JP2009276138A - 放射線グリッドおよび、それを備えた放射線撮像装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】FPDのX線検出素子が小さなものになっても、モアレの発生が抑制できるX線グリッドを提供する。
【解決手段】本発明に係るX線グリッド10は、放射線を吸収する短冊状の第1吸収箔1aを配列することによって構成されている第1吸収体1と、放射線を吸収する短冊状の第2吸収箔2aを配列することによって構成されている第2吸収体2とを備え、第1吸収体1と第2吸収体1が積層されて配置されているとともに、第1吸収体1における第1吸収箔1aの配列方向と、第2吸収体2における第2吸収箔2aの配列方向とが平行となっており、配列方向における第1吸収箔1aの位置と、第2吸収箔2aの位置とは互いに異なっている。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係るX線グリッド10は、放射線を吸収する短冊状の第1吸収箔1aを配列することによって構成されている第1吸収体1と、放射線を吸収する短冊状の第2吸収箔2aを配列することによって構成されている第2吸収体2とを備え、第1吸収体1と第2吸収体1が積層されて配置されているとともに、第1吸収体1における第1吸収箔1aの配列方向と、第2吸収体2における第2吸収箔2aの配列方向とが平行となっており、配列方向における第1吸収箔1aの位置と、第2吸収箔2aの位置とは互いに異なっている。
【選択図】図1
Description
本発明は、散乱X線を吸収するX線グリッド、またはスペーサを必要としないX線エアグリッドなどの放射線グリッドおよび、それを備えた放射線撮像装置に関する。
X線撮像装置には、X線源からコーン状のX線ビームを被検体に向けて照射し、被検体を透過した透過X線をフラットパネル・ディテクタ(以下、FPDと略記)で検出する構成となっているものがある。この様なX線撮像装置において、X線が被検体を透過するときに、被検体で、散乱してからFPDに入射する散乱X線が生じ、これが被検体のX線透視画像のコントラストを悪化させる要因となる。散乱X線がFPDに入射することを防ぐために、FPDのX線検出面を覆うようにX線グリッドを付設することで、散乱X線を吸収させるようになっている。
従来のX線グリッドの構成について説明する。図10に示すように、従来のX線グリッド50は、X線を吸収しやすいモリブデン合金などからなる吸収箔51を有し、それがほぼ平行に配列されている。そして、隣接する吸収箔51の間隙には、スペーサ52が設けられていて、吸収箔51を支持している。この様に、従来のX線グリッド50は、吸収箔51とスペーサ52が交互に積層された構成となっている。
ところで、FPD53は、多数の半導体タイプのX線検出素子がマトリクス状に配列されている。この様なFPD53は、配列された各々のX線検出素子により被検体Mを透過したX線を離散的にサンプリングすることによりX線透視画像を構成する。一方、X線グリッド50は、ブラインド状に配列された複数の吸収箔51を有する。コーン状のX線ビームがこのX線グリッド50を透過すると、X線グリッド50の有する吸収箔51の各々について筋状の影が生じる。この影をX線グリッド50全体で見れば、ストライプ状である影の配列パターンとなっており、それがX線グリッド50の下方に配置されたFPD53に写り込む。この影の配列パターンは、FPD53を構成するX線検出素子によって離散的にサンプリングされることになるが、X線検出素子の各々に写る影の本数は、FPD53全体で一定とはならない。X線検出素子の配列ピッチと影の配列ピッチが一致していないためである。こうして、影の多数が映りこんだ細長状の暗部領域と、より少数の影が映りこんだ細長状の明部領域とが交互に並んだ干渉縞がX線透視画像に出現する。このように、FPD53が有するX線検出素子の配列パターンとX線グリッド50による影の配列パターンとが干渉してモアレが生じX線透視画像に写り込む。
この様なモアレはX線透視画像の診断に邪魔である。このモアレを生じさせないようにするには、X線検出素子の配列ピッチと吸収箔51の配列ピッチとを略同一なものとすればよい。具体的に例示すると、FPD53のX線検出素子の大きさが150μmであれば、これと同一の150μmの配列ピッチで吸収箔51が配列されたX線グリッド50を使用すれば、モアレの発生を抑制することができる(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−338254号公報
しかしながら、従来のX線グリッドの構成によれば、X線グリッドを構成する吸収箔の配列ピッチをこれ以上細かくすることが難しいという問題点がある。FPDのX線検出素子の大きさが100μm以下となれば、モアレの発生を抑制することができるX線グリッドの吸収箔の配列ピッチは、100μm以下となるが、このようなX線グリッドを精度良く製造することは、非常に困難である。
近年、FPDのX線検出素子の大きさは、小さくなる傾向にある。特に、マンモグラフィー用のFPDは、関心部位が小さいこともあり、特にX線検出素子が小さなものとなる。そこで、それに合わせて、モアレの発生が抑制できるX線グリッドが要求されることになる。X線グリッドの吸収箔の配列ピッチを1cmあたり100枚以上とすると、吸収箔の配列が乱雑となり、直接X線をも吸収してしまうX線グリッドしか得られない。
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、FPDの放射線検出素子(X線検出素子)が小さなものになっても、モアレの発生が抑制できるX線グリッドなどの放射線グリッドおよび、それを備えた放射線撮像装置を提供することにある。
本発明は、この様な目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射線を検出する放射線検出器に配置され、散乱放射線を除去する放射線グリッドにおいて、放射線を吸収する短冊状の第1吸収箔を配列することによって構成されている第1吸収体と、放射線を吸収する短冊状の第2吸収箔を配列することによって構成されている第2吸収体とを備え、第1吸収体と第2吸収体が積層されて配置されているとともに、第1吸収体における第1吸収箔の配列方向と、第2吸収体における第2吸収箔の配列方向とがほぼ平行となっており、配列方向における第1吸収箔の位置と、第2吸収箔の位置とは互いに異なっていることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射線を検出する放射線検出器に配置され、散乱放射線を除去する放射線グリッドにおいて、放射線を吸収する短冊状の第1吸収箔を配列することによって構成されている第1吸収体と、放射線を吸収する短冊状の第2吸収箔を配列することによって構成されている第2吸収体とを備え、第1吸収体と第2吸収体が積層されて配置されているとともに、第1吸収体における第1吸収箔の配列方向と、第2吸収体における第2吸収箔の配列方向とがほぼ平行となっており、配列方向における第1吸収箔の位置と、第2吸収箔の位置とは互いに異なっていることを特徴とするものである。
[作用・効果]本発明によれば、放射線検出器の放射線検出素子が小さなものになっても、モアレの発生が抑制できる放射線グリッドを提供することができる。すなわち、本発明によれば、第1吸収体と第2吸収体とを積層方向に積層することによって、吸収箔の配列方向におけるピッチをより細かくすることができる。したがって、本発明によれば、放射線検出器における放射線検出素子の配列ピッチよりも大きな配列ピッチで吸収箔が配列された第1吸収体、および第2吸収体を製造するだけで、何ら困難な工程を経由することなく、放射線検出器の放射線検出素子の配列ピッチと同等の配列ピッチで吸収箔が配列された放射線グリッドを提供することができる。
また、本発明によれば、散乱放射線は、第1吸収体のみならず、第2吸収体においても除去されるので、散乱放射線は、第1吸収体のみ設けられた構成と比べて、より少ないものとなる。つまり、本発明によれば、比較的配列ピッチが大きく製造が容易な吸収体を構成するだけで、より高性能な放射線グリッドが構成できる。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線グリッドにおいて、第1吸収体における第1吸収箔の配列ピッチと第2吸収体における第2吸収箔の配列ピッチとは同一であり、互いに隣接する第2吸収箔の間隙における中間の位置に第1吸収箔が配置されていることを特徴とするものである。
[作用・効果]上記構成によれば、より確実に放射線検出器における放射線検出素子の配列パターンと放射線グリッドが有する影の配列パターンが干渉してモアレが生じることを抑止することができる。上記構成によれば、第1吸収体と第2吸収体とを区別しなければ、吸収箔は、配列方向に第1吸収体における配列ピッチの半分の配列ピッチで配列される。したがって、本発明に係る放射線グリッドを第1吸収体における配列ピッチの半分の配列ピッチで配列された放射線検出素子で構成された放射線検出器に対して用いれば、放射線検出素子の1個に一本の吸収箔の影が映りこむことになる。したがって、本発明によれば、放射線検出素子の配列パターンと放射線グリッドの影パターンが干渉してモアレが生じることがなく、診断に好適な放射線透視画像が得られる。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の放射線グリッドにおいて、第1吸収箔、および第2吸収箔を支持するとともに第1吸収箔の延伸方向に伸びた放射線を透過するスペーサが第1吸収体および、第2吸収体のそれぞれに設けられていることを特徴とするものである。
[作用・効果]上記構成によれば、第1吸収体、および第2吸収体における吸収箔の配列ピッチを更に細かなものとすることができる。第1吸収箔、および第2吸収箔は、スペーサに支持(接着固定)されることになるので、吸収箔は、両吸収体において、より整然と配列されることになる。これにより、隣接する吸収箔の間隙を狭くしても、確実にスペーサが吸収箔の姿勢を維持するので、両吸収体においてより吸収箔の配列ピッチを細かなものとすることができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線グリッドを搭載した放射線撮像装置において、コーン状の放射線ビームを照射する放射線源と、放射線ビームを検出する放射線検出器と、放射線検出器の放射線を検出する放射線検出面を覆うように配置された放射線グリッドとを備えていることを特徴とするものである。
[作用・効果]上記構成によれば、モアレが映りこんでいない診断に好適な放射線透視画像を提供できる放射線撮像装置を提供することができる。上記構成の放射線撮像装置に備えられている放射線グリッドと放射線検出器は、放射線透視画像にモアレが生じないように設定されているので、これを備えた放射線撮像装置で放射線透視画像を撮像した場合、それにモアレが映りこむことがなく、診断に好適なものとなっている。
本発明の構成によれば、吸収箔の配列ピッチがより小さい放射線グリッドをより簡単に提供することができる。第1吸収体、および第2吸収体における吸収箔の配列ピッチ自体は広いものであっても、本発明に係る放射線グリッドは、その両吸収体を積層して製造されるので、本発明に係る放射線グリッドにおける吸収箔の配列ピッチは、第1吸収体と第2吸収体とを区別しなければ、より細かいものとなる。したがって、放射線検出器における放射線検出素子の配列ピッチが細かいものであっても、難なくそれに合わせて放射線グリッドにおける吸収箔の配列ピッチを細かくすることができるので、放射線検出素子の配列パターンと放射線グリッドにおける吸収箔の影の配列パターンとが干渉してモアレが生じることがない。
以下、本発明に係る放射線グリッド、およびそれを搭載した放射線撮像装置の実施例について、図面を参照しながら説明する。なお、本発明における放射線の一例としてX線を挙げ、各実施例における放射線は、X線であるものとする。それに伴って、放射線グリッド、および放射線撮像装置のそれぞれを便宜上、X線グリッド、およびX線撮像装置と呼ぶものとする。
図1は、実施例1に係るX線グリッドの構成を説明する断面図である。図1に示すように、実施例1に係るX線グリッド10は、z方向に積層された第1吸収体1と、第2吸収体2を備えている。第1吸収体1は、x方向に延伸した短冊状の第1吸収箔1aを備えている。この第1吸収箔1aは、x方向に直交するy方向に配列しており、X線グリッド10全体で見れば、ブラインド状に配列される。そして、その配列ピッチは、例えば、200μmとなっている。また、第2吸収体2は、x方向に延伸した短冊状の第2吸収箔2aを備えている。この第2吸収箔2aは、x方向に直交するy方向に配列しており、X線グリッド10全体で見れば、ブラインド状に配列される。そして、その配列ピッチは、第1吸収体1と略同一であり、例えば、200μmとなっている。なお、この第1吸収箔1a,および第2吸収箔2aは、X線を吸収する例えばモリブデン合金からなっている。また、y方向は、本発明の配列方向に相当する。そして、図1を見れば明らかなように、両吸収箔1a,2aのうちのいずれかの1枚に注目すると、x方向は、両吸収箔1a,2aにとっての長手方向であり、y方向は、両吸収箔1a,2aにとっての厚さ方向であり、z方向は、両吸収箔1a,2aにとっての幅方向となっている。なお、第1吸収箔1a,および第2吸収箔2aは、第1吸収体1,および第2吸収体2の各々に備えられた複数の吸収箔の総称である。
第1吸収体1における第1吸収箔1aの間隙には、第1吸収箔1aを固着支持するとともにX線を透過するスペーサ1bが設けられている。同様に、第2吸収体2における第2吸収箔2aの間隙には、第2吸収箔2aを固着支持するとともにX線を透過するスペーサ2bが設けられている。これらのスペーサ1b,2bは、X線を透過しやすいアルミニウムなどからなり、x方向に伸びた角柱状となっている。すなわち、実施例1に係る両吸収体1,2は、y方向に吸収箔とスペーサが交互に積層されており、互いに当接する吸収箔とスペーサの各々が固着支持されて、一体化されることによって構成される。なお、図1によれば、第1吸収体1,および第2吸収体2は、説明のため離間したものとなっているが、実際の実施例1に係るX線グリッド10においては、両吸収体1,2はz方向から互いに当接された構成となっている。なお、x方向は、本発明の第1吸収箔の延伸方向に相当する。
なお、両吸収箔1a,2aの配列方向は、略同一であり、第1吸収箔1aの配列方向と、第2吸収箔2aの配列方向は、ほぼ平行となっている。このほぼ平行の意味は、X線グリッド10をz方向(吸収体1,2の積層方向)から見たとき、両吸収箔1a,2aが交差しない程度を言う。
次に、第1吸収箔1a,および第2吸収箔2aのy方向における位置について説明する。図1に示すように、第1吸収箔1aの各々は、y方向に沿って所定の間隔をおいて配列されているが、第1吸収箔1aのうちの1枚である第1吸収箔1a1と、それと隣接するとともに、y方向について後方に位置する第1吸収箔1a2に注目すると、y方向における第1吸収箔1a1と、第1吸収箔1a2の中間の位置には、第2吸収箔2aのうちの1枚である第2吸収箔2a1が配置されている。これは、第1吸収箔1aに限らず、X線グリッド10全域に亘って互いに隣接する第1吸収箔1aの中間の位置に第2吸収箔2aのうちの1枚が配置されている。
また、両吸収体1,2における両吸収箔1a,2aの配列ピッチは同一なものとなっており、その配列ピッチは、例えば200μm(1cmあたりに50枚)となっている。したがって、全ての第1吸収箔1aのy方向における位置は、全ての第2吸収箔2a位置とは異なっている。これを両吸収体1,2全体で見れば、第1吸収箔1aの配列と第2吸収箔2aの配列とは、両吸収体1,2における配列ピッチの半ピッチ分だけy方向に互いにずれたものとなっている。
続いて、両吸収箔1a,2aの傾斜について説明する。図1に示すように、第1吸収体1における第1吸収箔1aは、第1吸収体1におけるy方向についての端部に向かうに従って次第に傾斜している。また、第2吸収体2における第2吸収箔2aも、第2吸収体2におけるy方向についての端部に向かうに従って次第に傾斜している。このように、実施例1に係るX線グリッド10に備えられた両吸収箔1a,2aは、コーン状のX線ビームが照射されたときに、放射状に広がるX線を通過させるように傾斜が変更された構成となっている。
このようにX線グリッド10を透過したX線は、X線グリッド10のz方向に対する下方に設けられたFPD3にて検出される。このFPD3におけるX線グリッド10に向き合う面には、x,およびy方向に二次元的に配列されX線を検出するX線検出素子eが備えられている。このX線検出素子eのx,およびy方向における配列ピッチは、例えば100μm(1cmあたりに100個)となっている。このFPD3に配列されたX線検出素子eの出力するX線強度データをもとに、X線透視画像が形成される。なお、FPDは、本発明における放射線検出器に相当する。
次に、実施例1に係るX線グリッドの望ましい設定について説明する。X線グリッド自体は、従来からX線撮像装置において広く用いられている。そこで、従来のX線グリッドの構成に換算して実施例1に係るX線グリッドの設定を求めることにより、従来の構成に代えて直ちに実施できる実施例1に係るX線グリッドの構成を例示する。まず、両吸収体1,2における吸収箔の配列ピッチであるが、これは、X線撮像装置に用いられているFPD3のX線検出素子eの配列ピッチにしたがって設定されることが望ましい。図2は、実施例1に係る吸収箔の配列と、FPDにおけるX線検出素子の配列ピッチの関係を示した断面図である。図2に示すように、FPD3を構成するX線検出素子eがy方向に配列されているものとし、それらを区別する必要があるときは、たとえばX線検出素子e1などとして示す。なお、X線検出素子eのy方向における配列ピッチは、100μmであるものとする。実施例1に係るX線グリッド10は、この様なFPD3のX線を検出する検出面を覆うように配置される。このときのX線グリッド10の第1吸収体1における第1吸収箔1aの配列ピッチは、200μmであることが望ましい。つまり、両吸収体1,2の各々において、吸収箔の配列ピッチは、FPD3におけるX線検出素子の配列ピッチの整数倍であることが望ましい。より望ましくは、2倍であることが望ましい。
コーン状のX線ビームがX線グリッド10に向けてz方向から照射されたとき、両吸収箔1a,2aの影がFPD3に投影されることになるが、両吸収箔1a,2aは、y方向に沿って交互に配列しており、第1吸収体における第1吸収箔1aのy方向における配列ピッチを200μmであるとすると、両吸収箔1a,2aを区別しないならば、X線グリッド10には、第1吸収箔1a,および第2吸収箔2aが100μmの間隙を隔ててy方向に配列されていることになる。X線検出素子eの配列ピッチは、100μmであるわけだから、X線検出素子eの各々にX線グリッド10の両吸収箔1a,2aの影が1対1で投影されることになる。たとえば、X線検出素子e1には、第1吸収箔1aの影が投影され、X線検出素子e1に隣接するX線検出素子e2には、第2吸収箔2aの影が投影される。同様に、奇数番のX線検出素子eには第1吸収箔1aの影が、偶数番のX線検出素子eには第2吸収箔2aの影がそれぞれ投影されることになる。なお、この両吸収箔1a,2aの影とX線検出素子eとの関係は、FPD3の全域に亘って同様である。なお、FPD3のy方向についての端部においては、X線はz方向から傾斜してFPD3に入射するが、両吸収箔1a,2aは、その傾斜角度に合わせて同様に傾斜しているので、結局、X線検出素子eの各々にX線グリッド10の両吸収箔1a,2aの影が1対1で投影される。
この様な構成となっていれば、FPD3におけるX線検出素子eの配列ピッチとX線グリッド10における両吸収箔1a,2aの影の配列ピッチが一致する。したがって、それらが干渉してモアレが生じることがない。また、単一のX線検出素子eの一部分に両吸収箔1a,2aの影が投影されるが、単一のX線検出素子eは、その一部分に投影されたX線の影を検出することはできず、代わりに単一のX線強度データを出力するのみである。これにより、X線検出素子eの一部分に投影された両吸収箔1a,2aの影は、X線検出素子eの中でボカされ、最終的に形成されるX線透視画像に写り込むことがない。
次に、実施例1に係るX線グリッドの望ましいz方向の幅の設定について説明する。従来の散乱X線を除去するX線グリッドの構成として、吸収箔の配列ピッチが200μm,吸収箔の厚さが30μm,吸収箔の幅が1.7mmとなっているものが一般的である。ちなみに、この従来のX線グリッドは、本発明とは異なり、単一の吸収体しか有さないものである。
従来のX線グリッドの散乱X線の除去能力を比較する上での目安として、見込み角Φを用いることができる。この見込み角Φについて説明する。ある特定の入射方向からX線グリッドに入射したX線は、吸収箔に邪魔されることなく、X線グリッドを通過することができる。しかし、その特定の入射方向から外れた方向からX線グリッドに入射したX線は、X線グリッドを通過することができない。見込み角Φは、X線グリッドが通過を許容するX線の入射方向範囲を表す角度であり、これが小さいほど直接X線を選択的に通過させることになるので、X線グリッドの散乱X線の除去能力が高いということになる。この見込み角Φは、吸収箔の配列ピッチが狭く、吸収箔のX線の進行方向(z方向)に沿った幅wが大きいほど、小さな値をとる。
この見込み角Φの導出に先立って、吸収箔の有する頂点の定義を行う。図3は、実施例1に係るX線グリッドの見込み角を説明する断面図である。図3(a)に示すように、吸収箔Sの幅方向zについて、X線グリッドのX線が入射する、吸収箔Sの一端をIN側とし、X線が出射する吸収箔Sの他端をOUT側とする。そして、吸収箔Sの有する4頂点のうち、y方向についてより前方に位置するとともに、z方向についてよりIN側に位置する頂点を吸収箔Sの第1頂点S(1)と定義する。同様に、吸収箔Sの有する4頂点のうち、y方向についてより前方に位置するとともに、z方向についてよりOUT側に位置する頂点を吸収箔Sの第2頂点S(2)と定義する。続いて、吸収箔Sの有する4頂点のうち、y方向についてより後方に位置するとともに、z方向についてよりIN側に位置する頂点を吸収箔Sの第3頂点S(3)と定義する。最後に、吸収箔Sの有する4頂点のうち、y方向についてより後方に位置するとともに、z方向についてよりOUT側に位置する頂点を吸収箔Sの第4頂点S(4)と定義する。
見込み角Φについて説明する。図3(b)は、従来のX線グリッドにおける見込み角を説明する模式図である。X線グリッドのうち、互いに隣接しているy方向についてより前方に配置された吸収箔αと、より後方に配置された吸収箔βをについて注目すると、X線が入射する領域INは、吸収箔αの第3頂点α(3)と、吸収箔βの第1頂点β(1)とを結んだ線分となる。一方、X線が出射する領域OUTは、吸収箔αの第4頂点α(4)と、吸収箔βの第2頂点β(2)とを結んだ線分となる。なお、吸収箔吸収箔αと吸収箔βとの離間距離を2dとし、両吸収箔α、βのz方向に沿った幅をwとする。
図3(b)における点rは、X線が出射する領域OUTに属する一点である。この点rにおける見込み角Φを求めてみる。点rに入射するX線は、領域INを必ず通過する。したがって、点rにおいて、X線グリッドが通過を許容するX線の入射方向範囲を表す角度である入射角Φは、図3(b)に示すように、吸収箔αの第3頂点α(3)と、点rとを結んだ線分と、吸収箔βの第1頂点β(1)と、点rとを結んだ線分とがなす角となる。
この見込み角Φは、離間距離2dよりも吸収箔の幅w(箔高さともいう)が十分大きいとき、2d/wに近似できる。また、2dがwよりも十分に小さい場合、点rが領域OUTのいずれに位置していても、見込み角Φを2d/wと近似できる。結局、従来構成におけるX線グリッドの見込み角Φは、2d/wとみなすことができる。
次に、実施例1に係るX線グリッドの見込み角Ωを求め、先ほど従来構成の見込み角Φと比較する。図4は、実施例1に係るX線グリッドの見込み角を説明する断面図である。実施例1に係るX線グリッド10のX線が出射するOUT側には、第2吸収体2が設けられている。そこに属する互いに隣接する一対の第2吸収箔のうち、y方向についてより前方に配置された第2吸収箔αと、y方向についてより後方に配置された第2吸収箔βとに挟まれた点rに入射するX線について考える。この点rは、X線が出射する領域OUTに属する一点である。また、第2吸収箔αに対して、y方向の前方に配置されている第1吸収箔1aを第1吸収箔γとし、第2吸収箔βに対して、y方向の後方に配置されている第1吸収箔を第1吸収箔εとし、第2吸収箔αと第2吸収箔βとの間隙の中央に配置されている第1吸収箔を第1吸収箔δとする。また、上述の吸収箔αないし吸収箔εは、両吸収体1,2に係らず、すべて同一の寸法であるものとし、そのz方向に沿った幅をWとし、厚さを2Aとし、互いに隣接する第1吸収箔γ、δ、εの離間距離の各々は、同一であり、これを2Dとする。なお、互いに隣接する第2吸収箔α、βの離間距離も同様に2Dである。
点rのX線入射側には、この第1吸収箔δが位置しているために、X線が入射しない死角Θが発生する。したがって、点rにおける見込み角ΩはΘに分断された2つの角度の合計となる。具体的には、見込み角Ωは、第2吸収箔αの第3頂点α(3)と点rを結んだ線分と、第1吸収箔δの第1頂点δ(1)と点rを結んだ線分とがなす角Ω1と、第1吸収箔δの第4頂点δ(4)と点rを結んだ線分と、第1吸収箔εの第1頂点ε(1)と点rを結んだ線分とがなす角Ω2の合計となる。このΩ1,およびΩ2は、幾何学的に求めることができ、第2吸収箔αと第2吸収箔βにおける間隙の中央を基準としてrのy方向における位置を示すgを用いて式(1)のように表現することができる。
したがって、実施例1に係る見込み角Ωは、吸収箔の間隙における位置gに関する関数であり、式(2)のように表される。
上式(2)では、位置gによって見込み角Ωが変化するが、これを平均して、実施例1に係るX線グリッドの位置gによらない平均見込み角Ωaveを求める。このΩaveは、式(3)のように表される。
この平均見込み角Ωaveと従来のX線グリッドにおける見込み角Φとを比較して、実施例1に係るX線グリッドの好適な設定を求めることができる。その一例を表1に示す。なお、平均見込み角Ωaveと見込み角Φは、上述したように、吸収箔の離間距離2d,2D,吸収箔の厚さ2A,吸収箔の幅w,Wが設定されれば一義的に求められる。
従来の構成<1>は、従来のX線グリッドにおける一般的な構成である。これによれば、吸収箔の配列ピッチは、200μmであり、見込み角Φは、0.1ラジアンとなっている。この従来の構成におけるX線グリッドをz方向に積層して実施例1に係るX線グリッドを形成したとすると、構成<2>に示すようになる。X線グリッドのz方向の幅は、従来の構成<1>と比べると、単純に2倍となっているが、見込み角Φと平均見込み角Ωaveとを比べると、構成<2>のほうが従来の構成<1>と比べてより小さなものとなっている。したがって、構成<2>のほうが散乱X線を除去する能力が高く、高性能となっている。
実施例1に係るX線グリッド10の散乱X線を除去する能力を従来におけるX線グリッドのそれと同一なものとする設定を行うと、X線グリッド10のz方向の幅を抑制することができる。構成<3>によれば、見込み角Φと平均見込み角Ωaveとが0.1ラジアンの同一となっている。その代わり、構成<3>と構成<2>を比べると、構成<3>のほうがよりz方向の幅が抑制された構成となっている。このような設定の変更を行えば、X線グリッドのz方向の幅がより抑えられているので、実施例1に係るX線グリッドをより容易にX線撮像装置に搭載することができる。
また、実施例1に係る構成<2>、および構成<3>によれば、第1吸収体1と第2吸収体2とを区別しなければ、両吸収箔1a,2aは、y方向に100μmの配列ピッチで配列されている。したがって、これを100μmの配列ピッチで配列されたX線検出素子eで構成されたFPD3に配置すれば、X線検出素子eの1個に一本の第1吸収箔1a,または第2吸収箔2aの影いずれかが映りこむことになる。この様に、X線検出素子eの各々に写る影の本数は、FPD3全体で一定となっているので、X線検出素子eの配列パターンとX線グリッド10の第1吸収箔1a,および第2吸収箔2aの影の配列パターンとが干渉してモアレが生じることがない。
実施例1に係るX線グリッド10は、比較的容易に製造できる。X線グリッド10の有する両吸収体1,2の両方を合わせたときの吸収箔の配列ピッチは100μmであるが、実際は、配列ピッチが200μmの吸収体を製造するだけで済む。したがって、何ら困難な工程を経由することなく、FPD3のX線検出素子eの配列ピッチと同等の配列ピッチで両吸収箔1a,2aが配列されたX線グリッド10を提供することができる。
続いて、本発明の第2の実施例について図面を参照しながら説明する。実施例2に係るX線グリッドは、実施例1で説明したスペーサ1b,およびスペーサ2bを有しないX線エアグリッドである。一般に、X線エアグリッドにおける隣接する吸収箔の間隙は、スペーサを備えたX線グリッドよりも広いものとなる。これは、吸収箔の間隙が狭いX線エアグリッドを製造することがより困難であるからである。
図5は、実施例2に係るX線エアグリッドの構成について説明する断面図である。図5に示すように、実施例2に係るX線エアグリッド20は、z方向に積層された第1吸収体21と、第2吸収体22を備えている。第1吸収体21は、x方向に延伸した短冊状の第1吸収箔21aを備えている。この第1吸収箔21aは、x方向に直交するy方向に配列しており、X線エアグリッド20全体で見れば、ブラインド状に配列される。そして、その配列ピッチは、例えば、500μmとなっている。また、第2吸収体22は、x方向に延伸した短冊状の第2吸収箔22aを備えている。この第2吸収箔22aは、x方向に直交するy方向に配列しており、X線エアグリッド20全体で見れば、ブラインド状に配列される。そして、その配列ピッチは、第1吸収体21と略同一であり、例えば、500μmとなっている。なお、この第1吸収箔21a,および第2吸収箔22aは、X線を吸収するモリブデン合金からなっている。また、y方向は、本発明の配列方向に相当する。そして、両吸収箔21a,22aのうちのいずれかの1枚に注目すると、x方向は、両吸収箔21a,22aにとっての長手方向であり、y方向は、両吸収箔21a,22aにとっての厚さ方向であり、z方向は、両吸収箔21a,22aにとっての幅方向となっている。なお、第1吸収箔21a,および第2吸収箔22aは、第1吸収体21,および第2吸収体22の各々に備えられた複数の吸収箔の総称である。
なお、両吸収箔1a,2aの配列方向は、略同一であり、第1吸収箔1aの配列方向と、第2吸収箔2aの配列方向は、ほぼ平行となっている。このほぼ平行の意味は、X線グリッド10をz方向(吸収体1,2の積層方向)から見たとき、両吸収箔1a,2aが交差しない程度を言う。
次に、第1吸収体21の構成について説明する。第1吸収体21は、第1吸収箔21aを支持する筐体25aを備えている。この筐体25aは、X線エアグリッド20全体で見れば、角筒状であり、第1吸収体21を囲むように配置される。この筐体25aにおけるy方向(吸収箔の延伸方向と直交する方向)に沿った2側端は、z方向に伸びた複数の溝を有して櫛型のプレートとなっており、この一対の櫛型のプレートで第1吸収箔の両端を支える。また、第2吸収体22は筐体25bを備え、その構成は第1吸収体21と同様となっている。
また、X線エアグリッド20は、第1吸収体21の上面,および第2吸収体22のした面をz方向から挟むように一対の板状のシートカバー23,24が備えられている。このシートカバー23,24はX線を透過しやすいグラスファイバーからなっている。
なお、第1吸収箔21a,および第2吸収箔22aのy方向における位置と、両吸収箔21a,22aの傾斜については、実施例1の構成と同様である。すなわち、両吸収箔21a,22aを区別しないならば、X線エアグリッド20には、第1吸収箔21a,および第2吸収箔22aが250μmの間隙を隔ててy方向に配列されている。
FPD3についても、実施例1と同様であるが、そのX線検出素子の配列ピッチが異なっている。具体的には、X線検出素子eのx,およびy方向における配列ピッチは、例えば125μm(1cmあたりに80個)となっている。
図6は、実施例2に係るX線エアグリッドの構成を説明する平面図である。なお、この図6においては、第1吸収体21の構成を例にとって説明している。図6に示すように、実施例2に係るX線エアグリッド20のx方向における両端部には接着剤が浸透した接着領域26aが設けられている。接着領域26aが筐体25aの有する櫛型プレートの部分である。要するに、櫛型プレートと、それに挿入された第1吸収箔21aの各々とは、接着剤で固着されている。これにより、第1吸収箔21aの各々が一体化して第1吸収体21を構成する。同様に、第2吸収箔22aの各々が一体化して第2吸収体22を構成する。
次に、実施例2に係るX線エアグリッド20の望ましいz方向の幅の設定について説明する。従来の散乱X線を除去するX線エアグリッドの構成として、吸収箔の配列ピッチが500μm,吸収箔の厚さが30μm,吸収箔の幅が4.7mmとなっているものが一般的である。ちなみに、この従来のX線グリッドは、本発明とは異なり、単一の吸収体しか有さないものである。
実施例1で求めた平均見込み角Ωaveは、実施例2においても適応できる。実施例2に係るX線エアグリッド20の平均見込み角Ωaveと、従来のX線エアグリッドにおける見込み角Φとを比較して、実施例2に係るX線エアグリッドの好適な設定を求めることができる。その一例を表2に示す。なお、平均見込み角Ωaveと見込み角Φは、上述したように、吸収箔の離間距離2d,2D,吸収箔の厚さ2A,吸収箔の幅w,Wが設定されれば一義的に求められる。表2には、従来の構成と、その見込み角Φと同等の見込み角角Ωaveを有していて従来の構成と散乱X線を除去する性能が同一となっている実施例2に係るX線エアグリッド20の構成について例示する。
実施例2に係るX線エアグリッド20によれば、FPD3におけるX線検出素子の配列ピッチが仮に250μmであれば、X線グリッド10の両吸収箔1a,2aの影の配列ピッチと一致する。したがって、それらが干渉してモアレが生じることがない。また、単一のX線検出素子の一部に両吸収箔21a,22aの影が投影されるが、単一のX線検出素子は、その一部におけるX線の入射強度の分布を検出することはできず、代わりに単一のX線強度データを出力するのみである。これにより、X線検出素子の一部に投影された両吸収箔21a,22aの影は、X線検出素子の中でボカされ、最終的に形成されるX線透視画像に写り込むことがない。
実施例2の場合、FPD3におけるX線検出素子の配列ピッチは125μmであり、X線検出素子の配列ピッチと両吸収箔21a,22aの配列ピッチとが同一なものとはなっていない。しかしながら、両吸収箔21a,22aの配列ピッチをX線検出素子の配列ピッチの整数倍であるので、両吸収箔21a,22aの影がy方向から隣接するX線検出素子eに跨らないようにすることができる。
構成<5>の場合、そもそも両吸収体21,22における隣接する吸収箔の離間距離2Dが大きいので、FPD3のX線検出素子とそれに写り込む両吸収箔21a,22aの影とを1対1で対応していない。具体的には、第1吸収体21と第2吸収体22とを区別しなければ、両吸収箔の配列ピッチは、250μmであり、X線検出素子の配列ピッチ(125μm)の2倍であることから、両吸収箔21a,22aの影α、βは、一個分ずつ離間したX線検出素子にサンプリングされ、X線透視画像にX線の強度ムラが表れる。しかしながら、これは後述の画像処理によって容易に除去できるので、上述で説明したようなより幅広の周期でX線透視画像に写り込むモアレと比べれば、さほど視認性を低下させるものではない。
また、従来の構成<4>と、実施例2の構成<5>を比較すると、それらを構成する吸収箔の幅は構成<5>のほうがより小さなものとなっている。これにより、より診断に好適なX線透視画像を得ることができる。
図7は、実施例2に係る吸収箔の影を説明する図である。上述したように、X線エアグリッド20のy方向における端部において、X線が斜め方向から入射するので、それに合わせて両吸収箔21a,22aも傾斜した構成となっている。したがって、図7(a)に示すように、両吸収箔21a,22aの影α、βは、X線エアグリッド20の端部においても、両吸収箔21a,22aの厚さと同等の幅細なものとなっている。そして、第1吸収体21と第2吸収体22とを区別しなければ、両吸収箔の配列ピッチは、X線検出素子の配列ピッチの2倍であることから、両吸収箔21a,22aの影α、βは、一個分ずつ離間したX線検出素子eにサンプリングされる。
ところが、被検体の大きさや関心部位によって、X線の照射する方向が変化する場合がある。そうなると、X線の進行方向と、両吸収箔21a,22aの傾斜が一致しなくなるので、両吸収箔21a,22aの影α1,β2は、より幅広なものとなる。この各々がX線検出素子eにサンプリングされる。これが、X線透視画像にどのように影響するかを示したのが、図7(c)である。X線透視画像27には、図7(c)によると、x方向に延伸する明部領域Bと、両吸収箔21a,22aの影α1,β2が映りこんだx方向に延伸する暗部領域Dとが1画素幅で交互に配列している。そして、その配列方向はy方向に沿っている。したがって、両吸収箔21a,22aの影α1,β2が幅広なものとなるほど、暗部領域Dは暗いものとなる。また、各画素位置におけるX線強度Iを比較すると図7(d)のようになる。図7(d)の示すように、X線強度Iは、y方向の位置によって微小に変化している。このX線透視画像27に写り込むX線の強度ムラは、X線透視画像27を形成した後の画像処理にて除去される。なお、この撮像条件に伴うX線の強度ムラは、X線グリッドにおいて、吸収箔が傾斜した領域において発生する。したがって、X線の強度ムラは、X線グリッドのy方向における両端部に相当するX線透視画像に写り込むことになる。なお、このX線の強度ムラは、吸収箔の傾斜の度合いが大きいほど、より激しいものとなる。
図8は、実施例2に係る吸収箔の影を説明する図である。従来の構成<4>のX線エアグリッドにおける吸収箔の配列ピッチは、500μmであり、FPD3における検出素子eの配列ピッチが125μmであることからすると、吸収箔Hの影は、X線検出素子eの3個分だけ離間したX線検出素子eの各々にサンプリングされる。当初、図8(a)に示すように、X線エアグリッドの端部において、吸収箔Hの影αは、吸収箔Hの厚さと同等の幅細なものとなっているものとする。これが図8(b)に示すように、撮影条件の変更によって、X線の照射する方向が変化する場合を考えると、X線の進行方向と吸収箔Hの傾斜が一致しなくなるので、吸収箔Hの影α1は、より幅広なものとなる。この各々がX線検出素子eにサンプリングされる。これが、X線透視画像にどのように影響するかを示したのが、図8(c)である。X線透視画像28には、図8(c)によると、吸収箔Hの影α1が映りこんだy方向に1画素分の幅を持った暗部領域Dと、y方向に3画素分の幅を持った明部領域Bとがy方向に交互に配列する。また、各画素位置におけるX線強度Iを比較すると図8(d)のようになる。図8(d)の示すように、X線強度Iは、y方向の位置によってより急激に変化する。
一般に、吸収箔のz方向における幅Wが小さいほど、撮影条件の変更による影の幅広化が抑制される。具体的に、図7(b)と図8(b)を見比べることで、見込み角0.1ラジアンの散乱X線吸収能を有する従来のX線エアグリッドと、同一の性能を有する実施例2に係るX線エアグリッドとを比較すると、実施例2に係るX線エアグリッドの方が吸収箔の影のy方向における幅が細いものとなっている。そして、図7(c)と、図8(c)とを参照すれば分かるように、実施例2に係るX線透視画像27における暗部領域Dの階調値のほうが従来構成に係るX線透視画像28における暗部領域Dの階調値よりも高いものとなっている。つまり、X線透視画像27における暗部領域Dの階調値のほうがより明部領域Bの階調値に近いものとなっている。
このようなX線透視画像に写り込む暗部領域Dと明部領域Bとが配列したX線の強度ムラは、画像処理によって除くことができる。具体的には、暗部領域Dの階調値を明部領域Bと同等となるように、暗部領域Dに適当な係数を乗算する画像処理がなされる。従来の構成<4>は、X線エアグリッドであるので、実施例1で挙げた従来の構成<1>と比べて、吸収箔のピッチが荒いものとなり、散乱X線の除去能力が低下する。構成<4>では、これを補うために、吸収箔の幅Wは、構成<1>と比べて、より広く設定される。この幅Wが広いほど、影α1より幅広なものとなり、例えば、構成<4>に係る暗部領域Dの階調値は、明部領域Bの階調値の20〜30%程度の値にまで低下してしまう。
一方、実施例2の構成<5>では、図7(c)と図8(c)を見比べればわかるように、暗部領域Dの階調値の低下は、構成<4>のそれよりも抑制される。つまり、実施例2の構成によれば、画像処理で乗算される係数を従来の構成よりも小さく抑えることができる。
暗部領域Dの階調値には、各画素の間でバラツイたノイズ成分を含んでいる。上述の画像処理において、暗部領域Dに係数を乗算すると、このノイズ成分が増幅される。すると、ノイズ成分に起因する画素値のバラツキも増幅されてX線透視画像の視認性が低下する。したがって、診断に好適なX線透視画像を取得するには、ノイズ成分の増幅は極力抑えたほうがよく、言い換えれば、画像処理において乗算される係数は小さいほうがよい。実施例2の構成によれば、画像処理で乗算される係数を小さなものとすることができるので、暗部領域Dに含まれるノイズ成分の拡大は、極力抑制される構成となっている。
以上のように、実施例2に係るX線エアグリッド20によれば、より診断に好適なX線透視画像が提供できる。すなわち、実施例1で説明したように、実施例2に係るX線エアグリッドの製造は安易なものである。そして、実施例2の場合、X線の強度ムラがX線透視画像に表れるが、実施例2の構成では、従来の構成<4>に比べてノイズ成分の増幅を極力抑制してX線の強度ムラを除去できるものとなっている。それは、X線の強度ムラを構成する明部領域Bと暗部領域Dとの階調値がより近いものとなっているからである。したがって、実施例2の構成によれば、撮影条件の変更によって吸収箔の影が幅広なものとなったとしても、その影響は画像処理によって容易に除かれるものとなるので、結果としてより診断に好適なX線透視画像が提供できる。
次に、実施例1,および実施例2で説明したX線グリッド10,およびX線エアグリッド20を備えたX線撮像装置について図面を参照しながら説明する。
図9は、実施例3に係るX線撮像装置の構成を説明する機能ブロック図である。図9に示すように、実施例3に係るX線撮像装置30は、被検体Mを載置する天板31と、天板31の下部に設けられたイメージセンサを備えるFPD32と、天板31の上部に設けられたコーン状のX線ビームをFPD32に向けて照射するX線管33と、FPD32のX線検出面を覆うように設けられ散乱X線を除去するX線グリッド34と、X線管33の管電圧を制御するX線管制御部35と、X線管33を移動させるX線管移動機構36と、これを制御するX線管移動制御部37と、FPD32を移動させるFPD移動機構38と、これを制御するFPD移動制御部39と、FPD32から出力されるX線透視画像に所定の画像処理を行う画像処理部40と、X線透視画像を表示する表示部41とを備えている。なお、FPD32,およびX線管33は、本発明の放射線検出器および、放射線源のそれぞれに相当する。また、X線グリッド34は、実施例1に係るX線グリッド10でもよいし、実施例2に係るX線エアグリッド20でもよい。
また、X線撮像装置30は、各制御部35,37,および39を統括的に制御する主制御部42をも備えている。この主制御部42は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより各制御部35,37,および39,ならびに画像処理部40を実現している。
実施例3に係るX線撮像装置30でX線透視画像を撮像するには、まず、天板31に被検体Mが仰臥される。そして、FPD32と、X線管33とを被検体Mの関心部位を挟む位置に移動させる。ついで、X線管33をz方向に移動させて撮像視野の大きさを決定する。そして、X線管33は、コーン状のX線ビームを照射するように制御される。なお、このコーン状のX線ビームは、パルス状となっている。
被検体Mを透過したX線は、X線グリッド34を通過して、FPD32に入射する。それが、画像処理部40に移送され、X線透視画像の両端に表れるX線の強度ムラを除去する。最後に被検体Mの関心部位が写っているX線透視画像が表示部41に表示されて撮像は終了となる。
以上のように、実施例1,および実施例2に記載のX線グリッドを備えた実施例3に係るX線撮像装置30によれば、モアレが映りこんでいない診断に好適なX線透視画像を提供できる。実施例3のX線撮像装置30に備えられているX線グリッド34とFPD32は、X線透視画像にモアレが生じないように設定されているので、これを備えたX線撮像装置30でX線透視画像を撮像した場合、それにモアレが映りこむことがなく、診断に好適なものとなっている。
本発明は、上記実施例に限られることなく、下記のように変形実施することができる。
(1)上述した各実施例のX線グリッドは、第1吸収体、および第2吸収体を備えていたが、本発明はこれに限らない。より多くの吸収体を有したものとしてもよい。本変形例の場合、y方向における吸収箔の配列ピッチは、各吸収体を区別しなければ、FPDの有するX線検出素子の配列ピッチの整数倍が望ましい。具体的には、1倍であることが望ましい。
(2)上述した各実施例は、医用の装置であったが、本発明は、工業用や、原子力用の装置に適用することもできる。
(3)上述した各実施例のいうX線は、本発明における放射線の一例である。したがって、本発明は、X線以外の放射線にも適応できる。
(4)上述した各実施例のX線グリッドは、吸収箔がブラインド状に配列されたものであったが、吸収箔の配列を格子状として、クロスグリッドとすることもできる。
1 第1吸収体
1a 第1吸収箔
1b スペーサ
2 第2吸収体
2a 第2吸収箔
2b スペーサ
3 FPD(放射線検出器)
10 X線グリッド(放射線グリッド)
20 X線エアグリッド
21 第1吸収体
21a 第1吸収箔
22 第2吸収体
22a 第2吸収箔
30 X線撮像装置
32 FPD(放射線検出器)
33 X線管(放射線源)
34 X線グリッド(放射線グリッド)
1a 第1吸収箔
1b スペーサ
2 第2吸収体
2a 第2吸収箔
2b スペーサ
3 FPD(放射線検出器)
10 X線グリッド(放射線グリッド)
20 X線エアグリッド
21 第1吸収体
21a 第1吸収箔
22 第2吸収体
22a 第2吸収箔
30 X線撮像装置
32 FPD(放射線検出器)
33 X線管(放射線源)
34 X線グリッド(放射線グリッド)
Claims (4)
- 放射線を検出する放射線検出器に配置され、散乱放射線を除去する放射線グリッドにおいて、
放射線を吸収する短冊状の第1吸収箔を配列することによって構成されている第1吸収体と、放射線を吸収する短冊状の第2吸収箔を配列することによって構成されている第2吸収体とを備え、
前記第1吸収体と前記第2吸収体が積層されて配置されているとともに、
前記第1吸収体における前記第1吸収箔の配列方向と、前記第2吸収体における前記第2吸収箔の配列方向とがほぼ平行となっており、
前記配列方向における前記第1吸収箔の位置と、前記第2吸収箔の位置とは互いに異なっていることを特徴とする放射線グリッド。 - 請求項1に記載の放射線グリッドにおいて、前記第1吸収体における前記第1吸収箔の配列ピッチと前記第2吸収体における前記第2吸収箔の配列ピッチとは同一であり、
互いに隣接する前記第2吸収箔の間隙における中間の位置に第1吸収箔が配置されていることを特徴とする放射線グリッド。 - 請求項1または請求項2に記載の放射線グリッドにおいて、前記第1吸収箔、および前記第2吸収箔を支持するとともに前記第1吸収箔の延伸方向に伸びた放射線を透過するスペーサが前記第1吸収体および、前記第2吸収体のそれぞれに設けられていることを特徴とする放射線グリッド。
- 請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の放射線グリッドを搭載した放射線撮像装置において、
コーン状の放射線ビームを照射する放射線源と、
前記放射線ビームを検出する前記放射線検出器と、
前記放射線検出器の放射線を検出する放射線検出面を覆うように配置された前記放射線グリッドとを備えていることを特徴とする放射線撮像装置。
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JP2008126121A JP2009276138A (ja) | 2008-05-13 | 2008-05-13 | 放射線グリッドおよび、それを備えた放射線撮像装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2016007424A (ja) * | 2014-06-25 | 2016-01-18 | 株式会社東芝 | X線診断装置及びx線吸収体 |
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2008
- 2008-05-13 JP JP2008126121A patent/JP2009276138A/ja active Pending
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