JP2009502980A - 癌性疾患修飾抗体 - Google Patents

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Abstract

本発明は、スクリーニングの新規パラダイムを使用する患者の癌性疾患修飾抗体を産生する方法に関する。癌細胞の細胞障害性を終点として使用して抗癌抗体を分離することによって、この方法は、治療及び診断目的での抗癌抗体の産生を可能にする。これらの抗体は、癌の病期分類及び診断の助けとして使用することができ、原発性腫瘍及び腫瘍転移を治療するために使用できる。抗癌抗体を、毒素、酵素、放射性化合物及び血行性細胞と結合することができる。
【選択図】 図4

Description

(関連出願の参照)
本出願は、2005年8月2日出願の仮出願60/705,221の出願日の利益を請求し、その内容は参照として本明細書に組み込まれる。
本発明は、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)の単離及び産生、並びに1つ以上の化学療法剤と場合により組み合わされた、これらのCDMABの治療及び診断過程における使用に関する。本発明は、更に、本発明のCDMABを利用する結合アッセイに関する。
癌治療としてのモノクローナル抗体:癌を示す個人はそれぞれ特有であり、個人の独自性と同じように他の癌と異なる癌を有する。それにも関わらず、現行の治療は、同じ種類で同じ段階の癌を有する全ての患者を、同じように治療する。これらの患者の少なくとも30パーセントは、第一次治療に失敗し、したがって、更なる一連の治療をもたらし、治療が失敗し、転移し、最終的には死亡する可能性が増大する。治療の優れた手法は、特定の個人における治療の特別仕様である。それ自体特別仕様につながる唯一の現行の治療は、外科手術である。化学療法及び放射線治療は、患者に合わせることができず、外科手術それ自体は、ほとんどの場合において、治癒を生じるには不十分である。
モノクローナル抗体の出現によって、特別仕様の治療の方法を開発する可能性がより現実的になり、それは、それぞれの抗体を単一のエピトープに向かわせることができるからである。更に、特定の個人の腫瘍を独自に定義する一団のエピトープに方向付けられる、抗体の組み合わせを生じることが可能である。
癌性と正常な細胞との有意な差は、癌性細胞が形質移入細胞に特異性のある抗原を含有することであるという認識を持って、科学界は、癌抗原に特異的に結合することによって、形質移入細胞を特異的に標的にするようにモノクローナル抗体を設計することができると長い間考えてきて、それ故、モノクローナル抗体は、癌細胞を排除する「魔法の弾丸」として役立つことができるという信念を生み出した。しかし、癌の全ての場合に役立つことができる単一のモノクローナル抗体はないこと、及びモノクローナル抗体は、標的癌治療としての分類として展開できることが、現在広く認識されている。本発明の開示された教示に従って単離されたモノクローナル抗体は、例えば腫瘍量を低減することにより患者の利益になる方法で、癌性疾患の過程を修飾することが示されており、癌性疾患修飾抗体(CDMAB)又は「抗癌」抗体として本明細書でさまざまに参照される。
今のところ、癌患者は、一般に治療の選択肢がほとんどない。癌治療に対する厳格に管理された手法は、世界的な生存率及び罹患率において改善をもたらした。しかし、特定の個人に対しては、これらの改善された統計は、彼らの個人的な状態における改善と必ずしも相関関係がない。
したがって、開業医がそれぞれの腫瘍を同じコホートにおける他の患者とは無関係に治療することができる方法論が提案される場合、それは、ただ1人のために適合された特有の治療手法を許容することになる。理想的にはそのような治療過程が治癒の比率を増加し、より良好な成果を生じるのであれば、それは、長年にわたる切実な要求を満たすであろう。
歴史的に、ポリクローナル抗体の使用は、ヒトの癌治療では限られた成果を伴って使用されてきた。リンパ腫及び白血病は、ヒト血漿で治療されてきたが、長期間の寛解又は反応はほとんどなかった。更に、化学療法と比較して、再現性が欠如し、追加的な利益がなかった。乳癌、黒色腫及び腎細胞癌のような固形腫瘍も、ヒト血液、チンパンジー血清、ヒト血漿及びウマ血清により治療され、同様に予測不能で効果のない結果を得た。
固形腫瘍においてモノクローナル抗体の多くの診療試験が行われてきた。1980年代には、特定の抗原に対する抗体を使用するか、又は組織選択性に基づいて、ヒト乳癌において少なくとも4回の臨床試験が行われ、少なくとも47人の患者のうち1人しか反応しなかった。1998年になって、ヒト化抗Her2/neu抗体(Herceptin(登録商標))をシスプラチンと組み合わせて使用した臨床試験が成功した。この試験では、37人の患者で反応を評価し、約四分の一が部分的反応率を有し、さらに四分の一が僅かな又は安定した進行を有した。反応者の進行時間の中央値は、8.4か月であり、反応持続時間の中央値は5.3か月であった。
Herceptin(登録商標)は、Taxol(登録商標)と組み合わせた第一次使用として1998年に認可された。臨床研究の結果は、Taxol(登録商標)単独を摂取した群(3.0か月)と比較して、抗体治療+Taxol(登録商標)を摂取した群(6.9か月)で疾患が進行した時間の中央値が増加したことを示した。生存の中央値で僅かな増加もあり、Herceptin+Taxol(登録商標)の治療類群対Taxol(登録商標)単独の治療群が、22か月対18か月であった。加えて、Taxol(登録商標)単独と比較した、抗体+Taxol(登録商標)組み合わせ群における完全(8パーセント対2パーセント)及び部分的反応者(34パーセント対15パーセント)の両方で数が増加した。しかし、Herceptin(登録商標)及びTaxol(登録商標)による治療は、Taxol(登録商標)単独の治療と比較して、心毒性の高い発生率をもたらした(それぞれ、13パーセント対1パーセント)。また、Herceptin(登録商標)治療は、現在知られている機能又は生物学的に重要なリガンドを持たないレセプターである、ヒト上皮増殖因子レセプター2(Her2/neu)を過剰発現している(免疫組織化学(IHC)分析により決定された)患者にしか有効ではなく、転移性乳癌を有する患者のおよそ25パーセントであった。したがって、乳癌の患者において、依然として満たされていない大きな要求が存在する。Herceptin(登録商標)治療により利益を受けることができる患者でも、依然として化学療法を必要とし、したがって、依然として、少なくともある程度は、この種類の治療の副作用に対処しなければならない。
結腸直腸癌を調査する臨床試験は、糖タンパク質標的と糖脂質標的の両方に対する抗体に関わる。腺癌にいくらかの特異性を有する17−1Aのような抗体では、60人の患者で第2相臨床試験を行い、部分的な反応を有する患者が1人だけてあった。別の試験では、17−1Aの使用は、追加のシクロホスファミドを使用したプロトコールにおいて、52人の患者のうち、完全寛解が1人及び僅かな反応が2人だけであった。現在まで、17−1Aの第III相臨床試験は、第III期結腸癌の補助療法として、改善された効能を実証していない。最初に画像化のために認可されたヒト化ネズミモノクローナル抗体の使用も、腫瘍退縮を生じなかった。
最近になって、モノクローナル抗体の使用による結腸直腸癌臨床研究において肯定的な結果が得られるようになった。2004年には、ERBITUX(登録商標)が、イリノテカンに基づく化学療法に難治性である、EGFR発現転移性結腸直腸癌の患者における第二次治療のために認可された。2群第II相臨床試験と単独群研究の両方の結果は、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)が、それぞれ4.1か月と6.5か月の疾患進行時間の中央値で、それぞれ23パーセントと15パーセントの反応率を有したことを示した。同じ2群第II相臨床試験及び別の単独群研究の結果は、ERBITUX(登録商標)単独での治療が、それぞれ1.5か月と4.2か月の疾患進行時間の中央値で、それぞれ11パーセントと9パーセントの反応率をもたらしたことを示した。
したがって、スイスと米国の両方において、イリノテカンと組み合わせたERBITUX(登録商標)の治療が、そして米国において、ERBITUX(登録商標)単独の治療が、第一次イリノテカン療法が失敗した結腸癌患者の第二次治療として認可された。したがって、Herceptin(登録商標)と同様に、スイスにおける治療は、モノクローナル抗体と化学療法の組み合わせとしてのみ認可されている。加えて、スイスと米国の両方における治療は、患者にとって第二次療法としてのみ認可されている。また2004年には、AVASTIN(登録商標)が、転移性結腸直腸癌の第一次治療として、静脈内5−フルオロウラシルに基づく化学療法と組み合わせての使用が認可された。第III相臨床研究の結果は、AVASTIN(登録商標)+5−フルオロウラシルで治療した患者の生存の中央値が、5−フルオロウラシル単独で治療した患者と比較して延長したことを実証した(それぞれ、20か月対16か月)。しかし、この場合もHerceptin(登録商標)及びERBITUX(登録商標)と同様に、治療は、モノクローナル抗体と化学路療法の組み合わせとしてのみ認可されている。
また、肺、脳、卵巣、膵臓、前立腺及び胃癌において乏しい結果を生じ続けている。非小型細胞肺ガンの最近の最も有望な結果は、治療が、化学療法剤TAXOTERE(登録商標)と組み合わせた細胞死滅薬ドキソルビシンと結合するモノクローナル抗体(SGN−15;dox−BR96、抗Sialyl−LeX)を含む、第II相臨床試験からもたらされた。TAXOTERE(登録商標)は、肺癌の第二次治療のために唯一FDAにより認可された化学療法である。初期データは、TAXOTERE(登録商標)単独と比較して全体的に改善された生存を示す。研究のために動員された62人の患者のうち、三分の二は、SGN−15をTAXOTERE(登録商標)と組み合わせて摂取し、一方、残りの三分の一は、TAXOTERE(登録商標)単独を摂取した。TAXOTERE(登録商標)と組み合わせたSGN−15を摂取した患者では、全体的な生存の中央値は、TAXOTERE(登録商標)単独を摂取した患者の5.9か月と比較して、7.3か月であった。1年と18か月の全体的な生存は、TAXOTERE(登録商標)単独を摂取した患者でのそれぞれ24パーセント及び8パーセントと比較して、SGN−15+TAXOTERE(登録商標)を摂取した患者では、それぞれ29パーセント及び18パーセントであった。更なる臨床試験が計画されている。
前臨床では、黒色腫におけるモノクローナル抗体の使用では、いくらかの限定された成果が得られている。これらの抗体のうちで臨床試験に到達したものはほとんどなく、現在まで、第III相診療試験で承認されたもの又は好ましい結果を実証したものはない。
疾患を治療する新薬の発見は、疾患の病原に明白に寄与している既知の遺伝子30、000個の産物のうちから、関連する標的を同定することの欠如によって妨げられている。腫瘍学研究において、潜在的な薬剤標的は、多くの場合、単に腫瘍細胞で過剰発現しているという事実によって選択される。このように同定された標的は、次に多数の化合物との相互作用のためにスクリーニングされる。潜在的な抗体療法において、これらの候補化合物は、通常、Kohler及びMilsteinにより定められた基本的な原則(1975,Nature,256,495−497,Kohler and Milstein)に従ったモノクローナル抗体生成の伝統的な方法によって誘導される。脾臓細胞を、抗原(例えば、全細胞、細胞分画、精製抗原)により免疫化したマウスから収集し、不死化ハイブリドーマパートナーと融合する。得られたハイブリドーマを、標的に最も熱心に結合する抗体の分泌のためにスクリーニングし、選択する。Herceptin(登録商標)及びRITUXIMAを含む、癌細胞に向けられる多くの治療用及び診断用抗体が、これらの方法を使用して産生され、その親和性に基づいて選択されてきた。この戦略の欠点には、2つの部分がある。第1には、治療用又は診断用抗体結合に適切な標的の選択は、組織特異的発癌性経過を取り巻く知識の不足によって、そしてその結果として得られる、それによりこれらの標的が同定される単純な方法、例えば過剰発現による選択によって、制限される。第2には、最大の親和性を持ってレセプターに結合する薬剤分子が、通常、シグナルを開始する又は阻害する最高の確率を有するという前提は、必ずしもそうであるとは限らない場合がある。
乳癌及び結腸癌の治療でいくらかの進展があるにもかかわらず、有効な抗体療法の確認及び開発は、単独の作用物質又は同時治療のいずれにおいても、全ての種類の癌では不十分である。
従来の特許:
特許文献1は、患者の腫瘍からの細胞を、患者の細胞又は組織からクローン化できるMHC遺伝子により形質移入する方法を開示する。次にこれらの形質移入細胞を使用して患者に予防接種する。
特許文献2は、哺乳動物の新生細胞及び正常細胞の内部細胞成分に特異性があるが、外部成分にはないモノクローナル抗体を得る工程、モノクローナル抗体を標識する工程、標識抗体と、新生細胞を死滅させる治療を受けた動物の組織とを接触させる工程、及び縮退新生細胞の内部細胞成分への標識抗体の結合を測定することによって、治療の効果を決定する工程を含む方法を開示する。ヒト細胞内抗原へ向かう抗体を調製するためには、特許権所有者は、悪性細胞がそのような抗原の都合のよい供給源を表すことを認識する。
特許文献3は、新規抗体及びその製造方法を提供する。特に、特許は、ヒト腫瘍、例えば、結腸及び肺の腫瘍に関連するタンパク質抗原に強く結合するが、正常な細胞にかなり低い程度で結合する特性を有するモノクローナル抗体の形成を教示する。
特許文献4は、ヒト癌患者から腫瘍組織を外科的に除去すること、腫瘍組織を処理して腫瘍細胞を得ること、生存しているが非腫瘍形成性である腫瘍細胞を照射すること、これらの細胞を使用して、患者のために、原発性腫瘍の再発を抑制することができ、同時に転位を抑制することができるワクチンを調製することを含む癌治療の方法を提供する。この特許は、腫瘍細胞の表面抗原に反応性があるモノクローナル抗体の開発を教示する。第4欄45行目(以下参照)に記載されているように、特許権所有者は、ヒト新生物において活性な特異的免疫療法を発現するモノクローナル抗体の開発に自発性腫瘍細胞を利用する。
特許文献5は、ヒト癌腫の特性を持つが、起源の上皮細胞に依存しない糖タンパク質抗原を教示する。
特許文献6は、Her2発現細胞のアポトーシスを誘発する抗Her2抗体、抗体を産生するハイブリドーマ細胞株、抗体を使用する癌治療の方法、及び前記抗体を含む医薬組成物を記述する。
特許文献7は、腫瘍及び非腫瘍組織供給源から精製された、ムチン抗原に対するモノクローナル抗体を産生するための新規ハイブリドーマ細胞株を記載する。
特許文献8は、所望の抗原に特異的な抗体を産生するヒトリンパ球を生成する方法、モノクローナル抗体を産生する方法、並びにこの方法により産生されるモノクローナル抗体を記述する。この特許は、特に、癌の診断及び治療に有用な抗HDヒトモノクローナル抗体の産生について記述している。
特許文献9は、ヒト癌腫細胞に反応性のある、抗体、抗体フラグメント、抗体複合体及び単鎖免疫毒素に関する。これらの抗体が機能する機構には2つの部分があり、それは、分子が、ヒト癌腫の表面に存在する細胞膜抗原と反応すること、更には、抗体が、癌腫細胞内に取り入れられ、続いて結合する能力を有することであり、抗体−薬剤及び抗体−毒素複合体を形成するのに特に有用である。非修飾形態において、抗体は、特定の濃度で細胞毒性の特性も表す。
特許文献10は、腫瘍の治療及び予防のための自己抗体の使用を開示する。しかし、この抗体は、老齢哺乳動物からの抗核自己抗体である。この場合、自己抗体は、免疫系で見出される天然抗体の一つの種類であると言われている。自己抗体が「老齢哺乳動物」からのものであるため、自己抗体は、実際に治療を受けている患者からのものであるという必要条件がない。加えて、この特許は、老齢哺乳動物からの天然及びモノクローナル抗核自己抗体、並びにモノクローナル抗核自己抗体を産生するハイブリドーマ細胞株を開示する。
米国特許第5,750,102号 米国特許第4,861,581号 米国特許第5,171,665号 米国特許第5,484,596号 米国特許第5,693,763号 米国特許第5,783,186号 米国特許第5,849,876号 米国特許第5,869,268号 米国特許第5,869,045号 米国特許第5,780,033号
本出願は、癌性疾患修飾モノクローナル抗体をコードするハイブリドーマ細胞株を単離することについて米国特許第6,180,357号特許で教示されている、患者特異性抗癌抗体を産生する方法論を利用する。これらの抗体は、1つの腫瘍のために特別に作ることができ、したがって、癌治療を特別仕様にすることが可能である。本出願の文脈内で、細胞死滅特性(細胞毒性)又は細胞増殖阻害特性(細胞増殖抑制性)のいずれかを有する抗癌抗体を、本明細書以降では、細胞毒性と呼ぶ。これらの抗体は、癌の病期分類及び診断の助けとして使用することができ、腫瘍転移を治療するために使用できる。これらの抗体を、予防処置の方法で癌予防のために使用することもできる。伝統的な薬剤発見パラダイムに従って生成された抗体と異なり、本方法のようにして生成された抗体は、以前には悪性組織の増殖及び/又は生存と一体として示されていない分子及び経路を標的にすることができる。更に、これらの抗体の結合親和性は、より強力な親和性相互作用に従わない場合がある細胞毒性事象の開始のための要件に適している。また、標準的な化学療法モダリティー、例えば放射性核種と、本発明のCDMABとを結合し、それによって、前記化学療法剤の使用に焦点を当てることは、本発明の範囲内である。CDMABは、毒素、細胞毒性部分、酵素、例えばビオチン結合酵素又は血行性細胞と結合することもでき、それによって、抗体複合体を形成することができる。
個人に合わせた抗癌治療の展望は、患者を管理する方法に変化をもたらす。起こりそうな臨床シナリオは、診断時に腫瘍試料を得て、保存するというものである。この試料から、腫瘍を、既に存在している癌性疾患修飾抗体のパネルによって分類することができる。患者は、都合よく病期分類されるが、患者を更に分類するために、利用可能な抗体を使用することができる。患者を、現存の抗体により直ぐに治療することができ、腫瘍に特異的な抗体のパネルを、本明細書で概説された方法を使用する、又は本明細書で開示されたスクリーニング方法と併せてファージディスプレーライブラリーを使用する、のいずれかよって産生することができる。生成された抗体は、他の腫瘍が、治療されているものと同じエピトープのうちの幾つかを持ちうる可能性があるので、全て抗癌抗体のライブラリーに加えられる。本発明の方法に従って産生された抗体は、これらの抗体に結合する癌を有する何人もの患者において、癌性疾患を治療するのに有用であることができる。
抗癌抗体に加えて、患者は、治療の多様なレジメンの一部として現行の推奨される治療を受けることを選ぶことができる。本発明の方法論により単離された抗体が非癌性細胞に対して相対的に非毒性であるという事実によって、高用量の抗体の組み合わせを単独で、又は従来の治療と一緒に使用することを可能にする。高い治療指数は、治療耐性細胞の発生の可能性を減少するはずである短期間での再治療も可能にする。
患者が治療の初期過程に難治性であるか、又は転移が発生する場合、腫瘍に特異的な抗体を生成する方法を再治療のために繰り返すことができる。更に、抗癌抗体を、患者から得た赤血球と結合して、転移の治療のために再注入することができる。転移性癌に対する有効な治療はほとんどなく、転移は、通常、死亡をもたらす不良転帰の前兆である。しかし、転移性癌は、通常、十分に血管新生化されており、赤血球による抗癌抗体の送達は、腫瘍部位へ抗体を集中させる効果を有することができる。転移の前でさえも、ほとんどの癌細胞は、その生存を宿主の血液供給に依存し、赤血球と結合した抗癌抗体は、原位置の腫瘍に対しても有効であることができる。あるいは、抗体を、他の血行性細胞、例えば、リンパ球、マクロファージ、単球、ナチュラルキラー細胞などと結合させることができる。
5種類の抗体があり、それぞれその重鎖により付与される機能と関連している。一般に、裸抗体による癌細胞死滅は、抗体依存性細胞障害活性又は補体依存性細胞障害性のいずれかによって仲介されると考えられる。例えば、ネズミIgM及びIgG2a抗体は、補体系のC−1成分の結合によりヒト補体を活性化することができ、それによって、腫瘍溶解をもたらすことができる、補体活性化の古典的経路を活性化することができる。ヒト抗体では、最も効果的な補体活性抗体は、一般にIgM及びIgG1である。IgG2a及びIgG3アイソタイプのネズミ抗体は、単球、マクロファージ、顆粒球及び特定のリンパ球による細胞死滅をもたらすFcレセプターを有する細胞毒性細胞を動員するのに有効である。ヒト抗体のIgG1とIgG3の両方のアイソタイプはADCCを仲介する。
抗体仲介癌死滅の別の可能な機構は、細胞膜及びその関連する糖タンパク質又は糖脂質における多様な化学的結合の加水分解を触媒するように機能する抗体、いわゆる触媒抗体の使用を介することでありうる。
抗体仲介癌細胞死滅について3つの追加的な機構がある。第1は、癌細胞に存在する推定抗原に対して免疫反応を生じるように体を誘導する、ワクチンとしての抗体の使用である。第2は、増殖レセプターを標的にし、その機能を妨害する、又は機能が効果的に失われるようにそのレセプターを下方制御する、抗体の使用である。第3は、TRAIL R1若しくはTRAIL R2のような死レセプター又はアルファVベータ3などのようなインテグリン分子の連結のような、直接の細胞死をもたらしうる細胞表面部分の直接連結に対するそのような抗体の効果である。
制癌剤の臨床的有用性は、患者の許容されるリスクプロフィール下での薬剤の利益に基づく。癌療法において、生存は、一般に最も追求される利益であるが、延命に加えて他の十分に認識されている利益が多数存在する。治療が生存に有害な効果を与えないこれらの他の利益には、症状緩和、有害事象に対する保護、再発するまでの時間又は無病生存期間の延長、及び進行するまでの時間の延長が含まれる。これらの基準は、一般に受け入れられており、米国食品医薬品局(FDA)のような規制機関は、これらの利益を生じる薬剤を認可している(Hirschfeld et al.Critical Reviews in Oncology/Hematolgy 42:137−143 2002)。これらの基準に加えて、これらの種類の利益を予感することができる他の終点があることは、十分に認識されている。部分的には、米国FDAにより許可された加速承認方法は、患者の利益を予測すると思われる代用薬があることを認めている。年末(2003年)には、この方法により16種の薬剤が認可され、それらのうち4種が完全に承認され、すなわち、追跡調査が、代用薬終点により予測された直接的な患者の利益を実証した。固形腫瘍における薬剤効果を決定する一つの重要な終点は、処置に対する反応を測定することにより腫瘍量を評価することである(Therasse et al.Journal of the National Cancer Institute 92(3):205−216 2000)。そのような評価の臨床基準(RECIST基準)は、国際的な癌専門家のグループであるResponse Evaluation Criteria in Solid Tumors Working Groupにより公表されてきた。適切な対照群と比較して、RECIST基準に従った他覚的反応により示された、腫瘍量に対する効果を実証した薬剤は、最終的に、直接的な患者利益を生じる傾向がある。前臨床設定において、腫瘍量は、一般に評価及び文書化に対してより直接的である。そこでは、前臨床試験を臨床設定に転換することができるので、前臨床モデルにおいて生存期間の延長を生じる薬剤は、最大の予測臨床的有用性を有する。臨床治療に陽性反応を生じることと同様に、前臨床設定において腫瘍量を低減する薬剤は、疾患に対して著しく直接的な影響を有することもできる。生存期間の延長が制癌剤治療で最も追求される臨床転帰であるが、臨床的有用性を有する他の利益が存在し、疾患進行の遅延、延長した生存期間又はその両方に相関しうる腫瘍量の低減が、直接的な利益をもたらし、臨床的な影響を与えることもできることが明白である(Eckhardt et al.Developmental Therapeutics:Successes and Failures of Clinical Trial Designs of Targeted Compounds;ASCO Educational Book, 39th Annual Meeting,2003,pages 209−219)。
本発明は、その効果が細胞毒性アッセイにより及びヒト癌の動物モデルにおいて同定される、AR59A935.6の開発及び使用を記載する。本発明は、標的分子に存在するエピトープ又は複数のエピトープに特異的に結合する試薬、また、裸抗体として、悪性腫瘍細胞に対してインビトロ細胞毒性の特性を有するが、正常な細胞に対してはない試薬、また、裸抗体として、腫瘍増殖の阻害を直接仲介する試薬を記載する。更なる進歩は、腫瘍増殖の阻害及び癌治療の他の肯定的な終点を達成するために、同族抗原マーカーを発現する腫瘍を標的にするこのような抗癌抗体の使用である。
これらの全てにおいて、本発明は、投与されたときに哺乳動物において抗原を発現する癌の腫瘍量を低減することができる、治療剤の標的としての、AR59A935.6抗原の使用を教示する。本発明は、また、哺乳動物において抗原を発現する癌の腫瘍量を低減するためにそれらの抗原を標的にする、CDMAB(AR59A935.6)、これらの誘導体、その抗原結合フラグメント、及びその細胞障害活性誘発リガンドの使用を教示する。更に、本発明は、癌性細胞においてAR59A935.6抗原を検出することの使用も教示し、これは、この抗原を発現する腫瘍を持つ哺乳動物の診断、治療予測及び予後のために有用であることができる。
したがって、ハイブリドーマ細胞株、並びに対応する単離モノクローナル抗体及び前記ハイブリドーマ細胞株がコードされているその抗原結合フラグメントを単離するために、特定の個人由来の癌性細胞又は1つ以上の特定の癌細胞株に対して生じた癌性疾患修飾抗体(CDMAB)(ここでCDMABは、癌細胞に関しては細胞毒性があるが、同時に、非癌性細胞には相対的に非毒性である)を産生する方法を利用することが、本発明の目的である。
癌性疾患修飾抗体、並びにそのリガンド及び抗原結合フラグメントを教示することが、本発明の追加的な目的である。
その細胞障害性が抗体依存性細胞毒性により仲介される癌性疾患修飾抗体を産生することが、本発明の更なる目的である。
その細胞障害性が補体依存性細胞毒性により仲介される癌性疾患修飾抗体を産生することが、本発明のなお追加的な目的である。
その細胞障害性が細胞の化学的結合の加水分解を触媒する能力の機能である癌性疾患修飾抗体を産生することが、本発明のまた更なる目的である。
本発明のまた更なる目的は、癌の診断、予後及びモニタリングのための結合アッセイに有用である癌性疾患修飾抗体を産生することである。
本発明の他の目的及び利点は、以下の記載によって明らかとなり、例示及び実施例によって、本発明の特定の実施態様が記載される。
(図面の簡単な説明)
図1は、細胞株MDA−MB−231、OVCAR−3、SW1116、Lovo及びCCD−27skに対するハイブリドーマ上澄みの細胞障害性及び結合レベルの率を比較する。
図2は、癌及び正常細胞株へのAR59A935.6及び抗EGFR対照の結合を表す。データを、アイソタイプ対照を越える折り畳みの増加として平均蛍光強度を表して表にまとめる。
図3は、幾つかの癌及び非癌細胞株に対して向けられたAR59A935.6及び抗EGFR抗体の代表的なFACSヒストグラムを含む。
図4は、Lovo結腸癌モデルにおける腫瘍増殖に対するAR59A935.6の効果を示す。縦線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。
図5は、Lovo結腸癌モデルにおける体重に対するAR59A935.6の効果を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。
図6は、DLD−1結腸癌モデルにおける腫瘍増殖に対するAR59A935.6の効果を示す。縦線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。
図7は、DLD−1結腸癌モデルにおける体重に対するAR59A935.6の効果を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。
一般に、以下の語又は語句は、発明の開示、記載、実施例及び請求項で使用される場合に、示された定義を有する。
用語「抗体」は、最も広範囲な意味で使用され、具体的には、例えば単一モノクローナル抗体(アゴニスト、アンタゴニスト及び中和抗体、脱免疫化、ネズミ、キメラ化又はヒト化抗体を含む)、ポリエピトープ的特異性を有する抗体組成物、単鎖抗体、免疫複合体及び抗体のフラグメントを網羅する(下記を参照すること)。
本明細書で使用されるとき、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質の抗体の個体群から得られる抗体を意味し、すなわち、個体群に含まれる個別の抗体は、少量で存在しうる天然に生じる突然変異の可能性を除いて同一である。モノクローナル抗体は、高度に特異的であり、単一抗原部位に向けられる。更に、異なる決定要因(エピトープ)に向けられている異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、それぞれのモノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定要因に向けられている。これらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の抗体で汚染されることなく合成することができる点において有利である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均質の抗体個体群から得られる抗体の特性を示し、特定の任意の方法により抗体を産生する必要性があると考慮されるべきでない。例えば、本発明により使用されるモノクローナル抗体は、Kohler et al.,Nature,256:495(1975)に最初に記載されたハイブリドーマ(ネズミ又はヒト)法により作製することができるか、又は組み換えDNA法(例えば、米国特許第4,816,567号を参照すること)により作製することができる。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clackson et al.,Nature,352:624−628(1991)及びMarks et al.,J.MoI.Biol,222:581−597(1991)に記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離することもできる。
「抗体フラグメント」は、無処置抗体の一部を含み、好ましくは抗原結合又は可変部領域を含む。抗体フラグメントの例には、完全長に満たない抗体、Fab、Fab′、F(ab′)及びFvフラグメント;二特異性抗体;線状抗体;単鎖抗体分子;単鎖抗体、単一ドメイン抗体分子、融合タンパク質、組み換えタンパク質、並びに抗体フラグメントから形成される多特異性抗体が挙げられる。
「無処置」抗体は、抗原結合可変部領域を含み、またさらに、軽鎖定常部ドメイン(C)及び重鎖定常部ドメイン、C1、C2及びC3を含むものである。定常部ドメインは、未変性配列定常部ドメイン(例えば、ヒト未変性配列定常部ドメイン)又はアミノ酸配列可変部であることができる。好ましくは、無処置抗体は、1つ以上のエフェクター機能を有する。
重鎖の定常部ドメインのアミノ酸配列に応じて、無処置抗体を異なる「部類」に指定することができる。これらは、無処置抗体の5つの主要な部類:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMであり、これらのうちの幾つかは、更に「下位分類」(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2に分けることができる。抗体の異なる部類に対応する重鎖定常部ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。免疫グロブリンの異なる部類のサブユニット構造及び三次元配置がよく知られている。
抗体の「エフェクター機能」は、抗体のFc領域(未変性配列Fc領域又はアミノ酸配列可変部Fc領域)に寄与する生物学的活性を意味する。抗体エフェクター機能の例には、Clq結合;補体依存性細胞障害性;Fcレセプター結合;抗体依存性細胞仲介細胞障害性(ADCC);食菌作用;細胞表面レセプター(例えば、B細胞レセプター;BCR)の下方制御などが挙げられる。
「抗体依存性細胞仲介細胞障害性」及び「ADCC」は、Fcレセプター(FcR)(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)を発現する非特異的細胞毒性細胞が、標的細胞上の結合抗体を認識し、続いて標的細胞の溶解を引き起こす細胞仲介反応を意味する。ADCCを仲介する一次細胞である、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現し、一方、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞におけるFcR発現をまとめたものが、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)の第464頁、表3である。目的分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号又は同第5,821,337号に記載されているようなインビトロADCCアッセイを実施することができる。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは又は追加的には、目的分子のADCC活性をインビボで、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652−656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて評価することができる。
「エフェクター細胞」は、1つ以上のFcRを発現し、かつエフェクター機能を実行する白血球である。好ましくは、細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実行する。ADCCを仲介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞及び好中球が挙げられ、PBMC及びNK細胞が好ましい。エフェクター細胞を、その未変性供給源から、例えば、本明細書に記載されている血液又はPBMCから単離することができる。
用語「Fcレセプター」又は「FcR」は、抗体のFe領域に結合するレセプターを記載するために使用される。好ましいFcRは、未変性配列ヒトFcRである。更に、好ましいFcRは、IgG抗体(ガンマレセプター)に結合するものであり、これらのレセプターの対立変種及び代替的なスプライス型を含むFcγRI、FcγRII及びFcγRIII下位分類のレセプターが含まれる。FcγRIIレセプターには、FcγRIIA(「活性化レセプター」)及びFcγRIIB(「阻害レセプター」)が含まれ、主に細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。活性化レセプターFcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害レセプターFcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫レセプターチロシン阻害モチーフ(ITIM)を含有する(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203−234(1997)の論評を参照すること)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capel et al.,Immunomethods 4:25−34(1994);及びde Haas et ah,J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)において検討されている。将来的に同定されるものを含む他のFcRは、本明細書における用語「FcR」に包含される。この用語には、母親IgGの胎児への移動に関与する新生児レセプターFcRnも含まれる(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)及びKim et al.,Eur.J.Immunol.24:2429(1994))。
「補体依存性細胞障害性」又は「CDC]は、分子が補体の存在下で標的を溶解する能力を意味する。補体活性化経路は、補体系(Clq)の最初の成分と、同族抗原と複合体を形成している分子(例えば、抗体)との結合によって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano−Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されているようなCDCアッセイを実行することができる。
用語「可変部」は、抗体のうちで可変部ドメインの特定の部分が、配列において大きく異なり、特定の抗原に対するそれぞれ特定の抗体の結合及び特異性のために使用される、という事実を意味する。しかし、可変性は、抗体の可変部ドメインの全体にわたって均一に分布されてはいない。軽鎖と重鎖の両方の可変部ドメインにおいて超可変部領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変部ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。未変性重及び軽鎖の可変部ドメインは、それぞれ、>シート構造に結合しているループを形成しており、かつ幾つかの場合ではその一部分を形成している、3つの超可変部領域により結合しているほぼβシート形状をしている4つのFRを含む。それぞれの鎖における超可変部領域は、FRにより近接して一緒に保持され、他の鎖の超可変部領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.pp 15−17;48−53(1991)を参照すること)。定常部ドメインは、抗体と抗原との結合に直接関わらないが、抗体依存性細胞障害活性(ADCC)における抗体の参加のような、種々のエフェクター機能を示す。
本明細書で使用されるとき、用語「超可変部領域」は、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。超可変部領域は、一般に「相補性決定領域」又は「CDR」からのアミノ酸残基(例えば、軽鎖可変部ドメインにおける残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)、重鎖可変部ドメインにおける残基31−35(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3);Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda, Md. pp 15−17;48−53(1991))並びに/又は「超可変部ループ」からの残基(軽鎖可変部ドメインにおける残基2632(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)、重鎖可変部ドメインにおける残基26−32(H1)、53−55(H2)及び96−101(H3);Chothia and Lesk J.MoI.Biol.196:901−917(1987))を含む。「フレームワーク領域」又は「FR]残基は、本明細書で定義されている超可変部領域残基以外の可変部ドメイン残基である。抗体のパパイン消化は、「Fab」フラグメントと呼ばれる2つの同一の抗原結合フラグメントを産生し、それぞれ単一の抗原結合部位と、その名称が容易に結晶化する能力を反映している残基「Fc」フラグメントを有する。ペプシン処理によって、2つの抗原結合部位を有し、かつ依然として抗原を架橋することができるF(ab′)フラグメントを生じる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含有する最小限の抗体フラグメントである。この領域は、密接な非共有的関連がある1つの重鎖と1つの軽鎖の可変部ドメインの二量体から構成される。それぞれの可変部ドメインの3つの超可変部領域が相互作用して、V−V二量体の表面に抗原結合部位を画定するのが、この配置である。集合的には、6つの超可変部領域が抗原結合特異性を抗体に付与する。しかし、単一の可変部ドメイン(又は抗原に特異性のある3つの超可変部領域しか含まない半分のFv)でさえも、抗原を認識し結合する能力を有するが、結合部位全体よりも親和性は低い。Fabフラグメントも、軽鎖の定常部ドメインと重鎖の第1定常部ドメイン(CH1)を含有する。Fab′フラグメントは、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端に幾つかの残基を付加することによって、Fabフラグメントと異なる。Fab′−SHは、定常部ドメインのシステイン残基が少なくとも1つの遊離チオール基を有するFab′の本明細書における名称である。F(ab′)抗体フラグメントは、元々、その間にヒンジシステインを有する一対のFab′フラグメントとして産生された。抗体フラグメントの他のキメラ結合も知られている。
任意の脊椎動物種からの抗体の「軽鎖」を、その定常部ドメインのアミノ酸配列に基づいてカッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる、明確に区別される2つの型のうちの1つに割り当てることができる。
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体フラグメントは、抗体のV及びVドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。好ましくは、Fvポリペプチドは、抗原結合のためにscFvを所望の構造に形成することができる、VとVのドメインの間にあるポリペプチドリンカーを更に含む。scFvについての検討は、Plueckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer−Verlag,New York,pp.269−315(1994)を参照すること。
用語「二特異性抗体」は、2つの抗原結合部位を有する小型抗体フラグメントであり、フラグメントは、同じポリペプチド鎖(V−V)において可変部軽ドメイン(V)に結合している可変部重ドメイン(V)を含む。同じ鎖で2つのドメインの間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補ドメインと対を形成して、2つの抗原結合部位を作り出すことが強要される。二特異性抗体は、例えば、EP404,097;WO93/11161;及びHollinger et al,Proc.Natl.Acad.Sci USA,90:6444−6448(1993)においてより完全に記載されている。
「単離」抗体は、自然環境の成分から同定、分離及び/又は回収されたものである。自然環境の汚染成分は、抗体の診断的又は治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質様又は非タンパク質様溶質が含まれうる。単離抗体には、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないので、組み換え細胞内原位置の抗体が含まれる。しかし、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
目的の抗原に「結合する」抗体は、抗体が、抗原を発現する細胞を標的にする治療又は診断剤として有用であるように、十分な親和性を持って抗原に結合することができるものである。抗体が抗原部分に結合するものである場合、通常は、他のレセプターではなくて抗原部分に優先的に結合し、非特異性Fc接触のような偶発的に結合するもの又は他の抗原では一般的である翻訳後修飾へ結合するものは含まれず、他のタンパク質と有意に交差反応しないものでありうる。目的の抗原に結合する抗体を検出する方法は、当該技術において周知であり、FACS、細胞ELISA及びウエスタンブロットが含まれうるが、これらに限定はされない。
本明細書で使用されるとき、表現「細胞」、「細胞株」及び「細胞培養」は交換可能に使用され、そのような名称には全て子孫が含まれる。全ての子孫は、意図的な又は偶然の突然変異のために、DNA含有が正確に同一ではない場合があることも理解される。元の形質転換細胞でスクリーニングされたものと同じ機能又は生物学的活性を有する突然変異体の子孫が含まれる。明確な名称が意図されることが文脈から明らかとなる。
「治療」は、治療処置と、予防(prophylactic)又は予防(preventative)手段の両方を意味し、目的は、標的とする病理的状態又は障害を予防又は遅延(軽減)することである。治療の必要なものには、既に障害を有しているもの、並びに障害を有する傾向のあるもの又は障害が予防されなければならないものが含まれる。したがって、本明細書における治療される哺乳動物は、障害を有していると診断される場合があるか、又は障害に罹患しやすくなっているか若しくは敏感になっている場合がある。
用語「癌」及び「癌性」は、典型的には無調節細胞増殖又は死により特徴付けられる、哺乳動物における病理状態を意味するか又はそれを記載する。癌の例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫及び白血病又はリンパ性悪性腫瘍が挙げられるが、これらに限定はされない。より詳細には、そのような癌の例には、扁平細胞癌(例えば、上皮扁平細胞癌)、小型細胞肺癌、非小型細胞肺癌、肺の腺癌及び肺の扁平上皮癌を含む肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、胃腸の癌を含む胃又は腹部の癌、膵癌、グリア芽細胞腫、子宮頚癌、卵巣癌、肝癌、膀胱癌、肝腫、乳癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜又は子宮癌、唾液腺癌、腎臓又は腎性癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌腫、肛門癌、陰茎癌、並びに頭部及び頸部の癌が挙げられる。
「化学療法剤」は、癌の治療に有用な化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びシクロースホスファミド(CYTOXAN(商標))のようなアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンのようなアルキルスルホネート;ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ及びウレドーパのようなアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスファオルアミド(triethylenethiophosphaoramide)及びトリメチローロメラミンを含むエチレンイミン及びメチラメラミン;クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロメタミン、酸化メクロエタミン塩酸塩、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードのようなナイトロジェンマスタード;カムルスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、ラニムスチンのようなニトロソウレア;アクラシノマイシン、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カリチアマイシン、カラビシン、カルノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6−ジアゾ−5−オキソ−L−ノルロイシン、ドキソルビシン、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン、ピューロマイシン、ケラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシンのような抗生物質;メトトレキセート及び5−フルオロウラシル(5−FU)のような抗代謝剤;デノプテリン、メトトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキセートのような葉酸類似体;フルダラビン、6−メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンのようなプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6−アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジン、5−FUのようなピリミジン類似体;カルステロン、ドロモスタノロンプロピオネート、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンのようなアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンのような抗副腎剤;フロリン酸のような葉酸補充物;アセグラトン;アルドホスファアミドグリコシド;アミノレブリン酸;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デホファミン;デメコルシン;ジアジコン;エルホルミチン;酢酸エリプチニウム;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダミン;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダモール;ニトラクリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ポドフィリン酸;2−エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(登録商標);ラゾキサン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジコン; 2,2′,2″−トリクロロトリエチルアミン;ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン; ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara−C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキサン、例えばパクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)及びドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Aventis,Rhone−Poulenc Rorer,Antony,France);クロラムブシル;ゲムシタビン;6−チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンのような白金類似体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP−16);イホスファミド;マイトマイシンC;マイトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ナベルビン;ノバントロン;テニポシド;ダウノマイシン;アミノプテリン;キセローダ;イバントロネート;CPT−11;トポイソメラーゼインヒビターRFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸;エスペラミシン;カペシタビン;及び上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体が挙げられる。また、この定義に含まれるものは、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン、アロマターゼ阻害4(5)−イミダゾール、4−ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン及びトレミフェン(Fareston)を含む抗エストロゲンのような、腫瘍に対するホルモン作用を調節又は阻害するように作用する抗ホルモン剤;フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、ロイプロリド及びゴセレリンのような抗アンドロゲン;並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体である。
治療目的の「哺乳動物」は、ヒト、マウス、SCID又はヌードマウス又はマウスの系統、家畜、動物園の動物、競技用の動物又は愛玩動物、例えばヒツジ、イヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む哺乳動物として分類される任意の動物を意味する。好ましくは、本明細書における哺乳動物はヒトである。
「オリゴヌクレオチド」は、1988年5月4日に公開されたEP266,032に記載された固相技術を使用して、又はFroehler et al,Nucl.Acids Res.,14:5399−5407,1986に記載されているデオキシヌクレオシドH−ホスホネート中間体を介して、既知の方法(例えば、ホスホトリエステル、ホスファイト又はホスホラミダイト化学)によって化学的に合成された長さが短い一本又は二本鎖ポリデオキシヌクレオチドである。次にこれらはポリアクリルアミドゲルで精製される。
「キメラ」抗体は、所望の生物学的活性を示す限り、その重及び/又は軽鎖の部分が、特定の種から誘導されるか又は特定の抗体の部類若しくは下位分類に属している抗体における対応する配列と同一であるか又は相同性があり、一方、残りの鎖が、別の種から誘導されるか又は別の抗体の部類若しくは下位分類に属している抗体、またそのような抗体のフラグメントにおける対応する配列と同一であるか又は相同性がある免疫グロブリンである(米国特許第4,816,567号及びMorrison et al,Proc.Natl.Acad.ScL USA,81:6851−6855(1984))。
非ヒト(例えば、ネズミ)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最低限の配列を含有する特定のキメラ免疫グロブリン、その免疫グロブリン鎖又はフラグメント(例えば、Fv、Fab、Fab′、F(ab)又は抗体の他の抗原結合部分配列)である。大部分の場合において、ヒト化抗体は、レシピエント抗体の相補性決定領域(CDR)の残基が、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット又はウサギのような非ヒト種(ドナー抗体)のCDRの残基に代えられているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。幾つかの場合において、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒトFR残基に代えられている。更に、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも外来CDR又はFR配列にも見出されない残基を含むことができる。これらの修飾は、更に精製され、抗体性能が最適化される。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変部ドメインを実質的に全て含み、全て又は実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンに対応し、全て又は実質的に全てのFR残基がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のものである。ヒト化抗体は、最適には、典型的にはヒト免疫グロブリンの免疫グロブリン定常部領域(Fc)の少なくとも一部分も含む。
「脱免疫化」抗体は、所定の種に対して非免疫原性であるか又は免疫原性が低い免疫グロブリンである。脱免疫化は、抗体に対する構造改変によって達成することができる。当業者に既知のあらゆる脱免疫化技術を用いることができる。抗体を脱免疫化する一つの適切な技術が、例えば、2000年6月15日公開のWO00/34317に記載されている。
「アポトーシス」を誘発する抗体は、これらに限定されないが、アネキシンVの結合、カスパーゼ活性、DNA断片化、細胞縮化、小胞体の拡張、細胞断片化及び/又は膜小胞(アポトーシス小体と呼ばれる)の形成により例示される任意の手段でプログラム細胞死を誘発するものである。
本明細書の全体を通して、ハイブリドーマ細胞株、並びにそれから産生される単離モノクローナル抗体は、内部名称である AR59A935.6又は寄託名称であるIDAC170505−03と代替的に呼ばれる。
本明細書で使用されるとき、「抗体リガンド」には、標的抗原の少なくとも1つのエピトープに特異的な結合を示す部分が含まれ、無処置抗体分子、抗体フラグメント及び少なくとも抗原結合領域又はその部分(すなわち、抗体分子の可変部部分)を有する任意の分子、例えばFv分子、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)分子、二重特異性抗体、融合タンパク質、又はIDAC170505−03と称されるハイブリドーマ細胞株により産生された単離モノクローナル抗体に結合している抗原(IDAC170505−03抗原)の少なくとも1つのエピトープを特異的に認識し結合する任意の遺伝子操作された分子であることができる。
本明細書で使用されるとき、「癌性疾患修飾抗体」(CDMAB)は、患者に利益のある方法によって、例えば、腫瘍量を低減する又は腫瘍を有する個人の生存期間を延長することによって癌性疾患の過程を修飾する、モノクローナル抗体及びその抗体リガンドを意味する。
本明細書で使用されるとき、「抗原結合領域」は、標的抗原を認識する分子の部分を意味する。
本明細書で使用されるとき、「競合的に阻害する」は、従来の相互抗体競合アッセイを使用して、IDAC170505−03と呼ばれるハイブリドーマ細胞株により産生されるモノクローナル抗体(IDAC170505−03抗体)が向けられる決定基を認識し、それに結合することができることを意味する。(Belanger L.,Sylvestre C.and Dufour D.(1973),Enzyme linked immunoassay for alpha fetoprotein by competitive and sandwich procedures.Clinica Chimica Acta 48,15)。
本明細書で使用されるとき、「標的抗原」は、IDAC170505−03抗原又はその部分である。
本明細書で使用されるとき、「免疫複合体」は、細胞毒素、放射性作用物質、酵素、毒素、抗腫瘍薬又は治療剤に化学的又は生物学的に結合している抗体のような任意の分子又はCDMABを意味する。抗体又はCDMABは、細胞毒素、放射性作用物質、抗腫瘍薬又は治療剤に、その標的に結合することができる限り、分子に沿って任意の位置に結合することができる。免疫複合体の例には、抗体毒素化学複合体及び抗体毒素融合タンパク質が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、「融合タンパク質」は、抗原結合領域が、生物学的に活性な分子、例えば、毒素、酵素又はタンパク薬物に結合している任意のキメラタンパク質を意味する。
本明細書で記載される本発明がより完全に理解できるために、下記の説明を記載する。
本発明は、IDAC170505−03抗原を特異的に認識し、それに結合するCDMAB(すなわち、IDAC170505−03 CDMAB)を提供する。
受入番号170505−03でIDACに寄託されているハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体のCDMABは、ハイブリドーマIDAC170505−03により産生された単離モノクローナル抗体のその標的抗原への免疫特異的結合を競合的に阻害する抗原結合領域を有する限り、任意の形態であることができる。したがって、IDAC170505−03抗体と同じ結合特異性を有するあらゆる組み換えタンパク質(例えば、抗体がリンホカイン又は腫瘍阻害性増殖因子のような第2タンパク質と組み合わされた融合タンパク質)が、本発明の範囲内に入る。
本発明の一つの実施態様において、CDMABは、IDAC170505−03抗体である。
別の実施態様において、CDMABは抗原結合フラグメントであり、それは、Fv分子(例えば、単鎖Fv分子)、Fab分子、Fab′分子、F(ab′)分子、融合タンパク質、二重特異性抗体、異種抗体、又はIDAC170505−03抗体の抗原結合領域を有する任意の組み換え分子であることができる。本発明のCDMABは、IDAC170505−03モノクローナル抗体が向けられているエピトープに向けられている。
本発明のCDMABは、誘導体分子を産生するように修飾されることができ、すなわち、分子内のアミノ酸修飾によって修飾されることができる。化学修飾も可能でありうる。
誘導体分子は、ポリペプチドの機能特性を保持し、すなわち、そのような置換を有する分子は、ポリペプチドの、IDAC170505−03抗原又はその部分への結合を依然として許容する。
これらのアミノ酸置換には、当該技術において「保存的」として知られているアミノ酸置換が含まれるが、これに限定はされる必要はない。
例えば、「保存的アミノ酸置換」と称される特定のアミノ酸置換は、タンパク質においてタンパク質の立体配座又は機能のいずれかを改変することなく頻繁に行うことができる、十分に確立されたタンパク質化学の原理である。
そのような変化には、イソロイシン(I)、バリン(V)及びロイシン(L)のいずれかで他の疎水性アミノ酸のいずれかを、アスパラギン酸(D)でグルタミン酸(E)を(及びその逆を)、グルタミン(Q)でアスパラギン(N)を(及びその逆を)、並びにセリン(S)でトレオニン(T)を(及びその逆を)置換することが含まれる。他の置換を、特定のアミノ酸の環境及びタンパク質の三次元構造におけるその役割に応じて、保存的であると考慮することもできる。例えば、グリシン(G)及びアラニン(A)は、頻繁に交換可能であることができ、アラニン及びバリン(V)も同様である。相対的に疎水性であるメチオニン(M)を、ロイシン及びイソロイシンと頻繁に、バリンとは時々交換することができる。リシン(K)及びアルギニン(R)は、位置を頻繁に交換することができ、それは、アミノ酸残基の有意な特徴はその電荷であり、これら2つのアミノ酸残基のpKが異なることは有意ではないからである。さらに他の変化も特定の環境下では「保存的」であると考慮することができる。
抗体を得ると、個別の当業者は、競合的に阻害するCDMAB、例えば競合抗体を生成することができ、これは同じエピトープを認識するものである(Belanger L et al.Clinica Chimica Acta 48:15−18(1973))。一つの方法は、抗体により認識される抗原を発現する免疫原により免疫化することを伴う。試料には、組織、単離タンパク質又は細胞株が含まれうるが、これらに限定はされない。得られたハイブリドーマは、ELISA、FACS又はウエスタンブロットのような、試験抗体の結合を阻害する抗体を同定するものである競合アッセイを使用して、スクリーニングすることができる。他の方法は、ファージディスプレー抗体ライブラリーを使用し、前記抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する抗体をパニングすることによって行うことができる(Rubinstein JL et al.Anal Biochem 314:294−300(2003))。どちらの場合でも、抗体は、最初に標識された抗体とその標的抗原の少なくとも1つのエピトープとの結合に打ち勝つ能力に基づいて選択される。したがって、そのような抗体は、元の抗体のように、抗原の少なくとも1つのエピトープを認識する特徴を有する。
実施例1
ハイブリドーマ産生−ハイブリドーマ細胞株AR59A935.6
ハイブリドーマ細胞株AR59A935.6を、ブダペスト条約に従って、International Depository Authority of Canada(IDAC),Bureau of Microbiology,Health Canada,1015 Arlington Street,Winnipeg,Manitoba,Canada,R3E 3R2に、受入番号170505−03で2005年5月17日に寄託した。37 CFR 1.808に従って、寄託者は、寄託物質の公共利用性に対して課せられている全ての制限が、特許の付与にあたって変更不能に解除されることを確認する。寄託物は、寄託所が生存試料を付与することができない場合は、取り替えられる。
抗癌抗体AR59A935.6を産生するハイブリドーマを産生するために、冷凍ヒト前立腺腫瘍組織の単一細胞懸濁液(Genomics Collaborative,Cambridge,MA)をPBSで調製した。IMMUNEASY(商標)(Qiagen,Venlo,Netherlands)アジュバントを、穏やかに混合することによって使用のために調製した。5〜7週齢BALB/cマウスを、50マイクロリットルの抗原アジュバント中の2百万の細胞を皮下注射することにより免疫化した。最近調製した抗原アジュバントを使用して、最初の免疫化の2及び5週間後に、50マイクロリットル中の2百万細胞により腹腔内で免疫化マウスを追加免疫した。最後の免疫化の3日後に、脾臓を融合のために使用した。ハイブリドーマは、単離脾細胞をNSO−1骨髄腫パートナーと融合することによって調製した。融合体の上澄みを、ハイブリドーマのサブクローンで試験した。
ハイブリドーマ細胞により分泌された抗体がIgG又はIgMアイソタイプであるかを決定するために、ELISAアッセイを用いた。100マイクロリットル/ウエルの、4℃の被覆緩衝剤(0.1M炭酸塩/重炭酸塩緩衝剤、pH9.2〜9.6)中の濃度2.4マイクログラム/mLのヤギ抗マウスIgG+IgM(H+L)を、ELISAプレートに一晩加えた。プレートを洗浄緩衝剤(PBS+0.05パーセントTween)で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルの遮断緩衝剤(洗浄緩衝剤中5パーセントミルク)をプレートに室温で1時間加え、次に洗浄緩衝剤で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのハイブリドーマ上澄みを加え、プレートを室温で1時間インキュベートした。プレートを、洗浄緩衝剤で3回洗浄し、100マイクロリットル/ウエルの、ヤギ抗マウスIgG又はIgMのホースラディッシュペルオキシダーゼ複合体いずれかの1/100,000希釈(5パーセントミルクを含有するPBSで希釈した)を加えた。プレートを室温で1時間インキュベートした後、プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄した。100マイクロリットル/ウエルのTMB溶液を、室温で1〜3分間インキュベートした。呈色反応を、50マイクロリットル/ウエルの2M HSOの添加により終了させ、プレートをPerkin−Elmer HTS7000プレート読み取り機により450nmで読み取った。図1に示されているように、AR59A935.6ハイブリドーマは、主にIgGアイソタイプの抗体を分泌した。
ハイブリドーマ細胞により分泌された抗体の下位分類を決定するために、アイソタイプ化実験を、Mouse Monoclonal Antibody Isotyping Kit(GE Healthcare,Baie d’Urfe,QC)を使用して実施した。抗体含有ハイブリドーマ上澄みを、異なる種類のペプチド鎖に特異的なヤギ抗体を担持するアイソタイプ化ストリップを有する試験管(TBS−Tによる1:10希釈溶液中)に加えた。管を15分間撹拌した。次にストリップを、撹拌しながら5分間TBS−Tで2回洗浄した。ペルオキシダーゼ標識種特異的抗マウス抗体を、試験管(TBS−Tによる1:500希釈液中)に15分間加えて、スティック上のヤギ抗体に結合しているモノクローナル抗体を検出した。ストリップを、再び、撹拌しながら5分間TBS−Tで2回洗浄した。次にストリップに結合したペルオキシダーゼ標識抗体を、ペルオキシダーゼ基質系を使用して検出した。4−クロロ−1−ナフトールの錠剤30mgを、10mLの冷エタノールに溶解し、1滴の過酸化水素溶液(30パーセントv/v)を50mLのTBSで希釈した。2つの溶液を使用直前に合わせ、3mLをアイソタイプ化ストリップに撹拌しながら15分間加えた。次に基質溶液を廃棄し、ストリップを5mLの蒸留水で撹拌しながら3回洗浄した。次にタイプ化スティックを試験管から取り出し、結果を分析した。抗癌抗体AR59A935.6はIgG2a、κアイソタイプのものである。
一連の限界希釈の後、ハイブリドーマ上澄みを、細胞ELISAアッセイにより標的細胞に結合する抗体について試験した。1つのヒト乳癌細胞株、1つの卵巣癌細胞株、2つのヒト結腸癌細胞株及び1つのヒト正常皮膚細胞株を試験し、それぞれ、MDA−MB−231、OVCAR−3、SW1116、Lovo及びCCD−27skであった。細胞株は全てAmerican Type Tissue Collection(ATCC;Manassas,VA)から得た。平板培養細胞は、使用する前に固定した。プレートを、MgCl及びCaClを含有するPBSにより室温で3回洗浄した。PBSで希釈した2パーセントパラホルムアルデヒドの100マイクロリットルを、それぞれのウエルに室温で10分間加え、次に廃棄した。プレートを、再び、MgCl及びCaClを含有するPBSにより室温で3回洗浄した。遮断を、洗浄緩衝剤(PBS+0.05パーセントTween)中の5パーセントミルクの100マイクロリットル/ウエルにより室温で1時間実施した。プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、ハイブリドーマ上澄みを、75マイクロリットル/ウエルにより室温で1時間加えた。プレートを、洗浄緩衝剤で3回洗浄し、100マイクリットル/ウエルの、ホースラディッシュペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウスIgG又はIgM抗体複合体の1/25,000希釈(5パーセントミルクを含有するPBSで希釈した)を加えた。室温での1時間のインキュベーションの後、プレートを洗浄緩衝剤で3回洗浄し、100マイクロリットル/ウエルのTMB基質を、室温で1〜3分間インキュベートした。反応を、50マイクロリットル/ウエルの2M HSOにより終了させ、プレートをPerkin−Elmer HTS7000プレート読み取り機により450nmで読み取った。図1で表にまとめた結果を、試験した細胞株に結合しないことを以前に示している社内IgGアイソタイプ対照と比較して、バックグラウンドを越える折り畳みの数として表した。ハイブリドーマAR59A935.6の抗体は、卵巣癌細胞株OVCAR−3に最も高い結合を示し、次に乳癌細胞株MDA−MB−231、そして結腸癌細胞株Lovoに結合を示した。AR59A935.6は、通常皮膚細胞株CCD−27sk及び結腸癌細胞株SW1116に対して低レベルの結合を示した。
抗体結合についての試験と共に、ハイブリドーマ上澄みの細胞毒性効果を、細胞株MDA−MB−231、OVCAR−3、SW1116、Lovo及びCCD−27skで試験した。Calcein AMを、Molecular Probes(Eugene,OR)から得て、アッセイを下記に概説したように実施した。細胞を、アッセイの前に、所定の適切な密度で平板培養した。2日後、ハイブリドーママイクロタイタープレートの上澄みの75マイクロリットルを、細胞プレートに移し、5パーセントCOインキュベーターで5日間インキュベートした。陽性対照としての役割を果たすウエルを空になるまで吸引し、100マイクロリットルのアジ化ナトリウム(NaN、.01パーセント、Sigma,Oakville,ON)、シクロヘキシミド(CHX、0.5マイクロモル、Sigma,Oakville,ON)又は抗EGFR抗体(c225、IgG1、カッパ、5マイクログラム/mL、Cedarlane,Hornby,ON)を加えた。処理の5日後、プレートを逆さにして空にし、吸い取って乾燥した。MgCl及びCaClを含有する室温DPBS(ダルベッコリン酸緩衝食塩水)を、多チャンネルスクイーズボトルからそれぞれのウエルに分配し、3回軽く叩き、反転して空にし、次に吸い取って乾燥した。MgCl及びCaClを含有するDPBSで稀釈した蛍光カルセイン染料の50マイクロリットルをそれぞれのウエルに加え、5パーセントCOインキュベーターにおいて37℃で30分間インキュベートした。プレートを、Perkin−Elmer HTS7000蛍光プレート読み取り機で読み取り、データを、Microsoft Excelで分析した。結果を図1で表にまとめる。AR59A935.6ハイブリドーマの上澄みは、OVCAR−3細胞の13パーセントに対して特異的に細胞障害性を生じた。これは、陽性対照のアジ化ナトリウム及びシクロヘキサミドそれぞれ対して得られた細胞障害性が24及び41パーセントであった。AR59A935.6は、また、SW1116細胞の11パーセントに対して特異的に細胞障害性を生じた。これは、陽性対照のc225及びシクロヘキシミドそれぞれ対して得られた細胞障害性が34及び55パーセントであった。図1の結果は、AR59A935.6の細胞毒性効果が、癌細胞型への結合レベルに比例しないことを実証した。MDA−MB−231細胞と比較して、SW1116細胞においてより大きなレベルの細胞障害性が生じたが、MDA−MB−231細胞での結合レベルはより高かった。図1で表にまとめたように、AR59A935.6はCCD−27sk正常細胞株において細胞障害性を生じなかった。既知の非特異的細胞毒性剤のシクロヘキシミド及びNaNは、予測されたように一般に細胞障害性を生じた。抗EGFR抗体c225は、予測されたようにSW1116に対して細胞障害性を生じた。
実施例2
インビトロ結合
AR59A935.6モノクローナル抗体は、CL−1000フラスコ(BD Biosciences,Oakville,ON)中でハイブリドーマを培養し、収集及び再接種を週に2回することによって産生した。Protein G Sepharose 4 Fast Flow(Amersham Biosciences,Baie d’Urfe,QC)による標準的な抗体精製手順に従った。ヒト化されている、免疫化されている、キメラ化されている又はマウスのモノクローナル抗体を利用することは、本発明の範囲内である。
AR59A935.6と、乳房(MDA−MB−231)、結腸(DLD−1、Lovo、SW1116)、卵巣(OVCAR−3)及び前立腺の癌(PC−3)の癌細胞株との結合、並びに皮膚(CCD−27sk)及び肺(Hs888.Lu)の非癌細胞株との結合を、フローサイトメトリー(FACS)により評価した。細胞株は全てAmerican Type Tissue Collection(ATCC;Manassas,VA)から得た。細胞は、最初に細胞単層をDPBS(Ca++及びMg++を有さない)で洗浄することによって、FACSのために調製した。次に細胞解離緩衝剤(INVITROGEN,Burlington,ON)を使用して、37℃で細胞培養プレートから細胞を取り出した。遠心分離及び収集した後、細胞を、MgCl、CaCl及び2パーセントウシ胎児血清を含有するDPBS(染色媒質)に4℃で再懸濁し、カウントし、適切な細胞密度にアリコートし、遠心沈殿して細胞をペレットにし、試験抗体(AR59A935.6)又は対照抗体(アイソタイプ対照、抗EGFR)の存在下、4℃で20マイクログラム/mLの染色媒質に氷上で30分間再懸濁した。Alexa Fluor 546結合二次抗体の添加の前に、細胞を染色媒質で1回洗浄した。次に染色媒質中のAlexa Fluor 546結合抗体を、4℃で30分間加えた。次に細胞を最終的に洗浄し、固定媒質(1.5パーセントパラホルムアルデヒドを含有する染色媒質)に再懸濁した。細胞のフローサイトメトリー取得を、FACSarray(商標)System Software(BD Biosciences,Oakville,ON)を使用したFACSarray(商標)に試料をかけて評価した。細胞の前方散乱(FSC)及び側面散乱(SSC)、をFSC及びSSC検出器の電圧及び振幅利得を調整して設定した。蛍光(Alexa−546)チャンネル用の検出器を、細胞がおよそ1〜5単位の蛍光強度中央値の均一ピークを有するように、未染色細胞をかけて調整した。それぞれの試料では、およそ10,000個のゲート事象(染色固定細胞)を分析のために得て、結果を図2に表す。
図2は、アイソタイプ対照を越える折り畳み増加として蛍光強度の平均値を表す。AR59A935.6抗体の代表的なヒストグラムを図3にまとめた。AR59A935.6は、結腸癌細胞株DLD−1(19.8倍)、Lovo(11.3倍)及びSW1116(5.8倍)には強い結合を示した。結合は、乳癌細胞株MDA−MB−231(21.8倍)、前立腺癌細胞株PC−3(13.9倍)及び卵巣癌細胞株OVCAR−3(17.5倍)に対しても検出された。AR59A935.6は、正常な肺及び皮膚細胞株の両方に結合はしたが、結合は、癌株の大部分で観察されたものよりも低かった(Hs888.Lu(8.6倍)及びCCD−27sk(3.7倍))。これらのデータは、AR59A935.6が、幾つかの異なるヒト細胞株に結合することを実証した。
実施例3
Lovo細胞によるインビボ腫瘍実験
実施例1及び2は、AR59A935.6が、結腸及び卵巣癌細胞株に対して抗癌特性を有することを実証し、結腸細胞型に結合することを実証した。図4及び5を参照すると、4〜6週齢の雌SCIDマウスに、100マイクロリットルの食塩水中の百万のヒト結腸癌細胞(Lovo)を、頸の首筋の皮下に注射して移植した。マウスを無作為に5匹の処置群に2分割した。移植した当日に、20mg/kgのAR59A935.6試験抗体又は緩衝剤対照を、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl及び20mM NaHPOを含有する稀釈剤で保存濃縮物から稀釈した後、300マイクロリットルの容量でそれぞれのコホートに腹腔内投与した。次に抗体及び緩衝剤対照試料を、1週間に1回で7週間、同じ方法により投与した。腫瘍増殖を、約7日目毎で8週間まで、又は個々の動物がCanadian Council for Animal Care(CCAC)終点に達するまで、カリパスで測定した。動物の体重を、この研究の間、1週間に1回記録した。研究の終了時に、全ての動物をCCAC指針に従って安楽死させた。
AR59A935.6は、ヒト結腸癌の予防インビボモデルにおいて腫瘍増殖を妨げ、腫瘍量を有意に低減した。移植後の56日目、つまり最終処置投与の5日後では、AR59A935.6処置群の平均腫瘍容量は、緩衝剤対照処置群の腫瘍容量の37パーセントであった(p=0.0243、t−試験、図4)。
研究の全体を通して毒性の臨床徴候はなかった。図5で示されているように、体重を健康及び生育の失敗の代用として使用した。処置期間の終了時では、群間に体重の有意な差はなかった(p=0.6978、t−試験)。それぞれの群内において、動物の平均体重は、研究期間の開始時と終了時では有意に変わらなかった(緩衝剤処置群、p=0.0752、t−試験;AR59A935.6処置群、p=0.1531、t−試験)。
まとめると、AR59A935.6は、耐性が十分であり、ヒト結腸癌異種移植モデルで腫瘍量を減少した。
実施例4
DLD−1細胞によるインビボ腫瘍実験
実施例3の結果を、ヒト結腸癌の異なるモデルに拡大した。図6及び7を参照すると、4〜6週齢の雌SCIDマウスに、100マイクロリットルの食塩水中の5百万のヒト結腸癌細胞(DLD−1)を、頸の首筋の皮下に注射して移植した。マウスを無作為に5匹の処置群に2分割した。移植した当日に、20mg/kgのAR59A935.6試験抗体又は緩衝剤対照を、2.7mM KCl、1mM KHPO、137mM NaCl及び20mM NaHPOを含有する稀釈剤で保存濃縮物から稀釈した後、300マイクロリットルの容量でそれぞれのコホートに腹腔内投与した。次に抗体及び緩衝剤対照試料を、この研究の間、1週間に1回、同じ方法により投与した。腫瘍増殖を、約7日毎にカリパスで測定した。動物が大型の潰瘍化病巣のためにCanadian Council for Animal Care(CCAC)終点に達したので、研究を7回の注射の後(48日間)で終了した。動物の体重を、この研究の間、1週間に1回記録した。研究の終了時に、全ての動物をCCAC指針に従って安楽死させた。
AR59A935.6は、ヒト結腸癌の極めて攻撃的なDLD−1インビボ予防モデルにおいて、腫瘍増殖を低減した。移植後の48日目、つまり最終処置投与の5日後では、AR59A935.6処置群の平均腫瘍容量は、緩衝剤対照処置群の腫瘍容量よりも34パーセント少なかった(図6)。AR59A935.6処置マウスの腫瘍量は、対照処置マウスよりも少なかったが、このヒト結腸癌の攻撃的なモデルでは有意ではなかった(p=0.194、t−試験)。最終時点での平均腫瘍容量は、処置期間の終了前の潰瘍化病巣のためにマウスを失ったことにより影響を受けた。27日目には、全てのマウスが依然として生存していたとき、AR59A935.6は、腫瘍容量を40パーセント減少させた(p=0.068)。この際だった減少は、抗体のわずか4回の注射の後で観察された。
研究の全体を通して毒性の臨床徴候はなかった。1週間の間隔をおいて測定した体重は、健康及び生育失敗の代用であった。図7で見られるように、研究期間の終了時で対照処置群とAR59A935.6処置群の間には体重の有意な差がなかった。群内では、動物の平均体重は、研究の期間にわたって、対照群では11パーセント、AR59A935.6処置群では8パーセント減少した。まとめると、AR59A935.6は、耐性が十分であり、ヒト結腸癌異種移植モデルで腫瘍量を減少したことを、結果が実証している。
圧倒的な証拠が、AR59A935.6が癌細胞株に存在するエピトープとの連結を介して抗癌効果を仲介することを示している。更に、FACS、細胞ELISA又はIHCにより例示されるがこれらに限定されない技術を利用して、特異的に結合するエピトープを発現する細胞及び/又は組織の検出に、AR59A935.6抗体を使用できることを示すことができる。
本明細書で記述されている全ての特許及び出版物は、本発明が関わる当業者のレベルを示している。全ての特許及び出版物は、それぞれ個別の出版物が明確かつ個別に参照として本明細書に組み込まれることを示すかのように、同じ程度で参照として本明細書に組み込まれる。
本発明の特定の形態が例示されているが、本明細書に記載され、示されている部分の特定の形態又は配置に限定されないことを理解するべきである。本発明の範囲から逸脱することなく多様な変更を行うことができ、本発明を、明細書に示され、記載されているものに限定することが考慮されないことは、当業者には明白である。当業者は、本発明が目的を実行するために十分に適合されることを容易に理解し、記述される目的と利点、並びにそれらに固有のものを容易に得るであろう。本明細書で記載されているオリゴヌクレオチド、ペプチド、ポリペプチド、生物学的に関連する化合物、方法、手順及び技術のいずれも、好ましい実施の現在の代表例であり、例示的であることが意図され、範囲を制限するものとして意図されてはいない。本明細書の変更及び他の使用を当業者は考えつき、それは本発明の精神の範囲内に包含され、添付の請求項の範囲によって定義される。本発明は、特定の好ましい実施態様と関連して記載されてきたが、請求される本発明は、そのような特定の実施例に過度に限定されるべきではないことを理解するべきである。事実、本発明を実施するために記載された様式の多様な修正は、当業者には明白であり、請求項の範囲内であることが意図される。
細胞株MDA−MB−231、OVCAR−3、SW1116、Lovo及びCCD−27skに対するハイブリドーマ上澄みの細胞障害性及び結合レベルの率を比較する。 癌及び正常細胞株へのAR59A935.6及び抗EGFR対照の結合を表す。データを、アイソタイプ対照を越える折り畳みの増加として平均蛍光強度を表して表にまとめる。 幾つかの癌及び非癌細胞株に対して向けられたAR59A935.6及び抗EGFR抗体の代表的なFACSヒストグラムを含む。 Lovo結腸癌モデルにおける腫瘍増殖に対するAR59A935.6の効果を示す。縦線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。 Lovo結腸癌モデルにおける体重に対するAR59A935.6の効果を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。 DLD−1結腸癌モデルにおける腫瘍増殖に対するAR59A935.6の効果を示す。縦線は、抗体が投与された期間を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。 DLD−1結腸癌モデルにおける体重に対するAR59A935.6の効果を示す。データポイントは平均+/−SEMを表す。

Claims (24)

  1. 受入番号170505−03でIDACに寄託されているハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体。
  2. 請求項1記載の単離モノクローナル抗体から産生されるヒト化抗体。
  3. 請求項1記載の単離モノクローナル抗体から産生されるキメラ抗体。
  4. 受入番号170505−03でIDACに寄託されている単離ハイブリドーマ細胞株。
  5. ヒト腫瘍から選択される組織試料で癌性細胞の抗体誘発細胞障害活性を開始する方法であって、
    前記ヒト腫瘍から組織試料を提供すること;
    受入番号170505−03でIDACに寄託されているハイブリドーマにより産生される単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB(ここでCDMABは、前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合的に阻害する能力によって特徴付けられる)を提供すること;及び
    前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABと前記組織試料とを接触させることを含み、
    前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABと前記組織試料との結合が、細胞障害活性を誘発する
    方法。
  6. 請求項1記載の単離モノクローナル抗体のCDMAB。
  7. 請求項2記載のヒト化抗体のCDMAB。
  8. 請求項3記載のキメラ抗体のCDMAB。
  9. 細胞毒性部分、酵素、放射性化合物及び血行性細胞からなる群より選択されるメンバーと結合する、請求項1、2、3、6、7又は8のいずれか1項記載の単離抗体又はそのCDMAB。
  10. IDAC受入番号170505−03を有するハイブリドーマ細胞株AR59A935.6により産生される単離モノクローナル抗体が特異的に結合するヒト腫瘍から選択される組織試料において癌性細胞の存在を決定する結合アッセイであって、
    前記ヒト腫瘍から組織試料を提供すること;
    IDAC受入番号170505−03を有するハイブリドーマ細胞株AR59A935.6により産生される単離モノクローナル抗体で認識されるものと同じエピトープ又は複数のエピトープを認識する、少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABを提供すること;
    前記少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABと前記組織試料とを接触させること;及び
    前記少なくとも1つの単離モノクローナル抗体又はそのCDMABと前記組織試料との結合を決定することを含み、
    それによって、前記組織試料において前記癌性細胞の存在が示される
    結合アッセイ。
  11. ヒト腫瘍が、受入番号170505−03でIDACに寄託されているクローンによりコードされる単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB(ここでCDMABは、前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合的に阻害する能力によって特徴付けられる)に特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現する、哺乳動物において前記ヒト腫瘍を治療する方法であって、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体又はそのCDMABを、前記哺乳動物の腫瘍量の低減をもたらすのに有効な量で投与することを含む方法。
  12. 前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性部分に結合している、請求項11記載の方法。
  13. 前記細胞毒性部分が放射性同位体である、請求項12記載の方法。
  14. 前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが補体を活性化する、請求項11記載の方法。
  15. 前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが抗体依存性細胞障害活性を仲介する、請求項11記載の方法。
  16. 前記単離モノクローナル抗体がヒト化されている、請求項11記載の方法。
  17. 前記単離モノクローナル抗体がキメラ化されている、請求項11記載の方法。
  18. ヒト腫瘍が、受入番号170505−03でIDACに寄託されているクローンによりコードされる単離モノクローナル抗体又はそのCDMAB(ここでCDMABは、前記単離モノクローナル抗体とその標的抗原との結合を競合的に阻害する能力によって特徴付けられる)に特異的に結合する抗原の少なくとも1つのエピトープを発現する、哺乳動物において抗体誘発細胞障害活性に感受性のある前記ヒト腫瘍を治療する方法であって、前記哺乳動物に、前記モノクローナル抗体又はその前記CDMABを、前記哺乳動物の腫瘍量の低減をもたらすのに有効な量で投与することを含む方法。
  19. 前記単離モノクローナル抗体が細胞毒性部分に結合している、請求項18記載の方法。
  20. 前記細胞毒性部分が放射性同位体である、請求項19記載の方法。
  21. 前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが補体を活性化する、請求項18記載の方法。
  22. 前記単離モノクローナル抗体又はそのCDMABが抗体依存性細胞障害活性を仲介する、請求項18記載の方法。
  23. 前記単離モノクローナル抗体がヒト化されている、請求項18記載の方法。
  24. 前記単離モノクローナル抗体がキメラ化されている、請求項18記載の方法。
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