JP2009286245A - 車両用フード構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】車両前部のエンジンルームを覆い、上下に貫通する開口が設けられたフード本体と、該フード本体の前記開口を覆うように取り付けられた開口カバー部材とを備えた車両用フード構造において、フード本体の折れ変形を安定化させることができる車両用フード構造を提供する。
【解決手段】フード本体50における開口50aの周縁部に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に前記フード本体50を前後に折れ変形させる切欠50b,50bを設ける。
【選択図】図3

Description

本発明は、車両前部のエンジンルームを覆うフードの構造に関し、自動車の車体構造の技術分野に属する。
車両前部のエンジンルームを覆うフード本体は、車体前部への衝撃荷重の作用時に変形することにより衝撃を吸収する役割を有する場合があるが、以下のような構造の場合、衝撃を十分に吸収できない場合がある。
すなわち、エンジンルーム内には、エンジンや変速機その他種々の装置が配設されており、これらの装置の設置スペースを確保するためにフード本体の一部を上方へ膨出させ、あるいはエンジンのインタークーラにエアを供給するためにエア導入口が設けられることがある。しかし、デザイン上や構造上の理由により、前記構造に代えて、前記膨出部分やエア導入口が設けられる部分を含むように開口を設けると共に、該開口に前記用途に応じた開口カバー部材を取り付けることがある。しかし、この開口カバー部材は、フード本体よりも剛性が高くなる場合があり、その場合、フード全体としての剛性が高くなって該フード本体が変形しにくくなる、すなわち衝撃を吸収しにくくなるのである。
この問題に対処するものとして、例えば特許文献1には、以下のようなものが開示されている。すなわち、開口カバー部材とフード本体とをボルトとナットとで締結すると共に、フード本体のボルト挿通孔を、前後に2つの略円形の孔部が連結されただるま型に形成し、後側の孔部をボルトの軸部を挿通可能な程度の径とし、前側の孔部をナットよりも大径とし、前記フード本体に前方から衝撃荷重が作用したときに、フード本体における開口よりも前方の部分が後方へ変形することにより、ボルト及びナットが前側の孔部に相対移動し、該孔部から抜け出るように構成している。これによれば、開口カバー部材の前部側がフード本体から外れて、該フード本体が開口の側方で前後に折れ変形しやすくなる。
特公昭63−23028号公報
ところで、前述のように構成した場合でも、以下のような問題が存在する。すなわち、フード本体に開口が設けられていると、折れ位置や折れ方向が定まりにくくなり、その結果、フード本体が開口側方で前後に折れ変形すべきときに、車幅方向の折れ予定線に対して若干傾いて変形したり、あるいはこれとは逆の方向に傾いて変形したり等、折れ変形の状態が安定せず、衝撃吸収を安定して行えないのである。なお、この問題は、開口カバー部材の剛性が高くなく、開口カバー部材を外す必要がない場合においても生じる。
そこで、本発明は、フード本体の折れ変形を安定化させることができる車両用フード構造を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、本発明は、次のように構成したことを特徴とする。
まず、本願の請求項1に記載の発明は、車両前部のエンジンルームを覆い、上下に貫通する開口が設けられたフード本体と、該フード本体の前記開口を覆うように取り付けられた開口カバー部材とを備えた車両用フード構造であって、前記フード本体における前記開口の周縁部に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に前記フード本体を前後に折れ変形させる切欠が設けられていることを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記請求項1に記載の車両用フード構造において、前記開口カバー部材は、外気導入口を有するエアインテーク部材であることを特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記請求項1または請求項2に記載の車両用フード構造において、前記切欠は、前記開口の車幅方向両端側からそれぞれ車幅方向外方に延びていることを特徴とする。
また、請求項4に記載の発明は、前記請求項3に記載の車両用フード構造において、前記フード本体における前記開口の側方に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に該フード本体を前後に折れ変形させる脆弱部が設けられていると共に、該脆弱部と前記切欠とは、車体前後方向の略同位置となるように形成されていることを特徴とする。
また、請求項5に記載の発明は、前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用フード構造において、前記開口カバー部材は、前記フード本体における前記開口の周縁部に該開口の前方側を含む複数個所で結合手段を用いて結合されており、これらの結合手段のうちの開口前方側の結合手段は、前記フード本体における前記開口前方の部分に衝撃荷重が作用したときに結合が解除されるように構成されていることを特徴とする。
また、請求項6に記載の発明は、前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用フード構造において、前記フード本体に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に該フード本体を前記開口の後方で前後に折れ変形させる後方脆弱部が設けられていることを特徴とする。
次に、本発明の効果について説明する。
まず、請求項1に記載の発明によれば、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に、フード本体が、開口の周縁部に形成された切欠に誘導されて、前後に折れ変形しやすくなる。したがって、フード本体に開口カバー部材が取り付けられる開口が設けられている場合でも、フード本体の折れ変形の前後位置や方向が安定し、フード本体に車両前方から加わる衝撃が安定して吸収されることとなる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記開口カバー部材が、外気導入口を有するエアインテーク部材である場合に、前述の効果が奏されることとなる。なお、請求項1における開口カバー部材は、外気導入口を有していないものも含む。
また、請求項3に記載の発明によれば、フード本体に前方から衝撃荷重が作用すると、フード本体が、前記開口の車幅方向両端側からそれぞれ車幅方向外方に延びるように形成された切欠に誘導されて、前後に折れ変形することとなる。その場合に、切欠の形成方向は、前後に折れ変形するときの車幅方向の折れ線の延び方向と一致することとなるので、フード本体の折れ変形が一層安定することとなる。また、切欠の構造が簡単であり、容易に形成することができる。
また、請求項4に記載の発明によれば、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に、フード本体が、該フード本体における前記開口の側方に設けられた脆弱部によっても前後に折れ変形することとなる。その場合に、この脆弱部と前記切欠とは、車体前後方向の略同位置となるように形成されているから、車体前後方向における前記切欠による折れ位置と前記脆弱部による折れ位置とが一致することとなる。したがって、フード本体の前後の折れ変形が一層安定することとなる。
また、請求項5に記載の発明によれば、前記開口カバー部材は、前記フード本体における前記開口の周縁部に該開口の前方側を含む複数個所で結合手段を用いて結合されていると共に、複数の結合手段のうちの開口前方側の結合手段は、前記フード本体における前記開口前方の部分に衝撃荷重が作用したときに結合が解除されるように構成されている。したがって、例えば前突等により、前記開口前方の部分に前方から衝撃荷重が作用して、フード本体が前記切欠に誘導されて前後に折れ変形する場合に、その変形が容易となる。すなわち、フード本体の前後の折れ変形が一層安定することとなる。
また、例えば車体前部への軽衝突等により歩行者がフード本体における前記開口前方の部分に上方から当接して、フード本体における前記開口前方の部分に上方から衝撃荷重が作用すると、前記開口前方側の結合手段による結合が解除される。したがって、前記フード本体における開口前方部分が下方へ変位可能となって、衝撃を良好に吸収できるようになり、軽衝突時における歩行者保護も良好に実現されることとなる。
また、請求項6に記載の発明によれば、車体前部への車両前方からの衝撃荷重の作用時に、前記フード本体が、前記切欠位置での折れ変形に加え、前記開口の後方に設けられた後方脆弱部においても前後に折れ変形可能となる。すなわち、フード本体は、前後に2ケ所で折れ変形可能となり、衝撃吸収量を増大させることができる。その場合に、後方脆弱部の前方に存在する切欠によりフード本体における後方脆弱部よりも前方の部分の折れ変形が安定するから、後方脆弱部による折れ変形も安定することとなる。
以下、本発明の実施の形態に係る車両用フード構造について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る車両1の斜視図である。この図からわかるように、車両1の前部の外面は、ボンネットフード2(以下、単に「フード2」という)、フロントバンパ3、フロントフェンダ4等の部材により構成されており、図2に示すように、これらの内側の空間には、エンジン11、変速機12等の種々の装置が配設されるエンジンルームXが形成されている。
また、車両1の前部車体は、エンジンルームXとその後方の車室とを仕切るダッシュパネル(図示なし)と、該パネルの両側部に沿って上下に延び、フロントドア5の前端部を枢支するヒンジピラー21と、ダッシュパネルから前方に延びるフロントサイドフレーム22と、ヒンジピラー21の上端部側から前方に延びるエプロンレインフォースメント23等により構成されている。フロントサイドフレーム22の前端側には、ラジエータ等を支持する枠状のシュラウドパネル25が取り付けられている。シュラウドパネル25は、樹脂により形成され、車体本体を構成する。
バンパ3は、樹脂により形成されて車両外面を構成するバンパフェース31と、該バンパ3の骨格を構成し、バンパフェース31を支持するバンパレインフォースメント32とを有している。バンパレインフォースメント32は、前後に圧縮変形可能な蛇腹状のクラッシュカン24を介してフロントサイドフレーム22の前端部に取り付けられている。なお、フロントサイドフレーム22の前部も前後に圧縮変形可能に構成されている。
次に、本実施の形態に係るフード2の構造について、詳しく説明する。
このフード2は、図2からわかるように、後端部においてヒンジ40を介して車体に回動自在に支持され、かつ前端部下面に設けられたストライカ41を介して、シュラウドパネル25の上辺部に取り付けられたラッチ機構42に係止可能とされている。
また、フード2は、図1からわかるように、前部側車幅方向中央に上下に貫通する開口50aが設けられたフード本体50と、前記開口50aに取り付けられ、前記エンジン11のインタークーラに供給するエアを導入するエア導入口60hを有するエアインテーク部材60とを有している。
図3は、フード2の下面図、図4は、図3のA−A断面、B−B断面、C−C断面、D−D断面、E−E断面図である。これらの図からわかるように、フード2のフード本体50は、車両の外表面を構成するアウタパネル51と、該アウタパネル51に対して上下に間隔を空けて設けられ、エンジンルームX側の面を構成するインナパネル52とを有し、これらの外縁部を接合することにより構成されている。
前記フード本体50の開口50aは、インナパネル52及びアウタパネル51の前部側車幅方向中央に、車幅方向に長い略矩形の同形状の開口52a,51aをそれぞれ形成し、開口52a,51aの周縁部同士を接合することにより構成されている。
フード本体50の前記開口50aの周縁部のうち車幅方向の両端部前側には、インナパネル52及びアウタパネル51をそれぞれ同位置で同形状に切り欠くことにより、切欠50b,50bが形成されている。この切欠50b,50bは、開口50aから車幅方向外方に延びるように形成され、略矩形状とされている。
インナパネル52には、通常時におけるフード2の剛性確保のため、該パネル52の前縁部、後縁部、及び左右の側縁部に略沿うように、下方に突出する前端凸部52b、後端凸部52c、及び側端凸部52d,52dがそれぞれ形成されている。
また、インナパネル52には、エアインテーク部材60取付用の開口50aの後方において、車体軽量化等を目的とする複数の開口52e…52eが形成されている。インナパネル52におけるこれらの開口52e…52eの縁に沿う部分は、アウタパネル51側に折り曲げられている。そして、これにより、開口52e…52e間を仕切って略車幅方向及び略車体前後方向に延びる部位は、断面略逆ハット状となって、前記各凸部間の梁として通常時におけるフード2の面剛性を確保する役割を果たす。以下、略車幅方向に延びる部位を車幅方向連結部52f、略車体前後方向に延びる部位を前後方向連結部52g…52gという。
ここで、前記側端凸部52d,52dには、前記開口50aの両端側の切欠50b,50bを通るように車幅方向に設定された前側折り曲げ予定線Lfに沿って、上方に凹むビード状の凹部でなる脆弱部52h,52hがそれぞれ形成され、車両前方からの衝撃荷重がフード2に入力されたときに、この前方脆弱部52h,52hにおいて前後に折れ変形可能に構成されている。
また、前記側端凸部52d,52dには、前記車幅方向連結部52fを通るように車幅方向に設定された後側折り曲げ予定線Lrに沿って、上方に凹むビード状の凹部でなる後方第1脆弱部52j,52jがそれぞれ形成され、車両前方からの衝撃荷重がフード2に入力されたときに、この後方第1脆弱部52j,52jにおいて前後に山折れ状に折れ変形可能に構成されている。
また、前後方向連結部52g…52gには、車幅方向連結部52fの前後において、すなわち後側折り曲げ予定線Lrを挟んで、上方に凹むビード状の凹部でなる後方第2脆弱部52k…52kがそれぞれ形成され、車両前方からの衝撃荷重がフード2に入力されたときに、この後方第2脆弱部52k…52kにおいてそれぞれ前後に山折れ状に折り曲げ変形可能に、全体としては後側折り曲げ予定線Lrにおいて前後に折り曲げ変形可能に構成されている。
ここで、これらの脆弱部の折り曲げ変形に対する剛性は、後方脆弱部52j,52j,52k…52kよりも、前方脆弱部52h,52hの方が弱くされている。なお、この剛性は、各脆弱部の凹部の深さを調整することにより設定される。
また、フード本体50の開口50aの周縁部のうち前側の周縁部50f及び後側の周縁部50rにはそれぞれ、エアインテーク部材60用の取付部50c…50cが車幅方向にほぼ等間隔で5ケ所形成されている。その場合に、前側の取付部は、前記折れ予定線Lfよりも前方に位置している。
次に、エアインテーク部材60について説明する。このエアインテーク部材60は、硬質樹脂により形成され、図5、図6に示すように、フード本体50におけるエアインテーク部材60の後方部分の上面に連続するように形成された上面部60aと、フード本体50におけるエアインテーク部材60の前方部分50bの上面に連続するように形成され、左右において後方上方に滑らかに立ち上がり、左右の端部が前記上面部60aの左右の端部に結合される下面部60bとを有している。そして、上面部60aの後端部及び下面部60bにおいて、フード本体50における開口50aの前側周縁部50f及び後側周縁部50rに、ファスナ70…70及び締結部材90…90により固定されるようになっている。
図6に示すように、エアインテーク部材60の上面部60aの後端側及び下面部60bの下面には、前記フード本体50の取付部50c…50cに対応して、取付ボス部60c…60cが車幅方向にほぼ等間隔でそれぞれ5ケ所形成されている。
次に、エアインテーク部材60の、開口50aの前側の周縁部50fへの取付構造、及び後側の周縁部50rへの取付構造について詳しく説明する。まず、開口50aの前側の周縁部50fへの取付について説明すると、図6に示す前記5ケ所の取付部50c…50cのうち車幅方向中央以外の取付部50c…50cにおいてはそれぞれ、図7に示すように、ファスナ70により固定されている。詳しく説明すると、ファスナ70は、エアインテーク部材60の下面部60bのボス部60cに頭部71aが埋め込まれることにより固定されると共に、軸部71bに係合部71cを有するファスナ本体71と、該ファスナ本体71の係合部71cに係合可能な孔部72aとを有する係合部材72とを有している。そして、ファスナ本体71の軸部71bが、フード本体50の前側周縁部50fの取付部50cに形成されたファスナ挿通孔50sに上方から挿通し、ファスナ本体71の軸部71bに前側周縁部50fの下方から係合部材72を係合させることにより、エアインテーク部材60の下面部60bがフード本体50の前側周縁部50fに固定されるようになっている。なお、係合部材72と取付部50cとの間には、ワッシャ73が介設されている。
その場合に、このファスナ70のファスナ本体71と係合部材72との係合の強度は、ファスナ本体71の軸方向においてこれらを引き離す方向に所定以上の力が作用したときにこれらの係合が解除されるように、係合部71cの強度や弾性等を調節することにより設定される。この所定以上の力は、例えば、フード本体50におけるエアインテーク部材60の前方部分50Aに、例えば軽衝突等により標準体型の成人が上方から当接して衝撃力が作用したときに、前記係合が解除されることとなる大きさに設定されている。
一方、図6に示す前側周縁部50fの前記5ケ所の取付部50c…50cのうち車幅方向中央の取付部50cにおいては、図8に示すように、位置決めピン80により、フード本体50に対する位置決めがなされる。詳しく説明すると、位置決めピン80は、エアインテーク部材60の下面部60bのボス部60cに頭部80aが埋め込まれることにより固定されており、該位置決めピン80の本体部80bが、フード本体50の前側周縁部50fの取付部50cに形成された位置決めピン挿通孔50tに上方から挿通されることにより、位置決めされるようになっている。
次に、開口50aの後側周縁部50rへの取付について説明すると、図6に示す前記5ケ所の取付部50c…50cのうち車幅方向両端側及び中央の取付部50c…50cにおいては、図9に示すように、締結部材90により固定されている。締結部材90は、ボルト91とナット92とで構成されている。詳しく説明すると、ボルト91は、エアインテーク部材60の上面部60aのボス部60cに頭部91aが埋め込まれることにより固定されており、該ボルト91の螺子部91bが、フード本体50の開口50aの後側周縁部50fの取付部50cに形成されたボルト挿通孔50uに上方から挿通され、該ボルト91の螺子部91bに後側周縁部50rの下方からナット92を螺合させることにより、エアインテーク部材60の上面部60aの後端側がフード本体50の後側周縁部50rに固定されるようになっている。なお、ナット92と取付部50cとの間には、ワッシャ93が介設されている。
一方、後側周縁部50rの前記5ケ所の取付部50c…のうち車幅方向両端側及び中央以外の取付部においては、前記位置決めピン80と同様の位置決め構造により、位置決めされるようになっており、説明は省略する。
次に、前述の図5を用いて、フード本体50における前記エアインテーク部材60の前方部分50Aの構造について説明する。図に示すように、インナパネル52の前端凸部52bとアウタパネル51との間の空間の車幅方向中央を挟む所定範囲の部分(図3参照)には、前記ストライカ41が固定されるストライカレインフォースメント53が配設されている。このストライカレインフォースメント53は、前側部材54と後側部材55とで構成されている。
前側部材54は、インナパネル51の前端凸部52bの下面部52wに両端側が固着される下面部54aと、該下面部54aの前端から前方上方へアウタパネル51内面近傍まで立ち上がる傾斜面部54bと、該傾斜面部54bの前端からアウタパネル51とほぼ平行に略前方に広がる上面部54cとを有している。上面部54cの上面には弾性材56が取り付けられ、該上面部54cにより弾性材56を介してアウタパネル51の前端部近傍が支持されるようになっている。
後側部材55は、前記前側部材54の下面部54aに固着される下面部55aと、該下面部55aの後端から後方上方へアウタパネル51内面近傍まで立ち上がる傾斜面部55bと、該傾斜面部55bの後端からアウタパネル51とほぼ平行に略後方に広がる上面部55cと、該上面部55cの後端において下方に屈曲してインナパネル52における前端凸部52bの直後方部分に固着される屈曲部55dとを有している。上面部55cの上面には弾性材56が取り付けられ、該上面部55cにより弾性材56を介してアウタパネル51におけるエアインテーク部材60の前方部分が支持されるようになっている。
そして、前記ストライカ41は、前側部材54の下面部54aの車幅方向中央に、例えばボルト等を用いて固定され、インナパネル51の前端凸部52bの下面部52wに形成された貫通口52xを介して下方に突出し、シュラウドパネル25の上辺部に設けられたラッチ機構42に係合されるようになっている。
その場合に、前記ストライカレインフォースメント53は、アウタパネル51及び弾性材56,56を介して、前側部材54及び後側部材55の上面部54c,55cに上方から衝撃荷重が作用したときに、仮想線で示すように、前側部材54の傾斜面部54bが前方へ、後側部材55の傾斜面部55bが後方へ倒れ、これにより、衝撃を吸収可能に構成されている。
次に、本実施の形態による作用について説明する。
まず、車両1の前部に例えば歩行者等の障害物との車体本体の変形が生じない程度の軽衝突等があり、図10に示すように、フード本体50におけるエアインテーク部材60の前方部分50Aに白抜き矢印で示すように上方から衝撃荷重が作用した場合について説明すると、この場合、この前方部分50Aの前部は、ストライカ41を介して車体本体側のラッチ機構42に拘束されているので、下方へ変位できない。一方、前方部分50Aの後部側においては、ファスナ70のファスナ本体71と係合部材72との係合が解除される。すなわち、エアインテーク部材60の前部側と、フード本体50における開口50aの前側周縁部50fとの結合が解除され、その結果、フード本体50におけるエアインテーク部材60の前方部分50Aの後部側が下方へ変位可能となる。そして、開口50aの側方には切欠50b,50b及び脆弱部50h…50hが設けられているから、フード本体50が折れ予定線Lf位置において谷折れ状に折曲しつつ、開口前方部分5Aの後部側が下方へ変位することとなる。
また、このようにフード本体50の開口前方部分50Aに上方から衝撃荷重が作用したときには、この開口前方部分50A内部のストライカレインフォースメント53にもアウタパネル51等を介して衝撃荷重が作用することとなり、これにより、前述の図5に示すように、前側部材54の傾斜面部54bが前方へ、後側部材55の傾斜面部55bが後方へ倒れるように変形することなる。
次に、車両1の前部に車体本体の変形が生じるような、前記軽衝突よりも大きな衝撃荷重が加わる衝突があった場合について説明すると、この場合、フロントバンパ3のバンパフェース31がまず後方へ変形し、さらに物体がエンジンルームX側へ進入する。そして、バンパレインフォースメント32に当接すると、クラッシュカン24やフロントサイドフレーム22の前部側が圧縮変形すると共に、これに伴ってフロントサイドフレーム22の前端部に取り付けられたシュラウドパネル25等が後退する。
その場合に、フード2の前端位置が、フロントサイドフレーム22の前端よりも前方に位置しているので、車体本体の圧縮変形途中から、フード2にも、前方からの衝撃荷重が加わることとなる。その場合に、本実施の形態に係るフード2の構造では、以下のようにフード2の変形が進むこととなる。
すなわち、フード2の先端に物体が当接すると、衝撃荷重により、ストライカ41を介して車体本体にロックされたフード2の先端側が後方に押されることにより、図11に示すように、前側折り曲げ予定線Lf位置において、前述の前方脆弱部52h,52h及び切欠50b,50bにそれぞれ誘導されて山折れ状に折曲すると共に、後側折り曲げ予定線Lr位置において、後方第1脆弱部52j,52j及び後方第2脆弱部52k…52k)に誘導されて山折れ状に折曲することとなる。ここで、フード本体50における開口50aの前方部分50Aの先端が下方となるように折り曲げ変形されるのは、フード2が前下がりになっているからである。
その場合に、折れ変形の初期に、前方部分50Aの後部側において、ファスナ70のファスナ本体71と係合部材72との係合が解除される。すなわち、エアインテーク部材60の前部側と、フード本体50における開口50aの前側周縁部50fとの結合が解除され、前側折り曲げ予定線Lf位置における折れ変形が確実に行われる。
以上説明したように、本実施の形態に係るフード構造によれば、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に、フード本体50が、前記開口50aの車幅方向両端側からそれぞれ車幅方向外方に延びるように形成された切欠50b,50bに誘導されて、前後に折れ変形しやすくなる。したがって、フード本体50にエアインテーク部材60(開口カバー部材)が取り付けられる開口50aが設けられている場合でも、フード本体50の折れ変形の前後位置や方向が安定し、フード本体50に車両前方から加わる衝撃が安定して吸収されることとなる。
その場合に、切欠50b,50bの形成方向は、前後に折れ変形するときの車幅方向の折れ予定線Lf(折れ線)の延び方向と一致することとなるので、フード本体50の折れ変形が一層安定することとなる。また、切欠50b,50bの構造が簡単であり、容易に形成することができる。
また、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に、フード本体50が、該フード本体50における前記開口50aの側方に設けられた脆弱部50h,50hによっても前後に折れ変形することとなる。その場合に、この脆弱部50h,50hと前記切欠50b,50bとは、車体前後方向の略同位置となるように形成されているから、車体前後方向における前記切欠50b,50bによる折れ位置と前記脆弱部50h,50hによる折れ位置とが一致することとなる。したがって、フード本体50の前後の折れ変形が一層安定することとなる。
また、エアインテーク部材60は、前記フード本体50における前記開口50aの周縁部に該開口50aの前方側を含む複数個所でファスナ70…70(結合手段),及び締結部材90…90(結合手段)を用いて結合されていると共に、これらの結合手段のうちの開口前方側のファスナ70…70は、前記フード本体50における前記開口前方の部分50Aに衝撃荷重が作用したときに結合が解除されるように構成されている。したがって、例えば前突等により、前記開口前方の部分50Aに前方から衝撃荷重が作用して、フード本体50が前記切欠50b,50bに誘導されて前後に折れ変形する場合に、その変形が容易となる。すなわち、フード本体50の前後の折れ変形が一層安定することとなる。
また、例えば車体前部への歩行者との軽衝突等により歩行者がフード本体50における前記開口前方部分50Aに上方から当接して、フード本体50における前記開口前方部分50Aに上方から衝撃荷重が作用すると、前記開口前方側のファスナ70…70による結合が解除される。したがって、前記フード本体50における開口前方部分50Aが下方へ変位可能となって衝撃を良好に吸収できるようになり、軽衝突時における歩行者保護も実現されることとなる。
また、車体前部への車両前方からの衝撃荷重の作用時に、前記フード本体50が、前記切欠位置での折れ変形に加え、前記開口50aの後方に設けられた後方脆弱部50j,50j,50k…50kにおいても前後に折れ変形可能となる。すなわち、フード本体50は、前後に2ケ所で折れ変形可能となり、衝撃吸収量を増大させることができる。その場合に、後方脆弱部50j,50j,50k…50kの前方に存在する切欠50b,50bによりフード本体50における後方脆弱部50j,50j,50k…50kよりも前方の部分の折れ変形が安定するから、後方脆弱部50j,50j,50k…50kによる折れ変形も安定することとなる。
なお、本実施の形態においては、特許請求の範囲における開口カバー部材として、エアインテーク部材60を適用した例について説明したが、本発明は以下のようなものにも適用可能である。すなわち、図12に示すように、この他の例に係る車両1′のフード2′においては、フード本体50′の開口50a′には、外気導入口を有していないカバー部材60′が適用されている。エンジンルーム内には、エンジンや変速機その他種々の装置が配設されており、これらの装置の設置スペースを確保するためにフードの一部を上方へ膨出させる必要がある場合があり、本例においては、この膨出部分を、デザインや構造を考慮した上で、別部材により構成したものである。そして、このようなカバー部材60′の場合においても、剛性が高くなる場合があり、これに伴う前述した問題を解決するために、カバー部材60′のフード本体50′への取付を、前記実施の形態と同様の構造により行っており、これにより前記実施形態と同様の作用、効果が得られることとなる。
本発明は、フード本体の折れ変形を安定化させることができ、自動車産業に広く利用可能である。
本発明の第1の実施の形態に係る車両の前部の斜視図である。 車体前部の側面図である(フェンダパネル及びバンパフェース等を透視した状態で示している。 ボンネットの下面図である。 図3のA−A断面,B−B断面,C−C断面,D−D断面,E−E断面を示す図である。 図3のF−F拡大断面図である。 図3のエアインテーク部材取付用の開口を中心とする部分の一部破断拡大図である。 図6のG−G拡大断面図である。 図6のH−H拡大断面図である。 図6のJ−J拡大断面図である。 フード本体の開口前方部分に上方から衝撃荷重が加わったときの作用の説明図である(図3のA−A断面位置であるが、説明の便宜上、位置決めピン80に代えて、前側の結合手段としてのファスナ70を表示している)。 フード本体に車体前方方から衝撃荷重が加わったときの作用の説明図である(図3のA−A断面位置であるが、説明の便宜上、位置決めピン80に代えて、前側の結合手段としてのファスナ70を表示している)。 異なる開口カバー部材が適用された車両についての図1相当の図である。
符号の説明
1 車両
2 フード
41 ストライカ
50 フード本体
50A 開口前方部(フード本体における開口前方の部分)
50a 開口
50b 切欠
50h 脆弱部(開口の側方に設けられた脆弱部)
50j 後方脆弱部(開口の後方に設けられた脆弱部)
50k 後方脆弱部(開口の後方に設けられた脆弱部)
50s ファスナ挿通孔
50u ボルト挿通孔
60 エアインテーク部材(開口カバー部材)
60h 外気導入口
70 ファスナ(開口前方側の結合手段)
71 ファスナ本体
71b 係合部
72 係合部材
90 締結部材
91 ボルト
92 ナット
X エンジンルーム

Claims (6)

  1. 車両前部のエンジンルームを覆い、上下に貫通する開口が設けられたフード本体と、
    該フード本体の前記開口を覆うように取り付けられた開口カバー部材とを備えた車両用フード構造であって、
    前記フード本体における前記開口の周縁部に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に前記フード本体を前後に折れ変形させる切欠が設けられていることを特徴とする車両用フード構造。
  2. 前記請求項1に記載の車両用フード構造において、
    前記開口カバー部材は、外気導入口を有するエアインテーク部材であることを特徴とする車両用フード構造。
  3. 前記請求項1または請求項2に記載の車両用フード構造において、
    前記切欠は、前記開口の車幅方向両端側からそれぞれ車幅方向外方に延びていることを特徴とする車両用フード構造。
  4. 前記請求項3に記載の車両用フード構造において、
    前記フード本体における前記開口の側方に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に該フード本体を前後に折れ変形させる脆弱部が設けられていると共に、
    該脆弱部と前記切欠とは、車体前後方向の略同位置となるように形成されていることを特徴とする車両用フード構造。
  5. 前記請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用フード構造において、
    前記開口カバー部材は、前記フード本体における前記開口の周縁部に該開口の前方側を含む複数個所で結合手段を用いて結合されており、
    これらの結合手段のうちの開口前方側の結合手段は、前記フード本体における前記開口前方の部分に衝撃荷重が作用したときに結合が解除されるように構成されていることを特徴とする車両用フード構造。
  6. 前記請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の車両用フード構造において、
    前記フード本体に、車両前部への前方からの衝撃荷重の作用時に該フード本体を前記開口の後方で前後に折れ変形させる後方脆弱部が設けられていることを特徴とする車両用フード構造。
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