JP2009302236A - 希土類磁石処理用フィルムおよびそれを用いた希土類磁石 - Google Patents

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Abstract

【課題】微粒子の付与量を制御でき、さらに磁石表面の特定部位に選択的に付与でき、希土類磁石の磁気特性改善の為に有用である希土類磁石処理用フィルムおよびそれを用いた希土類磁石を提供する。
【解決手段】希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子と、高分子成分とを含む希土類磁石処理用フィルム。
【選択図】なし

Description

本発明は,希土類磁石処理用フィルムおよびそれを用いた希土類磁石に関する。
NdFeB系希土類焼結磁石は磁気特性が優れているため、自動車用モーターをはじめとする大型磁石から、スピンドルモーターを代表する薄型磁石に至る高性能磁石に使用されている。NdFeB系希土類焼結磁石の高特性化には、主相であるNdFe14B相の比率を上げる、配向度を向上させる、結晶組織を微細化することなど様々な検討が行われている。
現在、磁気特性を向上させる為に、NdFeB系希土類焼結磁石の結晶粒界近傍のみをDy又はTb化合物で置換する手法が報告されている。この方法では、粉末粒径が1〜10μmを溶媒中に分散させスラリー状にし、磁石体表面に存在させ、熱処理を行うことによって、Dy又はTb化合物が粒界相にそって拡散することで、残留磁束密度をほとんど減少させること無く、保持力が増大することが報告されている。また、スパッタリング(非特許文献2参照)や蒸着(非特許文献3参照)などにより、Dyを粒界相にそって拡散させる方法も報告されている。
国際公開第06/043348号パンフレット J.Magn.Soc.Jpn.,31,6−11(2007) 町田憲一ら、"Nd−Fe−B系焼結磁石の粒界改質と磁気特性"、粉体粉末冶金協会講演概要集 平成16年度 春季大学、p202 株式会社アルバック ニュース、「世界最高グレードの希土類永久磁石の大量生産装置『マグライズ(Magrise)』を開発、市場へ投入」、[online]、2008年3月31日[平成20年6月11日検索]、インターネット<URL:http://www.ulvac.co.jp/information/news/2008/20080331b.html>
特許文献1に記載されている従来技術では、Dy及びTbフッ化物を用いた微粒子を溶媒(エタノールなど)に質量分率50%で分散させスラリー状にした後、磁石表面に付着させる。しかしながらこの方法では、微粒子同士、微粒子と磁石表面との接着力がなく、乾燥や搬出、熱処理(吸収処理)工程中に磁石表面の微粒子が剥離する問題がある。このため貴重な原料が無駄になる。また、磁石表面に均一に微粒子を付着させることも困難であり、磁気特性向上効果の再現性にも問題があった。さらに、微粒子の付与量に制限があることや、磁石表面の特定部位に選択的に付与することも困難であった。また例えば、非特許文献2、3に記載されている技術では、金属膜の被着は生産性が悪い、高価な装置が必要であるなどの問題があった。
本発明は、前記課題を解決し、微粒子の付与量を制御でき、さらに磁石表面の特定部位に選択的に付与でき、希土類磁石の磁気特性改善の為に有用である希土類磁石処理用フィルムおよびそれを用いた希土類磁石を提供するものである。
本発明者らは鋭意検討した結果、希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子と高分子成分とを含むフィルムを用いることにより、磁石表面に希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子を均一に存在させることができ、微粒子の付与量を制御でき、高価な装置が必要なく磁石表面の特定部位に選択的に付与できることなどの特徴を有し、希土類磁石の磁気特性改善の為に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記の通りである。
1. 希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子と、高分子成分とを含む希土類磁石処理用フィルム。
2. 希土類又はアルカリ土類金属が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mg、Ca、Sr、Baの内少なくとも一種類以上であることを特徴とする項1記載の希土類磁石処理用フィルム。
3. 希土類又はアルカリ土類金属の内、TbまたはDyが50atom%以上含まれていることを特徴とする項2記載の希土類磁石処理用フィルム。
4. 希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子の平均粒子径が、0.005〜50μmであることを特徴とする項1〜3いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
5. 高分子成分の重量平均分子量が1,000から10,000,000であることを特徴とする項1〜4いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
6. 高分子成分が−OH、−CN、−NR、−O−、−Cl、−CO−、−C=C−、−NR−、−SiRO−の中から選ばれる構造を一種類以上含むことを特徴とする項1〜5いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
(R、Rは、置換基であり、互いに同じでも異なっていてもよい)
7. 高分子成分が粘着性を有することを特徴とする項1〜6いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
8. さらに粘着付与剤を含むことを特徴とする項1〜7いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
9. 項1〜8いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルムを用いて作製してなる希土類磁石。
本発明の希土類磁石処理用フィルムは、石表面に希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子を均一に存在させることができ、微粒子の付与量を制御でき、磁石表面の特定部位に選択的に付与できることなどの特徴を有し、希土類磁石の磁気特性改善の為に有用である。
本発明に使用する希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物の微粒子について説明する。希土類又はアルカリ土類金属として、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mg、Ca、Sr、Baの内少なくとも一種類以上含まれることが好ましく、さらに好ましくはPr、Tb、Dy、Hoであり、特に好ましくはTb又はDyである。このうちTb又はDyが、希土類又はアルカリ土類金属のうち50atom%以上存在することが、残留磁束密度と保持力を両立させる上で好ましい。さらに好ましくは、75atom%以上であり、特に好ましくは90atom%以上である。
フッ化物、酸化物、酸フッ化物とは、フッ素又は酸素を含む構造を意味し、一部が水酸化物や塩化物など他の化合物で置換されていてもかまわない。ここでフッ素の割合が50atom%以上であることが、磁気特性の観点から好ましい。
微粒子の平均粒子径は、0.001〜50μmが好ましく、0.005〜50μmがより好ましい。50μm超では均一なフィルムを形成することが困難であり、磁気特性向上効果も低減するおそれがある。特に好ましくは0.005〜20μmであり、最も好ましくは、0.005〜10μmである。微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法や、レーザー回折法によって求めることができる。
次に、本発明に使用できる高分子成分について説明する。高分子成分の種類は特に限定されないが、−OH、−CN、−NR、−O−、−Cl、−CO−、−C=C−、−NR−、−SiRO−の中から選ばれる構造を一種以上含むことが、磁石と微粒子を含むフィルムを接着させる上で好ましい。R、Rは、置換基であり、互いに同じでも異なっていてもよい。
このような高分子成分(化合物)として、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸含有ポリマー、ポリメタクリル酸含有ポリマー、デキストリン、ポリビニルピロリドン、イソブチレンーイソプレンゴム、天然ゴム、エチレンー酢酸ビニルコポリマー、スチレンーブチレンーブチレンブロックコポリマー、スチレンーブダジエンブロックコポリマー、シリコーンコポリマー、セルロース系ポリマーなどが挙げられる。これらのポリマは少なくとも1種以上含まれて入れば良く、2種類以上含んでいても良い。フィルム形成性の観点から、より好ましくは、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリル酸含有ポリマー、ポリメタクリル酸含有ポリマー、セルロース系ポリマーであり、さらに好ましくはポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、セルロース系ポリマー、アクリルゴムなどである。
アクリルゴムとしては、HTR860−P3(商品名;ナガセケムテックス株式会社製)などが挙げられる。
高分子成分の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量が1,000〜10,000,000であることが好ましい。1000未満では、成膜が困難となり、10,000,000を超えると溶剤への溶解が困難となる。より好ましくは2000〜5,000,000であり、さらに好ましくは5000〜3,000,000である。
(フィルムの形成方法)
本発明の希土類磁石処理用フィルムは、フィルム状にすることにより、スラリー状の塗布液に比べ、微粒子を正確に必要な量を付与することができ、複雑な図形(一部に穴あき部を持つもの、曲線図形など)、曲面に対して均一に正確に付与することができる。また、塗布工程の自動化や高速化しやすいなどと適用性が高い。
本発明の希土類磁石処理用フィルムは、高分子成分を溶剤に溶解させた溶液と微粒子を溶剤に分散させた溶液とを混合した塗布液を、フッ素樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、離形紙等の剥離性基材上に塗布し、あるいは不織布等の基材に前記溶液を含浸させて剥離性基材上に載置し、溶剤等を除去して作製することができる。
この際に使用する溶剤としては40〜150℃の範囲の沸点をもつ水、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系、芳香族系、アミン系の溶媒が好ましく、より好ましくはアルコール系、ケトン系溶媒である。これらのものは塗工液の保存時及び乾燥時の蒸発速度の点で取り扱いやすく、かつ各種基材等への塗工に対応しやすい。
本発明の希土類磁石処理用フィルムの厚みは1〜250μmが好ましい。1μm未満では、必要な希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子を磁石表面に提供できず、250μmを超えると均一なフィルムを形成させることが困難となる。より好ましくは3〜100μmであり、さらに好ましくは5〜50μmである。
本発明の希土類磁石処理用フィルムは、タックや粘着性を有していることが好ましく、粘着付与材を添加することにより、タックや粘着性を制御できる。粘着付与材としては、ロジン系、テルペン系、合成石油樹脂系、フェノール樹脂系、キシレン樹脂系、脂環族系石油樹脂、クマロンインデン樹脂、スチレン樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などが挙げられる。
また、本発明の希土類磁石処理用フィルムは、フィルムとしての必要な特性を付与する為、軟化材、酸化防止剤、架橋剤などを加えることができる。本発明の希土類磁石処理用フィルム中において、微粒子が少なすぎると希土類磁石の磁気特性向上効果が少なくなる。また、高分子成分が少なくなると良質なフィルムが形成しにくくなる。微粒子の配合量としては、好ましくは20〜99.9質量%であり、さらに好ましくは40〜99.5質量%であり、もっとも好ましくは60〜99質量%である。高分子成分や粘着材などのその他成分の合計は、好ましくは0.1〜80質量%であり、さらに好ましくは0.5〜60質量%であり、もっとも好ましくは、1〜40質量%である。
(フィルムの希土類磁石への転写方法)
本発明の希土類磁石処理用フィルムは、圧力、熱、可視光、紫外線、電子線などを用い希土類磁石へ転写することができる。これらは併用しても良い。
本発明を以下に示す実施例により説明するが、これらに限定されるものではない。
(実施例1:希土類磁石処理用フィルムAの作製方法)
レーザー回折によって求められるd50値(平均粒子径)が0.9μmのDyF粒子10gを、固形分6質量%のアクリルゴム(HTR860−P3、ナガセケムテックス株式会社社製)の酢酸エチル:トルエン=1:1混合溶媒10gに加え撹拌混合し、溶液Aを作製した。得られた溶液Aを、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート上に、乾燥後の厚みが30μmになるように塗布し、加熱乾燥を行い、希土類磁石処理用フィルムAを得た。
(比較例1:希土類磁石処理用フィルムBの作製方法)
アクリルゴム(高分子成分)を含まないこと以外は、実施例1と同一の方法で希土類磁石処理用フィルムBの作製を試みたが、乾燥後は粒状になりフィルム状形成物が得られなかった。
(実施例2)
希土類磁石処理用フィルムAを、6mm×6mm×1mmの磁石表面にのせ、背面から100℃に加熱したロールで圧力を加えた。離型処理を施したポリエチレンテレフタレートをはがしたところ、希土類磁石処理用フィルムAが磁石に転写された。
本発明の希土類磁石処理用フィルムは、磁石表面に希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子を均一に存在させることができ、付与量を制御でき、磁石表面の特定部位に選択的に付与できることなど、希土類磁石の磁気特性改善の為に有用であった。

Claims (9)

  1. 希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子と、高分子成分とを含む希土類磁石処理用フィルム。
  2. 希土類又はアルカリ土類金属が、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Mg、Ca、Sr、Baの内少なくとも一種類以上であることを特徴とする請求項1記載の希土類磁石処理用フィルム。
  3. 希土類又はアルカリ土類金属の内、TbまたはDyが50atom%以上含まれていることを特徴とする請求項2記載の希土類磁石処理用フィルム。
  4. 希土類又はアルカリ土類金属のフッ化物、酸化物、酸フッ化物から選ばれる少なくとも1種以上の微粒子の平均粒子径が、0.005〜50μmであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
  5. 高分子成分の重量平均分子量が1,000から10,000,000であることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
  6. 高分子成分が−OH、−CN、−NR、−O−、−Cl、−CO−、−C=C−、−NR−、−SiRO−の中から選ばれる構造を一種類以上含むことを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
    (R、Rは、置換基であり、互いに同じでも異なっていてもよい)
  7. 高分子成分が粘着性を有することを特徴とする請求項1〜6いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
  8. さらに粘着付与剤を含むことを特徴とする請求項1〜7いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルム。
  9. 請求項1〜8いずれかに記載の希土類磁石処理用フィルムを用いて作製してなる希土類磁石。
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