JP2009234812A - 炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明の目的は、主要原料を変更することなく、長期間の使用に耐える炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法を提供することにある。
【解決手段】石灰質原料、けい酸質原料、ウォラストナイトおよび炭素繊維を必須原料とし、該原料に水を加えて混合して原料スラリーを形成し、次いで該原料スラリーを脱水成形して生板を得、該生板をオートクレーブ養生して硬化させるけい酸カルシウム材の製造方法において、炭素繊維として、ポリアクリロニトリル系のチョップドストランド状の炭素繊維を使用し、該炭素繊維を予めpHが10以上のアルカリ溶液中で、60℃以上100℃以下で且つ30分以上の条件で加熱処理し、次いで他の原料と混合して原料スラリーを形成することを特徴とする炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、主としてアルミニウム等の低融点金属を製造する装置に使用するけい酸カルシウム材に関するものである。
低融点金属を製造する装置に使用するけい酸カルシウム材としては、当初は補強繊維として石綿を使用していたが、脱石綿化に伴いポリアクリロニトリル系炭素繊維を補強繊維としたけい酸カルシウム材が開発(特許文献1)され、現在に至るまで広く使用されている。しかし、該けい酸カルシウム材は使用時間が増加するにつれ亀裂が発生し始めるため、定期的に交換されていることから、長期間使用できる炭素繊維補強けい酸カルシウム材が望まれている。耐久性を高めるための技術としては、例えば微粒子熱硬化性樹脂を用いる技術が提案されている(特許文献2)。
しかし、微粒子熱硬化性樹脂を用いると脱水成形性の悪化による生産効率の低下及び成形体内部への層状亀裂等の欠陥の発生、あるいは使用時に樹脂の燃焼によるガスが発生しアルミニウム等の低融点金属の製造に悪影響を及ぼすという問題があることから、主要原料を変更せずに長期間使用できる炭素繊維補強けい酸カルシウム材が望まれている。
特開昭61−232256号公報 特開2000−72522号公報
本発明の目的は、主要原料を変更することなく、長期間の使用に耐える炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法を提供することにある。
そこで、本発明者らは、主要原料を変更することなく、耐熱性に優れる炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製法について検討した結果、炭素繊維として、ポリアクリロニトリル系のチョップドストランド状の炭素繊維を使用し、当該炭素繊維を直接使用するのではなく、予めpH10以上のアルカリ溶液中で60〜100℃で30分以上加熱した後に他の原料と混合して使用することにより、耐熱性が顕著に向上し、低融点金属の製造装置に長期間使用しても亀裂が発生しにくく、また亀裂が発生しても使用に悪影響を及ぼすような大きな亀裂には成長しにくい優れたけい酸カルシウム材が効率良く得られることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、石灰質原料、けい酸質原料、ウォラストナイトおよび炭素繊維を必須原料とし、該原料に水を加えて混合して原料スラリーを形成し、次いで該原料スラリーを加圧脱水成形して生板を得、該生板をオートクレーブ養生して硬化させるけい酸カルシウム材の製造方法において、炭素繊維として、ポリアクリロニトリル系のチョップドストランド状の炭素繊維を使用し、該炭素繊維を予めpHが10以上のアルカリ溶液中で、60℃以上100℃以下で且つ30分以上の条件で加熱処理し、次いで他の原料と混合して原料スラリーを形成することを特徴とする炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法である。
本発明の製造方法を使用すれば、従来から公知の炭素繊維補強けい酸カルシウム材を基にして、主要原料を変更することなく、従来よりも長期間の使用に耐える炭素繊維補強けい酸カルシウム材を容易に製造することができる。
以下、本発明の特徴およびそれによる作用効果について、実施の形態によって更に詳しく説明する。
本発明においては、石灰質原料、けい酸質原料、ウォラストナイトおよび炭素繊維を必須原料として用いる。このうち、石灰質原料およびけい酸質原料は、炭素繊維補強けい酸カルシウム材のマトリックスを構成するけい酸カルシウム水和物結晶を形成するための原料である。これらの原料は、いずれも公知のものを使用することができ、具体的には、石灰質原料としては、従来公知の消石灰、生石灰等を用いることができる。けい酸質原料としては、従来公知の珪石粉末等の結晶質シリカ、並びにけいそう土、シリカヒュームおよびホワイトカーボン等の非晶質シリカを用いることができる。
炭素繊維補強けい酸カルシウム材のマトリックスを形成するけい酸カルシウム水和物結晶は、主としてトバモライトおよび/またはゾノトライトである。トバモライトをマトリックスとする場合は、石灰質原料およびけい酸質原料のCaOとSiO2のモル比(以下、C/Sと表す)が0.6から0.9の範囲となるように、石灰質原料およびけい酸質原料の配合比率を定めるのが好ましい。ゾノトライトをマトリックスとする場合は、C/Sが0.9から1.0の範囲となるように、石灰質原料およびけい酸質原料の配合比率を定めるのが好ましい。なお、マトリックスはトバモライトとゾノトライトの混晶であってもよい。
基本的には、必須原料全体を100質量%とし、そのなかから炭素繊維およびウォラストナイトの配合比率を除いた残りが石灰質原料およびけい酸質原料の配合比率である。好ましい石灰質原料とけい酸質原料の合計配合比率は、必須原料全体の固形分を100質量%として、35〜94.9質量%、さらに39.9〜94.9質量%、特に53〜79質量%が好ましい。
ウォラストナイトは、炭素繊維補強けい酸カルシウム材において、主として耐熱骨材として作用する原料である。ウォラストナイトとしては、アスペクト比、すなわち長さと径との比が3以上の針状のものを使用するのが好ましい。
ウォラストナイトの配合比率は、必須原料全体の固形分を100質量%として、5〜60質量%が好ましく、さらには20〜40質量%がより好ましい。ウォラストナイトが5質量%未満であると、炭素繊維補強けい酸カルシウム材の耐熱性が低下するので好ましくない。60質量%を上回ると、マトリックスの量が少なくなり、炭素繊維補強けい酸カルシウム材の強度が低下するので好ましくない。
炭素繊維は、炭素繊維補強けい酸カルシウム材において、主として補強材として作用する原料である。
炭素繊維としては、分散性および補強効果の観点からポリアクリロニトリル系炭素繊維を用いるのが好ましい。
炭素繊維としては、チョップドストランド状の繊維がよい。その理由は、他の原料と共に混合して原料スラリーを形成する際の分散性が良いからである。また、チョップドストランド状は、モノフィラメント状と比べて、繊維を輸送するために梱包したときの見掛け密度が高いことから、炭素繊維原料をけい酸カルシウム材の製造工場に輸送する際の輸送コストの点からも好適である。さらに、本発明に用いるチョップドストランド状の炭素繊維は、フィラメント数1,000本から50,000本であって、3,000本から12,000本であるのが、特に好ましい。また、その繊維長は1〜20mm、特に2〜20mmが好ましい。
炭素繊維の配合比率は、必須原料全体の固形分を100質量%として、0.1〜10質量%、さらに1〜7質量%、特に2〜4質量%が好ましい。炭素繊維が0.1質量%未満であると、炭素繊維の効果を得ることができず、10質量%を上回ると、原料スラリーを形成する際に炭素繊維を均一に分散させることができないので好ましくない。
これらの必須原料に加え、必要に応じてパルプを原料として使用することができる。ここでいうパルプとは、針葉樹や広葉樹を原料とするセルロースパルプであり、必須原料の固形分質量に対して外割で0.1〜5質量%の範囲で使用する。パルプを併用すると、原料スラリーを脱水成形する際の成形性が向上する。更に、得られた炭素繊維補強けい酸カルシウム材の強度が高くなるので、低融点金属を製造する装置用に加工する際に好適である。
本発明では、前記各原料と水とを混合して原料スラリーを形成するに先立ち、予め炭素繊維をアルカリ溶液中で加熱処理することが重要である。アルカリ溶液としてはpHが10以上のものを用いる。pHが10未満であると、本発明の効果を得ることができない。
炭素繊維の処理に用いるアルカリ溶液としては、pHが10以上であれば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムの無機アルカリの水溶液が挙げられる。アルカリ溶液の濃度は、0.001〜30質量%、さらに0.01〜20質量%が好ましい。また、pHは10以上、さらに10〜14、特に10〜13が好ましい。
また溶解度が低い水酸化カルシウムの場合は過飽和水溶液であっても良い。
加熱処理温度は、60℃以上100℃以下、より好ましくは80℃以上95℃以下である。加熱処理温度が60℃を下回ると、十分な加熱処理効果を得ることができない。100℃を上回ると、圧力容器が必要になるので設備上好ましくないという問題を生じるので好ましくない。
加熱処理時間は30分以上が好ましく、より好ましくは60分以上12時間以下である。加熱処理時間が30分を下回ると、十分な加熱処理効果を得ることができない。
加熱処理後の炭素繊維は、使用したアルカリ溶液の種類により、アルカリ溶液から分離し、または分離せずにそのまま使用することができる。
炭素繊維をアルカリ溶液中で加熱処理した後、他の原料とともに水と混合して原料スラリーを形成する。原料を混合する装置は特に限定されるものではなく、公知の装置、例えばパルパー、オムニミキサー、容器を水平方向に貫く様に配した回転軸に邪魔板を配置した横型ミキサー、邪魔板の代わりにリボン状の羽根を螺旋状に配した横型ミキサー等を用いればよい。原料を混合する際の水の比率は、原料の固形分濃度、すなわち各原料の固形分の質量の総和/(各原料の固形分の質量の総和+水の質量)×100(%)とした場合、20%〜40%範囲とするのが好適である。20%を下回ると原料スラリー中の水分量が多くなりすぎ、後述する脱水成形を行いにくくなるため好ましくない。また、40%を上回ると原料スラリー中の固形分量が多くなりすぎ、均一な原料スラリーを形成しにくくなることから好ましくない。
以上のように形成した原料スラリーを、モールドプレス装置を用いて加圧脱水成形し生板(グリーンシート)を得る。その際の加圧条件としては、1〜6MPaが好適である。最終製品の見掛け密度は0.5〜1.2g/cm3、好ましくは0.6〜1.0g/cm3であり、この見掛け密度となる様適宜成形圧力を調整する。
得られた生板は、オートクレーブ養生を行う。オートクレーブ養生を行うことにより石灰質原料とけい酸質原料とが反応し、マトリックスとなるけい酸カルシウム水和物結晶を形成し硬化する。オートクレーブ養生の条件は、マトリックスがトバモライトを主体とする場合は、160℃〜190℃の飽和水蒸気圧下で3時間〜15時間、マトリックスがゾノトライトを主体とする場合は、190℃〜220℃の飽和水蒸気圧下で3時間〜15時間が好ましい。
このようにして得られた炭素繊維補強けい酸カルシウム材は、乾燥した後所定の形状に加工され、例えば低融点金属を製造する装置等の耐熱性が要求される部材として使用される。
実施例1
容積が6m3の保温性を有する、容器を水平方向に貫く様に配した回転軸にリボン状の羽根を配した横型ミキサーに、25℃の消石灰(JIS R 9001 特号)に水を添加し混合した消石灰スラリー(濃度17質量%;消石灰として750kg)4410kgを投入後、元圧0.98MPaの水蒸気を投入して消石灰スラリーを95℃まで加温した。このとき消石灰スラリーのpHは約11であった。次にこの消石灰スラリーに、繊維長が6mmのポリアクリロニトリル系のチョップドストランドの炭素繊維(東邦テナックス社製商品名ベスファイトHTA−C6E)を60kg投入し、炭素繊維が消石灰スラリー中に埋没する程度まで10rpmの回転速度で5秒間攪拌後1時間静置して炭素繊維を加熱処理した。1時間後の消石灰スラリーの温度は92℃だった。
次にこの混合器に非晶質シリカ(東ソー・シリカ株式会製 商品名ニップシール VN3:SiO2の含有量95質量%)を300kg、結晶質シリカである珪石粉末(SiO2の含有量98質量%、Al23の含有量1.8質量%、粒度は目開き75μmのフルイ通過率98質量%)270kg、繊維状ウォラストナイト(インド産,商品名:ケモリット A−60)60kgおよび針葉樹パルプをパルパーで叩解したパルプスラリー(固形分濃度2%)1000kgを投入し、10rpmの回転速度で攪拌して原料スラリーを形成し、この原料スラリーを前記回転速度で撹拌しながら元圧0.98MPaの水蒸気を投入して原料スラリーを95℃まで加温した。この温度を2時間保持し、この間同じ回転速度で10分毎に10秒間の間歇攪拌を行い、非晶質シリカと消石灰を反応させて原料スラリー中に嵩高なC−S−Hゲルを生成した。
次に、このスラリーを900mm×1200mmのモールドに投入し、4MPaの圧力で脱水成形を行い、900mm×1200mm×25mm圧の成形体を得た。この成形体を198℃の飽和水蒸気圧下で15時間オートクレーブ養生を行った後、120℃で12間乾燥して見掛け密度0.8g/cm3の炭素繊維補強けい酸カルシウム材の成形体を得た。
次に得られた成形体について、加熱試験を行い、低融点金属鋳造用に使用した場合の耐久性を評価した。評価方法は以下の通りである。
(1)得られた成形材を25cm×25cmに切断し、その中央部に120mmφの穴を開け試験体とする。
(2)試験体の上下面に同一材質のダミーをセットする。
(3)穴の内部に電気ヒーターをセットし穴の上下を断熱材で塞ぐ。
(4)ヒーターに通電し穴の内部を700℃に加熱する。
室温から700℃まで昇温するための時間は20分を要した。
(5)700℃を3時間保持する。
(6)室温まで自然放冷する。
(7)放冷後試験体を目視観察すると、加熱面から1cm程度の部分の炭素繊維が消失し、穴の内部から外周に向け放射状に多数の亀裂が生じていた。その最大長さは15mmであった。
(8)さらに(2)〜(7)10回繰り返し他ところ、亀裂の最大長さは15mmまで伸長したがその後更10回繰り返しても亀裂は進展しなかった。従って、得られた成形体は、低融点金属鋳造用として十分な耐久性を有している。
実施例2
容積が3m3の保温性容器中に、温度95℃、濃度0.5%の水酸化ナトリウム溶液2m3を用意し、これに炭素繊維60kgを投入し1時間静置し加熱処理した。1時間後の溶液温度は90℃、pHは13であった。次に目開き2mmの金網上で自然落下により10分間炭素繊維と水酸化ナトリウム溶液を分離した。実施例1で用いた混合器に、実施例1と同一の消石灰スラリー、前記アルカリ溶液で加熱処理した炭素繊維、並びに実施例1と同一の非晶質シリカ、珪石粉末、繊維状ウォラストナイトおよびパルパーで叩解したパルプスラリーを投入し、以下、実施例1と同様の工程に従い、見掛け密度0.8g/cm3の炭素繊維補強けい酸カルシウム材の成形体を得た。
次に得られた成形体について、実施例1と同様に加熱試験を行い、低融点金属鋳造用に使用した場合の耐久性を評価した。その結果最大亀裂長は14mmであり、実施例1と同様に加熱冷却を繰り返しても亀裂の進展はなかった。従って得られた成形体は、低融点金属鋳造用として十分な耐久性を有している。
比較例
実施例1において、95℃でpH約11の消石灰スラリー中で炭素繊維を1時間加熱処理したことを除き、実施例1と同一の原料および製造方法を用い、見掛け密度0.8g/cm3の炭素繊維補強けい酸カルシウム材の成形体を得た。次に得られた成形体について、実施例1と同様に加熱試験を行い、低融点金属鋳造用に使用した場合の耐久性を評価した。
その結果、実施例1の(1)から(7)の加熱冷却繰り1サイクル目までは実施例1と同様亀裂最大長さは15mmだったが、更に5回の加熱冷却繰り返しでは20mm、更に5回の加熱冷却繰り返しでは25mmまで亀裂が進展した。従って、得られた成形体の低融点金属鋳造用としての耐久性は、実施例1および2よりも明らかに劣っていた。

Claims (2)

  1. 石灰質原料、けい酸質原料、ウォラストナイトおよび炭素繊維を必須原料とし、該原料に水を加えて混合して原料スラリーを形成し、次いで該原料スラリーを脱水成形して生板を得、該生板をオートクレーブ養生して硬化させるけい酸カルシウム材の製造方法において、炭素繊維として、ポリアクリロニトリル系のチョップドストランド状の炭素繊維を使用し、該炭素繊維を予めpHが10以上のアルカリ溶液中で、60℃以上100℃以下で且つ30分以上の条件で加熱処理し、次いで他の原料と混合して原料スラリーを形成することを特徴とする炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法。
  2. 前記必須原料に加え、更に原料としてパルプを用いることを特徴とする請求項1記載の炭素繊維補強けい酸カルシウム材の製造方法。
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