JP2009218533A - 化学機械研磨パッドおよび化学機械研磨方法 - Google Patents

化学機械研磨パッドおよび化学機械研磨方法 Download PDF

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Abstract

【課題】化学機械研磨中において研磨層のダメージを抑制することのできる化学機械研磨パッド、及びその化学機械研磨パッドを用いて行うことにより高品位な化学機械研磨を長時間行うことのできる化学機械研磨方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る化学機械研磨パッド10は、化学機械研磨に用いられる化学機械研磨パッドであって、研磨面20と、前記研磨面の反対側にある非研磨面22と、非研磨面における中央部を含む領域に設けられた凹部24と、を有する研磨層11を含み、前記凹部は、互いに異なる深さの複数の底部25,26を備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、化学機械研磨パッドおよび化学機械研磨方法に関する。
近年、半導体装置の形成等において、シリコン基板又はその上に配線や電極等を形成されたシリコン基板(以下、「半導体ウエハ」という。)につき、優れた平坦性を有する表面を形成することができる研磨方法として、化学機械研磨方法(Chemical Mechanical Polishing、一般に「CMP」と略称される。)が注目されている。化学機械研磨方法は化学機械研磨パッドと被研磨面とを摺動させながら、パッド表面に、化学機械研磨用水系分散体(砥粒が分散された水系分散体;スラリー)を流下させて研磨を行う技術である。この化学機械研磨方法においては、化学機械研磨パッドの性状及び特性等により研磨結果が大きく左右されることが知られており、従来から様々な化学機械研磨パッドが提案されている。
例えば、微細な気泡を含有するポリウレタンフォームを化学機械研磨パッドとして用い、このパッドの表面に開する穴(以下、「ポア」という)に化学機械研磨用水系分散体を保持させて研磨を行うための化学機械研磨パッドが古くから知られている。(例えば、特許文献1〜3参照。)。また、パッドの研磨面に溝を設けて、非研磨面に凹部を設けることにより、スクラッチなどの研磨欠陥を減少させる検討も行われている(たとえば特許文献4参照。)。
ところで、化学機械研磨法により被研磨面の研磨を行う際は、一般的に半導体ウエハを保持するリテナーリングを有する研磨ヘッドを使用する。目標とする研磨速度を達成するためには、半導体ウエハを高圧で研磨パッドに押し当てることが必要となってくる場合がある。このような場合にはリテナーリング圧力が高くなり、研磨面の溝等にクラックや欠損のダメージを与えてしまう。一般的には、研磨ヘッドは化学機械研磨中に研磨パッド上を揺動するため、この揺動により上記クラックや欠損が加速される。クラックや欠損等のダメージは、特に研磨パッド中央部での発生頻度が極めて高い。このようなクラックや欠損は、被研磨面の表面に、「スクラッチ」と呼ばれる引っ掻き傷状の欠陥を発生させる場合があり、クラックや欠損が発生した時点で新たな化学機械研磨パッドに交換する必要があった。そこで、このようなスクラッチ等の発生を防止して、研磨パッドを長寿命化することが望まれている。
特開平11−70463号公報 特開平8−216029号公報 特開平8−39423号公報 特開2005−159340号公報
本発明は、上記の課題を解決するものであり、その目的は、化学機械研磨中において研磨層のダメージを抑制することができ、かつ製品寿命が長い化学機械研磨パッドが提供され、及びその化学機械研磨パッドを用いて行うことにより高品位な化学機械研磨方法が長時間提供されることにある。
本発明に係る化学機械研磨パッドは、
化学機械研磨に用いられる化学機械研磨パッドであって、
研磨面と、
前記研磨面の反対側にある非研磨面と、
非研磨面における中央部を含む領域に設けられた凹部と、
を有する研磨層を含み、
前記凹部は、互いに異なる深さの複数の底部を備える。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記複数の底部は、第1の底部と、前記第1の底部の周囲を取り囲む第2の底部とを有し、
前記第1の底部は、前記第2の底部より深い位置に設けられていることができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記複数の底部は、第1の底部と、前記第1の底部の周囲を取り囲む第2の底部と、前記第2の底部の周囲を取り囲む第3の底部とを有し、
前記第1の底部は、前記第2の底部より深い位置に設けられており、
前記第2の底部は、前記第3の底部より深い位置に設けられていることができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
前記複数の溝は、前記凹部と重複しない位置に設けられていることができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
前記複数の底部のうち最も深い位置に設けられている底部は、前記研磨面に対して垂直方向において、前記研磨面と前記複数の溝の底部との間の位置に設けられていることができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記複数の溝の底部は、前記研磨面に対して垂直方向において、前記第1の底部と前記第2の底部との間の位置に設けられていることができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
前記複数の溝は、前記第2の底部およびその周囲に対向する位置に設けられ、かつ前記第1の底部に対向する位置には設けられていないことができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
前記複数の溝は、前記第2の底部、前記第3の底部、およびその周囲に対向する位置に設けられ、かつ前記第1の底部に対向する位置には設けられていないことができる。
上記化学機械研磨パッドにおいて、
前記凹部は、平面視において円形状であり、
前記研磨面側に設けられた前記円形状と同心の環状の複数の溝をさらに含むことができる。
本発明に係る化学機械研磨方法は、上記化学機械研磨パッドを用いる。
本発明によれば、化学機械研磨中において研磨層のダメージを効果的に抑制することができ、かつ製品寿命が長い化学機械研磨パッドが提供され、及びその化学機械研磨パッドを用いて行うことにより高品位な化学機械研磨方法が長時間提供される。特に、凹部が互いに異なる深さの複数の底部を備えることにより、化学機械研磨時に研磨面にかかる圧力の大きさや方向に応じて凹部の複数の底部毎に深さを自由に調節することができるため、より効率的に研磨層のダメージを抑制することができる。
1.化学機械研磨パッド
図1は、本実施の形態に係る化学機械研磨パッドを示す断面図である(図1では研磨面に設けられた後述の溝は省略した。)。本実施の形態に係る化学機械研磨パッド10は、研磨層11と、研磨層11と研磨装置定盤13との間に設けられる支持層12とを含む。
以下、研磨層11と支持層12の詳細についてそれぞれ説明する。
1.1.研磨層の形状
図2は、図1における領域IIの拡大図であり、研磨層11の詳細な形状を示す図である。研磨層11は、被研磨面と接触して化学機械研磨を行うための研磨面20と、研磨面20の反対側にある非研磨面22と、非研磨面22側における中央部を含む領域に設けられた凹部24とを含む。「中央部を含む領域」とは、凹部24の重心が数学的に厳密な意味において研磨層11の重心と一致する場合のほか、研磨層11の重心が凹部24の範囲内に位置している場合も含む概念である。なお、図1においては、研磨層11の上面が研磨面20であり、下面が非研磨面22である。
研磨層11の平面形状は特に限定されないが、たとえば円形状であることができる。研磨層11の大きさは、特に限定されないが、たとえば直径150mm〜1200mmであることができ、好ましくは500mm〜800mmであることができる。研磨層11の厚さは、たとえば0.5mm〜5.0mmであることができ、好ましくは1.0mm〜3.0mmであることができ、より好ましくは1.5mm〜3.0mmであることができる。
凹部24は、互いに異なる深さの複数の底部を備える。本実施の形態に係る凹部24において複数の底部は、図2に示すように、互いに段差を有し、階段のような形状を構成する。具体的に凹部24は、複数の底部として、第1の底部25と、第1の底部25の周囲を取り囲む第2の底部26とを有する。第1の底部25は、第2の底部26より深い位置に設けられている。ここで「第2の底部26より深い位置」とは、第2の底部26の位置より研磨面20側に位置することをいう。
第1の底部25および第2の底部26は、図2に示すように、それぞれ平坦面であってもよいが、曲面であってもよいし、微細な凹凸形状を有していてもよい。また、第1の底部25および第2の底部26が曲面である場合には、第1の底部25と第2の底部26とが連続的に設けられて凹部24の全体で山形形状が形成されていてもよい。この場合には、中央部から周囲に向かって徐々に底部の位置が浅くなっていくように凹部24が形成される。
第1の底部25の深さ(a+b)は、特に限定されないが、たとえば0.1mm〜2.5mmであることができ、好ましくは0.5mm〜2.0mmであることができる。第2の底部26の深さbについても特に限定されないが、たとえば0.05mm〜2.0mmであることができ、好ましくは0.3mm〜1.5mmであることができる。また、第1の底部25の深さ(a+b)は、特に限定されないが、パッドの厚み(a+b+c)に対してたとえば2%〜80%であることができ、好ましくは20%〜60%であることができる。第2の底部26の深さbについても特に限定されないが、パッドの厚み(a+b+c)に対してたとえば1%〜80%であることができ、好ましくは10%〜60%であることができる。
凹部24の平面形状は、特に限定されないが、たとえば円形状または多角形状であることが好ましく、後述する溝27の平面形状と同心の円形状であることが特に好ましい。凹部24の内径gは、被研磨物であるウエハの直径の100%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下である。たとえば被研磨物であるウエハの直径が300mmである場合、凹部24が円形の場合の内径gとしては、1〜300mmであり、好ましくは1〜225mm、より好ましくは5〜100mmである。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッド10は、非研磨面側にこのような凹部24を有することにより、研磨時に研磨ヘッドの加圧による局所的な圧力上昇を分散させる機能を有する。特に、図2に示すように凹部24を段差のある構造にすることによって、最も加圧されやすい位置を凹部24を深く形成して圧力を緩和できるように空間を多くし、加圧されにくくなる方向に向かって凹部24を浅くして空間を減らしている。これにより、加圧の程度に応じて必要な空間ができ、効率的に圧力を分散させることができる。
また研磨層11は、研磨面20側に設けられた複数の溝27をさらに含むことができる。この溝は、化学機械研磨の際に供給される化学機械用水系分散体を保持し、これを研磨面により均一に分配するとともに、研磨くずや使用済み水系分散体等の廃棄物を一時的に滞留させ、外部へ排出するための経路となる機能を有する。
溝27の平面形状は、特に限定されないが、研磨面20の中心から外縁方向へ向かって徐々に直径の拡大する複数の環状であることができる。この複数の環状の溝27は、互いに交叉しない円形、楕円形、または多角形等であることができる。これらの環状の形状は、研磨面20の形状と同心であることが好ましい。環状の溝27は、たとえば20〜400本であることができる。
本実施の形態において溝27は、中央部に対して均一に圧力がかかるように、研磨層27の中央部を中心とした点対称の形状を有することが好ましい。したがって溝27の形状は、上述した環状の他に渦巻き状または放射状等、もしくはこれらの組み合わせであってもよい。
また溝27の平面形状が環状の場合において、中央部に最も近い環状溝27の内径eは、凹部24の内径gより短く、かつ第1の底部25の平面視における直径fより長いことが好ましい。具体的に内径eは、たとえば10mm〜90mmであることができ、好ましくは15mm〜70mmであることができる。また直径fは、たとえば6mm〜80mmであることができ、好ましくは11mm〜66mmであることができる。
溝27の断面形状は、特に限定されないが、たとえば図2に示すように、長方形等の多角形状、U字形状等とすることができる。なお溝27は、深さdを有する。この溝の深さdは、第1の底部25と研磨面20との距離cより長く、かつ第2の底部26と研磨面20との距離(a+c)より短いことが好ましい。具体的に深さdは、0.1mm以上とすることができ、好ましくは0.1mm〜2.5mm、さらに好ましくは、0.2mm〜2.0mmとすることができる。
また、溝27の溝幅は、0.1mm以上とすることができ、好ましくは0.1mm〜5.0mm、さらに好ましくは、0.2mm〜3.0mmとすることができる。複数の溝27において、隣り合う溝27の間隔は、互いに同一であることができる。この間隔は、たとえば0.05mm以上とすることができ、好ましくは0.05mm〜100mm、さらに好ましくは、0.1mm〜10mmとすることができる。これらの範囲の大きさの溝27とすることにより、被研磨面のスクラッチ低減効果に優れ、寿命の長い化学機械研磨パッドを容易に製造することができる。
なお、溝27の間隔と溝幅の和であるピッチは、たとえば0.15mm以上とすることができ、好ましくは0.15mm〜105mm、さらに好ましくは、0.5mm〜13mm、特に好ましくは、0.5mm〜5.0mm、最も望ましくは、0.5mm〜2.2mmとすることができる。
複数の溝27と凹部24は、上述したような平面形状および断面形状を有することにより、互いに重複しない位置に設けられることができる。即ち、溝27と凹部24とが貫通しない。これにより、研磨時にスラリー等が研磨面側から非研磨面側に漏れるのを防止することができる。また、第1の底部25と研磨面20との距離cは、溝の深さdより小さいことが好ましい。具体的に距離cは、深さdに対して30%〜120%であることができ、好ましくは70%〜95%であることができる。
特に複数の溝27は、第2の底部26およびその周囲に対向する位置には設けられるが、第1の底部25に対向する位置には設けられていない。また、複数の溝27の底部28は、研磨面20に対して垂直方向において、第1の底部25と第2の底部26との間の位置に設けられている。言い換えれば、第1の底部25は、研磨面20に対して垂直方向において、研磨面20と複数の底部28との間の位置に設けられている。なお第1の底部25は、凹部24が有する複数の底部の中で最も深い位置に設けられている底部である。これにより、溝27の深さdを一定以上に維持し、かつ溝27の形成領域を狭くすることなく、凹部24を形成することができるため、研磨性能を長時間維持しながら、研磨面20の溝欠損等のダメージを低減することができ、ひいては化学機械研磨パッド10の製品寿命を著しく長くすることができる。
なお、化学機械研磨パッド10は、研磨を行うための研磨部以外に他の機能を有する部分を備えることができる。他の機能を有する部分としては、例えば、光学式終点検出装置を用いて終点を検出するための窓部等を挙げることができる。窓部としては、例えば、厚さ2mmにおいて、波長100nm〜300nmの間のいずれかの波長の光の透過率が0.1%以上(好ましくは2%以上)であるか、又は、波長100nm〜3000nmの間のいずれかの波長域における積算透過率が0.1%以上(好ましくは2%以上)である材料を用いることができる。窓部の材料は上記光学特性を満たしていれば、特には限定されないが、例えば研磨層11と同様の下記組成を用いることができる。
化学機械研磨パッド10を構成する研磨層11の製造方法は特に限定されず、また、溝27や凹部24の形成方法も特に限定されない。例えば、予め化学機械研磨パッド10の研磨層11となる化学機械研磨パッド用組成物を準備し、この組成物を所望形の概形に成形した後、切削加工により溝等を形成することができる。さらに、溝、凹部等となるパターンが形成された金型を用いて化学機械研磨パッド用組成物を金型成形することにより、研磨層11の概形と共に溝、凹部等を同時に形成することができる。
次に、化学機械研磨パッドについての変形例を説明する。図3は、変形例に係る研磨層111の詳細な形状を示す図であり、図2に対応する。変形例に係る化学機械研磨パッド110は、凹部124が第1の底部125、第2の底部126、および第3の底部127を有する点で、凹部24が第1の底部25および第2の底部26のみを有する化学機械研磨パッド10と異なる。
化学機械研磨パッド110において、第2の底部126は、第1の底部125の周囲を取り囲み、かつ第1の底部125より深い位置に設けられている。第3の底部127は、第2の底部126の周囲を取り囲み、かつ第2の底部126より深い位置に設けられている。複数の溝27は、第2の底部126、第3の底部127、およびその周囲に対向する位置に設けられているが、第1の底部125に対向する位置には設けられていない。また、複数の溝27の底部28は、研磨面20に対して垂直方向において、第1の底部125と第2の底部126との間の位置に設けられている。これにより、溝27の深さdを一定以上に維持し、かつ溝27の形成領域を狭くすることなく、凹部124を形成することができるため、研磨性能を長時間維持しながら、研磨面20のダメージを低減することができ、ひいては化学機械研磨パッド110の製品寿命を著しく長くすることができる。
図3に示す化学機械研磨パッド110における凹部124、溝27の具体的なサイズについては以下のとおりである。
第1の底部125の深さ(a+b+h)は、特に限定されないが、たとえば0.1mm〜2.5mmであることができ、好ましくは0.5mm〜2.0mmであることができる。第2の底部126の深さ(b+h)についても特に限定されないが、たとえば0.05mm〜2.0mmであることができ、好ましくは0.3mm〜1.5mmであることができる。第3の底部127の深さ(h)についても特に限定されないが、たとえば0.03mm〜1.7mmであることができ、好ましくは0.3mm〜1.5mmであることができる。また、第1の底部125の深さ(a+b+h)は、特に限定されないが、パッドの厚み(a+b+c+h)に対してたとえば2%〜80%であることができ、好ましくは20%〜65%であることができる。第2の底部126の深さ(b+h)についても特に限定されないが、パッドの厚み(a+b+c+h)に対してたとえば1%〜80%であることができ、好ましくは10%〜60%であることができる。第3の底部127の深さ(h)についても特に限定されないが、パッドの厚み(a+b+c+h)に対してたとえば1%〜80%であることができ、好ましくは10%〜60%であることができる。
凹部124の平面形状は、上述した凹部24と同様に、たとえば円形状または多角形状であることが好ましく、溝27の平面形状と同心の円形状であることが特に好ましい。凹部124の内径gは、被研磨物であるウエハの直径の100%以下、好ましくは75%以下、より好ましくは50%以下である。たとえば被研磨物であるウエハの直径が300mmである場合、凹部124が円形の場合の内径gとしては、1〜300mmであり、好ましくは1〜225mm、より好ましくは5〜100mmである。
環状の溝27の内径eは、第2の底部126の平面視における直径iより短く、かつ第1の底部125の平面視における直径fより長いことが好ましい。具体的に内径eは、たとえば10mm〜90mmであることができ、好ましくは15mm〜70mmであることができる。また直径fは、たとえば6mm〜80mmであることができ、好ましくは11mm〜66mmであることができる。また直径iは、たとえば15mm〜100mmであることができ、好ましくは40mm〜80mmであることができる。
なお溝27の深さdは、第1の底部125と研磨面20との距離cより長く、かつ第2の底部126と研磨面20との距離(a+c)より短いことが好ましい。具体的に深さdは、0.1mm以上とすることができ、好ましくは0.1mm〜2.5mm、さらに好ましくは、0.2mm〜2.0mmとすることができる。また、第1の底部125と研磨面20との距離cは、溝の深さdより小さいことが好ましい。具体的に距離cは、深さdに対して30%〜100%であることができ、好ましくは70%〜95%であることができる。
1.2.研磨層の材質
研磨層11は、上記の要件を備えている限り、化学機械研磨パッド10としての機能を発揮できるものであればどのような素材から構成されていてもよい。化学機械研磨パッド10としての機能の中でも、特に、化学機械研磨時に化学機械研磨用水系分散体を保持し、研磨屑を一時的に滞留させる等の機能を有するポア(微細な空孔)が研磨時までに形成されていることが好ましい。このため、(I)非水溶性部材と該非水溶性部材中に分散された水溶性粒子からなる素材又は(II)非水溶性部材と該非水溶性部材中に分散された空孔からなる素材を備えることが好ましい。
このうち、上記素材(I)は、化学機械研磨工程の際、水溶性粒子が化学機械研磨用水系分散体と接触し、溶解又は膨潤して脱離することにより非水溶性部材に形成されるポアに化学機械研磨用水系分散体等を保持することができることとなり、一方、素材(II)は、空孔として予め形成されている部分が、化学機械研磨用水系分散体等の保持能力を持つ。
以下、これらの素材につき、詳述する。
(I)非水溶性部材と該非水溶性部材中に分散された水溶性粒子からなる素材
(A)非水溶性部材
上記(A)非水溶性部材を構成する材料は特に限定されないが、所定の形状及び性状への成形が容易であり、適度な硬度や、適度な弾性等を付与できることなどから、有機材料が好ましく用いられる。有機材料としては、例えば熱可塑性樹脂、エラストマー又は生ゴム、硬化樹脂等が挙げられる。
上記熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系樹脂(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、スチレン系樹脂(例えばポリスチレン等)、アクリル系樹脂(例えば(メタ)アクリレート系樹脂等)、ビニルエステル樹脂(ただし(メタ)アクリレート系樹脂に該当するものを除く)、ポリエステル樹脂(ただしビニルエステル樹脂に該当するものを除く)、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等を挙げることができる。
上記エラストマー又は生ゴムとしては、ジエン系エラストマー(例えば1,2−ポリブタジエン等)、オレフィン系エラストマー(例えばエチレン−プロピレンゴムとポリプロピレン樹脂を動的に架橋したもの等)、ウレタン系エラストマー、ウレタン系ゴム(例えばウレタンゴム等)、スチレン系エラストマー(例えばスチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(以下、「SBS」ということがある。)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体の水素添加物(以下、「SEBS」ということがある。)等)、共役ジエン系ゴム(例えば高シスブタジエンゴム、低シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム等)、エチレン−α−オレフィンゴム(例えばエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム等)、ブチルゴム、その他のゴム(例えばシリコーンゴム、フッ素ゴム、ニトリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、多硫化ゴム等)等を挙げることができる。
上記硬化樹脂としては、熱硬化樹脂、光硬化樹脂等が挙げられ、これらの具合例としては、例えばウレタン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン−ウレア樹脂、ウレア樹脂、ケイ素樹脂、フェノール樹脂等を挙げることができる。
これら有機材料は、一種のみを使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
また、これら有機材料は、適当な官能基を持つように変性されたものであってもよい。ここで適当な官能基としては、例えば酸無水物構造を有する基、カルボキシル基、水酸基、エポキシ基、アミノ基等を挙げることができる。
これらの有機材料は、その一部又は全部が架橋されたものであることが好ましい。非水溶性部材が架橋された有機材料を含有することにより、非水溶性部材に適度の弾性回復力が付与され、化学機械研磨時に化学機械研磨パッド10にかかるずり応力による変位を抑制することができる。また、化学機械研磨工程及びドレッシング(化学機械研磨と交互又は同時に行われる化学機械研磨パッド10の「目立て」処理。)の際に非水溶性部材が過度に引き延ばされ塑性変形してポアが埋まること、更には、化学機械研磨パッド10表面が過度に毛羽立つこと等を効果的に抑制できることとなる。従って、ドレッシング時にもポアが効率よく形成され、研磨時の化学機械研磨用水系分散体の保持性の低下が防止でき、更には、毛羽立ちが少なく研磨平坦性を長期にわたり保持できる化学機械研磨パッド10を得ることができることとなる。
上記架橋された有機材料としては、架橋された熱可塑性樹脂及び架橋されたエラストマー又は架橋されたゴム(ここで、「架橋されたゴム」とは、上記「生ゴム」の架橋物を意味する。)のうちから選ばれる少なくとも一種を含有することがより好ましく、架橋されたジエン系エラストマー、架橋されたスチレン系エラストマー及び架橋された共役ジエン系ゴムのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することが更に好ましく、架橋された1,2−ポリブタジエン、架橋されたSBS、架橋されたSEBS、架橋されたスチレンブタジエンゴム、架橋されたスチレン−イソプレンゴム及び架橋されたアクリロニトリル−ブタジエンゴムのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することが特に好ましく、架橋された1,2−ポリブタジエン、架橋されたSBS及び架橋されたSEBSのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することが望ましい。
有機材料の一部が架橋されたものであり、他の部分が非架橋のものである場合には、かかる非架橋の有機材料としては非架橋の熱可塑性樹脂及び非架橋のエラストマー又は生ゴムのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することが好ましく、非架橋のオレフィン系樹脂、非架橋のスチレン系樹脂、非架橋のジエン系エラストマー、非架橋のスチレン系エラストマー、非架橋の共役ジエン系ゴム及び非架橋のブチルゴムのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することがより好ましく、非架橋のポリスチレン、非架橋の1,2−ポリブタジエン、非架橋のSBS、非架橋のSEBS、非架橋のスチレン−ブタジエンゴム、非架橋のスチレン−イソプレンゴム及び非架橋のアクリロニトリル−ブタジエンゴムのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することが更に好ましく、非架橋のポリスチレン、非架橋の1,2−ポリブタジエン、非架橋のSBS及び非架橋のSEBSのうちから選ばれる少なくとも一種を含有することが特に好ましい。
有機材料の一部が架橋されたものであり、他の部分が非架橋のものである場合には、非水溶性部材中に占める架橋された有機材料の割合は、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが特に好ましい。
有機材料は、その一部又は全部が架橋されたものである場合、架橋の方法は特に限定されないが、例えば化学架橋法、放射線架橋法、光架橋法等の方法によることができる。上記化学架橋法としては、架橋剤として例えば有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物等を用いて行うことができる。上記放射線架橋法は、例えば電子線照射等の方法により行うことができる。上記光架橋法は、例えば紫外線照射等の方法により行うことができる。
これらのうち、化学架橋法によることが好ましく、ハンドリング性がよいこと及び化学機械研磨工程における被研磨物への汚染性がないことから有機過酸化物を使用することがより好ましい。有機過酸化物としては、例えば過酸化ジクミル、過酸化ジエチル、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジアセチル、過酸化ジアシル等を挙げることができる。
架橋が化学架橋法による場合、架橋剤の使用量としては、架橋反応に供する非水溶性部材の全量100質量部に対して好ましくは0.01〜0.6質量部である。この範囲の使用量とすることにより、化学機械研磨工程においてスクラッチの発生が抑制された化学機械研磨パッド10を得ることができる。
なお架橋は、非水溶性部材を構成する材料の全部について一括して行ってもよく、非水溶性部材を構成する材料の一部について架橋を行った後に残部と混合してもよい。また、各別の架橋を行った数種の架橋物を混合してもよい。
さらに、架橋が化学架橋法による場合には架橋剤の使用量や架橋の条件を調整することにより、あるいは架橋が放射線架橋法による場合には放射線の照射量を調整することにより、一回の架橋操作により、一部が架橋され他の部分が非架橋の有機材料の混合物を簡易に得ることができる。
(A)非水溶性部材は、後述する(B)水溶性粒子との親和性及び非水溶性部材中における(B)水溶性粒子の分散性を制御するため、適当な相溶化剤を含有することができる。ここで相溶化剤としては、例えばノニオン系界面活性剤、カップリング剤等を挙げることができる。
(B)水溶性粒子
(B)水溶性粒子は、化学機械研磨パッド10中において、化学機械水系分散体と接触することにより非水溶性部材から脱離し、非水溶性部材中にポアを形成する他、化学機械研磨パッド10の研磨基体の押し込み硬さを大きくする効果を有し、上記した研磨基体についてのショアD硬度を実現するものである。
上記脱離は、化学機械研磨用水系分散体中に含有される水又は水系混合媒体との接触による溶解、膨潤等によって生じる。
(B)水溶性粒子は、上記した化学機械研磨パッド10の研磨層11の押し込み硬さを確保するために、中実体であることが好ましい。従って、この水溶性粒子は、化学機械研磨パッド10において十分な押し込み硬さを確保できる中実体であることが特に好ましい。
(B)水溶性粒子を構成する材料は特に限定されないが、有機水溶性粒子及び無機水溶性粒子を挙げることができる。上記有機水溶性粒子としては、例えば糖類(多糖類(例えばでんぷん、デキストリン、シクロデキストリン等)、乳糖、マンニット等)、セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等)、蛋白質、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリエチレンオキサイド、水溶性の感光性樹脂、スルホン化ポリイソプレン、スルホン化ポリイソプレン共重合体等を挙げることができる。上記無機水溶性粒子としては、例えば酢酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、リン酸カリウム、硝酸マグネシウム等を挙げることができる。これらのうち、有機水溶性粒子が好ましく、多糖類がより好ましく、シクロデキストリンが更に好ましく、β−シクロデキストリンが特に好ましい。
これらの水溶性粒子は、上記各素材を単独または2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、所定の材料からなる1種の水溶性粒子であってもよく、異なる材料からなる2種以上の水溶性粒子であってもよい。
(B)水溶性粒子の平均粒径は、好ましくは0.1〜500μm、より好ましくは0.5〜100μmである。この範囲の粒径の(B)水溶性粒子とすることにより、(B)水溶性粒子の脱離により生じるポアの大きさを適当な範囲に制御することができ、これにより化学機械研磨工程の際の化学機械研磨用水系分散体の保持能及び研磨速度に優れ、しかも機械的強度に優れた化学機械研磨パッド10を得ることができる。
(B)水溶性粒子の含有量は、(A)非水溶性部材と(B)水溶性粒子との合計に対して、好ましくは10〜90体積%であり、より好ましくは15〜60体積%であり、更に好ましくは20〜40体積%である。(B)水溶性粒子の含有量をこの範囲とすることにより、機械的強度と研磨速度とのバランスに優れた化学機械研磨パッド10を得ることができる。
上記(B)水溶性粒子は、化学機械研磨パッド10内において、化学機械研磨用水系分散体と接触する表層に露出した場合にのみ水に溶解又は膨潤して脱離し、研磨層11内部においては吸湿しないことが好ましい。このため(B)水溶性粒子は最外部の少なくとも一部に吸湿を抑制する外殻を備えるものであってもよい。この外殻は水溶性粒子に物理的に吸着していても、水溶性粒子と化学的に結合していても、更にはこの両方により水溶性粒子に付いていてもよい。このような外殻を形成する材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリシリケート等を挙げることができる。
(II)非水溶性部材と該非水溶性部材中に分散された空孔からなる素材
研磨層11が、非水溶性部材と該非水溶性部材中に分散された空孔からなるものである場合としては、例えばポリウレタン、メラミン樹脂、ポリエステル、ポリスルホン、ポリビニルアセテート等の発泡体を挙げることができる。
上記のような非水溶性部材中に分散する空孔の平均口径としては、好ましくは0.1μm〜500μmであり、より好ましくは0.5〜100μmである。
研磨層11の形状は特に限定されないが、例えば円盤状、多角柱状等とすることができ、化学機械研磨パッド10を装着して使用する研磨装置に応じて適宜選択することができる。
化学機械研磨パッド用組成物を得る方法は特に限定されない。例えば、所定の有機材料等の必要な材料を混練機等により混練して得ることができる。混練機としては従来から公知のものを用いることができる。例えば、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機(単軸、多軸)等の混練機を挙げることができる。
水溶性粒子を含有する研磨パッド10を得るための水溶性粒子を含有する研磨パッド用組成物は、例えば、非水溶性マトリックス、水溶性粒子およびその他の添加剤等を混練して得ることができる。但し、通常、混練時には加工し易いように加熱して混練されるが、この時の温度において水溶性粒子は固体であることが好ましい。固体であることにより、非水溶性マトリックスとの相溶性の大きさに関わらず水溶性粒子を前記の好ましい平均粒径で分散させることができる。従って、使用する非水溶性マトリックスの加工温度により、水溶性粒子の種類を選択することが好ましい。
1.3.支持層
支持層12は、化学機械研磨パッド10において、研磨装置定盤13に研磨層11を支持するために用いられている。支持層12は、接着層からなっていてもよいし、接着層を上下面に有するクッション層であってもよい。
接着層は、たとえば粘着シートからなることができる。粘着シートの厚さは、50μm〜250μmであることが好ましい。50μm以上の厚さを有することにより、研磨層11の研磨面側からの圧力を十分に緩和することができ、250μm以下の厚さを有することにより、凹凸の影響を研磨性能に与えない程度に均一な厚みの化学機械研磨パッド10を提供することができる。
粘着シートの材質としては、研磨層11を研磨機定盤に固定することが出来れば特に限定されないが、研磨層11より弾性率の低いアクリル系、ゴム系が好ましく、より具体的には、アクリル系が好ましい。
粘着シートの接着強度は、化学機械研磨用パッドを研磨機定盤に固定することが出来れば特に限定されないが、JIS Z0237の規格で粘着シートの接着強度を測定した場合、接着強度が3N/25mm以上、好ましくは4N/CM以上、さらに10N/25mm以上がより好ましい。
クッション層は、研磨層11より硬度が低い材質からなれば、その材質は特に限定されず、多孔質体(発泡体)であっても、非多孔質体であってもよく、例えば発砲ポリウレタン等からなることができる。クッション層の厚さは、たとえば0.1mm〜5.0mmが好ましく、0.5mm〜2.0mmがより好ましい。
2.化学機械研磨方法
実施の形態に係る化学機械研磨パッド10は、市販の研磨装置に装着し、公知の方法により化学機械研磨方法に使用することができる。そして、このような化学機械研磨方法を用いて、たとえば半導体装置を製造することができる。以下に、上述した化学機械研磨パッドを用いる化学機械研磨方法の一例について説明する。
図4および図5は、本実施の形態に係る化学機械研磨方法を説明するための図である。本実施の形態に係る化学機械研磨方法において、化学機械研磨パッド10は、矢印D方向に回転している。半導体ウエハ(被研磨物)30は、加圧ヘッドに固定されたホルダー32に保持されており、当該加圧ヘッドによって、矢印B方向に回転させるとともに矢印C方向のように上下(中央部と外側の間を放射方向)に揺動させられる。このように、半導体ウエハ30を摺動させるとともに、化学機械研磨パッド10に対して押圧しながら押しつけるように当接させ、スラリーを化学機械研磨パッド10上に供給して研磨を行う。
本実施の形態に係る化学機械研磨方法においては、凹部24を有する化学機械研磨パッド10を用いるため、半導体ウエハ30を摺動させる際に、矢印E方向の非研磨面側に研磨層11が撓むことができ、中央部付近の溝27に過大な圧力がかかるのを防止し、均一な研磨面を長期間保持することができる。
また、本実施の形態に係る化学機械研磨方法においては、第1の底部25と研磨面20との距離cが、溝の深さdより小さい化学機械研磨パッド10を用いることにより、半導体ウエハ30を摺動させる際に、矢印E方向に研磨層11がより容易に撓むことができる。その結果、凹部24に閉じこめられた空気の反発力によるクッション性をより効果的に利用することができるため、中央部付近の溝27に過大な圧力がかかるのを防止できるためスクラッチ等の欠損を低減して、均一な研磨面を長期間保持することができる。
また、本実施の形態に係る化学機械研磨パッド10においては、研磨面20側に設けられた複数の溝27が、第2の底部26およびその周囲に対向する位置に設けられ、かつ第1の底部25に対向する位置には設けられていない。これにより本実施の形態に係る化学機械研磨方法においては、矢印E方向の撓みを溝27の形成されている領域にまで広範囲とすることができるため、中央部付近の溝27にかかる圧力をさらに研磨面20方向に広く分散させることができる。その結果、中央部付近の溝27の変形量を小さくすることができ、中央部付近の溝27の欠損を抑制すると共に被研磨物の研磨平坦性を向上させることができる。
また、変形例に係る化学機械研磨パッド110においても同様に、研磨面20側に設けられた複数の溝27が、第2の底部26,126、第3の底部127、およびその周囲に対向する位置に設けられ、かつ第1の底部25,125に対向する位置には設けられていない。これにより本実施の形態に係る化学機械研磨方法においては、矢印E方向の撓みを溝27の形成されている領域にまでさらに広範囲とすることができるため、中央部付近の溝27にかかる圧力をさらに研磨面20方向に広く分散させることができる。その結果、中央部付近の溝27の変形量を小さくすることができ、中央部付近の溝27の欠損を抑制すると共に被研磨物の研磨平坦性を向上させることができる。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッド10を使用して化学機械研磨することのできる被研磨物としては、配線材料たる金属、バリアメタル、絶縁膜等を挙げることができる。上記金属としては、例えばタングステン、アルミニウム及び銅並びにこれらを含有する合金等を挙げることができる。上記バリアメタルとしては、例えばタンタル、窒化タンタル、チタン、窒化チタン、窒化タングステン等を挙げることができる。上記絶縁膜としては、化学蒸着法等の真空プロセスで形成された酸化シリコン膜(PETEOS膜(Plasma Enhanced−TEOS膜)、HDP膜(High Density Plasma Enhanced−TEOS膜)、熱CVD法により得られる酸化シリコン膜など)、SiOに少量のホウ素およびリンを添加したホウ素リンシリケート膜(BPSG膜)、SiOにフッ素をドープしたFSG(Fluorine−doped silicate glass)と呼ばれる絶縁膜、SiON(Silicon oxynitride)と呼ばれる絶縁膜、Silicon nitride、低誘電率の絶縁膜等をあげることができる。
上記低誘電率の絶縁膜としては、例えば酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アルゴン、HO、オゾン、アンモニアなどの存在下で、アルコキシシラン、シラン、アルキルシラン、アリールシラン、シロキサン、アルキルシロキサンなどの珪素含有化合物をプラズマ重合して得られる重合体からなる絶縁膜や、ポリシロキサン、ポリシラザン、ポリアリーレンエーテル、ポリベンゾオキサゾール、ポリイミド、シルセスキオキサン等からなる絶縁膜、低誘電率の酸化シリコン系絶縁膜を挙げることができる。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッド10は、上記の通り、広範囲な化学機械研磨工程に使用することができるが、特に、銅を配線材料とするダマシン配線の形成工程に好適に使用することができる。銅を配線材料とするダマシン配線の形成工程は、配線となるべき部分に溝を形成した絶縁膜の溝部及び溝部以外の部分にバリアメタル層を形成した後、配線材料である銅を堆積したものを被研磨物とし、余剰の銅を除去する工程(第1研磨処理工程)、溝部位外のバリアメタルを除去する工程(第2研磨処理工程)及び絶縁膜部分も若干研磨する工程(第3研磨処理工程)を経ることにより平坦なダマシン配線を得るものである。本発明の化学機械研磨パッドは、上記第1〜第3研磨処理工程のいずれの工程に使用するための化学機械研磨工程にも使用することができる。
なお、上記「銅」とは、純銅の他、銅とアルミニウム、シリコン等との合金であって、銅の含有量が95質量%以上のものをも含む概念であると理解されるべきである。
3.実施例および比較例
本実施の形態の実施例に係る化学機械研磨パッドおよび比較例に係る化学機械研磨パッドを製造し、化学機械研磨を実施した。研磨後、化学機械研磨パッドの外観を評価した。
3.1.化学機械研磨パッド(A−1)の製造
1,2−ポリブタジエン(JSR(株)製、商品名「JSR RB830」)を72.8質量部に及びβ−シクロデキストリン((株)横浜国際バイオ研究所製、商品名「デキシーパールβ−100」、平均粒径20μm)27.2質量部を、160℃に調温されたルーダーにより2分混練した。次いで、「パークミルD40」(商品名、日本油脂(株)製。ジクミルパーオキシドを40質量%含有する。)を0.55質量部(1,2−ポリブタジエン100質量部あたりのジクミルパーオキシド量に換算して、0.30質量部に相当する。)を加え、更に120℃にて60pmで2分混練し、化学機械研磨パッド用組成物のペレットを得た。このペレット1500グラムを2.5mmのギャップを備えた金型にて、170℃、18分間加熱して成形し、直径762mm、厚さ2.5mmの円形の平板を得た。
これを市販の溝加工機を用いて、研磨面側にピッチ2.0mm、溝幅0.25mm、深さ(d)1.4mmの同心円状の溝を形成し、非研磨面側に凹部を形成して研磨層を得た。さらに非研磨面側に接着層としての積水化学工業社製両面テープ、商品名#5673JXを貼り付けて化学機械研磨パッド(A−1)を得た。非研磨面側に形成した凹部のサイズの詳細については表2に示す。
3.2.化学機械研磨パッド(A−2)の製造
「3.1.化学機械研磨パッド(A−1)の製造」と同様にして得られた平板を、市販の溝加工機を用いて、ピッチ2.0mm、溝幅0.25mm、深さ(d)1.4mmの同心円状の溝を形成して研磨層を得た。ここで凹部は形成しなかった。さらに非研磨面側に接着層としての積水化学工業社製両面テープ、商品名#5673JXを貼り付けて化学機械研磨パッド(A−2)を得た。
3.3.化学機械研磨パッド(B−1、2)の製造
「3.1.化学機械研磨パッド(A−1)の製造」における各原料の種類及び使用量を表1のとおりとした他は、「3.1.化学機械研磨パッド(A−1)の製造」と同様にして化学機械研磨パッド(B−1、2)を得た。ただし、化学機械研磨パッド(B−1)は、図3に示すように互いに段差を有する複数の底部を有する凹部を備えているが、化学機械研磨パッド(B−2)の凹部は、段差のない底部を有するものとした。凹部のサイズの詳細については表2に示す。
ただし、表1において使用した略称は、それぞれ以下を表す。また、表1における数値は質量部である。
RB830:1,2−ポリブタジエン(JSR(株)製、商品名「JSR RB830」)
HF55:ポリスチレン(PSジャパン(株)製、商品名「HF55」)
β−CD:β−シクロデキストリン((株)横浜国際バイオ研究所製、商品名「デキシーパールβ−40」、平均粒径20μm)
D40:日本油脂(株)製、商品名「パークミルD40」、ジクミルパーオキシドを40質量%含有する。
Figure 2009218533
3.4.化学機械研磨工程
3.1.ないし3.3.において製造した化学機械研摩パッドを、化学機械研磨装置「Mirra/Mesa」(Applied Materials社製)の定盤上に装着し、P−TEOSブランケットウェハを化学機械研磨した。化学機械研磨の条件は以下のとおりである。
化学機械研磨用水系分散体:JSR株式会社製シリカ砥粒含有スラリー、CMS−1101。
水系分散体供給量:300mL/分
定盤回転数:63rpm
ヘッド回転数:60rpm
ヘッド押しつけ圧
リテナーリング圧:8psi
メンブレン圧:4.0psi
研磨時間:60秒
3.5.評価
化学機械研磨後における化学機械研磨パッドの外観の評価を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2009218533
表2に示すように、化学機械研磨パッド(A−1)、(B−1)については、400枚で検討を終えたが溝は全くダメージを受けていなかった。これらの結果から、研磨層の非研磨面に段差のある複数の底部を有する凹部を形成することにより、研磨ヘッドからかかる過負荷を緩和し、過負荷によって溝へ与えるダメージを防ぐことができたことが認められた。以上のことから本発明によって、研磨層のダメージを抑制することができ、製品寿命が長い化学機械研磨パッドが提供されることが可能になった。
本実施の形態に係る説明は以上である。本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、さらなる種々の変形が可能である。また本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
本実施の形態に係る化学機械研磨パッドを示す断面図である。 図1における領域IIの拡大図であり、研磨層の詳細な形状を示す断面図である。 変形例に係る研磨層の詳細な形状を示す断面図である。 本実施の形態に係る化学機械研磨方法を説明するための図である。 本実施の形態に係る化学機械研磨方法を説明するための図である。
符号の説明
10,110…化学機械研磨パッド、 11,111…研磨層、 12…支持層、 13…研磨装置定盤、 20…研磨面、 22…非研磨面、 24,124…凹部、 25,125…第1の底部、 26,126…第2の底部、 27…溝、 28…溝の底部、 127…第3の底部、 30…半導体ウエハ、 32…ホルダー

Claims (10)

  1. 化学機械研磨に用いられる化学機械研磨パッドであって、
    研磨面と、
    前記研磨面の反対側にある非研磨面と、
    非研磨面における中央部を含む領域に設けられた凹部と、
    を有する研磨層を含み、
    前記凹部は、互いに異なる深さの複数の底部を備える、化学機械研磨パッド。
  2. 請求項1において、
    前記複数の底部は、第1の底部と、前記第1の底部の周囲を取り囲む第2の底部とを有し、
    前記第1の底部は、前記第2の底部より深い位置に設けられている、化学機械研磨パッド。
  3. 請求項1において、
    前記複数の底部は、第1の底部と、前記第1の底部の周囲を取り囲む第2の底部と、前記第2の底部の周囲を取り囲む第3の底部とを有し、
    前記第1の底部は、前記第2の底部より深い位置に設けられており、
    前記第2の底部は、前記第3の底部より深い位置に設けられている、化学機械研磨パッド。
  4. 請求項1ないし3のいずれかにおいて、
    前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
    前記複数の溝は、前記凹部と重複しない位置に設けられている、化学機械研磨パッド。
  5. 請求項1ないし4のいずれかにおいて、
    前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
    前記複数の底部のうち最も深い位置に設けられている底部は、前記研磨面に対して垂直方向において、前記研磨面と前記複数の溝の底部との間の位置に設けられている、化学機械研磨パッド。
  6. 請求項2または3において、
    前記複数の溝の底部は、前記研磨面に対して垂直方向において、前記第1の底部と前記第2の底部との間の位置に設けられている、化学機械研磨パッド。
  7. 請求項2において、
    前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
    前記複数の溝は、前記第2の底部およびその周囲に対向する位置に設けられ、かつ前記第1の底部に対向する位置には設けられていない、化学機械研磨パッド。
  8. 請求項3において、
    前記研磨面側に設けられた複数の溝をさらに含み、
    前記複数の溝は、前記第2の底部、前記第3の底部、およびその周囲に対向する位置に設けられ、かつ前記第1の底部に対向する位置には設けられていない、化学機械研磨パッド。
  9. 請求項1ないし7のいずれかにおいて、
    前記凹部は、平面視において円形状であり、
    前記研磨面側に設けられた前記円形状と同心の環状の複数の溝をさらに含む、化学機械研磨パッド。
  10. 請求項1ないし8のいずれかに記載の化学機械研磨パッドを用いる、化学機械研磨方法。
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