本発明は、自動車等に搭載される内燃機関(以下「エンジン」とする。)の燃費の計測に際し、レーザ光を用いたガス分析装置を用いることで、高速応答性をもって計測されるエンジン排気ガス中の各成分の濃度(ガス濃度)に基づき、燃費の瞬時的な計測を可能とするものである。そして、燃費の計測に際し、排気ガスについてのガス濃度、および排気ガス中の各成分の密度とともに必要なファクターである排気ガスの流量を、吸入空気流量(吸入空気質量流量)と、前記ガス分析装置によって計測されるガス濃度が用いられて算出される空燃比とを用いて算出しようとするものである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本明細書において、「燃費」とは、単位時間当たりに消費される燃料の質量である。したがって、以下に説明する実施の形態では、燃費の単位として、1秒当たりに消費される燃料の質量[g/sec]を用いる。
図1に示すように、本実施形態において、燃費の計測が行われるエンジン1は、シリンダブロックにおいて形成されるシリンダ2を備える。本実施形態のエンジン1は、直列4気筒エンジンであり、4つのシリンダ2を備える(図1では一つのみ図示)。シリンダ2内には、ピストン3が摺動可能に内装される。ピストン3は、コンロッド4を介してクランク軸15に連結される。シリンダ2内におけるピストン3の上方には、燃焼室5が形成される。燃焼室5は、シリンダ2におけるピストン3よりも上方の空間が、シリンダブロックに取り付けられるシリンダヘッド等により区画されることで形成される。
燃焼室5に対しては、吸気ポート6および排気ポート7が連通する。吸気ポート6および排気ポート7は、シリンダヘッド内において形成される。吸気ポート6は、吸気通路8に接続される。吸気通路8は、各シリンダ2に対する分岐管を有しシリンダヘッドに取り付けられる吸気マニホールドにより構成される。排気ポート7は、排気通路9に接続される。排気通路9は、各シリンダ2に対する分岐管を有しシリンダヘッドに取り付けられる排気マニホールドにより構成される。
吸気ポート6と燃焼室5との間には、吸気ポート6の燃焼室5に対する開閉を行う吸気バルブ11が設けられている。排気ポート7と燃焼室5との間には、排気ポート7の燃焼室5に対する開閉を行う排気バルブ12が設けられている。吸気バルブ11に対しては、エンジン1におけるバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構(VVT(Variable Valve Timing)機構)13が設けられている。可変バルブタイミング機構13は、吸気バルブ11を作動させるカム(吸気カム)を有するカム軸(図示略)に設けられる。可変バルブタイミング機構13は、吸気バルブ11のバルブタイミングを可変とする。
なお、本実施形態では、エンジン1は、可変バルブタイミング機構として、吸気バルブ11についてのバルブタイミングを変化させる可変バルブタイミング機構13を備える構成であるが、これに限定されるものではない。すなわち、エンジン1は、排気バルブ12についての可変バルブタイミング機構を備える構成であってもよい。また、エンジン1が備える可変バルブタイミング機構は、吸気バルブ11または排気バルブ12のバルブリフト量を可変とする機能を有するものであってもよい。
また、図示は省略するが、エンジン1においては、燃焼室5に対して、燃焼室5内に燃料を噴射するインジェクタや、燃焼室5内の混合気に点火するための点火プラグ等が設けられる。
また、エンジン1においては、クランク軸15の近傍に、回転センサ16が設けられる。回転センサ16は、クランク軸15の回転角度(クランク角)およびクランク軸15の回転数(エンジン1の回転数)を検出する。回転センサ16としては、例えば、磁気式センサや光学式センサ等の非接触式の回転変位(回転角度)センサが用いられる。具体的には、クランク軸15の回転角度および回転数を検出するための構成としては、回転センサ16に対して、クランク軸15に取り付けられ外周に沿って形成される被検出部(歯部等)を有するプレート状のロータ部材が設けられる構成がある。つまりこの場合、クランク軸15の回転にともない回転するロータ部材の被検出部の通過が、回転センサ16によって検出されるいわゆるマグネットピックアップ式のセンサが構成される。
また、エンジン1においては、吸気通路8内に、エアフローメータ17が設けられる。エアフローメータ17は、エンジン1における吸入空気量を測定する。
このような構成を備えるエンジン1において、ピストン3の下降とともに、吸気通路8からの吸気ガスが吸気バルブ11を介して燃焼室5に吸入される吸気行程が行われる。吸気行程の後、吸気バルブ11が閉じ、下死点に達したピストン3の上昇により、吸入空気に燃料が噴射された混合気が燃焼室5において圧縮される圧縮行程が行われる。ピストン3が上死点近くまで上昇すると、所定のタイミングでの混合気に対する点火によって燃焼行程が行われる。そして、燃焼の圧力によって下降したピストン3が、再度上昇する際に、排気バルブ12が開かれ、燃焼室5内の燃焼ガスが、排気バルブ12を介して排気ガスとして排気通路9に排出される排気行程が行われる。これら吸気・圧縮・燃焼・排気の4つの一連の行程が1回のサイクルとなる。
エンジン1のサイクルにおいて、吸気通路8からの吸気ガスの吸入のタイミングおよび排気通路9への排気ガスの排出のタイミングは、それぞれ吸気バルブ11および排気バルブ12の開弁タイミングによって設定される。ここで、エンジン1においては、吸気バルブ11の開弁タイミング(排気バルブ12の開弁時期に対するオーバーラップ量)は、可変バルブタイミング機構13により可変とされる。
また、エンジン1は、排気通路9内の排気ガスの一部を吸気通路8内に還流する排気ガス再循環装置(以下、「EGR(Exhaust Gas Recirculation)装置」という。)20を備える。EGR装置20は、EGR通路21と、EGRバルブ22とを備える。
EGR通路21は、一端側が吸気通路8に、他端側が排気通路9にそれぞれ接続され、燃焼室5の下流側となる排気通路9と燃焼室5の上流側となる吸気通路8とをバイパスする。つまり、EGR通路21により、排気通路9へ排出された既燃ガス(排気ガス)の一部が、吸気通路8へと戻される。吸気通路8へと戻された既燃ガスは、吸入新気(吸気ガス)とともに筒内(燃焼室5内)に導入される。EGRバルブ22は、例えば電子制御バルブとして構成され、EGR通路21の通路面積を調整する。EGRバルブ22の開度により、EGR通路21を通過する既燃ガスの流量が調整される。
このような構成のEGR装置20により、比較的比熱の大きい排気ガスが一部吸気側に戻されることで、燃焼温度が低下し、窒素酸化物(NOx)の生成が抑制される。なお、EGR通路21においては、EGR通路21を通過する既燃ガスの温度を低下させるEGRクーラ等が適宜設けられる。
以上の構成を備える本実施形態のエンジン1において、燃費の計測が行われる。本実施形態では、エンジン1の燃費F(g/sec)は、次式(1)により求められる。
上記式(1)において、Wは燃料の炭素重量割合(炭素質量割合)、Gは燃料の比重、[THCmass]は1秒当たりに排出される排気ガス中のTHC(全炭化水素、炭化水素類)の質量(g/sec)、[COmass]は1秒当たりに排出される排気ガス中のCO(一酸化炭素)の質量(g/sec)、[CO2mass]は1秒当たりに排出される排気ガス中のCO2(二酸化炭素)の質量(g/sec)をそれぞれ表す。
また、上記式(1)における燃料の炭素重量割合Wは、次式(2)により求められる。
上記式(2)において、MCは炭素の原子量、MHは水素の原子量、MOは酸素の原子量、aは燃料の水素炭素原子数比(H/C)、bは燃料の酸素炭素原子数比(O/C)である。したがって、炭素重量割合Wの値は、予め上記式(2)によって求められる。
また、上記式(1)における[COmass]の係数0.4288は、一酸化炭素の分子量をMCOとした場合のMC/MCOから求められる値である。また、同じく式(1)における[CO2mass]の係数0.2729は、二酸化炭素の分子量をMCO2とした場合のMC/MCO2から求められる値である。
そして、上記式(1)における排気ガス中の各成分の質量である[THCmass]、[COmass]、および[CO2mass]は、それぞれ次式(3)〜(5)により求められる。
上記式(3)〜(5)において、[THC]は排気ガス中のTHC濃度(%)、[CO]は排気ガス中のCO濃度(%)、[CO2]は排気ガス中のCO2濃度(%)、DTHCはTHC密度(g/m3)、DCOはCO密度(g/m3)、DCO2はCO2密度(g/m3)、Qは1秒あたりに排出される排気ガスの流量(m3/sec)である。
したがって、エンジン1の燃費は、上記式(1)より、排気ガス中の各成分の質量[THCmass]、[COmass]、および[CO2mass]が求められることにより、計測することができる。そして、排気ガス中の各成分の質量[THCmass]、[COmass]、および[CO2mass]は、上記式(3)〜(5)より、各成分の濃度[THC]、[CO]、および[CO2]、各成分の密度DTHC、DCO、およびDCO2、ならびに排気ガスの流量Qから求められる。
すなわち、本実施形態に係る燃費計測方法は、エンジン1の排気ガスの流量(Q)と、排気ガスに含まれる炭化水素類(THC)、一酸化炭素(CO)、および二酸化炭素(CO2)の各成分の濃度([THC]、[CO]、[CO2])と、予め求められる前記各成分の密度(DTHC、DCO、DCO2)とに基づいて、エンジン1の燃費を計測するものである。以下、エンジン1の排気ガスの流量(以下「排ガス流量」という。)、排気ガス中の各成分の濃度(ガス濃度)、および排気ガス中の各成分の密度(ガス密度)それぞれについて説明する。なお、以下の説明において、エンジン1の排気ガス中の「各成分」は、炭化水素類(THC)、一酸化炭素(CO)、および二酸化炭素(CO2)を指すものとする。
まず、エンジン1の排気ガス中の各成分の濃度([THC]、[CO]、[CO2])について説明する。排気ガス中の各成分の濃度は、ガス濃度計測システム10により計測される。ガス濃度計測システム10について、図2を加えて説明する。
本実施形態に係るガス濃度計測システム10は、センサ部30と、計測装置40とを備える。ガス濃度計測システム10は、排気ガスについてのガス濃度の計測を行うものであるため、排気通路9内に対して設けられるセンサ部30である排気側センサ60を有する(図1参照)。つまり、ガス濃度計測システム10は、センサ部30を、排気通路9内に対して設けて構成され、排気ガスの濃度を計測する。
センサ部30は、濃度計測対象ガス(以下単に「対象ガス」という。)に対してガス濃度計測用のレーザ光(以下単に「レーザ光」という。)を照射するとともに対象ガス中を透過したレーザ光を受光する。したがって、図2に示すように、センサ部30は、対象ガスに対してレーザ光を照射する投光部31と、対象ガス中を透過したレーザ光を受光する受光部32とを有する。
すなわち、ガス濃度計測システム10は、そのセンサ部30において、対象ガスにレーザ光を照射するとともに、対象ガスを透過したレーザ光を検出する。そして、ガス濃度計測システム10は、センサ部30により検出したレーザ光から、ガスの種類等の相違によりレーザ光のガスによる吸収量が相違することや、対象ガスによって一部が吸収された後の特定波長の光量等に基づいて、ガス濃度の計測を行う。センサ部30は、計測装置40に接続される。
計測装置40は、レーザ光の発信・受光用の光コントローラ部41と、光コントローラ部41からのデータに基づいてガス濃度の計測を行うガス濃度計測部42とを備える。計測装置40は、実体的には、CPU、ROM、RAM等を備えており、プログラム等を格納する格納部や、プログラム等に従って所定の演算を行う演算部や、演算部による演算結果などを記憶する記憶部等を有する。
光コントローラ部41は、複数の波長の赤外線レーザ光を照射する投光部である。レーザ光の波長は、検出するガスの成分に合わせて設定される。したがって、検出されるガスの成分に、炭化水素類(THC)、一酸化炭素(CO)、および二酸化炭素(CO2)が含まれる場合は、レーザ光の波長として、少なくともTHC、CO、およびCO2のガス濃度の検出に適した3種類の波長が用いられる。また、計測装置40においては、光コントローラ部41に対して、センサ部30に接続される図示せぬ差分型光検出器等が設けられる。かかる光コントローラ部41により、センサ部30により受光された信号光が導光され、対象ガス中を透過して減衰したレーザ光と、対象ガス中を透過していないレーザ光との信号光が、ガス濃度計測部42に出力される。なお、光コントローラ部41とガス濃度計測部42とは、コントローラ装置やコンピュータ装置が用いられる等して、別体として構成されてもよい。
このように、本実施形態では、ガス濃度計測システム10を構成する、センサ部30と、計測装置40に備えられる光コントローラ部41およびガス濃度計測部42とを含む構成が、ガス濃度計測手段として機能する。
図2に示すように、センサ部30を構成する投光部31および受光部32は、所定の支持体33に対して設けられる。支持体33は、対象ガスが存在することとなる空間部である対象ガス空間部33aを形成する。支持体33は、エンジン1の構成部材とは別部材により構成されても、エンジン1の構成部材が用いられて構成されてもよい。
投光部31は、赤外線送信用の光ファイバ34を有する。光ファイバ34は、図示せぬ入光コリメータ等を介して支持体33に対して位置決めされた状態で設けられる。具体的には、光ファイバ34は、その投光面が対象ガス空間部33aに臨む状態となる所定の姿勢で、支持体33に対して位置決めされる。
受光部32は、レーザ光を検出するディテクタ35を有する。ディテクタ35は、図示せぬ受光コリメータ等を介して支持体33に対して位置決めされた状態で設けられる。具体的には、ディテクタ35は、その受光面が対象ガス空間部33aに臨む状態であり、光ファイバ34から照射されるレーザ光を受光可能な状態となる所定の姿勢で、支持体33に対して位置決めされる。
これら投光部31を構成する光ファイバ34、および受光部32を構成するディテクタ35は、それぞれ上述した計測装置40(の光コントローラ部41)に対して接続される。そして、計測装置40の光コントローラ部41から射出されたレーザ光は、光ファイバ34により照射されて、対象ガス空間部33aに導かれる。対象ガス空間部33a内の対象ガス中を透過したレーザ光は、ディテクタ35にて受光される。ディテクタ35からの受光信号は、光コントローラ部41に対して入力される。
なお、センサ部30が有する投光部31および受光部32の構成は、本実施形態に限定されるものではない。例えば、投光部31より照射されるレーザ光は、紫外線レーザ光等でもよい。また、光ファイバ34やディテクタ35の代わりに、レーザダイオードやフォトダイオードが用いられてもよい。
また、センサ部30については、投光部31から照射されるレーザ光が、多重反射した後に受光部32にて受光される構成であってもよい。かかる構成は、支持部33の内周面が鏡面仕上げされることで反射面とされたり反射鏡(ミラー)が用いられたりすることで実現される。このようにセンサ部30においてレーザ光が多重反射する構成が採用されることで、レーザ光が対象ガス中を通過する距離(測定長)が長くなり測定感度が増すことから、測定精度の向上が図れる。その他、センサ部30については、必要に応じて適宜公知の技術が用いられる。
このような構成を有するセンサ部30が、排気側センサ60として設けられる。すなわち、排気側センサ60は、排気通路9内に対して設けられ、対象ガスをエンジン1の排気ガスとするセンサ部30である。
排気側センサ60は、センサ部30の構成における支持体33との関係について、例えば次のようにして設けられる。すなわち、支持体33がエンジン1の構成部材とは別部材により構成される場合は、投光部31および受光部32を有する支持体33が、例えば排気通路9を構成する排気マニホールドの各シリンダ2に対する分岐管とこの分岐管が接続されるシリンダヘッドとの間に介装されること等により、排気側センサ60が設けられる。また、支持体33がエンジン1の構成部材が用いられて構成される場合は、例えばシリンダヘッドや排気マニホールドの分岐管の一部がセンサ部30における支持体33とされ、この支持体33に対して投光部31および受光部32が構成されることにより、排気側センサ60が設けられる。
以上のような構成を備えるガス濃度計測システム10によれば、排気ガスについて精度の良いガス濃度の計測が、エンジン1の運転状況に応じてリアルタイムに連続して行われる。つまり、本実施形態のガス濃度計測システム10によれば、排気側センサ60によって、排気ガスのガス濃度がどのように変化するかを瞬時に計測することができ、エンジン1におけるガス挙動をリアルタイムに連続して計測することができる。
具体的には、ガス濃度計測システム10によれば、エンジン1における1回の燃焼についてのガス挙動を捕えるに十分な応答性が得られる。つまり、計測装置40においては、ガス濃度計測部42によるガス濃度の計測について、エンジン1における1回の燃焼に要する時間よりも速い高速応答性が得られる。したがって、本実施形態では、計測装置40が、エンジン1の1回の燃焼に要する時間よりも速い応答性を有し、センサ部30からの検出信号に基づいて、対象ガスのガス濃度を計測する計測手段として機能する。
ここで、エンジン1の1回の燃焼に要する時間とは、エンジン1の各シリンダ2(以下「気筒」ともいう。)については、1回のサイクルに要する時間となる。本実施形態のエンジン1は、4ストロークエンジンであり、各気筒における1回のサイクルで、クランク軸15が2回転(クランク角で720°)し、ピストン3が2往復することで、1回の燃焼が行われる。
また、本実施形態のエンジン1のように、複数の気筒を備える多気筒エンジンにおいては、各気筒における燃焼が所定の順番で等間隔(クランク角で等角度間隔)で行われる。つまり、本実施形態のエンジン1のように、4気筒エンジンにおいては、各気筒における燃焼がクランク角で180°ごとに行われることとなる。したがって、エンジン1において、各気筒についてのガス濃度の計測が行われる場合は、エンジン1の1回の燃焼に要する時間は、いずれかの気筒における燃焼に要する時間となる。
これらのことから、エンジンの1回の燃焼に要する時間は、エンジンにおける回転数や気筒数等に応じた時間となる。より具体的には、計測装置40は、その計測速度が例えば連続計測時で数msec程度となる高速応答性を有することとなる。
このように、本実施形態では、排気ガス中のTHC濃度([THC])、CO濃度([CO])、およびCO2濃度([CO2])が、ガス濃度計測システム10が用いられて高速応答性をもって計測される。
次に、エンジン1の排気ガス中の各成分の密度(DTHC、DCO、DCO2)について説明する。排気ガス中の各成分のガス密度は、前記のとおり予め求められる。排気ガス中の各成分のガス密度としては、例えば、常温常圧(例えば25℃、1気圧)下でのガス密度が用いられる。つまりこの場合、排気ガス中の各成分の密度は、常温常圧の条件下で計算されることによって予め求められる。具体的な値としては、例えば、排気ガス中の各成分のガス密度(g/m3)として、DTHC:0.577×10−3(H/C=1.85)、DCO:1.17×10−3、DCO2:1.83×10−3が用いられる。
続いて、エンジン1の排ガス流量(Q)について説明する。エンジン1の排ガス流量は、吸気通路8を介して供給された吸入空気流量と、燃焼に使用された燃料流量との和となることから、次式(6)で表される。
Qex=Qair+Qfuel ・・・(6)
上記式(6)において、Qexは1秒当たりに排出される排気ガス質量流量(g/sec)、Qairは1秒当たりに吸入される吸入空気質量流量(g/sec)、Qfuelは1秒当たりに噴射される燃料質量流量(g/sec)である。したがって、上記式(6)は、エンジン1の空燃比(エンジン内で燃焼する吸入空気と燃料との比率)A/Fが用いられることで、次式(7)として表される。
また、体積流量である排ガス流量Q(m3/sec)は、エンジン1の排気ガスの密度(以下「排ガス密度」という。)Dex(g/m3)との関係において、次式(8)で表される。
Q=Qex/Dex ・・・(8)
上記式(7)および(8)から、次式(9)が導かれる。
上記式(9)において、吸入空気質量流量Qairとしては、エンジン1に備えられるエアフローメータ17により計測される吸入空気量の測定値を用いることができる。また、式(9)において、排ガス密度Dexは、予め求めることができる。具体的には、エンジン1における燃焼による排気ガスの質量増加分と体積増加分との比率は、空気の密度に近い値となる。そのため、いわゆるリーン燃焼の場合は、排ガス密度は、空気の密度とほぼ等しい値となる。そこで、排ガス密度Dexとしては、例えば約1.2×10−3(g/m3)の値が用いられる。したがって、上記式(9)により、空燃比A/Fを求めることができれば、排ガス流量Qが求められる。
本実施形態では、空燃比の算出は、エンジン1における排気ガスのガス濃度が用いられて行われる。すなわち、排気側センサ60からの検出値に基づく排気ガスについてのガス濃度から、計測装置40によって空燃比の算出が行われる。
本実施形態では、空燃比の算出に際し、計測装置40が空燃比算出部43を備える。そして、空燃比算出部43は、排気側センサ60からの検出値に基づいてガス濃度計測部42によって計測される排気ガスについてのガス濃度から、エンジン1の空燃比の算出を行う。空燃比は、エンジン1における燃焼について完全燃焼の仮定の下、排気ガスに含まれる成分についての分子量等から予め求められている計算式に基づいて、排気ガスに含まれるガス濃度から算出される。具体的には、空燃比A/Fは、例えば次式(10)により算出される。
上記式(10)において、排気ガス中の各成分の濃度である[THC]、[CO]、および[CO2]は、前述したようにガス濃度計測システム10が用いられて計測される。また、[H2O]は排気ガス中のH2O濃度(%)であり、前記各成分の濃度と同様に、ガス濃度計測システム10が用いられて計測される。つまり、前述した光コントローラ部41において、例えば、前記各成分のガス濃度の検出に適した3種類の波長に加え、水(H2O)の検出に適した波長が設定されることで、ガス濃度計測システム10によって排気ガス中のH2O濃度(%)が計測される。
また、上記式(10)において、Mairは空気の分子量である。したがって、Mairの値としては、例えば28.85が用いられる。また、上記式(10)において、aおよびbは、それぞれ前記のとおり燃料の水素炭素原子数比(H/C)、酸素炭素原子数比(O/C)である。また、上記式(10)において、Kは、燃焼後のCO、H2O、CO2、H2の各濃度の関係における水性ガス反応定数(水性反応の平衡定数)である。したがって、水性ガス反応定数Kは、実験等によって予め求められる。
このように、空燃比算出部43は、ガス濃度計測システム10により計測される各成分の濃度([THC]、[CO]、[CO2])、および排気ガスに含まれる水(H2O)の濃度([H2O])に基づいて、エンジン1の空燃比A/Fを算出する。実体的には、計測装置40が、排気側センサ60により検出される検出値に基づいて、空燃比算出部43により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、エンジン1における空燃比の算出を行う。
すなわち、空燃比算出部43は、THC、CO、CO2、H2Oそれぞれのガス濃度、空気の分子量Mair、水素炭素原子数比a、酸素炭素原子数比b、および水性ガス反応定数Kの各値から、上記式(10)により、空燃比A/Fを算出する。ここで、前記各値のうち、空気の分子量Mair、水素炭素原子数比a、酸素炭素原子数比b、および水性ガス反応定数Kの値については、実験等によって予め求められ、計測装置40が備える格納部等において予め設定され記憶される。
このようにして求められた空燃比が用いられ、排ガス流量が求められる。本実施形態では、排ガス流量の計測に際し、計測装置40が排気ガス流量計測部44を備える。排気ガス流量計測部44は、エアフローメータ17により計測される吸入空気量、空燃比算出部43により算出される空燃比、および予め求められる排ガス密度に基づいて、排ガス流量を計測する。
すなわち、本実施形態では、エアフローメータ17が、エンジン1に対する吸入空気量を計測する吸入空気量計測手段として機能する。そして、排気ガス流量計測部44は、吸入空気質量流量Qair、排ガス密度Dex、および空燃比A/Fの各値から、上記式(9)により、排ガス流量Qを算出する。実体的には、計測装置40が、排気ガス流量計測部44により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、排ガス流量の計測を行う。ここで、前記各値のうち、排ガス密度Dexの値ついては、実験等によって予め求められ、計測装置40が備える格納部等において予め設定され記憶される。
このように、本実施形態では、排ガス流量Qが、エンジン1に対する吸入空気量(吸入空気質量流量Qair)と、予め求められる排ガス密度Dexと、ガス濃度計測システム10により計測される各成分の濃度[THC]、[CO]、[CO2]、および排気ガスに含まれる水(H2O)の濃度[H2O]が用いられて算出される空燃比A/Fとに基づいて計測される。
以上のようにして求められたエンジン1の排気ガス中の各成分の濃度[THC]、[CO]、[CO2]と、各成分の密度DTHC、DCO、DCO2と、排ガス流量Qとに基づいて、エンジン1の燃費が計測される。本実施形態では、燃費の計測に際し、計測装置40が燃費計測部45を備える。燃費計測部45は、ガス濃度計測システム10により計測される各成分の濃度([THC]、[CO]、[CO2])、各成分の密度(DTHC、DCO、DCO2)、および排気ガス流量計測部44により計測される排ガス流量(Q)に基づいて、エンジン1の燃費を計測する。
すなわち、燃費計測部45は、エンジン1の排気ガス中の各成分の濃度[THC]、[CO]、および[CO2]、各成分の密度DTHC、DCO、およびDCO2、ならびに排ガス流量Qから、上記式(3)〜(5)により、各成分の質量[THCmass]、[COmass]、[CO2mass]を算出する。そして、燃費計測部45は、エンジン1の排気ガス中の各成分の質量[THCmass]、[COmass]、および[CO2mass]、炭素重量割合W、ならびに燃料の比重Gの各値から、上記式(1)により、エンジン1の燃費を算出する。実体的には、計測装置40が、燃費計測部45により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、エンジン1の燃費の計測を行う。ここで、前記各値のうち、炭素重合割合Wおよび燃料の比重Gの値については、実験等(炭素重合割合Wについては上記式(2)参照)によって予め求められ、計測装置40が備える格納部等において予め設定され記憶される。
以上のように、本実施形態では、エンジン1の燃費を計測する燃費計測システムとして、ガス濃度計測システム10と、エアフローメータ17と、空燃比算出部43、排気ガス流量計測部44、および燃費計測部45を含む計測装置40とが備えられる。
なお、本実施形態では、エンジン1に対する吸入空気量を計測する吸入空気量計測手段として、エンジン1に備えられるエアフローメータ17が用いられているが、これに限定されるものではない。吸入空気量計測手段としては、エンジン1に対する吸入空気量(吸入空気質量流量Qair(g/sec))を計測できるものであればよく、例えば、熱線式流量計や超音波流量計など他の公知の流量計を用いることができる。
また、本実施形態では、排気ガスを検出対象とする排気側センサ60が、排気バルブ12の近傍、つまりEGR通路21の排気通路9に対する接続部よりも上流側に設けられているが、これに限定されるものではない。すなわち、排気側センサ60が設けられる位置、つまり排気ガスについてのガス濃度の計測位置は、エンジン1における排気系であれば、特に限定されるものではない。また、排気側センサ60は、エンジン1の排気系において複数箇所に設けられてもよい。
以上の本実施形態に係る燃費計測方法および燃費計測システムによれば、エンジン1の燃費の瞬時的な計測が可能であり、エンジン1の始動時や過渡時等のエンジン1の運転状態が急変化する時期であっても、正確な燃費の計測を行うことができるとともに、装置構成のコンパクト化を図ることができる。
すなわち、本実施形態の燃費の計測に際して用いられる値は、前述したように排ガス濃度計測システム10によって高速応答性(数msec程度)をもって計測される排気ガスを構成する成分のガス濃度であり、その他は実験等により予め求められる値やエアフローメータ17による測定値であることから、エンジン1の燃費について瞬時的な計測が可能となる。これにより、燃費の計測に際し、エンジン1の始動時や過渡時等の運転状態の急変化にともなって変動する燃費の変化を捉えることが可能となり、エンジン1の運転状態に即した正確な燃費の計測を行うことができる。
また、本実施形態の燃費の計測に際して用いられる構成は、センサ部30がエンジン1に内蔵される態様で設けることができる排ガス濃度計測システム10や、エンジン1における既存の構成としてのエアフローメータ17等である。このため、従来の燃費計測方法のように、容積式の流量計や排気ガスの採取に用いられるバッグ等の大がかりな装置構成が必要とされる場合と比べて、コンパクトな装置構成が実現できる。
ところで、上述のようなエンジン1の燃費の高速応答計測においては、例えばエンジン1における1回の燃焼ごとの燃費の計測が可能となる。このような瞬時的な燃費の計測が行われるに際しては、その計測値に、エンジン1における吸気ガスと排気ガスとの対応について時間的なズレが反映されることとなる。すなわち、本実施形態の燃費の計測には、吸入空気量のような吸気ガスについての計測値と、排ガス濃度や排ガス密度などの排気ガスについての計測値との両方が用いられる。具体的には、排ガス流量Qを求めるための上記式(9)において、吸入空気質量流量Qairは、吸気ガスについての計測値であり、空燃比A/Fは、排気ガスの各成分のガス濃度([THC]等)のような排気ガスについての計測値から導かれる値である(上記式(10)参照)。
このため、燃費の計測に際し、排気ガスおよび吸気ガスそれぞれの計測値として同時刻の値が用いられると、例えばエンジン1における1回の燃焼ごとの燃費が計測される場合、吸気ガスとその吸気ガスが用いられる燃焼により生じる排気ガスとの対応において、1回の燃焼に要する時間分、時間的なズレが存在することとなる。つまりこの場合、ある1回の燃焼により生じた排気ガスについての計測値が得られた時刻において計測対象となる吸気ガスは、次回の燃焼に用いられる吸気ガスに対応することとなる。したがって、エンジン1の燃費の計測に際しては、吸気ガスと、その吸気ガスが用いられる燃焼により生じる排気ガスとの間で、各ガスについての計測タイミングの同期が図られることが、燃費の計測精度を向上させるうえで好ましい。
そこで、本実施形態におけるエンジン1の燃費の計測においては、吸気バルブ11および排気バルブ12の開閉タイミングと、エンジン1の回転数とから、吸気側と排気側との間の時間オフセット量が正確に算出され、吸気ガスおよび排気ガスそれぞれの計測値についての計測タイミングを同期させる補正が行われる。
ここで、本実施形態のエンジン1の燃焼サイクルにおける吸気バルブ11および排気バルブ12の開閉タイミングについて、図3を用いて説明する。本説明において、吸気バルブ11および排気バルブ12の開閉タイミングは、ピストン3が上死点(TDC)と下死点(BDC)との間を往復する間のクランク軸15の回転角度に対応させ、上死点および下死点をそれぞれ基準として、上死点の前後、および下死点の前後の角度として表す。なお、図3において、BTDCは上死点前を表し、ATDCは上死点後を表し、BBDCは下死点前を表し、ABDCは下死点後を表す。また、図3において、内側のサークル部S1が、吸気バルブ11が開いている角度範囲を表し、外側のサークル部S2が、排気バルブ12が開いている角度範囲を表す。
本実施形態のエンジン1は、前述したように、各気筒における1回のサイクルで、クランク軸15が2回転(クランク角で720°)し、ピストン3が2往復することで、1回の燃焼が行われる。そして、この1回の燃焼では、まず、前回の燃焼サイクルにおける排気行程で排気バルブ12が開いている状態において、上死点前43°で、吸気バルブ11が開く。これにより、上死点に達したピストン3の下降とともに吸気行程が行われる。ここで、上死点後3°で、排気バルブ12が閉じる。
下死点に達したピストン3の上昇とともに、下死点後20°で、吸気バルブ11が閉じ、圧縮工程が行われる。ピストン3が上死点近くまで上昇すると、所定のタイミングで混合気に対する点火による燃焼行程が行われる。そして、燃焼の圧力によってピストン3が下死点まで下降する際に、下死点前37°で、排気バルブ12が開く。これにより、排気行程が行われる。ここで開いた排気バルブ12は、前記のとおり上死点後3°で閉じる。また、この排気行程においてピストン3が上死点に達するまでの間に、前記のとおり吸気バルブ11が上死点前43°で開く。つまり、上死点前43°から上死点後3°までの角度範囲が、吸気バルブ11の開弁タイミングの、排気バルブ12の開弁時期に対するオーバーラップ量となる。
なお、吸気バルブ11の開閉タイミングは、前記のとおりエンジン1に備えられる可変バルブタイミング機構13によって可変とされる。したがって、バルブタイミングにおけるオーバーラップ量を定める吸気バルブ11の開弁タイミングや、吸気バルブ11の閉弁タイミングは可変とされる。ただし、本説明では、便宜上、エンジン1における各バルブの開閉タイミングは、上述のように、吸気バルブ11の開弁タイミングは上死点前43°、吸気バルブ11の閉弁タイミングは下死点後20°、排気バルブ12の開弁タイミングは下死点前37°、排気バルブ12の閉弁タイミングは上死点後3°として設定されているものとする。
このような1回の燃焼サイクルにおける吸気バルブ11および排気バルブ12の開閉タイミングについて、吸気のために吸気バルブ11が開いてから、排気のために排気バルブ12が開くまでの時間が、吸気側と排気側との間のオフセット時間(時間オフセット量)となる。つまり、例えば、エンジン1の燃費の計測に用いられる吸気ガスについての計測値(吸入空気質量流量Qair)に関し、吸気バルブ11の開弁タイミングから排気バルブ12の開弁タイミングまでに要した時間分、前に(排気ガスについての計測値の計測タイミングよりも前に)計測された値が用いられることにより、吸気ガスおよび排気ガスそれぞれの計測値についての計測タイミングが同期した状態となる。
したがって、本実施形態では、エンジン1の燃費の計測に際し、吸気バルブ11が開いてから排気バルブ12が開くまでの時間が、オフセット時間として算出される。そして、その算出されたオフセット時間が用いられて、吸気ガスについての計測値と排気ガスについての計測値との計測タイミングを同期させる補正(以下「タイミング補正」という。)が行われる。
オフセット時間は、前記のとおり吸気バルブ11が開いてから排気バルブ12が開くまでの時間であるため、吸気バルブ11および排気バルブ12の開閉タイミングとエンジン1の回転数(回転速度)とから算出される。つまり、オフセット時間は、クランク軸15が、吸気バルブ11の開弁タイミングに対応する回転角度から排気バルブ12の開弁タイミングに対応する回転角度までの角度範囲(以下「オフセット角度」という。)を回転するのに要した時間となる。こうしたクランク軸15の回転角度およびエンジン1の回転数は、エンジン1に備えられる回転センサ16により検出される。
オフセット時間は、具体的には次のようにして算出される。オフセット角度は、燃焼サイクルにおける吸気に際してピストン3が上死点に達した時から、圧縮、燃焼を経て、排気が開始されるに際して下死点に達するまでの1回転半の回転角度である540°に対して、吸気バルブ11の開弁状態の延長範囲となる、吸気バルブ11の開弁タイミングである上死点前43°の43°が加算され、排気バルブ12の開弁状態の短縮範囲となる、排気バルブ12の開弁タイミングである下死点前37°の37°が減算された角度範囲となる。したがって、オフセット角度は、540(°)+43(°)−37(°)=546(°)となる。
そして、例えば、エンジン1の回転数が、1200rpmである場合とする。かかる場合、1秒当たりの回転数は1200(rpm)/60(sec)=20(回転/sec)となる。つまり、1回転にかかる時間は、1(sec)/20(回転)=0.05(sec/回転)となる。
したがって、この場合、クランク軸15が、オフセット角度を回転するのに要した時間は、オフセット角度が546°であり、1回転(360°)にかかる時間が0.05secであることから、0.05(sec)×(546(°)/360(°))=0.07583・・・(sec)となる。
このようにして算出されるオフセット時間が用いられ、タイミング補正が行われる。つまり、タイミング補正が行われるに際しては、その際に設定されている各バルブの開閉タイミングから導かれるオフセット角度と、タイミング補正が行われる時点でのエンジン1の回転数とが用いられ、オフセット時間が算出される。
すなわち、本実施形態では、クランク軸15の回転角度と、エンジン1の回転数とから、エンジン1の1回の燃焼における、エンジン1において所定のシリンダ2に対して設けられる吸気バルブ11が開いてから、前記所定のシリンダ2に対して設けられる排気バルブ12が開くまでの時間であるオフセット時間が算出される。そして、このオフセット時間が用いられて、吸入空気量(吸入空気質量流量Qair)についての計測値、およびガス濃度計測システム10による各計測値([THC]等)の計測タイミングを同期させる補正が行われる。
本実施形態では、タイミング補正におけるオフセット時間の算出に際し、計測装置40がオフセット時間算出部46を備える。オフセット時間算出部46は、回転センサ16により検出されるクランク軸15の回転角度、およびエンジン1の回転数から、オフセット時間を算出する。
すなわち、オフセット時間算出部46は、前述したように各バルブの開閉タイミングから導かれるオフセット角度と、回転センサ16により検出されるエンジン1の回転数とから、オフセット時間の算出を行う。実体的には、計測装置40が、オフセット時間算出部46により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、オフセット時間の算出を行う。
また、本実施形態では、タイミング補正に際し、計測装置40がタイミング補正部47を備える。タイミング補正部47は、オフセット時間算出部46により算出されたオフセット時間を用いて、エアフローメータ17による計測値、およびガス濃度計測システム10による各計測値の計測タイミングを同期させる補正を行う。
すなわち、タイミング補正部47は、オフセット時間算出部46により算出されたオフセット時間を用いて、上記式(9)による排ガス流量Qの算出に用いられるエアフローメータ17による吸入空気質量流量Qairについての計測値と、同じく排ガス流量Qの算出に用いられる空燃比A/Fの算出(上記式(10)参照)、および上記式(3)〜(5)による各成分の質量の算出に用いられるガス濃度計測システム10による排気ガスの濃度[THC]、[CO]、[CO2]、[H2O]についての計測値との計測タイミングの同期を図る補正を行う。実体的には、計測装置40が、タイミング補正部47により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、タイミング補正を行う。
そして、本実施形態では、タイミング補正として、例えば、吸入空気質量流量Qairの計測値について、ガス濃度[THC]、[CO]、[CO2]、[H2O]の計測値の計測タイミング対してオフセット時間分前に計測された値が用いられるという補正が行われる。
以上のように、本実施形態に係る燃費計測システムは、タイミング補正を行うための構成として、クランク軸15の回転角度を検出する回転角度検出手段およびエンジン1の回転数を検出する回転数検出手段として機能する回転センサ16と、オフセット時間算出部46およびタイミング補正部47を含む計測装置40とが備えられる。
なお、本実施形態では、クランク軸15の回転角度を検出する回転角度検出手段およびエンジン1の回転数を検出する回転数検出手段として、エンジン1に備えられる回転センサ16が用いられているが、これに限定されるものではない。回転角度検出手段および回転数検出手段としては、例えば、回転角度検出手段と回転数検出手段とが別体として設けられる構成であってもよい。
以上のように、エンジン1の燃費の計測において、吸気側と排気側との間でタイミング補正が行われることにより、瞬時的な燃費の計測に際し、エンジン1におけるガス挙動に即した燃費の変化を捉えることが可能となり、燃費の計測精度を向上させることができる。
また、本実施形態のエンジン1は、EGR装置20および可変バルブタイミング機構13を備える。かかるエンジン1においては、両者により、燃焼室5において燃焼に関与する吸入空気以外の既燃ガス(排気ガス)の量が調整される。すなわち、EGR装置20によれば、排気通路9からEGR通路21および吸気通路8を介して燃焼室5に強制的に戻されて導入される排気ガスの量が、EGRバルブ22の制御により調整される。また、可変バルブタイミング機構13によれば、吸気バルブ11の開閉時期の制御により、吸気バルブ11のオーバーラップ量が調整され、燃焼室5から吸気ポート6側に吹き返されたり燃焼室5から排出されずに残留させられたりする既燃ガスの量が調整される。なお、可変バルブタイミング機構13が吸気バルブ11のバルブリフト量を可変とする機能を有する場合は、バルブリフト量の制御によっても、燃焼室5内の既燃ガスの量が調整される。
このように、エンジン1においては、燃焼室5に存在することとなる吸入空気以外の既燃ガス(排気ガス)として、EGR装置20によるもの(以下「外部EGR」という。)と、可変バルブタイミング機構13によるもの(以下「内部EGR」という。)とがある。つまり、エンジン1においては、燃焼室5に対するEGRとして、外部EGRと内部EGRとが存在する。これらのEGRは、燃焼室5内に不活性ガスを導入するという点で共通の作用を有する。そして、EGR装置20におけるEGRバルブ22の開度により、外部EGRの量が調整され、可変バルブタイミング機構13によるバルブタイミングやバルブリフト量により、内部EGRの量が変化する。
こうした外部EGRと内部EGRとが存在するエンジン1においては、上述した燃費の計測においてEGRが影響し、EGRの量によっては、計測誤差が大きくなる場合がある。すなわち、内部EGRについては、吸気バルブ11のオーバーラップ量が増えた場合、燃焼室5から吸気ポート6側に吹き返される既燃ガスの量が増加し、上記式(6)の成立が妨げられる(近似的にも成立しなくなる)。つまりこの場合、吸気ポート6側に吹き返される既燃ガスの量の分、式(6)における排気ガス質量流量Qexが減少する。また、外部EGRについては、例えば、排ガス濃度計測システム10の排気側センサ60が、外部EGRのサンプリング位置より下流側、すなわちEGR通路21の排気通路9に対する接続部よりも下流側に設けられる場合、前記と同様、上記式(6)の成立が妨げられる。つまりこの場合、EGR装置20によって強制的に戻される排気ガスの量の分、式(6)における排気ガス質量流量Qexが減少する。
つまり、エンジン1において、EGRの量が多くなることや排気側センサ60が設けられる位置等により、燃費の計測において、上記式(6)の条件を用いることが困難となり、式(6)に基づいて導かれる上記式(9)による排ガス流量Qの計測において誤差が生じることとなる。したがって、エンジン1の燃費の計測に際しては、排気ガス質量流量Qexの計測において、EGRによる排気ガスの流量分(減少分)が差し引かれることが、燃費の計測精度を向上させるうえで好ましい。
そこで、本実施形態におけるエンジン1の燃費の計測においては、排ガス流量Qの計測(上記式(9)参照)に際し、EGRによる排気ガスの流量分(減少分)を差し引くための補正(以下「EGR補正」という。)が行われる。EGR補正には、EGRについての排気ガス再循環率(以下「EGR率」という。)が算出されて用いられる。
具体的には、EGR補正は、次のようにして行われる。すなわち、エンジン1において、EGRが行われる場合、上記式(6)は、次式(11)として表される。
QexE+[EGR]Qex=Qair+Qfuel ・・・(11)
上記式(11)において、QexEは、EGRに含まれずに排気通路9を介して排気される排気ガスの質量流量(以下「正味排気ガス質量流量」という。)(g/sec)であり、[EGR]はEGR率である。つまり、EGRが行われることにより、吸入空気流量と燃料流量との和(式(11)右辺)に対応するエンジン1の排気ガスの流量は、正味排気ガス質量流量(QexE)と、EGRされた排気ガス([EGR]Qex)との和となる。
上記式(6)および(11)から、次式(12)が導かれる。
QexE=(1−[EGR])Qex ・・・(12)
上記式(12)で表される正味排気ガス質量流量QexEが、上述した排ガス流量Qの算出に際して用いられる。つまり、上記式(8)における排気ガス質量流量Qexが、正味排気ガス質量流量QexEに置き換えられることで、EGR補正後の排ガス流量Qが得られる。したがって、上記式(8)および(12)から、次式(13)が導かれる。
Q=(1−[EGR])Qex/Dex ・・・(13)
そして、EGR補正後の排ガス流量Qは、上記式(7)および(13)から、次式(14)により求められる。
つまり、燃費の計測におけるEGR補正によれば、排ガス流量Qが、上記式(14)によって算出されることとなる。本実施形態では、EGR補正に際し、計測装置40が、EGR率算出部48とEGR補正部49とを備える。
本実施形態のエンジン1においては、外部EGRについてのEGR率(以下「外部EGR率」という。)と、内部EGRについてのEGR率(以下「内部EGR率」という。)とが切り分けて測定される。そして、エンジン1の燃費の計測に際して行われるEGR補正としては、外部EGRのみが考慮されたEGR補正(以下「第一のEGR補正」という。)と、外部EGRに加え内部EGRも考慮されたEGR補正(以下「第二のEGR補正」という。)とのいずれかが行われる。以下、各EGR補正について説明する。
まず、第一のEGR補正について説明する。第一のEGR補正においては、排ガス流量Qの計測に際し、ガス濃度計測システム10により計測される排気ガス、および吸気ガスのガス濃度に基づいて、EGR装置20によるEGR率(外部EGR率)が算出される。そして、このEGR率が用いられて、EGR装置20による排気通路9内からの還流排気ガス(外部EGR)の流量分を差し引くための補正が行われる。
したがって、第一のEGR補正に際しては、EGR率の算出のため、排気側センサ60による排気ガスについてのガス濃度の計測に加え、吸気ガスについてのガス濃度の計測が行われる。このため、第一のEGR補正に際しては、ガス濃度計測システム10は、排気側センサ60に加え、吸気側センサ50として、センサ部30を、吸気通路8内に対してさらに備える(図1参照)。つまり、吸気側センサ50は、吸気通路8内に対して設けられ、対象ガスをエンジン1の吸気ガスとするセンサ部30である。
吸気側センサ50は、センサ部30の構成における支持体33との関係について、排気側センサ60と同様にして設けられる。すなわち、支持体33がエンジン1の構成部材とは別部材により構成される場合は、その支持体33が、例えば吸気通路8を構成する吸気マニホールドの各シリンダ2に対する分岐管とこの分岐管が接続されるシリンダヘッドとの間に介装されること等により、吸気側センサ50が設けられる。また、支持体33がエンジン1の構成部材が用いられて構成される場合は、例えばシリンダヘッドや吸気マニホールドの分岐管の一部がセンサ部30における支持体33とされ、吸気側センサ50が設けられる。
また、吸気側センサ50は、対象ガスを、EGR装置20による排気通路9内からの還流排気ガスを含む吸気ガスとする。つまり、吸気側センサ50は、燃焼室5に対する吸気ガスの流れにおいて、EGR装置20のEGR通路21の吸気通路8に対する合流部よりも下流側に設けられる。これにより、吸気側センサ50によってガス濃度が検出される吸気ガスが、EGR装置20による排気還流ガスを含むものとなる。
このように、第一のEGR補正に際しては、ガス濃度計測システム10が備えるセンサ部30が、吸気通路8内に対してさらに設けられ、吸気ガスのガス濃度(本実施形態ではCO2濃度)が、エンジン1の1回の燃焼に要する時間よりも速い応答性をもって計測される。
そして、外部EGR率(%)は、次式(15)により導かれる。
上記式(15)において、[CO2]intは吸気ガスについてのCO2濃度(%)、[CO2]exhは排気ガスについてのCO2濃度(%)、[CO2]airは大気中のCO2濃度(%)をそれぞれ表す。
つまり、第一のEGR補正においては、EGR率算出部48は、ガス濃度計測システム10により計測される排気ガス、および吸気ガスのガス濃度に基づいて、排気ガス流量計測部44による排ガス流量Qの計測に際し、EGR率として外部EGR率を算出する。すなわち、EGR率算出部48は、吸気側センサ50および排気側センサ60からの検出値に基づいてガス濃度計測部42によって計測される吸気ガスおよび排気ガスについてのCO2濃度、ならびに大気中のCO2濃度から、上記式(15)に基づいて、外部EGR率の算出を行う。実体的には、計測装置40が、EGR率算出部48により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、外部EGR率の算出を行う。
ここで、本実施形態においては、EGR率の算出に際して必要となる大気中のCO2濃度は、CO2センサ14が用いられて計測される(図1参照)。つまり、本実施形態のガス濃度計測システム10は、大気中のCO2濃度が計測可能な位置に設けられるCO2センサ14を備える。CO2センサ14としては、周知のものが用いられる。そして、CO2センサ14によって検出された大気中のCO2濃度についての検出信号が、計測装置40に入力される。ただし、EGR率の算出に際して用いられる大気中のCO2濃度は、一般的な大気中のCO2濃度の値が用いられてもよい。つまりこの場合、計測装置40において一般的な大気中のCO2濃度の値が予め設定され、EGR率算出部48によるEGR率の算出に際して用いられる。
そして、このようにして算出された外部EGR率が用いられて、排ガス流量Qの計測に際し、外部EGRの流量分を差し引くための補正が行われる。
つまり、第一のEGR補正においては、EGR補正部49は、EGR率算出部48により算出された外部EGR率を用いて、EGR装置20による排気通路9内からの還流排気ガス(外部EGR)の流量分を差し引くための補正を行う。具体的には、EGR補正部49は、上記式(14)において、EGR率[EGR]として、上記式(15)により算出される外部EGR率を用いることで、排ガス流量Qの算出に際しての補正を行う。実体的には、計測装置40が、EGR補正部49により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、外部EGR率を用いた排ガス流量Qの補正を行う。
以上のように、本実施形態に係る燃費計測システムにおいては、第一のEGR補正を行うための構成として、ガス濃度計測システム10が、排気側センサ60に加え、吸気側センサ50を備える。そして、燃費計測システムが、EGR率算出部48およびEGR補正部49を含む計測装置40を備える。
次に、第二のEGR補正について説明する。第二のEGR補正においては、第一のEGR補正に加え、排ガス流量Qの計測に際し、ガス濃度計測システムにより計測される排気ガス、吸気ガス、および燃焼室5を形成する筒内(以下単に「筒内」という。)のガス(以下「筒内ガス」という。)のガス濃度に基づいて、可変バルブタイミング機構13によるEGR率(内部EGR率)が算出される。そして、このEGR率が用いられて、燃焼室5から排気通路9内へと排出されなかった既燃ガスである再循環排気ガス(内部EGR)の流量分をさらに差し引くための補正が行われる。
したがって、第二のEGR補正に際しては、EGR率の算出のため、吸気側センサ50および排気側センサ60による排気ガスについてのガス濃度の計測に加え、筒内に存在する筒内ガスについてのガス濃度の計測が行われる。このため、第二のEGR補正に際しては、ガス濃度計測システム10は、吸気側センサ50および排気側センサ60に加え、筒内センサ70として、センサ部30を、筒内に対してさらに備える(図1参照)。つまり、筒内センサ70は、筒内に対して設けられ、対象ガスを筒内ガスとするセンサ部30である。
筒内センサ70は、例えば次のようにして設けられる。すなわち、エンジン1におけるシリンダ2に対して、ピストン3の上死点よりも上部におけるシリンダブロックの部分に、投光部31および受光部32が設けられることにより、筒内センサ70が設けられる。つまりこの場合、センサ部30において投光部31および受光部32を有する支持体33が、エンジン1を構成するシリンダブロックの一部となる。
このように、第二のEGR補正に際しては、ガス濃度計測システム10が備えるセンサ部30が、筒内に対してさらに設けられ、筒内ガスのガス濃度(本実施形態ではCO2濃度)が、エンジン1の1回の燃焼に要する時間よりも速い応答性をもって計測される。
エンジン1におけるガス濃度として、吸気ガスおよび排気ガスに加え、筒内ガスのガス濃度の計測が行われることにより、外部EGR率と内部EGR率とを切り分けた測定が可能となる。そして、第二のEGR補正においては、外部EGRに加えて内部EGRを含むEGR(以下「全EGR」という。)が用いられる。
全EGRについてのEGR率(%)は、次式(16)により導かれる。
上記式(16)において、[CO2]chaは筒内ガスについてのCO2濃度(%)を表す。
なお、外部EGR率と内部EGR率とを切り分けた測定において、内部EGR率は、次のようにして求められる。
全EGRは、外部EGRと内部EGRとからなることから、次式(17)が成り立つ。
EGR率=外部EGR率+内部EGR率 ・・・(17)
したがって、内部EGR率(%)は、上記式(15)〜(17)から、次式(18)により導かれる。
つまり、第二のEGR補正においては、EGR率算出部48は、ガス濃度計測システム10により計測される排気ガス、吸気ガス、および筒内のガスのガス濃度に基づいて、EGR率を、可変バルブタイミング機構13によるEGR率(内部EGR率)を含むものとして算出する。すなわち、EGR率算出部48は、吸気側センサ50、排気側センサ60および筒内センサ70からの検出値に基づいてガス濃度計測部42によって計測される吸気ガス、排気ガスおよび筒内ガスについてのCO2濃度、ならびに大気中のCO2濃度から、上記式(16)に基づいて、EGR率の算出を行う。実体的には、計測装置40が、EGR率算出部48により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、EGR率の算出を行う。
そして、このようにして算出されたEGR率が用いられて、排ガス流量Qの計測に際し、全EGRの流量分を差し引くための補正が行われる。
つまり、第二のEGR補正においては、EGR補正部49は、燃焼室5から排気通路9内へと排出されなかった既燃ガスである再循環排気ガス(内部EGR)の流量分をさらに差し引くための補正を行う。具体的には、EGR補正部49は、上記式(14)において、EGR率[EGR]として、上記式(16)により算出されるEGR率(全EGRについてのEGR率)を用いることで、排ガス流量Qの算出に際しての補正を行う。実体的には、計測装置40が、EGR補正部49により、格納部に格納された所定のプログラムに従って所定の演算等を行うことで、EGR率を用いた排ガス流量Qの補正を行う。
以上のように、本実施形態に係る燃費計測システムにおいては、第二のEGR補正を行うための構成として、ガス濃度計測システム10が、吸気側センサ50および排気側センサ60に加え、筒内センサ70を備える。
なお、本実施形態では、EGR率の測定に際して計測される、排気ガス、吸気ガス、および筒内ガスのガス濃度として、CO2濃度が用いられているが、これに限定されるものではない。つまり、EGR率の測定に際して計測されるガス濃度としては、例えば酸素濃度など、排気ガス、吸気ガス、および筒内ガスに含まれる他の成分の濃度であってもよい。
以上のように、エンジン1の燃費の計測において、EGR補正が行われることにより、瞬時的な燃費の計測に際し、排ガス流量Qに影響するEGRによる誤差を低減することができ、燃費の計測精度を向上させることができる。また、第二のEGR補正は、EGR補正において用いられるEGR率が、外部EGRおよび内部EGRを含む全EGRについてのものであるため、第一のEGR補正に比べてより好ましいEGR補正であるということがいえる。
以上説明したようなエンジン1の燃費の計測は、例えばエンジン1についての制御パラメータの値の適合(以下「エンジン制御パラメータの適合」という。)に際して用いられる。
具体的には、エンジン制御パラメータの適合に際しては、図1に示すように、高速データ収録手段としてのデータロガー80と、エンジン1の走行試験時における制御を行うECU(電子制御ユニット)90とが用いられる。
データロガー80は、計測装置40からのガス濃度計測値や燃費計測値に係る情報についての出力信号を高周波サンプリングして、ガス濃度計測システム10によるガス濃度の計測結果や燃費の計測結果を収録する。すなわち、データロガー80は、ガス濃度計測システム10における応答性に対して、計測装置40からの出力を抽出して解析するのに十分高い周波数(例えば、エンジン1の気筒毎およびサイクル毎の単位期間毎の出力データの収録が可能な程度の周波数)で、計測装置40からの出力信号をサンプリングする。
ECU90は、前記のとおりエンジン1の制御を行う。ECU90には、クランク軸15近傍に設けられクランク位置やクランク角速度の検出を行う回転センサ(回転センサ16)や、吸入空気量を計測するための流量計(エアフローメータ17)や、エンジン1内における水温の検出を行う水温センサ等の、エンジン1の運転状態を計測する各種センサからの情報が計測情報として入力される。ECU90には、エンジン1の制御情報として、エンジン1の走行試験用の制御マップ等、エンジン制御パラメータの適合に際してエンジン1を制御することのできる制御マップが備えられる。したがって、エンジン1の走行試験時には、ECU90は、この制御マップによって、前記各種センサからの計測情報などに基づいて、エンジン1の燃料噴射量や点火時期等の制御を行う。
このような構成において、エンジン制御パラメータの適合に際しては、エンジン1が、ECU90によって制御されながら、負荷装置等が用いられて、回転速度や負荷に基づいて決定される所定の運転状態で運転させられる。そして、データロガー80において、計測装置40から入力される、ガス濃度計測システム10によるエンジン1における各部のガス濃度(例えば二酸化炭素の濃度等)についての計測値や燃費についての計測値と、ECU90から入力される、ECU90からエンジン1に対する制御信号についての情報(制御結果)とが、同期してモニタされつつ取得・解析される。
具体的には、エンジン1に対して所定の回転速度や負荷が与えられている条件下で、制御パラメータ(例えば点火時期等)に応じたエンジン特性(例えばトルク変動等)の変化が解析される。ここで、エンジン特性についての条件や、規制対象ガスについての条件や、燃料消費量(燃費)などから、所定の条件を満たす制御パラメータについての適合点(適合値)が求められる。そして、エンジン1の種々の回転速度や負荷における適合点の集合である制御マップが作成される。かかる制御マップは、実際にエンジン1の制御を行うECUにて予め設定され記憶させられる。つまり、エンジン制御パラメータの適合により作成された制御マップに基づいて、エンジン1が制御される。これにより、エンジン1について、その運転状態に応じて種々のエンジン特性を満たすエンジンが実現される。
このようなエンジン制御パラメータの適合に際し、上述したように瞬時的に計測される燃費についての計測値が用いられることにより、適合されるべき制御パラメータとしてのEGR率やバルブタイミングやバルブリフト量についての最適化が図れる。そして、エンジン1においてフィードバック制御が効かないエンジン始動直後や、エンジン1の運転状態が急激に変化する過渡時における最適な運転条件(EGRバルブ22の開度や吸気バルブ11のバルブタイミング等)が決定されることで、エンジン1の低燃費化や高出力化を図ることが可能となる。