近時、表示装置は、薄型、軽量、低消費電力を特徴とする液晶表示装置(LCD)が幅広く普及し、携帯電話機(モバイルフォン、セルラフォン)やPDA(パーソナルデジタルアシスタント)、ノートPC等のモバイル機器の表示部に多く利用されてきた。しかし最近では液晶表示装置の大画面化や動画対応の技術も高まり、モバイル用途だけでなく据置型の大画面表示装置や大画面液晶テレビも実現可能になってきている。これらの液晶表示装置は高精細表示が可能なアクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置が利用されている。はじめに、図15を参照して、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置の典型的な構成について概説しておく。なお、図15には、液晶表示部内の1画素に接続される主要な構成が、等価回路によって模式的に示されている。
一般に、アクティブマトリクス駆動方式の液晶表示装置の表示部960は、透明な画素電極964及び薄膜トランジスタ(TFT)963をマトリックス状に配置した半導体基板(例えばカラーSXGAパネルの場合、1280×3画素列×1024画素行)と、面全体に1つの透明な電極966を形成した対向基板と、これら2枚の基板を対向させて間に液晶を封入した構造からなる。
スイッチング機能を持つTFT963を走査信号により制御し、TFT963がオンとなるときに、映像信号に対応した階調電圧が画素電極964に印加され、各画素電極964と対向基板電極966との間の電位差により液晶の透過率が変化し、該電位差を液晶容量965で一定期間保持し、画像を表示するものである。
半導体基板上には、各画素電極964へ印加する複数のレベル電圧(階調電圧)を送るデータ線962と、走査信号を送る走査線961とが格子状に配線され(上記カラーSXGAパネルの場合、データ線は1280×3本、走査線は1024本)、走査線961及びデータ線962は、互いの交差部に生じる容量や対向基板電極との間に挟まれる液晶容量等により、大きな容量性負荷となっている。
なお、走査信号はゲートドライバ970より走査線961に供給され、また各画素電極964への階調電圧の供給はデータドライバ980よりデータ線962を介して行われる。
1画面分のデータの書き換えは、1フレーム期間(1/60・秒)で行われ、各走査線で1画素行毎(ライン毎)、順次、選択され、選択期間内に、各データ線より階調電圧が供給される。
なお、ゲートドライバ970は、少なくとも2値の走査信号を供給すればよいのに対し、データドライバ980は、データ線を階調数に応じた多値レベルの階調電圧で駆動することが必要とされる。このため、データドライバ980のバッファ部は、高精度電圧出力可能な差動増幅器が用いられている。
また、近時、液晶表示装置において、高画質化(多色化)が進み、少なくとも26万色(RGB各6ビット映像データ)、さらには2680万色(RGB各8ビット映像データ)以上の需要が高まっている。
このため、多ビット映像データに対応した階調電圧を出力するデータドライバは、極めて高精度な電圧出力が要求されるばかりか、映像データを処理する回路部の素子数が増加し、データドライバLSIのチップ面積が増加しコスト高を招く要因となってきている。この問題について、以下に詳しく説明する。
図16は、図15のデータドライバ980の構成を示した図であり、データドライバ980の要部をブロックにて示したものである。図16を参照すると、データドライバ980は、ラッチアドレスセレクタ981と、ラッチ982と、階調電圧発生回路983と、複数のデコーダ984と、複数のバッファ回路985と、を備えている。
ラッチアドレスセレクタ981は、クロック信号CLKに基づき、データラッチのタイミングを決定する。ラッチ982は、ラッチアドレスセレクタ981で決定されたタイミングに基づいて、映像デジタルデータをラッチし、STB信号(ストローブ信号)に応じて、一斉に、各デコーダ984に対して、ラッチしたデータを出力する。階調電圧発生回路983は、映像データに対応した階調数の階調電圧を生成する。デコーダ984は、入力されたデータに対応した階調電圧を1つ選択して出力する。バッファ回路985は、デコーダ984から出力された階調電圧を入力し、電流増幅して出力電圧Voutとして出力する。
例えば6ビット映像データが入力される場合、階調数は64であり、階調電圧発生回路983は、64レベルの階調電圧を生成する。デコーダ984は、64レベルの階調電圧から1個の階調電圧を選択する回路を備える。
一方、8ビット映像データが入力される場合、階調数は256となり、階調電圧発生回路983は、256レベルの階調電圧を生成し、デコーダ984は、256レベルの階調電圧から1個の階調電圧を選択する回路を備える。
このように多ビット化すると階調電圧発生回路983やデコーダ984の回路規模が増大する。例えば6ビットから8ビットに増加した場合、それぞれの回路規模は4倍以上となる。したがって多ビット化によりデータドライバLSIのチップ面積が増加してコスト高となる。
これに対して、多ビット化してもデータドライバLSIのチップ面積の増加を抑える構成が、後記特許文献1に提案されている。図17は、後記特許文献1に提案されている構成の一例(後記特許文献1の第16図に対応する)である。
図17を参照すると、このデータドライバは、図16に示したデータドライバとは、階調電圧発生回路986、デコーダ987、及びバッファ回路988の構成が異なっている。図17のデータドライバにおいて、階調電圧発生回路986は、2階調おきに階調電圧を生成し、デコーダ987の階調電圧線数を、図16のデコーダ984の約1/2に減らしている。デコーダ987は、映像データに応じて、2つの階調電圧を選択し、バッファ回路988に出力する。バッファ回路988は、入力された2つの階調電圧、及び2つの階調電圧の中間の階調電圧を電流増幅して出力することができる。
後記特許文献1に開示されている構成においては、2つの階調電圧を入力し2つの階調電圧の一方と、2つの階調電圧の中間電圧とを選択的に出力できるバッファ回路988を具備することで、デコーダ987の階調電圧線数を半分に削減し、デコーダ987の回路規模を削減し、省面積化すなわち低コスト化の実現を目指すものである。
これに対して、多ビットデジタル信号をアナログ信号に変換する回路(デジタルアナログ変換器、「DAC」と略記する)を大幅に省面積化する構成が、インターポレーションDACとして後記特許文献2及び特許文献3に提案されている。特許文献3は特許文献2を改良したもので、特に出力電圧精度の性能を向上させる構成の提案である。したがって以下では特許文献3について説明する。図18は、後記特許文献3に提案されているDACの構成を示す図である。図18を参照すると、このDACは、各タップからn個のアナログ電圧を出力する抵抗ストリングと、各タップから1つの電圧V1を選択するS1aからSnaのn個のスイッチよりなる第1スイッチ群と、電圧V1と隣り合うレベルの電圧V2を選択するS1bからSnbのn個のスイッチよりなる第2スイッチ群と、電圧V1、V2の一方を選択するスイッチSW1、SW2、SW3よりなる第3スイッチ群と、4つの差動対(Q0A、Q0B)、(Q1A、Q1B)、(Q2A、Q2B)、(Q3A、Q3B)を備えた増幅器200を備えて構成されている。これら4つの差動対は、それぞれ個別の電流源で駆動され、4つの差動対の出力対はカレントミラー回路(QL1、QL2)の入出力対に共通接続され、さらに4つの差動対の出力信号は、差動増幅器205に差動入力されて、出力端子に出力電圧Voutを出力する。4つの差動対(Q0A、Q0B)、(Q1A、Q1B)、(Q2A、Q2B)、(Q3A、Q3B)のそれぞれの入力対の一方は、出力端子に共通接続されたフィードバック構成とされている。また4つの差動対(Q0A、Q0B)、(Q1A、Q1B)、(Q2A、Q2B)、(Q3A、Q3B)の入力対の他方は、1つが電圧V1を選択する第1スイッチ群に接続され、残り3つが、電圧V1、V2の一方を選択する第3スイッチ群(SW1、SW2、SW3)にそれぞれ接続されている。このDACの動作は、まず入力データの上位ビット信号に基づくMSB(Most Significant Bit)サブワードデコーダの出力により、第1及び第2スイッチ群(S1a、・・・Sna)、(S1b、・・・Snb)のK番目のスイッチ(Ska及びSkb)をオンとして隣り合うタップの電圧をV1、V2として選択し、入力データの下位ビット信号に基づくLSB(Least Significant Bit)サブワードデコーダの出力により更に第3スイッチ群(SW1、SW2、SW3)のスイッチの切り替えを制御する。
第3スイッチ群(SW1、SW2、SW3)の選択条件により、図19に示すような電圧V1、V2が異なる比率で内分された4個のレベル電圧Vo1〜Vo4が出力端子に出力される。具体的には、
・第3スイッチ群の3個のスイッチSW1、SW2、SW3が、全て電圧V1を選択すると、電圧V1と等しいVo1が出力される。
・3個のスイッチSW1、SW2、SW3のうち2つが電圧V1、1つが電圧V2を選択するとVo2が出力される。
・3個のスイッチのうち1つが電圧V1、2つが電圧V2を選択するとVo3が出力される。
・3個のスイッチ全てが電圧V2を選択するとVo4が出力される。
なお、4個のレベル電圧Vo1〜Vo4が高い電圧精度でリニア出力されるためには、上記4つの差動対(Q0A、Q0B)、(Q1A、Q1B)、(Q2A、Q2B)、(Q3A、Q3B)が同一サイズのトランジスタから構成され、各差動対を駆動する電流源の電流も一定に制御されることが必要である。以上のような構成及びスイッチ制御により、図18のDACは、MSB及びLSBサブワードにより、合計で、4n個のレベル電圧を出力端子に出力することができる。
このDACの原理を、図16の階調電圧発生回路983やデコーダ984、バッファ回路985に適用すると、階調電圧発生回路983から出力される階調電圧数を更に大幅に減らすことができ、その階調電圧を選択するデコーダ984の素子数も削減され、回路規模を大幅に削減することが可能となる。
本発明をより詳細に説述するため、図面を参照して以下に説明する。図1は、本発明の第1の実施の形態の差動増幅器の構成を示す図である。図1を参照すると、本発明の第1の実施の形態の差動増幅器は、第1差動対(101,102)と、第2差動対(103,104)と、第1及び第2差動対のそれぞれの出力対に接続され第1及び第2差動対に対して共通の能動負荷をなすカレントミラー回路(111,112)と、該カレントミラー回路(111,112)の出力信号を入力し出力端子3に電圧Voutを出力する増幅回路6と、第1及び第2差動対に流す電流(I1、I2)を制御する電流制御回路7と、を備えている。なお、以下では、トランジスタ101、102からなる差動対を、差動対(101,102)とも表記する。
第1差動対のトランジスタ101の制御端(ゲート)は、入力端子T1に接続され、第2差動対のトランジスタ103の制御端(ゲート)は、入力端子T2に接続され、第1及び第2差動対のトランジスタ102、104の制御端は、共に、出力端子3に接続されて出力電圧Voutを帰還入力した構成とされている。また入力端子T1、T2の端子電圧をそれぞれVT1、VT2とする。
電流制御回路7は、低電位側電源VSSに接続され第1差動対(101,102)に流れる電流I1を駆動する電流制御トランジスタ126と、低電位側電源VSSに接続され第2差動対(103,104)に流れる電流I2を駆動する電流制御トランジスタ127と、電流制御トランジスタ126、127のそれぞれの制御端(ゲート)に選択的に複数の電圧(VB1〜VB4)を与えることのできるスイッチ群(SW1a〜SW4a、SW1b〜SW4b)により構成される。
また、図1において、第1の差動対(101,102)と第2差動対(103,104)のそれぞれの出力対と高電位側電源VDDとの間に接続されたカレントミラー回路(111,112)は、代表的な構成が示されている。すなわち、カレントミラー回路(111,112)は、ソースが電源VDDに接続されドレインとゲートがダイオード接続されカレントミラー回路の入力端をなすトランジスタ112と、ソースが電源VDDに接続されゲートがトランジスタ112のゲートと共通接続されドレインがカレントミラーの出力端をなすトランジスタ111とで構成されている。該カレントミラー回路の入力端(トランジスタ112のドレイン)は、トランジスタ102、104のドレインと共通接続され、同カレントミラー回路の出力端(トランジスタ111のドレイン)は、トランジスタ101、103のドレインと共通接続され、差動段の出力端4をなし、増幅段6の入力端に接続されている。
図1に示した差動増幅器は、入力端子T1、T2の電圧VT1、VT2を所定の内分比で内分した電圧を出力することができ、電流制御回路7によって、電流制御トランジスタ126、127に流れる電流I1、I2の電流比の制御に応じて、異なる内分比の複数レベルの電圧を出力することができる。
図2は、本発明の第2の実施の形態の差動増幅器の構成を示す図である。図1に示した前記第1の実施の形態の差動増幅器においては、トランジスタ101、103の差動入力端T1、T2にはそれぞれ所定の電圧がVT1、VT2として与えられる構成であるが、図2の本発明の第2の実施の形態の差動増幅器においては、2つの供給電圧(V1、V2)の端子T1、T2への入力を選択的に行う入力制御回路8を備えた構成とされている。図2において、第1の差動対(101,102)と第2差動対(103,104)はそれぞれ特性の異なるトランジスタで構成してもよい。
一方、電流制御トランジスタ126、127の制御端には、固定電圧VB11、VB12がそれぞれ印加され、電流I1、I2は、一定の電流比に制御されている。それ以外の構成は、図1の差動増幅器と同様である。したがって図2の差動増幅器は、端子T1、T2の電圧VT1、VT2を電流I1、I2の電流比に応じた内分比で内分された電圧を出力することができる。
入力制御回路8は、供給電圧V1が与えられた端子と、端子T1及び端子T2との間にそれぞれ接続されたスイッチ151、152と、供給電圧V2が与えられた端子と、端子T1及び端子T2との間にそれぞれ接続されたスイッチ154、155で構成されている。これらのスイッチを制御することで、2つの供給電圧(V1,V2)を重複も含めて端子T1、T2に選択的に与えることができる。
図2に示す第2の実施の形態の差動増幅器においては、端子T1、T2の電圧VT1、VT2を所定の内分比で内分した電圧を出力することができるので、入力制御回路8によって、電圧V1、V2が選択的に端子T1及び端子T2に入力されることにより、電圧V1、V2と同じレベルの電圧及び電圧V1、V2を内分する2つのレベルの電圧を出力することができる。
なお、図1及び図2に示した前記第1及び第2の実施の形態の差動増幅器において、第1の差動対(101,102)と、第2差動対(103,104)は、Nチャネルトランジスタ(同一極性)とされているが、Pチャネルトランジスタの2つの差動対を含む差動増幅器であってもよく、また異なる極性ごとに2つの差動対を備えた構成でもよいことは勿論である。
次に、図1及び図2に示した前記第1及び第2の実施の形態の差動増幅器について、以下にそれぞれの作用を説明する。
まず、図1に示した前記第1の実施の形態の差動増幅器において、端子T1、T2の電圧VT1、VT2が互いに異なる電圧値で、VT1<VT2の関係を満たす場合の作用について、図3および図4を参照して説明する。
図3は、図1の差動増幅器において、電流I1、I2の電流比が等しい場合の作用を説明するための図である。
また図1の差動増幅器の2つの差動対(101,102)、(103,104)の各トランジスタはそれぞれ同一特性とする。
さらに、トランジスタ101,102,103,104に流れる電流(ドレインーソース間電流)を、それぞれIa,Ib,Ic,Idとする。
図3は、ドレイン・ソース間電流Ids(縦軸)と電源VSSに対する電圧V(横軸)との関係図で、トランジスタ101、102とトランジスタ103、104の2つの特性曲線(Ids−Vg特性)を示している。
図3において、特性曲線1は、トランジスタ101、102に対応し、特性曲線2はトランジスタ103、104に対応し、2つの差動対の各トランジスタ101、102、103、104は、それぞれの特性曲線上に動作点a,b,c,dを有する。
なお、図1のトランジスタ101〜104は同一特性としているので、2つの特性曲線は単に横軸方向にずれているだけである。このように、特性曲線が2つの差動対でずれているのは、2つの差動対のそれぞれのテール(ソース結合端子)が個別に電位変動できるためである。
上記条件におけるトランジスタ101〜104の電流の関係は、差動対(101,102)に関して次式(1)が成り立つ。
Ia+Ib=I1 ・・・(1)
差動対(103,104)に関して次式(2)が成り立つ。
Ic+Id=I2 ・・・(2)
カレントミラー回路(111,112)に関して次式(3)が成り立つ。
Ia+Ic=Ib+Id ・・・(3)
さらに、電流比の条件(I1=I2)と、(1)、(2)より、次式(4)が成り立つ。
Ia+Ib=Ic+Id ・・・(4)
なお、カレントミラー回路の出力端4(トランジスタ111のドレイン)は、増幅回路6に、電圧信号のみを与え、増幅回路6との間に定常的な電流は流れないものとする。
これより上記関係式(3)、(4)を解くと、次式(5)、(6)の関係が得られる。
Ia=Id ・・・(5)
Ib=Ic ・・・(6)
すなわち、上記条件の場合には、トランジスタ101、104に流れる電流が等しく(Ia=Id)、トランジスタ102、103に流れる電流が等しい(Ib=Ic)状態が図1の差動増幅器の安定状態となる。
このときの各動作点a,b,c,dは、特性曲線1、2と直線Ids=Ia=Id、Ids=Ib=Icとの交点上に存在する。またトランジスタ102,104の動作点b,dは、図3の横軸Vに対して、V=Voutが共通であるので動作点b,dが定まり、動作点a,cも定まり、図3に示す通りとなる。また、このとき、トランジスタ101、102、103、104の特性曲線上の4つの動作点を結ぶ図形は、平行四辺形となる。そして、平行四辺形の辺adと辺bcは互いに等しいことから、出力電圧Voutは電圧VT1、VT2の中間電圧となる。
以上により、トランジスタ101〜104は同一特性とし、電流I1、I2の電流比を等しくしたときの出力電圧Voutは、電圧VT1、VT2を1対1に内分する電圧(中間電圧)となる。
次に、電流比を変えた場合について、図4を参照して説明する。図4は、図1の差動増幅器の2つの差動対(101,102)、(103,104)の各トランジスタをそれぞれ同一特性とし、電流I1,I2を、I1がI2の約2倍となる電流値(I1=I2×2)に設定した場合の作用を示す図である。
また、端子電圧VT1、VT2は、図3と同様に、VT1<VT2とする。
また、図4は、図3と同様に、ドレイン・ソース間電流Ids(縦軸)と電源VSSに対する電圧V(横軸)との関係を示しており、特性曲線1は、トランジスタ101、102に対応し、特性曲線2は、トランジスタ103、104に対応し、2つの差動対の各トランジスタ101、102、103、104はそれぞれの特性曲線上に動作点a,b,c,dを有する。図4においても、トランジスタ101〜104の電流の関係として、上式(1)乃至(3)が成り立つ。
電流I1,I2の関係(I1=I2×2)より、次式(7)が成り立つ。
Ia+Ib=2×(Ic+Id) ・・・(7)
これより上記関係式(3)、(7)を解くと、次式(8)、(9)が得られる。
Ia=(Ic+3×Id)/2 ・・・(8)
Ib=(3×Ic+Id)/2 ・・・(9)
電流源126と127の電流I1とI2が異なる場合には、図3の場合のような単純な関係式にはならず、図1の差動増幅器の出力安定状態は、図4に示すような状態のときとなる。
なお、トランジスタ102,104の動作点b,dは、横軸Vに対して、V=Voutが共通である。
このとき、電流I1、I2の電流比は、I1がI2の約2倍に設定されているため、出力電圧Voutは、電圧VT1寄りの値をとる。したがって、電流I1、I2の電流比を調整することで、電圧VT1、VT2をおよそ1対2に内分する出力電圧Voutを取り出すことができる。
なお、実際には、2つの差動対のトランジスタ特性や電流I1、I2の大きさにもある程度依存するが、これらを最適に設定すれば、電流I1、I2の電流比を、出力電圧Voutによる電圧VT1、VT2の内分比の逆数にある程度対応させることが可能である。ただし、その場合でも、電圧VT1、VT2の電圧差が大きくなると、内分比の逆数と電流比の関係は徐々にずれてくる。
なお、図4では、電流源126と127の電流I1、I2がI1>I2の場合について説明したが、I2=I1×2とすれば、電圧VT1、VT2を2対1に内分する出力電圧Voutを取り出すことができることは容易に理解できる。
また、一般的には、図1の差動増幅器は、端子T1、T2への入力電圧が固定されている構成であるが、電流I1、I2の電流比をI1>I2とすれば、出力電圧Voutは電圧VT1、VT2を電圧VT1寄りに内分する電圧となり、I1<I2とすれば、電圧VT2寄りに内分する電圧となり、それぞれの電流比の差を大きくするほど、電圧VT1またはVT2により近い電圧を出力することができる。そして条件の最適化により、電流I1、I2の電流比と、電圧VT1、VT2の内分比の逆数とを対応させることが可能である。したがって図1の差動増幅器は、電流制御回路7により、電流I1、I2の電流比を切替制御すれば、電圧VT1、VT2を内分する複数レベルの電圧を出力することができる。
なお、電圧VT1、VT2が異なる電圧に設定されている場合でも、電流制御回路7において、複数のバイアス電圧(VB1〜VB4)のいずれかが、電流制御トランジスタ126または127をオフとする電圧に設定され、そのバイアス電圧の選択により電流I1、I2の一方が遮断されれば、電圧VT1またはVT2を出力電圧Voutとして出力することができる。これは、電流が遮断された差動対が非動作状態となるため、他方の差動対に入力される電圧がボルテージフォロワ作用により出力されるためである。
したがって、図1の差動増幅器は、電流制御回路7のスイッチ群の制御により、差動対(101,102)、(103,104)に流れる電流I1、I2の電流比を変化させることで、2つの入力電圧と同じ電圧、及び、2つの入力電圧を内分する複数レベルの電圧を出力することができる。
次に、図2を参照して説明した本発明の第2の実施の形態の差動増幅器の作用について説明する。本発明の第2の実施の形態の差動増幅器は、入力制御回路8により、2つの供給電圧V1、V2(V1<V2)を重複も含めて選択的に端子T1、T2へ供給することができる。なお図2においては、差動対(101,102)、(103,104)に流す電流I1、I2の電流比は一定に設定されている。
入力制御回路8により、端子T1、T2へ同じ電圧が供給された場合、すなわち、電圧V1またはV2の一方が端子T1、T2に共通に入力される場合(VT1=VT2)には、図2の差動増幅器は、通常のボルテージフォロワ回路と同じ作用となり、出力電圧Voutは、端子T1、T2に共通に入力された電圧に等しくなる。
一方、入力制御回路8により、端子T1、T2へ異なる電圧が供給された場合、すなわち、電圧V1またはV2の一方が端子T1に、他方が端子T2に入力される場合について以下に説明する。ここで、電流I1、I2の電流比が、I1>I2、もしくはI1<I2の場合、図2の差動増幅器は、図4で説明したのと同様に、出力電圧Voutは、端子T1、T2の電圧VT1、VT2を一定の内分比X対Y(但しX=Yを除く)に内分する電圧となる。
電流I1、I2の電流比が固定されている差動増幅器の場合、もし入力制御回路8がなく、端子T1、T2へ供給される2つの電圧が固定されていると、出力電圧Voutは、X対Yの内分比に内分された1つのレベル電圧のみとなる。
しかし図2の差動増幅器では、入力制御回路8により、端子T1、T2へ供給される電圧を入れ替えることができるので、出力電圧Voutは、端子T1、T2へ供給される2つの電圧に対してX対Yの内分比に内分されたレベル電圧または、Y対Xの内分比に内分された別のレベル電圧をとることができる。
すなわち、図2の差動増幅器は、入力制御回路8により、端子T1、T2へ供給される電圧を入れ替えることで、異なる内分比の複数レベルの電圧を出力することができる。
次に、図2の差動増幅器の別の例について説明する。図2の差動増幅器においては、電流I1、I2の電流比を等しくI1=I2とし、差動対(101,102)、(103,104)のトランジスタを異なる特性のもので構成してもよい。このときの作用について図5を参照して、説明する。
図5は、図2の差動増幅器において、2つの差動対(101,102)、(103,104)を、差動対(101,102)のW/L比(チャネル長Lに対するチャネル幅Wの比)が差動対(103,104)のW/L比の2倍に設定した場合の作用を示す図である。
図5では、入力制御回路8により、端子T1に電圧V1(VT1=V1)、端子T2に電圧V2(VT2=V2)がそれぞれ選択入力された場合の例を示しており、電圧V1、V2は、V1<V2であるとする。
図5は、図3と同様に、ドレイン・ソース間電流Ids(縦軸)と電源VSSに対する電圧V(横軸)との関係を示し、特性曲線1はトランジスタ101、102に対応し、特性曲線2はトランジスタ103、104に対応し、2つの差動対の各トランジスタ101、102、103、104はそれぞれの特性曲線上に動作点a,b,c,dを有する。
なお、差動対(101,102)、(103,104)は、異なるW/L比で構成されているため、2つの特性曲線は横軸方向にずれるとともに、2つの特性曲線の傾きも異なっている。
図2の差動増幅器におけるトランジスタ101〜104の電流の関係は、電流I1、I2の電流比がI1=I2であるときは、図3の場合と同様となり、上式(1)〜(6)が成り立つ。
このときの各動作点a,b,c,dは、特性曲線1、2と、直線Ids=Ia=Id、Ids=Ib=Icとの交点上に存在する。また、トランジスタ102,104の動作点b,dは、図5の横軸Vに対して、V=Voutが共通であるので、各動作点は図5に示す通りとなる。
図5より、特性曲線1は、トランジスタサイズ比に対応して傾きが特性曲線2の2倍となっており、このときの出力電圧Voutは、端子T1、T2の電圧VT1、VT2を1対2に内分する電圧となる。なお、この電圧VT1、VT2に対する内分比は、2つの差動対(101,102)、(103,104)のサイズ比に依存しており、最適に設定することにより、所望の内分比に内分した電圧を出力することができる。
したがって図5に示すように、入力制御回路8により、端子T1に電圧V1(VT1=V1)、端子T2に電圧V2(VT2=V2)がそれぞれ選択入力された場合には、出力電圧Voutは電圧V1、V2を1対2に内分する電圧となる。一方、入力制御回路8により、端子T1に電圧V2(VT1=V2)、端子T2に電圧V1(VT2=V1)がそれぞれ選択入力された場合には、出力電圧Voutは電圧V1、V2を2対1に内分する電圧となる。このように、図2の差動増幅器は、入力制御回路8により、端子T1、T2へ供給される電圧を入れ替えることで、異なる内分比の複数レベルの電圧を出力することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図6は、本発明の第3の実施の形態のデジタル・アナログ変換器(「DAC」と略記する)の構成を示す図である。図6を参照すると、本発明の第3の実施の形態のDACは、図18に示したDACの増幅器200及び第3スイッチ群(SW1,SW2,SW3)を、図1に示した本発明の第1の実施の形態の差動増幅器を用いた差動増幅器300で置き換えたものである。
図6のDACにおいて、差動増幅器300の端子T1、T2に入力する2つの電圧を選択する手段は、図18と同じ構成である。すなわち、各タップから(n+1)個のアナログ電圧V1、V2、…、Vn+1を出力する抵抗ストリングと、各タップから1つの電圧VK(但し、Kは1からnまでの整数のいずれか1つ)を選択するS1aからSnaのn個のスイッチで構成された第1スイッチ群と、電圧VKと隣り合うレベルの電圧VK+1を選択するS1bからSnbのn個のスイッチで構成された第2スイッチ群とで構成され、入力データの上位ビット信号に基づくMSBサブワードデコーダの出力により第1及び第2スイッチ群のK番目のスイッチ(Ska及びSkb)をオンとして、隣合うタップの電圧をVK(=VT1)、VK+1(=VT2)として選択することができる。
本発明の第3の実施の形態のDACが、図18に示したDACと相違する点は、本発明の第3の実施の形態では、入力データの下位ビット信号に基づくLSBサブワードデコーダの出力により、電流制御回路7の各スイッチを制御している点である。すなわち本発明の第3の実施の形態においては、差動対(101,102)、(103,104)に流す電流I1、I2の電流比を電流制御回路7によって制御することで、端子T1、T2に入力された電圧VK、VK+1を内分する複数レベルの電圧を出力することができる。そして、電圧VK、VK+1を内分する電圧のレベル数を増やしても、差動対の数は増えないため、図18に示した構成と比べて特段の省面積化を実現できる。なお、本発明の第3の実施の形態において、電圧VK、VK+1を内分する電圧のレベル数を増やした場合、電流制御トランジスタ126、127の制御端に供給するバイアス電圧数やバイアス電圧の切替を行うスイッチは増えるものの、バイアス電圧は、複数個の差動増幅器300で共有することができる。この場合、スイッチは、最小サイズのトランジスタで構成することができるため、面積増加への影響は十分に小さい。一方、図18では、MSBサブワードデコーダの出力で選択した電圧V1、V2を内分する電圧のレベル数を増やした場合、差動対及びそれを駆動する電流源の数と、差動対の一端に電圧V1、V2を選択入力する第3スイッチ群の数が増加する。特に、差動対と電流源を構成するトランジスタは、素子ばらつきがリニア出力の精度に直接影響するため、ある程度大きなサイズに設定する必要があり、面積増加への影響が大きい。
この図6のDACの原理を、図17の階調電圧発生回路986やデコーダ987、バッファ回路988に適用すれば、階調電圧発生回路986から出力される階調電圧数を図16の階調電圧数の1/2よりも更に大幅に減らすことができ、その階調電圧を選択するデコーダ984の素子数も削減され、回路規模を、特段に削減することが可能となる。
図7は、本発明の第4の実施の形態のデジタル・アナログ変換器(DAC)の構成を示す図である。図18や図6に示したDACでは、抵抗ストリングから生成されるn個の電圧のうち隣合うタップの2つの電圧(VK、VK+1)を選択して差動増幅器に入力する構成とされているが、図7に示した本発明の第4の実施の形態においては、隣接する2つのタップ電圧だけでなく、2個隣や3個隣などのタップ電圧など、任意の2つのタップ電圧を選択することにより、出力電圧レベル数に対してタップ電圧数を削減することができる。
図7を参照すると、本発明の第4の実施の形態のDACにおいて、差動増幅器400の端子T1、T2に入力される2つの電圧を選択する手段は、各タップからn個のアナログ電圧V1、V2、…、Vnを出力する抵抗ストリングと、各タップから1つの電圧VS(但し、Sは1からnまでの整数の中の1つ)を選択するS1aからSnaのn個のスイッチで構成された第1スイッチ群と、1つの電圧VJ(但し、Jは1からnまでの整数の中の1つ)を選択するS1bからSnbのn個のスイッチで構成された第2スイッチ群とで構成され、入力データの全ビット信号(MSB+LSB)に基づくデコーダの出力により第1及び第2スイッチ群のS番目及びJ番目のスイッチ(Ssa及びSjb)をオンとして、重複も含めた任意のタップ電圧の組合せ(VS、VJ)を端子T1、T2の電圧(VT1、VT2)として選択することができる。なお、図7のDACは、本発明の第2の実施の形態の差動増幅器(図2)において、入力制御回路8の電圧供給端子数をn個に拡張したものと考えることもできる。
また、図7のDACでは、差動増幅器400は、端子T1、T2に入力される2つの電圧の電圧差が広い電圧範囲でも、所定の内分比を保って高精度出力が可能な差動増幅器であることが望ましい。例えば、図3を参照して説明したような、2つの入力電圧に対して中間電圧を出力することのできる差動増幅器は好適な構成の1つである。すなわち、差動増幅器400は、図2の差動増幅器において、2つの差動対(101,102)、(103,104)がそれぞれ同一特性のトランジスタで構成され、2つの差動対(101,102)、(103,104)のそれぞれに流れる電流I1、I2の電流比が等しい(I1=I2)構成の差動増幅器を用いることができる。
この差動増幅器400の作用は、図3を参照して説明したものと同様とされる。すなわち、出力電圧Voutは、端子T1、T2の電圧VT1、VT2を1対1に内分する電圧となる。この作用は、図7において端子T1、T2に入力された電圧VS(=VT1)、VJ(=VT2)の電圧差に関係なく成立し、また、2つの差動対の各トランジスタが同一特性でありさえすれば、特性曲線の形状に関係なく成立する。なお、差動対を構成するトランジスタが、チャネル長変調効果等を有する場合には、2つの電圧VS、VJの電圧差が非常に大きくなると、出力電圧Voutが中間電圧から徐々にずれる場合もあるが、概して、比較的広い範囲で成り立つ作用である。
次に、図7の第1及び第2スイッチ群の任意の組合せ電圧(VS、VJ)の選択により、出力電圧レベル数に対してタップ電圧数を削減できるようにした一具体例を説明する。なお以下の具体例では、出力電圧レベルが等間隔となるリニア出力を実現する例について説明する。
図8は、図7の差動増幅器400の端子T1、T2に入力される2つの入力電圧の選択方法の一例を示す図である。図8には、等間隔の9つのレベルの電圧と、図7の抵抗ストリングの各タップから出力される互いに異なる4つの電圧A,B,C,Dと、端子T1、T2に入力される2つの電圧の組合せの対応が表形式で示されている。なお、上記2つの電圧の組合せは、端子T1、T2のいずれに入力されてもよい。
図8において、端子T1、T2に入力される2つの電圧は、9レベルの出力電圧に対して、その1/2以下の4個しか設けられていない。しかし、その2つの電圧の組合せは、例えば電圧Aが2つの端子(T1、T2)の一方に選択入力されるとき、他方は電圧A、B、C、Dの4通りが可能である。このように、4つの電圧による2つの電圧の組合せは、全部で10通りあり、それによって9レベルのリニア出力が可能となっている。
4個の入力電圧A、B、C、Dは、9レベルの出力電圧に対して、それぞれ1、3、7、9番目の電圧レベルに設定される。
またこのとき、5レベル目の出力を実現する端子(T1、T2)へ入力される2つの電圧の組合せは、電圧BとCの組合せ、電圧AとDの組合せの2通りが可能である。
また、図8において、9レベルの出力電圧のうち、1〜8レベルを、3ビットのデジタルデータ(D2,D1,D0)に対して(0,0,0)〜(1,1,1)の各データに対応させることができる。
図9は、図7の差動増幅器400の端子T1、T2に入力される2つの電圧の選択方法の他の具体例である。
図9を参照すると、図9は、等間隔の17レベルの電圧と、図7の抵抗ストリングの各タップから出力される互いに異なる6つの電圧A,B,C,D,E,Fと、端子T1、T2に入力される2つの電圧の組合せの対応図である。前記2つの電圧の組合せは、端子T1、T2のいずれに入力されても構わない。
図9において、端子T1、T2に入力される電圧は、17レベルの出力電圧に対して、その約1/3の6個しか設けられていない。しかし、6つの電圧による2つの電圧の組合せは全部で21通りあり、それによって17レベルのリニア出力が可能となっている。6個の電圧A、B、C、D、E、Fは、それぞれ1、3、7,11,15,17番目の電圧レベルに設定される。また7、9、11番目のレベルを出力する2値入力の組合せは複数通りある。また図9において、17レベル電圧のうち、1〜16レベルを4ビットのデジタルデータ(D3,D2,D1,D0)に対して(0,0,0,0)〜(1,1,1,1)の各データに対応させることができる。
図8及び図9では、端子T1、T2に入力される2つの電圧の中間電圧を出力可能な差動増幅器に対して、図7の抵抗ストリングの各タップから供給する電圧数を削減するための代表的な実施例を、9レベル及び17レベルのリニア出力について示したが、さらに多値レベルのリニア出力の構成にも適用することができる。
本発明によれば、出力電圧数m(但し、mは8の倍数プラス1)個のレベルがリニア出力である場合、図7の抵抗ストリングの各タップから供給する電圧数(端子T1、T2に入力される電圧数)を[{(m−1)/4}+2]個にまで削減することが可能である。
このとき、図7の抵抗ストリングの各タップから供給される電圧は、m個の出力レベルに対して、1番目、(3+4k)番目、m番目のレベルに設定し、kを0以上の整数とし、(3+4k)番目は(m−2)番目を含むように設定する。
図8は、m=9、k=0,1の場合であり、図9は、m=17、k=0,1,2,3の場合である。
以上のように、図7のDACは、差動増幅器400が端子T1、T2への2つの入力電圧に対して内分比が固定された電圧しか出力できないが、抵抗ストリングの各タップで生成されるn個の電圧から、入力データに応じて第1及び第2スイッチ群により組合せ電圧を選択することにより、抵抗ストリングの各タップから出力されるn個の電圧の2倍以上の多くのレベル電圧数を出力することができる。
本発明の実施例のDACを、図17の階調電圧発生回路986やデコーダ987、バッファ回路988に適用することで、階調電圧発生回路986から出力される階調電圧数を図16の階調電圧数の1/2よりも更に大幅に減らすことができ、その階調電圧を選択するデコーダ984の素子数も削減され、回路規模を大幅に削減することが可能となる。
以上、本発明に係る差動増幅器やデジタル・アナログ変換器の実施の形態について説明したが、図1から図7の各構成は、ガラスやプラスチックなど絶縁性基板上に形成したバックゲートのないトランジスタに置き換えた構成も可能であり、図1から図9までに説明したのと同様の作用と効果を実現することができる。
また本発明による差動増幅器またはデジタル・アナログ変換器を備えたデータドライバは、デコーダ面積を小さくすることで低コスト化を可能とし、図15のデータドライバとして用いれば、液晶表示装置の低コスト化を実現することができる。
なお、図15の液晶表示装置は、データドライバ980を、シリコンLSIとして個別に形成して表示部960に接続する構成としてもよく、あるいは、ガラス基板等の絶縁性基板にポリシリコンTFT(薄膜トランジスタ)等を用いて、回路を形成することにより表示部960と一体で形成することも可能である。特にデータドライバと表示部を一体で形成する場合には、データドライバの面積が小さくなることで、狭額縁化(表示部960の外周と基板外周との幅の短縮)も可能となる。
その他の方式も含め、このような表示装置のデータドライバのいずれに対しても、本発明に係る差動増幅器を適用することにより、表示装置の低コスト化や狭額縁化を促進することができる。例えば、液晶表示装置と同様に、データ線に多値レベルの電圧信号を出力して表示を行うアクティブマトリクス駆動方式の有機ELディスプレイなどの表示装置に対しても、本発明に係る差動増幅器を適用できることは勿論である。
次に、上記した本発明の実施の形態の差動増幅器の作用及び効果を実証するシミュレーション結果について、添付図面を参照して、実施例として、さらに説明する。
図10は、本発明の第1の実施形態の効果を確認するための差動増幅器のシミュレーション回路である。また図10は、図1に示した第1の実施の形態の一具体例を示す図にもなっており、増幅段6は、出力端子3の充電作用を行うPチャネルトランジスタ109と、出力端子3と電源VSS間に接続され、放電作用を行う電流源110で構成されている。その他の構成は、図1に示した構成と同様である。
トランジスタ109は、高電位側電源VDDと出力端子3との間に接続され、そのゲートはカレントミラー回路(111,112)の出力端4(トランジスタ111のドレイン)と接続される。電流源110は、低電位側電源VSSと出力端子3との間に接続される。図10には図示していないが、トランジスタ109と出力端子3との間に必要に応じて位相補償容量が設けられる。
図11は、図10の差動増幅器に対して、2つの差動対(101,102)、(103,104)をそれぞれ同一特性のトランジスタで構成し、それぞれの差動対に流れる電流I1、I2の電流比が等しい(I1=I2)条件とし、端子T1、T2の電圧VT1、VT2の中間電圧を出力する図3の作用を行ったときの入出力特性(シミュレーション)である。
図11は、差動増幅器の端子T1、T2の2つの電圧VT1、VT2のうち、電圧VT1を一定とし、電圧VT2をVT1に対して±0.5Vの範囲で変化させたときの出力電圧Voutの出力特性を示している。
このとき出力電圧Voutは、2つの電圧(VT1、VT2)を2等分する電圧となり、この出力期待値は、図11において、破線で示されている。
図11より、出力電圧Voutは、5Vを中心として±0.5Vの範囲で、出力期待値(破線)とよく一致しており、広い電圧範囲において、2つの入力電圧の中間電圧を高精度に出力できることが確認できる。
上記の結果は、図7に示した本発明の第4の実施の形態のDACにおいても当てはまり、図7の差動増幅器400において、2つの差動対(101,102)、(103,104)をそれぞれ同一特性のトランジスタで構成し、それぞれの差動対に流れる電流I1、I2の電流比が等しい(I1=I2)条件とすれば、広い電圧範囲において、端子T1、T2の電圧VT1、VT2の中間電圧を高精度に出力できる。したがって、図8や図9を参照して説明した効果を実現することができ、出力電圧レベル数に対してタップ電圧数の大幅削減が可能である。
図12は、図10の差動増幅器に対して、2つの差動対(101,102)、(103,104)をそれぞれ同一特性のトランジスタで構成し、それぞれの差動対に流れる電流I1、I2の電流比を電流制御回路7の制御によって変化させたときの入出力特性(シミュレーション)である。
図12では、電流I1、I2の電流比を、2対1、及び1対2に切替制御したときのそれぞれの入出力特性を示している。出力電圧Voutは、電流I1、I2の電流比が、2対1、及び1対2に切替制御されると、それぞれVo2、Vo3となる。また端子T1、T2の電圧(VT1、VT2)を、1対2、及び2対1に内分する出力期待値を、それぞれ、図中破線のVo2出力期待値、Vo3出力期待値で示す。
図12より、出力電圧Voutは、端子T1、T2の電圧(VT1、VT2)の内分比がほぼ電流I1、I2の電流比の逆数に対応し、±0.1Vの範囲で出力期待値(Vo2出力期待値、Vo3出力期待値)とほぼ一致していることが確認できる。なお、出力電圧Voutが±0.1Vを超える電圧範囲では、出力期待値から次第に大きくずれてくる。
図13は、図10の差動増幅器に対して、2つの差動対(101,102)、(103,104)をそれぞれ同一特性のトランジスタで構成し、それぞれの差動対に流れる電流I1、I2の電流比を、電流制御回路7の制御によって、1対3、1対1、3対1に変化させたときの入出力特性(シミュレーション結果)を示す図である。
図13において、出力電圧Voutは、電流I1、I2の電流比が、3対1、1対1、及び1対3に切替制御されると、それぞれVo2、Vo3、Vo4となる。また端子T1、T2の電圧(VT1、VT2)を、1対3、1対1、及び3対1に内分する出力期待値をそれぞれ、図中破線のVo2出力期待値、Vo3出力期待値、Vo4出力期待値で示す。
図13より、出力電圧Voutは、端子T1、T2の電圧(VT1、VT2)の内分比がほぼ電流I1、I2の電流比の逆数に対応し、±0.1Vの範囲で出力期待値(破線)とほぼ一致していることが確認できる。なお、0.1Vを超える電圧範囲では、Vo2及びVo4については、それぞれVo2出力期待値、Vo4出力期待値から次第に大きくずれるが、電流I1、I2の電流比が1対1の出力電圧Vo3は、図11と同様に広い電圧範囲においてVo3出力期待値とよく一致する。
なお、図12、図13において、出力電圧Voutによる電圧VT1、VT2の内分比が電流I1、I2の電流比の逆数にほぼ対応する例を示したが、この関係は、トランジスタ特性や電流I1、I2の設定により異なる場合がある。
以上、図12及び図13より、本発明の第1の実施形態の差動増幅器において、端子T1、T2に入力された2つの電圧を異なる比に内分する複数個の電圧レベルを出力できることが示された。また入力電圧と同レベルも含めた複数個の電圧レベルがリニア出力できることも示された。また本発明の第1の実施形態の差動増幅器を用いた本発明の第3の実施形態のDACと同様の効果を実現できる。
図14は、図2に示した本発明の第2の実施の形態の差動増幅器において、図10と同様の増幅段6を用いたときの入出力特性(シミュレーション)である。図14は、図2の差動増幅器に対して、差動対(101,102)のトランジスタサイズW/L比を、差動対(103,104)のトランジスタサイズW/L比の2倍に設定し、それぞれの差動対に流れる電流I1、I2の電流比は等しく(I1=I2)設定し、入力制御回路8により2つの供給電圧V1、V2の端子T1、T2への入力を切替制御したときの入出力特性である。
図14において、出力電圧Voutは、端子(T1、T2)に入力される電圧が(V1、V2)及び(V2、V1)に切替制御されると、それぞれVo2、Vo3となる。また電圧(V1、V2)を、1対2、及び2対1に内分する出力期待値を、それぞれ、図中破線のVo2出力期待値、Vo3出力期待値で示す。
図14より、出力電圧Voutは、±0.1Vの範囲で出力期待値(破線)とほぼ一致していることが確認できる。なお、0.1Vを超える電圧範囲では、出力電圧Voutは、出力期待値から緩やかにずれてくる。図14より、本発明の第2の実施形態の差動増幅器において、端子T1、T2に入力された2つの電圧を異なる比に内分する複数個の電圧レベルを出力できることが示された。また入力電圧と同レベルも含めた複数個の電圧レベルがリニア出力できることも示された。
以上、4つのシミュレーション結果に示したように、本発明の差動増幅器は、端子T1、T2へ入力される2つの電圧を複数に分割した電圧を出力することができ、特に、前記2つの電圧の電圧差が比較的小さい電圧範囲(例えば0.1V程度)では、複数に分割した電圧を高精度に出力することができる。
図20は、本発明の第6の実施の形態に係る差動増幅器の構成を示す図である。図1及び図6に示した例では、同一極性の2つの差動対(101,102)、(103,104)を備えた差動増幅器について説明したが、異なる極性ごとに2つの差動対を備えた構成であってもよく、2つの極性それぞれが2つの差動対を備えた構成でもよいことは勿論である。図20の差動増幅器は、2つの極性それぞれが2つの差動対を備えた構成の一実施例であり、異なる極性の差動対を備えたことで、ダイナミックレンジの拡大、リニアリティの向上の点で、図1等の構成に優っている。図20を参照すると、この差動増幅器は、低電位側電源VSSに接続された電流源126で駆動されるnチャネル型差動対(101,102)と、同じく低電位側電源VSSに接続された電流源127で駆動されるnチャネル型差動対(103,104)と、2つのnチャネル型差動対の出力対と高電位側電源VDDとの間に接続され、2つのnチャネル型差動対のそれぞれの出力対に対して共通の能動負荷をなすカレントミラー回路(Pチャネルトランジスタ111、112)と、同カレントミラー回路の出力信号を入力し出力端子3に電圧を出力する増幅回路6を備えている。なお、図20では、図面作成上の都合で、図1のスイッチ群SW1a,SW1b〜SW4a,SW4bは省略されているが、2つのnチャネル型差動対(101,102)、(103,104)のそれぞれに流す電流I1、I2を与える電流源126、127を制御する電流制御回路7は、図1に示した構成とされる。
また、高電位側電源VDDに接続された電流源226で駆動されるpチャネル型差動対(201,202)と、同じく高電位側電源VDDに接続された電流源227で駆動されるpチャネル型差動対(203,204)と、2つのpチャネル型差動対の出力対と低電位側電源VSSとの間に接続され、2つのpチャネル型差動対のそれぞれの出力対に対して共通の能動負荷をなすカレントミラー回路(Nチャネルトランジスタ211、212)と、該カレントミラー回路の出力信号を入力し出力端子3に電圧を出力する増幅回路16を備える。2つのpチャネル型差動対(201,202)、(203,204)のそれぞれに流す電流I11、I12を与える電流源226、227を制御する電流制御回路17は、図面作成上の都合で省略されているが、図1に示した電流制御回路7と同様とされる。また各差動対の入力端(ゲート端子)は、トランジスタ101、201のゲートが入力端子T1に共通接続され、トランジスタ103、203のゲートが入力端子T2に共通接続され、トランジスタ102、104、202、204のゲートが出力端子3に共通接続される。なお端子T1、T2の端子電圧をVT1、VT2とする。
図20の差動増幅器においても、電流制御回路7,17により、2つの電圧(VT1,VT2)を任意の比に内分する出力電圧を取り出すことができる。また、図2及び図7に示した例においても、図20と同様に、異なる極性ごとに2つの差動対を備えた構成であってもよく、2つの極性それぞれが2つの差動対を備えた構成でもよい。この場合、図20の差動増幅器に対して、電流源126、127、226、227をそれぞれ所定の電流値に設定し、端子T1、T2に図2の入力制御回路8を付加した構成、もしくは図7の抵抗ストリングとS1a〜Snbのスイッチ群を付加した構成としてもよいことは勿論である。
なお、図1及び図2に示した前記第1及び第2の実施の形態の差動増幅器において、第1の差動対(101,102)と、第2差動対(103,104)は、Nチャネルトランジスタ(同一極性)とされているが、Pチャネルトランジスタの2つの差動対を含む差動増幅器であってもよく、また極性が互いに異なる2つの差動対を備えた構成でもよいことは勿論である。
図1、図2、図6、図7に示した例では、2つの差動対(101、102)、(103、104)の出力対と負荷回路(111、112)との接続点を増幅段6に入力する構成とされているが、増幅段6を差動増幅段で構成し、2つの差動対(101、102)、(103、104)の出力対と負荷回路(111、112)との接続点対を、差動で増幅段6の入力対に接続する構成としてもよい。また、図1、図2、図6、図7に示した例では、2つの差動対(101、102)、(103、104)に対して負荷回路(111、112)を共通としているが、個別に負荷回路を備えても良いことは勿論である。
以上本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は、上記実施例にのみ限定されるものではなく、本願特許請求の範囲の各請求項の発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
上記実施例で説明した差動増幅器は、MOSトランジスタで構成されており、液晶表示装置の駆動回路では、例えば多結晶シリコンからなるMOSトランジスタ(TFT)で構成してもよい。また、上記実施例では、集積回路に適用した例を示したが、ディスクリート素子構成にも適用できることは勿論である。