JP2009241492A - インクカートリッジ、溝形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】中空部の内の第2室内のインク或いは第2室の内面に付着するインク滴を第1室側へ導くことにより、第2室の下部におけるインク溜まりを防止して、移動部材の円滑な動きを実現する。
【解決手段】インクカートリッジ10は、フレーム110から突出した検知部140を備える。検知部は中空状に形成されており、内部空間147を有する。内部空間147は、インク室12に連続している。インク室12には、フロート部63及びインジケータ部62を有するアーム60が設けられている。インジケータ部62は、内部空間147内で上下に移動する。内部空間147を区画する検知部140の内面には、水平方向へ延びる複数の溝148が形成されている。溝148は、インクに対して毛細管作用を生じさせる。検知部140の内面に付着したインクは、溝148を伝ってインク室12へ移動する。したがって、内部空間147の下部にインクが溜まらない。
【選択図】図3
【解決手段】インクカートリッジ10は、フレーム110から突出した検知部140を備える。検知部は中空状に形成されており、内部空間147を有する。内部空間147は、インク室12に連続している。インク室12には、フロート部63及びインジケータ部62を有するアーム60が設けられている。インジケータ部62は、内部空間147内で上下に移動する。内部空間147を区画する検知部140の内面には、水平方向へ延びる複数の溝148が形成されている。溝148は、インクに対して毛細管作用を生じさせる。検知部140の内面に付着したインクは、溝148を伝ってインク室12へ移動する。したがって、内部空間147の下部にインクが溜まらない。
【選択図】図3
Description
本発明は、インクが収容される第1室を有するインクカートリッジに関し、特に、インク量に応じて第1室と連続する第2室内で移動する移動部材を備えたインクカートリッジに関する。
従来、インクを用いて記録用紙に画像を記録するインクジェット記録装置(以下「記録装置」と略称する。)が広く知られている。記録装置にはインクカートリッジが装着されている。このインクカートリッジは、記録装置に対して着脱可能である。インクカートリッジの内部には、インクを収容するためのインク室が区画されている。記録装置にインクカートリッジが装着された状態で、インク室内のインクが記録装置へ供給される。このようなインクカートリッジの一例として、特許文献1に記載のインクタンクや特許文献2及び特許文献3に記載のインクカートリッジが公知である。
特許文献1には、インクの液面を検知する液面検知手段を有するインクタンクが開示されている。上記液面検知手段は、インク室の一方側に配置された発光ダイオードと他方側に配置されたフォトトランジスタとにより構成されている。インク室の内面において、液面検知手段の透過光軸が横断する部分は、濡れ性の高い部材、例えば、表面に微細な溝が形成された部材(同文献の図4参照)で形成されている。上記部材上では、毛細管作用によってインク滴の発生が防止される。そのため、レンズ効果による光の拡散が防止されて、インクの液面が確実に検知される。
特許文献2には、透明部材で構成された本体ケースの一部の内面がメッシュ状の拡散溝で形成されたインクカートリッジが開示されている(同文献の段落[62]参照)。上記内面に付着したインクは、毛細管作用によって拡散溝に入り込んで保持される。これにより、ユーザは、拡散溝で保持されたインクの色を外部から正確に認識することができる。
特許文献3には、インクの減少に伴って変位するセンサーアームと、透光性を有する検知部とを有するインクカートリッジが開示されている。センサーアームはインクタンク内に設けられている。検知部は、本体部から外方へ突出しており、内部に空間が形成されている。検知部の内部において、センサーアームの被検知部が上下に移動する。具体的には、インクタンク内に所定量のインクが収容されている場合は被検知部が検知部の底面に当接し、インクタンク内のインクが所定量未満になると、被検知部が検知部の底面から離れて上方へ移動する。センサーアームは、インクタンク内において変位経路が規制されている。センサーアーム及びインクタンクの内壁面において上記変位経路に対応する領域の双方又はいずれか一方に、拡散面が形成されている。拡散面には、毛管力を発生するように微小凹凸が形成されている。拡散面に付着したインクの気泡は、毛管力によって拡散面上に迅速に拡散するため、気泡が迅速に消滅する。そのため、気泡による動作不良が防止されて、センサーアームが正常に変位する。
しかしながら、特許文献3に記載のインクカートリッジにおいては、検知部内の空間の底面にインクが溜まる場合がある(以下この現象を「インク溜まり」という。)。このインク溜まりは、センサーアームの動きを阻害する。具体的には、インク室内のインクが消費されて所定量未満になったときに検知部の底面から離れようとする被検知部に対して、上記インク溜まりは被検知部に接触して該被検知部を検知部の底面に留めようとする。上記インク溜まりを除去する手法としては、底面をインク室側へ傾斜させたり、その底面に案内溝を設けたりすることが考えられるが、いずれの手法をもってしても、底面に付着するインク滴を常に除去することはできない。たとえ、特許文献1に記載の濡れ性の高い部材や、特許文献2に記載の拡散溝、特許文献3に記載の拡散面を上記検知部の内面に用いたとしても、インクが拡散されて底面へ導かれると、却って底面にインクが溜まりやすくなる。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、中空部の内側に形成された第2室内のインク或いは第2室の内面に付着するインク滴を第1室側へ導くことにより、第2室の下部におけるインク溜まりを防止して、移動部材の円滑な動きを実現可能なインクカートリッジ及び溝形成方法を提供することにある。
(1) 本発明は、フレームと、中空部と、移動部材とを具備するインクカートリッジとして構成されている。フレームは、インクが収容される第1室を区画するものである。中空部は、上記フレームの側壁に設けられている。この中空部は、上記側壁の内面から水平方向外側へ上記第1室と連続する中空状の第2室を区画するものである。移動部材は、上記第2室内に設けられている。この移動部材は、上記第1室内のインク量に応じて上記第2室の底面に当接する第1位置と該第1位置から上方へ離間する第2位置との間で移動可能に構成されている。上記中空部の内面には、上記第1室側へ延びる溝が形成されている。
インクカートリッジ内には、第2室の全部若しくは下部のみが満たされる量のインクが充填されている。インクジェットプリンタにおいてインクが消費されると、インクカートリッジ内のインクが減少してその液面が徐々に低下する。インクの減少過程において、第2室内のインクは、減少するインクに引っぱられるようにして第1室へ移る。この際、第2室を区画する中空部の内面に接していたインクは、中空部の内面に形成された溝に沿って第1室側へ導かれる。このように第2室のインクが第1室へ導かれるため、第2室の底面にインクが溜まり難くなる。これにより、移動部材とインク溜まりとが接触しなくなる。
(2) 上記溝は、上記中空部の内面に付着したインクを毛細管作用によって上記第1室側へ導くものである。
これにより、インクの減少過程において第1室のインクから途切れたインクがインク滴として中空部の内面に付着した場合でも、そのインク滴は、第2室の底面へ向けて落下することなく、上記溝による毛細管作用によって第1室側へ拡散しつつ、第1室側へ導かれる。
(3) 上記移動部材は、鉛直方向に延びる薄肉の板状部材からなる。上記中空部は、上記第1室の壁面幅に対して幅狭に形成されている。
移動部材を円滑に移動させるために、移動部材を鉛直方向に延びる薄肉の板状部材で構成して軽量化することが考えられる。また、インクカートリッジの薄型化やインクカートリッジが装着される装着部のコンパクト化などのために、上記中空部を、上記移動部材の厚みに対応して幅狭に形成する場合がある。この構成では、第2室が幅狭に形成される。そのため、第2室内にインクが残留し易くなる。このような構成において上記第2室の内面に上記溝が形成されていれば、第2室の底面にインクが垂れ落ちるまでにインクが第1室側へ拡散するため、インク溜まりが生じ難くなる。
(4) 上記第1室内に回動可能に設けられるアームの第1端が上記移動部材である。また、上記アームにおける上記第1端とは反対側の第2端がフロート部である。フロート部は、上記第1室内のインクの液面の位置に応じて移動する。上記移動部材は、上記フロート部の移動に伴って、上記第2室内の上記第1位置と上記第2位置との間で移動する。
(5) 上記移動部材は、上記第1室内のインクが所定量未満のときに上記第2位置に位置し、上記第1室内のインクが所定量以上のときに上記第1位置に位置するものであることが好ましい。
(6) 上記溝は、水平方向へ延出されていることが好ましい。
(7) また、上記溝は、上記第1室側へ下るように傾斜されていてもよい。
(8) 上記溝の幅は、0.1μmより大きく100μm未満であることが好ましい。
インクジェットプリンタに用いられるインクとして、顔料インクが用いられることがある。現在使用されている顔料インクの粒子径は概ね0.1μmである。そのため、顔料インクを第2室から第1室へ導くために、上記溝の幅は0.1μmよりも大きいことが望ましい。また、上記溝の幅が100μm以上であると、却って溝内にインクが溜まりやすくなり、表面張力によって溝外へ突出するインクが移動部材の移動を阻害するおそれがある。そのため、上記溝の幅は100μm未満であることが望ましい。
(9) 上記溝の幅は、より好ましくは、1μm以上であり、50μm以下である。
顔料インクの粒子径は概ね0.1μmであるが、粒子径は必ずしも均一ではなくバラツキがある。上記粒子径のバラツキは、インクが第1室側へ拡散することに対して影響を与える。この影響を無くすため、上記溝の幅の下限値を1μmとした。また、インクの表面張力も必ずしも均一ではなく、インクの種類等に応じてバラツキがある。上記表面張力のバラツキは、インクが第1室側へ拡散することに対して影響を与える。例えば、インクの表面張力如何によっては、上記溝の幅が100μm未満であってもインクが溝内に溜まり、インクが溝方向へ拡散しなくなる場合があり得る。この影響を無くすため、上記溝の幅の上限値を50μmとした。
(10) 上記中空部は、透光性を有する透光領域を有する。この場合、上記移動部材は、上記透光領域内で移動することが好ましい。
これにより、インクカートリッジの外部から中空部の透光領域を介して第2室内の移動部材の動きを視覚的に或いは電気的若しくは光学的に検知することが可能となる。
(11) 本発明のインクカートリッジは、インクジェットプリンタに対して着脱可能である。
(12) また、本発明は、上述のインクカートリッジが有する上記溝を形成する溝形成方法と捉えることができる。すなわち、所定の凹凸面を有し且つ上記第2室の内面形状に対応する第1型材と、上記中空部の外形形状に対応する第2型材とを組み合わせた際に形成される間隙に溶融樹脂を注入し、樹脂が固化した後に上記第1型材と固化後の樹脂とを引き離すことにより、上記第1型材と固化後の樹脂との接触面に上記溝を形成する溝形成方法として本発明を捉えてもよい。
これにより、上記第1型材と固化後の樹脂とを引き離すことにより、第2室の内面に上記溝を容易に形成することが可能である。
本発明によれば、中空部の第2室内のインクを第1室側へ導くことができ、これにより、第2室の底面におけるインク溜まりを防止して、移動部材の円滑な動きを実現することが可能となる。
以下、適宜図面を参照して本発明の一実施形態に係るインクカートリッジ10について説明する。なお、以下の実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の要旨を変更しない範囲で、実施形態を適宜変更できることは言うまでもない。
[インクカートリッジ10]
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の一実施形態に係るインクカートリッジ10について説明する。ここに、図1は、インクカートリッジ10の外観構成を模式的に示す斜視図である。図2は、インクカートリッジ10の構成を示す模式図であり、(A)にインクカートリッジ10の背面図が示されており、(B)にインクカートリッジ10の縦断面図が示されている。図3は、図2のIII部の部分拡大図であり、検知部140の内面が詳細に示されている。図4は、検知部140の内面におけるの溝148の形成方法を説明する模式図である。図5は、本発明の実施例1における検知部140の内面の状態を示す拡大写真である。なお、図2では、インク注入部15の図示が省略されている。また、図3では、アーム60の図示が省略されている。
以下、図1乃至図5を参照して、本発明の一実施形態に係るインクカートリッジ10について説明する。ここに、図1は、インクカートリッジ10の外観構成を模式的に示す斜視図である。図2は、インクカートリッジ10の構成を示す模式図であり、(A)にインクカートリッジ10の背面図が示されており、(B)にインクカートリッジ10の縦断面図が示されている。図3は、図2のIII部の部分拡大図であり、検知部140の内面が詳細に示されている。図4は、検知部140の内面におけるの溝148の形成方法を説明する模式図である。図5は、本発明の実施例1における検知部140の内面の状態を示す拡大写真である。なお、図2では、インク注入部15の図示が省略されている。また、図3では、アーム60の図示が省略されている。
インクカートリッジ10は、所謂インクジェットプリンタに用いられるものであり、内部に所定色のインクが収容されている。このインクカートリッジ10は、後述するインク供給装置120が備えるカートリッジケース121(図6参照)に装着されて用いられる。
図1に示されるように、インクカートリッジ10は、扁平形状の略六面体として構成されている。詳細には、インクカートリッジ10は、幅方向(矢印51の方向)に細く、高さ方向(矢印52の方向)及び奥行き方向(矢印53の方向)が上記幅方向51よりも長い略直方体形状に形成されている。このインクカートリッジ10は、図1及び図2に示された装着姿勢で、図中の下側の面を底面104とし、図中の上側の面を上面103として、背面102側から挿入方向50に沿ってカートリッジケース121(図6参照)に挿入される。なお、背面102に対向する面が正面101である。また、正面101、上面103、背面102及び底面104それぞれに隣接し、互いに対向する2つの面が側面105,106である。正面101から見て左側が左側面105であり、右側は右側面106である。
インクカートリッジ10は、大別して、本体20、インク注入部15、検知部140(本発明の中空部の一例)、アーム60(本発明のアームの一例、図2参照)、大気連通口81、インク供給口91により構成されている。
本体20は、フレーム110(本発明のフレームの一例)とフィルム70とによって構成されている。フレーム110は、インクカートリッジ10の筐体を構成する部材であり、インクカートリッジ10の六面101〜106を形成する。したがって、インクカートリッジ10の各面101〜106は、フレーム110の各面に一致する。以下において、インクカートリッジ10の各面に付された符号(101〜106)を用いてフレーム110の各面を示す。
フレーム110は、透光性のある樹脂材料で構成されている。樹脂材料としては、例えばナイロンやポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。このフレーム110は、樹脂材料を射出成形することにより得られる。フレーム110は、透光性を有するものであれば如何なる樹脂で構成されていてもよく、例えば、透明或いは半透明の樹脂で構成することも可能である。フレーム110は、正面101、上面103、背面102、底面104に概ね沿って環状に形成されている。これにより、フレーム110の左側面105及び右側面106に開口が形成されている。
フレーム110の左側面105、右側面106それぞれに、透明な樹脂で構成されたフィルム70が貼り付けられている。具体的には、フィルム70は、フレーム110の左側面105、右側面106の外縁部に溶着されている。このフィルム70によって左側面105及び右側面106の開口が閉塞される。これにより、フレーム110とフィルム70とによって囲まれた空間がインク室12(本発明の第1室に相当、図2(B)参照)として区画される。このように区画されたインク室12にインクが収容される。なお、本実施形態では、フレーム110とフィルム70とによってインク室12を形成することとしたが、例えば、フレーム110自体を直方体の容器状に形成することによってその内部にインク室12を形成してもかまわない。
インク注入部15は、インクをインク室12に注入するためのものである。このインク注入部15は、フレーム110の正面101側に設けられている。詳細には、インク注入部15は、フレーム110の正面101の中段付近よりやや下側に設けられている。図1に示されるように、インク注入部15は、筒部17を備える。筒部17は、正面101からインク室12側に穿設された略円筒状の孔である。筒部17の正面101側の開口18は、本体20の外部に開放されたインク注入口である。この開口18から筒部17の内部にインクが注入されると、筒部17内を通ってインク室12へインクが流入する。本実施形態では、インクカートリッジ10には、少なくとも、検知部140の内部空間147(本発明の第2室に相当)を満たす量のインクが注入される。
検知部140は、インク室12に収容されているインクの量を視覚的、電気的若しくは光学的に検知するためのものである。検知部140は、フレーム110の背面102の中段付近に設けられている。検知部140は、奥行き及び幅方向よりも上下方向に長い略直方体形状に形成されており、背面102の中段付近から外向きへ突出している。具体的には、検知部140は、背面102に平行で、この背面102から外向きに所定距離だけ離間した矩形状の前壁141と、この前壁141の左右の二辺を含む一対の側壁142と、前壁141の上下の二辺を含む上壁143および底壁144とにより区画されてなる。なお、底壁144の内面が、内部空間147の底面である。
本実施形態では、前壁141の幅(矢印51方向の寸法)、つまり、検知部140の幅は、インクカートリッジ10の背面102の幅よりも小さく形成されている。検知部140の幅は、該検知部140の側壁142の側方に後述する光センサ123(図6参照)の発光素子113及び受光素子114が配置可能なように設定されている。
図2に示されるように、検知部140は中空状に形成されており、内部空間147を有する。この内部空間147は、インク室12に連続している。言い換えれば、検知部140は、背面102に対応するフレーム110の側壁の内面108からインクカートリッジ10の装着姿勢においてインク室12から離れる方向(図2(B)の左側)へ延びる内部空間147を有する。本実施形態では、内部空間147は、各壁141〜144によって検知部140と相似形の略直方体形状に形成されている。つまり、内部空間147は、奥行き及び幅方向よりも上下方向に長い略直方体形状の空間である。内部空間147に、インク残量を指し示すためのアーム60のインジケータ部62(本発明の移動部材の一例)が挿入される。なお、本実施形態では、検知部140を背面102から突出した形状とし、その内部に内部空間147を形成する構成としているが、例えば、背面102が平坦であって、背面102に対応するフレーム110の側壁を内面108側から凹ませることで内部空間147及び検知部140を構成してもかまわない。
検知部140は、フレーム110と同じ材質、すなわち、透光性のある樹脂材料で構成されている。そのため、検知部140は、外部から光透過が可能である。つまり、検知部140を構成する各壁141〜144とその内部空間147は、光が照射される照射領域である。なお、検知部140は、透光性を有するものであれば、透明に限らず半透明の樹脂などで構成されていてもよい。本実施形態では、検知部140を構成する側壁142の下部の領域142Aに、後述するカートリッジケース121に取り付けられた光センサ123の発光素子113(図6参照)によって光が照射される。したがって、少なくとも、検知部140の一対の側壁142において領域142Aに対応する領域が透光性を有していれば、当該領域を除く他の部分は透光性を有する必要はない。
図3に示されるように、検知部140の内面にはインク室12側へ延びる複数の溝148(本発明の溝の一例)が形成されている。これら複数の溝148は、一対の側壁142の内面、上壁143の内面、及び底壁144の内面それぞれに形成されている。溝148は、インクカートリッジ10の装着姿勢において、水平方向へ延出している。これら複数の溝148は、インク室12に収容されたインクに対して毛細管作用を生じさせる幅に形成されている。つまり、溝148は、検知部140の内面に付着したインクを毛細管作用によって拡散させ、且つ、溝148に沿ってインクを移動させ得る幅に形成されている。
溝148の幅は均一であってもよいが、少なくとも、所定の範囲内であれば、様々なサイズの幅を有する溝148が不規則に形成されていてもよい。溝148の幅の取り得る具体的なサイズとしては、溝148の幅をdとすると、0.1μm<d<100μmの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、溝148の幅dは、1μm≦d≦50μmの範囲内であればよい。
検知部140は、フレーム110と一体に形成されている。つまり、フレーム110が射出成形されることにより、検知部140がフレーム110と一体に形成される。本実施形態では、検知部140は、2つの型材を用いることにより、その内部空間147と外形形状とが形成される。具体的には、図4に示されるように、内部空間147に対応する第1型材31と、検知部140の外形形状に対応する第2型材32を用いて樹脂を射出成形することに形成される。本実施形態では、第1型材31の表面には、上記溝148の幅や深さに対応する微小な凹凸が付けられている。具体的には、第1型材31の表面を所定の表面粗さに加工することにより、上記微小な凹凸を実現している。検知部140は、以下の第1工程及び第2工程を経て形成される。詳細には、まず、図4(A)に示されるように、第1工程として、第1型材31と第2型材32とを組み付けた状態で、第1型材31と第2型材32との間に形成される空隙に溶融樹脂を注入する。そして、注入した樹脂が固化した後に、第2工程として、第1型材31と固化後の樹脂とを引き抜く。これにより、検知部140の内部空間147が形成される。本実施形態では、上述したように第1型材31の表面に微小な凹凸が形成されているため、第1型材31を固化後の樹脂とを引き抜くと、微小な凹凸が樹脂に接触しながら抜き方向へスライドすることにより、第1型材31と樹脂との接触面に上述した溝148が形成される。
本実施形態では、検知部140の内面に溝148を形成するため、上記第1型材の表面には所定の凹凸が形成されている。この凹凸は、形成する溝148の幅や深さに応じて適宜決定される要素である。上記第1型材の表面を所定の表面粗さにすることにより、上記第1型材の表面の凹凸のサイズを間接的に特定することができる。具体的には、例えば、
日本工業規格(JIS)のB0601で定められる規格に則った種々の表面粗さを有する複数の第1型材を用いて複数の内部空間147を形成し、その内面を電子顕微鏡で撮像した写真を解析することにより実際に形成された溝148の幅を求める。そして、所望する幅の溝148が形成可能な表面粗さを見出すことにより、第1型材の表面の凹凸のサイズを特定可能である。このように見出された表面粗さを有する第1型材を用いて検知部140の内部空間147を形成することにより、その形成過程において固化後の樹脂から第1型材を引き抜く際に、検知部140の内面に所望する幅の擦り傷状の溝148が形成される。
日本工業規格(JIS)のB0601で定められる規格に則った種々の表面粗さを有する複数の第1型材を用いて複数の内部空間147を形成し、その内面を電子顕微鏡で撮像した写真を解析することにより実際に形成された溝148の幅を求める。そして、所望する幅の溝148が形成可能な表面粗さを見出すことにより、第1型材の表面の凹凸のサイズを特定可能である。このように見出された表面粗さを有する第1型材を用いて検知部140の内部空間147を形成することにより、その形成過程において固化後の樹脂から第1型材を引き抜く際に、検知部140の内面に所望する幅の擦り傷状の溝148が形成される。
このようにして形成された溝148を示す拡大写真が図5である。図5に示される拡大写真は、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製、型式:VK−9500)を用いて撮像した。また、溝148の幅の測定には、形状解析アプリケーション(VK−H1A9、Ver.:2.2.1.0)を用いた。測定条件は、以下の通りである。
倍率:20倍
光学ズーム:1倍
光学ズーム:1倍
インク室12内にはアーム60が設けられている。アーム60は、インク室12に収容されたインクの量を検知するための部材である。アーム60の略中心に軸66が設けられている。軸66は、フレーム110に設けられた軸受け(不図示)に支持されている。これにより、アーム60がインク室12内において回動可能となる。
アーム60は、遮光性のある樹脂材料で構成されている。アーム60は、例えば、樹脂材料を射出成形することにより得られる。樹脂材料としては、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート、ポリオレフィン、カーボンブラックが添加されたアクリル樹脂などが該当する。アーム60は、少なくとも光センサ123(図6参照)の発光素子113から出射される光を遮断できるように構成されていればよい。つまり、必ずしもアーム60の全体が遮光性を有している必要はない。
アーム60は、内部が中空状に形成されたフロート部63(本発明のフロート部の一例)を備える。本実施形態では、フロート部63は、アーム60の一方の端部(本発明の第2端に相当)を構成している。フロート部63は浮力体の役割を担っており、インク室12内の液面の位置に応じて上下に変位する。これにより、フロート部63の変位量に応じてアーム60が軸66を中心に回動する。なお、フロート部63は、アーム60を回動させる浮力を発生させ得るものであればよく、内部が中空状のものに限定されない。
アーム60は、インジケータ部62を備える。本実施形態では、インジケータ部62は、アーム60において、フロート部63とは反対側の端部(本発明の第1端に相当)を構成している。インジケータ部62は、幅方向に薄く形成され、鉛直方向へ延びる板状部材からなるものである。したがって、インジケータ部62は軽量なため、アーム60は俊敏に回動可能である。もちろん、フロート部63を除くアーム60全体を薄い板状部材で構成してもかまわない。
インジケータ部62は、検知部140の内部空間147内に挿入されている。インジケータ部62は、アーム60の回動動作に応じて内部空間147内で上下に移動する。本実施形態では、インジケータ部62は、図2(B)に実線で示される第1位置(本発明の第1位置に相当)と、図2(B)に破線で示されるように、上記第1位置から上方へ離間された第2位置(本発明の第2位置に相当)との間で移動する。なお、上記第1位置は、インジケータ部62が底壁144に当接した位置である。また、上記第2位置は、インジケータ部62が底壁144から離れて上壁143に当接した位置である。
インク室12内の液面の位置に応じてフロート部63が上下に変位すると、アーム60が回動し、その回動動作に応じてインジケータ部62が内部空間147内で上下に移動する。具体的には、フロート部63が上昇すると、アーム60が矢印67の方向へ回動して、インジケータ部62が内部空間147の下方へ移動する。インジケータ部62が検知部140の下壁144に到達すると、インジケータ部62は、下壁144に当接した第1位置(図2(B)において実線で示された姿勢)となる。このとき、インジケータ部62は、検知部140の側壁142における下部の領域142A(図1において破線で囲まれた部分)の内側に配置される。上記第1位置において、領域142Aに垂直に光が照射されると、領域142Aを透過した光はインジケータ部62によって遮断される。
一方、インクが所定量未満になって液面の下降とともにフロート部63が下降すると、アーム60が矢印68の方向へ回動して、インジケータ部62が内部空間147の上方へ移動する。インジケータ部62が検知部140の上壁143に到達すると、インジケータ部62は、上壁143に当接した第2位置(図2(B)において破線で示された姿勢)となる。このとき、インジケータ部62は、領域142A(図1参照)の内側から退避した位置に配置される。この第2位置において、領域142Aに垂直に光が照射されると、その光はインジケータ部62に遮られることなく検知部140を透過する。
本実施形態では、カートリッジケース121にインクカートリッジ10が装着された状態で、後述する光センサ123の発光素子113(図6参照)から側壁142の領域142Aへ向けて光が出射される。そのため、インジケータ部62が上記第1位置にある場合は、光はインジケータ部62によって遮断される。一方、インジケータ部62が上記第2位置にある場合は、光はインジケータ部62によって遮断されずに受光素子114(図6参照)へ到達する。したがって、受光素子114の出力信号の波形に基づいてインク室12内のインクが所定量以下であるかどうかを検知することができる。
フレーム110の背面102に、大気連通口81とインク供給口91とが形成されている。つまり、大気連通口81、インク供給口91、及び検知部140は、いずれも同一の壁面に設けられている。
大気連通口81は、背面102において、検知部140より上方に形成されている。この大気連通口81は、インク室12内の空気とインクカートリッジ10の外部とを連通するための貫通孔である。インクカートリッジ10が未使用状態の場合は、大気連通口81は、シール部材(不図示)によって閉塞されている。インクカートリッジ10がカートリッジケース121に装着されると、大気連通口81に後述するロッド137(図6参照)が挿通される。これにより、大気連通口81が開放されて、インク室12内の気圧が大気圧になる。
インク供給口91は、背面102において検知部140よりも下方に形成されている。このインク供給口91は、インク室12からインクを外部に導出するための貫通孔である。インクカートリッジ10が未使用状態の場合は、インク供給口91は、シール部材(不図示)によって閉塞されている。インクカートリッジ10がカートリッジケース121に装着されると、インク供給口91に後述するインクニードル134(図6参照)が挿通される。これにより、インクニードル134を通じてインクカートリッジ10から記録ヘッド(不図示)へインクが供給可能となる。
なお、大気連通口81及びインク供給口91を閉塞するシール部材としては、大気連通口81及びインク供給口91を覆う粘着フィルムなどの簡易なものや、バネ力によってインク室12側から大気連通口81及びインク供給口91を閉塞するバルブなどを用いることが可能である。
[インク供給装置120]
次に、図6及び図7を参照して、インクカートリッジ10が装着されるインク供給装置120の構成について説明する。ここに、図6及び図7は、インク供給装置120の縦断面構造及びインクカートリッジ10の装着過程を模式的に示す断面図である。図6には、インクカートリッジ10の未装着状態が示されている。図7には、インクカートリッジ10の装着状態が示されている。
次に、図6及び図7を参照して、インクカートリッジ10が装着されるインク供給装置120の構成について説明する。ここに、図6及び図7は、インク供給装置120の縦断面構造及びインクカートリッジ10の装着過程を模式的に示す断面図である。図6には、インクカートリッジ10の未装着状態が示されている。図7には、インクカートリッジ10の装着状態が示されている。
インク供給装置120は、インクジェットプリンタに設けられている。インク供給装置120は、インクジェットプリンタが備える記録ヘッド(不図示)へインクを供給するものである。インク供給装置120は、複数のインクカートリッジ10を装着可能なカートリッジケース121を備えている。
カートリッジケース121の内部に、インクカートリッジ10が収容される。カートリッジケース121は、その前面に開口127を有する。開口127を通じてカートリッジケース121の内部にインクカートリッジ10が挿入される。
カートリッジケース121の奥側に、光センサ123が設けられている。光センサ123は、図示しない制御部に接続されている。光センサ123は、カートリッジケース121の背面を構成する壁面129に設けられている。光センサ123は、カートリッジケース121に装着されたインクカートリッジ10内にインクが所定量あるかどうかを検知するためのものである。本実施形態では、光センサ123として、発光素子113及び受光素子114(図6参照)を有する透過型のフォトインタラプタが用いられている。図7に示されるように、カートリッジケース121にインクカートリッジ10が装着されると、光センサ123の発光素子113と受光素子114との間の光路115に検知部140が挿入される。つまり、検知部140の側壁142において、光が照射される領域142A(図1参照)が発光素子113から受光素子114に至る光路115に配置される。
壁面129の下部には、カートリッジケース121の内部から背面側へ貫通する孔132が形成されている。孔132のカートリッジケース121内部側に管状のインクニードル134が接続されている。孔132の背面側にインクチューブ(不図示)が接続されている。カートリッジケース121にインクカートリッジ10が装着されると、インクニードル134がインク供給口91に挿入されて、インク供給口91からインクチューブに至るインク流路が形成される。
壁面129の上部には、ロッド137が設けられている。ロッド137は、壁面129に立設されている。カートリッジケース121にインクカートリッジ10が装着されると、ロッド137が大気連通口81に挿入される。これにより、インク室12と外部とが大気連通口81を通じて連通する。
[実施形態の作用効果]
上述した実施形態では、検知部140の内面、具体的には、一対の側壁142の内面、上壁143の内面、及び底壁144の内面それぞれに複数の溝148が形成されている。そのため、インクカートリッジ10のインク室12内のインクが消費されて、インクの液面が徐々に低下したとしても、インクの減少過程において、内部空間147内のインクが減少するインクに引っぱられるようにしてインク室12へ移る。この際、検知部140の内面に接していたインクは溝148に沿ってインク室12へ導かれる。このように、内部空間147内のインクがインク室12へ導かれるため、内部空間147の底面にインク溜まりが生じ難くなる。これにより、インジケータ部62とインク溜まりとが接触しなくなるため、インジケータ部62は、内部空間147内において常に円滑に移動できる。また、かかる効果に加えて、溝148によって側壁142の内面にインク滴が付着しなくなるため、インク滴のレンズ効果による発光素子113からの光の拡散が防止されて、光センサ123の検知精度を高めることができる。
上述した実施形態では、検知部140の内面、具体的には、一対の側壁142の内面、上壁143の内面、及び底壁144の内面それぞれに複数の溝148が形成されている。そのため、インクカートリッジ10のインク室12内のインクが消費されて、インクの液面が徐々に低下したとしても、インクの減少過程において、内部空間147内のインクが減少するインクに引っぱられるようにしてインク室12へ移る。この際、検知部140の内面に接していたインクは溝148に沿ってインク室12へ導かれる。このように、内部空間147内のインクがインク室12へ導かれるため、内部空間147の底面にインク溜まりが生じ難くなる。これにより、インジケータ部62とインク溜まりとが接触しなくなるため、インジケータ部62は、内部空間147内において常に円滑に移動できる。また、かかる効果に加えて、溝148によって側壁142の内面にインク滴が付着しなくなるため、インク滴のレンズ効果による発光素子113からの光の拡散が防止されて、光センサ123の検知精度を高めることができる。
また、上記溝148は、検知部140の内面に付着したインクに対して毛細管作用を発生させるものである。そのため、例えば、インクの減少過程においてインク室12のインクから途切れたインクがインク滴として検知部140の内面に付着した場合でも、そのインク滴は、内部空間147の底面へ向けて落下することなく、溝148による毛細管作用によってインク室12側へ拡散しつつ、インク室12側へ導かれる。これにより、内部空間147の底面にインクが溜まらなくなる。
また、上述の実施形態では、インジケータ部62を俊敏に移動させるために、インジケータ部62を鉛直方向に延びる板状部材で構成して軽量化している。また、検知部140の幅がインジケータ部62に併せて狭く形成されている。このような構成では、内部空間147内にインクが残留し易くなるが、溝148によってインクがインク室12へ導かれるため、内部空間147の底面におけるインク溜まりが生じ難くなり、インジケータ部62が円滑に移動できる。
また、溝148の幅は、0.1μmより大きく100μm未満である。インクカートリッジ10に用いられるインクとしては、染料インクの他に顔料インクがある。顔料インクの粒子径は概ね0.1μmである。そのため、顔料インクを用いた場合は、溝148がそれよりも大きい幅に形成されているから、染料インクを用いた場合に限られず、顔料インクを用いた場合でも、インクを溝148に沿って好適にインク室12へ導くことが可能である。また、溝148の幅が100μm未満であるため、溝148内にインクが保持されることはなく、表面張力によって溝148外へ突出するインクがインジケータ部62の移動を阻害するおそれもない。
また、溝148の幅は、より好ましくは、1μm以上であり、50μm以下である。顔料インクの粒子径は必ずしも均一ではなくバラツキがある。したがって、粒子径のバラツキの影響を無くすため、溝148の幅の下限値は、0.1μmより大きい1μmとしている。また、インクの表面張力も必ずしも均一ではなく、インクの種類等に応じてバラツキがある。そのため、溝148の幅の上限値は、100μmよりも小さい50μmとした。これにより、顔料インクの粒子径のバラツキや表面張力のバラツキにかからわず、インクをインク室12側へ効率よく移動させることができる。
また、上述の実施形態では、所定の表面粗さを有する第1型材31を用いて内部空間147が形成されると同時に、検知部140の内面に所望の幅の溝148が形成される。そのため、内部空間147の形成工程とは別の工程で検知部140の内面に溝148を形成する必要はなく、溝148を容易に形成することができる。
なお、上述の実施形態では、検知部140の内面に水平方向へ延びる溝148を形成することとしたが、例えば、図8に示されるように、インク室12側へ下るように傾斜された溝149(本発明の溝の一例)を側壁142の内面に形成してもかまわない。ここに、図8は、本発明の溝の変形例を示す模式断面図である。この溝149は、図示されるように、緩やかに傾斜している。このような溝149であれば、検知部140の前壁141側の溝149の端部にインクが溜まらず、検知部140の内面に付着したインク滴の全てが、該インク滴の自重と溝149とによってインク室12側へ導かれる。なお、溝149は、上述の如く傾斜している以外は、溝148と同様に構成されている。
以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明が以下の実施例に限定されないことは勿論である。
実施例1から実施例3、比較例1から比較例3として、上述の実施形態のインクカートリッジ10と同様に構成されたインクカートリッジを製作した。製作したインクカートリッジは、フレーム110がポリプロピレンで構成され、フィルム70もポリプロピレンで構成されている。インクカートリッジ内部には、装着姿勢(図1に示される姿勢)において、内部空間147がインクで満たされない程度の量のインクを注入した。インクとしては、表面張力が36.0[mN/m]の顔料インク(ブラザー工業株式会社製、型式:LC10Bk)を用いた。なお、使用した顔料インクの表面張力は、全自動表面張力計(協和界面科学株式会社製、型式:CBVP−Z)を用いて周知のウイルヘルミ法に基づいて行った。
[実施例1]
実施例1のインクカートリッジでは、表面粗さが0.8μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が5μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製、型式:VK−9500)を用いて以下の測定条件の下で検知部140の内面を撮像し、その写真データを形状解析アプリケーション(VK−H1A9、Ver.:2.2.1.0)で解析することにより測定した。詳細には、形状解析アプリケーションによって無造作に10個の溝を抽出して、各溝幅を解析により測定し、そして、その平均値を算出した。算出された値を当該実施例1の溝幅とした。
実施例1のインクカートリッジでは、表面粗さが0.8μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が5μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、超深度カラー3D形状測定顕微鏡(株式会社キーエンス製、型式:VK−9500)を用いて以下の測定条件の下で検知部140の内面を撮像し、その写真データを形状解析アプリケーション(VK−H1A9、Ver.:2.2.1.0)で解析することにより測定した。詳細には、形状解析アプリケーションによって無造作に10個の溝を抽出して、各溝幅を解析により測定し、そして、その平均値を算出した。算出された値を当該実施例1の溝幅とした。
倍率:20倍
光学ズーム:1倍
光学ズーム:1倍
[実施例2]
実施例2のインクカートリッジでは、表面粗さが0.4μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が1μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
実施例2のインクカートリッジでは、表面粗さが0.4μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が1μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
[実施例3]
実施例3のインクカートリッジでは、表面粗さが5.0μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が50μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
実施例3のインクカートリッジでは、表面粗さが5.0μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が50μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
[比較例1]
比較例1のインクカートリッジでは、表面粗さが10.0μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が100μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
比較例1のインクカートリッジでは、表面粗さが10.0μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が100μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
[比較例2]
比較例2のインクカートリッジでは、表面粗さが0.1μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が0.1μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
比較例2のインクカートリッジでは、表面粗さが0.1μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、平均幅が0.1μmの溝が確認できた。なお、溝の幅は、上記実施例1と同じ測定法で測定した。
[比較例3]
比較例3のインクカートリッジでは、表面粗さが0.05μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、溝と評価し得るものは確認できなかった。つまり、検知部140の内面には溝が形成されなかった。
比較例3のインクカートリッジでは、表面粗さが0.05μmの金型を用いて検知部140及び内部空間147を形成した。検知部140の内面には、溝と評価し得るものは確認できなかった。つまり、検知部140の内面には溝が形成されなかった。
[評価試験1]
実施例1から実施例3、及び比較例1から比較例3の各インクカートリッジを用いて以下の要領で試験を行った。まず、インクカートリッジ10を傾けるなどして内部空間147をインクで満たした後に再びインクカートリッジ10を装着姿勢に戻して、内部空間147からインク室12へインクを移す。そして、インクカートリッジ10が装着姿勢に戻された直後における内部空間147内のインクの有無を目視で確認する。また、波長が940nmの赤外線による検知試験を併せて行った。赤外線検知試験は、上記赤外線を側壁142の領域142Aに照射させた結果、検知部140を反対側へ透過した赤外線の透過量が所定量以上あるかどうかを判定する試験である。なお、上記試験は、いずれも、実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3のそれぞれについて、3回行った。
実施例1から実施例3、及び比較例1から比較例3の各インクカートリッジを用いて以下の要領で試験を行った。まず、インクカートリッジ10を傾けるなどして内部空間147をインクで満たした後に再びインクカートリッジ10を装着姿勢に戻して、内部空間147からインク室12へインクを移す。そして、インクカートリッジ10が装着姿勢に戻された直後における内部空間147内のインクの有無を目視で確認する。また、波長が940nmの赤外線による検知試験を併せて行った。赤外線検知試験は、上記赤外線を側壁142の領域142Aに照射させた結果、検知部140を反対側へ透過した赤外線の透過量が所定量以上あるかどうかを判定する試験である。なお、上記試験は、いずれも、実施例1から実施例3及び比較例1から比較例3のそれぞれについて、3回行った。
[評価方法1]
内部空間147内のインクの有無については、いずれの回においても目視確認で検知部140の内面にインク滴が一切視認できなかった場合は、インクが付着していないと評価した。また、赤外線検知試験については、いずれの回においても、検知部140を反対側へ透過した赤外線の透過量の平均値が50%以上である場合に赤外線検知が可能と評価した。なお、赤外線検知が可能であれば、上述の実施形態の光センサ123を用いて行われるインク量の判定が正確に行われると評価できる。
内部空間147内のインクの有無については、いずれの回においても目視確認で検知部140の内面にインク滴が一切視認できなかった場合は、インクが付着していないと評価した。また、赤外線検知試験については、いずれの回においても、検知部140を反対側へ透過した赤外線の透過量の平均値が50%以上である場合に赤外線検知が可能と評価した。なお、赤外線検知が可能であれば、上述の実施形態の光センサ123を用いて行われるインク量の判定が正確に行われると評価できる。
[評価結果1]
上記評価試験の結果は下記の表1に示す通りである。
表1に示されるように、評価試験の結果、実施例1から実施例3では、内部空間147内におけるインクの付着が目視で確認できなかった。また、赤外線検知試験では、所定以上の透過量を得ることができた。一方、比較例1から比較例3では、内部空間147におけるインクの付着が目視で確認できた。また、赤外線検知試験では、所定以上の透過量を得ることができなかった。したがって、少なくとも、幅dが1μm≦d≦50μmの範囲の溝が検知部140の内面に形成されていれば、インク滴やインク溜まりを残さずにインクが内部空間147からインク室12へ素早く移動することが認められた。
[実施例4]
実施例4として、上述の実施形態のインクカートリッジ10に使用可能なインクを用意した。用意したインクは、顔料インク(ブラザー工業株式会社製、型式:LC10Bk)である。実施例4のインクは、出願人が製造するインクジェットプリンタ(型式:DCP750CN)で用いられるインクである。このインクの表面張力は35.7[mN/m]であった。表面張力は、全自動表面張力計(協和界面科学株式会社製、型式:CBVP−Z)を用いて周知のウイルヘルミ法に基づいて行った。詳細には、3回に渡って表面張力を測定し、その平均値を算出した。算出された値を当該実施例4のインクの表面張力とした。以下の実施例5及び比較例4から比較例8についても同様の測定方法で表面張力を測定した。
実施例4として、上述の実施形態のインクカートリッジ10に使用可能なインクを用意した。用意したインクは、顔料インク(ブラザー工業株式会社製、型式:LC10Bk)である。実施例4のインクは、出願人が製造するインクジェットプリンタ(型式:DCP750CN)で用いられるインクである。このインクの表面張力は35.7[mN/m]であった。表面張力は、全自動表面張力計(協和界面科学株式会社製、型式:CBVP−Z)を用いて周知のウイルヘルミ法に基づいて行った。詳細には、3回に渡って表面張力を測定し、その平均値を算出した。算出された値を当該実施例4のインクの表面張力とした。以下の実施例5及び比較例4から比較例8についても同様の測定方法で表面張力を測定した。
[実施例5]
実施例5として、アセチレンジオール型界面活性剤が0.05%添加された顔料インク(型式:BK1)を用意した。このインクの表面張力は32.9[mN/m]であった。
実施例5として、アセチレンジオール型界面活性剤が0.05%添加された顔料インク(型式:BK1)を用意した。このインクの表面張力は32.9[mN/m]であった。
[比較例4]
比較例4として、出願人が製造するインクジェットプリンタ(型式:DCP−110C)で用いられる顔料インク(型式:LC09Bk)を用意した。このインクの表面張力は38.9[mN/m]であった。
比較例4として、出願人が製造するインクジェットプリンタ(型式:DCP−110C)で用いられる顔料インク(型式:LC09Bk)を用意した。このインクの表面張力は38.9[mN/m]であった。
[比較例5]
比較例5として、アセチレンジオール型界面活性剤が0.1%添加された顔料インク(型式:BK2)を用意した。その表面張力は29.7[mN/m]であった。
比較例5として、アセチレンジオール型界面活性剤が0.1%添加された顔料インク(型式:BK2)を用意した。その表面張力は29.7[mN/m]であった。
[比較例6]
比較例6として、アセチレンジオール型界面活性剤が0.1%添加された顔料インク(型式:BK3)を用意した。その表面張力は30.0[mN/m]であった。
比較例6として、アセチレンジオール型界面活性剤が0.1%添加された顔料インク(型式:BK3)を用意した。その表面張力は30.0[mN/m]であった。
[比較例7]
比較例7として、アルカノールアミド型界面活性剤が0.27%添加された顔料インク(型式:BK4)を用意した。その表面張力は29.7[mN/m]であった。
比較例7として、アルカノールアミド型界面活性剤が0.27%添加された顔料インク(型式:BK4)を用意した。その表面張力は29.7[mN/m]であった。
[比較例8]
比較例8として、アルコール型界面活性剤が0.3%添加された顔料インク(型式:BK5)を用意した。その表面張力は31.4[mN/m]であった。
比較例8として、アルコール型界面活性剤が0.3%添加された顔料インク(型式:BK5)を用意した。その表面張力は31.4[mN/m]であった。
[評価試験2]
実施例4、実施例5、及び比較例4から比較例8の各インクそれぞれが貯留されたタンクと、幅dが5μm≦d≦50μmの範囲内の複数の溝が幅方向(水平方向)に形成されたテストピースとを用いて、テストピースに対する各インクの拡散及び垂れ落ちの確認試験を行った。テストピースとしては、樹脂製で平板棒状に形成されたものを使用した。なお、テストピースに上記複数の溝を形成する手法は、上述の実施形態において検知部140の内面に溝148を形成する手法と概ね同様である。つまり、所定の表面粗さに形成された型材を用いて溶融樹脂を上記テストピースの形状に成形する。この際、固化した樹脂から上記型材を引き抜くことにより、テストピースの表面に上記複数の溝を形成する。試験に用いたテストピースは、ポリプロピレンで構成されたものである。テストピースは、厚さが3mm、幅が10mmの平板状の棒であり、長さが70mmである。この評価試験は、各インクが貯留されたそれぞれのタンクに上記テストピースを深さ50mmまで挿入し、そのまま30秒間浸漬させた後に、テストピースを大気中に引き上げ、その後、テストピースの表面に付着したインクが垂れ落ちるまで時間を測定することにより行う。なお、上記試験は、実施例4、実施例5、及び比較例4から比較例8のそれぞれについて、3回行った。
実施例4、実施例5、及び比較例4から比較例8の各インクそれぞれが貯留されたタンクと、幅dが5μm≦d≦50μmの範囲内の複数の溝が幅方向(水平方向)に形成されたテストピースとを用いて、テストピースに対する各インクの拡散及び垂れ落ちの確認試験を行った。テストピースとしては、樹脂製で平板棒状に形成されたものを使用した。なお、テストピースに上記複数の溝を形成する手法は、上述の実施形態において検知部140の内面に溝148を形成する手法と概ね同様である。つまり、所定の表面粗さに形成された型材を用いて溶融樹脂を上記テストピースの形状に成形する。この際、固化した樹脂から上記型材を引き抜くことにより、テストピースの表面に上記複数の溝を形成する。試験に用いたテストピースは、ポリプロピレンで構成されたものである。テストピースは、厚さが3mm、幅が10mmの平板状の棒であり、長さが70mmである。この評価試験は、各インクが貯留されたそれぞれのタンクに上記テストピースを深さ50mmまで挿入し、そのまま30秒間浸漬させた後に、テストピースを大気中に引き上げ、その後、テストピースの表面に付着したインクが垂れ落ちるまで時間を測定することにより行う。なお、上記試験は、実施例4、実施例5、及び比較例4から比較例8のそれぞれについて、3回行った。
[評価方法2]
この評価試験2は、幅dが5μm≦d≦50μmの範囲内の複数の溝が検知部140の内面に形成されたインクカートリッジに対するインクの適用可能性を目的とするものである。全ての回において、制限時間(3分)以内に、インクが溝に沿って幅方向へ移動した後にインクがテストピースから一滴も残さずに垂れ落ちた場合は、上記インクカートリッジに使用するインクとして好適と評価した。また、制限時間以内にインク滴が垂れ落ちなかった場合は不適と評価した。
この評価試験2は、幅dが5μm≦d≦50μmの範囲内の複数の溝が検知部140の内面に形成されたインクカートリッジに対するインクの適用可能性を目的とするものである。全ての回において、制限時間(3分)以内に、インクが溝に沿って幅方向へ移動した後にインクがテストピースから一滴も残さずに垂れ落ちた場合は、上記インクカートリッジに使用するインクとして好適と評価した。また、制限時間以内にインク滴が垂れ落ちなかった場合は不適と評価した。
[評価結果2]
上記評価試験の結果は下記の表2に示す通りである。
上記評価試験の結果は下記の表2に示す通りである。
表2に示されるように、試験の結果、実施例4及び実施例5のインクについては、制限時間(3分)以内にテストピースからインク滴が垂れ落ちたことが確認できた。実施例4及び実施例5それぞれの試験においては、テストピースに形成された溝に沿ってインクが幅方向へ拡散し、その後、幅方向両端部の側面に沿ってインクが鉛直下方へ垂れ落ちたことが確認できた。一方、比較例4から比較例8のインクにつては、測定制限時間(3分)以内にインクが溝に沿って幅方向へ拡散せず、テストピースからインクが垂れ落ちなかったことが確認できた。したがって、この試験では、少なくとも、幅dが5μm≦d≦50μmの範囲の溝を有する樹脂面に対しては、表面張力が30.0〜38.0[mN/m]のインク、より好ましくは、表面張力が31.0〜35.0[mN/m]のインクが、上記溝に沿って拡散し易いことが確認できた。したがって、少なくとも、幅dが5μm≦d≦50μmの範囲の溝が検知部140の内面に形成されている場合は、表面張力が30.0〜38.0[mN/m]のインク、より好ましくは、表面張力が31.0〜35.0[mN/m]のインクを適用することにより、インクが溝に沿って内部空間147からインク室12へ素早く移動すると考えられる。
10・・・インクカートリッジ
12・・・インク室
60・・・アーム
62・・・インジケータ部
63・・・フロート部
108・・・内面
110・・・フレーム
120・・・インク供給装置
121・・・カートリッジケース
123・・・光センサ
113・・・発光素子
114・・・受光素子
140・・・検知部
147・・・内部空間
148,149・・・溝
12・・・インク室
60・・・アーム
62・・・インジケータ部
63・・・フロート部
108・・・内面
110・・・フレーム
120・・・インク供給装置
121・・・カートリッジケース
123・・・光センサ
113・・・発光素子
114・・・受光素子
140・・・検知部
147・・・内部空間
148,149・・・溝
Claims (12)
- インクが収容される第1室を区画するフレームと、
上記フレームの側壁に設けられ、上記側壁の内面から水平方向外側へ上記第1室と連続する中空状の第2室を区画する中空部と、
上記第2室内に設けられ、上記第1室内のインク量に応じて上記第2室の底面に当接する第1位置と該第1位置から上方へ離間する第2位置との間で移動可能な移動部材と、を具備し、
上記中空部の内面に、上記第1室側へ延びる溝が形成されているインクカートリッジ。 - 上記溝は、上記中空部の内面に付着したインクを毛細管作用によって上記第1室側へ導くものである請求項1に記載のインクカートリッジ。
- 上記移動部材は、鉛直方向に延びる薄肉の板状部材からなり、
上記中空部は、上記第1室の壁面幅に対して幅狭に形成されている請求項1又は2に記載のインクカートリッジ。 - 上記第1室内に回動可能に設けられるアームの第1端が上記移動部材であり、上記アームにおける上記第1端とは反対側の第2端がフロート部であって、
上記移動部材は、上記フロート部の移動に伴って、上記第2室内の上記第1位置と上記第2位置との間で移動する請求項1から3のいずれかに記載のインクカートリッジ。 - 上記移動部材は、上記第1室内のインクが所定量未満のときに上記第2位置に位置し、上記第1室内のインクが所定量以上のときに上記第1位置に位置する請求項1から4のいずれかに記載のインクカートリッジ。
- 上記溝は、水平方向へ延出されている請求項1から5のいずれかに記載のインクカートリッジ。
- 上記溝は、上記第1室側へ下るように傾斜している請求項1から5のいずれかに記載のインクカートリッジ。
- 上記溝の幅は、0.1μmより大きく100μm未満である請求項1から7のいずれかに記載のインクカートリッジ。
- 上記溝の幅は、1μm以上であり、50μm以下である請求項8に記載のインクカートリッジ。
- 上記中空部は、透光性を有する透光領域を有し、
上記移動部材は、上記透光領域内で移動するものである請求項1から9のいずれかに記載のインクカートリッジ。 - インクジェットプリンタに対して着脱可能である請求項1から10のいずれかに記載のインクカートリッジ。
- 請求項1から請求項11のいずれかに記載のインクカートリッジが有する上記溝を形成する溝形成方法であって、
所定の凹凸面を有し且つ上記第2室の内面形状に対応する第1型材と、上記中空部の外形形状に対応する第2型材とを組み合わせた際に形成される間隙に溶融樹脂を注入し、樹脂が固化した後に上記第1型材と固化後の樹脂とを引き離すことにより、上記第1型材と固化後の樹脂との接触面に上記溝を形成する溝形成方法。
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