本発明の実施の一形態について、図1ないし図10に基づいて説明する。本実施の形態は、レストランの客席エリアに設置された各テーブルに備え付けられているメニューシートへの適用例である。
図1は、情報配信システム101の概要を示す模式図である。レストラン102の内部は、客が飲食を楽しむ客席エリア103、接客係などの従業員が出入り可能なバックヤード104、調理担当者が調理を行う厨房(図示せず)などの複数のエリアに仕切られている。客席エリア103には、メニューシート105と無線アクセスポイント107とが配置されている。バックヤード104には、情報送信装置としてのコンピュータ106が配置されている。コンピュータ106と無線アクセスポイント107とは、レストラン102内に配設されたLANネットワーク108によってネットワーク接続されている。これらのメニューシート105と、コンピュータ106と、無線アクセスポイント107とは、情報配信システム101を構成している。
客席エリア103には、客が飲食を楽しむための複数のテーブル109が設置されている。各テーブル109には、メニューシート105が備え付けられている。本実施の形態のメニューシート105は、基礎シート113(図2及び図3参照)に、情報表示部としての電子ペーパー118と、受信部としてのアンテナ156(図9参照)と、制御部としてのマイクロコンピュータ150(図9参照)とが取り付けられて構成されている。
コンピュータ106は、バックヤード104に設置されている。このコンピュータ106は、キーボードやポインティングデバイス等の入力デバイス111や、ディスプレイ等の出力デバイス112を備えて構成されている一般的なものである。このコンピュータ106にはハードディスク(図示せず)も備わっている。ハードディスクにはオペーレーティングシステム(OS)や各種のドライバプログラム、アプリケーションプログラムがインストールされており、これらの各種プログラムに従った処理がコンピュータ106上で実現される。ハードディスクにインストールされているアプリケーションプログラムには、電子ペーパー118に表示する表示データをコンピュータ106上で作成する機能や、電子ペーパー118に表示される表示内容を遠隔的に操作するための制御命令を送信する機能や、表示データや制御命令を無線アクセスポイント107を通じてメニューシート105に向けて配信する機能をコンピュータ106に実現させるためのプログラムが含まれている。このようなプログラムによって、コンピュータ106上で表示データが作成され、この作成された表示データや電子ペーパー118に対する制御命令がLANネットワーク108を介して無線アクセスポイント107に送信される。
無線アクセスポイント107は、客席エリア103に設置される。無線アクセスポイント107は、コンピュータ106から送信された表示データや制御命令を受信すると、無線信号に変換して出力する。メニューシート105に備わるアンテナ156でこの無線信号が受信されると、メニューシート105の電子ペーパー118では、無線信号の基礎となった表示データが表示されたり、無線信号の基礎となった制御命令に基づいた表示の制御が行われたりする。
図2は、メニューシート105の外観斜視図である。図3は、メニューシート105の平面図である。メニューシート105は、矩形形状の基礎シート113を基本とする。基礎シート113の材質としては、例えば、軟質ビニル等の合成樹脂を採用することができる。この基礎シート113の一方の面には、レストラン102で客に提供される各種のメニュー114や、メニュー114以外の装飾115などの固定情報116が印刷等によって固定的に記載されている。図2及び図3では、メニュー114として料理(もしくは飲み物)の写真や名称、提供価格が記載され、装飾115として「Menu」という見出しの文字列が記載されている。このようなメニュー114や装飾115は、客が注文品目を決定するために参考とするメニュー面117を構成する。
基礎シート113のメニュー面117となる面には、情報表示部としての電子ペーパー118が取り付けられている。電子ペーパー118は、薄型平板形状の表示装置であり、マイクロコンピュータ150の制御によって、記憶部としてのRAM153(図9参照)に記憶されている表示データに基づいた表示を行う。この電子ペーパー118は、表示データに基づく表示がなされる情報表示面119をメニュー面117と同じ向きに向けた状態で、基礎シート113に取り付けられている。本実施の形態のメニューシート105において重要なのは、マイクロコンピュータ150の制御によって、コンピュータ106から送信された表示データがアンテナ156(図9参照)で受信されるとRAM153(図9参照)に記憶され、このRAM153に記憶されている表示データが電子ペーパー118の情報表示面119(図2及び図3参照)に電気的な制御によって可変情報120として表示され、基礎シート113に固定的に記載されているメニュー114等の情報とともに客の目に留まるという点である。つまり、電子ペーパー118の情報表示面119に表れる可変情報120は、メニューシート105に固定的に記載されている固定情報116(メニュー114や装飾115など)とともにメニュー面117の構成要素となり、客が注文商品を決定する際の参考となる。図2及び図3では、メニューシート105の基礎シート113において、可変情報120として、日毎に変わる「本日のランチ」に関する情報が記載されている。
図4は、電子ペーパー118を情報表示面119側から見た外観斜視図である。図5は、電子ペーパー118を情報表示面119とは反対の側から見た外観斜視図である。本実施の形態のメニューシート105に取り付けられている電子ペーパー118は、マイクロカプセル型電気泳動方式のものである。マイクロカプセル型電気泳動方式の電子ペーパー118は、情報表示面119側から見て保護層をなす透明のプラスチック基板、透明電極、マイクロカプセル層、TFT(薄膜トランジスタ)層、背面基板の順に積層して構成されているペーパー部118aを主体に構成されている。マイクロカプセル層には、プラスに帯電した白い粒子(例えば、酸化チタン粒子)とマイナスに帯電した黒い粒子(例えば、カーボンブラック粒子)とが収められた球形状のマイクロカプセルが層をなして敷き詰められている。TFT層には、互いに直交する二方向に格子状に導線が張り巡られ、その交点にアクティブ素子が配置されている。電子ペーパー118には、コネクタ122を有する接続コード121が取り付けられており、制御部としてのマイクロコンピュータ150(図9参照)に接続できるようになっている。そして、マイクロコンピュータ150と電子ペーパー118とが接続された状態では、マイクロコンピュータ150で行われる処理によって、透明電極とTFT層との間に電圧を発生させることができる。このとき、電圧プラス側には黒い粒子が、電圧マイナス側には白い粒子が引き寄せられる。すなわち、マイクロコンピュータ150で行う処理によって、情報表示面119の表示画像を構成する所望のドットに対応するアクティブ素子を制御して、その位置にあるマイクロカプセルの情報表示面119側の球面を黒色にすることができる。
なお、本実施の形態のメニューシート105には、マイクロカプセル型電気泳動方式の電子ペーパーの他、電子粉流体方式、液晶方式、エレクトロウェッティング方式をはじめ、さまざまな種類の電子ペーパーを採用することができる。また、電子ペーパーに限らず、全体の厚みが薄く、柔軟性を有し、消費電力が少ない表示装置を採用することも可能である。
図6は、基礎シート113に対する電子ペーパー118の取り付け方の一例を示す説明図である。図6に示す例では、電子ペーパー118のペーパー部118aの裏面(情報表示面119とは反対側の面)には、アンテナ156(図9参照)やマイクロコンピュータ150(図9参照)やバッテリ(図示せず)が収納された電子ペーパー118と同じ大きさを有する制御ユニット118bが取り付けられている。そして、基礎シート113のメニュー面117をなす面には、制御ユニット118b、ペーパー部118aがこの順に積層されて、例えば接着剤によって取り付けられている。
図7は、基礎シート113に対する電子ペーパー118の取り付け方の別の一例を示す説明図である。図7に示すように、基礎シート113のメニュー面117をなす面に電子ペーパー118と同じ大きさの凹部を設け、この凹部に、裏面に制御ユニット118bを取り付けた電子ペーパー118を嵌め込むこともできる。この場合、図7に示すように、基礎シート113のメニュー面117をなす面と電子ペーパー118の情報表示面119とが面一になることが望ましい。
図8は、基礎シート113に対する電子ペーパー118の取り付け方のさらに別の一例を示す説明図である。図8に示すように、電子ペーパー118のペーパー部118aに重ねることなく、制御ユニット118bを基礎シート113に埋めこんでも良い。なお、制御ユニット118bを基礎シート113に埋め込むことなく、基礎シート113の表面に露出するように配置してもよい。いずれにしても、図8に示すような取り付け方によれば、図6及び図7に示す例よりも基礎シート113の厚さを薄くすることができる。
さらには、図6ないし図8のいずれに示す例においても、基礎シート113のメニュー面117をなす面と電子ペーパー118の情報表示面119とに透明保護シート(図示せず)を重ねることにより、電子ペーパー118を保護するようにしても良い。
図9は、メニューシート105の各部の電気的構成を示すブロック図である。メニューシート105は、マイクロコンピュータ150を備えている。マイクロコンピュータ150は、CPU151と、ROM152と、RAM153とを備えて構成される。CPU151は、演算処理を実行する。ROM152には、各種のプログラムを含むデータが予め格納されている。ROM152に格納されているプログラムには、図10に基づいて後述する処理をCPU151に実行させるためのプログラムも含まれている。RAM153は、可変的なデータを書き換え自在に記憶し、CPU151のワークエリアとして機能する。また、RAM153は、バッテリ(図示せず)によりバックアップされている不揮発性メモリである。このRAM153は、電子ペーパー118の情報表示面119に表示される表示データを複数記憶可能なメモリ容量を備えており、表示データを記憶する記憶部として機能する。
マイクロコンピュータ150は、電子ペーパー118のペーパー部118a、アンテナ156、タイマ回路157のそれぞれと接続コード121を介して接続している。そして、マイクロコンピュータ150とこれらの各部の間には、入出力回路(図示せず)も介在している。アンテナ156は、一例として、制御ユニット118bに収納可能な形状に巻回されたコイルである。このアンテナ156で受信された無線アクセスポイント107からの無線信号は、入出力回路(図示せず)を介して、マイクロコンピュータ150に入力される。すなわち、アンテナ156とマイクロコンピュータ150と相俟って受信部として機能する。タイマ回路157では計時が行われており、CPU151が図10に基づいて後述する処理において電子ペーパー118の情報表示面119に表示する表示データを切り替えるタイミングをとるために用いられる。なお、マイクロコンピュータ150とペーパー部118a等の各部との接続は、バス接続でもよい。
図10は、CPU151が実行する処理の流れを示すフローチャートである。CPU151は、バッテリ(図示せず)による電源供給を受けている間、ROM152に格納されているプログラムの記述に従って処理を実行し、アンテナ156に無線信号が入力されたかどうかを判定している(ステップS101)。
無線信号の入力を判定した場合(ステップS101のY)、CPU151は、入力された無線信号を復元する(ステップS102)。なお、この復元に必要なデータ及び処理内容は、上記のプログラムに含まれている。
続く処理として、CPU151は、復元した無線信号の内容を判定する(ステップS103)。復元した内容が電子ペーパー118に表示させるべき表示データであると判定した場合(ステップS103のY)、CPU151は、この表示データをRAM153に記憶し(ステップS104)、処理をステップS101に戻す。このステップS104において、CPU151は、表示データをRAM153に記憶するとともに、表示データに基づく表示内容を電子ペーパー118に表示するよう電子ペーパー118を制御してもよい。
一方、復元した内容がCPU151のすべき処理内容を示す制御命令であると判定した場合(ステップS103のN、ステップS106のY)、CPU151は、この制御命令に応じた処理を実行し(ステップS107)、処理をステップS101に戻す。CPU151が制御命令に応じて行う処理としては、一例として、CPU151がRAM153に記憶されている表示データを消去する処理、CPU151がRAM153に記憶されている複数の表示データを順次切り替えて表示する際の時間間隔を変更する処理が含まれている。このような各処理は、ROM152に記憶されているプログラムに含まれており、予め制御命令と対応付けられている。そして、CPU151は、制御命令の入力を判定すると、この制御命令に応じた各処理を実行する。
なお、復元した内容が表示データでも制御命令でもない場合(ステップS103のN、ステップS106のN)、CPU151は、情報表示面119にエラー表示を行うよう電子ペーパー118を制御するエラー処理を実行し(ステップS108)、処理をステップS101に戻す。
図10に基づいて述べた上記の処理の他に、CPU151は、ROM152に記憶されているプログラムの記述に基づき、RAM153に記憶されている表示データを情報表示面119に表示するよう電子ペーパー118を制御する処理を実行する。この処理の中で、CPU151は、タイマ回路157による計時に基づき、RAM153に記憶されている複数の表示データを所定の時間間隔で電子ペーパー118に順次切り替えて表示する。
以上のように、マイクロコンピュータ150は、アンテナ156が受信した表示データをRAM153に記憶する処理と、電子ペーパー118を制御してRAM153に記憶されている表示データを情報表示面119に表示する処理と、を行う。
本実施の形態の情報配信システム101が導入されているレストラン102では、接客係をはじめとした従業員は、バックヤード104に設置されたコンピュータ106を用いて、客に伝えたいコンテンツを示す表示データを作成することができる。このようなコンテンツとしては、例えば、日替わりメニュー、本日のお勧め料理の紹介、客に提供する料理の原材料の産地情報、レストラン102で行われるイベントの案内、各種の広告、レストラン102のWebサイトのURL、このURLの二次元コード、店長からお客様に向けての感謝のメッセージなど、さまざまなものが考えられる。この表示データの作成は、コンピュータ106にインストールされたプログラムによって実現される。
客に伝えたいコンテンツを示す表示データを作成した後、従業員は、コンピュータ106を操作して作成した表示データを配信する。この配信操作は、コンピュータ106にインストールされたプログラムによって実現される。配信操作によって、表示データは、コンピュータ106からLANネットワーク108を介して無線アクセスポイント107に向けて送信され、この無線アクセスポイント107で無線信号に変換されて出力される。
メニューシート105に備わるアンテナ156に到達した無線信号は、マイクロコンピュータ150が行う処理によって復元される。復元した無線信号が表示データである場合、この表示データはRAM153に記憶された後、電子ペーパー118の情報表示面119に表示される。情報表示面119に表示された表示データは、メニューシート105のメニュー面117上の固定情報116(メニュー114や装飾115など)とともに、このメニューシート105を眺める客の目に留まることになる。
また、従業員は、このコンピュータ106を操作して、電子ペーパー118を制御するための制御命令を配信することができる。配信操作によって、制御命令は、コンピュータ106からLANネットワーク108を介して無線アクセスポイント107に向けて送信され、無線信号に変換されて出力される。出力された無線信号は、メニューシート105に備わるアンテナ156に到達すると、マイクロコンピュータ150が行う処理によって復元される。マイクロコンピュータ150は、復元した制御命令に対応する処理を行う。
例えば、従業員がコンピュータ106を用いて「★ 本日のランチ★ A:ひれかつ定食 B:エビフライ定食 C:焼き魚定食」というテキストを示す表示データを作成して配信した場合、電子ペーパー118の情報表示面119には、図2及び図3に示すように、「★ 本日のランチ★ A:ひれかつ定食 B:エビフライ定食 C:焼き魚定食」という表示がなされる。この表示は、メニュー114や装飾115とともに客の目に留まることになる。そのため、客は、基礎シート113に固定的に記載されている通常のメニュー114の他にも、このような「本日のランチ」などの日替わりの情報を参考にして、注文したいメニューを決定することができる。
このように、本実施の形態のメニューシート105によれば、客が注文品目を決めるために眺めるメニューシート105のメニュー面117には、コンピュータ106から送信される表示データが表示されるので、メニューシート105を客にとって取り扱いやすいものにしつつ、メニューシート105を通じてより多くの新しい情報を客に伝えることができる。
さらに、本実施の形態のメニューシート105では、日替わりメニューなどの可変情報を客に伝えるための手段として、電子ペーパー118が取り付けられている。そのため、客は、メニューシート105を手にとってもその重さを負担に感じることなく、注文品目を決めることができる。また、電子ペーパー118では、表示内容を維持している間に消費される電力が少なくバッテリーを交換する回数が少ないため、店舗にとってメニューシート105の保守管理が負担にならない。
なお、本実施の形態では、矩形形状の一枚の基礎シート113に電子ペーパー118が取り付けられたメニューシート105について説明したが、別の実施形態として、図11に示すように、メニューシート105を基礎シート113の側辺にカバーシート123を取り付けてメニュー面117を開閉することができるようにしてもよい。さらに別の実施の形態として、図12に示すように、基礎シート113を冊子の間に挟んでメニューブックを構成してもよい。また、図13に示すように、基礎シート113の全面を占める大きさの電子ペーパー118を基礎シート113に取り付けてメニューシート105を構成してもよい。
105…メニューシート、106…コンピュータ(情報送信装置)、113…基礎シート、114…メニュー、117…メニュー面、118…電子ペーパー(情報表示部)、150…マイクロコンピュータ(制御部)、153…RAM(記憶部)、156…アンテナ(受信部)