以下、図面を参照して、本発明に係る運転支援装置の実施の形態を説明する。
本実施の形態では、本発明に係る運転支援装置を、路車間通信と車車間通信を行う車両に搭載される運転支援装置に適用する。本実施の形態に係る運転支援装置は、路車間通信機と車車間通信機が常時作動しており、路車間通信で受信したデータと車車間通信で受信したデータを状況に応じて使い分けることができる並列処理が可能なシステムである。本実施の形態に係る運転支援装置では、路車間通信で受信したデータと車車間通信で受信したデータから他車両の位置を特定するとともにGPSを利用して自車両の位置を特定し、他車両と自車両の関係に基づいて危険状態判定を行うとともに他車両の位置を表示する。そして、本実施の形態に係る運転支援装置では、特定した各車両位置や危険状態判定結果に基づいて、HMI[Human Machine Interface]としてディスプレイによる画面表示、スピーカによる音声出力、ブザーによる警告を行う。なお、本実施の形態では、道路上を走行する多数の車両に運転支援装置がそれぞれ搭載され、各車両において運転支援装置が作動している。
図1〜図6を参照して、本実施の形態に係る運転支援装置1について説明する。図1は、本実施の形態に係る運転支援装置の構成図である。図2は、片側一車線の場合の他車両がインフラ検知エリアから出るときの他車両の実際の位置推移と従来の運転支援装置における処理後の他車両の位置推移の一例である。図3は、片側一車線の場合の他車両がインフラ検知エリアから出るときの他車両の実際の位置推移と図1の運転支援装置における処理後の他車両の位置推移の一例である。図4は、片側一車線の場合の他車両がインフラ検知エリアに入るときの他車両の実際の位置推移と従来の運転支援装置における処理後の他車両の位置推移の一例である。図5は、片側二車線の場合の2台の他車両がインフラ検知エリアに入るときの他車両の実際の位置推移と従来の運転支援装置における処理後の他車両の位置推移の一例である。図6は、片側一車線の場合の他車両がインフラ検知エリアに入るときの他車両の実際の位置推移と図1の運転支援装置における処理後の他車両の位置推移の一例である。
運転支援装置1は、他車両の現在位置を特定する際に、基本的には、路車間通信でインフラデータを受信できるエリアではその受信したインフラデータを利用し、それ以外のエリアでは車車間通信で受信した車車間通信データを利用する。特に、運転支援装置1では、他車両についてのインフラデータと車車間通信データとが切り替わる際の車両位置の急激な変化を抑制するために、他車両がインフラ検知エリアを出るときにはインフラデータから車車間通信データへの切り替えを遅延させ、他車両がインフラ検知エリアに入るときには車車間通信データからインフラデータへ徐々に切り替える。
運転支援装置1は、路車間通信機10、車車間通信機11、GPS受信機12、地図データベース13、車速センサ14、ブレーキスイッチ15、ウインカスイッチ16、ディスプレイ20、スピーカ21、ブザー22、ECU[Electronic Control Unit]30を備えており、ECU30に通信制御部31、受信信号処理部32、位置データ処理部33、危険状態判定部34、HMI制御部35が構成される。
路車間通信機10は、路側の通信機(例えば、光ビーコン、電波ビーコン)と通信するための無線通信機である。路車間通信機10では、自車両が路車間通信エリア内に存在するときに、路車間通信用アンテナによって路側の通信機に対して自車両信号を送信するとともに、路側の通信機から路側信号を受信する。路車間通信機10は、ECU30によって受信制御され、受信した路側信号をECU30に出力する。また、路車間通信機10は、ECU30によって受信制御され、ECU30から自車両信号を入力する。
路車間通信で受信するデータには、VICS[Vehicle Information CommunicationSystem]情報とインフラデータなどがある。VICSデータは、道路交通情報であり、渋滞情報、交通規制情報、駐車場情報などがある。インフラデータは、他車両情報、インフラ検知エリア、道路情報、周辺情報などがある。他車両情報としては、インフラ検知手段で検知された他車両の各種情報であり、現在位置、車速、進行方向、加速度、車種、車両サイズ、ボディ色などがある。インフラ検知エリアは、インフラ検知手段で検知できるエリアであり、少なくともエリアの進入地点と退出地点の位置情報がある。道路情報としては、道路形状情報、車線情報、停止線情報、制限速度情報、車線毎の信号サイクル情報などがある。周辺情報としては、周辺の建物の情報、歩道橋の情報、立体交差の情報などがある。路車間通信で送信するデータには、車両の識別番号などがある。
路側の通信機は、交差点の手前などに設置される。この路側の通信機の設置位置や性能などに応じて、路車間通信エリアがそれぞれ設定される。この路車間通信エリア内に車両が存在する場合だけ、その車両に搭載される路車間通信機10と路側の通信機との間で通信が可能である。したがって、運転支援装置1では、他車両の情報として、路車間通信エリア内を走行中のときだけインフラデータも取得でき、路車間通信エリア以外を走行中のときには車車間通信データしか取得できない。ただし、他車両がインフラ検知エリア外の場合には、自車両が路車間通信エリア内でも他車両の情報を取得できない。
インフラ検知手段は、路側で車両を検知する手段であり、交差点に進入する車両などを検知する。インフラ検知手段としては、カメラと画像処理装置からなる手段、ミリ波レーダなどのレーダ検知手段、レーンマーカなどの道路内に組み込まれた手段などがある。インフラ検知手段で検知する情報としては、車両の現在位置、車速、進行方向、加速度、車種、車両サイズ、ボディ色などがある。インフラ検知手段では、車両の各種情報を検知すると、その各種情報を路側の通信機に送信する。なお、本実施の形態ではインフラ検知手段が特許請求の範囲に記載する路側の車両位置検知手段に相当する。
インフラ検知手段のインフラ検知エリアは、インフラ検知手段の設置位置や性能、インフラ検知エリアが設置される場所(交差点など)の周辺の建物などの状況に応じて、それぞれ設定される。インフラ検知エリアは、通常、道路上に設定され、交差点から所定距離離れた位置から交差点と道路との境界あるいは交差点内に多少侵入した位置まで設定される。しかし、道路構造の制約(立体交差、歩道橋、交差点直前での道路のカーブ形状など)、道路周辺の建物や看板などにより、インフラ検知エリアを交差点と道路との境界付近まで設定できない場合もある。
車車間通信機11は、車両同士で通信するための無線通信機である。車車間通信機11では、車車間用アンテナによって所定距離以内に存在する他車両に対して車車間信号を送信するとともに、所定距離以内に存在する他車両から車車間信号を受信する。車車間通信機11は、ECU30によって受信制御され、受信した車車間信号をECU30に出力する。また、車車間通信機11は、ECU30によって送信制御され、ECU30から車車間信号を入力する。
車車間通信で受信するデータは、他車両の現在位置、車速、進行方向、加速度、車種、車両サイズ、ボディ色などがある。車車間通信で送信するデータは、自車両の現在位置、車速、進行方向、加速度、車種、車両サイズ、ボディ色などがある。この車車間通信データにおける現在位置、車速、進行方向、加速度などは、車両側で検知した情報である。例えば、現在位置はGPS受信機12で検知した位置であり、車速は車速センサ14で検知した車速である。
なお、インフラデータでの車両位置と車車間通信データでの車両位置の位置精度とを比較すると、インフラデータでの車両位置の位置精度の方が高い。車車間通信データの車両位置はGPSを利用した位置のため、一般に、位置検知精度が低く、検知遅れなどもある。一方、インフラデータでの車両位置は画像処理やレーダを利用した位置のため、一般に、位置検知精度が高い。これは、インフラ検知手段自体の性能が良く、インフラ検知手段においてアルゴリズム最適化などによって検知誤差や検知遅れの改善なども行っているからである。
GPS受信機12は、GPSを利用して自車両の現在位置などを推定するための装備である。GPS受信機12では、一定時間毎に、GPSアンテナによってGPS衛星からのGPS信号を受信し、そのGPS信号を復調し、その復調された各GPS衛星の位置データに基づいて自車両の現在位置(緯度、経度)などを算出する。そして、GPS受信機12では、自車両の現在位置情報などをECU30に送信する。なお、本実施の形態では、GPS受信機12が特許請求の範囲に記載する車載の車両位置検知手段に相当する。車載の車両位置検知手段としては、ナビゲーションシステムでの現在位置検出などの他の手段でもよい。また、GPS受信機では主にGPS信号の受信処理だけを行い、GPS信号に基づく現在位置の算出処理をECUで行ってもよい。
地図データベース13は、運転支援装置1の記憶装置の所定の領域に構成される。地図データベース13には、道路形状情報、車線情報、交差点形状情報などが格納される。なお、地図データベース13の中に、路車間通信エリアやインフラ検知エリアの情報、周辺の建物の情報、歩道橋の情報、立体交差の情報なども格納されていてもよい。
車速センサ14は、車両の速度を検知するセンサである。車速センサ14では、一定時間毎に、車速を検知し、その検知した車速を車速信号としてECU30に送信する。ブレーキスイッチ15は、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれたか否か(ブレーキペダルのON/OFF)を検知するスイッチである。ブレーキスイッチ15では、一定時間毎に、ブレーキペダルのON/OFFをブレーキ信号としてECU30に送信する。ウインカスイッチ16は、運転者による方向指示(右方向指示ON、左方向指示ON、OFF)を入力するためのスイッチである。ウインカスイッチ16では、運転者のウインカ操作情報をウインカ信号としてECU30に送信する。これらの検知された情報は、危険状態判定に利用されたり、車車間通信データとして他車両に送信される。これら以外にも、車両の進行方向などの各種の情報が検知され、運転支援装置1で利用される。
ディスプレイ20は、ナビゲーションシステムなどと共用される車載ディスプレイあるいはメータのディスプレイである。ディスプレイ20では、ECU30からの画像信号を受信すると、その画像信号に示される画像を表示する。スピーカ21は、他のシステムと共用される車載スピーカである。スピーカ21では、ECU30から音声信号を受信すると、その音声信号に応じて音声を出力する。ブザー22は、危険状態を知らせる警報用のブザーである。ブザー22では、ECU30からブザー信号を受信すると、そのブザー信号に応じてブザー音を出力する。ディスプレイ20、スピーカ21、ブザー22は、運転支援装置1におけるHMIの手段として機能する。
ECU30は、CPU[Central ProcessingUnit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]などからなる電子制御ユニットであり、運転支援装置1を統括制御する。ECU30では、ROMに記憶されている運転支援装置1用のアプリケーションプログラムをRAMにロードして実行することにより通信制御部31、受信信号処理部32、位置データ処理部33、危険状態判定部34、HMI制御部35を構成する。
通信制御部31は、路車間通信機10による路車間通信及び車車間通信機11による車車間通信を制御する。通信制御部31では、自車両が路車間通信エリア以外に存在する場合には路車間通信機10をスタンバイ状態とし、自車両が路車間通信エリア内に存在する場合には路車間通信機10に対して路側信号の受信制御を行うとともに自車両信号の送信制御を行う。この際、通信制御部31では、自車両の識別番号などからなる自車両信号を生成する。また、通信制御部31では、車車間通信機11を常時作動状態とし、車車間通信機11に対して他車両からの車車間信号の受信制御を行うとともに自車両の車車間信号の送信制御を行う。この際、通信制御部31では、一定時間毎に検知した現在位置、車速、進行方向、加速度や予め保持している自車両の車種、車両サイズ、ボディ色などの情報からなる自車両の車車間信号を生成する。
受信信号処理部32は、路車間通信機10で受信した路側信号及び車車間通信機11で受信した車車間信号に対して、ECU30内で取り扱えるデータになるように各種加工処理を施す。例えば、データの単位の整合、データの検知時刻の整合がある。
位置データ処理部33は、路車間通信で受信したインフラデータに含まれる他車両の現在位置データ及び/又は車車間通信機11で受信した車車間通信データに含まれる他車両の現在位置データを利用し、他車両の予測現在位置を特定する。位置データ処理部33には、自車両が路車間通信エリア内を走行している場合の第1のメイン処理、自車両が路車間通信エリア外から路車間通信エリア内に進入する場合の第2のメイン処理、自車両が路車間通信エリア外を走行している場合の第3のメイン処理がある。
自車両が路車間通信エリア内を走行している場合の第1のメイン処理について説明する。自車両MVが路車間通信エリア内を走行している場合、路車間通信機10で路側信号を受信できるので、その路側信号に含まれるインフラデータを取得できる。このインフラデータに含まれるインフラ検知手段による検知車両の現在位置は上記したように高精度なので、通常(インフラ検知エリアが交差点と交差道路との境界付近までカバーされている場合)、このインフラデータの現在位置をそのまま他車両の予測現在位置として運転支援処理する。
しかし、道路構造の制約などによって、図2に示すように、インフラ検知エリアIAが交差点と交差道路との境界付近までカバーされていない場合がある。この場合、他車両が交差点に到達する前に他車両がインフラ検知エリアIAを退出するので、自車両MVでは、他車両がインフラ検知エリアIAを退出した後は車車間通信機11で受信した車車間信号の車車間通信データに含まれる他車両の現在位置しか取得できない。この車車間通信データに含まれる現在位置は、上記したように低精度である。そのため、図2に示すように、従来の運転支援装置のように車車間通信データに含まれる現在位置をそのまま他車両の予測現在位置OVPtとすると、この予測現在位置OVPtは実際の他車両の現在位置OVtに対して大きな誤差が発生する場合がある。なお、図中の符号における下付き文字のt,t−1は、時刻を示し、tが現時刻であり、t−1が前時刻である。
例えば、位置更新間隔を500m秒とし、他車両の車速を時速50kmとした場合、前時刻の位置更新タイミングでの他車両の現在位置OVt−1から現時刻の位置更新タイミングでの他車両の現在位置OVtの間で実際に約7m移動する。また、車車間通信データの現在位置の位置誤差が最大30mとした場合、車車間通信データをそのまま使用すると実際の現在位置に対して最大30mの誤差が発生する可能性がある。したがって、他車両がインフラ検知エリアIAを退出した直後の位置更新タイミングtで車車間通信データをそのまま使用すると、前時刻の位置更新タイミングt−1の予測現在位置OVPt−1から他車両の現在位置が最大30m+7m移動(車速換算で時速266km)する可能性があり、予測現在位置OVPtに大きな誤差が発生する。そのため、この予測現在位置OVPtを他車両の位置としてディスプレイに表示した場合、前時刻の車両位置から車両位置が一気に飛んだり、一気に車線変更したり、複数台の他車両が接近しているときには他車両の前後関係や左右関係が逆転したりする可能性がある。また、その予測現在位置OVPtを用いて危険状態判定(衝突予測判定など)を行った場合、車両位置判定、加速度判定や走行車線判定に異常をきたし、高精度な判定を行えない。
そこで、図3に示すように、インフラ検知エリアIAが交差点と交差道路との境界付近までカバーされていない場合、他車両がインフラ検知エリアIAを退出するときには、車車間通信データの現在位置をそのまま予想現在位置にするのではなく、交差点を通過するまで位置更新タイミング毎に、インフラ検知エリアIAを退出する直前のインフラデータの現在位置OVIt−1を初期値として、最新の車車間通信データの車速、進行方向、加速度を利用して予測現在位置OVPを順次算出する。
つまり、他車両がインフラ検知エリアIAを退出後の位置更新タイミング毎に予測現在位置OVPt,OVPt+1,・・・が、前回の位置更新タイミングでの車両位置と最新の車車間通信データに含まれる他車両の車速、進行方向、加速度からそれぞれ算出される。前回の位置更新タイミングでの車両位置は、初期値がインフラ検知エリアIAを退出する直前のインフラデータの現在位置OVIt−1であり、それ以降は前回の位置更新タイミングで算出された予測現在位置OVPt,OVPt+1,・・・である。これによって、図3に示すように、インフラ検知エリアIAを退出後も、実際の他車両の現在位置OVt,OVt+1,・・・に対して予測現在位置OVPt,OVPt+1,・・・の誤差が低減され、予測現在位置OVPの位置精度が高くなり、前回の予測現在位置からの変化も低減される。
具体的の処理としては、位置データ処理部33では、自車両が路車間通信エリア内の場合、最新の路車間通信データを取得する。そして、位置データ処理部33では、位置更新タイミング毎に、最新の路車間通信データに含まれるインフラデータから検知車両の現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力している。また、位置データ処理部33では、自車両が路車間通信エリア内の場合、インフラデータからインフラ検知エリアを取得する。そして、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアが交差点までカバーされているか否かを判定する。この際、インフラ検知エリアが交差点までカバーされている場合、位置データ処理部33では、継続して、インフラデータの検知車両の現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する。
インフラ検知エリアが交差点までカバーされていない場合、位置データ処理部33では、インフラデータから各検知車両の現在位置をそれぞれ取得する。そして、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの退出地点と各検知車両の現在位置に基づいて、インフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両が存在するか否かを判定する(つまり、インフラ検知エリアを退出する直前の他車両が存在するか否かを判定する)。インフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両が存在する場合、位置データ処理部33では、そのインフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両を位置修正処理対象の候補車両としてリストアップし、その候補車両のインフラデータを記憶する。
候補車両をリストアップすると、位置データ処理部33では、車車間通信によって受信できているインフラ検知エリア内の全ての他車両の車車間通信データを取得する。そして、位置データ処理部33では、記憶している候補車両のインフラデータと取得した車車間通信データとのマッチングをそれぞれ行い、インフラ検知エリアの退出しようとしている他車両のインフラデータに対応する車車間通信データを探索する。このマッチングでは、現在位置、車速、車種、車両サイズ、ボディ色などで車両の照合を行う。
マッチングした車車間通信データが見つかると、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの退出地点及び候補車両の現在位置に基づいて、候補車両がインフラ検知エリアを退出した直後か否かを判定する。候補車両がインフラ検知エリアを退出した直後の場合、位置データ処理部33では、その候補車両の退出直前のインフラデータの現在位置を記憶し、その候補車両を対象として退出時位置修正処理を行う。なお、インフラ検知エリアを既に退出している他車両やインフラ検知エリア外の他車両に対しては、退出時位置修正処理を行わない。
退出時位置修正処理に移行するすると、位置データ処理部33では、位置更新タイミング毎に以下の処理を行う。まず、位置データ処理部33では、対象の他車両(候補車両)についてのマッチングが取れている最新の車車間通信データを取得し、その車車間通信データの車速、進行方向、加速度を取得する。また、位置データ処理部33では、記憶している対象の他車両の前回の位置更新タイミングでの車両位置を取得する。
そして、位置データ処理部33では、車速、進行方向、加速度から前回の位置更新タイミングから今回の位置更新タイミングまでの前後方向の移動量及び横方向の移動量を算出し、その前後方向の移動量及び横方向の移動量を前回の位置更新タイミングでの車両位置に加味して今回の予測現在位置とする。前回の位置更新タイミングでの車両位置は、インフラ検知エリアを退出する直前のインフラデータの現在位置又は前回の位置更新タイミングの際に算出された予測現在位置である。
位置データ処理部33では、その算出した予測現在位置を記憶する。この記憶された予測現在位置が、次回の位置更新タイミングでの前回の位置更新タイミングでの車両位置となる。また、位置データ処理部33では、その算出した予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35へ出力する。
そして、位置データ処理部33では、その対象の他車両が対象の交差点を通過したか否かを判定する。その対象の他車両が対象の交差点を通過していない場合、位置データ処理部33では、次回の位置更新タイミングでの上記の処理を行う。その対象の他車両が対象の交差点を通過した場合、位置データ処理部33では、その対象の他車両について、位置更新タイミング毎に、最新で取得した車車間通信データに含まれる現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する。
自車両が路車間通信エリア外から路車間通信エリア内に進入する場合の第2のメイン処理について説明する。自車両MVが路車間通信エリア外を走行している場合、自車両MVでは、車車間通信機11により他車両の車車間信号しか受信できないので、その車車間信号の車車間通信データしか取得できない。この車車間通信データに含まれる他車両の現在位置は、上記したように低精度である。しかし、自車両MVが路車間通信エリア外から路車間通信エリア内に進入すると、路車間通信機10で路側信号も受信できるので、その路側信号の路車間通信データのインフラデータも取得できる。このインフラデータに含まれる検知車両の現在位置は、上記したように高精度である。したがって、図4に示すように、従来の運転支援装置のようにこのインフラデータに含まれる現在位置をそのまま他車両の予測現在位置OVPtとすると、前時刻の予測現在位置OVPt−1から現時刻の予測現在位置OVPtが大きく移動する場合がある。
例えば、位置更新間隔を500m秒とし、他車両の車速を時速50kmとした場合、上記したように一回の位置更新タイミングで他車両は実際に約7m移動する。また、車車間通信データの現在位置の位置誤差が最大30mとした場合、上記したように最大30mの誤差が発生する可能性がある。したがって、他車両がインフラ検知エリアIAに進入した直後の位置更新タイミングtでインフラデータを使用すると、予測現在位置OVPtは、他車両の実際の現在位置OVtに対して誤差は少ないが、前時刻での予測現在位置OVPt−1から最大30m+7m移動する可能性がある。
そのため、インフラデータの現在位置をそのまま使用した予測現在位置OVPtを他車両の位置としてディスプレイに表示した場合、図4に示すように、前時刻の予測現在位置OVPt−1から現時刻の予測現在位置OVPtまで一気に飛ぶが、実際には他車両の前時刻の位置OVt−1から現時刻の位置OVPtまでそれほど移動していない。また、図5に示すように、左右の各車線で2台の他車両が接近して走行しており、インフラデータの現在位置をそのまま使用した予測現在位置OVP1tと予測現在位置OVP2tを2台の他車両の位置としてディスプレイに表示した場合、左車線の他車両については前時刻の予測現在位置OVP2t−1から現時刻の予測現在位置OVP2tまで一気に飛んでいるが、右車線の他車両については前時刻の予測現在位置OVP1t−1から現時刻の予測現在位置OVP1tが実際の移動量と同程度であり、ディスプレイの表示上で左車線の他車両が右車線の他車両を一気に追い抜いてしまう。しかし、実際には、左車線の他車両の前時刻の位置OV2t−1は右車線の他車両の前時刻の位置OV1t−1より前方であり、元々、左車線の他車両が先行していた。このように、インフラデータの現在位置をそのまま使用した予測現在位置OVPtを他車両の位置としてディスプレイに表示した場合、車両位置が一気に飛んだり、一気に車線変更したり、複数台の他車両が接近しているときには、他車両の前後関係や左右関係が逆転したりする。
そこで、図6に示すように、他車両がインフラ検知エリアIAに進入するときには、インフラデータの現在位置をそのまま予想現在位置とするのではなく、運転者の視認可能地点LPまで、車車間通信データの現在位置とインフラデータの現在位置との位置ずれ量に応じて位置更新タイミング毎の位置修正量を算出し、その位置修正量をインフラデータの現在位置に加味して予測現在位置OVPを位置更新タイミング毎に算出する。運転者の視認可能地点LPは、自車両MVの運転者から直接視認できる範囲LAの端部の地点である。この視認可能地点LPより交差点側は運転者が他車両の位置を直接確認できるので、運転者の視認による車両位置とディスプレイ20上の車両位置とによって違和感を与えないように、この視認可能地点LPまでに位置修正を終了させ、他車両が視認可能地点LPを通過後はインフラデータの現在位置をそのまま使用する。逆に、この視認可能地点LPまでは運転者が他車両の位置を直接確認できないので、ディスプレイ20上の車両位置の大きな移動(位置飛び)によって運転者に違和感を与えないように、この視認可能地点LPまではインフラデータの現在位置に徐々に近づくように車両位置を位置修正する。なお、危険状態判定については、他車両がインフラ検知エリアIAに進入後、高精度なインフラデータの現在位置をそのまま使用する。
つまり、他車両がインフラ検知エリアIAを進入後に、位置修正量ΔDが、車車間通信データの現在位置とインフラデータの現在位置との位置ずれ量と位置修正回数(=他車両が視認可能地点LPに到達までに要する予想経過時間/位置更新間隔)に基づいて算出される。他車両の車速の変化が小さい場合には他車両がインフラ検知エリアIAに進入後に全ての位置更新タイミングについての位置修正量ΔDを一度に求めてもよいが、他車両の車速の変化が大きい場合には位置更新タイミング毎に位置修正量ΔDを求める必要がある。この位置修正量ΔDの絶対値は、他車両が視認可能地点LPに近づくにつれて徐々に小さくなり、他車両が視認可能地点LPが到達した時点あるいはそのその直前で0になるようにする。また、位置修正量ΔDは、車車間通信データの現在位置がインフラデータの現在位置より交差点寄りの場合にはプラス値であり、車車間通信データの現在位置がインフラデータの現在位置より交差点の遠方側の場合にはマイナス値である。そして、位置更新タイミング毎に、インフラデータの現在位置に位置修正量ΔDを加算し、その加算値を予想現在位置OVPとする。これによって、図6に示すように、他車両がインフラ検知エリアIAを進入後、実際の他車両の現在位置OVt,OVt+1,・・・(インフラデータの現在位置)に対して予測現在位置OVPt,OVPt+1,・・・(ディスプレイ20の上の車両位置)が徐々に近づき、視認可能地点LPで実際の他車両の現在位置OVt+3と予測現在位置OVPt+3が一致するようになる。
例えば、他車両がインフラ検知エリアIAに進入直後の車車間通信データの現在位置がインフラデータの現在位置より30m後方とし(進入地点で位置ずれ量が−30mであり)、インフラ検知エリアIAの進入地点から視認可能地点LPまでの他車両の予測経過時間が10秒であり、位置更新間隔を500m秒とする。この場合、位置ずれ量の−30mを20回(=10/0.5)の位置更新タイミングで修正する必要がある。したがって、―30mを初期値として、位置更新タイミング毎に前回値から1.5m(=30/20)を加算した値を位置修正量ΔDとする。例えば、他車両がインフラ検知エリアIAに進入後の1回目の位置修正の位置更新タイミングではΔD=−28.5m(=−30+1.5×1)であり(つまり、ディスプレイ20上の車両位置がインフラデータの現在位置より交差点より28.5m遠方側の位置となる)、7回目の位置修正の位置更新タイミングではΔD=−19.5m(=−30+1.5×7)であり、14回目の位置修正の位置更新タイミングではΔD=−9.0m(=−30+1.5×14)であり、20回の位置修正の位置更新タイミングではΔD=0.0m(=−30+1.5×20)である。
なお、位置修正量ΔDを求める方法としては、上記の例のように直線補間的な方法でもよいが、他の方法で求めてもよい。例えば、インフラ検知エリアIAの進入地点に近いほど(つまり、運転者から遠方ほど)位置修正量ΔDを大きな値とし、視認可能地点LPに近いほど(つまり、運転者から近方ほど)位置修正量ΔDを小さな値とする方法がある。
具体的の処理としては、位置データ処理部33では、自車両が路車間通信エリアに進入したか否かを判定する。自車両が路車間通信エリアに進入した場合、路車間通信が開始され、路車間通信データ(インフラデータ)の受信が開始され、危険状態判定などの運転支援処理も作動を開始する。そして、位置データ処理部33では、インフラデータからインフラ検知エリアを取得する。また、位置データ処理部33では、地図データベース13やインフラデータから対象の交差点周辺の各種情報を取得する。交差点周辺の各種情報としては、例えば、交差点周辺の建物(ビル)、看板や塀などの設置状況、インフラ検知エリアの道路のカーブ曲率、周辺の停止の車両(特に、大型車)の存在がある。そして、位置データ処理部33では、対象の交差点周辺の各種情報に基づいて、自車両の運転者のインフラ検知エリアにおける視認可能地点(交差点からの距離などで規定)を推測する。この際、交差点において全て見通せる場合や殆ど範囲を見通せる場合に備えて、視認可能地点として最大の規定地点を予め設定しておく。
次に、位置データ処理部33では、車車間通信によって受信できているインフラ検知エリア内の全ての他車両の車車間通信データを取得する。また、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの進入地点と各他車両の現在位置に基づいて、インフラ検知エリアの進入地点に近い他車両が存在するか否かを判定する(つまり、インフラ検知エリアを進入する直前の他車両が存在するか否かを判定する)。インフラ検知エリアの進入地点に近い他車両が存在する場合、位置データ処理部33では、そのインフラ検知エリアの進入地点に近い他車両を位置修正処理対象の候補車両としてリストアップする。
候補車両をリストアップすると、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの進入地点、候補車両の現在位置に基づいて、候補車両がインフラ検知エリアに進入した直後か否かを判定する。候補車両がインフラ検知エリアに進入直後の場合、位置データ処理部33では、その候補車両を対象として進入時位置修正処理を行う。なお、インフラ検知エリアに既に進入している他車両やインフラ検知エリアを通過後の他車両、インフラ検知エリア外の他車両に対しては、進入時位置修正処理を行わない。
退出時位置修正処理に移行するすると、位置データ処理部33では、対象の他車両(候補車両)の車車間通信データとインフラデータとのマッチングをそれぞれ行い、インフラ検知エリアに進入直後の他車両の車車間通信データに対応するインフラデータを探索する。
マッチングしたインフラデータが見つかると、位置データ処理部33では、その対象の他車両の車車間データの現在位置とインフラデータの現在位置との前後方向の位置ずれ量と横方向の位置ずれ量をそれぞれ算出する。また、位置データ処理部33では、インフラデータの現在位置と運転者の視認可能地点に基づいて、対象の他車両の現在位置から視認可能地点までの距離を算出する。そして、位置データ処理部33では、その算出した距離とインフラデータの車速に基づいて、対象の他車両が視認可能地点に到達するまでに要する予想経過時間を算出する。さらに、位置データ処理部33では、その算出した各方向の位置ずれ量と予想経過時間及び位置更新間隔に基づいて、各位置更新タイミングでの前後方向の位置修正量と横方向の位置修正量をそれぞれ算出する。ここでは、他車両がインフラ検知エリアに進入した直後に視認可能地点に他車両が到達するまでの全ての位置更新タイミングについての位置修正量を一度に求めるが、他車両の車速の変化が大きくなった場合には位置修正量を算出し直す。
位置更新タイミング毎に、位置データ処理部33では、最新のインフラデータの現在位置に前後方向の位置修正量と横方向の位置修正量を加算し、予想現在位置を算出する。位置データ処理部33では、その算出した予測現在位置をHMI制御部35へ出力する。ちなみに、危険状態判定部34には、インフラデータの現在位置がそのまま出力される。
位置データ処理部33では、その対象の他車両が運転者の視認可能地点に到達したか否かを判定する。その対象の他車両が運転者の視認可能地点に到達していない場合、位置データ処理部33では、次回の位置更新タイミングで上記の処理を行う。その対象の他車両が運転者の視認可能地点に到達後、位置データ処理部33では、その対象の他車両について、位置更新タイミング毎に、最新で取得したインフラデータに含まれる他車両の現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する。
自車両が路車間通信エリア外を走行している場合の第3のメイン処理について説明する。路車間通信エリア外を走行している場合、自車両では、車車間通信機11によって車車間信号しか受信できないので、他車両の情報としては車車間信号の車車間通信データしか取得できない。したがって、位置データ処理部33では、位置更新タイミング毎に、最新で取得した車車間通信データに含まれる他車両の現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する。
危険状態判定部34は、自車両と他車両との危険状態(例えば、衝突の可能性)を判定する。この危険状態の判定は、他車両との関係で危険性が高くなるエリアだけで行えばよく、例えば、交差点で行う。危険状態判定部34では、GPS受信機12から入力した自車両の現在位置と位置データ処理部33から入力した他車両の予測現在位置との位置関係に自車両及び他車両の車速、進行方向、加速度、ウインカ情報などを考慮して危険状態を判定する。この判定方法としては、どのような方法を適用してもよく、従来の方法を用いる。危険状態判定部34では、その判定結果をHMI制御部35に出力する。
HMI制御部35は、運転者に対して他車両の位置情報や他車両との関係で危険状態の情報をディスプレイ20、スピーカ21、ブザー22を用いて提供する。HMI制御部35では、位置データ処理部33から入力した各他車両の予測現在位置を自車両周辺の地図上に示した画像情報を生成し、その画像情報からなる画像信号をディスプレイ20に送信する。また、HMI制御部35では、危険状態判定部34から入力した危険状態の判定結果に基づいて、運転者に知らせる必要のある危険状態のレベルの場合にはその危険状態のレベルに応じて画像情報、音声情報、ブザー情報をそれぞれ生成し、その画像情報からなる画像信号をディスプレイ20に送信し、その音声情報からなる音声信号をスピーカ21に送信し、そのブザー情報からブザー信号をブザー22に送信する。
図1〜図6を参照して、運転支援装置1における動作について説明する。特に、ECU30における自車両が路車間通信エリア内を走行している場合の処理については図7及び図8のフローチャートに沿って説明し、ECU30における自車両が路車間通信エリア外から路車間通信エリア内に進入する場合の処理については図9及び図10のフローチャートに沿って説明する。図7は、図1のECUにおける第1のメイン処理の流れを示すフローチャートである。図8は、図1のECUにおける退出時位置修正処理の流れを示すフローチャートである。図9は、図1のECUにおける第2のメイン処理の流れを示すフローチャートである。図10は、図1のECUにおける進入時位置修正処理の流れを示すフローチャートである。
運転支援装置1が作動すると、路車間通信機10と車車間通信機11も作動する。路車間通信機10は、ECU30(通信制御部31)によって通信制御され、通常、スタンバイ状態であり、自車両が路車間通信エリアに進入すると路側の通信機に対して自車両信号を送信するとともに路側の通信機から路側信号を受信し、自車両が路車間通信エリアから退出するとスタンバイ状態になる。ECU30(受信信号処理部32)では、路側信号を入力し、路側信号から路車間通信データ(VICSデータ、インフラデータ)を取り出し、この各データに対して各種加工を施す。車車間通信機11は、ECU30(通信制御部31)によって通信制御され、所定距離以内に存在する他車両に対して車車間信号を送信するとともに、所定距離以内に存在する他車両から車車間信号を受信する。ECU30(受信信号処理部32)では、車車間信号を入力し、車車間信号から車車間通信データを取り出し、この各データに対して各種加工を施す。
また、GPS受信機12も作動する。GPS受信機12では、GPS衛星からのGPS信号を受信し、そのGPS信号に基づいて自車両の現在位置などを算出する。ECU30(受信信号処理部32)では、このGPS受信機12から自車両の現在位置情報などを入力する。また、車速センサ14では、車速を検知する。ブレーキスイッチ15では、ブレーキペダルのON/OFFを検知する。ウインカスイッチ16では、運転者によるウインカ操作を検知する。ECU30(受信信号処理部32)では、これらの車速情報、ブレーキペダルのON/OFF情報、ウインカ操作情報などを入力する。
自車両が路車間通信エリア内を走行中の場合について説明する。ECU30の位置データ処理部33では、自車両が路車間通信エリア内か否かを判定する(S10)。S10にて自車両が路車間通信エリア内でないと判定した場合、位置データ処理部33では、一定時間後にS10に戻って、再度、自車両が路車間通信エリア内か否かを判定する。
S10にて自車両が路車間通信エリア内と判定した場合、位置データ処理部33では、インフラデータからインフラ検知エリア(特に、退出地点)を取得する(S11)。そして、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアが交差点までカバーされているか否か(つまり、インフラ検知エリアの退出地点が交差点まで延びているか否か)を判定する(S12)。S12にてインフラ検知エリアが交差点までカバーされていると判定した場合、ECU30では、通常の処理として、最新のインフラデータの現在位置を使用して危険状態判定やHMI制御を行う(S21)。
S12にてインフラ検知エリアが交差点までカバーされていないと判定した場合、位置データ処理部33では、インフラデータからインフラ検知手段で検知された車両(検知車両)の現在位置を取得する(S13)。そして、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両が存在するか否かを判定する(S14)。S14にてインフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両が存在しないと判定した場合、位置データ処理部33では、一定時間後にS13に戻って、再度、最新のインフラデータから検知車両の現在位置を取得する。
S14にてインフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両が存在すると判定した場合、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの退出地点に近い検知車両を位置修正処理の候補車両としてリストアップする(S15)。位置データ処理部33では、インフラ検知エリア内に存在する全ての他車両についての最新の車車間通信データを取得する(S16)。そして、位置データ処理部33では、候補車両のインフラデータと取得した各他車両の車車間通信データとをそれぞれマッチングし、候補車両の車車間通信データを探索する(S17)。
位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの退出地点及び候補車両の現在位置に基づいて、候補車両がインフラ検知エリアを退出した直後か否かを判定する(S18)。S18にて候補車両がインフラ検知エリアを退出していないと判定した場合、位置データ処理部33では、一定時間後にS18に戻って、再度、候補車両がインフラ検知エリアを退出した直後か否かを判定する。
S18にて候補車両がインフラ検知エリアを退出した直後と判定した場合、位置データ処理部33では、その候補車両についてのインフラ検知エリアを退出する直前のインフラデータの現在位置を記憶し(S19)、その候補車両に対する退出時位置修正処理に移行する(S20)。
退出時位置修正処理に移行すると、位置データ処理部33では、位置更新タイミングか否かを判定する(S30)。S30にて位置更新タイミングでないと判定した場合、位置データ処理部33では、位置更新タイミングまで待つ。
S30にて位置更新タイミングと判定した場合、位置データ処理部33では、位置修正処理の対象の他車両(候補車両:車車間通信データとのマッチング済み)の最新の車車間通信データを取得する(S31)。そして、位置データ処理部33では、その車車間通信データから対象の他車両の車速、進行方向、加速度を取得する(S32)。また、位置データ処理部33では、対象の他車両の前回の車両位置(インフラ検知エリアを退出する直前のインフラデータの現在位置又は前回の位置更新タイミングの際に算出された予測現在位置)を取得する(S33)。
そして、位置データ処理部33では、取得した車速、進行方向、加速度及び前回の車両位置に基づいて、対象の他車両の今回の予測現在位置を算出する(S34)。さらに、位置データ処理部33では、その算出した予測現在位置を記憶する(S35)。また、位置データ処理部33では、その算出した予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する(S36、S37)。
位置データ処理部33では、その対象の他車両が対象の交差点を通過したか否かを判定する(S39)。S39にて対象の他車両が対象の交差点を通過していないと判定した場合、位置データ処理部33では、S30に戻って、次回の位置更新タイミングで上記の処理を行う。S39にて対象の他車両が対象の交差点を通過したと判定した場合、位置データ処理部33では、その対象の他車両について、位置更新タイミング毎に、最新で取得した車車間通信データの現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する(S40)。
自車両が路車間通信エリア外から路車間通信エリア内に進入する場合について説明する。位置データ処理部33では、自車両が路車間通信エリアに進入したか否かを判定する(S50)。S50にて自車両が路車間通信エリアに進入していないと判定した場合、位置データ処理部33では、一定時間後にS50に戻って、再度、自車両が路車間通信エリアに進入したか否かを判定する。
S50にて自車両が路車間通信エリアに進入したと判定した場合、路車間通信機10による路車間通信データ(インフラデータ)の受信が開始され、ECU30での運転支援処理の作動も開始される(S51)。
位置データ処理部33では、インフラデータからインフラ検知エリアを取得する(S52)。また、位置データ処理部33では、地図データベース13やインフラデータから対象の交差点付近の各種情報を取得する(S53)。そして、位置データ処理部33では、その交差点周辺の各種情報に基づいて、自車両の運転者のインフラ検知エリア内での視認可能地点を推測する(S54)。
位置データ処理部33では、インフラ検知エリア内の全ての他車両についての最新の車車間通信データを取得する(S55)。また、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの進入地点と各他車両の現在位置に基づいて、インフラ検知エリアの進入地点に近い他車両が存在するか否かを判定する(S56)。S56にてインフラ検知エリアの進入地点に近い他車両が存在しないと判定した場合、位置データ処理部33では、一定時間後にS55に戻って、再度、最新の車車間通信データを取得する。
S56にてインフラ検知エリアの進入地点に近い他車両が存在すると判定した場合、位置データ処理部33では、そのインフラ検知エリアの進入地点に近い他車両を位置修正処理の候補車両としてリストアップする(S57)。そして、位置データ処理部33では、インフラ検知エリアの進入地点及び候補車両の現在位置に基づいて、候補車両がインフラ検知エリアに進入した直後か否かを判定する(S58)。S58にて候補車両がインフラ検知エリアに進入していないと判定した場合、位置データ処理部33では、一定時間後にS55に戻って、再度、最新の車車間通信データを取得する。
S58にて候補車両がインフラ検知エリアに進入した直後と判定した場合、位置データ処理部33では、その候補車両に対する進入時位置修正処理に移行する(S59)。
進入時位置修正処理に移行すると、位置データ処理部33では、最新のインフラデータを取得する。そして、位置データ処理部33では、位置修正処理の対象の他車両(候補車両)の車車間通信データと取得したインフラデータとをそれぞれマッチングし、候補車両のインフラデータを探索する(S60)。
位置データ処理部33では、対象の他車両についての車車間通信データの現在位置とインフラデータの現在位置との位置ずれ量を算出する(S61)。また、位置データ処理部33では、インフラデータの現在位置と運転者の視認可能地点に基づいて対象の他車両の現在位置から視認可能地点までの距離を算出し、この距離とインフラデータの車速に基づいて対象の他車両が視認可能地点に到達するまでに要する予想経過時間を算出する(S62)。そして、位置データ処理部33では、位置ずれ量と予想経過時間及び位置更新間隔に基づいて各位置更新タイミングでの位置修正量を算出する(S63)。なお、S61〜S63の処理については、対象の他車両がインフラ検知エリアに進入直後の最初の位置更新タイミングでは必ず行い、それ以外の位置更新タイミングでは対象の他車両の車速の変化が大きくなったときに行う。
位置データ処理部33では、新たなインフラデータを受信したか否かを判定する(S64)。S64にて新たなインフラデータを受信していないと判定した場合、位置データ処理部33では、新たなインフラデータを受信するまで待つ。S64にて新たなインフラデータを受信したと判定した場合、位置データ処理部33では、位置更新タイミングか否かを判定する(S65)。S65にて位置更新タイミングでないと判定した場合、位置データ処理部33では、位置更新タイミングまで待つ。
S65にて位置更新タイミングと判定した場合、位置データ処理部33では、インフラデータの現在位置に算出した位置修正量を加算し、予想現在位置を算出する(S66)。そして、位置データ処理部33では、その対象の他車両についての最新のインフラデータの現在位置を危険状態判定部34に出力するとともに(S67)、その算出した予測現在位置をHMI制御部35に出力する(S68)。
位置データ処理部33では、その対象の他車両が運転者の視認可能地点に到達したか否かを判定する(S69)。S69にて対象の他車両が運転者の視認可能地点に到達していないと判定した場合、位置データ処理部33では、S61に戻って、上記の処理を行う。S69にて対象の他車両が運転者の視認可能地点に到達したと判定した場合、位置データ処理部33では、その対象の他車両について、位置更新タイミング毎に、最新で取得したインフラデータの現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する(S70)。
自車両が路車間通信エリア外を走行している場合について説明する。位置データ処理部33では、位置更新タイミング毎に、最新で取得した車車間通信データの現在位置を他車両の予測現在位置として設定し、その予測現在位置を危険状態判定部34及びHMI制御部35に出力する。
危険状態判定部34では、GPS受信機12からの自車両の現在位置を取得するとともに、センサなどから自車両の車速や進行方向などの他の情報を取得する。また、危険状態判定部34では、位置データ処理部33からの他車両の予測現在位置を取得するとともに、インフラデータあるいは車車間通信データから他車両の車速や進行方向などの他の情報を取得する。そして、危険状態判定部34では、自車両の現在位置と他車両の予測現在位置との位置関係及び自車両と他車両の他の情報に基づいて危険状態を判定し、その判定結果をHMI制御部35に出力する。
HMI制御部35では、位置データ処理部33からの他車両の予測現在位置を取得するとともに、危険状態判定部34からの危険状態の判定結果を取得する。HMI制御部35では、各他車両の予測現在位置を自車両周辺の地図上に示した画像情報を生成し、その画像情報からなる画像信号をディスプレイ20に送信する。この画像信号を受信すると、ディスプレイ20では、画像信号に基づいて他車両の車両位置を示す周辺地図を表示する。また、HMI制御部35では、危険状態の判定結果に基づいて、運転者に知らせる必要のある危険状態のレベルの場合にはその危険状態のレベルに応じて画像情報、音声情報、ブザー情報をそれぞれ生成し、その画像信号をディスプレイ20に送信し、その音声信号をスピーカ21に送信し、そのブザー信号をブザー22に送信する。この画像信号を受信すると、ディスプレイ20では、画像信号に基づいて他車両との関係で危険状態を知らせる画像を表示する。また、この音声信号を受信すると、スピーカ21では、音声信号に基づいて他車両との関係で危険状態を知らせる音声を出力する。このブザー信号を受信すると、ブザー22では、このブザー信号に基づいてブザー音を出力する。
この運転支援装置1によれば、高精度のインフラデータの車両位置と低精度の車車間通信データの車両位置とを切り替えの際(他車両がインフラ検知エリアを進入あるいは退出するとき)に位置修正処理を行うことにより、切り替え時の車両位置の変化を抑制でき、高精度な運転支援を行うことができる。特に、ディスプレイにおいて車両位置を表示する場合、車両位置が急激に移動するようなことがないので、運転者に違和感やシステムに対する不信感を与えない。
特に、運転支援装置1によれば、他車両がインフラ検知エリアから退出したときに退出直前のインフラデータの車両位置に基づいて車両位置を修正することにより、高精度かつ位置変化を抑えた車両位置を求めることができる。これによって、道路構造などの物理的な制約によりインフラ検知手段で交差点まで他車両を検知できない場合でも、他車両がインフラ検知エリアを退出した後も交差点まで精度の高い車両位置によりインフラデータ並みの適切な運転支援を行うことができる。また、交差点に進入する他車両の車両位置がインフラ検知エリアを退出したときに一気に飛ぶようなことがなく、複数の他車両が混在する場合に他車両の前後位置関係や左右位置関係が急激に逆転するようなことがなくなる。したがって、ディスプレイ20における他車両の位置の表示において、運転者に違和感やシステムへの不信感を与えない。また、危険状態判定において、自車両と他車両との位置関係が適切になり、判定精度が高くなる。さらに、交差点近傍のビルや高架道路などによってGPSによる位置精度が低下する場合でも、車車間通信データの位置精度に関係なく、精度の良い車両位置を求めることができる。
また、運転支援装置1によれば、他車両がインフラ検知エリアに進入したときに運転者の視認可能地点まで車車間通信データとインフラデータとの位置ずれ量に基づいて車両位置を徐々に修正することにより、車両位置変化を抑えた車両位置を求めることができる。これによって、インフラ検知エリアの進入地点付近で他車両の車両位置が一気に飛ぶようなことがなく、複数の他車両が混在する場合に他車両の前後位置関係や左右位置関係が急激に逆転するようなことがなくなる。したがって、ディスプレイ20における他車両の位置の表示において、運転者に違和感やシステムへの不信感を与えない。また、運転者が直接視認できない区間で位置修正を行い、直接視認できる地点以降でインフラデータの車両位置にするので、運転者の視認とディスプレイ20上での車両位置との比較による違和感を与えない。
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
例えば、本実施の形態では車車間通信と路車間通信の両方を行う運転支援装置に適用したが、路車間通信だけを行う運転支援装置にも適用可能である。
また、本実施の形態では運転支援としては他車両の車両位置の表示及び危険状態判定に基づく運転者へのHMI制御を行う構成としたが、運転支援としては他の支援を行うものでもよい。また、音声や表示によるHMI制御を行う構成としたが、自動ブレーキなどの車両側の制御を行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では他車両の位置を修正する場合に適用したが、自車両の位置を修正する場合にも適用できる。
また、本実施の形態では他車両がインフラ検知エリア内からエリア外に出るときの退出時の位置修正と他車両がインフラ検知エリア外からエリア内に入るときの進入時の位置修正の両方を行う構成としたが、どちらか一方だけを行う構成としてもよい。
また、本実施の形態では他車両がインフラ検知エリア内からエリア外に出るときにインフラデータの現在位置を初期値として車車間通信データの車速などを利用して車両位置を順次修正してゆくことにより切り替えのタイミングを遅延させる構成としたが、切り替えのタイミングを遅延させる方法としては他の方法でもよい。
また、本実施の形態では他車両がインフラ検知エリア外からエリア内に入るときにインフラデータの現在位置と車車間通信データの現在位置との位置ずれ量が徐々に小さくなるように車両位置を順次修正してゆくことによりインフラデータの車両位置に徐々に切り替える構成としたが、インフラデータの車両位置に徐々に切り替える方法としては他の方法でもよい。
1…運転支援装置、10…路車間通信機、11…車車間通信機、12…GPS受信機、13…地図データベース、14…車速センサ、15…ブレーキスイッチ、16…ウインカスイッチ、20…ディスプレイ、21…スピーカ、22…ブザー、30…ECU、31…通信制御部、32…受信信号処理部、33…位置データ処理部、34…危険状態判定部、35…HMI制御部