JP2009276202A - 癌診断用試薬 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の癌診断用試薬は、Gln-Gly-Arg, Leu-Arg-Asn, Glu-Lys-Lys, Lys-Arg-Ser, Pro-Leu-Gly, Ala-Pro-Ala, Glu-Gly-Arg, Gly-Arg-Arg, Gly-Lys-Lys 等の3個のアミノ酸が結合した基質ペプチドが4種以上組み合わせられている。
【選択図】図1
Description
血清中のPSAの濃度の測定は、モノクローナル抗体を利用したPSA測定試薬を用いて行うのが一般的である。これは、試薬を血清中のPSAと反応させて免疫複合体を形成させ、形成された免疫複合体の量からPSA濃度を測定するものである。
また、PSAがセリンプロテアーゼの一種であることに着目して、PSAによって選択的に分解切断される又はPSAが選択的に結合する新規なペプチドを、PSA測定試薬として用いる研究も行われている。このような技術としては、例えば、(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)に開示されたものが知られている。
(1)血清中のPSAの濃度測定は前立腺癌のスクリーニングとして有効な方法ではあるが、PSAは前立腺癌のみに特異的なマーカーではなく、前立腺肥大症や前立腺炎でも上昇してしまうという問題がある。そこで、PSAによる前立腺癌の診断精度の向上のために、例えば、2種類のモノクローナル抗体を用いて、複合体を形成していない遊離型PSA(フリーPSA)の濃度と、血清中のPSA(トータルPSA:主にアンチキモトリプシンと結合した結合型PSA及びフリーPSA)の濃度とを測定し、フリーPSAとトータルPSAの比(F/T比)を求める方法等が開発されている。(特許文献1)、(特許文献2)、(特許文献3)においても、フリーPSAに特異的なペプチドが開示されており、診断にはF/T比を使うことが示唆されている。このように、PSAは前立腺癌のみに特異的なマーカーではないため、前立腺癌の診断精度を上げるための検査方法の開発が不可欠であり、PSA値によるスクリーニングは診断方法として完成されているわけではない。
(2)また、フィナステリドを有効成分とする特定の抜け毛防止薬を服用すると、PSA値が約半分に低下することが知られている。従って、被験者がこの抜け毛防止薬を服用しているときは、PSAをマーカーとするスクリーニングでは前立腺癌の発見が遅れる可能性があるという課題を有していた。
(3)前立腺癌が転移すると、転移した癌によって免疫反応性PSAを分泌することが知られている。血清中のPSA濃度の測定では、前立腺が分泌したPSAと転移癌が分泌した免疫反応性PSAとを区別せずに測定してしまうため、癌の進行度や広がりを診断することができないという課題を有していた。
(4)尿や血漿中にはタンパク質分解酵素活性を示す物質(以下、酵素という。)が含まれていることが以前から良く知られている。また、尿や血漿等の体液に存在する酵素と、生体組織に存在する酵素とが異なることも知られている。癌の進行や転移によって生体組織が破壊されると、生体組織に含まれる酵素が体液に漏出することが考えられるため、酵素を種々の癌のマーカーとして利用できる可能性がある。しかし、生体組織には多くの酵素が存在し、その中には未知の酵素も存在するため、個々の酵素の活性や存在量、安定性等を個別に解析することは困難である。そのため、これらの酵素を癌のマーカーとして捉えることはできなかった。
本発明の請求項1に記載の癌診断用試薬は、3個のアミノ酸が結合した基質ペプチドが4種以上組み合わせられた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)尿や血液等の体液には各種の酵素が分泌されており、体液に分泌される酵素の量や種類は、癌の進行によって常に変化している。本発明者らは、個々の酵素の活性や存在量、安定性等を個別に解析することなく、複数の基質を用いて体液の酵素活性全体を一括して評価し、それを癌症例と関連付けることにより、マーカーを特定しなくても、体液中に存在する酵素の種類,個々の存在量や活性強度に関わらず、腺疾患の良性及び悪性(癌)を効率的に識別でき、癌の検出や進行度、広がりを判別できることを見出した。これにより、被験者の尿や血液等の体液を接触させて活性測定を行うという簡単な操作で、癌かどうか、また癌の進行度や広がりを判別することができ、治療効果や経過観察にも役立てることができる。
(2)アミノ酸配列の組合せの選択やアミノ酸配列の数を調整することによって、診断可能な癌を増やし、また診断精度を高めることができる。
(3)基質ペプチドはペプチド合成機等を用いて容易に製造できるため、生産性に優れる。
基質ペプチドは、固相法や液相法の通常のペプチド合成法を用いて合成することができる。また、目的とするアミノ酸配列のC末端側からN末端側へ逐次伸長していく逐次伸長法や、複数の短いペプチド断片を合成しペプチド断片間のカップリングにより伸長させる断片縮合法等を用いることができる。また、ペプチド合成機を用いて9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)アミノ酸やt−ブチルオキシカルボニル(Boc)アミノ酸等を導入して合成することもできる。さらに、プロテアーゼを用いてペプチド結合を生成したり、遺伝子工学を利用したりして合成することもできる。
酵素活性の測定は、反応の時間経過を追跡し反応初速度や変化量を求めるのが好ましい。反応時間の経過につれて反応速度が漸減するからである。
次に、未知の被験者の検体液を、判別関数を設定したときに用いたのと同じ種類の基質ペプチドの各々と反応させて酵素活性を測定し、未知の被験者が、予め設定したグループのいずれに属するのかを判別することで、癌か否か、その進行度や広がりを診断することができる。
また、データをSOM(自己組織化マップ)解析により二次元マップ化すると視覚化し易くなり、マップ上に癌の進行度に応じて複数のグループに分類できるため、未知の被験者が病状の進行度や治療経過を把握し易くなる。
なお、得られた酵素活性データは、SOM以外の種々の非線形分類法や非線形要因解析法により解析し、癌を診断することができる。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)(a) Gln-Gly-Arg, Leu-Arg-Asn, Glu-Lys-Lys及び/又はLys-Arg-Ser, (b) Pro-Leu-Gly, Ala-Pro-Ala, Gln-Gly-Arg, Glu-Gly-Arg, Gly-Arg-Arg, Gly-Lys-Lysのいずれかを含む基質ペプチドの組み合わせを、前立腺癌患者の尿又は血漿より得た検体液と接触させ、検体液の酵素活性を測定して得られた計測データを解析することにより、約90〜100%の正判別率が得られることがわかった。これにより、癌の検体をほぼ正確にグループ分けできることがわかった。従って、未知の被験者から採取した尿又は血漿の酵素活性を、これらの基質ペプチドを用いて測定し、設定された判別式を適用することにより癌かどうかを判別することができる。
基質ペプチドは、酵素特異性を有しない任意のペプチド又はその他の化合物や分子を結合させることもできる。また、一端を不溶性の担体に結合させたものを用いることもできる。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)尿中や血中の酵素によって基質ペプチドが切断されると、その前後において第1蛍光基の性質が変わり、蛍光波長や蛍光強度が変化するので、これを指標として酵素活性を検出することができる。
(2)尿や血液の検体液を接触反応させた後、検体液の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができるので、測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができ、また検出感度と測定精度を高めることができる。
このような第1蛍光基としては、例えば、4−メチルクマリル−7−アミド(MCA)、7−アミノ−4−カルボキシメチルクマリン(ACC)、α−ナフチルアミド、α−ナフチルエステル、フルオレセイン、希土類錯体又はそれらの誘導体等が用いられる。
これにより、担体から遊離した第1蛍光基の蛍光波長や蛍光強度は、遊離前の第1蛍光基のものとは異なるので、特定波長領域における蛍光強度を指標として、酵素による切断量を測定することができる。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)酵素によって基質ペプチドが切断されると、消光基と第2蛍光基との距離が離れることによって第2蛍光基の蛍光スペクトルが変化するので、このスペクトル変化を酵素活性の測定指標にすることができ、これにより、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる。
(2)尿や血液の検体液を接触反応させた後、検体液の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができるので、測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができ、また検出感度と測定精度を高めることができる。
蛍光共鳴エネルギー移動とは、第2蛍光基と消光基が距離的に近い位置に存在するとき、消光基(アクセプター)の励起スペクトルと第2蛍光基(ドナー)の蛍光スペクトルとが重なりをもつ場合、第2蛍光基の励起波長のエネルギーを当てると消光基が励起エネルギーを奪い、本来観察されるはずの第2蛍光基の蛍光が減衰する現象をいう。
なお、基質ペプチドと原子団の結合、原子団と消光基との結合は、酵素によって切断されないアミド結合,エステル結合,エーテル結合,チオエーテル結合,ウレタン結合等が用いられる。消光基が酵素によって切断されて基質ペプチドから遊離することでも第2蛍光基の蛍光スペクトルに変化が生じるが、基質ペプチドのアミノ酸配列に依存した酵素活性は検出できないからである。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)被験者の尿や血液等の体液を接触させて活性測定を行うという簡単な操作で、癌かどうか、また癌の進行度や広がりを判別することができ、治療効果や経過観察にも役立てることができる癌診断用試薬を提供できる。
(2)アミノ酸配列の組合せの選択やアミノ酸配列の数を調整することによって、診断可能な癌の種類を増やし、診断精度を高めることができる応用性に優れた癌診断用試薬を提供できる。
(3)基質ペプチドはペプチド合成機等を用いて容易に製造できるため、生産性に優れた癌診断用試薬を提供できる。
(1)前立腺癌患者の尿又は血漿より得た検体液と接触させ、検体液の酵素活性を測定して得られた計測データを解析することにより、前立腺癌の検体をほぼ正確にグループ分けできるので、未知の被験者から採取した尿又は血漿の酵素活性を、これらの基質ペプチドを用いて測定し、設定された判別式を適用することにより前立腺癌かどうかを判別できる癌診断用試薬を提供できる。
(1)尿や血液の検体液を接触反応させた後、検体液の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができるので、測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができるとともに、検出感度と測定精度に優れた癌診断用試薬を提供できる。
(1)尿や血液の検体液を接触反応させた後、検体液の蛍光強度等を測定するだけで酵素活性を検出することができるので、測定時間を短縮化することができ作業性を高め測定効率を高めることができるとともに、検出感度と測定精度に優れた癌診断用試薬を提供できる。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1における癌診断用試薬の酵素活性検出原理を示す模式図である。
図中、1は実施の形態1における癌診断用試薬、2はハロゲン化炭化水素類,エステル類等の溶媒に不溶性の合成樹脂(ポリスチレン等)製(PEGA等)やガラス製等で略球状や多面体状等に形成された担体、Xは担体2に結合された酵素特異性を有しない化合物、3は化合物Xに結合したAA3−AA2−AA1のアミノ酸配列を有する基質ペプチド、4は基質ペプチド3に結合し基質ペプチド3が後述する酵素5によって切断される前後において、蛍光波長や蛍光強度に変化が生じる蛍光基の1種である4−メチルクマリル−7−アミド(MCA),フルオレセインイソチオシアネート(FITC)等の第1蛍光基、5は第1蛍光基4と基質ペプチド3とのペプチド結合や基質ペプチド3を特定の切断部位で選択的に切断する検体液中の基質特異性を有する酵素、6は酵素5によって基質ペプチド3が切断されたことにより遊離し蛍光波長等が変化した第1蛍光基である。
図1(a)に示す癌診断用試薬1の4−メチルクマリル−7−アミド(MCA),フルオレセインイソチオシアネート(FITC)等の第1蛍光基4は特定波長領域において非蛍光物質であり、また担体2の表面に高密度に存在しているときは濃度消光により蛍光強度が弱い。この癌診断用試薬1に酵素5を含む検体液を接触させ反応させると、第1蛍光基4と基質ペプチド3との間のペプチド結合や基質ペプチド3を特定の切断部位で選択的に切断する。
基質ペプチド3と遊離した第1蛍光基6は7−アミノ−メチルクマリン(AMC)等の蛍光物質となったり、担体2から離れることで濃度消光の効果が減少し、第1蛍光基6の蛍光波長又は該特定波長領域における蛍光強度は、基質ペプチド3と結合した第1蛍光基4とは異なるので、検体液の蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる(図1(b)参照)。
次に、未知の被験者の体液を、判別関数を設定したときと同じ種類の基質ペプチド3が組み合わせられた癌診断用試薬1の各々と反応させて酵素活性を測定し、未知の被験者が、予め設定したグループのいずれに属するのかを判別することで、被験者が癌か否か、進行度を簡便に診断することができる。
(1)被験者の体液を接触させて活性測定を行うという簡単な操作で、癌かどうか、また癌の進行度や広がりを判別することができ、治療効果や経過観察にも役立てることができる。
(2)アミノ酸配列の組合せの選択や、アミノ酸配列の数を調整することによって、診断精度を高めることができる。
(3)基質ペプチドはペプチド合成機等を用いて容易に製造できるため、生産性に優れる。また、担体2に結合しているので、保存性に優れる。
また、癌診断用試薬1が基質ペプチド3を1種類ずつ有し、それを4以上組み合わせた場合について説明したが、基質ペプチド3の2種類以上を組み合わせて結合して伸長させた基質ペプチドを用いる場合もある。この場合も、癌診断用試薬の蛍光測定により酵素活性を評価し、癌症例、非癌症例、転移の有無等を判別する各々の判別関数によりグループ化することで、同様の作用が得られる。
図2は本発明の実施の形態2における癌診断用試薬の酵素活性検出原理を示す模式図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、10は実施の形態2における癌診断用試薬、11は後述する検体液中の酵素14の切断部位を含むAA3−AA2−AA1のアミノ酸配列を有する基質ペプチドである。Y,Zは任意のアミノ酸残基等の原子団を示しており、端部の原子団Yが担体2と結合している。
12は基質ペプチド11に結合した原子団Yと結合するジニトロフェニル(Dnp),5−ジメチルアミノ−1−ナフタレンスルホン酸(Dns)等の消光基、13は基質ペプチド11の他端に導入され消光基12と蛍光共鳴エネルギー移動がみられる(7−メトキシクマリン−4−イル)アセチル(MOAc),トリプトファン(Trp)等の第2蛍光基である。消光基12と第2蛍光基13は互いに蛍光に影響を及ぼす相互作用がみられる距離(100Å以下)で結合している。14は検体液中に存在する酵素、15は基質ペプチド11が酵素14の基質特異性によって特定の切断部位で切断され遊離されたことにより蛍光波長等が変化した第2蛍光基である。
図2(a)に示す癌診断用試薬10の消光基12と第2蛍光基13は、互いに蛍光に影響を及ぼす相互作用がみられる距離で結合しているので、消光基12の吸収スペクトルと第2蛍光基13の蛍光スペクトルとが重なりをもち、第2蛍光基13の励起波長のエネルギーを当てると本来観察されるはずの第2蛍光基13の蛍光の減衰が観察される。
癌診断用試薬10に酵素14を含む検体液を接触させ反応させると、基質特異性を有する酵素14は、基質ペプチド11を切断する。
第2蛍光基13が担体2から遊離すると、第2蛍光基13と消光基12との間で蛍光に影響を及ぼす相互作用がみられなくなるので、検体液に第2蛍光基13の励起波長のエネルギーを当てると、検体液との接触前には観察されなかった第2蛍光基15の蛍光波長が観察されるようになり、酵素14の反応前の蛍光波長とは異なるため、蛍光強度等の変化を指標として酵素活性を検出することができる(図2(b)参照)。
なお、癌の診断方法は、実施の形態1で説明したものと同様なので説明を省略する。
(1)消光基12と第2蛍光基13を選択することにより、第2蛍光基13の蛍光波長を可視部領域に設定することが可能になるので、市販のCCDカメラ等の可視光検出装置を用いて測定することが可能になり汎用性に優れる。
また、癌診断用試薬10が基質ペプチド11を1種類ずつ有し、それを4以上組み合わせた場合について説明したが、基質ペプチド11の2種類以上を組み合わせて結合して伸長させた基質ペプチドを用いる場合もある。この場合も、癌診断用試薬の蛍光測定により酵素活性を評価し、癌症例、非癌症例、転移の有無等を判別する各々の判別関数によりグループ化することで、同様の作用が得られる。
なお、本実施例で説明するアミノ酸、ペプチド、保護基、溶媒等は、当該技術分野で慣用されている略号又はIUPAC-IUBの命名委員会で採用された略号を使用している。例えば、以下の略号を使用している。例えば、FITC:Fluorescein-4-isothiocyanate isomer-I(フルオレセインイソチオシアネート) 、DMF:N,N−ジメチルホルムアミド、DIEA:N,N−ジイソプロピルエチルアミン、DCM:ジクロロメタン、i-PrOH:2-プロパノール、MeOH:メタノール、Lys(Dnp):(2S)-2-amino-6-(2,4-dinitrophenylamino)hexanoic acid、TFA:トリフルオロ酢酸。
(実施例1)
癌診断用試薬を合成し、次に尿より得た検体液の活性測定を行った。以下、その方法について説明する。
<癌診断用試薬の合成>
担体としては球状の市販のNH2-PEGA-resin(渡辺化学工業製、粒径約0.1mm)を用いた。Peptide synthesizer (Model 433A, Applied Biosystems) を用いてNH2-PEGA Resin (0.5 g, 25μmol) に、Lys(Dnp)、AA1、AA2、AA3、βAlaの5つのアミノ酸を順に導入した。なお、AA1、AA2、AA3は表1に示すアミノ酸である。その後、プラスチックベッセルに担体を入れ、DMFを加えて担体を膨潤させた。DMFを吸引除去した後、少量のDMFに溶解させた FITC (30μmol, 12 mg), DMF (2 ml) 及びDIEA (25μmol, 4.4μl) を加え、室温で3時間振とうした。反応液を吸引除去した後、DMF (2 ml, 2回)、 DCM (2 ml, 2回)、i-PrOH (2 ml, 2回)、DMF (2 ml, 2回)、MeOH (2 ml, 2回)、エーテル (2 ml, 2回) の順で担体を洗浄した。その後、フェノール (75 mg)、1,2-エタンジチオール (25μl)、チオアニソール(50μl)、蒸留水(50μl) 及びTFA (2 ml) の混合溶液と3時間反応させた。反応液を吸引除去後、DCM (2 ml, 2回)、 DMF (2 ml, 2回)、20%ピペリジン / DMF (2 ml, 2回)、DMF (2 ml, 2回)、i-PrOH (2 ml, 2回)、DMF (2 ml, 2回)、蒸留水(2 ml, 2回)、エーテル (2 ml,1回) の順で担体を洗浄し減圧乾燥することによって、FITCからなる第2蛍光基が一端のβアラニンに結合し、ジニトロフェニル(Dnp)からなる消光基が他端のリジンに結合したβAla-AA3-AA2-AA1-Lysからなる基質ペプチド(表1のNo8,No9,No12,No18)を有する癌診断用試薬(配列表の配列番号8,9,12,18)を得た。
癌診断用試薬の各々1 mg に、0.01% Tween 20を含有する20 mM Tris-HCl buffer(pH 8.0, NaCl 100mM, CaCl2 50 mM) 190 μl を加え、前立腺癌症例(A群)9名並びに非癌症例(B群)9名の尿より得た検体液を同量ずつ加え、測定時間ごとにサンプルから10 μlとり、bufferを190 μl加えて96ウェルプレートに移し、蛍光値をPerkin Elmer社製Wallac 1420 ARVO sx プレートリーダーにより測定した(測定時間0.1秒)。検体液を加えてから10分後の蛍光値の変化量(検体液を加える前の蛍光値と検体液を加えてから10分後の蛍光値との差) (励起波長485 nm、蛍光波長535 nm)を表2に示す。
以上説明したように、本実施例の癌診断用試薬を尿より得た検体液と接触させ、検体液の酵素活性を測定して得られた計測データを解析した結果、正判別率は約90%以上と極めて高いことが確認された。このことは、本実施例の癌診断用試薬を用いることにより、癌症例と非癌症例の検体を正確にグループ分けできることを示している。
従って、未知の被験者から採取した検体液の酵素活性を、本実施例の癌診断用試薬を用いて測定し、設定された判別式を適用することにより、未知の被験者の癌の有無や進行度を判別可能であることが明らかである。
表5に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号8,9,12,13,18)を得た。
本実施例からも、癌症例と非癌症例の検体を極めて正確にグループ分けできることが明らかである。
表9に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例3の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号8,9,12,13,18,19)を得た。
表13に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号3,6,8,9,12,13,18,19)を得た。
表17に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例5の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号3,6,8,9,13,18,19,20)を得た。
表21に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号6,9,12,13,14,16,18,19)を得た。
表25に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例7の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号1,2,4,7,9,10,11,15)を得た。
表29に示すAA1、AA2、AA3のアミノ酸を順に導入した以外は、実施例1と同様にして、実施例8の前立腺診断用試薬(配列表の配列番号1,2,5,9,10,11,15,17)を得た。
以上の実施例から、未知の被験者から採取した尿や血漿より得た検体液の酵素活性を、本実施例の癌診断用試薬を用いて測定し、設定された判別式を適用することにより、未知の被験者の癌の有無や進行度を判別可能であることが明らかである。
また、本実施例では前立腺癌の診断について説明したが、基質ペプチドの組み合わせを変えた癌診断用試薬を合成し、この癌診断用試薬に体液から得た検体液を接触させることにより、胃がん、肺がん、子宮がん、すい臓がん、乳がん、膀胱がん等についても、同様に診断が可能である。
また、PEGA resin等の担体が一端に、FITC等の第1蛍光基が他端に結合した基質ペプチドを有する癌診断用試薬を用いた場合も、これと接触させた検体液の蛍光変化を測定し酵素活性を検出することで、癌の診断に利用できることを確認した。
2 担体
3 基質ペプチド
4,6 第1蛍光基
5 酵素
10 癌診断用試薬
11 基質ペプチド
12 消光基
13,15 第2蛍光基
14 酵素
Claims (4)
- 3個のアミノ酸が結合した基質ペプチドが4種以上組み合わせられていることを特徴とする癌診断用試薬。
- 前記基質ペプチドの組み合わせが、(a) Gln-Gly-Arg, Leu-Arg-Asn, Glu-Lys-Lys及び/又はLys-Arg-Ser, (b) Pro-Leu-Gly, Ala-Pro-Ala, Gln-Gly-Arg, Glu-Gly-Arg, Gly-Arg-Arg, Gly-Lys-Lysのいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の癌診断用試薬。
- 前記基質ペプチドの一方の末端に結合した第1蛍光基を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の癌診断用試薬。
- 前記基質ペプチドの一方の末端に結合した第2蛍光基と、前記基質ペプチドの他方の末端に結合した消光基と、を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の癌診断用試薬。
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