本発明の実施例を図面を用いて説明する。
まず、本発明の一実施例に係るデフォルト機構付きの電子制御スロットルスロットル装置(自動車用内燃機関のスロットル装置)の原理を第1図及び第2図を用いて説明する。第1図は本実施例における絞り弁の動力伝達及びデフォルト機構を模式的に示す斜視図、第2図はその動作を等価的に示す原理説明図である。
第1図において、吸気通路1を流れる矢印方向の空気は、円板状の絞り弁(スロットル弁)2の開度に応じてその量が調整される。絞り弁2は絞り弁軸3にねじ止めにより固定されている。絞り弁軸3の一端には、モータ(電動式アクチュエータ)5の動力を絞り弁軸3に伝達する減速ギア機構4の最終段のギア(以下、スロットルギアと称する)43が取付けられている。
ギア機構4はスロットルギア43の他にモータ5に取付けたピニオンギア41及び中間ギア42により構成される。中間ギア42は、ピニオンギア41と噛み合う大径のギア42a及びスロットルギア43と噛み合う小径のギア42bにより構成され、スロットルボディ100の壁面に固着したギアシャフト70(第3図参照)に回転自在に嵌装されている。
モータ5はアクセルペダルの踏み込み量に関するアクセル信号やトラクション制御信号に応じて駆動され、モータ5の動力がギア41,42,43を介して絞り弁軸3に伝達される。
スロットルギア43は扇形ギアで、絞り弁軸3に固定されており、次に述べるデフォルトレバー6の突起62と係合するための係合辺43aを有する。
デフォルトレバー6は、デフォルト開度設定機構に用いるためのもの(デフォルト開度設定用の係合要素となるもの)で、絞り弁軸3に該絞り弁軸と相対的に回転可能に嵌合している。スロットルギア43とデフォルトレバー6は、スプリング8(以下、デフォルトスプリングと称することもある)の一端8aがデフォルトレバー6のばね係止部6dに係止し、他端8bがスロットルギア43に設けたばね係止部43bに係止し、デフォルトスプリング8を介してデフォルトレバー6側の突起62とスロットルギア43側の係合辺43aとが回転方向に互いに引き付け合う(係合する)ように付勢されている。デフォルトスプリング8は、絞り弁の全閉位置からみれば絞り弁軸3ひいては絞り弁2をデフォルト開度方向に付勢するものである。
絞り弁3に閉じ方向の戻し力を付与するリターンスプリング7は、一端(固定端)7aがスロットルボディ100に固定されたばね係止部100aに係止し、もう一方の自由端7b側がデフォルトレバー6に設けたばね係止部(突起)61に係止して、デフォルトレバー6及びこれと係合するスロットルギア43ひいては絞り弁軸3を絞り弁閉じ方向に付勢している。
なお、第1図では、デフォルトレバー6の突起61,62及びスロットルギア43に設けたばね係止部43bの突出度合いを、図面の作図の便宜上,誇張して描いており、実際には、スプリング7,8は圧縮して使用されて軸方向のスプリング長が短くなるため、それに応じた短い突起により形成されている(第16図,第17図の分解図参照)。また、第1図では、ばね係止部43bを見易くするためにスロットルギア43の歯側と反対側の一端に設けているが、実際には、第17図に示すようにスロットルギア43の内側(裏側)に隠れるようにして設けてある。リターンスプリング7の一端7bの係止構造及びデフォルトスプリング8の一端8aの係止構造も第1図は簡略的に図示しているが、実際は、第17図及び第16図のようになっている。これらのリターンスプリング7及びデフォルトスプリング8の取付構造の詳細は後述する。
全閉ストッパ12は、絞り弁2の機械的全閉位置を規定するためのもので、絞り弁2を機械的全閉位置に至るまで閉方向に回転させると、絞り弁軸3に固定したストッパ係止要素(ここではスロットルギア43が兼ねる)の一端がストッパ12に当接して、絞り弁2がそれ以上閉じることを阻止する。
デフォルト開度設定用のストッパ(デフォルトストッパと称することもある)11は、エンジンキーオフ時(電動式アクチュエータ5のオフ時)に絞り弁2の開度を機械的全閉位置及び電気的全閉位置(制御上の最小開度)より大きい所定のイニシャル開度(デフォルト開度)に保つためのものである。
デフォルトレバー6に設けたばね係止部61は、絞り弁2がデフォルト開度にあるときにデフォルトストッパ11に当接して、それ以上、デフォルトレバー6の開度が小さくなる方向(閉方向)へ回転するのを阻止するストッパ当接要素としての機能を兼ねている。全閉ストッパ12及びデフォルトストッパ11は、スロットルボディ100に設けた調整自在なねじ(アジャストスクリュー)により構成されており、実際には、第8図,第12図に示すように接近した位置で平行或るいはほゞ平行に並んで同一方向から位置調整可能に配置されている。
スロットルギア43とデフォルトレバー6は、スプリング8を介して回転方向に引き付け合うことで、デフォルト開度以上の開度域ではリターンスプリング7に抗して一緒に係合回転可能であり〔第2図(c)参照〕、また、デフォルト開度以下の開度域では、デフォルトレバー6がデフォルトストッパ11により動きが阻止され、スロットルギア43のみが絞り弁軸3と共にデフォルトスプリング8の力に抗して回転可能に設定される〔第2図(a)参照〕。
エンジンキーのオフ状態では、デフォルトレバー6がリターンスプリング7の力によってデフォルトストッパ11に当接する位置まで押し戻されており、また、スロットルギア43は、デフォルトレバー6の突起62を介してリターンスプリング7の力を受け、絞り弁2がデフォルト開度に相当する位置にある〔第2図(b)参照〕。この状態では、スロットルギア(ストッパ係止要素)43と全閉ストッパ12とは所定の間隔を保持している。
この状態から、モータ5及びギア機構4を介して絞り弁軸3を開方向に回転駆動させると、係合辺43a,突起62を介してデフォルトレバー6がスロットルギア43と共に回転し、絞り弁2はスロットルギア43の回転トルクとリターンスプリング7の力とが均衡する位置まで開く。
逆にモータ5の駆動トルクを弱めてモータ5及びギア機構4を介して絞り弁軸3を閉じ方向に回転させると、デフォルトレバー6(突起61)は、デフォルトストッパ11に当接するまではスロットルギア43及び絞り弁軸3の回転に追従し、デフォルトレバー6がデフォルトストッパ11に当接すると、デフォルトレバー6はデフォルト開度以下の閉方向の回転を阻止される。デフォルト開度以下では(例えばデフォルト開度から制御上の電気的全閉位置までは)、モータ5により絞り弁軸3に動力が与えられると、スロットルギヤ43及び絞り弁軸3のみがデフォルトレバー6との係合を解除して、デフォルトスプリング8の力に抗して動作することになる。なお、絞り弁の機械的な全閉位置を規定する全閉ストッパ12には、制御上の基準点を知る場合にのみモータ5を駆動させてスロットルギア43を当接させるもので、通常の電気的な制御においては、スロットルギア43は全閉ストッパ12には当接しない。
このデフォルト方式では、リターンスプリング7のばね力が効くのは、デフォルトストッパ11の存在によりデフォルト開度以上のところであり、したがってデフォルト開度以下ではリターンスプリング7のばね力に影響されないでデフォルトスプリング8のばね力を設定できるので、デフォルトスプリングの負荷を小さくし、ひいては電動アクチュエータに要求されるトルクを低減し、機関に対する電気負荷を低減することができる利点がある。
本実施例では、リターンスプリング7及びデフォルトスプリング8をコイル形の捩じれスプリングとし、リターンスプリング7の径をデフォルトスプリング8の径よりも大きくして、これらのスプリング7,8が絞り弁軸3の軸回りに保持されてスロットルギア43とスロットルボディ100の壁部との間に配置されている。
リターンスプリング7とデフォルトスプリング8とは、デフォルトレバー6を挾むようにして絞り弁軸方向に対向配置され、実際には、第3図〜第5図に示すように軸方向に圧縮して装着される。デフォルトスプリング8の両面はリターンスプリング7及びデフォルトスプリング8のばね受けとなって、これらのスプリングの一端7b,8aを係止させ、コイル径の大きい方のスプリング(ここではリターンスプリング7)の圧縮応力Fをコイル径の小さい方のスプリング(ここではデフォルトスプリング8)の圧縮応力fよりも大きくしてある。このように圧縮応力を設定するのは、次の通りである。
デフォルトレバー6は、絞り弁軸3にフリーな状態、すなわち「すきまばめ」されているために、その嵌合部(絞り弁軸3の外周とデフォルトレバー6の内周との間)には隙間が存在する。したがって、リターンスプリング7やデフォルトスプリング8によりデフォルトレバー6を挾持したとしても、両者の圧縮応力が同一であったり、また、いずれのスプリングのコイル径も小さくしてデフォルトレバー6の中心近くを押さえたりすると、デフォルトレバー6は安定さを欠き、そのためデフォルトレバー6が傾いて装着されることもある。
このようにデフォルトレバー6が正しい状態で装着されないと、デフォルトレバー6の動作に支障が生じたり、デフォルトストッパ11に対する当接点が狂い、デフォルト開度の設定に狂いが生じる原因となる。このような問題に対処するために、本実施例では、リターンスプリング7の径をデフォルトレバー6の外径を形づくるフランジ6bにかかる程度に大きくし、しかも、その圧縮応力Fをデフォルトスプリング8の圧縮応力fよりも充分に大きくしたものである。このようにすれば、リターンスプリング7の圧縮応力Fはデフォルトレバー6の外周近く(外径寄り)に作用し、しかもF>fの関係によりデフォルトレバー6を一方向(ここでは、スロットルギア43側)に均等な力で押しつけるので、デフォルトレバー6を安定した状態(傾きのない状態)で装着することが可能になり、デフォルトレバーの円滑な動作及びデフォルト開度設定の精度を保証する。
第3図は本実施例に係る電子制御スロットル装置を吸気通路1の軸方向と垂直に断面した図、第4図は第3図の電子制御スロットル装置をスロットルセンサ付きのギアカバーを外して第3図と同じ断面位置で示す図、第5図は第3図の電子制御スロットル装置を吸気通路1の軸方向に断面した図、第6図は本実施例の電子制御スロットル装置の斜視図、第7図は上記電子制御スロットル装置をギアカバーを外して示す斜視図、第8図,第9図はその角度を変えてみた斜視図、第10図は上記電子制御スロットル装置の上面図、第11図は電子制御スロットル装置のギア設置部をギアカバーを外して外からみた図、第12図は全閉ストッパ及びデフォルトストッパの取付状態を示す説明図で、その(a)は第11図をA方向からみて部分的に示す図、(b)は(a)のB−B線断面図である。第13図は本実施例に係る電子制御スロットル装置の吸気通路1とモータケース110との位置関係を第6図のC−C線を断面して示す図、第14図はモータケース110からモータを取り除いた断面図、第15図は本実施例に係る電子制御スロットル装置の分解斜視図、第16図,第17図は第15図の一部を拡大して示す分解斜視図である。
これらの図に示すように、スロットルボディ100の一側壁にギア機構4を収容するギヤ設置スペース102が形成され、このギア設置スペース102の一部106を深く窪むようにして、この窪み106に絞り弁軸3の一方の軸受20を収納する軸受ボス101が設けられている。軸受20は、シール押さえ19に支持されるシール部材18によりシールされている。
リターンスプリング7は、コイル状の捩じればねで、大部分が軸受ボスの周り(環状の窪み106)に配置され、一端(固定端)7aが外側に曲げられてスロットルボディ側壁の窪み106内に設けたばね係止部100a(第1図,第3図,第9図,第11図参照)に係止し、他端7bが外側に曲げられてデフォルトレバー6に設けた突起61(第17図参照)に係止することで、デフォルトレバー6に絞り弁閉じ方向のばね力を付勢している。本実施例では、リターンスプリング7の一端7bは、第17図に示すようにデフォルトレバー6の突起61に係止穴61aを設け、この係止穴61aにリターンスプリング一端7bを係止させることで外れにくくしている。
スロットルギア43には、第3図〜第5図及び第17図,第16図から明らかなように、デフォルトスプリング8の一端を受ける片面だけに絞り弁軸挿通用のボス43cが形成され、一方、デフォルトレバー6にも上記ボス43cに対向するようにして絞り弁軸挿通用のボス6fが形成され、両ボス43c,6fの周りにデフォルトスプリング8が配置されている。
本例のデフォルトスプリング8もコイル状の捩じればねであり、第16図に示すように一端8aが内径側に折り曲げられてデフォルトレバー6のボス6fに設けた溝6dに係止し、他端8bが外径側に折り曲げられて第17図に示すようにスロットルギア43の内側に設けた係止突起43bに係止している。
スロットルギア43のボス43cの設けた絞り弁軸挿通孔43dは少なくとも一面は平面を有し、ここでは、平行な2平面を有する角孔あるいはこれに近い形状をなし、絞り弁軸3の一端3aは断面が上記絞り弁軸挿通孔43dに近似した形状をなして、スロットルギア43が圧入により絞り弁軸3の一端に固着されている。
デフォルトレバー6は、強化プラスチックにより成形された皿型の樹脂部6aとその周縁に設けられた金属製のフランジ部6bよりなり(第3図〜第5図、第16図,第17図)、フランジ部6bの内縁を樹脂部6aのモールド成形によって樹脂部6aの外周に埋設することで、樹脂部6aとフランジ部6bとを一体化しており、フランジ部6bを加工することで突起61,62を設けている。デフォルトレバー6は全て樹脂或いは金属板で成形してもよい。
本実施例では、デフォルトレバー6のフランジ部6bによってリターンスプリング7の圧縮応力Fを受ける。また、第16図に示すように、樹脂部6aは絞り弁軸を通す孔6e周辺にボス6fを形成し、このボス6fの周囲にデフォルトスプリング8の一端を嵌め込む環状の溝6Cを形成して、この溝6Cの底面がデフォルトスプリング8の圧縮応力fを受け、既述したようにF>fの関係にある。
このデフォルトスプリング8を介して、絞り弁軸3に固定されたスロットルギア43とデフォルトレバー(デフォルト開度設定用の係合要素)6とが互いに回転方向に係合する方向に引き付け合う。
絞り弁軸3の一端には雄ねじがきられて、デフォルトレバー6,デフォルトスプリング8,スロットルギア43を装着した後、バネワッシャ16を介してナット17が締め付けられる。本実施例では、スロットルギア43の圧入力により、圧縮応力F>fの関係にあるリターンスプリング7及びデフォルトスプリング8が圧縮されている。スロットルギア43は圧入に代えてナット17で締め付けることで固定してもよく、この場合には、ナットの締め付け力でリターンスプリング7及びデフォルトスプリング8が圧縮されることになる。
リターンスプリング7及びデフォルトスプリング8には、フリクションを減らすため摩擦係数を減ずるコーティング、例えば四フッ化エチレン樹脂が施されている。このコーティングの主目的は、相手方(スプリング7,8を受ける側の部材及びボスのように上記スプリングが捩じれ動作時に接触する部分)とのフリクションを低減させて、モータによる絞り弁の動きをスムーズにすること、動作時のモータ消費電力を削減することにある。
スロットルボディ100の側壁一面に設けたギア設置スペース102は、その周囲にスロットルボディ100と一体の縁取り104が形成され、この縁取り104がギアカバー取付け用の枠になる。この枠104の高さHを、第4図に示すように、ギア設置スペース102の底面を基準にしてみた場合、減速ギア機構4の取付け高さhよりも低くなるように低背化させている。このように枠(縁取り104)を低背化させた分だけ、ギアカバー103の側壁105の高さh´を増すことで、ギアカバー103内の深さ方向の容積を大きくし、ギアカバー103により減速ギア機構4を覆い包めるようにしている。このように構成することで、従来のようにスロットルボディ側壁にギア機構の取付高さよりも高くした囲い壁を有するギアケースを設けることがなく、このギアケースの囲い壁を無くした分を合成樹脂のギアカバー103が補うことになり、その結果、ダイキャスト成形される金属製のスロットルボディ100については小形化を図り、ひいては軽量化を図ることができる。
ギアカバー取付け枠104の低背化により、本実施例では、減速ギア4のうちピニオン41,中間ギア42a,スロットルギア43の取付高さを枠104よりも高くしている。そのため、スロットルギア43は、枠104から突出した状態になるので、この枠に全閉ストッパ12を設けてもスロットルギア43を受け止めることができない。そこで、ギアカバー103に覆われる位置に全閉ストッパ12を取付けるための突起102aをスロットルボディと一体に設定し、この突起102aを枠104の高さを越えて設け、この突起102aに全閉ストッパ12をスロットルギア43の取付け高さに合わせて配置した。
デフォルトレバー6は枠4よりも低い位置にあるので、デフォルトストッパ11は第12図に示すようにスロットルボディ100の側壁に孔100cをあけて、この孔100cを通して全閉ストッパ12と平行(略平行を含む)に並ぶように配置されている。
電動式アクチュエータに用いるモータ5は、第13図に示すようにモータハウジングを構成するヨーク51に扁平な対向する2面(平面)51a,51bが形成されており、モータを収容するモータケース110がモータハウジングの形状に合わせた扁平な対向する内面110a,110bを有してスロットルボディ100の側壁に絞り弁軸3と直交する線に交わるよう配置されている。モータケース110の軸方向は絞り弁軸3と同一方向に向いている。
このような扁平面を有するモータ5を用いることで、スロットルボディ100と一体のモータケース110も扁平化を図り、スロットルボディ全体の小形化に貢献するが、さらに、本実施例では、モータケース110の対向する扁平な内面(平面)のうち一方の内面110bの全部或るいは大部分が絞り弁3の制御上のアイドル開度位置よりも下流側の方の吸気通路1の外壁面を構成している。ここでは、その一例として、扁平な内面110bの全部或るいは大部分が絞り弁の制御上の電気的全閉位置よりも下流側の方の吸気通路の外壁面を構成している。また、扁平な内面110bが周囲の吸気通路外壁面よりも窪むように形成され、このようにして、第14図に示すように、モータケース110のうち吸気通路1に隣接する110b側の壁の肉厚を薄くしてこのモータケース内面110bを吸気通路側により近づけている。
モータケース110のモータ差込口110aは、ギア設置スペース102に臨むようにして開口し、第11図に示すようにモータブラケット5aが3点配置のねじ5bを用いてモータ差込口110cの周辺位置でねじ止めされることで、モータ5が固定されている。ギア設置スペース102には、モータブラケット5aの輪郭に適合するモータ位置決めラインが形成されている。
モータ5の電源端子(モータ端子)51はモータブラケット5aを通してギアカバー103で覆われる空間に導かれており(第7図,第8図)、ギアカバー10に設けた端子80a,80bに接続金具82を介して接続される。
本実施例においては、減速ギア機構4,デフォルト開度設定機構(デフォルトレバー6,デフォルトスプリング8,ストッパ11等)と共にスロットルセンサ30が、スロットルボディ100の側壁の一面側にまとめて配置されている。
スロットルセンサ30は、絞り弁開度(スロットルポジション)を検出するものであり、本実施例では、第3図〜第5図に示すようにスロットルセンサー式すなわち絞り弁軸を除く全てのスロットルセンサ要素がギアカバー103の内側にセンサカバー31により覆われるようにして内蔵されている。
絞り弁軸3の一端3aはギアカバー103の装着時にスロットルセンサ30のロータ(回転子)32の位置に届くように延設され、ギアカバー103をスロットルボディ100に装着すると、絞り弁軸一端3aがセンサカバー31に露出するロータ軸穴37に自ずと嵌まり込むように設定してある。
ここで、第3図〜5の他に第18図〜第26図によりスロットルセンサ30及びギアカバー103の構成について説明する。
第18図はギアカバー103の内側を見た斜視図、第19図はギアカバー103に内装するスロットルセンサ30の分解斜視図、第20図はその見る方向を変えて示す分解斜視図、第21図はギアカバー103の縦断面図、第22図はギアカバー103を内側からみた平面図、第23図はギアカバー103の一部である端子固定用プレート103−2の平面図、第24図は端子固定用プレート103−2の斜視図、第25図はその見る方向を変えて示す斜視図、第26図は端子(配線)の斜視図である。
減速ギア機構4の設置スペース102を覆うギアカバー103は、合成樹脂によりモールド成形されており、外部の電源及び信号線と接続するためのコネクタケース103bと一体に成形されている。
スロットルセンサ30は、ポテンショメータ方式が採用されており、第19図,第20図の分解斜視図に示すように、一面に抵抗39,39´を形成し且つそれらの端子61,61´有する基板35と、上記の抵抗線39に接触する摺動ブラシ33及び抵抗線39´に接触する摺動ブラシ33´取付けたロータ32と、円周方向に波形の凹凸を繰り返す金属製のウエーブワッシャ(これによりロータ押さえばねが構成される)34と、合成樹脂製のセンサカバー(プレート)31を有してなる。本実施例では、抵抗39と摺動ブラシ33で一つのスロットルセンサを構成し、抵抗39´と摺動ブラシ33´とでもう一つのスロットルセンサを構成することで、一方のスロットルセンサが万一故障しても他方のスロットルセンサがこれに代わる機能を発揮し得るようにしてある。摺動ブラシ33,33´は第20図に示すように、ロータ32上の小突起32bに嵌まり込み小突起32bを熱で潰すことでロータ32に取付けている。
基板35は、ギアカバー103の内面に形成したスロットルセンサ収容空間(円形凹部)103aの内底103a´に接着されている。スロットルセンサ収容空間の内底103a´の中央にはロータ32の中央に設けた突起(回転軸)32aと嵌合するロータ軸支持穴103cが形成され、ロータ32の突起32aは、基板35の中央に設けた穴35aを通し、ワッシャ200を介してロータ軸支持穴103cに嵌合している。
センサカバー31はその周縁に取付穴31cが複数配設され、基板35,ロータ32,ウエーブワッシャ(ロータ押さえばね)34をセンサ収容空間103aに収容した後に、この取付穴31cをギアカバー103側に設けた小突起103g(第18図,第21図)に嵌め込み、この小突起103gを熱で潰すことで取付けられている。
ウエーブワッシャ34は、ロータ32とセンサカバー31との間に挾まれ、この挾み力で圧縮変形して、ロータ32をがたつくことなく支持し、耐振性を高めている。ロータ32の突起32aと反対側の面には、絞り弁軸3の一端3aを嵌合させるための軸穴(ボス穴)37が形成されている。絞り弁軸3の一端3aは、対向する2面が平面となるように形成され、一方、絞り弁軸一端3aに嵌まり込むロータ側の軸穴37は、絞り弁軸一端3aの断面形状に近似して対向する2面が平面を有し、絞り弁軸3と一緒にロータ32が回転可能にしてある。
ロータ32の軸穴37の内壁には、折曲形成した2個の板ばね(金具)38を装着するための2個の溝36が90°の配置で形成されており(第21図)、この溝36から軸穴37に板ばね38の弾性片が臨んで、絞り弁軸3の軸端部3aが軸穴37に板ばね38(以下、嵌合ばねと称することもある)を弾性変形させて押し込めるようにしてある。このようにして、ロータ32が絞り弁軸3にがたつくことなく装着できる。
第27図に示すように、絞り弁軸3に作用する嵌合ばね38のばね力をF1、ロータ押さえばね(ウエーブワッシャ)34のばね力をF2、嵌合ばね38のばね力F1に絞り弁軸3と軸穴37間の摩擦係数σ1を乗じた値をF3とすると(F3=F1×σ1)、F2>F3の関係になるようF1とF2の荷重を設定している。また、第28図に示すようにロータ32に要する回転トルクをF4(F4=ロータ押さえばね34のばね力F2×ロータ回転時の摩擦力σ2)、嵌合ばね38のばね力F1に対抗する回転トルクをF5とすると、F5>F4の関係になるようにF1,F2の荷重を設定している。
F2>F3の関係により、絞り弁軸3の軸方向の振動に対し、ロータ32を常に一定の位置に保持し、スロットルセンサ出力変動(チャタリング)を低減させる。
また、F5>F4の関係により、絞り弁軸3の回転角に対するロータ32の回転角の追
従性を良好にし、センサ出力の応答性を高めることができる。
絞り弁軸3のうちスロットルセンサ30側と反対の一端3bも、第3図〜第5図,第10図等に示すようにスロットルボディ100の側壁から突出し、この突出部分に平面を有して該平面を介して必要に応じて回転トルクを外部から与える検査治具を係合可能にしてある。
次にギアカバー103に施した電気的配線構造を第22図〜第26図により説明する。
ギアカバー103には、電源用の導体80とセンサ出力線となる導体81が複数(例えば計6本)樹脂モールドにより埋設されている。ここで導体80,81の配線構造について第26図により樹脂モールドを除いた状態で説明する。
電源用の2本の導体80は、一端が外部電源と接続するためのコネクタ端子80a´,80b´となり、他端が電動式アクチュエータ5のモータ端子51に接続される接続端子80a,80bとなり、これらの端子を除いて樹脂モールドされる。センサ出力線となる導体81は、計4本で、そのうちの2本の各一端81a,81bが第19図に示す抵抗端子61に接続され、残りの2本の各一端81c,81dが抵抗端子61´に接続されるものである。また、他端81a´,81b´,81c´,81d´がセンサ出力用のコネクタ端子となる。これらの端子を除いた導体80,81の大部分が樹脂モールド(ギアカバー)103により埋設されている。
第18図〜第22図に示すように、電源端子80a,80bと、センサ信号出力端子81a,81b,81c,81dは、ギアカバー103の内面に対して垂直に突出しており、電源端子80a,80bは、スロットルボディ100側のモータ端子51に対向して設けられており(第3図,第4図参照)、センサ信号出力端子81a〜81dは、スロットルセンサ収容部103aの内底103a´に基板35の抵抗端子61,61´に対応して配設されている(第19図参照)。
電源端子80a,80bは、継手式の接続金具82を介してモータ端子51と接続されている。基板35をギアカバー103内の所定位置103a´に固定ことで、基板35の一対の抵抗端子61がセンサ信号出力端子81a,81bに重なり合い、もう一対の抵抗端子61´がセンサ信号出力端子81c,81dに重なり合い、この重なり合った端子同士を溶接(例えばプロジェクション溶接)している。センサ信号出力端子81a,81bからのセンサ信号、及びセンサ信号出力端子81c,81dからのセンサ信号は、各導体81を介して外部接続用のコネクタ端子81a´,81b´及び81c´,81d´に導かれる。
コネクタ部103bには、電源用のコネクタ端子80a´,80b´とセンサ信号出力用のコネクタ端子81a´,81b´,81c´,81d´の計6本が上下に3本づつ列をなして配置されている。
ギアカバー103は、第21図に示すように一部が内層103−2,外層103−1の二層構造よりなり、その内層103−2は予め単独でモールド成形されたプレート形状でモールド成形により前記導体80,81を端子を除いて埋設したもので、この内層を構成するプレート103−2が外層となるギアカバー本体103−1と、該ギアカバー本体のモールド成形により一体化されている。
すなわち、第23図〜第25図に示すように、プレート103−2を予め導体80,81と共にモールド成形し、その後、このプレート103−2をギアカバー成形用の型内にセットしてギアカバー本体103−1をモールド成形するものであり、このようにして、プレート103−2は、ギアカバー103の中央付近で内層部となって位置する。
これらの端子付き導体80及び81を、ギアカバー103の成形前にプレート103−2のモールド成形により固定しておく理由は、ギアカバー103のモールド成形時に始めから導体80,81をギアカバー103中に埋設しようとすると、ギアカバーの構造が複雑なので、モールド成形用の型枠内に導体80,81を最初から押さえておくことは障害があって難しいために、モールド成形時に導体80,81が動いてしまい、導体80,81を適正状態で埋設することが困難であるためのである。すなわち、予め端子固定用プレート103−2のモールド成形時に導体80,81を埋設する場合には、そのプレート103−2から露出している導体部分を容易に押さえつけることができるので、適正状態で端子付き導体80,81を端子固定用プレート103−2と一体に埋設することができ、このプレート103−2をギアカバー本体103−1のモールド成形の型枠にセットしておけば、既に端子付き導体80,81は固定されているので、導体80,81のレイアウト上の狂いを防ぐことができる。
ギアカバー103は、該カバー103に設けたねじ穴152及び枠104のコーナに設けたねじ穴151にねじ150を通し締め付けることでスロットルボディに取付けられている。また、ギアカバー103は、方向性と特定してスロットルボディ100に取り付ける必要があり、そのため、ギアカバー103の内面に設けた突起170,171,172がスロットルボディ100側に設けた位置決め面160,161,162に適合した時だけギアカバーとスロットルボディの嵌め込みが可能にし、これによりギアカバーの方向性を間違うことなく取付られるようにしてある。
以上の実施例の効果をまとめると、次のようになる。
(1)減速ギア機構4の設置スペース102を覆い包むのは、従来はスロットルボディの側壁に設けたギアケースとこれを蓋するギアカバーで行なっていたが、本例では、従来のギアケースに代わってギアカバー103が設置スペース102のほとんどを覆うことになる。したがって、スロットルボディ自体は従来のような比較的容積の大きなギアケースを一体成形する必要がなくなり、容積を増やすのは軽量な合成樹脂製のギアカバー側であるので、一般にダイカスト成形される金属製のスロットルボディの形状を小形化し軽量化することが可能になる。
(2)スロットルボディ100にデフォルトストッパ11と全閉ストッパ12とを同じ方向から位置調整可能に並べて配置したので、それらのストッパ(スクリュー)のねじ穴を同一方向から穿設することが可能になり、また、ストッパの位置調整を接近した位置で同一方向から行うことが可能になり、調整作業の簡便化を図り得る。
(3)スロットルボディ100の形状を小形化して軽量化するためにギアカバー取付け枠104の低背化を図っても、全閉ストッパ12を取付けるための突起102aを枠104の高さを越えて設け、この突起102aに全閉ストッパ12をスロットルギア(最終段ギア)43の取付け高さに合わせて配置するので、スロットルギア43を全閉ストッパ
12で受け止めることが可能になる。
(4)リターンスプリング7及びデフォルトスプリング8を各ボス101,43c,6fの周囲に必然的に生じる空きスペースを利用して配置することができるために、スペースの合理化を図り、しかも、スロットルギア43に設けるボス43cは全て片面に集中させて突出形成したので、スロットルギア43の一面から突出するボスの突出量(ボス軸長)を両面ボス(最終段ギアの両面にボスを突出させるタイプのもの)の一面側の突出量に較べて長く確保できる。したがって、デフォルト開度設定機構の取付けスペースを装置の小形化を保持しつつ無駄なく確保することが可能になる。
(5)デフォルトレバー6とスロットルギア43とがデフォルトスプリング8のばね受けを兼用するので、ばね受け専用のカラー部材を省略でき、部品の簡略化を図り得る。
デフォルトレバー6は、少なくともボス6fを構成する部分とデフォルトスプリング8を受ける部分が合成樹脂により成形されているので、デフォルトレバー6とスロットルギヤ43との相対回転でデフォルトスプリング8が捩じれ動作を行っても、デフォルトスプリング8とこれに接触するデフォルトレバー6におけるスプリング受け部分,ボス部等との間のフリクションを小さくして、モータの負担を軽減させる。また、リターンスプリング及びデフォルトスプリングの表面に摩擦係数を減ずるコーティングを施したので、金属性のスロットルギア43やスロットルボディ100等がこれらのスプリングの一端を受けても、フリクションを低減させることができる。
(6)リターンスプリング7,デフォルトスプリング8のうちコイル径の大きい方のスプリングの圧縮応力Fをコイル径の小さい方のスプリングの圧縮応力fよりも大きくすることで、デフォルトレバー6を外径寄りの位置で一方向に安定した状態で押しつけるので、絞り弁軸3に嵌合されるデフォルトレバーを安定した適正な状態を維持することができ、デフォルト開度の精度の狂いを防止できる。
(7)スロットルギア(最終段ギア)43が機械的な全閉位置を規定する可動側の規定要素を兼用し、また、この規定要素は絞り弁軸3に圧入により固定されるので、スロットルギア43が全閉ストッパ12に当接して衝撃が加わった場合でも絞り弁軸3に対するスロットルギア43の位置関係が常に一定に保ち得る。したがって、機械的全閉位置を基準にして定められる絞り弁の制御状の開度に狂いが生ぜず、制御上の精度維持に貢献する。
(8)モータハウジングひいてはモータケース110の扁平化を図ることでスロットルボディ100の小形軽量化に貢献でき、しかも、モータケース110の扁平な内面のうち一つ110bが絞り弁2の制御上のアイドル開度位置よりも下流側の方の吸気通路の外壁面を構成するので、アイドル回転時のような吸入空気流量が少ないときであっても、アイドル回転時の絞り弁3通過直後の下流に生じる吸入空気流量の断熱膨張による冷却作用を最も効率良く受ける。したがって、モータケース内の冷却ひいてはモータハウジングの放熱性を高めて、モータ冷却効果に貢献することができる。
(9)さらに、モータケース110の対向する扁平な内面のうち一方の内面110bが周囲の吸気通路外壁面よりも窪むように形成されていることで、図14に示すようにモータケース110のうち吸気通路1に隣接する壁の肉厚を薄くしてこのモータケース内面70bを吸気通路1側により近づけることで、吸気通路を通過する吸入空気による冷却作用を効率良く受ける。
(10)スロットルセンサ30は、その部品一式をギアカバー103側だけの組み込み作業で組立てることが可能になり、組立作業が非常に簡便になる。このギアカバー103をスロットルボディ100の側壁に装着すれば、自ずと絞り弁軸3の先端がスロットルセンサ30のロータ32の軸穴と係合するので、絞り弁軸3とスロットルセンサ30の係合も簡単にワンタッチで行うことができる。さらに、スロットルセンサ30は、ギアカバーの内側でセンサカバー31に覆い隠されるので、防塵機能を発揮し、ギアカバー103を外した状態や装着した状態であっても塵埃や部品の摩耗粉等の侵入を防ぎ、センサの信頼度を高める。
(11)絞り弁軸3の一端がロータ32の軸穴37に該軸穴に設けたばね38の弾性変形を伴って嵌合し、ロータ32は該ロータとセンサカバー31との間に介在させたロータ押さばね34により押さえられることで、絞り弁軸の振動に対し、ロータを常に一定の位置に保持し、スロットルセンサ出力変動(チャタリング)を低減させる。また、絞り弁軸の回転角に対するロータの回転角の追従性を良好にし、センサ出力の応答性を高めることができる。
(12)絞り弁軸3のスロットルセンサと反対側の端部3bに検査治具を係合させて外
部から回転トルクを与えることが可能になり、これによってスロットルセンサの出力特性
を調べることができる。
(13)ギアカバー103に、外部電源と接続するためのコネクタ端子80a´,80b´と、モータ端子51と接続するための接続端子80a,80bの導体80やセンサ出力端子81a〜81d及びそのコネクタ端子81a´〜81d´の導体81を埋設したので、これらの端子の配線作業の手間を省くことができる。しかも、ギアカバー103をスロットルボディ100に装着すれば、ギアの内側で継手式接続金具82を介して外部電源に通じるギアカバー側の接続端子80a,80bとスロットルボディ100側のモータ端子51を簡単に接続することができる。
(14)ギアカバー103の一部である端子固定プレート103−2を予め成形し、このプレート103−2の樹脂モールド時に導体80,81を埋設することで、ギアカバー103を導体80,81の配置に狂いを生じさせることなく、樹脂モールド成形することができる。
(実施例が解決せんとする課題)
エンジンキーオフ時(換言すれば電動式アクチュエータの非通電時)の絞り弁のイニシャル開度(デフォルト開度)を全閉位置より大きくする技術が知られている。
ここで、絞り弁の全閉位置とは、吸気通路を完全に塞ぐ位置を意味するものではなく、特に、絞り弁を迂回するバイパス通路を設けないで絞り弁だけでアイドル回転数制御を行なうスロットル装置では、次に述べる機械的全閉位置と電気的全閉位置に分けて定義される。
機械的全閉位置とは、ストッパにより規定される絞り弁の最小開度位置で、この最小開度は絞り弁のかじり着きを防止するために吸気通路を完全に塞ぐ位置から多少開いた位置に設定されている。電気的全閉位置とは、制御上使用される開度範囲のうちの最小開度であり、電動式アクチュエータの駆動制御により、機械的全閉位置を基準にしてそれよりもわずかに大きい開度位置(例えば機械的全閉位置より約1°大きい位置)に設定される。
電子制御スロットルでは電気的全閉位置(制御上の最小開度)とアイドル開度(アイドル回転数制御に必要な開度)とは必ずしも一致するものではない。なぜなら、アイドル回転数は目標回転数を保つためにアイドル回転数検出信号に基づき絞り弁開度がフィードバック制御されるため、その開度に幅を持っているためである。
なお、全開位置についても、ストッパにより規定される機械的全開位置と制御上の最大開度である電気的全開位置が存在する。ここで、単に全閉位置と称する場合には、機械的全閉位置のほかに電気的全閉位置を含む。通常の制御では、電気的全閉位置(制御上の最小開度)から電気的全開位置(制御上の最大開度)の間で絞り弁が制御される。このようにすれば、絞り弁の最小,最大開度制御時に絞り弁軸の一部が機械的全閉,全開位置を決めるストッパに衝突することがなく、ストッパやスロットル部品の機械的疲労,摩耗,損傷を防止でき、また、ストッパへのかじりを防止できる。
デフォルト開度(すなわちエンジンキーオフ時のイニシャル開度)は、上記した全閉位置(機械的全閉位置及び電気的全閉位置)よりも絞り弁が更に開いた位置(例えば機械的全閉位置から4〜13°大きくした位置)の開度に設定される。
デフォルト開度の設定理由は、一つは、補助空気通路(絞り弁をバイパスする空気通路)を設けることなくしてエンジン始動時の暖機前運転(冷寒始動)の燃焼に必要な空気流量確保が挙げられる。なお、アイドリング時には、絞り弁は暖機されるにつれてデフォルト開度からそれよりも開度が小さくなる方向(ただし電気的全閉位置が下限位置である)に絞り込まれていく制御がなされる。
デフォルト開度は、その他に、スロットル制御系が万一故障した場合であっても自力走行(リンプホーム)確保或いはエンスト防止の吸入空気流量確保,絞り弁が粘性物質や氷等でスロットルボディ内壁に固着するのを防止する等の要求に応えるものである。
デフォルト開度設定機構の従来例としては、種々のものが提案され、公知例としては、例えば、特開昭63−150449号公報,USP4947815号明細書,その対応日本出願特表平2−500677号公報,特開昭62−82238号公報及びその対応USP4735179号明細書,特開平10−89096号公報,特開平10−131771号公報等に記載されたものがある。
デフォルト開度設定機構は、タイプとして種々のものがある。代表的なものを例示すれば、次のようなものがある。
一つは、絞り弁軸上を回転し得るよう該絞り弁に嵌合させたデフォルト開度設定用の係合要素(デフォルトレバー)を絞り弁に固定された要素とスプリングを介して係合させて、デフォルトレバーを絞り弁軸と共にデフォルト開度位置から絞り弁全開位置の間で一緒に回転させるようにし、エンジンキースイッチオフ時にはデフォルトレバーをデフォルトストッパに当接させて、絞り弁の開度をデフォルト開度に保持し、絞り弁をデフォルト開度以下にする場合には、絞り弁軸とデフォルトレバーとの係合を解除して、絞り弁軸を閉方向にスプリングの力に抗して単独で回転させる方式がある。
もう一つは、上記とは逆にデフォルトレバーと絞り弁軸を絞り弁全閉位置からデフォルト開度位置まで一緒に回転させ、エンジンキースイッチオフ時にはデフォルトレバーをデフォルトストッパに当接させて、絞り弁の開度をデフォルト開度に保持し、絞り弁をデフォルト開度以上にする場合には、絞り弁軸とデフォルトレバーとの係合を解除して、絞り弁軸を開方向にスプリングの力に抗して単独で回転させる方式がある。
電子制御スロットル装置は、アクセルペダルの踏み込み量をアクセルワイヤを介して絞り弁軸に伝達する機械式スロットル装置よりも、内燃機関の運転に適した空気流量制御を精密に行なうことができるが、電動式アクチュエータ,デフォルト開度設定機構,スロットルセンサを備えるために、部品点数が増加する。したがって、スロットルボディをいかに小形軽量化,簡素化し、製作,調整作業の合理化を図り、且つ動作上の安定性,精度をより一層高めることが望まれている。
実施例では、上記デフォルト開度設定機構を有する内燃機関のスロットル装置において、絞り弁軸の一端にデフォルト開度設定用の係合要素(デフォルトレバー)が該絞り弁軸に対し相対的に回転可能に嵌合し、この係合要素を挾むようにして、前記絞り弁に閉じ方向のばね力を付勢するリターンスプリングと、絞り弁の全閉位置からみてデフォルト開度側にばね力を付勢するデフォルト開度設定用のスプリング(デフォルトスプリング)とが絞り弁軸方向に対向配置され、これらのスプリングはコイル状の捩じればねにより構成され、前記係合要素の両面は前記リターンスプリング及びデフォルト開度設定用のスプリングのばね受けとなってこれらのスプリングの一端を係止させ、且つ両者のスプリングはコイル径が異なって軸方向に圧縮して装着され、コイル径の大きい方のスプリングの圧縮応力Fをコイル径の小さい方のスプリングの圧縮応力fよりも大きくしたことを特徴とする。
上記圧縮応力とは、スプリングを圧縮させた時に生じるばねの反発力である。
絞り弁軸は、絞り弁開度範囲のうち特定範囲(例えば絞り弁のデフォルト開度〜電気的全閉位置或いはデフォルト開度〜電気的全開位置)で回転する場合には、デフォルト開度設定用の係合要素との係合を解除して独立して回転する必要があるために、デフォルト開度設定用の係合要素は、絞り弁軸と相対的に回転し得るように、絞り弁軸上に「すきまばめ」の状態で取付けられる。
したがって、絞り弁軸外周とデフォルト開度設定用の係合要素の間には、クリアランスが存在する。そのために、デフォルト開度設定用の係合要素は、不安定な状態にあると振動などで揺動(変位)する。たとえ、デフォルト開度設定用の係合要素をコイル状のリターンスプリングとデフォルトスプリングのばね圧縮力により挾持した場合であっても、両者の圧縮応力が同等であったり、両スプリングのバランスが悪いと、デフォルト開度設定用の係合要素が揺動し易い不安定な状態となり、そのため、デフォルト開度に狂いが生じたり、上記係合要素の円滑な動作が期待できない。
(実施例の特徴)
第1の特徴は、この課題に対処するために、リターンスプリング,デフォルトスプリングのうちコイル径の大きい方のスプリングの圧縮応力Fをコイル径の小さい方のスプリングの圧縮応力fよりも大きくする。このようにすれば、コイル径の大きい方の圧縮応力Fがfに勝って上記係合要素を外径寄りの位置で一方向に安定した状態で押しつけるので、デフォルト開度設定用の係合要素の変位を防止して適正な状態を維持することが可能になり、上記のような不具合を防止できる。
好適には、電動式アクチュエータの動力を絞り弁軸に伝達する減速ギアを備え、前記絞り弁軸のうちスロットルボディの側壁面から突出した一端側に前記減速ギアの最終段ギアが圧入により固定され、この圧入固定式の最終段ギアが絞り弁の機械的な全閉位置を規定するストッパに電動式アクチュエータの駆動により当接可能にしてあることを特徴とする。
上記構成によれば、減速ギアの最終段ギアが機械的な全閉位置を規定する可動側の規定要素を兼用し、また、この規定要素(最終段ギア)は絞り弁軸に圧入により固定されるので、減速ギアが全閉ストッパに当接して衝撃が加わった場合でも絞り弁軸に対する減速ギヤの位置が常に一定の関係の保ち得る。したがって、機械的全閉位置を基準にして定められる絞り弁の開度に狂いが生ぜず、制御上の精度維持に貢献する。
さらに本実施例の具体的な特徴を以下列挙する。
第2の特徴は、内燃機関の吸入空気流量を制御する絞り弁を電動式アクチュエータにより開閉駆動するスロットル装置において、スロットルボディの側壁の一面に、前記電動式アクチュエータの動力を絞り弁軸に伝達する減速ギア機構の設置スペースと、この減速ギヤ機構の設置スペースを縁取るように形成されたギアカバー取付け用の枠とが形成され、この枠の高さを絞り弁軸の一端に取付けたギアの取付け高さよりも低くなるように低背化させ、この枠に前記減速ギア機構の設置スペースを覆うギアカバーが取付けられていることを特徴とする。
上記構成によれば、減速ギア機構の設置スペースを覆い包むのは、従来のスロットルボディの側壁に設けたギアケースとギアカバーに代わって、ギアカバーが上記設置スペースのほとんどを覆うことになり、その意味でギアカバーはギアケースの役割を担うことになる。したがって、スロットルボディ自体は従来のような比較的容積の大きなギアケースを一体成形する必要がなくなり、容積を増やすのは合成樹脂製のギアカバー側であるので、一般にダイカスト成形される金属製のスロットルボディの形状を小形化し軽量化することが可能なる。
第3の特徴は、内燃機関の吸入空気流量を制御する絞り弁を電動式アクチュエータにより開閉駆動するスロットル装置で、前記電動式アクチュエータの非通電時に前記絞り弁の開度を全閉位置より大きい所定の開度(デフォルト開度)に保つデフォルト開度設定機構を有する内燃機関のスロットル装置において、
前記デフォルト開度を規定するためのストッパと、前記絞り弁の機械的な全閉位置を規定するためのストッパとがアジャストスクリューにより構成され、これらのストッパが同じ方向から位置調整可能に並んで配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、デフォルト開度と絞り弁の機械的全閉位置とを任意に調整できる。しかも、スロットルボディにデフォルト開度ストッパ(デフォルトストッパ)のアジャストスクリューと全閉ストッパのアジャストスクリューとを同じ方向から位置調整可能に並べて配置したので、それらのストッパ(スクリュー)のねじ穴を同一方向から穿設することが可能になり、また、ストッパの位置調整を接近した位置で同一方向から行うことが可能になり、調整作業の簡便化を図り得る。
第4の特徴は、第1,第2の実施例を応用したもので、前記全閉ストッパが絞り弁軸に固定した減速ギア(最終段ギア)を受け止め機械的全閉位置を規定し、デフォルトストッパが、デフォルト開度設定用の係合要素(この係合要素は、絞り弁軸に該軸上で回転し得るようフリーに嵌合し、スプリングを介して前記最終段ギアと係合するデフォルトレバーである)を受け止めてデフォルト開度を規定する内燃機関のスロットル装置において、
スロットルボディの側壁の一面に、電動式アクチュエータの動力を絞り弁軸に伝達する減速ギアの設置スペースと、この減速ギアの設置スペースの周辺を縁取るように形成されたギアカバー取付け用の枠とが形成され、この枠の高さを前記最終段ギアの取付け高さよりも低くなるように低背化させ、前記ギアカバーに覆われる位置に前記全閉ストッパを取付けるための突起が前記粋の高さを越えて設けられ、この突起に前記全閉ストッパが前記減速ギアの最終段ギアの取付け高さに合わせて配置され、一方、前記デフォルトストッパは、前記枠よりも低い位置にあるデフォルト開度設定用の係合要素(デフォルトレバー)の位置に合わせて前記全閉ストッパと並んで配置されていることを特徴とする。
上記構成によれば、減速ギア機構の設置スペースを覆い包むのは、第1の発明同様にほとんどギアカバーにより行なわれ、その分、金属製のスロットルボディの形状を小形化して軽量化することが可能なる。
また、減速ギアの最終段ギアは、スロットルボディ側壁のギアカバー取付け枠から突出した状態になるので、この枠に全閉ストッパを設けても最終段ギアを受け止めることができない。そこで、本発明では、最終段ギアを受け止める全閉ストッパを取付けるための突起を設定し、この突起を前記枠の高さを越えて設け、この突起に全閉ストッパを前記最終段ギアの取付け高さに合わせて配置した。
このようにすれば、ギアカバー取付け枠の低背化を図っても、最終段ギアを全閉ストッパで受け止めることが可能になる。
第5の特徴は、上記デフォルト開度設定機構を有する内燃機関のスロットル装置において、絞り弁軸の一端がスロットルボディ側壁の軸受ボスより突出して該絞り弁軸一端に前記電動式アクチュエータの動力を伝達する減速ギアの最終段ギアが固定され、この最終段ギアと前記軸受ボスとの間に前記最終段ギアと係合可能な前記デフォルト開度設定機構の係合要素(デフォルトレバー)が絞り弁軸に対し相対的に回転可能に回転し、
前記絞り弁に閉じ方向のばね力を付勢するリターンスプリングが前記軸受ボスの周りに配置され、該リターンスプリングの一端が前記デフォルトレバーに係止し、該デフォルトレバーと前記最終段ギアとの間には該デフォルトレバー・最終段ギアを互いに係合する方向に引き付けるためのスプリング(デフォルトスプリング)が配置され、
前記最終段ギアには前記デフォルトスプリングを受ける面側(片面側)だけに絞り弁軸挿通用のボスを形成し、一方、前記デフォルトレバーにも前記最終段ギアのボスに対向する絞り弁軸挿通用のボスが形成され、この両ボスの周りに前記デフォルトスプリングが装着されていることを特徴とする。
上記構成によれば、リターンスプリング及びデフォルトスプリングを各ボスの周囲に必然的に生じる空きスペースを利用して配置することができるために、スペースの合理化を図り、しかも、減速ギアの最終段ギアのボスは全て片面に集中させて突出形成したので、最終段ギアの一面から突出するボスの突出量(ボス軸長)を両面ボス(最終段ギアの両面にボスを突出させるタイプのもの)の一面側のボスの突出量に較べて長く確保できる。したがって、デフォルト開度設定機構のスプリングの取付けスペースを、装置の小形化を保持しつつ無駄なく確保することが可能になる。
第6の特徴は、上記デフォルト開度設定機構を有する内燃機関のスロットル装置において、絞り弁軸の一端に、前記電動式アクチュエータの動力を伝達する減速ギアの最終段ギヤが固定されると共に、前記デフォルト開度設定機構の係合要素(デフォルトレバー)が絞り弁軸に対し相対的に回転可能に嵌合し、該デフォルトレバーと前記最終段ギアとの間にはこのデフォルトレバー,最終段ギアを互いに係合する方向に引き付けるデフォルト開度設定用のスプリング(デフォルトスプリング)が配置され、このデフォルトスプリングを、前記デフォルトレバーと前記最終段ギアとが直接受け止めるばね受け構造となっていることを特徴とする。
上記構成によれば、デフォルトレバーと減速ギアの最終段ギアとがデフォルトスプリングのばね受けを兼用するので、部品の簡略化を図り得る。
また、その応用例として、デフォルトレバーは、少なくともボスを構成する部分と前記デフォルトスプリングを受ける部分が合成樹脂により成形されているものを提案する。
このようにすれば、合成樹脂が金属部材に比べて摩擦係数が小さいので、デフォルトレバーと最終段ギアとの相対回転でデフォルトスプリングが捩じれ動作を行っても、デフォルトスプリングとこれに接触する部材(デフォルトレバーにおけるスプリング受け部分,ボス部)との間のフリクションを小さくして、モータの負担を軽減させる。したがって、モータによる絞り弁の動きをスムーズにし、動作時のモータ消費電力の減少を図り得る。
さらに、リターンスプリング及びデフォルトスプリングの表面に摩擦係数を減ずるコーティングを施しておけば、これらのスプリングの捩じれ動作時に生じる相手方部材とのフリクションをより一層低減させることができる。
第7の特徴は、内燃機関の吸入空気流量を制御する絞り弁を電動式アクチュエータにより開閉駆動するスロットル装置において、
前記電動式アクチュエータに用いるモータは、モータハウジングを構成するヨークに扁平な対向する2面が形成されており、前記モータを収容するモータケースが前記モータハウジングの形状に合わせた扁平な対向する内面を有してスロットルボディの側壁に絞り弁軸と直交する線に交わるよう配置され、このモータケースの対向する扁平な内面のうち一方の内面の全部或るいは大部分が絞り弁の制御上のアイドル開度位置よりも下流側の方(例えば絞り弁の制御上の電気的全閉位置よりも下流側の方)の吸気通路の外壁面を構成していることを特徴とする。
上記構成によれば、モータハウジングひいてはモータケースの扁平化を図ることでスロットルボディの小形軽量化に貢献でき、しかも、モータケースの扁平な内面のうち一つが絞り弁の制御上のアイドル開度位置よりも下流側の方の吸気通路の外壁面を構成するので、アイドル回転時のような吸入空気流量が少ないときであっても、モータケースには、アイドル回転時の絞り弁通過直後の下流に生じる吸入空気流量の断熱膨張による冷却作用を最も効率良く受ける。したがって、モータケース内の冷却ひいてはモータハウジングの放熱性を高めて、モータ冷却効果に貢献することができる。
第8の特徴は、上記同様に前記モータを収容するモータケースが前記モータハウジングの形状に合わせた扁平な対向する内面を有してスロットルボディの側壁に絞り弁軸と直交する線に交わるよう配置され、このモータケースの対向する扁平な内面のうち一方の内面が周囲の吸気通路外壁面よりも窪むように形成されていることを特徴とする。
上記構成によれば、モータケースのうち吸気通路に隣接する壁の肉厚を薄くしてこのモータケース内面を吸気通路側により近づけることで、吸気通路を通過する吸入空気による冷却作用を効率良く受けることが可能になる。
以上説明したように、実施例においては、各発明において種々の効果を奏するが、これを総括すれば、電動式アクチュエータ,ギア機構,デフォルト開度設定機構等を備えた電子制御スロットル装置において、小形軽量化、製作及び調整作業の合理化、動作の安定性,精度を高めるといった効果を実現することができる。