JP2009292081A - 射出発泡成形用金型 - Google Patents

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Abstract

【課題】生産効率の低下を招くことなく、容易かつ適切なゲートカットを可能とする樹脂成形品を形成することができる射出発泡成形用金型を提供する。
【解決手段】スプル20に連通するゲート16およびそこに連通するキャビティ15を形成可能であり、溶融樹脂が充填された後、両金型11、12の距離を対向方向に広げてキャビティ15を型締状態よりも容積が増大させたコアバック状態とすることにより樹脂成形品を成形するための射出発泡成形用金型10である。両金型11、12のいずれか一方には、他方の金型12と協働してゲート16を形作る入子30が設けられ、入子30は、キャビティ15を型締状態からコアバック状態とすべく両金型11、12の距離が広げられるか否かに拘らずゲート16の容積が変動しないように、一方の金型11に移動可能に保持されるとともに付勢手段39により他方の金型12へ向けて付勢されている
【選択図】 図1

Description

本発明は、射出成形において型を移動させることにより射出発泡成形を行うための射出発泡成形用金型に関する。
従来、射出成形による樹脂成形品の軽量化や接触時の質感を高めるために、射出発泡成形を行うことが知られている(例えば、特許文献1参照)。この射出発泡成形では、キャビティを形成すべく対向される2つの金型の距離を相対的に広げるいわゆるコアバックを行ってキャビティの容積を増大させることにより、当該キャビティ内の圧力を低減させて、そのキャビティ内に充填された樹脂を発泡させるものがある。このような射出発泡成形のための射出発泡成形用金型50の例を図12〜図15に示す。
図12は、単層成形タイプの射出発泡成形用金型50の構成(型締状態)を説明するための説明図であり、図13は、コアバック状態とされた射出発泡成形用金型50を示す説明図である。また、図14は、積層成形タイプの射出発泡成形用金型50´(型締状態)を説明するための説明図であり、図15は、コアバック状態とされた射出発泡成形用金型50´を示す説明図である。
単層成形タイプの射出発泡成形用金型50は、図12および図13に示すように、金型としての固定型51および可動型52が対向されて設けられている。この固定型51は、固定型取付盤53に取り付けられており、可動型52は、移動型取付盤54に取り付けられている。この移動型取付盤54は、図示は略すが、可動型52を固定型51へ向けて接近または離間するように移動させる型締用移動シリンダに保持されている。
この固定型51には、射出装置55に接続されたホットランナーノズル56が設けられており、このホットランナーノズル56がスプル57およびゲート58を介して、キャビティ59に接続されている。
この射出発泡成形用金型50では、発泡核を形成するための発泡剤が混入された溶融樹脂Rが、射出装置55からホットランナーノズル56およびスプル57を経て、ゲート58およびキャビティ59に充填される(図12参照)。このように溶融樹脂Rが充填された後、図13に示すように、可動型52が固定型51から離間する方向へ移動されてキャビティ59およびゲート58の容積が増大されると、このキャビティ59およびゲート58の内圧が低下し、そこに充填された樹脂内の発泡核が膨張することにより、発泡された樹脂成形品60が形成される。
他方、積層成形タイプの射出発泡成形用金型50´は、図14および図15に示すように、キャビティ59´の形状が異なることを除くと、基本的な構成は射出発泡成形用金型50と同様であることから、等しい構成の個所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。射出発泡成形用金型50´では、キャビティ59´内にセットされた基材61に重ねて、発泡成形層62が形成されることにより、樹脂成形品60´が形成される。この基材61は、射出装置55により充填された溶融樹脂により形成されるものであってもよく、他で形成されたものがキャビティ59´にセットされるものであってもよい。
特開2007−55033号公報
しかしながら、射出発泡成形用金型50、50´では、以下のような問題がある。ここで、図16は、射出発泡成形用金型50、50´の問題点を説明するために、図12のII−II線に沿って得られた断面で見た説明図であり、図17は、図13のIII−III線に沿って得られた断面で見た図16と同様の説明図である。また、図18は、従来の射出発泡成形用金型50、50´の問題点を説明するための説明図であり、(a)は樹脂成形品60において生じる厚さの差異の様子を示し、(b)は樹脂成形品60でのゲートカットの様子を示している。
射出発泡成形用金型50、50´では、図12〜図15示すように、キャビティ59、59´に溶融樹脂が充填された後に可動型52(の成形面)と固定型51(の成形面)との距離を広げることによりそのキャビティ59、59´の容積を増大させて充填された樹脂内の発泡核を膨張させるものであることから、キャビティ59、59´に加えてゲート58でも容積が増大(この拡がる方向を樹脂成形品60、60´における厚さ寸法とする)して内圧も減少してしまい、当該ゲート58に充填された樹脂でも発泡が生じるとともにその厚さ寸法が増大してしまう(図16および図17参照)。このため、射出発泡成形用金型50による樹脂成形品60を例に取ると(樹脂成形品60´でも同様の問題が生じる)、図18(a)に示すように、形成された樹脂成形品60において、キャビティ59に位置する成形品本体部60aからゲート58に位置するゲート部60bを切り離す所謂ゲートカットの際、発泡して厚さ寸法の増大したゲート部60bを切断しなければならず、発泡していない元の厚さ寸法の樹脂成形品(二点鎖線参照)を切断することに比較して、大きな力が必要となり、このゲートカット作業が困難となってしまう。
また、このように発泡したゲート部60bを切断しようとすると、図18(b)に示すように、切断時に切断刃63の押圧力により切断箇所の周辺が押し潰されてしまい、成形品本体部60aが変形してしまう虞がある。
さらに、ゲート部60bが発泡されると、その断熱効果により冷却効率が悪くなり、充填された樹脂が発泡されていないスプル57に位置するスプル部60c(図16および図18(a)参照)との間で冷却に要する時間が異なってしまい、スプル部60cを固化させた場合であってもゲート部60bが固化しきれていない場面が生じ、樹脂成形品60をキャビティ59から取り外す(両金型51、52から離型する)際、スプル部60cがゲート部60bに対して千切れてしまい、当該スプル部60cがスプル57から適切に抜け出せなくなる虞がある。これを防ぐためには、発泡されたゲート部60bが固化するのに十分な時間を冷却時間として取ることが考えられるが、成形サイクルの長時間化を招くことから生産効率が低下してしまう。
本発明は、上記の事情に鑑みて為されたもので、生産効率の低下を招くことなく、容易かつ適切なゲートカットを可能とする樹脂成形品を形成することができる射出発泡成形用金型を提供することにある。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、溶融樹脂の充填のためのスプルが設けられた金型にもう1つの金型を対向させることにより前記スプルに連通するゲートおよびそこに連通するキャビティを形成可能であり、型締状態とされた該キャビティに前記スプルから前記ゲートを経て溶融樹脂が充填された後、前記両金型の距離を対向方向に広げて前記キャビティを前記型締状態よりも容積が増大させたコアバック状態とすることにより樹脂成形品を成形するための射出発泡成形用金型であって、前記両金型のいずれか一方には、他方の前記金型と協働して前記ゲートを形作る入子が設けられ、該入子は、前記キャビティを前記型締状態から前記コアバック状態とすべく前記両金型の距離が広げられるか否かに拘らず前記ゲートの容積が変動しないように、一方の前記金型に移動可能に保持されるとともに付勢手段により他方の前記金型へ向けて付勢されていることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の射出発泡成形用金型であって、前記入子は、前記両金型のうち、前記スプルが設けられた金型に設けられていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の射出発泡成形用金型であって、前記スプルは、前記金型に固定的に設けられ、前記入子には、前記ゲートを形作るためのゲート凹所と、該ゲート凹所に連通しかつ前記スプルを摺動可能に受け入れるスプル挿通孔と、が設けられていることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の射出発泡成形用金型であって、前記入子には、ボルト挿通孔が設けられ、前記入子は、一方の前記金型に設けられた入子凹所に摺動可能に嵌入された状態で、胴部が前記ボルト挿通孔に挿通可能な径寸法とされかつ頭部が前記ボルト挿通孔よりも大きな径寸法のボルトが前記ボルト挿通孔に挿通されて、前記ボルトの先端が一方の前記金型に螺合されることにより、該金型に移動可能に保持され、前記付勢手段は、前記入子と一方の前記金型との間で、前記ボルトの前記胴部が通されたコイルバネであることを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の射出発泡成形用金型であって、前記ボルトは、一方の前記金型に螺合される前記先端と前記胴部とが径寸法の異なる段付とされていることを特徴とする。
本発明の射出発泡成形用金型では、キャビティに連通するゲートが、設けられた入子により発泡のために2つの金型の距離が変化されることに拘らず一定の容積とされていることから、キャビティ内の発泡された樹脂からなる成形品本体部と、ゲート内の発泡されていない樹脂からなるゲート部と、を有する樹脂成形品を形成することができる。このため、ゲート部の厚さ寸法が増大されていないので大きな力を必要とすることなくゲート部を切断することができる。また、このゲート部は発泡されていないことから、発泡された場合のような弾力性を有してはいないので、切断時における成形品本体部の変形を防止することができる。さらに、樹脂成形品におけるゲート部およびスプル部は、共に発泡されていないことから、発泡された場合に比較して短時間でかつ互いに略等しい時間で固化するので、成形サイクルの長時間化を招くことなく、ゲート部から千切れさせることなくスプル部を両金型から離型することができる。
上記した構成に加えて、前記入子は、前記両金型のうち、前記スプルが設けられた金型に設けられていることとすると、スプルから噴出される溶融樹脂が直接入子に衝突することを防止することができるので、スプルからゲートへと溶融樹脂を充填することに起因して、移動可能とされた入子が振動することを防止することができる。
上記した構成に加えて、前記スプルは、前記金型に固定的に設けられ、前記入子には、前記ゲートを形作るためのゲート凹所と、該ゲート凹所に連通しかつ前記スプルを摺動可能に受け入れるスプル挿通孔と、が設けられていることとすると、キャビティがコアバック状態とされると、2つの金型の距離が広がることに伴って、一方の金型に固定的に設けられたスプルが、キャビティに連通するゲートから離間されるので、スプルに存在する樹脂により形成されるスプル部を、当該スプルから引き抜くことができる。
上記した構成に加えて、前記入子には、ボルト挿通孔が設けられ、前記入子は、一方の前記金型に設けられた入子凹所に摺動可能に嵌入された状態で、胴部が前記ボルト挿通孔に挿通可能な径寸法とされかつ頭部が前記ボルト挿通孔よりも大きな径寸法のボルトが前記ボルト挿通孔に挿通されて、前記ボルトの先端が一方の前記金型に螺合されることにより、該金型に移動可能に保持され、前記付勢手段は、前記入子と一方の前記金型との間で、前記ボルトの前記胴部が通されたコイルバネであることとすると、簡易な構成で一方の金型に入子を設けることができるとともに、この入子が一方の金型から脱落することを防止することができる。
上記した構成に加えて、前記ボルトは、一方の前記金型に螺合される前記先端と前記胴部とが径寸法の異なる段付とされていることとすると、移動範囲を所定のものとして入子を金型に取り付けることが容易となる。
以下、本発明の実施例を図面に従って説明する。
図1は、本発明に係る射出発泡成形用金型10の一実施例の構成を説明するための説明図である。また、図2は、入子30を模式的に示す斜視図である。図3は、固定型11に設けられた入子30を説明するための図1のI−I線に沿って得られた断面図であり、図4は、キャビティ15がコアバック状態とされた際を示す図3と同様の断面図である。
射出発泡成形用金型10は、例えば、自動車の内装品、家電製品、建材などに使用される製品(後述する成形品本体部17a(図8等参照))を形成するものである。この射出発泡成形用金型10は、図1に示すように、固定型11と可動型12とを備えている。
固定型11は、固定型取付盤13に取り付けられ、可動型12は、移動型取付盤14に取り付けられている。この移動型取付盤14は、図示は略すが、可動型12を固定型11へ向けて接近または離間するように平行移動させる(図1の例では左右方向)型締用移動シリンダに保持されている。この固定型11と可動型12とは、その可動型12が図示を略す型締用移動シリンダによる移動で互いに嵌合するように型締めされることにより、型締状態のキャビティ15と、そのキャビティ15に連続するゲート16とを形成する。このキャビティ15は、型締状態(図1参照)から、図示を略す型締用移動シリンダが可動型12を、固定型11に嵌合した状態を維持しつつその固定型11との距離を広げる(固定型11の成形面と可動型12の成形面との間隔を広げる)ように移動させることにより、容積が増大されたコアバック状態(図7参照)とされる。また、固定型11と可動型12とは、図示を略す型締用移動シリンダが可動型12を固定型11から離間させるように移動させることにより、成形した樹脂成形品17の取り出しが可能となる(図8参照)。
固定型11には、射出装置18とホットランナーノズル19とスプル20とが設けられている。射出装置18は、ホットランナーノズル19およびスプル20を介してゲート16に連通されており、溶融樹脂をゲート16へ向けて射出可能である。特に、この射出発泡成形用金型10では、後述するように樹脂成形品17(図7等参照)を発泡させることを想定していることから、射出装置18は、発泡核を形成するための発泡剤が混合された溶融樹脂を射出可能とされている。この混合される発泡剤は、例えば、化学発泡剤としての重曹や、発泡性ガスとしてのN、CO等があげられる。
ホットランナーノズル19は、長尺な筒状を呈し、固定型11に固定的に設けられている。ホットランナーノズル19は、図示を略すヒータにより加熱制御されており、射出装置18から射出された溶融樹脂を流動化した状態(溶融状態)に維持することができる。このホットランナーノズル19にスプル20が連通されている。
スプル20は、ホットランナーノズル19とゲート16とを連通させる長尺な筒状を呈し、固定型11に固定的に設けられている。スプル20は、長尺方向で見て一定の外形寸法とされ、かつ中空部分がホットランナーノズル19側からゲート16側へ向かうにしたがって内径寸法が大きくなるテーパ状とされている。このスプル20は、その内方にある柱状の空間の軸線方向が、可動型12の移動方向(両金型11、12の型開き方向)と一致されている。
固定型11に対向された可動型12には、製品押出装置21が設けられている。製品押出装置21は、移動パネル22と複数の押出部材23とを有する。移動パネル22は、図示を略す押出駆動機構により移動可能とされ、本実施例では左右方向に移動可能とされている。この移動方向は、両金型11、12(キャビティ15、ゲート16およびスプル20)により成形される樹脂成形品17の可動型12からの型抜き方向とされている。複数の押出部材23は、一端が移動パネル22に取り付けられて、可動型12に設けられた押出部材貫通穴24に移動可能に挿通されている。この製品押出装置21は、図示を略す押出駆動機構が移動パネル22を移動させて、複数の押出部材23を可動型12における成形面から突出させることにより、キャビティ15で成形された樹脂成形品17を可動型12から離型させる。
本発明に係る射出発泡成形用金型10では、固定型11に入子30が設けられている。入子30は、図2に示すように、全体に直方体形状を呈し、ゲート凹所31とスプル挿通孔32とボルト挿通孔33とを有する。ゲート凹所31は、可動型12と協働してゲート16を形成するための凹所であり、本実施例では直方体形状を呈している。
スプル挿通孔32は、ゲート凹所31を開口するように入子30を貫通する貫通孔であり、固定型11に固定的に設けられたスプル20を摺動可能に受け入れる。ここで、ゲート凹所31は、上述したように、可動型12と協働してゲート16を形成することから、キャビティ15に充填される溶融樹脂R(図6等参照)がスプル挿通孔32とスプル20との隙間に入り込まないように設定されている。
ボルト挿通孔33は、入子30を貫通する貫通孔であり、後述するボルト37(図3参照)の胴部37aの直径寸法よりも大きな内径寸法とされ、かつそのボルト37の頭部37bの直径寸法よりも小さな内径寸法とされている。このボルト挿通孔33は、本実施例では、ゲート凹所31を挟むように対を為して設けられている。
この入子30の配置のために、固定型11には、図3に示すように、入子凹所34とバネ設置凹所35とが設けられている。入子凹所34は、可動型12の移動方向に沿って摺動可能に入子30を受け入れる。この入子凹所34は、固定型11と可動型12とにより型締状態のキャビティ15が形成された(図1参照)際に、ゲート凹所31が可動型12と協働してゲート16を形成するように入子30の嵌入を可能とする大きさ寸法に設定されている。
この入子凹所34に開口するようにバネ設置凹所35が設けられている。バネ設置凹所35は、入子凹所34に嵌入された状態の入子30のボルト挿通孔33に対応して設けられ、本実施例では、対を為して設けられている。この両バネ設置凹所35には、後述するボルト37の螺合のためのネジ孔36が設けられている。
入子30を固定型11に取り付けるために、ボルト37が用いられる。このボルト37は、胴部37aの一端に頭部37bが設けられ、他端にネジ部37cが設けられている。本実施例では、ボルト37の胴部37aは、入子凹所34の深さ寸法Ma(入子30の移動方向で見た大きさ寸法であり、入子30の高さ寸法と略一致する。)と、バネ設置凹所35の深さ寸法Mbと、付加寸法Mcとを加算した長さ寸法とされている。この付加寸法Mcは、型締状態のキャビティ15をコアバック状態とすべく移動される可動型12の移動量(図4、図7等参照)以上に設定されている。
また、ボルト37のネジ部37cは、その胴部37aよりも小さな径寸法とされ、かつ固定型11のネジ孔36以下の長さ寸法とされている。このように、本実施例で用いられるボルト37は、胴部37aとネジ部37cとで段差が形成された所謂段付のボルトである。
さらに、本実施例の射出発泡成形用金型10では、可動型12に頭部受入凹所38が設けられている。この頭部受入凹所38は、ボルト37の頭部37bの長さ寸法Mdに、上記した付加寸法Mcを加算した長さ寸法以上とされている。なお、ボルトの頭部を受け入れるための凹所は、入子30に設けられていてもよく、本実施例に限定されるものではない。
この入子30は、次のように固定型11に取り付けられる。先ず、入子30において、ゲート凹所31が設けられた表面30a側から両ボルト挿通孔33にボルト37が挿通され、表面30aとは反対側の裏面30bから突出した両ボルト37の胴部37aにコイルバネ39が通される。この入子30が、そのスプル挿通孔32にホットランナーノズル19が通るように、裏面30b側から固定型11の入子凹所34に嵌入され、両ボルト37が固定型11のバネ設置凹所35のネジ孔36に螺合される。このとき、両ボルト37の胴部37aに通されたコイルバネ39は、バネ設置凹所35内で入子30を可動型12側(入子凹所34から突出する方向)へ付勢する。このコイルバネ39は、キャビティ15がコアバック状態とされた場合に、入子30が可動型12と協働してゲート16を形成することができるバネ力(付勢力)とされている。
次に、射出発泡成形用金型10による成形手順を説明する。
本実施例では、型締め工程、樹脂射出工程、コアバック工程、型開き工程、樹脂成形品取外工程、ゲートカット工程を順に実行する。
(型締め工程)
型締め工程では、図5に示すように、両金型11、12が離間された状態から、固定型11に向けて可動型12を矢印A1で示す方向に移動させ、図1に示すように、両金型11、12の間に型締状態のキャビティ15を形成する。この型締め工程において、固定型11に設けられた入子30は、図3に示すように、表面30aが可動型12に当接し、この可動型12にコイルバネ39の付勢力に抗して押圧されて、固定型11の入子凹所34に嵌合される。この入子30は、可動型12と協働して、スプル20とキャビティ15とを連通させるゲート16を形成する。
(樹脂射出工程)
樹脂射出工程では、図6に示すように、射出装置18からホットランナーノズル19、スプル20を経て、発泡剤が混入された溶融状態の樹脂Rが、ゲート16およびキャビティ15へと射出される。これにより、ゲート16およびキャビティ15に溶融樹脂Rが充填される。このとき、スプル20から噴出される溶融樹脂Rは、直接入子30に衝突することが防止されている。
(コアバック工程)
コアバック工程では、可動型12を固定型11との距離を広げるように図6において矢印A2で示す方向に移動させ、両金型11、12の間のキャビティ15を型締状態からコアバック状態(図7参照)へと変化させる。すると、図7に示すように、キャビティ15内(充填された溶融樹脂R)の圧力が減少し、キャビティ15内の樹脂Rが発泡する。
このコアバック工程において、可動型12が固定型11から離間するように移動すると、入子30は、コイルバネ39からの付勢により表面30aが可動型12に押し当てられた状態を維持したまますなわち可動型12と協働してゲート16を形成した状態を維持したまま、固定型11の入子凹所34内を移動する(図4参照)。ここで、入子30を固定型11に取り付けている両ボルト37の胴部37aは、入子凹所34の深さ寸法Maおよびバネ設置凹所35の深さ寸法Mbに、付加寸法Mcが加算された長さ寸法とされており(図3参照)、この付加寸法Mcが型締状態のキャビティ15をコアバック状態とすべく移動される可動型12の移動量以上に設定されていることから、キャビティ15がコアバック状態とされても、入子30と可動型12との協働により形成されたゲート16の容積は変化しないので、ゲート16内の樹脂Rは発泡しない。
また、入子30が可動型12との当接状態を維持するように固定型11の入子凹所34内を移動すると、固定型11に固定的に設けられたスプル20が、入子30のスプル挿通孔32内を相対的に摺動してゲート16から離間する。すると、スプル20に存在する樹脂R(樹脂成形品17のスプル部17c)は、入子30と可動型12とにより形成されるゲート16に存在する樹脂R(樹脂成形品17のゲート部17b)と一体的であることから、当該樹脂Rに引っ張られてスプル20内での形状を維持しつつこのスプル20から抜け出される。このとき、ホットランナーノズル19に存在する樹脂Rは、溶融状態が維持されていることから、スプル20内の樹脂Rと一緒にホットランナーノズル19から抜け出されることはない。ここで、スプル20が、入子30のスプル挿通孔32内を相対的に摺動してゲート16から離間すると、スプル20とゲート16との間には隙間が形成されることから、実際には、この隙間の分だけゲート16およびスプル20の容積が増大することとなる。ところが、この容積の増大は、スプル20の周辺のみで生じることから、樹脂Rの粘性によりゲート16に存在する樹脂R全体が発泡されることはなくスプル20の周辺の僅かな樹脂Rのみが発泡される。このため、スプル20内の樹脂は、その形状を維持しつつこのスプル20から抜け出される。
(型開き工程)
樹脂Rが硬化すると、型開き工程を実行し、可動型12を図7において矢印A3方向へ移動させて固定型11から離間させる(図8参照)。ここで、既にスプル20内の樹脂が当該スプル20から抜け出されていることから、この型開き工程において、樹脂成形品17におけるスプル部17cがゲート部17bから千切れることはない。
(樹脂成形品取外工程)
樹脂成形品取外工程では、製品押出装置21を作動させる。これにより、複数の押出部材23が、硬化した樹脂R(樹脂成形品17)を押し出し、この樹脂成形品17が可動型12から離型する(図8参照)。
(ゲートカット工程)
ゲートカット工程では、図9に示すように、離型された樹脂成形品17において、成形品本体部17aからゲート部17bを切断刃40により切り離す。このとき、ゲート部17bが発泡されていないことから、切断刃40によるゲート部17bへの押圧力によりこのゲート部17bが変形することを防止することができる。
この射出発泡成形用金型10では、以下に列挙する効果が得られる。
1)キャビティ15がコアバック状態とされても、入子30と可動型12との協働により形成されたゲート16の容積は変化しないので、ゲート16内の樹脂Rは発泡しない。このため、成形品本体部17aを発泡させて厚さ寸法を増大させているとともに、発泡させないことによりゲート部17bの厚さ寸法が増大することを防止した樹脂成形品17を形成することができる。このため、ゲートカット工程において、発泡されたゲート部を切断することに比較して、大きな力を必要とすることなくゲート部17bを切断することができる。
2)形成した樹脂成形品17では、ゲート部17bが発泡されていなことから、ゲートカット工程においてゲート部17bを切断しても、切断刃40によるゲート部17bへの押圧力によりこのゲート部17bおよび成形品本体部17aが変形することを防止することができる。このため、所望の形状の製品(成形品本体部17a)を得ることができる。
3)コアバック工程において樹脂成形品17におけるスプル部17cをスプル20から抜け出させることができるので、型開き工程において、当該スプル部17cがゲート部17bから千切れることを防止することができる。
4)スプル20から噴出される溶融樹脂Rが、直接入子30に衝突することを防止することができため、噴出される溶融樹脂Rが移動可能とされた入子30に直接衝突することに起因するこの入子30の振動を防止することができる。このため、溶融樹脂Rの噴出に起因して生じる音を抑制することができ、この振動に起因する入子30およびその周辺部材の経時劣化を防止することができる。
5)入子30のボルト挿通孔33に挿通されたボルト37の頭部37bが当該ボルト挿通孔33に引っ掛かる構成とされていることから、固定型11の入子凹所34に移動可能に嵌入された入子30がその入子凹所34から抜け落ちるすなわち固定型11から脱落することを防止することができる。
6)入子30は、固定型11の入子凹所34に嵌入されるとともに、ボルト挿通孔33にボルト37が挿通されることにより、移動方向、移動姿勢および移動距離が制限されているので、可動型12を移動させて固定型11に嵌合させると、その可動型12に当接されてゲート16を形成する。このため、樹脂成形品取外工程の後、入子30に関する特別な作業を伴うことなく再び型締め工程に移行することができる。
7)ゲート16の容積の増大を防止する構成として、ゲート凹所31とボルト挿通孔33とスプル挿通孔32とが設けられた入子30を、固定型11の入子凹所34に嵌入させて、コイルバネ39が通されたボルト37で設けるだけであるので、コアバックによりキャビティ15の容積が増大しても、容積が増大しないゲート16を形成するための構成を簡易なものとすることができる。
8)ボルト37が、胴部37aとネジ部37cとで段差が形成された所謂段付のボルトであることから、ボルト37の締付けによる長さ設定を気にすることなく、入子30を固定型11に取り付けることができる。
したがって、本発明に係る射出発泡成形用金型10では、生産効率の低下を招くことなく、容易かつ適切なゲートカットを可能とする樹脂成形品17を形成することができる
次に、本実施例の変形例の射出発泡成形用金型100を、図10、図11を用いて説明する。図10は、キャビティ150が型締状態とされた射出発泡成形用金型100を示す断面図であり、図11は、キャビティ150がコアバック状態とされた射出発泡成形用金型100を示す断面図である。
この変形例の射出発泡成形用金型100の特徴部分は、積層成形を行うことである。この射出発泡成形用金型100は、基本的な構造は上記した射出発泡成形用金型10と同様であることから、等しい構成の箇所には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この射出発泡成形用金型100は、図10および図11に示すように、表皮材等としての基材41の表面に樹脂製の発泡成形層42(図11参照)を形成するものである。この射出発泡成形用金型100では、キャビティ150の形状が、上記した射出発泡成形用金型10とは異なるものとされている。この射出発泡成形用金型100の可動型120には、基材41のための設置部43が設けられている。この基材41は、射出装置18からの出射により形成されるものであってもよく、他で形成されたものが可動型120にセットされたものであってもよい。この変形例では、基材41は、他で形成されたものとする。
射出発泡成形用金型100では、射出発泡成形用金型10における型締め工程に先立って、表皮セット工程を実行する。表皮セット工程では、図示は略すが、可動型12を固定型11から離した型開き状態において、可動型12の設置部43に基材41をセットする。この後、型締工程、樹脂射出工程、コアバック工程、型開き工程、樹脂成形品取外工程、ゲートカット工程を順に実行する。
この射出発泡成形用金型100では、上記した射出発泡成形用金型10と同様の効果を得ることができる。
なお、上記した実施例では、単層成形タイプの射出発泡成形用金型10とその変形例として2層の積層成形タイプの射出発泡成形用金型100とを示したが、キャビティにおいて発泡部を形成することができ、その発泡のために可動型が移動されるか否かに拘らずゲートの容積を一定に保つための入子が設けられたものであればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
また、上記した実施例では、入子30がスプル20(ホットランナーノズル19)を有する固定型11に設けられていたが、可動型12に設けられていてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
さらに、上記した実施例では、ゲート凹所31とボルト挿通孔33とスプル挿通孔32とが設けられた入子30を、固定型11の入子凹所34に嵌入させて、コイルバネ39が通されたボルト37で設ける構成とされていたが、キャビティを型締状態からコアバック状態とすべく可動型が移動されるか否かに拘らず、当該キャビティに連通するゲートの容積を一定とする入子が設けられている構成であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
以上、本発明の実施例を図面により詳述してきたが、上記実施例は本発明の例示にしか過ぎないものであり、本発明は上記実施例の構成にのみ限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、本発明に含まれることは勿論である。
本発明に係る射出発泡成形用金型の一実施例の構成を説明するための説明図である。 入子を模式的に示す斜視図である。 固定型に設けられた入子を説明するための図1のI−I線に沿って得られた断面図である。 キャビティがコアバック状態とされた際を示す図3と同様の断面図である。 型開き状態の射出発泡成形用金型を示す図1と同様の説明図である。 樹脂射出工程の射出発泡成形用金型を示す図1と同様の説明図である。 コアバック工程の射出発泡成形用金型を示す図1と同様の説明図である。 型開き工程の射出発泡成形用金型を示す図1と同様の説明図である。 ゲートカット工程の様子を示す説明図である。 キャビティが型締状態とされた変形例の射出発泡成形用金型を示す断面図である。 キャビティがコアバック状態とされた変形例の射出発泡成形用金型を示す断面図である。 従来の単層成形タイプの射出発泡成形用金型の構成(型締状態)を説明するための説明図である。 図12の射出発泡成形用金型がコアバック状態とされた様子を示す説明図である。 従来の積層成形タイプの射出発泡成形用金型(型締状態)を説明するための説明図である。 図14の射出発泡成形用金型がコアバック状態とされた様子を示す説明図である。 従来の射出発泡成形用金型の問題点を説明するために、図12のII−II線に沿って得られた断面で見た説明図である。 図13のIII−III線に沿って得られた断面で見た図16と同様の説明図である。 従来の射出発泡成形用金型の問題点を説明するための説明図であり、(a)は樹脂成形品において生じる厚さの差異の様子を示し、(b)は樹脂成形品でのゲートカットの様子を示している。
符号の説明
10、100 射出発泡成形用金型
11 (金型としての)固定型
12、120 (金型としての)可動型
15、150 キャビティ
16 ゲート
17 樹脂成形品
20 スプル
30 入子
31 ゲート凹所
32 スプル挿通孔
33 ボルト挿通孔
34 入子凹所
37 ボルト
37a 胴部
37b 頭部
39 (付勢手段としての)コイルバネ

Claims (5)

  1. 溶融樹脂の充填のためのスプルが設けられた金型にもう1つの金型を対向させることにより前記スプルに連通するゲートおよびそこに連通するキャビティを形成可能であり、型締状態とされた該キャビティに前記スプルから前記ゲートを経て溶融樹脂が充填された後、前記両金型の距離を対向方向に広げて前記キャビティを前記型締状態よりも容積が増大させたコアバック状態とすることにより樹脂成形品を成形するための射出発泡成形用金型であって、
    前記両金型のいずれか一方には、他方の前記金型と協働して前記ゲートを形作る入子が設けられ、
    該入子は、前記キャビティを前記型締状態から前記コアバック状態とすべく前記両金型の距離が広げられるか否かに拘らず前記ゲートの容積が変動しないように、一方の前記金型に移動可能に保持されるとともに付勢手段により他方の前記金型へ向けて付勢されていることを特徴とする射出発泡成形用金型。
  2. 前記入子は、前記両金型のうち、前記スプルが設けられた金型に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の射出発泡成形用金型。
  3. 前記スプルは、前記金型に固定的に設けられ、
    前記入子には、前記ゲートを形作るためのゲート凹所と、該ゲート凹所に連通しかつ前記スプルを摺動可能に受け入れるスプル挿通孔と、が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の射出発泡成形用金型。
  4. 前記入子には、ボルト挿通孔が設けられ、
    前記入子は、一方の前記金型に設けられた入子凹所に摺動可能に嵌入された状態で、胴部が前記ボルト挿通孔に挿通可能な径寸法とされかつ頭部が前記ボルト挿通孔よりも大きな径寸法のボルトが前記ボルト挿通孔に挿通されて、前記ボルトの先端が一方の前記金型に螺合されることにより、該金型に移動可能に保持され、
    前記付勢手段は、前記入子と一方の前記金型との間で、前記ボルトの前記胴部が通されたコイルバネであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の射出発泡成形用金型。
  5. 前記ボルトは、一方の前記金型に螺合される前記先端と前記胴部とが径寸法の異なる段付とされていることを特徴とする請求項4に記載の射出発泡成形用金型。

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