JP2009227751A - 繊維強化複合材 - Google Patents

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Abstract

【課題】大きな介在物を配置しても含浸性が損なわれない繊維強化複合材の製造技術を提供すること。
【解決手段】強化繊維12に母材樹脂13を含浸させた含浸体14を積層させてなる繊維強化複合材20において、この繊維強化複合材20は、隣り合う含浸体14の間に介在物15が配置されたことを特徴とする。含浸体14の層間18に介在物15が配置される。即ち、強化繊維12に母材樹脂13を含浸させた後に介在物15が配置される。介在物15が含浸の妨害をしないため、大きな介在物15を配置したり、介在物15の含有量を増加させることができる。大きな介在物15を配置したり介在物15の含有量を増加させることにより、外部から受ける衝撃エネルギをより吸収することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、強化繊維に母材樹脂を含浸させた含浸体を積層させてなる繊維強化複合材に関する。
車体が外部から衝撃を受けた際のエネルギ吸収材として、繊維強化複合材が用いられる。繊維強化複合材は含浸体を積層させて構成されるため、外部から衝撃を受けた際、繊維強化複合材の層間をはく離させる方向に力が加わることがある。このはく離させる方向に加わる力に対して、エネルギを吸収しながら徐々にはく離していくものがエネルギ吸収材として望ましい。
従来、衝撃エネルギを吸収することができる繊維強化複合材としてプリプレグが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
特開2001−114915公報(第2頁、第9頁)
特許文献1[請求項1]によれば、このプリプレグは「次の構成要素[A]、[B]、[C]、及び硬化剤を含んでなるエポキシ樹脂組成物が、強化繊維に含浸されてなるプリプレグであって、該樹脂組成物中エポキシ樹脂の全量100重量部に対して、それぞれ前記構成要素[A]の含有量が5〜35重量部、前記構成要素[B]の含有量が50〜95重量部であるプリプレグ。[A]3官能エポキシ樹脂及び/又は4官能エポキシ樹脂[B]2官能エポキシ樹脂[C]平均粒径が10〜70μmであり、前記樹脂組成物中のエポキシ樹脂に実質的に不溶な微粒子」である。
即ち、[A]、[B]、[C]及び硬化剤を混合させたエポキシ樹脂を用いてプリプレグを製造する。プリプレグは、特許文献1[0079]に記載のとおり「本発明によれば、特に湿熱環境下で高度の物性が要求される用途に好適に用いうる、引張強度、耐層間剥離強度、耐衝撃強度に優れた繊維強化複合材料、及び、その繊維強化複合材料の製造に好適に用いうる、取り扱い性に優れたプリプレグが提供できる。」との効果を奏する。
即ち、微粒子が層間の急激なはく離を防止し、層間のはく離方向にかかるエネルギを吸収することにより、耐層間剥離強度が向上するものと考えられる。
微粒子が耐層間剥離強度に寄与しているから、耐層間剥離強度を更に高めるためには、微粒子の径を大きくすることや含有量を増加させることが考えられる。
平均粒径が10〜70μmである微粒子を、粒径が数百μmの粒子に変えた場合には、樹脂と繊維との含浸性が悪くなり、却って層間剥離に対する強度を低めることになる。
微粒子の含有量を増加させた場合にも、樹脂と繊維との含浸性が悪くなり、却って層間剥離に対する強度を低めることになる。
そこで、層間剥離に対する強度を高めることができる新しい技術が求められる。
本発明は、層間剥離に対する強度を高めることができる繊維強化複合材の製造技術を提供することを課題とする。
請求項1に係る発明は、強化繊維に母材樹脂を含浸させた含浸体を積層させてなる繊維強化複合材において、
この繊維強化複合材は、隣り合う含浸体の間に介在物が配置されたことを特徴とする。
請求項2に係る発明は、介在物は、粒子又は網状体であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、介在物の外径は100〜900μmであり、介在物が全体に占める割合は1〜4体積%であることを特徴とする。
請求項1に係る発明では、含浸体の層間に介在物が配置される。即ち、強化繊維に母材樹脂を含浸させた後に介在物が配置される。介在物が含浸の妨害をしないため、大きな介在物を配置したり、介在物の含有量を増加させることができる。大きな介在物を配置したり介在物の含有量を増加させることにより、外部から受ける衝撃エネルギをより吸収することができる。
請求項2に係る発明では、介在物は、粒子又は網状体である。粒子又は網状体であれば容易に層間に配置することができる。容易に配置することができるため、繊維強化複合材を容易に製造することができる。
請求項3に係る発明では、介在物の外径は100〜900μmであり、介在物が全体に占める割合は1〜4体積%である。
介在物の径が100μm未満であると、介在物が小さすぎ衝撃エネルギを十分に逃がすことができない。十分に衝撃エネルギを逃がすことができないため、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができない。
介在物の径が900μmを超えると、介在物が大きすぎるため含浸体を硬化させた際の層間の接着力が弱くなり、はく離を生じやすくなる。
介在物の径が100μm〜900μmであれば、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができ、かつ、層間の接着力も強いため、はく離に対する強度も保つことができる。
また、介在物が1体積%未満であると、介在物の量が少ないため衝撃エネルギを十分に逃がすことができない。十分に衝撃エネルギを逃がすことができないため、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができない。
介在物が4体積%を超えると介在物の量が多すぎるため、含浸体を硬化させた際の層間の接着力が弱くなりはく離を生じやすくなる。
介在物が1体積%〜4体積%であれば、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができ、かつ、層間の接着力も強いため、はく離に対する強度も保つことができる。
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。
図1は本発明に係る繊維強化複合材の含浸工程から含浸体積層工程までを説明する図であり、(a)に示すように作業台11の上面に炭素繊維等の強化繊維12を配置し、配置された強化繊維12にエポキシ樹脂等の母材樹脂13を含浸させる。
強化繊維12は、炭素繊維の他、ガラス繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、これらの混合繊維、又は、同等の繊維であればよく、種類は任意である。
また、母材樹脂13はエポキシ樹脂の他、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、又は、同等の母材樹脂であればよく、種類は任意である。
強化繊維12に母材樹脂13を含浸させることにより、(b)に示すように含浸体14が形成される。次に(c)に示すように含浸体14と含浸体14の間に、例えば網状体の介在物15を配置し、(d)に示すように含浸体14と含浸体14で介在物15を挟み積層体17を得る。即ち積層体17は、隣り合う含浸体14、14の層間18に介在物15が配置されることにより構成される。
含浸体14の層間18に介在物15が配置される。即ち、強化繊維12に母材樹脂13を含浸させた後に介在物15が配置される。介在物15が含浸の妨害をしないため、大きな介在物15を配置したり、介在物15の含有量を増加させることができる。
図2は本発明に係る繊維強化複合材の硬化工程から完成までを説明する図であり、(a)に示すように積層体17を例えばオートクレーブ19を用いて硬化させる。
なお、硬化方法は、樹脂の特性や炭素繊維強化複合材料の用途によって他の方法を用いることもできる。即ち、オートクレーブによる硬化に限られない。
積層体17が硬化されることにより、(d)に示すように繊維強化複合材20は完成される。即ち、繊維強化複合材20は、繊維強化樹脂21に介在物15が含まれている。
大きな介在物15を配置したり介在物15の含有量を増加させることにより、外部から受ける衝撃エネルギをより吸収することができる。
以上の構成からなる繊維強化複合材の作用を次に述べる。
図3は本発明に係る繊維強化複合材の作用を説明する図であり、繊維強化複合材20に対して(a)白抜き矢印F1で示すように力が加わることがある。このとき(a)のb部拡大図である(b)や、(a)のc部拡大図である(c)に示されるようにして繊維強化複合材20はF1から受けるエネルギを吸収する。
即ち、(b)に示すようにF1から受けるエネルギの一部は、矢印(1)で示すように層間18をはく離させながら介在物15に達する。介在物15に達したエネルギは、介在物15により矢印(2)で示すように進行方向を変えられる。
また、F1から受けるエネルギの一部は(c)矢印(3)で示すように層間18をはく離させながら介在物15に達し、矢印(4)で示すように介在物15の外周を通りながら進む。
即ち、(b)や(c)に示すように介在物15を挟むことにより、層間18の急激なはく離を防ぐことができる。層間18の急激なはく離を防ぎ、力の入力方向とは別の方向にエネルギを逃がすことにより、繊維強化複合材20はエネルギを吸収する。
以下に本発明に係る繊維強化複合材の別実施例を説明する。
図4は図1の別実施例図であり、図1と共通要素は符号を流用して、詳細な説明は省略する。
(a)に示すように作業台11の上面に強化繊維12を配置し、配置された強化繊維12に母材樹脂13を含浸させる。強化繊維12に母材樹脂13を含浸させることにより、(b)に示すように含浸体14が形成される。
次に(c)に示すように一方の含浸体14の表面に、ビーズ等の粒子状の介在物である粒子23を配置し、(d)に示すように含浸体14と含浸体14で粒子23を挟み積層体17を得る。即ち積層体17は、隣り合う含浸体14、14の層間18に粒子23が配置されることにより構成される。
なお、介在物の形状は粒子、又は網状体に限られないが、介在物に粒子23又は網状体(図1(c))を用いた場合には、容易に層間18に配置することができる。容易に配置することができるため、繊維強化複合材を容易に製造することができる。
次に、本発明に係る繊維強化複合材の実験について説明する。
(実験例)
本発明に係る実験例を以下に述べる。なお、本発明は実験例に限定されるものではない。
実験番号1〜実験番号23までの条件の異なるテストピースを作成し、JIS K 7076に準拠した面内圧縮試験、及び、JIS K 7086に準拠した層間はく離試験を行った。
図5は本発明に係る実験に用いた繊維強化複合材を説明する図であり、(a)に示すように、3枚の含浸体14を準備し、含浸体14と、含浸体14の間にそれぞれ介在物15、15を挟んだ。介在物15、15には、TOSHINRIKO製ガラスビーズ又は熱可塑性樹脂ネットを用いた。介在物についての詳細は後述する。
また、2つの層間18A、18Bのうち上側の層間18Aの一端には、厚さT1=50μm、長さL1=40mmの四ふっ化エチレンシート25を挿入した。含浸体14の条件は、実験番号1〜23全て同じであり、以下の通りである。
○含浸体:
プリプレグ:東邦テナックス(株)製Q−1111 2000
強化繊維:炭素繊維
繊維径:7μm
母材樹脂:エポキシ樹脂
繊維含有率:55体積%
繊維形態:一方向性
目付け:200g/m
積層構成:入力軸を0°として、下から順に炭素繊維が0°に配向されたプリプレグを4枚、炭素繊維が90°に配向されたプリプレグを4枚、炭素繊維が0°に配向されたプリプレグを4枚の順で積層した。
このようにして作成された積層体17を、硬化させた。硬化の条件は、実験番号1〜23全て同じであり、以下の通りである。
○硬化工程
硬化方法:オートクレーブ
硬化温度:130°C
硬化時間:2時間
圧力:0.6MPa
このようにして図5(b)に示すように繊維強化複合材20を得た。次に、テストピースの基となる複合材ブロック26、27を繊維強化複合材20から切り出した。
実験番号1〜実験番号21で用いるための複合材ブロック26は、長さL2=20mm、幅B1=25mmに切り出した。複合材ブロック26には、四ふっ化エチレンシート25が含まれない。
実験番号22及び実験番号23で用いるための複合材ブロック27は、長さL3=140mm、幅B2=15mmに切り出した。複合材ブロック27には、四ふっ化エチレンシート25が含まれる。
複合材ブロック26、27は、共に厚さT2=2mmである。
図6は面内圧縮試験の試験方法を説明する図であり、図5(b)で切り出した複合材ブロック26の一端に、図6(a)に示すように、θ=45°となるようテーパ面29を設け、テストピース30を作成した。テーパ面29を設けることにより、層間のはく離を誘発する。
このようにして作成されたテストピース30を用いて面内圧縮試験を行った。
即ち、(b)に示すようにテストピース30の下端部を治具31、31で固定し、シリンダアーム32を下降させる。シリンダアーム32の先端に配置される押圧部33で、テストピース30に対してF2の力で荷重をかけた。
変形されたテストピース30から受ける反力等を考慮し、テストピース30の先端P1からL4=12mmの場所P2までを計測の対象とした。即ち、P1からP2までテストピース30が潰されるまでに、テストピース30が吸収したエネルギを計測の対象とした。
次に、吸収したエネルギの量の算出方法について説明する。
図7はテストピースが吸収したエネルギ量の算出方法について説明する図であり、横軸に変位(mm)、縦軸に荷重(kN)をとり、変位と荷重の関係を変位−荷重線35で表した。
次に、横軸でP3(12mm)から上向きに線38を立てる。そして、変位−荷重線35、線38、x軸39で囲われる部分の面積を算出する。算出された値は、テストピースが吸収したエネルギ(J)となる。
ところで、テストピースの質量が大きいと、吸収エネルギが大きくなる。即ち、吸収エネルギ(J)は、テストピースの質量に影響される。この影響を除くために、吸収エネルギ(J)をテストピースの質量(g)で割ることにする。
得られた値をエネルギ吸収効率と呼ぶ。即ち、エネルギ吸収効率=(吸収エネルギ(J))/(テストピースの質量(g))。
このようにして行った、実験番号1〜実験番号20までの実験結果を表1に示す。
Figure 2009227751
実験番号1は、層間にビーズ等の介在物を介在させなかった。介在物なしでのテストピースにおけるエネルギ吸収効率は、19.4(J/g)であった。実験番号2〜20のと比べるため、実験番号1のエネルギ吸収効率を「1」とする。
実験番号2は、層間に径が100μmのビーズを1体積%で介在させたテストピースについて、エネルギ吸収効率を求めた。エネルギ吸収効率は20.5(J/g)であった。この20.5は、実験番号1の19.4に対して1.0567の値になる。この値から1を引くと、実験番号1に対する上昇率(%)が求まる。実験番号2では(1.0567−1)×100=5.67(%)となる。
ところで、対実験番号1上昇率は大きいほどエネルギ吸収性能が高い。実験の誤差などを考慮して、上昇率が5%以上であるときに合格、5%未満であるときには不合格とすることにして、表1最右欄の合否判定の欄に合格は「○」、不合格は「×」を記した。
即ち、ビーズの径が100μmである実験番号2〜実験番号5では、ビーズの含有量が1、3、4体積%である実験番号2〜実験番号4がそれぞれ対実験番号1上昇率で5%以上となり合格であった。
ビーズの含有量が6体積%である実験番号5は、対実験番号1上昇率で5%未満であり不合格であった。
ビーズの径が400μmである実験番号6〜実験番号12では、ビーズの含有量が0.5、1、3、4、4.5体積%である実験番号6〜実験番号10がそれぞれ対実験番号1上昇率で5%以上となり合格であった。
特に、実験番号8では対実験番号1上昇率で15.98%と実験番号2〜実験番号20のうち最高の値であった。即ち、400μmの粒径のビーズを3体積%含有させたときに最もエネルギー吸収効率が上がった。
ビーズの含有量が5、6体積%である実験番号11及び実験番号12は、対実験番号1上昇率で5%未満であり不合格であった。
ビーズの径が800μmである実験番号13〜実験番号15では、ビーズの含有量が1、3、4体積%であり、実験番号13〜実験番号15の全てが対実験番号1上昇率で5%以上となり合格であった。
ビーズの径が1000μmである実験番号16〜実験番号19では、ビーズの含有量が2、3体積%である実験番号17及び実験番号18がそれぞれ対実験番号1上昇率で5%以上となり合格であった。
ビーズの含有量が1、6体積%である実験番号16及び実験番号19は、対実験番号1上昇率で5%未満であり不合格であった。
ビーズの径が1200μmである実験番号20は、対実験番号1上昇率で5%未満であり不合格であった。
次に介在物を含有しない実験番号1と、対実験番号1上昇率の最も高かった実験番号8とのエネルギ吸収量とを比較する。
図8は面内圧縮試験の結果を説明する変位−荷重線図であり、横軸は変位(mm)、縦軸は荷重(kN)を示す。
太線41で示されるのが実験番号8であり、細線42で示されるのが実験番号1である。
変位0mmからP4及びP5までは、太線41、細線42共にほぼ同じような曲線を描いている。これは、層間のはく離を誘発するためにテストピースにテーパ面(図6(b)テーパ面28)を設けたため、実験番号8、実験番号1共に層間がはく離し易い状態であったことに起因するものと考えられる。
しかし、P4及びP5よりも変位が進むと、総じて太線41は細線42よりも上部で推移している。エネルギ吸収量は、変位−荷重線図の面積から求められる。変位12mmまでのエネルギ吸収量を比較した場合、太線41、線38及びx軸39で囲われる領域の方が、細線42、線38及びx軸39で囲われる領域よりも明らかに広い。
即ち、実験番号8の方が実験番号1よりも多くのエネルギを吸収していることが分かる。
次に、実験番号1〜実験番号20の実験結果の比較を行う。
図9は実験番号1〜実験番号20の実験結果を説明する図であり、図中、実1、実3…実20は実験番号1、実験番号3…実験番号20を示す。
また、図中の想像線は、実験番号1のエネルギ吸収効率に対して5%上昇したことを示す合格ライン43である。
(a)には、ビーズの含有量が3体積%であるときのビーズ径(μm)とエネルギ吸収効率(J/g)との関係が示される。
ビーズ径が0μmである実験番号1からビーズ径が400μmである実験番号8までは、ビーズ径が大きくなるほどエネルギ吸収効率の値が上がる。一方、ビーズ径が400μmを超えると、ビーズ径が大きくなるほどエネルギ吸収効率の値が下がる。
ビーズの含有量が3体積%であるとき、ビーズ径が100、400、800、1000μmである実験番号3、8、14、18で、エネルギ吸収効率が合格ライン43よりも高かった。
(b)には、ビーズ径が400μmであるときのビーズの含有量(体積%)とエネルギ吸収効率(J/g)との関係が示される。ビーズ含有量が0体積%である実験番号1からビーズ含有量が3体積%である実験番号8までは、ビーズ含有量が大きくなるほどエネルギ吸収効率の値が上がる。一方、ビーズ含有量が3体積%を超えた場合には、ビーズ含有量が多くなるほどエネルギ吸収効率の値が下がる。
ビーズの径が400μmであるとき、ビーズ含有量が1、3、4体積%である実験番号7、8、9で、エネルギ吸収効率が合格ライン43よりも高かった。
(c)では(b)に加え実験番号3、14、18の結果をプロットした。次に(d)に示すように、実1、実7、実8、実9、実11及び実12を結んだ400μm線44を作成した上で、この400μm線44を基に、実14を通る800μm線45、実3を通る100μm線46及び実18を通る1000μm線47を作成した。
(d)の線図よりビーズの含有量が0.5〜4.5体積%であること、又は、ビーズの径が100〜1000μmであることが、合格ライン43を超えるための必要条件であるといえる。従って、以下のことがいえる。
介在物の径が100μm未満であると、介在物が小さすぎ衝撃エネルギを十分に逃がすことができない。十分に衝撃エネルギを逃がすことができないため、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができない。
介在物の径が1000μmを超えると、介在物が大きすぎるため含浸体を硬化させた際の層間の接着力が弱くなり、はく離を生じやすくなる。
介在物の径が100μm〜1000μmであれば、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができ、かつ、層間の接着力も強いため、はく離に対する強度も保つことができる。
また、介在物が0.5体積%未満であると、介在物の量が少ないため衝撃エネルギを十分に逃がすことができない。十分に衝撃エネルギを逃がすことができないため、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができない。
介在物が4.5体積%を超えると介在物の量が多すぎるため、含浸体を硬化させた際の層間の接着力が弱くなりはく離を生じやすくなる。
介在物が0.5体積%〜4.5体積%であれば、繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができ、かつ、層間の接着力も強いため、はく離に対する強度も保つことができる。
図10は実験番号2〜実験番号20までの分布を示す分布図であり、横軸にビーズの径(μm)、縦軸にビーズの含有量(体積%)を示す。
また、2、3…20はそれぞれ実験番号2、実験番号3…実験番号20を示す。
(a)に示すように、実験番号2〜実験番号20をプロットした。○でプロットされるのは、表1合否判定の欄で「○」であったものである。一方、×でプロットされるのは、表1合否判定の欄で「×」であったものである。
次に、(b)に示すように、○でプロットされたものを想像線51で囲った。想像線51は楕円形状となった。この楕円の中には、想像線で示される長方形52が含まれる。この長方形52は、介在物の外径が100〜900μmであり、介在物が全体に占める割合が1〜4体積%の繊維強化複合材が含まれる範囲である。即ち、この長方形52に含まれる範囲が合格のための十分条件である。
介在物の外径が100〜900μmであり、介在物が全体に占める割合が1〜4体積%であれば、確実に繊維強化複合材は十分な量の衝撃エネルギを吸収することができる。加えて、層間の接着力も強いため、はく離に対する強度も保つことができる。よって、介在物の外径が100〜900μmであり、介在物が全体に占める割合が1〜4体積%であることが望ましい。
次に介在物に樹脂ネットを用いて行った面内圧縮試験について説明する。
実験番号21では、介在物(図5(b)介在物15)に熱可塑性樹脂ネットを用いて、面内圧縮試験を行った。詳細な条件は以下の通り。
○実験番号21:
介在物:熱可塑性樹脂ネット
線形:500μm
含有量:3体積%
このような条件で行った実験番号21の実験の結果を表2に示す。
Figure 2009227751
表1の場合と同じように、介在物を含まない実験番号1の結果と比較し、実験番号1比、及び、対実験番号1上昇率を求め、実験番号21の合否を判定した。
線径500μmの熱可塑性樹脂ネットを3体積%含有させた実験番号21は、対実験番号1上昇率で5%以上となり合格であった。
図11は実験番号21の結果を示す棒グラフであり、縦軸にエネルギ吸収効率(J/g)を示す。実験番号21と実験番号1のエネルギ吸収効率の差Jは、2.6J/gであった。熱可塑性樹脂ネットを介在させることにより、実験番号21のエネルギ吸収効率は実験番号1のエネルギ吸収効率に対して13.4%上昇した。
介在物に樹脂ネットを用いた場合にも、外部から受ける衝撃エネルギをより吸収することができるということができる。
次に層間破壊試験について説明する。
実験番号22及び実験番号23で層間破壊試験を行った。
図12は層間破壊試験の説明をする図であり、まず、(a)に示すように図5(b)で説明したL3=140mm、B2=15mmに切り出された複合材ブロック27を準備する。この複合材ブロック27の介在物には、TOSHINRIKO製ガラスビーズが用いられる。介在物の詳細を表3に示す。
Figure 2009227751
実験番号22では、介在物を含有させず、実験番号23では400μmのビーズを3体積%含有させた。即ち、実験番号22の複合材ブロック27は、実験番号1で用いたテストピースと同じ繊維強化複合材から切り出し、実験番号23の複合材ブロック27は、実験番号8で用いたテストピースと同じ繊維強化複合材から切り出した。
次に(b)に示すように複合材ブロック27の上面及び下面に、D1=6mmの貫通穴53が開けられた縦L5=12mm、横L6=12mmの治具54、54を配置しテストピース55が作成される。
層間18、18のうち、上側の層間18には長さL1=40mm、厚さT1=50μmの四ふっ化エチレンシート25が、配置されている。
このようにして作成されたテストピース55を用いて、層間破壊試験を行った。
即ち、(c)に示すように層間がはく離する方向にF3の力で荷重を与える。テストピース55が完全にはく離するまで荷重を与え続ける。
このようにして行った層間破壊試験の結果を次図で説明する。
図13は層間破壊試験の結果を説明する変位−荷重線図であり、横軸は変位(mm)、縦軸は荷重(N)を示す。
太線56は実験番号23の結果を示し、細線57は実験番号22の結果を示す。P6は実験番号22が完全にはく離した点であり、P7は実験番号23が完全にはく離した点である。
総じて太線56は細線57よりも上部で推移している。完全にはく離するまでのエネルギ吸収量は、荷重−変位線図の面積から求められる。完全にはく離するまでのエネルギ吸収量を比較した場合、太線56及びx軸58で囲われる領域の方が、細線57及びx軸58で囲われる領域よりも明らかに広い。
即ち、実験番号23の方が実験番号22よりも多くのエネルギを吸収していることが分かる。
面内圧縮試験では実験番号8が実験番号1の結果を上回り、層間破壊試験では、実験番号23が実験番号22の結果を上回った。
即ち本発明に係る繊維強化複合材は、エネルギ吸収性に優れた繊維強化複合材ということができる。
尚、本発明に係る繊維強化複合材は、車両の衝撃吸収材の他、車両の外板、飛行機、船艇、自転車のフレーム等にも使用することができ、用途は限定されない。
本発明の繊維強化複合材は、車両の衝撃吸収材に好適である。
本発明に係る繊維強化複合材の含浸工程から含浸体積層工程までを説明する図である。 本発明に係る繊維強化複合材の硬化工程から完成までを説明する図である。 本発明に係る繊維強化複合材の作用を説明する図である。 図1の別実施例図である。 本発明に係る実験に用いた繊維強化複合材を説明する図である。 面内圧縮試験の試験方法を説明する図である。 テストピースが吸収したエネルギ量の算出方法について説明する図である。 面内圧縮試験の結果を説明する変位−荷重線図である。 実験番号1〜実験番号20の実験結果を説明する図である。 実験番号2〜実験番号20までの分布を示す分布図である。 実験番号21の結果を示す棒グラフを説明する図である。 層間破壊試験の説明をする図である。 層間破壊試験の結果を説明する変位−荷重線図である。
符号の説明
12…強化繊維、13…母材樹脂、14…含浸体、15…介在物、18…層間、20…繊維強化複合材、23…粒子。

Claims (3)

  1. 強化繊維に母材樹脂を含浸させた含浸体を積層させてなる繊維強化複合材において、
    この繊維強化複合材は、隣り合う含浸体の間に介在物が配置されたことを特徴とする繊維強化複合材。
  2. 前記介在物は、粒子又は網状体であることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材。
  3. 前記介在物の外径は100〜900μmであり、前記介在物が全体に占める割合は1〜4体積%であることを特徴とする請求項1記載の繊維強化複合材。
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