JP2009259499A - 二次電池用活物質及び二次電池 - Google Patents

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信雄 山本
Atsushi Fukaya
淳 深谷
Kenichiro Kami
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Ryota Nagamatsu
亮太 永松
Masaaki Tamura
正明 田村
Yasufumi Yamaguchi
容史 山口
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Abstract

【課題】大電流充放電特性に優れ且つエネルギー密度の高い二次電池の提供。
【解決手段】式(A)で表される導電性高分子化合物を正極に有する。この導電性高分子化合物は活物質として作用すると共に、自身が導電性をもつので導電補助剤が省略できるのでエネルギー密度が高くなる。
Figure 2009259499

(式(A)中、Rは炭素数が1〜10の炭化水素基、XはS又はNR、RはH又は炭素数1〜4の炭化水素基である、mは正の整数)
【選択図】なし

Description

本発明は、大電流充放電特性に優れ且つエネルギー密度が高い二次電池が実現できる二次電池用活物質及びそれを利用する二次電池に関する。
ノート型パソコン、携帯電話などの携帯型電子機器の急速な市場拡大に伴い、これらに用いるエネルギー密度が大きな小型大容量二次電池への要求が高まっている。この要求に応えるためにリチウムイオン等のアルカリ金属イオンを荷電担体としてその電荷授受に伴う電気化学反応を利用した二次電池が開発されている。中でもリチウムイオン二次電池は安定性に優れたエネルギー密度の大きな大容量二次電池として種々の電子機器に利用されている。
一般的なリチウムイオン二次電池は正極活物質にリチウム含有遷移金属酸化物、負極活物質に炭素材料を用いている。これら活物質へのリチウムイオンの挿入、脱離反応を利用して充放電を行っている。
しかし、このリチウムイオン二次電池は特に正極に比重の大きな金属酸化物を用いているので、単位質量当りの二次電池容量は充分とは言えず、より軽量の電極材料を用いて高容量二次電池を開発しようとする試みが検討されてきた。
例えば、特許文献1には、導電性高分子を正極もしくは負極の材料とする二次電池が開示されている。これは、導電性高分子に対するドープ、脱ドープ反応を原理とした電池である。
この二次電池は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成されたものであり、高容量二次電池として開発が期待された。しかしながら、導電性高分子には酸化還元によって生じるエキシトンがπ電子共役系の広い範囲に亘って非局在化し、それらが相互作用するという性質がある。これは発生するエキシトンの濃度に限界をもたらすものであり、二次電池の容量を制限するものである。このため導電性高分子を電極材料とする二次電池では軽量化という点では一定の効果があるものの、大容量という点からは不充分である。
一方、特許文献2には電極反応に関与する物質としてラジカル化合物を用いる二次電池が開示されている。これは、安定ラジカルに対するドープ、脱ドープを原理とした電池である。
この二次電池は、炭素や窒素といった比重の小さな元素のみから構成されたものであり、また、ラジカル化合物では反応する不対電子がラジカル原子に局在化して存在するので、反応部位の濃度を増大させることができ高容量二次電池が期待できる。しかも、ラジカル部位のみが反応に寄与するため、サイクル特性が活物質の拡散に依存しない安定性に優れた二次電池であり、またこの酸化還元過程においてポリマー骨格の変化を伴わないため酸化還元反応速度が大きく、大電流での充放電が可能である。
しかしながら、従来のラジカル材料はそれ自体に導電性がないので導電補助剤を大量に添加する必要がある。例えば、ポリ(2,2,6,6−テトラメチルピペリジノキシメタクリレート)(PTMA)等のラジカル材料を電極に用いた二次電池では、ラジカル材料自体には導電性がほとんどないため、特許文献3に示されるように、ラジカル材に対して多量の導電材を添加しなければならず、電極の導電性を確保して出力特性に優れ、かつエネルギー密度が高い二次電池は未だに得られることはなかった。
さらに、導電性高分子の主鎖に安定ラジカルを置換した高分子化合物が提案されている(非特許文献1)。これは、導電性部位と安定ラジカル部位とが一体となった高分子化合物であり、導電性の発現と安定ラジカルによる酸化還元挙動が確認されている。
しかしながら、これらの高分子化合物においては、置換された嵩高い安定ラジカル部位が側鎖に存在するため、その導電性が十分ではなかった。そのため、電極の導電性を確保して出力特性に優れ、かつエネルギー密度が高い二次電池はいまだに得られることはなかった。
米国特許4,442,187号公報 特許第3687736号公報 特開2004−200059号公報 J.MATER.CHEM.,1995,5(9),1291−1295
本発明は上記実情に鑑み完成されたものであり、大電流充放電特性に優れ且つエネルギー密度の高い二次電池が実現できる二次電池用活物質及びそれを用いた二次電池を提供することを解決すべき課題とする。
通常、電池の電極を作製する場合、導電性の低い活物質には、黒鉛、アセチレンブラック等を導電補助剤として加えることにより電極の抵抗を小さくしている。電池反応に関与できるラジカル化合物も、そのままでは導電性を有していないので導電補助剤を加えて電池を製造している。そのため電極中の活物質量を高めることができず、十分な電池容量を確保することが困難になっている。
本発明者らは上記課題を解決する目的で鋭意検討を行った結果、導電性部位と安定ラジカル部位とが一体となり、かつ、導電率に優れた高分子化合物を活物質に採用することで導電補助剤の添加を抑制及び/又は無くすことが可能になることを見出した。この活物質を採用すると、大電流充放電特性に優れ、かつエネルギー密度が高い二次電池が実現できた。
すなわち、上記課題を解決する請求項1に係る二次電池用活物質の特徴は、正極と負極と電解質とを有する二次電池における前記正極及び/又は前記負極の活物質であって、
下記一般式(A)で表される導電性高分子化合物を有することにある。
Figure 2009259499
(式(A)中、Rは炭素数が1〜10の炭化水素基、XはS又はNR、RはH又は炭素数1〜4の炭化水素基である、mは正の整数である。Rとしてはアルキレン基、アルケニレン基などが例示され、直鎖状、分岐状何れであっても良い。特に、アルキレン基が望ましい。炭素数が1〜4程度が望ましい。)
上記課題を解決する請求項2に係る二次電池用活物質の特徴は、正極と負極と電解質とを有する二次電池における該正極及び/又は該負極の活物質であって、下記一般式(B)で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物を、該単位化合物のC及びCに結合した水素が脱離することで重合した導電性高分子化合物を有することにある。
Figure 2009259499
(式(B)中、Rは炭素数が1〜10の炭化水素基、XはS又はNR、RはH又は炭素数1〜4の炭化水素基である。Rとしてはアルキレン基、アルケニレン基などが例示され、直鎖状、分岐状何れであっても良い。特に、アルキレン基が望ましい。炭素数が1〜4程度が望ましい。)
上記課題を解決する請求項3に係る二次電池用活物質の特徴は、請求項2において、前記単量体混合物が下記一般式(C)、(D)、及び(E)で表される群からなる化合物のうちの少なくとも1種の導電性高分子化合物を含むことにある。
Figure 2009259499
(式(C)、(D)、及び(E)中、R〜Rは水素、炭素数1〜4の炭化水素基(望ましくはアルキル基)からそれぞれ独立して選択される。)
上記課題を解決する請求項4に係る二次電池用活物質の特徴は、請求項1〜3の何れか1項において、前記XがSであり、
前記Rがポリメチレンであることにある。
上記課題を解決する請求項5に係る二次電池の特徴は、正極と負極と電解質とを有する二次電池であって、
前記正極及び/又は前記負極の活物質は請求項1〜4の何れか1項に記載の二次電池用活物質であることにある。
請求項1及び2に係る発明においては、分子構造中に導電性に寄与する部位をもつと共に、その導電性を有する部位に近接してラジカル部位が存在する。その結果、ラジカル部位によって電池反応が実現できると共に、その電池反応により生成した電子は導電性をもつ部位を介して活物質外部と授受されることになる。
ここで、導電部位と安定ラジカル部位とは一体となってはいるものの、−O−R−O−で表される部分構造を介在させることにより、導電部位に対してラジカル部位が及ぼす影響を低減できる。また、炭化水素基とその炭化水素基に結合したエーテル基により結合しており、簡単に合成できると共に、電池内における安定性にも優れている。
また、一般式(A)及び(B)で表される化合物は、チオフェン骨格やピロール骨格における炭素原子に直接結合したエーテル基を介して炭化水素基が結合されている。その炭化水素基にはラジカル部位が結合している。
チオフェン骨格などにエーテル基とアルキル鎖とが直接結合していることにより、重合反応が容易となり、チオフェン環が重合した部位による導電性について、導電性の向上が実現できる。
その結果、本発明の二次電池用活物質が部分構造として有する導電性部位は、自身が高い導電性をもつことから、二次電池に適用する際に導電補助剤を添加する量を大幅に減らす若しくは添加を無くすことが可能になること並びにラジカルの利用効率が向上することで、二次電池のエネルギー密度を高くすることができる。
以上、まとめると、請求項1に係る発明においては、自身に高い導電性を付与することにより、導電補助剤を添加する量を少なくする乃至なくすことができるため、電極中における活物質の割合を大きくすることが可能になり、高い容量を持つ二次電池が実現できる。
そして、導電性を有する部位と電池反応に寄与するラジカルとを近接できるのでラジカルの利用効率の向上や内部抵抗の低減が実現できる。よって、二次電池の容量向上や、内部抵抗の低減が実現できる。更には、高出力密度及び高エネルギー密度が両立できる。
請求項3に係る発明においては、単量体混合物中に上述の一般式(C)〜(E)で表される化合物を含有させることにより、前述の一般式(B)で表される単位化合物との間で共重合反応が進行することになって、得られる二次電池用活物質中にそれらの化合物由来の構造を導入することができる。これらの化合物はラジカル部位を備えていないため、共重合させることにより導電性は発現しながら、ラジカル部位の導入量の適正化を実現することができる。
請求項4に係る発明においては、これらの化学構造を有するものに限定することにより、より高い性能が実現できる。
請求項5に係る発明においては、上述の二次電池用活物質を採用することにより、高い性能が実現できる二次電池を提供することが可能になる。
本発明の二次電池用活物質及び二次電池について実施形態に基づき以下詳細に説明する。本実施形態の二次電池用活物質は後に詳述するが、二次電池の活物質として用いることができる。特に正極活物質として用いることが望ましい。また、一般的なリチウム二次電池における活物質に追加して用いることができる。
(二次電池用活物質)
本実施形態の二次電池用活物質は、(i)上記一般式(A)で表される導電性高分子化合物、又は、(ii)上記一般式(B)で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物について、その単位化合物のC及びCに結合した水素を脱離させることで重合させた導電性高分子化合物のうちのいずれかを有することを特徴とする。
上記一般式(A)で表される導電性高分子化合物は、チオフェン骨格やピロール骨格(以下、適宜、「チオフェン骨格など」と称する)の重合体からなる主鎖とその主鎖に結合している安定なラジカル構造(ラジカル部位)をもつ部位とから構成される。ラジカル部位は、チオフェン骨格などに直接結合したエーテル基、炭化水素基を介して主鎖に結合されている。
上記一般式(A)で表される導電性高分子化合物において、チオフェン骨格やピロール骨格に直接結合したエーテル基に求められる性状としては、重合時の酸化還元電位を低下させることである。また、炭化水素基に求められる性状としてはラジカル部位が、チオフェン骨格などをもつ主鎖を作製する重合反応の進行を阻害しない程度に離すことである。
以上の結果、重合反応が容易に進行することになる。重合反応が進行し、導電性をもつ部位の重合度が大きくなると導電性が向上し、側鎖に置換された嵩高い安定ラジカル部位が存在するにもかかわらず、導電率の低下を抑制することが可能である。
(ii)の導電性高分子化合物を得る目的で行う重合反応としては特に限定しないが化学重合法が例示できる。化学重合法により導電性高分子化合物を製造すれば、生産性を向上させることができる。
上記一般式(B)で表される単位化合物は、チオフェン骨格やピロール骨格とそのチオフェン骨格などに結合しているラジカル部位をもつ部位とから構成される。ラジカル部位は、チオフェン骨格などに直接結合したエーテル基、炭化水素基を介して主鎖に結合されている。
上記一般式(B)で表される単位化合物において、チオフェン骨格やピロール骨格に直接結合したエーテル基に求められる性状としては、重合時の酸化還元電位を低下させることである。また、炭化水素基に求められる性状としてはラジカル部位が、チオフェン骨格などをもつ主鎖を作製する重合反応の進行を阻害しない程度に離すことである。
更に、一般式(B)の単位化合物以外にもその他の単量体を共重合させることもできる。共重合可能なその他の単量体としては特に限定しないが、主鎖の導電性が充分に発揮できるような構造をもつもの(例えば、一般式(C)、(D)、(E)で表される化合物:ピロール、チオフェン、1以上の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基にて置換されたピロール、1以上の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基にて置換されたチオフェン、エチレンジオキシチオフェン)が採用できる。その他の単量体を共重合することで、電解液に対する親和性や安定性を制御したり、導電性を制御したりすることができる。
その他の単量体として上述したような導電性が充分に発揮できる構造をもつ化合物を採用する場合は、一般式(B)の単位化合物とその他の単量体との混合物が単量体混合物中で主成分として存在すればよい。例えば、一般式(B)の単位化合物と、その他の単量体との混合比は特に限定しないが、モル比で1:10〜10:1程度の範囲を採用することができる。ここで、「主成分」とは「モル数基準で50%以上存在すること」との定義を採用することが望ましい。
また、ブロック共重合体とするなどの重合形態を選択すれば導電性を維持することが可能な場合(例えば、一般式(A)で表される単位化合物が必要な導電性を発揮できる程度の長さを持つ場合)もあるので、共役二重結合を持たないような単量体であっても共重合させて用いることができる。
一般式(A)はチオフェン骨格などが重合したチオフェン骨格などを主鎖にもつ高分子化合物であって、一般式(B)で表される単位化合物におけるチオフェン骨格などにおける2及び5位の炭素(C及びC)に結合した水素が脱離することで重合する化合物である。
(二次電池)
本実施形態の二次電池用電極は、(a)金属箔などから形成される集電体と、(b)(i)上記一般式(A)で表される導電性高分子化合物、又は、(ii)上記一般式(B)で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物を、その単位化合物のC及びCに結合した水素が脱離することで重合した導電性高分子化合物を必須要素とし、分散材、結着材、導電材その他の材料から必要に応じて選択される添加材を混合した電極合材からなる層であってその集電体の表面に形成された電極合材層とを有する形態とすることが一般的である。分散材、結着材は高分子材料から形成されることが望ましく、二次電池内の雰囲気において化学的・物理的に安定な材料であることが望ましい。
集電体の表面に電極合材層を形成する方法としては電極合材を適正な分散媒中に分散または溶解させた後、集電体の表面に塗布・乾燥する方法が例示できる。また、導電補助剤を含有させることなく導電性高分子化合物のみで膜状に成形することでも電極を製造できる。
本実施形態の二次電池用活物質を一方の電極に採用する場合には正極活物質として採用することが望ましい。本実施形態の二次電池用電極が正極である場合には負極と組み合わせて二次電池を構成するが、組み合わせる負極が有する活物質としては、リチウムイオンを充電時には吸蔵し且つ放電時には放出する化合物が採用できる。この負極活物質は、その材料構成で特に限定されるものではなく、公知の材料、構成のものを用いることができる。例えば、リチウム金属、グラファイト又は非晶質炭素等の炭素材料等、ケイ素、スズなどを含有する合金材料、LiTi12、Nb等の酸化物材料である。
支持電解質としては特に限定しないが、有機溶媒などの溶媒に支持塩を溶解させたもの、自身が液体状であるイオン液体、そのイオン液体に対して更に支持塩を溶解させたものが例示できる。有機溶媒としては、通常リチウム二次電池の電解液に用いられる有機溶媒が例示できる。例えば、カーボネート類、ハロゲン化炭化水素、エーテル類、ケトン類、ニトリル類、ラクトン類、オキソラン化合物等を用いることができる。特に、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等及びそれらの混合溶媒が適当である。例に挙げたこれらの有機溶媒のうち、特に、カーボネート類、エーテル類からなる群より選ばれた一種以上の非水溶媒を用いることにより、支持塩の溶解性、誘電率および粘度において優れ、電池の充放電効率も高いので、好ましい。
イオン液体は、通常リチウム二次電池の電解液に用いられるイオン液体であれば特に限定されるものではない。例えば、イオン液体のカチオン成分としては、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムや、ジメチルエチルメトキシアンモニウムカチオン等が挙げられ、アニオン成分としは、BF 、N(SO 等が挙げられる。
本実施形態の支持電解質において用いられる支持塩としては、特に限定されない。例えば、LiPF、LiBF、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiSbF、LiSCN、LiClO、LiAlCl、NaClO、NaBF、NaI、これらの誘導体等の塩化合物が挙げられる。これらの中でも、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiCFSO、LiN(CFSO、LiC(CFSO、LiCFSOの誘導体、LiN(CFSOの誘導体及びLiC(CFSOの誘導体からなる群から選ばれる1種以上の塩を用いることが、電気特性の観点からは好ましい。
正極と負極との間には電気的な絶縁作用とイオン伝導作用とを両立する部材であるセパレータを介装することが望ましい。支持電解質が液状である場合にはセパレータは、液状の支持電解質を保持する役割をも果たす。セパレータとしては、多孔質合成樹脂膜、特にポリオレフィン系高分子(ポリエチレン、ポリプロピレン)の多孔質膜が例示できる。更に、セパレータは、正極及び負極の間の絶縁を担保する目的で、正極及び負極よりも更に大きい形態を採用することが好ましい。
正極、負極、支持電解質、セパレータなどは何らかのケース内に収納することが一般的である。ケースは、特に限定されるものではなく、公知の材料、形態で作成することができる。
本発明の二次電池用電極及び二次電池について、以下の具体的な実施例に基づき、更に詳細に説明する。但し、以下の実施例は本発明の例示であり、本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではない。なお、以下の化合物F〜Kは一般式(A)又は(B)においてチオフェン骨格(XがS)を有する化合物であるが、合成に用いる化合物における対応する部分をNR(RはH又は炭素数1〜4の炭化水素基である)に替えた化合物(XがNR)を採用することにより、ピロール骨格(XがNR)をもつ化合物を合成することも可能である。Rとしては、−CH、−C等がある。
〔化合物Fの合成〕
(単位化合物の合成:一般式(B)のRにおける炭素数が2の化合物)
300mLの四ツ口フラスコにメトキシチオフェン0.26mol(東京化成製)、トルエン150mL、エチレングリコール0.39mol、硫酸0.52molを入れ、メタノールが留去されるまで加熱した。生成物を冷却し、水洗浄し濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製すると、2−(3−チオフェニルオキシ)−エタノールが収率35%で得られた。
窒素雰囲気下、氷浴した200mLの四ツ口フラスコに2−(3−チオフェニルオキシ)−エタノール58mmol、エーテル100mL 、メタンスルホニルクロリド62mmolを加え3時間攪拌した。その混合物を水で洗浄し、濃縮するとメタンスルホン酸2−(3−チオフェニルオキシ)−エチルエステルが収率99%で得られた。
次に窒素雰囲気下、氷浴した200mLの四ツ口フラスコに水素化ナトリウム44mmol、ジメチルホルムアミド30mL、4−ヒドロキシル−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジノニルオキシ40mmolを加え15分攪拌した。更にメタンスルホン酸4−(3−チオフェニルオキシ)−エチルエステル40mmolを加え2時間攪拌した。反応後、トルエンで抽出、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)で精製すると、化合物Fが収率40%で得られた。
MS m/z:298(M+),283,268,155
IR νmax(KBr)cm−1:1570,1390,1260,1200,1090,760
Figure 2009259499
〔化合物Gの合成〕
(単位化合物の合成:一般式(B)のRにおける炭素数が4の化合物)
300mLの四ツ口フラスコにメトキシチオフェン0.26mol(東京化成製)、トルエン150mL、エチレングリコール0.39mol、硫酸0.52molを入れ、メタノールが留去されるまで加熱した。生成物を冷却し、水洗浄し濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1)で精製すると、4−(3−チオフェニルオキシ)−ブタノールが収率32%で得られた。
窒素雰囲気下、氷浴した200mLの四ツ口フラスコに4−(3−チオフェニルオキシ)−ブタノール58mmol、エーテル100mL 、メタンスルホニルクロリド62mmolを加え3時間攪拌した。その混合物を水洗浄し、濃縮するとメタンスルホン酸4−(3−チオフェニルオキシ)−ブチルエステルが収率97%で得られた。
次に窒素雰囲気下、氷浴した200mLの四ツ口フラスコに水素化ナトリウム44mmol、ジメチルホルムアミド30mL 、4−ヒドロキシル−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジノニルオキシ40mmolを加え15分攪拌した。さらにメタンスルホン酸4−(3−チオフェニルオキシ)−ブチルエステル40mmolを加え2時間攪拌した。反応後、トルエンで抽出、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:3)で精製すると、化合物Gが収率34%で得られた。
MS m/z:326(M+),311,296,155
IR νmax(KBr)cm−1:1530,1370,1230,1170,1080,750
Figure 2009259499
〔化合物Hの合成〕
(導電性高分子化合物(一般式(A)におけるRの炭素数が2)の合成方法)
窒素雰囲気下、ヘキサフルオロリン酸ニトロソニウム6.1mmolとクロロホルム30mL、化合物Fを1.5mmolをクロロホルム10mLに溶解した液を混合し1日間攪拌した。上澄み溶液をのぞき、エーテルで洗浄後乾燥すると化合物Hが収率36%で得られた。
Figure 2009259499
〔化合物Jの合成:一般式(A)におけるRの炭素数が4〕
窒素雰囲気下、ヘキサフルオロリン酸ニトロソニウム6.1mmolとクロロホルム30mL、化合物Gを1.5mmolをクロロホルム10mLに溶解した液を混合し1日間攪拌した。上澄み溶液をのぞき、エーテルで洗浄後乾燥すると化合物Jが収率43%で得られた。
Figure 2009259499
〔化合物Kの合成〕
(共重合導電性高分子化合物(一般式(B)におけるRの炭素数が4の化合物と化合物(E)との共重合体)の合成方法)
窒素雰囲気下、ヘキサフルオロリン酸ニトロソニウム6.1mmolとクロロホルム30mL、化合物Gを1.2mmolとEDOT0.3mmolをクロロホルム10mLに溶解した液を混合し1日間攪拌した。上澄み溶液をのぞき、エーテルで洗浄後乾燥すると化合物Kが収率50%で得られた。
Figure 2009259499
〈実施例1〉
(正極の作製)
正極活物質として化合物Hを95質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部に、ノルマルメチルピロリドン(NMP)を加え、混合、分散させ均質塗料液を調整し、スラリーを得た。得られたスラリーをアルミニウム製の薄膜である正極集電体に塗布し、乾燥後、プレスして、正極板とした。正極合材厚みは20μmとなるよう調製した。
(電解液の調製)
エチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)とを3:7の質量比で混合した有機溶媒に、LiPFを1.0mol/Lの濃度で添加し電解液とした。
(コイン型電池の作製)
作成したコイン型電池の断面図を図1に示す。正極1には、前記正極を用い、負極2にはリチウム金属を用いた。電解液3は調製した前記電解液を用いた。セパレータ7は厚さ25μmのポリエチレン製の多孔質膜をそれぞれ用いてコイン型電池を製造した。正極1には正極集電体1aをもち、負極2には負極集電体2aをもつ。
これらの発電要素をステンレス製のケース(正極ケース4と負極ケース5から構成されている)中に収納した。正極ケース4と負極ケース5とは正極端子と負極端子とを兼ねている。正極ケース4と負極ケース5との間にはポリプロピレン製のガスケット6を介装することで密閉性と正極ケース4と負極ケース5との間の絶縁性とを担保している。
(容量特性の評価)
作製したリチウム二次電池の容量特性の評価は、1C相当の電流値にて4.1Vまで充電した後、1C相当の電流値で3.0Vまで放電した際の放電容量を測定することで行った。その結果、正極合材質量あたりの放電容量値は、80mAh/gであった。
〈実施例2〉
正極活物質として化合物Jを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、容量特性を測定した。その結果、正極合材質量あたりの放電容量値は、77mAh/gであった。
〈実施例3〉
正極活物質として化合物Kを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、容量特性を測定した。その結果、正極合材重量あたりの放電容量値は、70mAh/gであった。
〈実施例4〉
正極活物質として化合物Kを85質量部、導電材としてカーボンブラックを10質量部ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、容量特性を測定した。その結果、正極合材質量あたりの放電容量値は、70mAh/gであった。
〈比較例1〉
正極活物質として、特許文献2に記載の下記化学式Lで示されるPTMAを用いた以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、容量特性を測定した。
その結果、電池が作動せず充放電動作を確認できなかった。
Figure 2009259499
〈比較例2〉
正極活物質として、PTMAを75質量部、導電材としてカーボンブラックを20質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、容量特性を測定した。
その結果、正極合材質量あたりの放電容量値は、36mAh/gであった。
〈比較例3〉
正極活物質として、PTMAを55質量部、導電材としてカーボンブラックを40質量部、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)を5質量部とした以外は、実施例1と同様の方法で電池を作製し、容量特性を測定した。
その結果、正極合材質量あたりの放電容量値は、56mAh/gであった。
・実施例1は実施例2及び3の正極活物質(二次電池用活物質)よりも正極合材の単位質量当たりの放電容量が大きかった。そして、実施例2は実施例3の正極活物質(二次電池用活物質)よりも正極合材の単位質量当たりの放電容量が大きかった。ここで、実施例1〜3の正極合材が含有する活物質の割合は同一なので、実施例1の活物質の放電容量が一番大きく、次に実施例2、3の順番となることが分かった。従って、ラジカル部位の濃度が大きい順番(実施例1が一番大きく、次に実施例2、実施例3の順番)に放電容量の値も従うことが分かった。なお、実施例2、3は放電容量の値では実施例1を下回るものの、内部抵抗の値では実施例1を上回っていた。これは、実施例2においてはRの炭化水素基の炭素数が適正(4つ)であるために、重合度(m)が大きくなることにより主鎖部分の導電性が向上したためと考えられる。また、実施例3においては重合度が向上した効果に加え、共重合させた化合物(E)の効果により主鎖部分の導電性が向上したことに由来すると考えられる。
実施例4では導電材を加えることにより、活物質の単位質量当たりの放電容量は変化しないことが分かった。なお、導電材の添加により活物質の絶対量は低下するため、正極合材の単位質量当たりの放電容量は低下した。その替わり、導電材を添加することにより内部抵抗の値が小さくなった。内部抵抗の値としては対応する量よりも大量の導電材を添加した構成をもつ比較例2の結果よりも小さい値になり、活物質自身に導電性を付与することの効果が確認できた。
なお、比較例1では導電材を有さないことにより、電池として作用できなかった。そこで、導電材を加えることにより、電池として作用させたが、導電材の添加量が増えるに従って、内部抵抗の値は小さくなるものの、放電容量は小さくなった。
本発明の非水電解液二次電池のコイン型電池の構造を概略的に示す縦断面図である。
符号の説明
1 …正極 1a…正極集電体 2…負極 2a…負極集電体 3…電解液 4…正極ケース 5…負極ケース 6…ガスケット 7…セパレータ 10…コイン型の非水電解液二次電池

Claims (5)

  1. 正極と負極と電解質とを有する二次電池における前記正極及び/又は前記負極の活物質であって、
    下記一般式(A)で表される導電性高分子化合物を有することを特徴とする二次電池用活物質。
    Figure 2009259499
    (式(A)中、Rは炭素数が1〜10の炭化水素基、XはS又はNR、RはH又は炭素数1〜4の炭化水素基である、mは正の整数)
  2. 正極と負極と電解質とを有する二次電池における該正極及び/又は該負極の活物質であって、下記一般式(B)で表される単位化合物を主成分とする単量体混合物を、該単位化合物のC及びCに結合した水素が脱離することで重合した導電性高分子化合物を有することを特徴とする二次電池用活物質。
    Figure 2009259499
    (式(B)中、Rは炭素数が1〜10の炭化水素基、XはS又はNR、RはH又は炭素数1〜4の炭化水素基である)
  3. 前記単量体混合物は下記一般式(C)、(D)、及び(E)で表される群からなる化合物のうちの少なくとも1種の導電性高分子化合物を含む請求項2に記載の二次電池用活物質。
    Figure 2009259499
    (式(C)、(D)、及び(E)中、R〜Rは水素、炭素数1〜4の炭化水素基からそれぞれ独立して選択される。)
  4. 前記XはSであり、
    前記Rはポリメチレンである請求項1〜3の何れか1項に記載の二次電池用活物質。
  5. 正極と負極と電解質とを有する二次電池であって、
    前記正極及び/又は前記負極の活物質は請求項1〜4の何れか1項に記載の二次電池用活物質であることを特徴とする二次電池。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2018081830A (ja) * 2016-11-16 2018-05-24 株式会社リコー 電極活物質、蓄電素子用電極、および蓄電素子

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