JP2009288355A - 吸音体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】吸音体10は、筐体11と、この筐体11に設けられた膜状体12とを備えて構成されている。筐体11は、周壁14と、この周壁14の一端側に連設された底壁15とを備えて周壁14の他端側を開放している。膜状体12は、複数枚重ねられて周壁14の他端側に張設されている。相互に重なり合う膜状体12は、それらの外周部で接合され、外周部以外の領域は非接合とされる。
【選択図】図1
Description
ここで、吸音体の他の構造としては、特許文献1に開示されているものが知られている。同文献の吸音体は、板状体及び筐体の間に設けられた弾性体からなる制振材を備え、当該制振材を介して板状体を振動させることで吸音作用が得られるようになっている。
ところで、更に他の吸音体としては、筐体を介して膜状体を張設し、当該膜状体を振動させることで吸音作用が得られるタイプのものがある。このタイプの吸音体によれば、特許文献1に比べて軽量化を図ることができ、また、多孔質材に比べて薄型化及びコンパクト化を達成することができる。この吸音体にあっては、理論上、膜状体の面密度を高くする程、吸音率が最大値となる吸音ピークの周波数を低く設定することが可能となる。従って、中低域に前記吸音ピークを設定する場合、膜状体の面密度を高めるべく、膜状体の厚みを厚くすることが考えられる。
そこで、本発明者は、試行錯誤を重ねつつ鋭意検討を行ったところ、膜状体の枚数及び当該膜状体の接合態様について、従来にない新たな構成とすることで、中低域の吸音特性が改善されることを知見した。
本発明は、前述の知見及び不都合に基づいて案出されたものであり、その目的は、薄型化、軽量化及びコンパクト化を図ることができ、特に中低域の吸音性能を向上することができる吸音体を提供することにある。
前記筐体は、周壁と、この周壁の一端側に連設された底壁とを備えて周壁の他端側を開放し、
前記膜状体は、複数枚重ねられて周壁の他端側に張設され、相互に重なり合う膜状体は、それらの外周部で接合され、外周部以外の領域は非接合とされる、という構成を採っている。
図1(A)には、第1実施形態に係る吸音体を模式的に表した概略横断面図が示され、同図(B)には、前記吸音体の平面図が示されている。これらの図において、吸音体10は、剛体からなる筐体11と、この筐体11に設けられた二枚の膜状体12とを備えて構成されている。なお、図1では、説明の便宜上、吸音体10を一体だけ図示しているが、図1(B)の上下左右方向に複数の吸音体10を並設し、隣り合う吸音体10と密接するように連結したユニットを構成してもよい。
各膜状体12の厚みは、0.3mm〜3mm、好ましくは0.7mm〜2mmにそれぞれ設定され、音が入射したときに、その内部損失により音のエネルギを消費可能に設けられている。
次に、本発明の第2実施形態を、図2を用いて説明する。なお、以下の説明において、前記第1実施形態と同一若しくは同等の構成部分については必要に応じて同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
多孔質材20は、不織布等の繊維類のように毛細管を持つ材料や、発泡体等の連続気泡を持つ材料からなり、音が入射したときに、その細孔中で音波が周壁との摩擦や粘性抵抗及び材料小繊維の振動などによって、音のエネルギの一部を熱エネルギとして消費可能に設けられている。具体的には、グラスウール、吸音ウレタンスポンジ、不織布状の有機繊維(PE、PET、PVA、PVC、PP等)及びそれらの組合せが例示できる。
実施例1では、前記第1実施形態と同じ形態の吸音体10を作製した。筐体11の材質をABSとし、筐体11の平面形状を110mm×110mmの方形、前記空間17の上下幅を10mm、側壁14及び底壁15の厚みを5mmとした。二枚の膜状体12は、それぞれ厚み0.85mmのオレフィン系シートとし、側壁14の上端面の略全領域すなわち各膜状体12の外周部5mm幅に沿う領域を接合領域として融着した。
比較例1−1は、図3(A)に示されるように、実施例1に対し、膜状体12の枚数を一枚に変更する構成とした。すなわち、実施例1の膜状体12と同一材質及び同一厚の膜状体12aを一枚だけ張設する構成とした。
比較例1−2は、図3(B)に示されるように、実施例1に対し、膜状体12の枚数を一枚に変更し、膜状体12の厚みを2倍とする構成とした。すなわち、実施例1の膜状体12と同一材質の二枚の膜状体12を重ねて相対面を全面融着して作成された一枚の膜状体12bを張設する構成とした。
実施例2、比較例2−1、比較例2−2は、実施例1、比較例1−1、比較例1−2の空間17の上下幅を30mmに変えた構成とした。
実施例3、比較例3−1、比較例3−2は、実施例1、比較例1−1、比較例1−2の空間17の上下幅を20mmに変え、筐体11の平面形状を165mm×165mmの方形に変えた構成とした。
実施例4、比較例4−1、比較例4−2は、実施例3、比較例3−1、比較例3−2の空間17の上下幅を30mmに変えた構成とした。
実施例5、比較例5−1、比較例5−2は、実施例3、比較例3−1、比較例3−2の筐体11の平面形状を165mm×250mmの長方形に変えた構成とした。
実施例6、比較例6−1、比較例6−2は、実施例3、比較例3−1、比較例3−2の筐体11の平面形状を250mm×330mmの長方形に変えた構成とした。
各実施例及び各比較例ではさらに、湾曲した残響減衰波形に理論式をフィットさせて完全拡散下の残響時間を推定計算するPLD(Power law decay)補正法(J.Acous.Soc.Jpn.(E)19,5(1998)315−326)、及び材料周囲にアクリル板囲い(Deep well)を設置することにより面積効果を抑制するDeep−well法(J.Acous.Soc.Jpn.(E)19,5(1998)327−338)を用いて吸音率を測定した。
各実施例及び各比較例では、図4に示されるように、容積(V)64m3、表面積(S)100m2、V/S=0.64の残響室30の床面30aのほぼ中央に、ほぼ縦1m、横1mの大きさとなるよう各実施例及び各比較例の吸音体10を並べて設置し、吸音体10の周囲には厚さ20mmのアクリル板からなる高さ800mmの拡散枠板32を設置した。そして、音源33を、吸音体10から離れた位置に配置した。このようにして、吸音体10の表面10aに対して、ランダムな方向から音(音による空気振動)が入射するようにした。
各実施例及び各比較例の吸音率の結果を図5〜図10のグラフに示す。
図6のグラフにおいて、実施例2は、比較例2−1,2−2に比べ、低域の200〜250Hzで吸音率が高くなる。
図7のグラフでは、実施例3、比較例3−1、比較例3−2の吸音ピークの中心周波数を見ると、実施例3は、比較例3−1,3−2に比べて低い中心周波数の315Hzとなる。
図8のグラフでは、実施例4は、比較例4−1,4−2に比べて低域の200〜250Hzで吸音率が高くなる。
図9のグラフでは、実施例5は、比較例5−1,5−2に比べて低域の250〜315Hzで吸音率が高くなる。
図10のグラフでは、実施例6、比較例6−1、比較例6−2の吸音ピークの周波数を見ると、実施例6は、比較例6−1,6−2に比べて低い中心周波数の315Hzとなる。
以上のように、実施例1〜6は、各比較例に比べて、250Hz程度の中低域で、吸音性能が良好となることが理解できる。しかも、実施例1〜6は、筐体11のサイズや空間17の上下幅を前述したように設定したので、コンパクト化及び薄型化も同時に達成することができ、比較的狭い個室、車室、スピーカ内、電子機器内等において有効利用されることが期待できる。
すなわち、本発明は、特定の実施の形態に関して特に図示し、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上に述べた実施形態、実施例に対し、形状、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
Claims (2)
- 筐体に取り付けられた膜状体を有する吸音体において、
前記筐体は、周壁と、この周壁の一端側に連設された底壁とを備えて周壁の他端側を開放し、
前記膜状体は、複数枚重ねられて周壁の他端側に張設され、相互に重なり合う膜状体は、それらの外周部で接合され、外周部以外の領域は非接合とされることを特徴とする吸音体。 - 前記相互に重なり合う膜状体は、平面視で周壁の端面に収まる領域で接合されることを特徴とする請求項1記載の吸音体。
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