JP2009268779A - 肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法 - Google Patents

肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法 Download PDF

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Abstract

【課題】三角筋の活動を抑制しながら、棘上筋を局部的に強化させることができる肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法を提供すること。
【解決手段】肩甲上腕関節におけるインナーマッスルの強化を図るためのトレーニング方法であって、背骨を伸ばした姿勢で上腕21を自然下垂状態にし、その状態を保持しながら、上腕21に連続する肘22が微小円を描く態様で上肢24を運動させるものであり、肘22を略直角に屈曲させた状態で、一端がボール15に取り付けられた紐14の他端を端部に取り付けて成る把持部11を把持し、手関節20を固定された状態でボール15が把持部11の中心軸a回りを回転するよう上肢24を運動させることが好ましい。
【選択図】 図3

Description

本発明は、肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法に関し、より詳細には、肩甲上腕関節におけるインナーマッスルを構成する例えば棘上筋を局部的に強化するためのトレーニング方法に関する。
従来、肩甲上腕関節におけるインナーマッスル(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)の強化を図るトレーニング方法として、セラバンドと称されるような長尺状のラバー材、あるいはゴムチューブを利用して行うものがよく知られている。このような方法は、立位にて肘伸展位で拇指を上方に向けてラバー材の一端を把持し、肩甲骨面での外転運動を行わせるものである。ここで、運動範囲は、自然下垂位から外転45°位までとしている。より具体的には、強化を図る側と反対側の足でラバー材の他端を踏み、強化を図る側である足の膝の後ろにラバー材を通して斜め上方に上肢を外転挙上させている。
また、上記方法以外に、空気を封入させた樹脂製の補助具の内部に掌を進入させ、該補助具が空気抵抗を受けるように肩関節回旋運動を行うトレーニング方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−198940号公報
上述した補助具、あるいはゴムチューブやセラバンドを用いたトレーニング方法では、肩甲上腕関節におけるインナーマッスル、特に棘上筋の活動を促す結果、該棘上筋の活動量も大きくなり、インナーマッスルの強化を図る方法として有用であることが知られている。
しかしながら、上述した種々のトレーニング方法では、後述する実施例で明らかなようにインナーマッスルの棘上筋だけでなく、肩甲上腕関節におけるアウターマッスルである三角筋の活動量も大きくなってしまい、棘上筋のみを局部的に強化を図ることは困難であった。
本発明は、上記実情に鑑みて、三角筋の活動を抑制しながら、棘上筋を局部的に強化させることができる肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法は、肩甲上腕関節におけるインナーマッスルの強化を図るためのトレーニング方法であって、背骨を伸ばした姿勢で上腕を自然下垂状態にし、その状態を保持しながら、前記上腕に連続する肘が微小円を描く態様で上肢を運動させることを特徴とする。
また、本発明の請求項2に係る肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法は、上述した請求項1において、前記肘を略直角に屈曲させた状態で、一端が球状体に取り付けられた索状体の他端を端部に取り付けて成るロッド状の把持部を把持し、手関節を固定された状態で前記球状体が前記把持部の中心軸回りを回転するよう上肢を運動させることを特徴とする。
本発明の肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法によれば、背骨を伸ばした姿勢で上腕を自然下垂状態にし、その状態を保持しながら、上腕に連続する肘が微小円を描く態様で上肢を運動させるので、肩甲上腕関節におけるインナーマッスルを構成する棘上筋を持続的に収縮させて活動させる一方、該肩甲上腕関節のアウターマッスルを構成する三角筋の収縮頻度を抑制することができ、これにより、三角筋の活動を抑制しながら、棘上筋を局部的に強化させることができるという効果を奏する。
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法の好適な実施の形態について詳細に説明する。
まず、肩甲上腕関節におけるインナーマッスル、特に棘上筋の働きについて述べる。棘上筋は、肩甲上腕関節におけるアウターマッスルである三角筋とともにフォースカップルとして知られている。この棘上筋は、図1に示すように、上腕骨1の骨頭2を肩甲骨3の臼蓋4に引きつける働きを主に行うものである(図中の矢印A)。このように棘上筋が上腕骨1の骨頭2を肩甲骨3の臼蓋4に引きつけを行うことにより支点を形成することができ、アウターマッスルである三角筋が骨頭2を支点として上肢をスムースに拳上させることができる(図中の矢印B)。
次に、本実施の形態である肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法に用いる器具(以下、強化器具とも称する)について述べる。図2は、本実施の形態であるトレーニング方法で用いる器具を示すものである。ここに例示する強化器具10は、把持部11と回転部12とを備えて構成してある。
把持部11は、ロッド状の形態を成しており、中央領域の外径が最も大きく、両端部に向かうに連れて外径が漸次小さくなっている。この把持部11には、固定バンド13が設けてある。固定バンド13は、詳細は後述するが、利用者(被強化者)が把持部11を把持した場合に該利用者の手関節に巻回し、該手関節を固定するためのものである。
回転部12は、把持部11の一端側に設けてあり、より詳細には、把持部11の中心軸a回りに回転可能となる態様で把持部11の一端側に設けてある。この回転部12には、索状体である紐14が取り付けてあり、該紐14の一端にはボール(球状体)15が取り付けてある。このボール15は、特に決められたものではないが、本実施の形態では、スポンジ製のものでテニスボールに略等しい大きさのものを用いている。
本実施の形態におけるトレーニング方法は、次のようにして行うものである。図3は、トレーニングの一例を示している。尚、以下においては、被強化者が右側の肩甲上腕関節のインナーマッスルを強化する例について示すが、左側の肩甲上腕関節のインナーマッスルを強化する場合は左側上肢で行えばよい。
被強化者は、右手で強化器具10の把持部11を把持し、該把持部11に設けられていた固定バンド13を手関節20に巻回し、該手関節20を固定する。
そして、背骨を伸ばした姿勢で右側上腕21を自然下垂の状態にし、右肘22を略直角に屈曲させる。すなわち上腕21と前腕23との成す角が略直角となるよう右側上肢24を屈曲させることにより、被強化者は図3に示した状態になる。ここで、強化器具10を構成する把持部11の延在方向(中心軸aの方向)と、被強化者の上腕21の延在方向(上腕21の軸cの方向)とが平行になることが好ましい。また、被強化者は、背骨を伸ばしていれば、立位でも構わないし、座位でも構わない。
図3に示すような状態において、被強化者は、強化器具10のボール15が把持部11の中心軸a回りに回転するように運動する。つまり、被強化者は、ボール15が把持部11の中心軸a回りを回転するように、該把持部11をその中心軸aとは僅かにずれた軸b回りに回転させて、ボール15が把持部11の中心軸a回りを安定的に回転するように運動する。
被強化者が、このような姿勢で把持部11の中心軸a回りにボール15を安定的に回転させる結果、右側上肢24は、図4に示すように、上腕21の軸cの方向により上腕21の上端部21aを頂部とする円錐を形成する態様で運動、すなわち右肘22が微小円22aを描く態様で運動する。
かかる運動を行うには、肩甲上腕関節の棘上筋が持続的に収縮して上腕骨1の骨頭2を臼蓋4へ引きつける必要があり、これにより該棘上筋を活動させることができる。一方、かかる運動では、上腕骨1を引き上げる動作が殆どないため、三角筋の収縮頻度を抑制することができる。
以上により、本発明の実施の形態における肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法によれば、後述する実施例からも明らかなように、背骨を伸ばした姿勢で上腕21を自然下垂状態にし、その状態を保持しながら、肘が微小円22aを描く態様で上肢24を運動させるので、棘上筋を持続的に収縮させて活動させる一方、三角筋の収縮頻度を抑制することができ、これにより、三角筋の活動を抑制しながら、棘上筋を局部的に強化させることができる。
特に、本実施の形態のトレーニング方法のように、上記強化器具10を用いることにより、被強化者は、ボール15が把持部11の中心軸a回りを回転するように上肢24を運動させればよく、ボール15の回転を目視しながら行うことができ、簡単に行うことができる。換言すれば、この強化器具10は、該トレーニング方法を簡潔に行うための補助具としての役割を有している。
以下において、本発明の実施例を比較例と比較しつつ説明する。
<実施例>
上述した強化器具10を用いて、図3及び図4に示すように上肢24を運動させた。つまり、被強化者は、右手で強化器具10の把持部11を把持し、該把持部11に設けられていた固定バンド13を手関節20に巻回し、該手関節20を固定した。そして、座位にて背骨を伸ばした姿勢で右側上腕21を自然下垂の状態にしながら、右肘22を略直角に屈曲させ、強化器具10の把持部11の延在方向(中心軸aの方向)と、被強化者の上腕21の軸cの方向とが平行になるようにした。このような肩下垂、肘屈曲、手関節中間位の状態を保持し、ボール15を240回転/分程度の速さで把持部11の中心軸a回りに回転させて、上肢24を運動させた。
<比較例>
立位にて右肘伸展位で拇指を上方に向けてセラバンドの一端を把持し、右足の膝の後ろにセラバンドを通した状態で左足でセラバンドの他端を踏み、自然下垂位から外転45°位までの範囲で右側上肢を外転挙上させた。
<測定方法>
肩に愁訴を持たない健常男性5人に上記実施例及び比較例の運動を行わせた。5人全員右利きであり、平均年齢は36.2歳であった。測定筋は、棘上筋、三角筋中部線維であり、棘上筋の測定は、医師により刺入された針電極を用いて行い、三角筋中部線維の測定は、表面電極を用いて行った。筋電計として日本光電製「ポリグラフTEG−1000」を使用して、三角筋、棘上筋の最大等尺性収縮時の積分筋電値(以下、iEMGともいう)を測定した。尚、測定は波形の安定した1秒間とした。
<評価方法(1)>
評価方法(1)として%iEMGによる評価を行った。ここで、%iEMGは、下記式(1)のようにトレーニング時のiEMGを最大収縮時のiEMGで除して求めたものである。これにより、%iEMGは、トレーニング時の筋の活動量を示す。
式(1) %iEMG=トレーニング時のiEMG/最大収縮時のiEMG
実施例及び比較例のそれぞれのトレーニング方法における棘上筋及び三角筋の%iEMGを図5に示した。ここで、図中の(イ)は比較例における棘上筋の%iEMG、図中の(ロ)は比較例における三角筋の%iEMG、図中の(ハ)は実施例における棘上筋の%iEMG、図中の(ニ)は実施例における三角筋の%iEMGを示している。
<評価方法(2)>
上記評価方法(1)で得た各%iEMGを用いて、それぞれ三角筋の%iEMGを1としたときの棘上筋の比率を求め、結果を図6及び図7に示した。図6は、実施例での三角筋と棘上筋との活動比を示し、図7は、比較例での三角筋と棘上筋との活動比を示している。
上記評価方法(1)及び(2)により、セラバンドを用いた比較例の方が棘上筋の活動を高く促していたが、三角筋の活動も高く促していた。一方、実施例では、棘上筋の活動は比較例に比して低いものであったが、三角筋に対する棘上筋の活動比は実施例が4.6なのに対して比較例が1.6であり、実施例の方が高かった。よって、実施例の方が、棘上筋を選択的に活動させることが可能であることが理解される。従って、実施例の方が、比較例に比して、三角筋の活動を抑制しながら、棘上筋を局部的に強化させることができることが理解される。
以上のように、本発明に係る肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法は、特に棘上筋を局部的に強化するのに有用である。
肩甲上腕関節におけるインナーマッスルを構成する棘上筋の働きを説明するための説明図である。 本実施の形態であるトレーニング方法で用いる器具を示す模式図である。 本実施の形態であるトレーニング方法を説明するための説明図である。 本実施の形態であるトレーニング方法を説明するための説明図である。 実施例及び比較例のそれぞれのトレーニング方法における棘上筋及び三角筋の%iEMGを示す図表である。 実施例での三角筋と棘上筋との活動比を示す図表である。 比較例での三角筋と棘上筋との活動比を示す図表である。
符号の説明
1 上腕骨
2 骨頭
3 肩甲骨
4 臼蓋
10 強化器具
11 把持部
12 回転部
13 固定バンド
14 紐
15 ボール
20 手関節
21 上腕
22 右肘
23 前腕
24 上肢(右側上肢)

Claims (2)

  1. 肩甲上腕関節におけるインナーマッスルの強化を図るためのトレーニング方法であって、
    背骨を伸ばした姿勢で上腕を自然下垂状態にし、その状態を保持しながら、前記上腕に連続する肘が微小円を描く態様で上肢を運動させることを特徴とする肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法。
  2. 前記肘を略直角に屈曲させた状態で、一端が球状体に取り付けられた索状体の他端を端部に取り付けて成るロッド状の把持部を把持し、手関節を固定された状態で前記球状体が前記把持部の中心軸回りを回転するよう上肢を運動させることを特徴とする請求項1に記載の肩甲上腕関節におけるインナーマッスルのトレーニング方法。
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