JP7259651B2 - 希土類系永久磁石の製造方法、及び希土類系永久磁石の製造装置 - Google Patents

希土類系永久磁石の製造方法、及び希土類系永久磁石の製造装置 Download PDF

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Description

本発明は、希土類系永久磁石の製造方法、及び希土類系永久磁石の製造装置に関する。
希土類元素R(ネオジム等)と、遷移金属元素T(鉄等)と、ホウ素Bとを含有するR‐T‐B系永久磁石は、優れた磁気特性を有する。R‐T‐B系永久磁石の磁気特性を表す指標としては、一般的に、残留磁束密度Br(残留磁化)及び保磁力HcJが用いられる。
R‐T‐B系永久磁石は、ニュークリエーション型の永久磁石である。磁化方向と反対の磁場がニュークリエーション型の永久磁石へ印加されることにより、永久磁石を構成する多数の結晶粒子(主相粒子)の粒界近傍において磁化反転の核が発生し易い。この磁化反転の核により、永久磁石の保磁力が減少する。またR‐T‐B系永久磁石の保磁力は、温度の上昇に伴って減少する。モータ又は発電機等に使用されるR‐T‐B系永久磁石には、高温の環境下においても高い保磁力を有することが要求される。
R‐T‐B系永久磁石の保磁力を向上させるために、ジスプロシウム等の重希土類元素がR‐T‐B系永久磁石へ添加される。重希土類元素の添加により異方性磁界が向上し、磁化反転核が発生し難くなるので、保磁力が増加する。近年では、より少ない量の重希土類元素で高い保磁力を得るために、粒界拡散法が利用されている。粒界拡散法では、磁石表面から、重希土類元素を粒界に沿って拡散させる。その結果、異方性磁界が粒界近傍において局所的に大きくなり易く、磁化反転の核が粒界近傍において発生し難くなり、保磁力が増加する。
例えば、下記特許文献1に記載のR‐T‐B系永久磁石の製造方法では、重希土類元素及び有機溶剤を含む塗料が、インクジェット法によって磁石の表面へ供給される。塗料が付着した磁石の加熱により、塗料中の重希土類元素が磁石内へ拡散する。
特開2015-65218号公報
磁石の組成及び磁気特性のばらつきを抑制するためには、塗料中の重希土類元素を磁石内へ均一に拡散させる必要がある。しかし、重希土類元素を含む塗料が磁石の表面へ均一に付着していない場合、塗料中の重希土類元素が磁石内へ均一に拡散し難い。その結果、磁石の組成及び磁気特性がばらつき、磁石の保磁力が十分に向上しない。ただし、磁石の形状又は用途によっては、敢えて重希土類元素を磁石内へ不均一に拡散させる必要がある。なぜなら、磁石の形状又は用途によっては、磁石の磁化が局所的に反転し易く、磁化が反転し易い部位は他の部位よりも多量の重希土類元素を含む必要があるからである。例えば、磁化方向における厚みが他の部位よりも小さい部位では、反磁界が局所的に強い傾向がある。その結果、磁化方向における厚みが小さい部位では、磁化反転が起き易い。また、磁石の用途によっては、外部磁場の変化に因り、渦電流が磁石内で発生する。渦電流に伴うジュール熱に因る温度上昇のため、磁石の保磁力が局所的に低下することがある。磁石の形状に応じて、重希土類元素を、磁化が反転し易い部位へ確実に拡散させ、磁石における重希土類元素の濃度分布を制御するためには、磁石において塗料が付着する位置を調整し、磁石の表面における塗料の厚みを磁石の部位毎に調整する必要がある。上記の問題は、塗料が付着する磁石の表面が曲面である場合に起き易い。ただし、磁石の表面が曲面及び平面のいずれであるかに関わらず、上記の問題は解決されなければならない。
本発明の目的は、重希土類元素を含む塗料を磁石の表面に付着させる工程において、磁石の表面において塗料が付着する位置、及び磁石の表面における塗料の厚みを容易に調整することができる希土類系永久磁石の製造方法、及び希土類系永久磁石の製造装置を提供することである。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造方法は、重希土類元素を磁石の表面に付着させる付着工程と、重希土類元素が付着した磁石を加熱することにより、重希土類元素を磁石内へ拡散させる拡散工程と、を備え、付着工程が、重希土類元素を含む塗料からなる所定のパターンを、版の表面に形成するパターン形成工程と、弾性を有する転写部材を版に接触させることにより、パターンを版から転写部材の表面へ転写する第一転写工程と、パターンが転写された転写部材を磁石に接触させることにより、パターンを転写部材から磁石の表面へ転写する第二転写工程と、を含む。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造方法においては、パターンが転写される磁石の表面の少なくとも一部が、曲面であってよい。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造方法においては、版が、凹版、凸版、又は平版であってよい。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造方法においては、パターンが転写される転写部材の表面が、凸状の曲面であってよい。
パターン形成工程、第一転写工程、及び第二転写工程を繰り返すことにより、互いに異なる少なくとも二つのパターンが磁石の表面へ転写されてよい。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造装置は、版と、弾性を有する転写部材と、磁石を保持する保持手段と、重希土類元素を含む塗料からなる所定のパターンを、版の表面に形成するパターン形成手段と、を備え、版の表面に形成されたパターンが、転写部材の表面へ転写され、転写部材の表面へ転写されたパターンが、磁石の表面へ転写される。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造装置においては、パターンが転写される磁石の表面の少なくとも一部が、曲面であってよい。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造装置においては、版が、凹版、凸版、又は平版であってよい。
本発明の一側面に係る希土類系永久磁石の製造装置においては、パターンが転写される転写部材の表面が、凸状の曲面であってよい。
本発明によれば、重希土類元素を含む塗料を磁石の表面に付着させる工程において、磁石の表面において塗料が付着する位置、及び磁石の表面における塗料の厚みを容易に調整することができる希土類系永久磁石の製造方法、及び希土類系永久磁石の製造装置が提供される。
図1中の(a)は、パターンが転写される前の磁石の斜視図であり、図1中の(b)は、図1中の(a)中に示される磁石の断面図である。 図2中の(a)、図2中の(b)、図2中の(c)及び図2中の(d)は、パターン形成工程の概要を示す。 図3中の(a)、図3中の(b)及び図3中の(c)は、第一転写工程の概要を示す。 図4中の(a)、図4中の(b)及び図4中の(c)は、第二転写工程の概要を示す。 図5中の(a)は、パターン4Aが形成された版6Aの上面図であり、図5中の(b)は、パターン4Aが転写された磁石の斜視図であり、図5中の(c)は、パターン4Bが形成された版6Bの上面図であり、図5中の(d)は、パターン4Bが転写された磁石の斜視図であり、図5中の(e)は、パターン4A及びパターン4Bが転写された磁石の斜視図である。 図6中の(a)は、パターン4Cが形成された版6Cの上面図であり、図6中の(b)は、パターン4Cが転写された磁石の斜視図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態が説明される。図面において、同等の構成要素には同等の符号が付される。本発明は下記実施形態に限定されるものではない。以下に記載の「永久磁石」は、「希土類系永久磁石」の一種であるR‐T‐B系永久磁石を意味する。
[原料合金の調製工程]
原料合金の調製工程では、永久磁石を構成する各元素を含む金属原料から、合金材が作製される。原料合金は、ストリップキャスティング法、ブックモールド法、又は遠心鋳造法によって作製されてよい。金属原料は、例えば、希土類元素の単体(金属単体)、希土類元素を含む合金、純鉄、フェロボロン、又はこれらを含む合金であってよい。これらの金属原料は、所望の永久磁石の組成に略一致するように秤量される。原料合金として、組成が異なる二種以上の合金が作製されてもよい。
原料合金は、少なくとも希土類元素R、遷移金属元素T、及びホウ素(B)を含む。
原料合金に含まれる少なくとも一部のRは、ネオジム(Nd)である。原料合金は、他のRとして、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、プロメチウム(Pm)、サマリウム(Sm)、ユーロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含んでよい。上記の希土類元素のうち、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、及びルテチウム(Lu)は、重希土類元素である。上記の希土類元素のうち重希土類元素を除く元素は、軽希土類元素である。原料合金はPrを含んでよい。原料合金はPrを含まなくてもよい。原料合金はTb及びDyのうち一方又は両方を含んでよい。原料合金はTb及びDyのうち一方又は両方を含まなくてもよい。
原料合金に含まれる少なくとも一部の遷移金属元素Tは、鉄(Fe)である。Tは、Fe及びコバルト(Co)であってもよい。全てのTがFeであってよい。全てのTが、Fe及びCoであってよい。原料合金は、Fe及びCo以外の他の遷移金属元素を更に含んでよい。以下に記載のTは、Feのみ、又はFe及びCoを意味する。
原料合金は、R、T及びBに加えて他の元素を更に含んでよい。例えば、原料合金は、他の元素として、銅(Cu)、ガリウム(Ga)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)、マンガン(Mn)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)、カルシウム(Ca)、ニッケル(Ni)、ケイ素(Si)、塩素(Cl)、硫黄(S)及びフッ素(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
[粉砕工程]
粉砕工程では、上記の原料合金を非酸化的雰囲気中で粉砕することにより、合金粉末が調製されてよい。原料合金は、粗粉砕工程及び微粉砕工程の二段階で粉砕されてよい。粗粉砕工程では、例えば、スタンプミル、ジョークラッシャー、又はブラウンミル等の粉砕方法が用いられてよい。粗粉砕工程は、不活性ガス雰囲気中で行われてよい。水素を原料合金へ吸蔵させた後、原料合金が粉砕されてよい。つまり、粗粉砕工程として水素吸蔵粉砕が行われてもよい。粗粉砕工程においては、原料合金は、その粒径が数百μm程度となるまで粉砕されてよい。粗粉砕工程に続く微粉砕工程では、粗粉砕工程を経た原料合金は、その平均粒径が数μmとなるまで更に粉砕されてよい。微粉砕工程では、例えば、ジェットミルが用いられてよい。原料合金は、一段階の粉砕工程のみによって粉砕されてもよい。例えば、微粉砕工程のみが行われてもよい。複数種の原料合金が用いられる場合、各原料合金が別々に粉砕された後、各原料合金が混合されてもよい。合金粉末は、脂肪酸、脂肪酸エステル及び脂肪酸の金属塩(金属石鹸)からなる群より選ばれる少なくとも一種の潤滑剤(粉砕助剤)を含んでいてよい。換言すれば、原料合金は粉砕助剤と共に粉砕されてよい。
[成形工程]
成形工程では、上記の合金粉末を磁場中で成形することにより、磁場に沿って配向した合金粉末を含む成形体が得られてよい。例えば、金型内の合金粉末に磁場を印加しながら、合金粉末を金型で加圧することにより、成形体が得られてよい。金型が合金粉末に及ぼす圧力は、20MPa以上300MPa以下であってよい。合金粉末に印加される磁場の強さは、950kA/m以上1600kA/m以下であってよい。
[焼結工程]
焼結工程では、上述の成形体を真空又は不活性ガス雰囲気中で焼結することにより、焼結体が得られてよい。焼結条件は、目的とする永久磁石の組成、原料合金の粉砕方法及び粒度等に応じて、適宜設定されてよい。焼結温度は、例えば、1000℃以上1200℃以下であってよい。焼結時間は、1時間以上20時間以下であってよい。
[時効処理工程]
時効処理工程では、焼結体が焼結温度よりも低温で加熱されてよい。時効処理工程では、焼結体が真空又は不活性ガス雰囲気中で加熱されてよい。後述される拡散工程が時効処理工程を兼ねていてよい。その場合、拡散工程とは別の時効処理工程は実施されなくてよい。時効処理工程は、第一時効処理と、第一時効処理に続く第二時効処理とから構成されていてよい。第一時効処理は、焼結体が700℃以上900℃以下の温度で加熱されてよい。第一時効処理の時間は、1時間以上10時間以下であってよい。第二時効処理では、焼結体が500℃以上700℃以下の温度で加熱されてよい。第二時効処理の時間は、1時間以上10時間以下であってよい。
以上の工程により、焼結体が得られる。焼結体は、後述される付着工程及び拡散工程に用いられる磁石である。以下では、永久磁石の完成品との区別のために、付着工程及び拡散工程に用いられる磁石(焼結体)が、「磁石基材」と表記される。磁石基材は、互いに焼結された複数の主相粒子を備える。主相粒子は、少なくともNd、Fe及びBを含む。主相粒子は、R14Bの結晶を含んでよく、少なくとも一部のRがNdであってよく、少なくとも一部のTがFeであってよい。主相粒子の一部又は全体は、R14Bの結晶(単結晶又は多結晶)のみからなっていてよい。R14Bは、例えば、NdFe14Bであってよい。NdFe14B中のNdの一部が、Pr、Tb及びDyのうち少なくとも一種で置換されていてよい。NdFe14B中のFeの一部が、Coで置換されていてよい。主相粒子は、R、T及びBに加えて上記の元素(原料合金に含まれ得る元素)を含んでもよい。磁石基材は、主相粒子の間に形成された粒界を備える。磁石基材は、粒界として複数の粒界三重点を備える。粒界三重点とは、少なくとも三つの主相粒子に囲まれた粒界である。磁石基材は、粒界として複数の二粒子粒界も備える。二粒子粒界は、隣り合う二つの主相粒子の間に位置する粒界である。粒界は、少なくともNdを含んでよく、粒界中のNdの含有量は主相粒子中のNdの含有量よりも大きくてよい。つまり粒界はNd‐rich相を含んでよい。粒界は、Ndに加えて、Fe及びBのうち少なくとも一種を含んでよい。
主相粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、1.0μm以上10.0μm以下であってよい。磁石基材における主相粒子の体積の割合の合計値は、特に限定されないが、例えば、75体積%以上100体積%未満であってよい。
拡散工程に用いられる磁石基材は予め所定の寸法及び形状に加工されてよい。また、磁石基材の表面の清浄化を目的として、酸洗浄等の前処理が行われてよい。
[付着工程]
本実施形態に係る永久磁石の製造方法は、上記の工程に加えて、少なくとも付着工程及び拡散工程を備える。付着工程では、重希土類元素を磁石基材の表面に付着させる。重希土類元素は、例えば、Tb及びDyのうち少なくとも一つの元素であってよい。拡散工程では、重希土類元素が付着した磁石を加熱することにより、重希土類元素を磁石基材内へ拡散させる。拡散工程の詳細は、後述される。
付着工程は、パターン形成工程、第一転写工程及び第二転写工程を含む。パターン形成工程では、重希土類元素を含む塗料からなる所定のパターンが、版の表面に形成される。所定のパターンとは、磁石(磁石基材)の表面のうち重希土類元素が付着する必要がある領域と略一致する形状を有する塗膜と言い換えられてよい。塗料は、重希土類元素、バインダ及び溶剤を含むペーストであってよい。塗料の組成の詳細は後述される。第一転写工程では、弾性を有する転写部材を版に接触させることにより、パターンが、版から転写部材の表面へ転写される。第二転写工程では、パターンが転写された転写部材を磁石基材に接触させることにより、パターンが、転写部材から磁石の表面へ転写される。
付着工程に用いられる希土類系永久磁石の製造装置は、版と、弾性を有する転写部材と、磁石を保持する保持手段と、重希土類元素を含む塗料からなる所定のパターンを、版の表面に形成するパターン形成手段と、を備える。
各図面を参照しながら、付着工程の詳細が以下に説明される。
図1中の(a)に示されるように、磁石基材2の形状は、アークセグメントである。つまり、磁石基材2は、一定の方向において湾曲した矩形の板である。第二転写工程においてパターンが転写される磁石基材2の表面2sの全体は、凸状の曲面である。図1中の(b)に示される磁石基材2の断面は、磁石基材2が湾曲する方向に平行であり、且つ磁石基材2の表面2sに垂直である。rоは、表面2sの曲率半径である。Lоは、曲率半径rоに対応する弧の長さである。Lоは、磁石基材2が湾曲する方向における表面2sの幅と言い換えられてよい。θоは、表面2sの開き角であり、Lо/rо(単位:radian)と定義される。rは、表面2sの裏面(凹状の曲面)の曲率半径である。Lは、曲率半径rに対応する弧の長さである。Lは、磁石基材2が湾曲する方向における表面2sの裏面の幅と言い換えられてよい。θは、表面2sの裏面の開き角であり、L/r(単位:radian)と定義される。図1中の(b)では、θо及びθが一致しているが、θо及びθは一致しなくてよい。換言すれば、曲率半径rоに対応する円の中心は、曲率半径rに対応する円の中心と一致しなくてよい。第二転写工程においてパターンが転写される磁石基材2の表面の数、位置及び形状は、限定されない。例えば、付着工程を繰り返すことに因り、パターンが、磁石基材2の凸状の表面2sだけではなく、磁石基材2の凹状の裏面にも転写されてよい。
磁石基材2の形状は、アークセグメントに限定されない。磁石基材2の表面2sは、曲面に限定されない。例えば、磁石基材2の表面2sは、平面であってもよい。磁石基材2の表面2sの一部のみが曲面であってもよい。磁石基材2の表面2sの一部分が曲面であり、他の部分が平面であってもよい、磁石基材2の表面2sが、凹部及び凸部のうち少なくともいずれかの形状を有していてもよい。
図2中の(a)、図2中の(b)、図2中の(c)及び図2中の(d)は、パターン形成工程の概要を示す。版6としては、凹版が用いられる。版6の表面6sには、所定のパターンを有する凹部6aが形成されている。凹部6aが有するパターンの寸法及び形状は、磁石基材2の表面2sへ転写されるべきパターンの寸法及び形状に基づいて、予め設計及び決定される。凹部6aが有するパターンの寸法及び形状は、磁石基材2の表面2sへ転写されるパターンの寸法及び形状と略同じであってよい。凹部6aが有するパターンの寸法及び形状は、磁石基材2の表面2sへ転写されるパターンの寸法及び形状と若干異なってもよい。つまり、第一転写工程及び第二転写工程において、パターンの寸法及び形状が若干変化してもよい。付着工程に用いられる製造装置は、パターン形成手段として、インキプレート3及びブレード5を備える。ただし、パターン形成手段は、インキプレート3及びブレード5に限定されない。図2中の(a)及び図2中の(b)に示されるように、インキプレート3を版6の表面6sに沿って移動させることにより、塗料4aが版6の凹部6a内へ充填される。図2中の(c)及び図2中の(d)に示されるように、塗料4aが版6の凹部6a内へ充填された後、版6の表面6sのうち凹部6a以外の部分に付着した塗料4aが、ブレード5によって除去される。その結果、塗料4aからなる所定のパターン4が、凹部6a内に形成される。つまり、塗料4aからなる所定のパターン4は、凹部6aと同様の形状を有している。パターン4は、塗料4aからなるシート又は膜と言い換えられてよい。
ブレード5によって版6の表面6sから回収された塗料4aは、パターン4の形成に再利用されてよい。塗料4aは高価な重希土類元素を含むので、パターン形成工程において余分な塗料4aを回収及び再利用することにより、永久磁石の製造コストが低減される。インクジェット法又はスプレー法によって塗料が磁石基材2の表面2sへ直接供給される場合、磁石基材2の表面2sに付着しなかった塗料を回収して再利用することは困難である。
版6は、鋼等の金属から形成されていてよい。ただし、版6の材質は限定されない。版6の表面6sに形成された凹部6aの深さは一定であってよい。凹部6aの深さは一定でなくてもよい。凹部6aの深さの調整によって、磁石基材2の表面2sへ転写されるパターン4の厚みが調整されてよい。凹部6aの深さは、磁石基材2の表面2sへ転写されるパターン4の厚みと略同じであってよい。凹部6aの深さは、磁石基材2の表面2sへ転写されるパターン4の厚みと異なってもよい。パターン形成工程において版6の表面6sへ供給される塗料4aの量は、凹部6aの深さ及び面積に応じて調整されてよい。
図3中の(a)、図3中の(b)及び図3中の(c)は、第一転写工程の概要を示す。図3中の(a)に示されるように、第一転写工程では、転写部材8が、版6の表面6sに形成されたパターン4に対面するように、転写部材8及び版6其々の位置が調整される。図3中の(b)に示されるように、第一転写工程では、転写部材8を、パターン4が形成された版6の表面6sに押し当てる。転写部材8のうち版6の表面6sに接触する部分は、第二転写工程においてパターン4を介して磁石基材2の表面2sに接触する部分である。転写部材8のうち少なくとも版6の表面6sに接触する部分は、弾性を有する材料からなる。したがって、転写部材8は、版6の表面6sの形状に応じて変形し、版6の表面6sに密着し、版6の表面6sに形成されたパターン4は、転写部材8の表面8sに密着する。そして、図3中の(c)に示されるように、版6の表面6sに密着した転写部材8を版6の表面6sから離すことにより、パターン4が版6の表面6sから転写部材8の表面8sへ転写される。
パターン4が転写される転写部材8の表面8sは、凸状の曲面であってよい。転写部材8の表面8sが凸状の曲面であることにより、版6の表面6sに密着した転写部材8が版6の表面6sから剥がれ易く、転写部材8へのパターン4の転写に伴うパターン4の破損が抑制され易い。ただし、厚みが均一又は一定であるパターン4が再現される限りにおいて、パターン4の転写部材8への転写後、塗料4a(パターン4の一部)が、版6の凹部6a内に残存してもよい。
転写部材8の表面8sへ転写されるパターン4の厚みは、転写部材8が版6の表面6sに及ぼす圧力、版6から離れる転写部材8の上昇速度、塗料4aの温度、及び塗料4aの粘度等に基づき、制御されてよい。塗料4aの粘度は、塗料4aの組成(例えば、塗料4a中の重希土類元素、バインダ及び溶剤其々の含有量)に基づき、制御されてよい。
第一転写工程では、版6が固定され、転写部材8が自在に移動してよい。または、転写部材8が固定され、版6が自在に移動してもよい。版6及び転写部材8の両方が自在に移動してもよい。
図4中の(a)、図4中の(b)及び図4中の(c)は、第二転写工程の概要を示す。図4中の(a)に示されるように、磁石基材2は、固定具(保持手段7)に形成された溝7aへ嵌合され、磁石基材2の位置が固定される。磁石基材2の表面2sが、転写部材8の表面8sに転写されたパターン4に対面するように、磁石基材2及び転写部材8其々の配置が調整される。ただし、第二転写工程では、転写部材8が固定され、保持手段7が自在に移動してもよい。保持手段7が固定され、転写部材8が自在に移動してもよい。転写部材8及び保持手段7の両方が自在に移動してもよい。磁石基材2を保持することができる限り、保持手段7の具体的構造は限定されない。
図4中の(b)に示されるように、第二転写工程では、パターン4が転写された転写部材8の表面8sを、磁石基材2の表面2sに押し当てる。その結果、転写部材8及びパターン4が磁石基材2の表面2sの形状に応じて変形し、パターン4が磁石基材2の表面2sに密着する。図4中の(c)に示されるように、転写部材8を磁石基材2の表面2sから離すことにより、パターン4が転写部材8の表面8sから磁石基材2の表面2sへ転写される。
第一転写工程と第二転写工程との間において、パターン4を形成する塗料4aから溶剤が部分的に除去されてよい。例えば、溶剤を転写部材8で吸収することにより、溶剤が塗料4aから除去されてよい。溶剤の揮発により、溶剤が塗料4aから除去されてよい。溶剤を揮発させるために、塗料4aの加熱により塗料4aの温度が制御されてよい。塗料4aから部分的に溶剤が除去されることにより、パターン4が磁石基材2に転写され易くなるとともに、パターン4の形状が保持され易くなる。
磁石基材2の表面2sへ転写されるパターン4の厚みは、第一転写工程で転写部材8の表面8sへ転写されたパターン4の厚みに基づいて制御されてよい。第二転写工程では、パターン4を構成する塗料4aの略全てが磁石基材2の表面2sへ転写されてよい。パターン4を構成する塗料4aの略全てが磁石基材2の表面2sへ転写されることにより、一連の付着工程を繰り返しても、最終的に磁石基材2へ転写されるパターン4の厚みがばらつき難くなる。第二転写工程で塗料4aの略全てを磁石基材2へ転写するために、転写部材8が磁石基材2の表面2sに及ぼす圧力、磁石基材2から離れる転写部材8の上昇速度、塗料4aの温度、及び塗料4aの粘度等が制御されてよい。塗料4aの粘度は、塗料4aの組成に基づき、制御されてよい。磁石基材2の表面2sへ転写されるパターン4の厚みは、例えば、1μm以上200μm以下であってよい。磁石基材2の厚みは、パターン4の厚みよりもはるかに大きい。磁石基材2の厚みは、例えば、0.5mm以上25mm以下であってよい。
転写部材8は、例えば、エラストマーから形成されていてよい。エラストマーは、例えば、熱硬化性エラストマーであってよい。例えば、転写部材8は、熱硬化性エラストマーの一種であるシリコーン(silicone)ゴムから形成されていてよい。転写部材8がシリコーンゴムから形成されている場合、第二転写工程において、パターン4が転写部材8の表面8sから剥がれ易く、パターン4の全部が磁石基材2の表面2sへ転写され易い。つまり、パターン4が磁石基材2の表面2sへ転写された後、塗料4a(パターン4の一部)が転写部材8の表面8sに残存し難い。ただし、転写部材8が弾性を有する限り、転写部材8の材質は、シリコーンゴムに限定されない。転写部材8の材質は、以下の事項に基づいて、適宜選定されてよい。
磁石基材2の形状。
版6から転写部材8へのパターン4の転写の容易性。
転写部材8から磁石基材2へのパターン4の転写の容易性。
転写部材8の耐久性。
例えば、磁石基材2の表面2sの曲率半径rоが小さい場合、又は磁石基材2の表面2sの開き角θоが大きい場合、転写部材8が磁石基材2の表面2sに応じて変形し易いように、比較的軟らかい弾性体から転写部材8が形成されてよい。転写部材8から磁石基材2へパターン4が転写され易いことから、転写部材8は、塗料4a中の溶剤を吸収する性質を有することが好ましい。転写部材8から磁石基材2へのパターン4の転写の容易性は、塗料4a中の溶剤と転写部材8の表面8sとの親和性に依って変化するため、塗料4aの性状に合わせて、転写部材8の材質が選定されてよい。
パターン4が転写される転写部材8の表面8sは、凸状の曲面に限定されない。上述のように、磁石基材2の表面2sが凸面である場合、転写部材8の表面8sの形状は、磁石基材2の寸法、磁石基材2の表面2sの曲率半径rо及び開き角θо、並びにパターン4の形状等に応じて、適宜調整されてよい。パターン4が転写される転写部材8の表面8sは、平面であってもよい。パターン4が転写される転写部材8の表面8sは、凹状の曲面であってもよい。磁石基材2の表面2sは、平面又は凹面(凹状の曲面)であってもよい。磁石基材2の表面2sが平面又は凹面である場合も、転写部材8の表面8sの形状は、磁石基材2の寸法、磁石基材2の表面2sの曲率半径及び開き角、及びパターン4の形状等に応じて、適宜調整されてよい。
版6は、凹版に限定されない。版は、凸版又は平版であってもよい。版が凸版である場合、版の表面に形成された凸部が所定のパターンを有してよい。塗料4aを版の凸部の表面に付着させることにより、塗料4aからなるパターン4が形成されてよい。例えば、パターン形成工程において、塗料4aが版6の凸部の表面に塗布されてよい。または、版6の凸部の表面を、液溜めに容れられた塗料4aへ接触させてもよい。版6が平版である場合、塗料4aのスクリーン印刷により、塗料4aからなるパターン4が版の表面に形成されてよい。つまり、スクリーン印刷に用いるスクリーンマスクが、所定のパターンを有していてよい。
塗料4aからなるパターン4の形状は、限定されない。塗料4aからなるパターン4の形状は、磁石基材の寸法及び形状に応じて設計及び決定される。例えば、図5中の(a)に示されるように、パターン形成工程では、矩形のパターン4Aが版6Aの表面に形成されてよく、図5中の(b)に示されるように、第二転写工程では、矩形のパターン4Aが磁石基材2の表面全体へ転写されてよい。図5中の(c)に示されるように、パターン形成工程では、一対の矩形のパターン4Bが版6Bの表面に形成されてよく、図5中の(d)に示されるように、第二転写工程では、一対のパターン4Bが磁石基材2の表面のうち一対の平坦な端部に転写されてよい。図6中の(a)に示されるように、パターン形成工程では、枠状のパターン4Cが版6Cの表面に形成されてよく、図6中の(b)に示されるように、第二転写工程では、枠状のパターン4Cが磁石基材2の表面2sのうち外縁部へ転写されてよい。磁石基材2の表面2sのうち枠状のパターン4Cで囲まれた部分は、露出していてよい。
パターン形成工程、第一転写工程、及び第二転写工程を繰り返すことにより、互いに形状が異なる少なくとも二つのパターンが磁石の表面へ転写されてよい。換言すれば、複数種の版又はスクリーンマスクを用いて複数種のパターンが形成され、複数種のパターンが磁石の表面へ転写されてよい。例えば、図5中の(e)に示されるように、第二転写工程では、矩形のパターン4Aが磁石基材2の表面2s全体へ転写された後、一対のパターン4Bがパターン4Aの両端へ更に転写されてよい。つまり、形状の異なるパターン4A及びパターン4Bが磁石基材2の表面2sにおいて重ねられてよい。異なる二つ以上のパターンを磁石基材2の表面2sにおいて重ねることにより、磁石基材2の表面2sにおけるパターン4(塗料4a)の総厚みを、磁石基材2の部位毎に制御することができる。また、同一のパターン4が、磁石基材2の同一の表面2sへ二回以上繰り返し転写されてもよい。同一のパターン4を繰り返し転写することで、パターン4を厚くすることができる。換言すれば、同一のパターン4を繰り返し転写することで、一回の転写では達成困難な厚みを有するパターン4を形成することができる。
上述された付着工程によれば、磁石基材2の表面2sにおいて塗料4aが付着する位置、及び磁石基材2の表面2sにおける塗料4a(パターン4)の厚みを容易に調整することができる。例えば、磁石基材2の表面2sの全体を、厚みが均一であるパターン4で覆うことができる。その結果、拡散工程において塗料4a中の重希土類元素が磁石基材2内へ均一に拡散し、永久磁石の組成及び磁気特性のばらつきが抑制され、永久磁石の保磁力が増加する。また磁石基材2の表面2sにおける塗料4a(パターン4)の総厚みを磁石基材2の部位毎に変えることもできる。その結果、永久磁石の形状に応じて永久磁石における重希土類元素の濃度分布が制御される。例えば、拡散工程において、重希土類元素を、磁化反転が起き易い部位(換言すれば、減磁が起き易い部位)へ確実に拡散させることができる。
仮にインクジェット法によって塗料が磁石基材2の表面2sへ直接供給される場合、塗料が表面2sにおいて流動することがある。インクジェット法ではノズル詰まりを防止するために比較的粘度の低い塗料が用いられるため、特に表面2sが曲面である場合、塗料は重力に因り表面2sにおいて流動し易い。その結果、表面2sにおける塗料の厚みが変化して不均一になり易く、表面2sにおける塗料の位置及び形状も変化し易い。磁石基材2の表面2sに付着した塗料が加熱により乾燥される場合、温度上昇に伴って塗料の粘度が低下し易く、乾燥中に塗料が流動することがある。これらの理由により、塗料が磁石基材2の表面2sへ直接供給される場合、磁石基材2の表面2sにおける塗料の厚み、位置及び形状を正確に制御し難い。スプレー法によって塗料が磁石基材2の表面2sへ直接噴霧される場合も、塗料が磁石基材2の表面2sにおいて流動し易いため、磁石基材2の表面2sにおける塗料の厚み、位置及び形状を正確に制御し難い。磁石基材2の表面2sが塗料中へ浸漬される場合も、塗料が磁石基材2の表面2sにおいて流動し易いため、磁石基材2の表面2sにおける塗料の厚み、位置及び形状を正確に制御し難い。一方、本実施形態では、予め形成されたパターン4が、転写部材8から磁石基材2の表面2sへ転写されるので、磁石基材2の表面2sにおけるパターン4の厚み、位置及び形状が変化し難く、磁石基材2の表面2sにおけるパターン4の厚み、位置及び形状を正確に制御し易い。本実施形態によれば、付着工程中に一定量の溶剤を塗料4aから除去することにより、塗料4aの粘度を高めて、塗料4aの流動を抑制することもできる。その結果、磁石基材2の表面2sにおけるパターン4の厚み、位置及び形状が変化し難く、磁石基材2の表面2sにおけるパターン4の厚み、位置及び形状を正確に制御し易い。また本実施形態によれば、磁石基材2の表面2sが曲面である場合であっても、厚みが均一であるパターン4を磁石基材2の表面2s全体に転写することができる。
インクジェット法では、吐出素子(空気式アクチュエータ又は電磁ソレノイド式アクチュエータ)を用いた非接触式ノズルによって、塗料からなる微細な液滴が磁石基材の表面へ直接供給される。単位時間あたりにノズルから吐出される塗料は少ないため、塗料からなるパターンの形成に時間を要する。つまり、インクジェット法における塗料の塗布速度は遅い。特にパターンが厚いほど、パターンの形成に時間を要する。一方、本実施形態では、第二転写工程においてパターンが転写部材8から磁石基材2へ瞬時に転写される。その結果、永久磁石の製造時間が短縮される。同様の目的のために、複数の版6及び転写部材8を用いて、パターン形成工程、第一転写工程及び第二転写工程が同時に並行して実施されてよい。
インクジェット法では、塗料の吐出量及びノズルの位置の制御のために複雑な制御機構が必要である。したがって、インクジェット法に用いる製造装置は高価である。インクジェット法のような複雑な制御機構は、本実施形態に係る永久磁石の製造装置では要求されない。したがって、本実施形態に係る永久磁石の製造装置は、インクジェット法に用いる製造装置に比べて安価である。
上述の通り、塗料4aは、重希土類元素、バインダ及び溶剤を含むペーストであってよい。以下に記載の「拡散材」とは、少なくとも重希土類元素を含む化学物質を意味する。拡散材は、粒子又は粉末であってよい。拡散材の粒径は、上述された粗粉砕工程及び微粉砕工程と同様の手段によって調整されてよい。拡散材のメジアン径D50は、例えば0.5μm以上15μm以下であってよい。塗料4aは、以下の方法によって調製されてよい。
バインダ及び溶剤を所定の比率で攪拌及び混合し、バインダを溶解することにより、ラッカーが調製される。バインダは、熱可塑性樹脂であってよい。バインダは、例えば、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及びアクリル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物であってよい。複数種のバインダが用いられてよい。溶剤は、バインダが溶解する液体である限り限定されない。溶剤は有機溶剤であってよい。溶剤は、例えば、エタノール、ブタノール、オクタノール、メチルエチルケトン、キシレン、ブチルカルビトール、ターピネオール、及びジヒドロターピネオールならなる一種の化合物であってよい。複数種の溶剤が用いられてよい。拡散材をラッカーへ添加した後、これらが混合される。必要に応じて、可塑剤及び分散剤の一方又は両方がラッカーへ更に添加されてよい。続いて拡散材及びラッカーの混合物の分散処理が行われる。分散処理の手段は、自転公転ミキサー、三本ロール、高圧ホモジナイザー、又は超音波ホモジナイザーであってよい。複数の手段を用いて、分散処理が行われてよい。
拡散材は、例えば、重希土類元素の単体、重希土類元素を含む合金、又は重希土類元素を含む化合物であってよい。重希土類元素を含む化合物は、例えば、水素化物、フッ化物及び酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。重希土類元素の単体は、Tbの単体、及びDyの単体のうち一方又は両方であってよい。重希土類元素を含む合金は、Tb及びFeからなる合金、Dy及びFeからなる合金、及び、TbとDyとFeとからなる合金からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。重希土類元素の水素化物は、例えば、TbH、TbH、Tb及びFeからなる合金の水素化物、DyH、DyH、Dy及びFeからなる合金の水素化物、及び、TbとDyとFeとからなる合金の水素化物からなる群より選ばれる少なくとも一種であってよい。拡散材は、Nd、Pr及びCuからなる群より選ばれる少なくとも一種の元素を更に含んでよい。例えば、拡散材は、Ndの単体、Prの単体、Nd及びPrを含む合金、NdH、NdH、PrH、PrH、Nd及びPrを含む合金の水素化物、Cuの単体、Cuを含む合金、CuH、CuO及びCuOからなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含んでよい。
以上の方法により、拡散材、バインダ及び溶剤を含む塗料4aが調製される。塗料4a中の拡散材の含有量は、磁石基材2の厚み、永久磁石の設計上の組成、及び塗料4aの転写性を考慮して、適宜調整されてよい。塗料4a中のバインダの含有量は、塗料4aの転写性及びパターン4の強度及び接着性を考慮して、適宜調整されてよい。塗料4aの濾過により、粗大粒及び凝集物が塗料4aから除去されてよい。塗料4a中の拡散材の含有量は、例えば、40質量%以上85質量%以下であってよい。塗料4a中のバインダの含有量は、例えば、1質量%以上15質量%以下であってよい。塗料4a中の溶剤の含有量は、例えば、10質量%以上59質量%以下であってよい。
永久磁石の製造方法は、付着工程の後、拡散工程の前に、磁石基材2に転写されたパターン4(塗料4a)に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去するための乾燥工程を更に備えてよい。複数回の付着工程が繰り返される場合、一回の付着工程毎に乾燥工程が行われてよい。複数回の付着工程の後に一回の乾燥工程が行われてもよい。
[拡散工程]
拡散工程では、重希土類元素(拡散材)を含むパターン4が転写された磁石基材2が加熱される。拡散工程におけるパターン4及び磁石基材2の加熱により、パターン4中の重希土類元素が磁石基材2の表面から磁石基材2の内部へ拡散する。磁石基材2の内部では、重希土類元素が、粒界を介して主相粒子の表面近傍へ拡散する。主相粒子の表面近傍において、一部の軽希土類元素(Nd等)が重希土類元素で置換される。重希土類元素が主相粒子の表面近傍及び粒界に局在することにより、異方性磁界が粒界の近傍において局所的に大きくなり、磁化反転の核が粒界の近傍において発生し難くなる。その結果、永久磁石の保磁力が増加する。
拡散工程では、パターン4及び磁石基材2が、真空中又は不活性ガス中で加熱されてよい。不活性ガスは、アルゴン(Ar)等の希ガスであってよい。拡散工程では、800℃以上950℃以下である温度(拡散温度)で、パターン4及び磁石基材2が加熱されてよい。パターン4及び磁石基材2が上記拡散温度で加熱される時間は、1時間以上50時間以下であってよい。上記拡散温度においてパターン4及び磁石基材2を加熱する前に、拡散温度よりも低温でパターン4を加熱することにより、パターン4中のバインダを焼失させてよい。つまり拡散工程の前段階として、脱バインダ処理が行われてよい。
[熱処理工程]
拡散工程を経た磁石基材2は、永久磁石の完成品として用いられてよい。拡散工程の後、熱処理工程が行われてもよい。熱処理工程では、磁石基材2が450℃以上600℃以下で加熱されてよい。熱処理工程では、1時間以上10時間以下の間、磁石基材2が上記の温度で加熱されてよい。熱処理工程により、永久磁石の磁気特性(特に保磁力)が向上し易い。
拡散工程又は熱処理工程の後、切削及び研磨等の加工方法により磁石基材2の寸法及び形状が調整されてよい。
以上の方法により、永久磁石が完成される。
磁石基材及び永久磁石其々の組成は、例えば、エネルギー分散型X線分光(EDS)法、蛍光X線(XRF)分析法、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法、不活性ガス融解‐非分散型赤外線吸収法、酸素気流中燃焼‐赤外吸収法及び不活性ガス融解‐熱伝導度法等の分析方法によって特定されてよい。
永久磁石の寸法及び形状は、永久磁石の用途に応じて様々であり、特に限定されない。永久磁石の形状は、例えば、直方体、立方体、矩形(板)、多角柱、扇、環状扇形(annular sector)、球、円板、円柱、リング、又はカプセルであってよい。永久磁石の断面の形状は、例えば、多角形、円弧(円弦)、弓状、アーチ、又は円であってよい。磁石基材2の寸法及び形状も、永久磁石と同様であってよい。
永久磁石は、ハイブリッド自動車、電気自動車、ハードディスクドライブ、磁気共鳴画像装置(MRI)、スマートフォン、デジタルカメラ、薄型TV、スキャナー、エアコン、ヒートポンプ、冷蔵庫、掃除機、洗濯乾燥機、エレベーター及び風力発電機等の様々な分野で利用されてよい。永久磁石は、モータ、発電機又はアクチュエータを構成する材料として用いられてよい。
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば、付着工程及び拡散工程に用いられる磁石基材は、焼結体ではなく、熱間加工磁石であってよい。熱間加工磁石は、以下のような製法によって作製されてよい。
熱間加工磁石の原料は、焼結体の作製に用いられる原料合金と同様の合金であってよい。この合金を溶融し、更に急冷することにより、合金からなる薄帯が得られる。薄帯の粉砕により、フレーク状の合金粉末が得られる。合金粉末の冷間プレス(室温での成形)により、成形体が得られる。成形体の予熱後、成形体の熱間プレスにより、等方性磁石が得られる。等方性磁石の熱間塑性加工により、異方性磁石が得られる。異方性磁石の時効処理により、熱間加工磁石からなる磁石基材が得られる。熱間加工磁石からなる磁石基材は、上記の焼結体と同様に、互いに結着された多数の主相粒子を含む。
希土類系永久磁石は、R‐T‐B系永久磁石に限定されない。希土類系永久磁石(又は磁石基材)は、例えば、サマリウムコバルト磁石、又はプラセオジム磁石であってもよい。希土類系永久磁石(又は磁石基材)の主相は、例えば、SmCo,SmCo17,又はPrCoであってよい。
本発明に係る希土類系永久磁石の製造方法によれば、例えば、ハイブリッド車又は電気自動車に搭載されるモータ又は発電機へ適用される希土類系永久磁石が得られる。
2…磁石(磁石基材)、3 インキプレート、4,4A,4B,4C…塗料からなるパターン、4a…塗料、5…ブレード、6,6A,6B,6C…版、7…保持手段、8…転写部材。

Claims (9)

  1. 重希土類元素を磁石の表面に付着させる付着工程と、
    前記重希土類元素が付着した前記磁石を加熱することにより、前記重希土類元素を前記磁石内へ拡散させる拡散工程と、
    を備え、
    前記付着工程が、
    前記重希土類元素を含む塗料からなる所定のパターンを、版の表面に形成するパターン形成工程と、
    弾性を有する転写部材を前記版に接触させることにより、前記パターンを前記版から前記転写部材の表面へ転写する第一転写工程と、
    前記パターンが転写された前記転写部材を前記磁石に接触させることにより、前記パターンを前記転写部材から前記磁石の表面へ転写する第二転写工程と、
    を含む、
    希土類系永久磁石の製造方法。
  2. 前記パターンが転写される前記磁石の表面の少なくとも一部が、曲面である、
    請求項1に記載の希土類系永久磁石の製造方法。
  3. 前記版が、凹版、凸版、又は平版である、
    請求項1又は2に記載の希土類系永久磁石の製造方法。
  4. 前記パターンが転写される前記転写部材の表面が、凸状の曲面である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載の希土類系永久磁石の製造方法。
  5. 前記パターン形成工程、前記第一転写工程、及び前記第二転写工程を繰り返すことにより、互いに異なる少なくとも二つの前記パターンが前記磁石の表面へ転写される、
    請求項1~4のいずれか一項に記載の希土類系永久磁石の製造方法。
  6. 版と、
    弾性を有する転写部材と、
    磁石を保持する保持手段と、
    重希土類元素を含む塗料からなる所定のパターンを、前記版の表面に形成するパターン形成手段と、
    を備え、
    前記版の表面に形成された前記パターンが、前記転写部材の表面へ転写され、
    前記転写部材の表面へ転写された前記パターンが、前記磁石の表面へ転写される、
    希土類系永久磁石の製造装置。
  7. 前記パターンが転写される前記磁石の表面の少なくとも一部が、曲面である、
    請求項6に記載の希土類系永久磁石の製造装置。
  8. 前記版が、凹版、凸版、又は平版である、
    請求項6又は7に記載の希土類系永久磁石の製造装置。
  9. 前記パターンが転写される前記転写部材の表面が、凸状の曲面である、
    請求項6~8のいずれか一項に記載の希土類系永久磁石の製造装置。

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