JP2009291955A - 繊維強化部材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】製造される繊維強化部材の表面に意匠面が形成される場合において、簡易な方法で、少なくとも該意匠面に生じ得るひけやクラックを効果的に抑止することのできる繊維強化部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の繊維強化部材の製造方法は、一層の繊維強化材SZもしくは複数の繊維強化材SZの積層体からなる繊維強化基材SKを、成形型10のキャビティC内に収容する前段階で、もしくは収容した後に、該繊維強化基材SKの表面の一部もしくは全部に熱伝導性物質Nを塗布もしくは散布し、マトリックス樹脂MをキャビティC内に注入して繊維強化基材SKに含浸させ、熱硬化させて繊維強化部材SBを製造するものである。
【選択図】図5
【解決手段】本発明の繊維強化部材の製造方法は、一層の繊維強化材SZもしくは複数の繊維強化材SZの積層体からなる繊維強化基材SKを、成形型10のキャビティC内に収容する前段階で、もしくは収容した後に、該繊維強化基材SKの表面の一部もしくは全部に熱伝導性物質Nを塗布もしくは散布し、マトリックス樹脂MをキャビティC内に注入して繊維強化基材SKに含浸させ、熱硬化させて繊維強化部材SBを製造するものである。
【選択図】図5
Description
本発明は、繊維強化基材に樹脂が含浸硬化してなる繊維強化部材の製造方法に関するものである。
航空機や船舶、自動車などの構造部材として使用される、繊維強化基材に樹脂が含浸硬化してなる繊維強化部材の製造方法においては、ドライな繊維強化材が複数枚積層されてできる繊維強化基材を成形型内に配設し、たとえば熱硬化性のエポキシ樹脂などのマトリックス樹脂を成形型内に注入する射出成形法が一般に用いられている。なお、この射出成形法には、最終成形品に対してキャビティの嵩が高く設定され、樹脂の射出に応じて可動型を稼動制御しながら圧縮する射出圧縮法や、最終成形品の嵩とキャビティの嵩が同程度に設定され、型閉めされた成形型内に樹脂を加圧充填するRTM法(レジン・トランスファー・モールディング)などがある。
ところで、上記する射出成形において、成形型のキャビティ内では部位ごとに温度分布が生じており、温度が相対的に低い部位におけるマトリックス樹脂はおのずとその硬化が遅れてしまう。このキャビティ内の温度分布は、該キャビティが湾曲形状等の3次元的な空間形状を呈し、さらには空間部位ごとに嵩が相違する場合に顕著となる。充填された樹脂の熱収縮および硬化は、キャビティ内で相対的に温度の高い領域に位置する繊維強化基材の表面部位から順に進行していく。この熱収縮により、まわりの樹脂が収縮部位に引き寄せられながら該収縮部位での硬化が進行するため、相対的に温度の低い領域に位置する表面部位では残った樹脂量が相対的に少なくなっており、結果としてその表面部位にひけやクラックが生じ易くなってしまう。
また、面的な広がりのある繊維強化部材においては、その一方面が意匠面を形成し(この一方面の全面が意匠面を形成する場合と、その一部が意匠面を形成する場合がある)、その他方面が意匠面を形成しない部材を製造することも多く、その一例として、車両のフードルーフなどを挙げることができる。このような意匠面を形成する側面を備えた繊維強化部材を製造する場合には、少なくとも意匠面を形成する部位にひけを生じさせないようにして射出成形をおこなうのが望ましい。かりに意匠面を形成する部位にひけが存在する場合、それが補修できない程度のものであれば不良品としての扱いとなるし、補修可能なものであればひけ部分をサンダー処理等した後に塗装等を施してひけを視認できないようにすることとなるが、これでは歩留まりの低下、補修手間の発生等に起因する製造効率の低下は否めない。
したがって、温度分布が存在するキャビティ内において、さらには、該キャビティ内で意匠面を形成する側面を有した繊維強化部材を射出成形にて製造する場合において、該意匠面を如何にしてひけなく製造することができるか、が当該分野における急務の課題となっている。
ここで、成形型内の温度分布に起因する成形品(繊維強化部材)のひけやクラックなどを防止する従来技術として、特許文献1に開示の製造方法を挙げることができる。この製造方法は、成形型(金型)の底部にダイヤフラムを設けておき、複数のヒータを成形型内に配置しておき、成形型内にマトリックス樹脂を注入後に加圧媒体からなる液圧をダイヤフラムを介して間接的にマトリックス樹脂に作用させ、さらに各ヒータの温度制御を図りながら、マトリックス樹脂をダイヤフラムとは反対側の上部から順に硬化させる方法である。
この製造方法では、上記概説からも明らかなように、成形型にダイヤフラムを設置すること、複数のヒータを最適に制御する必要があることなど、成形型の製作コストが高くなり、各ヒータ相互の温度制御が困難であることは理解に易く、この制御困難性に起因して製造効率の低下や製造歩留まりの低下が否めない。
本発明は、上記する問題に鑑みてなされたものであり、従来一般の成形型に何等の追加構成を施すことなく、それでいて射出成形時に成形型のキャビティ内に温度分布が存在する場合でも、さらには、製造される繊維強化部材の表面に意匠面が形成される場合でも、少なくとも該意匠面に生じ得るひけやクラックを簡易かつ効果的に抑止することのできる繊維強化部材の製造方法を提供することを目的とする。
前記目的を達成すべく、本発明による繊維強化部材の製造方法は、一層の繊維強化材もしくは複数の繊維強化材の積層体からなる繊維強化基材を、成形型のキャビティ内に収容する前段階で、もしくは収容した後に、該繊維強化基材の表面の一部もしくは全部に熱伝導性物質を塗布もしくは散布し、マトリックス樹脂をキャビティ内に注入して繊維強化基材に含浸させ、熱硬化させて繊維強化部材を製造するものである。
本発明の製造方法は、たとえば面的に広がる繊維強化基材を成形型に収容する前、もしくは収容した後に、該繊維強化基材のたとえば一方面の全面もしくは一部の領域に熱伝導性物質を塗布もしくは散布し、次いで、注入をおこなうことにより、熱伝導性物質が塗布等された表面部位を他の部位に先行して熱硬化させ、該部位にひけを生じさせないようにする製造方法である。
たとえば、繊維強化基材の一方面の全面にひけを生じさせないようにする場合には、該一方面の全面に熱伝導性物質を塗布等しておくことにより、仮にキャビティ内で温度分布が存在する場合でも、RTM成形時の熱は熱伝導性物質を介して全面に伝達され、全面の熱収縮をほぼ同時におこなうような熱収縮制御が可能となる。
また、繊維強化基材の一方面の一部にひけを生じさせないようにする場合には、該一部もしくはさらにその周辺領域を加えた範囲にのみ熱伝導性物質を塗布等しておくことにより、該一部の熱収縮および硬化を他の部位に先行しておこなわせ、該部位でのひけの発生を抑止することができる。
ここで、繊維強化基材を構成する繊維強化材は、炭素繊維やガラス繊維、ケプラー繊維やジュートなどの短繊維や長繊維が一定の配向で整列された部材、もしくはかかる長繊維が2以上の配向をもって編みこまれた部材のことであり、通常は、これらの部材(面材)が積層されて多層構造の繊維強化基材が形成される。また、繊維強化基材に含浸されるマトリックス樹脂は、液状エポキシ樹脂をはじめとする任意の樹脂材料が使用される。この繊維強化基材にマトリックス樹脂が含浸硬化された繊維強化部材として、炭素繊維強化部材(CFRP)やガラス繊維強化部材(GFRP)などを挙げることができる。
また、ここでいうRTM成形とは、射出圧縮法を含む意味であるが、中でも、射出成形時において成形型の高精度な稼動制御が要求されず、したがって、製造効率性に優れ、製品歩留まりの高いRTM成形が好適である。
また、使用される熱伝導性物質は特に限定されるものではないが、熱伝導性に優れた素材として、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、高熱伝導性カーボンなどのフィラーを挙げることができる。これらのフィラーを単独で、または複数種のフィラーを混合して繊維強化基材表面の適所に散布したり、これらのフィラーをバインダー樹脂(形状を仮固定する樹脂)に混合した溶液を繊維強化基材表面の適所に塗布することができる。
ここで、成形型内へのマトリックス樹脂の注入態様として、成形型を構成する下型のキャビティ面に繊維強化基材が載置され、該繊維強化基材の上型側の表面に熱伝導性物質が散布等されている場合には、この上型側からマトリックス樹脂をキャビティ内に高圧充填することにより、充填された樹脂圧にて繊維強化基材表面に散布された熱伝導性物質を基材表面の繊維間に押し込むことができ、射出成形の際に該熱伝導性物質が散布部位から流動し、移動してしまうことを抑制することができる。したがって、たとえば下型側に樹脂注入孔が形成されている場合は、下型のキャビティ面に熱伝導性物質が散布された表面を対向させて繊維強化基材を収容するのがよい。
上記する本発明の製造方法によれば、従来一般の射出成形時に使用されている成形型に何等の追加機構、たとえばキャビティ部位ごとの温度を制御する機構や圧力を制御する機構などを施すことなく、したがって、何等の精巧な制御を要することなく、極めて簡易な方法にて、製造される繊維強化部材表面の全面、もしくは所望部位に生じ得るひけやクラックを効果的に抑止することができる。
また、本発明による繊維強化部材の製造方法の他の実施の形態は、熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の一部に塗布もしくは散布される場合において、該繊維強化基材の表面の一部が、製造される繊維強化部材の意匠面を形成する部位となるものである。
意匠面を形成する部位の熱収縮および硬化を他の部位(非意匠面部位)に先行しておこなうことにより、何等の補修を要することなく、射出成形のみで高品質な意匠面を有する繊維強化部材を製造することができる。
しかも、意匠面を形成する部位のみに熱伝導性物質を散布等することから、部材表面の全面に熱伝導性物質を散布する場合に比して製造コストは安価となる。
また、本発明による繊維強化部材の製造方法の他の実施の形態として、熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の一部に塗布もしくは散布される場合において、該繊維強化基材の表面の一部が、射出成形時においてキャビティ内で相対的に低温となる領域に位置する繊維強化基材の表面部位となるものである。
この表面の一部が特に意匠面の場合は、既述のごとく、該部位の熱収縮を他の部位に先行しておこなわせることにより、射出成形後に成形型から脱型した繊維強化部材には高品質な意匠面を形成することができる。また、表面の一部が意匠面ではなくても、該表面の全面にひけを生じさせないようにしたい場合には、キャビティ内で相対的に低温となる領域に位置する表面の一部に所定量の熱伝導性物質を散布等しておくことにより、表面の全面をほぼ同時に熱収縮させることが可能となり、低温領域に位置する表面の一部に生じ得るひけを抑止することができる。
また、本発明による繊維強化部材の製造方法の他の実施の形態は、熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の全部に塗布もしくは散布される場合において、繊維強化部材の意匠面を形成する部位に、相対的に多くの熱伝導性物質が塗布もしくは散布されるものである。なお、別の形態として、射出成形時においてキャビティ内で相対的に低温となる領域に位置する繊維強化基材の表面部位に、相対的に多くの熱伝導性物質が塗布もしくは散布されるものであってもよい。
この製造方法は、たとえば繊維強化部材の一方面の全面に熱伝導性物質を散布等するものであり、かつ、意匠面を形成する部位には他の部位に比して相対的に多くの熱伝導性物質を散布等する方法である。
また、本発明による繊維強化部材の製造方法の他の実施の形態は、繊維強化基材が複数の繊維強化材の積層体から形成され、かつ、該繊維強化基材の一方面の全部もしくは一部に意匠面が形成され、繊維強化基材の他方面には意匠面が形成されない場合において、意匠面が形成される前記一方面から意匠面が形成されない前記他方面に向かって、熱伝導性物質の量を低減させながら、各繊維強化材表面に熱伝導性物質を塗布もしくは散布し、かつ、少なくとも、意匠面が形成されない前記他方面には熱伝導性物質が塗布も散布もなされないものである。
本実施の形態は、たとえば5枚の繊維強化材(第1の繊維強化材〜第5の繊維強化材とする)を積層させてなる繊維強化基材を例として取り挙げ、さらに、第1の繊維強化材の表面(上記する繊維強化基材の一方面となる表面)にのみ意匠面が形成される場合において、この第1の繊維強化材の表面のみでなく、これに加えて、第2の繊維強化材の第1の繊維強化材側の表面、さらには第3の繊維強化材の第2の繊維強化材側の表面にも熱伝導性物質を散布等するものである。
さらに、第2の繊維強化材への熱伝導性物質の散布量は第1の繊維強化材のそれよりも少量とし、第3の繊維強化材への熱伝導性物質の散布量は第2の繊維強化材のそれよりも少量として、繊維強化基材を断面的に見た場合に各繊維強化材表面への熱伝導性物質の散布量を意匠面側から順に低減させるものである。
このように、意匠面側に配設された各繊維強化材表面に散布量を変化させながら熱伝導性物質を提供することにより、意匠面における平面的な熱収縮のみならず、該意匠面直下の基材厚み方向における熱収縮をも他の部位に先行させることができ、3次元的なひけ防止制御の実現に繋がる。
ここで、繊維強化基材の他方面、すなわち、上記する例では第5の繊維強化材の表面は意匠面を形成しないことから、この第5の繊維強化材には熱伝導性物質を散布する必要がなく、場合によっては、これに隣接する第4の繊維強化材、さらには第3の繊維強化材の表面にも熱伝導性物質を散布しなくてよい。
本実施の形態によれば、複数の繊維強化材が積層してなる繊維強化基材において、意匠面を形成する表面のひけ防止を、可及的に少量の熱伝導性物質を使用して3次元的に制御することが可能となる。
さらに、本発明による繊維強化部材の製造方法の他の実施の形態は、他の繊維強化部材と接続される端部領域を有する繊維強化部材を製造する場合において、繊維強化基材の表面のうち、前記端部領域以外の表面の全部もしくは一部に熱伝導性物質が塗布もしくは散布され、該端部領域の表面に熱収縮時のひけを生じさせるものである。
製造された繊維強化部材同士を双方の端部領域にて接着もしくはボルト締結等する場合も往々にしてあるが、本実施の形態では、このように他の繊維強化部材に接続される端部領域を備えた繊維強化部材の製造を対象としたものである。
この場合は、この端部領域にて積極的にひけを生じさせるべく、少なくとも端部領域においては熱伝導性物質を散布等しないようにし、たとえばそれ以外の表面部位に熱伝導性物質を散布等した後に射出成形する。
ひけが生じている端部領域同士を接着等することにより、ひけ部分に接着剤が入り込み、いわゆるアンカー効果によって接続強度を高めることができるし、ひけが生じることで面粗度が高められ、これが摩擦抵抗の増加に繋がることで、接続部における引張耐力や曲げ耐力を向上させることができる。
上記する本発明の製造方法は、特に外観意匠性が要求される繊維強化部材、たとえば、CFRPやGFRPなどの繊維強化部材からなる、車両のルーフ、ディフューザーなどの製造に好適である。
以上の説明から理解できるように、本発明の繊維強化部材の製造方法によれば、たとえば繊維強化基材の表面の適所に熱伝導性物質を散布等した後に従来一般の射出成形を実行するだけの極めて簡易な方法で、意匠性を形成する表面部位でのひけの発生を効果的に抑止することができる。また、繊維強化基材表面の部位ごとに散布等される熱伝導性物質の量(密度)を変化させることで、表面部位ごとのマトリックス樹脂の熱収縮および硬化の速度や順序を所望に制御することができる。しかも、この製造方法は、射出成形時のキャビティ内の温度や圧力に関して何等の精緻な制御を要するものではなく、したがって、製造効率に優れ、製造歩留まりの高い製造方法である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。なお、図示例は、湾曲面を形成する5つの繊維強化材が積層されてなる繊維強化基材の一方面が意匠面を形成する場合の製造方法を説明しているが、繊維強化材の積層数、繊維強化基材の形状などは図示例に限定されるものではなく、繊維強化基材の両面が意匠面を形成する場合は、その両面に熱伝導性物質が散布されて射出成形が実行されるものである。
図1は本発明の製造方法で使用される成形型を説明したものである。この成形型10は、下型1と上型2とが図示する実線で示された型開き姿勢から上型2が矢印X方向に稼動して鎖線で示された型閉め姿勢を形成するように制御されており、該型閉め姿勢において、下型1のキャビティ面11と上型2のキャビティ面21にて所望の湾曲板状を呈するキャビティCを画成するものである。
図示例では、複数のマトリックス樹脂注入用の注入孔22が上型2に開設されてキャビティCに連通しており、型閉め姿勢において、エポキシ樹脂等のマトリックス樹脂を収容する不図示の容器から注入ポンプの動力により、所定の注入圧でキャビティC内にマトリックス樹脂を加圧注入するようになっている。
図2で示すように、所定方向に配列された長繊維の炭素繊維S、…がステッチングされて、湾曲板状を呈した繊維強化材SZが形成され、これが、型開きした状態の下型1のキャビティ面11に相互に配向を90度ずらしながら載置される。
図3は、5つの繊維強化材SZ1,SZ2,SZ3,SZ4,SZ5が順次、繊維配向を90度に交差させた姿勢で積層され、キャビティ面11に繊維強化基材SKが形成された状態を示している。
なお、予め繊維強化基材SKを製作しておき、これを成形型内に載置する方法であってもよい。
キャビティ面11上に繊維強化基材SKが載置されたら、その意匠面を形成する上型2側の繊維強化材SZ5の上面に所望の散布態様で熱伝導性物質Nを散布する。
この熱伝導性物質Nとしては、熱伝導性に優れた素材である、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、高熱伝導性カーボンなどのフィラーのいずれか一種、もしくは複数の混合材を使用してこれを散布することができる。なお、これらのフィラーを水等の溶媒に混ぜて溶液とし、この溶液を基材表面に塗布する方法であってもよい。
次に、熱伝導性物質Nの散布態様を図4〜6に基づいて説明する。
図4で示す散布態様は、繊維強化材SZ5の表面の全面が意匠面となる場合である。この場合は、繊維強化材SZ5の表面の全面に熱伝導性物質Nを均等に散布しておくことにより、仮にキャビティC内で温度分布が存在する場合であっても、熱伝導性物質Nを介して該表面の全面に熱が伝達され、表面全面がほぼ均等に熱収縮と硬化をおこなう結果、全面にひけが存在しない意匠面を有する繊維強化部材を製造することができる。
一方、図5で示す散布態様は、繊維強化材SZ5の表面の一部に意匠面となる領域Dが存在する場合である。この場合は、この領域D、もしくは領域Dとその周辺領域を加えた範囲に熱伝導性物質Nを散布することにより、意匠面を形成する部位を他の部位に先行して熱収縮させ、当該部位にてひけを生じさせないようにすることができる。
また、図6で示す散布態様は、繊維強化材SZ5の表面の全面に熱伝導性物質Nを散布するものであるが、意匠面となる領域Dに相対的に多量の熱伝導性物質Nを散布しておき、その外周の非意匠面部位には相対的に少量の熱伝導性物質Nを散布するものである。ここで、双方の熱伝導性物質Nの散布量は、キャビティC内の温度分布(キャビティの部位ごとに異なる温度の分布)をも勘案して、繊維強化基材の全体でほぼ均等な熱収縮が実行できるように、各部位ごとの散布量が調整されるのが好ましい。
なお、図示を省略するが、繊維強化材SZ4,SZ3の繊維強化材SZ5側の側面にも図4〜図6の散布態様にて熱伝導性物質Nを散布し、かつ、繊維強化材SZ5、SZ4、SZ3の順に散布量を低減させる方法もある。
この方法によれば、繊維強化材SZ5の意匠面形成部位に対し、その面的な熱収縮制御のみならず、厚み方向での熱収縮制御をおこなうことができ、したがって、3次元的に熱収縮制御をおこなうことで意匠面形成部位におけるひけの発生をより高い精度で抑止することができる。
なお、熱伝導性物質Nの散布のタイミングは、成形型内に繊維強化基材SKが収容された後におこなう方法であってもよいし、予め繊維強化材SZ5の表面の適所に散布しておき、その後に成形型内に繊維強化材SZ5もしくは既に積層された繊維強化基材SKを収容する方法であってもよい。
繊維強化基材SKの適所に熱伝導性物質Nが散布された姿勢で、図3で示すように、上型2が型閉めされる(X方向)。この射出成形法は、RTM法を適用するものであり、したがって、型閉めされてできるキャビティCの嵩は繊維強化基材SKの嵩と同一となっており、型閉め後に、マトリックス樹脂がキャビティC内に高圧注入される。なお、図示する成形型10においては、その上型2に注入孔22が開設されており、キャビティC内に載置された繊維強化基材SKの上型2のキャビティ面21に対向する側面に熱伝導性物質Nが散布されることにより、注入された樹脂圧にて熱伝導性物質Nを基材表面の炭素繊維S,S間に押し込むことができ、射出成形の際に該熱伝導性物質Nが散布部位から流動し、移動してしまうことを抑制することができる。
マトリックス樹脂Mが繊維強化基材SK内に含浸され、それが硬化することにより、図7で示すごとく、意匠面にひけが存在しない、高品質な繊維強化部材SBが製造される。
次に、他の繊維強化部材と接続される端部領域を有する、繊維強化部材を製造する方法を概説する。
図8で示すように、繊維強化基材SKの端部領域J,Jにのみ熱伝導性物質Nを散布せず、意匠面を形成する他の表面部位に熱伝導性物質Nを散布して射出成形を実施する。
図9で示すように、成形された繊維強化部材SB’は、その端部領域にてひけH,…が生じており、同様にひけが端部領域に存在する他の繊維強化部材SB’と接着することで、図10で示すような繊維強化部材ユニットが形成される。
この繊維強化部材ユニットにおいては、双方の繊維強化部材SB',SB’の接続部にひけが存在することにより、これに接着剤が入り込んで硬化することで、アンカー効果が期待できる接続構造が形成される。また、ひけの存在によって接続面の面粗度が高くなっており、摩擦強度が向上することで引張耐力、曲げ耐力に優れた接続構造を備えた繊維強化部材ユニットが得られる。
図示する本発明の製造方法によれば、繊維強化基材SKの表面部位ごとに散布される熱伝導性物質Nの量を変化させることにより、表面部位ごとのマトリックス樹脂の熱収縮および硬化の速度や順序を所望に制御することができ、特に、意匠面においてはひけが存在しない高品質な繊維強化部材SB、SB’を製造することができる。
以上、本発明の実施の形態を図面を用いて詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本発明に含まれるものである。
1…下型、11…キャビティ面、2…上型、21…キャビティ面、22…注入孔、10…成形型(金型)、C…キャビティ、S…炭素繊維、SZ、SZ1,SZ2,SZ3,SZ4,SZ5…繊維強化材、SK,SK’…繊維強化基材、N…熱伝導性物質(フィラー)、SB,SB’…繊維強化部材、M…マトリックス樹脂、H…ひけ、J…端部領域
Claims (8)
- 一層の繊維強化材もしくは複数の繊維強化材の積層体からなる繊維強化基材を、成形型のキャビティ内に収容する前段階で、もしくは収容した後に、該繊維強化基材の表面の一部もしくは全部に熱伝導性物質を塗布もしくは散布し、
マトリックス樹脂をキャビティ内に注入して繊維強化基材に含浸させ、熱硬化させて繊維強化部材を製造する、繊維強化部材の製造方法。 - 熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の一部に塗布もしくは散布される場合において、
該繊維強化基材の表面の一部は、製造される繊維強化部材の意匠面を形成する部位である、請求項1に記載の繊維強化部材の製造方法。 - 熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の一部に塗布もしくは散布される場合において、
該繊維強化基材の表面の一部は、注入時においてキャビティ内で相対的に低温となる領域に位置する繊維強化基材の表面部位である、請求項1または2に記載の繊維強化部材の製造方法。 - 熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の全部に塗布もしくは散布される場合において、
繊維強化部材の意匠面を形成する部位に、相対的に多くの熱伝導性物質が塗布もしくは散布される、請求項1に記載の繊維強化部材の製造方法。 - 熱伝導性物質が繊維強化基材の表面の全部に塗布もしくは散布される場合において、
注入時においてキャビティ内で相対的に低温となる領域に位置する繊維強化基材の表面部位に、相対的に多くの熱伝導性物質が塗布もしくは散布される、請求項1または4に記載の繊維強化部材の製造方法。 - 繊維強化基材が複数の繊維強化材の積層体から形成され、かつ、該繊維強化基材の一方面の全部もしくは一部に意匠面が形成され、繊維強化基材の他方面には意匠面が形成されない場合において、
意匠面が形成される前記一方面から意匠面が形成されない前記他方面に向かって、熱伝導性物質の量を低減させながら、各繊維強化材表面に熱伝導性物質を塗布もしくは散布し、かつ、少なくとも、意匠面が形成されない前記他方面には熱伝導性物質が塗布も散布もなされないものである、請求項1,2,4のいずれかに記載の繊維強化部材の製造方法。 - 他の繊維強化部材と接続される端部領域を有する繊維強化部材を製造する場合において、
繊維強化基材の表面のうち、前記端部領域以外の表面の全部もしくは一部に熱伝導性物質が塗布もしくは散布され、該端部領域の表面に熱収縮時のひけを生じさせる、請求項1〜6のいずれかに記載の繊維強化部材の製造方法。 - 前記熱伝導性物質は、シリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、高熱伝導性カーボンのいずれか一種からなる、請求項1〜7のいずれかに記載の繊維強化部材の製造方法。
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