JP2009262671A - 船舶電気推進システムの制御方式 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電池優先モードと電動機優先の2つの運転モードを選択できるようにし、「電池優先モード」において合計電力が発電機Gの出力上限PGSに達する領域では、充電電力増加分を充当するための電力を、推進電動機回転速度Niを下げて得るようにし、また、「電動機優先モード」において合計電力が発電機出力上限PGSに達する領域では、推進電動機回転速度の上昇による推進電動機電力増加分を充当するための電力を、充電電力を下げて得るようシステム制御装置29により制御し、発電機出力を効果的に利用可能として操作員の労力軽減を図る。
【選択図】図1
Description
そして、発電機が電池に充電電力を供給するとともに推進電動機および補機へも電力を供給しながら船舶を運行させる電池充電走行(以後、充電走行とも言う)を行なう場合、電池充電電力、推進電動機電力および補機電力の合計電力が発電機出力容量(発電機出力制限値)、すなわち発電機出力上限を超えないよう操作することが必要となる。
この場合、充電電力を増加させるときは合計電力が発電機出力上限を超えないよう推進電動機の回転速度を低下さげるように操作するとともに、推進電動機の回転速度を増加させるときは合計電力が発電機出力上限を超えないよう電池の充電電力を低下させるように操作しなければならない。
鉛蓄電池の充電は、充電初期は大電流で充電し、充電中期から充電終期では電解液の電気分解に伴う水素ガス、酸素ガスの発生を抑制するため、および充電電力損失の低減などの配慮から小電流で充電することから、充電には長時間が必要となる。
上記請求項1の発明によれば、電池充電走行において、充電電力,推進電動機電力,補機電力の合計電力が発電機出力制限値を超えることになるような、蓄電池の充電電流変更操作、または、推進電動機の回転速度変更操作を行なった場合でも、合計電力が発電機出力制限値を超えないように制御されるので、制御暴走が発生しないようにすることができるとともに、電池充電走行中における操作員の労力を軽減することもできる。
また、電池充電走行において、充電時間の短縮化を図るためにその時の運転状態において供給可能な最大限の充電電力(充電電流)で蓄電池を充電するようにした場合でも、常に充電電力,推進電動機電力,補機電力の合計電力が発電機出力制限値を超えないように制御されるため、制御暴走が発生することのない安定した運転を確実に行なうことができるので、ハイブリッド電源における蓄電池としてリチウムイオン電池を採用して大電流での充電により充電時間の短縮化を図る場合においても、必要となる発電機容量を小さく抑えることができ、発電機の容量アップ,大型化,コストアップ等が生じないようにすることができる。
船舶がどのような運行状態にある場合でも船舶電気推進システムの運転のために補機の機能を維持しておくことが必要であるが、上記請求項3の発明によれば、電池充電走行において補機が必要とする電力の供給を確実に維持することができるので、船舶電気推進システムを安定して運転することができるようになり、船舶電気推進システムの信頼性を向上させることができる。
鉛蓄電池では、電解液の電気分解に伴う水素ガス、酸素ガスの発生の防止などの理由により、充電初期から充電終期までの全充電工程のうち充電終期では充電電流を小さくする必要があるなど充電電流の大きさには制約があるが、リチウムイオン電池では、充電初期から充電終期までの全充電工程にわたって大電流で充電することが可能であり、全充電工程のうちのどの工程(充電状態)においても、大電流から小電流まで充電電流の大きさを任意に選定することが可能である。このため、上記請求項4の発明によれば、ハイブリッド電源を構成する蓄電池としてリチウムイオン電池を用いることにより、その時の蓄電池の充電工程が充電初期から充電終期までのいずれであっても、発電機出力制限値内で、推進電動機および補機の運転状態との関連で供給可能な最大限の充電電力(充電電流)で蓄電池を充電することができることから、鉛蓄電池などの従来型電池を用いた構成に比べて、電池充電走行における蓄電池の充電時間をより短縮することができる。
また、上記請求項4の発明において、電動機優先モードを選択している場合には、推進電動機への電力の供給が優先されるが、船舶の運行状態により推進電動機が低回転速度状態になり、推進電動機電力が低レベル状態になる度に、その時の蓄電池の充電工程が充電初期から充電終期までのいずれであっても、発電機出力制限値内で推進電動機電力および補機電力を差し引いた余剰電力として供給可能な最大限の充電電力(充電電流)で蓄電池を充電することができ、これにより、充電時間の短縮化を図ることができる。
また、電池充電走行において、充電時間の短縮化を図るためにその時の運転状態において供給可能な最大限の充電電力(充電電流)で蓄電池を充電するようにした場合でも、常に充電電力,推進電動機電力,補機電力の合計電力が発電機出力制限値を超えないように制御されるため、制御暴走が発生することのない安定した運転を確実に行なうことができるので、ハイブリッド電源における蓄電池としてリチウムイオン電池を採用して大電流での充電により充電時間の短縮化を図る場合においても、必要となる発電機容量を小さく抑えることができ、発電機の容量アップ,大型化,コストアップ等が生じないようにすることができる。
図1において、原動機7(DE)で駆動される交流発電機8(G)(以下、発電機とも言う)および整流器10(REC)からなる発電装置と、この発電装置によって充電される電池1(B)とによりハイブリッド電源装置が構成されている。発電装置における整流器10(REC)の直流出力側と電池1(B)とが直流給電母線101に接続されており、交流発電機8(G)の交流出力電力は整流器10(REC)により直流に変換され、発電装置の出力電力として直流給電母線101に供給される。なお、図1における9は、交流発電機8(G)の励磁コイルである。
船舶電気推進システムにおける電力供給に関する運転モードのうち、「充電走行」の運転モードでは、発電装置の出力電力は、直流給電母線101に介して、電池1(B)に充電電力として給電されるとともに、推進電動機13(M)および補機類4にも給電される。推進電動機13(M)は電力変換装置15(INV)を介して直流給電母線101に接続されている。電力変換装置15(INV)は、インバータで構成されており、発電装置からの直流電力を交流に変換して、交流電動機で構成された推進電動機13(M)に交流電力を供給する。
また、図2は、船舶電気推進システムの制御ブロック図であり、この図2に示されるように、システム制御装置29には、さらに、電圧制御回路52、電流制御回路55、速度制御回路62、発電機制御回路65、および演算部29A〜29E,57,58,60,63が設けられている。
電池優先モードでは、図1および図2に示す制御切替スイッチ23(COSC)を電池優先側に切替える。
いま、電池充電電流を増加させると、充電電力PBi=VBi×(+)IBi((+)を充電、(−)を放電とする)が増加し、負荷電力の合計電力PΣ(=PBi+PAXi+PMi)は増加するので、発電機出力PGiは増加する。
(+)IB=(VG−VB)÷RΣ=[VG−(EB+(+)IB×RB)]÷RΣ
ここで、 VG:発電機電圧
VB:電池端子電圧
(+)IB:充電電流
EB:電池内部起電圧
RB:電池内部抵抗
PB:電池充電電力=VB×IB
RΣ:充電回路抵抗の総和
一方、図1に示す回路において発電機電圧VGを低下させると、推進電動機13側の受電端電圧も低下するが、回転速度制御される推進電動機13の推進電力PMは、図4に示すように回転速度Nの3乗(PM∝N3)に比例して変化するものであるため、推進電動機13の回転速度が一定値に制御されている状態では、推進電力PMは変化しない。
したがって、上記受電端電圧が低下しても推進電動機電力PMは変化しないから、推進電動機入力電流IMは増加することになる。
ここで、「電池優先モード」の基本動作について説明する。
図1,図2に示す電池充電電力PBi、推進電動機電力PMi、補機電力PAXi、および発電機出力PGiの各電力は、各回路に設けた各電圧検出器、各電流検出器で検出した電圧と電流から、演算部57(PBi=VBi×IBi)、演算部63(PMi=VMi×IMi)、演算部58(PAXi=VAXi×IAXi)、および演算部60(PGi=VGi×IGi)により算出される。
この発電機出力上限値PGSは図1,図2に示す発電機出力上限設定器22(VRPG)により、図3(a)に示すPGS1,PGS2,PGS3,PGS4…のように設定し、電池電圧VBiの変動により変化する発電機電圧VGiから、図3(b)に示す発電機電流IGL1,IGL2,IGL3,IGL4…を図2の演算部29Aの(4)式「IGL=PGS÷VGi」で求め、この値を発電機上限電流値IGLとして発電機制御回路65に与え、発電機出力電流IGiを制限して発電機出力制限動作を行なう。
時刻t0から推進電動機13の回転速度を徐々に上昇させると、推進電動機電力PMiは徐々に増加し、合計電力PΣ=PBi+PMi+PAXiは徐々に増加する。
また、時刻t0〜t1間は発電機出力上限PGS>発電機出力PGi=合計電力PΣの期間であるから、発電機は電池、推進電動機および補機へ所定の電力を供給している。
なお、上記のように推進電動機13の回転速度を徐々に上昇させる場合の具体的な操作としては、例えば次のような操作方法とすることができる。
(b)回転速度設定器28(VRNM)の設定値NS自体は時刻t0時点でステップ指令操作として最終目標の回転速度値に設定しておき、それに対して、システム制御装置29内のソフトスタート機能により、回転速度指令値NSCを徐々に上昇させるように制御し、この回転速度指令値NSCを設定値とした回転速度フィードバック制御により、回転速度Niが回転速度指令値NSCに追従して徐々に上昇する。ここで、上記のソフトスタート機能は、システム制御装置29に設けられた、図示されていない回転速度指令調整手段によるものであり、この回転速度指令調整手段は、回転速度設定器28(VRNM)で設定された回転速度設定値NSに基づいて、加速制御および減速制御の各制御モードに対応してそれぞれ設定された傾斜で時間的に変化する回転速度指令信号NSCを形成するものである。
NSC=NSCm×(PMi÷PMm)1/3=NSCm×(PMm÷PMm)=NSCmである。従って、時刻t1以降も、時刻t1での推進電動機回転速度指令値NSCmと同じ回転速度指令値NSC(=NSCm)を設定値としてシステム制御装置29から出力し、図2に示すm1点で回転速度検出信号Niと突合せて回転速度フィードバック制御を行なうことにより、発電機出力制限制御を実現する。
NSC=NSCm×(PMi÷PMm)1/3の計算をして求め、この回転速度値を指令値NSCとして推進電動機回転速度を下げて運転すれば、推進電動機電力が低減することによる余剰分の電力で増加分の充電電力ΔPBiを充当することができる。
PBi−PBm=ΔPBi=0、PMi=PMm、NSC=NSCm×(PMi÷PMm)1/3=NSCmであることより、回転速度指令値NSC(=推進電動機の回転速度Ni)は変化しないので、推進電動機電力PMiは、点13の電力値のまま一定に維持されることになる。
時刻t1以後で、電池を定電流充電しながら走行する場合、充電が進行すると電池電圧が次第に上昇し、電池充電電力PBi=電池電圧VBi×充電電流IBiが図5Aの点線で示すように増加し、充電電力PBiがΔPB=ΔVB×IBi(ここで、電池電圧VBiの上昇分をΔVBとする)だけ増加することになる。
また、この運転状態の過程で補機電力PAXが増加したときは、「電池優先」の条件(充電電力PBiは変化させない条件)の下で、図2の演算部29Aの(1)式におけるPGS=PGi=PΣ=PBi+PAXi+PMiの関係が変化しないよう、図2の演算部29Bの(12)式により、補機電力PAXiの増加分ΔPAXiに対応して、ΔPAXiだけ減少させた推進電動機電力値PMX=PMi−ΔPAXiを求めるとともに、図2の演算部29Dの(7)式においてPMi=PMXとして、NSC=NSCm×(PMX÷PMm)1/3から推進電動機電力値PMXに対応する推進電動機回転速度指令値NSCを算出し、この指令値NSCにて推進電動機を運転し、推進電動機電力の減少分を補機電力の増加分ΔPAXiに充当する。
船舶電気推進システムは、時刻t0以前は、点02の充電電力PBi、点03の推進電動機電力PMi、点04の補機電力PAX、点01の合計電力PΣで運転されている。
時刻t0から充電電圧設定器19(VRVB)、または充電電流設定器20(VRIB)の設定操作により、充電電力PBiは徐々に増加して時刻t1には点12の電力値に到達する。
すなわち、既に出力上限に達している発電機は、時刻t2で、電池充電電力PBiと補機電力PAXiとを供給するのみで、推進電動機には電力を供給することができない状態になる。つまり、このとき、図2の演算部29Aの(1)式においてPMi=0であって、PGi=PBi+PAXiの状態になっている。このように、充電電力が点22の上限に到達したこと、および推進電動機電力PMi=0になったことを条件として、充電電圧指令値VBSC、または充電電流指令値IBSCを増加できないよう制限するとともに、充電電力が上限に到達したことを表示灯25(PLBL)で表示する。
充電電力PBiがさらに減少して時刻t4の点42を通過すると、合計電力PΣが発電機出力上限値PGSより小さくなるので、記憶されたPBm,PMm,NSCmをリセットして通常運転に復帰する。
電動機優先モードは、図1および図2に示す制御切替スイッチ23(COSC)を電動機優先側に切替えた場合における動作モードである。
推進電動機回転速度を上昇させると、推進電動機電力が増加して合計電力PΣが発電機出力制限値PGSに達する。さらに推進電動機電力が増加したときにこの増加分を充当するための充電電力減少動作について図1,図2,図6Aおよび図6Bを用いて説明する。
時刻t0から回転速度設定器28(VRNM)を操作して回転速度設定値NSを上昇させると、推進電動機は運転を開始して回転速度が上昇する。
時刻t0〜t1の期間は発電機出力上限PGS>発電機出力PGi=合計電力PΣであるから、システム制御装置29は回転速度設定値NSと同値の指令値NSCを出力し、m1点で実回転速度検出信号Niとの突合せによる回転速度フィードバック制御を行なう。
さらに、回転速度設定値NSを上昇させると、推進電動機回転速度は上昇して推進電動機電力PMiは点13に達し、点13の推進電動機電力PMiと点12の電池充電電力PBiと点14の補機電力PAXiとの合計電力PΣ(点11)が発電機出力上限PGSと一致する。
時刻t1以前は電池を一定電力で充電する動作であるから、図2の演算部29Cの(8)式よりPMi−PMm=ΔPMiを算出し、(9)式よりPBi=PBm−ΔPMiを算出する。
点13よりさらに回転速度設定値NSを上昇させると、回転速度が上昇して推進電動機電力PMiが増加し、図2の演算部29Cの(8)式から増加分ΔPMiが求められ、(9)式より推進電動機電力の増加分ΔPMiに充当するための電力分だけ減少させた充電電力値PBi=PBm−ΔPMiが算出される。
このときの電池充電電流(+)IB(+IBを充電電流、−IBを放電電流とする)は、先にも説明したように次式で示される。
(+)IB=(VG−VB)÷RΣ=[VG−(EB+(+)IB×RB)]÷RΣ
ここで、VG:発電機電圧
VB:電池端子電圧
(+)IB:充電電流
EB:電池内部起電圧
RB:電池内部抵抗
RΣ:充電回路抵抗の総和
したがって、発電機電圧VG(≒電池電圧VB)を変化させて充電電流を調整すれば、充電電力PBを調整できることになる。
時刻t1の点13よりさらに回転速度を上昇させて、推進電動機電力PMiがPMmよりΔPMi増加したときは、推進電動機電力の増加分ΔPMiに充当させるための電力分だけ減少させた充電電力値PBi=PBm−ΔPMiとするために、図2の演算部29Eの(10)式「VBSC=PBi÷IBi」で求めた電圧指令値VBSCをb1点に与え、電圧検出値VBiとの突合せによる電圧フィードバック制御を行なう。
すなわち、推進電動機電力の増加分ΔPMiに充当すべき電力分は、図2の演算部29Eの(10)式より電圧指令値VBSCを求めて突合せ点b1に与え、充電電力PBi=電圧VBi×充電電流IBiを制御して得るようにする。
システム制御装置29では、時刻t2において、発電機出力PGi(=合計電力PΣ)が上限値PGSに到達して制限されているとともに充電電力PBiが零である状態、すなわち「PGi=PGS」かつ「PBi=0」の状態になったことを検出し、時刻t2以降における回転速度指令値NSCを、時刻t2での回転速度指令値NSC(t2)を上限として制限する。これにより、時刻t2以降において、回転速度設定器28(VRNM)の設定操作によって回転速度設定値NSを時刻t2での回転速度設定値NS(t2)よりも高いレベルに上昇させた場合でも、回転速度フィードバック制御系(m1点)に与えられる回転速度指令値NSCは時刻t2での回転速度指令値NSC(t2)のレベルに制限されるので、推進電動機の実際の回転速度Niも、時刻t2での回転速度値Ni(t2)(≒NSC(t2))のレベルに制限される。
そこで、ΔPAXiを得るために、「電動機優先」を条件として図2の演算部29Aの(1)式におけるPGS=PGi=PΣ=PAXi+PMiの関係においてPΣが変化しないように、図2の演算部29Bの(15)式より、補機電力PAXiの増加分ΔPAXiに対応して、ΔPAXiだけ減少させた推進電動機電力値PMX=PMi−ΔPAXiを算出し、図2の演算部29Dの(7)式においてPMi=PMXとして、
NSC=NSCm×(PMX÷PMm)1/3で算出した回転速度指令値NSCをシステム制御装置29が出力して、推進電動機の回転速度を低下させて、これによる推進電動機電力の減少分を補機電力の増加分ΔPAXiに充当させるようにする。
基本動作は、前述の「定電圧充電」の動作と同じであるので、相違する動作について以下に説明する。
図6Aの時刻t1の点12の充電電力PBiをPBm、点13の推進電動機電力PMiをPMmとして記憶、さらに時刻t1における回転速度指令値NSCをNSCmとして記憶する動作は、前述と同じである。
点13より、さらに回転速度を上昇させて推進電動機電力が増加すると、図2の演算部29Cの(8)式より増加分ΔPMi=PMi−PMmが求められ、図2の演算部29Cの(9)式より推進電動機電力の増加分ΔPMiに充当するための電力分だけ減少させた充電電力値PBi=PBm−ΔPMiが求められ、図2の演算部29Eの(11)式より充電電力を上記充電電力値PBi(=PBm−ΔPMi)とするための電流指令値IBSC(=PBi÷VBi)が求められ、この電流指令値IBSCをb2点の突合せ点に与え、実充電電流IBiとの電流フィードバック制御を行なう。
時刻t2において、発電機は推進電動機と補機のみに電力を供給する運転状態であるから、図2の演算部29Aの(1)式においてPGS=PGi=PΣ=PAXi+PMi(PBi=0)となり、推進電動機電力PMiの増加分をもはや充電電力の減少分で捻出することはできない。
この運転状態で補機電力PAXiが増加した場合の動作は前述と同じである。
その後、推進電動機回転速度設定値NSを時刻t3から時刻t5の零速度に向けて下げれば、推進電動機電力PMiが時刻t3の点33から時刻t5の点53に向かって減少して、この推進電動機電力PMiの減少分を電池の充電電力として供給することができるようになるので、電池への充電が再開される。そして、時刻t4において、充電電力PBiは点42の電力値で一定となるので、上限値PGSによる発電機出力制限が解除され、時刻t1での記憶値PMm,PBm,NSCmがリセットされて通常の運転状態に復帰する。
推進電動機電力PMiが増加して時刻t1の点13に至ると、点13の推進電動機電力PMiをPMmとして記憶し、点12の電池充電電力PBiをPBmとして記憶、さらに時刻t1における回転速度指令値NSCをNSCmとして記憶する動作は、前述の場合と同じである。
また、推進電動機電力PMiが時刻t1の点13からさらに増加して時刻t2の点23に到達すると、充電電流は点12より徐々に低下してt2時刻の点22で充電電流IBi=0になる。
時刻t2において、発電機は推進電動機と補機へのみ電力を供給する運転状態であるから、図2の演算部29Aの(1)式においてPGS=PGi=PΣ=PAXi+PMi(PBi=0)となり、推進電動機電力の増加分をもはや充電電力の減少分で捻出することはできない。
その後、推進電動機回転速度設定値NSを時刻t3から下げれば、推進電動機電力PMiが時刻t3の点33から時刻t5の点53に向かって減少して、この推進電動機電力PMiの減少分を電池の充電電力として供給することができるようになるので、電池への充電が再開される。そして、時刻t4において、充電電力PBiは点42の電力値で一定となるので、上限値PGSによる発電機出力制限が解除され、時刻t1での記憶値PMm,PBm,NSCmがリセットされて通常の運転状態に復帰する。
また、「電動機優先モード」では、発電機出力制限値内において推進電動機の高速運転を行なうことができるとともに、さらに電池を浮動動作とすれば、より多くの電力を推進電動機に供給することができることから、より高速な運転が可能になる。
図7は電池充電特性の例を示す説明図である。先に述べたように、鉛蓄電池は、電解液の電気分解に伴う水素ガス、酸素ガスの発生の防止、および充電電力損失の低減などの理由により、図7に示すステップ1(大定電流:PBC1)、ステップ2(定電圧/中電流:PBC2)、ステップ3(小定電流:PBC3)のように充電電流を変化させて充電するため、充電には長時間を必要とする。
また、図7に示す点線IGが発電機出力電流の上限であるとし、電池を充電電流LBC1で充電するときは、(IG−LBC1)の大きさの電流に対応する電力を推進電動機および補機へ供給でき、また、充電電流LBC2であれば、(IG−LBC2)の大きさの電流に対応する電力を推進電動機および補機に供給できるから、充電電流をLBC1からLBC2にすれば、推進電動機および補機へより大きな電力を供給することができる。
一方、ハイブリッド電源を構成する電池としてリチウムイオン電池を用いた船舶電気推進システムにおいて、「電動機優先モード」を選択している場合には、推進電動機への電力の供給が優先されるが、船舶の運行状態により推進電動機が低回転速度状態になり、推進電動機電力が低レベル状態になる度に、その時の電池の充電工程が充電初期から充電終期までのいずれであっても、発電機出力制限値内で推進電動機電力および補機電力を差し引いた余剰電力として供給可能な最大限の充電電力(充電電流)で電池を充電することができ、これにより、充電時間の短縮化を図ることができる。
図8は電池優先モードおよび電動機優先モードの動作例を説明する動作説明図である。まず、「電池優先モード」とし、時刻t0の点02から時刻t2の点22に向けて充電電力を増加させると、合計電力PΣは点01から点21に向けて増加する。
また、点22〜点32間の充電電力は変更しないとすれば、合計電力PΣ=発電機出力PGi<発電機出力上限PGSであるから、発電機は推進電動機と補機へ所定の電力を供給している。
時刻t3の点32から時刻t5の点52へ向けて充電電力を増加させると、時刻t4の点41で合計電力PΣが発電機出力上限PGSと一致し、点42の充電電力PBiをPBmとして記憶し、点43の推進電動機電力PMiをPMmとして記憶し、さらに時刻t4における回転速度指令値NSCをNSCmとして記憶する。
充電電力が点52に到達した時刻t5において、合計電力PΣ=PBi+PMi+PAXiは発電機出力上限PGSの点51であり、推進電動機電力は点43より減少した点53の電力値となっている。そして、t5時刻の点52からt6時刻の点62までの期間、充電電力が点52の電力値で一定である場合、推進電動機は点53の電力値(回転速度)で運転継続される。なお、図8において、時刻t5から時刻t6までの期間、推進電動機電力PMiのパターンと補機電力PAXiのパターンとが同じ電力レベルとして描かれているが、これは、推進電動機電力PMiが補機電力PAXiと同程度まで低下して運転される状態を模式的に示しているものであり、この期間における実際の動作パターンは、両者が全く同じ電力値になる構成に限定されるものではない。
さらに、時刻t6の点62から時刻t7の点72へ向けて充電電力が増加すると、推進電動機電力(回転速度)をさらに減少(低下)させて、余剰分の電力を充電電力の増加分ΔPBiに充当し、時刻t7の点73で推進電動機電力(回転速度)は0になる。
このため、点72における充電電流指令値IBSC(t7)、または、充電電圧指令値VBSC(t7)を、充電電流指令または充電電圧指令の上限値として充電電力を制限する。
時刻t8の点82から時刻t9の点92に充電電力を減少させると、推進電動機電力(回転速度)は点83から点93に向けて増加(上昇)し、時刻t9以後、充電電力が点92の電力値で一定である場合、推進電動機は点93の電力値(回転速度)で運転される。
時刻t11の点113から時刻t12の点123に向けて推進電動機電力(回転速度)を増加(上昇)させると、推進電動機電力の増加分を充当するために必要な充電電力の減少分を算出して充電電力を減少させる。そして、充電電力は時刻t12の点122で0になる。
推進電動機電力(回転速度)を時刻t13の点133から時刻t14の点143に向けて減少(低下)させると電池充電電力は点132から点142に向けて増加する。
時刻t16において充電電力を点162から時刻t18の点182に向けて減少させるように操作すると、推進電動機電力(回転速度)は点163より増加(上昇)し、時刻t17で点03〜点43と同じ点173の電力(回転速度)に復帰し、また、上限値PGSによる発電機出力制限は点171で解除される。
時刻t18の点182で充電電力が0になると、この時刻t18において、発電機は点183の推進電動機電力および点184の補機電力だけを供給することになる。
なお、時刻t4〜t17間は発電機出力上限値PGSに制限された動作状態であるから、「電池優先モード」の時刻t5〜t10間は電池充電を優先させて推進電動機電力を抑制し、「電動機優先モード」の時刻t10〜t15間は推進電動機運転を優先させて電池充電電力を抑制する動作を行なうので、状況に応じた最適な運転が可能になる。
Claims (4)
- 蓄電池と、この蓄電池を充電するための発電機とを備えたハイブリッド電源から、船舶を推進するプロペラを回転させる推進電動機および補機に給電して船舶を運行させるようにした船舶電気推進システムにおいて、発電機が蓄電池に充電電力を供給するとともに推進電動機および補機にも電力を供給しながら船舶を運行させる電池充電走行を行なうに当たり、
発電機出力制限値内において蓄電池への充電電力の供給を優先させるように発電機からの電力供給を制御する電池優先モードと発電機出力制限値内において推進電動機への電力の供給を優先させるように発電機からの電力供給を制御する電動機優先モードとの切替え手段を設け、その切替えに応じていずれかのモードを実行することを特徴とする船舶電気推進システムの制御方式。 - 前記電池優先モードを選択した場合に、充電電力が増加して充電電力,推進電動機電力,補機電力の合計電力が発電機出力制限値を超えるときは、推進電動機回転速度を低下させて推進電動機電力を減少させることにより得られた余剰分の電力を増加分の充電電力に充当するように制御するとともに、前記電動機優先モードを選択した場合に、推進電動機回転速度の上昇により推進電動機電力が増加して前記合計電力が発電機出力制限値を超えるときは、充電電力を減少させることにより得られた余剰分の電力を増加分の推進電動機電力に充当するように制御する制御手段を設け、
この制御手段により、前記電池優先モードおよび前記電動機優先モードのいずれにおいても前記合計電力が発電機出力制限値を超えないように制御することを特徴とする請求項1に記載の船舶電気推進システムの制御方式。 - 前記制御手段は、前記電池優先モードを選択した場合に、充電電力が増加して推進電動機電力が零になっている状態で補機電力が増加したときは充電電力を低下させるとともに、前記電動機優先モードを選択した場合に、推進電動機電力が増加して充電電力が零になっている状態で補機電力が増加したときは推進電動機電力を低下させることを特徴とする請求項2に記載の船舶電気推進システムの制御方式。
- 前記蓄電池がリチウムイオン電池であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つの項に記載の船舶電気推進システムの制御方式。
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