JP2009509162A - 溶解度曲線及び準安定域を求めるシステム並びに方法 - Google Patents

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Abstract

物質の溶解度を求めるシステムは、一定量の物質及び一定量の溶媒系を含む試料を保持するホルダを備える。本システムは、試料の温度を変える温度調節器と、試料の光学パラメータを測定する光学測定装置と、少なくとも温度調節器及び光学測定装置を制御する制御装置とをさらに備える。制御装置は、温度調節器により試料の温度を変え、光学測定装置により試料の光学パラメータを測定し、且つ試料の光学パラメータの変化から、温度の関数として物質の溶解度を求めるようにプログラムされ得る。
【選択図】 図1

Description

本発明は、溶媒又は混合溶媒(溶媒系)中の物質の溶解度曲線及び準安定域幅を求めるシステム及び方法に関する。
(溶解度測定)
実験により物質の溶解度の測定に関しては多くの従来技術が存在する。
例えば、溶媒系中に物質を溶解することにより溶解度を試験する方法がある。
パラメータは、例えば実験が行われる温度、物質の量と溶媒系の量との比、実験の継続期間、物質と溶媒系との均質な混合物を得るのに使用されるかき混ぜ方法(例えば攪拌又は振盪)、検査(workup)方法(例えば遠心分離)、及び溶解した材料の量を求めるのに使用される分析技法等、様々であり得る。
(濁度測定及び「光学パラメータ」)
さらに、従来技術には、試料の光学パラメータを測定することにより、物質が溶媒系中に完全に溶解しているかどうかを判断する複数の方法がある。
この光学パラメータは、試料中に存在する懸濁物質の量と関係がある。
この光学パラメータの測定は、試料の一部に向けられる光ビームの、散乱又は吸光による減衰を測定することを含み得る。
代替的に、この光学パラメータの測定は、試料の一部に向けられる光源に対して所定の角度で配置される検出器において散乱光の強度を測定することを含み得る。
さらに、1つ又は複数の光ビーム及び1つ又は複数の検出器を用いてもよい。光源は、電磁スペクトルの領域の赤外光、可視光又は紫外光を含むものと理解される。
代替的に、溶解した材料の量は、試料の一部を取り出し、これを重量測定法により分析するか、又は分光法若しくは超音波法を用いることにより求めることができる。溶解した材料の量は、分光法又は超音波法又は電気的検知帯法を用いてその場解析(in situ)で求めることもできる。
(「溶解度曲線」及び「準安定域」)
溶解度及び準安定域幅の曲線は、結晶が成長する条件の範囲、および結果として一次核生成を生じることになる条件の範囲をまとめ、グラフにより示すための方法として知られている。図2は、溶解度曲線及び対応する準安定域の例を示す。図2では、グラフの水平軸は温度(TEMP)であり、垂直軸は材料の濃度(CONC)である。
図2において「SOL」により示される線は溶解度曲線である。溶解度曲線は、溶媒系中の物質の固体−液体の熱力学的平衡濃度を温度の関数として示す。
溶解度曲線は従来技術では透明点曲線(clear point curve)とも呼ばれるが、これは、溶媒系中の物質のスラリーを完全に溶解するまで加熱することにより、透明な溶液となる点(透明点)を得ることにより、実験的に得ることができるためである。
結晶は溶解度曲線を超える濃度において成長する。図2において「MSZ」により示される線は、準安定域の境界である。準安定域の境界は、溶媒系中の物質の濃度であって、この濃度を超えると一次核生成が起こる濃度を温度の関数として示す。
準安定域の境界は、従来技術では曇り点曲線とも呼ばれるが、これは、核生成が起こり溶液が曇る点(曇り点。濁り点ともいう)まで飽和溶液を一定の速度で冷却することにより実験的に得ることができるためである。
準安定域の境界を越える濃度では、自然発生的な結晶化、すなわち一次核生成が起こる。
(目的)
したがって、本発明の目的は、溶解度曲線を生成し、準安定域幅を同定し、且つ結果を報告するための、必要とされる実験及びデータ分析を自動化する改良されたシステム及び方法を提供することである。
(システム)
本発明によるシステムは、一定量の物質及び一定量の溶媒系を含む試料を保持するホルダと、試料の温度を変える温度調節器と、試料の光学パラメータを測定する光学測定装置と、少なくとも温度調節器及び光学測定装置を制御する制御装置とを備え、制御装置は、
a)温度調節器により試料の温度を変え、
b)光学測定装置によって試料の光学パラメータを測定し、且つ、
c)試料の光学パラメータの変化から、温度の関数として試料の透明点及び曇り点を求めるようにプログラムされている。
制御装置は、少なくとも温度調節器及び光学測定装置を制御して自動化された実験をすることができる。例えば、試料の温度を変えること、光学パラメータを測定すること、及びそれにより透明点及び曇り点を導出する実験等である。
本システムは、さらに制御装置によって制御され得る、試料を攪拌するための、例えば電磁攪拌機又はオーバーヘッド攪拌機等の攪拌機を備え得る。
攪拌機は制御装置によって制御され得るため、攪拌は、例えば種々の測定に対して様々であってもよく、又は温度等のパラメータに依存してもよい。
(複数の容器及び測定の正当性)
結晶化プロセスの開発、最適化、拡大及び設計において、一次核生成を生じる条件は回避しつつも、結晶が成長する条件の範囲を理解することが望ましい。
不都合にも、必要な実験作業は通常、行うのに時間がかかり労働集約的であるため、このデータは利用できない場合が多い。
溶解度曲線及び準安定域幅を求める実験方法は、従来技術において十分に確立されている。
例えば、従来技術では、まず、飽和溶液となるように物質を溶解した溶媒系を用意して、曇り点が観察されるまで冷却し、次に透明点が観察されるまで加熱する。
次いで、さらなる溶媒を添加し、十分な開始濃度において、溶解度曲線及び準安定域幅を十分に特徴付けるデータが収集されるまでプロセスを繰り返すことができる。
溶解度曲線を求める際には、系が平衡状態に近づくように、ゆっくりとした冷却速度を用いなければならない。
さらに、準安定域幅は、冷却速度によって変化することが知られているため、様々な冷却速度で求め、無限に遅い冷却速度を推定するべきである。
さらに、すべての測定には或る程度の実験誤差が伴うため、すべての測定を反復して行うのがよい慣行である。
結果として、溶解度曲線及び準安定域幅を生成する順次行われる実験は非常に時間がかかる。
さらに、多くの場合、溶媒系の変化、不純物の存在、又はかき混ぜる程度の、溶解度曲線及び準安定域幅への影響を理解することが望ましい。
したがって、これらの実験を並行して、複数の容器で、複数の条件(例えば材料の種々の濃度、種々の冷却速度、複数の溶媒系の種々の溶媒の割合、種々の不純物のプロファイル、及び種々の攪拌速度)において行うと、かなりの時間及び費用を削減することができることは明らかであろう。
例えば温度制御システム及び試料中に存在する懸濁物質を判定する光学センサを有する、自動化された並行して行う反応システムは、上記データを収集する時間及び費用の低減に役立ち得ることが従来技術から既知である。
(自動化されたオンライン分析の正当性)
溶解度曲線及び準安定域幅を求める、並行する溶解度実験を複数の容器及び複数の条件で行うことにより、大量のデータが得られる。
このデータの分析を自動化することにより時間及び費用を削減し、したがって、溶解及び結晶化の挙動のより広範囲の研究が実現可能となる。
さらに、実験を実行する間にこのデータ分析を行うことにより、実験プログラムに対して修正を行うことができる。
実験プログラムの自動制御により、実行時間を短縮するか、又は、例えば、複数の試料における最高溶解温度及び最低結晶化温度を検出することによる時間の削減、並びにそれにしたがって温度プログラムを調整すること、曇り点及び透明点における変化がもはや検出できなくなるまで加熱速度及び冷却速度を下げることによって最適なこれらの速度を見つけることにより品質を改善すること、あいまいな結果を有する場合に実験を繰り返すことにより品質を改善すること等、実験結果の品質を改善することが可能となり得る。
さらに、後処理及びデータの報告(例えば曲線の当てはめ、プロットの生成、及び判断のアドバイスの提供)の自動化により、このデータをより利用しやすくなり、結晶化プロセスの開発において、溶解度曲線及び準安定域幅のデータの広範な使用が可能となる。
(方法)
溶媒系中の物質の溶解度曲線及び準安定域幅を求める本発明による方法は、
a)一定量の物質及び一定量の溶媒系を含む試料を用意すること、
b)試料の温度を変えること、
c)試料の温度に関連して試料の光学パラメータを測定すること、及び、
d)試料の光学パラメータの変化から、温度の関数として試料の透明点及び曇り点を求めること、
e)ステップa)、b)、c)及びd)を、物質の量又は溶媒系の量が様々である2つ以上の試料に関して行うこと、
を含む。
本発明による方法に関して、本発明によるシステムと同様の利点及び好適な実施の形態が本発明によるシステムに適用可能である。
本明細書の文脈では、溶媒系は、1つ又は複数の溶媒、貧溶媒、塩、不純物、界面活性剤、付形剤又は他の添加物の液体混合物を含み得る。所与の固体物物質の場合、溶媒系は固体物質の一部を溶解することができる。
固体物質の試料を溶媒系に浸漬すると、固体のすべてが溶解する温度によって「透明点」が形成され、圧力及び混合された系の全体の組成を一定に保ち得る。
透明点は、系の熱力学的性質であると考えられ得る。
溶解した固体物質の異なる濃度に関して求められる透明点の温度は、「溶解度曲線」上にあり得る。
固体物質の試料が溶媒系中に完全に溶解すると、最初の固体が出現する温度によって「曇り点」が形成され、圧力及び混合された系の全体の組成を一定に保ち得る。
濁り点は、例えば冷却速度によって変化するため、系の熱力学的性質ではない。
溶解した固体物質の異なる濃度に関して求められる濁り点の温度は、準安定域(MSZ)の境界を形成する「過溶解度曲線」又は「準安定限界」上にあり得る。
(本システムの実施形態)
これから、本発明によるシステム及び方法のさらなる特徴、利点及び好適な実施形態を、本発明の非限定的な実施形態を示す添付の図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一態様による溶解度曲線及び準安定域幅を求めるシステムを示す。図1に示すシステムは、試料Sを保持するホルダHと、好適な量の物質及び好適な量の溶媒系を含む試料とを有する。
物質は、システムの動作圧力及び最低動作温度では固体状態で存在し、好適な溶媒系によって溶解され得る薬等の任意の無機化合物又は有機化合物を含み得る。
好適な溶媒系は、動作圧力及び実験の温度範囲で物質を溶解することができ、この温度範囲では実質的に液体状態で残存し、光学測定装置の波長域にわたって光学的に実質的に透明である、任意の溶媒又は混合溶媒を含み得る。
本システムは、試料の温度を変える温度調節器TCをさらに備える。
本例では、温度調節器TCはホルダHの下に位置し、固定手段FによってホルダHと熱接触する。固定手段Fは物質を保持するホルダHを実質的に固定位置に保つ作用も有している。
ホルダHは別個の部品であってもよく、すなわち固定手段Fから取り外し可能であってもよい。
好ましくは、固定手段Fは、温度調節器TCとホルダH内にある物質間で良好に熱接触が生じるように構成するために、高い熱伝導性を有する材料を含んでいてもよい。
本例では、温度調節器は、ヒータHT(例えば電熱器を含む)、及び冷却要素C(例えばペルチェ素子、熱交換器、又は他の任意の冷却手段を含む)を含む。本システムは、温度調節器TCと協働して動作するように、例えば冷却機等のヒートシンクHSをさらに備え得る。
ヒータHT及び冷却要素Cによって、ホルダH内の試料Sの温度は、ヒータHTによって上昇すると共に冷却要素Cによって下がり得る。ヒータHT及び冷却要素Cの両方は、制御装置CONの制御下にある。
さらに、例えば制御装置又は光学パラメータ測定装置等のいくつかの電子構成要素が、システムの動作中に低い温度に曝される位置に位置付けられてもよい。
湿り大気中では、この低い温度によりこれらの構成要素に水が結露し、これにより、これらの装置が故障するか又は性能が損なわれる可能性がある。
そのため、本発明者らは、システムを、例えば窒素等の乾燥ガス源に接続することによりこれを防止し、それにより脆弱な構成要素の周囲で乾燥した大気を維持することを考案した。
制御装置は、マイクロコントローラ、マイクロコンピュータ等の任意のプログラム可能な装置を含み得る。
制御装置は、ホルダ、温度調節器等を含む同じ装置内に統合され得るが、制御装置の少なくとも一部を、例えばパーソナルコンピュータ等の別個の装置内に含めることも可能であり得る。
制御装置は、専用ハードウェアから成り得るが、実際の実施形態では、本明細書に記載するようなステップを実行する好適なソフトウェア命令を有する、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、パーソナルコンピュータ等のプログラム可能な装置を含んでいてもよい。
制御装置はまた、上記装置が全体として、本明細書に記載するような機能を実行できるようにする好適なソフトウェアをそれぞれが有する、複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、パーソナルコンピュータ等から成っていてもよく、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ等は、ユニバーサルシリアルバス(USB)等のシリアル接続、又はコンピュータネットワーク(例えばイントラネット若しくはインターネット)等の他の任意のデータ接続手段等、任意の通信手段を介して相互接続される。
本システムは、試料Sの光学パラメータを測定する光学測定装置をさらに備える。
本例では、光学測定装置は発光ダイオード(LED)、レーザダイオード、フィラメントランプ、ガス放電ランプ、又は他の任意の発光素子等の光源LSOを含む。
光源LSOは動作中に、ホルダH内の試料Sの一部を通って進む光ビームBを照射する。
この目的のために、ホルダHは少なくとも部分的に、光学測定装置の波長域にわたって高透過性である材料から成っていてもよい。
光ビームは可視光を含み得るが、赤外光又は紫外光も使用することができる。
ビームの光の一部は、動作時に検出器DETによって受光され得る。
この実施形態では、光源LSOは、試料を通って検出器DETの方へ向けられる、すなわち光源LSOが出射するビームは検出器DETに向かって進む。
光源LSO及び検出器DETは、制御装置CONと光源LSO及び検出器DETのそれぞれとの間に記載された点線により抽象的に示すように、それぞれ制御装置CONに接続される。
この実施形態では、光源LSO及び検出器DETは、(制御装置CONの制御下で)透過率測定を行い、すなわち試料Sの透過率を検出する。
それに加え、一定量の光(すなわち可視光、赤外光、又は紫外光)が、ビームBの形でホルダH内の試料Sに照射される。
試料の濁度によって、ビームの光の大部分又は一部が試料Sによって吸光、散乱、反射等され、ビームBの残りが検出器DETに達し得る。
この構成の利点は、光源LSO用の発光ダイオード、及び検出器DET用のフォトダイオード又は他の低コストの光検出器等、非常に低コストの構成要素を使用することができることである。
さらに、本明細書に記載するような構成は、検出器DET、光源LSOの製造誤差及び偏差等、並びにそれらの位置合わせに対して比較的不耐性であることが示されているため、高性能な光学素子は省いてもよい。
本例では、本システムは、試料S内に浸漬される攪拌機、より詳細には本例では電磁攪拌機(図示せず)をさらに備える。
電磁攪拌機は、本例では、回転磁界又はその他の様々な磁界を発生させる電磁石等の、磁石Mにより駆動され得る。
それに加え、電磁石Mと制御装置CONとの間の点線により示すように、磁石Mは制御装置CONの制御下にある。
ここで、図1によるシステムの動作を、図2〜図4を参照して、特に図3及び図4を参照して説明する。
(実施形態の動作)
図2を参照すると、まず、温度T1で飽和溶液となるように、溶媒系中に物質を濃度Cとなるように溶解した試料を用意し、この溶液を所定の冷却速度で冷却する。試料が温度T2を下回る温度に冷却されると、準安定域の境界MSZにおいて自然発生的な結晶化、すなわち曇り点を生じる。
換言すると、MSZ境界の曲線において、物質が溶解している状態から物質の一部が溶解していない状態への遷移が起こる。
温度T2において溶媒系中に溶解した材料の濃度がCであり、物質の一部が溶解していない試料では、この試料を十分にゆっくりとした加熱速度で加熱する場合、温度T1を超える温度に加熱すると、試料は完全に溶解する、すなわち溶解度曲線SOL上の透明点となる。
換言すると、溶解度曲線において、試料中の物質の一部が溶解していない状態から、物質が完全に溶解している状態への遷移が起こる。
ここで、システムの動作及びシステムの好適な実施形態を、図3A〜図3Cを参照して説明する。
図3Aは、図2の、ホルダHによって保持される試料Sの温度Tをグラフにより示す。
図3A〜図3Cの水平軸に、時間tが示されている。図3Aでは、垂直軸は温度Tである。
図3Aは、温度は周期的に変化し、本例では温度は、温度が直線的に上昇した後、直線的に下降する周期に従うことが示される。
溶媒系中の物質の溶解及び結晶化の挙動は図2に示すように温度依存性であることを示すため、温度の周期的な変化により、試料中の物質では溶解と結晶化とが交互に起こる。
図3Bは、図1による光検出器DETの出力信号を示す。結晶化と溶解とが交互に起こるため、試料の透過率は交互に変化する。
すなわち、物質が溶解すると透過率は増加し、したがって検出器DETの出力が増加し、一方で結晶化が起こると、透過率は減少し、したがって検出器DETの出力が減少する。
図3Bに示すように、検出器DETの出力信号は一般的に、相当量のノイズ、もしくは他の外乱を示す。
これらは種々の理由に起因し得る。例えば、試料中の気泡、不完全な攪拌による試料の濃度の不均一、光源の出力の変動、検出器、及び/又は検出器の出力信号を増幅する増幅器からの電気ノイズ、並びに他の多くの理由である。
光学測定装置の設計を改良することによってこのノイズを低減する多くの方法が、従来技術から既知である。
しかし、本発明者らは、従来技術の代わりに、単純で低コストな光エミッタ及び検出器のハードウェアを使用し、雑音及び他の外乱を補正する信号処理技法を使用することを選択した。
検出器の出力信号は、図1による制御装置CONが実行し得る複数の信号処理ステップ及びデータ分析ステップの対象となり得る。これらのステップは、
sa)検出器の出力信号を平滑化すること(すなわち、測定した光学パラメータデータを平滑化すること)、
sb)平滑化した検出器の出力信号の差分をとる(即ち、微分する)こと(すなわち、測定し、平滑化した光学パラメータデータの差分をとること)、
sc)平滑化し、差分をとった検出器の出力信号のピークを特定すること、
sd)平滑化し、差分をとった検出器の出力信号の長期に渡る正のシーケンス又は負のシーケンスを特定すること
を含み得る。
平滑化するステップ(sa)は、アナログ信号若しくはデジタル信号の平滑化方法又はローパスフィルタリング(Low Pass Filtering)方法を適用することを含み得る。
多くのこのような方法が従来技術から既知である。
アナログ平滑化又はアナログフィルタリングは、例えば電子回路で実施され得る。
デジタル平滑化又はデジタルフィルタリングは、例えば、デジタル信号処理チップにより又はコンピュータでソフトウェアを実行する際に実施され得る。
非因果性フィルタ及び平滑化方法は、信号のタイムシフトを防止するため好ましいが、例えば有限インパルス応答フィルタ及び無限インパルス応答フィルタ等の因果性フィルタも使用することができる。好適な非因果性デジタルフィルタ及び平滑化方法は、例えば、移動ウィンドウ平均(moving window average)、サビツキー・ゴーレイフィルタ、フーリエドメインフィルタ及びウェーブレット(wavelet)平滑化を含む。
差分をとるステップ(sb)は、単に信号の差分をとることによって実行され得るが、例えば二点中心差分公式(two-point central difference formula)を用いてより信頼性の高い結果が得られることが従来技術から既知である。
さらに、ステップ(sa)及び(sb)を組み合わせて、例えばサビツキー・ゴーレイ微分フィルタ等の平滑化微分フィルタを得てもよい。
特に、本発明者らは、ガウス平滑化微分フィルタにより適当な結果が提供されることを考案した。
平滑化し差分をとった検出器の出力データを図3Cに示す。ノイズはかなり低減されていることが分かる。
さらに、差分をとることによって、検出器の出力の増加又は減少を容易に特定することができ、上昇は、図3cに示す正の信号につながり、減少は、負の信号につながる。
また、溶解又は結晶化の遷移に対応する検出器の出力の増加及び減少は(図3bを参照)、通常は比較的急な勾配であることが観察され、よって図3cに示すように、差分後の信号において比較的高いピークにつながる。
検出器の出力データの平滑化された微分におけるピークを見つけることは、溶解又は結晶化の遷移に対応し得る透過率信号における段差(step)又は急な勾配のスロープの位置を特定することになる。
ピークを特定するステップ(sc)は、以下を行うことにより実行され得る。
(i)正の方向又は負の方向に所定の閾値を超える信号の部分を特定することによりピークをひとくくりにすること。これは、図3Cに示され、閾値は点線TH1、TH2によって示される。
(ii)ステップ(i)において、少なくともひとくくりにされるピークとして特定された上記信号の部分について、検出器の出力データの平滑化した2次微分を計算するために、前述したような差分方法を使用すること。
(iii)検出器の出力データの平滑化した2次微分の符号の変化に対し、ステップ(i)で特定した信号の部分を走査することによりピーク位置を見つけること。
ステップ(i)は、実際には、溶解及び結晶化以外の現象によって引き起こされる、信号における上方若しくは下方のドリフトの不完全な平滑化又はこれらが遅いことに起因し得る小さいピークは除く。
ステップ(sd)において平滑化し、差分をとった検出器の出力信号における長期にわたる正のシーケンス又は負のシーケンスを見つけることは、同様に溶解又は結晶化の遷移に対応し得る、透過率信号におけるスロープ位置を特定することを意味する。
溶解の遷移は、結晶化の遷移よりも長い場合が多く、したがって、(結晶化による)段差よりも透過率信号における緩やかなスロープとして出現する可能性があることに留意されたい。
ステップ(sc)(i)おいて低い閾値を設定すること、例えばシンプソン法のような数値積分法によって(閾値を超える)信号の部分未満の領域を見つけること、及びこの領域が所定レベルを超えているかどうかを判断することにより、ステップ(c)及びステップ(d)を組み合わせることも可能であることが理解される。
この方法を用いて、段差に対応する大きく幅の狭いピークを、スロープに対応する、振幅の小さい長期の正のシーケンス又は負のシーケンスと同様に検出することができる。
雑音に加えて、検出器からの出力信号は、アーティファクト、すなわち溶液の透過率に対応する変化に起因しない、信号における大きく、短期間のスパイク波形も含む可能性がある。
これらのアーティファクトは、例えば光ビームを横切る電磁攪拌機によって生じる可能性がある。
さらに、通常、例えば温度が設定点に達するまでの、遷移の検出に信頼性がない実行初期の開始期間が存在する。
これに加え、平滑化プロセスは信号の始まり又は終わりを損なう可能性がある。
信号の始まり又は終わりに非常に近い遷移は、アーティファクトに起因するものではないことを確証することも難しい。
したがって、ステップ(sc)及びステップ(sd)において特定された候補となる遷移の位置は、アーティファクト又はエンドエフェクトに関連する遷移を特定する目的で、複数の規則を用いて検査され得る。
例えば遷移同士が近すぎる、信号の始まり又は終わりに近すぎる等の場合にこれらを除外することを可能にすることは、正しい方向への温度変化を可能にする。
検出器の出力信号における遷移が見つかった場合、対応する遷移温度を、図3Aに示す温度プロファイルから読み出すことができる。これにより、曇り点及び透明点の遷移が生じる温度を求めることができる。
複数の周期、すなわち、温度の上昇及び低下が起こった場合、曇り点及び透明点の温度を推定することの信頼性及び定量化されるこれらの測定の正確性を高めるために平均化を行うことができる。
測定は例えば、溶媒系中の物質の濃度、溶媒系の組成、攪拌速度、温度の上昇及び低下の速度、さらなる物質の添加等の1つ又は複数のパラメータ、又は他の任意のパラメータを変えつつ行うことができる。
(曲線の当てはめ及びプロット)
上述のように測定結果が得られ、物質の濃度のみが変化する2つ以上の試料に関して上述のようなステップが行われると、これらの試料に関して溶解度及び準安定域の境界の曲線を求めることができる。
線又は曲線を、2つ以上の物質の濃度で測定した、曇り点の温度及び濃度のデータに当てはめることができる。
次に、この曲線を、図2において「SOL」として示すように、溶解度曲線に近似するように実験的に求める。
同様に、線又は曲線を2つ以上の物質の濃度で測定した、透明点の温度及び濃度のデータに当てはめることができる。
次に、この曲線を、図2において「MSZ」として示すように、準安定域の境界曲線に近似するように実験的に求める。
従来技術から、曲線を当てはめるために、例えば一次関数、多項式関数又は指数関数等、多くの関数が好適であり得ることが分かっている。また、種々の熱力学を応用した式(例えばファントホッフの式)もこの目的のために用いることができる。
これら関数のパラメータは、例えば線形最小二乗法又は非線形最小二乗法を用いて、当てはめた曲線及び実験データ間の二乗誤差の和を最小化することによって、実験データから求めることができる。
代替的に、他の目的関数及び当てはめアルゴリズム、例えばベイズ法を使用して、好適なパラメータ値を求めることができる。
さらに、統計的検定を行って、当てはめられる値からの外れ値を検出し、除外することができる。
さらに、例えば利用可能なデータ点の数及びこれらデータ点の分布に基づいて、実験データを当てはめるための適当な関数のタイプを選択することが可能である。
代替的に、複数の異なる関数のタイプのパラメータを当てはめ、十分に当てはまらない部分を比較し、最も適当な曲線のタイプを選択することができる。
この曲線の当てはめは、実質的に自動化され、プロットを生成し、このデータをより利用可能なものとする統計的な理解のためのアドバイスを提供し、それにより、結晶化プロセスの発展において溶解度曲線及び準安定域幅のデータを広範に使用することが可能となる。図1による制御装置CONは、上述した曲線当てはめ動作を行うことができる。
(較正)
本明細書に記載するシステムは、以下に記載する手順に従って較正することができる。
まず、試料の温度を、溶媒系中に物質が実質的に溶解するレベルまで上昇させることが可能であり得る。
次に、光学パラメータ、本例では透過率を較正することができる。換言すると、上記温度で得られた試料の透過率を、例えば100%に設定することができる。
次いで、少なくとも較正が行われた温度よりも低い温度に及ぶ温度範囲(例えば温度の周期的な変化が適用される)を使用する測定が行われ得る。
一利点は、このように、較正を行う比較的高い温度でも試料の較正を行うことが可能であることであり、物質は、溶媒系中で完全に溶解する可能性が高い。
したがって、較正中に見出される透過率よりも高い試料の透過率は(実験中に)現れにくい。
ここで、較正が行われた温度から温度を下げることにより、結晶化が起こることによって透過率が低減し、したがって検出器の出力も低減し得る。
よって、検出器の最大の出力信号で較正を行うことができる。
このタイプの較正の利点は、較正を、例えば各温度周期の前等に、又は好適な間隔を置いて行うことができることである。
一例として、この較正を、各温度周期の前に、例えば新たな試料をシステムにより試験するたび毎に行うことが可能であり得る。
これにより、試料の異なる性質(化学組成、量等による)等のパラメータが、例えばその試料の測定を開始する前の各試料の較正により考慮され得るため、透過率測定がより正確になり得る。
較正は、光源LSO(すなわち、より一般的には光電源)の光出力を、公称最大出力が検出器によって受け取られる、出力レベルに達するまで変化させることを含み得る。
検出器は、図1の試料を通って伝達される光出力の残り(すなわちビームの残り)を検出する。
上述したように、測定を行うときに、透過率の最大値は、較正が行われた温度における試料の透過率に等しい。
したがって、検出器の出力の最大値は、較正中に見出される出力に等しく、またこれよりも小さい場合がある。
検出器の動作範囲から最大限に利益を得るために、所定の試料を用いて、検出器が最大量の光エネルギーを受け取るように光源の出力を設定することが望ましい。
この時、透過率の比較的高い透明な試料の場合、出力は、透過率が比較的低い試料の場合よりも低く設定され得る。
検出器が受信する信号を、検出器が受信する最大公称信号にできるだけ近い値を確保することにより、検出器の雑音又は検出器の増幅器の雑音、迷光効果等が低減されるため、光源の出力を試料に適合させることにより、正確性が高まり得る。
(複数の容器)
システムのスループットを増加させるために、すなわち本システムができるだけ短い時間枠内でできるだけ多くの実験、測定等を行うことができるように、本システムは、複数の試料を保持する複数のホルダと、よって好ましくは複数の試料について並行して、本明細書に記載するようなプロセスを実行するように構成される制御装置とを備え得る。
ホルダはそれぞれ、個々の温度制御手段TCを有し得るが、一群のホルダ、例えば一列のホルダが共通の温度制御手段TCによって同じ温度に保たれることも可能である。ホルダは一列に設けてもマトリクス状等に設けてもよい。
ホルダは、任意の形態又は形状を有し得る。複数の試料がシステムにより並行して試験される例では、それぞれの試料用に別個のホルダを使用することが可能である。しかし、代替的に、複数の異なる試料を収容し得る、例えば、いわゆるチップホルダ(すなわちガラス等の材料製のカード形状のホルダ)等のホルダを適用することも同様に可能であり、カードは、それぞれが試料用のホルダとして用いられる一連の小孔を有する。
このような構成では、光源及び検出器は、図1に示すように位置付ける代わりに、ビームBが試験される試料を通って垂直に進むように設けてもよい。
それにより、近接する試料による干渉を防ぐことができる。
図1のようなシステムを構築することはコスト面で効果的であり得る。検出器及び光源を、例えば試料を囲むプリント回路基板上に位置付けてもよく、プリント回路基板は、図1に示すような電磁石Mの一部を成す導電体も担持する。
ホルダHは、特定の試料(又はバッチ単位の試料)に関して試験が行われている間に次の試料(又は試料のバッチ)を準備することができるように交換可能であり、よってシステムから取り外すことができる別個の部品であり得る。このような交換可能なホルダHは破棄可能な構造であるため、洗浄の必要がない。
(オンライン分析及びプログラム修正)
データ分析は通常、実験が完了すると行われる。しかし、実行し続けながらも、上述したような自動化データ処理を行い、溶解及び結晶化の遷移を特定することにより、実験プログラムに対し修正を行うことができる。
これにより、実行時間を短縮することができるか、又は実験結果の質を高めることができる。図1による制御装置CONは、実験プログラムの制御を行うことができ、この制御の複数の例を以下に記載する。
(温度プログラムのオンライン調節)
例えば、温度が周期的に変化し、特定の時点で結晶化又は溶解の遷移を検出することができると、温度がまさに変化した方向へ温度をさらに変化させることは不必要であり得る。その特定の時点で、制御装置は、温度変化の方向を逆にするように温度制御手段を制御し、これによって温度周期を短縮することにより時間を節減することができる。
共通の温度制御手段によって一群の試料が同じ温度に保持されている場合、これらの試料の最高溶解温度及び最低結晶化温度をオンラインで求め、温度プログラムを上述したように調整し、不必要な温度変化をなくすことができる。
(最適な加熱速度のオンライン特定)
さらなる例として、溶解度曲線を正確に求めることは、熱力学的平衡状態に近づくように十分にゆっくりとした加熱速度が必要であることが従来技術から既知である。
適した最速の加熱速度を効率的に求めるために、制御装置は温度制御手段を制御して、連続する温度周期における加熱速度を下げ、オンライン分析により検出されるような透明点の温度が或る所定の許容差内で変化を止めるとプログラムを停止することができる。
(最適な冷却速度のオンライン特定)
さらに、準安定域の境界の位置は、冷却速度によって変化し得る。
したがって、無限に低い冷却速度を推定できるのに十分な、複数の冷却速度における準安定域の境界を求めることが望ましい場合が多い。
無限に低い冷却速度を正確に推定できるように、制御装置は、例えば、連続する温度周期において冷却速度を下げるように温度制御手段を制御し、例えば線又は曲線等の関数を、実験的に求められた曇り点の温度及び各周期後にオンライン分析によって求められた冷却速度データに当てはめ、曇り点の温度の当てはめられた関数から、無限に低い冷却速度を推定し、無限に低い冷却速度における予測される曇り点の温度の誤差を推定し、且つこの誤差が或る所定の許容差内にあるかどうかを判定し、非常に低い冷却速度における曇り点が所定の誤差許容差内にあると推定することができるとプログラムを停止することができる。
(オンライン反復及び外れ値検出)
制御装置は、測定データの正確性を判断することもできる。
測定値間にかなりの量の差異が認められる場合、これは、さらなる測定、例えばより多くの温度周期において測定を行うようにする、制御装置に対する指示であり得る。
しかし、一連の測定値が比較的狭い許容差内にあるようである場合、制御装置は、さらなる測定を行うことは時間の無駄である可能性があるとしてプログラムを停止するようにプログラムすることができ、さらなる情報は提供しない。
さらに、制御装置は、以前の周期、以前の試料等、又は他の任意の比較可能な、同様な実験若しくは周期において同じ条件で見出されたデータから逸脱する測定値等の外れ値を実行中に検査し、この実験をやり直すか又はこの実験の結果を考慮しないことにするようにプログラムすることができる。
よって、制御装置によって得られた誤りの測定値は、実験の解釈において分析のいかなる否定的な結果も回避するために、分析からは除外することができる。
例えば、後述する透過率検出器及び散乱検出器等、複数の検出器が適用される場合に、同様の機構をさらに使用することができる。
制御装置は、(例えばビームを横切る攪拌機に起因する場合がある)異常な又は誤りのデータの場合に、どの検出器を考慮するかを決定することができ、よって考慮に入れない検出器によって提供されるいくつかのデータを考慮に入れないようにプログラムすることができる。
ここで、上述したものと同様の機構を用いて、例えばデータを以前のデータ又は後のデータと比較し、データを平均値と比較すること等ができる。また、透過率データと散乱データとの関係を考慮することができる。
さらに、当てはめられた溶解度又は準安定域の境界の曲線がどの程度よく当てはめられているかを考慮するように制御装置をプログラムすることも可能であり得る。
図2にSOLとして示す溶解度曲線を、実験の結果として得られるものと仮定する。
実験は、例えば溶媒系中の別の量の物質濃度で行うことができる。
これにより、上述したように、曲線を結果に当てはめることができる。
曲線の当てはめにより、ある量の誤差が示される場合、又は誤りのデータ点が見つかった場合、制御装置を、実験の一部をやり直すか、又は例えば、標準誤差に関して曲線を高い正確性で当てはめることができるようにさらなるデータ点を得るために、他の濃度での実験等を指示するようにプログラムすることができる。
(方法の一実施形態)
ここで、本発明による方法を図4を参照して記載する。
本方法によると、まず、Aに示すように、一定量の物質及び一定量の溶媒系を含む試料を用意する。
次いで、Bに示すように試料の温度を変える。次に、Cに示すように、試料の温度と関連して試料の光学パラメータを測定する。
次に、Dに示すように、試料の曇り点及び透明点を、温度の関数として試料の光学パラメータの変化から求める。
本発明による方法の場合、上述した本発明によるシステムと同じか又は同様の利点が当てはまり、また、本発明によるシステムを参照して上述した同じ好適な実施形態、同じか又は同様の代替形態、さらなる発展形態等が、上述したものと同じか又は同様の利点を提供し得る。
本明細書に記載する方法を、図1及び図3A〜図3Cに関して上述したシステムを使用して行うことができる。
上述した実施形態に加えて、さらなる改良又は変形形態を後述する。
(多形転移(同素変態)の特定)
さらに、試料において多形転移(同素変態)が起こる可能性がある。
同じ物質の異なる多形(相)は、溶解度を含む、異なる物理的特性を有し得る。したがって、実験過程において優勢な多形(相)が変化(変態)する場合、図2に示す溶解度及び準安定域の境界の曲線は不連続性を示し得る。
例えば低い温度において多形(相)Aが優勢である場合があり、この場合、実験は多形(相)Aに関する溶解度データを提供し、一方で高温では、試料において別の多形B(相)が優勢である場合があり、この場合も多形(相)Bの溶解度データを提供する。
このような場合、例えば多形転移(同素変態)において不連続性を有する区分的な一次関数として溶解度曲線を当てはめること等、正確な溶解度曲線を提供する十分なデータ点を得るために多数回の実験を行うことが望ましい場合がある。
本明細書に記載する本発明を用いると、多数回の実験を行うことは、複数の容器を使用すること、並行して複数の実験を行うこと、並びに実験及びデータ分析を実質的に自動化することによって容易にすることができる。
(散乱測定)
さらに、上述したような透過率測定の代わりに散乱測定を適用することが可能であり得る。
また、透過率測定と散乱測定との組み合わせも適用することができる。この場合、単一の光源LSOを使用し、2つ以上の検出器を用いれば、1つの検出器をビームの照射方向に位置付けることにより上述したように透過率を測定し、1つ又は複数の他の検出器を照射軸からずらして位置付けることにより散乱データを提供してもよい。
すなわち((例えば結晶化に起因して)試料中ではより多くの散乱が起こりこれらの検出器によってより多くの出力が提供される。
(液体計量)
さらに、液体計量ロボット等の液体調合機をシステムに追加することも可能であり、制御装置によって溶媒又は他の材料の添加をプログラムしてもよい。
これは例えば、試料の連続希釈によって一定範囲の濃度に関して測定を行うことが可能となるという利益を有する。
(実験の設計)
さらなる実施形態では、制御装置は、システムのユーザが、溶解度曲線及び準安定域の境界曲線を求める実験を設計及び分析するのを助ける実験設計ツールを提供するようにプログラムされているソフトウェアを実行してもよい。
これは、特定の材料濃度、溶媒系、冷却速度及び加熱速度における実験の組み合わせリストを作成すること等を含み得る。
本発明によるシステム及び方法を用いて、透明点、曇り点、又は透明点及び曇り点の両方を求めることができる。
本発明の一態様による、溶解度を求めるシステムを概略的に示す図である。 溶解度曲線及び準安定域幅の例を示す図である。 本発明の一態様によるシステム及び方法に従う手順の種々の段階における、曇り点及び透明点の決定を示すグラフである。 本発明の一態様によるシステム及び方法に従う手順の種々の段階における、曇り点及び透明点の決定を示すグラフである。 本発明の一態様によるシステム及び方法に従う手順の種々の段階における、曇り点及び透明点の決定を示すグラフである。 本発明の一態様による方法の流れ図(フローチャート)である。

Claims (46)

  1. 溶媒系中の物質の曇り点及び/又は透明点を求めるシステムであって、
    一定量の物質及び一定量の溶媒系を含む試料を保持するホルダと、
    前記試料の温度を変える温度調節器と、
    前記試料の光学パラメータを測定する光学測定装置と、
    少なくとも前記温度調節器及び前記光学測定装置を制御する制御装置であって、
    a)前記温度調節器により前記試料の温度を変え、
    b)前記光学測定装置により前記試料の前記光学パラメータを測定し、且つ
    c)前記試料の前記光学パラメータの変化から、温度の関数として前記物質の前記曇り点及び/又は前記透明点を求めるようにプログラムされている、制御装置と、
    を備える、システム。
  2. 前記a)は、前記物質が前記溶媒系中に実質的に溶解するレベルまで温度を上げること、及び前記b)の前に前記光学パラメータを較正することを含む、請求項1に記載のシステム。
  3. 前記a)は、温度を周期的に変化させることを含み、該周期的に変化させることは、少なくとも前記較正が行われた温度よりも低い温度に及ぶ温度範囲にわたって行われる、請求項1又は2に記載のシステム。
  4. 前記c)は、
    測定した光学パラメータデータを平滑化すること、
    前記測定し、平滑化した光学パラメータデータの差分をとること、
    前記測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータデータにおけるピークを検出すること、及び
    正のピークを候補となる透明点の遷移と関連付け、且つ負のピークを候補となる曇り点の遷移と関連付けること、
    を含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のシステム。
  5. 前記平滑化すること及び前記差分をとることは、ガウス平滑化微分フィルタによって行われる、請求項4に記載のシステム。
  6. 前記平滑化すること及び前記差分をとることは、サビツキー・ゴーレイ平滑化微分フィルタ(Savitzky-Golay smoothing derivative filter)によって行われる、請求項4に記載のシステム。
  7. 前記測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータデータにおけるピークを検出することは、正の方向又は負の方向に所定の閾値を超える、測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータ信号の部分を見つけること、及び該測定し、平滑化した光学パラメータ信号の2次微分の符号が変わる点を見つけるように、前記信号の特定される部分を探すことを含む、請求項4〜6のいずれか1項に記載のシステム。
  8. 前記c)は、
    ゼロ交差せずに、正の値又は負の値の長期にわたるシーケンスを有する、前記測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータ信号の部分を検出すること、及び、
    正のシーケンスを候補となる透明点の遷移と、且つ負のシーケンスを候補となる曇り点の遷移と関連付けること、
    を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載のシステム。
  9. 前記c)は、
    数値積分法により、正の方向又は負の方向に所定の閾値を超える信号の部分未満の領域を見つけること、
    前記領域が所定レベルを超えているかどうかを判定すること、及び、
    正のシーケンスを候補となる透明点の遷移と、且つ負のシーケンスを候補となる曇り点の遷移と関連付けること、
    を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステム。
  10. 前記c)は、
    非合理的な、候補となる遷移を除外する規則を適用することをさらに含む、請求項1〜9のいずれか1項に記載のシステム。
  11. 前記規則は、
    所定の時間許容差よりも互いに近い、候補となる遷移を除外すること、
    所定の時間許容差よりも前記信号の始まり又は終わりに近い候補となる遷移を除外すること、及び、
    関連する温度変化が間違った方向に起こる、候補となる遷移を除外すること、
    のうちの少なくとも1つを含む、請求項10に記載のシステム。
  12. 前記c)は、
    残りの遷移に関連する曇り点又は透明点の温度を求めることをさらに含む、請求項10又は11に記載のシステム。
  13. 請求項4に記載のステップを行う前に、誤りのデータ点はデータ点除外規則により除外される、請求項4〜12のいずれか1項に記載のシステム。
  14. 前記光学パラメータは、前記試料の光(optical light)の透過率及び散乱のうちの少なくとも一方を含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステム。
  15. 前記光学パラメータを較正することは、光電源の光出力を、公称最大出力が検出器により受信される、出力レベルに達するまで変化させることを含み、前記検出器は、前記試料を通って伝達されるか又は該試料によって散乱される前記光出力の残りを検出する、請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステム。
  16. 複数の試料を保持する複数のホルダと、少なくとも2つの試料に関して並行に前記a)〜c)を行うように構成される前記制御装置とを備える、請求項1〜15のいずれか1項に記載のシステム。
  17. 前記制御装置は、関数を、
    2つ以上の物質の濃度で測定される曇り点の温度及び濃度のデータ、及び、
    2つ以上の物質の濃度で測定される透明点の温度及び濃度のデータ、
    に当てはめるようにさらにプログラムされている、請求項1〜16のいずれか1項に記載のシステム。
  18. 当てはめられ得る前記関数は、一次関数、多項式関数若しくは指数関数、又はファントホッフの式のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載のシステム。
  19. 前記制御装置は、複数の異なる関数のタイプを当てはめ、且つ前記測定されたデータを表すのに最適な曲線を選択するようにさらにプログラムされている、請求項17又は18に記載のシステム。
  20. 前記制御装置は、測定を行い、且つ実験プログラムに対する適当な修正を行う一方で、データ分析並びに曇り点及び透明点の遷移の割り当てをリアルタイムで行うようにさらにプログラムされている、請求項1〜19のいずれか1項に記載のシステム。
  21. 前記実験プログラムに対する適当な修正を行うことは、
    反復測定から測定されたデータの正確性を判断して、正確性が低い場合にさらに実験を反復すること、及び、
    記録されたデータから逸脱する測定値がある場合、同じ条件で前記実験を反復するか、又はさらなる分析の間は前記測定値を考慮しないこと、によって測定をチェックすること、
    のうちの少なくとも一方を含む、請求項20に記載のシステム。
  22. 前記実験プログラムに対する適当な修正を行うことは、
    実験の実行中に1つ又は複数の試料の最高溶解温度及び最低結晶化温度を求め、且つその後の温度周期において不必要な温度変化をなくすように温度プログラムを調整すること、
    連続する温度周期において加熱速度を下げることにより適した最速の加熱速度を求め、且つオンライン分析により検出されるような前記透明点の温度が或る所定の許容差内で止まると前記プログラムを停止すること、
    無限に低い冷却速度における曇り点を、連続する温度周期における冷却速度を下げることによって求め、実験的に求められた曇り点の温度及び各周期後にオンライン分析によって求められた冷却速度データに曲線を当てはめ、前記曇り点の温度から無限に低い冷却速度を推定し、無限に低い冷却速度における予測誤差を推定し、且つ該予測誤差が或る所定の許容差内にあるかどうかを判定し、無限に低い冷却速度における前記曇り点が誤差許容差内にあると推定することができると前記プログラムを停止すること、及び、
    当てはめられた関数がどの程度よく当てはめられているかを判断し、いくつかの前記実験を反復するか、又は他の濃度等を指示し、関数をより確実に当てはめることができるようにさらなるデータ点を得ること
    のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項20又は21に記載のシステム。
  23. 溶媒系中の物質の曇り点及び/又は透明点を求める方法であって、
    a)一定量の物質及び一定量の溶媒系を含む試料を用意すること、
    b)前記試料の温度を変えること、
    c)前記試料の温度に関連して該試料の光学パラメータを測定すること、及び、
    d)前記試料の前記光学パラメータの変化から、温度の関数として前記物質の前記曇り点及び/又は前記透明点を求めること、
    を含む、方法。
  24. 前記b)は、前記物質が前記溶媒系中に実質的に溶解するレベルまで温度を上げることを含み、前記方法は、前記b)の前に前記光学パラメータを較正することを含む、請求項23に記載の方法。
  25. 前記b)は、温度を周期的に変化させることを含み、該周期的に変化させることは、少なくとも前記較正が行われた温度よりも低い温度に及ぶ温度範囲にわたって行われる、請求項23又は24に記載の方法。
  26. 前記d)は、
    測定した光学パラメータデータを平滑化すること、
    前記測定し、平滑化した光学パラメータデータの差分をとること、
    前記測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータデータにおけるピークを検出すること、及び、
    正のピークを候補となる透明点の遷移と、且つ負のピークを候補となる曇り点の遷移と関連付けること、
    を含む、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
  27. 前記平滑化すること及び前記差分をとることは、ガウス平滑化微分フィルタによって行われる、請求項26に記載の方法。
  28. 前記平滑化すること及び前記差分をとることは、サビツキー・ゴーレイ平滑化微分フィルタによって行われる、請求項26に記載の方法。
  29. 前記測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータデータにおけるピークを検出することは、正の方向又は負の方向に所定の閾値を超える、測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータ信号の部分を見つけること、及び該測定し、平滑化した光学パラメータ信号の2次微分の符号が変わる点を見つけるように、前記信号の特定される部分を探すことを含む、請求項26〜28のいずれか1項に記載の方法。
  30. 前記d)は、
    ゼロ交差せずに、正の値又は負の値の長期にわたるシーケンスを有する、前記測定し、平滑化し、差分をとった光学パラメータ信号の部分を検出すること、及び、
    正のシーケンスを候補となる透明点の遷移と、且つ負のシーケンスを候補となる曇り点の遷移と関連付けること
    を含む、請求項23〜29のいずれか1項に記載の方法。
  31. 前記sc)は、
    数値積分法により、正の方向又は負の方向に所定の閾値を超える信号の部分未満の領域を見つけること、
    前記領域が所定レベルを超えるかどうかを判定すること、及び、
    正のシーケンスを候補となる透明点の遷移と、且つ負のシーケンスを候補となる曇り点の遷移と関連付けること、
    を含む、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
  32. 前記d)は、
    非合理的な、候補となる遷移を除外する規則を適用することを含む、請求項23〜31のいずれか1項に記載の方法。
  33. 前記規則は、
    所定の時間許容差よりも互いに近い、候補となる遷移を除外すること、
    所定の時間許容差よりも前記信号の始まり又は終わりに近い候補となる遷移を除外すること、及び、
    関連する温度変化が間違った方向に起こる、候補となる遷移を除外すること
    のうちの少なくとも1つを含む、請求項32に記載の方法。
  34. 前記c)は、残りの遷移に関連する曇り点又は透明点の温度を求めることを含む、請求項32又は33に記載の方法。
  35. 請求項26に記載のステップを行う前に、誤りのデータ点はデータ点除外規則により除外される、請求項26〜34のいずれか1項に記載の方法。
  36. 前記光学パラメータは、前記試料の光の透過率及び散乱のうちの少なくとも一方を含む、請求項23〜35のいずれか1項に記載の方法。
  37. 前記光学パラメータを較正することは、光エネルギの光源の光出力を、公称最大出力が検出器により受け取られる、出力レベルに達するまで変化させることを含み、前記検出器は、前記試料を通って伝達されるか又は該試料によって散乱される前記光出力の残りを検出する、請求項23〜36のいずれか1項に記載の方法。
  38. 複数の試料を保持する複数のホルダが適用され、前記制御装置は、少なくとも2つの試料に関して並行に前記a)〜d)を行うように構成される、請求項23〜37のいずれか1項に記載の方法。
  39. 関数を、
    2つ以上の物質の濃度で測定される曇り点の温度及び濃度のデータ、及び、
    2つ以上の物質の濃度で測定される透明点の温度及び濃度のデータに当てはめることをさらに含む、請求項23〜38のいずれか1項に記載の方法。
  40. 当てはめられ得る前記関数は、一次関数、多項式関数若しくは指数関数、又はファントホッフの式のうちの少なくとも1つを含む、請求項39に記載の方法。
  41. 複数の異なる関数のタイプを当てはめること、及び前記測定されたデータを表すのに最適な曲線を選択することをさらに含む、請求項39又は40に記載の方法。
  42. 測定を行い、且つ実験プログラムに対する適当な修正を行う一方で、データ分析並びに曇り点及び透明点の遷移の割り当てをリアルタイムで行うことをさらに含む、請求項23〜41のいずれか1項に記載の方法。
  43. 前記実験プログラムに対する適当な修正を行うことは、
    反復測定から測定されたデータの正確性を判断して、正確性が低い場合にさらに実験を反復すること、及び、
    同じ条件で記録されたデータから逸脱する測定値を検査することであって、前記実験を反復するか、又はさらなる分析の間は前記測定値を考慮しないこと、
    のうちの少なくとも一方を含む、請求項42に記載の方法。
  44. 前記実験プログラムに対する適当な修正を行うことは、
    実験の実行中に1つ又は複数の試料の最高溶解温度及び最低結晶化温度を求め、且つその後の温度周期において不必要な温度変化をなくすように温度プログラムを調整すること、
    連続する温度周期において加熱速度を下げることにより適した最速の加熱速度を求め、且つオンライン分析により検出されるような前記透明点の温度が或る所定の許容差内で止まると前記プログラムを停止すること、
    無限に低い冷却速度における曇り点を、連続する温度周期における冷却速度を下げることによって求め、実験的に求められた曇り点の温度及び各周期後にオンライン分析によって求められた冷却速度データに曲線を当てはめ、前記曇り点の温度から非常に低い冷却速度を推定し、無限に低い冷却速度における予測誤差を推定し、且つ該予測誤差が或る所定の許容差内にあるかどうかを判定し、無限に低い冷却速度における前記曇り点が誤差許容差内にあると推定することができると前記プログラムを停止すること、及び、
    当てはめられた関数がどの程度よく当てはめられているかを判断し、いくつかの前記実験を反復するか、又は他の濃度等を指示し、関数をより確実に当てはめることができるようにさらなるデータ点を得ること、
    のうちの少なくとも1つをさらに含む、請求項42又は43に記載の方法。
  45. ステップa)〜ステップd)は、少なくとも2つの試料に関して並行して行われる、請求項23〜44のいずれか1項に記載の方法。
  46. システムの制御装置にロードされると、請求項23〜45のいずれか1項に記載の方法を行うプログラム命令を含むソフトウェアプログラムであって、前記システムは、
    一定量の物質及び一定量の流体を含む試料を保持するホルダと、
    前記試料の温度を変える温度調節器と、
    前記試料の光学パラメータを測定する光学測定装置と、
    少なくとも前記温度調節器及び前記光学測定装置を制御する制御装置と、
    を備える、ソフトウェアプログラム。
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