JP2009220440A - 偏肉樹脂シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】膜厚に偏りを有する偏肉樹脂シートの搬送時における弛みを防ぐとともにローラーからの剥離を防いで、偏肉樹脂シートを適切に搬送する手法を提供することを目的とする。
【解決手段】ダイ16から樹脂をシート状に吐出し、ダイ16から吐出されたシート状の樹脂を型ローラー20および成形ニップローラー18により挟圧することによって幅方向に関し膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートSを成形し、型ローラー20から当該偏肉樹脂シートSを剥離ローラー22によって剥離する。型ローラー20のうち最大径を有する部分の周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vが、1.01≦V/Vm1≦1.03を満たす。
【選択図】図4

Description

本発明は膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートの製造方法に係り、例えば液晶表示装置のバックライトの導光板や、装飾・表示・照明用ディスプレイの導光板などの光学シートとして使用される偏肉樹脂シートの製造方法に関する。
液晶表示装置のバックライトや装飾・表示・照明用のディスプレイ装置には、光源からの光を導いて面発光する導光板が使用されており、例えば液晶表示装置には、液晶パネルの裏面側から導光板を介して光を照射するバックライトが設けられている。
このような導光板のうち大画面液晶テレビなどの大型装置に用いられる導光板は、現行の設備や技術を背景に、押出成形法により製造されることが一般的である。この押出成形法では、通常、均一な膜厚を有する溶融状態の樹脂シートがダイ(Tダイ等)から押し出されて冷却ローラー(ポリシングローラー)により冷却される。当該樹脂シートは、その後、引取ローラーによる引っ張り搬送中に空冷され、所定形状に切断された後に、積み重ねられて保管される。
この押出成形法によって作られる樹脂シートのうち、均一な膜厚を有する平らな樹脂シートでは、二次加工の際に問題となりうる反り等の寸法変化を抑制するために、押出成形時にもたらされる内部歪み(内部応力)を低減することが好ましく、そのような内部歪みを低減する方法がいくつか提案されている。
例えば特許文献1および特許文献2には、樹脂が最初に密着する冷却ローラーと最後に密着する冷却ローラーとの間で負の周速差を持たせることにより、内部歪みを抑制する方法が開示されている。
また、特許文献3には、樹脂が最後に密着する冷却ローラーと最後から2番目に密着する冷却ローラーとの間、および引取ローラーと第2ローラーとの間で、負の周速差を持たせる方法が開示されている。
その一方で、例えば特許文献4において、最膜薄部が30mmのピッチを有する偏肉樹脂シートを押出成形により製造する方法が開示されている。
特開平6−262682号公報 特公平7−29354号公報 特開2002−120273号公報 特開2007−216505号公報
しかしながら、上記の特許文献1〜3で提案されている方法は、いずれも均一な膜厚を有する樹脂シートを対象としており、均一な膜厚を持たない偏肉樹脂シートに対しては、必ずしも好適な技術とは言えない。また特許文献4で提案されている方法は、樹脂シートの形状周期が30mm程度の比較的短い場合を対象とするものであって、形状周期が比較的長い偏肉樹脂シートを必ずしも対象とするものではない。すなわち、特許文献4の方法は、バンクが比較的安定しやすく、ダイ及びロールの配置の自由度が大きい場合を対象とするものであって、バンクが乱れやすく、ダイ及びロールの配置の自由度が小さい場合を必ずしも対象とするものではない。
特に幅方向の厚み分布(膜厚差)が大きい偏肉樹脂シートを押出成形法で成形する場合には、冷却ローラーに対して型となる偏肉形状が付与されているため、円柱状のローラーとは異なり、シート幅方向に関して周速度が一様ではない。そのため、偏肉樹脂シートSを冷却ローラーから剥離して密着した状態で後段に送る剥離ローラーが十分な周速度を有していない場合には、冷却ローラーと剥離ローラーとの間で樹脂シートが弛んでローラーから剥がれ落ちてしまうことがある。
このような搬送不良は、大きな膜厚分布を有する偏肉樹脂シートの製造時に特に生じやすく、十分な品質や生産性を確保する観点から、冷却ローラーと剥離ローラーとの間における偏肉樹脂シートの弛みをより確実に防ぐ手法が求められている。
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、押出成形される偏肉樹脂シートの搬送時の弛みを防ぐとともにローラーからの剥離を防いで、偏肉樹脂シートを適切に搬送することができる偏肉樹脂シートの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の一態様は、ダイから樹脂をシート状に吐出し、前記ダイから吐出されたシート状の樹脂を型ローラーおよび成形ニップローラーにより挟圧することによって幅方向に関し膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形し、前記型ローラーから前記偏肉樹脂シートを剥離ローラーにより剥離する偏肉樹脂シートの製造方法であって、前記型ローラーのうち最大径を有する部分の周速度Vm1および前記剥離ローラーの平均周速度Vが、1.01≦V/Vm1≦1.03を満たすことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法に関する。
本態様では、「1.01≦V/Vm1≦1.03」を満たす範囲で、剥離ローラーの平均周速度Vが型ローラーのうち最大径を有する部分の周速度Vm1よりも速く設定されている。これにより、型ローラーから剥離ローラーへの偏肉樹脂シートの受渡しが適切に行われ、偏肉樹脂シートの品質を良好に維持した状態で、偏肉樹脂シートの弛み及びローラーからの剥離を防ぐことができる。
また本発明の別の態様は、ダイから樹脂をシート状に吐出し、前記ダイから吐出されたシート状の樹脂を型ローラーおよび成形ニップローラーにより挟圧することによって幅方向に関し膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形し、前記型ローラーから前記偏肉樹脂シートを剥離ローラーにより剥離する偏肉樹脂シートの製造方法であって、前記型ローラーの前記偏肉樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および前記剥離ローラーの平均周速度Vが、1.01≦V/Vm2≦1.03を満たすことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法に関する。
本態様においても、型ローラーおよび剥離ローラーが適切な速度で軸回転するため、型ローラーから剥離ローラーへの偏肉樹脂シートの受渡しが適切に行われ、偏肉樹脂シートの品質を良好に維持した状態で、偏肉樹脂シートの弛み及びローラーからの剥離を防ぐことができる。
前記偏肉樹脂シートのうち、前記幅方向に関して、膜厚が最も大きい最膜厚部と膜厚が最も小さい最膜薄部との膜厚差は、0.5mm以上であって5mm以下であってもよい。
このような膜厚差を有する偏肉樹脂シートの製造時に、型ローラーと剥離ローラーとの間で弛みやローラーからの剥離が生じやすいが、本発明の上記の各態様によれば、偏肉樹脂シートの弛みや剥離を効果的に防ぐことができる。
前記偏肉樹脂シートは、前記幅方向に関して、前記最膜薄部を複数含み、前記複数の最膜薄部は、200mm以上のピッチを有していてもよい。
このような比較的大きなピッチを有する偏肉樹脂シートの製造時に、型ローラーと剥離ローラーとの間で弛みやローラーからの剥離が生じやすいが、本発明の上記の各態様によれば、偏肉樹脂シートの弛みや剥離を効果的に防ぐことができる。
本発明によれば、型ローラーおよび剥離ローラーが適切な速度で回転するので、型ローラーと剥離ローラーとの間における偏肉樹脂シートの弛みやローラーからの剥離を効果的に防ぐことができ、良好な品質を維持した状態で偏肉樹脂シートを適切に搬送することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1および図2は、本実施形態において製造される蒲鉾形状の偏肉樹脂シートSの幅方向に関する断面を例示する図である。本実施形態では、シート幅方向に関して膜厚に偏りのある偏肉樹脂シートを成形対象としており、例えば図1に示すように、最も膜厚の大きな最膜厚部52がシート幅方向の中央部に設けられ、最も膜厚の薄い最膜薄部54がシート幅方向の両端部に設けられる偏肉樹脂シートSを製造することができる。また、図2に示すように、図1に示す偏肉樹脂シートをシート幅方向に複数(2個)並べたような断面形状を有する偏肉樹脂シートSを製造することも可能である。図2に示す偏肉樹脂シートSは、最膜厚部52および最膜薄部54が周期的に配される断面構造を有し、シート幅方向に関して最膜薄部54および最膜厚部52が交互に出現する構造となっている。
このような断面形状を有する偏肉樹脂シートを製造する場合には、偏肉樹脂シートSのシート幅が大きくなるほど、バンク(図4の符号44参照)が乱れやすく、樹脂シートSを良好な面状に成形しながら反りを防ぐということが難しくなる。また、最膜薄部54のピッチP1および最膜厚部52のピッチP2が大きくなるほど、バンクが乱れやすく、樹脂シートSを良好な面状に成形しながら反りを防ぐということが難しくなる。また、樹脂シートSのシート幅方向に関する膜厚差、すなわち最膜厚部52と最膜薄部54との膜厚差が大きくなるほど、バンクが乱れやすく、樹脂シートSを良好な面状に成形しながら反りを防ぐということが難しくなる。しかしながら、以下に述べる本実施形態によれば、乾燥状態において、シート幅が200mm以上750mm以下(とりわけ450mm以上750mm以下)、最膜薄部54のピッチP1および最膜厚部52のピッチP2が200mm以上、そして最膜厚部52の膜厚Dmaxと最膜薄部54の膜厚Dminとの差(|Dmax−Dmin|)が0.5mm以上5mm以下(より好ましくは0.5mm以上3mm以下)である偏肉樹脂シートSを良好な状態で成形することが可能である。
なお、膜薄部(最膜薄部)54のピッチP1および膜厚部(膜厚部)52のピッチP2は、1000mm以下であってもよく、このようなピッチを有する樹脂シートSであればディスプレイ等の幅広い用途に使用することが可能である。
図3は、偏肉樹脂シートを製造する偏肉樹脂シート製造装置の一例を示す図である。図3に示す偏肉樹脂シート製造装置10では、原料調製装置11、押出機12、ダイ16、成形冷却ローラー部17、熱処理ゾーン24、冷却ゾーン26、面状検査機28、ラミネート機30、切断機32、及びスタッカー34が、上流側から下流側へ順次設けられている。
原料調製装置11は、偏肉樹脂シート製造装置10によって製造される偏肉樹脂シートSの原料の計量および混合を行って原料を調製し、当該原料を原料供給管13を介して押出機12に送る。例えば、この原料調製装置11では、原料タンク及び添加物タンクから混合器に送られる原料樹脂及び添加物が自動計量機によって自動計量され、所定比率の原料樹脂および添加物が混合器で混合される。原料樹脂に添加物として拡散粒子を添加する場合には、原料樹脂に拡散粒子を所定濃度よりも高濃度に添加したマスターペレットを造粒機で製造しておき、拡散粒子が添加されていないベースペレットと混合器で所定比率混合するマスターバッチ方式を好適に採用できる。なお、拡散粒子以外の添加物を添加する場合にも、同様にして混合を行うことができる。
上記の原料樹脂としては熱可塑性樹脂を使用可能であり、例えばポリメチルメタクリレート樹脂(PMMA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリスチレン樹脂(PS)、MS樹脂、AS樹脂、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)、熱可塑性エラストマー、又はこれらの共重合体、シクロオレフィンポリマーなどを原料樹脂として使用することができる。
押出機12は、原料調製装置11から送られてくる原料を混練りしながら溶融し、溶融樹脂を作る。この押出機12は、単軸式押出機及び多軸式押出機の何れでもよく、押出機12の内部を真空にするベント機能を有するものが好ましい。押出機12により作られた溶融樹脂は、スクリュウーポンプやギアポンプ等の定量ポンプにより溶融樹脂供給管14を介してダイ16に送られる。
ダイ16では、押出機12から送られてくる溶融樹脂が成形冷却ローラー部17に向かってシート状に押し出される。本実施形態では、シート幅方向に関して膜厚が均一ではない偏肉樹脂シートが成形されるので、ダイ16から押し出されて吐出される溶融樹脂量は、シート幅方向に関して所定の分布を有する。ダイ16から吐出される溶融樹脂量に分布を持たせる手段として、例えばチョークバーを使用する方法や他の公知の方法を用いることができる。
成形冷却ローラー部17は、成形ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22を含み、ダイ16から供給される溶融樹脂に対して蒲鉾形の偏肉形状を付与するとともに、当該溶融樹脂の冷却を行う。
図4は、ダイ16および成形冷却ローラー部17を側方から見た図であり、図5(a)は、成形冷却ローラー部17を下方から見た図である。また、成形冷却ローラー部17の変形例を図5(b)に示す。
ニップローラー18および剥離ローラー22は太さが一様な円柱形状を有する一方で、型ローラー20は中央部が細く両端部が太い所謂コンケーブ形状を有する。この型ローラー20のコンケーブ形状は、樹脂シートSの蒲鉾形の偏肉形状の反転形状に対応しており、型ローラー20およびニップローラー18により高温の樹脂シートSが挟圧されて蒲鉾状に成形される。
なお型ローラー20は、図5(b)に示すように、両端部において先細形状のテーパー凹部20Aを有する形状にすることもできる。この場合、樹脂シートSをニップローラー18及び型ローラー20で挟圧したときに、当該樹脂シートSのうちテーパー凹部20Aに対応する部分を容易にカットすることができる。これは、樹脂シートSの両端部(耳部)が所望の膜厚よりも厚くなる傾向があり、その膜厚部がその後の工程において樹脂シートSの反りを助長する可能性を考慮したものである。また、ニップローラー18のうち型ローラー20の膜薄形成部20Bと接触する部分18Aは磨耗し易いので、ニップローラー18の当該当接部18Aに対して、タングステンカーバイト等の超硬材料により超硬処理を施したり焼き入れすることが好ましい。また、型ローラー20及び剥離ローラー22についても同様に、膜薄形成部20B等の当接部に対して超硬処理を施したり焼き入れしたりすることが好ましい。
このような構成を有する図5(a)および図5(b)に示す型ローラー20の中央部には、樹脂シートSの膜厚部52に対応する膜厚形成部20Cが設けられている。
そしてダイ16は、図4に示すように、成形ニップローラー18および型ローラー20の上方において、やや型ローラー20寄りに配置される。また、成形ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22は、図示しない駆動装置により所定の周速度で図4に示す矢印方向へ回転駆動される。なお、成形ニップローラー18および剥離ローラー22に対して駆動手段を設けない構成も可能であるが、樹脂シートSの面状(特に裏面)を良好に成形する観点からは、駆動手段によって成形ニップローラー18および剥離ローラー22も回転駆動する構成が好ましい。
型ローラー20および剥離ローラー22の具体的な周速度については、後述するが、本実施形態では型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の(平均)周速度Vは、以下の関係式(1)を満たし、より好ましくは関係式(2)を満たす。
1.005≦V/Vm1≦1.030 (1)
1.01≦V/Vm1≦1.03 (2)
また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の(平均)周速度Vは、以下の関係式(3)を満たし、より好ましくは関係式(4)を満たす。
1.005≦V/Vm2≦1.030 (3)
1.01≦V/Vm2≦1.03 (4)
このような構成において、ダイ16のリップ口42から吐出される溶融樹脂は、成形ニップローラー18と型ローラー20との間でバンク44を形成するとともに、挟圧部46において成形ニップローラー18および型ローラー20により挟圧される。成形ニップローラー18および型ローラー20により偏肉形状が付与された溶融樹脂シートSは、型ローラー20に巻き掛けられた状態で送り出され、剥離ローラー22によって型ローラー20から剥がされる。
なお、本実施形態では、挟圧部46から送られてくる樹脂シートSを加熱する加熱装置23が樹脂シートSの搬送路に沿って複数設けられており、型ローラー20および剥離ローラー22の各々に対向する位置に加熱装置23(23A、23B)が設置されている。
剥離ローラー22により剥離された樹脂シートSは、図3に示すように、熱処理ゾーン24に送られる。熱処理ゾーン24は、偏肉構造を有する樹脂シートSに対して熱処理を施すゾーンであり、複数の加熱装置23が樹脂シートSの搬送路に沿って設けられている。型ローラー20から熱処理ゾーン24に亘って設置されるこれらの加熱装置23は非接触式加熱手段であり、加熱効率等の観点から、例えば遠赤外線ヒーターを加熱装置23として好適に用いることができる。加熱装置23の加熱条件は、搬送される樹脂シートSの表面温度がほぼ均一に保たれるようにコントロールされる。具体的には、樹脂シートSの表面温度がガラス転移温度T以下になった後に、樹脂シートSのうち加熱される側の表面の温度差が、幅方向に関して40℃以内となるように、好ましくは30℃以内となるように、より好ましくは20℃以内となるように、加熱装置23の加熱条件がコントロールされる。このとき、放射温度計等の温度センサ(図示せず)により樹脂シートSの温度が測定され、この測定温度に基づいて加熱装置23の加熱条件を適宜変更することで、樹脂シートSの表面温度が調整される。
なお、加熱装置23の加熱温度、加熱時間、およびその他の加熱条件は、樹脂シートSの搬送速度や加熱装置23の設置位置に基づいて適宜調整される。例えば、型ローラー20の近傍、剥離ローラー22の近傍、および剥離ローラー22から熱処理ゾーン24にかけて、樹脂シートSのうち厚みtが「t≦Dmin+(Dmax−Dmin)/2」(ただし、Dminは樹脂シートSのうち膜厚が最も小さい最膜薄部54の膜厚を意味し、Dmaxは樹脂シートSのうち膜厚が最も大きい最膜厚部52の膜厚を意味する)を満たす部分、とりわけ「t≦Dmin+(Dmax−Dmin)/3」を満たす部分を加熱することが好ましい。これは、冷却されやすい膜薄部分を重点的に加熱することで、樹脂シートS全体の温度差を抑えるためである。そのため、図1の断面形状を有する樹脂シートSの場合には両端の最膜薄部54を加熱し、図2の断面形状を有する樹脂シートSの場合には両端の最膜薄部54だけではなく中央の最膜薄部54も加熱することが好ましい。なお、上記式で表される範囲以外の膜厚tを有する部分については、ライン速度等に応じて、加熱の有無や加熱の程度を調整することが好ましい。特に樹脂シートSの表面温度を昇温し過ぎると搬送中に反り等の不具合が発生してしまうことがあるので、加熱装置23の加熱温度や加熱時間を含む加熱条件は、ライン速度や加熱装置23の設置位置に基づいて最適化されることが好ましい。
熱処理ゾーン24において熱処理を受けた樹脂シートSは、冷却ゾーン26に送られる。冷却ゾーン26は、熱処理ゾーン24から送られてくる樹脂シートSに対して徐冷処理を施すゾーンであり、樹脂シートSの急激な温度変化を防止する。樹脂シートSは、急激に冷却されると表面近傍と内部の収縮量の違いや温度差等に起因する表面形状の悪化や反りが生じ易い。特に膜厚に分布がある偏肉樹脂シートの場合には、急冷等により比較的大きな内部応力が生じやすいので、反りが生じ易い。そのため、冷却ゾーン26における徐冷方法の一例として、前半部では樹脂シートSの膜厚部と膜薄部との間で大きな温度差が生じないように非接触式加熱手段で膜薄部を重点的に加熱して樹脂シートS全体を徐々に自然冷却し、後半部では樹脂シートSに冷風を当てて常温程度まで強制冷却を行う方法がある。
なお、上述の熱処理ゾーン24および冷却ゾーン26では、熱処理や冷却に伴う反り等の変形を防いで所望の偏肉形状が保持されるように、樹脂シートSが搬送される。
面状検査機28は、冷却ゾーン26から送られてくる樹脂シートSの表面形状や反りを評価する。面状検査機28による評価はセンサ類を用いた任意の手法で行われ、この評価結果は、前段に設けられたダイ16からの溶融樹脂シートSの吐出制御、熱処理ゾーン24および冷却ゾーン26における熱処理・冷却制御、および偏肉樹脂シートSの搬送制御(成形冷却ローラー部17の回転制御)にフィードバックされる。
ラミネート機30は、樹脂シートSの表裏面にポリエチレン等の保護フィルムを貼り付けるための一対の引取ローラー36を含んで構成される。
図6は、ラミネート機30において保護フィルムFを樹脂シートSに貼り付ける機構を示す図である。保護フィルムFは、繰り出しローラー38から順次繰り出された後に、複数の転送ローラー37を経て、引取ローラー36に送られる。この引取ローラー36は、樹脂シートSの搬送および保護フィルムFの貼付を同時に行う。すなわち引取ローラー36は、軸回転することによって、前段部の樹脂シートSを引っ張るとともに、後段部の樹脂シートSを押し出すようにして搬送する。また同時に、引取ローラー36は、軸回転することによって、転送ローラー37を介して送られてくる保護フィルムFを樹脂シートSの面に圧着する。引取ローラー36、転送ローラー37および繰り出しローラー38は、樹脂シートSの表面側および裏面側の両方に設けられており、保護フィルムFは樹脂シートSの表面および裏面の両方に圧着される。
ラミネート機30において保護フィルムFが貼り付けられた樹脂シートSは、図3に示すように、切断機32に送られる。切断機32は、樹脂シートSの幅方向両端部分(耳部)を切除するとともに樹脂シートSを所定長さに切り揃える。切断機32は任意の構成を有することができ、例えば、受け刃および押し当て刃からなるギロチンタイプの切断機32、レーザーカッターや電子ビームを使用した切断機32等を使用することができる。
切断機32において所定長さに切り揃えられた樹脂シートSは、スタッカー34に順次積み上げられる。スタッカー34に保管される偏肉樹脂シートSは、別の処理工程に送られたり、商品として出荷される。
上述のような押出成形法を採用する偏肉樹脂シート製造装置10において、本件発明者は、後述する実験の結果、型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vが、「1.01≦V/Vm1≦1.03」の関係を満たす場合に、より好ましくは「1.01866・・・≦V/Vm1≦1.03」の関係を満たす場合に、偏肉樹脂シートSの弛みを効果的に防いで、偏肉樹脂シートSを適切に搬送することができるという知見を得た。また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の平均周速度Vが、「1.01≦V/Vm2≦1.03」を満たす場合に、より好ましくは「1.01866・・・≦V/Vm1≦1.03」の関係を満たす場合に、偏肉樹脂シートSの弛みを防いで、偏肉樹脂シートSを適切に搬送することができるという知見を得た。
一般に、剥離ローラー22の周速度が遅すぎると、偏肉樹脂シートSは型ローラー20と剥離ローラー22との間で弛んでしまい、十分な量の偏肉樹脂シートSが後段に送られないだけではなく、ムラ等の面状不良が偏肉樹脂シートSに生じてしまう。一方、剥離ローラー22の周速度が速すぎると、偏肉樹脂シートSに過大な歪みが生じるとともに、剥離ローラー22上で偏肉樹脂シートSがスリップしてしまい、品質や生産性に支障をきたすこととなる。しかしながら、上記の関係を満たすように、剥離ローラー22の周速度を型ローラー20の周速度よりも速く設定することで、偏肉樹脂シートSの品質を保持しつつ、型ローラー20と剥離ローラー22との間における偏肉樹脂シートSの弛みを効果的に防止することができ、高品質な偏肉樹脂シートSを効率良く製造することが可能である。
なお、成形ニップローラー18、型ローラー20、及び剥離ローラー22の材質としては、各種鉄鋼部材、ステンレス鋼、銅、亜鉛、真鍮、これらの金属材料を芯金として表面にゴムライニングしたもの、これらの金属材料にHCrメッキ、Cuメッキ、Niメッキ等のメッキを施したもの、セラミックス、及び各種の複合材料が採用することができる。
また、型ローラー20の表面の逆蒲鉾形状は、公知の加工方法により形成することが可能であり、例えば、研削加工、超音波加工、放電加工、NC旋盤による切削加工、仕上げバフ加工、等を適宜組み合わせて形成することが可能である。型ローラー表面の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とすることが好ましく、0.2μm以下とすることがより好ましい。
また、成形ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22には、偏肉樹脂シートSの蒲鉾形状に対応するような冷却温度分布を樹脂シートSに付与するための温度調整手段(図示せず)が設けられてもよい。この温度調整手段として、例えば、温度調節された冷却液体を内部において一端側から他端側に流す構成を採用することができる。
また成形ニップローラー18には、図示しない加圧手段が設けられており、型ローラー20との間の樹脂シートSを所定の圧力で挟圧することができるようになっている。この加圧手段は、成形ニップローラー18と型ローラー20との接触点における法線方向に圧力を付与する構成のものであり、モータ駆動手段、エアシリンダ、油圧シリンダ等の公知の各種手段を採用することができる。また、成形ニップローラー18には、挟圧力の反力による撓みが生じにくくなるような構成を採用することもできる。このような構成としては、成形ニップローラー18の背面側(型ローラー20とは反対側)に図示しないバックアップローラーを設ける構成、中高状のクラウン形状を採用する構成、ローラーの軸方向中央部の剛性が大きくなるような強度分布を付けたローラーの構成、或いはこれらを組み合わせた構成等を採用することができる。
なお、偏肉樹脂シートSの断面形状は、当該偏肉樹脂シートSを挟圧成形する成形ニップローラー18および型ローラー20の形状に応じて適宜変更することができ、成形ニップローラー18および型ローラー20の形状を変えることで、様々な断面形状を有する偏肉樹脂シートを製造することができる。
また、成形ニップローラー18および剥離ローラー22の表面は鏡面状に加工されていることが好ましい。このような表面にすることにより、成形後の樹脂シートSの裏面を良好な状態に仕上げることができる。そして、成形ニップローラー18および剥離ローラー22の表面粗さは、中心線平均粗さRaで0.5μm以下とするのが好ましく、0.2μm以下とするのがより好ましい。
また、成形ニップローラー18、型ローラー20、及び剥離ローラー22には、ローラー表面の温度をローラー幅方向に関してモニターできるように、複数の表面温度測定手段(図示せず)を設けることが好ましい。このような表面温度測定手段としては、赤外線温度計、放射式温度計等の公知の各種測定手段が採用できる。
本発明は、上述の実施の形態およびその変形例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形が加えられることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうる。
本件発明者は、上述の実施形態に基づいて、以下の実施例および比較例に記載する条件で偏肉樹脂シートを製造し、偏肉樹脂シートの搬送状態を評価した(図7参照)。具体的には、型ローラー20と剥離ローラー22との間における偏肉樹脂シートSの弛みの有無と、偏肉樹脂シートSの型ローラー20からの剥離の有無を目視により確認するとともに、製造された偏肉樹脂シート製造装置10の状態を目視により確認した。
(実施例1)
図3に示す偏肉樹脂シート製造装置10において、PMMA(旭化成株式会社製80NH、ガラス転移温度110℃)を原料樹脂として使用し、温度255℃に設定したダイ(Tダイ)16より100kg/hrで溶融樹脂をシート状に押し出した。そして成形ニップローラー18、型ローラー20、剥離ローラー22、熱処理ゾーン24、冷却ゾーン26、およびラミネート機30を介して、図1に示す蒲鉾形状の断面を有する偏肉樹脂シートSを製造した。そして切断機32により樹脂シートSの両端を切断した。このようにして製造された偏肉樹脂シートSは、乾燥状態において、シート幅方向に関する断面の幅が594mm、最膜薄部54の膜厚Dminが2mm、最膜厚部52の膜厚Dmaxが3.8mmであった。
上記偏肉樹脂シートSの製造時には、成形ニップローラー18、型ローラー20、および剥離ローラー22が、表面温度がそれぞれ70℃、90℃、95℃であった。成形ニップローラー18および剥離ローラー22のローラー径はΦ350mmであり、型ローラー20の膜薄形成部20Bのローラー径はΦ350mmであり、膜厚形成部20Cのローラー径はΦ345.6mmであった。また、成形ニップローラー18、型ローラー20、剥離ローラー22の表面は硬質クロムメッキ処理されており、引取ローラー36の表面材質はEPTゴムであった。成形ニップローラー18と型ローラー20のクリアランスはローラー中央(膜厚形成部20C)の最大部で3.9mmであり、型ローラー20と剥離ローラー22のクリアランスはローラー中央(膜厚形成部20C)の最大部で4.0mmであり、引取ローラー36間のクリアランスはローラー中央(膜厚形成部20C)の最大部で3.9mmであった。ダイ16のリップ幅は660mmであり、リップ開度は4mmであった。幅方向の流量分布は、成形ニップローラー18と型ローラー20のクリアランス量に略比例するようにチョークバーで適宜調整した。
そして、成形ニップローラー18、剥離ローラー22、および引取ローラー36の周速度を、それぞれ0.755m/min、0.764m/min、0.775m/minに調整した。また、型ローラー20では、最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度が0.750m/minであり、樹脂シートと接触している部分の最大周速度が0.747m/minであった。したがって、型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vは、上記の関係式(1)及び関係式(2)を満たす。
1.01≦V/Vm1=1.018666・・・≦1.03
また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の平均周速度Vは上記の関係式(3)及び関係式(4)を満たす。
1.01≦V/Vm2=1.022757・・・≦1.03
そして、図4に示すように型ローラー20から50mm離れた位置に遠赤外線セラミックヒーターの加熱装置23Aを設置し、樹脂シートSのうち厚みtがt≦Dmin+(Dmax−Dmin)/2を満たす箇所を加熱した。型ローラー20に対向する位置に設けられるこの遠赤外線セラミックヒーターの表面温度は350℃であった。また同様に、剥離ローラー22から120mm離れた位置に遠赤外線セラミックヒーターの加熱装置23Bを設置するとともに、剥離ローラー22から熱処理ゾーン24において樹脂シートSから上面側に50mm離れた位置にも赤外線セラミックヒーターの加熱装置23を設置し、これらの赤外線セラミックヒーターは表面温度が250℃であり、樹脂シートSのうち厚みtがt≦Dmin+(Dmax−Dmin)/2を満たす箇所を約30秒間加熱した。
そして、型ローラー20から熱処理ゾーン24において遠赤外線セラミックヒーター(加熱装置)23により加熱される範囲に関して、樹脂シートSの表面温度を、放射温度計(NEC三栄株式会社製:TH9100MV)で測定した。上記の遠赤外線セラミックヒーター(加熱装置)23により、樹脂シートSの最大温度がガラス転移温度T以下に達した後における、樹脂シートSの表面温度(温度分布)のシート幅方向に関する最大差ΔTmaxは23℃であり、シート幅方向に関する樹脂シートSの表面温度差は23℃以内に保持された。
このような条件下で搬送状態を観察したところ、偏肉樹脂シートSは、型ローラー20と剥離ローラー22との間で弛むことなく、型ローラー20に対して適切にラップした状態を維持した。そして、偏肉樹脂シートSは、型ローラー20および剥離ローラー22から剥離することなく後段に送られ、良好な品質の偏肉樹脂シートSを製造することができた。このように、本例では、押出成形される偏肉樹脂シートSの搬送時の弛みを防ぐとともにローラーからの剥離を防いで、偏肉樹脂シートSを適切に搬送可能であることが確認された。
(実施例2)
実施例1とほぼ同じ条件下で偏肉樹脂シート製造装置10を用いて、図1に示す断面形状を有するPMMAの偏肉樹脂シートSを、押出成形法により製造した。本例の型ローラー20では、最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度が0.750m/minであり、樹脂シートと接触している部分の最大周速度が0.747m/minであった。また剥離ローラーの平均周速度が0.769m/minであった。したがって、型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vは、上記の関係式(1)および(2)を満たす。
1.02≦V/Vm1=1.025333・・・≦1.03
また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の平均周速度Vは上記の関係式(3)及び関係式(4)を満たす。
1.01≦V/Vm2=1.029451・・・≦1.03
このような条件下で搬送状態を観察したところ、偏肉樹脂シートSは、型ローラー20と剥離ローラー22との間で弛まずに、型ローラー20および剥離ローラー22から剥離することなく後段に送られ、良好な品質の偏肉樹脂シートSを製造することができた。
(実施例3)
実施例1とほぼ同じ条件下で偏肉樹脂シート製造装置10を用いて、図2に示す断面形状を有するPMMAの偏肉樹脂シートSを、押出成形法により製造した。この偏肉樹脂シートSは、乾燥状態において、シート幅方向に関する断面の幅が1200mm、最膜薄部54の膜厚Dminが2mm、最膜厚部52の膜厚Dmaxが3.8mmであった。なお、ダイ16からの溶融樹脂の吐出量を200kg/hrとして、その他の条件は実施例1と同じであった。
このような条件下で搬送状態を観察したところ、偏肉樹脂シートSは、型ローラー20と剥離ローラー22との間で弛まずに、型ローラー20および剥離ローラー22から剥離することなく後段に送られ、良好な品質の偏肉樹脂シートSを製造することができた。
このように、シート幅方向に関して最膜厚部52および最膜薄部54が周期的に配される断面形状の偏肉樹脂シートSであっても、上記の関係式(1)〜(4)を満たすように製造条件を調整することによって、良好な品質の偏肉樹脂シートSを製造することができることが分かった。
(比較例1)
実施例1とほぼ同じ条件下で偏肉樹脂シート製造装置10を用いて、図1に示す断面形状を有するPMMAの偏肉樹脂シートSを、押出成形法により製造した。本例では、剥離ローラー22および引取ローラー36の周速度がそれぞれ0.748m/min、0.775m/minだった。また、型ローラー20では、最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度が0.750m/minであり、樹脂シートと接触している部分の最大周速度が0.747m/minであった。したがって、型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vは、上記の関係式(1)および(2)を満たさない。
/Vm1=0.748/0.750=0.997333・・・<1.01
また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の平均周速度Vは以下の関係を有し、上記の関係式(3)及び関係式(4)を満たさない。
/Vm2=0.748/0.747=1.001338・・・<1.01
このような条件下で搬送状態を観察したところ、偏肉樹脂シートSは、型ローラー20と剥離ローラー22との間で弛んでしまい、型ローラー20と剥離ローラー22との間のニップ部の手前で、偏肉樹脂シートSが型ローラー20から剥離してしまった。したがって、本例では、偏肉樹脂シートSを適切に搬送することができなかった。
(比較例2)
実施例1とほぼ同じ条件下で偏肉樹脂シート製造装置10を用いて、図1に示す断面形状を有するPMMAの偏肉樹脂シートSを、押出成形法により製造した。本例では、剥離ローラー22および引取ローラー36の周速度がそれぞれ0.753m/min、0.775m/minだった。また、型ローラー20では、最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度が0.750m/minであり、樹脂シートと接触している部分の最大周速度が0.747m/minであった。したがって、型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vは、上記の関係式(1)および(2)を満たさない。
/Vm1=0.753/0.750=1.004<1.01
また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の平均周速度Vは以下の関係を有し、上記の関係式(3)及び関係式(4)を満たさない。
/Vm2=0.753/0.747=1.008032・・・<1.01
このような条件下で搬送状態を観察したところ、偏肉樹脂シートSは、型ローラー20と剥離ローラー22との間で弛んでしまい、型ローラー20と剥離ローラー22との間のニップ部の手前で、偏肉樹脂シートSが型ローラー20から剥離してしまった。したがって、本例では、偏肉樹脂シートSを適切に搬送することができなかった。
上記の実施例及び比較例の評価結果を図7に示す。図7からも明らかなように、型ローラー20のうち最大径を有する膜薄形成部20Bの周速度Vm1および剥離ローラー22の平均周速度Vの比V/Vm1が1.01以上、より好ましくは1.02以上であって、1.03以下の場合に、偏肉樹脂シートSの型ローラー20と剥離ローラー22との間における弛み及びローラーからの剥離を効果的に防ぐことができ、良好な品質の偏肉樹脂シートSを製造することが確認された。また、型ローラー20の樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および剥離ローラー22の平均周速度Vの比V/Vm2が1.005以上、より好ましくは1.01以上、さらに好ましくは1.02以上であって、1.03以下の場合に、偏肉樹脂シートSの型ローラー20と剥離ローラー22との間における弛み及びローラーからの剥離を効果的に防ぐことができ、良好な品質の偏肉樹脂シートSを製造可能であることが確認された。
なお、上記の各種寸法は、基本的には偏肉樹脂シートの乾燥時を基準としている。
偏肉樹脂シートの幅方向に関する断面の一例を示す図である。 偏肉樹脂シートの幅方向に関する断面の他の例を示す図である。 偏肉樹脂シート製造装置の一例を示す図である。 ダイおよび成形冷却ローラー部を側方から見た図である。 (a)は成形冷却ローラー部の一例を下方から見た図である。(b)は成形冷却ローラー部の他の例を下方から見た図である。 保護フィルムを樹脂シートに貼り付ける機構を示す図である。 実施例および比較例において得られた偏肉樹脂シートの搬送性能の評価を示す表である。
符号の説明
10…偏肉樹脂シート製造装置、11…原料調製装置、12…押出機、13…原料供給管、14…溶融樹脂供給管、16…ダイ、17…成形冷却ローラー部、18…成形ニップローラー、20…型ローラー、20A…テーパー凹部、20B…膜薄形成部、20C…膜厚形成部、22…剥離ローラー、23…加熱装置、24…熱処理ゾーン、26…冷却ゾーン、28…面状検査機、30…ラミネート機、32…切断機、34…スタッカー、36…引取ローラー、37…転送ローラー、38…繰り出しローラー、42…リップ口、44…バンク、46…挟圧部、52…最膜厚部、54…最膜薄部、S…樹脂シート、F…保護フィルム

Claims (4)

  1. ダイから樹脂をシート状に吐出し、前記ダイから吐出されたシート状の樹脂を型ローラーおよび成形ニップローラーにより挟圧することによって幅方向に関し膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形し、前記型ローラーから前記偏肉樹脂シートを剥離ローラーにより剥離する偏肉樹脂シートの製造方法であって、
    前記型ローラーのうち最大径を有する部分の周速度Vm1および前記剥離ローラーの平均周速度Vが、
    1.01≦V/Vm1≦1.03
    を満たすことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。
  2. ダイから樹脂をシート状に吐出し、前記ダイから吐出されたシート状の樹脂を型ローラーおよび成形ニップローラーにより挟圧することによって幅方向に関し膜厚に偏りがある偏肉樹脂シートを成形し、前記型ローラーから前記偏肉樹脂シートを剥離ローラーにより剥離する偏肉樹脂シートの製造方法であって、
    前記型ローラーの前記偏肉樹脂シートと接触している部分の最大周速度Vm2および前記剥離ローラーの平均周速度Vが、
    1.01≦V/Vm2≦1.03
    を満たすことを特徴とする偏肉樹脂シートの製造方法。
  3. 前記偏肉樹脂シートのうち、前記幅方向に関して、膜厚が最も大きい最膜厚部と膜厚が最も小さい最膜薄部との膜厚差は、0.5mm以上であって5mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
  4. 前記偏肉樹脂シートは、前記幅方向に関して、前記最膜薄部を複数含み、
    前記複数の最膜薄部は、200mm以上のピッチを有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏肉樹脂シートの製造方法。
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