<実施の形態1>
この発明における実施の形態1である発電機需給計画装置は、起動停止回数制約が設定されている場合(燃料消費量制約の設定はなし)の需給計画を決定する。なお、需給計画とは、計画対象期間内における複数の発電機についての発電機の出力内容及び起動停止状態を含む計画を意味する。また、実施の形態1の発電機需給計画装置は、起動停止回数制約違反解消後においても、複数の発電機の発電機出力総量は解消前から変化がないように需給計画を決定する。なお、起動停止回数制約が課されるのは火力発電ユニット(火力発電機)が一般的であるので火力発電ユニットを中心に説明する。
図1はこの発明の実施の形態1である発電機需給計画装置の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、実施の形態1は、データ格納部11及びデータ処理部10から構成される。データ処理部10はデータ設定部12、最経済計画策定部13、起動停止回数制約違反解消処理部14、結果処理部15、策定結果表示部16及び違反解消履歴表示部17から構成される。なお、図1において破線の矢印は実質的な処理の流れを示しているが、実際にはデータ格納部11を媒介として情報(データ)の授受がなされる。
データ設定部12は、需給計画策定に必要な種々のデータの入力を受け付け、設定データとしてデータ格納部11に格納する。
最経済計画策定部13は、データ格納部11より得た設定データに基づいて、計画対象となる複数の発電機に対し、最経済な計画スケジュール(需給計画)を立案し、この需給計画を規定した初期需給計画情報データを格納部11に格納する。
起動停止回数制約違反解消処理部14は、最経済計画策定部13の演算結果である初期需給計画情報に基づき起動停止回数制約が設定されている各発電ユニットに対して制約違反状況を確認し制約違反があれば違反を解消する起動停止回数制約違反解消処理を実行する。起動停止回数制約違反解消処理部14による解消処理後の最終的な需給計画が最終需給計画情報として、解消処理中の需給計画が中間需給計画情報として、それぞれデータ格納部11に格納される。
結果処理部15は、データ格納部11に格納された初期需給計画情報、中間需給計画情報、及び最終需給計画情報それぞれに基づき、時系列の発電ユニット出力値や燃料消費量、起動停止回数、運転コストなどの表示用出力結果(出力結果情報)を必要な形式で算出し、データ格納部11に保存する。
策定結果表示部16は、結果処理部15により算出された初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部11より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
違反解消履歴表示部17は、結果処理部15より算出された中間需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部11より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
データ格納部11は、データ設定部12によって設定された種々の設定データと、最経済計画策定部13により得た初期需給計画情報と、起動停止回数制約違反解消処理部14により得た中間需給計画情報及び最終需給計画情報と、結果処理部15により得た表示用出力結果とをそれぞれ格納する。
データ設定部12と、策定結果表示部16と、違反解消履歴表示部17はシステム操作者がデータ入力や結果表示による確認を行うものであり、マウス、キーボードやディスプレイ等の入出力装置により実現するデータ入出力部10aとなる。
一方、最経済計画策定部13と起動停止回数制約違反解消処理部14と結果処理部15とはコンピュータの記録媒体に記憶させて保存、または伝送媒体を介して読み込み保存することによりコンピュータの内部処理であるデータ演算部10bとして実現する。
データ格納部11はデータベース上に実現し、データ設定部12、最経済計画策定部13、起動停止回数制約違反解消処理部14、結果処理部15、策定結果表示部16及び違反解消履歴表示部17はデータ格納部11に対し、必要なデータの保存、あるいは読み出し処理を行う。
図2はこの発明の実施の形態1である発電機需給計画装置による発電機需給計画方法における起動停止回数制約違反解消処理の処理フローを示す説明図である。
データ格納部11は設備データD10、発電機データD11、発電機作業計画データD12、物理的制約条件データD13、電力需要データD14、電力取引契約データD15、及び計画条件データD16からなる発電機関連データを格納している。
設備データD10は、計画対象となる発電ユニットの総数、燃料消費量グループ(同一燃料を使用する火力発電ユニットの集合として定義される。一般的に同一燃料基地に燃料供給パイプで接続されたユニットの集合となる。)の総数、燃料消費量グループに属する発電ユニット等を規定したデータである。なお、実施の形態1では燃料消費量に関するデータは特に使用しない。
発電機データD11は発電機の出力上下限値、起動パターン、停止パターン、起動費、最小運転時間、最小停止時間、燃料種別、燃料費曲線係数、燃料消費量曲線係数等、本実施の形態が必要とする情報を規定したデータであり、発電機単位にデータ格納部11に格納されている。
発電機作業計画データD12は、各発電機の定期点検などの作業により運転を停止する期間や出力値を一定に制限する期間などを規定したデータである。
物理的制約条件データD13は発電機の作業計画以外の強制運転期間とその出力値、燃料消費量グループに対する燃料消費量や火力発電ユニットに対する起動停止回数の指定等の需給計画を立案するにあたって満足すべき条件を規定したデータである。
電力需要データD14は契約している需要家の各時刻における総需要予測データである。
電力取引契約データD15は、電力市場で売買された、もしくは相対契約により既に契約済みの電力取引契約に関するデータである。
計画条件データD16は、需給計画の開始日、終了日、燃料消費量制約違反解消時に参照する燃料消費量グループの処理優先順位の指定等、計画策定における基本条件に関するデータである。
以上これらのデータD10〜D16は、システム操作者が、データ設定部12を用いて必要なデータをデータ格納部11に登録する。これらの入力は、キーボードやディスプレイから成る装置を利用して行う。または別途用意されている、CSV形式などあらかじめ規定されたファイル形式にしたがった外部の電子ファイルに記録されたデータをシステムで読み込むことにより行うことができる。
図3は電力取引契約データD15として格納されるデータ例を示す説明図である。同図に示すように、電力取引契約データD15は概要データD15aと詳細時系列データD15bとから構成される。
同図(a) に示すように、概要データD15aは契約名、契約相手、契約種別(販売または調達の区分)、契約最大電力、契約最大電力に対する基本料金、各時刻の契約量に対する従量料金を1つの契約データとして図に示される構造を呈している。
さらに、各契約データに対して詳細時系列データD15bを独立して一意に対応づける。同図(b) に示すように、詳細時系列データD15bには指定年月日の指定時間帯ごとに電力使用量を示す契約量を図に示される構造を呈している。
本発明で取り扱う需給計画問題の目的関数を示す。問題の目的は、(計画)対象期間における燃料費と起動費の総和(運転コスト)を複数の制約条件を満足して最小化することである。たとえば、燃料費を発電機出力の二次関数として与えた場合には、目的関数は以下の式(1)で表される。
制約条件として、例えば、各発電機の出力上下限制約が以下の式(2)に、各時刻の需給バランス制約条件が以下の式(3)にそれぞれ表される。
これらの条件以外にも、各発電機には、最小運転時間や最小停止時間(それぞれ、停止している発電機を起動すると運転を継続しなければならない最小時間と、逆に運転している発電機を停止すると停止を継続しなければならない最小時間)の制約がある。さらに、各発電機には、起動パターンや停止パターン(それぞれ、起動時に発電機の出力を上昇させるための固定出力パターン、および、逆に停止時に発電機の出力を減少させるための固定出力パターン)等の制約がある。
また、以下に示す式(4)は、計画対象期間に亘って同じ燃料消費グループに属する発電機の総燃料消費量に対する上下限制約を表す燃料消費量制約条件を示し、以下に示す式(5)は計画対象期間に亘って各発電機が実行する総起動停止回数の上限制約を表す起動停止回数制約条件を表す。
燃料消費量は出力可能な、すなわち運転状態にある発電機の出力による燃料の消費分で定義されるため、燃料消費量は発電機の出力値および起動停止状態に依存する。燃料消費量制約条件と起動停止回数制約条件は両者ともすべての発電機に対して設定されているものとして扱う。燃料消費量制約の下限制約量を“0”、上限制約量を計画対象期間に消費可能な最大量以上の値を与えれば、実質的に燃料消費量制約のない条件を模擬できることから汎用的なモデルの一般性を失わない。また、同様に起動停止回数制約の上限制約回数を計画対象期間に対して十分に大きな回数を与えれば、実質的に起動停止回数制約のない条件を模擬できることから汎用的なモデルの一般性を失わない。
図2に戻って、ステップS10において、最経済計画策定部13による最経済計画の策定処理が行われる。最経済計画策定部13は、計画処理データとしてデータ格納部11に格納されている設備データD10より設備関連データを、発電機データD11より発電機データを、発電機作業計画データD12より作業計画データを読み込む。さらに、最経済計画策定部13は、物理的制約条件データD13より制約条件データを、電力需要データD14より時刻別需要データを、電力取引契約データD15より時刻別取引量データを、計画条件データD16より計画条件を読み込む。そして、最経済計画策定部13は、読み込んだ各データに基づいて計画対象期間に亘る最経済計画の策定処理を実施する。
最経済計画アルゴリズムとしては、たとえば、”Chao-an Li, Raymond B. Johnson, Alva J. Svoboda, “A NEW UNIT COMMITMENT METHOD”, IEEE Trans. On Power Systems, Vol.12, No.1, Feb 1997, pp 113-119に記載の、Unit Decommitment Methodを適用する。これは上記目的関数の値を最小となるように起動停止状態および各運転発電機の出力を決定する方法である。
その後、ステップS11において、最経済計画策定部13は、ステップS10の策定内容に基づき、計画結果の処理を行って初期需給計画情報を得る。すなわち、最経済計画策定部13は、ステップS10の策定内容に基づき、計画対象期間に亘る各時刻単位での全発電ユニットの出力値、起動停止状態(“0”(停止状態)または“1”(運転状態)で記録)、上記目的関数の値(燃料費と起動費の総和による運転コスト)、システムλ値(限界費用)等からなる初期需給計画情報を算出し、データ格納部11に登録(保存)する。
なお、現在の運転計画に対してのシステムλ値は、現在状態から出力を増大させようとしたときに発電機全体でいくらコストが増大するかということを表す極限値を示す。以下、この点について詳述する。
最適な出力配分状態では、需給バランス制約条件のみを満たす各発電機の増分燃料費 df(P)/dP (発電機出力を微小分増加させるのに必要な追加燃料費、f:燃料費を表す関数、P:発電機出力) がすべて等しくなるということを意味している。つまり、df(P_i)/dP_i = λ(i=1....N)が成立している。このときのλをシステムλ値(限界費用)という。
以下の処理は起動停止回数制約違反解消処理部14によって実行される。まず、ステップS12において、起動停止回数制約を持つ発電ユニットの中から送電単価が最大の発電ユニットが1台選択される。ここで送電単価は次の式(6)で与えられる。
次に、ステップS13において、起動停止回数制約違反解消処理部14は、データ格納部11から初期需給計画情報で示された起動停止状態を参照して、計画対象期間に亘って選択ユニットの起動停止回数をカウントし起動停止回数制約に違反しているかどうかを判定する。そして、起動停止回数制約違反がある場合(YES)は、ステップS14及びS16に移行し、違反がない場合(NO)はステップS21に移行する。
ステップS13でYESの際に実行される処理セットSG1(ステップS14〜S18)では、初期需給計画情報で規定される需給計画を起点とし、選択ユニットの違反を解消するために起動停止状態を変更可能な時間帯候補を1つずつ作成する。変更可能な時間帯候補は複数存在するため評価指標として解消コスト増分を算出する。最経済ケース結果である初期需給計画情報をベースとして違反解消を逐次実行するために、違反解消後の最終的な運転コストは増大する。したがって、解消処理を実行するとき、計画対象期間において起動停止状態の変更時間帯の決定には増大コストを最小限に抑制するためのコスト管理が必要である。
ステップS14において、起動停止回数制約違反解消処理部14は、選択ユニットの停止時間帯を検索し、各停止時間帯を運転状態に変更した場合の解消コスト増分Cuをそれぞれ算出する。選択ユニットiに対する解消コスト増分Cuは、選択ユニットの運転状態への変更により増加する運転コストと、システムλ値を利用することにより選択ユニットの運転状態の変更により他ユニットで出力を代替するための運転コストをそれぞれ求めた差分により定義した次の式(7)で与えられる。
ステップS15において、ステップS14の結果として得られたすべての起動停止状態の変更可能時間帯とその評価値である解消コスト増分Cuのセットの中から、解消コスト増分Cuが最小となる1つのセット(最小解消コスト増分MinCu)が違反解消処理候補として選択される。
同様に、ステップS16において、起動停止回数制約違反解消処理部14は、選択ユニットの運転時間帯を検索し、各運転時間帯を停止状態に変更した場合の解消コスト増分Cdをそれぞれ算出する。選択ユニットiに対する解消コスト増分Cdは、選択ユニットの停止状態への変更により減少する運転コストと、システムλ値を利用することにより選択ユニットの停止状態の変更により他ユニットで出力を代替するための運転コストをそれぞれ求め、差分により定義した次の式(8)で与えられる。
式(8)の右辺が、「システムλ値を利用することにより選択ユニットの停止状態の変更により他ユニットで出力を代替するための運転コスト」を示している。選択ユニットの停止状態への変更により、出力が不足するため選択ユニット以外のユニットの出力増により補填する必要がある。厳密にはそのときの他ユニット出力増のコストは選択ユニットも含めた全体の再計画を実行しないと分からない。計算量の爆発的増大を回避するため、ここではシステムλ値を使用することによって効率的に他ユニット出力増コストを評価している。
式(8)の時点では上述のように厳密な再計画を実行するわけではないので出力を代替する他ユニットは特定されているわけではない。システムλ値という値を利用してコスト増分を評価することにより、起動停止回数制約違反を低減するために選択ユニットの起動停止状態を変更するだけである。実際にどのユニットが出力を代替したのかはステップS20の発電機出力の決定処理を実行したときに判明する。
ステップS17において、ステップS16の結果として得られたすべての起動停止状態の変更可能時間帯とその評価値である解消コスト増分Cdのセットの中から、解消コスト増分Cdが最小となる1つのセット(最小解消コスト増分MinCd)が違反解消処理候補として選択される。
ステップS14〜S17からなる処理が終了すると、ステップS18において、起動停止回数制約違反解消処理部14は、それぞれ選択された2つの違反解消処理候補である最小解消コスト増分MinCuと最小解消コスト増分MinCdとを比較し、小さい方の違反解消処理候補のみを実際の解消処理として採用し、その起動停止状態の変更だけを実行する。すなわち、違反解消対象の発電機において起動停止状態の変更が1箇所行われる。
処理セットSG1の終了後、ステップS19において、起動停止回数制約違反解消処理部14は、選択中の火力発電ユニットを特定する要素、その採用した違反解消処理とその評価値、処理実行の前後の起動停止状態等を規定した中間需給計画情報をデータ格納部11に処理順に番号付けして登録(保存)する。ステップS19において最後に保存された中間需給計画情報が最終需給計画情報となる。この最終需給計画情報により、計画対象となる複数の発電機の最終的な需給計画が決定される。
次に、ステップS20において、ステップS18の結果を反映し違反解消対象のユニットの起動停止状態は固定した上で火力発電ユニット等の起動停止状態の作成と出力値の再決定処理が実行され、ステップS13に戻る。以下、起動停止回数制約違反が解消されるまで上記の処理が繰り返される。すなわち、ステップS20の実行によって、ステップS18で起動停止状態変更によって増減した発電機出力が補われ、起動停止状態変更前の発電機出力総量から変化が生じないようにされる。また、ステップS20の実行時にシステムλ値も更新されることになる。
ステップS13で違反がすべて解消された(もしくは、もともと違反がない)と判断された場合には、ステップS21に移行する。
ステップS21において、起動停止回数制約のある火力発電ユニット等の発電ユニットで一度も選択されていないユニットがあるかどうかが判断される。未選択ユニットがある場合(YES)には、ステップS22に移行して、現在の選択ユニットの次に送電単価の大きいユニットを新たな選択ユニットとしてセットしてステップS13に戻る。
ステップS21において未選択ユニットがない場合(NO)には、終了条件を満足したものとしてステップS23に移行する。
ステップS23において、結果処理部15は、データ格納部11に保存された初期需給計画情報、中間需給計画情報及び最終需給計画情報を取得し、取得した上記情報に基づき、最終結果の処理を行う。すなわち、結果処理部15は、取得した上記情報に基づき、計画対象期間に亘る各時刻単位での全発電ユニットの出力値、起動停止状態、上記目的関数の値(燃料費と起動費の総和による運転コスト)、システムλ値(限界費用)等のシステム操作者が必要とする項目が算出され、表示用出力結果としてデータ格納部11に登録(保存)する。
ステップS23における結果処理部15による最終結果の処理が終了すると、策定結果表示部16は、上記一連の処理において獲得された結果のうち、初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部11より読み出し、読み出した表示用出力結果に基づく内容をディスプレイ等の画面に表示してシステム操作者に提供する。なお、初期需給計画情報及び最終需給計画情報は、前述したようにステップS11及び最後に行われるステップS19においてデータ格納部11に格納された情報に相当する。
このように、実施の形態1の発電機需給計画装置は、計画対象期間に亘る需給計画の立案時に、最経済計画策定部13によって得た最経済計画結果である需給計画を規定した初期需給計画情報をベースにして起動停止回数制約という計画対象期間の総和量で規定される制約条件を考慮して、起動停止回数制約違反解消処理部14により経済的な需給計画を規定した最終需給計画情報を実用的に作成することができる。
すなわち、実施の形態1の発電機需給計画装置は、需給計画において重要な考慮要素となる起動停止回数制約という物理的な制約を満足する経済的な実用的計画である複数の発電機における需給計画を得ることができる効果を奏する。
また、違反解消履歴表示部17は、中間需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部11から読み出し、読み出した表示用出力結果に基づく内容をディスプレイ等の画面に表示してシステム操作者に提供する。なお、中間需給計画情報は、前述したように、ステップS19においてデータ格納部11に保存された情報であり、逐次的な解消処理(中間処理)の履歴としての役割を果たす。
このように、実施の形態1の発電機需給計画装置は、データ格納部11、結果処理部15、策定結果表示部16及び違反解消履歴表示部17からなる出力結果情報出力部を備えることにより、システム操作者は結果を理解しやすい最経済結果から出発して、中間的な解消処理内容を含み、最終的に起動停止回数制約違反の解消された結果に至るまでのすべての処理内容を参照することができる。このため、どのような理由で最終結果(最終需給計画情報)が得られたのかを詳細に確認し妥当性を検証することができる。
すなわち、実施の形態1の発電機需給計画装置は、従来は最適化計算の中でシステム操作者が策定結果の妥当性を確認できなかった、あるいは確認にかなりの手間がかかった処理を、極めて容易に行えるといった従来にない顕著な効果を奏するものである。
実施の形態1では、図2に示すフローチャートを用いて発電機需給計画方法を説明したが、図2は実質的に発電機出力決定における需給計画方法を実現するためのソフトウェア処理であり、この処理をプログラムとして記録媒体に格納することができる。例えば、上記プログラムをハードディスクに格納したりすることができる。また、上記プログラムを記録したコンピュータ読取可能な媒体は、ハードディスクの他にCD−ROMやDVD等であってもよい。
<実施の形態2>
この発明における実施の形態2である発電機需給計画装置は、燃料消費量制約が設定されている場合(起動停止回数制約の設定はなし)の需給計画を決定する。なお、実施の形態2の発電機需給計画装置は、燃料消費量制約違反解消後においても、複数の発電機の発電機出力総量は解消前から変化がないように需給計画を決定する。また、燃料消費量制約が課されるのは火力発電ユニットが一般的であるので火力発電ユニットを中心に説明する。
燃料消費量制約が与えられているときには、結果的に運転コストの高い石油機の追加並列や運転コストの安い石炭機の出力抑制など燃料消費量制約を考慮しない最経済結果と比べて非経済的な運転体制が強いられることになる。需給計画策定時には、経済性を有した燃料消費量配分および需給バランス策定が重要であり、複数の時刻断面に亘る対応処理が必要となる。最経済結果においてある燃料消費量グループで燃料消費量制約違反が発生する場合、運転コストの面から経済性を考えると、燃料消費量グループに属する火力発電ユニットの出力変更だけではなく、ユニットの起動停止状態の変更も検討することが必要になる。この点において、特許文献1で開示した発電機出力スケジュール策定方法では出力変更のみしか触れておらず、現在運転中のユニットの出力調整範囲でしか燃料消費量を調整できないため、有効範囲が限定される。また経済性の観点からは、出力調整するよりも起動停止状態を変更する方が有利な状況も十分に考えられるが、特許文献1で開示した発電機出力スケジュール策定方法では対応できない。なお、出力変更とは、起動停止状態の変更はなく、既に起動状態にある発電機の出力だけを増減させることを意味する。
実施の形態2では、燃料消費量制約を考慮していない最経済計画結果に対して起動停止状態の変更と出力調整による燃料消費量制約の違反解消処理を実行する発電機需給計画装置について述べる。最経済計画結果である初期需給計画情報に基づいて、燃料消費量制約違反がある場合には計画結果の起動停止状態の変更や出力変更を運転コストに関する指標(持替え単価)により評価して変更によるコスト増分が最小となるような解消処理を選択することを、違反が解消するまで逐次的に繰り返し実行する。そのため起動停止状態の変更については、類型的な複数の解消処理パターンをあらかじめ与える。これらに出力変更のみによる解消処理を加えて違反解消方式とする。
ある計画結果に対する燃料消費量制約の違反状態によって解消方向が異なるため、起動停止状態の変更に関する解消処理パターンは、燃料消費量不足の場合に火力発電ユニットの停止状態を運転状態に変更するものと、燃料消費量過剰の場合に火力発電ユニットの運転状態を停止状態に変更するものに大別される。
図4は燃料消費量不足の場合の解消処理パターンを示す説明図である。図4(a) 〜(d) それぞれはある1台の発電機(発電ユニット)の出力状態を示している。以下、同図を参照して、燃料消費量不足の場合の追加運転パターンA〜Dについて説明する。
同図(a) に示すように、1日のλ最大時刻Tλmaxを含む時刻に停止状態が存在し(同図(a) の例では終日停止状態)、λ最大時刻Tλmaxを含み最小運転期間TDminでの運転(起動)を想定する。この際、最小停止期間TSminの制約から前後の既運転状態と連続しないタイミング(第1の制約タイミング)を満足し、追加運転期間Tad1を追加することができる場合、追加運転パターンAとなる。この場合、起動停止回数が“1”増えることになる。なお、λ最大時刻Tλmaxとはシステムλ値が最大となる時刻を意味する。また、起動停止回数は起動と停止の組合せで1回とする。
同図(b) に示すように、1日のλ最大時刻Tλmaxを含む時刻に停止状態が存在し、連続日(前日と当日)の中で、前日の既存運転期間TD1の最終時刻t11から当日のλ最大時刻Tλmaxを含み最小運転期間TDmin(最終時刻t12)分の運転を想定する。そして、上記第1の制約タイミングを満足し、時刻t11〜t12間に追加運転期間Tad2を追加することができる場合、追加運転パターンBとなる。この場合、起動停止回数の増減はない。
同図(c) に示すように、1日のλ最大時刻Tλmaxを含む時刻に停止状態が存在し、連続日(当日と翌日)の中で、翌日の既存運転期間TD2の最初時刻t14から遡りλ最大時刻Tλmaxを含み最小運転期間TDmin(最初時刻t13)分の運転を想定する。そして、上記第1の制約タイミングを満足し、時刻t13〜t14間に追加運転期間Tad3を追加することができる場合、追加運転パターンCとなる。この場合、起動停止回数の増減はない。
同図(d) に示すように、連続日である前日及び当日に既存運転期間TD3(最終時刻t15)及びTD4(最初時刻t16)が離散して存在し、既存運転期間TD3,TD4間での運転を想定する。そして、時刻t15〜t16間を追加運転期間Tad4として追加できる場合を追加運転パターンDとなる。その結果、既存運転期間TD3、追加運転期間Tad4及び既存運転期間TD4が連続運転期間となるため、起動停止回数が“1”減少する。なお、離散した既存運転期間は同日に存在しても良い。
追加運転パターンA〜Dのように基準を設けている理由は、基準がないと一日の全時刻に亘って追加運転パターンの評価を行う必要があるからである。また、追加運転を考える場合、コスト増分を抑制しようとするとシステムλ値の高い時刻で新規に起動することにより、他ユニットの出力を代替してやるのが合理的であるため、λ最大時刻Tλmaxを含ませて追加運転期間を追加している。
図5は燃料消費量過剰の場合の解消処理パターンを示す説明図である。図5(a) 〜(d) それぞれはある1台の発電機(発電ユニット)の出力状態を示している。以下、同図を参照して、燃料消費量過剰の場合の追加停止パターンA〜Dについて説明する。
同図(a) に示すように、1日のλ最小時刻Tλminを含む時刻に運転状態が存在し(同図(a) の例では終日運転状態(既存運転期間TD5))、λ最小時刻Tλminを含み最小停止期間TSminでの停止を想定する。この際、最小運転期間TDminの制約から前後の運転状態がそれぞれ最小運転期間TDmin以上の運転時間を確保することができるタイミング(第2の制約タイミング)を満足し、追加停止期間Tas1を追加することができる場合、追加停止パターンAとなる。この場合、起動停止回数が“1”増えることになる。なお、λ最小時刻Tλminとはシステムλ値が最小となる時刻を意味する。
同図(b) に示すように、1日のλ最小時刻Tλminを含む時刻に運転状態(既存運転期間TD6)が存在し、連続日(当日と翌日)の中で、既存停止期間TS1の最終時刻t21から当日のλ最小時刻Tλminを含み最小停止期間TSmin(最終時刻t22)分の停止を想定する。そして、既存運転期間TD6のうち残る運転時間(t22以降)が最小運転期間TDminを満足し、時刻t21〜t22間に追加停止期間Tas2を追加することができる場合、追加停止パターンBとなる。この場合、起動停止回数の増減はない。
同図(c) に示すように、1日のλ最小時刻Tλminを含む時刻に運転状態が存在し、連続日(前日と当日)の中で、当日の既存停止期間TS2の最初時刻t24から遡りλ最小時刻Tλminを含み最小停止期間TSmin(最初時刻t23)分の停止を想定する。そして、既存運転期間TD7のうち残る運転時間(t23以前)が最小運転期間TDminを満足し、時刻t23〜t24間に追加停止期間Tas3を追加することができる場合、追加停止パターンCとなる。この場合、起動停止回数の増減はない。
同図(d) に示すように、既存停止期間TS3(最終時刻t25)及びTS4(最初時刻t26)が離散して存在し、既存停止期間TS3,TS4間の停止を想定する。そして、時刻t25〜t26間を追加停止期間Tas4として追加できる場合が追加停止パターンDとなる。その結果、既存停止期間TS3、追加停止期間Tas4及び既存停止期間TS4が連続停止期間となるため、起動停止回数が“1”減少する。
以下では、この解消処理パターン(追加運転パターンA〜D及び追加停止パターンA〜D)を使用するものとする。
図6はこの発明の実施の形態2である発電機需給計画装置の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、実施の形態2は、データ格納部21及びデータ処理部20から構成される。データ処理部20はデータ設定部22、最経済計画策定部23、燃料消費量制約違反解消処理部24、結果処理部25、策定結果表示部26及び違反解消履歴表示部27から構成される。なお、図6において破線の矢印は実質的な処理の流れを示しているが、実際にはデータ格納部21を媒介として情報(データ)の授受が行われる。
データ設定部22は、需給計画策定に必要な種々のデータの入力を受け付け、設定データとしてデータ格納部21に格納する。
最経済計画策定部23は、燃料消費量制約違反解消処理部24と共に1回、または複数回の繰り返し計算が行われるが、1回目の繰り返し計算ではデータ格納部21より得た設定データに基づいて最経済な計画スケジュールを立案し、該計画スケジュールを初期需給計画情報としてデータ格納部21に保存し、2回目以降の繰り返し計算では該計画スケジュールを中間需給計画情報としてデータ格納部21に保存する。
燃料消費量制約違反解消処理部24は、1回目の繰り返し計算では最経済計画策定部23の演算結果である初期需給計画情報をデータ格納部11より取得し、取得した初期需給計画情報に基づき、燃料消費量制約が設定されている各燃料消費量制約グループにおける各発電機に対して制約違反状況を確認し制約違反があれば違反を解消する処理を実行する。燃料消費量制約違反解消処理部24による解消処理後の最終的な需給計画が最終需給計画情報として、解消処理中の需給計画が中間需給計画情報として、それぞれデータ格納部11に格納される。燃料消費量制約違反解消処理部24は、2回目以降の繰り返し計算では直前の繰り返し計算において最経済計画策定部23の演算結果で最終結果となった中間需給計画情報に基づき、燃料消費量制約が設定されている各燃料消費量制約グループにおける各発電機に対して制約違反状況を確認し制約違反があれば違反を解消する処理を実行する。
結果処理部25は、データ格納部21に格納された初期需給計画情報、中間需給計画情報、及び最終需給計画情報それぞれに基づき、時系列の発電ユニット出力値や燃料消費量、起動停止回数、運転コストなどの表示用出力結果を必要な形式で算出し、データ格納部21に保存する。
策定結果表示部26は、結果処理部25により算出された初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部21より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
違反解消履歴表示部27は、結果処理部25より算出された中間需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部21より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
データ格納部21は、データ設定部22によって設定された種々の設定データと、最経済計画策定部23により得た初期需給計画情報と、燃料消費量制約違反解消処理部24により得た中間需給計画情報及び最終需給計画情報と、結果処理部15により得た表示用出力結果とをそれぞれを格納する。
策定結果表示部26は、結果処理部25により算出された初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部21より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
違反解消履歴表示部27は、結果処理部25より算出された中間需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部21より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
データ設定部22と、策定結果表示部26と、違反解消履歴表示部27はシステム操作者がデータ入力や結果表示による確認を行うものであり、マウス、キーボードやディスプレイ等の入出力装置により実現するデータ入出力部20aとなる。
一方、最経済計画策定部23と燃料消費量制約違反解消処理部24と結果処理部25とはコンピュータの記録媒体に記憶させて保存、または伝送媒体を介して読み込み保存することによりコンピュータの内部処理であるデータ演算部20bとして実現する。
データ格納部21はデータベース上に実現し、データ設定部22、最経済計画策定部23、燃料消費量制約違反解消処理部24、結果処理部25、策定結果表示部26及び違反解消履歴表示部27はデータ格納部21に対し、必要なデータを保存し、あるいは読み出し処理を行う。
図7はこの発明の実施の形態2である発電機需給計画装置による発電機需給計画方法における燃料消費量制約違反解消処理の処理フローを示す説明図である。なお、図7におけるデータD10〜D16は、図2で示した実施の形態1のデータと同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。
同図を参照して、ステップS30において、まず、燃料消費量制約違反解消処理部24は、燃料消費量グループを管理するカウンタ・パラメータkの初期値を“1”にセットする。グループとkとの関係は計画条件データD16より燃料消費量グループの処理優先順位の指定を参照して優先順位の高いものから順にk=1より割り当てておく。
その後、ステップS31において、最経済計画策定部23による最経済計画の策定処理が実行される。最経済計画策定部23は、計画処理データとして設備データD10より設備関連データを、発電機データD11より発電機データを、発電機作業計画データD12より作業計画データを、物理的制約条件データD13より制約条件データを、電力需要データD14より時刻別需要データを、電力取引契約データD15より時刻別取引量データを、計画条件データD16より計画条件を読み込む。そして、最経済計画策定部23は、読み込んだ各データに基づいて計画対象期間に亘る最経済計画の策定を実施する。なお、最経済計画のアルゴリズムは実施の形態1の最経済計画策定部13と同様な方法を使用する。
その後、ステップS32において、最経済計画策定部23は、k=1におけるステップS31の策定内容に基づき、計画結果の処理を行って初期需給計画情報を得る。すなわち、最経済計画策定部23は、ステップS31の策定内容に基づき、計画対象期間に亘る各時刻単位での全発電ユニットの出力値、起動停止状態(“0”(停止状態)または“1”(運転状態)で記録)、上記目的関数の値(燃料費と起動費の総和による運転コスト)、システムλ値(限界費用)等からなる初期需給計画情報を算出し、データ格納部21に登録(保存)する。
以下の処理は燃料消費量制約違反解消処理部24によって実行される。まず、ステップS33において、k番目に指定されている燃料消費量グループが選択される。以降、k番目の燃料消費量グループに属する火力発電ユニットを対象に説明する。
ステップS34において、データ格納部21から最経済計画結果の運転状態を参照して、計画対象期間に亘って選択グループの燃料消費量を算出し燃料消費量制約(上下限値)に違反しているかどうかが判定される。燃料消費量制約違反がある場合(YES)はステップS35に移行し、違反がない場合(NO)はステップS40に移行する。
消費量制約違反の状態を判定する処理であるステップS35において、消費量不足の状態か、反対に消費量過剰の状態かが判定され、不足の場合(YES)には消費量不足違反解消処理であるステップS36に、過剰の場合(NO)には消費量過剰違反解消処理であるステップS37に移行する。最初に実行されるステップS36,S37の処理は、初期需給計画情報で規定される需給計画を起点として実行される。
図8は、ステップS36の消費量不足違反解消処理の詳細を示すフローチャートである。以下、同図を参照して、消費量不足違反解消処理について説明する。
まず、ステップS101で開始し、4つの算出処理ステップS102〜S105が並行して実施される。ステップS102〜S105において計画対象期間内のすべての日を対象に4つの持替え単価が算出される。このうちステップS102〜S104は起動停止状態を変更する解消処理パターンを利用した持替え単価の算出処理であり、ステップS105は出力変更による解消処理パターンを利用した持替え単価の算出処理である。
燃料消費量は発電ユニットの出力値とその発電能力(熱消費量曲線で決定)に依存する。運転コストの増分は、それらに加えて他ユニットの運転状況にも依存する。よって、燃料消費量制約の違反状態の解消量とそのときの増分コストの比を取り、単位解消量あたりの増分コストを求めることにより、解消処理の評価として使用する。これを「持替え単価」と呼ぶ。持替え単価の比較により、追加運転パターンA〜Dと出力変更とから成る複数処理から、最経済計画結果(初期需給計画情報)の運転コストから解消処理を適用することによる増分コストを最大限抑制する最も有効な解消処理を選択することができる。以下、ステップS102〜S105の具体的内容について説明する。
ステップS102において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ追加運運転パターンAを適用した場合を想定して持替え単価が算出され、各日の中で最小値を示すユニットに対する持替え単価が持替え単価U1とされる。
ステップS103において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ追加運転パターンB及びパターンCを適用した場合を想定してそれぞれ持替え単価が算出され、各日の中で両者のうち最も小さい値を示すパターンがそのユニットに対する持替え単価U2として採用される。
ステップS104において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ追加運転パターンDを適用した場合を想定して持替え単価が算出され、各日の中で最小値を示すユニットに対する持替え単価が持替え単価U3とされる。
ステップS105において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ起動停止状態を変更せずに出力変更だけを想定して持替え単価が算出され、各日の中で最小値を示すユニットに対する持替え単価が持替え単価Ucとされる。
ある火力発電ユニットiに対する持替え単価は次の式(9),式(10)で与えられる。解消処理により増加する運転コストと、システムλ値を利用することにより対象ユニットの運転状態の変更により他ユニットで出力を代替するための運転コストをそれぞれ求めて差分をとり、燃料消費量変化分との比により持替え単価を定義する。ステップS102〜S104における追加運転パターンA〜Dにおける持替え単価U1〜U3は式(9)によって求められ、ステップS105における出力変更による持替え単価Ucは式(10)によって求められる。
ここで上記の持替え単価の算出式では追加運転(出力変更)時のユニット出力値は未定であるため、システムλ値を参照して出力値を想定して与える。出力値は次の式(11),式(12)で与えられる。
(追加運転パターンのとき)
該時刻のλ値により出力を求めた結果、最小出力より大きければ最大出力とする。一方、小さければ最小出力とする(ここでは出力の決定は厳密な負荷配分計算を行っていないため誤差を含む。よって、中間出力以上の場合は最大出力とみなすことにより違反解消への寄与を最大量に見積もる。)。
したがって、ステップS102〜S104における追加運転パターンA〜Dにおける発電ユニットの最小出力及び最大出力は以下の式(11)によって与えられる。式(11)で得られた最小出力値及び最大出力値の一方によって、ユニット出力値が推定される。
(出力変更のとき)
該時刻のλ値と現在出力に対する増分単価を比較して出力を決定する。λ値が増分単価以上であれば最大出力とする。一方、小さければ現在出力のままで変更なしとする(厳密な出力配分を行うとき以下の式(12)の第一式は現実的な条件ではなく、出力変更が発生しない可能性が高い。したがって、以下の式(12)により出力変更が生じない場合には、対象期間の選択ユニットの出力を最大値に変更することを想定して持替え単価を求めることとする)。
したがって、ステップS105における出力変更による最大出力等は以下の式(12)によって与えられる。
式(12)において、ある選択ユニットに対して各時刻のシステムλ値により出力を増大するか「現在出力のままで変更なし」とするかが決まる。
ステップS106において、ステップS102〜ステップS105で算出した各日に対する持替え単価U1,U2,U3,Ucの中から最小値を示す解消処理(処理対象日、解消処理パターン(または出力変更処理))が1つ選択される。
そして、ステップS107において、ステップS106で選択された解消処理が実行される。このとき選択された解消処理以外はどれも実行されない。消費量不足違反解消処理はステップS108で終了する。
図9は図7のステップS37の処理である消費量過剰違反解消処理の詳細を示すフローチャートである。以下、同図を参照して消費量過剰違反解消処理を説明する。
消費量過剰違反解消処理は、ステップS111から始まり、まず4つの算出処理であるステップS112〜S115において計画対象期間内のすべての日を対象に4つの持替え単価が算出される。このうちステップS112〜S114は起動停止状態を変更する追加停止パターンA〜Dを利用した持替え単価の算出処理であり、ステップS115は出力変更による解消処理パターンを利用した持替え単価の算出である。以下、ステップS112〜S115を具体的に説明する。
ステップS112において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ追加停止パターンAを適用した場合を想定して持替え単価が算出され、各日の中で最小値を示すユニットに対する持替え単価が持替え単価D1とされる。
ステップS113において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ追加停止パターンB及びパターンCを適用した場合を想定してそれぞれ持替え単価が算出され、各日の中で両者のうち最も小さい値を示すパターンがそのユニットに対する持替え単価D2として採用される。
ステップS114において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ追加停止パターンDを適用した場合を想定して持替え単価が算出され、各日の中で最小値を示すユニットに対する持替え単価が持替え単価D3とされる。
ステップS115において、計画対象期間内のすべての日において選択グループに属する各火力発電ユニットに対して1台ずつ起動停止状態を変更せずに出力変更だけを想定して持替え単価が算出され、各日の中で最小値を示すユニットに対する持替え単価が持替え単価Dcとされる。
ある火力発電ユニットiに対する持替え単価は次の式(13),式(14)で与えられる。解消処理により増加する運転コストと、システムλ値を利用することにより対象ユニットの運転状態の変更により他ユニットで出力を代替するための運転コストをそれぞれ求めて差分をとり、燃料消費量変化分との比により持替え単価を定義する。
ステップS112〜S114における追加停止パターンA〜Dにおける持替え単価D1〜D3は以下の式(13)によって求められ、ステップS115における出力変更による持替え単価Dcは以下の式(14)によって求められる。
ここで上記の持替え単価の算出式では出力変更時のユニット出力値は未定であるため、システムλ値を参照して出力値を想定して与える。出力値は次の式(15)で与えられる。該時刻のλ値と現在出力に対する増分単価を比較して出力を決定する。λ値が増分単価以下であれば最小出力とする。一方、大きければ現在出力のままで変更なしとする。
ステップS116において、ステップS112〜S115で算出した各日に対する持替え単価D1,D2,D3,Dcの中から最小値を示す解消処理(処理対象日、解消処理パターン(または出力変更処理))が1つ選択される。
そして、ステップS117において、ステップS116で選択された解消処理が実行される。このとき選択された解消処理以外はどれも実行されない。消費量過剰違反解消処理は、ステップS118により終了する。
図7に戻って、ステップS36の消費量不足違反解消処理またはステップS37の消費量過剰違反解消処理後に実行されるステップS38において、解消処理内容が中間需給計画情報としてデータ格納部21に保存される。すなわち、選択中の燃料消費グループを特定する要素、違反解消処理を適用した火力発電ユニットを特定する要素、選択実行された違反解消処理の内容(解消処理を実行した日、実行した解消処理パターン、持替え単価)、処理実行の前後の起動停止状態等が中間需給計画情報としてデータ格納部21に処理順に番号付けして登録(保存)される。ステップS38において、最後に保存された中間需給計画情報が最終需給計画情報となる。
そして、ステップS39において、新しい起動停止状態について火力発電ユニット等の出力値の再決定が実行され、ステップS34に戻る。以降、燃料消費量制約違反が解消されるまで上記の処理(ステップS34〜S39)が繰り返される。すなわち、ステップS39の実行によって、ステップS36あるいはステップS37の違反解消処理によって増減した発電機出力が補われ、違反解消処理前の発電機出力総量から変化が生じないようにされる。また、ステップS39の実行時にシステムλ値も更新されることになる。
なお、発電機出力を補うべく起動停止状態及び出力内容が変更される対象は、(k+1)番目以降の燃料消費量グループに属する発電機及び燃料消費量制約の無い発電機である。また、k番目の燃料消費量グループ内の発電機間において熱効率の違いがある場合は、熱効率の良い発電機の出力を増加させる等、k番目の燃料消費量グループ内の発電機を変更対象とすることもできる。
ステップS34で違反がすべて解消された(もしくは、もともと違反がない)と判断された場合には、ステップS40に移行する。
ステップS40において、燃料消費量グループで一度も選択されていないグループがあるかどうかが判断される。未選択グループがある場合(YES)には、ステップS41に移行して、カウンタ・パラメータkがインクリメントして(k+1)にセットされステップS31に戻る。
このとき、違反解消処理の完了したグループについては、これ以降の処理においてその起動停止状態及び出力内容を固定して取り扱う。すなわち、違反解消処理が完了したグループに属する発電機は、その後の処理において起動停止状態及び出力内容が変更されることはない。すなわち、既に燃料消費量制約違反解消処理が行われた燃料消費量グループに属する発電機は、その後に実行されるステップS31,S32による最経済計画の策定処理の実行対象外となる。
したがって、既に燃料消費量制約違反解消処理が実行された燃料消費グループの起動停止状態及び出力内容に変更が加えられることはなく、燃料消費量制約を遵守した内容が維持されながら、最経済計画の策定処理が行われる。
一方、未選択グループがない場合(ステップS40でNO)には、終了条件を満足したものとしてステップS42に移行する。
ステップS42において、結果処理部25は、データ格納部21に保存された初期需給計画情報、中間需給計画情報及び最終需給計画情報を取得し、取得した上記情報に基づき、最終結果の処理を行う。すなわち、結果処理部25は、取得した上記情報に基づき、計画対象期間に亘る各時刻単位での全発電ユニットの出力値、起動停止状態、上記目的関数の値(燃料費と起動費の総和による運転コスト)、システムλ値(限界費用)等のシステム操作者が必要とする項目が算出され、表示用出力結果としてデータ格納部21に登録(保存)する。
ステップS42における結果処理部25による最終結果の処理が終了すると、策定結果表示部26は、上記一連の処理において獲得された結果のうち、初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部21より読み出し、読み出した表示用出力結果に基づく内容をディスプレイ等の画面に表示してシステム操作者に提供する。なお、初期需給計画情報及び最終需給計画情報は、前述したようにステップS32及び最後に行われるステップS38においてデータ格納部21に格納された情報に相当する。
このように、実施の形態2の発電機需給計画装置は、計画対象期間に亘る需給計画の立案時に、最経済計画策定部23によって得た最経済計画結果である需給計画を規定した初期需給計画情報をベースにして燃料消費量制約という対象期間の総和量で規定される制約条件を考慮して、燃料消費量制約違反解消処理部24により経済的な需給計画を規定した最終需給計画情報を実用的に作成することができる。
すなわち、実施の形態2の発電機需給計画装置は、需給計画において重要な考慮要素となる燃料消費量制約という物理的な制約を満足する経済的な実用的計画である複数の発電機における需給計画を得ることができる効果を奏する。
また、違反解消履歴表示部27は、中間需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部21から読み出し、読み出した表示用出力結果に基づく内容をディスプレイ等の画面に表示してシステム操作者に提供する。なお、中間需給計画情報は、前述したように、ステップS38においてデータ格納部21に保存された情報であり、逐次的な解消処理(中間処理)の履歴としての役割を果たす。
このように、実施の形態2の発電機需給計画装置は、データ格納部21、結果処理部25、策定結果表示部26及び違反解消履歴表示部27からなる出力結果情報出力部を備えることにより、システム操作者は結果を理解しやすい最経済結果から出発して、中間的な解消処理内容を含み、最終的に燃料消費量制約違反の解消された結果に至るまでのすべての処理内容を参照することができる。このため、どのような理由で最終結果(最終需給計画情報)が得られたのかを詳細に確認し妥当性を検証することができる。
実施の形態2では、図7〜図9に示すフローチャートを用いて発電機需給計画方法を説明したが、図7〜図9は実質的に発電機出力決定における需給計画方法を実現するためのソフトウェア処理であり、この処理をプログラムとして記録媒体に格納することができる。例えば、上記プログラムをハードディスクに格納したりすることができる。また、上記プログラムを記録したコンピュータ読取可能な媒体は、ハードディスクの他にCD−ROMやDVD等であってもよい。
<実施の形態3>
この発明における実施の形態3である発電機需給計画装置は、起動停止回数制約及び燃料消費量制約が共に設定されている場合の需給計画を決定する。なお、実施の形態3の発電機需給計画装置は、起動停止回数制約違反及び燃料消費量制約違反の解消後においても、複数の発電機の発電機出力総量は解消前から変化がないように需給計画を決定する。また、起動停止回数制約及び燃料消費量制約が課されるのは火力発電ユニットが一般的であるので火力発電ユニットを中心に説明する。
起動停止回数制約はピーク帯とオフピーク帯の全体的な火力発電ユニットの起動停止体制に大きな影響を与え、火力発電ユニットを必ずしも高効率で運転することができなくなるため、全体の運転コストにも密接に関係する。また、燃料消費量は起動停止状態により制限を受けるので、起動停止回数制約対象のユニットに燃料消費量制約が課されている場合、つまり、燃料消費量制約を持つ燃料消費量グループに属する場合には計画対象期間における起動停止回数の適正な配置が重要となる。したがって、本実施の形態では起動停止回数制約と燃料消費量制約の協調的な違反解消処理を実行する需給計画を決定する。
起動停止回数制約は起動停止状態に関わる回数のみの制約条件であり、起動停止状態に加えて出力内容の決定までを考慮に入れて対応する燃料消費量制約の処理よりも制約条件としては取り扱い易い。また、起動停止回数制約は上限制約だけを与えているため比較的緩い条件となる。本実施の形態では最経済計画結果(初期需給計画情報)に基づいて起動停止回数制約の違反解消時に燃料消費量制約の違反解消も考慮した協調的な処理を採用し、起動停止回数制約の違反解消処理は燃料消費量制約の違反解消処理に先行して行う。
図10は、起動停止回数制約違反と燃料消費量制約違反により規定される状態を考え、可能解領域への状態変更を目指して両者の違反状態を同時に緩和する解消処理を模式的に示す説明図である。
同図において、起動停止回数(制約上限DS1)を横軸に、燃料消費量(制約上限CL1,制約下限CL2)を縦軸にとり、違反状態と解消処理の関係を表している。燃料消費量グループに属するユニットの起動停止回数制約違反状態を解消し制約回数を満足するように起動停止状態を変更するとき、計画対象期間の燃料消費量制約違反の状態に依存した2つの解消処理(解消処理R1及び解消処理R2)を採用する。
解消処理R1は燃料消費量不足で、かつ起動停止回数制約違反を発生している制約違反状態J1に対して行われ、連続する2つの運転状態(砂地ハッチング部分)の間の停止状態を連続運転状態に変更することにより、燃料消費量を増加させるとともに、起動停止回数を1回低減することができる。
解消処理R2は、燃料消費量過剰で起動停止回数制約違反を発生している制約違反状態J2に対して行われ、1つの運転状態(あるユニットが計画結果において起動から停止まで連続運転であるスケジュール(斜線ハッチング部分))を停止状態に変更することにより、燃料消費量を減少させるとともに、起動停止回数を1回低減することができる。
なお、解消処理R3は燃料消費量不足であるが起動停止回数制約違反に該当していない制約違反状態J3に対して行われ、ある停止状態(白地部分)を運転状態に変更することにより、燃料消費量を増加させることができる。
解消処理R4は、燃料消費量過剰であるが起動停止回数制約違反に該当していない制約違反状態J4に対して行われ、連続運転状態の一部(斜線ハッチング部分)を停止状態に変更することにより、燃料消費量を減少させることができる。
図11はこの発明の実施の形態3である発電機需給計画装置の構成を示すブロック図である。
同図に示すように、実施の形態3は、データ格納部31及びデータ処理部30から構成される。データ処理部30はデータ設定部32、最経済計画策定部33、起動停止回数制約違反解消処理部34、燃料消費量制約違反解消処理部35、結果処理部36、策定結果表示部37及び違反解消履歴表示部38から構成される。なお、図11において破線の矢印は実質的な処理の流れを示しているが、実際にはデータ格納部31を媒介として情報(データ)の授受が行われる。
データ設定部32は、需給計画策定に必要な種々のデータの入力を受け付け、設定データとしてデータ格納部31に格納する。
最経済計画策定部33は、データ格納部31より得た設定データに基づいて最経済な計画スケジュールを立案し、該計画スケジュール(需給計画)を初期需給計画情報としてデータ格納部31に保存する。
起動停止回数制約違反解消処理部34は、最経済計画策定部33の演算結果である初期需給計画情報に基づき起動停止回数制約が設定されている各発電ユニットに対して制約違反状況を確認し制約違反があれば、燃料消費量制約違反を考慮して、起動停止回数制約違反解消処理を実行する。起動停止回数制約違反解消処理部13による解消処理後の最終的な需給計画が暫定需給計画情報として、解消処理中の需給計画が第1の中間需給計画情報として、それぞれデータ格納部11に格納される。
燃料消費量制約違反解消処理部35は、起動停止回数制約違反解消処理部34による暫定需給計画情報をデータ格納部11より取得し、取得した暫定需給計画情報に基づき、燃料消費量制約が設定されている各燃料消費量制約グループにおける各発電機に対して制約違反状況を確認し、制約違反があれば起動停止回数制約違反を考慮して違反を協調的に解消する燃料消費量制約違反解消処理を実行する。燃料消費量制約違反解消処理部35による解消処理後の最終的な需給計画が最終需給計画情報として、解消処理中の需給計画が第2の中間需給計画情報として、それぞれデータ格納部11に格納される。
結果処理部36は、データ格納部31に格納された初期需給計画情報、第1及び第2の中間需給計画情報、暫定需給計画情報及び最終需給計画情報それぞれに基づき、時系列の発電ユニット出力値や燃料消費量、起動停止回数、運転コストなどの表示用出力結果(出力結果情報)を必要な形式で算出し、データ格納部31に保存する。
策定結果表示部37は、結果処理部36により算出された初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部31より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
違反解消履歴表示部38は、結果処理部36より算出された第1及び第2中間需給計画情報並びに暫定需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部31より取得し、当該表示用出力結果に基づく内容を画面上に表示する。
データ格納部31は、データ設定部32によって設定された種々の設定データと、最経済計画策定部33により得た初期需給計画情報と、燃料消費量制約違反解消処理部24により得た第1の中間需給計画情報及び暫定需給計画情報と、燃料消費量制約違反解消処理部35により得た第2の中間需給計画情報及び最終需給計画情報と、結果処理部36により得た表示用出力結果とをそれぞれを格納する。
データ設定部32と、策定結果表示部37と、違反解消履歴表示部38はシステム操作者がデータ入力や結果表示による確認を行うものであり、マウス、キーボードやディスプレイ等の入出力装置により実現するデータ入出力部30aとなる。
一方、最経済計画策定部33と起動停止回数制約違反解消処理部34と燃料消費量制約違反解消処理部35と結果処理部36とはコンピュータの記録媒体に記憶させて保存、または伝送媒体を介して読み込み保存することによりコンピュータの内部処理であるデータ演算部30bとして実現する。
データ格納部31はデータベース上に実現し、データ設定部32、最経済計画策定部33、起動停止回数制約違反解消処理部34、燃料消費量制約違反解消処理部35、結果処理部36、策定結果表示部37及び違反解消履歴表示部38はデータ格納部31に対し、必要なデータを保存し、あるいは読み出し処理を行う。
図12はこの発明の実施の形態3である発電機需給計画装置による発電機需給計画方法における起動停止回数制約違反解消処理の処理フローを示す説明図である。なお、図12におけるデータD10〜D16は、図2で示した実施の形態1のデータと同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態で取り扱う需給計画問題の形式は実施の形態1の欄で記載の形式と同じである。
まず、ステップS10から始まる最経済計画の策定処理を実施して、その計画結果を基に違反解消処理を実施する。なお、ステップS10〜S23(SG1)における処理内容は、図2で示した実施の形態1における処理と同様であるため、同一符号を付して説明を適宜省略する。
実施の形態3の起動停止回数制約違反解消処理では、燃料消費量制約違反と協調して起動停止回数制約違反解消処理を実現するために、図10で示した協調的な違反解消処理(R1〜R4)の考え方をベースに、図2で示した実施の形態1の起動停止回数制約違反解消処理の処理フローに、ステップS50〜S56の処理を追加している。以下、起動停止回数制約違反解消処理部34によって行われる追加した処理を中心に説明する。
ステップS13において、起動停止回数制約違反がある(YES)と判定されたとき、ステップS50に移行する。
ステップS50において、燃料消費量制約対象の火力発電ユニットかどうかがチェックされ、燃料消費量制約対象に該当する場合(YES)は、ステップS51に移行し、該当しない場合(NO)は、処理セットSG1に移行する。
ステップS51において、燃料消費量制約違反があるかどうかがチェックされ、燃料消費量制約違反に該当する場合(YES)は、ステップS52に移行し、該当しない場合(NO)は、処理セットSG1に移行する。
ステップS50,S51のうち、いずれかの判定に対してNOであるとき(すなわち燃料消費量制約対象でない、もしくは燃料消費量制約違反がないとき)、処理セットSG1による処理が実行される。処理セットSG1は燃料消費量制約がない場合の起動停止回数制約違反解消処理を実行する処理群(ステップS14〜S18)であり、詳細な処理内容は実施の形態1の図2に示す処理フローで説明した内容と同様である。
すなわち、起動停止回数制約違反の発電ユニットが燃料消費量制約対象でない、もしくは燃料消費量制約違反がないときは、実施の形態1の起動停止回数制約違反解消処理をそのまま行えば良いため、処理セットSG1がそのまま実行されることになる。
一方、ステップS51において燃料消費量制約違反がある(YES)と判定されたとき、ステップS52が実行される。ステップS52において、選択ユニットの属する燃料消費量グループの消費量の状態を確認し、制約値に対して消費量不足の場合にはステップS53に、消費量過剰の場合にはステップS55に移行する。この判定条件による処理の分岐により、上記の違反状態と解消処理の関係図(図10参照)に示す協調的な解消処理R1と解消処理R2を処理アルゴリズム上で実現することができる。
燃料消費量不足の場合に実行されるステップS53において、計画対象期間における選択ユニットの全停止時間帯を検索し、各停止時間帯を運転状態に変更した場合の解消コスト増分Cuをそれぞれ算出する。
次に、ステップS54において、ステップS53の結果として得られたすべての起動停止状態の変更可能時間帯とその解消コスト増分Cuのセットの中から、解消コスト増分Cuが最小となる1つのセットが違反解消処理候補として選択され実行される。この解消処理は、起動停止回数を1回低減し、かつ、燃料消費量を増大させる作用を持つため、起動停止回数制約違反と燃料消費量制約違反の両者を同時に緩和することができる。
燃料消費量過剰の場合に実行されるステップS55において、計画対象期間における選択ユニットの全運転時間帯を検索し、各停止時間帯を停止状態に変更した場合の解消コスト増分Cdをそれぞれ算出する。
次に、ステップS56において、ステップS55の結果として得られたすべての起動停止状態の変更可能時間帯とその解消コスト増分Cdのセットの中から、解消コスト増分Cdが最小となる1つのセットが違反解消処理候補として選択され実行される。この解消処理は、起動停止回数を1回低減し、かつ、燃料消費量を減少させる作用を持つため、起動停止回数制約違反と燃料消費量制約違反の両者を同時に緩和することができる。
そして、ステップS19において、起動停止回数制約違反解消処理部34は、選択中の火力発電ユニットを特定する要素、その採用した違反解消処理とその評価値、処理実行の前後の起動停止状態等を規定した第1の中間需給計画情報をデータ格納部11に処理順に番号付けして登録(保存)する。ステップS19において最後に保存された第1の中間需給計画情報が暫定需給計画情報となる。
また、ステップS23において、結果処理部36は、データ格納部31に保存された初期需給計画情報、第1の中間需給計画情報及び暫定需給計画情報を取得し、取得した上記情報に基づき、最終結果の処理を行う。すなわち、結果処理部36は、取得した上記情報に基づき、計画対象期間に亘る各時刻単位での全発電ユニットの出力値、起動停止状態、上記目的関数の値(燃料費と起動費の総和による運転コスト)、システムλ値(限界費用)等のシステム操作者が必要とする項目が算出され、表示用出力結果としてデータ格納部31に登録(保存)する。
このように、実施の形態3の発電機需給計画装置における起動停止回数制約違反解消処理は、初期需給計画情報に基づき、燃料消費量制約違反解消方向に向かい、かつ、解消コスト増分(Cu,Cd)が最小になるように、計画対象期間における解消対象の発電機(発電ユニット)の起動停止状態の変更を順次行い、最終的に暫定需給計画情報を得ている。
図13はこの発明の実施の形態3である発電機需給計画装置による発電機需給計画方法における燃料消費量制約違反解消処理の処理フローを示す説明図である。なお、図13におけるデータD10〜D16は、図2で示した実施の形態1のデータと同様であるため、同一符号を付して説明を省略する。また、本実施の形態で取り扱う需給計画問題の形式は実施の形態2の欄で記載の形式と同じである。
設備データD10〜D16は、本処理フローの開始時に新たにデータ格納部31から読み出しても良いし、図12で示した起動停止回数制約違反解消処理の開始時にコンピュータのメモリに読み込んでいるならばそのままメモリの該当箇所を参照しても良い。
図13において、ステップS30,S33〜S42の処理内容は図7で示した実施の形態2の燃料消費量制約違反の解消処理と同内容である。
ただし、ステップS31a及びステップS32aの処理は、図7で示したステップS31及びステップS32と比べ、計画結果データD20で規定された起動停止回数制約のある発電機の起動停止内容を変化させないという条件下で最経済計画の策定処理が実行される点が異なる。
起動停止回数制約違反解消処理と協調的な燃料消費量制約違反解消処理を実現するために、図10で示した協調的な燃料消費量制約違反解消処理の考え方をベースに、図7で示した実施の形態2の処理フローに起動停止回数制約違反解消処後の計画結果データD20(暫定需給計画情報)の付与と、ステップS61を新たに追加している。
また、既に違反解消済みである起動停止回数制約に新たな違反を発生させないように追加運転パターン/追加停止パターンの適用時にルールを追加する。以下、追加した処理を中心に説明する。
ステップS30後に実行されるステップS61において、燃料消費量制約違反解消処理部35は、データ格納部31から先行処理した起動停止回数制約違反解消後の計画結果データD20(暫定需給計画情報)を読み出し、起動停止回数制約の対象である火力発電ユニットの起動停止状態を固定化する。したがって、燃料消費量制約違反解消処理は、計画結果データD20(暫定需給計画情報)で規定される需給計画を起点としている。
これ以降の処理では、起動停止回数制約違反解消が図られたユニットに対する起動停止状態は燃料消費量制約違反の解消処理により変更を受ける場合を除いて固定化して取扱う。それ以外のユニットの起動停止状態は計画対象となる。
各追加運転パターン/追加停止パターンは起動停止状態に対して類型的であるため、各パターンと起動停止回数の増減関係が明確になっている(図4及び図5並びにそれに対する説明を参照)。
したがって、図13における消費量不足時の違反解消処理であるステップS36の内部処理(図8)において、ある日にある起動停止回数制約を持つ火力発電ユニットに図8のステップS102〜S105の処理が各追加運転パターンを適用するときに起動停止回数制約違反を発生させるならば、当該パターンは不採用とし持替え単価として十分大きな値を与える。
持替え単価の値が十分大きいと、ステップS102〜S015の各処理でもステップS106の処理でも、起動停止回数制約違反を発生させる処理は実質上選択されなくなる。
同様に、図13における消費量過剰時の違反解消処理であるステップS37の内部処理(図9)において、ある日にある起動停止回数制約を持つ火力発電ユニットに図9のステップS112〜S115の処理が各追加停止パターンを適用するときに起動停止回数制約違反を発生させるならば、当該パターンは不採用とし持替え単価として十分大きな値を与える。
持替え単価の値が十分大きいと、ステップS112〜ステップS115の各処理でも、ステップS116の処理でも、起動停止回数制約違反を発生させる処理は実質上選択されなくなる。このような操作をステップS36及びS37に組み込むことにより、燃料消費量制約違反の解消と起動停止回数制約の遵守を同時に達成することができる。
そして、上述した起動停止回数制約違反解消処理との協調性を加味したステップS36の消費量不足違反解消処理またはステップS37の消費量過剰違反解消処理後に実行されるステップS38において、解消処理内容が第2の中間需給計画情報としてデータ格納部31に保存される。
すなわち、選択中の燃料消費グループを特定する要素、違反解消処理を適用した火力発電ユニットを特定する要素、選択実行された違反解消処理の内容(解消処理を実行した日、実行した解消処理パターン、持替え単価)、処理実行の前後の起動停止状態等が第2の中間需給計画情報としてデータ格納部31に処理順に番号付けして登録(保存)される。ステップ38において、最後に保存された第2の中間需給計画情報が最終需給計画情報となる。
その後、図13のステップS42における結果処理部36による最終結果の処理が終了すると、策定結果表示部37は、上記一連の処理において獲得された結果のうち、初期需給計画情報及び最終需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部31より読み出し、読み出した表示用出力結果に基づく内容をディスプレイ等の画面に表示してシステム操作者に提供する。なお、初期需給計画情報及び最終需給計画情報は、前述したようにステップS10及び最後に実行されるステップS38においてデータ格納部31に格納された情報に相当する。
このように、実施の形態3の発電機需給計画装置における燃料消費量制約違反解消処理は、暫定需給計画情報に基づき、起動停止回数制約違反を生じさせず、かつ、持替え価格(U1〜U3,Uc等)が最小になるように、計画対象期間における解消対象の発電機の起動停止状態あるいは出力内容の変更を順次行い、最終的に最終需給計画情報を得ている。
上述したように、実施の形態3の発電機需給計画装置は、計画対象期間に亘る需給計画の立案時に、最経済計画策定部33によって得た最経済計画結果である需給計画を既定した初期需給計画情報をベースにしている。そして、実施の形態3の発電機需給計画装置は、初期需給計画情報に基づき、起動停止回数制約及び燃料消費量制約という対象期間の総和量でそれぞれ規定される制約条件を共に考慮して、起動停止回数制約違反解消処理部34及び燃料消費量制約違反解消処理部35により経済的な需給計画を規定した最終需給計画情報を実用的に作成することができる。
すなわち、実施の形態3の発電機需給計画装置は、需給計画において重要な考慮要素となる起動停止回数制約及び燃料消費量制約という物理的な制約を満足する経済的な実用的計画である複数の発電機における需給計画を得ることができる効果を奏する。
また、違反解消履歴表示部38は、第1及び第2の中間需給計画情報並びに暫定需給計画情報に関する表示用出力結果をデータ格納部31から読み出し、読み出した表示用出力結果に基づく内容をディスプレイ等の画面に表示してシステム操作者に提供する。なお、第1の中間需給計画情報及び暫定需給計画情報並びに第2の中間需給計画情報は、前述したように、ステップS19(図12)並びにステップS38(図13)においてデータ格納部31に保存された情報であり、逐次的な解消処理(中間処理)の履歴としての役割を果たす。
このように、実施の形態3の発電機需給計画装置は、データ格納部31、結果処理部36、策定結果表示部37及び違反解消履歴表示部38からなる出力結果情報出力部を備えることにより、システム操作者は結果を理解しやすい最経済結果から出発して、中間的な解消処理内容を含み、最終的に燃料消費量制約違反の解消された結果に至るまでのすべての処理内容を参照することができる。このため、どのような理由で最終結果(最終需給計画情報)が得られたのかを詳細に確認し妥当性を検証することができる。
実施の形態3では、図12,図13に示すフローチャートを用いて発電機需給計画方法を説明したが、図12,図13は実質的に発電機出力決定における需給計画方法を実現するためのソフトウェア処理であり、この処理をプログラムとして記録媒体に格納することができる。例えば、上記プログラムをハードディスクに格納したりすることができる。また、上記プログラムを記録したコンピュータ読取可能な媒体は、ハードディスクの他にCD−ROMやDVD等であってもよい。
10,20,30 データ処理部、11,21,31 データ格納部、12,22,32 データ設定部、13,23,33 最経済計画策定部、14,34 起動停止回数制約違反解消処理部、15,25,36 結果処理部、16,26,37 策定結果表示部、24,35 燃料消費量制約違反解消処理部。