JP2009513949A - 鳥卵の胚盤葉の位置を迅速かつ正確に特定する方法 - Google Patents

鳥卵の胚盤葉の位置を迅速かつ正確に特定する方法 Download PDF

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Abstract

鳥卵内における胚盤葉の位置を非侵襲的に特定する方法が提供される。卵の向きに基づいてその下に胚盤葉が位置している箇所の卵殻に開口を形成し、露出した内卵殻膜をおよびその下の物体の画像を取得し、画像内の胚盤葉の視認性を高めるように前記取得した画像を処理し、画像内における前記胚盤葉の位置を特定する。画像を取得する前に、内卵殻膜の透明性を高めるために、物質が卵に塗布されてもよい。画像内における胚盤葉の位置を特定することは、画像内における胚盤葉の位置座標を決定することを含んでもよい。これらの位置座標は、その後に卵の処理を行なう卵処理機器に送信されてもよい。

Description

[関連出願]
本出願は、2005年9月20日に出願された米国仮特許出願第60/718,778号の利得および優先権を主張し、この開示内容は、参照することによって、本明細書に全体が記載されるかのように含まれるものとする。
[発明の分野]
本発明は、一般的には卵に関し、さらに詳細には、卵処理方法に関する。
家禽孵化場および他の卵処理施設では、多数の卵が扱われ、かつ処理される。「処理」という用語は、限定されるものではないが、胚がまだ卵内にある間に、(すなわち、卵内(in ovo)で)、生きた卵を薬剤、栄養物、ホルモン、および/または他の有益な物質によって処理することを含む。孵化後の羅患率および死亡率を低下させ、潜在的な成長率または得られる鳥の最終的な大きさを増し、さらに胚の性別決定に影響を及ぼすために、鳥卵内への種々の物質の卵内注入がなされている。また、卵内で鳥に免疫性を与えるために、生きた卵内へのワクチンの注入も効果的になされている。
初期胚を含む鳥卵に注射をすることが望ましい多くの用途がある。例えば、胚盤葉のような初期胚に物質を送達することが望ましい場合がある。一例を挙げると、家禽業界では、発育中の胚内に異質な核酸分子を導入するために(すなわち、トランスジェニック鳥を作るために)、または異質な細胞を導入するために(すなわち、キメラ鳥を作るために)、初期胚を卵内で操作することが望ましいことがある。しかし、残念ながら、多くの場合、鳥卵内における胚盤葉の位置を特定するのが困難であり、もし特定したとしても、視認性が一般的に乏しく、特に、卵の内卵殻膜を介する視認性が乏しい。加えて、胚盤葉および周囲の卵内物質の色およびコントラストは、通常、類似しているので、胚盤葉を肉眼によって検出するのがさらに困難になる。もし内卵殻膜に開口を形成したなら、(内卵殻膜に開口を形成した後)、胚盤葉をより容易に検出することができるだろう。しかし、内卵殻膜の破損が、発生中の胚を損傷し、続いて、孵化に不都合をもたらす可能性がある。加えて、物質を胚盤葉に注入する従来の方法は、多くの場合、胚盤葉の位置を特定するのが困難であるという理由から、信頼性が乏しい。
従って、卵に損傷をもたらすことなく、鳥卵内の胚盤葉の位置を特定し、該胚盤葉を操作する改良された方法が、当技術分野に必要とされている。
前述の検討を考慮して、鳥卵内における胚盤葉の位置を特定する方法が提供される。本 発明のいくつかの実施形態によれば、卵の向きに基づいて、その下に胚盤葉が位置している箇所の卵殻に開口を形成して内卵殻膜を露出させ、露出した内卵殻膜をおよびその下の物体の画像を取得し、画像内の胚盤葉の視認性を高めるように前記取得した画像を処理し、画像内における前記胚盤葉の位置を特定する。画像を取得する前に、内卵殻膜の透明性を高めるために、物質を卵に塗布してもよい。画像内における胚盤葉の位置を特定することは、画像内における胚盤葉の位置座標を決定することを含んでもよい。これらの位置座標は、後続の卵の処理を行なう卵処理機器に送信されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態によれば、後続の卵の処理は、卵殻の開口を通して位置が特定された胚盤葉内に、装置を伸ばすことを含んでもよい。該装置として、物質を胚盤葉内に放出する送達装置、および/または胚盤葉から試料物体(例えば、胚盤葉細胞、胚盤葉に隣接する細胞、など)を採取する採取装置、および/または卵内から情報を検出する検出装置が挙げられる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、画像を取得した後、またはさらに他の処理(例えば、物質を卵内に注入する処理、卵から物体を採取する処理、卵内から情報を検出する処理、など)を行なった後、卵内の開口を密封してもよい。次いで、密封された卵は、孵化するまで孵卵してもよい。
本発明のいくつかの実施形態によれば、鳥卵が有精であるかどうかを判定する方法は、卵殻の一部に開口を形成し、露出した内卵殻膜およびその下の物体の画像を取得し、取得した画像内における胚盤葉の存在を決定するために、該画像を処理し、胚盤葉の有無に基づいて、鳥卵が受精しているかどうかを評価することを含む。
以下、本発明の好ましい実施形態が示される添付の図面に基づいて、本発明をさらに十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実施されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示内容が、綿密かつ完全で、本発明の範囲を当業者に十分に知らしめるように、提供されるものである。
図面を通して、同様の番号は、同様の要素を指す。図面において、線、層、部品、要素、または特徴部の厚みは、明瞭にするために、誇張されていることがある。また、明瞭にするために、連続していることを示す破線が用いられる。これらの破線は、他に別段の規定のない限り、光学的な特徴または光学的な操作を示す。本明細書に記載される刊行物、特許出願、特許、および他の参考文献は、参照することによって、それらの全体が本明細書に含まれるものとする。
ある要素が他の要素の「上に」存在すると記述されたとき、この要素は、他の要素の上に直接的に存在してもよいし、または介在要素が存在してもよいことを理解されたい。対照的に、ある要素が他の要素の「上に直接的に」存在すると記述されたとき、どのような介在要素も存在しない。また、ある要素が他の要素に「接続される」または「取り付けられる」と記述されたとき、この要素は、他の要素に直接的に接続または取り付けられてもよいし、介在要素が存在してもよいことを理解されたい。対照的に、ある要素が他の要素に「直接的に接続される」または「直接的に取り付けられる」と記述されたとき、どのような介在要素も存在しない。「上方」、「下方」、「垂直」、「水平」などの用語は、本明細書では、説明の目的でのみ用いられる。また、他の特徴部に「隣接して」配置される構造体または特徴部と記載されたとき、この構造部または特徴部は、隣接する特徴部を覆う部分または隣接する特徴部の下方の部分を有し得ることが、当業者によって理解されるだろう。
他に別段の規定のない限り、本明細書に用いられる技術用語および科学用語は、全て、本発明が属する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の記述に用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を限定するものではない。本発明の説明および特許請求の範囲に用いられる単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段の定めをしない限り、複数形をも含むものとする。本明細書に用いられる用語「および/または」は、1つまたは複数の関連する記載項目のいずれかおよび全ての組合せを含む。
本明細書に用いられる用語「鳥」および「鳥被検体」は、どのような鳥種の雄および雌をも含むことを意図しているが、主に、卵用および食肉用として、またはペットとして商業的に飼育される家禽を含むことを意図している。従って、用語「鳥」および「鳥被検体」は、種々の鳥、例えば、限定されないが、鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、ウズラ、雉、インコ、オウム、バタン、オカメインコ、ダチョウ、エミューなどを含むことを特に意図している。
本明細書に用いられる用語「初期胚」は、産卵時(胚盤葉期)から始原生殖細胞(PGC)が移動している発生段階ごろまでの鳥胚を指す。特に、鶏胚に関し、「初期胚」は、一般的に胚ステージ20(H&H)ごろの胚またはそれ以前の胚である。鶏胚の発育段階は、当技術分野において十分に知られている。例えば、「鶏発育の図表集(The Atlas of Chick Development)」、R.Bellairs &M.Osmond編、Academic Press、1998年を参照されたい。
本明細書に用いられる用語「胚盤葉」は、当技術分野においてその用語について理解されている意味を有する。通常、胚盤葉は、産卵時から原腸形成の終了時までの胚を含む。胚盤葉は、当技術分野において、代替的な名称「胚盤(germinal disc)または(embryonic disc)」で呼ばれることもある。胚盤葉は、初期胚の分裂中に生じて原腸形成の終了時まで存続する平らな細胞盤として記述されることもある。産卵時には、胚盤葉の2つの主領域、すなわち、中心に位置する明領域および周辺に位置する暗領域が肉眼によって見える(鶏発育の図表集(The Atlas of Chick Development)」、R.Bellairs &M.Osmond編、Academic Press、1998年)。特に、鶏胚に関し、胚盤葉は、典型的には、産卵時(すなわち、ステージIXまたはステージX(EG&K))からステージXIII(EG&K)ごろまでの胚またはそれ以降の胚として特徴付けられる。
本明細書に用いられる用語「注入」および「注入する」は、装置を卵または胚内に挿入する方法、例えば、物質を卵または胚内に送達または放出する方法、物体(すなわち、試料)を卵または胚から採取する方法、および/または検出装置を卵または胚に挿入する方法を含む。
用語「キメラ鳥」または「キメラ胚」は、それぞれ、「ドナー」と呼ばれる他の鳥または胚からの細胞を含むレシピエント鳥またはレシピエント胚を指す。用語「トランスジェニック鳥」および「トランスジェニック胚」は、当技術分野において一般的に理解されている意味に準じて、本明細書では用いられる。トランスジェニック鳥またはトランスジェニック胚は、外来の核酸配列を1つまたは複数の細胞内に含む。
本明細書に用いられる用語「膜」は、卵内の組織のどのような層をも指す。卵内の例示的な膜として、限定されないが、外卵殻膜、内卵殻膜、漿尿膜、卵黄膜、および羊膜が挙げられる。
図1を参照すると、鳥卵10が示されている。図示の卵10は、卵殻12、外卵殻膜14、内卵殻膜16、および卵10の鈍端において外卵殻膜14と内卵殻膜16との間に位置する気室18を備えている。図示の卵10は、内側の薄い卵白24a、外側の厚い卵白24b、および外側の薄い卵白24cによって囲まれた、卵黄20および胚盤葉22も含む。
図2は、本発明のいくつかの実施形態による、鳥卵内における胚盤葉の位置を特定する方法を示すフローチャートである。これらのブロックに示される機能は、図2に示されるのと異なる順番で実施されてもよいことに留意されたい。連続して示される2つ(または3つ以上)のブロックは、実際には、実質的に同時に実行されてもよいし、またはブロックは、それらに含まれる機能性に応じて、逆の順番または異なる順番で実行されることがあってもよい。
加えて、本発明の実施形態は、鳥卵の胚発育の種々の段階に利用されてもよいことに留意されたい。本発明の実施形態は、鳥卵の胚盤葉段階に限定されない。例えば、本発明の実施形態は、胚盤葉以降の段階、例えば、孵卵3日〜5日の段階に利用されてもよい。
まず、卵殻の一部および卵の外卵殻膜の一部を除去し、内卵殻膜を露出させる開口または窓を形成する(ブロック100)。好ましくは、内卵殻膜は、卵殻に窓を形成することによって悪影響を受けることなく、本質的に健全に維持される。窓は、種々の方法によって、例えば、パンチ、ドリルによって、または当業者に公知の他の装置によって、形成されてもよい。
加えて、窓は、卵のどのような適切な位置、例えば、赤道軸に近い卵の側、卵のいずれかの端などに作られてもよい。本発明のいくつかの実施形態では、卵殻の開口は、略水平に配置された卵の卵殻の上向き部分で、かつ気室の上方に導入される。当業者であれば、初期胚(例えば、胚盤葉)は、典型的には、卵の最上部の領域またはその近くに位置することを理解するだろう。従って、卵殻の開口は、一般的に、胚を卵内の異なる位置に導く手段が取られない限り、初期胚(例えば、胚盤葉)が位置すると予想される卵の最上部分の個所の近くに作られる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、微生物による汚染(または他の汚染)を低下させるために、窓を形成する部位の少なくとも周囲の卵の表面が、(例えば、アルコールまたは他の消毒液によって)消毒されてもよい。しかし、窓のこの部位を含む卵の消毒は、本発明の実施形態に関して、必ずしも必要ではない。
本発明のいくつかの実施形態によれば、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)またはグリセロールのような物質を内卵殻膜に塗布することによって、内卵殻膜の透明度を高められてもよい(ブロック200)。内卵殻膜の透明度を高めることができる他の物質または画像化を促進することができる他の物質が利用されてもよい。これらの他の物質の例として、限定されないが、水、アルコール、リン酸塩緩衝食塩水(PBS)、カノール油、植物油、鉱油、トリアセチン、アセトン、エチレングリコール、モノメチルエーテルなどが挙げられる。
次いで、露出した内卵殻膜および(胚盤葉を含む)内卵殻膜の下の物体の1つまたは複数のデジタル画像を撮影する(ブロック300)。本発明のいくつかの実施形態によれば、単一のフレームデジタル画像が、デジタルカメラによって取得されてもよいし、および/またはデジタルビデオ画像が、デジタルビデオカメラによって取得されてもよい。しかし、本発明の実施形態は、デジタル画像化に限定されない。露出した内卵殻膜およびその下の物体の非デジタル画像が取得され、次いで、以下に説明するように、後続の画像処理用のデジタルフォーマットに変換されてもよい。
本発明の実施形態によれば、他の画像化技術および画像化手法を、胚盤葉の画像を取得するのに用いてもよい。例えば、高解像度超音波および光学的干渉断層法(OCT)を用いてもよい。例えば、小形OCTプローブが、卵内に挿入されるように構成されたニードルまたは他の装置の先端に配置されてもよい。OCTは、上方から一連の走査を行い、液体で満たされた領域を探索することによって、胚盤葉およびその下の胚下腔の三次元画像を生成することができる。次いで、ニードルが、卵内に、(例えば、本質的に無傷の内卵殻膜の下に)挿入されてもよい。
次いで、取得したデジタル画像に、画像内の胚盤葉の視認性を高めるために、1つまたは複数の画像処理技術が施されてもよい(ブロック400)。しかし、本発明の実施形態によれば、画像処理は必ずしも必要ではない。胚盤葉の視認性は、未処理の画像においても十分な場合がある。次いで、「マシンビジョン」ソフトウエアを用いて、胚盤葉の位置を特定する(ブロック500)。この後、窓および内卵殻膜を通して胚盤葉および/または胚盤葉に隣接する領域内に装置を挿入するための処理機器に、デジタル画像内における胚盤葉の位置座標を中継する(ブロック600)。装置は、物質を注入する装置でもよいし、および/または物体を採取する装置でもよいし、卵内から情報を検出する装置でもよい。もし卵内に挿入される装置が送達装置である場合、1つまたは複数の物質が、送達装置を通して放出され、胚盤葉および/またはその近傍内に堆積される。1つまたは複数の物質は、卵内の他の個所に堆積されてもよい。本発明の実施形態は、1つまたは複数の物質を胚盤葉またはその近傍に堆積することに限定されない。
もし卵内に挿入される装置が採取装置である場合、1つまたは複数の試料(例えば、胚盤葉細胞など)が、胚盤葉および/またはその近傍から採取される。1つまたは複数の試料が、卵の胚外部分(例えば、卵黄または卵白)から採取されてもよい。例えば、微生物汚染(例えば、サルモネアラ菌)の有無を決定するために、試料が卵白から採取されてもよい。
当業者によって理解されるように、採取装置は、物体(例えば、尿膜腔液、他の液体、など)を卵から採取するように設計されたニードルであってもよい。例えば、このニードルは、丸い先端およびその先端に隣接するニードル部分内に形成された開口で終端する軸方向に延在する管腔を有する。管腔を減圧すると、物体が、開口を介して管腔内に採取される。丸い先端によって、管腔が物体によって詰るのが阻止される。
典型的には、卵から試料を採取し、その試料から情報を得る。試料は、例えば、胚の雌雄を鑑別する方法または胚の生存率を決定する方法と関連して、採取されてもよい。一例を挙げると、細胞を含む試料が胚から採取され、これらの細胞は、(通常、卵から採取された直後に)、当業者には周知のように、性染色体または染色体の性特異的配列を検出するために、分析されてもよい。試料は、例えば、関心のある特定の遺伝子または対立遺伝子が胚内に存在するかどうかを判定するために、他のDNAに基づく分析を行なうのに用いられてもよい。
いくつかの実施形態では、例えば、米国特許第6,032,612号に記載されているような多部位注入装置または多部位採取装置が用いられてもよい。他の例示的な送達装置および/または採取装置として、米国特許第5,136,979号、米国特許第4,681,063号および第4,903,635号、および米国特許第4,040,388号、第4,469,047号、および第4,593,646号に記載されている装置が挙げられる。
もし卵内に挿入される装置が検出器の場合、卵の内部から、種々の情報が検出されてもよい。検出器は、卵の胚外個所(例えば、卵黄または気室)に挿入されてもよい。代替的に、検出器は、(前述したように)、胚の近傍に配置されてもよい。他の実施形態では、検出器は、胚の明域または暗域内に配置されてもよいし、あるいは胚下腔内に配置されてもよい。検出器は、限定されないが、胚の大きさ、胚の位置、胚の発生段階および/または胚の任意の特性、胚の性別、および/または胚の生存率を含む情報を収集するために用いられてもよい。検出装置は、胚および胚下腔の位置に関する情報を得るために用いられてもよい。
情報は、検出器に接続された機器(例えば、コンピュータまたは他のデータ処理装置)によって、取得されるとよい。種々の検出器、例えば、限定されないが、電気センサ、光学センサ、化学センサ、温度センサ、音響センサ、圧力センサ、または物理的または化学的パラメータを検出する他の装置が用いられてもよい。典型的な検出器が、例えば、ヘブランク(Hebrank)に付与された米国特許第6,244,214号に記載されている。
物質を注入した後、および/または試料を採取した後、および/または卵から情報を検出した後、装置が卵から引き出される。卵殻の小開口は、封止剤によって密封されてもよく、次いで、卵を孵化するまで孵卵してもよい。
当業者であれば、本発明の方法が、例えば、商業用養鶏場において、複数の卵に対して行なわれてもよいことを理解するだろう。さらに、本明細書に記載される方法は、完全に手動でもよいし、完全に自動化されてもよいし、または半自動であってもよい。
本発明のいくつかの実施形態によれば、画像化システムは、ハードウエア要素およびソフトウエア要素を備えている。ハードウエア要素は、光源(例えば、150ワットハロゲン光源など)、デジタルビデオカメラおよび適切な焦点レンズ、および例えば、ビデオカード(例えば、IEEE1394(ファイヤワイヤ(FireWire))カード)を介してカメラに接続されたコンピュータまたは他のデータプロセッサを含む。特定の実施形態によれば、高ダイナミックレンジを有する12ビット以上の高解像度のカメラが利用される。例示的なカメラは、高ダイナミックレンジ(112dB以下)および16ビット解像度を有すると共に、累積スキャンCMOSセンサ技術を有する単色バスラー(Basler)A601HDRである。しかし、種々のカメラが利用されてもよい。本発明の実施形態は、特定のカメラ特定のレンズ、および/または特定の画像取得技術および画像記憶技術(例えば、CCDまたはCMOS)に制限されない。本発明の実施形態は、光源の特定の形式、特定の光源ワット数、または光源の特定位置および/または方位に制限されない。
本発明のいくつかの実施形態によれば、用いられ得る追加的な要素として、(黄色の)周囲に対して(白色の)肺盤葉のコントラストをもたらすのに役立つ光フィルターおよび/または光源(例えば、エドモンド・オプテックス(Edmund Optics)、オメガ・オプテックス(Omega Optics)のような製造元から市販されている光フィルターおよび/または光源)のような光学的要素が挙げられる。例えば、出願人は、もし胚盤葉の照明に青色光を用いた場合、胚盤葉が極めて見やすくなることを見出している。青色光は、青色光源によって生成されてもよいし、あるいは青色フィルタリング媒体(例えば、レンズなど)によってフィルタリングされた白色光源によって生成されてもよい。この視認性の改良は、画像取得および各取得した画像内における胚盤葉を探索する処理アルゴリズムを含むソフトウエア要素を援用する。
本発明のいくつかの実施形態によると、画像処理は、画像内における胚盤葉の位置を特定し、さらに任意選択的に、画像内における胚盤葉のコントラストを高めるために用いられる。胚盤葉の位置を特定する画像処理は、パターンマッチングおよびブロブ分析のようなアルゴリズムを含む。画像内における胚盤葉のコントラストを高める画像処理は、RGB面抽出および種々の他のフィルタリングアルゴリズム(例えば、平滑化、エッジ検出、ガウスフィルタリングなど)を含む。本発明の実施形態によって用いられ得る例示的な画像処理技術は、米国特許第6,219,452号、第6,222,940号、第6,229,921号、第6,256,625号、第6,370,270号、第6,366,688号、第6,493,079号、および第6,535,640号に記載されている。
例えば、パターンマッチングでは、ユーザは、テンプレート画像を後続の画像内に見出されるようにソフトウエアに対して選択し、次いで、マッチングの数、探索の深さ(密から粗)、類似度制限、および回転パターンのような他のパラメータを設定する。パターンマッチング、ブロブ分析、RGB面抽出、および他の画像処理技術は、当業者にはよく知られているので、本明細書では、これ以上説明する必要はないだろう。
本発明の実施形態において用いられ得る例示的な画像ソフトウエアとして、ナショナル・インストルメント(National Instrument) 社から市販されている「Vision Builder for Automated Inspection」が挙げられる。このソフトウエアは、ナショナル・インストルメント社から市販されている「LabVIEW」ソフトウエアと良好に統合され、圧力検知および注射を含む他の卵処理手順と共に用いられる。
図3Aを参照すると、頭上デジタルビデオカメラ30は、固定器またはクレードル32を介して適所に保持された窓の付けられた卵10(すなわち、前述したように殻に形成された開口を有する卵)の画像を取得するように構成されている。卵は、限定されることなく、種々の装置を介して適所に保持されてもよい。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、多数の卵が、一緒に処理されてもよい。例えば、複数の卵に対して、エッグフラット(egg flat)がクレードル32として用いられてもよい。
ビデオカメラ30によって取得された胚盤葉22の代表的な画像が、図3Bに示されている。図示の胚盤葉22は、周囲の卵黄20から殆ど識別できない。
本発明の実施形態は、光源の図示されている方位に制限されない。本発明の他の実施形態によれば、(例えば、アドバンスド・イルミネーション(Advanced Illumination) 社から市販されている)軸方向拡散照明器が、カメラと卵との間に配置されてもよい。軸方向拡散照明器は、光を胚盤葉に向かって適切に導き、次いで、光をカメラ30に戻すために、(青色)LEDによって包囲された傾軸式2色性ミラーを有している。
図3Cを参照すると、画像処理ソフトウエアによって図3Bの画像を処理することによって、卵黄20に対する胚盤葉22のコントラストが大きくなった画像が得られる。図3Dでは、ソフトウエアは、画像内において、胚盤葉22を検出し、その胚盤葉22の周囲にボックス40を配置する。このボックスの座標(例えば、ボックスの幾何学的な中点)は、前述したように、胚盤葉22内および/またはその近くに挿入される装置に与えられるとよい。
本発明のいくつかの実施形態によれば、前述の画像化システムは、多数の卵を一度に取扱うために、拡充されてもよく、多数のカメラを備えてもよい。さらに、本発明のいくつかの実施形態によれば、実質的に任意の方位、例えば、水平方位、垂直方位、または傾斜方位にある卵が処理されてもよい。
本発明のいくつかの実施形態は、特に、孵化していない0日目の有精卵内の胚盤葉の位置を正確かつ迅速に特定するのに適するようにされている。本発明のいくつかの実施形態は、孵卵中、例えば、0〜5日中の胚を画像化するのに用いられてもよい。
本発明のいくつかの実施形態は、鳥卵内における胚盤葉の位置を特定することに制限されない。本発明のいくつかの実施形態によって、胚発生を監視してもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、循環系へのタンパク質またはベクターの送達を容易にするために、特定の血管の位置を決定してもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、卵が有精であるかまたは無精であるかを決定するために、画像化技術を用いてもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、画像化技術は、胚の向きを変える技術または胚を位置決めする技術と関連して、用いられてもよい。胚を導く技術および胚を位置決めする技術は、本出願の譲渡人によって共同所有されている米国特許出願第10/216,427号に記載されている。
胚盤(典型的には、1つまたは2つの細胞)は、卵子が受精されているかどうかに関わらず、胚形成が生じる卵黄の表面の領域である。この胚盤は、いったん受精されると、最終的に、胚盤葉になる(すなわち、胚盤は、1つまたは2つの細胞から何万もの細胞に増殖する)。従って、無精卵は、胚盤葉を有しない。
本発明のいくつかの実施形態によれば、鳥卵が有精であるかどうかを判定する方法は、卵殻の一部に開口を形成し、露出した内卵殻膜およびその下の物体の画像を取得することを含む。取得した画像は、画像内に胚盤葉が存在するかどうかを判定するために処理される。画像内における胚盤葉の有無の検出に基づいて、卵が受精しているかどうかが決定される。もし胚盤葉が検出されないか、または画像における形状が胚盤葉の特性(例えば、形状、寸法など)と一致しない場合、その卵は有精ではないと見なされる。
内卵殻膜を介して胚盤葉に注射することに対する1つの大きな障害は、胚盤葉を内卵殻膜を通して見るのが困難であることが多い点にある。何故なら、内卵殻膜は、いくらか半透明であっても、典型的には透明ではないからである。この問題に対処するために、本発明者らは、内卵殻膜にいくつかの液体物質を塗布することによって、内卵殻膜をより透明にすることを試みた。操作の前に、標準的な工業的実施条件(75%相対湿度、16℃、8日間)に従って、卵を貯蔵した。殻および外卵殻膜の気室に対応する個所を除去し、健全な内卵殻膜を露出させた。綿棒を用いて、4種類の液体(水、鉱油、グリセロール、およびDMSO)の1つを、内卵殻膜に塗布した。
水および鉱油を用いた場合、内卵殻膜の透明度に対して、ほとんど、効果が得られなかった。グリセロールおよびDMSOを用いた場合、いずれも、内卵殻膜を「透明化」する効果が得られた。透明にはならないが、透明度が確かに改良された。胚盤葉がいくらか目に見える場合、グリセロールまたはDMSOの添加によって、胚盤葉の視認性および深さ認知性が改良された。胚盤葉が全く目に見えない場合、グリセロールまたはDMSOの添加によって、大抵、胚盤葉の視覚化が可能になり、無精卵を識別する能力が改良された(図4A〜4D参照)。
図4A〜4Dは、DMSOを用いることによる卵内の胚盤葉の視認性の向上を示している。図4A、4Cは、未処理の卵を示し、図4B、4Dは、DMSOが塗布された同じ卵を示している。図4B、4Dにおいて、胚盤葉は、矢印Aによって示されている。図4Aにおける胚盤葉は、不鮮明な滲みのように見えるが、DMSOによる処理によって、画像における胚盤葉の鮮明さが大きく改良されていることに留意されたい。胚盤葉が全く見えない図4Cにおいて、DMSOの添加によって、図4Dに示されるように、胚盤葉が画像内に鮮明に見えるようになった。
DMSOは、グリセロールよりもわずかに良好な視認性を与えると考えられる。グリセロールは、(粘着性があって、内卵殻膜に塊が残るので)、その作業が困難な傾向にある。DMSOは、迅速に蒸発し、または内卵殻膜内を拡散し、痕跡が残らない。DMSOによる内卵殻膜の処理は、手動による注射の場合、胚盤葉の視覚化を促進する極めて有用な技術とみなされる。
胚発生に対するDMSOの毒性を評価するために、胚を実施例1において述べたようにDMSOによって処理し、孵化させ、次いで、DMSOによって処理していない胚と比較した。内卵殻膜の透明化に及ぼすDMSOの効果をさらに評価するために、4日間しか貯蔵していない卵を用いた。以下の3つの処理グループを用いた。
A)窓+DMSO:卵の鈍端に、内卵殻膜を損傷させずに、窓を設けた。内卵殻膜をDMSOで塗布した。目に見える胚盤葉を有する卵のみを、この処理グループの卵とした。注射をシミュレートするために、胚盤葉をヒュマゲン(Humagen)マイクロピペットによって突刺し、KRB媒体で満たした。これらの卵を(シリコーン+テープ)によって密封した。N=42とした(すなわち、42個の卵がこのグループに含まれる)。
B)窓+DMSOなし:卵の鈍端に、内卵殻膜を損傷させずに、窓を設けた。これらの卵を(シリコーン+テープ)によって密封した。N=39とした(すなわち、39個の卵がこのグループに含まれる)。
C)未操作:全ての卵を、操作せず、孵化させた。N=54とした(すなわち、54個の卵がこのグループに含まれる)。
Figure 2009513949
(他の調査から)、孵卵器内に腐った卵が生じ、処理グループAの全体にわたって細菌が漏出し、おそらく、その結果として、「腐敗」の項に示される腐敗が生じ、後期死亡鶏がもたらされたことに留意されたい。
窓のみを設け、密封した卵と比較して、DMSOによって処理された卵の孵化の比率が低い。この孵化率の低下の一部は、孵化器内の他の卵からの細菌汚染によって生じた可能性がある。また、グループBまたはCの卵の初期死亡よりも、グループAの卵の初期死亡の方が多い。グループAには無精卵が殆どまたは全く存在していないので、初期死亡のこの増大は、DMSOの毒性によると考えられる。しかし、DMSOによる胚盤葉の視認性および注入性の向上は、DMSOの毒性のわずかなリスクを上廻ると思われる。
前述の説明は、本発明の例示であり、本発明を制限すると解釈されるべきではない。本 発明のわずかな例示的な実施形態について説明したが、当業者であれば、本発明の新規の示唆および利点から実質的に逸脱することなく、例示的な実施形態に対する多くの修正が可能であることを容易に理解するだろう。従って、このような修正は、全て、特許請求の範囲に記載される本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本発明は、特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の等価物は、特許請求の範囲内に包含されるべきである。
典型的な鳥卵の側断面図である。 本発明のいくつかの実施形態による、鳥卵内における胚盤葉の位置を特定する行程を示すフローチャートである。 本発明のいくつかの実施形態による、窓が付けられた卵の画像を取得するように構成された頭上ビデオカメラを示すブロック図である。 図3Aのビデオカメラによって取得された胚盤葉の代表的な画像を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態による、胚盤葉のコントラストを高める処理を行なった後の図3Bの代表的な画像を示す図である。 本発明のいくつかの実施形態による、位置ボックスを胚盤葉の周囲に配置させた図3Cの代表的な画像を示す図である。 窓が付けられた卵の写真であって、図4A、4Cにおける露出した内卵殻膜は未処理であり、図4B、4Dにおける露出した内卵殻膜は、胚盤葉の視認性を高めるために、DMSOによって処理されている、卵の写真である。

Claims (20)

  1. 鳥卵内における胚盤葉の位置を特定する方法であって、
    その下に胚盤葉が位置している箇所の卵殻に開口を形成して、内卵殻膜を露出させるステップと、
    前記露出した内卵殻膜およびその下の物体の画像を取得するステップと、
    前記画像内の胚盤葉の視認性を高めるように、前記取得した画像を処理するステップと、
    前記画像内における前記胚盤葉の位置を特定するステップと
    を含む、方法。
  2. 画像を取得する前に、内卵殻膜の透明性を高めるために、卵に対する物質を前記内卵殻膜に塗布することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記画像内における前記胚盤葉の位置を特定することは、前記画像内における前記胚盤葉の位置座標を決定することを含み、前記方法は前記胚盤葉の前記位置座標を卵処理機器に送信することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記位置座標の受信に応じて、前記卵殻の前記開口を通して前記胚盤葉内に装置を伸ばすステップをさらに含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記装置は、物質を前記胚盤葉内に放出する送達装置である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記装置は、試料物体を前記胚盤葉から採取する採取装置である、請求項4に記載の方法。
  7. 前記装置は、前記卵内から情報を検出する検出装置である、請求項4に記載の方法。
  8. 前記卵は、鶏、七面鳥、鴨、ガチョウ、ウズラ、雉、インコ、オウム、バタン、オカメインコ、ダチョウ、およびエミューの卵からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
  9. 前記画像を取得した後、前記卵殻の前記小開口を密封するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  10. 前記卵を孵化するまで孵卵するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記装置は、多重注射送達装置である、請求項5に記載の方法。
  12. 前記卵から採取された前記試料物体は、胚盤葉細胞を含む、請求項6に記載の方法。
  13. 前記検出装置は、電気センサ、光学センサ、化学センサ、温度センサ、音響センサ、および圧力センサからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。
  14. 鳥卵内における胚盤葉の位置を特定する方法であって、
    その下に胚盤葉が位置している箇所の卵殻に開口を形成して、内卵殻膜を露出させるステップと、
    前記内卵殻膜の透明性を高めるために、物質を前記内卵殻膜に塗布するステップと、
    前記露出した内卵殻膜およびその下の物体の画像を取得するステップと、
    前記画像内の胚盤葉の視認性を高めるように、前記取得した画像を処理するステップと、
    前記画像内における前記胚盤葉の位置座標を決定するステップと、
    前記位置座標を卵処理機器に送信するステップと
    を含む、方法。
  15. 前記位置座標の受信に応じて、前記卵殻の前記開口を通して前記胚盤葉内に装置を伸ばすステップをさらに含む、請求項14に記載の方法。
  16. 前記装置は、物質を前記胚盤葉内に放出する送達装置である、請求項15に記載の方法。
  17. 前記装置は、試料物体を前記胚盤葉から採取する採取装置である、請求項15に記載の方法。
  18. 前記装置は、前記卵内から情報を検出する検出装置である、請求項15に記載の方法。
  19. 前記画像を取得した後、前記卵内の前記小開口を密封するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
  20. 鳥卵が有精であるかどうかを判定する方法であって、
    その下に胚盤葉が位置していると見込まれる箇所の卵殻に開口を形成して、内卵殻膜を露出させるステップと、
    露出した内卵殻膜およびその下の物体の画像を取得するステップと、
    前記取得した画像内に胚盤葉が存在するかどうかを判定するために、前記画像を処理するステップと、
    前記画像内における胚盤葉の有無に基づいて、前記鳥卵が受精しているかどうかを評価するステップと
    を含む、方法。
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