以下、本発明の実施の形態に係るインクカートリッジ装着装置について、これを搭載したインクジェット記録装置(以下、「記録装置」と称する)を例にとって図面を参照しつつ説明する。
[記録装置全体の概要]
図1は、本発明を適用した記録装置1の外観構成を示す斜視図であり、本実施の形態では記録装置1としてプリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、及びファクシミリ機能等を備える所謂複合機を図示している。図1に示すように記録装置1は、インクジェット方式によって画像を記録するプリンタ部2を、略直方体形状の筐体1aの下部に備え、且つスキャナ部3を筐体1aの上部に備えて構成されている。
記録装置1のプリンタ部2は、筐体1aの正面(前側)に開口4を有しており、この開口4の内側には、下側の給紙トレイ5と上側の排紙トレイ6とが2段にして設けられている。給紙トレイ5には被記録体として複数枚の記録用紙を収容でき、例えば、A4サイズ以下の各種サイズの記録用紙が複数枚収容できるようになっている。
プリンタ部2の正面の右下部分には扉7が開閉自在に設けられ、該扉7の内方にはカートリッジ装着装置8(図2参照)が設けられている。従って、扉7が開かれるとカートリッジ装着装置8が正面側に露出し、カートリッジ10(図2参照)が水平方向から着脱可能になっている。カートリッジ装着装置8には、使用されるインク色に対応したカートリッジ10の収容ケース9(図2参照)が備えられており、本プリンタ部2では、例えば5色のカラーインク、即ち、染料インクであるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)と、顔料インクであるブラック(Bk)とが使用される。したがって、カートリッジ装着装置8には内部が5つに区分けされた収容ケース9が設けられており、区分けされた各スペースに、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、フォトブラック(PBk)、ブラック(Bk)の各色インクを貯留するカートリッジ10が収容される。
記録装置1の上部に設けられたスキャナ部3は、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。即ち、図1に示されるように記録装置1の上面には、該記録装置1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー1bが備えられている。そして、原稿カバー1bの下側に、原稿が載置されるプラテンガラスや原稿の画像を読み取るイメージセンサなどが配設されている。
記録装置1の正面上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル11が設けられている。操作パネル11は、各種操作ボタンや情報を出力する出力部としての液晶ディスプレイ11a等から構成されており、記録装置1は、オペレータによる操作パネル11の操作の結果、該操作パネル11から出力される指示に基づいて動作可能になっている。また、記録装置1が外部のコンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても記録装置1は動作可能になっている。
記録装置1の正面左上部分にはスロット部12が設けられている。スロット部12には、記憶媒体である各種小型メモリカードが装填可能であり、操作パネル11において所定の操作を行うことにより、スロット部12に装填された小型メモリカードに記憶されたデータが読み出し可能となっている。読み出されたデータは、操作パネル11の液晶ディスプレイに表示させることも可能であり、この表示に基づいて任意に選択された画像をプリンタ部2により記録用紙に記録させることができる。
図2は、記録装置1が有するプリンタ部2の構成を示す模式的断面図である。図2に示すように、記録装置1の底部近傍には給紙トレイ5が設けられており、該給紙トレイ5の上方には、図1の左右方向に長寸を成す平坦な板状のプラテン14が設けられている。このプラテン14の更に上方には画像記録ユニット17が設けられており、この画像記録ユニット17は、図示しないノズル孔からインクを吐出するヘッドユニット15a、該ヘッドユニット15aへインクを供給するサブタンク15b、及びヘッドユニット15aと電気的に接続されたアクチュエータへの駆動信号をヘッドユニット15aに出力するヘッド制御基板15c(例えばCOF:Chip on Film)等から構成されている。この画像記録ユニット17が有するサブタンク15bは、記録装置1のカートリッジ装着装置8へ装着されたカートリッジ10との間で、可撓性のチューブ22を介して連通するようになっており、カートリッジ10から供給されたインクを一時的に貯留し、更にこれをヘッドユニット15aへと供給する。
また、給紙トレイ5の後方からは用紙搬送路18が延設されている。この用紙搬送路18は、給紙トレイ5の後方から上方へ向かい更に前方へ向かうように湾曲した湾曲パス18aと、該湾曲パス18aの終点から更に前方へ延びるストレートパス18bとから成り、画像記録ユニット17の配設箇所以外の部分では、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とで構成されている。
給紙トレイ5の直上には、該給紙トレイ5内の記録用紙を用紙搬送路18へ供給する給紙ローラ19が設けられている。また、用紙搬送路18における湾曲パス18aの下流部分近傍には、搬送ローラ及びピンチローラから成る一対の搬送ローラ対20が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。更に、用紙搬送路18におけるストレートパス18bの下流部分近傍には、排紙ローラ及びピンチローラから成る一対の排紙ローラ対21が、両ローラによって用紙搬送路18を上下から挟むようにして設けられている。上述した画像記録ユニット17とプラテン14とは、搬送ローラ対20と排紙ローラ対21との間にて、ストレートパス18bを上下から挟むようにして設けられている。
また、画像記録ユニット17は、図1の左右方向(プラテン14の長手方向)へ延びる図示しないガイドロッドにより、図1の左右方向へのスライド移動可能なように支持されており、更に画像記録ユニット17は、プーリ及びベルト等から成る図示しないヘッド駆動機構に連結されている。従って、該ヘッド駆動機構が駆動することにより、前記ガイドロッドに沿って図1の左右方向へ所定範囲内で走査可能になっている。
このようなプリンタ部2によれば、給紙トレイ5内の記録用紙が、給紙ローラ19によって用紙搬送路18へ供給され、続いて搬送ローラ対20によって用紙搬送路18上を湾曲パス18aからストレートパス18bへと搬送される。ストレートパス18bに到達した記録用紙は、ここで対向配置された画像記録ユニット17が有するヘッドユニット15aから吐出されるインクにより画像が記録され、記録が完了すると排紙ローラ対21によってストレートパス18bから排出されて排紙トレイ6へ収容されるようになっている。
[カートリッジの構成]
次に、図3〜図11を参照して、一方のカートリッジ10の構成について説明する。図3は、カートリッジ10の外観構成を示す斜視図であり、図4は、図3に示すカートリッジ10の側面図である。なお、本実施の形態に係るカートリッジ10は、伸縮可能な構成となっており、図3(a)及び図4(a)は収縮したときの構成、図3(b)及び図4(b)は伸長したときの構成をそれぞれ示している。また、以降の説明では、図3におけるカートリッジ10の手前側を前部または前方とし、奥側を後部または後方として説明する。
図3及び図4に示すように、カートリッジ10は、扁平形状の略六面体に構成されており、ここに図示された起立姿勢で幅方向(Z方向)の寸法が小さく、高さ方向(Y方向)及び奥行き方向(X方向)の各寸法が幅方向の寸法よりも大きい直方体形状となっている。そして、このような起立姿勢のまま、X方向へ向かって運ばれてカートリッジ装着装置8へ装着される。このようなカートリッジ10は、内部のインク室100(図5参照)にインクを収容するカートリッジ本体30(図4参照)と、該カートリッジ本体30の前部30aをカバーする前側カバー31と、カートリッジ本体30の後部30bをカバーする後側カバー32とから構成されている。本実施の形態では、これらカートリッジ本体30、前側カバー31、及び後側カバー32は、何れもナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレン等の樹脂材料によって形成されている。以下、カートリッジ10が有するカートリッジ本体30、前側カバー31、及び後側カバー32について順に説明する。
[カートリッジ本体]
図5は、カートリッジ本体30の外観形状を示す斜視図であり、(a)は斜め前方から見たときの構成、(b)は斜め後方から見たときの構成をそれぞれ示している。また、図6は、図5に示すカートリッジ本体30の側面図、図7は、図5におけるVII-VII線でカートリッジ本体30を切断したときの断面図、図8は、カートリッジ本体30の前部30aの構成を拡大して示す拡大断面図である。
図5、図6に示すように、カートリッジ本体30はカートリッジ10と同様の扁平形状の略六面体として構成されており、上下方向に長寸を成してカートリッジ10の挿入方向(X方向)の前側に位置する前面41および後側に位置する後面42と、カートリッジ10の挿入方向へ長寸を成す上面43及び下面44と、挿入方向の左右に位置して正方形状を成し、後面42から見て左側が左側面45で、右側が右側面46とを有している。そして、このカートリッジ本体30は、その筐体を成すフレーム50と、インクの残量を検出するためのアーム70と、大気連通バルブ80と、インク供給バルブ90と、フレーム50と共にインク室100を形成する図示しない透明なフィルムとによって主に構成されている。
このうちフレーム50は、上記の通りカートリッジ本体30の筐体を成すものであって、上述した各面41〜46を形成する。また、フレーム50は透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されており、例えば、ポリアセタール、ナイロン、ポリエチレン、又はポリプロピレンなどの樹脂材料を射出成形することによって形成されている。
図5及び図6に示すように、フレーム50は、カートリッジ本体30の前面41、上面43、後面42、下面44に沿うように側面視で環状に形成された外周壁51と該外周壁51の内側に設けられた内壁52とを有し、これら外周壁51及び内壁52は一体的に形成されている。また、外周壁51の上面43には下方へ窪んだ凹部59が形成され、下面44には上方へ窪んだ凹部60が形成されている。そして、このように環状を成す外周壁51の左右の周縁部(側面45、46側)には、透明な樹脂で構成された薄肉状のフィルムが溶着されて左右の開口57a,57bが閉塞され、これによって外周壁51とフィルムとで囲まれる空間がインク室100として区画される。
外周壁51内に設けられた内壁52は、外周壁51と略同様の幅方向寸法を有し、その左右の縁部(側面45、46側)にも上記フィルムが溶着される。従って、フィルムの弛みを抑制できると共に、前側カバー31及び後側カバー32に対してカートリッジ本体30側への外力が加えられても、これらのカバー31,32を内側から支持し、その変形を規制している。
一方、図5に示すように、フレーム50の後側下部にはインク注入部150が一体的に形成されている。インク注入部150は、フレーム50の後面42からインク室100へ向かって穿設された孔を有する筒状体であって、インク室100にインクを注入する際に該インクの注入路を成す。
また、フレーム50の前部であって上下方向の略中央部分には、フレーム50と一体的に形成された検知窓140が、前面41から前方へ突出するようにして設けられている。この検知窓140は、インク室100に収容されているインク残量を視覚的又は光学的に検知するためのものであり、フレーム50と同様に透光性のある透明又は半透明の樹脂材料で構成されている。検知窓140には、記録装置1のカートリッジ装着装置8に取り付けられた後述するフォトインタラプタなどの光学式センサ230から出射された光が側方(Z方向)から照射される。図5に示すように検知窓140は、左右の側面140a,140aを有する中空のボックス形状を成しており、その内部空間142はインク室100に連通している。
次に、アーム70は、図7に示すようにフレーム50内にあって前方へ延びるインジケータ部72と後方へ延びるフロート部73とを有し、これらの中間部分に位置する支持軸77が、外周壁51の内面に突設されたリブ74によって揺動可能に支持されている。このうちインジケータ部72は、アーム70が揺動することによって上記検知窓140に対して進入又は退出し、進入している状態では外側方からの入射光が検知窓140を透過できず、退出している状態では透過可能になる。また、フロート部73は中空に形成されており、インク室100に収容されるインクに対して浮力体の役割を担う。
このようなアーム70は、インク室100にインクが満載された状態では、フロート部73が上方に位置し、インジケータ部72は反対に下方に位置して検知窓140の内部空間142に進入した状態となっている。この状態からインクが所定量を超えて減少していくと、フロート部73が下降しはじめ、これに伴ってアーム70が支持軸77を中心に揺動する。すると、インジケータ部72は検知窓140から上昇し、最終的には検知窓140から退出することとなる。そして、インジケータ部72が検知窓140から退出した状態では、外側方からの入射光は検知窓140を透過可能になる。従って、後述するように検知窓140を光が透過可能か否かを光学式センサで検知することにより、インク室100内のインク残量を検出することができる。
次に、大気連通バルブ80は、図7に示すように検知窓140の上方であってフレーム50の前面41の上部に形成された第1バルブ収容室54に収容されている。図8に拡大して示すように、第1バルブ収容室54はインク室100に連通する開口82を有し、大気連通バルブ80はこの開口82に装着されて該開口82を開閉するバルブ機構を成している。
より詳しく説明すると、大気連通バルブ80は、バルブ本体87、バネ86、シール部材83、及びキャップ85等の部材で構成されている。バルブ本体87は棒状を成し、その前端が開口82から前方へ突出するようにして配設されている。シール部材83及びキャップ85は共に円筒状を成し、シール部材83にキャップ85が外嵌した状態で該キャップ85が第1バルブ収容室54の開口82に装着され、上記バルブ本体87はシール部材83の内側を挿通して且つ前後方向(X方向)へスライド可能に設けられている。更に、バネ86は第1バルブ収容室54内に配設されて、バルブ本体87を後方から前方へ向けて付勢している。
このような大気連通バルブ80は、バルブ本体87がバネ86に付勢されて前方に位置する状態(図8の状態)では、第1バルブ収容室54の開口82を閉塞する一方、バルブ本体87がバネ86の付勢力に抗って後方へ位置すると、開口82とバルブ本体87との隙間に大気連通口81が形成され、インク室100はこの大気連通口81を介して大気に開放された状態となる。
次に、インク供給バルブ90は、図7に示すように検知窓140の下方であってフレーム50の前面41の下部に形成された第2バルブ収容室55に収容されている。図8に拡大して示すように、第2バルブ収容室55はインク室100に連通する開口92を有し、インク供給バルブ90はこの開口92に装着されて該開口92を開閉するバルブ機構を成している。
より詳しく説明すると、インク供給バルブ90は、バルブ本体97、バネ96、シール部材93、キャップ95等の部材で構成されている。バルブ本体97は、軸芯を前後方向へ向けた円筒状を成し、第2バルブ収容室55の開口92内に配設されている。シール部材93及びキャップ95は共に前後方向への貫通孔を有する略円筒状を成し、シール部材93にキャップ95が外嵌した状態で該キャップ95が開口92に装着されており、上記バルブ本体97はシール部材93よりも開口92の内方(即ち、第2バルブ収容室55の内方)にて前後方向へスライド可能に設けられている。更に、バネ96は第2バルブ収容室55内に配設されて、バルブ本体97を後方から前方へ向けて付勢している。
このようなインク供給バルブ90は、バルブ本体97がバネ96に付勢されて前方に位置する状態(図8の状態)では、第2バルブ収容室55の開口92を閉塞している。一方で、カートリッジ装着装置8には、これにカートリッジ10が装着されたときのインク供給バルブ90に対応する位置にインクニードル(図示せず)が備えられており、該インクニードルは、カートリッジ10が装着されたときにバルブ本体97を後方へ押動する。そして、インクニードルに押動されたバルブ本体97が、バネ96の付勢力に抗って後方へ位置すると、開口92とバルブ本体97との隙間にインク供給口91が形成される。その結果、インク室100はカートリッジ装着装置8に接続されたチューブ22にインク供給口91を介して連通し、インク室100内のインクがチューブ22を通じてサブタンク15b(図2参照)へ供給される。
ところで、図7に示すように、フレーム50における第1バルブ収容室54の上方には第1バネ収容室110が形成され、第2バルブ収容室55の下方には第2バネ収容室111が形成されている。これらのバネ収容室110,111は、フレーム50の前面41から後方(インク室100側)へ穿設された有底の孔であり、カートリッジ本体30の前部に装着される前側カバー31を前方へ付勢するためのコイルバネ23,24が収容されるようになっている(図9参照)。
更に、フレーム50の上面43の前端部には第1カバー支持部材115が形成され、下面44の前端部には第2カバー支持部材116が形成されている。これらのカバー支持部材115,116は、前方へ延びる棒状部材の前端にかぎ爪状の突起115a,116aを設けた如くに形成されており、次に説明する前側カバー31をスライド可能に支持しつつ、該前側カバー31がカートリッジ本体30から脱落しないように規制する。
[前側カバー]
図9は、図3(a)に示すカートリッジ10をIX-IX線で切断したときの構成を示す断面図であり、図10は、図3(b)に示すカートリッジ10をX-X線で切断したときの構成を示す断面図である。また、図11は、図9に示すカートリッジ10の部分的な拡大図であり、(a)は図9にて二点鎖線XIaで囲んだ上部を拡大して示し、(b)は図9にて二点鎖線XIbで囲んだ下部を拡大して示している。
図9に示すように、前側カバー31は、カートリッジ本体30の前部30aを収容可能な容器形状に形成されており、カートリッジ本体30の前部30aの形状に対応して扁平に形成されている。そして、カートリッジ本体30の前面41に対応する前壁161と、上面43に対応する上壁163と、下面に対応する下壁164と、左側面45に対応する左側壁165と、右側面46に対応する右側壁166とを有し、これらに囲まれて後方に開いた空間に、カートリッジ本体30の前部30aを収容可能になっている。また、前側カバー31には、後述する光学式センサ230,235による検知対象となる第1被検知部185及び第2被検知部186が設けられ、更に、切欠部187を形成されている。
図3及び図4に示すように、切欠部187は、前側カバー31の前壁161における上下方向の略中央位置にて、前壁161が後方へ窪むようにして形成されており、前側カバー31の左右の空間を連通している。そして、前側カバー31がカートリッジ本体30に装着された状態で、カートリッジ10がカートリッジ装着部9へ装着されると、該切欠部187を介して検知窓140が外部へ露出されるようになっている。
第1被検知部185は、切欠部187の前方の位置に設けられており、切欠部187の上下の前壁161から前方へ突出したブリッジ部189を有している。このブリッジ部189は、光を透過させない樹脂部材によって前後方向の厚み寸法が小さい平板状に構成されており、ブリッジ部189と切欠部187との間(即ち、切欠部187の前方)には隙間190(図3参照)が形成されている。この隙間190は、切欠部187と同様に、前側カバー31の左右の空間を連通している。
第2被検知部186は、前壁161の上部から前方へ突出するように設けられている。この第2被検知部186は、左右方向(X方向)へ面を向けた平板状を成し、上記第1被検知部185と同様に光を透過させない樹脂部材によって形成されている。
また、前側カバー31には、カートリッジ10をカートリッジ装着部9へ装着する過程で、該カートリッジ装着部9の奥面に対して最初に当接する突出部181と、前側カバー31のカートリッジ本体30に対するスライド動作を案内するガイドロッド168,169とが設けられている。このうち、突出部181は、前側カバー31の前壁161の下部から前方へ突出するようにして、前側カバー31と一体的に形成されている。
ガイドロッド168,169は、前壁161の裏面(即ち、カートリッジ本体30の前面41に対向する後面)の上部及び下部から後方へ向かって棒状に延びている。上側のガイドロッド168は、カートリッジ本体30の第1バネ収容室110内のコイルバネ23の内孔に前方から挿通され、下側のガイドロッド169は、第2バネ収容室111内のコイルバネ24の内孔に前方から挿通されている。
また、前側カバー31には、上記ガイドロッド168,169と同様に、前側カバー31のカートリッジ本体30に対するスライド動作を案内する摺動溝171,172が、上壁163の前部および下壁164の前部に夫々設けられている。このうち上側の摺動溝171は、前側カバー31の上壁163が正面視で逆向きの略U字形状に形成されることで構成されており、下側の摺動溝172は、前側カバー31の下壁164が正面視でU字形状に形成されることで構成されている。これらの摺動溝171,172の奥部(即ち、後方)には、摺動溝171,172の溝面から突出した突起片171a,172aが設けられている。
更に、図9及び図10に示すように、前側カバー31には、第1被検知部185とその上方の第2被検知部186との間に押圧部174が設けられ、また、第1被検知部185と突出部181との間には開口180が形成されている。このうち押圧部174は、前側カバー31が有する前壁161の裏面にて、カートリッジ本体30の大気連通バルブ80に対応する位置に設けられており、前側カバー31とカートリッジ本体30とが近接したときに、大気連通バルブ80が有するバルブ本体87の前端を後方へ押圧する。また、開口180は、前側カバー31の前壁161にてインク供給バルブ90に対応する位置に設けられている。
次に、このような前側カバー31をカートリッジ本体30に装着する場合について説明する。前側カバー31の後方にカートリッジ本体30を位置させた状態から、両者を接近させて装着するに際し、まず、第1カバー支持部材115を上側の摺動溝171に挿入し、同時に第2カバー支持部材116を下側の摺動溝172に挿入する。すると、第1カバー支持部材115の前端に設けられた突起115aが、突起片171aを超えて摺動溝171の奥へ進入し、第2カバー支持部材116の前端に設けられた突起116aが、突起片172aを超えて摺動溝172の奥へ進入する。これにより、前側カバー31をカートリッジ本体30から前方へ引き抜こうとしても、突起115a,116aと突起片171a,172aとが引っ掛かり、引き抜けないようになっている。
このように前側カバー31をカートリッジ本体30に装着すると、前側カバー31に設けられた2つのガイドロッド168,169が、カートリッジ本体30に設けられた第1バネ収容室110内のバネ23の内孔と第2バネ収容室111内のバネ24の内孔とに挿通される。そして、前側カバー31は、ガイドロッド168,169によってカートリッジ本体30に対するスライド方向が前後方向に規制されつつ、バネ23,24によって前方へと付勢される。従って、外力が付与されていないときには、前側カバー31はカートリッジ本体30から前方へ離隔した状態(図10に示す状態:以下、「第1位置」と称する)で維持される。一方、前側カバー31をカートリッジ本体30へ接近させるように外力が付与されると、前側カバー31はカートリッジ本体30に近接した状態(図9に示す状態:以下、「第2位置」と称する)になる。
また、前側カバー31が第1位置から第2位置へスライドすると、前側カバー31が有する押圧部174が大気連通バルブ80のバルブ本体87を後方へ押圧する。これにより、バルブ本体87はバネ86の付勢力に抗って第1バルブ収容室54へ埋没し、インク室100内が大気開放される。他方、このときカートリッジ本体30が有するインク供給バルブ90は、前側カバー31が有する開口180を通じて前方へ突出する。これにより、インク供給バルブ90のバルブ本体97は、カートリッジ装着装置8に設けられたインクニードル(図示せず)によってバネ96の付勢力に抗って後方へ押動され、インク室100内のインクがインク供給口91及びチューブ22を経てサブタンク15b(図2参照)へと供給される。
[後側カバー]
図9に示すように、後側カバー32は、カートリッジ本体30の後部30bを収容可能な容器形状に形成されており、カートリッジ本体30の後部30bの形状に対応して扁平に形成されている。そして、カートリッジ本体30の後面42に対応する後壁212と、上面43に対応する上壁213と、下面44に対応する下壁214と、左側面に対応する左側壁215と、右側面46に対応する右側壁216とを有し、これらに囲まれて前方に開いた空間に、カートリッジ本体30の後部を収容可能になっている。
この後側カバー32における上壁213及び下壁214の内面には突起片210,211が夫々設けられている。この突起片210,211は、カートリッジ本体30が有するフレーム50の上面43及び下面44に夫々設けられた凹部59,60に対応して設けられている。そして、カートリッジ本体30の後部30bに後側カバー32が装着されると、上記突起片210,211が凹部59,60に嵌合することとなり、カートリッジ本体30と後側カバー32とが確実に係合されるようになっている。
[カートリッジ装着装置の構成]
図12は、カートリッジ装着装置8の構成を示す模式的断面図である。図12に示すように、カートリッジ装着装置8は、本実施の形態においては既に説明した5色のインクを収容するカートリッジ10が装着されるべく、5つの収容室9aに区分けされた収容ケース(カートリッジ装着部)9と、該収容ケース9の開口9bを開閉するロックレバー220とを備えている。収容ケース9は、後方(図12で右側)に前記開口9bを有する略直方体形状を成しており、その上壁221の後端部にて、ロックレバー220の基端部が回動自在に枢支され、収容ケース9の開口9bを覆う矩形状の蓋体となっている。従って、ロックレバー220をその基端部を中心に上方へ回動させ、開口9bを開いた状態にすると、該開口9bを通じて収容室9aへカートリッジ10を装着可能となる。そして、各収容室9aに装着されるカートリッジ10に関する情報を検出すべく、各収容室9aの奥側(図12で左側)には、光検知部を有する第1光学式センサ230と第2光学式センサ235とがそれぞれ設けられている。
図13は、第1光学式センサ230の構成を示す図面であり、(a)はその模式的断面図を示し、(b)はその検出回路を示している。なお、第1光学式センサ230と第2光学式センサ235とは同様の構成となっているため、図13に示す第1光学式センサ230において第2光学式センサ235の構成に対応する部分には、第2光学式センサ235に対応する符号を括弧内に記載している。
この図13(a)に示すように、本実施の形態では、第1光学式センサ230としてフォトインタラプタが採用されており、平行に延びてペアを成す2本の樹脂製中空アーム232を有している。これらの中空アーム232の基部232bは同じく樹脂製部材によって連結されており、第1光学式センサ230は全体的に略U字状の外観形状となっている。2本の中空アーム232のうち、一方の中空アーム232の先端部232c内には発光ダイオード(図13(b)参照)から成る発光素子233が配設され、他方の中空アーム232の先端部232c内にはフォトダイオード(図13(b)参照)から成る受光素子234が配設されており、これらの発光素子233及び受光素子234により光検知部が構成されている。そして、これら2本の中空アーム232は、互いに所定間隔を空けて設けられており、両方の中空アーム232の先端部232cの対向部分には、内外を貫通するスリット232aが形成されている。従って、発光素子233が駆動して光を照射すると、その光はスリット232aを介して射出され、他方の中空アーム232のスリット232aを通じて受光素子234へ入射される。
また、中空アーム232の長手方向の中央部には、中空アーム232の周方向へ延設された周回溝232dが形成されている。この周回溝232dは、中空アーム232に付着した漏出したインクが先端部232c側へ向かうのを阻止するためのものであり、中空アーム232における発光素子233と基部232bとの間、及び受光素子234と基部232bとの間に形成され、漏出したインクがスリット232aから中空アーム232内に浸入して、発光素子233及び受光素子234を汚染することを防止する。このような第1光学式センサ230は、その発光素子233および受光素子234の軸部が、センサ基板240にハンダ242によって接合されることで、アーム232がセンサ基板240の取付面240aに対して垂直となった状態で基部232bがセンサ基板240に固定されるとともに、センサ基板240を介して本体側と電気的に接続されている。また、第1光学式センサ230は、ハンダ242によって接合されているだけなので、第1光学式センサ230とセンサ基板240との微小の隙間から、中空アーム232内の空間に、漏出したインクが浸入することがないように、センサ基板240と第1光学式センサ230との境界に、ポッティング材243が塗布されている。また、図13(b)の検出回路から分かるように、第1光学式センサ230の出力は、受光素子234を成すフォトダイオードへ光が入射していない状態では、該フォトダイオードがOFFとなって相対的にHIGHレベルの信号を出力し、光が入射している状態では前記フォトダイオードがONとなって相対的にLOWレベルの信号を出力するようになっている。
図12に示すように、このような第1光学式センサ230を備えたセンサ基板240は、略長方形状で収容ケース9の外側の奥壁面222における上下方向の略中央位置に設けられている。センサ基板240は、その長手方向に各インクカートリッジごとの5つの第1光学式センサ230が一列に並設されている。また、収容ケース9の外側奥壁面222には、奥壁面222側から開口9bの方向(即ち、後方)に貫通する開口222aが、5つの第1光学式センサ230の配置位置に対応して形成されていて、その開口222aを介して各中空アーム231が開口9bの方向へ向かって伸びた状態で、且つ発光素子233及び受光素子234が左右に位置するようにして取り付けられている。そして、これら発光素子233と受光素子234との間には、発光素子233が駆動することによって発光素子233から受光素子234へ向かう光の光路となる領域231が形成されている。
ここで、収容ケース9の外側奥壁面222から内方(後方)へ延びる第1光学式センサ230は、その中空アーム232が、基部232bから先端部233cへ至るに従って後方斜め上方へ向かうような姿勢となっている。より詳しく説明すると、外側奥壁面222において、センサ基板240の取付箇所には、鉛直方向に対して所定の角度だけ傾斜(前傾)した取付面222aが形成されている。従って、この取付面222aに取り付けられたセンサ基板240は所定の角度だけ前傾した姿勢となり、センサ基板240から延びる中空アーム232は、基部232bに対して先端部232cが後方且つ上方に位置している。
また、第2光学式センサ235は、上述したように第1光学式センサ230と同様の構成を備え、所定間隔を空けて平行に配設された2本の中空アーム237,237と、その先端内に設けられた発光素子238及び受光素子239と、連結する基部237bを有し、2本の中空アーム237には、先端部において互いに対向する部分にスリット237aが形成されている(図13参照)。また、発光素子238および受光素子239の軸部が、センサ基板241にハンダ付けされ、基部237bがセンサ基板241に固定されるとともに、センサ基板241を介して本体側と電気的に接続されている。
図12に示すように、このような第2光学式センサ235を備えたセンサ基板241は、略長方形状で収容ケース9の外側の上壁面221における奥側の部分に設けられている。センサ基板241は、その長手方向に各インクカートリッジごとの5つの第2光学式センサ235が一列に並設されている。また、収容ケース9の外側上壁面221には、上壁面221側から下方へ向かって貫通する開口221aが5つの第2光学式センサ235の配置位置に対応して形成されていて、その開口221aを介して各中空アーム237が下方へ向って伸びた状態で、且つ発光素子238及び受光素子239が左右に位置するようにして取り付けられている。そして、これら発光素子238と受光素子239との間には、発光素子238が駆動することによって発光素子238から受光素子239へ向かう光の光路となる領域236が形成されている。
なお、図12に示されるように、検出するインクカートリッジ10の被検知部の配置位置と対応するように、第2光学式センサ235の発光素子238および受光素子239は、第1光学式センサ230の発光素子233および受光素子234の配置位置よりも奥側(図12の左手側)に配置されている。
また、詳細は後に説明するが、このような第1光学式センサ230は、カートリッジ10がカートリッジ装着装置8へ装着されたときに、このカートリッジ10の種類を検知する役割と、カートリッジ10内のインク残量を検知する役割とを担う。また、第2光学式センサ235は、カートリッジ10がカートリッジ装着装置8へ装着される過程で、カートリッジ10が装着過程にあるか否かを検知する役割を担う。
一方、収容ケース9の奥壁面222の下部には、カートリッジ10のインク供給口91と連結する連結部223が設けられている。この連結部223は円筒形状を成し、奥壁面222から開口9b側(即ち、後方)へ突出しており、その内孔223aを通じて収容ケース9の内外を連通している。この内孔223aには、サブタンク15b(図2参照)に一端が接続されたチューブ22の他端が接続される。また、この連結部223の内孔223aの内側には図示しないインクニードルが設けられており、カートリッジ10が装着されると、このインクニードルがカートリッジ10のインク供給バルブ90のバルブ本体97を押し込む。その結果、インク供給口91と連結部223の内孔223aとが連通し、インク室100内のインクがチューブ22を通じてサブタンク15bへ供給可能となる。
また、収容ケース9の奥壁面222の上部と下部とには、それぞれ当接部225,226が設けられている。このうち上側の当接部225は、カートリッジ10の上側の第2被検知部186(図10参照)に対応して設けられており、該カートリッジ10が装着される過程で第2被検知部186の前端を受け止める。下側の当接部226は、カートリッジ10の下側に設けられた突出部181(図10参照)に対応して設けられており、該カートリッジ10が装着される過程で突出部181の前端を受け止める。
また、収容ケース9に枢支されたロックレバー220は、上述したように収容ケース9の開口9bの蓋体として開閉するだけでなく、収容室9a内にカートリッジ10を確実に装着し固定する役割も果たす。より詳しく説明すると、ロックレバー220の先端部には、オペレータが把持すべく外方へ突設されたグリップ220aと、収容ケース9に係合すべく内方へ突設された係合爪220bとが設けられている。一方、収容ケース9の開口9bの下方の縁部には、前記係合爪220bと係合するための係合溝227が形成されている。そして、グリップ220aを把持してロックレバー220を回動して開口9bを閉じると、係合爪220bと係合溝227とが互いに係合し、ロックレバー220は収容ケース9の開口9bを確実に閉鎖する。また、ロックレバー220の枢支箇所には開閉センサ(装着可否センサ)228が設けられており、ロックカバー220の開閉状態が検知可能になっている。
[カートリッジの装着]
次に、図14〜図16を参照しつつ、カートリッジ10をカートリッジ装着装置8に装着する場合の動作について説明する。ここで、図14〜図16は何れもカートリッジ10がカートリッジ装着装置8へ装着される過程を示す模式的断面図であり、図14は、第2被検知部186が第2光学式センサ235によって検知された状態を示し、図15は、第2被検知部186及び突出部181の前端が収容ケース9の奥壁面222に当接した状態を示し、図16は、収容ケース9にカートリッジ10が完全に装着された状態を示している。
まず、図14に示すように、カートリッジ10が後端部を除いてその大部分が収容ケース9内に挿入されると、第1被検知部185のブリッジ部189が第1光学式センサ230の領域231に進入する。その後、更にカートリッジ10が奥へ挿入されることにより、第2被検知部186が第2光学式センサ235の領域236へ進入する。そして、このとき、第1光学式センサ230の発光素子233からの光は、第1被検知部185が有する隙間190(図3参照)を通過して受光素子234へ到達する状態となっている。
次に、図15に示すように、カートリッジ10が、前側カバー31がカートリッジ本体30から離隔した第1位置にある状態で、収容ケース9の最奥部まで挿入されると、カートリッジ10の突出部181が当接部225に当接すると共に、第2被検知部186の前端が当接部226に当接し、前側カバー31はそれ以上は前方へ進入できない状態となる。このとき、第1被検知部185は、第1光学式センサ230の領域231よりも前方へ位置し、隙間190に換わって切欠部187が領域231に進入している。
図15に示す状態から、ロックレバー220を開口9bが閉じられる方向へ回動させると、ロックレバー220の内面がカートリッジ10の後端に当接し、これを前方へと押圧する。すると、コイルバネ23,24が収縮して前側カバー31に対して接近するように、カートリッジ本体30及び後側カバー32が前方へ更に進入する。この進入過程で、カートリッジ10のインク供給口91が連結部223に連結され、他方では、カートリッジ本体30の検知窓140が前進して切欠部187から露出し、この検知窓140が第1光学式センサ230の領域231に進入する。
図16に示すように、ロックレバー220が開口9bに対して完全に閉じられて、係合爪220bが係合溝227に嵌め込まれると、開口9bに対してロックレバー220がロックされると共に、開口9bはロックレバー220によって完全に閉塞される。このとき、前側カバー31に対してカートリッジ本体30は、最も近接する第2位置に到達しており、前側カバー31の押圧部174によって大気連通バルブ80のバルブ本体87が後方へ押動され、インク室100内は大気開放される。その結果、インク室100内のインクは、背圧が大気圧と等しくなり、インク供給口91からインクを供給可能な状態となる。
[記録装置の機能的構成]
図17は、記録装置1が備える主な機能を示すブロック図である。図17に示すように、記録装置1は、その全ての動作を制御するための制御部200を備えており、該制御部200は、プロセッサ201、ROM202、RAM203、EEPROM204、及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)205から主として構成されている。
ROM202には、プロセッサ201が記録装置1の各種の動作を実行するために必要なプログラムが格納されており、例えば、時間を計測するためのタイマ手段実行プログラム202aが格納されている。RAM203は、プロセッサ201が上記プログラムを実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域として、又は上記プログラムを実行する際の作業領域として使用される。EEPROM204には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
また、ASIC205には、制御部200の外部に設けられたヘッド制御基板15c、第1光学式センサ230、第2光学式センサ235、開閉センサ228、及び液晶ディスプレイ11a等が接続されている。なお、図17には示していないが、これらの他にも給紙ローラ19、搬送ローラ対20、排紙ローラ対21などを駆動させる駆動回路などもASIC205に接続されている。
ヘッド制御基板15cは、ヘッドユニット15aと電気的に接続され、ASIC205から入力された信号に基づいてヘッドユニット15aを駆動する。これにより、ヘッドユニット15aのノズルから、所定のタイミングで所定の色のインクが選択的に吐出され、記録用紙に画像が形成される。
第1光学式センサ230は、受光素子で受けた光の輝度(受光量)に応じた信号(以下「受光信号」と称する)を出力する。詳細には、第1光学式センサ230の発光素子233で出射されて受光素子で受けた光の輝度に応じたアナログの電気信号(電圧信号又は電流信号)が、受光信号として第1光学式センサ230から出力される。出力された受光信号は、制御部200に入力され、該主制御部200において、その電気的レベル(電圧値又は電流値)が所定の閾値以上の場合にHIGHレベル信号と判定され、所定の閾値未満の場合にLOWレベル信号と判定される。本実施の形態では、上記受光信号は、第1光学式センサ230の領域231において光が遮蔽されている場合にHIGHレベル信号と判定され、遮蔽されていない場合にLOWレベル信号と判定される。
第2光学式センサ235は、上述の第1光学式センサ230と同じ原理に基づいて動作し、受光素子で受けた光の輝度(受光量)に応じた受光信号を出力するものである。従って、ここでの詳細な説明は省略する。
開閉センサ228は、ロックレバー220が所定の開度にまで開かれたときに所定の信号を出力する。この信号は制御部200へ入力され、制御部200はこの信号に基づいてロックレバー220が開いた状態であることを判別する。また、液晶ディスプレイ装置11aは、ASIC205から入力された信号に基づいて文字列やシンボルマーク等のオペレータによって認識可能な情報を出力する。
本実施の形態では、このような記録装置1における制御部200、第1光学式センサ230、第2光学式センサ235、開閉センサ228、及び液晶ディスプレイ装置11a等により、カートリッジ10に関する情報を検出するカートリッジ情報検出装置300が構成されている。
[光検知部のインク汚染防止]
ところで、図14〜図16を用いて説明したように、インクカートリッジ装着装置8へカートリッジ10を装着すると、大気連通バルブ80を通じてインク室100内が大気開放される。そして、この大気連通バルブ80を通じて、インク室100内のインクがカートリッジ10の外部へ漏出する可能性があるが、本実施の形態に係るインクカートリッジ装着装置8では、外部へ漏出したインクによって第1光学式センサ230の光検知部(発光素子233及び受光素子234)が汚染されるのを防止する構成を備えている。
より詳述すると、図12を用いて説明したように、第1光学式センサ230が備える中空アーム232は、その基部232bに対して先端部232cが上方に位置するよう、後方斜め上方へと延設されている。従って、大気連通バルブ80から外部へ漏出したインクが流下して、中空アーム232に付着した場合であっても、傾斜した中空アーム232に沿ってインクは基部232b側へと流れるため、先端部232cに配設された発光素子233及び受光素子234が汚染されるのを防止することができる。また、図13に示したように、センサ基板240と第1光学式センサ230との境界部分には、ポテッィング材243が塗布されているため、傾斜した中空アーム232から基部232b側へと流れてきた場合でも、境界部分にできる微小な空間から中空アーム232内へ、漏出したインクが浸入することを防止することができる。
また、中空アーム232には基部232bと先端部232cとの間に周回溝232dが形成されているため、先端部232c側へ向かうインクはこの周回溝232dに捕捉され、該周回溝232dより先端部232c側への移動が阻止されるため、発光素子233及び受光素子234のインク汚染がより効果的に防止可能である。
更に、本実施の形態に係るインクカートリッジ装着装置8では、図16に示すように、カートリッジ10を装着する際の、カートリッジ10の第1被検知部185(より正確には、ブリッジ部189)の装着方向の延長線185aより下方に、中空アーム232の基部232bが位置するように構成されている。従って、カートリッジ10に不所望の外力が加わるなどして、カートリッジ10の第1被検知部185が第1光学式センサ230の領域231より奥側へ入り込んだとしても、第1被検知部185が第1光学式センサ230(特に、基部232b)に接触するのを防止することができる。
なお、本実施の形態では、センサ基板240に対して中空アーム232が垂直になるように第1光学式センサ230が取り付けられている構成を例示しているが、センサ基板240自体はその取付面240aを鉛直に沿うように配置し、中空アーム232を、基部232bに対して先端部232cが後方且つ上方に位置するよう、センサ基板240に対して傾斜して取り付けた構成としてもよい。
[インク汚染防止の他の構成]
図18は、大気連通バルブ80から漏出したインクから、発光素子233及び受光素子234の汚染を防止するためのインクカートリッジ装着装置8の他の構成を示す図面であり、図18(a)〜(e)は何れも、インクカートリッジ装着装置8が有するセンサ基板240と第1光学式センサ230とを後方から見たときの構成を示している。なお、ポッティング材243は省略している。
図18(a)に示す構成では、横長の矩形平板状のセンサ基板240の取付面240aにおいて、第1光学式センサ230が取り付けられている位置より上方に、左右方向へ延びる誘導溝300が形成されている。この誘導溝300は断面が略V字状を成し、基板材料を成す大面積の基材から個々のセンサ基板240をカットする際に形成されている。また、この誘導溝300は、センサ基板240の左右の端部にまで延設されており、これら左右の端部にて左右方向へ開口している。このような誘導溝300により、センサ基板240の上部に付着して流下するインクは、誘導溝300に沿って左右方向へ誘導され、誘導溝300より下方に位置する第1光学式センサ230へ到達しにくくなる。
図18(b)に示す構成では、センサ基板240において第1光学式センサ230より上方位置に、センサ基板240を厚み方向(前後方向)へ貫通し且つ左右方向へ延びるスリット301が形成されている。このようなスリット301により、上述した誘導溝300と同様に、センサ基板240の上部に付着して流下するインクは、スリット301に沿って左右方向へ誘導され、スリット301より下方に位置する第1光学式センサ230へ到達しにくくなる。また、スリット301を通じて取付面240aとは反対側の面へも誘導され得るため、より一層、第1光学式センサ230へのインクの到達を防止することができる。
図18(c)に示す構成では、センサ基板240において第1光学式センサ230より上方位置に、5つの第1光学式センサ230の夫々に対応してスリット302が形成されている。このスリット302も上記スリット301と同様に、センサ基板240を厚み方向(前後方向)へ貫通し、且つ左右方向へ延びるように形成されている。このようなスリット302であっても、センサ基板240の上部に付着して流下するインクの更なる流下を阻止し、第1光学式センサ230へ到達するのを防止することができる。
図18(d)に示す構成では、センサ基板240の取付面240aに、5つの第1光学式センサ230を取り囲むようにして周回壁303が突設されている。この周回壁303は、取付面240aに対して、シルク、レジスト、又はパターンやジャンパーリード線などで形成することができる。このような構成により、センサ基板240の上部に付着して流下するインクは、周回壁303の外面に沿って第1光学式センサ230を回避するように流れるため、第1光学式センサ230にインクが付着するのを防止することができる。なお、図18(d)では1つの周回壁303によって5つ全ての第1光学式センサ230を取り囲む構成を例示したが、1つの第1光学式センサ230ごとに取り囲むように周回壁303を形成してもよいし、2〜4つの第1光学式センサ230をまとめて取り囲むように周回壁303を形成してもよい。なお、図18(a)〜(d)の構成を組み合わせることは可能であり、例えば、図18に示す周回壁303のように左右方向へ延びる壁を、図18(a)〜(c)のように第1光学式センサ230が取り付けられている位置より上方に設けてもよく、この壁としては、左右方向へ連続的に延びるものであってもよく、または断続的に延びるものであってもよい。また、図18(d)における周回壁303を周回溝に置き換えることも可能である。
図18(e)に示す構成では、センサ基板240の取付面240aにおいて、第1光学式センサ230を取り囲む位置にシボ加工が施されて成るインク保持部304が形成されている。このような構成により、センサ基板240の上部に付着して流下するインクを、このインク保持部304にて保持することができるため、第1光学式センサ230にインクが到達して付着するのを防止することができる。
図19は、発光素子233及び受光素子234のインク汚染を防止するためのインクカートリッジ装着装置8の更に他の構成を示す図面であり、(a)はセンサ基板240と第1光学式センサ230とを後方から見たときの構成、(b)はこれらを側方から見たときの構成を夫々示している。
図19(a)に示すように、センサ基板240の取付面240aにおいて、第1光学式センサ230より上方の位置には、図18(a)に示した誘導溝300と同様に、左右方向へ延びる断面略V字状の誘導溝305が形成されている。更に、この誘導溝305の途中には、センサ基板240を厚み方向へ貫通する複数の貫通孔306が形成されており、本実施の形態では、左右方向において隣り合う第1光学式センサ230の間の位置、及び左右の端に設けられた第1光学式センサ230より更に左右外方の位置の、合計6箇所に形成されている。
また、図19(b)に示すように、センサ基板240において取付面240aとは反対側(前側)には、発泡体などから成るインク吸収体307が配設されている。このインク吸収体307からは、同じく発泡体などから成る延設部307aが、センサ基板240に形成された貫通孔306に挿通され、延設部307aの先端部(後端部)は、誘導溝305内に露出している。
このような構成により、センサ基板240の上部に付着して流下するインクを、誘導溝305に沿って延設部307aへ誘導し、この延設部307aに吸収させることができる。また、より多くのインクが誘導溝305に沿って流れたとしても、インクは延設部307aからインク吸収体307へと向かい、このインク吸収体307にて吸収・保持される。従って、誘導溝305より下方に位置する第1光学式センサ230へインクが到達するのを防止することができる。
なお、誘導溝305に沿って貫通孔306へ至ったインクは、延設部307aがなくともある程度は貫通孔306を通じてインク吸収体307へ誘導されるため、延設部307aは必須ではないが、この延設部307aを設けることによってより確実にインクをインク吸収体307へと導くことができる。また、延設部307aを設けない場合は、貫通孔306を取付面240aからインク吸収体307側へ向かうに従って下降するように傾斜して設ければ、誘導溝305からインク吸収体307へインクを誘導しやすくなる。
図20は、発光素子233及び受光素子234のインク汚染を防止するためのインクカートリッジ装着装置8の更に他の構成を示す図面であり、(a)はセンサ基板240と第1光学式センサ230とを後方から見たときの構成、(b)はこれらを側方から見たときの構成を夫々示している。
図20(a)に示すように、センサ基板240において第1光学式センサ230より上方の位置には、図18(b)に示したスリット301と同様に、センサ基板240を厚み方向(前後方向)へ貫通し且つ左右方向へ延びるスリット308が形成されている。また、図20(b)に示すように、センサ基板240において取付面240aとは反対側(前側)には、発泡体などから成るインク吸収体309が配設されている。このインク吸収体309からは、同じく発泡体などから成る延設部309aが、センサ基板240のスリット308を通じて延設され、該延設部309aの先端部(後端部)は取付面240a側に露出している。この延設部309aは、センサ基板240のスリット308の形状に整合するよう、左右方向へ長寸に形成されている。
このような構成によれば、センサ基板240の上部に付着して流下するインクをスリット308から露出する延設部309aにて、第1光学式センサ230へ至る前に吸収することができる。また、延設部309aがスリット308と略長であって左右方向へ長寸になっているため、インクがセンサ基板240に沿って流下する位置にかかわらず、これを捉えて吸収することができる。
図21は、発光素子233及び受光素子234のインク汚染を防止するためのインクカートリッジ装着装置8の更に他の構成を示す図面であり、(a)は第1光学式センサ330の模式的断面図で、(b)は第1光学式センサ330に対してポッティングを施したときの構成を夫々示している。なお、詳細の記載はしないが、この構成は、図13に示した構成と同様に第2光学式センサ235に対しても適用可能である。
図21(a)に示すように、第1光学式センサ330は、基部332bが中空状を成して2つの中空アーム332と連通しており、一つの連続した空間345を形成している。そして、センサ基板240の基部332bに対応する位置には、ポッティング材243注入用の注入口244が背面に貫通形成されている。そして、図21(b)のように、基板240の背面側から、この注入口244を通じてポッティング材243を空間345に封入して硬化させる。
このような構成によれば、第1光学式センサ330とセンサ基板240との微小の隙間から、漏出したインクが第1光学式センサ330内の空間345に浸入することを確実に防止することができる。また、図13に示した構成のようにポッティング材を第1光学式センサ230の外周とセンサ基板240との境界に塗布する場合、ポッティング材は、流動性があるため塗布時に広がってしまう。そのため、ポッティング材が広がる領域には、例えば、収容ケース9の収容室9aを仕切る壁などとの機械的な当て面を避ける必要がある。そのため、小型な領域で配置設計が難しくなったり、組立性の向上が困難になってしまう。しかしながら、図21(b)のような構成にすれば、ポッティング材が流動性を有していても、第1光学式センサ330内の空間345に封止されることができるため、ポッティング材が広がる領域を思慮する必要もなく、漏出したインクに対しても確実に浸入防止することができる。
以上に説明したように、図18〜図21に示す構成によれば、何れも、センサ基板240に沿って流下するインクが第1光学式センサ230に至るのを防止することができるため、第1光学式センサ230が有する光検知部(発光素子233及び受光素子234)がインクで汚染されるのを防止することができる。また、これらの構成を組み合わせて用いることも可能である。例えば、図20に示した構成に、図18(d)に示した周回壁303を併用することも可能であり、その場合にはより一層のインク汚染防止効果を期待することができる。
なお、本実施形態では、カートリッジ装着部に設けられたセンサとして光学式センサを用いて説明をしたが、光学式センサに限られることはなく、磁気センサであってもよい。本実施形態の光学式センサを磁気センサに変えて用いる場合、カートリッジ内のインクのインジケータ部72の先端部分に、被検知部として永久磁石(磁気部)を備え、カートリッジ装着部8の奥壁部には、アームの先端部に検知部としての磁気センサを設ける。先端部に設けられた磁気センサに、上記示してきた実施形態を組み合わせることで、磁気センサ内にインクが浸入して汚染されることが防止されるため、磁気センサがインクによって電気的にショートして適切に作動しなくなるのを防止できる。