JP2009220198A - ホーニング加工方法およびホーニング加工装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】コスト面で不利となる既存の設備についての大規模な変更をともなうことなく、研削抵抗の調整が可能となり、ビビリの発生および研削効率をコントロールすることができるホーニング加工方法を提供すること。
【解決手段】砥面11の被加工面2に対する押付けによって砥石10を成形する砥粒群を構成する各砥粒が被加工面2に対して押し付けられる方向と、砥面11の被加工面2に沿う摺動によって前記各砥粒が被加工面2の周方向に沿って移動する方向とのなす角度のうち、被加工面2側と反対側、かつ前記移動する方向について前側の角度(α1max、α1min参照)を、砥粒すくい角とし、この砥粒すくい角を、砥面11の全体について、0°〜略90°の範囲内または略90°〜180°の範囲内に設定する。
【選択図】図6
【解決手段】砥面11の被加工面2に対する押付けによって砥石10を成形する砥粒群を構成する各砥粒が被加工面2に対して押し付けられる方向と、砥面11の被加工面2に沿う摺動によって前記各砥粒が被加工面2の周方向に沿って移動する方向とのなす角度のうち、被加工面2側と反対側、かつ前記移動する方向について前側の角度(α1max、α1min参照)を、砥粒すくい角とし、この砥粒すくい角を、砥面11の全体について、0°〜略90°の範囲内または略90°〜180°の範囲内に設定する。
【選択図】図6
Description
本発明は、例えばエンジンを構成するシリンダブロックが有するシリンダボア等の円筒状の内周面に対して行われるホーニング加工に関する。
従来、例えば、エンジンを構成するシリンダブロックが有するシリンダボアの仕上げ加工として、ホーニング加工が行われている。かかるホーニング加工は、円筒状の内周面(円形孔を形成する面)に対する研削加工である。ホーニング加工においては、一般に、ホーニング加工装置に備えられるホーニングヘッドが有する砥石により、被加工面が研削される。
具体的には、ホーニングヘッドは、全体として略円筒状に構成され、その外周面部に砥石を有する。また、ホーニングヘッドは、所定の駆動手段によって軸方向の移動および軸心を回転軸とする回転が可能に設けられる主軸の先端部に構成されることにより、筒軸方向(主軸の軸方向)の往復運動、および主軸の軸心を回転軸とする回転運動が可能に設けられる。
ホーニングヘッドが有する砥石は、例えば次のようにして設けられる。すなわち、ホーニング用の砥石は、長尺状に形成され、その長手方向がホーニングヘッドの筒軸方向に沿うように、ホーニングヘッドの外周面部において、周方向に等間隔を隔てた状態で複数箇所に設けられる。このように配設される砥石は、ホーニングヘッドの略円筒形状における径方向外側に向けて押圧変位可能に設けられる。具体的には、砥石は、ホーニングヘッドにおいて径方向に移動可能に設けられ一般にシュー等と称される台部材に対して取り付けられた状態で設けられる。砥石を保持するシューは、ホーニングヘッドにおいて軸方向に移動可能に設けられ一般にテーパコーン等と称されるテーパ部材に対してテーパ係合した状態となる。つまり、シューは、テーパコーンが軸方向に移動することによるテーパ作用を受けることで、径方向外側に向けて押圧変位する(例えば、特許文献1参照。)。
そして、ホーニング加工に際しては、前記のように砥石を有するホーニングヘッドが、円筒状の内周面(被加工面)により形成される孔部(例えばシリンダボア)に挿入される。ホーニングヘッドが孔部に挿入された状態において、前述したテーパ作用によって砥石が径方向外側に向けて押圧変位することで被加工面に対して押し付けられるとともに、ホーニングヘッドの往復運動および回転運動が行われる。これにより、ホーニングヘッドが有する砥石が被加工面に作用し、被加工面が研削される。
ところで、ホーニング加工においては、その加工中に砥石の被加工面に対する作用によってビビリ(鳴き)が発生する場合がある。ビビリとは、被加工面に作用する砥石、もしくはワーク(被加工物)が振動する現象である。したがって、ホーニング加工において生じるビビリは、異常音をともない、被加工面の形状に振動が反映されることによる加工の不具合を招く。
また、ホーニング加工において生じるビビリは、砥石における砥粒の脱落(脱粒)を発生させる原因となり、加工不可の状態を招く場合もある。すなわち、ホーニングヘッドが有する砥石は、通常、粉末状の砥粒がメタルボンド等の結合剤が用いられて固められることで、所定の形状に形成される。そして、ホーニング加工に用いられる砥石においては、その使用される過程において、研削抵抗によって脱粒が生じるとともに、新しい砥粒が現れることで、砥面(砥石面)の加工性能の回復が図られる。こうした砥粒の入替わりの作用において、ビビリによる脱粒は、砥粒の十分な入替わりをともなわない場合がある。かかる場合、砥粒同士を結合する結合剤の部分が砥面の部分に現れ、加工が困難な状態となる場合がある。
ホーニング加工において生じるビビリの要因としては、ホーニング加工のための設備側の剛性不足が挙げられる。ビビリの発生については、特に、ホーニングヘッドにおいて砥石を保持するシューの剛性不足による影響が比較的大きいと考えられる。これは、ホーニングヘッドを構成するシューが被加工面により形成される孔部の径(孔径)の大きさによって寸法の変更をともなうこと、および実験等において孔径が従来の実績にないほど小径である場合にビビリの発生が顕著となったことに基づく。
すなわち、従来、量産性の向上や低コスト化を図る観点等から、ホーニングヘッドの構成として、被加工面により形成される孔径の大きさの変更に対し、シューの寸法の変更をもって対応する構成がある。つまり、異なる孔径の加工対象について、ホーニングヘッドを構成する本体部やテーパコーンや砥石等は標準的な設備として共用されるとともに、シューの寸法の調整により、孔径への対応が行われる構成である。かかる構成においては、加工対象の孔径が小さくなるほど、ホーニングヘッドを構成するシューの寸法が小さくなり、シューの剛性が不足することとなる。このため、前記のとおり加工対象の孔径が小径である場合にビビリの発生が顕著になったことから、シューの剛性不足がビビリの発生に比較的大きく影響すると考えられる。
一方で、ホーニング加工において生じるビビリは、加工条件(シューの径方向外側への移動速度(拡張速度)等)や砥石の種類(砥粒の大きさや硬さや密度や結合剤の種類等)の調整によって低減させることができる。しかし、こうした加工条件や砥石の種類の調整によるビビリの低減効果には限界がある。
これらのことから、現在、ホーニング加工のための設備側の剛性や装置構成の改善が検討されている。しかし、設備側の剛性や装置構成の改善に際しては、既存の設備についての変更の規模が大きくなり、その分、コストが高くなる等の困難がともなう。
ホーニング加工中のビビリの発生には、砥石が被加工面に作用することによる研削抵抗の大きさが影響する。すなわち、研削抵抗が大きいほどビビリが発生しにくくなり、研削抵抗が小さいほどビビリが発生しやすくなる。一方で、研削抵抗は、加工における研削効率(加工能率)に影響する。すなわち、研削抵抗が大きいほど研削効率が低下し、研削抵抗が小さいほど研削効率が向上する。つまり、ホーニング加工に際し、研削抵抗が調整されることにより、ビビリの発生や研削効率のコントロールが可能となる。
特開2002−103200号公報
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、コスト面で不利となる既存の設備についての大規模な変更をともなうことなく、研削抵抗の調整が可能となり、ビビリの発生および研削効率をコントロールすることができるホーニング加工方法およびホーニング加工装置を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、円筒状の内周面を被加工面とし、互いに結合した砥粒群により成形され前記被加工面に沿う形状の砥面を有する砥石を用い、前記砥面が前記被加工面に対して押し付けられるとともに前記被加工面に沿って摺動するように、前記砥石を移動させることで、前記被加工面を研削するホーニング加工方法であって、前記砥面の前記被加工面に対する押付けによって前記砥粒群を構成する各砥粒が前記被加工面に対して押し付けられる方向と、前記砥面の前記被加工面に沿う摺動によって前記各砥粒が前記被加工面の周方向に沿って移動する方向とのなす角度のうち、前記被加工面側と反対側、かつ前記移動する方向について前側の角度を、砥粒すくい角とし、前記砥粒すくい角を、前記砥面の全体について、0°〜略90°の範囲内または略90°〜180°の範囲内に設定するものである。
請求項2においては、前記砥面の前記被加工面に対する押付けは、前記被加工面の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる押付部材の、前記押圧変位にともなう前記砥石の変位により行われるものであり、前記砥粒すくい角の設定に際し、前記砥石の変位の方向を、前記押圧部材の前記押圧変位の方向から変換するものである。
請求項3においては、円筒状の内周面を被加工面とし、互いに結合した砥粒群により成形され前記被加工面に沿う形状の砥面を有する砥石を備え、前記砥面を前記被加工面に対して押し付けるとともに前記被加工面に沿って摺動させるように、前記砥石を移動させることで、前記被加工面を研削するホーニング加工装置であって、前記砥面の前記被加工面に対する押付けによって前記砥粒群を構成する各砥粒が前記被加工面に対して押し付けられる方向と、前記砥面の前記被加工面に沿う摺動によって前記各砥粒が前記被加工面の周方向に沿って移動する方向とのなす角度のうち、前記被加工面側と反対側、かつ前記移動する方向について前側の角度である砥粒すくい角が、前記砥面の全体について、0°〜略90°の範囲内、または略90°〜180°の範囲内に設定されているものである。
請求項4においては、前記ホーニング加工装置は、前記被加工面の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる押付部材を備え、前記砥面の前記被加工面に対する押付けを、前記押付部材の、前記押圧変位にともなう前記砥石の変位により行うものであり、前記砥粒すくい角の設定に際し、前記砥石の変位の方向が、前記押付部材の前記押圧変位の方向から変換されているものである。
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
すなわち、本発明によれば、ホーニング加工において、コスト面で不利となる既存の設備についての大規模な変更をともなうことなく、研削抵抗の調整が可能となり、ビビリの発生および研削効率をコントロールすることができる。
すなわち、本発明によれば、ホーニング加工において、コスト面で不利となる既存の設備についての大規模な変更をともなうことなく、研削抵抗の調整が可能となり、ビビリの発生および研削効率をコントロールすることができる。
本発明は、例えばシリンダボアの仕上げ加工として行われるホーニング加工において、被加工面(被削面)に作用する砥石を形成する砥粒群を構成する各砥粒について、ホーニングヘッドを構成するシューの拡張等によって被加工面に対して押し付けられる方向と、ホーニングヘッドの回転等による砥石の移動にともなって被加工面に沿って摺動する方向とのなす角度に着目したものである。そして、この砥粒についての前記角度を所定の角度範囲内に設定することにより、ビビリの低減あるいは加工能率の向上を図ろうとするものである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下に説明する実施の形態においては、ホーニング加工における被加工面を、エンジンを構成するシリンダブロックが有するシリンダボアを形成する円筒状の内周面とする。つまり、本実施形態に係るホーニング加工は、シリンダボアに対する仕上げ加工として行われるものである。ここで、シリンダボアとは、エンジンにおいてクランク軸に連結されるピストンを摺動可能に内装する円筒状の孔部である。
まず、本実施形態に係るホーニング加工を行うための装置構成等について、図1および図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係るホーニングヘッドの構成を示す側面図である。図2は同じくホーニングヘッドの構成を示す軸方向視一部断面図である。
図1および図2に示すように、本実施形態に係るホーニング加工は、シリンダボア1の仕上げ加工として行われる。つまり、本実施形態に係るホーニング加工は、シリンダボア1を形成する円筒状の内周面2を被加工面とするものである(以下「被加工面2」とする。)。
ホーニング加工においては、ホーニング加工装置に備えられるホーニングヘッド3が有する砥石10により、被加工面2が研削される。ホーニングヘッド3は、全体として略円筒状に構成され、その外周面部に砥石10を有する。ホーニングヘッド3は、ホーニング加工装置において、所定の駆動手段によって軸方向の移動および軸心を回転軸とする回転が可能に設けられる主軸8の先端部に構成される。これにより、ホーニングヘッド3は、筒軸方向(主軸8の軸方向)の往復運動(矢印X1参照)、および主軸8の軸心を回転軸とする回転運動(図1の矢印X2、図2の矢印X3参照)が可能に設けられる。
なお、以下の説明においては、主軸8の軸方向(図1における上下方向)についてホーニングヘッド3が設けられる側を下、その反対側を上とする上下方向を、本実施形態に係る装置構成における上下方向とする。また、全体として略円筒状に構成されるホーニングヘッド3の径方向に対応する方向を単に「径方向」ともいう。
砥石10は、長尺状に形成され、その長手方向が上下方向に沿うように、ホーニングヘッド3の外周面部において、周方向に等間隔を隔てた状態で複数箇所(本実施形態では8箇所)に設けられる。このように配設される砥石10は、径方向外側に向けて押圧変位可能に設けられる。なお、砥石10としては、例えばGC砥石、ダイヤモンド砥石等が用いられる。
ホーニングヘッド3は、本体4と、砥石10を保持する複数のシュー5と、テーパコーン6(図2)と、ガイドパッド7とを備える。
本体4は、略円筒状に構成され、その筒軸心線が主軸8の軸心線に対して一致するように(同心配置された状態で)、主軸8の下端部に連結される。したがって、本体4は、主軸8の軸方向の往復運動、および軸心を回転軸とする回転運動にともなって、主軸8と一体的に往復運動および回転運動する。
シュー5は、略矩形板状の部材であり、その板面に沿う方向が、上下方向かつ径方向に沿うような姿勢で設けられる。シュー5は、本体4に対して支持された状態で設けられる。複数のシュー5は、ホーニングヘッド3において、筒軸心位置から放射状となるように配設される。本実施形態では、シュー5は、ホーニングヘッド3において8個備えられ、これら8個のシュー5が、本体4に対して、周方向に等間隔を隔てた状態で配置される(図2参照)。
シュー5は、本体4に対して、本体4に設けられる溝部4aに収容された状態で、径方向外側に向けて押圧変位可能に設けられる。シュー5の径方向外側への押圧変位は、テーパコーン6の移動によって行われる。
すなわち、図示では省略するが、テーパコーン6は、本体4の内部において軸方向(上下方向)に移動可能に設けられ、下側に向けてテーパするテーパ面を有する。一方で、各シュー5は、前記テーパ面に沿う斜面を有し、この斜面をテーパコーン6が有するテーパ面に沿わせることで、テーパコーン6に対してテーパ係合した状態となる。そして、テーパコーン6が、図示せぬ駆動機構によって下側(図2において奥側)に向けて押し下げられることにより、テーパコーン6のテーパ面の移動が、シュー5が有する斜面を介してシュー5の径方向外側への移動に変換される。つまり、シュー5は、テーパコーン6と係合する斜面によって、下側に向けて移動するテーパコーン6を、テーパ面に対する摺動をともなって受けることで、径方向外側に向けて押圧変位する。したがって、テーパコーン6の下側への移動により、8個のシュー5が放射状に移動して拡張する態様となる。
シュー5は、本体4の溝部4aに収容された状態で径方向外側となる端面に、砥石10を保持する。砥石10は、溝部4aに収容された状態のシュー5により、本体4の外周面部に対して径方向外側において保持された状態となる。本実施形態では、シュー5が溝部4aに収容された状態において、砥石10を保持することとなるシュー5の外側端面が、本体4の外周面部に臨み、このシュー5の外側端面に対して、砥石10が固定されて取り付けられる。したがって、シュー5の外側端面は、前記のとおり長尺状に形成されその長手方向が上下方向に沿うように設けられる砥石10を全面的に保持することができるような形状および面積を有する。このように、砥石10は、テーパコーン6によって移動させられるシュー5の外側端面に対して取り付けられた状態で設けられることにより、径方向外側に向けて押圧変位可能に設けられる。
砥石10は、粉末状の砥粒がメタルボンド等の結合剤が用いられて固められたものが、所定の形状に成形されたものである。砥石10においては、シュー5に保持された状態での径方向外側の面が、被加工面2に対して作用する砥面(研削面)11となる。砥面11は、被加工面2の形状、つまり円筒状の内周面に沿う形状を有する。したがって、砥面11は、円筒状の一部形状を有する。言い換えると、砥面11は、図2に示すようなホーニングヘッド3の筒軸方向視(以下単に「軸方向視」という。)において、円弧状となる形状を有する。
ガイドパッド7は、シリンダボア1のホーニング加工に際し、被加工面2に対して接触することで、ホーニングヘッド3のシリンダボア1に対する挿入のガイド、およびホーニングヘッド3のシリンダボア1における位置決めを行うためのものである。ガイドパッド7は、砥石10と同様に、長尺状に形成され、その長手方向が上下方向に沿うように、ホーニングヘッド3の外周面部において設けられる。本実施形態では、ガイドパッド7は、ホーニングヘッド3の外周面部において、周方向に等間隔を隔てた状態で8箇所、隣り合う砥石10の間に設けられる。ガイドパッド7は、例えばボルト等の締結具が用いられることで、本体4に対して固定される。
以上のような装置構成により行われるシリンダボア1のホーニング加工に際しては、まず、主軸8の上下方向の移動により、ホーニングヘッド3が、シリンダボア1に挿入される。ホーニングヘッド3がシリンダボア1に挿入された状態において、テーパコーン6の移動にともなうシュー5の径方向外側への押圧変位により、シュー5に保持される砥石10が被加工面2に対して押し付けられるとともに、ホーニングヘッド3の上下方向の往復運動および回転運動が行われる。これにより、砥石10が被加工面2に作用し、被加工面2が研削される。
以上のように、本実施形態に係るホーニング加工方法においては、シリンダボア1を形成する円筒状の内周面が被加工面2とされ、互いに結合した砥粒群により成形され被加工面2に沿う形状の砥面11を有する砥石10が用いられる。そして、砥面11が被加工面2に対して押し付けられるとともに被加工面2に沿って摺動するように、砥石10が移動させられることで、被加工面2が研削される。ここで、砥石10の移動は、主軸8の往復運動および回転運動によるホーニングヘッド3の往復運動および回転運動にともなうものである。
そして、本実施形態に係るホーニング加工方法においては、砥石10において砥面11を形成する部分の砥粒について、軸方向視において把握される「砥粒すくい角」という概念が用いられる。本実施形態に係る砥粒すくい角について、図3〜図5を用いて説明する。図3は砥粒すくい角についての説明図である。図4は図3におけるB1〜B3部分の各部分についての部分拡大図である。図5は砥粒すくい角と研削抵抗および研削効率との関係を示す図である。
なお、ここでの砥粒すくい角についての説明(以下「本説明」という。)では、便宜上、本実施形態に係るホーニング加工装置が備える砥石10とは異なるものである砥石110を用いて説明する。また、本説明では、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石110の被加工面2に対する移動の方向(周方向についての移動の方向)は、図3に示す軸方向視においてホーニングヘッド3が反時計方向に回転(左回転)する場合における砥石110の移動の方向(矢印Y1参照)に対応する。
図3に示すように、本説明に係る砥石110は、被加工面2に沿う形状、つまり軸方向視で円弧状となる砥面111を有する。砥面111は、砥石110がシュー5に保持された状態で、軸方向視において、ホーニングヘッド3の軸心に対応する位置を通る直線であって、シュー5の径方向外側への変位方向(拡張方向、矢印Y2参照)に対応する直線Lについて線対称な形状を有する。つまり、砥面111は、図3に示す軸方向視で直線Lを中心に左右対称な形状となる。
このような形状の砥面111を有する砥石110が、被加工面2に押し付けられた状態でホーニングヘッド3の回転によって周方向に移動する場合においては、砥面111の各部についての、被加工面2に押し付けられる方向(以下「押圧方向」という。)に対する、被加工面2に対する周方向の移動の方向(以下「移動方向」という。)が、砥面111における周方向の位置によって異なることとなる。言い換えると、砥面111においては、押圧方向は、砥面111の周方向の位置によらずに同じ方向となる一方、移動方向は、砥面111の周方向の位置により異なることとなる。
すなわち、砥面111の各部についての押圧方向は、シュー5の拡張方向に対応する。したがって、シュー5の径方向外側への変位にともなう砥石110の一体的な変位方向が、その砥石110が有する砥面111についての押圧方向となる。このため、砥面111の各部についての押圧方向は、砥面111の周方向の位置によらず同じ方向となる(矢印Y2参照)。
これに対し、砥面111の各部についての移動方向は、砥面111の周方向の位置によって異なる方向となる。このように砥面111の各部についての移動方向が異なることは、かかる移動方向が、その砥面111の各部における、軸方向視での、砥面111あるいは被加工面2がなす円弧形状についての略接線方向に沿うことから導かれる。
なお、こうした砥面111の各部についての押圧方向および移動方向は、砥面111を形成する部分の各砥粒112(図4参照)について把握できる方向であるといえる。すなわち、前記のとおり粉末状の砥粒112が固められることで砥粒群により成形されたものである砥石110による研削において、砥面111が被加工面2に接触した状態で、実際に被加工面2に作用するのは、砥面111を形成する部分の砥粒112である。このことから、砥面111の各部を形成する各砥粒112について、前述した押圧方向および移動方向が把握できる。
したがって、砥面111の各部についての押圧方向は、砥面111の被加工面2に対する押付けによって砥粒群を構成する各砥粒112が被加工面2に対して押し付けられる方向となる。また、砥面111の各部についての移動方向は、砥面11の被加工面2に沿う摺動によって各砥粒112が被加工面2の周方向に沿って移動する方向となる。
砥面111の周方向についての各部における、砥粒112についての押圧方向と移動方向との関係について、図4を用いて説明する。ここでは、砥面111における周方向についての各部として、図3に示すように、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石110の移動の方向(矢印Y1参照)について後側部分(B1部分)と、同じく砥石110の移動の方向について前側部分(B3部分)と、これらの部分の間の中央部分(B2部分)とを用いる。図4(a)は、図3におけるB1部分についての部分拡大図、図4(b)は、図3におけるB2部分についての部分拡大図、図4(c)は、図3におけるB3部分についての部分拡大図である。なお、図4においては、便宜上、被加工面2および砥面111の円弧形状等を誇張して示している。
図4(a)〜(c)に示すように、各砥粒112についての押圧方向は、シュー5の移動にともなって砥石110が一体的に移動する方向(矢印Z参照)に対応する方向となる。このため、各砥粒112についての押圧方向は、砥面111の周方向の全範囲について同じ方向となる。つまり、砥面111を形成する部分の各砥粒112についての押圧方向は、その砥面111の周方向の位置によらずに同じ方向(図4において下側に向かう方向)となる。一方で、各砥粒112についての移動方向は、前述のように砥面111の周方向の位置によって異なる方向となる。
具体的には、図4(a)に示すように、砥面111における周方向についての、砥石110の移動の方向について後側部分(以下砥面111について「後側部分」という。)においては、各砥粒112についての移動方向は、いずれについても図4において右下に向かう方向となる(矢印Z1参照)。したがって、図4(a)に示すように、砥面111の後側部分においては、砥粒112の押圧方向(矢印Z参照)と移動方向(矢印Z1参照)とのなす角度である角度θ1は、90°〜180°の角(鈍角)となる。このように、砥粒112の押圧方向と移動方向とのなす角度のうち、被加工面2側と反対側(図4において上側)、かつ移動方向について前側の角度である角度θ1が、砥粒すくい角となる。
同様にして、図4(b)に示すように、砥面111における周方向についての、砥石110の移動の方向について中央部分(以下砥面111について「中央部分」という。)においては、各砥粒112についての移動方向は、いずれについても図4において右に向かう方向となる(矢印Z2参照)。したがって、図4(b)に示すように、砥面111の中央部分においては、砥粒112の押圧方向(矢印Z参照)と移動方向(矢印Z2参照)とのなす角度のうちの砥粒すくい角θ2は、約90°の角(略直角)となる。
同様にして、図4(c)に示すように、砥面111における周方向についての、砥石110の移動の方向について前側部分(以下砥面111について「前側部分」という。)においては、各砥粒112についての移動方向は、いずれについても図4において右上に向かう方向となる(矢印Z3参照)。したがって、図4(c)に示すように、砥面111の前側部分においては、砥粒112の押圧方向(矢印Z参照)と移動方向(矢印Z3参照)とのなす角度のうちの砥粒すくい角θ3は、0°〜90°の角(鋭角)となる。
以上の本説明のように、砥粒すくい角は、砥粒112についての押圧方向と移動方向とのなす角度のうち、被加工面2側と反対側、かつ移動方向について前側の角度として定義される。そして、砥粒すくい角としては、本説明に係る砥石110の砥面111がその後側部分、中央部分、および前側部分の各部分で有するように、90°〜180°の角である場合と、約90°の角である場合と、0°〜90°の角である場合との三つのパターンが存在する。
砥粒すくい角が上記の三つのパターンのうちどのパターンに該当するかは、砥粒112についての移動方向による。すなわち、砥粒すくい角を定める方向のうち、砥粒112についての押圧方向は、砥面111の周方向の位置によらずに同じ方向である。一方、砥粒112についての移動方向は、砥面111の周方向の位置によって異なる方向となる。これらのことから、砥粒すくい角は、砥粒112についての移動方向の変化にともなって変化する。
ここで、砥粒112についての移動方向は、軸方向視で、被加工面2に接触した状態の砥面111において、被加工面2における、ホーニングヘッド3の軸心に対応する位置を通る直線(図3直線L参照)との交点に対応する位置Pを基準として変化する。すなわち、砥面111が被加工面2に接触した状態での砥粒112についての移動方向は、位置Pを基準として、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石110の移動の方向について位置Pよりも後側にある砥粒112については、図3において右下に向かう方向となる。このため、位置Pよりも後側にある砥粒112についての砥粒すくい角は鈍角となる。また、同じく位置Pよりも前側にある砥粒112については、砥粒112についての移動方向は、図3において右上に向かう方向となる。このため、位置Pよりも前側にある砥粒112についての砥粒すくい角は鋭角となる。また、位置Pに対応する位置にある砥粒112については、砥粒112についての移動方向は、図3において右に向かう方向となる。このため、位置Pに対応する位置にある砥粒112についての砥粒すくい角は直角となる。
以上のようにして定まる砥粒すくい角と、ホーニング加工における研削抵抗および研削効率(加工能率)との関係について、図5を用いて説明する。砥粒すくい角の大きさは、ホーニング加工における研削抵抗および研削効率に影響する。
具体的には、図5に示すように、研削抵抗については、砥粒すくい角が大きくなるほど、研削抵抗は小さくなり、逆に、砥粒すくい角が小さくなるほど、研削抵抗は大きくなる。したがって、図3に示す例においては、砥粒すくい角が小さくなる順であるB1部分、B2部分、B3部分の順に、研削抵抗が大きくなる。
そして、こうしたホーニング加工における研削抵抗の大きさは、ホーニング加工において生じるビビリの発生のしやすさに影響する。具体的には、研削抵抗が大きくなるほど、ビビリが発生しにくくなり、逆に、研削抵抗が小さくなるほど、ビビリが発生しやすくなる。したがって、砥粒すくい角が小さくなるほど、ビビリが発生しにくくなる。これは、砥粒すくい角が小さくなるほど、砥粒112の被加工面2に対する過度の食いつきが抑制されることに基づく。
また、図5に示すように、研削効率については、砥粒すくい角が大きくなるほど、研削効率は高くなり、逆に、砥粒すくい角が小さくなるほど、研削効率は低くなる。したがって、図3に示す例においては、砥粒すくい角が小さくなる順であるB1部分、B2部分、B3部分の順に、研削効率が低くなる。
これらのことから、ホーニング加工に用いられる砥石における砥粒すくい角が、砥面全体にわたって、比較的小さくされること、つまり図3に示す例においてB3部分のように鋭角とされることにより、ビビリの発生の抑制という効果が得られる。逆に、砥粒すくい角が、砥面全体にわたって、比較的大きくされること、つまり図3に示す例においてB1部分のように鈍角とされることにより、研削効率の向上という効果が得られる。つまり、前述した砥粒すくい角についての三つのパターンのコントロールにより、ホーニング加工におけるビビリの発生および研削効率のコントロールが可能となる。
そこで、本発明の第一実施形態である本実施形態では、図6に示すように、砥面11の被加工面2に対する押付けによって砥粒が被加工面2に対して押し付けられる方向(押圧方向)と、砥面11の被加工面2に沿う摺動によって砥粒が被加工面2の周方向に沿って移動する方向(移動方向)とのなす角度のうち、被加工面2側と反対側(図6において上側)、かつ移動方向について前側の角度が、砥粒すくい角とされる。なお、図6は図2におけるA部分についての部分拡大図である。
そして、本実施形態では、砥粒すくい角が、砥面11の全体について、0°〜略90°の範囲内に設定されている。
本実施形態では、砥石10の形状の調整により、砥粒すくい角についての調整が図られている。すなわち、砥石10については、例えば、図3に示すような砥粒すくい角が0°〜略90°の範囲内となる部分と略90°〜180°の範囲内となる部分とを含む砥石110から、砥粒すくい角が略90°〜180°の範囲内となる部分が除かれるようにして、砥石形状が調整される。これにより、本実施形態の砥石10においては、砥面11の全体についての砥粒すくい角が、0°〜略90°の範囲内となるように設定されている。
具体的には、図6に示すように、砥石10の砥面11において砥粒すくい角が最大となる位置、即ち砥面11においてホーニングヘッド3の回転にともなう砥石10の移動の方向(矢印C参照)について最も後側の位置は、被加工面2に接触した状態の砥面11において、前述した位置Pの近傍の位置となる。したがって、砥石10の砥面11について最大となる砥粒すくい角α1maxは、略90°となる。そして、砥面11における他の部分についての砥粒すくい角は、砥粒すくい角α1maxよりも小さくなる。つまり、本実施形態の砥石10においては、砥面11の全体についての砥粒すくい角の範囲であるα1max〜α1minの範囲が、0°〜略90°の範囲に含まれることとなる。
本実施形態に係るホーニング加工装置においては、ホーニングヘッド3が備える8個の砥石10の全てについて、砥粒すくい角が、図6に示すように、砥面11の全体について、0°〜略90°の範囲内に設定されている。
このように、砥粒すくい角を、砥面11の全体について0°〜略90°の範囲内に設定することにより、砥面11を形成する部分の砥粒の被加工面2に対する過度の食いつきを抑制することができ、ビビリの発生を抑制することができる。すなわち、例えば図3に示す砥石110のように、砥粒すくい角について、略90°〜180°の範囲内となる部分(B1部分参照)と、0°〜略90°の範囲内となる部分(B2部分参照)との両方が存在する場合(つまり砥粒すくい角が90°±αである場合)との比較において、本実施形態の砥石10によれば、ビビリの発生を低減させることが可能となる。
したがって、本実施形態に係るホーニング加工装置は、ホーニング加工における加工条件(シュー5の径方向外側への移動速度(拡張速度)等)や砥石10の種類(砥粒の大きさや硬さや密度や結合剤の種類等)の調整等によっては、加工中に生じるビビリについて十分な低減効果が得られない場合において好適に用いることができ、ビビリの発生を抑制することができる。
本発明の第二実施形態について、図7を用いて説明する。図7は本発明の第二実施形態に係る砥石の形状を示す図である。なお、図7は、図6と同様に、図1におけるA部分に対応する部分についての部分拡大図である。また、以下に説明する各実施形態においては、第一実施形態と共通する部分については、同一の符号を用いる等して、適宜その説明を省略する。
本実施形態に係る砥石20においては、砥粒すくい角が、砥面21の全体について、略90°〜180°の範囲内に設定されている。
本実施形態では、第一実施形態の場合と同様に、砥石20の形状の調整により、砥粒すくい角についての調整が図られている。すなわち、砥石20については、例えば、図3に示すような砥粒すくい角が0°〜略90°の範囲内となる部分と略90°〜180°の範囲内となる部分とを含む砥石110から、砥粒すくい角が略0°〜略90°の範囲内となる部分が除かれるようにして、砥石形状が調整される。これにより、本実施形態の砥石20においては、砥面21の全体についての砥粒すくい角が、略90°〜180°の範囲内となるように設定されている。
具体的には、図7に示すように、砥石20の砥面21において砥粒すくい角が最小となる位置、即ち砥面21においてホーニングヘッド3の回転にともなう砥石20の移動の方向(矢印D参照)について最も前側の位置は、被加工面2に接触した状態の砥面21において、前述した位置Pの近傍の位置となる。したがって、砥石20の砥面21について最小となる砥粒すくい角α2minは、略90°となる。そして、砥面21における他の部分についての砥粒すくい角は、砥粒すくい角α2minよりも大きくなる。つまり、本実施形態の砥石20においては、砥面21の全体についての砥粒すくい角の範囲であるα2max〜α2minの範囲が、略90°〜180°の範囲に含まれることとなる。
本実施形態に係るホーニング加工装置においては、ホーニングヘッド3が備える8個の砥石20の全てについて、砥粒すくい角が、図7に示すように、砥面21の全体について、略90°〜180°の範囲内に設定されている。
このように、砥粒すくい角を、砥面21の全体について略90°〜180°の範囲内に設定することにより、ホーニング加工において良好な研削効率を得ることができる。すなわち、例えば図3に示す砥石110のように、砥粒すくい角について、略90°〜180°の範囲内となる部分(B1部分参照)と、0°〜略90°の範囲内となる部分(B2部分参照)との両方が存在する場合(つまり砥粒すくい角が90°±αである場合)との比較において、本実施形態の砥石20によれば、研削効率を向上することが可能となる。
したがって、本実施形態に係るホーニング加工装置は、ホーニング加工における加工条件や砥石20の種類の調整等によって、加工中に生じるビビリについて十分な低減効果が得られる場合において好適に用いることができ、良好な研削効率を得ることができる。
以上説明した本発明の第一実施形態および第二実施形態のように、砥石の形状の調整により、砥粒すくい角についての調整が図られる構成においては、ホーニングヘッド3について既存の構成を用いることができ、砥粒すくい角の調整を容易に行うことができる。
本発明の第三実施形態について、図8を用いて説明する。図8は本発明の第三実施形態に係る砥石近傍の構成を示す図である。
本実施形態においては、図8に示すように、砥石30の砥面31の被加工面2に対する押付けは、被加工面2の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる押付部材としての第一シュー35の、前記押圧変位にともなう砥石30の変位により行われる。そして、砥粒すくい角の設定に際し、前記砥石30の変位の方向が、第一シュー35の前記押圧変位の方向から変換されている。
つまり、本実施形態においては、第一実施形態や第二実施形態ではシュー5の径方向外側への変位方向(拡張方向)と同じ方向となる砥粒についての押圧方向が、そのシュー5の拡張方向からこれと異なる方向に変換されている。
具体的には、図8に示すように、第一シュー35は、上述の実施形態におけるシュー5と同様に、本体4に設けられる溝部4aに収容された状態で、テーパコーン6(図2参照)の下側への移動により、径方向外側に向けて(矢印E1参照)押圧変位可能に設けられる。そして、この第一シュー35の径方向外側への押圧変位が、第二シュー36を介することで方向が変換されて砥石30に伝達され、その変換後の方向(矢印E2参照)に、砥石30が被加工面2に対して押し付けられる。つまりは、第一シュー35の押圧変位にともなう砥石30の変位の方向(矢印E2参照)が、第一シュー35の押圧変位の方向(矢印E1参照)から変換されている。
第二シュー36は、第一シュー35に対して径方向外側に設けられ、砥石30を保持する。第二シュー36は、被加工面2の径方向外側への押圧変位の方向(拡張方向)に移動する第一シュー35を受けることで、その拡張方向が変換された方向(矢印E2参照)に移動可能に設けられる。第二シュー36は、第一シュー35を受ける側と反対側の端面に、砥石30を保持する。つまり、第一シュー35の押圧変位にともなう第二シュー36の変位の方向が、砥石30の変位の方向となる。第二シュー36は、第一シュー35と同様に、本体4の内部に収容された状態で設けられる。このため、本実施形態では、本体4に設けられる溝部4aにおける、本体4の外周面側に、第二シュー36の移動をガイドするためのガイド部4bが形成される。
第二シュー36は、軸方向視において第一シュー35の拡張方向(矢印E1参照)に対して傾斜する斜面を合わせ面として、第一シュー35に対して摺動可能に接触した状態で設けられる。すなわち、第一シュー35は、径方向外側の端面として、軸方向視において第一シュー35の拡張方向に対して傾斜する斜面であるスライド面35aを有する。第二シュー36は、第一シュー35のスライド面35aに接触することとなるスライド面36aを有する。つまり、第一シュー35と第二シュー36とは、互いに対するスライド面35a、36bを合わせ面として、相対移動可能に設けられる。
そして、第一シュー35が、テーパコーン6の移動にともなって拡張方向に移動することにより、第一シュー35のスライド面35aの移動が、第二シュー36のスライド面36aを介して第二シュー36の移動(砥石30の移動)に変換される。つまり、第二シュー36は、第一シュー35に対するスライド面36aによって、拡張方向に移動する第一シュー35を、第一シュー35のスライド面35aに対する摺動をともなって受けることで、変換後の方向(矢印E2参照)に押圧変位する。
本実施形態では、砥石30の変位の方向は、第二シュー36によって、第一シュー35の拡張方向から、次のような方向に変換される。すなわち、砥石30の変位の方向は、第一シュー35の拡張方向から、図8に示すように、軸方向視において、第一シュー35の拡張方向に対応する径方向の位置(直線Lの位置)に対して、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石30の移動の方向(矢印E3参照)について後側(図8において左側)となる斜め方向に変換されている。したがって、第一シュー35の拡張方向への移動にともなう第二シュー36の移動の方向(つまり砥石30の変位の方向)となる、第一シュー35の拡張方向からの変換後の方向は、第一シュー35の拡張方向に対して、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石30の移動の方向について後側に折れ曲がったような方向となる。
このように、第一シュー35の拡張方向への変位が第二シュー36を介することで方向が変換されて砥石30に伝達されることで、砥石30の砥粒についての押圧方向も変換されることとなる。つまり、第一実施形態や第二実施形態においてはシュー5の拡張方向が砥粒についての押圧方向となっているところが、本実施形態では、第一シュー35の拡張方向からの変換後の方向である第二シュー36の移動の方向が、砥石30の砥粒についての押圧方向となる。
そして、第一シュー35の拡張方向からの変換後の方向に対応する砥石30の砥粒についての押圧方向は、第一シュー35の拡張方向と砥粒の押圧方向とが同じ方向となる場合との比較において、砥粒すくい角が小さくなる方向となる。つまり、本実施形態では、砥石30について被加工面2に対して押し付けられる方向となる砥石30の変位の方向が、第二シュー36を介することで、第一シュー35の拡張方向から、第一シュー35の拡張方向と砥粒の押圧方向とが同じ方向となる場合よりも砥粒すくい角が小さくなる方向に変換されている。
このように第一シュー35の拡張方向とは異なる方向に移動する第二シュー36に保持される砥石30は、軸方向視において、第二シュー36に対する保持面に対して第二シュー36の移動方向(変換後の方向)に平行に突出するとともに、その突出方向の先端面となる砥面31が、被加工面2に沿う形状(円弧形状)を有する。
そして、本実施形態では、第一実施形態の場合と同様に、砥粒すくい角が、砥面31の全体について、0°〜略90°の範囲内に設定されている。
本実施形態では、前述したような砥石30の変位の方向の、第一シュー35の拡張方向からの変換、およびその方向の変換にともなう砥石30の形状の調整により、砥粒すくい角についての調整が図られている。すなわち、砥石30の変位の方向の、第一シュー35の拡張方向からの変換が、砥粒すくい角が小さくなるように行われるとともに、その方向の変換に対応して砥石30の形状が調整されることで、砥石30において、砥面31の全体についての砥粒すくい角が、0°〜略90°の範囲内となるように設定されている。
図8に示すように、本実施形態では、砥石30の砥粒についての押圧方向と移動方向との関係から、砥石30の砥面31について最大となる砥粒すくい角α3maxは、90°よりも小さくなる。つまり、本実施形態の砥石30においては、砥面31の全体についての砥粒すくい角の範囲であるα3max〜α3minの範囲が、0°〜略90°の範囲に含まれることとなる。
本実施形態に係るホーニング加工装置においては、ホーニングヘッド3が備える8個の砥石30の全てについて、砥粒すくい角が、図8に示すように、砥面31の全体について、0°〜略90°の範囲内に設定されている。
以上のように、本実施形態に係るホーニング加工装置は、被加工面2の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる第一シュー35を備え、砥面31の被加工面2に対する押付けを、第一シュー35の、前記押圧変位にともなう砥石30の変位により行うものである。そして、砥粒すくい角の設定に際し、前記砥石30の変位の方向が、第一シュー35の前記押圧変位の方向から変換されている。
本発明の第四実施形態について、図9を用いて説明する。図9は本発明の第四実施形態に係る砥石近傍の構成を示す図である。
本実施形態は、第三実施形態と同様の構成が、砥粒すくい角が砥石40の砥面41の全体について、略90°〜180°の範囲内に設定される場合に適用されている。したがって、本実施形態では、第三実施形態の共通する部分については適宜説明を省略する。
本実施形態においては、図9に示すように、砥石40の砥面41の被加工面2に対する押付けは、被加工面2の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる第一シュー45の、前記押圧変位にともなう砥石40の変位により行われる。そして、砥粒すくい角の設定に際し、前記砥石40の変位の方向が、第一シュー45の前記押圧変位の方向から変換されている。
図9に示すように、第一シュー45の径方向外側への押圧変位(矢印F1参照)が、第二シュー46を介することで方向が変換されて砥石40に伝達され、その変換後の方向(矢印F2参照)に、砥石40が被加工面2に対して押し付けられる。つまりは、第一シュー45の押圧変位にともなう砥石40の変位の方向(矢印F2参照)が、第一シュー45の押圧変位の方向(矢印F1参照)から変換されている。第一シュー45と第二シュー46とは、互いに対するスライド面45a、46bを合わせ面として、相対移動可能に設けられる。そして、第一シュー45が、テーパコーン6の移動にともなって拡張方向に移動することにより、第一シュー45のスライド面45aの移動が、第二シュー46のスライド面46aを介して第二シュー46の移動(砥石40の移動)に変換される。
本実施形態では、砥石40の変位の方向は、第二シュー46によって、第一シュー45の拡張方向から、次のような方向に変換される。すなわち、砥石40の変位の方向は、第一シュー45の拡張方向から、図9に示すように、軸方向視において、第一シュー45の拡張方向に対応する径方向の位置(直線Lの位置)に対して、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石40の移動の方向(矢印F3参照)について前側(図9において右側)となる斜め方向に変換されている。したがって、第一シュー45の拡張方向への移動にともなう第二シュー46の移動の方向(つまり砥石40の変位の方向)となる、第一シュー45の拡張方向からの変換後の方向は、第一シュー45の拡張方向に対して、ホーニングヘッド3の回転にともなう砥石40の移動の方向について前側に折れ曲がったような方向となる。
このように、第一シュー45の拡張方向への変位が第二シュー46を介することで方向が変換されて砥石40に伝達されることで、砥石40の砥粒についての押圧方向も変換されることとなる。
そして、第一シュー45の拡張方向からの変換後の方向に対応する砥石40の砥粒についての押圧方向は、第一シュー45の拡張方向と砥粒の押圧方向とが同じ方向となる場合との比較において、砥粒すくい角が大きくなる方向となる。つまり、本実施形態では、砥石40について被加工面2に対して押し付けられる方向の変位を生じさせる第一シュー45の拡張方向への変位の方向が、第二シュー46を介することで、第一シュー45の拡張方向から、第一シュー45の拡張方向と砥粒の押圧方向とが同じ方向となる場合よりも砥粒すくい角が大きくなる方向に変換されている。
そして、本実施形態では、第二実施形態の場合と同様に、砥粒すくい角が、砥面41の全体について、略90°〜180°の範囲内に設定されている。
図9に示すように、本実施形態では、砥石40の砥粒についての押圧方向と移動方向との関係から、砥石40の砥面41について最小となる砥粒すくい角α4minは、90°よりも大きくなる。つまり、本実施形態の砥石40においては、砥面41の全体についての砥粒すくい角の範囲であるα4max〜α4minの範囲が、略90°〜180°の範囲に含まれることとなる。
本実施形態に係るホーニング加工装置においては、ホーニングヘッド3が備える8個の砥石40の全てについて、砥粒すくい角が、図9に示すように、砥面41の全体について、略90°〜180°の範囲内に設定されている。
以上説明した本発明の第三実施形態および第四実施形態のように、砥粒すくい角についての調整に際し、砥石(30、40)の変位の方向の、被加工面2の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる押付部材(第一シュー35、45)の押圧変位の方向からの変換が行われる構成においては、次のような効果が得られる。
すなわち、砥面の周方向について砥粒すくい角が設定しようとする角度範囲内となる部分の確保が容易となる。つまり、押付部材の押圧変位の方向の変換により、砥石における砥粒についての押圧方向が、砥粒すくい角が小さくなる方向または大きくなる方向に変換されることから、砥粒すくい角が設定しようとする角度範囲内となるための砥石形状(砥面の周方向の長さ)についての制約が小さくなる。これにより、砥粒すくい角が0°〜略90°の範囲内または略90°〜180°の範囲内となるような砥粒すくい角の設定にともなう砥石形状の制約による、砥面の面積の低減を回避することが可能となる。結果として、砥面の面積を十分に確保することができ、砥粒すくい角の設定にともなって砥面の面積が小さくなることによる研削効率の低下を回避することができる。
以上の各実施形態を用いて説明した本発明は、ホーニング加工装置が有する砥石について、砥粒が被加工面に押し付けられる方向である押圧方向と、砥粒が被加工面の周方向に沿って移動する方向である移動方向とのなす角度(砥粒すくい角)について着目した点で新規である。そして、砥粒すくい角の調整により、ホーニング加工において、コスト面で不利となる既存の設備についての大規模な変更をともなうことなく、研削抵抗の調整が可能となり、ビビリの発生および研削効率をコントロールすることができる。
1 シリンダボア
2 被加工面
3 ホーニングヘッド
10、20、30、40 砥石
11、21、31、41 砥面
35、45 第一シュー(押付部材)
110 砥石
111 砥面
112 砥粒
2 被加工面
3 ホーニングヘッド
10、20、30、40 砥石
11、21、31、41 砥面
35、45 第一シュー(押付部材)
110 砥石
111 砥面
112 砥粒
Claims (4)
- 円筒状の内周面を被加工面とし、互いに結合した砥粒群により成形され前記被加工面に沿う形状の砥面を有する砥石を用い、前記砥面が前記被加工面に対して押し付けられるとともに前記被加工面に沿って摺動するように、前記砥石を移動させることで、前記被加工面を研削するホーニング加工方法であって、
前記砥面の前記被加工面に対する押付けによって前記砥粒群を構成する各砥粒が前記被加工面に対して押し付けられる方向と、前記砥面の前記被加工面に沿う摺動によって前記各砥粒が前記被加工面の周方向に沿って移動する方向とのなす角度のうち、前記被加工面側と反対側、かつ前記移動する方向について前側の角度を、砥粒すくい角とし、
前記砥粒すくい角を、前記砥面の全体について、0°〜略90°の範囲内または略90°〜180°の範囲内に設定することを特徴とするホーニング加工方法。 - 前記砥面の前記被加工面に対する押付けは、前記被加工面の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる押付部材の、前記押圧変位にともなう前記砥石の変位により行われるものであり、
前記砥粒すくい角の設定に際し、
前記砥石の変位の方向を、前記押圧部材の前記押圧変位の方向から変換することを特徴とする請求項1に記載のホーニング加工方法。 - 円筒状の内周面を被加工面とし、互いに結合した砥粒群により成形され前記被加工面に沿う形状の砥面を有する砥石を備え、前記砥面を前記被加工面に対して押し付けるとともに前記被加工面に沿って摺動させるように、前記砥石を移動させることで、前記被加工面を研削するホーニング加工装置であって、
前記砥面の前記被加工面に対する押付けによって前記砥粒群を構成する各砥粒が前記被加工面に対して押し付けられる方向と、前記砥面の前記被加工面に沿う摺動によって前記各砥粒が前記被加工面の周方向に沿って移動する方向とのなす角度のうち、前記被加工面側と反対側、かつ前記移動する方向について前側の角度である砥粒すくい角が、
前記砥面の全体について、0°〜略90°の範囲内、または略90°〜180°の範囲内に設定されていることを特徴とするホーニング加工装置。 - 前記ホーニング加工装置は、
前記被加工面の径方向外側への押圧変位が可能に設けられる押付部材を備え、
前記砥面の前記被加工面に対する押付けを、前記押付部材の、前記押圧変位にともなう前記砥石の変位により行うものであり、
前記砥粒すくい角の設定に際し、
前記砥石の変位の方向が、前記押付部材の前記押圧変位の方向から変換されていることを特徴とする請求項3に記載のホーニング加工装置。
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-
2008
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