JP2009302250A - 光半導体素子の製造方法および光半導体素子 - Google Patents
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Abstract
【課題】二次元フォトニック結晶等の構造を安定して作製可能な光半導体素子の製造方法および光半導体素子を提供する。
【解決手段】面発光型の二次元フォトニック結晶レーザといった光半導体素子1Aを製造する方法であって、AlGaNからなるn型クラッド層15上にGaN層17aを成長させる工程と、このGaN層の一部を除去することにより、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部をGaN層17aに形成する工程と、複数の凹部を覆って複数の空孔21を形成するように、AlGaN層23をGaN層17a上に形成する工程とを備え、AlY2Ga1−Y2N層23のAl組成(Y2)が0.03以上であることを特徴とする。
【選択図】図4
【解決手段】面発光型の二次元フォトニック結晶レーザといった光半導体素子1Aを製造する方法であって、AlGaNからなるn型クラッド層15上にGaN層17aを成長させる工程と、このGaN層の一部を除去することにより、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部をGaN層17aに形成する工程と、複数の凹部を覆って複数の空孔21を形成するように、AlGaN層23をGaN層17a上に形成する工程とを備え、AlY2Ga1−Y2N層23のAl組成(Y2)が0.03以上であることを特徴とする。
【選択図】図4
Description
本発明は、光半導体素子の製造方法および光半導体素子に関するものである。
非特許文献1には、面発光型の半導体レーザ素子が記載されている。この面発光型半導体レーザ素子は、n型AlGaNクラッド層とp型AlGaNクラッド層との間に挟まれた多重量子井戸活性層を含み、またn型AlGaNクラッド層と多重量子井戸活性層との間には、二次元フォトニック結晶層が設けられている。二次元フォトニック結晶層は、複数の凹部が形成されたGaNからなる層を別のGaN層によって覆うことにより形成されている。また、この非特許文献1に記載された半導体レーザ素子と同様の構成を備えるものが、特許文献1に記載されている。
Hideki Matsubaraet al., "GaN Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser at Blue-VioletWavelengths", Science, Volume 319, pp445-447, January 2008 国際公開2006/062084号公報
Hideki Matsubaraet al., "GaN Photonic-Crystal Surface-Emitting Laser at Blue-VioletWavelengths", Science, Volume 319, pp445-447, January 2008
しかしながら、複数の凹部が形成されたGaNからなる層を別のGaN層によって覆う場合、複数の凹部が埋め込まれてしまうといった現象により一次元回折格子または二次元フォトニック結晶構造を安定して作製することが困難となる。また、一次元回折格子または二次元フォトニック結晶層の表面に凹凸が生じ、その上に成長する多重量子井戸活性層等の結晶品質に影響を及ぼしてしまう。
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、一次元回折格子または二次元フォトニック結晶等の構造を安定して作製可能な光半導体素子の製造方法および光半導体素子を提供することを目的とする。
上記した課題を解決するために、本発明による光半導体素子の製造方法は、窒化ガリウム系半導体領域上に、InXAlY1Ga1−X−Y1N層(0≦X<1,0≦Y1<1,0≦X+Y1<1)を成長させる工程と、InXAlY1Ga1−X−Y1N層の一部を除去することにより、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部をInXAlY1Ga1−X−Y1N層に形成する工程と、複数の凹部を覆って複数の空孔を形成するように、AlY2Ga1−Y2N層(Y2<1)をInXAlY1Ga1−X−Y1N層上に形成する工程とを備え、AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.03以上であることを特徴とする。
また、本発明による光半導体素子は、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部を有し、窒化ガリウム系半導体領域上に設けられたInXAlY1Ga1−X−Y1N層(0≦X<1,0≦Y1<1,0≦X+Y1<1)と、複数の凹部を覆って複数の空孔を形成するようにInXAlY1Ga1−X−Y1N層上に設けられたAlY2Ga1−Y2N層(Y2<1)とを備え、AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.03以上であることを特徴とする。
上記した光半導体素子の製造方法および光半導体素子においては、複数の凹部が形成されたInXAlY1Ga1−X−Y1N層上にAlY2Ga1−Y2N層(Y2<1)を形成することにより、複数の凹部を覆って複数の空孔を形成している。このように、複数の凹部を覆う層がマイグレーションの小さいAlを含むことにより、当該結晶の成長時に凹部を除く領域での核形成が活発となり、選択比が増大する。そして、当該結晶が横方向にも成長することによって、凹部の形状を崩すことなくInXAlY1Ga1−X−Y1N層上に平坦な層(すなわち上記したAlY2Ga1−Y2N層)を形成できる。したがって、上記した光半導体素子の製造方法および光半導体素子によれば、複数の凹部が埋め込まれることを防いで複数の空孔を確実に形成し、一次元回折格子または二次元フォトニック結晶等の周期的な構造を安定して作製することができる。また、AlY2Ga1−Y2N層の表面は平坦となるので、その上に成長する多重量子井戸活性層等の結晶品質を良好にできる。
また、本発明者の研究により、AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.03より小さい場合、核形成が不十分であり上述した効果を十分に得ることが難しいことがわかった。したがって、上記した光半導体素子の製造方法および光半導体素子のようにAlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)を0.03以上とすることで、上述した効果を十分に得ることができる。
また、光半導体素子の製造方法および光半導体素子は、AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.15以下であることを特徴としてもよい。Al組成(Y2)が0.15より大きい場合、核形成が活発になり過ぎ、凹部がAlY2Ga1−Y2N結晶によって埋め込まれ易くなる。したがって、AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)を0.15以下とすることにより、複数の凹部が埋め込まれることをより効果的に防いで複数の空孔を更に確実に形成できる。
また、光半導体素子の製造方法および光半導体素子は、複数の空孔が二次元フォトニック結晶を構成することを特徴としてもよい。或いは、光半導体素子の製造方法および光半導体素子は、複数の空孔が一次元回折格子を構成することを特徴としてもよい。上記した光半導体素子の製造方法および光半導体素子によれば、二次元フォトニック結晶や一次元回折格子を構成する複数の空孔を安定して作製することができる。
本発明による光半導体素子の製造方法および光半導体素子によれば、一次元回折格子または二次元フォトニック結晶等の構造を安定して作製することができる。
以下、添付図面を参照しながら本発明による光半導体素子の製造方法および光半導体素子の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
(第1の実施の形態)
図1〜図4は、本発明に係る光半導体素子の第1実施形態として、面発光型の半導体レーザを作製する方法の主要な工程を示す側断面図である。本実施形態では、半導体レーザのためのいくつかの窒化ガリウム系半導体層が、例えば有機金属気相成長法で形成される。
図1〜図4は、本発明に係る光半導体素子の第1実施形態として、面発光型の半導体レーザを作製する方法の主要な工程を示す側断面図である。本実施形態では、半導体レーザのためのいくつかの窒化ガリウム系半導体層が、例えば有機金属気相成長法で形成される。
まず、図1(a)に示されるように、n型のGaN基板といった基板11を成長炉にセットする。そして、基板11に、半導体レーザのための工程を施していく。基板11の主面11aのサーマルクリーニングを行った後に、n型クラッド層15を成長させる。n型クラッド層15は例えばAlGaNといった窒化ガリウム系半導体からなることができる。この窒化ガリウム系半導体領域(n型クラッド層15)上には、InXAlY1Ga1−X−Y1N層(0≦X<1,0≦Y1<1,0≦X+Y1<1)の一例としてGaN層17を成長させる。GaN層17は、例えばn型ドーパントを含んでおり、n型クラッド層15よりも大きい屈折率を有する。なお、GaN層17に代えて、InGaN層またはAlGaN層を成長させてもよい。GaN層17を成長させた後に、室温近くの温度まで成長炉の温度を下げて、基板W1を成長炉から取り出す。
次いで、GaN層17の一部を除去することにより、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部をGaN層17に形成する工程を説明する。図1(b)に示されるように、基板W1のGaN層17上に、複数の凹部を形成するためのレジストRを均一に塗布する。このレジストRは、例えば電子ビーム露光用のレジストである。そして、このレジストRを露光することにより、図2(a)に示されるようにマスク19を形成する。マスク19は、複数の凹部のための開口の配列を有しており、これらの開口は、例えば三角格子、正方格子等の格子状に配列される。
マスク19を用いて、複数の凹部をGaN層17に形成する。この形成は、エッチングといった加工により行われる。図2(b)に示されるように、例えばドライエッチング装置においてマスク19を用いてGaN層17をエッチングして、周期的屈折率分布のパターンが形成されたGaN層17aを形成する。GaN層17aには、マスク19の開口に対応して一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部17bの配列が形成される。このエッチングの後にマスク19を除去して、基板W2が提供される。基板W2は、パターン形成されたGaN層17aを含む。
基板W2を成長炉にセットして、成長炉の温度を成長温度まで上昇させる。この後に、図3に示されるように、AlY2Ga1−Y2N層(ただしY2<1、以下の説明ではAlGaN層と称する)23をGaN層17a上に形成する。AlGaN層23は、GaN層17aの複数の凹部17b(図2(b)参照)を覆って複数の閉じた空孔21を形成する。AlGaN層23は、GaN層17a上を基点として横方向成長が行われることで、GaN層17aの凹部を埋めることなく、凹部を覆うように成長することができる。このAlGaN層23のAl組成(Y2)は、0.03以上0.15以下であることが好ましい。
このようにして、一次元または2次元で周期的に配列された複数の空孔21が形成される。この複数の空孔21は、その配列の態様によって、一次元回折格子か或いは二次元フォトニック結晶を構成する。
引き続き、いくつかの窒化ガリウム系半導体層の成長を行う。図3に示されるように、AlGaN層23上に活性層27を成長させる。この活性層27は、複数の空孔21と光学的に結合される。一実施例では、活性層27は量子井戸構造29を有するが、活性層27の構造はこれに限定されるものではない。この量子井戸構造29は、交互に配列された井戸層29aおよび障壁層29bを含む。井戸層29aは例えばInGaN、AlGaN、GaN、InAlGaN等からなることができ、また障壁層29bは、井戸層29aよりも大きなバンドギャップの材料、例えばInGaN、GaN、AlGaN、InAlGaN等からなることができる。
次いで、活性層27上に窒化ガリウム系半導体層31が成長される。窒化ガリウム系半導体層31は、例えばGaN層であることができ、好ましくは、ドーパントによる光吸収を避けるためにアンドープ層からなる。
窒化ガリウム系半導体層31上に、電子ブロック層33、p型クラッド層35およびp型コンタクト層37が順に成長される。電子ブロック層33は、例えば窒化ガリウム系半導体層31より大きなバンドギャップのAlGaN層からなることができ、好ましくはp型ドーパントを含む。p型クラッド層35は、活性層27に正孔を供給すると共に、光閉じ込めのために活性層27の屈折率よりも小さな窒化ガリウム系半導体からなる。p型クラッド層35は、例えばAlGaN層からなることができる。p型コンタクト層37は、良好な電気接触を提供するために、高濃度のドーパントを含むことが好ましい。p型コンタクト層37は、例えばp型GaN層またはp型AlGaN層からなることができる。これらの成長により、基板W3が提供される。
この後、必要な場合には、基板11の裏面の研削を行う。そして、図4に示されるように、p型コンタクト層37上にp電極41aを形成すると共に、基板11の裏面11bにn電極41bを形成する。最後に、p電極41aおよびn電極41bが形成された基板W3をチップ状に分割する。こうして、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部を有するGaN層17aと、複数の凹部を覆って複数の空孔21を形成するようにGaN層17a上に設けられたAlGaN層23とを備える光半導体素子1Aが完成する。
本実施形態に係る光半導体素子の製造方法においては、複数の凹部17bが形成されたGaN層17a上にAlGaN層23を形成することにより、複数の凹部17bを覆って複数の空孔21を形成している。このように、複数の凹部17bを覆う層がマイグレーションの小さいAlを含むことにより、当該結晶の成長時に凹部17bを除く領域での核形成が活発となり、選択比が増大する。そして、当該結晶が横方向にも成長することによって、凹部17bの形状を崩すことなくGaN層17a上に平坦な層(すなわちAlGaN層23)を形成できる。したがって、本実施形態による光半導体素子の製造方法、および光半導体素子1Aによれば、複数の凹部17bが埋め込まれることを防いで複数の空孔21を確実に形成し、一次元回折格子または二次元フォトニック結晶等の周期的な構造を安定して作製することができる。また、AlGaN層23の表面は平坦となるので、その上に成長する活性層27等の結晶品質を良好にできる。
また、本発明者の研究により、AlY2Ga1−Y2N層23のAl組成(Y2)が0.03より小さい場合、核形成が不十分であり上述した効果を十分に得ることが難しいことがわかった。図5は、(a)AlY2Ga1−Y2N層23のAl組成(Y2)が0の場合、および(b)AlY2Ga1−Y2N層23のAl組成(Y2)が0.03の場合のそれぞれにおける、AlGaN層23の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)による写真である。図5(a)に示すように、AlGaN層23のAl組成が0である場合、空孔21が形成された領域Aでの核形成が不十分であることにより、該領域Aにおいて結晶成長が阻害された結果、領域Aの境界付近で段差が形成されている。これに対し、図5(b)に示すように、AlGaN層23のAl組成を0.03とした場合、空孔21が形成された領域Aにおいても十分な核形成が起きることにより、空孔21が形成された領域Aの内外にかかわらずAlGaN層23の表面が平坦となっていることがわかる。この比較から明らかなように、AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)を0.03以上とすることで、上述した本実施形態による効果を十分に得ることができる。
また、前述したように、AlY2Ga1−Y2N層23のAl組成(Y2)は0.15以下であることが好ましい。Al組成(Y2)が0.15より大きい場合、核形成が活発になり過ぎ、凹部17bがAlGaN結晶によって埋め込まれ易くなる。したがって、Al組成(Y2)を0.15以下とすることにより、複数の凹部17bが埋め込まれることをより効果的に防いで複数の空孔21を更に確実に形成できる。
(実施例1)
有機金属気相成長法を用いて、青紫色二次元フォトニック結晶レーザを作製した。原料として、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いた。
有機金属気相成長法を用いて、青紫色二次元フォトニック結晶レーザを作製した。原料として、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルインジウム(TMI)、トリメチルアルミニウム(TMA)、アンモニア(NH3)、モノシラン(SiH4)、シクロペンタジエニルマグネシウム(Cp2Mg)を用いた。
(0001)面n型窒化ガリウム基板をサセプタ上に配置した後に、成長炉にNH3とH2を供給して炉内の圧力30[kPa]において、摂氏1050度の基板温度で10分間のサーマルクリーニングを行った。炉内圧力を大気圧にした後に、以下の順に成膜を行った。まず、TMG、TMA、NH3、SiH4を供給し、摂氏1100度の基板温度で厚さ2μmのn型Al0.03Ga0.97N結晶を成長した。次に基板温度を摂氏1100度に維持したままTMG、NH3、SiH4を供給し、二次元フォトニック結晶のための厚さ100[nm]のn型GaN結晶を成長した。
基板温度を降温した後に、成長炉からエピタキシャルウェハを取り出し、以下のとおりフォトニック結晶のためのマスクを形成した。電子ビーム露光用フォトレジストをウェハ上に塗布し、スピンコータを用いて均一なレジスト膜を形成した。電子ビーム露光装置を用いて、レジスト膜の300[μm]角のエリア内に、フォトニック結晶のための正方格子パターン(半径85[nm]、ピッチ186[nm])を描画した。このレジスト膜の現像を行ってマスクを形成した後に、反応性イオンエッチング装置にエピタキシャルウェハを配置した。レジストマスクを用いてエッチングガスCl2によりn型GaN層を部分的に除去して転写し、パターンに対応した凹部の配列を有するGaN層を形成した。この後に、結晶成長のためにエピタキシャルウェハからレジストマスクを除去した。
上記エピタキシャルウェハをサセプタ上に配置した後に、基板温度を成長温度(摂氏1100度)に上昇させた。炉内圧力を大気圧として、TMG、TMA、NH3、SiH4を供給し、200[nm]のn型Al0.05Ga0.95N層を成長して、GaN層の凹部に対応した空孔の配列を形成した。そして、成長炉の温度を下げ、3周期の量子井戸構造を有する活性層を形成した。具体的には、摂氏880度の基板温度で、TMG、TMI、NH3を供給し、厚さ15[nm]のアンドープIn0.01Ga0.99N障壁層を成長し、その上に、摂氏800度の基板温度で、TMG、TMI、NH3を供給し、厚さ3[nm]のアンドープIn0.07Ga0.93N井戸層を成長した。この工程を繰り返すことにより、3周期の多重量子井戸活性層を形成した。
続いて、成長炉の温度を上げ、摂氏1100度の成長温度においてTMGおよびNH3を供給し、厚さ100[nm]のアンドープGaN層を成長した。その上に、TMG、TMA、NH3、Cp2Mgを供給し、厚さ20nmのp型Al0.12Ga0.88N電子ブロック層を成長した。また、TMG、TMA、NH3、Cp2Mgを供給し、厚さ600[nm]のp型Al0.07Ga0.93Nクラッド層を成長した。また、TMG、NH3、Cp2Mgを供給し、厚さ50[nm]のp型GaNコンタクト層を成長した。これらの成長の後に、エピタキシャルウェハを成長炉から取り出して、Ni/Auからなる100[μm]角のアノード電極をp型GaN層上に形成した。また、GaN基板を厚さ100[μm]まで研削した後に、基板の裏面にTi/Auからなるカソード電極を形成した。
以上の工程を経たのち、300[μm]角のフォトニック結晶パターンを含むように1[mm]角のチップを切り出した。そして、このチップをステムに搭載し、Auからなるワイヤを用いてボンディングを行い、このチップを通電可能とした。この青紫色二次元フォトニック結晶レーザ素子に室温でパルス電流(繰り返し周波数1[kHz]、パルス幅500[nsec])を印加したとき、電流密度20[kA/cm2]で明確な閾値をもって光出力が増大し、フォトニック結晶レーザとしての発振を確認した。図6は、このときの供給電流と光出力との関係を示す。また、共通のエピタキシャルウェハから複数のチップを作製し、上記と同様に通電まで行ったところ、全体の8割以上のチップにおいて、30[kA/cm2]以下の閾値電流密度で光出力が急激に増大し、フォトニック結晶レーザとしての発振を確認した。
なお、比較例として、GaN層の凹部を覆う厚さ200[nm]のn型Al0.05Ga0.95N層に替えて、厚さ200[nm]のn型GaN層を成長して、二次元フォトニック結晶レーザ素子を形成した。そして、このレーザ素子に室温でパルス電流(繰り返し周波数1[kHz]、パルス幅500ナノ秒)を印加すると、電流密度20[kA/cm2]程度で明確な閾値をもって光出力が増大したのは、共通のエピタキシャルウェハから取り出された複数のチップのうち一部のみであった。また、共通のエピタキシャルウェハから複数のチップを作製し、上記と同様に通電まで行ったところ、30[kA/cm2]以下の閾値電流密度で光出力が急激に増大し、またフォトニック結晶レーザに特有の遠視野像が観察されたのは、全体の1割以下のチップにおいてのみであった。以上の結果から、フォトニック結晶を構成する空孔となる凹部をn型GaN層によって覆った場合には、好適な発振特性を有するフォトニック結晶レーザを極めて低い歩留まりでしか作製できないことが明らかとなった。
(実施例2)
次の方法により、空孔の形状を観察するためのエピタキシャルウェハを作製した。すなわち、空孔が形成されたGaN層の上層(厚さ200[nm]のAl0.05Ga0.95N層)を成長させる工程までは上記実施例1と同様の方法により各半導体層を形成した。その後、フォトニック結晶パターンが形成された領域を通るようにエピタキシャルウェハを劈開し、その断面をSEMにより観察したところ、円柱状の空孔が確実に形成されており、空孔が形成されたGaN層の上層(厚さ200[nm]のAl0.05Ga0.95N層)が平坦に成長されていることが確認された。
次の方法により、空孔の形状を観察するためのエピタキシャルウェハを作製した。すなわち、空孔が形成されたGaN層の上層(厚さ200[nm]のAl0.05Ga0.95N層)を成長させる工程までは上記実施例1と同様の方法により各半導体層を形成した。その後、フォトニック結晶パターンが形成された領域を通るようにエピタキシャルウェハを劈開し、その断面をSEMにより観察したところ、円柱状の空孔が確実に形成されており、空孔が形成されたGaN層の上層(厚さ200[nm]のAl0.05Ga0.95N層)が平坦に成長されていることが確認された。
なお、比較例として、次の方法により、空孔の形状を観察するための別のエピタキシャルウェハを作製した。すなわち、上記実施例2の方法において、GaN層の凹部を覆う厚さ200[nm]のn型Al0.05Ga0.95N層に替えて、厚さ200[nm]のn型GaN層を成長して、エピタキシャルウェハを作製した。その後、フォトニック結晶パターンが形成された領域を通るようにエピタキシャルウェハを劈開し、その断面をSEMにより観察したところ、設計どおり直径85[nm]、深さ100[nm]の円柱状の空孔が形成されていたものの、フォトニック結晶パターンが形成された領域の一部において、空孔が形成されたGaN層の上層以上の各層が平坦に至っておらず、また当該領域全体における各層の膜厚が領域外の各層の膜厚と比較して薄くなっており、結晶成長に影響が及んでいることが明らかとなった。
(第2の実施の形態)
図7〜図10は、本発明に係る光半導体素子の第2実施形態として、発光ダイオード(LED)を作製する方法の主要な工程を示す側断面図である。本実施形態では、発光ダイオードのためのいくつかの窒化ガリウム系半導体層が、例えば有機金属気相成長法で形成される。
図7〜図10は、本発明に係る光半導体素子の第2実施形態として、発光ダイオード(LED)を作製する方法の主要な工程を示す側断面図である。本実施形態では、発光ダイオードのためのいくつかの窒化ガリウム系半導体層が、例えば有機金属気相成長法で形成される。
まず、図7(a)に示されるように、n型のGaN基板といった基板51を成長炉にセットする。そして、基板51に、発光ダイオードのための工程を施していく。基板51の主面51aのサーマルクリーニングを行った後、この窒化ガリウム系半導体領域(基板51)の主面51a上に、InXAlY1Ga1−X−Y1N層(0≦X<1,0≦Y1<1,0≦X+Y1<1)の一例としてn型クラッド層55を成長させる。n型クラッド層55は例えばGaNからなる。なお、n型クラッド層55は、GaNに代えて、InGaNまたはAlGaNから成ることもできる。n型クラッド層55を成長させた後に、室温近くの温度まで成長炉の温度を下げて、基板W11を成長炉から取り出す。
次いで、n型クラッド層55の一部を除去することにより、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部をn型クラッド層55に形成する工程を説明する。図7(b)に示されるように、基板W11のn型クラッド層55上に、複数の凹部を形成するためのレジストRを均一に塗布する。このレジストRは、例えば電子ビーム露光用のレジストである。そして、このレジストRを露光することにより、図8(a)に示されるようにマスク59を形成する。マスク59は、複数の凹部のための開口の配列を有しており、これらの開口は、例えば三角格子、正方格子等の格子状に配列される。
マスク59を用いて、複数の凹部をn型クラッド層55に形成する。この形成は、エッチングといった加工により行われる。図8(b)に示されるように、例えばドライエッチング装置においてマスク59を用いてn型クラッド層55を所定深さまでエッチングして、周期的屈折率分布のパターンが形成されたGaN層57aを形成する。GaN層57aには、マスク59の開口に対応して一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部57bの配列が形成される。このエッチングの後にマスク59を除去して、基板W12が提供される。基板W12は、パターン形成されたGaN層57aを含む。
基板W12を成長炉にセットして、成長炉の温度を成長温度まで上昇させる。この後に、図9に示されるように、AlY2Ga1−Y2N層(Y2<1)63をGaN層57a上に形成する。AlGaN層63は、GaN層57aの複数の凹部57b(図8(b)参照)を覆って複数の閉じた空孔61を形成する。AlGaN層63は、GaN層57a上を基点として横方向成長が行われることで、GaN層57aの凹部を埋めることなく、凹部を覆うように成長することができる。このAlGaN層63のAl組成(Y2)は、0.03以上0.15以下であることが好ましい。
このようにして、一次元または二次元で周期的に配列された複数の空孔61が形成される。この複数の空孔61は、その配列の態様によって、一次元回折格子か或いは二次元フォトニック結晶を構成する。
引き続き、いくつかの窒化ガリウム系半導体層の成長を行う。図9に示されるように、AlGaN層63上に活性層67を成長させる。この活性層67は、複数の空孔61と光学的に結合される。一実施例では、活性層67は量子井戸構造69を有するが、活性層67の構造はこれに限定されるものではない。この量子井戸構造69は、交互に配列された井戸層69aおよび障壁層69bを含む。井戸層69aは例えばInGaN、AlGaN、GaN、InAlGaN等からなることができ、また障壁層69bは、井戸層69aよりも大きなバンドギャップの材料、例えばInGaN、GaN、AlGaN、InAlGaN等からなることができる。
次いで、活性層67上に、電子ブロック層73およびp型コンタクト層77が順に成長される。電子ブロック層73は、例えばAlGaN層からなることができ、好ましくはp型ドーパントを含む。p型コンタクト層77は、良好な電気接触を提供するために、高濃度のドーパントを含むことが好ましい。p型コンタクト層77は、例えばp型GaN層またはp型AlGaN層からなることができる。これらの成長により、基板W13が提供される。
この後、図10に示されるように、p型コンタクト層77上にp電極81aを形成すると共に、基板51の裏面51bにn電極81bを形成する。最後に、p電極81aおよびn電極81bが形成された基板W13をチップ状に分割する。こうして、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部を有するGaN層57aと、複数の凹部を覆って複数の空孔61を形成するようにGaN層57a上に設けられたAlGaN層63とを備える光半導体素子1Bが完成する。
本実施形態に係る光半導体素子の製造方法においては、第1実施形態と同様に、複数の凹部57bが形成されたGaN層57a上にAlGaN層63を形成することにより、複数の凹部57bを覆って複数の空孔61を形成している。これにより、複数の凹部57bが埋め込まれることを防いで複数の空孔61を確実に形成し、一次元回折格子または二次元フォトニック結晶等の周期的な構造を安定して作製することができる。また、AlGaN層63の表面は平坦となるので、その上に成長する活性層67等の結晶品質を良好にできる。また、AlY2Ga1−Y2N層63のAl組成(Y2)を0.03以上とすることで、このような効果を十分に得ることができる。
また、第1実施形態と同様に、AlY2Ga1−Y2N層63のAl組成(Y2)は0.15以下であることが好ましい。これにより、複数の凹部57bが埋め込まれることをより効果的に防いで複数の空孔61を更に確実に形成できる。
(実施例3)
有機金属気相成長法を用いて、青紫色二次元フォトニック結晶LEDを作製した。原料として、TMG、TMI、TMA、NH3、SiH4、Cp2Mgを用いた。
有機金属気相成長法を用いて、青紫色二次元フォトニック結晶LEDを作製した。原料として、TMG、TMI、TMA、NH3、SiH4、Cp2Mgを用いた。
(0001)面n型窒化ガリウム基板をサセプタ上に配置した後に、成長炉にNH3とH2を供給して炉内の圧力30[kPa]において、摂氏1050度の基板温度で10分間のサーマルクリーニングを行った。炉内圧力を大気圧にした後に、TMG、NH3、SiH4を供給し、摂氏1100度の基板温度で厚さ2μmのn型GaN結晶を成長した。
基板温度を降温した後に、成長炉からエピタキシャルウェハを取り出し、以下のとおりフォトニック結晶のためのマスクを形成した。電子ビーム露光用フォトレジストをウェハ上に塗布し、スピンコータを用いて均一なレジスト膜を形成した。電子ビーム露光装置を用いて、レジスト膜の300[μm]角のエリア内に、フォトニック結晶のための正方格子パターン(半径85[nm]、ピッチ186[nm])を描画した。このレジスト膜の現像を行ってマスクを形成した後に、反応性イオンエッチング装置にエピタキシャルウェハを配置した。レジストマスクを用いてエッチングガスCl2によりn型GaN層を深さ100[nm]までエッチングして転写し、パターンに対応した凹部の配列を有するGaN層を形成した。この後に、結晶成長のためにエピタキシャルウェハからレジストマスクを除去した。
上記エピタキシャルウェハをサセプタ上に配置した後に、基板温度を成長温度(摂氏1100度)に上昇させた。炉内圧力を大気圧として、TMG、TMA、NH3、SiH4を供給し、200[nm]のn型Al0.05Ga0.95N層を成長して、GaN層の凹部に対応した空孔の配列を形成した。そして、成長炉の温度を下げ、3周期の量子井戸構造を有する活性層を形成した。具体的には、摂氏880度の基板温度で、TMG、TMI、NH3を供給し、厚さ15[nm]のアンドープIn0.01Ga0.99N障壁層を成長し、その上に、摂氏800度の基板温度で、TMG、TMI、NH3を供給し、厚さ3[nm]のアンドープIn0.07Ga0.93N井戸層を成長した。この工程を繰り返すことにより、3周期の多重量子井戸活性層を形成した。
続いて、成長炉の温度を上げ、摂氏1100度の成長温度においてTMG、TMA、NH3、Cp2Mgを供給し、厚さ20nmのp型Al0.12Ga0.88N電子ブロック層を成長した。また、TMG、NH3、Cp2Mgを供給し、厚さ50[nm]のp型GaNコンタクト層を成長した。これらの成長の後に、エピタキシャルウェハを成長炉から取り出して、Ni/Auからなるアノード電極をp型GaN層上に形成した。また、GaN基板の裏面の全面にTi/Auからなるカソード電極を形成した。
以上の工程を経たのち、300[μm]角のフォトニック結晶パターンを含むように1[mm]角のチップを切り出した。そして、このチップをステムに搭載し、Auからなるワイヤを用いてボンディングを行い、このチップを通電可能とした。この青紫色二次元フォトニック結晶LEDに電流を供給したところ、活性層からの光の出射方向は、フォトニック結晶により制御されて、全方位に等方的なものではなくフォトニック結晶の構造を反映した方向となることが確認された。
本発明による光半導体素子の製造方法および光半導体素子は、上記した実施形態及び変形例に限られるものではなく、他にも様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態では複数の凹部の例として一次元回折格子および二次元フォトニック結晶を例示したが、本発明における複数の凹部はこれらに限られず、他の様々な微細構造に適用できる。また、上記実施形態ではn型GaN基板を用いて光半導体素子を製造する方法を例示したが、本発明に係る光半導体素子に用いられる基板は、III−V族化合物基板のほか、サファイア基板等であってもよい。
1A,1B…光半導体素子、11,51…基板、11a,51a…主面、11b,51b…裏面、15,55…n型クラッド層、17,17a,57a…GaN層、17b,57b…凹部、19,59…マスク、21,61…空孔、23,63…AlGaN層、27,67…活性層、29,69…量子井戸構造、29a,69a…井戸層、29b,69b…障壁層、31…窒化ガリウム系半導体層、33,73…電子ブロック層、35…p型クラッド層、37,77…p型コンタクト層、41a,41b,81a,81b…電極、R…レジスト、W1〜W3,W11〜W13…基板。
Claims (8)
- 窒化ガリウム系半導体領域上に、InXAlY1Ga1−X−Y1N層(0≦X<1,0≦Y1<1,0≦X+Y1<1)を成長させる工程と、
前記InXAlY1Ga1−X−Y1N層の一部を除去することにより、一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部を前記InXAlY1Ga1−X−Y1N層に形成する工程と、
前記複数の凹部を覆って複数の空孔を形成するように、AlY2Ga1−Y2N層(Y2<1)を前記InXAlY1Ga1−X−Y1N層上に形成する工程と
を備え、
前記AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.03以上であることを特徴とする、光半導体素子の製造方法。 - 前記AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.15以下であることを特徴とする、請求項1に記載の光半導体素子の製造方法。
- 前記複数の空孔が二次元フォトニック結晶を構成することを特徴とする、請求項1または2に記載の光半導体素子の製造方法。
- 前記複数の空孔が一次元回折格子を構成することを特徴とする、請求項1または2に記載の光半導体素子の製造方法。
- 一次元又は二次元で周期的に配列された複数の凹部を有し、窒化ガリウム系半導体領域上に設けられたInXAlY1Ga1−X−Y1N層(0≦X<1,0≦Y1<1,0≦X+Y1<1)と、
前記複数の凹部を覆って複数の空孔を形成するように前記InXAlY1Ga1−X−Y1N層上に設けられたAlY2Ga1−Y2N層(Y2<1)と
を備え、
前記AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.03以上であることを特徴とする、光半導体素子。 - 前記AlY2Ga1−Y2N層のAl組成(Y2)が0.15以下であることを特徴とする、請求項5に記載の光半導体素子。
- 前記複数の空孔が二次元フォトニック結晶を構成することを特徴とする、請求項5または6に記載の光半導体素子。
- 前記複数の空孔が一次元回折格子を構成することを特徴とする、請求項5または6に記載の光半導体素子。
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