JP2009254985A - ハニカム構造体の含浸方法、ハニカム型構造触媒の製造方法、及び得られるハニカム構造型触媒 - Google Patents

ハニカム構造体の含浸方法、ハニカム型構造触媒の製造方法、及び得られるハニカム構造型触媒 Download PDF

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Abstract

【課題】ハニカム型構造体の通孔の任意の部分に容易に水系媒体を含浸させる方法、また、含浸されたハニカム型構造体に触媒組成物をウォッシュコートするハニカム構造型触媒の製造方法、及びこの方法によって製造された、部分的に触媒成分量が異なるハニカム構造型触媒を提供する。
【解決手段】多孔質無機酸化物を基質とするハニカム型構造体を含浸処理装置に装入した後、水系媒体を霧化して霧状粒子を生成させるとともに、該霧状粒子を含浸処理装置内で保持されたハニカム型構造体の一方の開口端面側へと供給しながら、霧状粒子を他方の端面側から雰囲気と共に吸引して、ハニカム型構造体の通孔内に誘導することにより、通孔内を水系媒体で含浸することを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法などによって提供する。
【選択図】図1

Description

本発明は、ハニカム構造体の含浸方法、ハニカム型構造触媒の製造方法、及び得られるハニカム構造型触媒に関し、より詳しくは、ハニカム型構造体の通孔の所定の部位に容易に水系媒体を含浸させる方法、また、含浸されたハニカム型構造体に触媒組成物をウォッシュコートするハニカム構造型触媒の製造方法、及びこの方法によって製造された、部分的に触媒成分量が異なるハニカム構造型触媒に関する。
無機酸化物からなる多孔質基質のハニカム型構造体(以下、単にハニカム型構造体ともいう)は、モノリス型構造体とも言われ、これに触媒成分が被覆されることでハニカム構造型触媒となり、内燃機関から排出される排気ガス等、有害成分を含むガスの流路に配置され、該有害成分を浄化するために用いられている。
ハニカム構造型触媒には、自動車などの内燃機関から排出される排気ガスを例にあげると、燃料の燃え残りである炭化水素(HC)、可溶性有機成分(Soluble Organic Fraction:SOF)、一酸化炭素(CO)、煤(Soot)、また希薄燃焼に由来して発生する窒素酸化物(NOx)などの有害成分に応じた触媒成分が用いられている。
このうち、HC、SOF、CO、煤については酸化されることで無害化されるため、浄化には白金やパラジウムが添加された酸化触媒が使用される事が多い。
また、近年、特に厳しく規制されるようになったNOxの浄化に対しては、アルカリ土類金属成分を含んだNOx吸蔵型触媒や、ゼオライトやバナジウム、タングステン、チタン成分を含み、アンモニアや尿素を還元剤として利用し、NOxを水と窒素に分解する選択的還元触媒(Selective Catalytic Reduction:SCR)などが知られている。
また、HC、CO、NOxを同時に浄化するための触媒としては、三元触媒(Three Way Catalyst:TWC)が知られている。TWCとして一般的な組成は、HC、COの酸化を促す成分である白金やパラジウムに、更にNOxの還元を促すロジウムを加えたものが一般的である。
ハニカム構造型触媒は、ハニカム型構造体の表面にウォッシュコート法と呼ばれる方法で触媒組成物を被覆して作られる。ウォッシュコート法は、特許文献1に記載のように、ハニカム型構造体にスラリー化した触媒組成物を塗工した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物が担持された一体構造型触媒を得るものである。
しかし、ハニカム型構造体に通常の触媒組成物スラリーを被覆すると、触媒組成物スラリー中の水分がハニカム型構造体に吸収され、触媒組成物スラリーの粘度が増して触媒組成物が過剰に被覆されることや、触媒組成物スラリーの組成が変化してしまうことがあった。
このような問題を解決するため、あらかじめハニカム型構造体に含水処理を施す事が知られており、ハニカム型構造体の開口端部中央に水スプレーする方法(特許文献2)、ハニカム型構造体の全体を水中に漬けた後、余剰の水分をエアーで吹き飛ばす方法(特許文献3)、さらには、ハニカム型構造体に多量の水を噴射して全体を洗浄する方法(特許文献4)などが提案されている。このように含水処理を施せば、通常の触媒組成スラリーでも、ハニカム型構造体に触媒組成物スラリーを被覆するに際し、触媒組成物スラリーの濃度や組成の変化が抑制される。
しかし、このような従来の方法は、ハニカム型構造体全体に含水処理を施すもので、含水処理の過程で、ハニカム型構造体に吸水されない余剰の水分が通孔中に滞留してしまう。余剰な水分が残ったまま触媒組成物スラリーがウォッシュコートされると、スラリーが薄まったり、所定の触媒量が被覆されない場合がある。そのため、滞留した水分をエアブロー等により除去するという手間が必要であった。
また、ハニカム型構造体やハニカム構造型触媒の一部に触媒成分溶液を浸透させることも提案されている(特許文献5)。この方法は、触媒成分溶液中にハニカム型構造体やハニカム構造型触媒の一部を触媒成分溶液に浸し含水処理を施すものであるが、自然吸い上げによるため、ハニカム型構造体の材質や通孔のサイズで溶液が吸い上げられる量が変化し、含水量を制御する事が難しく、特にハニカム型構造体の通孔方向の所定の深さに含水状態を制御することは困難であった。
このようなハニカム構造型触媒は、かつては排気ガス流路に一つだけ使用していたが、近年益々厳しさを増す有害成分の排出規制に対応するため、酸化触媒、還元触媒、三元触媒の中から、複数個の触媒を使用する事が一般的になってきている。
しかし、触媒の使用環境によっては、ハニカム構造型触媒の使用数が制限を受け、特に自動車では、触媒を搭載する場所やスペースが十分に取れないために、多数の触媒を搭載することは難しい。
そのため、一つのハニカム構造型触媒表面に、複数の触媒組成を区分けして被覆する場合があり、これはゾーンコート(Zone Coat)触媒とも言われている(特許文献1)。ゾーンコート触媒には、ハニカム型構造体の通孔方向(軸線)に対して、中心部位と外周部分を同心円状に塗分けたり(特許文献6)、ハニカム型構造体の通孔内を、その深さ方向に塗り分けること(特許文献7)が知られている。ここで、塗り分けられる触媒の種類は、酸化触媒と還元触媒の組み合わせを変える他、同種の触媒であっても、組成、活性種の濃度、ハニカム型構造体への被覆量などを変える場合がある。
このような触媒の塗り分けは、浄化すべき有害成分の組成、流量、温度等によって異なり、適宜最適の組み合わせが設定される。例えば、自動車の排気ガスの浄化において、前段と後段で塗り分けるには、一方に触媒成分の種類を多く、他方に触媒成分の種類を少なく塗る場合、また一方に貴金属成分の含有量を多く、他方に貴金属成分の含有量を少なく塗る場合などがある。また、ハニカム型構造体に触媒成分が多層に被覆される場合のゾーンコートでは、一方の下層を厚くそして上層を薄く塗り、他方には下層を薄くそして上層を厚く塗ることがある。
ハニカム構造型触媒の触媒被覆量は、充分な排気ガスの浄化性能を発揮するために厳密に管理されており、浄化すべき成分に応じた設計がなされている。また、排気ガス浄化触媒には、高価な貴金属が使用される事が多く、被覆量が安定しないと、触媒のコスト管理が難しくなることがあり、工業的実用性が確保できなくなる。
これをゾーンコートによる塗り分けについて考えると、例えばハニカム型構造体の通孔を、その深さ方向に塗り分ける場合、従来のウォッシュコート法では、塗工に際し、ハニカム型構造体通孔の途中で触媒組成物スラリーの被覆を止める必要があり、その制御は難しかった。また、ハニカムを破壊することなく通孔内部への被覆状態を正確に確認することは困難であった。
また、ゾーンコート触媒を得るため、従来のウォッシュコート法によりハニカム構造型触媒を通孔の軸線方向に塗り分ける場合、触媒の組成毎にウォッシュコートを繰り返し、ハニカム構造型触媒をスラリーを所定深さに浸漬し、乾燥、焼成することで得られていた(特許文献3)。これは、単に触媒組成中の一部の成分の濃度を変更する場合にも同様であった。
しかし、このような操作では、触媒組成物スラリーの準備や、塗工設備の切り替えなど煩雑な操作が伴っていた。また正確な被覆も難しかった。特にハニカム構造型触媒を多層化する場合には、準備や設備が煩雑になり、工業的実施には困難が伴っていた。
特表2003−506211 特開昭63−111944 特開平02−149347 実施例1 特開昭53−26788 特開昭63−7847 実施例1 実開昭59−39639 特表2005−530614
本発明の目的は、上記従来の課題に鑑み、ハニカム型構造体の通孔を所定の部位に容易に水系媒体で含浸させる方法、また、この含浸後に触媒組成物をウォッシュコートするハニカム構造型触媒の製造方法、及びこの方法によって製造されたハニカム構造型触媒を提供することにあり、特にゾーンコート触媒を得るのに有効な方法を提供するものである。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、多孔質無機酸化物を基質とするハニカム型構造体を含浸処理装置に装入した後、水系媒体を霧化して霧状粒子を生成させるとともに、該霧状粒子を含浸処理装置内で保持されたハニカム型構造体の一方の開口端面側へと供給しながら、霧状粒子を他方の端面側から雰囲気と共に吸引して、ハニカム型構造体の通孔内に誘導することにより、通孔内を水系媒体で含浸することを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ハニカム型構造体は、開口端面が上下方向となるように含浸処理装置内に立てて保持されることを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、水系媒体の霧状粒子は、粒径が0.1mm以下であることを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、水系媒体の霧状粒子は、ハニカム型構造体に対して30〜200秒間供給されることを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1の発明において、水系媒体は、貴金属化合物を含む触媒成分溶液であることを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法が提供される。
さらに、本発明の第6の発明によれば、第1の発明において、水系媒体は、ハニカム型構造体の総含水量に対して80%以下の割合で含浸されることを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法が提供される。
一方、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係り、前記方法により通孔内が水系媒体で含浸処理されたハニカム型構造体が提供される。
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、ハニカム型構造体は、その中央部が周辺部よりも通孔の深さ方向に長く水系媒体で含浸されていることを特徴とするハニカム型構造体が提供される。
また、本発明の第9の発明によれば、第7又は8の発明に係り、前記ハニカム型構造体を用い、ウォッシュコート法で触媒組成物スラリーを被覆した後、乾燥・焼成することを特徴とするハニカム構造型触媒の製造方法が提供される。
また、本発明の第10の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明に係り、触媒組成物で被覆されたハニカム構造型触媒を用い、このハニカム構造型触媒に前記方法で触媒成分溶液を部分的に含浸し、その後、乾燥・焼成することを特徴とするハニカム構造型触媒の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第11の発明によれば、第9又は10の発明に係り、前記方法により製造され、触媒成分がハニカム型構造体の通孔方向に対して部分的に異なる量で担持されたハニカム構造型触媒が提供される。
本発明によれば、ハニカム型構造体の通孔を、その深さ方向に水系媒体で容易に含浸させる事ができる。また、本発明によれば、含浸処理工程において余剰な水系媒体をエアブロー処理で吹き払う必要が無い。また、この含浸処理と、従来のウォッシュコート法を組み合わせることで、ハニカム構造型触媒における触媒成分の被覆量を、部位毎に容易かつ正確に制御することができ、排ガス浄化に適したゾーンコート触媒とすることができる。
以下、本発明によるハニカム型構造体への水系媒体の含浸方法、ハニカム構造型触媒の製造方法、並びにその方法を用いたハニカム構造型触媒について、自動車用ハニカム構造型触媒を中心に詳細に説明する。ただし、本発明のハニカム構造型触媒は、自動車用に限定されるものではなく、ハニカム型構造体への水系媒体の含浸処理が必要とされる技術分野に広く適用可能である。
本発明のハニカム型構造体の含浸方法は、まず、多孔質無機酸化物を基質とするハニカム型構造体を含浸処理装置に装入した後、水系媒体を霧化して霧状粒子を生成させるとともに、該霧状粒子を含浸処理装置内で保持されたハニカム型構造体の一方の開口端面側へと供給しながら、霧状粒子を他方の端面側から雰囲気と共に吸引して、ハニカム型構造体の通孔内に誘導することにより、通孔内を水系媒体で含浸することを特徴とする。
1.ハニカム型構造体
本発明に使用されるハニカム型構造体は、無機酸化物の多孔質基質からなるものである。このような無機酸化物としては、アルミナ、コーディエライト、ムライト、シリカ−アルミナ、炭化珪素等のセラミック材料が知られているが、このような水を含浸しうる多孔質基質であるもの全てに適用できる。また、ハニカム型構造体にはステンレス等金属製のものもあるが、このような金属性ハニカム型構造体では、金属性ハニカム構造体の表面に、多孔質被覆層を設けることで好適に本発明に適用できる。本発明に使用されるハニカム型構造体の形状は、特に限定されるものではなく、円柱状や楕円柱状など、広く一般的に知られている形状のハニカム型構造体が使用できる。
ハニカム型構造体は、一方の端面から他方の端面へ向かって伸びる多数の通孔を有しており、これらが集まってハニカム形状を形成している。
また、ハニカム型構造体には、その構造の特徴から、フロースルー型とウォールフロー型に大別されている。フロースルー型は、一方の開放端面から他方の開口端面に向けて開口する多数の通孔端部が封止されておらず、酸化触媒、還元触媒、三元触媒に広く用いられている。これに対し、ウォールフロー型は、通孔の一端が、互い違いに封止されているもので、排気ガス中の煤やSOF等、固形成分を濾し取ることができるため、Diesel Particulate Filter(DPF)として用いられている。本発明はそのどちらにも使用できる。
このようなハニカム型構造体における通孔は、通常、直径あるいは一辺が凡そ0.8〜2.5mmであり、その密度は、単位断面積あたりの孔の数で表され、これはセル密度とも言われる。本発明に使用されるハニカム型構造体のセル密度は、特に制限されず使用できるが、概ね100〜900セル/inch2が好ましく、200〜600セル/inch2である事がより好ましい。セル密度が900セル/inch2を超えると、触媒成分や、排気ガス中の固形分で目詰まりが発生しやすく、100セル/inch2未満では幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまい排気ガス浄化触媒としての有用性がなくなる。
また、ハニカムを構成するセル壁の厚みは、2〜12mil(ミリインチ)が好ましく、4〜8milがより好ましい。セル壁が薄すぎると構造的に脆くなり、厚すぎるとセルの幾何学的表面積が小さくなるため、触媒の有効使用率が低下してしまう。
本発明により、ハニカム型構造体を水系媒体で含浸するには、まず含浸対象となるハニカム型構造体の総含水量を把握しておく必要がある。ハニカム型構造体の総含水量は、ハニカム型構造体の材質、大きさ、セル密度などによって異なり、通孔内部表面の状態(平滑性や乾燥状態など)にも左右される。
ハニカム型構造体の総含水量の特定は、ハニカム型構造体を完全に水の中に浸し、充分に含水させた後、エアブローや遠心分離により脱水し、この完全含水されたハニカム型構造体と、含水前の乾燥したハニカム型構造体の重量の差によって測定することができる。なお、含水量の測定は、水ではなく、含浸処理する水系媒体によって行なってもよい。
2.水系媒体
本発明において、ハニカム型構造体を含浸する水系媒体としては、触媒成分の調製に使用されている水であれば特に制限されない。水単体の他、水に有機溶剤、及び/又は界面活性剤を混合したものも使用することができる。
メタノールやエタノール、アセトン、エーテルなど低分子量の有機溶剤を加えることで、有機溶剤の揮発を利用して水系媒体の含浸量を調整することができ、また、カチオン型、アニオン型、両性型など各種界面活性剤を加えることでハニカム型構造体の通孔表面への濡れ方を調整することができる。有機溶剤を混合する場合は、水に対して20重量%以下、好ましくは10重量%以下とする。20重量%よりも多いと、含水量が低下するので好ましくない。また、界面活性剤を混合する場合は、水に対して5重量%以下、好ましくは1重量%以下とする。5重量%よりも多いと、触媒成分の担持に悪影響が出ることがあるので好ましくない。
また、水系媒体には貴金属塩のような触媒成分の溶液を使用することもできる。触媒成分を溶かした溶液を使用することで、ハニカム型構造体への触媒成分の含有量を、通孔の深さの所定の部位で調整することができる。また、被覆される触媒成分の厚みを変えることなく、触媒成分の含有量のみを変えることもできる。
3.含浸処理装置
本発明における含浸処理では、まず、多孔質無機酸化物を基質とするハニカム型構造体を含浸処理装置に装入し、含浸処理装置の中でハニカム型構造体を保持する。
本発明において使用される含浸処理装置は、本体容器、霧化器、および吸引手段からなる。本体容器(以下、単に容器ともいう)は、ハニカム型構造体を内部に収容できる充分な大きさとハニカム型構造体をほぼ中間の位置で安定して保持できる機能を有するものであれば、その形状や材質は特に制限されない。例えば、ハニカム型構造体の外径よりも大きな直径の細長い円筒体、透明なガラスあるいはプラスチック製の四角な筒体などを用いることができる。
容器の大きさがハニカム型構造体の外径よりも小さいと、ハニカム型構造体が容器内に装入できない。円筒体又は筒体のほぼ中間で上下に分離できるようにして、ハニカム型構造体を装入しやすくしてもよい。そして、その位置にハニカム型構造体を安定して保持するためのゴムなどの弾性体や突起を取り付けることができる。これにかわり、底部に台や障害物を設置するか、あるいは、容器の頂部にハニカム型構造体を吊り下げる蓋と部材を設けてもよい。本発明では、中間位置に弾性体や突起を設置して、容器の供給側と排出側を気密に分離する事が好ましく、その場合、通孔が閉塞されないようにする必要がある。ハニカム型構造体の外周部を装入したときに、容器の内壁との間に隙間ができると、隙間から水系媒体の粒子が流出してしまうが、弾性体や突起によって気密に分離できればそれを阻止できる。
そして、容器の上部には、水系媒体の粒子を受け入れる開口(パイプ)と、底部には、水系媒体の粒子を排出する開口(パイプ)が設けられている。
このような容器にハニカム型構造体を装入して、水系媒体の粒子を供給する様子を図1に示した。容器4、5の中間位置に弾性体や突起などの支持体(保持部)3があり、ハニカム型構造体1が、その開口端部を上下方向にして保持されている。ハニカム型構造体は、開口端面が上下方向となるように含浸処理装置内に立てて保持されることが望ましい。横型容器に装入して横向きにして保持することも可能ではあるが、霧状粒子の大きさによっては、通孔内への含浸パターンが乱れる場合がある。容器の上部には、側面の開口(パイプ)から供給された水系媒体の霧化粒子2が受け入れられて、ハニカム型構造体1の上方に滞留している。
容器内に供給される水系媒体の量は、あらかじめハニカム型構造体の総含水量を確認しておき、所望の含浸パターンが得られるに充分な量に設定しておく。霧状の水系媒体の粒子は、電気的吸着手段等を用いない限りその全てがハニカム型構造体に含浸される事はほぼ無いことから、具体的な含浸量の制御は、霧状される水系媒体の量、吸引速度、吸引時間、ハニカム型構造体の大きさ、ハニカム型構造体の通孔の密度などを設定することで適宜決定される。
本発明では通孔方向を軸線としたハニカム型構造体の中心部位または外周部分の一方、または中心部位または外周部分の両方各個別に含浸処理を行うこともできる。このような含浸処理を施すには、水系媒体の霧化粒子が供給されるハニカム型構造体の開口端面の一部をマスキングすれば良い。マスキング処理された通孔には水系媒体が供給されず、含浸処理が施されない。このマスキング機能を、上記弾性体や突起などの支持体3に兼用させることもできる。
4.水系媒体の霧化
次に、水系媒体を霧化して本体容器に供給する。水系媒体の噴霧手段は特に限定されず、水の沸騰により発生する蒸気を排出させる加熱式、圧電セラミック等を超音波振動させ、この振動で水を霧化する超音波式などを適用した噴霧装置を使用でき、広く市場で入手可能な噴霧装置の中から選択できる。
加熱式の噴霧装置であれば、例えば、水系媒体を貯める貯水槽と、その貯水槽内に設けられ、貯水槽内の水系媒体を加熱する加熱部と、貯水槽からの蒸気を本体外に案内するスチームガイドと、水系媒体中のゴミなどを取るスケールフィルターなどからなる加湿器が挙げられる。
また、超音波式の噴霧装置であれば、例えば、水系媒体を貯める貯水槽と、この貯水槽内の水系媒体を霧化するための超音波振動板と、霧化粒子を上方へ噴霧するための粒子噴霧パイプと、霧化粒子をこの粒子噴霧パイプへ送るための送風ファンとを備えた超音波霧化装置が挙げられる。このような装置は、小容量の加湿器として市販されており利用可能である。
本発明における霧状とは、水系媒体が浮遊し、水滴のように即座に落下しない程度の粒子であれば特に限定されないが、粒子径が0.01mm以下の粒子状である事が好ましく、0.01〜0.1mmであることがより好ましく、0.03〜0.1mmが最も好ましい。また、水系媒体の粒子径は、位相ドップラー式レーザー粒子分析器により粒子の速度と共に確認できる。また、粒子径や噴霧量については、霧化条件を変更してある程度調整できる。
粒子径が大きすぎると、後述するように、本発明を使用して、部分的にハニカム型構造体に水系媒体を含浸させる場合に、本発明の特徴の一つである、凸状の含浸形状が得られにくくなることがある。また、粒子径が小さすぎると、ハニカム型構造体への水系媒体の含浸が遅くなる場合がある。水系媒体の含浸が遅くなる理由は定かではないが、粒子径が小さくなることで、粒子の表面張力が大きくなり、ハニカム型構造体の壁面に接触した際にも粒子の形状が保たれ、粒子が壁面から弾き返されるためではないかと考えられる。
水系媒体の粒子径が小さくなることで濡れ性が低下する現象は、ドライフォグとも言われ、特開2006−55714等に記載があり、その濡れ性の低さから、屋外における冷却手段や、工場における静電気の除電手段などにも利用されている。
5.水系媒体の粒子によるハニカム型構造体の含浸
容器の上部に供給された水系媒体の粒子2は、図1ではハニカム型構造体1の上方に滞留しているが、下部から吸引されると、図2のようにハニカム型構造体1の上端部から通孔内部に浸入していく。
水系媒体の霧状粒子の供給時間(含浸時間)は、ハニカム型構造体の大きさなどによって異なるので、一概に規定できないが、30〜200秒間供給することが好ましい。30秒未満ではハニカム型構造体を充分に含浸できない場合があり、200秒を超えるとハニカム型構造体の全体が含浸されてしまい所望のパターンが得られない場合がある。より好ましい霧状粒子の供給時間(含浸時間)は、40〜100秒間である。
本発明において、吸引方法は、特に限定されず、容器にハニカム型構造体を装入・保持してから、容器下部を吸引して減圧することができる。これとは反対に、底側5のパイプから容器の中に霧状の水系媒体を噴霧し、蓋側4のパイプを吸引して、ハニカム型構造体の他方の開口端面から、霧状の水系媒体を雰囲気と共に吸引する方法にしてもよい。
また、図1に示される底側の容器5の代わりに、円錐形のノズルをつかってハニカム型構造体の他方の開口端面を覆って、図4のように吸引処理を行うこともできる。円錐形のノズルを使用した場合、ノズルの外周部の流速が早くなり、ノズル中心部の流速が遅くなる傾向にあり、後述するハニカム型構造体における水系媒体の含浸状態の凸状が緩和される場合がある。
本発明では、水系媒体が噴霧されるハニカム型構造体の端面とは反対側から吸引処理を行うことが好ましいが、その吸引処理は様々な方法が使用できる。例えば、ハニカム型構造体の端面の部位により吸引速度を変えれば異なる含浸状態を作ることができる。吸引速度を変える方法としては、前述の円錐形(漏斗形)のノズルによる吸引の他、ハニカム型構造体の端面の一部を覆って吸引処理を行っても良い。なお、前述の円錐形(漏斗形)のノズルによる吸引の場合、各部位の流速の差によってはハニカム型構造体が凹状に含浸処理される事がある。このように、本発明の方法は必要な含浸状態に応じて適宜応用が可能なものでもある。
本発明では、霧状の水系媒体は、容器内に供給された後、吸引されて図2のように徐々に通孔内に誘導されるが、そのまま留まることなく、通孔壁面から吸収されながら、含浸処理は通孔の深さ方向に進行して、図3のようにハニカム型構造体1を凸状に含浸し、吸収されなかった霧状の水系媒体2が底部から排出する。そのため、含浸処理した後、余剰の水系媒体をエアブロー処理などにより除去する必要が無い。
6.含浸されたハニカム型構造体
本発明のハニカム型構造体は、上記方法により通孔内が水系媒体で含浸処理され、その中央部が周辺部よりも通孔の深さ方向に長く水系媒体で含浸されていることを特徴とする。
本発明による水系媒体の含浸方法によれば、ハニカム型構造体の部分含浸において特徴的な作用を発揮する。本発明による部分含浸とは、ハニカム型構造体の通孔の、所定の深さ方向に水系媒体を含浸するものであるが、本発明では、ハニカム型構造体の端面に対し均一に吸引した場合、ハニカム型構造体1の通孔内部の深さ方向に向かって、通常凸状に水系媒体が含浸してゆく(図3)。このように凸状に含浸してゆく理由は定かではないが、水系媒体が霧化され粒子径が小さいことで、気体の流れ方に相関してハニカム型構造体が濡れてゆくためと思われる。吸引によって生じる気体の流れは、通孔に生じた空気の流れが、隣接する通孔から流出する空気に干渉し、ハニカム型構造体の中心部に向けて空気の流速を増してしまうものと考えられる。このように、凸状に含浸してゆくことは、ハニカム型構造体の端面に対して霧状の水系媒体供給量に部分的な差が生じない場合にも発生するもので、本発明における特徴的な作用といえる。
上記図1〜4の方法により含浸されたハニカム型構造体を中央で縦に切断した状態を図5、6の写真で示す。
ハニカム型構造体に含浸させる水系媒体の量は、ハニカム型構造体に被覆したい触媒組成物の量に応じて適宜設定される。具体的には総含水量の80%以下であることが望ましく、60%以下がより望ましく、40%以下が最も望ましい。完全に含浸させず、非含浸部分を残す事で、本発明をもって容易にゾーンコートを行なう事ができる。
本発明による含浸処理は、ハニカム型構造体の一部に施すものであり、その全体に施すものではない。部分的に含浸処理を施すことで、ウォッシュコート法において使用される触媒組成物スラリーの組成の変化を抑制できる。
従来の含水処理技術では、ハニカム型構造体を完全に含水処理するために、水中にハニカム型構造体を漬け込むことや、スプレー法を用いて多量の水を供給するため、通孔には余剰の水分が留まる。このように留まった余剰の水分はブローアウトする必要があったが、本発明の水系媒体の含浸処理では必要な量の水系媒体のみが霧状で供給され、含浸されない水系媒体は空気と共に吸引されることから、余剰の水系媒体が通孔中に留まらないので、エアブロー操作の必要が無い。
7.ハニカム構造型触媒の製造
本発明の製造方法で水系媒体の含浸処理を施されたハニカム型構造体は、次に、公知のウォッシュコート法をもって、触媒組成物スラリーを被覆し、ハニカム構造型触媒とすることができる。
ここで、ハニカム型構造体が乾燥していると、スラリーが通孔内に留まっている間に、スラリー中の水分、並びに溶解成分がハニカム型構造体に吸収され、触媒組成物スラリーの成分のバランスが変わってしまう事がある。
しかし、本発明によれば、あらかじめハニカム型構造体に含水処理が施されているので、触媒組成物スラリー中の水分、並びに溶解成分がハニカム型構造体に吸収されることが抑制され、触媒組成物スラリーの濃度や成分量の変化が少なくなり、触媒組成物スラリーを循環して使用することに適している。この事は、工業的にウォッシュコート法を実施するのに有利である。
ウォッシュコート法では、ハニカム型構造体を触媒組成物スラリーに浸漬して通孔内に触媒組成物スラリーを塗工して層を形成する。本発明ではハニカム型構造体の通孔の深さ方向の特定部位に水系媒体が含浸されているので、被覆される触媒組成物の量も、含浸部分、非含浸部分の境界が、ハニカム型構造体の円周方向の平面で正確かつ容易に制御される。触媒組成物スラリーをハニカム型構造体に塗布した後、高圧のエアーでブローして通孔に留まったスラリーを吹き飛ばす。吹き飛ばされたスラリーは、自動的に回収され、再びウォッシュコートに利用される。
こうして通孔内に触媒組成物スラリーを塗工して層を形成した後、乾燥、焼成を行う事により触媒組成物で被覆されたハニカム構造型触媒が得られる。乾燥温度は、100〜300℃が好ましく、100〜200℃がより好ましい。焼成温度は、300〜700℃が好ましく、特に400〜600℃が好ましい。加熱手段については、電気炉やガス炉等の公知の加熱手段によって行う事ができる。
通常の触媒組成物スラリーは、ハニカム型構造体の吸水作用により粘度変化するが、本発明はこのような通常のスラリー触媒組成物スラリーにも使用可能である。本発明に使用される触媒組成物スラリーは、その成分に特に限定は無く、広く一般的な溶媒として水が使用されている触媒組成物スラリーが使用可能である。触媒組成物とは、たとえば、NOx吸蔵型触媒の場合、アルカリ土類金属成分を含み、また、アンモニアや尿素を還元剤として利用し、NOxを水と窒素に分解する選択的還元触媒の場合、ゼオライトやバナジウム、タングステン、チタン成分を含んでおり、三元触媒(TWC)の場合、HC、COの酸化を促す成分である白金やパラジウムに、更にNOxの還元を促すロジウムが含まれている。そして、これら金属成分にγ−アルミナ粉末、シリカ粉末、セリア粉末、ジルコニア粉末などを混合して、水系媒体でスラリー状態とされている。
このような触媒組成物スラリーは、粘度が50〜500cpsであることが望ましい。このような粘度はB型粘度計で測定することができる。B型粘度計とは、スラリー中で円筒または円盤を回転させ、円筒・円盤に働く液体の粘性抵抗トルクを測るもので広く普及しているものを使用することができる。
本発明の方法で水系媒体が部分的に含浸されたハニカム型構造体に触媒組成物スラリーを被覆すると、前述のとおり水系媒体が含浸した部分は、水系媒体が含浸していない部分に比べて、触媒組成物の被覆量が少なくなる。特開昭63−111944号公報(2頁、右上欄)にも記載されているが、含浸処理が施されていない部分では、ハニカム型構造体が触媒組成物スラリーの水分を吸収し、触媒組成物スラリーの固形分濃度が上昇し粘度が上昇する。これにより、含浸処理が施されていない部分では、含浸処理が施されている部分に比べて多くの触媒組成物が被覆される。
従来の方法で触媒層の厚みを変えるゾーンコートを行おうとすると、最初に薄く触媒組成層を形成した後、もう一度部分的に触媒組成層を形成する必要があったが、本発明では一度で簡単に塗り分けを行うことができる。また、従来の方法であると、触媒組成物スラリーがハニカム型構造体のどの位置まで被覆されたか直接確認することができず、所望の深さ方向に、所望量の触媒組成物が被覆されていない事があった。これは、通常の触媒組成物スラリーが高粘度であることで、被覆に時間がかかることや、組成によって被覆時間や、通孔の所定深さにスラリーが侵入する時間が異なることから生じる問題であった。
しかし、本発明では含浸処理を施した後、一方の端から触媒組成物スラリーを供給し、もう一方の端からスラリーが溢れてくれば、触媒組成物スラリーがハニカム型構造体の全表面に被覆されたことが確認でき、併せて各部分の被覆量が確実に制御できる。
触媒の多層化が、排気ガスの浄化においては広く一般的に用いられている。例えば、前記のようにして触媒組成物スラリーの被覆量に違いを付けてハニカム型構造体を乾燥させ、必要に応じて焼成した後、更に触媒組成物スラリーを被覆する事がある。このように被覆処理を施すと、被覆された触媒組成物層は、下層では薄い部分と厚い部分があり、上層は、ほぼ均一に触媒組成物スラリーを被覆することができる。
本発明の部分含浸処理をこの多層化に利用することで、ハニカム構造型触媒の任意の層で、一部を薄く、他の部分を厚く触媒組成物を被覆することができる。このような操作は複数回繰り返しても良い。本発明の部分含浸処理を施し、その後、触媒組成物スラリーを被覆すると、被覆された触媒組成物層は、下層では均一な厚みの触媒層が形成され、上層では薄い部分と厚い部分が形成される。
また、本発明によれば、ハニカム構造型触媒における貴金属等の触媒成分量の分布を調整することもできる。すなわち、水系媒体として触媒成分の溶液を部分含浸することで、ハニカム構造型触媒の一部に、触媒成分の一部が高濃度の被覆層を形成することができる。このように、ハニカム構造型触媒における触媒成分の濃度を調整することで、貴金属等の触媒成分の節約や、ハニカム構造型触媒において、通孔の任意深さで触媒反応の制御が可能になる。このような触媒成分を含む水系媒体による含浸処理は数回繰り返しても良いし、更に厚みの異なる触媒層を形成するために利用してもよい。このように、本発明によればハニカム構造型触媒の通孔の深さ方向で様々に積層(レイヤー)中の組成が異なるハニカム構造型触媒を得ることができる。
8.ハニカム構造型触媒の使用
本発明のハニカム構造型触媒は、排気ガス流れ中に複数個配置して使用することができる。ハニカム構造型触媒は、通常、末端が円錐型のコンバーターケース内に収納されて使用される。このように触媒を配置する場合、前段に配置した触媒を通過して一部浄化された排気ガスが、後段の触媒に接触し、排気ガス中の成分を利用し、更に排気ガスを浄化する。そのため、前段の触媒は、後段の触媒における浄化が促進されるように排気ガス成分の組成を調整する働きも必要である。
例えば、図8に示すように、前段に酸化触媒を、後段にNOxを吸蔵したうえで、排気ガス中のHCを利用してNOxを還元する作用を有する触媒を配置した場合、前段の酸化触媒で全てのHCやCOが酸化により浄化されてしまう事は望ましく無い。そのため、ある程度のHCやCOが酸化触媒から漏出(Slip)し、後段の還元触媒に供給される必要がある。
そのため、酸化触媒の能力を調整する必要があり、このような触媒の能力を調整する手段としてゾーンコート触媒が使用される。すなわち、一つのハニカム構造型触媒において、酸化活性の高い部分と酸化活性の低い部分を作るのである。
具体的には、排気ガス温度が高いとNOxの排出量は通常多くなる。そして排気ガス温度が高くなる状況は、自動車の場合には高回転運転のときである。このような高回転運転時には、排気ガスの流速が早くなる。末端が円錐型のコンバーターケース内における排気ガスの流速は、図8中に矢印で表したように、ハニカム構造型触媒の外周側では流速が早く、中心部分では遅くなる。ここで、外周部の酸化活性を低くしたゾーンコート触媒を用いれば、高回転時には還元成分(HC、CO)が後段の還元触媒に多く供給されることになり、NOx浄化が促進される。
以下、本発明の実施例、比較例を示すが、本発明は、この実施例に限定して解釈されるものではない。
[実施例1]
まず、霧化装置(スチームファン式、商品名:KA−F35S、株式会社東芝製)、水系媒体(着色水)、含浸用容器(本体容器)およびハニカム型構造体を用意し、図1に示すようにハニカム型構造体1を含浸用容器の中間保持部3に設置した。保持部3は、効率的な吸引処理が可能なようにハニカム型構造体1の外周をほぼ密閉状態に保持している。下部本体容器5の形状は略直方体のものを使用したが、ハニカム型構造体1の部位により、吸引速度に違いが出難いように、ハニカム型構造体1の容積に比べ相当に大きい、40Lの容量とした。また、供給側の上部本体容器4は、吸引に際して負圧を生じ、吸引の妨げにならないようにならないよう一部を大気に開放した。
次に、水系媒体2を霧化して、ハニカム型構造体1の上端側を覆った本体容器4に供給した。供給された霧状の水系媒体2は、ハニカム型構造体1の通孔を通過して、本体容器5の下端側から排出した。45秒間霧化、含浸をおこなった後、ハニカム型構造体の重量を測定したところ、含水量12.8cc(含水率19.7%)であった。
含浸処理後のハニカム型構造体を通孔方向に切断して写真を撮影した。図5のように凸状に含浸して行くのがわかった。これによりハニカム型構造体を触媒組成物によって凸状にゾーンコートが可能となる。
次に、含浸処理したハニカム型構造体に対して、下記触媒組成物スラリーをウォッシュコート法で被覆し、乾燥、焼成を経てハニカム構造型触媒を作成した。触媒組成物スラリーの組成、乾燥、焼成条件を以下に記す。
[ハニカム型構造体]
・材質:コーディエライト製
・サイズ:110φ×97.1[mm](923cc)
・セル密度:900cel/inch2
・セル壁の厚み:2mil
・水の総含浸量:65cc
[含浸条件]
・噴霧量:350ml/h
・噴霧粒子径:0.01〜0.1mm
[触媒組成物スラリー]
・γ−アルミナ粉末:25wt%
・セリア/ジルコニア粉末:20wt%
・塩化白金水溶液:10wt%(白金量換算0.5wt%)
・残余:水
・粘度:380cps(B型粘度計)
[乾燥・焼成条件]
・乾燥温度:150℃
・焼成炉:ガス炉
・焼成温度:500℃
・焼成時間:2時間
[比較例1]
含浸処理を施していない同じハニカム型構造体について、実施例1と同様に触媒組成物スラリーをウォッシュコート法で被覆し、乾燥、焼成を経てハニカム構造型触媒を作成した。実施例1、比較例1について、水系媒体の含浸量、含浸部分、非含浸部分の触媒成分の被覆量を比較した。被覆量の違いは、比較例1における被覆量を100%として、実施例1における被覆量を表した。結果を以下の表1に記す。含浸処理部分は非含浸処理部分のほぼ半分の量の触媒組成物が被覆されていた。
Figure 2009254985
[実施例2]
上記実施例1と同様にして、含浸時間だけを変えて、120秒とした。霧化、含浸をおこなった後、ハニカム型構造体の重量を測定したところ、31.7cc(含水率48.7%)であった。含浸処理後のハニカム型構造体を通孔方向に切断して写真を撮影した。図6のように凸状に含浸して行き、含浸時間を長くすると凸状の含浸が吸引方向に進行して行くのがわかる。これによりゾーンコートが可能といえる。
[比較例2]
水道水の蛇口に家庭・園芸用散水ノズルを取り付け、ノズルの高さがハニカム型構造体端面から150mm上方になるように設置した。ハニカム型構造体は、実施例1と同じものを用いた。
散水ノズルから着色水の粒子が1.5〜2mmとなるようにハニカム型構造体端面へ噴射した。噴射幅は前記ハニカム型構造体の幅を50mm超える程度で、ハニカム型構造体の送り速度がハニカム型構造体一個あたり約1秒となるように水平移動させ、ハニカム型構造体の開口端部全体に満遍なく粒子が降りかかるように、噴射した。含浸処理後のハニカム型構造体を通孔方向に切断すると、図7に示すように、約1秒間という短い時間であってもハニカム型構造体の通孔内全体が通孔方向にほぼ全て含浸していた。着色水の含水量は、噴射前後のハニカム型構造体重量を測定することにより求め、59.8cc(含水率92%)であった。このように、水系媒体を霧化せず、粒子の粒径が大きな場合は、ゾーンコートをするための前処理として、ハニカム型構造体の適当な位置で含浸処理を止める(制御する)事が困難であり、ゾーンコートに適さないことが分かる。
<評価>
実施例によれば、ハニカム型構造体に対して、水系媒体を霧状粒子として供給して含浸処理を施すので、極めて正確かつ容易に、ハニカム型構造体の通孔の深さ方向に凸状に水系媒体の含浸処理が施されている。そして、このハニカム型構造体を、触媒組成物スラリーでウォッシュコートしたので、正確かつ容易にハニカム型構造体の通孔の深さ方向に凸状に触媒を被覆する事ができた。
これに対して、比較例1では、水系媒体の含浸処理を施していないので、このようなハニカム型構造体に対して触媒組成物スラリーをウォッシュコートしても、通孔方向に異なる触媒量を被覆したハニカム構造型ゾーンコート触媒が得られていない。また、比較例2では、水系媒体の含浸処理を施したが、中心部と外周部とで含浸の程度が大差ないので、このようなハニカム型構造体に対して触媒組成物スラリーをウォッシュコートしても、通孔方向に異なる触媒量を被覆したハニカム構造型ゾーンコート触媒を得る事ができない。
本発明によってハニカム型構造体を部分含浸する工程初期の様子をあらわした模式図である。 本発明によってハニカム型構造体を部分含浸する工程中期の様子をあらわした模式図である。 本発明によってハニカム型構造体を部分含浸する工程が完了した様子をあらわした模式図である。 本発明の部分含浸処理において、通孔端面の一部をマスキングし、円錐形(漏斗形)のノズルで吸引した様子をあらわした模式図である。 本発明(実施例1)によってハニカム型構造体に水系媒体を部分含浸した後、中央で切断した面を示す写真である。 本発明(実施例2)によってハニカム型構造体に水系媒体を部分含浸した後、中央で切断した面を示す写真である。 従来法(比較例2)によってハニカム型構造体に水系媒体を含浸した後、中央で切断した面を示す写真である。 本発明によって触媒成分を部分含浸処理したハニカム構造型触媒を自動車に搭載した場合の説明図である。
符号の説明
1.ハニカム型構造体
2.霧状の水系媒体
3.保持部
4.ハニカム型構造体の上端を覆う本体容器
5.ハニカム型構造体の下端を覆う本体容器
6.触媒成分水溶液を部分含浸処理した部位

Claims (11)

  1. 多孔質無機酸化物を基質とするハニカム型構造体を含浸処理装置に装入した後、水系媒体を霧化して霧状粒子を生成させるとともに、該霧状粒子を含浸処理装置内で保持されたハニカム型構造体の一方の開口端面側へと供給しながら、霧状粒子を他方の端面側から雰囲気と共に吸引して、ハニカム型構造体の通孔内に誘導することにより、通孔内を水系媒体で含浸することを特徴とするハニカム型構造体の含浸方法。
  2. ハニカム型構造体は、開口端面が上下方向となるように含浸処理装置内に立てて保持されることを特徴とする請求項1記載のハニカム型構造体の含浸方法。
  3. 水系媒体の霧状粒子は、粒径が0.1mm以下であることを特徴とする請求項1記載のハニカム型構造体の含浸方法。
  4. 水系媒体の霧状粒子は、ハニカム型構造体に対して30〜200秒間供給されることを特徴とする請求項1記載のハニカム型構造体の含浸方法。
  5. 水系媒体は、貴金属化合物を含む触媒成分溶液であることを特徴とする請求項1記載のハニカム型構造体の含浸方法。
  6. 水系媒体は、ハニカム型構造体の総含水量に対して80%以下の割合で含浸されることを特徴とする請求項1記載のハニカム型構造体の含浸方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の方法により、通孔内が水系媒体で含浸処理されたハニカム型構造体。
  8. ハニカム型構造体は、その中央部が周辺部よりも通孔の深さ方向に長く水系媒体で含浸されていることを特徴とする請求項7記載のハニカム型構造体。
  9. 請求項7又は8記載のハニカム型構造体を用い、ウォッシュコート法で触媒組成物スラリーを被覆した後、乾燥・焼成することを特徴とするハニカム構造型触媒の製造方法。
  10. 触媒組成物で被覆されたハニカム構造型触媒を用い、このハニカム構造型触媒に請求項1〜6のいずれかに記載の方法で触媒成分溶液を部分的に含浸し、その後、乾燥・焼成することを特徴とするハニカム構造型触媒の製造方法。
  11. 請求項9または10記載の方法により製造され、触媒成分がハニカム型構造体の通孔方向に対して部分的に異なる量で担持されたハニカム構造型触媒。
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