JP2009297837A - ナノ構造体含有フィルムの製造方法およびナノ構造体含有フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】凹凸形状を有するフィルム状の基材1の表面に、ナノ構造体形成材料からなる被覆膜2を形成する工程と、前記被覆膜のうち、前記凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された被覆膜の一部または全部を除去し、ナノ構造体3を形成する工程と、を有することを特徴とするナノ構造体含有フィルムの製造方法、および、前記基材表面に、前記ナノ構造体の少なくとも一部を被覆する樹脂層5を形成する工程を、さらに有する前記ナノ構造体含有フィルムの製造方法、並びにこれらのナノ構造体含有フィルムの製造方法により製造されたナノ構造体含有フィルム。
【選択図】図1
Description
従来の、微細な構造体の製造方法としては、鋳型法と呼ばれる手法や、リソグラフィー法を用いる方法などが知られている。たとえば非特許文献1には、鋳型微粒子を溶液に分散させて、該鋳型微粒子の表面を薄膜で被覆した後、鋳型微粒子を除去することによって、球状カプセル型の中空三次元構造を有するナノ材料を製造する方法が提案されている。
また、本出願人等は、ナノパターンが形成された鋳型表面を、金属酸化物膜や、金属酸化物と有機化合物との複合膜で被覆し、最終的に該鋳型を除去することによりナノ構造体を製造する方法を提案している(特許文献1〜2参照。)。
アドバンスド・マテリアルズ,13(1),11−22頁(2001年)
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、微細なナノ構造体を有するフィルムを簡便に製造し得る方法を提供することを目的とする。
すなわち、本発明の第一の態様は、凹凸形状を有するフィルム状の基材の表面に、ナノ構造体形成材料からなる被覆膜を形成する工程と、前記被覆膜のうち、前記凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された被覆膜の一部または全部を除去し、ナノ構造体を形成する工程と、を有することを特徴とするナノ構造体含有フィルムの製造方法である。
本発明の第二の態様は、前記第一の態様のナノ構造体含有フィルムの製造方法により製造されるナノ構造体含有フィルムである。
本発明のナノ構造体含有フィルムの製造方法は、凹凸形状を有するフィルム状の基材の表面に、ナノ構造体形成材料からなる被覆膜を形成する被覆膜形成工程と、前記被覆膜のうち、前記凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された被覆膜の一部または全部を除去し、ナノ構造体を形成するナノ構造体形成工程と、を有することを特徴とする。
まず、凹凸を有するフィルム状の基材1を用意する(1−1)。この基材1の表面に、ナノ構造体形成材料からなる被覆膜2を形成する(1−2)。次に、被覆膜2のうちの、前記凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された部分を除去する。これにより、基材1の凸部の側壁部分に形成された被覆膜2からなるナノ構造体3が形成されるため、基材1表面上にナノ構造体3を有するナノ構造体含有フィルム4が製造される(1−3)。
以下、各工程とそこで用いられる材料について、より詳細に説明する。
図1に示すように、基材はナノ構造体含有フィルムの一部を構成するものである。本発明においては、膜形成能を有する有機化合物を基材成分とする基材であることが好ましい。
なお、本発明においては、1種類の基材成分からなる基材であってもよく、複数種類の基材成分からなる基材であってもよい。
前記基材成分としては、一般的に膜形成用材料の基材成分として用いられているものが利用でき、分子量が500以上2000以下の低分子量の有機化合物であってもよく、分子量が2000より大きい高分子量の高分子化合物であってもよい。前記低分子化合物としては、通常、非重合体が用いられる。高分子化合物としては、通常、樹脂(重合体、共重合体)が用いられ、その場合は、「分子量」として、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算の質量平均分子量を用いるものとする。以下、単に「樹脂」という場合は、分子量が2000以上のものを示すものとする。
本発明においては、該樹脂として、COC、COP、ポリビニルアルコール、またはPMMA等の透明性の高い樹脂を用いることにより、透明性に優れたナノ構造体含有フィルムを製造することができる。
その他、安全性、操作簡便性等に優れることから、該樹脂として、水溶性樹脂を用いることも好ましい。水溶性樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等の高分子電解質、アガロース等の多糖系高分子、およびそれらの混合物等が挙げられる。
凹凸形状の具体例としては、たとえば、凹部や凸部の形状が、矩形状、円柱状、ホール状、ライン状およびそれらのネットワーク構造や分岐構造、多角形およびそれらの複合/繰り返し構造、集積回路などに見られるような回路状構造、格子形状を採用することができる。なお、本発明において、ライン状とは、連続的で切れ目のないひものような形状を意味し、直線状であってもよく、曲線状であってもよく、折れ曲がり構造を有しているものであってもよい。
また、たとえば、基材表面に、凸部により円柱が形成されている場合には、被覆膜を形成した後に凹部の底面部分及び凸部の頂面部分を除去し、凸部の側壁部分の被覆膜のみを残すことにより、基材上に、凸部の側壁部分に沿ったシリンダ形状(幅が被覆膜の厚さであり、高さが、残った側壁部分の高さであり、内径が凸部の円柱の外径と同じであるシリンダ)のナノ構造体を形成することができる。
本発明の基材としては、後の被覆膜形成工程に対する影響が少ないこと、また、基材が感放射線性を有する場合であっても有さない場合であっても凹凸形状を形成し得ることから、金型を用いたインプリンティング法により作製された基材であることが好ましい。なお、金型としては、たとえば、リソグラフィー法によりパターンを形成した有機レジストをアルゴンプラズマ処理等により硬化させたものを用いることにより、多様なパターンを有する金型を得ることができる。
ナノ構造体形成材料としては、基材から区別可能な薄膜である被覆膜を形成し得るものであれば、特に限定されるものではなく、ナノ構造体やナノ構造体含有フィルムに付与する所望の性質等を考慮して、適宜選択して用いることができる。本発明においては、ナノ構造体形成材料として、たとえば、金属、金属酸化物、樹脂等の有機化合物等が挙げられる。本発明においては、ナノ構造体形成材料としては、1種類の形成材料からなるものであってもよく、複数種類の形成材料からなるものであってもよい。なお、基材から区別可能であるとは、基材表面に被覆膜を形成する場合に、インターミキシングの問題を生ずることなく薄膜を形成し得ることを意味する。
金属酸化物としては、たとえば、ケイ素(金属ケイ素)、チタン、ジルコニウム、ハフニウム等の金属の酸化物等が挙げられる。
樹脂等の高分子の有機化合物としては、電荷を有するポリマーであるポリアニオンおよび/またはポリカチオンが好ましく、ポリアニオンは、ポリグルタミン酸、スルホン酸、硫酸、カルボン酸など負荷電を帯びることのできる官能基を有するものであり、ポリスチレンスルホン酸(PSS)、ポリビニル硫酸(PVS)、デキストラン硫酸、コンドロイチン硫酸、ポリアクリル酸(PAA)、ポリメタクリル酸(PMA)、ポリマレイン酸、ポリフマル酸などが好ましい例としてあげられる。これらの中でも、ポリスチレンスルホン酸(PSS)およびポリマレイン酸が特に好ましい。一方、ポリカチオンは、4級アンモニウム基、アミノ基などの正荷電を帯びることのできる官能基を有するものであり、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)、ポリビニルピリジン(PVP)、ポリリジンなどが好ましい例としてあげられる。これらの中でも、ポリアリルアミン塩酸塩(PAH)およびポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(PDDA)が特に好ましい。
さらに、上記ポリカチオン・ポリアニオンに限らず、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、ポリピロール等の水酸基やカルボキシ基を有する高分子化合物、デンプン、グリコゲン、アルギン酸、カラギーナン、アガロース等の多糖類、ポリイミド、フェノール樹脂、ポリメタクリル酸メチル、アクリルアミドなどのポリアミド、塩化ビニルなどのポリビニル化合物、ポリスチレンなどのスチレン系ポリマー、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン、ポリアセチレンやそれらポリマーの誘導体や共重合体も広く用いることができる。
また、低分子の有機化合物としては、鋳型表面を被覆できるものであれば広く用いることができ、長鎖アルキルを有する界面活性剤分子や、長鎖チオール、ハロゲン化物が好ましい例として挙げられる。さらに水素結合によって、ネットワーク構造を形成するような、アミノトリアジン、環状イミド(シアヌール酸、バルビツール酸、チオバルビツール酸、チミンなど)、グアニジニウム、カルボキシ基、リン酸基などの分子認識性を持つ複数の官能基を有する分子なども利用可能である。
さらにまた、導電性高分子、ポリ(アニリン−N−プロパンスルホン酸)(PAN)などの機能性高分子イオン、種々のデオキシリボ核酸(DNA)やリボ核酸(RNA)、蛋白質、オリゴペプチド、ペクチンなどの荷電を有する多糖類や荷電を持つ生体高分子を用いることもできる。
さらに有機薄膜の機械的強度を高めるため、架橋材による架橋処理、熱、電気、化学処理などによる薄膜強度向上操作も適宜利用可能である。
被覆膜形成を容易にするために、被覆膜形成工程前に、基材表面を親水化処理してもよい。特に、ナノ構造体形成材料として金属を用いる場合には、基材表面に親水化処理を施すことにより、鋳型表面の親水性が向上(活性化)し、該表面に、無電解めっきにより、高密度に、高い密着性で金属薄膜を形成することができる。また、後述する被覆膜形成工程において、基材表面に無電解めっきにおける触媒を導入しやすくなる。そのため、基材の凹凸形状が精度良く複写または転写された形状の被覆膜を形成できる。
親水化処理としては、従来公知の方法を利用でき、たとえば酸素プラズマ処理、オゾン酸化処理、酸アルカリ処理、化学修飾処理等が挙げられる。これらの中でも、処理時間が短く、簡便であることから、酸素プラズマ処理が好ましい。また、酸素プラズマ処理を行うことにより、基材表面の活性化のみならず、その処理条件を調節することにより、基材の凹凸形状の高さ、ひいては形成されるナノ構造体の高さを調節できる。たとえば酸素プラズマ処理の処理時間が長いほど、基材の凹凸形状の高さが低くなり、より微細なナノ構造体が形成される。
たとえば、酸素プラズマ処理を用いる場合、酸素プラズマ処理時の圧力は、1.33〜66.5Pa(10〜50mtorr)が好ましく、13.3〜26.6Pa(100〜200mtorr)がより好ましい。また、酸素プラズマ処理時のプラズマ出力は、5〜500Wが好ましく、5〜50Wがより好ましい。また、酸素プラズマ処理時の処理時間は、1〜30秒が好ましく、2〜5秒がより好ましい。また、酸素プラズマ処理の温度は、−30〜300℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、最も好ましくは室温(5〜40℃)である。酸素プラズマ処理に用いるプラズマ装置は、特に限定されず、たとえば、サウスベイ社製(South Bay Technology,USA)のPE−2000プラズマエッキャー(Plasma etcher)などを用いることができる。
まず、凹凸形状を有するフィルム状の基材の表面に、ナノ構造体形成材料からなる被覆膜を形成する。被覆膜の形成は、ナノ構造体形成材料の種類に応じて公知の薄膜形成方法を用いて行うことができる。このような方法として、たとえば、無電解めっき法、表面ゾルゲル法、交互吸着法、スピンコート法、ディップコート法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、CVD法(化学蒸着法)、スパッタリング(蒸着)法等が挙げられる。
無電解めっきは、所定の金属種のイオンを含むめっき液を鋳型表面に接触させ、該イオンを還元する(金属を析出させる)ことにより行われ、これにより、前記所定の金属種で構成される金属薄膜が形成される。
目的とする金属種が、直接無電解めっきが困難な金属種(たとえば金などの貴金属)である場合、あらかじめ、該金属種よりもイオン化傾向の高い金属種(たとえばニッケル)を用いて無電解めっきにより金属薄膜を形成し、その後、該金属薄膜の金属種を目的とする金属種に置換することで、容易に目的とする金属種の金属薄膜を形成できる。
無電解めっきの金属種としては、特に限定されず、一般的に無電解めっきの金属種として用いられているものが使用でき、たとえば金、銀、銅、ニッケル、コバルト、すず、白金族(パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム)等が挙げられる。これらの中でも、一般的にめっき技術が確立していることから、金、銀、銅、ニッケルおよびコバルトからなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
本発明においては、導電性を持つ金属であることが望ましいことから、金属薄膜を構成する金属が、金、銀および銅からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。すなわち、金属薄膜として、金薄膜、銀薄膜および銅薄膜のうちのいずれか1種または2種以上を有することが好ましい。
また、金属薄膜を構成する金属としては、強磁性を有する構造体が得られることから、コバルトも好ましい。
金属種のイオンの還元は、公知の方法により行うことができる。具体例としては、還元反応の触媒となるもの(無電解めっきにおける触媒)を使用する方法、めっき金属よりもイオン化傾向の高い金属を置換する方法等が挙げられる。
無電解めっきにおける触媒としては、一般的に、金属の微粒子や薄膜等が用いられる。
触媒となる金属の種類は、使用する金属種の種類によって異なっており、通常、使用する金属種と同じか、またはそれよりもイオン化しやすい金属が触媒として用いられる。
具体例としては、たとえば金属種が銀の場合は主に銀触媒が用いられ、金属種が銅の場合は主に銀触媒、銅触媒が用いられ、金属種がニッケル、コバルト、金等の場合は主にパラジウム触媒、すず触媒等が用いられる。触媒としては、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
基材の表面への触媒を導入は、公知の方法により行うことができる。たとえば、触媒となる金属の塩(たとえば硝酸銀、金属塩化物等)の水溶液と基材表面に接触させて該塩を基材表面に吸着させ、該塩を還元する。これにより、基材表面に金属微粒子を導入できる。
また、金属アルコキシド以外にも、加水分解により水酸基を生成し得る金属化合物を用いて、同様の手法により金属酸化物膜を形成することができる。該金属化合物としては、イソシアネート基を有する金属化合物、ハロゲン原子を有する金属化合物、カルボニル基を有する金属化合物等が挙げられる。
また、上記金属アルコキシド類に少量の水を添加し、部分的に加水分解および縮合させて得られるアルコキシドゾルまたはアルコキシドゲルの微粒子を用いることもできる。
さらには、チタンブトキシドテトラマー(C4H9O[Ti(OC4H9)2O]4C4H9)等の、複数個または複数種の金属元素を有する二核またはクラスター型のアルコキシド化合物や、酸素原子を介して一次元に架橋した金属アルコキシド化合物に基づく高分子等も、上記金属アルコキシド類に含まれる。
ハロゲン原子を有する金属化合物としては、一般式「M(X1)n”」(Mは金属原子であり、X1はフッ素原子、塩素原子、臭素原子および ヨウ素原子から選ばれる一種であり、n”は2〜4の整数である)で表される2個以上(好ましくは2〜4)のハロゲン原子を有するハロゲン化金属化合物が挙げられる。ハロゲン原子を有する化合物は金属錯体であってもよい。具体的には、テトラクロロチタン(TiCl4)、テトラクロロシラン(SiCl4)等が挙げられる。また、金属錯体として、塩化コバルト(CoCl2)等も挙げられる。
カルボニル基を有する金属化合物としては、チタニウムオキソアセチルアセテート(TiO(OCOCH2COCH3)2)、ペンタカルボニル鉄(Fe(CO)5)等の金属カルボニル化合物、およびこれらの多核クラスターが挙げられる。
該ケイ素化合物の1分子中のケイ素の数は1であっても2以上であってもよく、好ましくは1である。中でも、以下の一般式(w−1)で表される化合物が好ましい。
SiWa ・・・(w−1)
式(w−1)中、aは2〜4の整数であり、4であることが望ましい。
Wはイソシアネート基(NCO基)またはハロゲン原子であり、複数のWは相互に同じであっても異なっていてもよい。
Wのハロゲン原子については上記ハロゲン原子を有する金属化合物におけるハロゲン原子と同様であり、塩素原子であることが望ましい。これらの中でも、イソシアネート基が好ましい。
たとえば、金属薄膜として、それぞれ異なる金属からなる金属薄膜を2層以上積層してなる複合膜(たとえば銀薄膜と銅薄膜とからなる銀・銅複合膜)を有してもよく、2層以上の金属薄膜が、他の薄膜(たとえば後述する金属酸化物薄膜、有機/金属酸化物複合体膜等)を介して積層された構造であってもよい。また、たとえば、樹脂膜の上に、保護膜としてシリカ薄膜等の金属酸化物薄膜を形成したものであってもよい。
本発明においては、特に、被覆膜全体としての厚さが、150nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、80nm以下であることがさらに好ましく、40nm以下であることが特に好ましい。
該厚さの下限値としては、特に限定されないが、ナノ構造体の強度、被覆膜の均一性等を考慮すると、1nm以上であることが好ましく、5nm以上であることがより好ましく、8nm以上であることがさらに好ましい。
なお、たとえば、被覆膜が金属薄膜である場合には、該金属薄膜の厚さは、無電解めっきの処理時間を調整することにより、所望の厚さとすることができる。具体的には、無電解めっきの処理時間が長いほど、厚い金属薄膜を形成でき、被覆膜の厚さを厚くすることができる。
次に、前記被覆膜のうち、前記凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された被覆膜の一部または全部を除去し、ナノ構造体を形成する。凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された被覆膜を除去することにより、図1に示すように、該凸部の側壁部分を被覆する被覆膜からなり、該被覆膜の膜厚に相当する厚みを有するナノ構造体を形成することができる。
被覆膜の一部を除去する方法としては、被覆膜を構成する材料の種類を考慮して、また必要に応じて基材の種類等を考慮して、公知の方法を採用すればよい。該公知の方法としては、たとえば、エッチング、化学処理、物理的剥離、研磨等が挙げられる。被覆膜が金属薄膜である場合には、これらの中でも、処理工程が少なく簡便であることからエッチングが好ましく、特に、アルゴン、酸素等を用いるドライエッチングが好ましい。
このように、被覆膜の上端部を除去し、被覆膜の凸部の側壁部分を利用する場合、基材表面の凹凸形状として、それほど微細なものを用いなくとも、ナノレベルの構造体を容易に得ることができる。
本発明のナノ構造体含有フィルムの製造方法においては、図1に示したように、さらに、前記基材表面に、前記ナノ構造体の少なくとも一部を被覆する樹脂層を形成する樹脂膜形成工程を設けてもよい。
具体的には、前記ナノ構造体が形成された基材上に樹脂溶液を塗布して、該ナノ構造体を覆うように樹脂膜を形成させる。これにより、該基材と該樹脂層により、該ナノ構造体を内部に有する、ナノ構造体含有フィルムを製造することができる。
該樹脂層を形成するための樹脂としては、前記基材において用いられる樹脂と同様のものを用いることができる。
本発明においては、透明性の高いナノ構造体含有フィルムを得ることができるため、樹脂層を形成する樹脂として、COC、COP、ポリビニルアルコール、またはPMMA等の透明性の高い樹脂を用いることが好ましい。
また、より均質なナノ構造体含有フィルムを得ることができるため、樹脂層を形成する樹脂としては、基材を形成する樹脂と同じ種類の樹脂を用いることが好ましい。
たとえば、ナノ構造体形成材料として、金属や導電性高分子等の導電性物質を用いた場合には、ナノ構造体の一部を露呈させることにより、ナノ構造体含有フィルムを導電性フィルムとすることができる。
予めナノ構造体を形成した後に樹脂フィルムに含有させる従来の製造方法では、ナノ構造体をフィルムに含有させる工程において、ナノ構造体が破損や変形等する場合があり、問題となっていた。これに対して、本発明の製造方法においては、フィルムに含有されるナノ構造体は、基材表面に形成された被覆膜の一部であり、基材上に直接ナノ構造体を形成するため、製造工程におけるナノ構造体の破損等の発生を効果的に抑制することができる。また、従来は非常に困難であった、樹脂等の柔らかい形成材料からなるナノ構造体を有するフィルムを製造することも可能となった。
また、基材表面の凹凸形状に被覆膜を形成する工程において、被覆膜の膜厚を制御することにより、形成されるナノ構造体の寸法を制御することができる。
このため、本発明の製造方法においては、アスペクト比(高さ/幅)の高いナノ構造体を有するフィルムを、簡便に製造することができる。本発明の製造方法においては、たとえばアスペクト比が5/1以上、さらには10/1以上のナノ構造体を形成することができる。
本発明のナノ構造体含有フィルムは、本発明のナノ構造体含有フィルムの製造方法を用いて製造されたフィルムである。基材表面上にナノ構造体を有するフィルムであってもよく、基材と樹脂層とによりナノ構造体が完全に包含されたフィルムであってもよく、基材と樹脂層とによりナノ構造体の一部が包含されたフィルムであってもよい。
フィルムが有するナノ構造体は、1個であってもよく、複数個であってもよい。複数個の場合には、各ナノ構造体の配置は、特に限定されるものではなく、全てのナノ構造体が並列に配置されていてもよく、放射状に配置されていてもよく、格子状に配置されていてもよく、ランダムに配置されていてもよい。
具体的には、たとえば、複数のライン状の伝導性ナノ構造体を、基材上に並列に配置することにより、熱や電気は、フィルム中の伝導性ナノ構造体と平行な方角に対しては伝導するが、伝導性ナノ構造体と垂直な方角には全く伝導しないという電気伝導度異方性または熱伝導度異方性を有する異方性フィルムとすることができる。複数のライン状の伝導性ナノ構造体を、基材上に放射状やランダムに配置した場合であっても、熱や電気は、伝導性ナノ構造体の一端から他端へのみ伝導するため、フィルム中のある特定の方向にのみ熱や電気を伝導し得る異方性フィルムとすることができる。
一方、シリンダ状の伝導性ナノ構造体を、基材上に林立させた場合には、該伝導性ナノ構造体の上部面と下部面を、フィルムの両表面にそれぞれ露呈させることにより、熱や電気を、伝導性ナノ構造体の上部面から下部面、または下部面から上部面に対してのみ伝導させることができる。このため、シリンダ状伝導性ナノ構造体が基材上に林立しているナノ構造体含有フィルムは、フィルム面に対して垂直方向にのみ導電性や熱伝導性を持ち、フィルム面に対して平行方向には導電性や熱伝導性を持たないという優れた異方性を有する。
たとえば、金属をナノ構造体形成材料とするライン状のナノ構造体を、基材上に適当な等間隔で並列に配置した場合には、本発明のナノ構造体含有フィルムは、偏光フィルム等の偏光素子として応用し得る。ナノ構造体含有フィルムに入射した光は、ナノ構造体同士の間を透過するため、該ナノ構造体がスリットの役割を果たし得るためと推察される。
また、金属をナノ構造体形成材料とするシリンダ状のナノ構造体を、基材上に並列に林立させる等の規則的に配置した場合には、発光デバイスやバイオセンサ等の光学素子として応用し得る。ナノ構造体がフィルム中の微細領域に規則的に配置されることにより、表面プラズモン共鳴効果が得られるためと推察される。
さらに、金属をナノ構造体形成材料としないシリンダ状のナノ構造体を、基材上に並列に林立させる等の規則的に配置した場合であっても、偏光素子として応用し得る。ナノ構造体により、フィルム中に適度な凹凸が得られるためと推察される。
その他、フィルム中に配置するナノ構造体を、ニッケル等の磁気特性を有するナノ構造体形成材料からなるナノ構造体とすることにより、磁気異方性等の磁気特性を有するナノ構造体含有フィルムとすることができる。
リソグラフィー法で幅約5μm、高さ約500nmの矩形ライン構造が形成された有機レジスト(東京応化工業社製、商品名:TCIR−ZR9000PB)を持つシリコンウェハ基板に、アルゴンプラズマ処理(パワー100W、圧力2Pa、処理時間24分)を行い、幅約5μm、高さ約200nmの矩形ライン構造を持つ金型を作製した。この作製した金型をインプリント法によって、熱可塑性高機能透明樹脂であるシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン社製、商品名:COP、厚み100μm)に、成型温度;150℃、成型圧力;1000N、離型温度;50℃の各条件でインプリントし、シクロオレフィンポリマーフィルム上に矩形パターンを形成した。
矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、スパッタ装置(日立社製、装置名:E−1030)によって、圧力;6Pa、放電電流;15mA、処理時間;2分の各条件で白金をコートし、白金薄膜を形成した。この白金コートされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、アルゴンガスと4フッ化炭素ガスによるエッチング処理(ガス流量アルゴンガス:30sccm、4フッ化炭素ガス:5sccm、圧力2Pa、パワー100W、処理時間10分)を行った。以上の操作で白金薄膜のうち、前記矩形パターンの側面部分からなる白金ナノライン構造体を得た。その結果、白金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムが得られた。
図2は、この白金ナノライン構造体含有フィルムを走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図中、左上図は部分拡大図である。また、図2(A)はフィルム表面の電子顕微鏡像であり、図2(B)はフィルム断面の電子顕微鏡像である。この観察により、厚さ10−20nm、高さ約200nmの白金ナノライン構造体が、シクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されていることが認められた。
図3は、白金ナノライン構造体含有フィルムの透明性を示した図である。図3(A)は樹脂層形成前の白金ナノライン構造体含有フィルムの写真であり、図3(B)は樹脂層形成後の白金ナノライン構造体含有フィルムの写真である。文章が印刷された書面の上に、各フィルムを置いたところ、いずれのフィルム越しであっても書面の文字を判別することができた。また、樹脂層形成前の白金ナノライン構造体含有フィルムよりも、樹脂層形成により表面を平坦化した白金ナノライン構造体含有フィルムのほうが、より鮮明に文字を判別することができ、フィルムの透明性が高いことが分かった。
これらの結果から、ナノ構造体含有フィルムの製造方法において、透明性の高い基材を用いることにより、透明性に優れたナノ構造体含有フィルムを製造し得ること、フィルム表面に透明性の高い樹脂成分からなる樹脂層を形成し、表面を平坦化することにより、よりフィルムの透明性を改善することが可能であることが明らかである。
図4は、白金ナノライン構造体含有フィルムの、白金ナノライン構造体と平行な方向と、垂直な方向の導電性を測定した結果を示した図である。この結果から、得られた白金ナノライン構造体含有フィルムは、白金ナノライン構造体と並行な方向は導電性を示すが、白金ナノライン構造体と垂直な方向には導電性を示さず、優れた電気伝導度異方性を有していること示された。
実施例1と同様にして得られた矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、スパッタ装置(日立社製、装置名:E−1030)によって、圧力;6Pa、放電電流;15mA、処理時間;2分の各条件で金をコートし、金薄膜を形成した。この金コートされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、アルゴンガスと4フッ化炭素ガスによるエッチング処理(ガス流量アルゴンガス:30sccm、4フッ化炭素ガス:5sccm、圧力2Pa、パワー100W、処理時間10分)を行った。以上の操作で金薄膜のうち、前記矩形パターンの側面部分からなる金ナノライン構造体を得た。その結果、金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムが得られた。
図5は、この金ナノライン構造体含有フィルムを走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図中、左上図は部分拡大図である。また、図5(A)はフィルム表面の電子顕微鏡像であり、図5(B)はフィルム断面の電子顕微鏡像である。この観察により、厚さ10−20nm、高さ約200nmの金ナノライン構造体が、シクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されていることが認められた。
実施例1と同様にして得られた矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、酸素プラズマ処理(パワー10W、圧力24Pa、処理時間3秒)を施して、フィルムの表面を活性化した。
次に、20mlの塩化スズ水溶液(0.022M)に2分間浸漬した後、脱イオン水で2回洗浄し、窒素ガス気流で乾燥した。ついで、該フィルムを20mlの塩化パラジウム水溶液(0.0015M)に2分間浸漬後、脱イオン水で2回洗浄し、窒素ガス気流でフィルムを乾燥した。この一連の操作を2回行った。次に、塩化ニッケル(0.126M)とクエン酸ナトリウム(0.034M)を含む混合水溶液1mlに、1mlのジメチルアミンボラン水溶液(0.1M)を加え、70℃に加熱し、先の操作で調整したフィルムを5秒間浸漬し、ニッケル無電解めっきを行った。
このニッケルめっきされたフィルムに、シアン化金酸カリウム(0.024M)を含む金置換めっき水溶液(日立化成社製、商品名:HSG−500、水:HGS−500=9:1)を60℃に加熱し、ニッケル無電解めっきされたフィルムを先の溶液に5分間浸漬し、金の置換めっきを行った。
この金めっきされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、アルゴンガスと4フッ化炭素ガスによるエッチング処理(ガス流量アルゴンガス:30sccm、4フッ化炭素ガス:5sccm、圧力10pa、パワー100W、処理時間10分)を行った。以上の操作で金薄膜のうち、前記矩形パターンの側面部分からなる金ナノライン構造体を得た。この金ナノライン構造体を有するフィルムに、シクロオレフィンポリマー溶液(日本ゼオン社製、商品名:COC、濃度7wt%)をスピンコート(2000rpm、20秒)、乾燥することにより、金ナノライン構造体を樹脂層で被覆した。その後、酸素プラズマ処理(パワー10W、圧力24Pa、処理時間3分)を施して、金ナノライン構造体の一部を露出させた。これにより、金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム中に埋め込まれたフィルムが得られた。
図6は、この金ナノライン構造体含有フィルムを走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図6(A)はフィルム表面の電子顕微鏡像であり、左上図は部分拡大図である。また、図6(B)はフィルム断面の電子顕微鏡像である。この観察により、厚さ約30nm、高さ約200nmの金ナノライン構造体が、シクロオレフィンポリマーフィルム中に埋め込まれていることが認められた。
さらに、この金ナノライン構造体含有フィルムの導電性を測定したところ、金ナノライン構造体と並行な方向は導電性を示すが、金ナノライン構造体と垂直な方向には導電性を示さないことが示された。
実施例2で得られた金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成された金ナノライン構造体含有フィルムの、フィルム屈曲時の導電性を評価した。
具体的には、金ナノライン構造体含有フィルムを伸ばしたり屈曲させたりすることを3回繰り返し、伸ばした状態(フラットな状態)における導電性と、曲率半径3.5mmとなるよう屈曲させた状態における導電性とを測定した。図7(A)は、フィルム中の金ナノライン構造体が、筒状に屈曲させたフィルムの筒の軸方向に対して平行となるようにフィルムを屈曲させた場合の測定結果であり、図7(B)は、垂直となるようにフィルムを屈曲させた場合の測定結果である。図中、実線は導電性(×106S/m)の測定結果を示し、点線はフィルムの曲率半径(mm)を示している。つまり、曲率半径0mmの時点は、フィルムがフラットな状態であることを意味する。
この結果、金ナノライン構造体に対して垂直な方向と平行な方向のいずれの方向に対して屈曲させた場合であっても、フィルムの導電性は、ほぼ一定であった。また、曲率半径3.5mmとなるように複数回曲げ伸ばしを繰り返しても、フィルムの断絶等は観察されず、導電性の低下も観察されなかった。すなわち、この金ナノライン構造体含有フィルムの導電性は、屈曲の影響をほとんど受けず、かつ十分な柔軟性を有していた。
また、幅約5μm、高さ約200nmの矩形ライン構造を持つ金型に代えて、幅400nm、高さ約200nmの矩形ライン構造を持つ金型を用いた以外は、実施例1と同様にして、シクロオレフィンポリマーフィルム上に矩形パターンを形成した後、実施例2と同様にして、ピッチ400nmの金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムを製造したところ、実施例2で得られた金ナノライン構造体含有フィルムと同様に、この製造されたフィルムも、屈曲させた状態(曲率半径3.5mm)と伸ばした状態においてフィルムの導電性はほぼ一定であり、かつ、フィルムの断絶等も観察されなかった。
これらの結果から、本発明のナノ構造体含有フィルムの製造方法により製造されたナノライン構造体含有フィルムは、その導電性が屈曲の影響を受け難く、かつ十分な柔軟性を有するフレキシブル異方導電膜であることが明らかである。
実施例2で得られた金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成され金ナノライン構造体含有フィルムに、シクロオレフィンポリマー溶液(日本ゼオン社製、商品名:COC、濃度7wt%)をスピンコート(2000rpm、20秒)、乾燥することにより、金ナノライン構造体を樹脂層で被覆した。その後、酸素プラズマ処理(パワー10W、圧力24Pa、処理時間3分)を施して、金ナノライン構造体の一部を露出させた。これにより、金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム中に埋め込まれたフィルムが得られた。
このようにして得られたフィルムの各工程における、可視光領域(400〜800nm)の透過率を評価した。なお、透過率の測定は、紫外−可視分光光度計(島津製作所製、装置名:UV−2500PC)を用いて常法により行った。
図8は透過率の測定結果を示した図である。図中、「a」は矩形パターン形成前のシクロオレフィンポリマーフィルムの透過率を、「b」は矩形パターン形成後のシクロオレフィンポリマーフィルムの透過率を、「c」はエッチング処理後の金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムの透過率を、「d」は金ナノライン構造体を樹脂層で被覆後酸素プラズマ処理前の金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム中に完全に埋め込まれたフィルムの透過率を、「e」はプラズマ処理後の金ナノライン構造体の上端をシクロオレフィンポリマーフィルムから露出させたフィルムの透過率を、それぞれ示している。金ナノライン構造体を樹脂層で被覆した後の金ナノライン構造体含有フィルムの可視光領域における透過率は、およそ80%以上であり、金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムに比べて非常に高い透過率を示した。また、金ナノライン構造体の上端のみを露出させた場合にも、金ナノライン構造体が完全にフィルムに埋め込まれた状態のものと同様に高い透過率を示した。
これらの結果から、フィルム上に形成された金ナノライン構造体を樹脂層で被覆することにより、可視光領域における透過性に優れたナノ構造体含有フィルムが得られることが、透過率の点からも明らかである。
実施例1と同様にして、矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに酸素プラズマ処理を施してフィルムの表面を活性化した後、ニッケル無電解めっきを行った。
このニッケルめっきされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、アルゴンガスと4フッ化炭素ガスによるエッチング処理(ガス流量アルゴンガス:30sccm、4フッ化炭素ガス:5sccm、圧力10pa、パワー100W、処理時間35分)を行った。以上の操作でニッケル薄膜のうち、前記矩形パターンの側面部分からなるニッケルナノライン構造体を得た。その結果、ニッケルナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムが得られた。
図9は、このニッケルナノライン構造体含有フィルムを走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図中、左上図は部分拡大図である。また、図9(A)はフィルム表面の電子顕微鏡像であり、図9(B)はフィルム断面の電子顕微鏡像である。この観察により、厚さ約40nm、高さ約100nmのニッケルナノライン構造体が、シクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されていることが認められた。
さらに、このニッケルナノライン構造体含有フィルムの導電性を測定したところ、ニッケルナノライン構造体と並行な方向は導電性を示すが、ニッケルナノライン構造体と垂直な方向には導電性を示さないことが示された。
リソグラフィー法で幅約300nm、高さ約300nmのホール構造が形成された有機レジスト(東京応化工業社製、商品名:TDUR−P015 PM)を持つシリコンウェハ基板に、アルゴンプラズマ処理(パワー100W、圧力2Pa、処理時間24分)を行い、幅約500nm、高さ約300nmのホール構造を持つ金型を作製した。この作製した金型をインプリント法によって、熱可塑性高機能透明樹脂であるシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン社製、商品名:COP、厚み100μm)に、成型温度;170℃、成型圧力;600N、離型温度;50℃の各条件でインプリントし、シクロオレフィンポリマーフィルム上にシリンダーアレイを形成した。
シリンダーアレイが形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、スパッタ装置(日立社製、装置名:E−1030)によって、圧力;6Pa、放電電流;15mA、処理時間;2分の各条件で金をコートし、金薄膜を形成した。この金コートされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、アルゴンガスと4フッ化炭素ガスによるエッチング処理(ガス流量アルゴンガス:30sccm、4フッ化炭素ガス:5sccm、圧力2Pa、パワー100W、処理時間12分)を行った。以上の操作で金薄膜のうち、前記シリンダーアレイの側面部分からなる金ナノシリンダー構造体(シリンダー形状の金ナノ構造体)を得た。その結果、金ナノシリンダー構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムが得られた。この金ナノシリンダー構造体含有フィルムに、酸素プラズマ処理(パワー10W、圧力24Pa、処理時間5分)を施して、金ナノシリンダー構造体がフィルムから分離させた。図10(A)は、この酸素プラズマ処理後の金ナノシリンダー構造体含有フィルムの表面を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図中、左上図は部分拡大図である。この観察により、高さ約200nm、幅約500nmの金ナノシリンダー構造体が、シクロオレフィンポリマーフィルム上に散乱していることが認められた。
リソグラフィー法で幅約400nm、高さ約700nmの矩形ライン構造が形成された有機レジスト(東京応化工業社製、商品名:TDUR−P015 PM)を持つシリコンウェハ基板に、アルゴンプラズマ処理(パワー100W、圧力2Pa、処理時間24分)を行い、幅約400nm、高さ約300nmの矩形ライン構造を持つ金型を作製した。この作製した金型をインプリント法によって、熱可塑性高機能透明樹脂であるシクロオレフィンポリマーフィルム(日本ゼオン社製、商品名:COP、厚み100μm)に、成型温度;150℃、成型圧力;1000N、離型温度;50℃の各条件でインプリントし、シクロオレフィンポリマーフィルム上に矩形パターンを形成した。
矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、スパッタ装置(日立社製、装置名:E−1030)によって、圧力;6Pa、放電電流;15mA、処理時間;30秒の各条件で金をコートし、金薄膜を形成した。この金コートされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、アルゴンガスと4フッ化炭素ガスによるエッチング処理(ガス流量アルゴンガス:30sccm、4フッ化炭素ガス:5sccm、圧力2Pa、パワー100W、処理時間3分)を行った。以上の操作で金薄膜のうち、前記矩形パターンの側面部分からなる金ナノライン構造体を得た。この金ナノライン構造体を有するフィルムに、シクロオレフィンポリマー溶液(日本ゼオン社製、商品名:COC、濃度7wt%)をスピンコート(4000rpm、60秒)、乾燥することにより、金ナノライン構造体を樹脂層で被覆した。これにより、金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム中に埋め込まれたフィルムが得られた。
図11は、金ナノライン構造体含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図中、左上図は部分拡大図である。この観察により、膜厚約10nm、高さ約200nmの金ナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム中に埋め込まれていることが認められた。
実施例8と同様にして得られた矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、酸素プラズマ処理(パワー10W、圧力24Pa、処理時間3秒)を施して、フィルムの表面を親水化した。
次に、該フィルム表面にテトライソシアネートシランのヘンプタン溶液(100mM)を数ml滴下して3秒保持したのち、へプタンを数ml滴下して洗浄した。その後、窒素ガスを10秒間吹き付けて乾燥した。この一連の操作を30回繰り返した。
このシリカコートされたフィルムを、RIE装置(SAMCO社製、装置名:RIE−10NR)を用いて、トリフルオロメタンガスによるエッチング処理(トリフルオロメタンガスガス流量:30sccm、圧力2Pa、パワー70W、処理時間3分)を行った。以上の操作でシリカ薄膜のうち、前記矩形パターンの側面部分からなるシリカナノライン構造体を得た。その結果、シリカナノライン構造体がシクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されたフィルムが得られた。図12(A)は、このシリカナノライン構造体含有フィルムの断面を走査型電子顕微鏡にて観察した結果を示した図である。図中、左上図は部分拡大図である。この観察により、膜厚約10nm、約高さ200nmのシリカナノライン構造体が、シクロオレフィンポリマーフィルム上に形成されていることが認められた。
実施例8と同様にして得られた矩形ライン構造が形成されたシクロオレフィンポリマーフィルムに、酸素プラズマ処理(パワー10W、圧力24Pa、処理時間3秒)を施して、フィルムの表面を親水化した。
該フィルムを、ポリジメチルジアリルアンモニウム(PDDA)水溶液(10mg/ml)に2分浸漬し、その後純粋で洗浄し、窒素ガスを吹き付けて乾燥した。次に、該フィルムを、ポリ(5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン)(MPS−PPV)水溶液(1mg/ml)に2分間浸漬し純粋で洗浄し、窒素ガスを吹き付けて乾燥した。この操作を5回繰り返すことにより、PDDA膜とMPS−PPV膜を積層した複合ポリマー(樹脂)膜である被覆膜を形成した。その後、この修飾した複合ポリマー膜を保護するため、シリカコート層を形成した。シリカコート層の形成には、 該フィルム表面にテトライソシアネートシランのヘンプタン溶液(100mM)を数ml滴下して3秒保持したのち、へプタンを数ml滴下して洗浄した。その後、窒素ガスを10秒間吹き付けて乾燥した。この一連の操作を30回繰り返した。
Claims (8)
- 凹凸形状を有するフィルム状の基材の表面に、ナノ構造体形成材料からなる被覆膜を形成する工程と、
前記被覆膜のうち、前記凹凸形状の凹部の底面部分及び凸部の頂面部分に形成された被覆膜の一部または全部を除去し、ナノ構造体を形成する工程と、
を有することを特徴とするナノ構造体含有フィルムの製造方法。 - 前記基材表面に、前記ナノ構造体の少なくとも一部を被覆する樹脂層を形成する工程を、さらに有する請求項1記載のナノ構造体含有フィルムの製造方法。
- 前記被覆膜の厚さが、1〜100nmである請求項1または2記載のナノ構造体含有フィルムの製造方法。
- 前記被覆膜を、無電解めっき法またはスパッタ法により形成する請求項1〜3のいずれか一項に記載のナノ構造体含有フィルムの製造方法。
- 前記ナノ構造体形成材料が、金属、金属化合物、および樹脂からなる群より選択される1以上を含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のナノ構造体含有フィルムの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか記載のナノ構造体含有フィルムの製造方法により製造されたナノ構造体含有フィルム。
- 異方性を有する請求項6記載のナノ構造体含有フィルム。
- 透明性および導電性を有する請求項6または7記載のナノ構造体含有フィルム。
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