以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態1)
図1〜3は、実施形態1に係る建物の制震構造10を示す。
この制震構造10は、3本の柱11(軸材)並びに梁12(軸材)及び土台13(軸材)の一部分からなる「日」の文字を横にしたような枠状の躯体14と内装下地材や外装下地材を構成する面材15とを有する縦長長方形の壁構造に構成されたものである。なお、この制震構造10は、全ての壁構造に構成されていても、また、一部の壁構造に構成されていてもいずれでもよい。
柱11は、左右に間隔をおいて並行に延びるように設けられ、各々が梁12と土台13との間を連結するように立設されている。柱11は、例えば、木製の長さ1000〜7000mm、幅25〜150mm、及び厚さ90〜150mmの角材により構成され、耐震強度等が考慮されて、形状や断面積、材質が適宜選択される。柱11の間隔は、例えば300〜2000mmである。
梁12及び土台13は、上下に間隔をおいて並行に延びるように設けられている。梁12及び土台13のそれぞれは、例えば、木製の長さ1000〜7000mm、幅90〜150mm、及び厚さ90〜400mmの角材により構成され、耐震強度等が考慮されて、形状や断面積、材質が適宜選択される。梁12と土台13との間隔は、例えば1000〜3500mmである。
柱11と梁12とは、前者の上端に形成された凸部が後者の下面側に形成された凹部に嵌合して結合している。また、柱11と土台13とは、前者の下端に形成された凸部が後者の上面側に形成された凹部に嵌合して結合している。
面材15は、矩形平板状に形成されており、表面側パネル15aと裏面側パネル15bとが一体に接合された構成を有する。建物が地震や風圧によって大きな水平力を受けたとき、この面材15の持つせん断剛性が主要な抵抗要素として作用する。
表面側パネル15aは、躯体14を覆う大壁構造を構成するように設けられている。表面側パネル15aとしては、例えば、火山性ガラス質複層板、石膏ボード、珪酸カルシウム板等が挙げられる。表面側パネル15aは、例えば、長さ900〜3000mm、幅900〜2000mm、及び厚さ6〜13mmに形成されている。
裏面側パネル15bは、躯体14内において真壁構造を構成するように、また、パネル表面が柱11等と面一となるように設けられている。裏面側パネル15bは、表面側パネル15aよりも釘側面抵抗の大きい材料で形成されており、例えば、釘側面抵抗が300N以上であることが好ましく、500N以上であることがより好ましい。なお、釘側面抵抗は、ASTM D−1037に準じて測定される。裏面側パネル15bとしては、例えば、合板材料、OSBなどの木質材料板等が挙げられる。裏面側パネル15bは、例えば、長さ700〜3000mm、幅700〜2000mm、及び厚さ6〜30mmに形成されている。
表面側パネル15aと裏面側パネル15bとは、例えば、酢酸ビニル系接着剤(木工用接着剤)、ビニルウレタン系接着剤、ラテックス系接着剤、シリコーン系接着剤、或いは、これらの変性物や混合物からなる接着剤による接着接合、或いは、釘打ち等による物理的接合により一体化している。
面材15の裏面側パネル15bの裏面側には、左右両辺のそれぞれに沿って細長い上側及び下側の一対の受材16が上下に大きく間隔をおいて設けられており、また上下両辺のそれぞれに沿って細長い左側及び右側の一対の受材16が左右に間隔をおいて設けられている。
上側及び下側の受材16のそれぞれは、金属材料や木質材料等の剛性を有する材料により、例えば、長さ300〜3000mm、幅50〜100mm、及び厚さ25〜50mmに形成されている。上側及び下側の受材16のそれぞれは、裏面側パネル15bの表面側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された部材固定具22によって裏面側パネル15bの裏面側、つまり、面材15の裏面側に固定されている。なお、上側及び下側の受材16のそれぞれは、表面側パネル15aの表面側から打ち付けられた裏面側パネル15bを貫通した部材固定具によって面材15の裏面側に固定されていてもよい。
左側及び右側の受材16のそれぞれは、金属材料や木質材料等の剛性を有する材料により、例えば、長さ300〜3000mm、幅50〜100mm、及び厚さ25〜50mmに形成されている。左側及び右側の受材16のそれぞれは、裏面側パネル15bの表面側から打ち付けられた釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の剛性を有する材料で形成された部材固定具22によって裏面側パネル15bの裏面側、つまり、面材15の裏面側に固定されている。なお、左側及び右側の受材16のそれぞれは、表面側パネル15aの表面側から打ち付けられた裏面側パネル15bを貫通した部材固定具によって面材15の裏面側に固定されていてもよい。
両側の柱11のそれぞれと面材15の裏面側に設けられた上側及び下側の受材16との間には、図4(a)〜(c)に示すように、複数の制震部材17が介設されている(図4では4個)。つまり、複数の制震部材17が上側或いは下側の受材16という単一の受材16を介して面材15に取り付けられている。また、制震部材17は、裏面側パネル15bの裏面側に、その厚さ方向に打ち込まれるように設けられた剛性を有する材料で形成された部材固定具22を介して間接的に取り付けられていることとなる。
図5(a)〜(d)は制震部材17を示す。
この制震部材17は、シート状の粘弾性ダンパー18とそれを挟むように設けられた軸材取付部19及び面材取付部20とを有する。
粘弾性ダンパー18は、例えば、縦30〜200mm、横30〜200mm、及び厚さ3〜30mmに形成されている(図5では、縦長長方形)。
粘弾性ダンパー18は、減衰性(特に0.1〜10Hzの周波数域)を有する材料により、例えば、縦300〜3000mm、横50〜100mm、及び厚さ3〜30mmのシート状乃至板状に形成されている。具体的には、粘弾性ダンパー18は、シリコン系粘弾性体、ジエン系粘弾性体、イソプレンゴム(IR)系粘弾性体、天然ゴム(NR)、スチレン・ブタジエン共重合ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、クロロプレンゴム(CR)等をベースとした高減衰性のゴム組成物粘弾性体等により構成されている。粘弾性ダンパー18の性能としては、5〜30℃の温度範囲において、損失係数(tanδ)が0.4以上で且つ貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上であることが好ましい。
軸材取付部19は、鋼板、アルミニウム板、ステンレス板などの金属材料やABS樹脂板、アクリル樹脂板などの樹脂材料、木質材料、火山性ガラス質複層板などの無機質材料等の剛性を有する材料により、軸材取付片19aとダンパー取付片19bとを有する断面L字状に形成されている(好ましくは厚さ5mm以上)。軸材取付片19aには複数の留具孔が形成されている(図5では6個)。ダンパー取付片19bは、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着により粘弾性ダンパー18に接着している。
面材取付部20は、金属材料等の剛性を有する材料により、一対の板状の面材取付片20aとそれらを連結する連結片20bとを有する断面コの字状に形成されている。各面材取付片20aには複数の留具孔が形成されている(図5では3個)。連結片20bは、エポキシ系接着剤やウレタン系接着剤などにより、或いは、加硫接着により粘弾性ダンパー18に接着している。
制震部材17は、図6に示すように、軸材取付部19の軸材取付片19aが柱11の面材15に直交する躯体14内側面に当接し、軸材取付片19aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具nが通されて固定され、それによって柱11に取り付けられている。また、制震部材17は、図6に示すように、面材取付部20が面材15の裏面の上側或いは下側の受材16に嵌合し、面材取付片20aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具nが通されて固定され、それによって面材15に取り付けられている。従って、シート状の粘弾性ダンパー18は、面材15に平行に設けられている。
梁12及び土台13のそれぞれと面材15の裏面側に設けられた左側及び右側の受材16のそれぞれとの間にも複数の制震部材17が介設されている(図1では2個)。つまり、複数の制震部材17が左側或いは右側の受材16という単一の受材16を介して面材15に取り付けられている。また、制震部材17は、裏面側パネル15bの裏面側に、その厚さ方向に打ち込まれるように設けられた剛性を有する材料で形成された部材固定具22を介して間接的に取り付けられていることとなる。
制震部材17は、上記と同様に、軸材取付部19の軸材取付片19aが梁12或いは土台13の面材15に直交する躯体14内側面に当接し、軸材取付片19aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具nが通されて固定され、それによって梁12或いは土台13に取り付けられている。また、制震部材17は、面材取付部20が面材15の裏面の左側或いは右側の受材16に嵌合し、面材取付片20aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具nが通されて固定され、それによって面材15に取り付けられている。従って、シート状の粘弾性ダンパー18は、面材15に平行に設けられている。
なお、制震部材17が面材15の中央部よりも側端部に多く設けられているのは、中央部よりも側端部の方が大きな変位が生じるからである。
面材15は、周縁に沿って、また、中央を上下方向に沿って、間隔をおいて表面側パネル15aの表面側から釘等の剛性を有する材料で形成された面材固定具21が打ち付けられて柱11並びに梁12及び土台13のそれぞれに固定されている。
本実施形態1と同一構成の発明例の制震構造10と図7に示すように発明例の表面側パネル15aのみを面材15’としたことを除いて発明例と同一構成の比較例の制震構造10’とについて静的試験及び動的試験をそれぞれ実施した。なお、柱11の長さを2730mm、間隔を910mmとし、発明例の表面側パネル15a及び比較例の面材15’として厚さ12.5mmの石膏ボード(釘側面抵抗250N)、裏面側パネル15bとして厚さ12mmの合板(釘側面抵抗1000N)をそれぞれ用いた。
図8は、発明例及び比較例のそれぞれの静的試験における躯体の水平せん断変形量と荷重との関係を示す。
発明例では、水平せん断変形量が約25mmとなったとき(矢印A)、面材固定具21による柱11等への固定が緩み、それによる剛性が得られなくなるが、その後は、水平せん断変形量が200mm弱(家屋倒壊レベル)まで制震部材17のみにより荷重が保持された。なお、発明例では、制震構造10の破壊に至らず、この時点で試験を中止した。
一方、比較例では、発明例同様に、水平せん断変形量が約25mmとなったとき(矢印A)、面材固定具21’による柱11’等への固定が緩み、それによる剛性が得られなくなり、その後制震部材17’のみにより荷重が保持されるが、さらに水平せん断変形量が50mm弱まで大きくなると、制震部材17’が取り付けられた受材16’を面材15’に固定する部材固定具22’によって面材15’が固定箇所で破壊し、制震部材17’による荷重の保持も得られなくなった。
図9は、発明例及び比較例のそれぞれの動的試験における躯体の水平せん断変形量と荷重との関係を示す。なお、データは、繰り返しせん断変形を加えて安定した状態におけるヒステリシスループである。
これによれば、発明例は、比較例と比較して、ヒステリシスループで囲われる面積が大きく、従って、エネルギー吸収が大きいことが分かる。これは、比較例では、制震部材17’が取り付けられた受材16’の部材固定具22’による面材15’への固定の耐力が繰り返しせん断変形により低下し、制震部材17’に力が有効に伝わりにくくなるのに対し、発明例では、制震部材17が取り付けられた受材16の部材固定具22による面材15、つまり裏面側パネル15bへの固定の耐力が繰り返しせん断変形により低下せず、制震部材17に力が有効に伝わるためであると考えられる。
以上の通り、制震構造10によれば、制震部材17が裏面側パネル15bの裏面側に、その厚さ方向に打ち込まれるように設けられた部材固定具22を介して取り付けられているものの、裏面側パネル15bは表面側パネル15aよりも釘側面抵抗の大きい材料で形成されているので、部材固定具22による面材の破壊を抑制でき、そのため大きな変形量に対しても制震効果を得ることができる。
また、制震部材17の軸材取付部19が柱11や梁12や土台13の面材15に直交する躯体14内側面に取り付けられていると共に、面材取付部20が面材15の裏面側に取り付けられており、軸材取付部19の取付位置を前後に調節することができるので、柱11や梁12や土台13のズレ等による不陸の心配なく施工することができる。しかも、面材15を躯体14に固定した後に制震部材15を裏面側から取り付けることも可能であり、新築だけでなく、既存の構造に対する改修も容易に行うことができる。
また、面材15が剛性を有する材料で形成された面材固定具21で柱11や梁12や土台13に固定されており、揺れに対する初期剛性が高いので、図10に示すように、この制震構造10に面材15に平行な面内で水平力が作用すると、小さい地震で揺れが小さい場合には、高い初期剛性により優れた制震性能を得ることができる一方、大きい地震で揺れが大きい場合には、図11に示すように、面材固定具21が塑性変形するものの制震部材17によるエネルギー吸収により優れた制震性能を得ることができる。つまり、揺れの大小に関係なく、優れた制震性能を得ることができる。なお、面材15は梁12や土台13と一緒に動こうとするので、梁12や土台13と面材15との間に設けられた制震部材17に生じる変位は相対的に小さく、一方、柱11は梁12や土台13とずれようとするので、柱11と面材15との間に設けられた制震部材17に生じる変位は相対的に大きい。
また、柱11や梁12や土台13と面材15との間の変形量は各部位で異なり(端部が大きく、中央部が小さい)、複数の制震部材17がばらばらに面材15に取り付けられていたのでは、各制震部材17に加わる変形量が取付位置によって異なるものとなる。しかしながら、上記の制震構造10によれば、複数の制震部材17が単一の受材16を介して面材15に取り付けられており、複数の制震部材17が一体となって個々の変形量が均等化するので、エネルギー吸収を効率的に行うことができる。
なお、本実施形態1では、表面側パネル15aが大壁構造を構成するように設けられ且つ裏面側パネル15bが真壁構造を構成するように設けられたものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、同一形状に形成された表面側パネル15a及び裏面側パネル15bが重ね合わされて接合一体化され、図12に示すような大壁構造又は図13に示すような真壁構造を構成するものであってもよい。また、前者の大壁構造を構成する場合、図14に示すように、面材15は、表面側パネル15aを介さず、裏面側パネル15bの表面側から打ち付けられた面材固定具によって柱11並びに梁12及び土台13のそれぞれに固定されていてもよい。
(実施形態2)
図15〜17は、実施形態2に係る2×4住宅の制震構造10を示す。なお、実施形態1と同一名称の部分は実施形態1と同一符号で示す。
この2×4住宅の制震構造10は、横架材31及び床組部材32とそれらの間に設けられた一対のパネル部材33とを備えている。
横架材31及び床組部材32は、上下に間隔をおいて並行に延びるように設けられている。横架材31及び床組部材32のそれぞれは、例えば、木製の長さ1000〜7000mm、幅90〜150mm、及び厚さ90〜400mmの角材で構成されており、耐震強度等が考慮されて、形状や断面積、材質が適宜選択される。横架材31と床組部材32との間隔は、例えば2000〜2750mmである。
一対のパネル部材33のそれぞれは、3本の縦軸材34及び横軸材35からなる枠体36と面材15とを有する。なお、図15では便宜上面材15を透視状態で示している。
枠体36の3本の縦軸材34は、左右に略均等間隔をおいて並行に延びるように設けられている。各縦軸材34は、例えば、木製の長さ1820〜2730mm、幅40mm程度、及び厚さ90mm程度以上の断面を有する建築基準法の規定に準拠した角材で構成されている。3本の縦軸材34のうち1本の縦軸材34(左側のパネル部材33の左端の縦軸材34及び右側のパネル部材33の右端の縦軸材34)は、角材(例えば204材)の2本を重ね合わせ、接着剤、木ネジ、ビスや釘などにより接合一体化したもので構成されている。左側一対及び右側一対の縦軸材34の間隔は、例えば910mm程度である。
枠体36の横軸材35は、3本の縦軸材34の上端(一端)を連結するように設けられている。横軸材35は、例えば、木製の長さ1820〜2730mm、幅40mm程度、及び厚さ90mm程度以上の断面を有する建築基準法の規定に準拠した角材で構成されている。
3本の縦軸材34のそれぞれは、例えば、横軸材35の外側から釘や木ネジ等が打ち付けられ、それによって横軸材35に接合一体化している。また、3本の縦軸材34のうち両側のそれぞれは、その上端において、引抜防止具38を介して横軸材35に結合している。引抜防止具38としては、例えば、(財)日本住宅・木材技術センター規格の柱頭金物の記号PCやGL−PCや各種の三角金物が挙げられる。引抜防止具38は、木ネジ等により縦軸材34及び横軸材35のそれぞれに固定されている。
面材15は、矩形平板状に形成されており、表面側パネル15aと裏面側パネル15bとが一体に接合された構成を有する。建物が地震や風圧によって大きな水平力を受けたとき、この面材15の持つせん断剛性が主要な抵抗要素として作用する。
表面側パネル15aは、枠体16のうち2本構成の縦軸材34の外側側部を除いた全面を覆うように設けられている。表面側パネル15aとしては、例えば、火山性ガラス質複層板、石膏ボード、珪酸カルシウム板等が挙げられる。表面側パネル15aは、例えば、長さ900〜3000mm、幅900〜2000mm程度、及び厚さ6〜13mmに形成されている。
表面側パネル15aは、表面側から釘、木ネジ、ビス、ピンネイル等の剛性を有する材料で形成された面材固定具21が間隔をおいて打ち付けられ、それによって枠体16の3本の縦軸材34(2本構成の縦軸材34は外側の方)及び横軸材35のそれぞれに接合一体化している。
裏面側パネル15bは、枠体16で囲われ、また、パネル表面が縦軸材34等と面一となるように設けられている。裏面側パネル15bは、表面側パネル15aよりも釘側面抵抗の大きい材料で形成されており、釘側面抵抗が300N以上であることが好ましく、500N以上であることがより好ましい。なお、釘側面抵抗は、ASTM D−1037に準じて測定される。裏面側パネル15bとしては、例えば、合板材料、OSBなどの木質材料板等が挙げられる。裏面側パネル15bは、例えば、長さ700〜3000mm、幅700〜2000mm、及び厚さ6〜30mmに形成されている。
表面側パネル15aと裏面側パネル15bとは、例えば、酢酸ビニル系接着剤(木工用接着剤)、ビニルウレタン系接着剤、ラテックス系接着剤、シリコーン系接着剤、或いは、これらの変性物や混合物からなる接着剤による接着接合、或いは、釘打ち等による物理的接合により一体化している。
面材15の裏面側パネル15bの裏面側には、両側の縦軸材34のそれぞれに沿って延びる受材16が設けられている。各受材16は、木材、合板やMDFなどの木質材料等により、例えば、長さ300〜3000mm、幅50〜100mm、及び厚さ25〜50mm程度の断面を有する角材で構成されている。各受材16は、裏面側パネル15bの表面側から釘、木ネジ、ビス、ピンネイル等の剛性を有する材料で形成された部材固定具22が間隔をおいて打ち付けられ、それによって裏面側パネル15bに固定されている。縦軸材34と裏面側パネル15bの裏面側に固定された受材16との間には、上下一対の制震部材17が介設されている。つまり、複数の制震部材17が単一の受材16を介して裏面側パネル15bに取り付けられている。また、制震部材17は、裏面側パネル15bの裏面側に、その厚さ方向に打ち込まれるように設けられた剛性を有する材料で形成された部材固定具22を介して間接的に取り付けられていることとなる。
制震部材17の構成は実施形態1のものと同一である。制震部材17は、図18に示すように、軸材取付部19の軸材取付片19aが縦軸材34の裏面側パネル15bに直交する枠体36内側面に当接するように設けられ、軸材取付片19aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具nが通され、それによって縦軸材34に取り付けられている。また、制震部材17は、図18に示すように、面材取付部20が裏面側パネル15bの裏面側の受材16に嵌合するように設けられ、面材取付片20aに形成された留具孔に釘、木ネジ、ビス、ボルト、ラグスクリュー等の留具nが通され、それによって裏面側パネル15bに取り付けられている。従って、シート状の粘弾性ダンパー18は、面材15に平行に設けられている。
一対のパネル部材33は、縦軸材34同士が当接するように相互に隣接して設けられている。
一対のパネル部材33は、横軸材35の上側を掛け渡すように頭繋ぎ材24が設けられ、その頭繋ぎ材24の外側から釘、木ネジ等が打ち付けられ、それによって横軸材35が連結されて接合一体化している。頭繋ぎ材24は、例えば、木製の長さが1820〜3000mm、幅40mm程度、及び厚さ90mm程度以上の断面を有する建築基準法の規定に準拠した角材で構成されている。
一対のパネル部材33のそれぞれは、3本の縦軸材34の下端(他端)を連結するように共通の長尺横軸材25が設けられ、その長尺横軸材25の外側から釘、木ネジ等が打ち付けられ、それによって長尺横軸材25に接合一体化している。また、3本の縦軸材34のうち両側のそれぞれは、その下端において、引抜防止具38を介して長尺横軸材25に結合している。引抜防止具38としては、例えば、(財)日本住宅・木材技術センター規格の柱頭金物の記号PCやGL−PCや各種の三角金物が挙げられる。引抜防止具38は、木ネジ等により縦軸材34及び長尺横軸材25のそれぞれに固定されている。長尺横軸材25は、例えば、木製の長さ1820〜3000mm、幅40mm程度、及び厚さ120mm程度の建築基準法の規定に準拠した角材で構成されている。
一対のパネル部材33の相互に当接した縦軸材34は、接着剤やビスなどによる物理的固定や接着剤等により接合一体化している。これにより、その接合一体化した縦軸材34が一対のパネル部材33によって共有される共通の縦軸材34に構成されている。そして、この制震構造10において、制震部材17が取り付けられた縦軸材34は、いずれも複数の軸材が接合一体化したもので構成されたものとなっている。
一対のパネル部材33が頭繋ぎ材24及び長尺横軸材25で上下に挟まれた構造体は、横架材31と床組部材32との間に嵌め入れられるように設けられている。なお、この構造体と床組部材32との間には床下地材29が介設されている。また、横架材31の上側にも床下地材29が設けられている。
この構造体は、縦軸材34の上部と図示しない二階部分のパネル部材の縦軸材34の下部との間に横架材31を跨いで帯金物が設けられ、それによって上部が固定されており、また、長尺横軸材25側から釘、木ネジ等が下向きに打ち付けられ、それによって下部が床組部材32に接合一体化している。なお、長尺横軸材25及び床組部材32は、それらに連通したボルト孔が形成されており、そこに土台に立設されたボルトが通されて固定されている。
以上の構成の2×4住宅の制震構造10は、まず、一対のパネル部材33、頭繋ぎ材24、及び長尺横軸材25を準備した後、一対のパネル部材33を頭繋ぎ材24で連結する工程、一対のパネル部材33を長尺横軸材25に接合一体化する工程、及び一対のパネル部材33の当接する縦軸材34同士を接合一体化する工程を順不同で行い、そして、組上がった一対のパネル部材33が頭繋ぎ材24及び長尺横軸材25で上下に挟まれた構造体を横架材31と床下地材29を介した床組部材32との間に配置し、それらを上下で接合一体化することにより施工することができる。このように予め準備したパネル部材33を用いることにより施工の効率化を図ることができる。
別の施工方法として、図19に示すように、横架材31と床組部材32との間に中央の縦軸材34を除いた枠体36のみを組み、その後、枠体36に、裏面側パネル15bの裏面側の両側辺部のそれぞれに制震部材17が設けられていると共に中央に縦軸材34が接合一体化した図20に示すようなパネル部品40を取り付け、最後に表面側パネル15aを設けることにより施工することもできる。このように予め制震部材20を設けたパネル部品40を用いることにより施工の効率化を図ることができる。
(その他の実施形態)
上記実施形態1及び2では、制震部材17を部材固定具22により受材16を介して裏面側パネル15bに間接的に取り付けた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、制震部材を部材固定具により直接的に裏面側パネルに取り付けた構成であってもよい。
また、上記実施形態1及び2では、制震部材17の軸材取付部19が柱11或いは縦軸材34の面材15に直交する躯体14内側面或いは枠体36内側面に取り付けられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、その他の面に取り付けられた構成であってもよい。
また、上記実施形態1及び2では、粘弾性ダンパー18を有する制震部材17が用いられた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、柱や梁や土台と面材の裏面側との間に制震部材としてオイルダンパーが用いられた構成であってもよい。
また、上記実施形態1及び2では、受材16を介して複数の制震部材17を面材15に取り付けた構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、複数の制震部材を個別に受材を介して面材に取り付けた構成であってもよい。
また、上記実施形態1及び2では、面材15を表面側パネル15aと裏面側パネル15bとの2枚構成としたが、特にこれに限定されるものではなく、表面側パネル15aのさらに表側、或いは、表面側パネル15aと裏面側パネル15bとの間、或いは、裏面側パネル15bのさらに裏側に別のパネル材が設けられた構成であってもよい。