的なシフトを生じる。eIF4E(dpl nc)を免疫除去した核ライセートの場合、ゲルシフトは認められなかった。これらの複合体は、抗eIF4E抗体(nc+α4E)によってスーパーシフトされる可能性がある。(c) Pim-1 4E-SE (p4E-SE) の突然変異は、ゲルシフトの有効性を低下させる。(d) UV架橋研究によって、75-90kD の質量の範囲で特異的な複合体の形成を示した(矢印で表示)。過剰のm7GpppGキャップ(cap)の存在下、またはライセートがeIF4Eを免疫除去された場合(dpl nc)、これらの複合体は特異的に欠乏する。*は、キャップであって4E-SE に依存しない複合体を示す。(e) 核ライセートの存在下におけるp4E-SE 複合体に相当するリボヌクレオチドの付加は、この要素が複合体形成と効率的に競合することができることを示す。すべての転写物がキャップ付加され、3’末端を標識された。 mRNAを含有する4E-SEの搬出は、進行中のRNAおよびタンパク質合成に依存せず、その経路は過剰な4E-SEで飽和している。(a) eIF4Eを過剰発現する細胞におけるLacZ-c4E-SEおよびLacZのmRNA搬出のmRNA定量的リアルタイムPCR分析を示す。LacZ未処理対照を1に設定して正規化した細胞質/核(c/n)値は、相対倍数±sdを表す。処理:アクチノマイシンD(10μg/ml)で1時間、シクロヘキシミド(100μg/ml)で1時間。(b)および(c) LacZ mRNA 搬出は、ドキシシクリンで誘導されたLacZ転写物-/+ 4E-SEの時間および発現の両方の関数として監視した。時間の関数として表した発現を示す。平行して、それぞれの場合について、搬出の範囲を、c/n mRNAの比として監視した。実線はLacZ-c4E-SEを発現する細胞における傾向を表し、点線はLacZ-p4E-SEを発現する細胞について表す。同一のサンプルから得た内在性mRNAも調べた。シクリンD1 mRNA 搬出は、LacZ-c4E-SEまたはLacZ-p4E-SEのいずれかを発現する細胞で低下した。重要なことに、4E-SEを含まないVEGFは、どちらのケースでもその搬出が影響されなかった。明らかに、mRNAを含有する4E-SEの量は細胞で増加し(C)、これらを搬出する能力は、おそらく4E-SE 依存性搬出が飽和したために低下した(b)。c/n値は、各時点のみでLacZに正規化した相対倍数±sdを表す。総RNAの場合、値は、各転写物(4時間)の誘導の最初の時点を1に設定して正規化した相対倍数±sdを表す。各時点に得られたLacZmRNA の平均値は、同一のサンプルについて得られたGAPDH mRNA値によって正規化した。 eIF4E依存性搬出は、NXF1に依存せず、CRM1に依存する。(a) NXF1 IP 分画におけるLacZ mRNA の比較。細胞には、FlagNXF1/Flagp15およびLacZまたはLacZ-c4E-SEを同時形質移入した。抗Flag抗体で免疫沈降を行った。LacZ/LacZ-c4E-SE mRNA をリアルタイムPCRでモニターし、IgG対照に正規化した(図18aに記載)。(b) NXF1 siRNA 処理(72時間)は、mRNAを含有するLacZの搬出を阻害するが、LacZ-c4E-SE については阻害しない。eIF4Eを過剰発現する細胞におけるLacZまたはLacZ-c4E-SE mRNAのc/n比をsiRNAの関数で示す。細胞質/核(C/N)値は、LacZ未処理対照を1に設定して正規化された相対倍数±sdを表す。LacZ mRNAs レベルを18S rRNAに正規化したが、その場合、c/n比はNXF1 siRNAによって影響されない。(c) ウェスタンブロット(WB)分析は、NXF1タンパク質レベルはsiRNAによって低下するが、スクランブル対照(DS (-対照))によっては低下しないことを示唆する。eIF4GのWBを陰性対照として示す。LacZたんぱく質レベルは図bに示されるmRNA搬出における変化に相当する。(d) レプトマイシンB(LMB)へのc4E-SE搬出の依存性。eIF4E過剰発言U2OS細胞のLacZ-c4E-SEmRNA のc/n比は、4E-SE 搬出はLMB(10ng/ml で4時間)に感受性があるが、LacZはそうではないということを示した。18S rRNA搬出は予想通りLMBで阻害されたが、βアクチンmRNA搬出は予想通りLMB処理に影響されなかった。C/N値は、LacZ未処理対照を1に設定して正規化された相対倍数±sdを表す。すべてのRNAはGAPDHmRNAに正規化された。 異なるクラスのRNAの搬出のためのメカニズムの略図。CRM1またはNXF1/p15経路を経たmRNAの搬出を描く特徴的性質の概説を、mRNAのeIF4E媒介搬出の特徴とともに示す。 eIF4E RNA レギュロンのモデル。(a) 核分画を灰色に示す。核では、キャップ結合タンパク質eIF4Eおよびキャップ結合複合体CBC両方を示す。バルクmRNA搬出は、CBCに結合しNXF1に依存する形で核を出るmRNAによって描かれる。mRNAは黒線で、黒丸は5’ m7G キャップとして描く。4E-SEを有するmRNA(緑)は、CRM1依存性で搬出される可能性もある。細胞質では、高く構造化した5’ UTRを有するmRNA(赤で示す)がeIF4E依存性で選択的に翻訳される。着色した四角は、パートBに示される対象レベルに相当する。(b) eIF4Eが、習性USERコードの存在に依存して、mRNA搬出および翻訳に影響を与えることを示すレギュロンの略図。各調節レベルのRNA例をあげる。その下に、細胞制御因子の例をあげる。最後に、レギュロンの特定のステップを調節する化合物を示す。多くのRNAがそれぞれの分類に分かれて、多くのその他の制御因子と化合物が対照の各ステップに存在するかもしれないが、本願発明者らは、明確さのために例を挙げただけである。さらに、この図の制御因子および化合物の位置は、これらが細胞内で生じうる他の関連性のない活性を排除するものではなく、単にeIF4Eレギュロンにおける現在既知の役割に言及するにすぎない。 エストロゲンレセプタ(ER)、プロゲステロンレセプタ(PR)、上皮成長因子レセプタ(EGFR)、Her2およびeIF4EのAQUAスコアを用いて行われた、乳癌のタンパク質発現レベルの監視なし階層クラスタ化分析を示す。さらなる詳細は、例5を参照。

Claims (42)

  1. 細胞を化16の化合物、化18の化合物、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される化合物と接触させるステップを含む、前記細胞中の4E活性を阻害する方法。
  2. 前記細胞が腫瘍を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記細胞が被験体の体内にある、請求項1に記載の方法。
  4. 細胞を化16の化合物、化18の化合物、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される化合物と接触させるステップを含む、前記細胞の細胞増殖を阻害する方法。
  5. 前記細胞が腫瘍を含む、請求項4に記載の方法。
  6. 前記細胞が被験体の体内にある、請求項4に記載の方法。
  7. 被験体を化16の化合物、化18の化合物、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される化合物と接触させるステップを含む、それを必要とする被験体における癌を処置する方法。
  8. 前記化合物の投与量が体重1kgにつき約0.1乃至約1 mgである、請求項7に記載の方法。
  9. 前記化合物がリバビリン、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される、請求項7に記載の方法。
  10. 前記癌が高4E活性が原因で生じる、請求項7に記載の方法。
  11. 前記癌が、乳癌、大腸癌、頭頸部癌、甲状腺癌、肺癌、非ホジキンリンパ腫、前立腺癌、子宮頸癌、膀胱癌、非小細胞肺癌、精巣癌、卵巣癌、子宮癌、膵臓癌、大腸癌、胃(gastric)癌、皮膚癌、胃(stomach)癌、食道癌、副甲状腺癌、脳癌、胆道癌、横紋筋肉腫、結節硬化症、および血液癌、ならびに慢性および急性骨髄性白血病からなるグループから選択される、請求項7に記載の方法。
  12. 遺伝子治療物質を前記細胞に接触させるか前記被験体に投与するステップを含む、請求項7に記載の方法。
  13. 生物製剤、キナーゼ阻害物質、および化学療法剤の1つ以上を、前記細胞に接触させるか前記被験体に投与するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
  14. 前記ベクタを化16の化合物、化18の化合物、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される化合物と接触させるステップを含む、4E-SE対照要素を含む癌治療用ベクタを阻害または制御する方法。
  15. 癌を診断する方法であって、(a) 被験体の細胞において、少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルを決定するステップと、(b) 少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルと、被験体の癌に関連する4Eレギュロン成分の発現レベルとを比較するステップと、を含み、類似する少なくとも1つの4Eレギュロン成分のレベルが、前記被験体が癌またはその中の少なくとも一つの症状を有するかまたは発症の可能性があることを示す、方法。
  16. 少なくとも1つの4Eレギュロン成分の量を4Eに対する抗体を用いて決定する、請求項15に記載の方法。
  17. 少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルを、少なくとも1つの4Eレギュロン成分のAQUA(登録商標)スコアを決定することによって決定する、請求項15に記載の方法。
  18. 癌の予後または病期を決定する方法であって、(a) 被験体の細胞において、少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルを決定するステップと、(b) 少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルと、癌の特定の病期である被験体の癌に関連する4Eレギュロン成分の発現レベルとを比較するステップと、を含み、少なくとも1つの4Eレギュロン成分の類似するレベルが前記被験体の癌の病期を示す、方法。
  19. 少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルと、少なくとも1つの4Eレギュロン成分の発現レベルの少なくとも1つの参照セットとを比較するステップを含み、前記参照セットが少なくとも1つの4Eレギュロン成分の特定の発現レベルに関連する癌の病期を示す、請求項18に記載の方法。
  20. 請求項14乃至19のいずれかに記載の方法を実施するための試薬、および任意にその使用説明書を含む、キット。
  21. 化16の化合物
    Figure 2009522281
    およびその誘導体であって、当該式において、
    R1は、直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニル、水素、およびアルキニル基からなるグループから選択され、
    R2は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、芳香族アミン、アミノ基およびアミド基からなるグループから選択され、
    R3は酸素および硫黄からなるグループから選択され、
    R4は、ヒドロキシル、リン酸、少なくとも1つの塩基に結合するリン酸、シロキサン、カルボン酸、カルボキシメチル、カルバミン酸、アミド、チオエーテル、酸化エチレンリンカ、スルホン酸、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ基からなるグループから選択される、式で表される化合物を含む組成物。
  22. R1が-H, -CH3 およびCH2CH3からなるグループから選択される、請求項21に記載の組成物。
  23. R2が-NH2、-NH2CH3、-NH2CH2CH3、-NH2CH2CH2CH3、-NH2CH(CH3)2、-NH2CH2CH2CH2OH、- NH2CH2CH2CH(OH)CH3、および-NH2CH(CH2OH)CH3からなるグループから選択される、請求項21に記載の組成物。
  24. 化18の化合物であって、
    Figure 2009522281
    およびその誘導体であって、当該式において、
    R1は、直鎖または分岐鎖アルキル、アルケニル、水素、およびアルキニル基からなるグループから選択され、
    R2は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、芳香族アミン、アミノ基およびアミド基からなるグループから選択され、
    R3は酸素および硫黄からなるグループから選択され、
    R4は、ヒドロキシル、リン酸、少なくとも1つの塩基に結合するリン酸、シロキサン、カルボン酸、カルボキシメチル、カルバミン酸、アミド、チオエーテル、酸化エチレンリンカ、スルホン酸、スルホンアミド、チオホルムアセタール、ホルムアセタール、オキシム、メチレンイミノ、メチレンメチルイミノ、メチレンヒドラゾ、メチレンジメチルヒドラゾ、およびメチレンオキシメチルイミノ基からなるグループから選択され、
    R5は、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、芳香族アミン、アミノ基およびアミド基からなるグループから選択される、式で表される化合物を含む組成物。
  25. R1が-H, -CH3 およびCH2CH3からなるグループから選択される、請求項24に記載の組成物。
  26. R2が-CH3、-CH2CH3、-CH2CH2CH3、-CH(CH3)、-CH2CH2CH2OH、-CH2CH2CH(OH)CH3、および-CH(CH2OH)CH3からなるグループから選択される、請求項24に記載の組成物。
  27. 細胞を化16の化合物、化18の化合物、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される化合物と接触させるステップを含む、前記細胞中の4Eレギュロン活性を阻害する方法。
  28. 前記細胞が腫瘍を含む、請求項27に記載の方法。
  29. 前記細胞が被験体の体内にある、請求項27に記載の方法。
  30. 細胞を化16の化合物、化18の化合物、ピラゾマイシン、ビラミジン、およびショウドマイシンからなるグループから選択される化合物と接触させるステップを含む、前記細胞中のアポトーシスを阻害する方法。
  31. 前記細胞が腫瘍を含む、請求項30に記載の方法。
  32. 前記細胞が被験体の体内にある、請求項30に記載の方法。
  33. 前記細胞が高4E活性を有する、請求項30に記載の方法。
  34. 前記化合物が、ピラゾマイシン、ビラミジン、ショウドマイシン、およびリバビリンからなるグループから選択される、請求項1、4、7、14、27または30のいずれかに記載の方法。
  35. 前記化合物がリバビリンである、請求項34に記載の方法。
  36. 前記化合物が被験体に投与され、前記化合物が1日に体重1kgにつき約0.001乃至約5mgのレベルで投与される、請求項1、4、7、14、27または30のいずれかに記載の方法。
  37. 前記化合物が前記被験体に1日に体重1kgにつき約0.1乃至約2.5 mgのレベルで投与される、請求項36に記載の方法。
  38. 前記化合物が被験体に投与され、前記化合物が1日に体重1kgにつき約0.1乃至約1 mgのレベルで投与される、請求項1、4、7、14、27または30のいずれかに記載の方法。
  39. 細胞毒性物質を前記細胞に接触させるかまたは前記被験体に投与するステップを含む、請求1、4、7、14、27または30のいずれかに記載の方法。
  40. 生物製剤、キナーゼ阻害物質、および化学療法剤の1つ以上を、前記細胞に接触させるか前記被験体に投与するステップをさらに含む、請求項1、4、7、14、27または30のいずれかに記載の方法。
  41. 遺伝子治療物質を前記細胞に接触させるかまたは前記被験体に投与するステップを含む、請求1、4、7、14、27または30のいずれかに記載の方法。
  42. 前記細胞が高4E活性を有する、請求項4に記載の方法。
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