JP2009229323A - 検体情報取得装置及び方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】テラヘルツ波を用いて検体の情報を取得する装置及び方法において、検体に過度の圧力を掛けることなく、信頼性・再現性が高い測定を行うことである。
【解決手段】テラヘルツ波を用いて検体102の情報を取得するための装置は、発生部と、伝播部と、調整手段103と、検出部104と、制御部105〜108とを備える。発生部はテラヘルツ波を発生させ、伝播部は、発生部からのテラヘルツ波を伝播させる。調整手段103は、伝播部における検体102の充填状態を調整し、検出部104は、伝播部からのテラヘルツ波を検出する。制御部は、調整手段103に検体102の充填状態を調整させた際に検出部104が検出するテラヘルツ波の信号の変化に基づき、調整手段103の調整による検体102の充填状態を判断して調整手段103を制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は、電磁波を用いて粉体などの不定形の検体等の検体の情報を取得する装置及び方法に関する。特に、少なくとも一部の周波数領域が30GHz乃至30THzの範囲に含まれる電磁波(本明細書ではテラヘルツ波と呼ぶ)を用いる検体情報取得装置及び方法に関する。
近年、30GHz乃至30THzの周波数領域に渡る電磁波であるテラヘルツ波を用いた検体検査技術の開発が進んでいる。こうした技術状況において、基板上に作製された伝送線路上に液体状検体を配置することで、伝送線路を伝播するテラヘルツ波の伝播状態が変化する現象を利用して、検体の分析などを行う技術が提案されている(特許文献1参照)。この提案では、液体状検体を霧状に飛散させ、伝送線路の信号線となる金属部分に検体を静電気力によって収束させながら選択的に堆積させる。堆積した検体は速やかに乾燥するため、検体塗布後すぐに測定ができて、測定結果が時間変動の影響を受けにくい。
一方、赤外線の分野において、表面に凹凸がある物体や粉体などの不定形な固体を全反射分光法を用いて測定する方法として、圧力センサを用いる技術が提案されている(特許文献2参照)。この提案では、全反射分光に用いるプリズムと検体を接触させ、更に密着させると、圧力センサが動作する。そして、圧力センサからの出力が所定値に達したところで、スペクトル測定を行う。
前述した特許文献1及び特許文献2の提案では、いずれも、プリズムや伝送線路などの表面がセンサ部となっている。プリズムや伝送線路の表面から空気側に分布している電磁界と検体が相互作用して電磁波の伝播状態が変化することで、検体の成分などを測定する。
特許文献2に示した全反射分光法においては、空気側に分布している電磁界の及ぶ範囲は、プリズム表面から空気側へ、典型的には、用いる電磁波の1波長程度である。プリズム表面と平行な方向では、電磁界の及ぶ範囲は、用いる電磁波が照射されているビーム径程度である。
一方、特許文献1に示した伝送線路を用いる方法では、伝送線路の構造により異なる。マイクロストリップライン構造の伝送線路では、典型的には、伝送線路表面から空気側へ10μm程度の範囲で電磁界が及んでいる。例えば、図13(a)は、マイクロストリップライン型伝送線路における電磁界分布を模式的に表したものである。マイクロストリップライン型伝送線路1301は、信号線1304、誘電体1305、基準電極1306からなる。図13で模式的に示した電気力線である1302の及ぶ範囲が、電磁界が分布している領域と言い得る。電磁界の強度は距離と共に変化し、伝送線路から遠ざかる程、その強さは減少する。一般的には、最大値の1/eまたは1/e2の値を与える距離の範囲を、電磁界分布が及ぶ範囲と便宜的に用いることが多い。本明細書でも、電磁界が分布している領域を、略そうした意味で用いる。
特開2007-298358号公報 特開2001-91452号公報
一般的に、粉体などが検体である場合、前述した電磁界が及んでいる領域に検体が入り込むことで、粉体の測定を行うことができる。しかし場合によっては、図13(b)で模式的に図示する様に、検体内の隙間が多く、これら隙間と電磁界が分布している領域が重なる可能性がある。こうした場合、電磁界と検体の相互作用が少なくなり、伝播する電磁波の伝播状態の変化が小さくなることもある。また、そうした状況の程度は測定ごとに異なり得るため、測定結果にばらつきが生じる可能性もある。
特許文献2の提案で示される様に、検体を上から押付けることで、図13(c)の様に、空気側に及んでいる電磁界が分布する領域に検体を充分充填することができると考えられる。この充填状態では、検体に隙間が少なく、電磁界が分布している領域の多くが検体によって占有される。
しかし一方で、過度の圧力で検体を押付けると、検体が圧力によって変化してしまう可能性がある。例えば、医薬品などの微結晶粉末は、高い圧力によって結晶形が変化してしまう場合があることが知られている。特に粉体状検体においては、測定時の湿度や粉体の粒径などによって、電磁界が分布している領域に検体を充分充填するために必要な圧力や押付け量が異なる場合がある。また、前述した結晶形の変化が生じる圧力も、条件によって異なる可能性がある。例えば、或る結晶形が100%の粉体状検体では、別の結晶形が混入した粉体状検体に比べ、より高い圧力で結晶形の変化が生じると考えられる。
よって、特許文献2に開示される様に圧力センサで所定の圧力に達したことを検知し、このところで測定を行う方法では、電磁界が分布している領域に検体を充分充填されていない場合もあり得る。また、特許文献2の方法では、結晶形が変化するかも知れず、且つ測定時における結晶形を知るのが容易でないため、測定結果がどの結晶形の結果なのかを知ることが容易ではない。
上記課題に鑑み、本発明の検体情報取得装置は以下の特徴を有する。すなわち、テラヘルツ波を用いて検体の情報を取得するための装置であって、発生部と、伝播部と、調整手段と、検出部と、制御部とを備える。発生部はテラヘルツ波を発生させる。伝播部は、発生部からのテラヘルツ波を伝播させる。調整手段は、伝播部における検体の充填状態を調整する。検出部は、伝播部からのテラヘルツ波を検出する。制御部は、調整手段に検体の充填状態を調整させた際に検出部が検出するテラヘルツ波の信号の変化に基づき、調整手段の調整による検体の充填状態を判断して調整手段を制御する。典型的には、制御部は、調整手段による検体の充填状態の調整で、検出部が検出するテラヘルツ波の信号の変化が飽和したときに、調整手段に検体の充填状態の調整を停止させ、その後、検出部に伝播部からのテラヘルツ波を検出させて検体の情報を取得する。
また、上記課題に鑑み、本発明の検体情報取得方法は以下の特徴を有する。すなわち、テラヘルツ波を用いて検体の情報を取得するための方法であって、発生工程と、検出工程と、調整工程と、制御工程とを有する。発生工程では、テラヘルツ波を発生する。検出工程では、伝播部を伝播してきたテラヘルツ波を検出する。調整工程では、伝播部における検体の充填状態を調整する。制御工程では、検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号の変化に基づき、調整工程で調整された検体の充填状態を判断して調整工程における調整を制御する。典型的には、制御工程において、調整工程での検体の充填状態の調整で、検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号の変化が飽和したときに、調整工程での検体の充填状態の調整を停止させ、その後、検出工程でテラヘルツ波を検出させて検体の情報を取得する。
本発明の検体情報取得装置及び方法によれば、伝播部における検体の充填状態を反映したテラヘルツ波の信号の変化に基づいて検体の充填状態を判断する。よって、検体に過度の圧力を掛けることなく、電磁界が及んでいる領域における検体の充填状態を精度良く調整することが可能となり、信頼性・再現性が高い測定結果を得ることができる。例えば、電磁波の一部波形を取得し、その変化を観察することで、毎回略等しい変化量が得られるよう、検体を押付ける圧力を調整し、且つ必要以上に高い圧力に到達する前に、検体の充填状態の調整が可能となる。また、圧力による検体の変化を観察しつつ、電磁界が及んでいる領域における検体の充填状態を調整するので、より定量的で精度良く信頼性・再現性が高い測定を行うことが可能になる。
以下に、本発明の実施形態を述べる。基本的な実施形態の検体情報取得装置は、テラヘルツ波発生部と、テラヘルツ波伝播部と、伝播部上の検体の充填状態を調整するための調整手段と、テラヘルツ波検出部と、制御部とを備える。制御部は、調整手段に検体の充填状態を調整させた際に検出部が検出するテラヘルツ波の信号の変化に基づき、調整手段の調整による検体の充填状態を判断して調整手段を制御する。テラヘルツ波の信号の如何なる変化に基づき、調整手段の調整による検体の充填状態を如何に判断して調整手段を如何に制御するかは、目的に応じて柔軟に設定することができる。典型的には、検体の充填状態を充分で安定的なものにして、より定量的で精度良い測定結果が得られる様に、制御部は、検出部が検出するテラヘルツ波の信号の変化が緩やかになって飽和したと判断されるときに、調整手段に検体の充填状態の調整を停止させる。そして、その後、検出部に伝播部からのテラヘルツ波を検出させて本来の目的である検体情報の取得を実行する。
また、基本的な実施形態の検体情報取得方法は、テラヘルツ波を発生する発生工程と、伝播部を伝播してきたテラヘルツ波を検出する検出工程と、伝播部における検体の充填状態を調整する調整工程とを有する。そして、制御工程で、検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号の変化に基づき、調整工程で調整された検体の充填状態を判断して調整工程における調整を制御する。ここでも、典型的には、より定量的で精度良い測定結果が得られる様に、制御工程において、調整工程における検体の充填状態の調整で、検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号の変化が飽和したときに、調整工程での検体の充填状態の調整を停止させる。そして、その後、検体の充填状態を充分で安定的なものにした状態で、検出工程で伝播部からのテラヘルツ波を検出させて本来の目的である検体情報の取得を実行する。
前記検体は、典型的には、本発明の検体情報取得装置及び方法がより効果を発揮する粉体状検体、粘弾性体、高粘性流体などである。
本発明の一実施形態を模式的に表した図1及び図2を用いて、本発明の実施形態を更に述べる。
図1は検体情報取得装置の実施形態全体を模式的に示し、図2は、図1のセンサ部101の具体的な構成を示す。図1及び図2において、検体情報取得装置の主要な部分であるセンサ部101は、テラヘルツ波発生部205、テラヘルツ波検出部206、及びテラヘルツ波伝播部である伝送線路207を有している。伝送線路207の表面近傍にテラヘルツ波の電磁界が分布しており、該表面に検体102を配置することでテラヘルツ波の伝播状態を変化させ、検体102の情報を測定する。ここでは、センサ部101の伝播部の例として、マイクロストリップライン構造の伝送線路を用いている。ただしこれに限るものではなく、コプレーナストリップライン構造やコプレーナウェーブガイド構造の伝送線路でも良い。また、伝播部として、全反射分光法に用いられるプリズムを用い、発生部及び検出部として、空間にテラヘルツ波を放射するいわゆる光伝導アンテナを用いても良い。この場合、光伝導アンテナとプリズムによりセンサ部が構成される。
本実施形態では、粉末状の検体102を被検査物とする。粉末状の検体102は、これの充填状態を調整する調整手段である検体保持・圧縮部103に保持されている。保持方法としては、例えば静電気力を用いて検体102を吸着し保持する方法などがある。他には、粘着性テープなどに検体を貼り付けたり、或いは磁性を有する検体に対して磁場を用いて保持したりする方法がある。ここで、粉末状の検体すなわち粉体とは、典型的には、多数の微粒子の集合体であり、且つその平均的な粒径が使用電磁波の波長や電磁界が分布している領域より小さいものを指す。
検体102は、制御部を成す圧縮制御部107と調整手段である検体保持・圧縮部103を用いて、センサ部101に押付けられる。具体的には、図2に示す伝送線路207に押付けられるが、前述した様に全反射分光におけるプリズムなどであることもある。この様に、検体102は、センサ部101ないしセンサ部101の伝播部に押付けられる。押付け量の調整は、押付け圧力を用いても良いし、検体保持・圧縮部103とセンサ部101の間の距離を用いても良い。その両者を用いても良い。例えば、粉体などを伝播部上に置いた場合、伝播部上の検体の充填状態を調整する工程の初期の段階において上記距離が変化しても上記押付け圧力が殆ど変化しないときがある。また一方、表面に凹凸がある様な検体(ゴムなど)を伝播部上に置いた場合、上記押付け圧力が変化しても上記距離が殆ど変化しないときがある。勿論、両者が変化するときもある。従って、伝播部上の検体の充填状態を調整できれば方法は問わない意味で、上記の様に述べた。以下では、押付けと圧縮は同じ意味で用いる。こうした観点から、検体の充填状態を調整する調整手段としては、検体に圧力気体を押付ける手段、検体に超音波振動を及ぼす手段などを用いることも可能である。
また、検体保持・圧縮部は必ずしも一体化されている必要はなく、単純に保持部に薬匙などを用い、センサ部に検体を配置した後、圧縮部で圧縮しても良い。
図1の構成において、検体の充填状態の調整動作は次の様に行われる。センサ部101からの信号の一部は、信号検出部104にて検出される。信号検出部104にて検出された信号は、記憶部105で一時的に保存される。次いで、圧縮制御部107により検体保持・圧縮部103が降下され、検体102がセンサ部101の表面に接触させられる。そして、再びセンサ部101からの信号が信号検出部104にて検出され、記憶部105で記憶した信号との比較が演算処理部106にて行われる。こうして、制御部を成す演算処理部106で信号の変化量が求められる。
検体102をセンサ部101に接触させ、更にセンサ部101に押付けると、センサ部表面近傍の電磁界が分布している領域に検体102が入り込み、センサ部101を伝播するテラヘルツ波の伝播状態が変化する。こうした現象を利用して、演算処理部106は以下の様な判断を実行する。
図4(a)〜(d)は、得られるテラヘルツ波の時間波形の模式図である。センサ部101表面近傍の電磁界が分布している領域に検体が全くないときのテラヘルツ波の時間波形が、図4の実線で示されている。電磁界が分布している領域に検体が存在すると、テラヘルツ波と検体102が相互作用することで、テラヘルツ波の伝播が遅延する。そのため、テラヘルツ波時間波形は時間軸上で右側へシフトする。この場合の時間波形を点線で示している。また、テラヘルツ波と検体102の相互作用のために、テラヘルツ波のピーク値が減少する。
図4におけるテラヘルツ波の時間波形のうち、一部を信号検出部104で取得する。取得する時間波形の一部として、例えば、テラヘルツ波ピーク値のみを取得する。すなわち、図4(a)におけるa及びa'の値を取得する。この他、テラヘルツ波のピーク値を示す時刻を取得しても良い。これは、図4(b)におけるb及びb'の値を取得することに相当する。テラヘルツ波のピーク値を示す時刻を取得することは、伝播するテラヘルツ波の位相の変化を観察することに相当する。また、固定した時刻(例えば、検体102がセンサ部101表面にない時にピーク値を与える時刻)におけるテラヘルツ波の値を取得しても良い。すなわち、図4(c)におけるc及びc'の値を取得する。またこの他、ピーク以外の裾野における、或る固定した時刻のテラヘルツ波の値の変化を取得しても良い。すなわち、図4(d)におけるd及びd'の値を取得する。図4(c)及び(d)は、伝播するテラヘルツ波の任意の位相における電場強度を観察することに相当する。図4(d)の場合、ピークを検出する必要が無いので動作が簡単になるが、これは信号の強度が比較的大きくて大まかな観察でも良いときに適する。この様に、検体の充填状態の調整動作において、パルス状テラヘルツ波の信号として、伝播部を伝播したパルス状電磁波の位相、ピーク値、或る位相における電場強度のうちの少なくとも1つが検出される。
取得した時間波形の一部から、伝播状態の変化を演算処理部106にて求める。検体102を接触させる前の信号に比べ、テラヘルツ波の伝播状態の信号が所定の値以上変化しており、且つ演算処理部106にて求めた伝播状態の信号の変化が最初の飽和(変化が緩やかになって略一定になること)に達したとする。そうしたら、演算処理部106は、検体102がセンサ部101表面近傍の電磁界が分布している領域に充分に充填されたと判断する。なお、前記所定の値以上の変化とは、一例として、信号検出部104で検出できる信号の分解能以上であり、より具体的には、信号雑音比(いわゆるSN比)以上の値の変化である。また、前記飽和に達するとの判断は、一例として、伝播状態の信号の変化が信号検出部104で検出できる分解能以下であり、より具体的には、信号雑音比以下の値の変化である。ただし、前記所定の値と、飽和に達したと判断する時の値は、必ずしも一致する必要はない。
この様に、制御部ないし制御工程において、検体が伝播部に存在しない時に検出されるテラヘルツ波の信号と、検体の充填状態を調整した時に検出されるテラヘルツ波の信号とに差があることが判別される。且つ、検体の充填状態の調整による該充填状態の増加に伴い前記信号の変化が飽和したことも判別される。充填状態の増加に伴う前記信号の変化の飽和の判別は、第1の充填状態の調整における前記信号の値と、前記第1の充填状態の調整より進んだ第2の充填状態の調整における前記信号の値との差の絶対値が、検出される信号の分解能以下であるときに行う。
演算処理部106は、検体102がセンサ部101表面近傍の電磁界が分布している領域に充分に充填されたと判断したら、圧縮制御部107に、それ以上の押付けを停止するよう検体保持・圧縮部103に指示させる。また、演算処理部106は、測定制御部108に、本来の目的である検体102の測定を開始するようセンサ部101の発生部205、検出部206(図2参照)などに指示を出させる。
前述したステップを経ることで、検体102が変化する程の過度な圧力をかけることなく、且つ、検体102の安定した適切な充填状態において、より定量的で信頼性・再現性が高い検体測定を行うことができる。
また、上記調整動作において、検体102がセンサ部101表面近傍の電磁界が分布している領域に充分に充填されたと判断された後に、検体保持・圧縮部103に、敢えて更に検体102を圧縮する様に指示しても良い。更に圧縮を加えることで、例えば、検体102の結晶形の変化が生じ、それに伴い再びテラヘルツ波の伝播状態の変化が生じる場合がある。そして、再度テラヘルツ波の伝播状態の信号の変化が飽和に達したら、検体102は電磁界が分布している領域に充分充填され、且つ検体102の略全ての結晶形が変化したと判断できる。このため、測定した結果が検体102のどの結晶形における結果であるかを確実に知ることができる。この様に、充填状態の増加に伴う前記信号の変化の飽和の判別は、2回目以上の飽和で行うこともできる。
以上に述べた実施形態の検体情報取得装置及び方法によれば、検体に過度の圧力を掛けることなく、電磁界が及んでいる領域における検体の充填状態を精度良く調整することが可能となり、より定量的で精度良い測定結果を得ることができる。
また、電磁波に30GHz乃至30GHzの周波数の電磁波を用いることで、同じ分子構造でありながら結晶形が異なる結晶多形の分析や、僅かな分子構造が異なる検体の比較などが可能になる。なぜなら、テラヘルツ帯においては、同じ分子構造であっても結晶形が異なることで、異なる吸収スペクトルを有するからである。また、僅かな分子構造の違いで、異なる吸収スペクトルを有するからである。
また、電磁波伝播部に伝送線路を用いることで、より微量の検体の測定が可能になる。なぜなら、伝送線路は電磁界が及んでいる領域が狭いからである。また、電磁波伝播部にプリズムを用いることで、より多量の検体の測定が可能になる。なぜなら、プリズムを用いた全反射分光法では、電磁界が及んでいる領域が広いからである。
以下、より具体的な実施例を説明する。
(実施例1)
図1及び図2を用いて、本発明の実施例1を説明する。図2は、上記特許文献1に開示されている様な、テラヘルツ波の発生部205、伝播部207、検出部206を集積したテラヘルツ波集積デバイス201を示す。このデバイス201ないし伝播部207は、図1に示すセンサ部101に対応する。
デバイス201において、シリコン基板202上に転写した低温成長ガリウムヒ素薄膜203a、203bと、その上に設けられた複数の電極204a〜204eにより、テラヘルツ波の発生部205及び検出部206が構成される。発生部205から発生したテラヘルツ波は、伝送線路207を伝播して、検出部206にて検出される。本実施例では、伝送線路207は、マイクロストリップライン構造の伝送線路を用いている。電極204cは伝送線路207の信号線を兼ねており、幅は5μm程度である。発生部205と検出部206の間は1mm程度の距離である。また、伝送線路207を構成する誘電体には、厚さ3μm程度のベンゾシクロブテン膜を用いている。
伝送線路207を伝播するテラヘルツ波の電磁界は、空気側にも一部が分布している。よって、伝送線路207表面に検体102(図1参照)を接触・密着させることで、伝播するテラヘルツ波の伝播状態が変化する。
図3を用いてテラヘルツ波集積デバイス201の駆動方法を説明する。図3に示す様に、レーザ光源301(例えば、モードロックチタンサファイアレーザ)から出射した超短パルスレーザ光(パルス幅100fs程度)は、ビームスプリッター302によりポンプ光303とプローブ光304に分割される。プローブ光304は、リトロリフレクター305を経て、ビームスプリッター307によりポンプ光303と再合流する。一方、ポンプ光303は、オプティカルチョッパー306を経て、ポンプ光304と再合流する。再合流したポンプ光303とプローブ光304は、レンズ308を経て、図2で詳細を示したテラヘルツ波集積デバイス309に入射する。ポンプ光303は、図2におけるテラヘルツ波発生部205を構成する電極204の間隙(例えば、電極204cと電極204d間)に照射される。一方、プローブ光304は、図2におけるテラヘルツ波検出部206を構成する電極204の間隙(例えば、電極204cと電極204e間の間隙)に照射される。
図2の構成において、発生部205を構成する複数の電極204間(例えば、電極204cと電極204d間)には、10V程度の電圧を印加しておくことで、ポンプ光303が照射されるときにテラヘルツ波のパルスが生じる。生じたテラヘルツ波は伝送線路207を伝播し、検出部206に到達する。テラヘルツ波が検出部206に到達するのと同じタイミングで、プローブ光304が電極204の間隙(例えば、電極204cと電極204e間の間隙)に照射されることで、テラヘルツ波によって誘起された電流が発生する。これを増幅器310で電流電圧変換・増幅し、ロックインアンプ311で検出する。ロックインアンプ311はオプティカルチョッパー306からの参照信号を利用する。図3における増幅器310とロックインアンプ311は、図1における信号検出部104に相当する。
検出されたテラヘルツ波の信号は、コンピュータ312に取り込まれる。コンピュータ312は、図1における記憶部105、演算処理部106などを含む制御部に相当する。リトロリフレクター305を前後に移動させ、ポンプ光303とプローブ光304の相対的な光路長差を調整することで、テラヘルツ波時間波形の全体をコンピュータ312で得ることができる。
上記の如き装置を用いて得られる信号を説明する。こうした信号を示す上述の図4(a)〜(d)は、横軸に時間をとり、縦軸に伝播するテラヘルツ波の振幅をとった模式図である。前述したテラヘルツ波時間領域分光法を用いる場合は、図4の様なパルス状の電磁波が観測される。伝送線路207上に検体が置かれていない時は、図4の実線の様な波形が得られる。伝送線路207上に検体が配置され、伝播するテラヘルツ波の電磁界が分布する領域に入り込む程度に検体が押し付けられると、検体とテラヘルツ波が相互作用する。具体的には、伝送線路207の実効的インピーダンスが高くなることで、伝播するテラヘルツ波に時間遅延が生じ、また振幅のピーク値が減少する。検体とテラヘルツ波が相互作用したときのテラヘルツ波を、図4において点線で模式的に表す。
検体の伝送線路207上への配置は次の様に行われる。図5に示す様に、例えば、粉体状検体501(マルトース)をガラス板502に保持する。保持する方法は、静電気力を用いる。ガラス板502とマルトース粉末501には接触によって静電気が発生し、10μg程度のマルトース粉末を持ち上げることができる。ガラス板502には、扱い易くするために図示の様な柄が付いている。ガラス板502によって保持された粉体状検体501は、伝送線路207上に運ばれた後、ガラス板502によって圧縮される。ガラス板502は、図1における検体保持・圧縮部103に相当する。
本実施例で挙げているマイクロストリップライン構造の伝送線路は、空気側に分布している電磁界が10μm程度の層にとどまっている。このため、粉体状検体501を伝送線路207に接触させても、テラヘルツ波の伝播状態には殆ど変化がないことが多い。そのため、粉体状検体501を圧縮する必要がある。
粉体状検体501の圧縮を調整・制御する方法において、図4におけるテラヘルツ波の時間波形のうち、一部を取得する。本実施例では、テラヘルツ波ピーク値のみを取得する。すなわち、図4(a)におけるa及びa'の値を取得する。ピーク値を取得するには、図3のリトロリフレクター305を小刻みに前後に動かし、そのときロックインアンプ311で検出される信号の最大値をピーク値とする。この他、テラヘルツ波のピーク値を示す時刻を取得しても良い。そのためには、リトロリフレクター305を小刻みに前後に動かし、ロックインアンプ311で検出される信号が最大値となるときのリトロリフレクター305の位置情報を取得する。これは、図4(b)におけるb及びb'の値を取得することに相当する。また、リトロリフレクター305を固定しておき、ロックインアンプ311で得られる値を取得しても良い。すなわち、図4(c)におけるc及びc'の値を取得する。また、ピーク以外の裾野における、或る固定した時刻のテラヘルツ波の値の変化を取得しても良い。すなわち、図4(d)におけるd及びd'の値を取得する。以下では、テラヘルツ波のピーク値を示す時刻b及びb'を用いて粉体状検体501の圧縮を制御する方法について述べる。
図6に、ガラス板502に加える圧力と、伝送線路207を伝播するテラヘルツ波のピーク値を示す時刻との関係を模式的に表したグラフを示す。前述した様に、マイクロストリップライン型の伝送線路では、伝送線路の寸法にも依るが、空気側に分布した電磁界は、伝送線路表面から10μm程度の高さにとどまっている。このため、粉体状検体の粒径によっては、粉体状検体が伝送線路に接触しただけでは、電磁界が分布している領域に充分検体が満たされておらず、殆どテラヘルツ波の伝播状態に変化を与えない。
ガラス板502に圧力を加えていくと、徐々に粉体状検体501は前記電磁界が分布している領域を満たし始め、それに伴いテラヘルツ波のピーク値を与える時刻が変化(遅延)する。やがて粉体状検体501は前記電磁界が分布している領域を充分に満たし、テラヘルツ波のピーク値を与える時刻の変化は図6に示す様に飽和する(緩やか、ないし略一定になる)。飽和したところで、それ以上の粉体状検体501の圧縮を行わず、粉体状検体501の測定を開始する。テラヘルツ波のピーク値を与える時刻を求める時は、前述した様にリトロリフレクター305を小刻みに前後させる。しかし、粉体状検体501を測定する時は、リトロリフレクター305をより長い所定の距離だけスキャンし、伝送線路207を伝播するテラヘルツ波の時間波形全体を取得する。
テラヘルツ波のピーク値を与える時刻の変化の飽和を求める工程について、図7のフローチャートと共により具体的に述べる。まず、粉体状検体501を伝送線路207上に配置する前のテラヘルツ波のピーク値を与える時刻を求める(これを、b0とする)(図7の[1]工程)。そして、値b0を記憶部105に記憶させる(図7の[2]工程)。
次いで、粉体状検体501を伝送線路207上に載せる。このときのテラヘルツ波のピーク値を与える時刻をb1とし(図7の[1]工程)、値b1を記憶部105に記憶させる(図7の[2]工程)。
更に、ガラス板502に少し圧力を加え、粉体状検体501を押付ける。そして、テラヘルツ波のピーク値を与える時刻を求め(これを、b2とする)(図7の[1]工程)、値b2を記憶部105に記憶させる(図7の[2]工程)。これと共に、演算処理部106にて、b2-b0とb2-b1を求める(図7の[3]及び[4]工程)。b2-b0が所定の正の値(例えば0.1ps)以上で且つb2-b1が所定の正の値(例えば0.01ps)以下であれば、粉体状検体501は前記電磁界が分布している領域を略全て満たしたと判断する。この判断に基づき、圧縮制御部107によるガラス板502のそれ以上の加圧を行わず、測定制御部108に粉体状検体の測定を開始するよう指示する(図7の[6]工程)。具体的には、前述した様にリトロリフレクター305を所定の速度で所定の距離だけ移動させると共に、テラヘルツ波の時間波形を取得する。
図7の[3]及び[4]のいずれの条件も満たしていない場合、粉体状検体501はまだ前記電磁界が分布している領域を殆ど満たしていないと判断し、圧縮制御部107を通じてガラス板502に更に圧力を加える(図7の[5]工程)。
図7の[3]を満たしているが[4]を満たしていない場合は、粉体状検体501は前記電磁界が分布している領域を満たしつつあるが、まだ不充分であると判断し、圧縮制御部107を通じて更にガラス板502に圧力を加え、粉体状検体501を押付ける。
この工程を繰り返し、n回目の圧縮時におけるテラヘルツ波のピーク値を与える時刻をbnとして、bn-b0が所定の正の値以上になり且つbn-bn-1が所定の値以下になるまで、ガラス板502に圧力を加え、粉体状検体501を圧縮する。
bn-b0が所定の正の値以上になり且つbn-bn-1が所定の値以下になったら、粉体状検体501は前記電磁界が分布している領域を略全て満たしたと判断する。すなわち、図13(c)に示す様な状態に達したと判断し、圧縮制御部107によるそれ以上の加圧を行わない様にし、測定制御部108に粉体状検体の測定を開始するよう指示する。具体的には、前述した様にリトロリフレクター305を所定の速度で所定の距離だけ移動させると共に、テラヘルツ波の時間波形を取得する。
取得した時間波形をフーリエ変換するなどして、粉体状検体501の吸収スペクトル等を得ることで、粉体状検体501の成分や結晶形などの情報を求めることができる。
なお、本実施形態においては粉体状検体501を圧縮する工程を、数列を用いて離散的に行ったが、テラヘルツ波のピーク値を与える時刻bを圧力またはガラス板502と伝送線路207の距離の関数として連続的に行っても良い。
本実施例によれば、粉体状検体501に過度な圧力を加えることなく、伝送線路207を伝播するテラヘルツ波の電磁界が空気側へ分布する領域を粉体状検体501が充分満たす様に、検体501の圧縮を調整することができる。このため、より定量的で再現性・信頼性が高い検体の測定を行うことができる。
(実施例2)
実施例2を以下に述べる。本実施例では、センサ部101として、図8に示す様なコプレーナストリップライン型の伝送線路を用いる。このデバイスは、ポリエチレン基板801上に低温成長ガリウムヒ素薄膜802a、802bを転写し、チタンと金の金属薄膜からなる線路803a、803bをリフトオフプロセスなどで作製する。線路803a、803bは、線路幅20μm程度、線路803aと線路803bの間の間隔が20μm程度である。また、長さは1mm程度である。線路803a、803bとポリエチレン基板801はコプレーナストリップライン型の伝送線路805を構成する。
電極804aに10V程度の電圧を印加し、実施例1と同様の方法でポンプ光を照射することで、テラヘルツ波が発生する。発生したテラヘルツ波は、電極804bと接続された増幅器とロックインアンプで検出される。粉体状検体806は、ガラス板807を用いて保持し、伝送線路805上に配置する。
コプレーナストリップライン型の伝送線路805は、マイクロストリップライン型に比べて、伝播するテラヘルツ波の空気側における電磁界分布が広く、且つ線路表面より離れた位置まで及んでいる。そのため、粉体状検体806を線路805上に配置しただけで伝播するテラヘルツ波の伝播状態が変化する場合がある。
本実施例では、リトロリフレクター305を固定した状態でテラヘルツ波の値をモニターすることで粉体状検体501を押付ける。すなわち、図4(c)におけるcとc'の変化をモニターする。
図9は、横軸に、粉体状検体806を保持するガラス板807と伝送線路805の距離をとり、縦軸に、信号検出部104で検出されるテラヘルツ波振幅をとったものである。実施例1の場合と同様、粉体状検体806を伝送線路805上に配置しない状態におけるテラヘルツ波振幅値をc0とし、配置した後の振幅値をc1とする。更に、ガラス板807を用いて粉体状検体806を圧縮した時の振幅値をc2とする。c2-c0の絶対値が正の所定の値以上で且つc2-c1の絶対値が正の所定の値以下となれば、粉体状検体806は、伝送線路805の空気側における電磁界分布が及ぶ領域に充分満たされたと判断する。
実施例1と異なるのは、テラヘルツ波振幅値は粉体上検体806が存在しない時が最も大きく、粉体状検体806が伝送線路805上に配置されることでテラヘルツ波振幅は徐々に小さくなる点である。よって、本実施例では各振幅の差の絶対値を観測する。それ以外の点では、実施例1と同様である。この時、例えば、電極803aと電極803bの間に流れる電流値をもってテラヘルツ波の振幅値とする。そして、一例として、|c2-c0|>0.5nA(ナノアンペア)且つ|c2-c1|<0.1nA(ナノアンペア)と言う判別条件を用いる。この判別条件を満たさない場合は、実施例1と同様、更に粉体状検体806を圧縮する。
ここでも、離散的に数列を用いるのではなく、連続的な関数を用いても良い。例えば、ガラス板807と伝送線路805の距離をxとし、テラヘルツ波の振幅値をc(x)と距離の関数として表す。そして、例えば、|c(x)-c(0)|>0.5nA且つ|dc(x)/dp|<0.1nA(振幅値c(x)の圧力1階微分)の様な条件を満たすまで圧縮する。場合によっては、ノイズの影響を避けるために、「2秒以上にわたって|dc(x)/dp|<0.1nAであること」の様な、一定時間に渡って条件を満たすと言う判別条件としても良い。
また、粉体状検体806が圧力によってその結晶形を変える性質を持つ場合、更に圧縮を続けることで、図9の一つ目の飽和の後、更にテラヘルツ波の振幅値cが変化する場合がある。これは、検体の結晶形の変化により、テラヘルツ波に対する屈折率が変化するため、その伝播状態が変化することに起因する。二つ目の飽和状態に達したところで測定することで、その測定結果がどの結晶形のものであるかを知ることができる。逆に、一つ目の飽和で測定した結果は、結晶形の変化が起こる前の測定結果であることを知ることができる。
本実施例では、リトロリフレクターを前後にさせる必要がないため、より高速に粉体状検体806を適正な圧力で圧縮できる。また、コプレーナストリップライン型伝送線路805を用いることで、粉体状検体806に対してより高感度な検出ができるという利点がある。
(実施例3)
実施例3を、図10を用いて以下に説明する。本実施例は、テラヘルツ波を用いた全反射分光法にて粉体状検体を測定する例である。すなわち、図1におけるセンサ部101として高抵抗シリコンを用いたプリズム1001を用いる。テラヘルツ波は、テラヘルツ波発生部の光伝導アンテナ(不図示)を用いて空間に放射し、レンズやミラー(不図示)を用いてプリズム1001に入射させる。入射したテラヘルツ波はプリズム1001の図10における上側の面にて全反射する。全反射した面におけるプリズム上面外側には、テラヘルツ波のエバネッセント波が存在する。エバネッセント波とは、電磁波の1波長程度の空間に染み出した電磁波である。エバネッセント波は、全反射面と垂直な方向には伝播しない電磁波である。よって、エバネッセント波が存在する領域に粉体状検体1002を設置し、全反射したテラヘルツ波の伝播状態の変化を測定することで、粉体状検体1002の成分などを求めることができる。この様に、本実施例では、伝播部をプリズムで構成し、検出部では、プリズム内部の一面にて全反射するテラヘルツ波の信号の変化から検体の情報を取得する。
本実施例では、まず粉体状検体1002を設置する前の状態のテラヘルツ波時間波形の一部を測定する。次いで、保持部である薬匙1003を用いて粉体状検体1002をプリズム1001上面に配置する。そして、アルミや樹脂で出来た円柱状の圧縮部1003を用いて粉体状検体1002を圧縮し、テラヘルツ波時間波形の一部を測定する。測定したテラヘルツ波時間波形の一部を、実施例1や実施例2と同様の方法で演算処理し、粉体状検体1002がエバネッセント波の存在する領域を充分満たしたか否かを判別する。
全反射分光法では、エバネッセント波が存在する領域が、プリズム上面から1波長程度で且つ入射テラヘルツ波のビームスポット程度であり、伝送線路を用いた場合よりも広い面積に渡っている場合が多い。このため、本実施例は、比較的量の多い粉体状検体を測定する場合に適している。
(実施例4)
実施例4を、図11を用いて以下に説明する。一般的に、全反射分光法に比べて、伝送線路の方が、空気側に分布している電磁波の領域が狭い場合が多い。例えば、実施例1にて前述した様に、線路幅5μm程度、誘電体厚さ3μm程度(誘電率2程度)、長さ1mm程度のマイクロストリップラン型伝送線路の場合は、次の様になる。非常に大まかな見積りとして、上空10μm程度、幅15μm程度、長さ1mm程度の空気側領域に電磁界が分布している。
一方、実施例3で述べた全反射分光法では、一般的に、使用する電磁波の1波長程度の長さで電磁波が染み出している。また、使用する電磁波の全反射面におけるビームスポットはテラヘルツ波では一般的に1mm以上(場合によっては1cm程度)である。従って、空気側領域に分布している電磁波は、プリズムの全反射面から上空100μm程度、直径2mm〜3mm程度と考えると、マイクロストリップライン型伝送線路に比べて、体積にして1000倍以上の広い領域に分布している。
よって、マイクロストリップライン型伝送線路を用いた粉体状検体の測定は、試料の量が微量な場合により好適である。一方、電磁波が分布している領域が狭いので、より精密に粉体状検体の充填状態を調整する必要がある。なぜなら、比較的大きい粒径(例えば20μm)の粉体状検体を扱う場合、電磁波が分布している領域が、粒子と粒子の隙間と重なってしまう可能性があるからである。
以上のことより、本実施例では、図11に示す様に、粉体状検体1101をシリンダ1102内のピストン1103で保持する。保持方法は、例えば静電気力である。シリンダ1102を伝送線路1105上面に密着させた後、ピストン1103をシリンダ1102内に押し込み、粉体状検体1101を伝送線路1105の信号線1104に押付ける。そして、伝送線路1105を伝播するテラヘルツ波の時間波形の一部を取得し、実施例1や実施例2の方法により、粉体状検体1101の圧縮に伴うテラヘルツ波の伝播状態の信号の変化をモニターする。
場合に応じて、ピストン1103を伝送線路1105の上面と平行な方向に摺動させたり(図11の左右方向の矢印参照)、ピストン1103に振動を加えたりしても良い。こうすることで、伝送線路の信号線1104周囲の電磁界が分布している領域に、粉体状検体1101の粒子を効率良く充填させることができる。例えば、実施例1の様に、伝播するテラヘルツ波の時間波形のピーク値を与える時刻をモニターする場合において、以下の様な状況が発生する可能性がある。すなわち、ピーク値を与える時刻の変化が飽和したにも係らず、以前同じ試料を同じ条件で測定した時と異なり、小さい値を示すという状況である。この様な状況が発生する場合、粉体状検体を構成する粒子の隙間と電磁界の分布している領域が重なっている可能性が考えられる。この様な時に、粒子の隙間と電磁界が分布している領域が重ならない様に、ピストン1103に振動や摺動を与えても良い。
また、シリンダ1102は、粉体状検体1101を圧縮した時に、ピストン1103からはみ出して伝送線路の信号線1104から遠ざかってしまうことを防ぎ、効率良く検体1101を圧縮して伝送線路の信号線1104に押付け密着させる役目を持つ。効率良く圧縮するために、空気の逃げ道として小さい穴をピストン1103の一部に設けても良い。
更に、伝送線路の信号線上にシリンダが設置されることで、テラヘルツ波の伝播状態が変化してしまうことも考えられる。これを防ぐため、図12に示す様にシリンダ1201の一部に切り欠き1202を2箇所に設けても良い。これにより、2箇所の切り欠き1202のところを伝送線路1206の信号線1205が通り、テラヘルツ波の伝播状態の変化より、ピストン1203で保持・圧縮される検体1204をより定量的で再現性・信頼性高く測定することができる。
本実施例は、テラヘルツ波の電磁界が空気側に分布している領域が狭い場合(例えば伝送線路を用いる場合)においても、効果的に検体の充填状態を調整できる等の利点を有する。
本発明による検体情報取得装置の実施形態及び実施例の全体を示すブロック図。 本発明の実施形態及び実施例において伝播部などとして用いるテラヘルツ波集積デバイスを示す斜視図。 テラヘルツ波集積デバイスを駆動するための周辺光学系などを含む構成例を示す図。 テラヘルツ波時間波形の幾つかの使用法を説明する図。 本発明の実施例1において検体を配置する模様を説明する斜視図。 実施例1における圧力とテラヘルツ波ピーク値を与える時刻との関係を示すグラフ。 本発明の実施例1において検体の充填状態を調整する工程を説明するためのフローチャート。 本発明の実施例2において用いるコプレーナストリップライン型伝送線路を含むテラヘルツ波集積デバイスを示す斜視図。 実施例2における距離ないし圧力とテラヘルツ波振幅の関係を示すグラフ。 本発明の実施例3において用いる全反射分光法を説明する図。 本発明の実施例4において用いるピストンとシリンダによる検体の圧縮を説明する一部破断した図。 切り欠き付きシリンダを説明する図。 マイクロストリップライン型伝送線路における電磁界分布の様子を示す図。
符号の説明
102、501、806、1002、1101、1204、1303 検体(粉体状検体)
103 調整手段(検体保持・圧縮部)
104 検出部(信号検出部)
105 制御部(記憶部)
106 制御部(演算処理部)
107 制御部(圧縮制御部)
108 制御部(測定制御部)
204c、803a、803b、1104、1205、1304 伝播部(信号線、伝送線路)
205 発生部
206 検出部
207、805、1105、1206、1301 伝播部(伝送線路)
310 検出部(増幅器)
311 検出部(ロックインアンプ)
312 制御部(コンピュータ)
502、807 調整手段(ガラス板)
1001 伝播部(プリズム)
1004 調整手段(圧縮部)
1102、1201 調整手段(シリンダ)
1103、1203 調整手段(ピストン)
1302 電磁界分布(電気力線)

Claims (10)

  1. テラヘルツ波を用いて検体の情報を取得するための装置であって、
    テラヘルツ波を発生させる発生部と、
    前記発生部からのテラヘルツ波を伝播させるための伝播部と、
    前記伝播部における検体の充填状態を調整するための調整手段と、
    前記伝播部からのテラヘルツ波を検出する検出部と、
    制御部と、を備え、
    前記制御部は、
    前記調整手段に検体の充填状態を調整させた際に前記検出部が検出するテラヘルツ波の信号の変化に基づき、前記調整手段の調整による検体の充填状態を判断して前記調整手段を制御することを特徴とする検体情報取得装置。
  2. 前記制御部は、
    前記調整手段による前記検体の充填状態の調整で、前記検出部が検出するテラヘルツ波の信号の変化が飽和したときに、前記調整手段に前記検体の充填状態の調整を停止させ、その後、前記検出部に前記伝播部からのテラヘルツ波を検出させて検体の情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の検体情報取得装置。
  3. 前記伝播部は伝送線路であり、
    前記検出部は、前記伝送線路を伝播するテラヘルツ波の信号の変化から検体の情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の検体情報取得装置。
  4. 前記伝播部はプリズムであり、
    前記検出部は、前記プリズム内部の一面にて全反射するテラヘルツ波の信号の変化から検体の情報を取得することを特徴とする請求項1または2に記載の検体情報取得装置。
  5. テラヘルツ波を用いて検体の情報を取得するための方法であって、
    テラヘルツ波を発生する発生工程と、
    伝播部を伝播してきた前記テラヘルツ波を検出する検出工程と、
    前記伝播部における検体の充填状態を調整する調整工程と、
    前記検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号の変化に基づき、前記調整工程で調整された検体の充填状態を判断して前記調整工程における調整を制御する制御工程と、を有することを特徴とする検体情報取得方法。
  6. 前記制御工程において、
    前記調整工程における検体の充填状態の調整で、前記検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号の変化が飽和したときに、前記調整工程での検体の充填状態の調整を停止させ、その後、前記検出工程で伝播部からのテラヘルツ波を検出させて検体の情報を取得することを特徴とする請求項5に記載の検体情報取得方法。
  7. 前記制御工程において、
    検体が伝播部に存在しない時に前記検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号と、検体の充填状態を前記調整工程で調整した時に前記検出工程で検出されるテラヘルツ波の信号とに差があることを判別し、
    且つ前記調整工程での検体の充填状態の調整による該充填状態の増加に伴い前記信号の変化が飽和したことを判別することを特徴とする請求項6に記載の検体情報取得方法。
  8. 前記充填状態の増加に伴う前記信号の変化の飽和の判別は、前記調整工程での第1の充填状態の調整における前記信号の値と、前記第1の充填状態の調整より進んだ第2の充填状態の調整における前記信号の値との差の絶対値が、前記検出工程における信号の分解能以下であるときに行うことを特徴とする請求項7に記載の検体情報取得方法。
  9. 前記充填状態の増加に伴う前記信号の変化の飽和の判別は、2回目以上の飽和で行うことを特徴とする請求項7または8に記載の検体情報取得方法。
  10. 前記検体は粉体状検体であることを特徴とする請求項5乃至9のいずれかに記載の検体情報取得方法。
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