JP3849593B2 - 研磨パッド及び複層型研磨パッド - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、研磨パッド及び複層型研磨パッドに関する。更に詳しくは、研磨面側に開口する特定の形状の凹部等を有する研磨パッド及び複層型研磨パッドに関する。本発明は、半導体装置の製造において広く利用される。特に半導体ウェハ等の表面の化学機械研磨等において好適である。
【0002】
【従来の技術】
近年、優れた平坦性を有する表面を形成することができる研磨方法として、Chemical Mechanical Polishing(CMP)が注目されている。CMPでは研磨パッドと被研磨面とを摺動させながら、研磨パッド表面に砥粒が分散された水系分散体であるスラリーを上方から流下させて研磨が行われる。このCMPにおいては、研磨パッドの性状及び特性等により研磨結果が大きく左右されることが知られている。
【0003】
この研磨パッドとして、その表面に溝を設けることにより研磨速度及び研磨結果を向上させる技術が、特開平11−70463号公報、特開平8−216029号公報及び特開平8−39423号公報等に開示されている。しかし、これらの技術を用いても未だ十分にスクラッチを防止できない場合がある。
また、発泡体を用いずにポアを形成できる研磨パッドとして、特表平8−500622号公報、特開2000−34416号公報、特開2000−33552号公報及び特開平2001−334455号公報等に開示された技術が知られている。しかし、これらの技術を用いても研磨時にポアが塞がることを抑制できない場合や、ドレッシング後にポアが塞がることを抑制できない場合があり、これにより研磨速度を十分に向上できない場合がある。更に、スラリーを研磨パッド上に十分に均一に分布させられない場合があり、これにより研磨速度を十分に向上させることができず、十分に均質な被研磨面が得られない場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の問題点を解決するものであり、スクラッチの発生を特に効果的に抑制することができる研磨パッド及び複層型研磨パッドを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の研磨パッドは、研磨面側に開口し、開口部の面積が0.0075mm以上であり、且つ内面の表面粗さが20μm以下である複数の凹部又は複数の貫通孔を有し、化学機械研磨に用いることを特徴とする。
また、上記凹部又は上記貫通孔は、深さが0.1mm以上、平面方向の最小寸法が0.1mm以上であり、且つ隣り合う凹部又は貫通孔の間の最小距離が0.05mm以上である研磨パッドとすることができる。
更に、架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスと、該非水溶性マトリックス中に分散された水溶性粒子とを有する研磨パッドとすることができる。
また、上記凹部又は上記貫通孔は、切削及び/又は型成形により形成された研磨パッドとすることができる。
【0006】
本発明の複層型研磨パッドは、研磨面側に開口し、開口部の面積が0.0075mm以上であり、且つ内面の表面粗さが20μm以下である複数の凹部又は複数の貫通孔を有する研磨層と、該研磨層の裏面側に配された支持層とを備え、化学機械研磨に用いることを特徴とする。
また、上記凹部又は上記貫通孔は、深さが0.1mm以上、平面方向の最小寸法が0.1mm以上であり、且つ隣り合う凹部又は貫通孔の間の最小距離が0.05mm以上である複層型研磨パッドとすることができる。
更に、上記研磨層は、架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスと、該非水溶性マトリックス中に分散された水溶性粒子とを有する複層型研磨パッドとすることができる。
また、上記凹部又は上記貫通孔は、切削及び/又は型成形により形成された複層型研磨パッドとすることができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
上記「凹部」は、研磨パッドの研磨面側に開口する。また、上記「貫通孔」は、研磨パッドの研磨面側及びその反対面の両面に開口する。この凹部又は貫通孔(以下、「凹部等」ということもある)は、研磨時に供給されるスラリーを保持し、スラリーを研磨面により均一に分配する機能を有する。更に、研磨により生じた摩耗屑や使用済みスラリー等の廃棄物を一時的に滞留させ、この廃棄物を外部へ排出するための排出経路となる機能を有する。尚、貫通孔を有する場合であっても、この研磨パッドは、研磨装置の定盤に押圧などにより固定されることにより、スラリーが貫通孔を通して研磨に供されずに流出することはない。
【0008】
この凹部等の平面形状は特に限定されないが、例えば、円形、多角形(三角形、四角形、五角形等)、楕円形などとすることができる。また、研磨面における凹部等の開口部の配置も限定されないが、研磨面の全面に渡って均等に設けられていることが好ましい。この凹部等を有する研磨パッドの具体例としては、その研磨面に平面形状が円形の凹部等が均等に開口しているもの(図1参照)が挙げられる。尚、凹部等の断面形状は特に限定されないが、例えば、平坦な側面と底面とにより形成された形状(凹部である場合、開口側と底部側の各々の横断面方向の寸法は同じでもよく、開口側が底部側より寸法が大きくてもよく、底部側が開口側より寸法が大きくてもよい。また、貫通孔の場合、一方の開口側と他方の開口側の各々の横断面方向の寸法は同じでもよく、研磨面側の寸法が大きくてもよく、反対面側の寸法が大きくてもよい。)、U字形状、V字形状等とすることができる。
【0009】
この凹部等の大きさは特に限定されないが、例えば、平面形状が円形である場合はその直径が、多角形、楕円形等である場合は平面方向の最小寸法(図2における22)は0.1mm以上(より好ましくは0.1〜5mm、更に好ましくは0.2〜3mm)であることが好ましい。通常、直径又は最小寸法が0.1mm未満である凹部等を形成するのは困難となる傾向にある。また、凹部等の深さは0.1mm以上(より好ましくは0.1〜2.5mm、更に好ましくは0.2〜2.0mm)であることが好ましい。凹部等の深さが0.1mm未満では研磨パッドの寿命が過度に短くなるため好ましくない。更に、凹部等の間隔は、隣り合う凹部等の間の最小距離(図2における23)が0.05mm以上(より好ましくは0.05〜100mm、更に好ましくは0.1〜10mm)であることが好ましい。この最小距離が0.05mm未満である凹部等を形成するのは困難となる傾向にある。また、凹部等の平面方向の最小寸法と隣り合う凹部等の間の距離との和であるピッチ(図2における21)は0.15mm以上(より好ましくは0.15〜105mm、更に好ましくは0.3〜13mm、特に好ましくは0.5〜2.2mm)であることが好ましい。
上記各好ましい範囲は各々の組合せとすることができる。即ち、例えば、平面方向の最小寸法が0.1mm以上、深さが0.1mm以上且つ隣り合う凹部等の間の最小距離が0.05mm以上であることが好ましく、平面方向の最小寸法が0.1〜5mm、深さが0.1〜2.5mm且つ隣り合う凹部等の間の最小距離が0.05〜100mmであることがより好ましく、平面方向の最小寸法が0.2〜3mm、深さが0.2〜2.0mm且つ隣り合う凹部の間の最小距離が0.1〜10mmであることが更に好ましい。
【0010】
この凹部は、その開口部の面積が0.0075mm以上(好ましくは0.01mm以上、より好ましくは1mm以上、通常100mm以下)である。開口部の面積が0.0075mm以上であることにより、研磨時に供給されるスラリーを十分に保持することができ、研磨により生じた摩耗屑や使用済みスラリー等の廃棄物の一時的な滞留、及びこの廃棄物の外部への排出を容易に行うことができる。
【0011】
更に、凹部等の内面の上記「表面粗さ」は20μm以下(好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下、通常0.05μm以上)である。この表面粗さが20μm以下であることにより研磨時のスクラッチを効果的に防止できる。尚、この表面粗さは後述する測定方法による値であり、本発明の研磨パッドの少なくとも使用前における値である。
【0012】
凹部等の内面の表面粗さが20μm以下ということは、大きな凹凸がない状態である。大きな凹凸がある場合、特に大きな凸部(例えば、凹部等の形成時に生じる削り残し等からなる)は、研磨中に脱離し、これがスクラッチ発生の原因となる。更に、この脱離した凸部が研磨中の圧力や摩擦熱等により圧縮される等して形成される異物や、脱離した凸部と研磨屑、スラリー中の固形分等とが作用等して形成される異物等によってもスクラッチを生じることがある。また、ドレッシング時にもこれらの凸部は脱離して同様な不具合を招く場合がある。
また、表面粗さが20μm以下であるとスクラッチを防止できることに加えて、上記凹部等としての機能、特に、スラリーを研磨面に分配する機能及び廃棄物を外部へ排出する機能が特に効率よく発揮される。
【0013】
この表面粗さは、使用前の研磨パッドの表面の異なる3視野について表面粗さを測定できる測定器等を用いて各々平均表面粗さを測定し、得られた3つの平均表面粗さから求めた平均値である。用いる測定器等は特に限定されず、例えば、三次元表面構造解析顕微鏡、走査型レーザー顕微鏡、電子線表面形態解析装置等の光学式表面粗さ測定器や、触針式表面粗さ計等の接触式表面粗さ測定器を用いることができる。
【0014】
研磨面側等に開口する凹部等の各々の平面形状、平面方向の最小寸法、深さ等は同じであってもよいし、変化していてもよい。また、この凹部等は研磨面の全面に均等な間隔で形成されていてもよいし、均等に形成されていなくてもよいが、安定した研磨を行うためには均等に形成されていることが好ましい。更に、研磨パッドは凹部等以外にも各種形状の溝を備えることができる。この溝としては、環状の溝(同心円状の溝)、格子状の溝、螺旋状の溝等が挙げられる
【0015】
この凹部等を備える研磨パッドは、研磨パッドとしての機能を発揮できればどのようなものから構成されていてもよい。しかし、研磨パッドとしての機能の中でも、特に、研磨時にスラリーを保持し、研磨屑を一時的に滞留させる等の機能を有するポアが研磨時までに形成されていることが好ましい。このため、水溶性粒子と水溶性粒子が分散された非水溶性マトリックスとを備えるか、又は、空孔が分散して形成された非水溶性マトリックス(発泡体等)を備えることが好ましい。
このうち、前者は、水溶性粒子が研磨時にスラリー(媒体分と固形分とを含有する)の水系媒体分と接触し、溶解又は膨潤して脱離する。そして、脱離により形成されたポアにスラリーが保持される。一方、後者は、空孔として予め形成されているポアにスラリーが保持される。
【0016】
上記「非水溶性マトリックス」を構成する材料は特に限定されないが、所定の形状及び性状への成形が容易であり、適度な硬度や、適度な弾性等を付与できることなどから、通常、有機材料を用いる。この有機材料としては、熱可塑性樹脂、エラストマー、ゴム(架橋ゴム)及び硬化樹脂(熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等、熱、光等により硬化された樹脂)等を単独又は組み合わせて用いることができる。
【0017】
このうち、熱可塑性樹脂としては、1,2−ポリブタジエン樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアクリル系樹脂{(メタ)アクリレート系樹脂等}、ビニルエステル系樹脂(アクリル系樹脂を除く)、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂等が挙げられる。
【0018】
エラストマーとしては、1,2−ポリブタジエン等のジエン系エラストマー、ポリオレフィン系エラストマー(TPO)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、その水素添加ブロック共重合体(SEBS)等のスチレン系エラストマー、熱可塑性ポリウレタン系エラストマー(TPU)、熱可塑性ポリエステル系エラストマー(TPEE)、ポリアミド系エラストマー(TPAE)等の熱可塑性エラストマー、シリコーン樹脂系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマー等が挙げられる。
【0019】
ゴムとしては、ブタジエン系ゴム(高シスブタジエンゴム、低シスブタジエンゴム等)、イソプレン系ゴム、スチレン−ブタジエン系ゴム、スチレン−イソプレン系ゴム等の共役ジエン系ゴム、アクロルニトリル−ブタジエン系ゴム等のニトリル系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン−プロピレン系ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム等のエチレン−α−オレフィン系ゴム及びブチルゴムや、シリコーンゴム、フッ素ゴム等のその他のゴムが挙げられる。
【0020】
硬化樹脂としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリウレタン−ウレア系樹脂、ウレア系樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール系樹脂、ビニルエステル系樹脂等が挙げられる。
また、これらの有機材料は、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、アミノ基等により変性されたものであってもよい。変性により、後述する水溶性粒子や、スラリーとの親和性を調節することができる。
これらの有機材料は1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
更に、これらの有機材料は、その一部又は全部が架橋された架橋重合体でもよく、非架橋重合体でもよい。従って、非水溶性マトリックスは、架橋重合体のみからなってもよく、架橋重合体と非架橋重合体との混合物であってもよく、非架橋重合体のみからなってもよい。しかし、架橋重合体を含有する(架橋重合体のみ、又は架橋重合体と非架橋重合体との混合物)ことが好ましい。架橋重合体を含有することにより、上記溝の内面の表面粗さを容易に20μm以下にできると共に、非水溶性マトリックスに弾性回復力が付与され、研磨時に研磨パッドにかかるずり応力による変位を小さく抑えることができる。また、研磨時及びドレッシング時に非水溶性マトリックスが過度に引き伸ばされ塑性変形してポアが埋まること、更には、研磨パッド表面が過度に毛羽立つこと等を効果的に抑制できる。従って、ドレッシング時にもポアが効率よく形成され、研磨時のスラリーの保持性の低下が防止でき、更には、毛羽立ちが少なく研磨平坦性を阻害しない。尚、上記架橋を行う方法は特に限定されず、有機過酸化物、硫黄、硫黄化合物等を用いた化学架橋、電子線照射等による放射線架橋などにより行うことができる。
【0022】
この架橋重合体としては、上記有機材料のうちの架橋ゴム、硬化樹脂、架橋された熱可塑性樹脂及び架橋されたエラストマー等を用いることができる。更に、これらの中でも、多くのスラリー中に含有される強酸や強アルカリに対して安定であり、且つ吸水による軟化が少ないことから架橋熱可塑性樹脂及び/又は架橋エラストマーが好ましい。また、架橋熱可塑性樹脂及び架橋エラストマーのうちでも、有機過酸化物を用いて架橋されたものが特に好ましく、更には、架橋1,2−ポリブタジエンがより好ましい。これにより表面粗さが20μm以下である凹部等を容易に形成することができる。
【0023】
これら架橋重合体の含有量は特に限定されないが、非水溶性マトリックス全体の30体積%以上(より好ましくは50体積%以上、更に好ましくは70体積%以上、100体積%であってもよい)であることが好ましい。非水溶性マトリックス中の架橋重合体の含有量が30体積%未満であると、架橋重合体を含有する効果を十分に発揮させることができない場合がある。
【0024】
架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスは、JIS K 6251に準じて非水溶性マトリックスからなる試験片を80℃において破断させた場合に、破断後に残留する伸び(以下、単に「破断残留伸び」という)が100%以下とすることができる。即ち、破断した後の標線間合計距離が破断前の標線間距離の2倍以下となる。この破断残留伸びは30%以下(更に好ましくは10%以下、とりわけ好ましくは5%以下、通常0%以上)であることがより好ましい。破断残留伸びが100%を超えると、研磨時及びドレッシング時に研磨パッド表面から掻き取られた又は引き延ばされた微細片がポアを塞ぎ易くなる傾向にあり好ましくない。尚、この「破断残留伸び」とは、JIS K 6251「加硫ゴムの引張試験方法」に準じて、試験片形状ダンベル状3号形、引張速度500mm/分、試験温度80℃で引張試験において試験片を破断させた場合に、破断して分割された試験片の各々の標線から破断部までの合計距離から、試験前の標線間距離を差し引いた距離の伸び率である。また、実際の研磨においては摺動により発熱するため温度80℃における試験である。
【0025】
上記「水溶性粒子」は、研磨パッド中において水系分散体であるスラリーと接触することにより非水溶性マトリックスから脱離する粒子である。この脱離は、スラリー中に含有される水等との接触により溶解することで生じてもよく、この水等を含有して膨潤し、ゲル状となることで生じるものであってもよい。更に、この溶解又は膨潤は水によるものばかりでなく、メタノール等のアルコール系溶剤を含有する水系混合媒体との接触によるものであってもよい。
【0026】
この水溶性粒子は、ポアを形成する効果以外にも、研磨パッド中においては、研磨パッドの押し込み硬さを大きくし、押圧による被研磨体の押し込み量を小さくする効果を有する。即ち、例えば、水溶性粒子を含有することにより本発明の研磨パッドのショアD硬度は35以上(より好ましくは50〜90、更に好ましくは60〜85、通常100以下)にすることができる。ショアD硬度が35以上であると、被研磨体に負荷できる圧力を大きくでき、これに伴い研磨速度を向上させることができる。更に加えて、高い研磨平坦性が得られる。従って、この水溶性粒子は、研磨パッドにおいて十分な押し込み硬さを確保できる中実体であることが特に好ましい。
【0027】
この水溶性粒子を構成する材料は特に限定されないが、例えば、有機系水溶性粒子及び無機系水溶性粒子を挙げることができる。有機系水溶性粒子としては、糖類(でんぷん、デキストリン及びシクロデキストリン等の多糖類、乳糖、マンニット等)、セルロース類(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース等)、蛋白質、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンオキサイド、水溶性の感光性樹脂、スルホン化ポリイソプレン、スルホン化ポリイソプレン共重合体等から形成されたものが挙げられる。更に、無機系水溶性粒子としては、酢酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、リン酸カリウム、硝酸マグネシウム等から形成されたものが挙げられる。これらの水溶性粒子は、上記各材料を単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。更に、所定の材料からなる1種の水溶性粒子であってもよく、異なる材料からなる2種以上の水溶性粒子であってもよい。
【0028】
また、水溶性粒子の平均粒径は0.1〜500μm(より好ましくは0.5〜100μm、更に好ましくは1〜50μm)とすることが好ましい。即ち、ポアの大きさは0.1〜500μm(より好ましくは0.5〜100μm、更に好ましくは1〜50μm)であることが好ましい。水溶性粒子の平均粒径が0.1μm未満であると、形成されるポアの大きさが使用する砥粒より小さくなるためスラリーを十分に保持できる研磨パッドが得難くなる傾向にある。一方、500μmを超えると、形成されるポアの大きさが過大となり得られる研磨パッドの機械的強度及び研磨速度が低下する傾向にある。
【0029】
この水溶性粒子の含有量は、非水溶性マトリックスと水溶性粒子との合計を100体積%とした場合に、水溶性粒子は10〜90体積%(より好ましくは15〜60体積%、更に好ましくは20〜40体積%)であることが好ましい。水溶性粒子の含有量が10体積%未満であると、得られる研磨パッドにおいてポアが十分に形成されず研磨速度が低下する傾向にある。一方、90体積%を超えて水溶性粒子を含有する場合は、得られる研磨パッドにおいて研磨パッド内部に存在する水溶性粒子が膨潤又は溶解することを十分に防止でき難くなる傾向にあり、研磨パッドの硬度及び機械的強度を適正な値に保持し難くなる。
【0030】
また、水溶性粒子は、研磨パッド内において表層に露出した場合にのみ水溶し、研磨パッド内部では吸湿し、更には膨潤しないことが好ましい。このため、水溶性粒子は最外部の少なくとも一部に吸湿を抑制する外殻を備えることができる。この外殻は水溶性粒子に物理的に吸着していても、水溶性粒子と化学結合していても、更にはこの両方により水溶性粒子に接していてもよい。このような外殻を形成する材料としては、エポキシ樹脂、ポリイミド、ポリアミド、ポリシリケート等を挙げることができる。尚、この外殻は水溶性粒子の一部のみに形成されていても十分に上記効果を得ることができる。
【0031】
上記非水溶性マトリックスは、水溶性粒子との親和性並びに非水溶性マトリックス中における水溶性粒子の分散性を制御するため、相溶化剤を含有することができる。相溶化剤としては、酸無水物基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、エポキシ基、オキサゾリン基及びアミノ基等により変性された重合体、ブロック共重合体、並びにランダム共重合体、更に、種々のノニオン系界面活性剤、カップリング剤等が挙げられる。
【0032】
更に、非水溶性マトリックスは、上記相溶化剤以外にも、従来からスラリーに含有されている砥粒、酸化剤、アルカリ金属の水酸化物、酸、pH調節剤、界面活性剤及びスクラッチ防止剤等の1種又は2種以上を含有することができる。また、この非水溶性マトリックスは、使用時に酸を生成する塩を含有していてもよい。これにより研磨時に水のみを供給して研磨を行うことも可能となる。
【0033】
上記砥粒としては、シリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア及びチタニア等からなる粒子を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記酸化剤としては、過酸化水素、過酢酸、過安息香酸、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、過マンガン酸カリウム等の過マンガン酸化合物、重クロム酸カリウム等の重クロム酸化合物、ヨウ素酸カリウム等のハロゲン酸化合物、硝酸及び硝酸鉄等の硝酸化合物、過塩素酸等の過ハロゲン酸化合物、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、並びにへテロポリ酸等が挙げられる。これらの酸化剤のうちでは、分解生成物が無害である過酸化水素及び有機過酸化物の他、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩が特に好ましい。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0034】
上記アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、及び水酸化セシウム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記酸としては有機酸及び無機酸が挙げられる。このうち有機酸としては、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、イソプレンスルホン酸、グルコン酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、グリコール酸、マロン酸、ギ酸、シユウ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸及びフタル酸等が挙げられる。また、無機酸としては、硝酸、塩酸及び硫酸等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
上記塩としては、上記酸のアンモニウム塩、ナリトウム塩、カリウム塩等のアリカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0035】
上記界面活性剤としてはカチオン系界面活性剤及びアニオン系界面活性剤等が挙げられる。このうちアニオン系界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等のリン酸エステル塩等を挙げることができる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0036】
上記スクラッチ防止剤としては、ビフェノール、ビピリジル、2−ビニルピリジン及び4−ビニルピリジン、サリチルアルドキシム、o−フェニレンジアミン及びm−フェニレンジアミン、カテコール、o−アミノフェノール、チオ尿素、N−アルキル基含有(メタ)アクリルアミド、N−アミノアルキル基含有(メタ)アクリルアミド、7−ヒドロキシ−5−メチル−1,3,4−トリアザインドリジン、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、フタラジン、メラミン及び3−アミノ−5,6−ジメチル−1,2,4−トリアジン等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。
【0037】
また、非水溶性マトリックスは、上記相溶化剤、上記従来からスラリーに含有されている各種材料以外に、充填剤、軟化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、可塑剤等の各種の添加剤を含有することができる。このうち充填剤としては炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、クレー等の剛性を向上させる材料、及びシリカ、アルミナ、セリア、ジルコニア、酸化チタン、二酸化マンガン、三酸化二マンガン、炭酸バリウム等の研磨効果を備える材料等を用いてもよい。
【0038】
本発明の研磨パッドの形状は特に限定されないが、例えば、円盤状、ベルト状、ローラー状等とすることができ、研磨装置に応じて適宜選択することが好ましい。また、使用前における研磨パッドの大きさも特に限定されないが、円盤状の研磨パッドでは、例えば、直径0.5〜500cm(更に1.0〜250cm、特に20〜200cm)、厚さ0.1mmを超え且つ100mm以下(特に1〜10mm)とすることができる。
【0039】
本発明の研磨パッドの製造方法は特に限定されず、研磨パッドの有する凹部等の形成方法も特に限定されない。例えば、予め研磨パッドとなる研磨パッド用組成物を得、この組成物を所望の概形に成形した後、切削加工により凹部等を形成することができる。更に、凹部等となるパターンが形成された金型を用いて研磨パッド用組成物を金型成形することにより、研磨パッドの概形と共に凹部等を同時に形成することができる。また、これらの切削加工及び金型成形によると凹部等の内面の表面粗さを容易に20μm以下とすることができる。尚、研磨パッドが発泡体等の非水溶性マトリックス中に空孔が分散されたものである場合、金型成形では、通常、表面にスキン層が形成され、ポアが形成されないため研磨パッドとして用いることができない。
【0040】
また、研磨パッド用組成物を得る方法は特に限定されないが、例えば、所定の有機材料等の必要な材料を混練機等により混練して得ることができる。混練機としては従来より公知のものを用いることができる。例えば、ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機(単軸、多軸)等の混練機を挙げることができる。更に、水溶性粒子を含有する研磨パッドを得るための水溶性粒子を含有する研磨パッド用組成物は、例えば、非水溶性マトリックス、水溶性粒子及びその他の添加剤等を混練して得ることができる。但し、通常、混練時には加工し易いように加熱して混練されるが、この時の温度において水溶性粒子は固体であることが好ましい。固体であることにより、非水溶性マトリックスとの相溶性の大きさに関わらず水溶性粒子を前記の好ましい平均粒径で分散させることができる。従って、使用する非水溶性マトリックスの加工温度により、水溶性粒子の種類を選択することが好ましい。
【0041】
本発明の複層型研磨パッドは、(1)研磨面側に開口し、開口部の面積が0.0075mm以上であり、且つ内面の表面粗さが20μm以下である複数の凹部を有する研磨層と、研磨層の裏面側に配された支持層とを備えるもの、又は(2)研磨面側に開口し、開口部の面積が0.0075mm以上であり、且つ内面の表面粗さが20μm以下である複数の貫通孔を有する研磨層と、研磨層の裏面側に配された支持層とを備えるものである。
【0042】
このうち、前者の複層型研磨パッドにおける研磨層としては、前記本発明の研磨パッドのうちで研磨面側に開口する凹部を有する場合を適用することができる。
また、支持層は研磨層等を研磨層の裏面側で支える層である。この支持層の特性は特に限定されないが、研磨層に比べてより軟質であることが好ましい。より軟質な支持層を備えることにより、研磨層の厚さが薄い(例えば、5mm以下)場合であっても、研磨時に研磨層が浮き上がることや、研磨層の表面が湾曲すること等を防止でき、安定して研磨を行うことができる。この支持層の硬度は、研磨層の硬度の90%以下(更には80%以下、特に70%以下、通常10%以上)であることが好ましい。更には、ショアD硬度において70以下(より好ましくは60以下、更に好ましくは50以下)であることが好ましい。
【0043】
また、支持層は、多孔質体(発泡体)であっても、非多孔質体であってもよい。更に、その平面形状は特に限定されず、研磨層と同じであっても異なっていてもよい。この支持層の平面形状としては、例えば、円形、多角形(四角形等)などとすることができる。また、その厚さも特に限定されないが、例えば、0.1〜5mm(更に好ましくは0.5〜2mm)とすることができる。
支持層を構成する材料も特に限定されないが、所定の形状及び性状への成形が容易であり、適度な弾性等を付与できることなどから有機材料を用いることが好ましい。有機材料としては、前記研磨パッドにおける非水溶性マトリックスを構成する有機材料を適用することができる。但し、支持層を構成する有機材料は架橋重合体であっても、非架橋重合体であってもよい。
【0044】
一方、後者の複層型研磨パッドにおける研磨層は、前記本発明の研磨パッドにおける凹部が、研磨面側から裏面側まで貫通したものである。この貫通孔の平面形状、配置、断面形状及び大きさ(深さ、平面方向の最小寸法、隣り合う貫通孔間の最小距離及びピッチ等)などは前記研磨パッドにおける貫通孔における形状及び大きさを適用できる。尚、この研磨層は、裏面側で支持層等の他の層と接着又は接合等されることで、スラリーが貫通孔を通して研磨に供されずに流出することはない。
また、支持層としては、上記支持層を適用することができる。
【0045】
これらの本発明の複層型研磨パッドにおいては、上記支持層は1層のみを備えていてもよく、2層以上を備えていてもよい。また、この支持層と研磨層とは直接接して積層されていてもよく、他の層を介して積層されていてもよい。更に、支持層は、研磨層又は他の層に接着剤、接着材(接着テープ等)などにより接着されていてもよく、部分的に溶融されることにより一体的に接合されていてもよい。
【0046】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
[1]研磨パッドの製造
実施例1
架橋されて非水溶性マトリックスとなる1,2−ポリブタジエン(ジェイエスアール株式会社製、商品名「JSR RB830」)80体積部と、水溶性粒子であるβ−サイクロデキストリン(横浜国際バイオ研究所株式会社製、商品名「デキシーパールβ−100」、平均粒径20μm)20体積部とを、160℃に調温されたルーダーにより混練し、白色ペレットを得た。その後、有機過酸化物(日本油脂株式会社製、商品名「パークミルD−40」)0.3体積部を配合して、120℃にて更に混練し、次いで、混練物を金型内に押出し、170℃で18分加熱し、架橋させて、直径60cm、厚さ2.5mmの円盤状の成形体を得た。その後、この成形体の一面側に切削加工機(加藤機械株式会社製)を用いて、平面形状が円形であり、その直径が0.5mm、深さが1mm、ピッチが1.5mmの多数の凹部[各々の凹部の間の周方向の距離及び径方向の距離はそれぞれ同じ(1mm)であり、これらの凹部は等間隔に設けられている。]を形成した(図1参照)。
【0047】
次いで、得られた研磨パッドから複数の凹部の断面が含まれるように表面粗さ測定用の薄片を切り出した。その後、この薄片の異なる3視野において凹部の内面の表面粗さ等を3次元表面構造解析顕微鏡(キヤノン株式会社製、型式「Zygo New View 5032」)を用いて測定した。その結果、最大粗さは側面で4.2μm、底面で4.9μmであり、算出される表面粗さは2.3μmであった。
更に、研磨パッドの断面を光学顕微鏡により拡大して、撮影した写真による説明図を図3に示す。
【0048】
実施例2
架橋されて非水溶性マトリックスとなる1,2−ポリブタジエン(ジェイエスアール株式会社製、商品名「JSR RB840」)100体積部と、β−サイクロデキストリン(横浜国際バイオ研究所株式会社製、商品名「デキシーパールβ−100」)にポリペプチドをコーティングしてなる水溶性粒子(平均粒径20μm)100体積部とを、160℃に調温されたルーダーにより混練し、白色ペレットを得た。その後、この白色ペレットに有機過酸化物(日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキシン25B」)0.3体積部を配合して、120℃にて更に混練して白色ペレットを得た。次いで、有機過酸化物が添加されたこの白色ペレットを金型内に入れ、190℃で10分加熱し、架橋させて、直径60cm、厚さ2.5mmの円盤状の成形体を得た。その後、この成形体の一面側に実施例1と同じ切削加工機を用いて、平面形状が円形であり、その直径が0.5mm、深さが0.5mm、ピッチが1.2mmの多数の凹部[各々の凹部の間の周方向の距離及び径方向の距離はそれぞれ同じ(0.7mm)であり、これらの凹部は等間隔に設けられている。]を形成した。
次いで、凹部の内面の表面粗さを実施例1と同様に測定した。その結果、最大粗さは側面で3.8μm、底面で4.8μmであり、算出される表面粗さは1.5μmであった。
【0049】
比較例1
直径が1.5mm、深さが1.0mm、ピッチが5.5mmの多数の凹部を有する発泡ポリウレタン製の研磨パッド(ロデール・ニッタ株式会社製、商品名「IC1000」)の凹部の内面の表面粗さを実施例1と同様に測定した。その結果、すべての視野における実測値は25〜200μmの範囲で大きくばらついており、表面粗さは150μmであった。
【0050】
[2]研磨性能等の評価
実施例1、2及び比較例1の研磨パッドをそれぞれ研磨装置(SFT社製、型式「ラップマスター LM−15」)の定盤上に装着し、定盤の回転数50rpm、3倍に希釈した化学機械研磨用スラリー(ジェイエスアール株式会社製、商品名「CMS 1101」)を流量100cc/分の条件で、SiO膜ウェハを2分間研磨し、各々の研磨パッドを用いた場合の、研磨速度、スクラッチの有無、異物の有無及びポアの状態を評価した。各々の測定は以下の方法による。
【0051】
(1)研磨速度:光学式膜厚計により研磨前後の膜厚を測定し、これらの膜厚から算出した。
(2)スクラッチ及び異物の有無:研磨後のSiO膜ウェハの研磨面を電子顕微鏡により観察して確認した。
スクラッチの有無の評価基準は、○;スクラッチが認められない、×;スクラッチが認められる、である。また、異物の有無の評価基準は、○;異物が認められない、×;異物が認められる、である。
(3)ポアの状態:研磨パッドの表面を#400のダイヤモンド砥石で5分間研削してドレッシングし、その後、ドレッシングされた表面のポアの状態を電子顕微鏡により観察した。
評価基準は、○;実質的にすべてのポアが開口している、×;一部のポアが塞がっている、である。
以上、(1)〜(3)の結果を表1に併記する。
【0052】
【表1】
Figure 0003849593
【0053】
表面粗さの測定結果から、比較例1の研磨パッドでは、凹部の内面は凹凸が激しく、不均質であることが分かる。また、「詳説 半導体CMP技術」(土井俊郎編著、株式会社工業調査会出版、初版第1刷)の114ページに掲載されている図3.63は、比較例1で用いた研磨パッドと同じ発泡ポリウレタン製の研磨パッド(ロデール・ニッタ株式会社製、商品名「IC1000」、研磨面側には溝が設けられている。)の走査型電子顕微鏡による写真である。この写真から、実施例1における凹部の内面を示す図3に比べて大きな凹凸が溝内に存在していることが分かる。
【0054】
また、表1の結果より、この比較例1の研磨パッドにより研磨した被研磨面には、スクラッチ及び異物が認められた。また、ドレッシング後のポアの状態も一部が塞がれ、開口していなかった。特に、ドレッシングにより塞がれ易い凹部の開口部周辺のポアはほとんど塞がっていた。更に、実施例1に対する研磨速度は約1/4、また、実施例2に対する研磨速度は約1/5と大きく劣っていることが分かる。これは研磨時に異物等によりポアが塞がれたためであると考えられる。
【0055】
これに対して、実施例1及び2の研磨パッドでは、凹部内の側面及び底面ともに表面粗さが非常に小さく、平滑である。このことは図3からも確認できる。そのため、被研磨面にはスクラッチ及び異物ともにほとんど認められなかった。更に、ドレッシング後においてもポアはほとんど完全に開口しており、特に、凹部の開口部周辺のポアもすべて開口していた。また、研磨速度は、比較例1に対して実施例1は4倍近く、実施例2は5倍超と大きかった。これは、ポアが異物によって塞がれていないためであると考えられる。
【0056】
【発明の効果】
本発明の研磨パッドによれば、凹部等の内部で発生する異物等によるスクラッチが効果的に抑えられる。
また、凹部等が特定の深さ、直径等及び間隔を有する場合は、スクラッチの発生がより確実に抑えられる。
更に、架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスと、水溶性粒子とを有する場合は、凹部等の内面の表面粗さを容易に20μm以下に抑えることができ、ドレッシングによってもポアが塞がれず、スラリーが十分に保持され、研磨速度を大きくすることができる。
また、凹部等が切削及び/又は型成形により形成された場合は、凹部等の内面の表面粗さを容易に小さくすることができ、スクラッチの発生をより十分に抑えることができる。
本発明の複層型研磨パッドによれば、凹部等の内部で発生する異物等によるスクラッチが効果的に抑えられるとともに、パッドの研磨面とウェハ等の被研磨面とを十分に密着させることができ、研磨速度を向上させることもできる。
更に、凹部等が特定の深さ、直径等及び間隔を有する場合は、スクラッチの発生がより確実に抑えられる。
また、研磨層が架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスと、水溶性粒子とを有する場合は、研磨層の凹部又は貫通孔の内面の表面粗さを容易に20μm以下に抑えることができ、ドレッシングによってもポアが塞がれず、スラリーが十分に保持され、研磨速度を大きくすることができる。
更に、凹部等が切削及び/又は型成形により形成された場合は、凹部等の内面の表面粗さを容易に小さくすることができ、スクラッチの発生をより十分に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の研磨パッド及び複層型研磨パッドの一例の模式的な平面図である。
【図2】本発明の研磨パッド及び複層型研磨パッドの凹部を含む一部横断面の模式図である。
【図3】実施例1の研磨パッドの一部断面の顕微鏡写真による説明図である。
【符号の説明】
1;研磨パッド又は複層型研磨パッド、12;凹部又は貫通孔、21;ピッチ、22;凹部又は貫通孔の直径等、23;隣り合う凹部又は貫通孔の間の距離。

Claims (8)

  1. 研磨面側に開口し、開口部の面積が0.0075mm以上であり、且つ内面の表面粗さが20μm以下である複数の凹部又は複数の貫通孔を有し、化学機械研磨に用いることを特徴とする研磨パッド。
  2. 上記凹部又は上記貫通孔は、深さが0.1mm以上、平面方向の最小寸法が0.1mm以上であり、且つ隣り合う凹部又は貫通孔の間の最小距離が0.05mm以上である請求項1に記載の研磨パッド。
  3. 架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスと、該非水溶性マトリックス中に分散された水溶性粒子とを有する請求項1又は2に記載の研磨パッド。
  4. 上記凹部又は上記貫通孔は、切削及び/又は型成形により形成された請求項1乃至3のうちのいずれか1項に記載の研磨パッド。
  5. 研磨面側に開口し、開口部の面積が0.0075mm以上であり、且つ内面の表面粗さが20μm以下である複数の凹部又は複数の貫通孔を有する研磨層と、該研磨層の裏面側に配された支持層とを備え、化学機械研磨に用いることを特徴とする複層型研磨パッド。
  6. 上記凹部又は上記貫通孔は、深さが0.1mm以上、平面方向の最小寸法が0.1mm以上であり、且つ隣り合う凹部又は貫通孔の間の最小距離が0.05mm以上である請求項5に記載の複層型研磨パッド。
  7. 上記研磨層は、架橋重合体を含有する非水溶性マトリックスと、該非水溶性マトリックス中に分散された水溶性粒子とを有する請求項5又は6に記載の複層型研磨パッド。
  8. 上記凹部又は上記貫通孔は、切削及び/又は型成形により形成された請求項5乃至7のうちのいずれか1項に記載の複層型研磨パッド。
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