JP2009281779A - マイクロチップおよびその使用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】2種以上の液体(典型的には検体または検体中の特定成分と1種以上の液体試薬)を効率よく混合することができる混合効率に優れた混合部であって、比較的簡易な構造を有する混合部を備えるマイクロチップおよびその使用方法を提供する。
【解決手段】第2の基板と、該第2の基板上に積層された表面に溝を備える第1の基板とを含み、該溝と第2の基板における第1の基板側表面とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、該流体回路は、2種以上の液体を混合させるための室である混合部を備え、該混合部を構成する壁の少なくとも一部は、ライン状に延びる第1壁と、該第1壁の一端からライン状に延びる第2壁からなるマイクロチップおよびその使用方法である。
【選択図】図1

Description

本発明は、DNA、タンパク質、細胞、免疫および血液等の生化学検査、化学合成ならびに、環境分析などに好適に使用されるμ−TAS(Micro Total Analysis System)などとして有用なマイクロチップおよびその使用方法に関する。
近年、医療や健康、食品、創薬などの分野で、DNA(Deoxyribo Nucleic Acid)や酵素、抗原、抗体、タンパク質、ウィルスおよび細胞などの生体物質、ならびに化学物質を検知、検出あるいは定量する重要性が増してきており、それらを簡便に測定できる様々なバイオチップおよびマイクロ化学チップ(以下、これらを総称してマイクロチップと称する。)が提案されている。マイクロチップは、実験室で行なっている一連の実験・分析操作を、数cm角で厚さ数mm〜1cm程度のチップ内で行なえることから、検体および試薬が微量で済み、コストが安く、反応速度が速く、ハイスループットな検査ができ、検体を採取した現場で直ちに検査結果を得ることができるなど多くの利点を有し、たとえば血液検査等の生化学検査用として好適に用いられている。
マイクロチップは、通常、その内部に流体回路を有しており、該流体回路を利用して、流体回路内に導入された検体(たとえば、血液または血液中に含まれる特定成分等)の計量、検体と液体試薬との混合などの種々の流体処理が行なわれる。このような流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を印加することにより行なうことが可能である。
検査・分析の対象となる検体または検体中の特定成分と液体試薬とをマイクロチップ内において混合し、該検体または該特定成分を液体試薬で処理する(または液体試薬と反応させる)場合、該マイクロチップは、その流体回路の一部として、これらの液体同士を接触させて混ぜ合わせるための室である混合部を備えるのが通常である。たとえば特許文献1(特に、図8および9)には、全血から分離された血漿と、試薬溜に保持されていた試薬とを混合するための混合部を備えるチップが開示されている。
特開2007−17342号公報
混合部において行なわれる検体または検体中の特定成分と液体試薬とは、十分に混合されなければならない。混合が不十分であると、検体または検体中の特定成分に対してなされるべき液体試薬による処理が十分になされなかったり、あるいは検体または検体中の特定成分と液体試薬との反応が不十分となり、正確な検査・分析を行なえない恐れがあるためである。
本発明の目的は、2種以上の液体(典型的には検体または検体中の特定成分と1種以上の液体試薬)を効率よく混合することができる混合効率に優れた混合部であって、比較的簡易な構造を有する混合部を備えるマイクロチップおよびその使用方法を提供することである。
本発明は、第2の基板と、該第2の基板上に積層された表面に溝を備える第1の基板とを含み、該溝と第2の基板における第1の基板側表面とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、該流体回路は、2種以上の液体を混合させるための室である混合部を備え、該混合部を構成する壁の少なくとも一部は、ライン状に延びる第1壁と、該第1壁の一端からライン状に延びる第2壁からなるマイクロチップを提供する。本発明において、第1壁と第2壁とがなす内角は、略90度であることが好ましい。
また、混合部を構成する壁は、第1壁における第2壁が連結された一端とは反対側の端部から延びる第3壁と、第2壁における第1壁が連結された一端とは反対側の端部から延びる第4壁とを含むことが好ましい。ここで、第1壁と第3壁とがなす内角および第2壁と第4壁とがなす内角は、それぞれ0度より大きく、かつ180度より小さいことが好ましい。
また本発明は、上記いずれかのマイクロチップの使用方法を提供する。本発明のマイクロチップの使用方法は、マイクロチップに遠心力を印加することにより、2種以上の液体を混合部に導入して混合液を得る工程と、第1壁と略垂直な方向の遠心力をマイクロチップに印加する第1の混合促進工程と、第2壁と略垂直な方向の遠心力をマイクロチップに印加する第2の混合促進工程とを含む。第1の混合促進工程と第2の混合促進工程とは、交互に繰り返されることが好ましい。
本発明のマイクロチップによれば、検体または検体中の特定成分と1種以上の液体試薬などの2種以上の液体を効率よく混合することができる。したがって、マイクロチップ内において、十分に混合され、なされるべき適切な処理または反応が行なわれた混合液を得ることができ、もって、信頼性の高い正確な検査・分析を行なうことができる。
本発明のマイクロチップは、各種化学合成、検査・分析等を、それが有する流体回路を用いて行なうことができるチップであり、本発明の1つの好ましい形態において、マイクロチップは、第2の基板と、該第2の基板上に積層、貼合された第1の基板とからなり、より具体的には、第2の基板上に、表面に溝を備える第1の基板を、当該第1の基板の溝形成側表面が第2の基板に対向するように貼り合わせてなる。したがって、かかる2枚の基板からなるマイクロチップは、その内部に、第1の基板表面に設けられた溝と第2の基板における第1の基板に対向する側の表面とから構成される空洞部からなる流体回路を備える。第1の基板表面に形成される溝の形状およびパターンは、特に制限されるものではないが、当該溝および第2の基板表面によって構成される空洞部の構造が、所望される適切な流体回路構造となるように決定される。
また、本発明の別の好ましい形態において、マイクロチップは、基板の両表面に設けられた溝を備える第1の基板と、該第1の基板を挟むようにして積層、貼合された第2の基板および第3の基板とからなる。かかる3枚の基板からなるマイクロチップは、第2の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第2の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第1の流体回路と、第3の基板における第1の基板に対向する側の表面および第1の基板における第3の基板に対向する側の表面に設けられた溝から構成される空洞部からなる第2の流体回路と、の2層の流体回路を備える。ここで、「2層」とは、マイクロチップの厚み方向に関して異なる2つの位置に流体回路が設けられていることを意味する。第1の流体回路と第2の流体回路とは、第1の基板に形成された厚み方向に貫通する1または2以上の貫通穴によって連結されていてもよい。
基板同士を貼り合わせる方法としては、特に限定されるものではなく、たとえば貼り合わせる基板のうち、少なくとも一方の基板の貼り合わせ面を融解させて溶着させる方法(溶着法)、接着剤を用いて接着させる方法などを挙げることができる。溶着法としては、基板を加熱して溶着させる方法;レーザ等の光を照射して、光吸収時に発生する熱により溶着する方法;超音波を用いて溶着する方法などを挙げることができる。
本発明のマイクロチップの大きさは、特に限定されず、たとえば縦横数cm程度、厚さ数mm〜1cm程度とすることができる。
本発明のマイクロチップを構成する上記各基板の材質は、特に制限されず、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート樹脂(PAR)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、塩化ビニル樹脂(PVC)、ポリメチルペンテン樹脂(PMP)、ポリブタジエン樹脂(PBD)、生分解性ポリマー(BP)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの有機材料;シリコン、ガラス、石英などの無機材料等を用いることができる。
マイクロチップを第1および第2の基板の2枚から構成する場合において、第2の基板上に積層される、表面に溝を備える第1の基板は透明基板とすることができる。これにより、流体回路の一部として、透明な第1の基板の溝と、第2の基板表面とから構成される検出部を形成することができ、該検出部に検査・分析の対象となる検体(または検体中の特定成分)と液体試薬との混合液を導入し、該検出部に対して光を照射し、透過した光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を該混合液について行なうことが可能となる。第2の基板は、透明基板であってもよいし、基板を樹脂から構成し、該樹脂中にカーボンブラック等を添加することにより黒色基板とするなど着色基板としてもよいが、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。第2の基板を着色基板とすることにより、レーザなどの光を用いた溶着法を用いることができる。また、レーザ溶着法により基板の貼り合わせを行なう場合、着色基板の貼り合わせ表面が主に融解されて貼合されることとなるため、第1の基板である透明基板に形成された溝の変形を最小限に抑えることができる。
また、マイクロチップを第1の基板、第2の基板および第3の基板の3枚から構成する場合、たとえば、両表面に溝を備える第1の基板を挟持する第2の基板および第3の基板は、透明基板とすることができる。これにより、流体回路の一部として、第1の基板をその厚み方向に貫通する貫通穴と、透明な第2および第3の基板表面とから構成される検出部を形成することができ、該検出部に検査・分析の対象となる検体と液体試薬との混合液を導入し、該検出部に対してマイクロチップ表面と垂直な方向の光を、マイクロチップ上面(または下面)側から照射し、その反対側から透過した光の強度(透過率)を検出するなどの光学測定を該混合液について行なうことが可能となる。第2の基板と第3の基板との間に位置する第1の基板は、着色基板とすることが好ましく、黒色基板とすることがより好ましい。
第1の基板表面に、流体回路を構成する溝(流路パターン)を形成する方法としては、特に制限されず、転写構造を有する金型を用いた射出成形法、インプリント法などを挙げることができる。無機材料を用いて基板を形成する場合には、エッチング法などを用いることができる。
本発明のマイクロチップにおいて、流体回路(2層の流体回路を備える場合には、第1の流体回路および第2の流体回路)は、流体回路内の液体に対して適切な様々な処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置された種々の部位を備えており、これらの部位は、微細な流路を介して適切に接続されている。
本発明のマイクロチップにおいて、その流体回路は、2種以上の液体を接触させ、混ぜ合わせるための室である混合部を少なくとも備えている。流体回路は、1つのみの混合部を備えていてもよいし、2以上の混合部を備えていてもよい。本発明に係る混合部については、後で詳述する。流体回路は、混合部以外の部位を有していてもよく、かかる部位としては、たとえば、流体回路内に導入された検体から特定成分を取り出すための分離部;検体(検体中の特定成分を含む。以下同じ。)を計量するための検体計量部;液体試薬を収容しておくための液体試薬保持部;液体試薬を計量するための液体試薬計量部;検体と液体試薬との混合により得られる混合液についての検査・分析(たとえば、混合液中の特定成分の検出または定量)を行なうための検出部(光学測定を行なうためのキュベット)などを挙げることができる。本発明のマイクロチップは、これら例示された部位のすべてを有していてもよく、いずれか1以上を有していなくてもよい。また、これら例示された部位以外の部位を有していてもよい。これらの部位は、所望する流体処理を行なうことができるよう、流体回路内の適切な位置に配置され、かつ微細な流路を介して接続されている。また、これらの部位はそれぞれ複数設けられてもよい。
なお、本発明において「液体試薬」とは、検査・分析の対象となる検体と混合される液体物質であって、マイクロチップを用いた検査・分析にあたって該検体を処理する、または該検体と反応させるための液体物質である。液体試薬は、1つのマイクロチップ内に1種のみ内蔵されていてもよいし、2種以上内蔵されていてもよい。また、「検体」とは、流体回路内に導入される検査・分析の対象となる物質(たとえば血液)自体、または、該物質中の特定成分(たとえば血漿成分、血球成分など)を意味する。
マイクロチップが2枚の基板(第1の基板および第2の基板)からなる場合においては、通常、本発明のマイクロチップには、その上側表面(すなわち第1の基板表面)に、内部の液体試薬保持部まで貫通する(第1の基板をその厚み方向に貫通する)貫通口である、液体試薬を液体試薬保持部に注入するための液体試薬注入口が設けられる。このような本発明のマイクロチップは、通常、液体試薬注入口から液体試薬が注入された後、マイクロチップ表面(第1の基板表面)に当該液体試薬注入口を封止するためのラベルまたはシールが貼着されて、使用に供される。なお、マイクロチップが3枚の基板(第1の基板〜第3の基板)からなる場合においては、液体試薬注入口は、第2の基板または第3の基板をその厚み方向に貫通する貫通口として設けることができる。
検体と1種または2種以上の液体試薬とを混合させることによって最終的に得られた混合液は、特に限定されないが、たとえば、該混合液が収容された部位(たとえば検出部)に光を照射して透過する光の強度(透過率)を検出する方法等の光学測定などに供され、検査・分析が行なわれる。
検体からの特定成分の抽出(不要成分の分離)、検体および/または液体試薬の計量、検体と液体試薬との混合、得られた混合液の検出部への導入などのような流体回路内における種々の流体処理は、マイクロチップに対して、適切な方向の遠心力を順次印加することにより行なうことができる。マイクロチップへの遠心力の印加は、マイクロチップを、遠心力を印加可能な装置(遠心装置)に載置して行なうことができる。遠心装置は、遠心軸を中心として回転自在なローター(回転子)と、該ローター上に配置された回転自在なステージとを備えている。該ステージ上にマイクロチップを載置し、該ステージを回転させてローターに対するマイクロチップの角度を任意に設定し、ローターを遠心軸を中心として回転させることにより、マイクロチップに対して任意の方向の遠心力を印加することができる。
次に、本発明のマイクロチップが備える混合部について説明する。図1は、本発明のマイクロチップが備える混合部の構造の一例を示す上面図である。図1は、表面に溝を備える第1の基板と、第2の基板とを貼り合わせてなる内部に流体回路を有するマイクロチップの第1の基板側表面から見た上面図であり、混合部が配置されている部分を拡大して示すものである。第1の基板の表面に形成された溝と第2の基板表面とから構成される流体回路は、実際にはマイクロチップ内部に形成されており、したがって、混合部を構成する壁もまた、マイクロチップ内部に形成されているものであるが、図1においては、該壁を実線で示している。
図1に示される混合部1は、流体回路の一部として、第1壁10、第2壁20、第3壁30および第4壁40により構成されている。これら4つの壁によって隔された領域A内において、2種以上の液体が混合される。このような領域Aは、第1の基板表面に形成された溝の底面に相当する。
第1壁10は、ライン状(直線状または略直線状)を有しており、第2壁20は、この第1壁10の一端から、第1壁10とは異なる方向へ向かってライン状に延びている。また、混合部1を構成する壁は、第1壁10における第2壁20が連結された一端とは反対側の端部からライン状に延びる第3壁30と、第2壁20における第1壁10が連結された一端とは反対側の端部から延びるライン状に第4壁40とをさらに含んでいる。
かかる第1壁10、第2壁20、第3壁30および第4壁40によって隔される室からなる混合部1によれば、2種以上の液体を効率よく混合することができる。2種以上の液体は、図1における混合部1の上側に開いた開口50から混合部1の領域A内に導入することができ、混合操作により得られた混合液もまた、該開口50を通して混合部1から排出させることができる。
混合部1での液体の混合について詳細に述べる。まず、混合部1の領域A内に、混合に供される2種以上の液体を導入する。混合に供される2種以上の液体としては、特に制限されないが、たとえば、当該マイクロチップを用いた検査・分析等の対象となる検体(検体中の特定成分も含まれる)および該検体を処理する、あるいは該検体と反応させるための液体試薬が挙げられる。この場合、2種以上の液体試薬が、検体と混合されてもよい。2種以上の液体の混合部1内への導入は、マイクロチップに対して、図1における下向きの成分を含む遠心力(たとえば、図1に示される遠心力X。遠心力Xの方向は、第2壁20と垂直な方向である。)を印加することにより行なうことができる。
図2は、図1における下向きの成分を含む遠心力の印加により、混合部1に2種以上の液体が開口50から導入された状態の一例を示している。このように、開口50から導入され一緒になった液体は、第2壁20の内壁面に押し当てられるようにして当該内壁面全体に広がり、第2壁20のライン状の内壁面に沿って引き伸ばされる。なお、図2に示される状態において、液体が、第2壁20の内壁面上に均一に広がるのではなく、わずかに右寄り(第1壁10寄り)に広がっているのは、該液体が受けている力(遠心力)が図2における真下の方向ではなく、わずかに右向きの成分を含んでいるためである。このような現象は、たとえば、混合部1がマイクロチップ平面において、マイクロチップ中心位置からわずかに右寄りに配置されており、マイクロチップに印加される遠心力が、マイクロチップ中心を通る下向き方向である場合に起こり得る。
ここで、本発明に係る混合部においては、図1に示される混合部1のように、第2壁20に連続して形成された第4壁40を設けることが好ましい。第4壁40を設けることにより、混合部内に液体が導入された際、第2壁20における第1壁10側とは反対側の端部から液体が漏れ出し、混合部から排出されてしまうことを防止することができる。第2壁20と第4壁40とがなす内角(図1における角度γ)は、上記機能を果たすために、0度より大きく、かつ180度より小さいことが好ましく、より好ましくは、45度以上135度以下である。
ついで、マイクロチップに対して、図1における右向きの成分を含む遠心力(たとえば、図1に示される遠心力Y。遠心力Yの方向は、第1壁10と垂直な方向である。)を印加する(第1の混合液促進工程)。図3は、図1に示される遠心力Yを印加したときの、混合部1内の混合液の状態の一例を示している。当該遠心力の印加により、図3に示されるように、混合された2種以上の液体(混合液)は、第1壁10の内壁面に押し当てられるようにして当該内壁面全体に広がり、第1壁10のライン状の内壁面に沿って引き伸ばされる。より具体的には、第2壁20の内壁面上に引き伸ばされていた混合液は、この右向き成分を含む遠心力により、一旦第1壁10と第2壁20とがなす内角部またはその近傍で集合し、収縮した後、該遠心力により、第1壁10の内壁面上で再度引き伸ばされることとなる。このように、混合液を伸縮させることにより、混合液の混合が効率的に促進される。なお、この際の遠心力の方向は、必ずしも第1壁10と垂直な方向である必要はないが、垂直に近い方向であることが好ましい。
本発明に係る混合部においては、図1に示される混合部1のように、第1壁10に連続して形成された第3壁30を設けることが好ましい。第3壁30を設けることにより、混合液を第1壁10の内壁面上に移動させた際、第1壁10における第2壁20側とは反対側の端部から液体が漏れ出し、混合部から排出されてしまうことを防止することができる。第1壁10と第3壁30とがなす内角(図1における角度β)は、上記機能を果たすために、0度より大きく、かつ180度より小さいことが好ましく、より好ましくは、45度以上135度以下である。
次に、再度、図1における下向きの成分を含む遠心力(たとえば、図1に示される遠心力X。遠心力Xの方向は、第2壁20と垂直な方向である。)を印加し、図2に示される状態と同様の状態を得る(第2の混合促進工程)。この遠心力の印加により、第1壁10の内壁面上に引き伸ばされていた混合液は、一旦第1壁10と第2壁20とがなす内角部またはその近傍で集合し、収縮した後、第2壁20の内壁面上で再度引き伸ばされることとなる。これにより、さらに混合が促進される。
以上のように、少なくとも第1壁10および第2壁20とから構成される混合部によれば、異なる方向の遠心力の印加による液体の伸縮を利用して、効率的に2種以上の液体を混合することが可能となる。上記の第1の混合促進工程と第2の混合促進工程とは、交互に繰り返し行なってもよい。これにより、より確実に均一混合がなされた混合液を得ることができる。
ここで、第1壁10と第2壁20とがなす内角(図1に示される角度α)は、液体の伸縮をより効率的に行なうという観点から、0度を越え、かつ180度未満であることが好ましく、60度以上120度以下であることがより好ましく、90度または略90度であることが特に好ましい。また、第1壁10の内壁面の長さ(図1におけるL1)および第2壁20の内壁面の長さ(図1におけるL2)は、液体の伸縮を効率的に行なうために、それぞれ10〜20mm程度とすることが好ましい。
本発明に係る混合部は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が施されてもよい。たとえば、図1の混合部1を参照して、第3壁30における第1壁10が連結された一端とは反対側の端部、および/または、第4壁40における第2壁20が連結された一端とは反対側の端部には、第5壁および/または第6壁が連結されてもよい。たとえば、図1のように、第2壁20とのなす角度γが90度を越えるように第4壁40を形成した場合において、混合部内に混合液が存在する状態で、混合部からの混合液の流出を生じさせることなく、図1における左向き方向の遠心力を印加する必要がある場合、図1の混合部1では、当該左向きの遠心力を印加すると、意図しない混合部からの混合液の流出が生じることとなる。第4壁40に連続する壁を、たとえば、第4壁とのなす内角が0度を越え、かつ180度未満となるように設けることにより、このような問題を解消することができる。
また、開口50は、壁を設けることにより、2つ以上の開口に分割されていてもよい。当該2以上の開口は、2種以上の液体を混合部内に導入するための導入口および得られた混合液の排出口として用いることができる。また、2種以上の液体(たとえば、検体と液体試薬)は、それぞれ異なる開口から混合部内に導入されてもよい。
以下、実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
図4は、第2の基板(図示せず)上に、表面に溝を備える第1の基板100を積層、貼合してなる本発明のマイクロチップの好ましい一例を示す上面図である。図4に示されるマイクロチップにおいて、第1の基板100は、図示しない第2の基板上に、その溝形成側表面が第2の基板に対向するように貼り合わされている。したがって、図4は、第1の基板100の、溝形成側表面とは反対側の表面を示したものであるが、説明の便宜上、溝パターンを実線で示している。本実施例のマイクロチップにおいて第2の基板は、第1の基板100と同じか、または同様の輪郭形状を有している。第1の基板100および第2の基板はそれぞれ、たとえばプラスチック製の透明基板、黒色基板である。
図4を参照して、本実施例のマイクロチップは、被験者から採取された全血を含むキャピラリー等のサンプル管を組み込むためのサンプル管載置部101、サンプル管より導出された全血を、血球成分と血漿成分とに分離するための分離部102、分離された血球成分を計量するための血球計量部103、液体試薬を保持するための3つの液体試薬保持部104、105および106、液体試薬保持部105および106にそれぞれ隣接して設けられた、一時的に液体試薬を収容するための液体試薬収容部107および108、液体試薬を計量するための3つの液体試薬計量部109、110および111、血球成分と液体試薬とを混合するための第1の混合部112、血球成分と液体試薬との混合液を計量するための混合液計量部113、血球成分と液体試薬との混合液と、他の液体試薬との混合を行なうための第2の混合部114、ならびに、最終的に得られた混合液についての検査・分析が行なわれる検出部115から主に構成される。3つの液体試薬保持部104、105および106は、液体試薬を当該液体試薬保持部内に注入するための液体試薬注入口116、117、118をそれぞれ有している。液体試薬注入口116、117および118は、第1の基板100を厚み方向に貫通する貫通口である。なお、以下では、液体試薬注入口を介して液体試薬保持部104、105および106内に注入、保持される液体試薬を、それぞれ液体試薬R0、R1、R2と称する。第1の混合部112は、上記で説明した図1の混合部1と略同じ構造を有している。
以上のように、本実施例のマイクロチップが有する流体回路は、全血から分離された血球成分に対して、液体試薬R0、R1およびR2をこの順で混合させ、得られた混合液について光学測定等の検査・分析を行なうのに適した構成となっている。
図4に示されるマイクロチップの動作方法は、概略以下のとおりである。なお、以下に説明する動作方法は一例を示したものであり、この方法に限定されるものではない。まず、全血サンプルを採取したサンプル管をサンプル管載置部101に挿入する。次に、マイクロチップに対して、図4における左向き方向(以下、単に左向きという。他の方向についても以下同様。)に遠心力を印加し、サンプル管内の全血サンプルを取り出した後、下向きの遠心力により、全血サンプルを分離部102に導入して遠心分離を行ない、血漿成分と血球成分とに分離する。次に、左向きの遠心力を印加し、上層の血漿成分を除去する。この際、除去された血漿成分は、領域aに収容される。ついで、下向きの遠心力を印加することにより、分離部102内の血球成分液面を整えるとともに、除去した血漿成分を領域bに移動させる。次に、右向きの遠心力を印加し、液体試薬保持部104内の液体試薬R0を液体試薬計量部109に導入し、計量を行なう。この遠心力により、液体試薬保持部105内の液体試薬R1および液体試薬保持部106内の液体試薬R2は、それぞれ液体試薬収容部107、108に移動する。また、この遠心力により、分離部102内の血球成分は、血球計量部103に導入され計量される。
次に、下向きの遠心力を印加して、計量された血球成分と計量された液体試薬R0とを第1の混合部112にて混合し混合液を得る。この遠心力により、液体試薬収容部108内の液体試薬R2は、液体試薬計量部111にて計量される。ついで、右向き、下向き、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、上記混合液の混合を十分に行なう。上記左向きの遠心力の印加により、液体試薬収容部107内の液体試薬R1は、液体試薬計量部110にて計量される。また、最後の下向きの遠心力により、計量された液体試薬R1は、第2の混合部114に移動する。なお、第1の混合部112を構成する壁の構成に起因する混合効率の向上等の効果は、図1に示される混合部について説明したものと同様である。
次に、左向きの遠心力を印加し、第1の混合部112内の混合液中の固形分を遠心分離した後、左上向きついで左向きの遠心力を印加して、第1の混合部112内の混合液の上澄み部分を混合液計量部113に導入し、計量を行なう。次に、下向きの遠心力を印加することにより、計量された混合液と液体試薬R1とを第2の混合液114にて混合する。ついで、左向き、下向きの遠心力を順次印加して、当該混合液の混合を十分に行なう。この下向きの遠心力を印加した状態において、計量された液体試薬R2は、領域cに位置している。次に、右向きの遠心力を印加して、該混合液と液体試薬R2とを検出部115にて混合し、さらに下向きの遠心力を印加して混合を十分に行なう。最後に、右向きの遠心力を印加して、混合液を検出部115に収容させ、該検出部115に光を照射し、その透過光の強度を測定するなどの光学測定を行なう。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のマイクロチップが備える混合部の構造の一例を示す上面図である。 遠心力の印加により、図1に示される混合部に2種以上の液体が導入された状態の一例を示す上面図である。 図1に示される遠心力Yを印加したときの、図1に示される混合部内の混合液の状態の一例を示す上面図である。 第2の基板上に、表面に溝を備える第1の基板を積層、貼合してなる本発明のマイクロチップの好ましい一例を示す上面図である。
符号の説明
1 混合部、10 第1壁、20 第2壁、30 第3壁、40 第4壁、50 開口、100 第1の基板、101 サンプル管載置部、102 分離部、103 血球計量部、104,105,106 液体試薬保持部、107,108 液体試薬収容部、109,110,111 液体試薬計量部、112 第1の混合部、113 混合液計量部、114 第2の混合部、115 検出部、116,117,118 液体試薬注入口。

Claims (5)

  1. 第2の基板と、前記第2の基板上に積層された表面に溝を備える第1の基板とを含み、
    前記溝と前記第2の基板における前記第1の基板側表面とから構成される空洞部からなる流体回路を有するマイクロチップであって、
    前記流体回路は、2種以上の液体を混合させるための室である混合部を備え、
    前記混合部を構成する壁の少なくとも一部は、ライン状に延びる第1壁と、前記第1壁の一端からライン状に延びる第2壁からなるマイクロチップ。
  2. 前記第1壁と前記第2壁とがなす内角は、略90度である請求項1に記載のマイクロチップ。
  3. 前記混合部を構成する壁は、
    前記第1壁における前記第2壁が連結された一端とは反対側の端部から延びる第3壁と、
    前記第2壁における前記第1壁が連結された一端とは反対側の端部から延びる第4壁と、を含み、
    前記第1壁と前記第3壁とがなす内角および前記第2壁と前記第4壁とがなす内角は、それぞれ0度より大きく、かつ180度より小さい請求項1または2に記載のマイクロチップ。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロチップの使用方法であって、
    マイクロチップに遠心力を印加することにより、2種以上の液体を前記混合部に導入して混合液を得る工程と、
    前記第1壁と略垂直な方向の遠心力をマイクロチップに印加する第1の混合促進工程と、
    前記第2壁と略垂直な方向の遠心力をマイクロチップに印加する第2の混合促進工程と、
    を含むマイクロチップの使用方法。
  5. 前記第1の混合促進工程と第2の混合促進工程とを交互に繰り返す請求項4に記載のマイクロチップの使用方法。
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