JP2009226772A - 偏肉樹脂シートの製造方法及び積載方法並びに積載物 - Google Patents
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Abstract
【課題】複数の偏肉樹脂シートをまとめてアニール処理することができ、且つ、偏肉樹脂シートの変形を抑制することができる偏肉樹脂シートの製造方法および積載方法を提供する。
【解決手段】偏肉の樹脂シートSは、積載装置34によって厚み方向に重ねて積載された後、アニール処理装置60によってアニール処理される。積載装置34は、樹脂シートSのみを重ねた際に形成される空隙にクッション材41を入れて積載する。
【選択図】 図7
【解決手段】偏肉の樹脂シートSは、積載装置34によって厚み方向に重ねて積載された後、アニール処理装置60によってアニール処理される。積載装置34は、樹脂シートSのみを重ねた際に形成される空隙にクッション材41を入れて積載する。
【選択図】 図7
Description
本発明は膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートの製造方法及び積載方法並びに積載物に係り、例えば液晶表示装置のバックライトの導光板や、装飾・表示・照明用ディスプレイの導光板などの光学シートとして使用される偏肉樹脂シートの製造方法及び積載方法並びに積載物に関する。
液晶表示装置のバックライトや装飾・表示・照明用のディスプレイ装置には、光源からの光を導いて面発光する導光板が使用されており、例えば液晶表示装置には、液晶パネルの裏面側から導光板を介して光を照射するバックライトが設けられている。
このような導光板のうち大画面液晶テレビなどの大型装置に用いられる導光板は、押出成形法で製造することが一般的である。押出成形法では、溶融状態の樹脂シートがダイから押し出されて冷却ローラーにより冷却され、さらに引取ローラーで引き取られることによって搬送中に空冷されて冷却・固化され、その後、所定形状に切断される。所定形状になった樹脂シートは特許文献1や特許文献2のように複数枚が積載され、複数枚ごとに出荷される。樹脂シートの膜厚に偏りがある場合には、特許文献3のようにパレット上にまとめて積載する方法も採られている。
ところで、膜厚に偏りがある樹脂シートを複数枚積載すると、樹脂シートの薄肉部の位置には空隙ができるため、温湿度変化などによって経時的に反りが発生した際に樹脂シートが変形してしまい、所望のシート形状を維持することができないという問題が発生する。特に幅方向の厚み分布が大きい偏肉樹脂シートでは、成形による残留歪みが生じやすく、切断後の経時寸法変化や反り発生の原因となるという問題があった。
このような樹脂成形品の変形を抑制する方法として、アニール処理が知られている。アニール処理は、高温環境下に樹脂成形品を置くことによって樹脂成形品の残留歪みを除去する処理であり、この処理を行うことによって樹脂成形品の経時変形を防止することができる。
しかし、膜厚に偏りのある樹脂シートの場合は、前述した空隙のため、アニール処理時にいわゆる後収縮の影響および自重の影響により、空隙で樹脂シートが変形してしまうという問題が発生する。この問題を解消する方法としては、たとえば特許文献4のように樹脂成形品ごとに型を嵌合し、この型により矯正した状態でアニール処理する方法が考えられる。この方法によれば、アニール処理時における樹脂成形品の変形を防止できる。
実開昭62−144190号公報
特開2005−170510号公報
実開平7−40638号公報
特開2001−270007号公報
しかしながら、特許文献4のように樹脂成形品ごとに型を嵌合したのでは、生産性が悪くなり、大量生産できない。
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、複数の偏肉樹脂シートをまとめてアニール処理することができ、且つ、偏肉樹脂シートの変形を抑制することができる偏肉樹脂シートの製造方法及び積載方法並びに積載物を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、厚みに偏りがある偏肉樹脂シートを押出成形法によって製膜する製膜工程と、前記製膜された複数の偏肉樹脂シートを厚み方向に重ねて積載する積載工程と、該積載された複数の偏肉樹脂シートをアニール処理するアニール処理工程と、を備えた偏肉樹脂シートの製造方法において、前記積載工程は、前記偏肉樹脂シート同士の間に、該偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りの厚みを有するクッション材を入れて積載することを特徴とする。
本発明によれば、偏肉樹脂シート同士の間にクッション材を入れて積載し、偏肉樹脂シート同士の間に空隙が形成されることを防止したので、積載された偏肉樹脂シートは自重によって矯正される。したがって、この状態でアニール処理することによって、アニール処理時に偏肉樹脂シートが変形することを防止でき、且つ、偏肉樹脂シートの残留応力を確実に取り除くことができる。また、本発明によれば、複数の偏肉樹脂シートを同時にアニール処理するので、生産性を向上させることができる。
本発明は、特に押出成形法によって樹脂シートを製膜するのに適している。すなわち、押出成形法で製膜された偏肉樹脂シートは、残留応力が残りやすく、変形しやすいという特性があるが、本発明では、偏肉樹脂シート同士の間にクッション材を入れて積載したので、残留応力を確実に取り除くことができ、偏肉樹脂シートの変形を防止できる。
なお、本発明において「偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りの厚みを有する」とは、偏肉樹脂シートに重ねた際に厚みの偏りがなくなることを意味し、具体的には、偏肉樹脂シートの膜厚部に対応する位置に膜薄部が形成され、偏肉樹脂シートの膜薄部に対応する位置に膜厚部が形成されることを意味する。また、本発明において「クッション材」は、偏肉樹脂シートの表面に傷が発生することを防止するためにゴム等の弾性体(衝撃吸収材)であることが好ましいが、これに限定するものではなく、プラスチックなどの硬質部材であってもよい。
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記積載工程は、積載された前記複数の偏肉樹脂シートとクッション材とを前記偏肉樹脂シートの厚み方向に両側から一対の挟持板で挟むことを特徴とする。
本発明によれば、一対の挟持板で挟むことによって、複数の偏肉樹脂シートがクッション材によって矯正された状態に維持される。したがって、偏肉樹脂シートの変形をより確実に防止することができる。また、一対の挟持板で挟むことによって、複数の偏肉樹脂シートとクッション材との積載物を容易に搬送することができ、さらにアニール処理を行う際や保管する際にも取り扱いが容易になる。また、一対の挟持板の形状によっては(たとえば挟持板を偏肉樹脂シートよりも大きく形成することによって)、偏肉樹脂シートを縦にした状態で保管または処理することが可能となる。
請求項3に記載の発明は請求項1または2の発明において、前記アニール処理は、間欠運転することを特徴とする。本発明によれば、アニール処理を間欠運転するので、連続処理する場合よりも小スペースで行うことができ、且つ、バッチ式で行うよりも効率よく行うことができる。
請求項4に記載の発明は前記目的を達成するために、厚みに偏りがある複数の偏肉樹脂シートを厚み方向に重ねて積載する偏肉樹脂シートの積載方法において、前記偏肉樹脂シート同士の間に、該偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りの厚みを有するクッション材を入れて積載することを特徴とする。
本発明によれば、偏肉樹脂シート同士の間に、逆の偏りの厚みを有するクッション材を入れて積載したので、偏肉樹脂シート同士の間に空隙が形成されることを防止できる。したがって、後収縮や自重の影響により空隙で偏肉樹脂シートの変形を防止することができ、偏肉樹脂シートを所望の形状に長期間維持することができる。
請求項5に記載の発明は前記目的を達成するために、厚みに偏りを有する偏肉樹脂シートと、該偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りを有するクッション材とを交互に重ねたことを特徴とする積載物を提供する。
本発明によれば、偏肉樹脂シートとクッション材とを交互に重ねたので、偏肉樹脂シートとクッション材とを隙間無く積載することができる。これにより、偏肉樹脂シートの変形を防止することができる。
本発明によれば、偏肉樹脂シート同士の間に、逆の偏りの厚みを有するクッション材を入れて積載したので、偏肉樹脂シート同士の間に空隙が形成されることを防止でき、偏肉樹脂シートの変形を防止することができる。
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。
図1および図2は、本実施形態において製造される蒲鉾形状の偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面を示している。図1に示す偏肉樹脂シート(以下、たんに樹脂シートともいう)Sは、最も膜厚の大きな最膜厚部52がシート幅方向の中央部に設けられ、最も膜厚の薄い最膜薄部54がシート幅方向の両端部に設けられる。また、図2に示す樹脂シートSは、図1に示す樹脂シートをシート幅方向に複数(2個)並べたような断面形状になっている。すなわち、図2に示す樹脂シートSは、最膜厚部52および最膜薄部54が周期的に配される断面構造を有し、シート幅方向に関して最膜薄部54および最膜厚部52が交互に出現する構造となっている。
このような断面形状を有する偏肉樹脂シートSを製造する場合、樹脂シートSのシート幅が大きくなるほど、押出成形時のバンク(図4の符号44参照)が乱れ易く、樹脂シートSを良好な面状に成形しながら反りを防ぐということが難しくなる。また、最膜薄部54のピッチP1および最膜厚部52のピッチP2が大きくなるほど、バンクが乱れ易く、樹脂シートSを良好な面状に成形しながら反りを防ぐということが難しくなる。また、樹脂シートSのシート幅方向に関する膜厚差、すなわち最膜厚部52と最膜薄部54との膜厚差が大きくなるほど、バンクが乱れ易く、樹脂シートSを良好な面状に成形しながら反りを防ぐということが難しくなる。このため、樹脂シートSは、乾燥状態において、シート幅が200mm以上750mm以下(とりわけ450mm以上750mm以下)、最膜薄部54のピッチP1および最膜厚部52のピッチP2が200mm以上、そして最膜厚部52の膜厚Dmaxと最膜薄部54の膜厚Dminとの差(|Dmax−Dmin|)が0.5mm以上5mm以下(より好ましくは0.5mm以上3mm以下)であることが好ましい。
図3は、偏肉樹脂シートSを製造する偏肉樹脂シート製造装置の一例を示している。同図に示す偏肉樹脂シート製造装置10は、原料調製装置11、押出機12、ダイ16、成形冷却ローラー部17、熱処理ゾーン24、冷却ゾーン26、面状検査機28、ラミネート機30、切断機32及び積載装置34が、上流側から下流側へ順に設けられている。
原料調製装置11は、偏肉樹脂シートSの原料の計量及び混合を行って原料を調製する装置であり、例えば原料タンクからの原料樹脂と添加物タンクからの添加物とを自動計量機で計量し、混合器で混合するように構成される。添加物として拡散粒子を原料樹脂に添加する場合は、所定濃度よりも高濃度の拡散粒子を原料樹脂に添加したマスターペレットを造粒機で製造しておき、拡散粒子が添加されていないベースペレットに混合器で所定比率混合するマスターバッチ方式を好適に採用できる。なお、拡散粒子以外の添加物を添加する場合にも、同様にして混合を行うことができる。
上記の原料樹脂としては熱可塑性樹脂を使用可能であり、例えばポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどを原料樹脂として使用することができる。
原料調製装置11で調製された原料は、原料供給管13を介して押出機12に送られる。押出機12は、原料調製装置11から送られた原料を混練りしながら溶融することによって、溶融樹脂を作る装置である。押出機12としては、単軸式押出機及び多軸式押出機の何れでもよいが、押出機12の内部を真空にするベント機能を有するものが好ましい。押出機12で作られた溶融樹脂は、スクリュウーポンプやギアポンプ等の定量ポンプによって、溶融樹脂供給管14を介してダイ16に送られる。
ダイ16では、押出機12から送られてくる溶融樹脂が成形冷却ローラー部17に向かってシート状に押し出され、吐出される。その際、吐出される溶融樹脂量はシート幅方向に関して所定の分布を有するようになっており、これによって、シート幅方向に膜厚が均一ではない偏肉樹脂シートを成形することができる。なお、ダイ16から吐出される溶融樹脂量に分布をもたせる手段としては、例えばチョークバーを使用する方法や他の公知の方法を用いることができる。
ダイ16から押し出された溶融樹脂は、成形冷却ローラー部17によって蒲鉾状の偏肉形状が付与されるとともに冷却される。
図4は、ダイ16および成形冷却ローラー部17を側方から見た図であり、図5は、成形冷却ローラー部17を下方から見た図である。なお、図5に示す成形冷却ローラー部17は、図1に示した断面形状の樹脂シートSを成形する例である。
これらの図に示すように、成形冷却ローラー部17は、成形ニップローラー18、型ローラー20及び剥離ローラー22を備える。ニップローラー18及び剥離ローラー22は径が一様な円柱形状に形成され、型ローラー20は中央部が細く両端部が太い所謂コンケーブ形状に形成される。型ローラー20のコンケーブ形状は、樹脂シートSの蒲鉾形の偏肉形状の反転形状に対応しており、この型ローラー20とニップローラー18とで高温の樹脂シートSが挟圧されることによって、蒲鉾状の偏肉形状が付与される。なお、型ローラー20の表面の逆蒲鉾形状は、公知の加工方法により形成することが可能であり、例えば、研削加工、超音波加工、放電加工、NC旋盤による切削加工、仕上げバフ加工、等を適宜組み合わせて形成することが可能である。
図5に示すように、型ローラー20の中央部には、樹脂シートSの最膜厚部52に対応する膜厚形成部20Cが設けられる。また型ローラー20は、両端部において先細形状のテーパー凹部20Aを有する形状にすることもできる。この場合、樹脂シートSをニップローラー18及び型ローラー20で挟圧したときに、当該樹脂シートSのうちテーパー凹部20Aに対応する部分を容易にカットすることができる。これは、樹脂シートSの両端部(耳部)が所望の膜厚よりも厚くなる傾向があり、その膜厚部がその後の工程において樹脂シートSの反りを助長する可能性を考慮したものである。なお、ニップローラー18のうち型ローラー20の膜薄形成部20Bと接触する当接部18Aは磨耗し易いので、この当接部18Aに対して、タングステンカーバイト等の超硬材料により超硬処理を施したり焼き入れしたりすることが好ましい。また、型ローラー20及び剥離ローラー22についても同様に、膜薄形成部20B等の当接部に対して超硬処理を施したり焼き入れしたりすることが好ましい。
ニップローラー18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラー20との間の樹脂シートSを所定の圧力で挟圧することができる。この加圧手段は、ニップローラー18と型ローラー20との接触点における法線方向に圧力を付与するものであり、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段を採用することができる。なお、ニップローラー18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、ニップローラー18の背面側(型ローラー20とは反対側)に図示しないバックアップローラーを設ける構成、中高状のクラウン形状を採用する構成、ローラーの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラーの構成、或いはこれらを組み合わせた構成等を採用することができる。
ニップローラー18、型ローラー20及び剥離ローラー22には、偏肉樹脂シートSの蒲鉾形状に対応するような冷却温度分布を樹脂シートSに付与するための温度調整手段(図示せず)が設けられる。この温度調整手段としては、例えば、温度調節された冷却液体を型ローラー20の内部の一端側から他端側に流す構成を採用することができる。なお、それぞれのローラー表面の温度をローラー幅方向に関してモニターする表面温度測定手段(図示せず)を設けることが好ましい。このような表面温度測定手段としては、赤外線温度計、放射式温度計等の公知の各種測定手段が採用できる。
上述したニップローラー18、型ローラー20及び剥離ローラー22の形状は、製造する偏肉樹脂シートSの断面形状に応じて適宜変更される。これにより、様々な断面形状を有する偏肉樹脂シートSを製造することができる。
また、ニップローラー18、型ローラー20及び剥離ローラー22の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用することができる。
さらに、ニップローラー18、型ローラー20及び剥離ローラー22の表面は鏡面状に加工されていることが好ましく、その表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。これにより、成形後の樹脂シートSの裏面を良好な状態に仕上げることができる。
図4に示すように、ダイ16は、ニップローラー18及び型ローラー20の上方において、やや型ローラー20寄りに配置される。また、ニップローラー18、型ローラー20及び剥離ローラー22は、不図示の駆動装置により所定の周速度で図4に示す矢印方向へ回転駆動される。なお、ニップローラー18及び剥離ローラー22に対して駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂シートSの面状(特に裏面)を良好に成形する観点からは、駆動手段でニップローラー18及び剥離ローラー22も回転駆動する構成が好ましい。また、ダイ16をややニップローラー18寄りに配置する態様も可能である。
このような構成において、ダイ16のリップ口42から吐出された溶融樹脂は、ニップローラー18と型ローラー20との間でバンク44を形成するとともに、挟圧部46においてニップローラー18及び型ローラー20で挟圧され、偏肉形状が付与される。偏肉形状が付与された樹脂シートSは、型ローラー20に巻き掛けられた状態で送られた後、剥離ローラー22によって型ローラー20から剥がされ、剥離ローラー22に巻きかけられる。この樹脂シートSの搬送路には、型ローラー20及び剥離ローラー22に対向して加熱装置23(23A、23B)が設けられており、この加熱装置23によって樹脂シートSが加熱される。
図3に示すように、樹脂シートSは、剥離ローラー22から剥離され、熱処理ゾーン24に送られる。熱処理ゾーン24は、偏肉構造を有する樹脂シートSに対して熱処理を施すゾーンであり、複数の加熱装置23が樹脂シートSの搬送路に沿って設けられる。これらの加熱装置23は非接触式加熱手段であり、加熱効率等の観点から、例えば遠赤外線ヒーターを好適に用いることができる。加熱装置23の加熱条件は、搬送される樹脂シートSの表面温度がほぼ均一に保たれるようにコントロールされる。具体的には、樹脂シートSの表面温度がガラス転移温度Tg以下になった後、樹脂シートSのうち加熱される側の表面の温度差が幅方向に関して30℃以内となるように、好ましくは20℃以内となるように、より好ましくは10℃以内となるようにコントロールされる。このとき、放射温度計等の温度センサ(不図示)によって樹脂シートSの温度が測定され、この測定温度に基づいて加熱装置23の加熱条件が適宜変更され、樹脂シートSの表面温度が調整される。
熱処理ゾーン24で熱処理された樹脂シートSは、冷却ゾーン26に送られる。冷却ゾーン26は、熱処理ゾーン24から送られてくる樹脂シートSに対して徐冷処理を施すゾーンであり、この冷却ゾーン26で冷却することによって、樹脂シートSの急激な温度変化を防止することができる。樹脂シートSは、急激に冷却されると表面近傍が塑性状態であるにもかかわらず内部が弾性状態になってしまい、収縮量の違いや温度差等に起因する表面形状の悪化や反りが生じ易い。特に膜厚に分布がある偏肉樹脂シートの場合には、急冷等により比較的大きな内部応力が生じやすいので、反りが生じ易い。そのため、冷却ゾーン26における徐冷方法の一例として、前半部では樹脂シートSの膜厚部と膜薄部との間で大きな温度差が生じないように非接触式加熱手段で膜薄部を重点的に加熱して樹脂シートS全体を徐々に自然冷却し、後半部では樹脂シートSに冷風を当てて常温程度まで強制冷却を行う方法が採られる。
なお、上述の熱処理ゾーン24及び冷却ゾーン26では、熱処理や冷却に伴う反り等の変形を防いで所望の偏肉形状が保持されるように、樹脂シートSが搬送される。
面状検査機28は、冷却ゾーン26から送られてくる樹脂シートSの表面形状や反りを評価する装置である。面状検査機28による評価はセンサ類を用いた任意の手法で行われ、この評価結果は、前段に設けられたダイ16からの溶融樹脂シートSの吐出制御や、熱処理ゾーン24及び冷却ゾーン26における熱処理・冷却制御にフィードバックされる。
ラミネート機30は、樹脂シートSの表裏面にポリエチレン等の保護フィルムを貼り付ける装置であり、一対の引取ローラー36を備えている。
図6は、ラミネート機30において保護フィルムFを樹脂シートSに貼り付ける機構を示す図である。保護フィルムFは、繰り出しローラー38から順次繰り出された後に、複数の転送ローラー37を経て、引取ローラー36に送られる。この引取ローラー36は、樹脂シートSの搬送および保護フィルムFの貼付を同時に行う。すなわち引取ローラー36は、軸回転することによって、前段部(型ローラー20〜ラミネート機30)の樹脂シートSを引っ張って搬送するとともに、後段部(ラミネート機30〜切断機32)の樹脂シートSを押し出すようにして搬送する。また同時に、引取ローラー36は、軸回転することによって、転送ローラー37を介して送られてくる保護フィルムFを樹脂シートSの面に圧着する。引取ローラー36、転送ローラー37及び繰り出しローラー38は、樹脂シートSの表面側及び裏面側の両方に設けられており、保護フィルムFは樹脂シートSの表面及び裏面の両方に圧着される。
保護フィルムFが貼り付けられた樹脂シートSは、図3に示すように、切断機32に送られる。切断機32は、樹脂シートSの幅方向両端部分(耳部)を切除するとともに樹脂シートSを所定長さに切り揃える。切断機32は任意の構成を有することができ、例えば、受け刃および押し当て刃からなるギロチンタイプの切断機32、レーザーカッターや電子ビームを使用した切断機32等を使用することができる。
切断機32において所定長さに切り揃えられた樹脂シートSは、積載装置34で順次積み上げられる。積載装置34は、図7に示すように、ベルトコンベア39で搬送されてきた樹脂シートSをパレット40上に積載する装置であり、樹脂シートSとクッション材41とを交互に積載するように構成される。
クッション材41は、樹脂シートSのみを重ねて積載した際に樹脂シートS同士の間に形成される空隙G(図12(b)参照)に充填される部材であり、樹脂シートSの厚みの偏りとは逆の偏りの厚みを有している。すなわち、クッション材41は、幅方向の中央部に最膜薄部を有し、幅方向の両端部に最膜厚部を有しており、一枚のクッション材41と一枚の樹脂シートSとを重ねた際にその積載物の厚みが均一になるように構成される。なお、クッション材41の大きさは特に限定するものではないが、樹脂シートSと同じか、樹脂シートSよりも若干大きいことが好ましい。また、クッション材41は樹脂シートSに密着して空隙Gを完全に埋めることが好ましい。
クッション材41の材質としては、後述のアニール処理に適した耐熱性と伝熱性を有するものが好ましい。このようなクッション材41の材質としては、ニトリルゴム(NBR)やシリコンゴム(Si)、クロロプレンゴム(CR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、フッ素ゴム、天然ゴム(NR)、ウレタン、ポリエチレンフォームなどが好ましく、特にアニール処理する際の耐熱性を考慮するとNBR、Si、CR、SBR、EPDM、フッ素ゴムが好ましい。
積載装置34は、樹脂シートSとクッション材41とを交互に且つ同じ位置に重ねて積載する装置であればよく、その構成は特に限定するものではなく、様々な態様が可能である。たとえば、ベルトコンベア39などの搬送手段で搬送されてきた樹脂シートSやクッション材41をガイド板(不図示)などによって同じ位置に落とし込む構成のものや、アームの先端に設けた吸着手段で樹脂シートSやクッション材41を吸着して同じ位置で離す構成のもの等を採用することができる。なお、本実施の形態では、切断後の樹脂シートSにクッション材41を積載するようにしたが、これに限定するものではなく、切断前の帯状の樹脂シートSに帯状のクッション材41を積載し、切断機32によって樹脂シートSとクッション材41とを同時に切断するようにしてもよい。
上記の如く積載装置34で樹脂シートSとクッション材41とを交互に積載することによって、図12(a)に示すような積載物Cが形成される。この積載物Cは、複数の樹脂シートSの間にクッション材41が隙間なく充填されている。
積載物Cは、そのまま搬送されてアニール処理が施される。アニール処理は製造ラインと別に(すなわちオフラインで)行ってもよいし、製造ライン中で(すなわちオンラインで)行ってもよい。
図8はアニール処理装置の一例を模式的に示す構成図である。アニール処理装置60はトンネル状に形成されており、積載物Cは不図示の搬送手段によってトンネル状のアニール処理装置60の内部を図8の矢印方向に搬送される。アニール処理装置60の内部は、シャッター(不図示)によって複数のゾーン61〜67に分けられている。具体的には、積載物Cの移動方向に、第1緩衝ゾーン61、第1熱処理ゾーン62、第2緩衝ゾーン63、第2熱処理ゾーン64、第3緩衝ゾーン65、第3熱処理ゾーン66、第4緩衝ゾーン67が設けられている。
これらのゾーン61〜67の内部には、赤外線ヒーターなどの非接触式加熱手段が設けられ、各ゾーン61〜67の内部を個別に所定の温度に制御できるようになっている。
図9は、各ゾーン61〜67におけるゾーン設定温度を示している。同図において、横軸に記載した数字61〜67はゾーン61〜67に対応している。図9に示すように、本実施の形態では、アニール処理を行う第2熱処理ゾーン64が最も高い温度(たとえば90℃)に設定され、他のゾーン61〜63、65〜67は第2熱処理ゾーン64から離れるほど温度が低くなり室温に近づくように設定される。たとえば、第2熱処理ゾーン64が90℃に設定される一方で、第1緩衝ゾーン61が30℃、第1熱処理ゾーン62が50℃、第2緩衝ゾーン63が70℃、第3緩衝ゾーン65が75℃、第3熱処理ゾーン66が60℃、第4緩衝ゾーン67が40℃に設定される。これにより、積載物Cがゾーン61〜67に順に移動する際、急激に加熱または冷却されることを防止できる。
上記の如く構成されたアニール処理装置60では、複数の積載物Cが所定の間隔をあけて搬送されるとともに、各ゾーン61〜67での速度が図10に示すように制御される。図10において、横軸に記載した数字61〜67はゾーン61〜67に対応している。同図に示すように、第1〜第3の熱処理ゾーン62、64、66では、積載物Cの移動を停止する。その際、第1〜第3の熱処理ゾーン62、64、66の全てに積載物Cが配置されるようにする。そして、第2熱処理ゾーン64でのアニール処理に必要な時間(たとえば120分)だけ停止した後に積載物Cの移動を再開する。その際、積載物Cの移動速度は、次の熱処理ゾーン62、64、66に到達した時点で積載物Cの温度がその熱処理ゾーン62、64、66の設定温度になるように制御する。このような制御を繰り返し行うことによって、アニール処理が間欠運転(半連続運転)される。したがって、連続運転でアニール処理を行うよりも装置がコンパクトになり、且つ、バッチ式でアニール処理を行うよりも数倍の処理量が得られる。
上記のアニール処理装置60では、積載物Cの温度が図11に示すように変化する。同図において、横軸に記載した数字61〜67はゾーン61〜67に対応している。同図に示すように、第1〜第3の熱処理ゾーン62、64、66では積載物Cの温度が設定温度で安定しており、第1〜第4の緩衝ゾーン61、63、65、67では温度が徐々に変化している。したがって、熱処理ゾーン62、64、66間をたんに移動させた場合(すなわち第1〜第4の緩衝ゾーン61、63、65、67がない場合)に比べて、積載物Cの急激な温度変化を防止でき、積載物Cの内部歪みを確実に取り除くことができる。
上記の如くアニール処理が施された樹脂シートSは、積載された状態で保管され、必要に応じて他の処理が行われた後、出荷される。
次に上記の如く構成された樹脂シートSの製造装置の作用について図12(a)、図12(b)に基づいて説明する。図12(a)はクッション材41を入れて樹脂シートSを積載した本実施の形態の積載物Cを示しており、図12(b)は(クッション材41を入れずに)樹脂シートSのみを積載した比較例の積載物を示している。
図12(b)に示すように樹脂シートSのみを積載した場合には、樹脂シートSの膜厚の偏りによって、樹脂シートS同士の間に空隙Gが形成される。このため、樹脂シートSの積載物を長期間保管した場合、樹脂シートSが後収縮や自重の影響により空隙で変形しやすい。特に、この積載物をアニール処理すると、処理中に樹脂シートSが変形するおそれがある。
これに対して本実施の形態では、図12(a)に示すように、樹脂シートS同士の間にクッション材41を充填し、空隙を無くしている。このため、樹脂シートSの自重によって樹脂シートSが矯正される方向に作用し、樹脂シートSの変形を防止することができる。
また、本実施の形態では、複数の樹脂シートSを同時にアニール処理することができるので、生産性を向上させることができる。さらに、本実施の形態では、アニール処理の際にクッション材41に熱が保持されるので、樹脂シートSをアニール処理装置60の炉から早期に取り出しても、樹脂シートSをゆっくりと冷却することができる。
なお、本実施の形態では、パレット40の上に積載物Cを積載したが、これに限定するものではなく、たとえば図13に示すように、積載物Cを一対の挟持板68、68で挟むようにしてもよい。同図に示す挟持板68は、樹脂シートSよりも大きい板状に形成されており、積載物Cを挟んだ状態でベルト(不図示)を巻き付けたり、ボルトで連結したりすることによって挟持板68同士が固定される。これにより、樹脂シートSとクッション材41とが一対の挟持板68、68によって厚み方向に挟圧され、その挟圧力が樹脂シートSの矯正力として作用し、樹脂シートSの変形をより確実に防止できる。また、この場合には、積載物Cを縦に配した状態で各種の処理、保管、搬送を行うことができる。積載物Cを縦に配置した場合には、全ての樹脂シートSに同じ力が加わるので、樹脂シートSの変形をより確実に防止できる。
なお、上述した実施形態は、図1の断面形状の樹脂シートSに適用する例であるが、樹脂シートSの断面形状が異なる場合にも対応することができる。たとえば、図2に示した断面形状の樹脂シートSの場合には、図14に示すクッション材70を用いるとよい。このクッション材70は、幅方向の両端部と中央部とに最膜厚部71を備え、その最膜厚部71の間に二つの最膜薄部72を備えている。このようなクッション材70を樹脂シートS同士の間に配置することによって、本発明の効果を得ることができる。
また、上述した実施形態は、クッション材41、70を一種類の材料で形成したが、複数の材料でクッション材41、70を形成してもよい。たとえば、図15に示すクッション材73は、硬質の板材74の下面に弾性材75が貼り合わされて構成されている。このようなクッション材73を用いた場合にも本発明の効果を得ることができる。
(実施例1)
溶融樹脂PMMAを押出成形することにより、図1の断面形状のシート(幅594mm、最薄部2mm、最厚部3.8mm)を成形し、1000mmに切断した。この偏肉樹脂シートをパレットに積載する際に、空隙が埋まる形状に加工したSBRゴムを挿入しながら、シートを100枚積載した。室温で500時間保管していてシートの変形を調べたが、シートに変形は見られなかった。また、シートが積載されたパレットを恒温恒湿槽の中に入れ、90℃20%RHで3時間アニール処理をし、シートの形状を調べた。その結果、シートの最大反り量が0.5mmと非常に小さい、所望の形状のシートを得ることができた。なお、シートの反りは、図16のように定盤76の上にシートSをのせた時の定盤76との距離xを測定して反り量とした。
溶融樹脂PMMAを押出成形することにより、図1の断面形状のシート(幅594mm、最薄部2mm、最厚部3.8mm)を成形し、1000mmに切断した。この偏肉樹脂シートをパレットに積載する際に、空隙が埋まる形状に加工したSBRゴムを挿入しながら、シートを100枚積載した。室温で500時間保管していてシートの変形を調べたが、シートに変形は見られなかった。また、シートが積載されたパレットを恒温恒湿槽の中に入れ、90℃20%RHで3時間アニール処理をし、シートの形状を調べた。その結果、シートの最大反り量が0.5mmと非常に小さい、所望の形状のシートを得ることができた。なお、シートの反りは、図16のように定盤76の上にシートSをのせた時の定盤76との距離xを測定して反り量とした。
(比較例1)
実施例1で得られた偏肉樹脂シートを、薄肉部に生じる空隙を埋めずに100枚積載して恒温恒湿槽で90℃20%RHで3時間アニール処理をし、シートの形状を調べた。その結果、薄肉部が波打つような変形をしてしまい、最大で1.5mmの反りが見られた。
実施例1で得られた偏肉樹脂シートを、薄肉部に生じる空隙を埋めずに100枚積載して恒温恒湿槽で90℃20%RHで3時間アニール処理をし、シートの形状を調べた。その結果、薄肉部が波打つような変形をしてしまい、最大で1.5mmの反りが見られた。
10…偏肉樹脂シート製造装置、11…原料調製装置、12…押出機、13…原料供給管、14…溶融樹脂供給管、16…ダイ、17…成形冷却ローラー部、18…成形ニップローラー、20…型ローラー、20A…テーパー凹部、20B…膜薄形成部、20C…膜厚形成部、22…剥離ローラー、23…加熱装置、24…熱処理ゾーン、25…搬送ニップローラー、25A…第一搬送ニップローラー、25B…第二搬送ニップローラー、26…冷却ゾーン、27A…肉厚対応部、27B…肉薄対応部、28…面状検査機、30…ラミネート機、32…切断機、34…積載装置、36…引取ローラー、37…転送ローラー、38…繰り出しローラー、39…ベルトコンベア、40…パレット、41…クッション材、42…リップ口、44…バンク、46…挟圧部、52…最膜厚部、54…最膜薄部、60…アニール処理装置、61…第1緩衝ゾーン、62…第1熱処理ゾーン、63…第2緩衝ゾーン、64…第2熱処理ゾーン、65…第3緩衝ゾーン、66…第3熱処理ゾーン、67…第4緩衝ゾーン、68…挟持板、70…クッション材、73…クッション材、C…積載物、S…樹脂シート、F…保護フィルム
Claims (5)
- 厚みに偏りがある偏肉樹脂シートを押出成形法によって製膜する製膜工程と、前記製膜された複数の偏肉樹脂シートを厚み方向に重ねて積載する積載工程と、該積載された複数の偏肉樹脂シートをアニール処理するアニール処理工程と、を備えた偏肉樹脂シートの製造方法において、
前記積載工程は、前記偏肉樹脂シート同士の間に、該偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りの厚みを有するクッション材を入れて積載することを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。 - 前記積載工程は、積載された前記複数の偏肉樹脂シートとクッション材とを前記偏肉樹脂シートの厚み方向に両側から一対の挟持板で挟むことを特徴とする請求項1に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
- 前記アニール処理は、間欠運転することを特徴とする請求項1または2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
- 厚みに偏りがある複数の偏肉樹脂シートを厚み方向に重ねて積載する偏肉樹脂シートの積載方法において、
前記偏肉樹脂シート同士の間に、該偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りの厚みを有するクッション材を入れて積載することを特徴とする偏肉樹脂シートの積載方法。 - 厚みに偏りを有する偏肉樹脂シートと、該偏肉樹脂シートの厚みの偏りと逆の偏りを有するクッション材とを交互に重ねたことを特徴とする積載物。
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JP2015142096A (ja) * | 2014-01-30 | 2015-08-03 | 大同特殊鋼株式会社 | 太陽光発電モジュール積層体 |
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