JP2009513133A - 癌のウイルス療法のための条件複製ウイルス及び方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、体外及び体内の両方でのウイルスベクターの翻訳のための方法及び組成物を提供する。特に、本発明は、ウイルスベクターの選択的翻訳を引き起こすようにベクターに配置された翻訳制御因子に関する。一実施形態では、本発明は、ベクターを翻訳することができないために正常細胞には影響を与えずに、腫瘍細胞内でウイルスベクターを条件付きで発現する方法及び組成物を提供する。
【選択図】 なし
【選択図】 なし
Description
本発明は、ウイルスベクターの選択的複製翻訳を引き起こすために、ベクターに配置された翻訳制御因子に関する。特には、本発明は、ベクターを複製することができないため正常細胞に影響を与えず、腫瘍細胞内のベクター複製に必要なウイルス遺伝子を条件付きで発現させる方法及び組成物を提供する。
本発明は、国立衛生研究所で認められた認可番号CA69148で政府の支援を部分的に受けた。政府は本発明に対し一定の権利を有し得る。
[関連出願の相互参照]
本出願は、現在は2004年7月6日に発行された米国特許第6,759,394号の2001年7月26日に提出された米国特許出願第09/916,017号の分割出願である、2004年6月10日に提出された米国特許出願第10/718,163号の一部継続出願であり、これらの出願はその全体が参照により援用されている。
本出願は、現在は2004年7月6日に発行された米国特許第6,759,394号の2001年7月26日に提出された米国特許出願第09/916,017号の分割出願である、2004年6月10日に提出された米国特許出願第10/718,163号の一部継続出願であり、これらの出願はその全体が参照により援用されている。
原発性悪性腫瘍を有する患者に対する疾病率及び死亡率の主な決定因子は、従来の治療に耐性のある転移島の発生及び進行である。原発性腫瘍を示す患者の少なくとも50%が診断のときには既に転移が起こっていると推測されている。R.H. Goldfarb et al.著「確立した転移の治療に対する治療剤及び転移拡大の阻害剤:前臨床及び臨床的な進展(Therapeutic agents for treatment of established metastases and inhibitors of metastatic spread: preclinical and clinical progress)」 Current Opinion in Oncology, vol. 4, pp. 1130-41 (1992)を参照されたい。癌の遺伝子治療は従来のアプローチに耐性のある癌を攻撃する手段として開発されている。多くの研究は、ベクターの選択及び転写調節に注意して、原発性腫瘍の特徴を標的化することを目的としている。この2つの例は、組織特異的プロモータ及び誘導プロモータの使用である。K. Binley et al.著「虚血性疾患及び癌の治療のために低酸素で調節したアデノウイルスベクター(An adenoviral vector regulated by hypoxia for the treatment of ischaemic disease and cancer)」 Gene Therapy, vol. 6, pp. 1721-1727 (1999)を参照されたい。幾つか進歩があるにもかかわらず、これらのアプローチは、どのように転移を標的化するかという主な問題に十分に対処してはいない。転移に達するだけならさほど難しくはないが、その異種性のために、遺伝子治療が一般的に設計される際に原発性腫瘍の特異的遺伝子発現パターンを維持していないことが多い。S. J. Hall et al.著「実験的前立腺癌におけるアンドロゲン除去とアデノウイルス介在性単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子とガンシクロビル治療との共同治療効果(Cooperative therapeutic effects of androgen ablation and adenovirus-mediated herpes simplex virus thymidine kinase gene and ganciclovir therapy in experimental prostate cancer)」 Cancer Gene Therapy, vol. 6, pp. 54-63 (1999)を参照されたい。原発性腫瘍及び遠隔転移の両方を選択的に死滅させる一方で、癌細胞を正常な細胞と区別する効果的な体内癌遺伝子治療に対する必要性が満たされていない。
遺伝子治療に対する主な障害の1つは、癌細胞を十分に標的化し、正常な細胞に害を与えないことの困難さである。実際、治療ベクターが原発性腫瘍に局所的に送達されるときでさえ、全身的に作用することが多いことが分かっており、このことはベクターが血液感染性になることを示している。Z. Long et al.著「体内レトロウイルス遺伝子治療を受ける患者由来の生検試料及び解剖試料の分子評価(Molecular evaluation of biopsy and autopsy specimens from patients receiving in vivo retroviral gene therapy)」 Human Gene Therapy, vol. 10, pp.:733-40 (1999)、及びM. Kaloss et al.著「ラットにおける2つの投与経路を用いた、レトロウイルスベクター及びベクター産生細胞の分布(Distribution of retroviral vectors and vector producer cells using two routes of administration in rats)」 Gene Therapy, vol. 6, pp. 1389-1396 (1999)を参照されたい。この問題を回避する1つのアプローチは、ベクターの特異的転写調節を可能にさせる因子を使用すること、例えば組織特異的プロモータ及び誘導プロモータの使用である。Binley et al., 1999、及びL. M. Anderson et al.著「乳癌の治療のためのHSVtk遺伝子のアデノウイルス介在性組織標的化発現(Adenovirus-mediated tissue-targeted expression of the gene for the treatment of breast cancer)」 Gene Therapy, vol. 6, pp. 854-864 (1999)を参照されたい。これらのアプローチが非常に有望であるが、癌細胞に対する特別な知識を必要とし、ほとんどの状況に適用することができない。
腫瘍性形質転換及び腫瘍性進行の根底にある分子機構の研究によって、癌が一連の後天的な遺伝子病変の集積に由来する遺伝的疾患であることが理解されている。化学療法、放射線送達、及び外科治療レジメンに進歩があるにもかかわらず、多くの進行性癌からの生存はわずかであり、代替的な治療アプローチが必要であることは明らかである。したがって、依然として遺伝子治療/ウイルス療法は癌の治療に有望な戦略である。癌の遺伝子治療/ウイルス療法に対する現行のアプローチは、5つの広範なカテゴリー:1)突然変異補正(mutation compensation)、2)分子化学療法、3)遺伝的免疫増強、4)耐性/感受性の遺伝的修飾、及び5)腫瘍崩壊性治療又はウイルス療法に分けることができる。上記の遺伝子治療/ウイルス療法アプローチのいずれも基本的には、ベクターが治療遺伝子又は複製可能な(replication-competent)ウイルスゲノムを有効性に必須のレベルで標的細胞に送達する能力に基づいている。体内遺伝子送達における有効性が高いという能力を含む5型アデノウイルス(Ad5)の多くの特徴によって、非常に多くの遺伝子治療/ウイルス療法アプローチに好適である最適な遺伝子治療/ウイルス療法となり、Ad5は他のベクター選択とは区別される。
本発明は、条件複製組み換えウイルスベクターであって、複製される組み換えウイルスベクターゲノムを含み、(a)複製される組み換えウイルスベクターゲノム核酸転写配列と、(b)転写配列と動作可能に結び付いたプロモータとを含み、転写される場合、転写配列が複製に必要なウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下でウイルスタンパク質の配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列が、正常な細胞に比べて真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下でウイルスタンパク質の配列を翻訳させる、条件複製組み換えウイルスベクターを提供する。
一実施の形態において、非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次立体配座構造をさらに含む。
別の実施の形態において、ウイルスベクターゲノムが、制御配列と操作可能に結び付く(associated)。対象のタンパク質又はペプチドをコードする配列と操作可能に(operably)結び付く制御配列、すなわちオープンリーティングフレームは、プロモータ/エンハンサー及び他の発現調節シグナルを含む。これらの制御配列は発現ベクターが設計される宿主細胞と適合するように選択され得る。「プロモータ」という用語は当該技術分野で既知であり、最小のプロモータから上流の因子及びエンハンサーを含むプロモータに及ぶ大きく、複雑な核酸領域を包含する。典型的には、プロモータは哺乳動物細胞で機能的であるプロモータから選択されるが、他の真核細胞で機能的なプロモータを用いてもよい。典型的には、プロモータはウイルス遺伝子又は真核生物遺伝子のプロモータ配列に由来する。例えば、このプロモータは発現が起こる細胞型のゲノム由来のプロモータであり得る。真核生物のプロモータに関しては、遍在様式(例えばa−アクチン、b−アクチン、チューブリン)、又は代替的には組織特異的な様式(例えばピルビン酸キナーゼに関する遺伝子のプロモータ)で機能するプロモータであり得る。
別の実施の形態において、ウイルスベクターゲノムはアデノウイルスを含む。別の実施の形態では、アデノウイルスベクターは2型ウイルスベクター又は5型ウイルスベクターである。一実施の形態では、E1コード領域は肝臓特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、心筋特異的プロモータ、平滑筋特異的プロモータ、横隔膜筋特異的プロモータ、前立腺特異的プロモータ、及び/又は脳特異的プロモータから成る群より選択されるプロモータと操作可能に結び付く。一実施の形態では、E1コード領域は癌細胞特異的プロモータと操作可能に結び付く。別の実施の形態では、E1コード領域は誘導プロモータと操作可能に結び付く。別の実施の形態では、組み換えウイルスベクターゲノムはウイルスのカプシド内に包まれる。
別の実施の形態において、本発明は、本発明の複製される組み換えウイルスベクターを含む培養細胞を提供する。
別の実施の形態において、本発明は核酸配列を細胞に導入する方法であって、ウイルス粒子を細胞に侵入させるのに十分な条件下で、細胞を本発明による複製される組み換えウイルスベクターと接触させることを含む方法を提供する。
別の実施の形態において、本発明はヌクレオチド配列を被験体に投与する方法であって、薬学的に許容可能な担体において本発明に従って複製される組み換えウイルスベクターを被験体に投与することを含む方法を提供する。別の実施の形態では、プロモータは癌細胞特異的プロモータである。
ベクターは、初期遺伝子(例えばE1、E2及び/又はE4)及び初期遺伝子(例えばE1、E2及び/又はE4)における突然変異に操作可能に結び付いた組織特異的プロモータから成る手段によって条件付きで調節され得る。代表的な組織特異的プロモータは前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、分泌型ロイコプロテアーゼインヒビター(SLPI)、α−フェトプロテイン(AFP)、血管内皮増殖因子、CXCR4及びスルビビン等のタンパク質をコードする遺伝子に由来する。
別の実施の形態において、プロモータは誘導プロモータである。別の実施の形態では、プロモータはCXCR4プロモータである。
別の実施の形態において、本発明は癌を治療する方法であって、癌を有する被験体に薬学的に許容可能な担体で本発明による複製される組み換えウイルスベクターを含む組成物を投与することを含み、この組成物が治療的有効量で、被験体が癌細胞に対する治療反応を起こすのに十分な条件下で投与される方法を提供する。
別の実施の形態において、組み換えウイルスベクターは、経口、直腸、経粘膜、経皮、吸入、静脈内、皮下、皮内、筋肉内、及び関節内の投与から成る群より選択される経路で投与される。別の実施の形態では、組み換えウイルスベクターは癌組織に直接注射する。
別の実施の形態において、本発明は、多様な組織における標的遺伝子の形質導入のためにアデノ随伴ウイルスを用いる組成物及び方法であって、ウイルスの発現は非翻訳配列の制御下であり、非翻訳配列が真核生物開始因子eIF4Eの非存在下でウイルス配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eの存在下でウイルスベクター配列をウイルスに翻訳させる組成物及び方法を提供する。
一実施の形態において、本発明は、CRAdにおいて高度に構造化された5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列を利用する癌特異的翻訳制御と共に用いることができるヒトのCXCR4遺伝子由来のもの等のプロモータを用いる癌特異的転写制御を提供する。別の実施の形態では、本発明は、癌における遺伝子発現の特異性を増大させ、正常な組織における非特異的プロモータ活性(プロモータ漏出(promoter leakage))の問題を克服するための手段として標的化される二重レベルの癌の使用を提供する。別の実施の形態では、本発明は高い特異性のある腫瘍崩壊剤の新規の群として癌特異的CRAdを治療的臨床試験に発展させる広い有用性がある。
別の実施の形態において、本発明は、Ad5ベースの癌のウイルス療法を実質的に高めるのに転写制御及び翻訳制御の両方を用いる癌細胞に対するトランス遺伝子発現の二重標的化を提供する。このコンビナトリアルアプローチによって、癌特異性が高いウイルス療法剤が作製され、このアプローチがHNSCC等の癌の治療に対して評価される。
条件複製アデノウイルス(CRAd)は、癌治療に適用される新規の有望な治療剤を与える。一実施の形態では、CRAdの癌特異的複製によって、感染腫瘍組織がウイルス介在性の腫瘍崩壊及び子孫ウイルスの放出を起こし、周囲の腫瘍細胞ではさらに増殖することができるが、正常な組織の細胞では増殖することができず、これにはCRAd複製は効果がない。
過去10年間、ウイルスの複製に必須なアデノウイルスのE1A遺伝子及びE1B遺伝子の発現のための癌特異的誘導プロファイルを有する転写制御因子(プロモータ)の利用によって、癌細胞に対して転写的に標的化する次世代のCRAdが開発されている。したがって、一実施の形態では、所与の種類の癌に適切な腫瘍特異的プロモータ(TSP)がCRAdの高い癌特異性が達成されるように選択される。
別の実施の形態において、本発明によって、CXCR4遺伝子プロモータが異なる癌特異的活性化プロファイルを有することが示されるだけでなく、特に頭部扁平上皮癌(HNSCC)において遍在的に利用されるサイトメガロウイルス(CMV)プロモータに比べて、選択される癌のパネルで他のTSP間で最も高い活性レベルの1つが示される。
一実施の形態において、非癌細胞における癌特異的プロモータのバックグラウンド活性が、転写標的化に加えて、Ad5 E1遺伝子発現に対する二次レベルの癌の標的化を導入することによって低減される。このことは、E1A遺伝子を配置することによって達成することができ、これはE1A mRNAコード配列の上流にある線維芽増殖因子2(FGF2)由来の配列等の高度に構造化された5'−UTR配列の遺伝子組み換えを介した癌特異的翻訳制御下では、Ad5複製機能に必須である。一実施の形態では、このことによって、このようなキメラmRNAの効率的な翻訳が、ほとんどの正常組織で限られた量発現し、ほとんどの癌細胞で過剰発現する真核生物開始因子eIF4Eに依存する[1]。FGF2 5'−UTR−単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV−Tk)mRNAキメラは、腫瘍に対する効率的なタンパク質翻訳を制限するが、eIF4Eが律速開始因子である場合、正常細胞での効率的なタンパク質翻訳を強く阻害するか、遮断さえすることが既に示されている[2、3]。
別の実施の形態において、本発明は、癌細胞に対するトランス遺伝子発現の二重標的化、すなわち、このアプローチがAd5ベースの遺伝子治療/ウイルス療法において現在単独で用いられている癌標的化戦略を強化することを提供する。このコンビナトリアルアプローチによって、癌特異性が高いウイルス療法剤が作製される。一実施の形態では、HNSCC及び他の癌の治療にこのコンビナトリアルアプローチを用いる。このような製品の開発はウイルスの肝臓毒性の問題を克服するのも助ける。したがって、一実施の形態では、本発明はアデノウイルス等の単独のウイルス剤内で組み合わされる腫瘍特異的プロモータ、及びFGF2 5'−UTR配列の両方を提供する。さらに、別の実施の形態では、CRAdにおいて、TSPとしてCXCR4プロモータ及びFGF2 5'−UTR配列因子が利用される。
頭頸部領域の扁平上皮癌(HNSCC)は世界的には6番目に頻度の高い癌であり、幾つかの発展途上国では全ての悪性腫瘍の約50%を含む。米国では、毎年30000人の新規症例と、8000人の死亡が報告されている[63]。生存率はタバコ及びアルコールの消費、年齢、性別、民族的背景、並びに地理的地域によって異なる。この変動は疾患の多因子性病因を反映している。早期の検出及び診断によって生存率は増大するが、5年生存率は主要な癌の中で最も低く、全体で50%である[64]。したがって、悪性腫瘍疾患(HNSCCを含むが、これに限定されない)の治療における効果的な代替法が強く必要とされている。2003年の10月16日に中国は、中国系企業のSiBiono GenTech(a Shenzhen China)にHNSCCを治療するのにp53のアデノウイルス送達を用いる遺伝子治療製品の量産を承認した最初の国となった[65]。米国のIntrogen TherapeuticsはHNSCCに対して同様の戦略を用いており、そのAd−p53製品は第3相試験で有望な結果を示している[66]。これらの転帰は、HNSCCは遺伝子治療的治療アプローチの影響を非常に受けやすいことを示す。しかし、Ad−p53で治療した患者に対する臨床転帰は知られておらず、長期間の追跡が必要である。
一実施の形態において、これより本発明は、CRAdの癌特異的複製を高めるために、転写制御と翻訳制御との組合せを提供する。この主な利点は効果的な腫瘍細胞の腫瘍崩壊が達成され、腫瘍細胞感染の制限が緩和されることである。原発性病変及び転移性病変の両方を標的化するこの能力は、本発明者等のアプローチがp53突然変異陽性癌以外の多くの形態の癌の治療に広く適用されることを意味する。
ウイルスベクターの発現はベクターのリーディングフレームの前に、複雑な5'−UTR配列を配置することによって、正常細胞で翻訳的に抑制される。
本発明は、組み換えアデノウイルスを保存するのに、及び組み換えアデノウイルスを細胞に投与するのに用いることができる本発明による組み換えアデノウイルスを含む製剤も提供する。一変形形態では、体外で組み換えアデノウイルスを細胞に投与するのに製剤を用い、別の変形形態では体内で組み換えアデノウイルスを細胞に投与するのに製剤を用いる。
本発明は、本発明による製剤を細胞に投与する方法をさらに提供し、本発明の組み換えアデノウイルスで細胞を感染させる。一変形形態では、体外で製剤を細胞に投与するのに本方法を用い、別の変形形態では体内で製剤を細胞に投与するのに本方法を用いる。
本発明は、本発明による組み換えアデノウイルスの組成物、並びに本発明による組み換えアデノウイルスが本発明による復元因子に対するコード領域を欠く組み換えアデノウイルスに比べて、細胞溶解の促進及び/又は子孫ウイルスの放出の加速を誘導する細胞も提供する。本発明の好ましい変形形態では、細胞は癌細胞であり、細胞溶解は腫瘍崩壊性である。本発明のさらに好ましい変形形態では、細胞はヒト細胞である。
別の実施の形態では、本発明は、本発明による組み換えアデノウイルスの組成物、並びに本発明による組み換えアデノウイルスが、本発明による復元因子に対するコード領域を欠く組み換えアデノウイルスに比べて、細胞溶解の促進及び/又は子孫ウイルスの放出の加速を誘導する腫瘍を提供する。本発明のこの態様では、細胞溶解の促進及び/又は子孫ウイルスの放出の加速によって、本発明による復元因子に対するコード領域を欠く組み換えアデノウイルスに比べて、腫瘍において感染細胞から隣接細胞へ組み換えアデノウイルスによる水平展開(lateral spread)が促進されることが好ましい。本発明のこの態様では、細胞溶解の促進、子孫ウイルスの放出の加速、及び/又は水平展開の促進によって、腫瘍がより効果的に破壊されるか、又は増殖阻害されることがさらに好ましい。本発明の好ましい変形形態では、腫瘍は動物の身体で増殖する。さらなる変形形態では(I In)、動物の身体はヒトの身体である。
一実施の形態では、修飾ウイルスが、充実性新生物(solid neoplasm)内又は近くに、注射によって投与される。別の実施の形態では、修飾ウイルスは哺乳動物に静脈内投与される。別の実施の形態では、修飾ウイルスが哺乳動物に腹腔内投与される。別の実施の形態では、哺乳動物は免疫応答性である。別の実施の形態では、修飾ウイルスはミセル又はリポソーム内に封入される。別の実施の形態では、修飾ウイルスは有効量の抗アンチウイルス抗体で投与される。別の実施の形態では、体重1kg当たり約1〜1015プラーク形成単位の修飾ウイルスが投与される。別の実施の形態では、修飾ウイルスが単回で投与される。別の実施の形態では、修飾ウイルスは2回以上投与される。別の実施の形態では、この投与はさらに、有効量の化学療法剤の投与を含む。
本発明は、哺乳動物において細胞増殖障害を治療する方法を対象とし、増殖細胞が実質的に溶解される条件下で、修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択される1つ又は複数のウイルスを有効量、哺乳動物の増殖細胞に投与することを含む。
ビリオンがリポソーム又はミセルに封入されるように、又は外殻カプシドのタンパク質が突然変異するように、ウイルスが修飾され得る。ウイルスは単回又は複数回で投与することができる。細胞増殖障害は新生物であり得る。充実性新生物及び造血性新生物の両方を標的とすることができる。
ヒトにおいて新生物を治療する方法も提供され、修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスを有効量、新生物に投与し、新生細胞が実質的に腫瘍崩壊する、投与することを含む。ウイルスは充実性新生物内又は近くに注射によって投与され得る。
哺乳動物において新生物の転移を阻害する方法も提供され、修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスを、新生物が実質的に溶解されるのに十分な量、哺乳動物の新生細胞に投与することを含む。
哺乳動物において新生物を治療する方法も提供され、実質的に全ての新生物を外科的に切除すること、並びに修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスを、任意の残存新生物が実質的に腫瘍崩壊するのに十分な量、手術部位に投与することを含む。
修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスと、化学療法剤と薬学的に許容可能な賦形剤とを含む薬学的組成物も提供される。
修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスと、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む薬学的組成物も提供される。
さらに、本発明は修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスと、化学療法剤とを含む薬学的組成物を備えるキットを包含する。
加えて、本発明は修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスと、抗アンチウイルス抗体とを含む薬学的組成物を備えるキットを提供する。
体外で新生物を含む細胞集団を治療する方法も提供され、修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスを体外で、新生物が実質的に溶解するのに十分な量、細胞集団に投与することを含む。
本発明は、免疫抑制、免疫阻害、又はそうでなければ哺乳動物を免疫不全にさせること、及び同時に又は続けて修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス、及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスを新生物が実質的に溶解するのに十分な量、投与することによって、哺乳動物における増殖障害を治療する方法も対象とする。
本発明の方法において、修飾ウイルスは哺乳動物の増殖細胞に投与される。代表的な修飾ウイルスの種類としては、ヒトに感染する、アデノウイルス、HSV、パラポックスウイルスorfウイルス、又はワクシニアウイルスが挙げられる。好ましい実施形態では、修飾アデノウイルスが用いられる。
ウイルスは、異なる抗原決定基を含有するように病理表現型を変え、それによりこれまでに亜型ウイルスに曝された哺乳動物による免疫応答を低減又は防止する2種類以上のウイルス由来の組み換えウイルスであり得る。このような組み換えビリオンは、異なる亜型のウイルスによる哺乳動物細胞の同時感染によって生成することができ、結果として異なる亜型の外殻(coat)タンパク質が得られたビリオンカプシドに組み込まれる。
本発明はさらに、本発明による組み換えウイルスを構築し、本発明による製剤及び組成物を製造する方法を提供する。
本発明はさらに、不適切な細胞の生存を伴う疾患の治療に、本発明による組み換えウイルス、方法、及び製剤を使用することを考慮し、疾患は人間における疾患であることが好ましい。本発明の特定の実施形態では、この疾患は癌である。
以下、本発明の幾つかの実施形態において、組み換えウイルス、製剤、方法、組成物、及び使用を提供する多くの方法が与えられる。本記載は、上記の一般用語で説明されたように、本発明の範囲を限定することを決して意味しないことが明らかに理解される。当業者は、本発明の教示を、本発明から逸脱することなく本明細書に特に言及されていない他の組み換えウイルス、復元因子、製剤、方法、組成物及び使用に移すことができる。
本発明には、照射、例えばトキシン又はプロドラッグ変換酵素等の毒性タンパク質をコードする遺伝子の導入、及び化合物、抗体、受容体アンタゴニスト等の投与を含む(が、これらに限定されない)細胞集団を死滅させる他の方法及び手段と共に、本発明の組み換えウイルス、製剤、方法及び組成物の全ての組合せの使用が含まれることも理解される。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる用語の定義は、本明細書で十分に定義されるか、又はそうでなければ当該技術分野で明らかに理解されることが要求される。さらに、本明細書で記載される因子/タンパク質の任意の核酸配列又はアミノ酸配列は既知の配列であり、EMBL, Heidelberg, Germany及びGenBank(NCBI)(両方とも参照により本明細書に援用される)のデータバンク等の一般的に利用可能な配列データバンクに対して参照される。
以下、本発明は以下の実施例及び添付の図面でさらに例示される。実施例は、本発明による組み換えウイルス、製剤、方法、組成物及び使用を提供する方法を数多く示す。実施例は、上記の一般用語で説明されたように、本発明の範囲を限定することを決して意味しないことが明らかに理解される。当業者は、本発明の教示を、本発明から逸脱することなく、他の組み換えウイルス、機能タンパク質、製剤、方法、組成物及び使用に移すことができる。
本発明のこれらの実施形態及び他の実施形態は、本明細書での開示を鑑みて、当業者にとって容易に行われる。
図1は条件複製ウイルスベースの治療の描写図である。従来の非複製ベクターベースの遺伝子治療では、ベクターは標的細胞に侵入し、エフェクター遺伝子を発現させ、腫瘍細胞を死滅させる。複製ウイルスベースの治療では、侵入後、ウイルスが感染した標的細胞で初めに複製し、一連の溶解感染としての細胞溶解で細胞を死滅させる。これにより、放出ウイルスは周囲の標的細胞を感染させる。この水平展開の達成は、複製ウイルスベースの治療の有効性に関わる重大な事象である。
図2は翻訳開始のモデル図である。開始プロセスは、1)40Sリボソームサブユニットと、開始因子eIF−2、eIF−3、Met−tRNAiと、GTPとから成る43S複合体の形成、2)mRNAを含有する48S複合体の形成、並びに3)60Sサブユニットを連結させ、完全な80S複合体を形成する、連結させることの3つの工程から成る。
図3はシャトルベクターの構築の描写図であり、ルシフェラーゼレポーター遺伝子又はE1A遺伝子の単一及び/又は複数のレベルの発現制御によるアデノウイルスの生成における中間工程である。E1A又はルシフェラーゼ遺伝子の転写が、シャトルベクターにおいて癌特異的CXCR4遺伝子プロモータで制御される。シャトルベクターにおいて、E1A又はルシフェラーゼ遺伝子はCXCR4プロモータで転写が制御され、コード領域の前にFGF2 5'−UTR因子がある。対照のシャトルベクターでは、FGF2 5'−UTR因子の有無に関わらず、E1A遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子はCMVプロモータで転写が誘導される(CMV promoter-driven)。
図4はHNSCC腫瘍及び隣接した切除縁における内因性のCXCR4及びeIF4Eの発現を示す図である。3人の患者由来の対となるHNSCC腫瘍及び隣接した切除縁組織のサンプルは、ウェスタンブロット分析によってeIF4E及びCXCR4発現に関して分析され、HeLa細胞株及びFaDu細胞株での発現と比較した。
図5はE1Aタンパク質レベルのウェスタンブロット分析を示す図である。E1Aタンパク質発現のウェスタンブロット分析は、用いられたそれぞれの細胞株(MCF−10A、及びMCF−10A−4E)に関して、細胞株由来の溶解物を用いて、E3遺伝子の欠失を含有する野生型のAdベクター(Ad−wt−dE3)又は緑色蛍光タンパク質に関する遺伝子を含有するAdベクター(Ad−CMV−GFP)、E1A(Ad−CXCR4−E1A)、又は5'−UTR修飾E1A(Ad−CXCR4−UTR−E1A)に(100p.f.u./細胞のm.o.i.で)感染させて行った。
図6は体外腫瘍崩壊アッセイを示す図である。2つの細胞株が用いられた:低レベルのeIF4E(MCF−10A)を発現する正常な乳房上皮細胞株、及び高レベルのeIF4Eを構造的に発現するG418選択可能プラスミド発現ベクターでトランスフェクトしたMCF−10A−4E細胞株。細胞株は、0.1〜100と感染多重度(m.o.i.)を増大させて指示されたアデノウイルスに感染させ、感染から10日後の細胞接着の数をウェルに付着した生存細胞のクリスタルバイオレット染色によって可視化した。
図7は体外腫瘍崩壊アッセイを示す図である。2つの癌細胞株(ZR−75−1及びMDA−MB−231)は、0.1〜100と感染多重度(M.O.I.)を増大させて指示されたアデノウイルスに感染させ、感染から10日後の細胞接着の数をウェルに付着した生存細胞のクリスタルバイオレット染色によって可視化した。
図2は翻訳開始のモデル図である。開始プロセスは、1)40Sリボソームサブユニットと、開始因子eIF−2、eIF−3、Met−tRNAiと、GTPとから成る43S複合体の形成、2)mRNAを含有する48S複合体の形成、並びに3)60Sサブユニットを連結させ、完全な80S複合体を形成する、連結させることの3つの工程から成る。
図3はシャトルベクターの構築の描写図であり、ルシフェラーゼレポーター遺伝子又はE1A遺伝子の単一及び/又は複数のレベルの発現制御によるアデノウイルスの生成における中間工程である。E1A又はルシフェラーゼ遺伝子の転写が、シャトルベクターにおいて癌特異的CXCR4遺伝子プロモータで制御される。シャトルベクターにおいて、E1A又はルシフェラーゼ遺伝子はCXCR4プロモータで転写が制御され、コード領域の前にFGF2 5'−UTR因子がある。対照のシャトルベクターでは、FGF2 5'−UTR因子の有無に関わらず、E1A遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子はCMVプロモータで転写が誘導される(CMV promoter-driven)。
図4はHNSCC腫瘍及び隣接した切除縁における内因性のCXCR4及びeIF4Eの発現を示す図である。3人の患者由来の対となるHNSCC腫瘍及び隣接した切除縁組織のサンプルは、ウェスタンブロット分析によってeIF4E及びCXCR4発現に関して分析され、HeLa細胞株及びFaDu細胞株での発現と比較した。
図5はE1Aタンパク質レベルのウェスタンブロット分析を示す図である。E1Aタンパク質発現のウェスタンブロット分析は、用いられたそれぞれの細胞株(MCF−10A、及びMCF−10A−4E)に関して、細胞株由来の溶解物を用いて、E3遺伝子の欠失を含有する野生型のAdベクター(Ad−wt−dE3)又は緑色蛍光タンパク質に関する遺伝子を含有するAdベクター(Ad−CMV−GFP)、E1A(Ad−CXCR4−E1A)、又は5'−UTR修飾E1A(Ad−CXCR4−UTR−E1A)に(100p.f.u./細胞のm.o.i.で)感染させて行った。
図6は体外腫瘍崩壊アッセイを示す図である。2つの細胞株が用いられた:低レベルのeIF4E(MCF−10A)を発現する正常な乳房上皮細胞株、及び高レベルのeIF4Eを構造的に発現するG418選択可能プラスミド発現ベクターでトランスフェクトしたMCF−10A−4E細胞株。細胞株は、0.1〜100と感染多重度(m.o.i.)を増大させて指示されたアデノウイルスに感染させ、感染から10日後の細胞接着の数をウェルに付着した生存細胞のクリスタルバイオレット染色によって可視化した。
図7は体外腫瘍崩壊アッセイを示す図である。2つの癌細胞株(ZR−75−1及びMDA−MB−231)は、0.1〜100と感染多重度(M.O.I.)を増大させて指示されたアデノウイルスに感染させ、感染から10日後の細胞接着の数をウェルに付着した生存細胞のクリスタルバイオレット染色によって可視化した。
特に指示がなければ、本発明の実施には、ウイルス学、微生物学、分子生物学、及び当該技術分野内の組み換えDNA技法の従来の方法が用いられる。このような技法は文献で完全に説明される。
これより、本発明は添付の図面を参照して記載され、本発明の好ましい実施形態が示される。しかし、本発明は異なる形態を包含してもよく、本明細書で記載された実施形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が綿密且つ完全になり、本発明の範囲が当業者に完全に伝わるように与えられる。
特に定義されていなければ、本明細書で用いられる科学技術用語は全て本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書の記載で用いられる専門用語は、特定の実施形態を説明するだけのためであり、本発明の限定を意図しない。本発明及び添付の特許請求の範囲の記載で用いられるように、文脈で明らかに示されていなければ、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数形も包含することを意図する。
全ての出版物、特許出願、特許、及び本明細書で言及される他の参考文献は、全体が参照により援用される。以下の文献及び未発表原稿の完全な開示も参照により援用される:Robert J. DeFatta著「癌進行中の、及び癌の遺伝子治療に対する標的としての真核生物の翻訳開始因子(eIF)4E(The Eukaryotic Translation Initiation Factor (eIF) 4E During Cancer Progression and as a Target for Cancer Gene Therapy)」、ルイジアナ州立大学及び農業工業大学のメディカルセンターの大学院(Graduate Faculty of Medical Center of Louisiana State University and Agricultural and Mechanical College)に提出された論文(2001年3月20日に目録が作られ、棚に載せられた)、DeFatta, RJ, Li, Y., and De Benedetti, A.(2002)著「自殺遺伝子の翻訳制御に基づく癌細胞の選択致死(Selective killing of cancer cells based on translational control of a suicide gene)」 Cancer Gene Therapy 9: 573-578、DeFatta, RJ., Chervenak, RP., and De Benedetti, A. (2002)著「自殺遺伝子の翻訳制御を介した癌の遺伝子治療のアプローチ(A cancer gene therapy approach through translational control of a suicide gene)」 Cancer Gene Therapy 9: 505-512。しかし、抵触が相容れないものでなければ、本明細書は効力を有するものとする。
特に指示される場合を除いて、標準的な方法が、本発明による組み換えアデノウイルスゲノム、ヘルパーアデノウイルス、及びパッケージング細胞の構築に用いられ得る。このような技法は当業者に既知である。例えば、SAMBROOK et al.著「分子クローニング:研究所マニュアル第2版(MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL 2nd Ed.)」(Cold Spring Harbor, N. Y., 1989)、F. M. AUSUBEL et al.著「分子生物学の現行のプロトコル(CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY)」(Green Publishing Associates, Inc. and John Wiley & Sons, Inc., New York)を参照されたい。
「アデノウイルスベクター」とは、アデノウイルス血清型に由来するベクターを意味し、今日までに同定されている50個の異なる血清型のヒトのアデノウイルスのいずれかを含むが、これらに限定されない。これらの血清型は、配列比較に基づき、6つの血清型(A〜F)に分類されており、それぞれのサブグループは異なる指向性を有する。このように、アデノウイルスベクターは、ウイルスの複製及びパッケージング(例えば機能的ITR)にシス型で要求される少なくともこれらの配列を含むように本明細書で定義される。ITRは野生型のヌクレオチド配列である必要はなく、配列は機能的な補助(rescue)、複製及びパッケージングを提供する限り、例えばヌクレオチドの挿入、欠失又は置換によって変わってもよい。
「アデノウイルスビリオン」とは、(カプシドタンパク質の外殻に関する直鎖状の一本鎖アデノウイルス核酸ゲノムを含む)野生型(wt)のアデノウイルス粒子等の完全ウイルス粒子を意味する。これに関して、相補的なセンス鎖のいずれか、例えば「センス」鎖又は「アンチセンス」鎖の一本鎖ウイルス核酸分子をいずれか1つのビリオンにパッケージングすることができ、両方の鎖は等しく感染性がある。
「アデノウイルスベクターゲノム」又は「Adベクターゲノム」は、その自然発生形態又は修飾形態のいずれかにおけるウイルスゲノムDNAを表す。「rAdベクターゲノム」は、1つ又は複数の異種ヌクレオチド配列(複数可)を含む組み換えAdゲノム(すなわち、vDNA)である。Adベクターゲノム又はrAdベクターゲノムは典型的には、Ad末端反復配列及びパッケージングシグナルを含む。「Ad粒子」又は「rAd粒子」は、それぞれAdカプシド内にパッケージングされたAdベクターゲノム又はrAdベクターゲノムを含む。一般的に、Adベクターゲノムは、約28kb〜38kb(天然のゲノムの大きさの約75%〜105%)の大きさで最も安定である。大きな欠失及び比較的小さなトランス遺伝子を含有するアデノウイルスベクターの場合において、「スタッファーDNA」を用いて、当該技術分野で既知の方法によって、ベクター全体の大きさを所望の範囲内に維持することができる。
「アデノウイルス」は、約3.6kbの二本鎖DNAウイルスである。ヒトにおいて、アデノウイルスは複製することができ、眼、並びに食道、胃腸管及び尿道において疾患を引き起こす。本明細書で用いられるような「アデノウイルス」という用語は、マストアデノウイルス属及びアビアデノウイルス属を含む全てのアデノウイルスを包含するように意図される。今日まで、アデノウイルスの少なくとも47個のヒトの血清型が同定されている(例えばFields et al., Virology, volume 2, chapter 67 (3d ed., Lippincoft-Raven Publishers)を参照されたい)。好ましくは、アデノウイルスはC血清型のアデノウイルスであり、さらにより好ましくはアデノウイルスは2血清型(Ad2)又は5血清型(Ad5)である。アデノウイルスゲノムの様々な領域が解読されており(mapped)、当業者によって理解される(例えば、FIELDS et al., VIROLOGY, volume 2, chapters 67 and 68 (3d ed., Lippincoft-Raven Publishers)を参照されたい)。様々なAd血清型のゲノム配列、及びAdゲノムの特定のコード領域のヌクレオチド配列が当該技術分野で既知であり、例えばGenBank及びNCBIからアクセスすることができる(例えばGenBankアクセッション番号J0917、M73260、X73487、AF108105、L19443、NC003266及びNCBIアクセッション番号NC001405、NC001460、NC002067、NC00454を参照されたい)。当業者は、本発明のアデノウイルスベクターが、Douglas et al., (1996) Nature Biotechnology 14: 1574、Roy et al.に対する米国特許第5,922,315号、Wickham et al.に対する米国特許第5,770,442号、及び/又はWickham et al.に対する米国特許第5,712,136号に記載されるように、修飾又は「標的化」されてもよいことを理解する。
「増殖細胞又は新生物への投与」は、ウイルスが増殖細胞又は新生物(本明細書では「新生細胞」とも称される)の細胞を含有するような様式で投与されることを示している。
本明細書で用いられるような「癌」又は「新生物」という用語は、不死的に転移及び増殖する悪性腫瘍を表す。癌は、罹患組織に分類される疾患の一群であり、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、悪性肝癌、食道の癌腫、肺癌、直腸癌、上咽頭癌腫、胃の癌腫、胸水、卵巣の癌腫、腹水、及び黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書で用いられるような「癌治療」という用語は、癌細胞を破壊するように癌細胞を感染させるベクターを表す。このようなベクターは1つ又は複数の治療遺伝子を任意に含んでもよい。治療遺伝子は、アポトーシス、細胞溶解、細胞自殺等に関連する遺伝子を含む。
本明細書で用いられるように、「条件調節」及び「条件複製」という用語は、ウイルス遺伝子の発現、或いはウイルス又はベクターの複製を表し、複製の発現は標的細胞における特定の因子の有無によって(すなわち、条件によって)変わる。
本明細書で用いられるように、「サイトカイン」という用語は、局所的に作用するホルモンの特徴を有する全ての低分子タンパク質を表す。サイトカインは、パラクリン(paracrine:傍分泌)様式での細胞間の連結に有用であり、サイトカイン(複数可)を産生する同じ細胞でオートクリン(autocrine:自己分泌)様式でも作用し得る。増殖因子は、軟骨基質の合成を維持するという点で抗関節炎薬となる種類のサイトカインである。増殖因子としては、形質転換増殖因子(TGF)、TGF−β、TGF−β2及びTGF−β3、線維芽増殖因子(FGF)、αFGF及びβFGF、インスリン様増殖因子(IGF)IGF−1及びIGF−2が挙げられるが、これらに限定されない。成長ホルモン、及び少なくとも幾つかの骨形成タンパク質(BMP)もサイトカインである。
「遺伝子を送達すること」又は「遺伝子を伝達すること」という語句は、宿主細胞等の細胞に(into host cells, such as into cells)外来DNAを確実に挿入する方法又はシステムを表す。このような方法は、非統合的な伝達DNAの一時的若しくは長期的な発現、伝達レプリコン(例えばエピソード)の染色体外での複製及び発現、又は伝達遺伝子材料をレシピエントのゲノムDNAに統合させることをもたらし得る。遺伝子伝達によって、後天性疾患及び遺伝疾患の治療に特有のアプローチが与えられる。多くのシステムが、哺乳動物細胞への遺伝子伝達のために開発されている。例えば、米国特許第5,399,346号を参照されたい。
「DNA」は、緩和した、又は超らせん状の二本鎖形態又は一本鎖形態のポリマー形態のデオキシリボヌクレオチド(アデニン、グアニン、チミン、又はシトシン)を意味する。この用語は、一次構造及び二次構造の分子のみを表し、任意の特定の三次構造に限定しない。したがって、この用語には、特に直鎖DNA分子(例えば制限断片)、ウイルス、プラスミド、及び染色体で見出された一本鎖及び二本鎖のDNAが含まれる。特定のDNA分子の構造に関して、非転写鎖のDNA(すなわち、mRNAと相同な配列を有する鎖)に沿った5'から3'の方向のみの配列を与える正常な変換に従って、配列が本明細書で記載され得る。この用語は、アデニン、グアニン、チミン、又はシトシンの4つの塩基を含む分子、及び当該技術分野で既知の塩基類似体を含む分子を包含する(captures)。
「eIF4E」は、キャップ結合サブユニットのeIF4E複合体を表す。eIF4EはmRNAキャップ構造と結合し、40SサブユニットをmRNAに補充するeIF4F複合体を形成する。真核生物開始因子4E(eIF4E)は細胞内翻訳装置の構成要素である。真核生物のmRNAにおける翻訳開始には、40SリボソームサブユニットをmRNAの5'末端に補充することが含まれる。これは、eIF4E、eIF4A、及びeIF4Gを含有するヘテロ三量体複合体である真核生物翻訳開始複合体4F(eIF4F)によって介在される。eIF4AはmRNAの二次構造を解すRNA依存性RNAヘリカーゼであり、eIF4GはeIF4E、eIF4A、eIF3及びポリ(A)結合タンパク質に対する結合部位を含有する大きなポリペプチドである。eIF4Eは、mRNAの5'キャップ構造(m7 GpppN)に直接結合することによって、翻訳開始が容易になる。ヒトeIF4EをコードするDNAの配列が決定されている(Reychlik, W. et al. (1987) Proc. Natl. Acad. USA 84:945-949)。イースト菌のeIF4E及びマウスのeIF4Eの融合タンパク質は大腸菌で発現されている(Edery, I., et al. (1998) Gene 74:517-525、Edery, I., et al. (1995)(Mol. Cell. Biol. 15:3363-3371))。Haas, D. W. et al. (1991)(Arch. Biochem. Biophys. 284:84-89)が、赤血球由来の天然eIF4Eの精製を報告した。Stern, B. D. et al. (1993)が、変性濃度の尿素を用いた組み換えeIF4Eの単離を報告した。
「発現制御因子」又は単純に「制御因子」は、開始シグナル、エンハンサー、プロモータ及びサイレンサー等のDNA配列を表し、これらが動作可能に連結するDNA配列の転写を誘導又は制御する。遺伝子の制御因子は、イントロン、エキソン、コード領域、及び3'隣接配列に位置し得る。幾つかの制御因子は「組織特異的」、すなわち特異的な細胞(例えば特異的な組織の細胞)に優先的に選択されたDNA配列の発現に影響を及ぼすが、他のものは多くの又はほとんどの細胞型において活性である。この細胞型の発現が他の細胞型における発現よりも明らかに高い場合、遺伝子発現が特異的細胞において優先的に起こる。
「遺伝子」又は「コード配列」又は特定のタンパク質を「コードする」配列は、適切な調節配列の制御下にある場合、体外又は体内で転写され(DNAの場合)、ポリペプチドに翻訳される(mRNAの場合)核酸分子である。遺伝子の境界が、5'(アミノ)末端の開始コドン、及び3'(カルボキシ)末端の翻訳停止コドンによって求められる。遺伝子には、原核生物又は真核生物のmRNA由来のcDNA、原核生物又は真核生物のDNA由来のゲノムDNA配列、及び合成DNA配列でさえも含まれ得るが、これらに限定されない。転写終結配列は通常、遺伝子配列の3'方向に位置する。
「単純ヘルペスウイルス」(HSV)は、単純ヘルペスウイルス−1(HSV−1)又は単純ヘルペスウイルス−2(HSV−2)を表す。HSV遺伝子γ1 34.5は、PKRによって発揮される抗ウイルス作用を防ぐ可能性がある感染細胞タンパク質34.5(ICP34.5)の遺伝子産物をコードする。ICP34.5は、タンパク質ホスファターゼ1と相互作用し、eIF−2αを脱リン酸化する活性に変える(redirecting)ことによってPKR活性を妨げる特有の機構を有する。29野生型ウイルス又はγ1 34.5遺伝子が欠失した遺伝子組み換えウイルスいずれかに感染した細胞において、eIF−2αがリン酸化され、γ1 34.5が欠失した(minus)ウイルスに感染した細胞において、タンパク質合成が止まる。γ1 34.5が欠失したウイルスは、ICP34.5の活性が過剰になる活性化Ras経路を有する細胞において複製可能であることが予測される。HSVは活性化Ras経路を有しない細胞では複製することができない。したがって、HSVは活性化Ras経路を有する細胞において複製することができる。
遺伝子配列及び制御配列等の核酸配列に関する「異種」という用語は、通常互いに連結しない配列を示し、及び/又は通常特定の細胞とは関連しない。したがって、核酸構築物又はベクターの「異種」領域は、実際他の分子との関連性が見出されない別の核酸分子内の、又は別の核酸分子と結合する核酸切片である。例えば、核酸構築物の異種領域には、実際コード配列との関連性が見出されない配列に隣接するコード配列が含まれ得る。異種コード配列の別の例は、コード配列自体が実際に見出されない構築物(例えば天然遺伝子とは異なるコドンを有する合成配列)である。同様に、細胞に通常存在しない構築物で形質転換した細胞は、本発明の目的に関して異種性があると考えられる。対立遺伝子変異又は自然発生的な突然変異事象によっては、本明細書で用いられるような異種DNAが得られない。
「異種ヌクレオチド配列」又は「異種核酸配列」は典型的には、ウイルスで自然発生されない配列である。代替的には、異種ヌクレオチド又は異種核酸配列は、(例えば、自然状態ではウイルスと関係がないプロモータとの関連性によって)非自然発生的な環境に置かれるウイルス配列を表し得る。
「相同性」は、2つのポリヌクレオチド又は2つのポリペプチド部分の間の同一率を表す。1つの部分から別の部分までの配列間の一致が、当該技術分野で既知の技法によって求められ得る。例えば配列情報をアラインすること、及び容易に利用可能なコンピュータプログラムを用いることによる2つのポリペプチド分子間の配列情報の直接比較によって、相同性を求めることができる。代替的には、異種領域間で安定した二本鎖を形成する条件下でのポリヌクレオチドのハイブリッド形成、その後の一本鎖特異的なヌクレアーゼ(複数可)による消化、及び消化断片の大きさの測定によって、相同性を求めることができる。上記の方法を用いて求められるように、分子の規定の長さにわたって、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、及び最も好ましくは少なくとも約95%のヌクレオチド又はアミノ酸が適合する場合、2つのDNA、又は2つのポリペプチド配列は互いに「実質的に相同」である。
本明細書で用いられるような「感染性」とは、ウイルスが天然の形質導入機構によって細胞に侵入し、その中でトランス遺伝子を発現することができることを意味する。代替的に「感染性」ウイルスは、他の機構によって細胞に侵入し、その中でトランス遺伝子を発現することができるウイルスである。1つの例示的な例として、アデノウイルスカプシドにおいて、細胞表面受容体に対するリガンド又は結合タンパク質を発現することによって、或いは細胞表面上の分子に対する抗体(複数可)を用い、その後以下で記載されるような複合体を内在化することによって、ベクターは標的細胞に侵入することができる。
「イニシエータ」は、転写開始部位を包含し、適切に開始された転写産物の合成に重要である短くて弱く保存された因子を表す。
「増殖障害の疑いがある哺乳動物」は、哺乳動物が増殖障害又は腫瘍を有し得るか、或いは増殖障害又は腫瘍と診断されているか、或いはこれまでに増殖障害又は腫瘍と診断されたことがあることを意味し、腫瘍又は実質的に全ての腫瘍が外科的に取り除かれ、哺乳動物には腫瘍細胞の残りが幾らか存在する疑いがある。
「哺乳動物被験体」は任意の成員の哺乳類であり、ヒト、並びにチンパンジー及び他の類人猿及びサル種等の非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマ等の家畜、イヌ及びネコ等の家畜化された哺乳動物、マウス、ラット(rate)及びモルモット等の齧歯類を含む実験動物が挙げられるが、これらに限定されない。この用語は特定の年齢又は性別を示していない。したがって、雄雌に関わらず、成体及び新生児の被験体、並びに胎児が含まれることが意図される。
対象に適用される本明細書で用いられるような「自然発生的な」という用語は、自然に対象が見出すことができるという事実を表す。例えば、自然源から単離することができ、研究室で人為的に修飾されていない生物体(ウイルスを含む)に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列が自然発生的である。本明細書で用いられるように、「組み換え」という用語は、ポリヌクレオチド構築物(例えばアデノウイルスゲノム)が人為的な修飾によって部分的に生成されていることを示す。
本明細書で用いられるような「腫瘍崩壊技法」という用語は、アポトーシス及び壊死を含む腫瘍細胞の溶解又は致死を誘導することができる全ての種類の効果的なプロトコルを表す。これらのプロトコルには、癌細胞が溶解又は致死される腫瘍崩壊性ウイルスの適用が含まれる。
本明細書で用いられるような「腫瘍崩壊性ウイルス」という用語は、癌細胞を死滅させるように、これらの癌細胞で不死的に複製され得る遺伝子組み換えしたウイルスを表す。アデノウイルスdl1520は腫瘍崩壊性ウイルスの一例である。本発明で示される腫瘍崩壊性ウイルスは、単純ヘルペスウイルス(HSV−1)、アデノウイルス、ニューカッスル病ウイルス(「NDV」)、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口内炎ウイルス(「VSV」)等であり得る。一実施形態では、溶解ウイルスとしては、他のウイルス、例えばバキュロウイルス;HSV1、HSV2、VZV、HCMV、HHV8等のヘルペスウイルス科の成員;B19、AAV−2等のパルボウイルス;ウマ脳炎ウイルス等のαウイルスと、風疹ウイルス等のシンドビス・ルビウイルスとを含むトガウイルス科の成員;SV40等のポリオーマウイルス;ゲタ・アルボウイルス等のアルボウイルス;ブタ流行性下痢ウイルス等の下痢症ウイルス;黄熱病ウイルス等のフラビウイルスと、デング・脳炎ウイルスと、BVDV等のペスチウイルスと、C型肝炎ウイルス等の未分類ウイルスとを含むフラビウイルス科の成員;サシチョウバエ熱ウイルス等のフレボウイルスと、出血熱ウイルス等のナイロウイルスと、ハンターンウイルス及びシン・ノンブレウイルス等のハンタウイルスと、ブニヤンベラウイルス等のブニヤウイルスとを含むブニヤウイルス科の成員;ラッサ熱ウイルス及びリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス等のアレナウイルス;1〜5型アストロウイルス、ノーウォークウイルス等のカリシウイルス;ロタウイルスと、オルビウイルスと、ブルータング病ウイルス等のオルトレオウイルスとを含むレオウイルス科の成員;ポリオウイルス等のエンテロウイルスと、ECHOウイルス・コクサッキーウイルスと、全ての血清型のリノウイルスと、A型肝炎等のヘパトウイルスと、FMDV等のアフトウイルスとを含むピコマウイルス科の成員;アフリカセーヌ熱ウイルス等のイリジウイルス(iridiviruses);ヒト及びウシのパピローマウイルス;マールブルグウイルス及びエボラウイルス等のフィロウイルス;スモールポックス(smallpox)ウイルス、牛痘ウイルス、天然痘(variola)ウイルス及びワクシニアウイルス等のポックスウイルス;アデノウイルス;A型、B型、C型のインフルエンザウイルス及びトゴト様ウイルス等のオルトミクソウイルス;全てのパラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ニューカッスル病ウイルス、動物ディスペンパーウイルス及び牛疫ウイルス等のパラミクソウイルスが挙げられる。また、アフリカブタ熱ウイルス、ウシのロイコシ(leucosi)及びレウイルス(revirus)も挙げられる。一実施形態では、溶解ウイルスは、アデノウイルス、単純ヘルペスウイルス、レオウイルス、ニューカッスル病ウイルス、ポリオウイルス、麻疹ウイルス、又は水疱性口内炎ウイルス)から成る群より選択される腫瘍崩壊性ウイルスである。さらに溶解ウイルスは、治療遺伝子(例えばアポトーシス遺伝子、腫瘍壊死遺伝子、飢餓腫瘍細胞を死滅させる遺伝子、細胞溶解遺伝子、陰性I−κ−β、カスパーゼ、γグロブリン、h−α−1抗トリプシン、又はアデノウイルスのE1a)を含み得る。
「動作可能に連結する」という用語は、様々な核酸分子因子が機能的に連結し、互いに相互作用することができるような、それぞれに対する様々な核酸分子因子の配置(arrangement)を表す。このような因子には、プロモータ、エンハンサー、ポリアデニル化配列、1つ又は複数のイントロン及び/又はエキソン、及び発現される対象の遺伝子のコード配列(すなわち、トランス遺伝子)が含まれるが、これらに限定されない。適切に配向されるか、又は動作可能に連結する場合、核酸配列因子は互いの活性を調節するように共に作用し、最終的にはトランス遺伝子の発現レベルに影響を与え得る。調節とは、特定の因子の活性レベルを増大、低減又は維持することを意味する。他の因子に対するそれぞれの因子の位置は、それぞれの因子の5'末端及び3'末端で発現されてもよく、それぞれの特定の因子間の距離は、因子間に介在するヌクレオチド又は塩基対の数で参照され得る。
本明細書で用いられるような「配列同一率」という用語は、比較ウィンドウにわたって、2つの最適に配向された配列を比較し、比較ウィンドウにおける配列部分が、比較される2つの配列の最適な配向のために参照配列と比較した際の付加又は欠失(すなわち、「ギャップ」)を含み得る。同一率は、同一残基が両方の配列で発生し、適合位置の数が得られる位置の数を求めること、適合位置の数をウインドウにおける位置の総数で割ること、及びその結果の値に100を掛けて、配列同一率を得ることによって算出される。それより、全同一性が、完全な照会配列(query sequence)をカバーする全ウィンドウにわたる平均同一性として求められる。理論に縛られる必要はなく、GAP、BESTFIT、BLASTA、FASTA及びTFASTA等のコンピュータソフトウェアパッケージを利用して、配列同一性を求めることもできる。
本明細書で用いられるような「ポリペプチド」という用語は、特に指示がない限り、ペプチド及びタンパク質の両方を包含する。
「増殖障害」は、正常な組織増殖よりも迅速に細胞が増殖する任意の細胞障害である。したがって、「増殖細胞」は、正常細胞よりも迅速に増殖する細胞である。増殖障害としては、新生物が挙げられるが、これに限定されない。「新生物」は、一般的に異なる塊(mass)を形成し、正常な組織増殖よりも迅速な細胞増殖によって成長する異常な組織増殖である。新生物は、構造組織、及び正常組織との機能的な調整の部分的又は全体的な欠如を示す。これらは3つの主要な種類に広く分類することができる。上皮構造から生じる悪性新生物は癌腫と呼ばれ、筋肉、軟骨、脂肪又は骨等の結合組織に由来する悪性新生物は肉腫と呼ばれ、免疫系の構成要素を含む造血(hematopoetic)構造(血液細胞の形成に関する構造)に影響を及ぼす悪性腫瘍が白血病及びリンパ腫と呼ばれる。腫瘍は癌病の新生増殖である。本明細書で用いられるように、新生物は、「腫瘍」とも表され、造血系新生物及び充実性新生物を包含することが意図される。他の増殖障害としては、神経線維腫症が挙げられるが、これらに限定されない。
「プロモータ」という用語は、動作可能に連結する対応する核酸コード配列の転写を直接又は間接的に調節する核酸配列を表す。プロモータは、単独で転写を調節するのに機能し得るか、又は幾つかの場合、エンハンサー又はサイレンサー等の1つ又は複数の他の調節配列と結び付いて作用し、トランス遺伝子の転写を調節し得る。
「プロモータ領域」という用語は、通常の意味ではDNA調節配列を含むヌクレオチド領域を表すのに本明細書中で用いられ、この調節配列は、RNAポリメラーゼと結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することができる遺伝子に由来する。
「プロモータ配列」は細胞でRNAポリメラーゼと結合し、下流(3'方向)のコード配列の転写を開始することができるDNA調節領域である。本発明を明らかにするために、プロモータ配列は転写開始部位によってその3'末端で結合され、上記のバックグラウンドが検出可能なレベルで転写を開始させるのに必要な最小限の数の塩基又は因子を含むように上方に(5'方向)に広がる。プロモータ内では配列が転写開始部位、及びRNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)で見出される。真核生物のプロモータは、いつもではないが度々、「TATA」ボックス及び「CAT」ボックスを含む。原核生物のプロモータは、−10及び−35のコンセンサス配列に加えて、シン・ダルガーノ配列を含む。
本明細書で用いられるような「伝播」という用語は、ウイルスゲノムが複製及びパッケージングされ、新規のビリオンを産生する、増殖性ウイルス感染を表し、一般的には一次感染細胞を越えて細胞の感染によって「広がり」得る。「伝播欠損」ウイルスは、増殖性ウイルス感染を生じ、一時感染細胞を越えて広がる能力が損なわれる。
「組み換えウイルス」という用語は、例えば粒子への異種核酸構築物の付加又は挿入によって遺伝的に修飾されているウイルスを意味する。
本明細書で用いられるような「複製」又は「ウイルス複製」という用語は、ウイルスゲノムの複製(すなわち、ビリオンDNAの新規のコピーを作製すること)を特に表す。
本明細書で用いられるように、「複製可能なウイルス」という用語は、複製することができるウイルス(すなわち、子孫を生むウイルス)を表す。
本明細書で用いられるような「複製欠損ウイルス」は、細胞増殖を優先的に阻害するか、又は所定の細胞集団でアポトーシスを誘導するウイルスを表し、ウイルス複製の表現型の発現を支持し、且つ細胞増殖を阻害、すなわち非複製の非形質転換細胞のアポトーシス機能レベルの特徴を誘導することが実質的にできない。
本明細書で用いられるような「複製の表現型」という用語は、複製欠損アデノウイルス等のウイルスに感染した細胞の1つ又は複数の以下の表現型特徴を表す:(1)カプシドタンパク質等の後期遺伝子産物(例えば、アデノウイルスのペントンベースポリペプチド)又はウイルスの後期遺伝子プロモータ(複数可)から開始するRNA転写産物の十分な発現、(2)ウイルスゲノムの複製又は複製中間体の形成、(3)ウイルスカプシド又はパッケージングされたビリオン粒子のアセンブリ、(4)感染細胞における細胞変性効果(CPE)の発生、(5)ウイルス溶菌サイクルの完了、及び(6)新生細胞における機能のために或る特定の条件を典型的に条件とする他の表現型の変化。複製の表現型には、列挙された表現型特徴の少なくとも1つ、好ましくは表現型特徴の2つ以上が含まれる。
「実質的な溶解」という用語は、増殖細胞の少なくとも10%、より好ましくは細胞の少なくとも50%、及び最も好ましくは細胞の少なくとも75%が溶解されることを意味する。溶解率は、哺乳動物における腫瘍の大きさ、又は体外での腫瘍細胞の溶解の低減を測定することによって、腫瘍細胞に関して求めることができる。
本明細書で用いられるように、「治療(therapeutic)」という用語は、障害のうちの少なくとも1つの症状を和らげる、遺伝子、産物、タンパク質、ペプチド及び方法等の能力、又はこのような緩和によって実現される利益を表す。「予防(prophylactic)」という用語は、障害のうちの少なくとも1つの症状の発症を防ぐか、又は少なくとも遅らせる、遺伝子、産物、タンパク質、ペプチド及び方法等の能力、或いはこのような作用から実現される利益を表す。本明細書で用いられるような、「高められた治療的利点」という用語は、2つ以上の対象の遺伝子が同時に宿主に導入される場合に実現される治療的利点を表し、この高められた治療的利点は、それぞれの遺伝子が別々に加えられたときの治療的利点よりも大きい。利点は相加的又は相乗的であり得る。
本明細書で用いられるような「治療的に有効な量」という用語は、治療効果を生む、例えば哺乳動物における転移性腫瘍増殖を阻害するのに十分な選択的DNA配列の量を表す。一実施形態では、ウイルスは溶解ウイルスである。別の実施形態では、溶解ウイルスの治療的に有効な量は、標的となる増殖細胞を実質的に溶解させることができる量である。したがって、「治療的に有効な量」という用語には、例えば患者の腫瘍の増殖を防ぐ、好ましくは患者の腫瘍塊を少なくとも50%低減する、より好ましくは患者の腫瘍塊を少なくとも90%低減するのに十分なこのような選択的DNA配列の量が含まれる。選択的DNA配列の投与のための用量範囲は、所望の効果を生むものである。一般的に用量は、年齢、体重、状態、患者の性別、腫瘍の種類、及び腫瘍進行の程度によって変わる。本発明の明細書の教示で示される当業者は、好適な用量範囲を容易に求めることができる。この用量は、任意の禁忌事象において医師個人で調節することができる。任意の事象では、治療の有効性は、当業者に既知の方法によって、腫瘍の増殖及び寛解の程度をモニタリングすることによって求めることができる。
本明細書で用いられるように、「UTR」という用語は、mRNAの非翻訳領域配列を表す。5'−UTRは、コード遺伝子の開始コドンの5'方向(directly)、すなわち上方で、ウイルス配列に存在する非コードヌクレオチド配列である。本明細書では、「領域」という用語は、核酸(DNA又はRNA)上の或る特定の範囲を表す。本明細書中の「mRNAの5'非翻訳領域」という用語は、DNAからの転写によって合成したmRNA中で、5'側に存在し、タンパク質をコードしない領域を表す。
「ワクシニアウイルス」は、ヒトに感染し、局所病変を生じるオルトポックスウイルス属のウイルスを表す。ワクシニアウイルスは、2つの全く異なる機構によるPKR活性の下方調節の役割を果たす2つの遺伝子をコードする。E3L遺伝子は、感染の初期に発現され、PKR活性を阻害することができるdsRNA結合活性を有する20kDa及び25kDaの2つのタンパク質をコードする。
本明細書に用いられるように、「ベクター」又は「遺伝子送達ベクター」という用語は、遺伝子送達ビヒクルとして機能するウイルス粒子を表し、ウイルスカプシド内にパッケージングされるvDNA(すなわち、ベクターゲノム)を含む。代替的に、「ベクター」という用語は、ビリオンカプシドの非存在下で、遺伝子送達ビヒクルとして用いる場合にベクターゲノム/vDNAを表すのに用い得る。「ベクター」は、プラスミド、ファージ、トランスポゾン、コスミド、染色体、ウイルス、ビリオン等の任意の遺伝因子を意味し、適切な制御因子に関連する場合、複製することができ、細胞間の遺伝子配列を輸送することができる。したがって、この用語にはクローニング及び発現ビヒクル、並びにウイルスベクターが含まれる。ベクターは、別のDNA切片が付着切片の複製を引き起こすように付着し得るレプリコンである。「レプリコン」は、体内でDNA複製の自律単位として機能する、すなわち自身の制御下で複製することができる任意の遺伝因子(例えば、プラスミド、染色体、ウイルス)である。「発現制御配列」は、別のDNA配列の転写及び翻訳を制御及び調節するDNA配列である。コード配列は「動作可能に結び付き」、RNAポリメラーゼがコード配列をmRNAに転写する場合、細胞内で転写制御配列及び翻訳制御配列の「制御下にあり」、その後コード配列でコードされるタンパク質に翻訳される。
本明細書で用いられるような「ウイルスの感染(Viral infection)」又は「ウイルス感染(virus infection)」は、アデノウイルス、HSV、パラポックスウイルスorfウイルス、又はワクシニアウイルスの1つ又は複数による感染を表す。
本発明は、(a)ウイルスゲノムと、(b)ウイルスゲノムと動作可能に結び付いた複雑な5'−UTRをコードする核酸配列とを含むウイルスベクターを提供する。本発明は、(a)アデノウイルスゲノムと、(b)ウイルスゲノムと動作可能に結び付いた複雑な5'−UTRをコードする核酸配列とを含むアデノウイルスベクターであって、DNA配列が、絶対値で少なくとも約50Kcal/モル以上の安定性ΔGで天然ヘアピン構造又は合成ヘアピン構造を含むアデノウイルスベクターも提供する。
特定の癌細胞に対する特別な知識を必要とするこれまでの遺伝子治療アプローチとは異なり、新規の戦略は癌細胞を正常細胞と区別する、すなわちeIF4E発現を上昇させる遺伝的特徴を標的とする。この特性は、オープンリーティングフレームの前に複雑な5'−UTRを置くことによって、翻訳的にウイルスベクターの発現を抑制するために本発明で利用される。この理論に縛られることなく、eIF4Eレベルがより高く、これによりヘリカーゼ活性が増大した癌細胞は、正常細胞ではできないが、このハイブリッドmRNAを翻訳し続けることができると考えられる。
一実施形態において、本発明はeIF4Eで翻訳的に調節することがこれまでに見出されている血管形成因子である塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)の5'−UTRを用いる。Kevil et al., 1995を参照されたい。しかし、例えばプロトオンコジーンc−myc、cyclinD1、オルニチンデカルボキシラーゼ、又は血管内皮増殖因子(「VEGF」)の遺伝子に対する配列等の他の複雑なヘアピン配列をeIF4Eによる翻訳制御に用いることができる。DeBenedetti et al., 1999を参照されたい。
一実施形態において、DNA配列は絶対値で少なくとも約50Kcal/モル以上の安定性ΔGので天然ヘアピン構造又は合成ヘアピン構造を含む。一実施形態では、密接なヘアピン形成を介して必要な構造が達成される。別の実施形態では、自己相補的な比較的長いパリンドロームオリゴヌクレオチド配列が用いられる。A.E. Koromilas et al.著「5'非コード領域における広範な二次構造を含むmRNAが開始因子eIF4Eを過剰発現する細胞で効果的に翻訳する(mRNAs containing extensive secondary structure in their 5' non-coding region translate efficiently in cells overexpressing initiation factor eIF4E)」(The EMBO Journal, vol. 11, pp. 4153-4158 (1992))、及びA. DeBenedetti et al, 1999を参照されたい。
eIF4Eの発現がほとんどの充実性腫瘍で上昇し、通常、複雑な5'−UTRで抑制されるmRNAの翻訳が引き起こされる。一実施形態では、本発明の方法及び組成物が充実性腫瘍に対する治療法を提供する。
本発明のウイルスベクターシステムは、エピソーム構築物の代わりに用いることができる。本発明の組成物及び方法は、ベクターの多くの組織への効果的な送達を可能にする。一実施形態では、溶解ウイルスの翻訳調節、又は他のトキシンの発現を用いて、多種多様の癌を治療する。一実施形態では、ベクターの単独注射のみが利用される。一実施形態では、ベクターの反復注射を用いて、組織被覆率(coverage)の増大、及びより効果的な治療上の処置のためのより長期的な治療を確実にする。
一実施形態において、本発明の転写にプロモータとして用いられる複雑な5'−UTRは、ウイルスのオープンリーディングフレーム又は条件ウイルスの前にこの複雑な5'−UTRを置くことによって、eIF4Eのレベルがより高く、したがってヘリカーゼ活性が増大した細胞だけが、このハイブリッドmRNAを翻訳し続けることができるようなものである。一実施形態では本発明者等は、eIF4Eで翻訳的に調節することがこれまでに見出されている血管形成因子である塩基性線維芽細胞増殖因子(FGF−2)の5'−UTRを用いる。Kevil et al., 1995を参照されたい。しかし、例えばプロトオンコジーンc−myc、cyclinD1、オルニチンデカルボキシラーゼ、又は血管内皮増殖因子(「VEGF」)(そうでなければ、血管透過性因子(「VPF」)として既知)の遺伝子に対する非翻訳ヘアピン配列等の他の複雑な配列をeIF4Eによる翻訳増強に用いることができる。一実施形態では、UTR配列は少なくとも約50Kcal/モル以上の安定性ΔGで、天然ヘアピン構造又は合成ヘアピン構造を含む。
一実施形態において、通常、複雑な5'−UTRの存在によって抑制されるmRNAの翻訳を可能にするのに要求されるeIF4Eの濃度は、正常な真核細胞で見出された濃度の少なくとも1.5倍である。別の実施形態では、通常、複雑な5'−UTRの存在によって抑制されるmRNAの翻訳を可能にするのに要求されるeIF4Eの濃度は、正常な真核細胞で見出された濃度の少なくとも2倍、2.2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、又は10倍である。
一実施形態において、DNA配列が5'−UTRを含み、安定性ΔGが絶対値で少なくとも約50Kcal/モル以上の天然構造又は合成構造である。一実施形態では、DNA配列が5'−UTRを含み、安定性ΔGが絶対値で少なくとも約55Kcal/モル以上の天然構造又は合成構造である。
一実施形態において、UTR配列は、少なくとも30、40、50、60、70、80、90、100、120、150、200、250、300、400、500、600、700、800、900、又は1000個のヌクレオチドを含む。一実施形態では、UTRは二本鎖を形成することができるオリゴヌクレオチド配列である。別の実施形態では、UTRは二本鎖を形成することができるパリンドロームオリゴヌクレオチド配列である。別の実施形態では、UTRは安定な複合体を形成することができるオリゴヌクレオチド配列である。別の実施形態では、安定な複合体はループ形成を含む。
この安定性及びしたがって緊密なヘアピン形成を達成するために、自己相補性である比較的長いパリンドロームオリゴヌクレオチド配列が求められる。A.E. Koromilas et al.著「5'非コード領域における広範な二次構造を含むmRNAが開始因子eIF4Eを過剰発現する細胞で効果的に翻訳する(mRNAs containing extensive secondary structure in their 5' non-coding region translate efficiently in cells overexpressing initiation factor eIF4E)」(The EMBO Journal, vol. 11, pp. 4153-4158 (1992))、及びA. DeBenedetti et ah, 1999を参照されたい。
自由エネルギー「ΔG」はオリゴヌクレオチドの自由エネルギーであり、二本鎖オリゴヌクレオチドの安定性の測定になる。得られた複合体の強度(ΔG)は、熱変性又は二本鎖融解によって測定される。ΔGは、構造で保存される自由エネルギー(負の値)、又は二本鎖を融解するのに必要な自由エネルギー(正の値)の測定値としての安定性を見るかによって、負の値又は正の値のいずれかで表され得る。エネルギーは、塩基対構造を形成するように全体に放出される必要があり、構造安定性は、放出されるエネルギー量によって求められる。構造に保存される自由エネルギーが負の値である場合、形成される複合体は熱力学的に安定形態である。二本鎖形成の予測されるエンタルピー、エントロピー及び自由エネルギー、すなわちエンタルピー(ΔH)、エントロピー(ΔS)、及び自由エネルギー(ΔG)は、ギブス式:ΔG=ΔH−TΔS(定温及び定圧)(式中、Tは華氏温度である)に関する熱力学的状態関数である。
実際には、エンタルピー及びエントロピーは、二本鎖形成の熱力学モデルによって予測され、自由エネルギー及び融解温度を算出するのに用いられる。
分子内二次構造を形成することができる自己相補性配列を含むオリゴヌクレオチドの予測自由エネルギーは、オリゴヌクレオチドの最も安定した分子内構造として算出される。「二次構造」は、一本鎖のときに二本鎖ヘアピン構造又はループを形成する傾向がある核酸配列の領域を表す。核酸は、核酸の特定鎖でそれぞれ形成される可能性がある折畳み構造の予測ΔGを算出することによって、それらの有望な二次構造に関して評価することができる。折畳みの自由エネルギーを算出することによって、核酸の二次構造を予測することができるコンピュータプログラムが存在する。一例は、MFOLDプログラムである。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で表されるΔGがエネルギー変化の絶対値で与えられ、このことは当業者には明らかである。自由エネルギー(負の値)、より小さい負の値のΔG(すなわち、より小さい自由エネルギー)が折畳み状態として表される場合、この構造が安定であればあるほど、この二本鎖構造の形成が起こりやすくなる。二次構造の安定性が、放出される自由エネルギーの量として定量されるか、或いは塩基対を形成すること、又はこのような二次構造を溶融するのに必要な入力エネルギーによって用いられ、これは存在する場合は50Kcal/モル以上である必要がある。正の値の自由エネルギーを有する構造が、立体配置を形成する作用エネルギーを必要とし、したがって不安定になり、必要とされる構造を形成しないので、本開示が二次構造を溶融する必要性を記載していることは、当業者に明らかである。負の値の自由エネルギーは保存された作用エネルギーを放出する。放出される自由エネルギーの量として定量されるか、又は塩基対を形成することによって用いられる場合、構造の自由エネルギーの負の値が小さくなればなるほど、保存されるエネルギーが放出されるためこの構造が形成されやすくなる。明確にするために、本発明のオリゴヌクレオチドの安定性は、エネルギー変化の絶対値の代わりに「非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次構造立体配座をさらに含む」と記載することができる。
eIF4Eタンパク質は、mRNAの5'非翻訳領域(UTR)において「余分な」二次構造を解くATP依存性ヘリカーゼであるeIF4F複合体のキャップ結合サブユニットである。少量のeIF4E/Fは、幾つかのmRNA、特に安定した二次構造を形成する能力がある長いG/Cが豊富な5'UTRを有するmRNAの翻訳に対する限定要因である。M. J. Clemens et al.著「翻訳制御:癌関連性(Translational control: the cancer connection)」(Int. J. Biochem. Cell Biol., vol. 31, pp. 1-23 (1999))。eIF4Eの過剰発現によって、これらの競合性が弱いmRNAの翻訳が特異的に増大され、その多くは、FGF−2及びVEGF等の細胞増殖及び血管形成を刺激する産物をコードする。C. Kevil et al.著「eIF−4因子によるFGF−2の翻訳増強、及び翻訳開始に関するCUGコドン及びAUGコドンの代替的利用(Translational enhancement of FGF-2 by eIF-4 factors, and alternate utilization of CUG and AUG codons for translation initiation)」(Oncogene, vol. 11, pp. 2339-2348 (1995))、C. Kevil et al.著「真核生物開始因子4Eによる血管透過性因子の翻訳調節:腫瘍の血管形成に対する影響(Translational regulation of Vascular Permeability Factor by eukaryotic initiation factor 4E: Implications for tumor angiogenesis)」(Int. J. Cancer, vol. 65, pp. 785- 790 (1996))、及びP.A.E. Scott et al.著「ヒトの乳癌におけるタンパク質アイソファーム発現に対して、血管内皮増殖因子のmRNAの異なる発現及びeIF4Eとの関連性(Differential expression of vascular endothelial growth factor mRNA versus protein isoforms expression in human breast cancer and relationship to eIF4E)」(British. J. Cancer, vol. 77, pp. 2120- 2128 (1998))を参照されたい。
eIF4Eの上昇が複雑な5'−UTRによる抑制されたmRNAの翻訳を助け、その多くが細胞増殖に必要な因子、例えばプロトオンコジーンc−myc、cyclinD1、オルニチンデカルボキシラーゼ、線維芽増殖因子−2(FGF−2)、及び血管内皮増殖因子(「VEGF」、そうでなければ、血管透過性因子(「VPF」)として既知である)をコードする。A. De Benedetti et al.著「腫瘍におけるeIF4E発現:悪性腫瘍の進行におけるその考え得る役割(eIF4E expression in tumors: its possible role in progression of malignancies)」(Int. J. of Biochemistry and Cell Biology, vol. 31, pp. 59-72 (1999))を参照されたい。
eIF4Eの過剰発現は、膀胱腫瘍、乳腫瘍、子宮頚部腫瘍、結腸腫瘍、頭頸部腫瘍、及び前立腺腫瘍を含む充実性腫瘍において、並びに多くの悪性細胞株において遍在することを示している。J. P. Crew et al.著「表在性及び筋肉湿潤性膀胱癌における真核生物の開始因子−4E、並びに血管表皮増殖因子の発現及び腫瘍進行とのその関連性(Eukaryotic initiation factor-4E in superficial and muscle invasive bladder cancer and its correlation with vascular endothelial growth factor expression and tumour progression)」 Br. J. Cancer, vol. 82, pp. 161-166 (2000)、V.V. Kerekatte et al.著「プロトオンコジーン/翻訳開始因子eIF4E:乳癌腫におけるその発現の調査(The proto-oncogene/ translation initiation factor eIF4E: a survey of its expression in breast carcinomas)」 Int. J. Cancer., vol. 64, pp. 27-31 (1995)、LB. Rosenwald et al.著「タンパク質合成開始因子eIF4Eの上方調節は結腸癌発生中の初期事象である(Upregulation of protein synthesis initiation factor eIF4E is an early event during colon carcinogenesis)」 Oncogene, vol.18, pp. 2507-2517 (1999)、C. O. Nathan et al.著「切除縁におけるプロトオンコジーンeIF4Eの検出が頭頸癌の再発を予測し得る(Detection of the proto-oncogene eIF4E in surgical margins may predict recurrence in head and neck cancer)」 Oncogene, vol.15, pp. 579-584 (1997)、Y. Miyagi et al.著「広い範囲の形質転換した細胞株における真核生物開始因子eIF4EのmRNAのレベルの上昇(Elevated levels of eukaryotic initiation factor eIF4E mRNA in a broad spectrum of transformed cell lines)」 Cancer Letters, vol. 91, pp. 247-252 (1995)、B. Anthony et al.著「乳癌腫の細胞株におけるプロトオンコジーン翻訳因子eIF4Eの過剰発現(Overexpression of the protooncogene- translation factor eIF4E in breast carcinoma cell lines)」 Int. J. Cancer, vol.65, pp. 858-863 (1996)、並びにI.B. Rosenwald著「形質転換細胞における翻訳開始因子eIF4E及びeIF−2αをコードする遺伝子の上方調節発現(Upregulated expression of the genes encoding translation initiation factors eIF4E and eIF-2alpha in transformed cells)」 Cancer Letters, vol. 102, pp. 113-23 (1996)を参照されたい。
本発明は、これまでのほとんどのアプローチとは異なり、癌細胞の特別な知識を必要としないが、代わりに癌細胞を正常細胞から区別する、すなわちeIF4E発現を上昇させる一般的特徴を対象に、癌に対する新規の遺伝子治療を提供する。
特許請求された配列の特別の機能的特徴は、属の十分な表示及び添付の本発明の特許請求の範囲内にある配列が分子生物学及び医学の分野の任意の当業者によって容易に確かめられること、並びにこのような当業者が、様々なDNA配列をどのようにシーケンシングするか、及びその配列がeIF4Eの非存在下でウイルス配列の翻訳を阻害し、eIF4Eの存在下でウイルス配列のウイルスへの翻訳を可能にするか否かを求めるために、任意に特定の配列をどのように試験するかを知っていることである。
(1)動物研究での原理の証明が既に与えられ、研究のほとんどが組織培養実験で行うことができるので、要求される試験の量が特に比較的小さい場合、(2)対象の任意の特定配列の試験が当該技術分野で既知のものを越える方向性又は指針を必要としない場合、(3)当該技術分野の現行の知識及び当業者の相対的技術が極めて高い場合、(4)非翻訳パリンドローム配列を含むメッセンジャーRNA配列を産生することができる様々なDNA配列をシーケンシングするために十分に既知の手順が存在する場合、並びに(5)特定の非翻訳配列がeIF4Eの非存在下でウイルス配列の翻訳を阻害し、eIF4Eの存在下でウイルス配列のウイルスへの翻訳を可能にするか否かを求めるのに必要である全ての材料及び方法が、当該技術分野で極めてありふれたものであるので、添付の本発明の特許請求の範囲内にある配列が非常に単純であるか否かを求める場合、本発明の適切な配列を求めることが、十分に分子生物学及び医学の分野の当業者の能力内である。
一実施形態において、本発明は癌治療に適用される治療剤として条件複製アデノウイルス(CRAd)を提供する。一実施形態では、CRAdの癌特異的複製によって、感染腫瘍組織をウイルス媒介性の腫瘍崩壊させ、正常組織の細胞では増殖しないが、周囲の腫瘍細胞でさらに増殖することができる子孫ウイルスを放出させるが、これはCRAd複製に影響を与えない。
癌に対する遺伝子治療アプローチ
新生物の形質転換及び進行の分子機構の研究によって、癌が、一連の後天的遺伝子病変の蓄積に由来される遺伝疾患であることが理解されている。化学療法、放射線送達法及び外科治療法の進歩にもかかわらず、多くの進行癌からの生存がわずかなままであり、代替的治療アプローチが必要であることは明らかである。したがって、遺伝子治療/ウイルス療法は依然として癌治療に対する有望な戦略である。癌の遺伝子治療/ウイルス療法に対する現行のアプローチは、5つの広範なカテゴリー:1)突然変異補正、2)分子化学療法、3)遺伝的免疫増強、4)耐性/感受性の遺伝的調節、及び5)腫瘍崩壊性治療又はウイルス療法に分けることができる。上記の遺伝子治療/ウイルス療法アプローチのいずれも基本的には、有効性に必須のレベルで標的細胞に治療遺伝子、又は複製可能なウイルスゲノムを送達するベクターの能力に基づいている。体内遺伝子送達における有効性が高いという能力を含む多くの特徴によって、5型アデノウイルス(Ad5)は、非常に多くの遺伝子治療/ウイルス療法アプローチに好適である、最適な遺伝子治療/ウイルス療法ベクターとなり、他のベクター選択とは区別される。
新生物の形質転換及び進行の分子機構の研究によって、癌が、一連の後天的遺伝子病変の蓄積に由来される遺伝疾患であることが理解されている。化学療法、放射線送達法及び外科治療法の進歩にもかかわらず、多くの進行癌からの生存がわずかなままであり、代替的治療アプローチが必要であることは明らかである。したがって、遺伝子治療/ウイルス療法は依然として癌治療に対する有望な戦略である。癌の遺伝子治療/ウイルス療法に対する現行のアプローチは、5つの広範なカテゴリー:1)突然変異補正、2)分子化学療法、3)遺伝的免疫増強、4)耐性/感受性の遺伝的調節、及び5)腫瘍崩壊性治療又はウイルス療法に分けることができる。上記の遺伝子治療/ウイルス療法アプローチのいずれも基本的には、有効性に必須のレベルで標的細胞に治療遺伝子、又は複製可能なウイルスゲノムを送達するベクターの能力に基づいている。体内遺伝子送達における有効性が高いという能力を含む多くの特徴によって、5型アデノウイルス(Ad5)は、非常に多くの遺伝子治療/ウイルス療法アプローチに好適である、最適な遺伝子治療/ウイルス療法ベクターとなり、他のベクター選択とは区別される。
条件複製アデノウイルスを用いることによって、効率的な腫瘍細胞の腫瘍崩壊を実現し、及び腫瘍細胞の感染制限を和らげる方法が提示される。これらの利点にも関わらず、Adベースの癌の遺伝子治療/ウイルス療法アプローチの全体的な有効性は未だに、癌組織における準最適なベクター送達効率に限定される。注目すべきことに、今まで実施された臨床試験によって、非複製アデノウイルスが体内送達スキーマ(schemas)を用いて利用されている状況で、腫瘍細胞へ比較的非効率に遺伝子が導入されることが実証されている。したがって、定量的な体内腫瘍形質導入に対する要求は、癌の遺伝子治療/ウイルス療法分野のさらなる発展のために取り組まなければいけない重大な課題である。したがって、癌標的に対するアデノウイルスの遺伝子導入の有効性を増大させることは、これらの完全な利点を引き出す重要な手段である。しかし、形質導入的な標的化だけでは、正常細胞にも存在しない癌細胞との特異性が高い既知の細胞表面受容体(細胞表面マーカー)が不足するので、アデノウイルスの癌選択性は十分ではない。癌の遺伝子治療/ウイルス療法アプローチに関して効果的な腫瘍細胞の形質導入が制限されるという別の事実は、利用されるアデノウイルスが複製不可能であるということである。この場合、腫瘍細胞感染は終末事象であり、感染後のウイルス複製(及びその後の増幅)は起こらない。増幅効果を得るための1つの概念的アプローチは、子孫ベクターの水平展開が起こり得るような、感染後に送達されるウイルスベクターの選択的複製によるものである。このアプローチでは、条件複製可能なウイルスが、正常細胞ではなく、形質導入腫瘍細胞で複製される。それから、形質導入腫瘍細胞からの子孫ウイルスの産生によって、隣接した腫瘍細胞が感染される(図1)。さらに、溶菌サイクルを通して複製するウイルスの利用によって、治療的有用性のあるプロセスであるウイルス介在性の腫瘍崩壊が起こる。この概念的アプローチを受けて、複製ウイルス系を新規の抗腫瘍療法として利用している。特定の組織内で複製する能力のある、野生型ウイルス、又は弱毒化ウイルスが、様々な新生物の特異的腫瘍崩壊を達成するために、ヒトの臨床試験で用いられている。これらのウイルスとしては、アデノウイルス[4]、ムンプスウイルス[5、6]、及び西ナイルウイルス[7]が挙げられる。最近になって、パルボウイルスH−1[8、9]及び単純ヘルペスウイルス[10、11]が腫瘍細胞のウイルス腫瘍崩壊を達成することも示されている。
アデノウイルスが、条件複製抗腫瘍剤としての開発の基礎となる特有の特性を有する
抗腫瘍治療剤としてのAdベクターの有益な特性の1つは、このウイルスが溶菌ライフサイクルを有することであり、このことを腫瘍崩壊に利用することができる。これに関して、Bischoff et al.[12]は近年、腫瘍特異的な腫瘍崩壊を達成するために、初期遺伝子領域が欠失している条件複製アデノウイルス(CRAd)を利用している。特に、dl1520(ONYX−015)は、卵巣癌等の腫瘍細胞で複製し、選択的に破壊することが実証されている、E1B−55kDa遺伝子を欠失したCRAdであり、これはp53機能を喪失している[12]。実際、体外及び腹腔内治療した卵巣癌のマウスモデルの両方で、ONYX−015による有意な抗腫瘍活性が実証された[13、14]。ONYX−015は臨床的に広範な試験を行い、有効性の兆候が有望であり、安全性が証明されている[4、15]。したがってこの経験によって、CRAdシステムが有意な抗腫瘍効果を達成できるという概念が確立された。Ad複製サイクルのより詳細な知識によって、第一世代のONYX−015 CRAdシステムで達成されたことに加えて、治療的な腫瘍崩壊を達成する改良されたCRAdの開発が容易になると考えられる。
抗腫瘍治療剤としてのAdベクターの有益な特性の1つは、このウイルスが溶菌ライフサイクルを有することであり、このことを腫瘍崩壊に利用することができる。これに関して、Bischoff et al.[12]は近年、腫瘍特異的な腫瘍崩壊を達成するために、初期遺伝子領域が欠失している条件複製アデノウイルス(CRAd)を利用している。特に、dl1520(ONYX−015)は、卵巣癌等の腫瘍細胞で複製し、選択的に破壊することが実証されている、E1B−55kDa遺伝子を欠失したCRAdであり、これはp53機能を喪失している[12]。実際、体外及び腹腔内治療した卵巣癌のマウスモデルの両方で、ONYX−015による有意な抗腫瘍活性が実証された[13、14]。ONYX−015は臨床的に広範な試験を行い、有効性の兆候が有望であり、安全性が証明されている[4、15]。したがってこの経験によって、CRAdシステムが有意な抗腫瘍効果を達成できるという概念が確立された。Ad複製サイクルのより詳細な知識によって、第一世代のONYX−015 CRAdシステムで達成されたことに加えて、治療的な腫瘍崩壊を達成する改良されたCRAdの開発が容易になると考えられる。
癌細胞へのE1A転写の標的化に基づき、CRAdを選択的に複製させる戦略
複製ベクター及び非複製ベクターの両方に基づくアプローチに関して、非腫瘍標的の異所性感染が腫瘍関連毒性を引き起こす可能性がある。この問題点は、腫瘍細胞に対してベクターを排他的に「標的化する」ことによって対処されている。この目的を達成するための方法は、ファイバー遺伝子修飾(fiber genetic modification)によって、或いは非複製ベクターに関して送達された治療遺伝子、又はCRAdに関してウイルスの複製/腫瘍崩壊のいずれかの標的化を達成するために、腫瘍/組織選択的プロモータ(TSP)によって治療遺伝子の発現を制限することによって、ウイルスの指向性を変えようとすることである。トランス遺伝子又はCRAdの発現を標的とするAdベースのベクターを作製するのに最も広く用いられる方法は、Ad5 E1遺伝子の転写にTSPを利用することである。このアプローチの結果として、CRAdはプロモータの活性が高い細胞でのみ複製し、ウイルスの複製を介在するのに十分なレベルでE1を発現させる。したがって、この戦略の鍵となる問題点は、Adゲノムに関する腫瘍/組織選択的プロモータの特異性である。さらに、血流に放出されるウイルスの大部分は肝臓に局在するので、肝臓において活性が低いことが悪影響を避けるのに必須である。しかし、プラスミドベースの構築物で特異性を示す多くのプロモータがアデノウイルスでこのような特異性を示さないことは注目に値する[16]。したがって、本発明者等は、これらのことを考慮してCRAd構築物に有用なプロモータを求めている。本出願において、本発明者等はCXCR4遺伝子のプロモータ、ストローマ細胞由来因子−1(SDF−1)に対する受容体、小さい化学走化性サイトカイン(ケモカイン)のCXC群の成員を用いることを提唱している。CXCR4の発現が、乳癌細胞では顕著に上方調節されたことが見出されたが、正常な哺乳動物の表皮細胞では検出することができなかった[17]。加えて、CXCR4の発現が前立腺癌、骨髄腫及び白血病等の多くの他の種類の癌に関連しており、腫瘍の進行及び転移に関わっている[18〜20]。近年、Ad5ベースのベクターに関する効果的なレポーター遺伝子の発現を誘導するのにCXCR4プロモータが用いられてきた[21]。また、本発明者等の予備データで示されるように、複製欠損AdベクターにおいてCXCR4プロモータで誘導したレポーター遺伝子は、幾つかのHNSCC細胞株における他のTSPの中で最も高い発現レベルを示した。さらに、CXCR4プロモータは、同じAdベクターにおけるCMVプロモータよりもさらにより活性が高い(図3)。このため、CXCR4プロモータの活性は、CRAdにおいてE1遺伝子の発現を誘導するのに十分高い必要がある。しかし、これらのデータによって、CXCR4遺伝子プロモータは、新規の腫瘍選択的に転写標的されたCRAdの構築に好適なTSPであることが示唆される。癌細胞に対して、肝臓等の正常組織におけるCXCR4プロモータの活性がかなり低いことが近年示されている。それにもかかわらず未だに、プロモータの幾つかの残り(バックグラウンド)の活性がヒトの肝臓片で検出され得る[Zhu et al., パーソナルコニュニケーション]。この状況では、その癌特異性を高めるために提案されたCRAdのさらなる改良が必要である。本発明者等は、CXCR4遺伝子プロモータで介在されたE1A遺伝子発現の癌制御は、E1A遺伝子発現で標的となる別のレベルの癌を与えることによって確認することができると推論した。このことは、肝臓及び他の正常組織でのプロモータの漏出を潜在的に減らすか、又は取り除くことさえある。本発明者等は、癌細胞に対するCXCR4で調節されるCRAd複製をさらに制限する方法の1つは、癌特異的な翻訳制御を与えることであると仮定している。このような制御の原理及び論拠が以下に記載されている。
複製ベクター及び非複製ベクターの両方に基づくアプローチに関して、非腫瘍標的の異所性感染が腫瘍関連毒性を引き起こす可能性がある。この問題点は、腫瘍細胞に対してベクターを排他的に「標的化する」ことによって対処されている。この目的を達成するための方法は、ファイバー遺伝子修飾(fiber genetic modification)によって、或いは非複製ベクターに関して送達された治療遺伝子、又はCRAdに関してウイルスの複製/腫瘍崩壊のいずれかの標的化を達成するために、腫瘍/組織選択的プロモータ(TSP)によって治療遺伝子の発現を制限することによって、ウイルスの指向性を変えようとすることである。トランス遺伝子又はCRAdの発現を標的とするAdベースのベクターを作製するのに最も広く用いられる方法は、Ad5 E1遺伝子の転写にTSPを利用することである。このアプローチの結果として、CRAdはプロモータの活性が高い細胞でのみ複製し、ウイルスの複製を介在するのに十分なレベルでE1を発現させる。したがって、この戦略の鍵となる問題点は、Adゲノムに関する腫瘍/組織選択的プロモータの特異性である。さらに、血流に放出されるウイルスの大部分は肝臓に局在するので、肝臓において活性が低いことが悪影響を避けるのに必須である。しかし、プラスミドベースの構築物で特異性を示す多くのプロモータがアデノウイルスでこのような特異性を示さないことは注目に値する[16]。したがって、本発明者等は、これらのことを考慮してCRAd構築物に有用なプロモータを求めている。本出願において、本発明者等はCXCR4遺伝子のプロモータ、ストローマ細胞由来因子−1(SDF−1)に対する受容体、小さい化学走化性サイトカイン(ケモカイン)のCXC群の成員を用いることを提唱している。CXCR4の発現が、乳癌細胞では顕著に上方調節されたことが見出されたが、正常な哺乳動物の表皮細胞では検出することができなかった[17]。加えて、CXCR4の発現が前立腺癌、骨髄腫及び白血病等の多くの他の種類の癌に関連しており、腫瘍の進行及び転移に関わっている[18〜20]。近年、Ad5ベースのベクターに関する効果的なレポーター遺伝子の発現を誘導するのにCXCR4プロモータが用いられてきた[21]。また、本発明者等の予備データで示されるように、複製欠損AdベクターにおいてCXCR4プロモータで誘導したレポーター遺伝子は、幾つかのHNSCC細胞株における他のTSPの中で最も高い発現レベルを示した。さらに、CXCR4プロモータは、同じAdベクターにおけるCMVプロモータよりもさらにより活性が高い(図3)。このため、CXCR4プロモータの活性は、CRAdにおいてE1遺伝子の発現を誘導するのに十分高い必要がある。しかし、これらのデータによって、CXCR4遺伝子プロモータは、新規の腫瘍選択的に転写標的されたCRAdの構築に好適なTSPであることが示唆される。癌細胞に対して、肝臓等の正常組織におけるCXCR4プロモータの活性がかなり低いことが近年示されている。それにもかかわらず未だに、プロモータの幾つかの残り(バックグラウンド)の活性がヒトの肝臓片で検出され得る[Zhu et al., パーソナルコニュニケーション]。この状況では、その癌特異性を高めるために提案されたCRAdのさらなる改良が必要である。本発明者等は、CXCR4遺伝子プロモータで介在されたE1A遺伝子発現の癌制御は、E1A遺伝子発現で標的となる別のレベルの癌を与えることによって確認することができると推論した。このことは、肝臓及び他の正常組織でのプロモータの漏出を潜在的に減らすか、又は取り除くことさえある。本発明者等は、癌細胞に対するCXCR4で調節されるCRAd複製をさらに制限する方法の1つは、癌特異的な翻訳制御を与えることであると仮定している。このような制御の原理及び論拠が以下に記載されている。
癌細胞に対するE1A mRNA翻訳の標的化に基づくアデノウイルスベクターの改良:癌細胞に対するトランス遺伝子発現の制限のためのタンパク質合成の調節
タンパク質の合成は、細胞において最もエネルギーを必要とするプロセスであり、驚くことではないが、翻訳速度は厳重に調節される[22]。哺乳動物では、ほとんどの調節が、翻訳延長又は翻訳終結よりむしろ翻訳開始レベルで行われる[23、24]。開始プロセスは、3つの工程:1)40Sリボソームサブユニットと、開始因子eIF−2、eIF−3、Met−tRNAiと、GTPとから成る43S複合体の形成、2)mRNAを含有する48S複合体の形成、並びに3)60Sサブユニットを連結させ、完全な80S複合体を形成することから成る。ほとんどの状況では、2番目の工程が律速となり、これにより調節を受ける。1つの特定のmRNAが、メッセンジャーRNA(messages)の非翻訳プールから選択され、リボソームへ補充されるので、この工程は相違点でもある。このプロセスは、eIF4Eが最も少なく(the least abundant)、律速になっている、eIF−4因子群で介在される[25〜27]。増殖調節におけるタンパク質合成の重要性、及びこのプロセスにおけるeIF4Eの役割は、eIF4Eの過剰発現によって培養液中の細胞で悪性の形質転換が引き起こされるという見解によって確認された[28、29]。
タンパク質の合成は、細胞において最もエネルギーを必要とするプロセスであり、驚くことではないが、翻訳速度は厳重に調節される[22]。哺乳動物では、ほとんどの調節が、翻訳延長又は翻訳終結よりむしろ翻訳開始レベルで行われる[23、24]。開始プロセスは、3つの工程:1)40Sリボソームサブユニットと、開始因子eIF−2、eIF−3、Met−tRNAiと、GTPとから成る43S複合体の形成、2)mRNAを含有する48S複合体の形成、並びに3)60Sサブユニットを連結させ、完全な80S複合体を形成することから成る。ほとんどの状況では、2番目の工程が律速となり、これにより調節を受ける。1つの特定のmRNAが、メッセンジャーRNA(messages)の非翻訳プールから選択され、リボソームへ補充されるので、この工程は相違点でもある。このプロセスは、eIF4Eが最も少なく(the least abundant)、律速になっている、eIF−4因子群で介在される[25〜27]。増殖調節におけるタンパク質合成の重要性、及びこのプロセスにおけるeIF4Eの役割は、eIF4Eの過剰発現によって培養液中の細胞で悪性の形質転換が引き起こされるという見解によって確認された[28、29]。
タンパク質合成におけるeIF4Eの役割
それぞれのタンパク質の合成は最終的に、mRNAの相対的存在量及びその固有の翻訳可能性、いわゆる翻訳開始機構の構成要素と相互作用するこの特定のmRNAの能力に依存する。翻訳開始プロセスのこの特性によって、様々なmRNAの翻訳される優先順序が確定する。タンパク質合成におけるこのようなヒエラルキーは遺伝子発現に極めて重要である。真核生物では、遺伝子からタンパク質への情報の流れは、この環境での迅速な変化に対応するには遅すぎる。真核生物は、急速には利用されないmRNAのプールを維持することによってこの問題を補っている。これらの「翻訳的に抑制された」mRNAの幾つかは、例えば急速な分裂に復帰する細胞を必要とする条件下で迅速に産生することができる増殖因子をコードする[30、31]。翻訳に関してmRNA競合の理論的処理[32]が2種類の構造的に異なるmRNA(弱及び強)を同定した。全体の約5〜10%である弱mRNAは静止細胞で翻訳的に抑制され、迅速に増殖する細胞では[33、34]、及び特に癌性細胞では、翻訳開始能の変化により弱mRNA及び強mRNAが翻訳される。eIF4Eが、翻訳のためのmRNA補充の第1の工程においてmRNAの7−メチルグアノシン含有キャップと特異的に結合する[35]。eIF4Eは、mRNAの5'−UTRで二次構造を解くヘリカーゼであるeIF−4F複合体のサブユニットでもある。この後者の機能は、翻訳開始部位を曝し、局在化するための「スキャニング」に必須である[36〜40]。eIF4Eの存在量が低いことが、長く高度に構造化された5'−UTR(弱)が強mRNAによるリボソームとの結合と競合するように、異なるmRNA種間での競合状況を作り出す[41]。700個の脊椎動物のmRNAからの配列の分析によって、90%超が、200ヌクレオチド長未満であり、上流のAUGを欠く5'−UTRを含有することが示され、このことが強mRNAの特徴である[42]。弱mRNAは、安定な二次構造及び/又は上流のAUGを形成する能力がある長いGCが豊富な5'−UTRを含有する[43〜45]。多くのこのようなmRNAは、癌タンパク質、細胞周期調節因子、増殖因子及びこれらの受容体をコードする。eIF4Eのレベル又は活性の上昇によって、弱mRNAの翻訳が強く選択的に増大される[30]。
それぞれのタンパク質の合成は最終的に、mRNAの相対的存在量及びその固有の翻訳可能性、いわゆる翻訳開始機構の構成要素と相互作用するこの特定のmRNAの能力に依存する。翻訳開始プロセスのこの特性によって、様々なmRNAの翻訳される優先順序が確定する。タンパク質合成におけるこのようなヒエラルキーは遺伝子発現に極めて重要である。真核生物では、遺伝子からタンパク質への情報の流れは、この環境での迅速な変化に対応するには遅すぎる。真核生物は、急速には利用されないmRNAのプールを維持することによってこの問題を補っている。これらの「翻訳的に抑制された」mRNAの幾つかは、例えば急速な分裂に復帰する細胞を必要とする条件下で迅速に産生することができる増殖因子をコードする[30、31]。翻訳に関してmRNA競合の理論的処理[32]が2種類の構造的に異なるmRNA(弱及び強)を同定した。全体の約5〜10%である弱mRNAは静止細胞で翻訳的に抑制され、迅速に増殖する細胞では[33、34]、及び特に癌性細胞では、翻訳開始能の変化により弱mRNA及び強mRNAが翻訳される。eIF4Eが、翻訳のためのmRNA補充の第1の工程においてmRNAの7−メチルグアノシン含有キャップと特異的に結合する[35]。eIF4Eは、mRNAの5'−UTRで二次構造を解くヘリカーゼであるeIF−4F複合体のサブユニットでもある。この後者の機能は、翻訳開始部位を曝し、局在化するための「スキャニング」に必須である[36〜40]。eIF4Eの存在量が低いことが、長く高度に構造化された5'−UTR(弱)が強mRNAによるリボソームとの結合と競合するように、異なるmRNA種間での競合状況を作り出す[41]。700個の脊椎動物のmRNAからの配列の分析によって、90%超が、200ヌクレオチド長未満であり、上流のAUGを欠く5'−UTRを含有することが示され、このことが強mRNAの特徴である[42]。弱mRNAは、安定な二次構造及び/又は上流のAUGを形成する能力がある長いGCが豊富な5'−UTRを含有する[43〜45]。多くのこのようなmRNAは、癌タンパク質、細胞周期調節因子、増殖因子及びこれらの受容体をコードする。eIF4Eのレベル又は活性の上昇によって、弱mRNAの翻訳が強く選択的に増大される[30]。
血管新生におけるeIF4Eの役割
低いeIF4E濃度によってもたらされる翻訳制御は、器官/組織分化を維持するのに必要な遺伝子発現の適切な抑制に必須である。これに対して、病理的な緊急事態に迅速に応答する翻訳効率の変化に主に基づく機構に明らかに必要であると考えられる。この概念に対する明確な例の1つは、血管新生のプロセスである。このプロセスは、必要としている組織に新規の毛細血管芽を与える生物の永続的な能力である。これは、繁殖サイクル又は胎盤発育中の子宮内膜組織の増殖等の生理学的状況、並びに虚血/低酸素、血管網膜症、及び腫瘍血管形成等の病理状態の両方を反映する[46]。血管新生のプロセスは複雑であり、多くの工程及び細胞型を伴う[47]。このプロセス全体は、血液及び体液の喪失を最小限にするために著しく速い必要がある。細胞がデノボ遺伝子発現に完全に依存していた場合には、損傷、炎症、又は腫瘍血管形成に対する迅速な応答が損なわれる。代わりに、主として翻訳制御(eIF4E活性)の変化に基づく機構が、適切な酸化を達成するという命令(imperative)に迅速に応答するように発展している[30]。eIF4Eの上昇によって、塩基性線維芽増殖因子(FGF2)[48、31]及び血管内皮増殖因子(VEGF)[49]の合成が劇的に増大し、その両方が長く複雑な5'−UTRを有するmRNAでコードされる。実際、腫瘍の生検標本におけるeIF4Eの発現とVEGFの発現との間に強い相関がある[50]。FGF2及びVEGFは、血管内皮に対する2つの最も強力なマイトジェンであり、腫瘍血管形成に必須である[51]。eIF4Eの上方調節は、より大きいタンパク質合成の出力を確立するための必要条件でもあり、癌細胞が迅速な増殖を持続するのに必要な発展である可能性がある。
低いeIF4E濃度によってもたらされる翻訳制御は、器官/組織分化を維持するのに必要な遺伝子発現の適切な抑制に必須である。これに対して、病理的な緊急事態に迅速に応答する翻訳効率の変化に主に基づく機構に明らかに必要であると考えられる。この概念に対する明確な例の1つは、血管新生のプロセスである。このプロセスは、必要としている組織に新規の毛細血管芽を与える生物の永続的な能力である。これは、繁殖サイクル又は胎盤発育中の子宮内膜組織の増殖等の生理学的状況、並びに虚血/低酸素、血管網膜症、及び腫瘍血管形成等の病理状態の両方を反映する[46]。血管新生のプロセスは複雑であり、多くの工程及び細胞型を伴う[47]。このプロセス全体は、血液及び体液の喪失を最小限にするために著しく速い必要がある。細胞がデノボ遺伝子発現に完全に依存していた場合には、損傷、炎症、又は腫瘍血管形成に対する迅速な応答が損なわれる。代わりに、主として翻訳制御(eIF4E活性)の変化に基づく機構が、適切な酸化を達成するという命令(imperative)に迅速に応答するように発展している[30]。eIF4Eの上昇によって、塩基性線維芽増殖因子(FGF2)[48、31]及び血管内皮増殖因子(VEGF)[49]の合成が劇的に増大し、その両方が長く複雑な5'−UTRを有するmRNAでコードされる。実際、腫瘍の生検標本におけるeIF4Eの発現とVEGFの発現との間に強い相関がある[50]。FGF2及びVEGFは、血管内皮に対する2つの最も強力なマイトジェンであり、腫瘍血管形成に必須である[51]。eIF4Eの上方調節は、より大きいタンパク質合成の出力を確立するための必要条件でもあり、癌細胞が迅速な増殖を持続するのに必要な発展である可能性がある。
癌における、及び遺伝子治療/ウイルス療法のための標的としてのeIF4E
本発明者等は今では、eIF4Eの過剰発現が充実性腫瘍及び悪性細胞株において遍在であることを知っている[52〜55]。eIF4Eの上方調節が、原発性腫瘍の血管形成のための必要条件であると考えられる[52]。乳癌細胞株におけるアンチセンスRNAによるeIF4Eの還元によって、FGF2を合成する能力と共に、血管形成性及び腫瘍形成性が損なわれた[31]。eIF4Eの上昇が迅速な細胞分裂に常に相関しているとは限らないことを強調することが重要である。回転率が迅速な腸粘膜由来の細胞でさえ、eIF4Eのレベルは高くないが、結腸癌腫ではそのレベルは高い[53]。もちろん、このことによっては、組織の特異的な細胞又は局所が高いレベルのeIF4Eを発現し得る可能性は排除されないが、概してeIF4Eの上昇は正常な分裂細胞ではなく、悪性細胞の特徴である。同様に、FGF2を発現する明らかに特異的な組織が存在し、それ自体はFGF2 mRNAを翻訳することができる必要がある。しかし、eIF4Eを過剰発現する細胞は典型的に、mRNAは対応して増大することなく、正常細胞よりもFGF2合成速度が50〜100倍速い。したがって、この細胞は特にFGF2 mRNAを翻訳する能力がより高い[48]。本発明者等は、充実性腫瘍におけるほぼ遍在的なeIF4Eの過剰発現を認識することにより、癌細胞を選択的に標的化する戦略を考え出した。eIF4Eの上昇によって、長く構造化された5'−UTRを有するmRNAの翻訳が特異的に容易になるので、当業者は、癌細胞で選択的に翻訳されるmRNAを設計することができる。これらの発見に基づき、本発明者等は、eIF4E過剰発現細胞に対するトランス遺伝子の翻訳を制限することに基づく、腫瘍細胞に対して自殺遺伝子の発現を標的化するための戦略をこれまでに考え出している。具体的には、本発明者等は、FGF2の長い5'−UTRが単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−Tk)のcDNAの前にある発現ベクターを構築した。本発明者等は、この構築物が癌細胞に対するより選択的な標的になり、したがってこのような細胞が形質導入されると正常細胞(骨髄を含む)の集団化が抑えられると仮定した。今では公開されたこの研究[2、3]によって、治療遺伝子の翻訳調節が体外及び体内モデルで達成され、さらに(eIF4Eレベルの上昇による)翻訳制御が癌細胞と正常細胞との間の強い識別を可能にすることが示された。
本発明者等は今では、eIF4Eの過剰発現が充実性腫瘍及び悪性細胞株において遍在であることを知っている[52〜55]。eIF4Eの上方調節が、原発性腫瘍の血管形成のための必要条件であると考えられる[52]。乳癌細胞株におけるアンチセンスRNAによるeIF4Eの還元によって、FGF2を合成する能力と共に、血管形成性及び腫瘍形成性が損なわれた[31]。eIF4Eの上昇が迅速な細胞分裂に常に相関しているとは限らないことを強調することが重要である。回転率が迅速な腸粘膜由来の細胞でさえ、eIF4Eのレベルは高くないが、結腸癌腫ではそのレベルは高い[53]。もちろん、このことによっては、組織の特異的な細胞又は局所が高いレベルのeIF4Eを発現し得る可能性は排除されないが、概してeIF4Eの上昇は正常な分裂細胞ではなく、悪性細胞の特徴である。同様に、FGF2を発現する明らかに特異的な組織が存在し、それ自体はFGF2 mRNAを翻訳することができる必要がある。しかし、eIF4Eを過剰発現する細胞は典型的に、mRNAは対応して増大することなく、正常細胞よりもFGF2合成速度が50〜100倍速い。したがって、この細胞は特にFGF2 mRNAを翻訳する能力がより高い[48]。本発明者等は、充実性腫瘍におけるほぼ遍在的なeIF4Eの過剰発現を認識することにより、癌細胞を選択的に標的化する戦略を考え出した。eIF4Eの上昇によって、長く構造化された5'−UTRを有するmRNAの翻訳が特異的に容易になるので、当業者は、癌細胞で選択的に翻訳されるmRNAを設計することができる。これらの発見に基づき、本発明者等は、eIF4E過剰発現細胞に対するトランス遺伝子の翻訳を制限することに基づく、腫瘍細胞に対して自殺遺伝子の発現を標的化するための戦略をこれまでに考え出している。具体的には、本発明者等は、FGF2の長い5'−UTRが単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼ(HSV−Tk)のcDNAの前にある発現ベクターを構築した。本発明者等は、この構築物が癌細胞に対するより選択的な標的になり、したがってこのような細胞が形質導入されると正常細胞(骨髄を含む)の集団化が抑えられると仮定した。今では公開されたこの研究[2、3]によって、治療遺伝子の翻訳調節が体外及び体内モデルで達成され、さらに(eIF4Eレベルの上昇による)翻訳制御が癌細胞と正常細胞との間の強い識別を可能にすることが示された。
CRAdの癌特異性を改善するための転写及び翻訳両方の標的化の組合せ
効果的な腫瘍崩壊性CRAd剤を作製するためには、その複製がa)癌選択性を高く、またb)特定の種類の癌組織/細胞における効率を高くする必要がある。このような選択性及び複製の効率は、転写及び翻訳の2つのレベルでAd複製機能に必須なAd5 E1遺伝子の発現を制御することによって達成することができる。転写の標的化によって、E1遺伝子の転写が効率的になり、正常細胞(組織)ではなく、或る特定の組織又は癌細胞(腫瘍)でのみCRAdを複製させることができる。
効果的な腫瘍崩壊性CRAd剤を作製するためには、その複製がa)癌選択性を高く、またb)特定の種類の癌組織/細胞における効率を高くする必要がある。このような選択性及び複製の効率は、転写及び翻訳の2つのレベルでAd複製機能に必須なAd5 E1遺伝子の発現を制御することによって達成することができる。転写の標的化によって、E1遺伝子の転写が効率的になり、正常細胞(組織)ではなく、或る特定の組織又は癌細胞(腫瘍)でのみCRAdを複製させることができる。
複製に関与する遺伝子の転写は、様々な組織又は腫瘍特異的プロモータ(TSP)の制御下で調節することができる
癌特異性は別として、TSPの体内転写活性は、CRAdを複製させるのに十分なレベルのE1遺伝子発現を与える程度に高い必要がある。癌導入プロファイルに利用可能なTSPの数が限られている場合、ほとんどの種類の癌に最適なCRAd剤を作製することは困難である。事実、今までのところほとんどのプロモータは癌特異性よりも組織特異性を有することを特徴としていた。癌特異的なプロモータによる転写の標的化であっても絶対的に特異的であるということは決してなく、正常な組織及び器官、特に肝臓における有意なレベルのバックグラウンド(非特異的)活性が生じる可能性がある。不運なことに、eIF4Eが腫瘍だけでなく、或る特定の種類の正常組織においても上方調節される可能性があるので、翻訳の標的化も絶対的に特異的ではない。FGF2 5'−UTR含有mRNAの翻訳緩和の効果はeIF4Eのレベルに依存するので、翻訳の標的化アプローチだけでは、CRAdに用いられるときに癌特異性を十分に与えることができない可能性がある。したがって、体内でのウイルスの有効性及び特異性を確実にするために転写及び翻訳両方の癌の標的化を組合せるCRAdを作製することが非常に重要である。本発明者等は、この新規の種類の二重レベルの癌標的化を試験しており、これは転写及び翻訳両方のレベルでのE1A遺伝子発現の調節を組合せている。このアプローチは、一方でCXCR4遺伝子プロモータの癌特異性、及び他方でFGF2 mRNA 5'−UTRの翻訳制御下にあるE1A mRNAの翻訳特性を利用する。
癌特異性は別として、TSPの体内転写活性は、CRAdを複製させるのに十分なレベルのE1遺伝子発現を与える程度に高い必要がある。癌導入プロファイルに利用可能なTSPの数が限られている場合、ほとんどの種類の癌に最適なCRAd剤を作製することは困難である。事実、今までのところほとんどのプロモータは癌特異性よりも組織特異性を有することを特徴としていた。癌特異的なプロモータによる転写の標的化であっても絶対的に特異的であるということは決してなく、正常な組織及び器官、特に肝臓における有意なレベルのバックグラウンド(非特異的)活性が生じる可能性がある。不運なことに、eIF4Eが腫瘍だけでなく、或る特定の種類の正常組織においても上方調節される可能性があるので、翻訳の標的化も絶対的に特異的ではない。FGF2 5'−UTR含有mRNAの翻訳緩和の効果はeIF4Eのレベルに依存するので、翻訳の標的化アプローチだけでは、CRAdに用いられるときに癌特異性を十分に与えることができない可能性がある。したがって、体内でのウイルスの有効性及び特異性を確実にするために転写及び翻訳両方の癌の標的化を組合せるCRAdを作製することが非常に重要である。本発明者等は、この新規の種類の二重レベルの癌標的化を試験しており、これは転写及び翻訳両方のレベルでのE1A遺伝子発現の調節を組合せている。このアプローチは、一方でCXCR4遺伝子プロモータの癌特異性、及び他方でFGF2 mRNA 5'−UTRの翻訳制御下にあるE1A mRNAの翻訳特性を利用する。
要約
本発明者等は、頭頸部の癌に特異的なCRAdの開発において、転写及び翻訳の両方のレベルでE1A遺伝子発現の調節を組合せる主となる二重レベルの癌標的化を検証している。
本発明者等は、頭頸部の癌に特異的なCRAdの開発において、転写及び翻訳の両方のレベルでE1A遺伝子発現の調節を組合せる主となる二重レベルの癌標的化を検証している。
モデルとして頭頸部癌におけるレポーター遺伝子発現の二重レベルの癌標的化を検証した後に、本発明者等は、頭頸部の癌に特異的なCRAdの開発においてこの標的化を使用することを提唱している。重要なことに、このCRAdが潜在的に、CXCR4プロモータ活性を支持し、eIF4Eを過剰発現する他の種類の癌にも好適であり得る。一実施形態では、本発明は、正常組織でCXCR4プロモータの任意の起こり得る漏出を克服するために、二重レベルの癌標的化を提供する。別の実施形態では、二重レベルの癌標的化は、これまでに開発したファイバー修飾のキメラ血清型技術によって達成されたAd3受容体に対するCRAdの感染性増強/形質導入の再標的化とさらに組合せる[56〜58]。
支持データ
本発明者等は、E1Aプロモータ、及びCXCR4遺伝子プロモータの転写制御下にあるルシフェラーゼレポーター遺伝子を包含するカセットに置き換えられたコード領域によって、複製欠損Ad5ベースベクターを構築した。図3に示されるように、オープンリーディングフレーム(ORF)の上流に挿入されたFGF2 mRNA 5'非翻訳領域(5'−UTR)配列あり又はなしで、ルシフェラーゼレポーター遺伝子コード配列を用いた。同様に、ORFの上流に挿入されたFGF2 mRNA 5'非翻訳領域(5'−UTR)配列あり又はなしで、Ad5 E1A遺伝子コード配列を用いた。Ad5骨格を生成するのに用いられたpVK400補助ベクターにおけるE1A領域の置換は、相同的組み換えによる大腸菌組み換え競合株BJ−5183で達成された。この目的を達成するために、細菌株は、Ad5ゲノムのE1領域で遺伝子組み換えした特有のCla I部位で直鎖上になった補助ベクター、並びにレポーター遺伝子配列の前にFGF2 5'−UTRがある又はない、レポーター遺伝子発現カセットを含有する直鎖状シャトルベクターを用いて、(エレクトロポレーションによって)同時に形質転換した。シャトルベクター中のカセットは、Ad5ゲノム中のE1領域のすぐ上流及び下流(相同配列の右腕及び左腕)に位置するAd5配列に隣接し、相同組み換えによるE1の代わりにシャトルベクターカセットを挿入するのに用いられる。pVK400に由来したこのような組み換えAdベクターのゲノムが野生型のファイバー遺伝子を含有するので、レポーター遺伝子又はE1A遺伝子を発現する複製欠損組み換えAdベクターを作製するのにさらなる相同組み換え工程は必要ではなかった。
本発明者等は、E1Aプロモータ、及びCXCR4遺伝子プロモータの転写制御下にあるルシフェラーゼレポーター遺伝子を包含するカセットに置き換えられたコード領域によって、複製欠損Ad5ベースベクターを構築した。図3に示されるように、オープンリーディングフレーム(ORF)の上流に挿入されたFGF2 mRNA 5'非翻訳領域(5'−UTR)配列あり又はなしで、ルシフェラーゼレポーター遺伝子コード配列を用いた。同様に、ORFの上流に挿入されたFGF2 mRNA 5'非翻訳領域(5'−UTR)配列あり又はなしで、Ad5 E1A遺伝子コード配列を用いた。Ad5骨格を生成するのに用いられたpVK400補助ベクターにおけるE1A領域の置換は、相同的組み換えによる大腸菌組み換え競合株BJ−5183で達成された。この目的を達成するために、細菌株は、Ad5ゲノムのE1領域で遺伝子組み換えした特有のCla I部位で直鎖上になった補助ベクター、並びにレポーター遺伝子配列の前にFGF2 5'−UTRがある又はない、レポーター遺伝子発現カセットを含有する直鎖状シャトルベクターを用いて、(エレクトロポレーションによって)同時に形質転換した。シャトルベクター中のカセットは、Ad5ゲノム中のE1領域のすぐ上流及び下流(相同配列の右腕及び左腕)に位置するAd5配列に隣接し、相同組み換えによるE1の代わりにシャトルベクターカセットを挿入するのに用いられる。pVK400に由来したこのような組み換えAdベクターのゲノムが野生型のファイバー遺伝子を含有するので、レポーター遺伝子又はE1A遺伝子を発現する複製欠損組み換えAdベクターを作製するのにさらなる相同組み換え工程は必要ではなかった。
図4で示されるデータにおいて、eIF4Eの内因性発現を患者のHNSCC腫瘍サンプルでCXCR4と比較した。図4は、T1、T2、並びにT3及びT2の3つの腫瘍サンプルと、外科的切除縁から得られた適合した隣接の組織学的に正常な粘膜、M1、M2、及びM3とを示す。3つの腫瘍サンプル(T)全てがeIF4Eを過剰発現し、示された3つの縁(M)の内の2つの縁がeIF4Eに関して陰性である一方で、1つ(M1)は低いが、検出可能なレベルでeIF4Eを発現した。CXCR4レベルは全ての腫瘍サンプル及び縁で高かった。CXCR4を両方の腫瘍及び適合した正常組織の両方で検出したが、ウェスタンブロット分析によって、隣接粘膜に比べて、腫瘍においてeIF4Eの発現の強い増大が示された。これらの結果は、正常細胞をウイルス療法剤による非特異的な死滅から守るためには、発現レベルの複数の調節が必要であることを強調している。
UTR−E1A mRNAからのE1Aタンパク質の分別合成は主にeIF4Eタンパク質翻訳レベルの結果であった否かを確認するために、本発明者等はウェスタンブロット分析を用いて、タンパク質レベルを求めた。初めに、細胞株をAd−CXCR4−E1A又はAd−CXCR4−UTR−E1Aに感染させ、48時間後に、E1Aタンパク質レベルをウェスタンブロット分析で求めた。陽性対照として、細胞をAd−wt−dE3に感染させ、陰性対照として、細胞をAd−CMV−GFPに感染させた。図5で示されるように、低レベルのeIF4E(MCF−10A)を発現する正常な乳房上皮細胞株で期待されるように、E1Aタンパク質発現レベルが、Ad−CXCR4−E1Aによる感染に比べて、Ad−CXCR4−UTR−E1Aによる感染後で有意に低かった。重要なことに、eIF4Eのレベルがより高い乳房上皮細胞株(MCF−10A−4E)では、E1Aタンパク質の発現レベルが、MCF−10A細胞の感染に比べて、Ad−CXCR4−UTR−E1Aによる感染後で有意に高かった。この結果は、Ad−CXCR4−E1AベクターにおけるE1A mRNAの発現がeIF4Eタンパク質レベルに非依存的であるという本発明者等の仮説を裏付けるのに有用である。これに対して、Ad−CXCR4−UTR−E1AベクターにおけるE1A mRNAの翻訳は、種々の癌で起こるようにeIF4Eのレベルの上昇に強く依存する。
UTR−E1A mRNAからのE1Aタンパク質の分別合成によって、eIF4Eタンパク質の翻訳レベルに対応するCRAdの異なる腫瘍崩壊効果が得られることを確認するために、本発明者等はクリスタルバイオレット染色法を用いて、細胞の腫瘍崩壊を求めた(図6)。初めに、細胞株をAd−CXCR4−E1A又はAd−CXCR4−UTR−E1Aに感染させ、48時間後にE1Aタンパク質レベルをウェスタンブロット分析によって求めた。陽性対照として、細胞をAd−wt−dE3に感染させ、陰性対照として、細胞をAd−CMV−GFPに感染させた。期待されるように、低レベルのeIF4E(MCF−10A)を発現する正常な乳房上皮細胞では、腫瘍崩壊活性が、Ad−CXCR4−E1Aによる感染に比べて、Ad−CXCR4−UTR−E1Aによる感染後に有意に低かった。重要なことに、eIF4Eのレベルがより高い乳房上皮細胞株(MCF−10A−4E)では、Ad−CXCR4−UTR−E1Aによる感染後の腫瘍崩壊活性がMCF−10A細胞よりも有意に高く、Ad−CXCR4−URT−E1Aによる感染後の腫瘍崩壊活性に比べると同程度であった。この結果は、Ad−CXCR4−E1Aベクターにおいて、E1A mRNAの発現がeIF4Eタンパク質レベルに非依存的であるという仮説を裏付けるのに有用である。
2つの異なる乳癌細胞株において、2つの異なるCRAd剤の細胞致死能力を野生型Ad5(Ad−wt−dE3)と比較した。試験した2つのCRAd剤それぞれで、アデノウイルスE1Aの発現を調節するのにCXCR4腫瘍特異的プロモータを用いた。しかし、1つの構築物が野生型のE1A転写産物(Ad−CXCR4−E1A)を発現した一方で、第2の構築物はE1Aオープンリーディングフレームの上流に挿入されたFGF2の5'−UTR(Ad−CXCR4−UTR−E1A)を発現した。この実験に関して、本発明者等は、用量を増大させ(0.01ifu/細胞〜100ifu/細胞)、それぞれのウイルスに細胞を感染させて、以下の日数にわたってウイルス複製の複数のサイクルを可能にし、ウェルに付着した残りの生存細胞を10日目にクリスタルバイオレットで染色した。図7で示されるように、2つの乳癌細胞株のそれぞれにおいて、E1Aオープンリーディングフレームの上流に挿入されたFGF2の5'−UTR(Ad−CXCR4−UTR−E1A)を発現したCRAdによって、野生型E1Aの転写産物(Ad−CXCR4−E1A)を発現したCRAdに比べて、同程度の細胞致死効果が示された。
データの要約
これらの結果によって、組織特異的プロモータ又は腫瘍特異的プロモータを用いる癌特異的な標的化アプローチを、タンパク質翻訳のレベルで別の癌特異的調節と共に組合せることが容易であることが明らかに示される。
これらの結果によって、組織特異的プロモータ又は腫瘍特異的プロモータを用いる癌特異的な標的化アプローチを、タンパク質翻訳のレベルで別の癌特異的調節と共に組合せることが容易であることが明らかに示される。
アデノウイルスゲノム
過去10年間、ウイルスの複製に必須なアデノウイルスE1A遺伝子及びアデノウイルスE1B遺伝子の発現への、癌特異的な誘導プロファイルを有する転写制御因子(プロモータ)の利用によって、癌細胞に対して転写的に標的化される次世代のCRAdが開発されている。したがって、所定の種類の癌に適切な腫瘍特異的プロモータ(TSP)を選択することは、CRAdの高い癌特異性を達成するのに必須である。残念なことに、癌特異的な活性化特性のある利用可能なプロモータの数は非常に限られている。さらに、多くの癌組織に対するこのようなプロモータ活性の最適化が主な問題を提起し、標的化された条件複製アデノウイルスの癌特異性に顕著に影響を与える可能性がある。5型アデノウイルス(Ad5)ベースの条件複製アデノウイルスが天然の肝向性(liver tropism)を有する場合、正常組織における癌特異的なプロモータの任意のバックグラウンド活性(及びその後の肝臓毒性)がCRAdの癌特異性を改善する新規のアプローチの開発を保証するのに特に必須な問題を提示する。
過去10年間、ウイルスの複製に必須なアデノウイルスE1A遺伝子及びアデノウイルスE1B遺伝子の発現への、癌特異的な誘導プロファイルを有する転写制御因子(プロモータ)の利用によって、癌細胞に対して転写的に標的化される次世代のCRAdが開発されている。したがって、所定の種類の癌に適切な腫瘍特異的プロモータ(TSP)を選択することは、CRAdの高い癌特異性を達成するのに必須である。残念なことに、癌特異的な活性化特性のある利用可能なプロモータの数は非常に限られている。さらに、多くの癌組織に対するこのようなプロモータ活性の最適化が主な問題を提起し、標的化された条件複製アデノウイルスの癌特異性に顕著に影響を与える可能性がある。5型アデノウイルス(Ad5)ベースの条件複製アデノウイルスが天然の肝向性(liver tropism)を有する場合、正常組織における癌特異的なプロモータの任意のバックグラウンド活性(及びその後の肝臓毒性)がCRAdの癌特異性を改善する新規のアプローチの開発を保証するのに特に必須な問題を提示する。
アデノウイルスゲノム
亜型の任意の亜型混合物、又はキメラアデノウイルスは、本発明と共にアデノウイルスベクターの生成にウイルスゲノム源として用いることができる。好ましくは、2型アデノウイルス(Ad2)又は5型アデノウイルス(Ad5)等のヒト血清型のアデノウイルスのゲノムを用いる。任意の好適なアデノウイルスゲノムを本発明と共に用いることができるが、Ad5アデノウイルスが最も好ましく、本発明はAd5血清型に関して本明細書でさらに記載されている。
亜型の任意の亜型混合物、又はキメラアデノウイルスは、本発明と共にアデノウイルスベクターの生成にウイルスゲノム源として用いることができる。好ましくは、2型アデノウイルス(Ad2)又は5型アデノウイルス(Ad5)等のヒト血清型のアデノウイルスのゲノムを用いる。任意の好適なアデノウイルスゲノムを本発明と共に用いることができるが、Ad5アデノウイルスが最も好ましく、本発明はAd5血清型に関して本明細書でさらに記載されている。
一実施形態において、本発明と共に用いられるアデノウイルスは、eIF4Eの過剰発現と共に細胞において条件付きで複製されることに加えて、複製欠損である。このことは、非標的細胞における望ましくない複製に対する二次レベルの防御を与える。本明細書で用いられるような遺伝子、遺伝子機能、又は遺伝子、又は遺伝子領域における欠損は、核酸配列が全体又は一部欠失した遺伝子の機能を損傷又は排除する、並びにウイスルゲノムに対して異質である核酸配列の挿入に対するウイルスゲノムにおける余地、又はその能力を与えるのに十分なウイルスゲノムの遺伝子材料の欠失と定義される。このような欠損は、非競合細胞宿主におけるアデノウイルスベクターの増殖に必須な又は必須ではない遺伝子又はゲノム領域内にあり得る。このような増殖(例えば、初期領域1(E1)、初期領域2A(E2A)、初期領域2B(E2B)、初期領域4(E4)、後期領域1(L1)、後期領域2(L2)、後期領域3(L3)、後期領域4(L4)、及び後期領域5(L5))に必須のアデノウイルスゲノム領域の欠損によって、アデノウイルスベクターはこのアデノウイルスゲノム複製欠損に基づくようになる。
本発明のアデノウイルスベクターは複数の複製欠損がある可能性があり、すなわち非相補的な細胞宿主におけるウイルス増殖(すなわち体外のウイルス複製)に必要な少なくとも2つのゲノム領域内に欠損がある。このような領域には、E1、E2、E4、又はL1〜L5領域が含まれる。E1領域が初期領域1A(E1A)及び初期領域1B(E1B)から成ると考えることができる場合であっても、E1A領域及び/又はE1B領域のいずれか又は両方における欠損は、本発明に関しては単独欠損であると考えられる。さらに、このようなベクターはウイルス増殖に必要ではない1つ又は複数の領域に欠損があり得る、例えばベクターはさらに初期領域(E3)に欠損があり得る。
本発明は、ゲノムの初期領域のみにおいて遺伝子機能が欠損しているアデノウイルスベクターに限定されない。また、ウイルスITR及びプロモータの幾つか、又はウイルスITR及びパッケージングシグナルの少なくともいずれかが損なわれていないことが好ましい場合には、ゲノムの初期領域及び後期領域で欠損があるアデノウイルスベクター、並びに本質的に全ゲノムが取り除かれているベクターも含まれる。
別の実施形態において、ベクターはトキシンをコードする核酸配列を包含する(すなわち、含む)少なくとも1つの発現カセットを含む。トキシンをコードする核酸配列は、米国特許第6,759,394号に詳しく記載されている。
好ましくは、トキシンをコードする核酸配列は、ポリアデニル化配列等の転写末端化領域をさらに含む。合成最適化配列、並びにBGH(ウシ成長ホルモン)、ポリオーマウイルス、TK(チミジンキナーゼ)、EBV(エプスタインバーウイルス)、ヒトのパピローマウイルス及びBPV(ウシのパピローマウイルス)を含むパピローマウイルスのポリアデニル化配列等の任意の好適なポリアデニル化配列を用いることができる。好ましいポリアデニル化配列はSV40(ヒトのサルコーマウイルス−40)ポリアデニル化配列である。
好ましくは、トキシンをコードする核酸配列は、例えばプロモータ可変発現カセットの一部として、1つ又は複数のプロモータ因子及び/又はエンハンサー因子と(すなわち、その転写制御下で)動作可能に連結する。互いに動作可能に連結する配列に関する技法は当該技術分野で十分に既知である。任意の好適なプロモータ配列又はエンハンサー配列は、本発明と併せて用いることができる。好適なプロモータ配列及びエンハンサー配列が当該技術分野で一般的に既知である。
ベクター構築物
本発明は、(a)アデノウイルスゲノムを準備すること、(b)転写配列と動作可能に連結するプロモータを含む核酸配列DNA配列を挿入することを含む条件複製アデノウイルスベクターを産生する組成物及び方法を提供し、転写される場合、転写配列はウイルス粒子をコードする翻訳可能な配列と、非翻訳配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、非翻訳配列は真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下でトキシン配列が翻訳される。
本発明は、(a)アデノウイルスゲノムを準備すること、(b)転写配列と動作可能に連結するプロモータを含む核酸配列DNA配列を挿入することを含む条件複製アデノウイルスベクターを産生する組成物及び方法を提供し、転写される場合、転写配列はウイルス粒子をコードする翻訳可能な配列と、非翻訳配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、非翻訳配列は真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下でトキシン配列が翻訳される。
一実施形態において、非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次立体配座構造をさらに含む。
別の実施形態において、本発明は、本発明のウイルスベクターの複製可能なアデノウイルス無含有ストックを提供する。別の実施形態では本発明は、本発明のウイルスベクターを含む薬学的組成物と、薬学的に許容可能な担体を提供し、薬学的組成物は複製可能なアデノウイルスを含有しない。別の実施形態では本発明は、本発明のウイルスベクターを含む宿主細胞を提供する。別の実施形態では本発明は、本発明の条件複製ウイルスベクターを抗腫瘍又は抗癌に有効量、哺乳動物の腫瘍又は癌に直接投与することを含む、哺乳動物において腫瘍又は癌を治療する方法を提供する。さらなる実施形態では、抗腫瘍に有効量のウイルスベクターが哺乳動物における腫瘍に投与される。
別の実施形態において本発明は、本発明の組成物を治療的有効量、このような治療を必要とする被験体に投与することを含む、細胞増殖疾患を治療する方法を提供する。
別の実施形態において、細胞増殖を阻害するのに有効量を投与する。別の実施形態では、DNA配列をコードする発現ベクターを細胞に投与することによって、DNA配列が投与される。別の実施形態では、発現ベクターはリポソーム構築物内に送達される。別の実施形態では、発現ベクター(the the expression vector)は宿主細胞内に送達される。別の実施形態では、発現ベクターはウイルスベクターである。
別の実施形態において、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、少なくとも2倍真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下で、ウイルス配列が翻訳される。
別の実施形態において、ベクターはトキシンをコードする配列をさらに含む。別の実施形態では、コードされたトキシンは条件トキシンである。別の実施形態では、コードされた条件トキシンはヘルペスチミジンキナーゼである。
別の実施形態において、本発明は、ウイルスをコードする翻訳可能な配列と、非翻訳配列とを含むメッセンジャーRNA配列を細胞に投与することを含む、細胞内でウイルス粒子を選択的に発現する方法を提供し、非翻訳配列は真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列が翻訳される。別の実施形態では、非翻訳配列が折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下の二次立体配座構造を有するmRNA配列を含む。別の実施形態では、細胞増殖を阻害するのに有効量を投与する。別の実施形態では、メッセンジャーRNA配列をコードする発現ベクターを投与することによって、メッセンジャーRNA配列が投与される。別の実施形態では、ウイルスベクターは宿主細胞内に送達される。
別の実施形態において、本発明は哺乳動物において癌を治療する方法を提供し、転写配列と動作可能に連結するプロモータを含むDNA配列を治療的有効量、このような治療が必要である哺乳動物に投与することを含み、転写される場合、転写配列がウイルスをコードする翻訳可能な配列と、非翻訳配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、非翻訳配列は真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する腫瘍細胞内にある条件下でウイルス配列が翻訳される。
別の実施形態において、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、少なくとも2倍真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する腫瘍細胞内にある条件下で、ウイルス配列が翻訳される。別の実施形態では、非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eの存在によってウイルスが翻訳される腫瘍細胞内のウイルス配列を翻訳させ、このウイルスは腫瘍細胞を死滅させるように翻訳される。別の実施形態では、非腫瘍細胞に典型的に存在する真核生物開始因子eIF4Eが低レベルであるために、哺乳動物における非腫瘍細胞の大多数は死滅しない。別の実施形態では、癌は転移性腫瘍である。別の実施形態では、癌は充実性腫瘍である。別の実施形態では、転移性腫瘍は、膀胱、乳房、子宮頚部、結腸、肺、甲状腺、及び頭頸部から成る群より選択される哺乳動物の癌に関連している。
本発明は、(a)アデノウイルスゲノムを準備すること、及び(b)ウイルス転写配列と動作可能に連結するプロモータを含む核酸配列DNA配列をアデノウイルスゲノム内に挿入することを含む条件複製アデノウイルスベクターを産生する組成物及び方法も提供し、転写される場合、転写配列はウイルス粒子をコードする翻訳可能な配列と、非翻訳配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、非翻訳配列は真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列の翻訳を阻害し、非翻訳配列によって、正常細胞に比べて、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下でウイルス配列が翻訳される。
当業者によって理解されるように、本発明で提供される方法は、ウイルスベクターを与えるのに用いられるウイルスゲノムへの他の核酸の配列の挿入、又はそのウイルスゲノムからのこのような配列の欠失等の他の工程又は因子を含み得る。さらに、本発明の方法の様々な態様(例えば、ウイルスゲノム、5'−UTR配列をコードする核酸配列等)が、本発明のウイルスベクターに関してこれまでに本明細書で記載されている。
ウイルスベクターを産生する本発明の方法は、当業者に既知の技法を用いて行うことができる。概して、ウイルスベクター構築物は、細胞におけるアデノウイルス核酸配列間の高レベルの組み換えに依存している。配列間に類似な(又は重複した)領域を含有し、ゲノムの全長を構築する2つ又は3つの個々のウイルス核酸配列(例えばDNA断片)が細胞にトランスフェクトされる。宿主細胞の組み換え機構は、上記の配列を組み替えることによって、全長のウイルスベクターゲノムを構築する。様々な単独領域において修飾を含有するウイルスを構築するのに好適な他の手順がこれまでに記載されており(Berkner et al., Nucleic Acids Res., 12, 925-941 (1984)、 Berkner et al., Nucleic Acids Res., 11, 6003-6020 (1983)、Brough et al., Virol., 190, 624-634 (1992))、多重欠損ウイルスを構築するのに用いることができ、さらに他の好適な手順には、例えば体外組み換え及びライゲーションが含まれる。
本発明のアデノウイルスベクターを構築する好ましい方法は初めに、アデノウイルスゲノムの特定領域の必要な欠失又は修飾を構築すること(例えばスペーサー因子を欠失領域に加えること等)を伴う。このような修飾は、標準的な分子生物学的技法を用いて、例えばプラスミドカセットで行うことができる。それから、修飾核酸配列(欠失又は修飾を含有する)を、ウイルスゲノムの半分を含有する非常に大きいプラスミドに移し、修飾アデノウイルスゲノムを含むベースプラスミドを提供する。次の工程は、発現カセットを、修飾アデノウイルスゲノムの所望の領域に挿入することである。例えば、カセットをプラスミドから分離することによる当該技術分野で既知の標準的な方法によって、発現カセットが提供され得る。それから分離カセットは、(修飾アデノウイルスゲノムを含有する)プラスミドDNAでレシピエント細胞にトランスフェクトすることができる。任意に、好適な制限酵素での消化によるトランスフェクト前にプラスミドを直鎖状にし、アデノウイルスゲノムにおける所望の位置での発現カセットの挿入を容易にする。好適な制限酵素の選択は、十分に当業者の技術内である。2対のDNAを組み換えて、修飾アデノウイルスゲノムと発現カセットとを含むプラスミドを形成する。プラスミドは宿主細胞から単離され、組み換えウイルスゲノムのウイルス機能の喪失に相補的なレシピエント細胞に導入されて、修飾ウイルスゲノムと発現カセットとを含むアデノウイルスベクターを産生する。ベクターは、ITRの修飾及び/又はシグナルのパッケージングによってさらに修飾され得る。
使用方法
本発明の一変形形態において、アポトーシスを誘導することができるウイルスに関するオープンリーディングフレームは、組み換えウイルスが導入される細胞においてそのウイルスが連続的に発現するように、調節DNA配列と機能的に連結している。この場合、ウイルスの発現は、構成的プロモータ又は安定なプロモータで誘導される。本発明は安定なプロモータの選択を指示しない。プロモータの種類は、組み換えウイルスに関して有用な発現プロファイルを達成するように選択される。本発明のこの変形形態に有用なプロモータの非制限的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)即時型プロモータ、シミアンウイルス40(SV40)即時型プロモータ、及び真核生物のハウスホールド遺伝子由来のプロモータを含む。
本発明の一変形形態において、アポトーシスを誘導することができるウイルスに関するオープンリーディングフレームは、組み換えウイルスが導入される細胞においてそのウイルスが連続的に発現するように、調節DNA配列と機能的に連結している。この場合、ウイルスの発現は、構成的プロモータ又は安定なプロモータで誘導される。本発明は安定なプロモータの選択を指示しない。プロモータの種類は、組み換えウイルスに関して有用な発現プロファイルを達成するように選択される。本発明のこの変形形態に有用なプロモータの非制限的な例としては、サイトメガロウイルス(CMV)即時型プロモータ、シミアンウイルス40(SV40)即時型プロモータ、及び真核生物のハウスホールド遺伝子由来のプロモータを含む。
本発明の別の変形形態において、このウイルスが外部シグナル(ここで「外部」という用語は、オープンリーディングフレームと調節DNA配列とを包含するDNA断片の外側にその源があるという意味である)によって調節することができる或る特定の条件下で組み換えアデノウイルスを導入する細胞で発現しかしないか、又は発現されるように、オープンリーディングフレームは、1つ又は複数の制御配列、すなわち調節DNA配列と機能的に連結する。本発明のこの態様では、ウイルスの発現は、いわゆる調節プロモータ又は誘導プロモータによって誘導される。外部シグナルの例としては、化合物の付加又は誘導体化、温度の変化、酸素濃度の低下、放射線等が挙げられるが、これらに限定されない。この種のプロモータの非限定的な例としては、熱ショックタンパク質70プロモータ、急性期タンパク質遺伝子のプロモータ、例えば血清アミロイドA3遺伝子又は補体因子3遺伝子、初期成長応答タンパク質1プロモータ、多剤耐性遺伝子1プロモータ、及び1つ又は複数の低酸素応答因子を含むプロモータ、並びにこれらの断片が挙げられる(Kohno et al., Biochem. Biophys. Res. Comm. 165(1989):1415-1421、Varley et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92(1995):5346-5350、Hallahan et al., Nature Med. 1(1995):786-791、Dachs et al., Nature Med. 3(1997):515-520、Blackburn et al., Cancer Res. 58(1998):1358-1362、Binley et al., Gene Ther. 6(1999): 1721-1727、Marples et al., Gene Ther. 7(2000):511-517)。外部シグナルが特定の種類の細胞又は組織のみに存在するタンパク質で提供される場合、特殊な調節プロモータは組織特異的なプロモータ又は細胞型特異的なプロモータである。組織特異的なプロモータ又は細胞型特異的なプロモータの非制限的な例は前立腺特異的な抗原プロモータ、α−フェトプロテインプロモータ、アルブミンプロモータ、癌胎児性抗原プロモータ、サイトケラチン18遺伝子プロモータ、カリクレイン2プロモータ、チロシナーゼプロモータ、オステオカルシンプロモータ、PAX−5プロモータ及びα−ラクトアルブミンプロモータである(Kaneko et al., Cancer Res. 55(1995):5283-5287、Richards et al., Hum. Gene Ther. 6(1995):881- 893、Kozmik et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92(1995):5709-5713、Siders et al., Cancer Res. 56(1996):5638-5646、Chow et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94(1997): 14695-14700、Shirakawa et al., Cancer Gene Ther. 5(1998):274-280、Gotoh et al., J. Urol. 160(1998):220-229、Anderson et al., Gene Ther. 6(1999):854-864; Yu et al., Cancer Res. 59(1999):4200-4203)。別の特殊な調節プロモータは、特定の種類の細胞又は組織に存在しないタンパク質で提供される外部シグナルに応答するプロモータである。特に、肝組織には存在しない外部シグナルは、組み換えアデノウイルスの体内投与に関する対象となる。肝組織に存在しない外部シグナルに応答するプロモータの非制限的な例は、シクロオキシゲナーゼ−2プロモータ及びミッドカインプロモータである(Adachi et al, Cancer Res. 60(2000):4305-4310、Yamamoto et al., Mol. Ther. 3(2001):385-394)。別の特殊な調節プロモータは、細胞周期の或る特定の段階でのみ存在するタンパク質で与えられる外部シグナルに応答するプロモータである。この種のプロモータの非限定的な例としては、例えばアデノウイルスE2遺伝子又はE2F−1遺伝子等のE2Fに応答する遺伝子のプロモータである。互いに除かれずに別の特殊な調節プロモータは、いわゆる転写活性化応答因子(TRE)である。TREは、第2成分として、TREと特異的に結合することができる転写活性化タンパク質を含む転写活性化系の第1成分であり、したがってTREと連結する遺伝子の転写を調節する。
本発明のさらに別の変形形態において、組み換えウイルスがウイルス複製の後期の間に導入される細胞でのみウイルスが発現するように、オープンリーディングフレームは調節DNA配列と機能的に連結する。後期のウイルス複製に限定されるウイルスの発現はCRAdに関して特に対象となる。複製させるためにCRAdによって利用される或る特定の条件下にある細胞でのみ複製が行われるので、ウイルスの発現は或る特定の条件下にある細胞にも限定される。したがって、本発明のこの変形形態がCRAdの特異性に付与される。本発明のこの態様では、ウイルスの発現がアデノウイルスの主要な後期プロモータ(MLP)で誘導されることが好ましい。MLPがオープンリーディングフレームの発現を誘導する本発明による組み換えアデノウイルスでは、オープンリーティングフレームに関する発現カセットが、Mondesart et al.(Nucleic Acids Res. 19(1991):3221-3228)(本明細書中に参照により含まれる)で定義されるように、後期のアデノウイルス複製の間にMLPの完全な転写活性を与える必要があるシス作用配列を含むことが好ましい。本発明のこの態様に有用な発現カセットは、米国特許第5,518,913号(本明細書中で参照により含まれる)に開示されていた。代替的には、オープンリーディングフレームは内因性MLPと機能的に連結している。
本発明は、宿主において腫瘍又は癌を治療する方法を提供し、本発明のウイルスベクターを抗癌又は抗腫瘍に有効量、それを必要とする宿主に投与することを含む。
当業者は、治療又は予防目的で、本発明の条件複製ウイルスベクターを動物に投与する好適な方法(例えば、Rosenfeld et al., Science, 252, 431-434 (1991), Jaffe et al., Clin. Res., 39(2), 302A (1991), Rosenfeld et al., Clin. Res., 39(2), 31 IA (1991), Berkner, BioTechniques, 6, 616-629 (1988)を参照のこと)が利用可能であり、2つ以上の経路を用いてベクターを投与することができるが、特定の経路が別の経路よりも迅速で効果的な応答を与えることができることを認識している。
本発明は、本発明のウイルスベクターと、担体、特に薬学的に許容可能な(例えば生理学的又は薬学的に許容可能な)担体(例えば、賦形剤又は希釈剤)とを含む薬学的組成物を提供する。薬学的に許容可能な担体は当業者に既知であり、容易に利用可能である。薬学的組成物を投与するのに用いられる特定の方法によって一部、担体が選択される。したがって、多種多様の本発明の薬学的組成物の好適な製剤が存在する。以下の製剤及び方法は例示にすぎず、決して限定するものではない。しかし、経口製剤、注射製剤及びエアロゾル製剤が好ましい。
経口投与に好適な製剤は、(a)液体溶液、例えば水、生理食塩水又はオレンジジュース等の希釈財に溶解した有効量の化合物、(b)固体又は顆粒として所定量の活性成分をそれぞれ含有するカプセル、小袋又は錠剤、(c)適切な液体中の懸濁液、及び(d)好適なエマルジョンから成り得る。錠剤形態としては、1つ又は複数のラクトース、マンニトール、コーンスターチ、ジャガイモデンプン、微結晶セルロース、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロースナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、及び他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝剤、湿潤剤、保存剤、着香剤、及び薬理学的に適合な賦形剤が挙げられ得る。トローチ形態には、フレーバー中の活性成分、通常スクロース及びアカシア又はトラガカント、並びに不活性基剤(inert base)中に活性成分を含む香錠、例えばゼラチン及びグリセリン、又は活性成分に加えて当該技術分野で知られているような賦形剤を含有するスクロース及びアカシア、エマルジョン、ゲル等が含まれ得る。
単独で、又は他の好適な構成要素と組合せて、本発明のベクターは、吸入によって投与されるエアロゾル製剤になり得る。これらのエアロゾル製剤は、加圧可能な推進剤、例えばジクロロジフルオロメタン、プロパン、窒素等に置き換えることができる。これらは、非圧調製物の調合薬として、例えばネブライザー又はアトマイザー中に配合することもできる。
非経口投与に好適な製剤としては、水性及び非水性の等張無菌注射溶液が挙げられ、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤、及び製剤を対象のレシピエントの血液と等張にさせる溶質、並びに懸濁剤、可溶化剤、増粘剤、安定剤及び保存剤を含み得る水性及び非水性の滅菌懸濁液を含有し得る。この製剤は、単位用量又は単位用量の密封容器、例えばアンプル及びバイアルで与えることができ、使用の直前に注射のために滅菌液体賦形剤、例えば水を添加することのみが必要であるフリーズドライ(凍結乾燥)条件下で保存することができる。即席の注射溶液及び懸濁液は、これまでに記載された種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
さらに、本発明に利用されるベクターは、乳化基剤又は水溶性基剤等の様々な基剤と混合することによって坐薬になり得る。膣内投与に好適な製剤は、活性成分に加えて当該技術分野で適切であるとして知られているような担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、発泡体、又はスプレー製剤(formulas)として与えられ得る。
本発明に関して動物、特にヒトに投与する用量は、特定のウイルスベクター、ウイルスベクターを含有する組成物、投与方法、及び治療する特定部位及び生物によって変わる。用量は、所望の時間枠内で、所望の応答、例えば治療応答又は予防応答を得るのに十分である必要がある。
用量計画及び用法計画は、癌(原発性又は転移性)及びその集団の性質、特定の免疫毒素の特徴、例えば、その治療指数、患者、患者の病歴及び他の因子によって変わる。投与されるウイルスの量は典型的に1人の患者当たり約1010〜約1011個のウイルス粒子の範囲内であり得る。スケジュールは、治療の負の効果に対して平衡を保ちながら有効性を最適化し続ける。Remington's Pharmaceutical Science, 17th Ed. (1990) Mark Publishing Co., Easton, Penn.、及びGoodman and Gilman's: The Pharmacological Basis of Therapeutics 8th Ed (1990) Pergamon Press(これらは参照により本明細書中に援用される)を参照されたい。
宿主において腫瘍又は癌を治療する本発明の方法は、その有効性を修正(例えば増大)するための他の治療剤及び/又は薬剤の投与(すなわち、事前投与、同時投与及び/又は後投与)をさらに含み得る。
本発明の複製欠損ウイルスベクターは、体外での有用性も有している。例えば、これらはウイルス遺伝子の機能及びアセンブリ、TNFの産生、又は好適な標的細胞における他の外来核酸配列の発現を研究するのに用いることができる。当業者は、ウイルスベクターでトランスフェクトすることができるものを選択することによって、好適な標的細胞を同定することができ、これにより挿入されたウイルス核酸配列の相補体が発現される。好ましくは、細胞へのウイルスの付着及び侵入に関する受容体を有する好適な標的細胞が選択される。このような細胞としては本来任意の乳房から単離したものが挙げられるが、これに限定されない。好適な標的細胞が選択されると、標的細胞は本発明のウイルスベクターと接触し、これによりトランスフェクト又は感染にそれぞれ影響を与える。それから、発現、毒性、並びに標的細胞における核酸配列又は他の外来核酸配列の活性及び挿入に関連する他のパラメータが、当該技術分野で既知の従来の方法を用いて測定される。
さらに、本発明に関する遺伝子療法によって好適に治療される疾患を有する患者から外植又は除去される細胞は通常、体外で遺伝子操作される。例えばこのような個体から体外で培養される細胞は、トランスフェクトをもたらすのに好適な条件下での本発明のウイルスベクターと接触するように配置し、この条件は当業者によって容易に確定される。このような接触によって培養細胞にベクターが好適にトランスフェクトされ、トランスフェクト細胞は好適なマーカー及び選択的な培養条件を用いて選択される。その際、細胞の生命力に関して試験し、それにより毒性を測定する、及び本発明のベクターの外来核酸配列の遺伝子産物の存在に関して試験して、それにより発現を測定する標準的な方法を用いて、個体の細胞は、本発明のベクターとの相補性、本発明のベクターにおける発現、及び本発明のベクターの毒性に関して試験し、それによりこのように試験されたベクター系による個体の治療の妥当性及び有効性に関しての情報が与えられる。所定の遺伝子治療レジームの潜在的な有効性/毒性を試験するのに有用であることに加えて、このような外植細胞及びトランスフェクト細胞は、個体の体内の位置まで戻すこともできる。このようにして個体に戻されたこのような細胞は、それらの細胞が体外でトランスフェクトされることを除いて変性及び修飾せずに戻すことができるか、又は個体の身体の他の組織及び細胞からそれらの細胞を分離させるマトリクスで包み込むか、若しくはマトリクス中に埋め込むことができる。このようなマトリクスは、コラーゲン、セルロース等を含む任意の好適な生体適合物質であり得る。当然、代替的に又は付加的に、好ましくは体外試験に対する正の応答後に、上記で詳述されるような投与手段で、体内においてトランスフェクトを行うことができる。
本発明のさらなる態様
当業者が理解するように、本発明によって提供されるウイルスベクター及びそれに伴う方法は、本明細書に記載される因子の任意の組合せ又は置換を含み得る。
当業者が理解するように、本発明によって提供されるウイルスベクター及びそれに伴う方法は、本明細書に記載される因子の任意の組合せ又は置換を含み得る。
しかし、本発明の例示的な核酸配列の多くの変更形態及び変形形態が可能である。例えば、遺伝コードの縮重によって、コードされるポリペプチドコード配列を変えることなく、コード領域全体にわたって、並びに翻訳停止シグナルにおいて、ヌクレオチドを置換させる。このような置換配列は、所定の遺伝子の既知のアミノ酸配列又は核酸配列から推測することができ、従来の合成手順又は部位特異的な突然変異手順で構成され得る。合成DNA法は、Itakura et al., Science, 198, 1056-1063 (1977)、及びCrea et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75, 5765-5769 (1978)の手順に実質的に従って行うことができる。部位特異的な突然変異手順は、Maniatis et al.著「分子クローニング:研究所マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」 Cold Spring Harbor, N. Y. (2d ed. 1989)に記載されている。したがって本発明は決して、本明細書中に特に例示される核酸に限定されない。例示されたベクターは、腫瘍及び/又は癌の治療のためのものであり、したがってウイルスゲノムを含有し、且つ発現する。しかし、記載されるベクターは、他の慢性肺疾患、例えば肺気腫、喘息、成人呼吸窮迫症候群、及び慢性気管支炎、並びに冠状動脈性心疾患、及び遺伝子治療、ワクチン接種等で好適に治療又は予防される他の病気(これらに限定されない)を含む他の類似の又は異なる疾患及び/又は病気を治療するのに用いる遺伝子も含み得る。したがって、任意の遺伝子配列又は核酸配列はウイルスベクターに挿入することができる。
ウイルスベクターは、本発明の範囲及び精神を逸脱することなく、他の方法で修飾することができる。例えば、本発明のウイルスベクターの外殻タンパク質は、潜在的な宿主細胞上のウイルス受容体の結合特異性又は認識を変えるように遺伝子操作することができる。このような遺伝子操作には、ファイバー、ペントン又はヘキソン領域の欠失、外殻タンパク質部分への様々な天然又は非天然のリガンドの挿入等が含まれ得る。外殻タンパク質の遺伝子操作によって、ウイルスベクターに感染する細胞の範囲を広げ、特異的な細胞型にウイルスベクターを標的化させることができる。
例えば、ベクターはキメラ外殻タンパク質(例えば、ファイバー、ヘキソン又はペントンタンパク質)を含んでもよく、好ましくはカルボキシル末端で又はその近くで非天然アミノ酸配列を導入させることが、野生型(いわゆる、天然)外殻タンパク質とは異なる。好ましくは、非天然アミノ酸配列が、内在的な外殻タンパク質配列内に、又はその配列に代わって挿入される。得られるキメラウイルスの外殻タンパク質は、外殻タンパク質を含むウイルスベクターの細胞への侵入を導くことができ、当該侵入は、キメラウイルスの外殻タンパク質よりもむしろ野生型ウイルスの外殻タンパク質を含むことを除いて同一であるウイルスベクターの細胞への侵入よりも効果的である。
キメラウイルスの外殻タンパク質は、細胞表面に存在する新規の外因性結合部位と望ましく結合する。この侵入の効率の増大の結果は、ウイルス(viral virus)は、野生型の外殻タンパク質を含むウイルスが典型的に侵入できないか、又は非常に低い効率でしか侵入することができない多くの細胞型と結合し、侵入し得るということである。
代替的に、本発明のウイルスベクターは、特定の種類の真核細胞に選択的ではないキメラウイルスの外殻タンパク質を含み得る。このようなキメラ外殻タンパク質は、内在的な外殻タンパク質配列内に、又はその配列に代わって非天然アミノ酸配列を挿入されることが野生型の外殻タンパク質とは異なる。非選択的なキメラ外殻タンパク質を含むベクターにおいて、このウイルスの外殻が、国際特許出願第WO97/20051号に記載されるように、野生型のウイルスの外殻よりも広い範囲の真核細胞と効率的に結合する。
所定の細胞とのウイルスの結合の特異性は、米国特許第5,962,311号で考慮されるように、短いシャフト(short-shafted)のウイルスファイバー遺伝子を含むウイルスの使用によって調節することができる。短いシャフトのウイルスファイバー遺伝子を含むウイルスの使用によって、その細胞表面の受容体とのウイルスファイバーの結合のレベル又は効率が低減し、その細胞表面の受容体とのウイルスのペントンベースの結合が増大して、それにより所定の細胞とのウイルスの結合の特異性が増大する。代替的には、短いシャフトのファイバーを含むウイルスの使用によって、ペントンベース又はファイバーノブへの非天然アミノ酸配列の導入により、所望の細胞表面の受容体に対してウイルスを標的化させる。
さらに、潜在的な宿主細胞を認識するウイルスベクターの能力を、外殻タンパク質を遺伝子操作することなく調節することができる。例えば、ペントンベース結合ドメインと、特定の細胞表面結合部位と選択的に結合するドメインとを含む二重特異的分子でウイルスを複合体化することによって、当業者は特定の細胞型に対してベクターを標的化することができる。
ウイルスベクターに対する多くの変更形態、特にウイルスベクターは当該技術分野で既知である。ウイルスベクターの好適な変更形態としては、米国特許第5,559,099号、同第5,731,190号、同第5,712,136号、同第5,770,442号、同第5,846,782号、同第5,926,311及び同第5,965,541号、並びに国際特許出願第WO96/07734号、同第WO96/26281号、同第WO97/20051号、同第WO98/07865号、同第WO98/07877号、及び同第WO98/54346号に記載されたこれらの変更形態が挙げられる。
このウイルスは、突然変異した外殻タンパク質をビリオンの外側のカプシドに組み込むことによって修飾することができる。一実施形態ではこのウイルスは、ウイルスに対する免疫反応を低減又は排除するウイルスである。このような修飾ウイルスは「免疫保護ウイルス」と呼ばれる。このような変更形態には、ウイルスを哺乳動物の免疫系から隠すためのリポソーム、ミセル又は他のビヒクルにおけるウイルスのパッケージングが含まれ得る。
本発明の方法による治療に特に感受性がある新生物としては、乳癌、中枢神経系癌(例えば、神経芽細胞腫及び膠芽細胞腫)、末梢神経系癌、肺癌、前立腺癌、結腸直腸癌、甲状腺癌、腎臓癌、副腎癌、肝臓癌、リンパ腫及び白血病が挙げられる。
増殖細胞又は新生物の細胞又は新生細胞と接触するように、ウイルスを増殖細胞又は新生物に投与する。ウイルスが投与される経路、及び製剤、担体又はビヒクルは、新生物の位置及び種類によって変わる。多種多様の投与経路を利用することができる。例えば、接近しやすい充実性新生物に関して、ウイルスを新生物に直接注射することによって投与することができる。また(or)、例えば造血性新生物に関して、ウイルスを静脈内又は経脈管で投与することができる。転移腫瘍又は脳腫瘍等の体内に容易に接近することができない新生物に関して、哺乳動物の身体全身に輸送させ、それにより新生物に到達させることができるように(例えば、髄腔内、静脈内又は筋肉内)ウイルスが投与される。
代替的に、ウイルスを単独の充実性新生物に直接投与することができ、これによりウイルスが転移した新生物に身体全身にわたって運ばれる。ウイルスは、皮下、腹腔内、局所(例えば黒色腫に対して)、経口(例えば口腔新生物又は食道新生物に対して)、直腸内(例えば結腸直腸新生物に対して)、膣内(例えば子宮新生物又は膣内新生物に対して)、経鼻又は吸入スプレー(例えば肺新生物に対して)で投与することもできる。
ウイルスを、免疫力が低下しているか、又はウイルスエピトープに対する免疫が発達していない哺乳動物の全身に投与することができる。このような場合、全身に、すなわち静脈内(intraveneous)注射によって投与されたウイルスが増殖細胞と接触し、細胞を溶解させる。
特定のウイルス、例えば修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスにこれまでに曝された免疫が正常な(Immunocompetent)哺乳動物は、そのウイルスに対する体液性免疫及び/又は細胞性免疫を生じている可能性がある。それにもかかわらず、免疫が正常な哺乳動物における充実性腫瘍へのウイルスの直接注射によって新生細胞が溶解されると考えられる。
ウイルスが免疫が正常な哺乳動物の全身に投与される場合、哺乳動物はウイルスに対する免疫応答を生じ得る。このウイルスが、哺乳動物が免疫を生じない亜型であるか、又は例えば外側のカプシドのプロテアーゼ消化若しくはミセル内のパッケージングによって免疫保護される形で、本明細書でこれまでに記載されるように修飾されていれば、このような免疫応答は避けられ得る。
ウイルスは、抗アンチウイルス抗体の投与と併せて、ウイルスに対して免疫付与した免疫が正常な哺乳動物に投与することができると考えられる。このような抗アンチウイルス抗体は、ウイルスの投与前、投与と同時、又は投与の直後に投与することができる。好ましくは、哺乳動物が投与ウイルスに対する免疫応答を低減又は排除するのに十分な時間、有効量の抗アンチウイルス抗体を投与する。
代替的には、ウイルスに対する哺乳動物の免疫正常化は、概して免疫系を抑制することが当該技術分野で既知である調合薬の事前投与若しくは同時投与、又は代替的には抗アンチウイルス抗体のような免疫インヒビターの投与によって抑制され得ると考えられる。
ウイルスに対する哺乳動物の体液性免疫を、哺乳動物血液のプラズマフォレーシス(plasmapheresis)によって一時的に低減又は抑制させ、抗ウイルス抗体を取り除いてもよい。このプロセスで取り除かれる抗ウイルス抗体は、患者に投与するために選択されるウイルスに対応する。
その上、他の薬剤が免疫抑制特性を有することが既知である(例えば、Goodman and Gilman, 7th Edition, page 1242(この開示は参照により本明細書中に援用される)を参照されたい)。このような免疫インヒビターには抗アンチウイルス抗体も含まれ、これは抗ウイルス抗体に対する抗体である。
このような抗アンチウイルス抗体は、ウイルスの投与前、投与と同時、又は投与の直後に投与することができる。好ましくは、哺乳動物が投与ウイルスに対する免疫応答を低減又は排除するのに十分な時間、有効量の抗アンチウイルス抗体を投与する。
本発明のさらに別の方法において、修飾アデノウイルス、修飾HSV、修飾ワクシニアウイルス及び修飾パラポックスウイルスorfウイルスから成る群より選択されるウイルスを別個の哺乳動物における増殖細胞に投与する。本発明の一実施形態では、この療法の治療単位(course)は単回投与又は複数回投与である。1回目のウイルス療法の適用の後に、続くウイルスの投与に干渉する可能性がある特定の免疫成分を患者から取り除く。これらの免疫成分としては、B細胞、T細胞、抗体等が挙げられる。
幾つかの方法によって、B細胞集団又はT細胞集団のいずれかの除去を達成することができる。1つの方法では、血液を濾過し、ヘム透析が行われ得る。別の方法は、例えば、除去される細胞集団上の特異的な受容体を認識する固定化抗体で、細胞集団を取り除くことができる体外の化合物と結び付く血液の濾過である。細胞集団を除去するさらに別の方法は免疫抑制によるものである。これは、一次(first line)放射線療法又はシクロスポリン等の環状ステロイドによって行うことができる。抗ウイルス抗体の選択的除去はまた、患者の免疫系が治療的に投与されるウイルスを排除するのを防ぐ。投与されるウイルスとの抗体の相互作用を防ぐことはまた、全身的な治療戦略を補助し得る。
以下の例は本発明をさらに例示し、当然その範囲に限定するものとしては決して解釈されない。本明細書で用いられる多くの技法は当業者に既知である。分子生物学的技法は、Maniatis et al.著「分子クローニング:研究所マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)」 Cold Spring Harbor, N. Y. (2d ed. 1989)、及び「分子生物学における現行のプロトコル(Current Protocols in Molecular Biology)」(Ausubel et al., eds. (1987))等の好適な研究所マニュアルで詳細に記載されている。
Claims (72)
- 条件複製組み換えウイルスベクターであって、複製組み換えウイルスベクターゲノムを含み、(a)複製組み換えウイルスベクターゲノム核酸転写配列と、(b)該転写配列と動作可能に連結した制御配列とを含み、転写される場合、該転写配列が複製に必要な少なくとも1つのウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、該非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列の翻訳を阻害し、該非翻訳配列が、正常細胞に比べて真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列を翻訳させる、条件複製組み換えウイルスベクター。
- 前記非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下である二次立体配座構造をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
- 制御配列がプロモータである、請求項1に記載の組成物。
- 前記プロモータが組織特異的プロモータである、請求項3に記載の組成物。
- 前記プロモータが誘導プロモータである、請求項3に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムがアデノウイルスを含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが2型ウイルスベクター又は5型ウイルスベクターを含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、前記5'−UTR配列と動作可能に連結したE1A遺伝子を含む2型ウイルスベクター又は5型ウイルスベクター(Ad5)である、請求項1に記載の組成物。
- 前記5'−UTR配列が少なくとも1つの自己相補的配列を含むオリゴヌクレオチドである、請求項2に記載の組成物。
- 前記5'−UTR配列が少なくとも30個のヌクレオチドを含む、請求項9に記載の組成物。
- 前記5'−UTR配列が、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)、プロトオンコジーンc−myc、cyclinD1、オルニチンデカルボキシラーゼ、及び血管内皮増殖因子(VEGF)から成る群より選択される遺伝子に対する配列に由来する、請求項10に記載の組成物。
- 前記5'−UTR配列が、線維芽細胞増殖因子2(FGF2)コード配列に由来する、請求項10に記載の組成物。
- 前記5'−UTR配列がE1A mRNAコード配列の上流にある、請求項8に記載の組成物。
- 前記ウイルスゲノムが腫瘍崩壊性ウイルスをコードする、請求項1に記載の組成物。
- 前記ウイルスが、アデノウイルス、HSV、ワクシニアウイルス及びパラポックスウイルス属のorfウイルスから成る群より選択される、請求項1に記載の組成物。
- 前記ウイルスが、異なる抗原決定基を含有するように、病理表現型が異なる2種類以上のウイルス由来の組み換えウイルスである、請求項1に記載の組成物。
- 前記ウイルスゲノムが組み換えアデノウイルスベクターゲノムである、請求項1に記載の組成物。
- 前記組み換えアデノウイルスベクターゲノムが、アデノウイルスのカプシド内に包まれる、請求項17に記載の組成物。
- 前記アデノウイルスベクターがAAVキャップ配列を含む、請求項18に記載の組成物。
- 前記ベクターゲノムが約2.8kb〜38kbである、請求項19に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、肝臓特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、心筋特異的プロモータ、平滑筋特異的プロモータ、横隔膜筋特異的プロモータ、前立腺特異的プロモータ、及び脳特異的プロモータから成る群より選択されるプロモータと動作可能に結び付く初期遺伝子コード領域を含む、請求項17に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、癌細胞特異的プロモータと動作可能に結び付く初期遺伝子コード領域を含む、請求項17に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、癌細胞特異的プロモータと動作可能に結び付くE1、E2、E3、及びE4から成る群より選択されるアデノウイルス初期遺伝子コード領域を含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記制御配列が前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、分泌型ロイコプロテアーゼインヒビター(SLPI)、α−フェトプロテイン(AFP)、血管内皮増殖因子、CXCR4及びスルビビンから成る群より選択される少なくとも1つのタンパク質をコードする遺伝子に由来する組織特異的プロモータである、請求項1に記載の組成物。
- 前記組織特異的プロモータが誘導プロモータである、請求項23に記載の組成物。
- 前記組織特異的プロモータが前記CXCR4プロモータである、請求項23に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが誘導プロモータと動作可能に結び付くE1コード領域を含む、請求項1に記載の組成物。
- eIF4Eを過剰発現する細胞に投与する場合、前記ベクターが細胞増殖を阻害するか、又は該細胞を溶解するのに効果的である、請求項1に記載の組成物。
- 前記非翻訳配列が、正常細胞に比べて少なくとも2倍真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物の細胞内にある条件下で前記ウイルス配列を翻訳させる、請求項1に記載の組成物。
- 前記細胞が転移性腫瘍細胞である、請求項28に記載の組成物。
- 前記細胞が充実性腫瘍細胞である、請求項28に記載の組成物。
- 前記転移性腫瘍細胞が、膀胱癌、乳癌、子宮頚部癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、及び頭頸部癌から成る群より選択される哺乳動物の癌に関連する、請求項29に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
- 前記ウイルスベクターゲノムが薬学的に許容可能な担体をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
- 請求項1に記載の条件複製組み換えウイルスベクターを含む培養細胞。
- 請求項1に記載の条件複製組み換えウイルスベクターと、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む薬学的組成物。
- 請求項1に記載の条件複製組み換えウイルスベクターと、化学療法剤と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含む薬学的組成物。
- 細胞において複製組み換えウイルスベクターを条件付きで発現する方法であって、複製組み換えウイルスベクターゲノムを含むDNA配列を該細胞に投与することを含み、(a)複製組み換えウイルスベクターゲノム核酸転写配列と、(b)該転写配列と動作可能に連結した制御配列とを含み、転写される場合、該転写配列が複製に必要な少なくとも1つのウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、該非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列の翻訳を阻害し、該非翻訳配列が、正常細胞に比べて真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列を翻訳させる、細胞において複製組み換えウイルスベクターを条件付きで発現する方法。
- 前記非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次立体配座構造をさらに含む、請求項36に記載の方法。
- 前記非翻訳配列が、正常細胞に比べて少なくとも2倍真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物の細胞内にある条件下で前記トキシン配列を翻訳させる、請求項36に記載の方法。
- 前記投与することが細胞増殖を阻害するのに有効な量で行われる、請求項36に記載の方法。
- 前記発現ベクターがリポソーム構造内に送達される、請求項36に記載の方法。
- 細胞において複製組み換えウイルスベクターを条件付きで発現する方法であって、複製に必要な少なくとも1つのウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列とを含む翻訳可能なメッセンジャーRNA配列を含むRNA配列を該細胞に投与することを含み、該非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列の翻訳を阻害し、該非翻訳配列が、正常細胞に比べて真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列を翻訳させる、細胞において複製組み換えウイルスベクターを条件付きで発現する方法。
- 前記非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次立体配座構造をさらに含む、請求項41に記載の方法。
- 哺乳動物における増殖疾患を治療する方法であって、複製組み換えウイルスベクターゲノムを含む治療に有効的な量のDNA配列をこのような治療が必要な哺乳動物に投与することを含み、(a)複製組み換えウイルスベクターゲノム核酸転写配列と、(b)該転写配列と動作可能に連結した制御配列とを含み、転写される場合、該転写配列が複製に必要な少なくとも1つのウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列とを含むメッセンジャーRNA配列を生成し、該非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列の翻訳を阻害し、該非翻訳配列が、正常細胞に比べて真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列を翻訳させる、哺乳動物における増殖疾患を治療する方法。
- 前記非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次立体配座構造をさらに含む、請求項43に記載の方法。
- 前記非翻訳配列が、正常細胞に比べて少なくとも2倍真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する腫瘍細胞内にある条件下で前記配列を翻訳させる、請求項44に記載の方法。
- 前記非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eの存在が該配列を翻訳させる腫瘍細胞内の前記ウイルス配列を翻訳させ、前記ウイルスゲノムが翻訳され、該腫瘍細胞を実質的に溶解することができるウイルスを生成する、請求項44に記載の方法。
- 前記哺乳動物における非腫瘍細胞の大部分が、非腫瘍細胞に典型的に存在する真核生物開始因子eIF4Eが低いレベルであるために死滅しない、請求項44に記載の方法。
- 前記コードウイルスが条件ウイルスである、請求項44に記載の方法。
- 有効量の化学療法剤を前記哺乳動物に投与することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
- 前記癌が転移性腫瘍である、請求項44に記載の方法。
- 前記癌が充実性腫瘍である、請求項44に記載の方法。
- 前記転移性腫瘍が、膀胱癌、乳癌、子宮頚部癌、結腸癌、肺癌、前立腺癌、及び頭頸部癌から成る群より選択される哺乳動物の癌に関連する、請求項50に記載の組成物。
- 哺乳動物において癌を治療する方法であって、複製に必要な少なくとも1つのウイルスタンパク質をコードするオープンリーディングフレームと、5'−非翻訳領域(5'−UTR)配列とを含む翻訳可能な配列を含む治療的有効量のメッセンジャーRNA配列をこのような治療が必要な哺乳動物に投与することを含み、前記非翻訳配列が、真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現しない正常な哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列の翻訳を阻害し、該非翻訳配列が、正常細胞に比べて真核生物開始因子eIF4Eを過剰発現する哺乳動物細胞内にある条件下で該ウイルスタンパク質の配列を翻訳させる、哺乳動物において癌を治療する方法。
- 前記非翻訳配列が、折畳み状態の自由エネルギーとして測定される安定性ΔGが約−50Kcal/モル以下であるヘアピン二次立体配座構造をさらに含む、請求項53に記載の方法。
- 制御配列がプロモータである、請求項54に記載の方法。
- 前記プロモータが組織特異的プロモータである、請求項55に記載の方法。
- 前記プロモータが誘導プロモータである、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターゲノムがアデノウイルスを含む、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターゲノムが2型ウイルスベクター又は5型ウイルスベクターを含む、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、前記5'−UTR配列と動作可能に連結したE1A遺伝子を含む2型ウイルスベクター又は5型ウイルスベクター(Ad5)である、請求項55に記載の方法。
- 前記5'−UTR配列が前記E1A mRNAコード配列の上流にある、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスゲノムが腫瘍崩壊性ウイルスをコードする、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスが、異なる抗原決定基を含有するように、病理表現型が異なる2種類以上のウイルス由来の組み換えウイルスである、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスゲノムが組み換えアデノウイルスベクターゲノムである、請求項55に記載の方法。
- 前記組み換えアデノウイルスベクターゲノムが、アデノウイルスのカプシド内に包まれる、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、肝臓特異的プロモータ、骨格筋特異的プロモータ、心筋特異的プロモータ、平滑筋特異的プロモータ、横隔膜筋特異的プロモータ、前立腺特異的プロモータ、及び脳特異的プロモータから成る群より選択されるプロモータと動作可能に結び付く初期遺伝子コード領域を含む、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、癌細胞特異的プロモータと動作可能に結び付く初期遺伝子コード領域を含む、請求項55に記載の方法。
- 前記ウイルスベクターゲノムが、癌細胞特異的プロモータと動作可能に結び付くE1、E2、E3、及びE4から成る群より選択されるアデノウイルス初期遺伝子コード領域を含む、請求項55に記載の方法。
- 前記制御配列が前立腺特異的抗原(PSA)、癌胎児性抗原(CEA)、分泌型ロイコプロテアーゼインヒビター(SLPI)、α−フェトプロテイン(AFP)、血管内皮増殖因子、CXCR4及びスルビビンから成る群より選択される少なくとも1つのタンパク質をコードする遺伝子に由来する組織特異的プロモータである、請求項55に記載の方法。
- 前記組織特異的プロモータが前記CXCR4プロモータである、請求項23に記載の方法。
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