JP2009232311A - 信号処理回路およびインターフェイス回路 - Google Patents

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Abstract

【課題】SSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルの信号処理による熱負荷増大に対して適切に対応できる信号処理回路およびインターフェイス回路を提供する。
【解決手段】本発明の信号処理回路20Aにおいては、複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器100Aから出力される信号の処理に用いられ、単一磁束素子により構成された論理回路(21、22)が組み込まれている。
【選択図】図4

Description

本発明は、超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器用の信号処理回路およびインターフェイス回路に関する。
単一光子(シングルフォトン)を検出可能な単一光子検出器については、盗聴を不可能にする量子暗号通信、生体発光(バイオフォトン)検出、LSIの欠陥検査などの様々な応用が期待されている。
このような単一光子検出器の例として、In−GaAsAPD(アバランシェ・フォトダイオード)検出器がある。この検出器は、210K(ケルビン)程度の到達温度で動作可能という特徴があり、従来から量子光学実験などで広く用いられている。
しかし、このIn−GaAsAPD検出器では、熱電子励起による暗計数率が高いという欠点や1550nmの通信帯波長での量子効率が低いという欠点があるので、近年、超伝導転移端型単一光子検出器(以下、「TES」(Transition Edge Sensor)と略す)や超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器(以下、「SSPD」(Superconducting single photon detector)と略す)が注目されている。これらの超伝導型単一光子検出器は、1550nmの通信帯波長での高量子効率、高計数率および低暗計数率などの既存の半導体検出器に比べた有利な性能を有しており、このような性能を活かして、様々な分野への適用が試みられている。
そこで、ここでは、上述のTESおよびSSPDを取り上げ、以下、これらの背景技術について述べる。
まず、TESの構成例およびその動作原理について概説する。
図8は、TESの構成例およびその動作原理を説明するための模式図である。
TES150は、光子入射によって生じた温度変化を超伝導体の転移領域を利用して検出する光検出器である。図8(a)に示すように、タングステン(W)やチタン(Ti)などにより構成された超伝導薄膜151に、光子Pが入射して吸収されると、そのエネルギによってTES150の温度が上昇する。すると、この応答は、図8(b)に示すように、超伝導薄膜151の抵抗変化となって現れる。この超伝導薄膜151は、定電圧バイアス源(図示せず)により臨界電流付近の電流で駆動されており、超伝導薄膜151の抵抗変化は、自身を流れる電流変化に変換され得る。この電流変化は、適宜の増幅器により増幅され、その後、TES150は、所定の熱緩和時間(数μs)を経て、再び平衡状態に戻る。
このようなTES150の出力信号は、その動作点が転移領域に存在する限り、入射光パルスのエネルギに比例する。光パルスに含まれる光子数に応じてそのエネルギは飛び飛びの値をとるので、TES150を用いると、図8(b)に示すように、光パルス中の光子数を知ることができる。つまり、TES150は、光子数を識別できる高エネルギ分解能を有する。
一方、TES150の熱緩和時間はSSPD200(後述)の熱緩和時間に比べると長いので、TES150は、高速性が要求される分野には不向きである。また、TES150に用いる超伝導薄膜151の臨界温度は、通常、1K以下なので、TES150の動作には、断熱消磁冷凍機などを用いてTES150を冷却する必要がある。このため、TES150は、小型のGM(キ゛ーホート゛・マクマホン)冷凍機により簡便に冷却できず、この点の使い勝手に劣る。
次に、SSPDの構成例およびその動作原理について概説する。
図9は、SSPDの構成例およびその動作原理を説明するための模式図である。
SSPD200は、窒化ニオブ(NbN)などからなるメアンダ状のナノワイヤ201を有している(例えば、非特許文献1参照)。このナノワイヤ201には、臨界電流密度を僅かに下回るバイアス電流が流れている。
このようなナノワイヤ201に、図9に示すように、光子Pが入射すると、光子Pが入射した局部には、ホットスポットという常伝導領域A(高抵抗領域)が形成される。この場合、図9の拡大図に示すように、電流Cは、高抵抗の領域Aを迂回するように領域Aの両側のナノワイヤ201の部分に集中的に流れる。すると、領域Aの周囲を流れる電流Cは臨界電流を超え、領域Aの両側の部分も常伝導状態になり、常伝導状態の領域Aは、ナノワイヤ201の幅方向全域に亘るように一時的に広がる。このようにして、ナノワイヤ201の幅方向全域に亘る抵抗変化により、ナノワイヤ201に入射した光子Pが電気信号として検出される。その後、SSPD200の領域Aは、所定の熱緩和時間(数十ps)を経て、再び超伝導状態に戻る。
このようなSSPD200の熱緩和時間は、TES150(上述)の熱緩和時間に比べると短いので、SSPD200の応答は原理的に高速であり、100MHzを超える最大計数率にまで光子を計測できる。また、SSPD200の冷却温度は4K程度なので、SSPD200は、小型のGM冷凍機を用いて簡便に冷却でき、実用上都合がよい。
一方、SSPD200のエネルギ分解能は低いので、SSPD200では、光子数の識別を行えないという問題がある。
IEEE TRANSACTIONS ON APPLIED SUPERCONDUCTIVITY, VOL.17, NO.2, P279-284, JUNE 2007
上述のとおり、SSPDは、TESに対して性能上トレードオフの関係にあるので、SSPDについては、光子数の識別技術の実用化が切望されている。
そこで、大面積のSSPDを単体で構成することに代えて、小面積のSSPDをマトリクス状に配することにより(つまり、SSPDをアレー化することにより)、SSPDピクセルによる光子数の識別機能の実現が可能と考えられている。
なお、本明細書では、便宜上、大面積のSSPD単体をアレー化して得られる小面積のSSPDのことをSSPDピクセルといい、このようなSSPDピクセルの集合体のことをSSPDアレーという。
図10は、SSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルによる光子数の識別の原理を模式的に示した図である。
図10では、SSPDアレー110の構成の図示を簡略にできるよう、3行(i=1〜3)および3列(j=1〜3)のマトリクス状に配された9個のSSPDピクセル100(i=1〜3;j=1〜3)が例示されている。但し、SSPDアレーでのSSPDピクセルの個数は、検出器の仕様に合わせて任意に選択できる。
各SSPDピクセル100(i=1〜3;j=1〜3)では、図10の拡大図に示すように、窒化ニオブ薄膜からなるナノワイヤ201Aが、メアンダ状に形成されている。そして、各SSPDピクセル100(i=1〜3;j=1〜3)の出力端(図示せず)はそれぞれ、各SSPDピクセル100(i=1〜3;j=1〜3)に対応する伝送経路101(i=1〜3;j=1〜3)の入力端に接続されている。
以上の構成により、例えば、図10に示すように、2行×1列目に配されたSSPDピクセル100(i=2;j=1)、および、1行×2列目に配されたSSPDピクセル100(i=1;j=2)に光子Pが同時に入射した場合、SSPDピクセル100(i=2;j=1)に対応する伝送経路101(i=2;j=1)、および、SSPDピクセル100(i=1;j=2)に対応する伝送経路101(i=1;j=2)に信号パルスが出力される。これにより、各伝送経路101(i=1〜3;j=1〜3)に接続された信号処理回路20を適宜の構成にすると(詳細は後述)、2個の光子PがSSPDアレー110に入射したことが検出できると考えられる。
また、大面積のSSPDを単体で構成することに代えて、小面積のSSPDピクセルをマトリクス状に配することにより(つまり、SSPDをアレー化することにより)、SSPDピクセルによる応答速度の更なる高速化の実現が可能と考えられている。以下、この理由を説明する。
SSPDの高速化は、メアンダ状に延びているナノワイヤのインダクタンスに律則されている。つまり、SSPD形成領域にメアンダ状にナノワイヤを長く形成すると、ナノワイヤのインダクタンスが増大する。その結果、ナノワイヤのインダクタンスに依存する「インダクタンス(L)/抵抗(R)(時定数)」の増大により、ナノワイヤを伝送する信号の速度は遅くなる。この場合、SSPD形成領域を小さくすれば、ナノワイヤの長さをその分、短くでき、ナノワイヤのインダクタンスを低減できそうである。しかし、光ファイバから出射される光子との間の適切な光カップリング性を確保する観点から、SSPD形成領域では一定レベル以上の面積が必要となるので、単体のSSPDを用いたSSPD形成領域の小面積化によるインダクタンスの低減には自ずと限界がある。
これに対し、SSPDをアレー化することにより、個々のSSPDピクセルの検出面積を、ナノワイヤのインダクタンス低減の観点から充分に小さくできるとともに、SSPDアレーにおけるSSPD形成領域の面積を、光ファイバから出射される光子との間の適切な光カップリング性を確保する観点から充分に大きくできる。つまり、SSPDをアレー化することにより、上述の限界を打破でき、ナノワイヤのインダクタンスを充分に低減でき、ひいては、ナノワイヤを伝送する信号の速度を更に高速にできる。
ところで、SSPDをアレー化した場合には、SSPDピクセルの信号処理に関連して生じる熱負荷増大(詳細は後述)が将来、SSPDアレーの実用化に向けた重大な障害になり得る。しかしながら、このようなSSPDピクセルの信号処理による熱負荷の問題に取り組んだ研究成果(論文や特許公報)は、本件発明者等の知る限り、未だ見当たらない。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、SSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルの信号処理による熱負荷増大に対して適切に対応できる信号処理回路およびインターフェイス回路を提供することを目的とする。
以下、SSPDピクセルの信号処理による熱負荷問題について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、SSPDピクセルの信号処理による熱負荷の問題を説明するための模式図である。図1(a)では、半導体素子(例えばCMOSトランジスタ)により構成される信号処理回路120Aを室温に保った場合の熱負荷増大の現象が図示されている。図1(b)では、半導体素子により構成される信号処理回路120Bを極低温(4K)に保った場合の熱負荷増大の現象が図示されている。
まず、信号処理回路120Aを室温に保った場合の熱負荷増大について説明する。
本方式では、図1(a)に示すように、小型のGM冷凍機300を用いてSSPDアレー110のみが約4Kに冷却されている。そして、伝送経路101(i=1〜N;j=1〜N)を形成する広帯域の同軸ケーブルCBがSSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)のそれぞれの出力端に接続されており、これにより、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)の出力信号が室温状態の外部に取り出されている。
ここで、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)から出力される信号のレベルは極めて小さい(例えば、電圧レベルで約1mV程度)。よって、このような微小な信号を用いて既存の半導体素子により構成される外部の信号処理回路120Aを動作させるには、図1(a)に示すように、広帯域の増幅器AMPをSSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)の数分(N×N個)、広帯域の同軸ケーブルCB上に配する必要がある。この場合、同軸ケーブルCBの帯域が広くなるほど、同軸ケーブルCBの熱伝導率が高くなるので、同軸ケーブルCBによってSSPDアレー110に伝わる熱(熱流入)が、SSPDアレー110を極低温(4K)に冷却させるGM冷凍機300に対して深刻な負担となる。つまり、信号処理回路120Aを室温に保った場合、SSPDをアレー化すると、多数本の広帯域の同軸ケーブルCBによってSSPDアレーに伝わる熱が、GM冷凍機300の熱負荷増大を引き起こすと考えられる。
次に、信号処理回路120Bを極低温に保った場合の熱負荷増大について説明する。
本方式では、図1(b)に示すように、小型のGM冷凍機300を用いてSSPDアレー110および信号処理回路120Bの両方が約4Kに冷却されている。このように信号処理回路120Bを極低温にすると、伝送経路101(i=1〜N;j=1〜N)を形成するケーブルを伝わる熱の問題は改善される。しかし、本方式は、多数(N×N個)の広帯域の増幅器AMPの消費電力は無視できないレベルなので、増幅器AMPによるGM冷凍機300への熱負荷の問題を依然として内在している。更に、半導体素子により構成される信号処理回路120BからのノイズがSSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)での光検出に何等かの悪影響を与える可能性もある。
以上のとおり、信号処理回路120Aを室温に保っても、或いは、信号処理回路120Bを極低温に保っても、SSPDをアレー化すると、GM冷凍機300への熱負荷増大が顕在化すると考えられる。よって、従来の半導体素子により構成された信号処理回路とSSPDアレーとの組合せでは、小型のGM冷凍機を用いて簡便に冷却できるというSSPDの利点を充分に活かせない。
本件発明者等は、単一磁束量子(以下、「SFQ」(Single Flux Quantum)と略す)により構成された論理回路(以下、「SFQ論理回路」と略す)を用いると、上述のSSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルの信号処理による熱問題を改善できることに気がついた。
本発明は、このような知見を契機にして案出できたものであり、複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器から出力される信号の処理に用いられ、単一磁束素子により構成された論理回路が組み込まれている、信号処理回路を提供する。
このような信号処理回路は、単一磁束素子を情報担体として用いているので、微小信号により高速に動作できるとともに、消費電力が小さいという従来の信号処理回路と比較した有利な特徴を備えている。これにより、複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器の信号処理による熱負荷増大が適切に抑制される。
また、本発明の信号処理回路は、
前記複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のうちの一つに入射した光子の有無を検出する1光子の検出回路と、
前記複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のうちの二つに同時入射した光子の有無を検出する2光子の検出回路と、を備え、
前記検出回路を前記論理回路の組合せで構成してもよい。
これにより、信号処理回路は、複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器からの信号を用いて1光子検出信号および2光子検出信号を出力できるので、この信号処理回路を超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器の量子通信用の信号処理に用いることができる。
また、この信号処理回路では、入力側の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器の個数に相当する伝送経路に対して、出力側のケーブルの数が2本(1光子検出信号用のケーブルおよび2光子検出信号用のケーブル)に削減されるので、ケーブルを伝わる熱による冷凍機の熱負荷増大を抑制できる。
また、本発明の信号処理回路は、前記検出回路での光子検出のタイミングに用いるクロック信号を前記検出回路に出力する信号出力回路を備えてもよい。
このクロック信号を、光子の入射レートと同期させることにより、検出回路は当該クロック信号を用いて適切に駆動され、光子の入射レートと同じ速度で検出信号の読み出しが可能になる。
また、本発明の信号処理回路は、
前記複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のそれぞれと対応して配され、前記超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のそれぞれに入射した光子の個数を計数可能な複数の光子数計数回路を備え、
前記光子数計数回路を前記論理回路の組合せにより構成してもよい。
これにより、信号処理回路の複数の光子数計数回路は、複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器からの信号を用いて光子入射位置の同定と入射光子数の計数を行えるので、この信号処理回路を超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のイメージング用の信号処理に用いることができる。
また、前記光子数計数回路は、
前記超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器に入射した前記光子の個数を計数するバイナリカウンタと、
前記バイナリカウンタにより計数された前記光子の個数データが書き込まれるシフトレジスタと、を備えてもよい。
そして、本発明の信号処理回路は、前記バイナリカウンタから前記シフトレジスタへの前記光子の個数データの受け渡しタイミングに用いるタイミング信号を前記バイナリカウンタに出力する信号出力回路を備えてもよい。
更に、本発明の信号処理回路では、前記シフトレジスタのそれぞれを、前記シフトレジスタの出力用の信号線を介してシリアル接続してもよく、前記シフトレジスタにおいて前記個数データを1ビット毎シフトさせることにより、前記信号線からの前記個数データの取り出しに用いるクロック信号を前記シフトレジスタに出力する信号出力回路を備えてもよい。
以上の構成より、タイミング信号のフレーム周期が、クロック信号の周期、超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器の個数、およびバイナリカウンタのビット数との関係で適切に設定されると、上述の1本のシリアル接続の信号線を用いて複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のうちの何処に何個の光子が入射したかを知ることができる。
これにより、本発明の信号処理回路では、本来、超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器の個数分必要な出力用の信号線を形成するケーブルを1本のシリアル接続の信号線を形成するケーブルに削減できるので、ケーブルを伝わる熱による冷凍機の熱負荷増大を抑制できる。
また、タイミング信号出力回路から出力されたタイミング信号を用いてバイナリカウンタからシフトレジスタへの光子の個数データの受け渡しが行われる際に、バイナリカウンタによる光子の個数データのカウントと、シフトレジスタによる光子の個数データの取り出しと、を独立して(同時に)に実行できる。
また、本発明は、複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器と上述の信号処理回路との間の接続に用いられ、前記超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器からの電流パルスを電流増幅できるよう、超伝導量子干渉素子により構成された増幅器が組み込まれている、インターフェイス回路も提供する。
上述の信号処理回路の内部では、例えば、数ps(ピコ秒)程度の時間幅、振幅0.2mV程度の微小なSFQパルスを用いて論理動作を行える。よって、超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器の微小な出力(例えば、振幅20μA、時間幅数nsの電流パルス)を超伝導量子干渉素子により構成された増幅器を用いて電流増幅(例えば、10〜20倍程度の電流増幅)を行えば、このSFQパルスに変換できる。
よって、本発明のインターフェイス回路には、超伝導量子干渉素子の消費電力が小さいので、超伝導量子干渉素子により構成された増幅器を用いて冷凍機への熱負荷増大を適切に抑制できるという既存の半導体素子により構成された増幅器と比較した有利な特徴がある。
更に、本発明のインターフェイス回路には、超伝導量子干渉素子により構成された従来の増幅器と比較しても、以下のような有利な特徴がある。
まず、この従来の増幅器では、インダクタンスと磁気結合する多段構成の直列接続のSQUIDが、増幅器からの高電圧出力を得るのに必要とされているのに対し、本発明のインターフェイス回路に内蔵された増幅器では、例えば、10〜20倍程度の電流利得で足りるので、インダクタンスと磁気結合する多段構成のSQUIDが不要となる。
これにより、増幅器の回路構成を簡素化でき、その結果、増幅器の回路面積を削減できる。また、増幅器の帯域を広帯域化することもできる。
また、上述の従来の増幅器では、超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器からの微弱な入力電流パルスにより充分な磁束をSQUIDに誘起できる高い相互インダクタンスが、高利得を得るのに必要とされている。このため、従来の増幅器では、相互インダクタンスを高くできるよう、入力インダクタンスを高くする必要があり、その結果、信号の遅延時間「入力インダクタンス/抵抗(時定数)」の増大となるのに対し、本発明のインターフェイス回路に内蔵された増幅器では、例えば、10〜20倍程度の電流利得で足りるので、入力インダクタンスを高くする必要がなく、増幅器のギガヘルツ(GHz)帯での高速動作が可能になる。
本発明によれば、SSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルの信号処理による熱負荷増大に対して適切に対応できる信号処理回路およびインターフェイス回路が得られる。
以下、本発明を実施するための実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、SSPDアレーの信号処理に用いる回路の全体構成を説明する。
図2は、SSPDアレーの信号処理に用いる回路の全体構成を模式的に示した図である。なお、図2において、SSPDアレー110、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)、伝送経路101(i=1〜N;j=1〜N)およびGM冷凍機300の構成については、図1で述べた内容と同じなので、ここでは、これらの構成の詳細な説明は省略する。
本実施形態では、伝送経路101(i=1〜N;j=1〜N)に接続された信号処理回路20は、従来の半導体素子(例えばCMOSトランジスタ)を用いる代わりに、SFQを情報担体として用いている。なお、SFQの原理は、公知なので、ここでは、SFQの動作原理の説明を省略する。
信号処理回路20は、上述のとおり、SFQを情報担体として用いているので、微小信号により高速に動作できるとともに、消費電力が小さいという半導体素子により構成された従来の信号処理回路と比較した有利な特徴を備えている。
例えば、信号処理回路20の内部では、数ps(ピコ秒)程度の時間幅、振幅0.2mV程度の微小なSFQパルスを用いて論理動作を行える。よって、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)の微小な出力(例えば、振幅20μA、時間幅数nsの電流パルス)であっても、超伝導量子干渉素子(以下、「SQUID」(Superconducting Quantum Interference Device)と略す)により構成された増幅器(以下、「SQUIDアンプ30A」(後述)と略す)を用いて、上述のSFQパルスに変換できる。この場合、10〜20程度の電流増幅(例えば、20μA程度から200μA程度の電流増幅)を行えばよい。
つまり、図2に示すように、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)と信号処理回路20との間の接続に用いるインターフェイス回路30には、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)からの微弱信号を電流増幅できるよう、SQUIDアンプ30Aが組み込まれている。このSQUIDアンプ30Aは、ジョセフソン接合により構成され、その消費電力は小さいので、SQUIDアンプ30Aを増幅器として用いて、GM冷凍機300への熱負荷増大を適切に抑制できるという既存の半導体素子により構成された増幅器と比較した有利な特徴がある。なお、インターフェイス回路30(SQUIDアンプ30A)の回路構成については後述する。
また、SFQを情報担体とする1万接合規模の信号処理回路20の消費電力が、わずか2〜3mW程度である。このため、信号処理回路20を小型のGM冷凍機(0.1W)300に実装でき、その結果、GM冷凍機300の熱負荷増大への熱負荷増大を適切に抑制できる。
更に、信号処理回路20を適宜の構成にすると、入力側のN×N本の伝送経路101(i=1〜N;j=1〜N)に対して、出力側の同軸ケーブルCBの数を削減できるので(図2では、1本の同軸ケーブルCBに削減している例が図示されている)、同軸ケーブルCBを伝わる熱によるGM冷凍機300の熱負荷増大も抑制できる。なお、このような信号処理回路20の構成例については後述する。
また、SFQを情報担体とする1万接合規模の信号処理回路20は、40GHz程度の高速に動作可能と考えられている。このため、信号処理回路20をSSPDアレー110用の信号処理回路として用いると、SSPDアレー110からの高速信号を高速に処理できるという利点もある。
更に、上述のとおり、信号処理回路20の内部では、数ps(ピコ秒)程度の時間幅、振幅0.2mV程度の微小なSFQパルスを用いて論理動作を行えるので、SSPDピクセル(i=1〜N;j=1〜N)の光検出にSFQパルスが悪影響を与える可能性も低く好都合である。
<インターフェイス回路30(SQUIDアンプ30A)の回路構成>
次に、インターフェイス回路30(SQUIDアンプ30A)の構成について図面を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態によるインターフェイス回路に用いるSQUIDアンプの回路図である。なお、図2に示したインターフェイス回路30では、図3のSQUIDアンプ30Aが、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)の個数分、SSPDピクセル100(i=1〜N;j=1〜N)のそれぞれに対応するように内蔵されている。
このSQUIDアンプ30Aでは、SSPDピクセル100からの電流パルスが、伝送経路101を流れる際に入力インダクタンスLINにより磁束に変換される。
ここで、ジョセフソン接合J1、J2の対により構成されたSQUIDには、定電流源32により臨界電流を僅かに下回るレベルにまでバイアスされているので、上述の入力インダクタンスLINによる磁束が生じていない場合、SQUIDの両端に発生する電圧は0Vとなる。一方、上述の入力インダクタンスLINによる磁束が生じている場合、この磁束とジョセフソン接合J1、J2の対との間の相互インダクタンスMを介した相互作用によってSQUIDに流れる電流が臨界電流を超え、SQUIDは常伝導状態となり、SQUIDの両端に電圧が発生する。
なお、図3では図示を省略しているが、SQUIDアンプ30Aは、SSPDアレー110(図2参照)とともに、小型のGM冷凍機300(図2参照)に実装されている。これにより、SQUIDアンプ30Aは、このGM冷凍機300により簡便に冷却できる。
ところで、本実施形態のSQUIDアンプ30Aでは、SQUIDアンプ30Aの後段が、図3に示す如く、SFQを情報担体とする信号処理回路20に接続されているので、SQUIDアンプ30Aの利得は、上述のとおり、10〜20倍程度の電流利得でよい。これにより、SQUIDアンプ30Aには、従来のSQUIDアンプと比較した有利な特徴がある。
具体的には、従来のSQUIDアンプでは、インダクタンスLSFQと磁気結合する100段規模の直列接続のSQUID(図示せず)が、SQUIDアンプからの高電圧出力を得るのに必要とされている。これに対して、本実施形態のSQUIDアンプ30Aでは、10〜20倍程度の電流利得で足りるので、インダクタンスLSFQと磁気結合する多段構成のSQUIDが不要となる。これにより、SQUIDアンプ30Aの回路構成を簡素化でき、その結果、SQUIDアンプ30Aの回路面積を削減できる。また、SQUIDアンプ30Aの帯域を広帯域化することもできる。
また、従来のSQUIDアンプでは、SSPDからの微弱な入力電流パルスにより充分な磁束をSQUIDに誘起できる高い相互インダクタンスMが、高利得を得るのに必要とされている。このため、相互インダクタンスMを高くできるよう、入力インダクタンスLINを高くする必要があり、その結果、信号の遅延時間「入力インダクタンスLIN/抵抗RL(時定数)」の増大となる。これに対して、本実施形態のSQUIDアンプ30Aでは、10〜20倍程度の電流利得で足りるので、入力インダクタンスLINを高くする必要がなく、SQUIDアンプ30Aのギガヘルツ(GHz)帯での高速動作が可能になる。
<量子通信用の信号処理回路の例>
図4は、図2に示した信号処理回路を量子通信用の信号処理に用いた場合の回路図である。
図4では、回路構成の図示を簡略にできるよう、2行(i=1、2)および2列(j=1、2)のマトリクス状に配された4個のSSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)が例示されている。但し、SSPDアレーでのSSPDピクセルの個数は、検出器の仕様に合わせて任意に選択できる。
図4に示すように、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)と信号処理回路20Aとの間の接続に用いられるインターフェイス回路30が配されている。そして、このインターフェイス回路30は、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)のそれぞれに対応する伝送経路101A(i=1、2;j=1、2)に接続されており、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)からの電流パルスを電流増幅できるよう、上述のSQUIDアンプ30A(図3参照)が組み込まれている。
量子通信用の信号処理回路20Aの使用形態においては、光子の入射タイミングは予め特定されている。そして、この信号処理回路20Aでは、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)のうちの少なくとも一つに入射した光子の有無を検出できる1光子検出、および、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)のうちの少なくとも二つに同時入射した光子の有無を検出できる2光子検出を実現すればよい。つまり、量子暗号通信技術では、1光子入射および2光子入射の識別化を可能にすればよく、光子入射位置の同定は重要視されていない。
そこで、信号処理回路20Aの光検出回路400は、図4に示すように、SFQにより構成された複数(ここでは6個)のANDゲート21(論理回路)の組合せからなる2光子の検出回路と、SFQにより構成された複数(ここでは3個)のORゲート22(論理回路)の組合せからなる1光子の検出回路と、備える。
なお、SSPDピクセル100Aの個数を任意の個数(例えば、n個)に変更する場合であっても、ANDゲート21の個数は、n×(n−1)/2個、ORゲート22の個数は、(n−1)個となり、光検出回路400の規模を容易に把握できるので都合がよい。
これらの検出回路は、図4に示すように、インターフェイス回路30の出力側の伝送経路101A(i=1、2;j=1、2)に接続され、1光子の検出回路が1光子検出信号を出力でき、2光子の検出回路が2光子検出信号を出力できるように構成されている。
また、図4では図示を省略しているが、光検出回路400が、SSPDアレー110Aとともに、小型のGM冷凍機300(図2参照)に実装されている。これにより、各ANDゲート21および各ORゲート22は、このGM冷凍機300により簡便に冷却できる。
更に、信号処理回路20Aは、図4に示すように、1光子および2光子の検出回路での光子検出のタイミングに用いるクロック信号をこれらの検出回路に出力できるクロック信号出力回路25を備える。このクロック信号を、光子の入射レートと同期させることにより、各ANDゲート21および各ORゲート22は当該クロック信号を用いて適切に駆動され、光子の入射レートと同じ速度で検出信号の読み出しが可能になる。
以上のとおり、本実施形態の信号処理回路20Aでは、SSPDアレー110Aからの信号を用いて1光子検出信号および2光子検出信号を出力できるので、信号処理回路20AをSSPDアレー110Aの量子通信用の信号処理に用いることができる。
また、この信号処理回路20Aでは、入力側の4本の伝送経路101A(i=1、2;j=1、2)に対して、出力側のケーブル(図示せず)の数が2本(1光子検出信号用のケーブルおよび2光子検出信号用のケーブル)に削減されるので、ケーブルを伝わる熱によるGM冷凍機300の熱負荷増大を抑制できる。
<イメージング用の信号処理回路の例>
図5は、図2に示した信号処理回路をイメージング用の信号処理に用いた場合の回路図である。
図5では、回路構成の図示を簡略にできるよう、2行(i=1、2)および2列(j=1、2)のマトリクス状に配された4個のSSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)が例示されている。但し、SSPDアレーでのSSPDピクセルの個数は、検出器の仕様に合わせて任意に選択できる。
図5に示すように、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)と信号処理回路20Bとの間の接続に用いられるインターフェイス回路30が配されている。そして、このインターフェイス回路30は、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)のそれぞれに対応する伝送経路101A(i=1、2;j=1、2)に接続されており、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)からの電流パルスを電流増幅できるよう、上述のSQUIDアンプ30A(図3参照)が組み込まれている。
イメージング用の信号処理回路20Bの使用形態においては、光子はランダムに入射する。そして、この信号処理回路20Bでは、SSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)のうちの何処のピクセルに何個の光子が入射したかを識別できる機能を実現する必要がある。つまり、高感度イメージング技術では、光子入射位置の同定と入射光子数の計数の両方が重要視されている。
そこで、信号処理回路20Bの4個の光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)は、図5に示すように、SSPD100A(i=1、2;j=1、2)のそれぞれと対応して配されている。但し、図5では、SSPD100A(i=2;j=1)に対応する光子数計数回路401(i=2;j=1)の図示が省略されている。
これにより、光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)のそれぞれは、各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)に対応するSSPD100A(i=1、2;j=1、2)に入射した光子Pの個数(以下、「光子数」と略す)を計数できるので、信号処理回路20Bでは、光子入射位置の同定と光子数の計数の両方を行える。
以下、このような信号処理回路20Bの機能を図5、図6および図7を参照しながら更に詳しく説明する。
図6は、図5に示した信号処理回路の入出力信号のタイミングチャートである。図7は、図5に示した信号処理回路の動作の説明に用いる模式図である。
信号処理回路20Bの各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)は、図5に示すように、SFQにより構成された複数(ここでは6個)のD型フリップフロップ23(論理回路)の組合せからなるシフトレジスタと、SFQにより構成された複数(ここでは6個)のT型フリップフロップゲート24(論理回路)の組合せからなるバイナリカウンタと、備える。
各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)に内蔵されたバイナリカウンタの入力がそれぞれ、図5に示すように、各SSPD100A(i=1、2;j=1、2)に対応する伝送経路101A(i=1、2;j=1、2)に接続されているので、これらのバイナリカウンタは、各SSPD100A(i=1、2;j=1、2)に対応するSSPD100A(i=1、2;j=1、2)に入射した光子数をカウントできる。このバイナリカウンタの最大カウント数は、T型フリップフロップ24の個数(バイナリカウンタのビット数)に依存している。例えば、T型フリップフロップ24の個数が任意の個数(例えば、n個)である場合、バイナリカウンタは、最大(2n−1)個の光子をカウントできる。
また、各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)に内蔵されたシフトレジスタの入出力がそれぞれ、図5に示すように、シフトレジスタの出力用の信号線402を介してシリアル接続されている。
また、本実施形態の信号処理回路20Bは、各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)に内蔵されたバイナリカウンタのそれぞれに同時にタイミング信号S1、S2(詳細は後述)を出力できるタイミング信号出力回路28を備える。
更に、信号処理回路20Bは、各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)に内蔵されたシフトレジスタのそれぞれに同時にクロック信号K(詳細は後述)を出力できるクロック信号出力回路29も備える。
上述のタイミング信号S1、S2は、図7に示すように、各光子数計数回路401(i=1、2;j=1、2)において、バイナリカウンタからシフトレジスタへの光子Pの個数データ(バイナリデータ;以下、「光子個数データ」と略す)の受け渡しタイミングに用いられている。また、上述のクロック信号Kは、図6に示すように、バイナリカウンタからシフトレジスタに書き込まれた光子個数データを1ビット毎シフトさせることにより、光子個数データの信号(出力信号)の信号線402からの取り出しに用いられている。
以上の構成により、本実施形態の信号処理回路20Bは、様々な効果を発揮する。
まず、タイミング信号S1、S2のフレーム周期「F」(読み出し周期「F」)は、クロック信号の周期「T」、SSPDピクセルの個数「P」、およびバイナリカウンタのビット数「n」との関係において、F=T×P×log2(n+1)という演算式を用いて適切に設定できる。すると、1本のシリアル接続の信号線402を用いてSSPDピクセル100A(i=1、2;j=1、2)のうちの何処に何個の光子が入射したかを知ることができる。
具体的には、図7に示すように、タイミング信号S1がバイナリカウンタに入ると、バイナリカウンタに記憶された光子個数データは、シフトレジスタに移される。そして、図6に示すように、クロック信号Kに同期して、シフトレジスタに書き込まれた光子個数データは、1ビット毎、信号線402から取り出される。本実施形態では、バイナリカウンタは、図5に示すように、6個のT型フリップフロップ24により6ビットとして構成されている。よって、タイミング信号S1(図6参照)が入った直後の、6パルス分のクロック信号Kに同期して出力される出力信号が、SSPDピクセル100A(i=2;j=2)での光子個数データを表している。例えば、図6では、「20ビット」に対応する信号パルスおよび「23ビット」に対応する信号パルスが出力されているので、SSPDピクセル100A(i=2;j=2)中には、9個の光子入射があったと理解できる。
また、次の6パルス分のクロック信号Kに同期して出力される出力信号が、SSPDピクセル100A(i=2;j=1)での光子個数データを表している。例えば、図6では、「21ビット」に対応する信号パルスおよび「24ビット」に対応する信号パルスが出力されているので、SSPDピクセル100A(i=2;j=1)中には、18個の光子入射があったと理解できる。
また、更に次の6パルス分のクロック信号Kに同期して出力される出力信号が、SSPDピクセル(i=1;j=2)での光子個数データを表している。例えば、図6では、「21ビット」に対応する信号パルスおよび「22ビット」に対応する信号パルスが出力されているので、SSPDピクセル100A(i=1;j=2)中には、6個の光子入射があったと理解できる。
また、更に次の6パルス分のクロック信号Kに同期して出力される出力信号が、SSPDピクセル100A(i=1;j=1)での光子個数データを表している。例えば、図6では、「20ビット」に対応する信号パルスおよび「22ビット」に対応する信号のパルスが出力されているので、SSPDピクセル100A(i=1;j=1)中には、5個の光子入射があったと理解できる。
そして、SSPDピクセル100A(i=2;j=1)での光子個数データの取り出しが終了すると、シフトレジスタの内部状態は初期化され(ゼロカウントに戻り)、先発のタイミング信号S1が入った直後から数えて、24パルス目のクロック信号Kに同期するようにして、後発のタイミング信号S2が再びバイナリカウンタに入ると、以上に述べた動作が繰り返される。
以上のとおり、本実施形態の信号処理回路20Bでは、SSPDアレー110Aからの信号を用いて光子入射位置の同定と入射光子数のカウントを行えるので、信号処理回路20BをSSPDアレー110Aのイメージング用の信号処理に用いることができる。
また、この信号処理回路20Bでは、本来、SSPDピクセル100A(i=2;j=1)の個数分必要な出力用信号線を形成するケーブルを、1本のシリアル接続の信号線402を形成するケーブルに削減できるので、ケーブルを伝わる熱によるGM冷凍機300の熱負荷増大を抑制できる。
更に、本実施形態の信号処理回路20Bでは、タイミング信号出力回路28から出力されたタイミング信号を用いてバイナリカウンタからシフトレジスタへの光子個数データの受け渡しが行われる際に、バイナリカウンタによる光子個数データのカウントと、シフトレジスタによる光子個数データの取り出しと、を独立して(同時に)に実行できる。つまり、バイナリカウンタからシフトレジスタへの光子個数データの受け渡しの完了と同時に、バイナリカウンタの内部状態が初期化され(ゼロカウントに戻り)、直ぐにSSPDピクセル100A(i=2;j=1)に入射した光子のカウントがバイナリカウンタにおいてなされる。そして、この入射光子のカウント中に、同時に(並行して)前回のフレーム周期Fでの光子個数データの取り出しがシフトレジスタにおいてなされる。上述のとおり、シフトレジスタによる光子個数データの取り出しが終了すると、シフトレジスタは初期化され、次のタイミング信号により、再びバイナリカウンタでの光子個数データがシフトレジスタに書き込まれる。
よって、本実施形態の信号処理回路20Bでは、このような一連の動作を繰り返すことにより、バイナリカウンタによる光子の連続的なカウントおよびシフトレジスタによる光子個数データの連続的な取り出しを行えるので好都合である。
本発明によれば、SSPDのアレー化により、SSPDのエネルギ分解能を向上させるに際して、SSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルの信号処理による熱負荷増大に対して適切に対応できる。よって、本発明は、SSPD用の信号処理回路やインターフェイス回路に利用できる。
SSPDピクセルの信号処理による熱負荷の問題を説明するための模式図である。 SSPDアレーの信号処理に用いる回路の全体構成を模式的に示した図である。 本発明の実施形態によるインターフェイス回路に用いるSQUIDアンプの回路図である。 図2に示した信号処理回路を量子通信用の信号処理に用いた場合の回路図である。 図2に示した信号処理回路をイメージング用の信号処理に用いた場合の回路図である。 図5に示した信号処理回路の入出力信号のタイミングチャートである。 図5に示した信号処理回路の動作の説明に用いる模式図である。 TESの構成例およびその動作原理を説明するための模式図である。 SSPDの構成例およびその動作原理を説明するための模式図である。 SSPDをアレー化した場合のSSPDピクセルによる光子数の識別の原理を模式的に示した図である。
符号の説明
20、20A、20B 信号処理回路(SFQにより構成)
21 ANDゲート(論理回路)
22 ORゲート(論理回路)
23 D型フリップフロップ(論理回路)
24 T型フリップフロップ(論理回路)
25 クロック信号出力回路(量子通信用)
28 タイミング信号出力回路
29 クロック信号出力回路(イメージング用)
30 インターフェイス回路
30A SQUIDアンプ
100 100A SSPDピクセル
101、101A 伝送経路
110、110A SSPDアレー
120A、120B 信号処理回路(半導体素子により構成)
200 SSPD
201 ナノワイヤ
300 GM冷凍機
400 光検出回路
401 光子数計数回路

Claims (8)

  1. 複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器から出力される信号の処理に用いられ、単一磁束素子により構成された論理回路が組み込まれている、信号処理回路。
  2. 前記複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のうちの一つに入射した光子の有無を検出する1光子の検出回路と、
    前記複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のうちの二つに同時入射した光子の有無を検出する2光子の検出回路と、を備え、
    前記検出回路が、前記論理回路の組合せで構成されている、請求項1記載の信号処理回路。
  3. 前記検出回路での光子検出のタイミングに用いるクロック信号を前記検出回路に出力する信号出力回路を備える、請求項2記載の信号処理回路。
  4. 前記複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のそれぞれと対応して配され、前記超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器のそれぞれに入射した光子の個数を計数可能な複数の光子数計数回路を備え、
    前記光子数計数回路は、前記論理回路の組合せで構成されている、請求項1記載の信号処理回路。
  5. 前記光子数計数回路は、前記超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器に入射した前記光子の個数を計数するバイナリカウンタと、
    前記バイナリカウンタにより計数された前記光子の個数データが書き込まれるシフトレジスタと、
    を備える請求項4記載の信号処理回路。
  6. 前記バイナリカウンタから前記シフトレジスタへの前記光子の個数データの受け渡しタイミングに用いるタイミング信号を前記バイナリカウンタに出力する信号出力回路を備える請求項5記載の信号処理回路。
  7. 前記シフトレジスタのそれぞれは、前記シフトレジスタの出力用の信号線を介してシリアル接続されており、
    前記シフトレジスタにおいて前記個数データを1ビット毎シフトさせることにより、前記信号線からの前記個数データの取り出しに用いるクロック信号を前記シフトレジスタに出力する信号出力回路を備える請求項5記載の信号処理回路。
  8. 複数の超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器と請求項1乃至7のいずれかに記載の信号処理回路との間の接続に用いられ、前記超伝導ナノワイヤ型単一光子検出器からの電流パルスを電流増幅できるよう、超伝導量子干渉素子により構成された増幅器が組み込まれている、インターフェイス回路。
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