以下、本発明に係る画像形成装置の実施形態の構成および動作を、図面にもとづいて説明する。
(第1の実施形態)
図1、および図2を用いて記録装置の概略構成、および動作について説明する。図1は本発明の第1の実施形態である画像形成装置の全体概略構成を示す正面図である。図2は同じく全体概略構成を示す上面図である。
装置本体1内には、被記録媒体であるロール状の記録紙3の搬送方向の上流側から順に、給紙部2、スキュー取り部7、記録ヘッド部12および搬送部16からなる記録部11、カッター部28、が配置されている。さらに、その下流側に、画像形成された記録物を収容する排紙トレイ32が配置されている。また、本発明の画像形成装置は、各ローラの速度制御を行う制御部50を有する。
給紙部2には、ロール状の記録紙3を支持した回転軸4が設けられている。回転軸4は不図示の駆動手段により駆動される。記録紙3の供給時には、給紙センサ5による検知結果に基づき駆動が制御される。すなわち、記録紙3の送り出し量が不足してテンションが張った状態(図1のAの状態)を検知したとき、回転軸4が回転して送り出しが行われ、テンションが緩んだ状態(図1のBの状態)を検知したとき、回転軸4の回転を止める。これにより、記録紙3のテンションを常に略一定の常態に保ち、搬送精度を安定させる。さらに給紙部2には、給紙部2から供給される記録紙3の挙動を安定化させるためのガイド板6が設けられている。
スキュー取り部7は、2組の斜送ローラ対8、9から構成されている。それぞれの斜送下ローラ8b、9bには、不図示の駆動手段から駆動が与えられる。またそれぞれの斜送上ローラ8a、9aは記録紙3の搬送方向に対して所定の角度が与えられた状態で不図示のバネにより斜送下ローラ8b、9bに付勢されている。これにより、記録紙3を突き当てコロ10a、10bに付勢する付勢力を記録紙3に与え、かつ記録紙3を搬送方向に送る搬送力を記録紙3に与えることができるようになっている。
記録ヘッド部12には、ヘッドホルダ15と、そのヘッドホルダ15に搭載された記録ヘッド14a〜14fが配置されている。記録ヘッド14としてはインクジェット記録方式が好適に用いられる。
インクジェット記録方式は記録用のインク液を飛翔液滴として吐出噴射させるための液体吐出口と、その吐出口に連通する液体流路、及び吐出エネルギー発生手段とを備えている。吐出エネルギー発生手段は、液体流路の一部に設けられ、流路内のインク液に飛翔液滴を形成するための吐出エネルギーを与える吐出エネルギーを与える。
そして画信号に応じて吐出エネルギー発生手段を駆動し、インク液滴を吐出して画像を形成するものである。吐出エネルギー発生手段としては、例えばピエゾ素子等の電気機械変換体等の圧力エネルギー発生手段を用いる方法、レーザー等の電磁波をインク液に照射吸収させて飛翔液滴を発生させる電磁エネルギー発生手段を用いる方法等がある。さらには、吐出エネルギー発生手段としては、電気熱変換体等の熱エネルギー発生手段を用いる方法も挙げられる。
ヘッドホルダ15は不図示の駆動手段によりガイドレール13a、および13bに沿って記録紙3紙面と垂直方向に往復移動するように構成されている。記録時には、記録ヘッド14と記録紙3紙面との距離が所定の距離になるようにヘッドホルダ15を移動させ、記録紙3が記録ヘッド部12の下を移動するのと同期して記録ヘッド14により記録情報に応じてインクを記録紙3紙面上に吐出して画像形成を行う。本実施形態では、ヘッドホルダ15にはそれぞれ異なる色のインク、すなわち、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、淡シアン、淡マゼンタ、により画像を形成する6本の記録ヘッド14a〜14fが所定の間隔で搭載されている。
各記録ヘッド14は記録紙3の搬送方向と交差、特に直交する方向の全幅にインク吐出のための吐出口が配列されたフルラインタイプのインクジェット記録ヘッドが用いられている。記録ヘッド14は、被記録媒体の搬送方向に交差する方向の被記録媒体の全幅にわたってインクを吐出するためのノズルを1200dpi程度の微小ピッチで配列されている。また、記録ヘッド14は、吐出エネルギーを発生する記録素子を列状に複数配列した記録素子基板を有する。各記録ヘッド14は各色毎に色分解されたデータに従って、各色の記録ヘッド14a〜14fからの吐出された画像を重ね合わせることによって所望の画像形成を行う。なお、本実施形態においては、単色のインクを吐出する記録ヘッド14を6本用いて画像形成を行っているが、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4本の記録ヘッドにより画像形成を行う装置でも良く、各色の配列順も本実施形態と異なる配列でも良い。また複数色のインクを吐出する記録ヘッドを用いてももちろん良い。
なお、装置本体1内には、不図示のキャップ手段、およびワイパー手段が設けられている。キャップ手段は非記録時等に記録ヘッド14のインク吐出面を覆うことによって、記録ヘッド14の吐出口付近のインクの乾燥や、これに伴う固化を防止する機能を有するものである。また、インク吐出面への埃やゴミ等の付着、吐出口への埃やゴミ等の侵入、等を防止する機能を有するものである。さらにキャップ手段には不図示のポンプが接続され、インクの吐出不良時の回復動作、もしくは吐出不良予防のための回復動作のためにポンプを作動させ、その吸引力によって吐出口からインクを吸引して記録ヘッド14の回復処理を行えるようになっている。このワイパー手段は、記録ヘッド14のインク吐出面を拭くことでインク吐出面にある埃やゴミ、余分なインク滴を拭い、インク吐出面を良好な状態に保つ機能を有するものである。従って、キャップ手段、およびワイパー手段により、吐出口からのインク吐出方向精度を良好な状態に維持もしくは回復し、形成される画像の品位が保証される。
搬送部16には、プラテン17と、メイン搬送ローラ対19と、サブ搬送ローラ対20〜25が配置されている。メイン搬送ローラ対19は、記録紙3の搬送方向の最上流側にある記録ヘッド14aの上流側に配置されている。サブ搬送ローラ対20〜25は、各記録ヘッド14a〜14fの間、および最下流側記録ヘッド14fの下流側に配置されている。サブ搬送ローラ対20〜24は記録ヘッド14a〜14fの間に配置されており、サブ搬送ローラ対25は、記録紙3の搬送方向の最下流側の記録ヘッド14fの下流側に配置されている。
メイン搬送下ローラ19bには、不図示の駆動手段から駆動が与えられ、メイン搬送上ローラ19aは、不図示のバネによりメイン搬送下ローラ19bに付勢されている。また各サブ搬送下ローラ20b〜25bには不図示の駆動手段から駆動が与えられ、各サブ搬送上ローラ20a〜25aは不図示のバネにより各サブ搬送下ローラ20b〜25bに付勢されている。各サブ搬送上ローラ20a〜25a及び各サブ搬送下ローラ20b〜25bの各サブ搬送下ローラは、それぞれ一対の搬送ローラ対を構成している。これにより記録ヘッド部12の下に配置したプラテン17上を記録紙3が移動するのと同期して、記録ヘッド14により記録情報に応じてインクを記録紙3紙面上に吐出することで、画像形成が行われる。メイン搬送下ローラ19bにはエンコーダ18が取り付けられている。エンコーダ18は、メイン搬送下ローラ19bへ駆動が伝達されるときのムラにより発生するメイン搬送下ローラ19bの回転変動を検知する。エンコーダ18の検知結果に基づき、記録ヘッド14のインクの吐出タイミングを制御することにより、形成される画像の安定化・高品位化が図られる。
カッター部28には、ロータリーカッター29、ロータリーカッター29に記録紙3を導くためのカッター部搬送ローラ対30、31が配置されている。記録部11により紙面に画像が形成された記録紙3は、ロータリーカッター30により所望の長さに切断され、排紙トレイ32に収容される。
制御部50は、エンコーダ18、先端検知センサ26及び紙有検知センサ27からの入力に基づき、メイン搬送下ローラ19b、各サブ搬送ローラ20〜25の回転速度、加速度等を制御する。
次に、記録紙3の搬送についてさらに詳しく述べる。
まず、記録紙3は以下の手順により装置本体にセットされる。
不図示の付勢力解除機構によりスキュー取り部7の斜送上ローラ8a、9aの斜送下ローラ8b、9bへの付勢を解除し、斜送上ローラ8a、9aが斜送下ローラ8b、9bから離間した位置に保持された状態にしておく。この状態において、使用者によって、回転軸4にセットされた後に記録紙3の先端を斜送ローラ対8、9のニップ部まで導入させる。
しかる後に不図示の付勢力解除機構を斜送上ローラ8a、9aを斜送下ローラ8b、9bに付勢する状態に戻してセットを完了する。スキュー取り部7の斜送ローラ対8、9は、記録紙3を突き当てコロ10a、10bに付勢する付勢力を記録紙3に与え、かつ記録紙3を搬送方向に送る搬送力を記録紙3に与えることができるようになっている。このため、画像形成のために記録動作が開始されると、記録紙3を記録部11に向けて常に略一定の姿勢・位置に送り出すことができる。
図3から図6は、記録開始時におけるスキュー取り部7における記録紙3の姿勢・位置の動きの代表的な例を示したものである。
図3は記録開始時において記録紙3が突き当てコロ10と反対側に寄った位置にある場合を示す。図4は記録開始時において記録紙3が突き当てコロ10側に寄った位置にある場合を示す。図5は記録開始時において記録紙3が斜行して突き当てコロ10側の紙先端の方が搬送方向の下流側にある場合を示す。図6は記録開始時において記録紙3が斜行して突き当てコロ10と反対側の紙先端の方が搬送方向の下流側にある場合を示す。
ここで、記録紙3の紙幅方向の中心線に対して突き当てコロ10側にあるガイド板6aは、スキュー取り部7の突き当てコロ10a、10bの中心線を結んだ位置よりも内側(記録紙3の中心側)に配置される。すなわち、ガイド板6aは、図中の二点鎖線で示す、搬送姿勢位置からの距離Aの位置に配置される。
またガイド板6aと対となるガイド板6bは、図中の二点鎖線で示す、搬送姿勢位置からの距離Bに配置されている。これは、記録開始時において、記録紙3が、突き当てコロ10側に寄った位置(図4参照)や、斜行して突き当てコロ10と反対側の紙先端の方が搬送方向の下流側にある場合(図6参照)を考慮したものである。すなわち、このような場合でも記録紙3の先端が、突き当てコロ10a、10bに当接して決められた搬送姿勢位置(図中の一点鎖線で示す位置)よりも内側(記録紙3の中心側)で突き当てコロ10aに当たるような位置に配置されている。
また、斜行して突き当てコロ10と反対側の紙先端の方が搬送方向の下流側にある場合(図6)でも、斜送上ローラ8a、9aの搬送方向に対して角度、斜送下ローラ8b、9bへの付勢力は、以下の要件を満たすように設定されている。
すなわち、スキュー取り部7の斜送ローラ対8、9は、記録紙3を突き当てコロ10a、10bに付勢する付勢力を記録紙3に与え、かつ記録紙3を搬送方向に送る搬送力を記録紙3に与えることができるように設定されている。
また、それにより記録紙3の先端が搬送部16のメイン搬送ローラ対19にニップされるまでに、常に略一定の姿勢・位置(図3〜図6の(d)参照)を取り得るように設定されている。
また、斜送ローラ対8、9、突き当てコロ10a、10bの位置も、記録紙3の先端が搬送部16のメイン搬送ローラ対19にニップされるまでに、常に略一定の姿勢・位置(図3〜図6の(d)参照)を取り得るように設定されている。
これにより、各場合において記録紙3は、スキュー取り部7により姿勢・位置が決められて、その先端が搬送部16のメイン搬送ローラ対19に略直角に侵入してニップされるように搬送される。すなわち、記録開始時に記録紙3が突き当てコロ10と反対側に寄っていると(図3(a))、搬送が開始されると、斜送ローラ対8により記録紙3は突き当てコロ10aに向けて付勢されながら斜送ローラ対10にニップされる(図3(b))。さらに突き当てコロ10bに向けて付勢され(図3(c))、記録紙3の端部が突き当てコロ10a、10bに当接して、搬送姿勢位置に位置決めされてメイン搬送ローラ対19に略直角に侵入してニップされるように搬送される(図3(d))。
次に、記録開始時において記録紙3が突き当てコロ10側に寄っている場合(図4(a))について説明する。この場合、記録紙3は、搬送が開始されると、斜送ローラ対8およびガイド板6により、突き当てコロ10側端部が搬送姿勢位置からの距離Aの位置で搬送方向の下流側に搬送されて突き当てコロ10aに当接する(図4(b))。記録紙3fは、さらに斜送ローラ対10にニップされて突き当てコロ10bに向けて付勢されながら搬送される(図4(c))。そして、記録紙3の端部が突き当てコロ10a、10bに当接して、搬送姿勢位置に位置決めされてメイン搬送ローラ対19に略直角に侵入してニップされるように搬送される(図4(d))。
次に、記録開始時において記録紙3が斜行して突き当てコロ10側の紙先端の方が搬送方向の下流側にある場合(図5(a))について説明する。この場合、搬送が開始されると、斜送ローラ対8により、記録紙3は突き当てコロ10aに向けて付勢されながら斜送ローラ対10にニップされる(図5(b))。さらに突き当てコロ10bに向けて付勢される(図5(c))。そして、記録紙3の端部が突き当てコロ10a、10bに当接して、搬送姿勢位置に位置決めされてメイン搬送ローラ対19に略直角に侵入してニップされるように搬送される(図5(d))。
次に、記録開始時において記録紙3が斜行して突き当てコロ10と反対側の紙先端の方が搬送方向の下流側にある場合(図6(a))について説明する。搬送が開始されると、斜送ローラ対8により、記録紙3は突き当てコロ10aに向けて付勢されながら斜送ローラ対10にニップされる(図6(b))。このときガイド板6bにより記録紙3の先端は、突き当てコロ10a、10bの中心線を結んだ位置よりも内側(記録紙3の中心側)の位置で突き当てコロ10aの当接するように配置されている。このため、記録紙3は、突き当てコロ10aに当接後、さらに斜送ローラ対10にニップされて突き当てコロ10bに向けて付勢されながら搬送される(図6(c))。そして、記録紙3の端部が突き当てコロ10a、10bに当接して、搬送姿勢位置に位置決めされてメイン搬送ローラ対19に略直角に侵入してニップされるように搬送される(図6(d))。
搬送部16には前述のとおり、メイン搬送ローラ対19、およびサブ搬送ローラ対20〜25が配置されている。各サブ搬送上ローラ20a〜25aの各サブ搬送下ローラ20b〜25bへの付勢力はそれぞれ等しく設定されている。さらにメイン搬送上ローラ19aのメイン搬送下ローラ19bへの付勢力は、各サブ搬送上ローラ20a〜25aの各サブ搬送下ローラ20b〜25bへの付勢力の総和よりも大きくなるように設定されている。さらに前述した斜送ローラ対8、9における斜送上ローラ8a、9aの斜送下ローラ8b、9bへの付勢力は、各サブ搬送上ローラ20a〜25aの各サブ搬送下ローラ20b〜25bへの付勢力の総和よりも小さくなるように設定されている。
ここで、メイン搬送ローラ対19による搬送力をf1、各サブ搬送ローラ対20〜25による各搬送力をf2、各斜送ローラ対8、9による各搬送力f3とする。また、各サブ搬送ローラ対20〜25による各搬送力の総和をF2、各斜送ローラ対8、9による各搬送力の総和をF3とする。このとき、
f1>f2>f3、かつ、f1>(F2+F3)
という関係となるように各搬送力を設定することで、記録部11において記録紙3の斜行・蛇行等を極力小さくして搬送を行うことを目的としている。すなわち、斜送ローラ対8、9による搬送力が最も小さくなるように設定されている。よって、斜送ローラ対8、9が記録紙3に搬送方向と直角の方向に与える搬送力の影響が最も小さくなり、かつメイン搬送ローラ対19による搬送力が最も大きくなる。このため、メイン搬送ローラ対19による搬送力が支配的となり、記録紙3の斜行・蛇行等を極力小さくして記録紙3の搬送を常時安定させることができ、よって、画像品位を常に良好な状態に保つことを可能にしている。
実験を行った結果、記録紙3の斜行・蛇行等を極力小さくして記録紙3の搬送を常時安定させることができたときの各ローラ対における上ローラの下ローラへの付勢力の値を以下の表に示す。
したがって、この場合、f1=29.4N、f2=1.96N、f3=0.12N、F2=11.76N、F3=0.24N、(F2+F3)=12Nであり、
f1>f2>f3、かつ、f1>(F2+F3)の関係を満たしている。
なお、本実施例においては斜送ローラ対が2組、サブ搬送ローラ対が6組ある構成であるが、それぞれの組数が違っていても、f1>f2>f3、かつ、f1>(F2+F3)を満たしていれば良い
このとき、記録紙3の蛇行量は300mmの搬送距離内において、おおよそ±15μm以内に抑えることが可能となった。
次に、記録動作における記録紙3の搬送についてさらに詳しく述べる。図7は記録動作時のスキュー取り部7から記録部11における記録紙3の搬送の状態を示す概略図である。
搬送部16には、プラテン17と、メイン搬送ローラ対19と、サブ搬送ローラ対20〜25が配置されている。メイン搬送ローラ対19は、記録紙3の搬送方向の最上流側にある記録ヘッド14aの上流側に配置されている。サブ搬送ローラ対20〜25は、各記録ヘッド14a〜14fの間、及び最下流側の記録ヘッド14fの下流側に配置されている。サブ搬送ローラ対20〜24は各記録ヘッド14a〜14fの間に配置されており、サブ搬送ローラ対25は、最下流側の記録ヘッド14fの下流側に配置されている。
さらにメイン搬送ローラ対19の搬送方向の上流側に先端検知センサ26が設けられている。また、サブ搬送ローラ25の搬送方向の下流側には、紙有検知センサ27が設けられている。記録動作が開始され、記録紙3が給紙部2/スキュー取り部7から記録部11に向けて所定の搬送速度で送り出されてサブ搬送ローラ対20のニップ部に挟持される(図7(b))。この状態にて、最上流側にある記録ヘッド14aによりシアンインクの吐出による画像形成が開始される。さらに記録紙3の搬送が進み、サブ搬送ローラ対21のニップ部に挟持されると(図7(c))、記録ヘッド14bによりマゼンタインクの吐出による画像形成が開始される。以下同様に、サブ搬送ローラ対22〜25のニップ部にそれぞれ挟持されると、挟持した各サブ搬送ローラ対22〜25のそれぞれ上流側にある各記録ヘッド14c〜14fにより、各色インクが吐出され、画像形成が開始される(図7(d))。このような制御の主たる目的は、できる限り記録紙3の先端付近から画像形成を開始し、画像形成を行わない無駄な領域を配することである。ただし、記録紙3の先端から画像形成を開始してしまうと、先端が各記録ヘッド14a〜14fの下流にある各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部に突入したときの突入ショックにより、画像に乱れが生じ、形成される画像の品位が劣化する場合がある。そこで、各記録ヘッド14a〜14fのそれぞれ下流側にある各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部に挟持されてから画像形成を開始する。これにより、記録紙3の各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部への突入ショックによる画像への影響を極力排除しつつ、できる限り記録紙3の先端付近から画像形成を開始することができる。よって、画像の品位を保ちつつ、被記録媒体である記録紙3の無駄を極力排除することが可能となる。
なお、各サブ搬送ローラ対20〜25による記録紙3の挟持タイミングは、先端検知センサ26により記録紙3の先端の通過が検知され、その検知タイミングと搬送速度から求められる。
記録部11で画像形成された記録紙3はカッター部28に送られ、所望の長さに切断されて排紙トレイ32に排紙される。しかる後に、先ず不図示の付勢力解除機構によりスキュー取り部7の斜送上ローラ8a、9aの斜送下ローラ8b、9bへの付勢を解除する。そして、カッター部のカッター部搬送ローラ対30、31、搬送部16のメイン搬送ローラ対19、およびサブ搬送ローラ対20〜25、給紙部2の回転軸4を逆転させる。これにより、記録紙3の先端をスキュー取り部7の斜送ローラ対8により挟持される位置まで巻き戻す。さらに不図示の付勢力解除機構を斜送上ローラ8a、9aを斜送下ローラ8b、9bに付勢する状態に戻し、記録動作開始時と同じ状態(図7(a)の状態)に戻して一連の記録動作を完了する。
次に、本発明における記録動作開始時のメイン搬送ローラ19、およびサブ搬送ローラ20〜25の速度制御について説明する。
図8は本発明を用いない場合における記録動作開始時のメイン搬送ローラ19、およびサブ搬送ローラ20〜25の速度制御を示す図である。図9は本発明における記録動作開始時のメイン搬送ローラ19、およびサブ搬送ローラ20〜25の速度制御を示す図である。
本発明における装置本体1では、記録ヘッド部12の下に配置したプラテン17上を記録紙3が移動するのと同期して、記録ヘッド14により記録情報に応じてインクを記録紙3の紙面上に吐出することで、画像形成が行われる。その際、形成される画像の品位は、記録紙3の搬送精度と大きく関係する。記録紙3の搬送精度を考える上では、大きく分けて、搬送方向成分(x方向)と搬送方向と直角方向成分(y方向)の2つがある。
このうち、y方向成分を低下させる代表的な要因として、記録紙3の斜行・蛇行等、記録紙3の紙幅方向への移動がある。これに関しては既に述べたとおり、スキュー取り部7の構成、および斜送ローラ対8、9、メイン搬送ローラ対19、サブ搬送ローラ対20〜25の搬送力のバランス等の関係により、記録紙3の斜行・蛇行等を極力小さくする。これにより、記録紙3の搬送を常時安定させ、記録ヘッド14からのインクの吐出により形成される画像の品位を常に良好な状態に保つことを可能にしている。
一方、x方向成分を低下させる代表的な要因として、記録紙3の搬送量(もしくは搬送速度)の変動がある。例えば、ローラの芯ズレや表面形状、ローラへの駆動伝達のムラ等が、記録紙3の搬送量を変動させる。これに対して、既に述べたとおり、装置本体1内において、記録紙3の搬送に対してその搬送力が最も影響しているメイン搬送ローラ対19にエンコーダ18を取り付けて、メイン搬送ローラ対19の回転ムラを検知する。そして、その結果を記録ヘッド14のインクの吐出タイミングを制御することにより、形成される画像の安定化・高品位化を図っている。
さらに本発明においては、記録動作開始時のメイン搬送ローラ19、およびサブ搬送ローラ20〜25の速度制御により、形成される画像の安定化・高品位化を図っている。装置本体1は、複数の記録ヘッド14とその前後に駆動を与えられた搬送ローラ対を有する。すなわち、複数の記録ヘッド14の、記録紙3の搬送方向の上流側及び下流側にメイン搬送ローラ対19およびサブ搬送ローラ対20〜25を有する。ある記録ヘッド14の搬送方向上・下流にある搬送ローラの、芯ズレや表面形状、駆動伝達のムラ等により、その記録ヘッド14の直下の記録紙3は、上下方向(z方向)にバタツキを生じてしまうことがある。搬送中にz方向に記録紙3がバタツキを生じてしまうと、単位時間あたりに送られる搬送距離が長くなる(すなわち単位時間あたりに進むことができる距離が短くなる)。このため、各搬送ローラが一定の回転速度で搬送を行っていたとしても、結果として記録紙3の搬送量が減少してしまう。
そこで、記録ヘッド14の前後(上流側及び下流側)にある搬送ローラにおいて、搬送方向の下流側の回転速度を搬送方向の上流側の回転速度よりも速くしている。これにより、記録紙3にテンションがかかるようにして(常に搬送方向の下流側に向かって引っ張られる状態にして)、このバタツキを抑制する方法が知られている。
本実施形態の装置本体1は、上述したように、複数の記録ヘッド14とその前後に駆動を与えられた搬送ローラ対(メイン搬送ローラ対19およびサブ搬送ローラ対20〜25)を有する構成になっている。よって、記録紙3を搬送しているときの回転速度は、サブ搬送ローラ対25が最も速く、メイン搬送ローラ対19が最も遅くなるように設定されている。
ここで、図8に示すように、メイン搬送ローラ対19、およびサブ搬送ローラ対の20〜25の回転速度を、それぞれ記録動作開始時からSm、およびSs1〜Ss6に設定したとする。そうすると、記録紙3の先端が、各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部に挟持される度に、記録紙3の搬送速度が断続的に変化してしまうという不具合が生じてしまうことになる。
なお、図8において、Tssは先端検知センサ26が記録紙3の先端を検知したタイミング、Tseは紙有検知センサ27が記録紙3の先端を検知したタイミングを示す。またTmは、記録紙3の先端がメイン搬送ローラ対19のニップ部に挟持されるタイミング、Ts1からTs6は記録紙3の先端が各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部に挟持されるタイミングを示す。また、MM1はメイン搬送ローラ対19の回転速度の変化を示す線、SM1〜SM6はそれぞれサブ搬送ローラ対20〜25の回転速度の変化を示す線である。また、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差はΔSMとなっている。ここで、例えば、記録動作が開始されて記録紙3の搬送が進み、記録紙3の先端がサブ搬送ローラ対20のニップ部に挟持される状況を考える。そうすると、メイン搬送ローラ対19の回転速度Smにより搬送されていた記録紙3の搬送速度は、サブ搬送ローラ対20の回転速度Ss1がSmよりも速いので、太字の点線で示すように断続的に変化してしまうことになる。
従って、形成される画像の中に、部分的な“伸び”等が生じてしまい、画像品位の低下を招いてしまうことになる。同様に、各サブ搬送ローラ対21〜25のニップ部に記録紙3の先端が挟持された状況を考える。この場合、挟持した各サブ搬送ローラ対21〜25の回転速度Ss2〜Ss6はそれぞれその搬送方向の上流側にある各サブ搬送ローラ対20〜24の回転速度Ss1〜Ss5よりも速い。よって、記録紙3の搬送速度は太字の点線で示すように断続的に変化してしまうことになり、画像品位の低下を招いてしまうことになる。
そこで、本発明では、図9に示すような制御を行う。
記録紙3の先端がサブ搬送ローラ対25のニップ部に挟持され、紙有検知センサ27が先端の通過を検知したとき、所定の加速度αにより加速することで各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度を上げ、所定の回転速度Ss1〜Ss6へと変更する。すなわち、制御部50はサブ搬送ローラ対間における回転速度の関係が記録紙3の搬送方向下流側に向けて速くなる速度関係となるように、サブ搬送ローラ対20〜25を所定の回転速度Ss1〜Ss6まで加速させる制御を行う。なお、この制御は、記録紙3の搬送方向の最上流側にあるメイン搬送ローラ対19以外の搬送ローラ対について行われる。また、制御部50は、各搬送ローラ対20〜25間の速度差ΔSは、隣り合う搬送ローラ対20〜25間において一定であるように、各搬送ローラ対の所定の回転速度を規定する。
このような制御を行うことで、記録紙3の搬送速度が断続的に変化してしまうことを防止することができる。ただし、加速を開始するタイミングTseから終了するタイミングTaまでの間、記録紙3の搬送速度が一定割合で変化するが、その変化が画像に及ぼす影響が求める画像品位のレベル内に収まるように加速度αを設定する。
また、メイン搬送ローラ対19の回転速度Smとサブ搬送ローラ対25の回転速度Ss6の速度差も、速度Smで搬送されているときの画像長さと速度Ss6で搬送されているときの画像長さの変化量を考慮して、求める画像品位のレベルに応じて決定される。
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第2の実施形態について、図10を用いて説明する。図10は、本発明に係る画像形成装置の第2の実施形態における記録動作開始時のメイン搬送ローラ19、およびサブ搬送ローラ20〜25の速度制御を示す図である。上記第1の実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
第1の実施形態に係る画像形成装置においては、以下の制御がなされていた。すなわち、記録紙3の先端がサブ搬送ローラ対25のニップ部に挟持され、紙有検知センサ27が先端の通過を検知したとき、所定の加速度αにより各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度を上げ、回転速度Ss1〜Ss6へと変更する。
本実施形態においては、制御部50は、図10に示すような制御を行う。すなわち制御部50は、記録紙3先端が各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部に挟持されて所定の時間差ΔT後、記録紙3先端が直下を通過した記録ヘッド14の下流側にある全サブ搬送ローラ対の回転速度を加速度βでΔSだけ上げる。こうすることで、記録紙3の搬送速度は各サブ搬送ローラ対20〜25の加速中に一定の割合で変化してしまうが、その変化量を小さくし、かつ変化する領域を分散することが可能になる。なお、制御部50は、各搬送ローラ対20〜25間の速度差ΔSは、隣り合う搬送ローラ対20〜25間において一定であるように、各搬送ローラ対の所定回転速度を規定する。
加速度βは、各サブ搬送ローラ対20〜25が加速を開始してから終了するまでの間において記録紙3の搬送速度を一定割合で変化させることによって画像に及ぼす影響が、求める画像品位のレベル内に収まるように設定される。なお、加速度βは、サブ搬送ローラ対のニップ部に挟持される時間差〔Tsn+1―Tsn〕からΔTを引いた時間、すなわち〔Tsn+1―Tsn―ΔT〕内にサブ搬送ローラ対の速度をΔSだけ上げることができる範囲内とする。本発明の効果を得るためである。なお、nは1〜6の整数である。
また、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm及び各サブ搬送ローラ対20〜25の各回転速度Ss1〜Ss6の間の速度差ΔSも、各々の速度で搬送されているときの画像長さの変化量を考慮して、求める画像品位のレベルに応じて決定される。
なお、時間差ΔTは0から〔Tsn+1―Tsn〕までの値を取り得るが、本実施形態においては、以下の設定としている。記録紙3の先端が記録部11の搬送方向の最下流側にあるサブ搬送ローラ対25のニップ部に記録紙3の先端が挟持されるタイミングをTs6とする。また、サブ搬送ローラ対25の搬送方向の下流側に紙有検知センサ27により先端の通過が検知されるタイミングTseとする。このとき、時間差ΔTはこれらの差〔Tse―Ts6〕と等しくなるように設定し、各サブ搬送ローラ対20〜25の加速時に、記録紙3の搬送速度変動が画像に及ぼす影響がなるべく等しくなるように設定してある。
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第3の実施形態について、図11を用いて説明する。図11は、本発明に係る画像形成装置の第3の実施形態における記録動作開始時のメイン搬送ローラ19、およびサブ搬送ローラ20〜25の速度制御を示す図である。上記第1、および第2の実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
第1の実施形態に係わる画像形成装置においては、制御部50により以下の制御が行われることを説明した。すなわち、記録紙3の先端がサブ搬送ローラ対25のニップ部に挟持され、紙有検知センサ27が先端の通過を検知したとき、所定の加速度αにより各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度を上げて、回転速度Ss1〜Ss6へと変更する。
また、第2の実施形態に係わる画像形成装置においては、制御部50により以下の制御が行われることを説明した。すなわち、記録紙3の先端が各サブ搬送ローラ対20〜25のニップ部に挟持された後、所定の時間差ΔT後に、記録紙3の先端が直下を通過した記録ヘッド14の下流側の全サブ搬送ローラ対の回転速度を加速度βでΔSだけ上げるものである。
本実施形態においては、制御部50により、図11に示すような制御が行われる。記録動作が開始されて記録紙3が搬送されて行き、記録紙3の先端が記録部11の搬送方向の最下流側にあるサブ搬送ローラ対25のニップ部に挟持される。さらにサブ搬送ローラ対25の搬送方向の下流側に紙有検知センサ27により先端の通過が検知される。すなわち、記録紙3の先端が記録紙3の搬送方向の最下流側に配置されたサブ搬送ローラ対25を通過した状態を紙有検知センサ27が検知する。このとき、所定の加速度αに加速し、各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度を上げ、それぞれ回転速度Ss1〜Ss6へと変更する。なおかつメイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔS1〜ΔS6を搬送方向の下流側にあるサブ搬送ローラ対になるほど大きくするというものである。すなわち、制御部50は、各サブ搬送ローラ対20〜25間の速度差ΔS1〜ΔS6は、隣り合う搬送ローラ対20〜25間において搬送方向の下流側に向かうに従い大きくなるように、各搬送ローラ対20〜25の所定の回転速度を制御する。
装置本体1の搬送部16において、メイン搬送ローラ対19のメイン搬送上ローラ19aは最も大きな付勢力でメイン搬送下ローラ19bに付勢される。また、各サブ搬送ローラ対20〜25の各サブ搬送上ローラ20a〜25aはそれよりも弱い付勢力で各サブ搬送下ローラ20b〜25bに付勢されている。
そこで本実施形態のように各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度をメイン搬送ローラ対19から遠くなるに従って速くする。これにより、メイン搬送ローラ対19から離れる搬送方向の下流側においても、記録紙3により大きなテンションがかかる。その結果、記録ヘッド14直下の記録紙3のz方向のバタツキを抑え、搬送精度の悪化を抑制することができる。
なお、回転速度Sm、及び各回転速度Ss1〜Ss6の各々の間の速度差ΔS1〜ΔS6は、各速度で搬送されているときの画像長さの変化量が画像に及ぼす影響が、求める画像品位のレベル内に収まるように決定される。
(第4の実施形態)
次に、本発明に係る画像形成装置の第4の実施形態について、図12〜図17を用いて説明する。
図12は記録紙3にカールが生じている場合と生じていない場合における搬送ローラ対のニップ部での状態を示す概略図である。図13は、記録ヘッド14の直下の記録紙3のz方向の紙浮き量の絶対値の変化を示す概略図である。
図14は、記録紙3の使い始めから使い終わりの間における、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSの変化のさせ方を示す図である。
ここで、記録紙3の使い始めとは、ロール外側で記録紙の残り長さがLの状態を指す。また、使い終わりとは、巻き芯側で記録紙の残り長さが0の状態を指す。
図15はメイン搬送ローラ対19の回転速度Sm及び各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSを変化させたときの記録動作開始時のメイン搬送ローラ19及びサブ搬送ローラ20〜25の速度制御図である。
図16および図17は、記録紙3の使い始めから使い終わりの間における、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSの他の変化のさせ方を示す図である。
図18〜図20は、記録紙3の使い始めから使い終わりの間における、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差に差を設けた場合の変化のさせ方を示す図である。なお、上記第1〜第3の実施形態と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
第1〜第3の実施形態における制御部50による制御は、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSは記録紙3の使用量の変化に応じて変更するものではなかった。
しかし、ロール状に巻かれた記録紙3では、巻き癖によってロールから送り出された搬送中の被記録媒体もカールしてしまうので、搬送記録ヘッド14の直下の記録紙3のz方向のバタツキが助長され、搬送精度が悪化してしまう。
すなわち、カールが生じている場合、図12(b)に示すように巻き癖(破線)によって生じる紙がカールしようとする力の影響、いわゆる紙の“コシ”が、メイン搬送上ローラ19aのメイン搬送下ローラ19bへの付勢力と反対の方向に働く。また、このカールしようとする力は、各サブ搬送上ローラ20a〜25aの各サブ搬送下ローラ20b〜25bへの付勢力と反対の方向にも働く。
これにより、カールがない場合(図12(a))に比して、各サブ搬送上ローラ20a〜25aの各サブ搬送下ローラ20b〜25bの付勢力を弱めてしまい、z方向のバタツキを助長し搬送力のバランスを崩し、搬送精度が悪化する。
さらに、図13に示すように、記録ヘッド14の直下の記録紙3のz方向のバタツキ(紙浮き量)の絶対値は、巻き癖によって生じる紙がカールしようとする力がロール外側部分に比べて大きくなる。よって、ロールの巻き芯に近づくに従って、すなわち記録紙3の残り長さが少なくなるに従って大きくなることが実験の結果求められている。これにより、ロールの巻き芯に近づくに従って搬送力を弱める作用がより強くなるので、搬送精度も悪化してしまう。そこで、ロール状に巻かれた記録紙3の使い始め(ロール外側)から使い終わり(巻き芯)の全範囲にわたって記録紙3の搬送精度を安定化させることが必要になる。
そこで、各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ssを速くして記録紙3により大きなテンションがかかるようにする制御ことが考えられる。これにより、巻き癖によってカールしようとする記録紙3を搬送方向の下流側に向かって引っ張る力を大きくして記録ヘッド14直下の記録紙3のz方向のバタツキを抑えることができる。
しかしながら、各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ssを速くすると、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSが大きくなってしまう。そして、加速度αのままでは加速を終了するタイミングTaが遅くなってしまい、加速を開始するタイミングTseから終了するタイミングTaまでの時間が長くなる。その結果、記録紙3の搬送速度が一定の割合で変化する時間も長くなってしまい、その変化が画像に及ぼす影響を与える時間帯が増えることになる。
一方で、加速を開始するタイミングTseから終了するタイミングTaまでの時間を変えずに加速度をより速くした場合、画像品位に及ぼす影響が増化してしまう。これは、加速を開始するタイミングTseから終了するタイミングTaまでの間で記録紙3の搬送速度が変化する割合が大きくなってしまうためである。
そこで本実施形態においては、制御部50は、図14に示すような制御を行うことで上記課題を解決した。すなわち、制御部50は、記録紙3の使い始めから使い終わりの間で、回転速度Sm、回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSを、記録紙3の残り長さに応じてΔSs〜ΔSeまでの間で変更する制御を行う。例えば、ある記録動作開始時において、記録紙3の残り長さがL1だったとき、速度差をΔS1にする。
これにより、図15に示すように記録動作中の各サブ搬送ローラ対20〜25の安定動作領域(記録動作開始時の加速が終了するタイミングTa’以降)での各回転速度はSs1’〜Ss6’となる。よって、記録紙3の使い始め時の各回転速度は、記録紙3の残り長さがL1以上ある時よりも速くなる。
これにより、使用に伴って記録紙3の残り長さが短くなるに従い、すなわちロールの巻き芯に近づくに従い、記録ヘッド14の搬送方向上・下流にあるメイン搬送ローラ対19、もしくはサブ搬送ローラ対20〜25の速度差は大きくなる。このようにして記録紙3にかかるテンション(常に搬送方向の下流側に向かって引っ張る力)が大きくなるようにした。
これにより、ロール状に巻かれた記録紙3の使い始め(ロール外側)から使い終わり(巻き芯)の全範囲にわたって記録ヘッド14の直下における記録紙3のz方向のバタツキを抑えて搬送精度を安定化させることが可能となる。また、回転速度Ss1〜Ssの高速化、すなわちメイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSを大きくすることによって生じる弊害を抑制することが可能となる。なおこの場合においても、速度差ΔSs〜ΔSeの値、及び各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度を上げる加速度および加速時間は、各々の速度で搬送されているときの画像長さの変化量を考慮し、求める画像品位に応じて決定される。
ところで、制御部50における、上記メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSは、記録動作開始時の記録紙3の残り長さによって決定されることになる。
したがって、一度の記録ジョブ枚数が多いときや、ロールの巻き芯近くにおいて記録動作が開始されると、一度の記録動作内における最初と最後での記録紙3のz方向のバタツキ(z方向の上下の動き)の絶対値の差が大きくる。その結果、搬送精度に差を生じてしまう恐れがある。
そこで、このような問題を回避するため、制御部50は、記録紙3の残り長さがある値より小さくなったら、実行中の記録動作を一旦停止して、残りの記録ジョブを新たな記録動作として開始する制御を行う。そして、制御部50は、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差ΔSを再設定する。
例えば、図14に示す例では、記録紙3の残り長さがLi〜Livの各長さになったときに記録動作を一旦止め、残りの記録ジョブを開始する時に回転速度Sm、および各速度差ΔSを、それぞれΔSi〜ΔSivになるように予め設定してある。これにより一度の記録枚数が多いときや、ロールの巻き芯近くにおいて記録動作が開始された場合においても、搬送精度の変動がなるべく小さくなるようにすることができるので、画像品位を安定化させることが可能となる。
ここでは、ΔSs、ΔSi、ΔSii、ΔSiii、ΔSiv、ΔSeを等間隔とし、記録紙3の搬送速度が変化する割合をなるべく一定にし、画像品位に及ぼす影響がなるべく小さくなるように設定してある。しかしながら、分割数や分割の仕方は、要求する画像品位を満たすものであれば、他の条件でももちろん良い。例えば、搬送ローラ対の前記所定の回転速度を、記録動作の停止前における所定の回転速度よりも速くするものであってもよい。あるいは、搬送ローラ対間の回転速度の速度差を、記録動作の停止前における速度差よりも大きくしてもよい。
図14では、回転速度Sm、および各速度差ΔSを、記録紙3の残り長さに応じてΔSs〜ΔSeまでの間で曲線的に変化させるように設定してあるが、要求される画像品位を実現する範囲内においては他の設定の仕方であっても良い。例えば、図16に示すように、ΔSs〜ΔSeの間で直線的に変化させるような設定でも良い。また、図14及び図16に示す例では、ΔSs〜ΔSeの間で連続的に値を取り得るように設定してあるが、図17に示すように、離散的に設定しても良い。すなわち、記録動作開始時における記録紙3の残り長さがL〜Liの範囲内においては各速度差をΔSsとする。さらに、Li〜Liiの範囲においてはΔSiとし、Lii〜Liiiの範囲においてはΔSiiとし、Liii〜Livの範囲においてはΔSiiiとし、Liv〜0の範囲においてはΔSeとしてもよい。なお、これらの設定値はこれに限定されるものではない。
また、上記構成では、回転速度Sm、および各速度差ΔSを記録紙3の使用量の変化に応じて変更し、その際、回転速度Sm、および各速度差ΔSはΔSs〜ΔSeの間のある値にすべてが等しくなる構成である。しかし、第3の実施形態において説明した構成としてもよい。すなわち、回転速度Sm、および各速度差を搬送方向の下流側にあるサブ搬送ローラ対になるほど大きくする。なおかつ記録紙3の残り長さに応じて、回転速度Sm、および各回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差も大きくしていくような構成でも良い(図18参照)。
なお、メイン搬送ローラ対19の回転速度Sm、および各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度Ss1〜Ss6間の各速度差の変化のしかたは、図18に示したような曲線的な変化のさせ方に設定しても良い。あるいは、図19に示すように直線的な変化のさせ方に設定しても良い。また、図20に示すように離散的な変化のさせ方に設定しても良く、また、その他の設定方法であっても良い。
また、上記第1〜第4の実施形態のいずれにおいても、各サブ搬送ローラ対20〜25の回転速度の制御は、記録紙3の搬送方向の下流側から順に、各搬送ローラ対20〜25を所定の回転速度まで加速させるものであってもよい。すなわち、サブ搬送ローラ対25、24、23、22、21、20の順に加速させていくものであってもよい。