JP2009216704A - 受容体特異的結合物質測定方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 組換えプロテオリポソームを用いて、膜受容体に結合する物質を測定する方法等を提供すること。
【解決手段】 膜受容体を発現した組換えバキュロウイルス出芽ウイルスと受容体特異的結合物質または抗体の非特異的な吸着を抑制する脂質膜ブロック剤を含むリポソームとを融合させて製造した組換えプロテオリポソームを、固相表面に固定、受容体特異的結合物質または抗体の非特異的な吸着を抑制する固相ブロック剤を用いて処理し、その状態で膜受容体に結合する受容体特異的結合物質を膜受容体に結合させた後、この物質に対する抗体を作用させ、受容体特異的結合物質を測定する方法より達成される。
【選択図】 図3
【解決手段】 膜受容体を発現した組換えバキュロウイルス出芽ウイルスと受容体特異的結合物質または抗体の非特異的な吸着を抑制する脂質膜ブロック剤を含むリポソームとを融合させて製造した組換えプロテオリポソームを、固相表面に固定、受容体特異的結合物質または抗体の非特異的な吸着を抑制する固相ブロック剤を用いて処理し、その状態で膜受容体に結合する受容体特異的結合物質を膜受容体に結合させた後、この物質に対する抗体を作用させ、受容体特異的結合物質を測定する方法より達成される。
【選択図】 図3
Description
本発明は、膜表面の受容体に結合する物質を測定する方法等に関する。
バキュロウイルスDNAと、外来遺伝子を導入したトランスファーベクターとを昆虫細胞にコトランスフェクションさせることにより、外来遺伝子がその昆虫細胞内でバキュロウイルスDNAに取り込まれる。その結果、外来遺伝子がコードするタンパク質が、組換えバキュロウイルスの出芽ウイルスエンベロープ上に発現される(例えば、特許文献1)。特許文献1には、Gタンパク質共役型受容体を発現する組換えバキュロウイルス出芽ウイルスを調製し、このウイルスエンベロープ上の受容体がホルモンとの結合活性を示すことが報告されている。しかし、発現された受容体の構造は、十分な天然構造とはいえないので、受容体と各種結合物との結合活性は十分なものではなかった。このため、特許文献1には、更なる改良を行う余地があった。また、この技術を応用した技術も開発されている(特許文献2)。
そこで、本発明者は研究開発の結果を特許出願した(特許文献3)。特許文献3には、血中に含まれる抗体を検出するための診断用組換えプロテオリポソームに関する技術が開示されている。一般に、プロテオリポソームにおいては、膜受容体の構造及び配向性を保持させることは困難であり、膜受容体を用いて、体液、環境水、環境汚泥等から膜受容体特異的結合物質を検出することは不可能であった。特許文献3に開示の技術は、膜表面に発現された膜受容体に自己抗体が結合することを示しているのみであり、その膜受容体に対して特異的に結合するホルモン等の膜受容体結合物質が結合するか否かについては、評価されていなかった。加えて、特許文献3に開示の技術では、測定時のベースラインが十分に減少しない場合があることから、改良の余地が残されていた。
そこで、本発明者は研究開発の結果を特許出願した(特許文献3)。特許文献3には、血中に含まれる抗体を検出するための診断用組換えプロテオリポソームに関する技術が開示されている。一般に、プロテオリポソームにおいては、膜受容体の構造及び配向性を保持させることは困難であり、膜受容体を用いて、体液、環境水、環境汚泥等から膜受容体特異的結合物質を検出することは不可能であった。特許文献3に開示の技術は、膜表面に発現された膜受容体に自己抗体が結合することを示しているのみであり、その膜受容体に対して特異的に結合するホルモン等の膜受容体結合物質が結合するか否かについては、評価されていなかった。加えて、特許文献3に開示の技術では、測定時のベースラインが十分に減少しない場合があることから、改良の余地が残されていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、上記組換えプロテオリポソームを用いて、膜受容体に結合する物質を測定する方法等を提供することである。
本発明者らは、鋭意検討の結果、組換えプロテオリポソームの膜上に発現された膜受容体には、受容体特異的結合物質が結合し、これを検出できることを見出した。
但し、本測定系において、受容体特異的結合物質・一次抗体・二次抗体は、固相表面及びリポソームを構成するリン脂質の膜上に非特異的に吸着することにより、ベースライン(ノイズ)を増加させ、組換えプロテオリポソーム膜上に発現された受容体からの信号(シグナル)をマスクし、十分なS/N比を得られない場合があった。このため、本発明者らは、更に測定すべき受容体特異的結合物質が、固相表面・リポソーム膜上に非特異的に吸着することを抑制する適切なブロック剤を用いることにより、S/N比を格段に向上できることを見出した。これら2種類の非特異的な吸着を抑制するために、固相(Solid Phase)に対する非特異的吸着ブロック剤(固相ブロック剤)と、リポソーム膜表面に対する非特異的吸着ブロック剤(脂質膜ブロック剤)とを併用することを見出した。
但し、本測定系において、受容体特異的結合物質・一次抗体・二次抗体は、固相表面及びリポソームを構成するリン脂質の膜上に非特異的に吸着することにより、ベースライン(ノイズ)を増加させ、組換えプロテオリポソーム膜上に発現された受容体からの信号(シグナル)をマスクし、十分なS/N比を得られない場合があった。このため、本発明者らは、更に測定すべき受容体特異的結合物質が、固相表面・リポソーム膜上に非特異的に吸着することを抑制する適切なブロック剤を用いることにより、S/N比を格段に向上できることを見出した。これら2種類の非特異的な吸着を抑制するために、固相(Solid Phase)に対する非特異的吸着ブロック剤(固相ブロック剤)と、リポソーム膜表面に対する非特異的吸着ブロック剤(脂質膜ブロック剤)とを併用することを見出した。
こうして、上記課題を達成するための第1の発明に係る受容体特異的結合物質測定方法は、膜受容体を発現した組換えバキュロウイルス出芽ウイルスとリポソームとを融合させて製造した組換えプロテオリポソームを固相表面に固定した状態で前記膜受容体に特異的に結合する受容体特異的結合物質を前記膜受容体に結合させた後、この受容体特異的結合物質に対する抗体を作用させて、前記受容体特異的結合物質を測定することを特徴とする。
このとき、前記膜受容体が、膜貫通型であることが好ましい。
また、前記リポソームが、一枚膜リポソームまたは多重層リポソームであることが好ましい。
また、前記リポソームを構成するリン脂質には、リポソーム表面を覆うことで前記受容体特異的結合物質または前記抗体が前記組換えプロテオリポソームに対して非特異的な吸着を行うことを抑制する脂質膜ブロック剤が含有されていると共に、前記組換えプロテオリポソームと前記受容体特異的結合物質とを接触させる前に、前記固相表面に対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制する固相ブロック剤を用いて前記固相表面をブロックする固相ブロック工程を含むことが好ましい。
このとき、前記膜受容体が、膜貫通型であることが好ましい。
また、前記リポソームが、一枚膜リポソームまたは多重層リポソームであることが好ましい。
また、前記リポソームを構成するリン脂質には、リポソーム表面を覆うことで前記受容体特異的結合物質または前記抗体が前記組換えプロテオリポソームに対して非特異的な吸着を行うことを抑制する脂質膜ブロック剤が含有されていると共に、前記組換えプロテオリポソームと前記受容体特異的結合物質とを接触させる前に、前記固相表面に対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制する固相ブロック剤を用いて前記固相表面をブロックする固相ブロック工程を含むことが好ましい。
また、前記脂質膜ブロック剤が、前記リン脂質に共有結合したポリエチレングリコールであることが好ましい。
また、前記ポリエチレングリコールには、ビオチンが結合されており、ポリエチレングリコール−ビオチンであることが好ましい。このとき、ポリエチレングリコール−ビオチンのモル比率は、前記リポソームを構成するリン脂質の全量に対して、20%以下であることが好ましい。
また、前記固相ブロック剤が、水溶性タンパク質であることが好ましい。このとき、水溶性タンパク質が、ゼラチン、ブロックエース(雪印乳業製)、血清アルブミン、スキムミルクからなる群から選択される少なくとも一つのものであることが好ましい。
また、前記固相ブロック工程の後に、前記組換えプロテオリポソームと前記受容体特異的結合物質を含みうるサンプルとを接触させるサンプル添加工程を経た後に、前記組換えプロテオリポソームに対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制するフリーリポソームを添加するリポソーム添加工程を含むことが好ましい。
また、前記ポリエチレングリコールには、ビオチンが結合されており、ポリエチレングリコール−ビオチンであることが好ましい。このとき、ポリエチレングリコール−ビオチンのモル比率は、前記リポソームを構成するリン脂質の全量に対して、20%以下であることが好ましい。
また、前記固相ブロック剤が、水溶性タンパク質であることが好ましい。このとき、水溶性タンパク質が、ゼラチン、ブロックエース(雪印乳業製)、血清アルブミン、スキムミルクからなる群から選択される少なくとも一つのものであることが好ましい。
また、前記固相ブロック工程の後に、前記組換えプロテオリポソームと前記受容体特異的結合物質を含みうるサンプルとを接触させるサンプル添加工程を経た後に、前記組換えプロテオリポソームに対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制するフリーリポソームを添加するリポソーム添加工程を含むことが好ましい。
第2の発明は、上記受容体特異的結合物質測定方法に用いられる受容体特異的結合物質測定用プレートであって、前記組換えプロテオリポソームを構成するリポソームのリン脂質には、前記脂質膜ブロック剤が含有されていると共に、この組換えプロテオリポソームが、前記プレート表面に固定化されていることを特徴とする。
このとき、前記組換えプロテオリポソームは、前記脂質膜ブロック剤を介して、前記プレート表面に固定化されていることが好ましい。
また、組換えプロテオリポソームは、前記脂質膜ブロック剤のビオチンを介して、前記プレート表面にあるアビジンと結合して固定化されていることが好ましい。
第3の発明は、上記受容体特異的結合物質測定用プレートと、受容体特異的結合物質を含みうる試料を希釈する希釈用緩衝液と、洗浄用緩衝液と、前記受容体特異的結合物質を認識すると共に標識された二次抗体とを備えたことを特徴とする受容体特異的結合物質測定用キットである。
このとき、前記受容体特異的結合物質測定用キットにおいて、前記組換えプロテオリポソームに対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制するフリーリポソームを備えることが好ましい。
このとき、前記組換えプロテオリポソームは、前記脂質膜ブロック剤を介して、前記プレート表面に固定化されていることが好ましい。
また、組換えプロテオリポソームは、前記脂質膜ブロック剤のビオチンを介して、前記プレート表面にあるアビジンと結合して固定化されていることが好ましい。
第3の発明は、上記受容体特異的結合物質測定用プレートと、受容体特異的結合物質を含みうる試料を希釈する希釈用緩衝液と、洗浄用緩衝液と、前記受容体特異的結合物質を認識すると共に標識された二次抗体とを備えたことを特徴とする受容体特異的結合物質測定用キットである。
このとき、前記受容体特異的結合物質測定用キットにおいて、前記組換えプロテオリポソームに対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制するフリーリポソームを備えることが好ましい。
「膜受容体」とは、脂質膜を貫通する部位を備えた受容体を意味する。膜受容体は、種々のリガンド(受容体特異的結合物質)を受容する。リガンドとしては、後に詳述するが、例えば、低分子の有機化合物、ステロイド、アミノ酸やその誘導体、ペプチド、タンパク質などがある。受容体がすべてタンパク質であるのに対して、リガンドの多様性は、きわめて対照的である。膜受容体としては、例えば1回膜貫通型受容体、4回膜貫通型受容体、7回膜貫通型受容体がある。
1回膜貫通型受容体の例としては、I型サイトカイン受容体、細胞質側で酵素活性を持つ酵素共役型受容体が挙げられる。このタイプの受容体では、リガンドの結合によって受容体のリン酸化の程度が変化し、キナーゼ活性やホスファターゼ活性などの酵素活性の作用が発現する。チロシンキナーゼ、セリン・スレオニンキナーゼ活性を持つ受容体がある。
4回膜貫通型受容体の例としては、サブユニット構造を形成し、イオンチャンネルとしての機能をもつものが挙げられる。イオンチャネル型受容体は、リガンドが結合すると、イオンチャネルが開き、イオンの流入や流出が起こって、特有の効果が発現する。具体例としては、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)、グルタミン酸受容体、GABA受容体がある。
1回膜貫通型受容体の例としては、I型サイトカイン受容体、細胞質側で酵素活性を持つ酵素共役型受容体が挙げられる。このタイプの受容体では、リガンドの結合によって受容体のリン酸化の程度が変化し、キナーゼ活性やホスファターゼ活性などの酵素活性の作用が発現する。チロシンキナーゼ、セリン・スレオニンキナーゼ活性を持つ受容体がある。
4回膜貫通型受容体の例としては、サブユニット構造を形成し、イオンチャンネルとしての機能をもつものが挙げられる。イオンチャネル型受容体は、リガンドが結合すると、イオンチャネルが開き、イオンの流入や流出が起こって、特有の効果が発現する。具体例としては、ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)、グルタミン酸受容体、GABA受容体がある。
7回膜貫通型受容体の例としては,各種Gタンパク質と共役して作用を発現するものが挙げられる。Gタンパク質共役型レセプター(GPCR)は、ドーパミンやセロトニンなどの生体アミン、プロスタグランジンなどの脂質誘導体、アデノシンなどの核酸、GABAなどのアミノ酸、生理活性ペプチド類(例えば、アンジオテンシンII、ブラジキニン、コレシストキニンなど)をリガンドとするレセプターファミリーを形成している。さらに、GPCRは光、味覚、臭覚に関連する生体外情報伝達物質のレセプターともなっている。GPCRは、情報伝達の中核を担う重要な膜タンパク質である。ヒトゲノム配列を解析することにより、GPCRに属するオーファンレセプターが多く見出されるものと期待されている。このようなGPCRに対応するリガンドの発見によって、有効な医薬品開発が可能になると考えられている。従来には、膜受容体をハイスループットスクリーニングに使用するためには、リガンド結合部分を可溶性部位として安定的に発現するか、生物試料を用いる必要があった。しかし、本発明によれば、膜受容体をそのまま使用できるので、簡易かつ安定したシステムを提供できる。
7回膜貫通型受容体の具体例としては、ムスカリン性アセチルコリン受容体、Α1アドレナリン受容体、ドーパミン受容体、セロトニン受容体、ヒスタミン受容体、グループI代謝調節型グルタミン酸受容体(mGluR1/5)、GABAB受容体、ATP受容体、ロイコトリエン受容体、血小板活性化因子(PAF)受容体、オピオイド受容体、オレキシン受容体、エンドセリン受容体、ニューロペプチドPACAP受容体、副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン)放出ホルモン受容体(CRHR)、甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)、ケモカイン受容体、非神経性ムスカリン受容体、アドレナリン受容体、β3アドレナリン受容体、プロスタノイド受容体、プロスタグランジンE受容体、プロスタグランジンE2受容体、ノシセプチン受容体、アンジオテンシンII受容体、カルシトニン受容体、ブラジキニン受容体、グルカゴンファミリーペプチドホルモン受容体、その他のオーファン7回膜貫通型受容体がある。
上記の膜受容体のうち、特に7回膜貫通型受容体は、多種なリガンドに結合し、疾患や医薬品への関与が深いことから、本発明を好適に利用することができる。
本発明は、膜受容体に対して特異的に結合する特異的受容体結合物を検出・測定することができる。本発明は、特定の膜受容体に結合することで受容体本来の作用を誘起あるいは抑制する未知物質(例えば、膜受容体に結合するアゴニストやアンタゴニストなど)の検出・測定などにも応用できる。
上記の膜受容体のうち、特に7回膜貫通型受容体は、多種なリガンドに結合し、疾患や医薬品への関与が深いことから、本発明を好適に利用することができる。
本発明は、膜受容体に対して特異的に結合する特異的受容体結合物を検出・測定することができる。本発明は、特定の膜受容体に結合することで受容体本来の作用を誘起あるいは抑制する未知物質(例えば、膜受容体に結合するアゴニストやアンタゴニストなど)の検出・測定などにも応用できる。
本発明において、「受容体特異的結合物質」とは、上記膜受容体に対する本来のリガンド(ホルモン、神経伝達物質、サイトカイン、レクチン、輸送タンパク、毒素、ウイルスを含む)、および本来のリガンドが結合する部位に特異的に結合することにより、その受容体本来の作用を発揮させるもの(アゴニスト)、又は受容体の作用を抑制するもの(アンタゴニスト)を含む。
膜受容体に対して結合する本来のリガンドとして具体的には、次のようなものが例示される。7回膜貫通型受容体のGPCRについては、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、GABA、セロトニン、オピオイド、タキキニン、ドーパミン、ロドプシンなどがある。4回膜貫通型受容体のイオンチャンネルについては、アセチルコリン、グルタミン酸、GABA、グリシン、ジヒドロピリジン、リアノジンなどがある。1回膜貫通型受容体については、インスリン、EGF、PDGF、IGF-I、IGF-II、NGF、CSFなどがある。この他の膜受容体(例えば、造血因子群、免疫グロブリン群、インテグリン群、カドヘリン群、エンドサイトーシス受容体)についても、それぞれのリガンドが対応する。
膜受容体に対して結合する本来のリガンドとして具体的には、次のようなものが例示される。7回膜貫通型受容体のGPCRについては、アドレナリン、ノルアドレナリン、アセチルコリン、GABA、セロトニン、オピオイド、タキキニン、ドーパミン、ロドプシンなどがある。4回膜貫通型受容体のイオンチャンネルについては、アセチルコリン、グルタミン酸、GABA、グリシン、ジヒドロピリジン、リアノジンなどがある。1回膜貫通型受容体については、インスリン、EGF、PDGF、IGF-I、IGF-II、NGF、CSFなどがある。この他の膜受容体(例えば、造血因子群、免疫グロブリン群、インテグリン群、カドヘリン群、エンドサイトーシス受容体)についても、それぞれのリガンドが対応する。
また、ホルモンとしては、下垂体ホルモン放出ホルモン、下垂体ホルモン放出抑制ホルモン、オキシトシン、バソプレシン、副腎皮質刺激ホルモン、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(因子)(CRH、CRF)、メラニン細胞刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、性腺刺激ホルモン、成長ホルモン、プロラクチン、セレクチン、ガストリン、コレシストキニン、インスリン、グルカゴン、レプチン、カルシトニン、副甲状腺ホルモン、心房性ナトリウム利尿ペプチドなどがある。
また、サイトカインとしては、c-kit、c-fms、EGF、PDGF、VEGF、TGF-β、BMP、アクチビン、IL-2、IL-3、IL-6、IL-10、GM-CSF、LIF、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF、NGF、Fas、CD40、IL-8などがある。
この他のリガンドとしては、感染防御・免疫系については、イムノグロブリン(IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)、fMet-Ler-Phe、補体、抗原などが例示され、輸送タンパクについては、LDL、HDL、トランスフェリン、トランスコバラミン、卵黄タンパク、マクログロブリン、IgG、IgAなどが例示され、糖タンパクについては、Gal、Man/GlcNAc、GlcNAc、Man-6-Pなどが例示され、植物レクチンについては、コンカナバリンA、PHA、リシンなどが例示され、毒素については、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、エンドトキシンなどが例示され、ウイルスについては、水疱性口内炎ウイルス、セムリキーフォレストウイルス、ホウルプラークウイルスなどが例示される。
また、サイトカインとしては、c-kit、c-fms、EGF、PDGF、VEGF、TGF-β、BMP、アクチビン、IL-2、IL-3、IL-6、IL-10、GM-CSF、LIF、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、TNF、NGF、Fas、CD40、IL-8などがある。
この他のリガンドとしては、感染防御・免疫系については、イムノグロブリン(IgG、IgM、IgA、IgD、IgE)、fMet-Ler-Phe、補体、抗原などが例示され、輸送タンパクについては、LDL、HDL、トランスフェリン、トランスコバラミン、卵黄タンパク、マクログロブリン、IgG、IgAなどが例示され、糖タンパクについては、Gal、Man/GlcNAc、GlcNAc、Man-6-Pなどが例示され、植物レクチンについては、コンカナバリンA、PHA、リシンなどが例示され、毒素については、ジフテリアトキシン、コレラトキシン、エンドトキシンなどが例示され、ウイルスについては、水疱性口内炎ウイルス、セムリキーフォレストウイルス、ホウルプラークウイルスなどが例示される。
また、膜受容体に対するアゴニスト(A)、アンタゴニスト(AG)の例としては、ニコチン性アセチルコリン受容体に対して、サクシニルコリン(A)、ニコチン(A)、d−ツボクラリン(AG)、ガラミン(AG)、ヘキサメトニウム(AG)、αブンガロトキシン(AG)が、ムスカリン性アセチルコリン受容体に対して、カルバコール(A)、ピロカルビン(A)、カルバコール(A)、ピレンゼピン(AG)、アトロピン(AG)、スコポラミン(AG)が、アドレナリン及びノルアドレナリン受容体αに対して、フェニレフリン(A)、クロニジン(A)、プラゾシン(AG)、フェノキシベンザミン(AG)、ヨヒンビン(AG)が、アドレナリン及びノルアドレナリン受容体βに対して、イソプロテレノール(A)、ドブタミン(A)、サルブタモール(A)、プロプラノロール(AG)、プラクトロール(AG)、ブトキサミン(AG)が、ドーパミン受容体に対して、アポモルヒネ(A)、SKF38393(A)、アポモルヒネ(A)、リスライド(A)、SCH23390(AG)、cis-フルペンチキソール(AG)、スルピリド(AG)、スピペロン(AG)、ハロペリドール(AG)が、GABA受容体に対して、ムシモール(A)、バクロフェン(A)、ビククリン(AG)、グリシン受容体に対して、ストリキニーネ(AG)が、ヒスタミン受容体に対して、2-メチルヒスタミン(A)、4-メチルヒスタミン(A)、イソプロミジン(A)、メピラミン(AG)、ジフェンドラミン(AG)、メチアミド(AG)、シメチジン(AG)が、セロトニン受容体に対して、メチルセルジド(AG)、LSD(AG)、ケタンセリン(AG)、オピオイド受容体に対して、モルヒネ(A)、ケトシクラゾシン(A)、ダイノルフィン(A)、[D-Ara2, D-Leu5]エンケファリン(A)、β-エンドルフィン(A)、ナロキソン(AG)、Mr2266(AG)、ICI154129(AG)などが例示される。
「リポソーム」とは、リン脂質(PL,phospholipid)を含有する脂質二重層を含み、内部に水相を備えた閉鎖小胞を意味する。リポソームの形態としては、脂質二重層が二層以上の複数に渡ってタマネギ状に重なった多重層リポソーム(MLV,multilamellar vesicle)と、脂質二重層が一層のリポソーム(UV,unilamellar vesicle)とに分けられる。UVは、粒子径によって、小さな一枚膜リポソーム(SUV,small unilamellar vesicle)と、大きな一枚膜リポソーム(LUV,large unilamellar vesicle)、巨大リポソーム(GUV, giant unilamellar vesicle)とに分類される。本発明の方法では、MLVまたはUVのいずれを用いることもできる。
LUVを用いると、組換えプロテオリポソームを調製したときに、膜受容体がプロテオリポソームの全体に良好に配置されることから、後のデータのバラツキが少なくなるので好ましい。UVは超音波処理やエクストルーダーを用いて調製することが多い一方、MLVは調製方法が簡易であるので、プロテオリポソームの調製法に掛かる手間が少なくて済むという利点があることから好ましい。
LUVを用いると、組換えプロテオリポソームを調製したときに、膜受容体がプロテオリポソームの全体に良好に配置されることから、後のデータのバラツキが少なくなるので好ましい。UVは超音波処理やエクストルーダーを用いて調製することが多い一方、MLVは調製方法が簡易であるので、プロテオリポソームの調製法に掛かる手間が少なくて済むという利点があることから好ましい。
リン脂質とは、リン酸と脂質とを含む物質を意味する。構成成分に応じて、グリセロール骨格を有するグリセロリン脂質と、スフィンゴシン骨格を有するスフィンゴリン脂質とに分類される。グリセロリン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルセリン(PS)、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルグリセロール(PG)、ジホスファチジルグリセロール(カルジオリピン)、ホスファチジン酸 (PA)等を例示できる。また、スフィンゴリン脂質としては、例えばスフィンゴミエリンを例示できる。
本発明に用いるリポソームは、上記各種リン脂質成分を任意の比で混合したものを用いることができる。例えば、PCを主たる成分(例えば、リン脂質全体の約40%〜約100%の割合)とすることができる。PCに加えて、PSを添加することが好ましい。PSは、バキュロウイルスのgp64のレセプターであるため、バキュロウイルスとリポソームとの膜融合が円滑に行われる。この場合に、PSの混合割合としては、PCの1質量部に対して、約0.1質量部〜約1質量部とする。本発明のリポソームを調製するに当たっては、構成脂質に適当なアンカー用物質(例えば、ビオチン)を結合しておくことが好ましい。そのようにすれば、アンカー用物質に結合する結合物質(例えば、アビジン)を用いることにより、プロテオリポソームを測定用プレートに結合する処理を行い易いからである。
「プロテオリポソーム」とは、一般的には、目的とするタンパク質を発現させ、リポソームに再構成したものを意味する。本発明では、目的とするタンパク質は、エンベロープ上に発現される膜受容体である。このため、「組換えプロテオリポソーム」とは、組換えタンパク質である膜受容体をリポソームの膜上に備えたプロテオリポソームのことを意味する。このような組換えプロテオリポソームは、例えば特許文献2に記載の技術を用いて製造することができる。
本発明において「フリーリポソーム」とは、組換えプロテオリポソームを構成するリポソームのリン脂質と類似の成分を備え、膜受容体を発現しておらず、かつ固相化していないリポソームを意味する。
本発明において「フリーリポソーム」とは、組換えプロテオリポソームを構成するリポソームのリン脂質と類似の成分を備え、膜受容体を発現しておらず、かつ固相化していないリポソームを意味する。
バキュロウイルスは、環状二本鎖DNAを遺伝子としてもつ昆虫の病原ウイルスである。具体的には、Nucleopolyhedrovirus(NPVs)とGeanulovirus(GVs)の2種類に加えて、non-occluded virusesが知られている。このうち、NPV(核多角体病ウイルス)は、感染した細胞の核内に核多角体と呼ばれる封入体を全細胞タンパク質の40〜50%に達するほど大量につくるので、バイオテクノロジーに多用されている。以下、特にことわらない限り、バキュロウイルスは、NPVを意味する。
バキュロウイルスの感染は、多角体に包埋されたウイルス粒子が幼虫に取込まれることによって開始する。その後、異なった性状を示す包埋ウイルス(Occluded virus; OV)、又は出芽ウイルス(Budded virus; BV)による二段階の融合過程を経て、感染細胞内で多角体が形成され、最終的に感染細胞は死に至る。NPVは、経口感染により広がるといわれている。NPVの多角体は、昆虫の体内に取り込まれた後、中腸内のアルカリ性の消化液とプロテアーゼの働きにより溶ける。ここで、多角体に包埋されていたOVが放出される。その後、OVは中腸微絨毛膜と融合し、中腸基底膜から出芽することにより体液中に放出される。次に、放出されたBVは血球細胞や脂肪細胞を含む細胞に融合後に増殖する。感染末期になると、多角体に包埋されたOVが細胞内に大量に形成され、細胞が死ぬと同時に体外に放出されて別の個体に感染する。
これまでの研究の結果、BVはエンドサイトーシスにより細胞内に侵入する。この細胞内侵入過程には、BVに特異的な膜融合誘起能をもつ膜糖タンパク質gp64が必須であり、エンドソーム内の低pH環境において活性化したgp64がエンドソーム膜との融合を誘起することが示されている。
これまでの研究の結果、BVはエンドサイトーシスにより細胞内に侵入する。この細胞内侵入過程には、BVに特異的な膜融合誘起能をもつ膜糖タンパク質gp64が必須であり、エンドソーム内の低pH環境において活性化したgp64がエンドソーム膜との融合を誘起することが示されている。
バキュロウイルスのエンベロープ上に膜受容体を発現させるには、例えば、目的とする膜受容体を発現するためのトランスファーベクターと、バキュロウイルスDNAとを適当な細胞(例えば、昆虫培養細胞(Sf9))にコトランスフェクションさせることにより実施することができる。
この細胞から出芽してきた組換えバキュロウイルスを再度別の細胞に感染させると、その感染細胞から出芽してきたウイルスのエンベロープ上には、膜受容体が発現されている。この出芽ウイルスを調製する。出芽ウイルスは、培養上清中に含まれているので、その培養上清をそのまま用いることもできる。但し、培養上清から出芽ウイルスを含む画分を精製することが好ましい。精製方法としては、例えば超遠心法、ゲル濾過法などが用いられる。
出芽ウイルスとリポソームとの融合は、リポソーム溶液のモル浸透圧を調整し、出芽ウイルス懸濁液と適当な融合条件溶液中で、攪拌し混和させることで行える。
この細胞から出芽してきた組換えバキュロウイルスを再度別の細胞に感染させると、その感染細胞から出芽してきたウイルスのエンベロープ上には、膜受容体が発現されている。この出芽ウイルスを調製する。出芽ウイルスは、培養上清中に含まれているので、その培養上清をそのまま用いることもできる。但し、培養上清から出芽ウイルスを含む画分を精製することが好ましい。精製方法としては、例えば超遠心法、ゲル濾過法などが用いられる。
出芽ウイルスとリポソームとの融合は、リポソーム溶液のモル浸透圧を調整し、出芽ウイルス懸濁液と適当な融合条件溶液中で、攪拌し混和させることで行える。
上記方法によって調製された組換えプロテオリポソームは、測定用プレートにコートすることにより、組換えプロテオリポソームの膜表面上に発現された膜受容体に対する受容体特異的結合物質の有無を検出するためのシステムに用いることができる。プレート上に組換えプロテオリポソームをコートするには、リポソームとプレート表面との間を結合できる物質(リポソームとプレート表面には、同一物質を用いても良いし、別々の物質を用いても良い。このような物質として、例えばアビジン−ビオチン系を例示できる。本発明においては、これらの物質には限定されずに、各種のものを使用できる)を配置しておくことが好ましい。例えば、リポソームを構成する脂質をビオチン化しておき、プレート表面にアビジンをコートしておくことにより、組換えプロテオリポソームをプレート表面に円滑に固定することができる。また、このとき組換えプロテオリポソームは、リンカー含有物質を介して、測定用プレートにコートすることが好ましい。リンカーは、脂質とビオチンとの間に配置される。そのようなリンカーとして、例えばポリエチレングリコール(PEG)を用いることができる。リポソームの表面を親水性高分子ポリエチレングリコール(PEG)で覆ったリポソームは蛋白質などの生体成分の非特異的吸着を抑制する構造になる。そのため、リンカーとしてPEGを用いたビオチン化PEGリン脂質が含まれると単なるPEGリン脂質として作用する可能性があり、酵素免疫(ELISA:Enzyme-linked immunosorbent assay)系を構築したときに、非特異的な発色が抑えられて、S/N比が向上し、ELISA系の特異性が更に向上する。
また、上記測定用プレートと、受容体特異的結合物質を含みうる試料を希釈する希釈用緩衝液と、洗浄用緩衝液と、前記受容体特異的結合物質を認識すると共に標識された二次抗体とを備えることにより検出用キットを提供することができる。検出用キットには、試料を希釈する希釈用緩衝液と共に、プレートのウエルに滴下或いは希釈用緩衝液に混合するためのフリーリポソームを備えることが好ましい。フリーリポソームは、受容体特異的結合物質または受容体特異的結合物質に対する抗体の非特異的な吸着を抑制するので、測定系のS/N比を向上させる。
測定用プレートとしては、6穴、48穴、96穴、または384穴などのマイクロタイタープレートが使用できる。その検出法としては、例えば、ELISA測定、ラジオイムノアッセイ、ラジオレセプターアッセイ、蛍光免疫測定、化学発光アッセイが挙げられる。本発明の利点に鑑みれば、非放射性の標識系を用いる測定法、例えば、EILSA測定、蛍光免疫測定が好ましい。
ELISA測定法は、抗体を酵素で標識し、その抗体と結合する物質(抗原)を測定する方法である。抗原の検出方法として、抗原抗体反応を利用して検体中の抗原、或いは特定の抗原に結合する抗体を検出する分析方法として広く用いられる。測定対象とする抗原と反応する一次抗体をそのまま酵素標識することもできる。通常は、標識のない一次抗体を検査プレートにコートした抗原に対し作用させ、その一次抗体に対する二次抗体を作用させる。二次抗体は、予めペルオキシダーゼやガラクトシダーゼ等の酵素を化学的に結合させている。一次抗体に結合した二次抗体の酵素活性に基づき、その酵素反応によって発色等する基質を加えることで、目的とする抗原の有無や量を検出する。
ELISA測定法は、抗体を酵素で標識し、その抗体と結合する物質(抗原)を測定する方法である。抗原の検出方法として、抗原抗体反応を利用して検体中の抗原、或いは特定の抗原に結合する抗体を検出する分析方法として広く用いられる。測定対象とする抗原と反応する一次抗体をそのまま酵素標識することもできる。通常は、標識のない一次抗体を検査プレートにコートした抗原に対し作用させ、その一次抗体に対する二次抗体を作用させる。二次抗体は、予めペルオキシダーゼやガラクトシダーゼ等の酵素を化学的に結合させている。一次抗体に結合した二次抗体の酵素活性に基づき、その酵素反応によって発色等する基質を加えることで、目的とする抗原の有無や量を検出する。
膜受容体特異的結合物質測定用キットをELISA法とした場合には、一般的に検出対象となる物質を含有する可能性のある試料をそのまま、或いは適当な希釈用緩衝液で希釈し測定用プレートに作用させる。洗浄用緩衝液で測定用プレートを洗浄した後、検出対象となる物質に対する一次抗体を測定用プレートに作用させた後、洗浄用緩衝液で洗浄する。更に、標識された抗一次抗体を二次抗体として測定用プレートに作用させ、再度洗浄用緩衝液で洗浄した後、酵素活性検出を比色等により検出する。
ELISA法の標識酵素としては、特に限定はない。例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素を用いることができる。
二次抗体を蛍光で検出する蛍光免疫測定の場合には、例えば、Cy3、Cy5、フルオレセイン(FITCなど)のような蛍光物質で二次抗体を標識したものが使用できる。
ELISA法の標識酵素としては、特に限定はない。例えば、アルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼなどの酵素を用いることができる。
二次抗体を蛍光で検出する蛍光免疫測定の場合には、例えば、Cy3、Cy5、フルオレセイン(FITCなど)のような蛍光物質で二次抗体を標識したものが使用できる。
本発明によれば、放射能を用いることなく、膜受容体に対して特異的に結合する物質の有無を定性的・定量的に評価可能な検出用・測定用組換えプロテオリポソームを提供することができる。このプロテオリポソームを用いることにより、測定用プレート及び測定用キットを調製することができる。この測定用プレートは、特定の膜受容体に結合することで受容体本来の作用を誘起あるいは抑制する未知物質などの存在の有無に用いることができる。
本発明の実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。本発明の技術的範囲は、下記実施形態によって限定されるものではなく、その要旨を変更することなく、様々に改変して実施することができる。本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶ。
図1〜図3には、本実施形態の診断用組換えプロテオリポソームの作製法、及びそのプロテオリポソームを用いたELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)系の調製法の概要を示した。
本実施形態に関するプロテオリポソームを用いたELISA系を調製するには、大きく3つのステップに分けられる。すなわち、(1)対象とする受容体をコードする遺伝子を持つバキュロウイルスを調製するステップ(図1を参照)、(2)このバキュロウイルスとリポソームとを融合させて組換えプロテオリポソームを調製するステップ(図2を参照)、及び(3)その組換えプロテオリポソームをELISAに応用するステップ(図3を参照)である。これらのステップについて、順に説明する。
図1〜図3には、本実施形態の診断用組換えプロテオリポソームの作製法、及びそのプロテオリポソームを用いたELISA(Enzyme-linked immunosorbent assay)系の調製法の概要を示した。
本実施形態に関するプロテオリポソームを用いたELISA系を調製するには、大きく3つのステップに分けられる。すなわち、(1)対象とする受容体をコードする遺伝子を持つバキュロウイルスを調製するステップ(図1を参照)、(2)このバキュロウイルスとリポソームとを融合させて組換えプロテオリポソームを調製するステップ(図2を参照)、及び(3)その組換えプロテオリポソームをELISAに応用するステップ(図3を参照)である。これらのステップについて、順に説明する。
まず、図1に示すように、対象とする膜受容体をコードする遺伝子を調製する。多くの場合には、目的とする遺伝子は、cDNAライブラリー1から膜受容体をコードする遺伝子をクローニングすることにより得られる。その場合には、例えば、適当なプライマーを用いたPCR法を利用できる。得られた遺伝子をトランスファーベクターに組み込み2、バキュロウイルスDNA3と共に、昆虫培養細胞(例えば、Sf9細胞)4にコトランスフェクションする。対象とする遺伝子をトランスファーベクターに組み込む際には、後の精製に都合がよいように、適当なタグ(例えば、His-Tag)を付加しておくことが好ましい。この昆虫培養細胞から出芽した組換えウイルス5を再度培養細胞6に感染させる。トランスファーベクターとバキュロウイルスDNAは、昆虫細胞内で相同組換えを起こすので、対象となる遺伝子をもつ組換えバキュロウイルスの出芽ウイルス7が上清に出現する。そこで、培養上清中に発芽したバキュロウイルスを精製する。精製されたウイルス7のエンベロープ上には、目的とする膜受容体7Aが発現されている。得られた組換えバキュロウイルス7は、必要に応じて再度昆虫培養細胞に感染させ純化・増幅を行い、次のステップに供する。
次に、図2に示すように、この出芽バキュロウイルス7とリポソーム8とを融合させて、組換えプロテオリポソーム9を調製する。ウイルス7とリポソーム8の融合は、バキュロウイルスエンベロープ上の膜融合タンパク質gp64 7Bを介して、pH4程度の酸性pHで起こる。リポソームは、SUV、LUV、またはMLVのいずれを用いても良い。但し、調製が容易なLUVあるいはMLVを用いることが好ましい。また、リポソームを構成する物質のいずれかをビオチン化しておくと、プレートに固相化する際に好ましい実施形態となる。出芽バキュロウイルス7とリポソーム8とを融合させた後には、そのまま用いることもできる。但し、超遠心・ゲル濾過法等の周知の方法により、組換えプロテオリポソーム9を精製・回収して用いることが好ましい。
次に、図3に示すように、プレート10のウェル11表面上に組換えプロテオリポソーム9をコートする。このとき、リポソーム9にビオチン13が含まれている場合には、ウェル11の表面に予めストレプトアビジン12を固定しておく。この場合に、市販のストレプトアビジン・コート・マイクロプレートを使用することができる。ビオチン化プロテオリポソーム9をストレプトアビジンコートプレートに固定するには、ビオチン化プロテオリポソームを含む溶液を数時間、好ましくは1晩の間、プレート10のウエル11内に接触させておく。溶液中のプロテオリポソーム濃度は、タンパク質濃度として0.01μg/ml以上であり、好ましくは0.5μg/ml〜20μg/mlである。こうして、組換えプロテオリポソーム9を固相化したELISAプレート18を用いて、試料検体中の受容体特異的結合物質14の有無を容易に評価するELISAシステムを構築できる。このELISAシステムは、例えば膜受容体に結合するリガンド様物質、受容体に結合するアゴニスト・アンタゴニストなどの検出・測定に用いられる。図中の符号は、19が受容体特異的結合物質に結合する一次抗体であり、15が二次抗体であり、16が発色前の物質、17が酵素15Aによって発色した物質である。
次に、実施例を説明することにより、本発明を更に詳細に説明する。
次に、図3に示すように、プレート10のウェル11表面上に組換えプロテオリポソーム9をコートする。このとき、リポソーム9にビオチン13が含まれている場合には、ウェル11の表面に予めストレプトアビジン12を固定しておく。この場合に、市販のストレプトアビジン・コート・マイクロプレートを使用することができる。ビオチン化プロテオリポソーム9をストレプトアビジンコートプレートに固定するには、ビオチン化プロテオリポソームを含む溶液を数時間、好ましくは1晩の間、プレート10のウエル11内に接触させておく。溶液中のプロテオリポソーム濃度は、タンパク質濃度として0.01μg/ml以上であり、好ましくは0.5μg/ml〜20μg/mlである。こうして、組換えプロテオリポソーム9を固相化したELISAプレート18を用いて、試料検体中の受容体特異的結合物質14の有無を容易に評価するELISAシステムを構築できる。このELISAシステムは、例えば膜受容体に結合するリガンド様物質、受容体に結合するアゴニスト・アンタゴニストなどの検出・測定に用いられる。図中の符号は、19が受容体特異的結合物質に結合する一次抗体であり、15が二次抗体であり、16が発色前の物質、17が酵素15Aによって発色した物質である。
次に、実施例を説明することにより、本発明を更に詳細に説明する。
<野生型AcNPVの感染及び出芽ウイルス(BV)の回収>
Sf-900II SFM培地 11mlを加えたT-75培養フラスコに、継代していたSf9細胞溶液1mlを加え、その後野生型AcNPVをMOI(感染多重度)=1で感染させた。感染120時間後の細胞培養液を遠心(1,000×g、5min、4℃)し、培養上清を細胞沈殿から分離回収した。次に、培養上清を超遠心機(Beckman L-70:ローターとしてSW28を用いた)を用いて、超遠心(35,000×g、60min、15℃)した。得られたBV粒子を含む沈殿に、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)[1mM Na2HPO4、10.5mM KH2PO4、140mM NaCl、40mM KCl(pH6.2)]を加えて懸濁し、ショ糖密度勾配[10%,15%,20%,25%,30% sucrose(w/v in PBS pH6.2)]に重層して超遠心(13,000×g、30min、15℃)した。このようにして得られたバンド(核酸を含まずウイルスの膜タンパク質のみを含むウイルスエンベロープ)を回収した。このバンドをPBS(pH6.2)で希釈後、超遠心(35,000×g、60min、15℃)を行い、得られた沈殿を10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)に懸濁し、氷中に保存した。
Sf-900II SFM培地 11mlを加えたT-75培養フラスコに、継代していたSf9細胞溶液1mlを加え、その後野生型AcNPVをMOI(感染多重度)=1で感染させた。感染120時間後の細胞培養液を遠心(1,000×g、5min、4℃)し、培養上清を細胞沈殿から分離回収した。次に、培養上清を超遠心機(Beckman L-70:ローターとしてSW28を用いた)を用いて、超遠心(35,000×g、60min、15℃)した。得られたBV粒子を含む沈殿に、リン酸緩衝塩類溶液(PBS)[1mM Na2HPO4、10.5mM KH2PO4、140mM NaCl、40mM KCl(pH6.2)]を加えて懸濁し、ショ糖密度勾配[10%,15%,20%,25%,30% sucrose(w/v in PBS pH6.2)]に重層して超遠心(13,000×g、30min、15℃)した。このようにして得られたバンド(核酸を含まずウイルスの膜タンパク質のみを含むウイルスエンベロープ)を回収した。このバンドをPBS(pH6.2)で希釈後、超遠心(35,000×g、60min、15℃)を行い、得られた沈殿を10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)に懸濁し、氷中に保存した。
<タンパク質濃度の測定>
タンパク質濃度はBradford法により決定した。回収したウイルス溶液の10μl、及び40μlに、10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)を加えて全体の体積を1.3mlに調製し、プロテインアッセイ試薬(BIO-RAD)を0.2ml加え、ボルテックスした。室温にて5分間静置した後、吸光度を595nmで測定し、タンパク質の濃度を決定した。コントロールとして、2mg/mlのBSA溶液の 2、4、6、8μlを用い、上記と同様の操作を行った。
<Octadecyl Rhodamine B Chloride(R18)標識法>
R18(Molecular Probes)を溶かしたクロロホルム/メタノール(1:1)溶液にアルゴンガスを吹き付け、R18を乾固させた。ここに、R18濃度が4mMになるようにエタノールを加えた。次に、R18のエタノール溶液を、BVのタンパク量1mgあたり40nmolのR18量になるようにBVに加え、ボルテックス処理した。この溶液を室温で1時間遮光した状態で静置した後、10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5, 4℃)で平衡化したSephadex G-50カラム(Amersham Biosciences)にアプライし、上記と同じ緩衝液で溶出し、分画した。溶出速度は5分あたり1mlに設定した。R18標識BVを含む画分は、遮光し氷中に保存した。
タンパク質濃度はBradford法により決定した。回収したウイルス溶液の10μl、及び40μlに、10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)を加えて全体の体積を1.3mlに調製し、プロテインアッセイ試薬(BIO-RAD)を0.2ml加え、ボルテックスした。室温にて5分間静置した後、吸光度を595nmで測定し、タンパク質の濃度を決定した。コントロールとして、2mg/mlのBSA溶液の 2、4、6、8μlを用い、上記と同様の操作を行った。
<Octadecyl Rhodamine B Chloride(R18)標識法>
R18(Molecular Probes)を溶かしたクロロホルム/メタノール(1:1)溶液にアルゴンガスを吹き付け、R18を乾固させた。ここに、R18濃度が4mMになるようにエタノールを加えた。次に、R18のエタノール溶液を、BVのタンパク量1mgあたり40nmolのR18量になるようにBVに加え、ボルテックス処理した。この溶液を室温で1時間遮光した状態で静置した後、10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5, 4℃)で平衡化したSephadex G-50カラム(Amersham Biosciences)にアプライし、上記と同じ緩衝液で溶出し、分画した。溶出速度は5分あたり1mlに設定した。R18標識BVを含む画分は、遮光し氷中に保存した。
<リポソームの調製>
リポソームを調製するために使用した脂質は、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine, PC)、ホスファチジルセリン (phosphatidylserine, PS)であった。これらの脂質は、Avanti Polar Lipidsから購入した。
LUV(large unilamellar vesicle)の調製には、逆相蒸発法を用いた(Maezawa,S. , Yoshimura,T. , Hong,K. , Duzgunes,N. , and Papahadjopoulos,D. (1989) Mechanism of protein-induced membrane fusion: fusion of phospholipid vesicles by clathrin associated with its membrane binding and conformational change. Biochemistry 28:1422-1428)。
リン脂質の混合物を溶かしたクロロホルム溶液(約2 ml)を、キャップを外したガラス製スクリューキャップ試験管に入れ、その試験管を熱媒体としてグリセリンを加えたガラス製受器に移し、ロータリーエバポレーターに接続し、680-700 mmHg程度まで適当に減圧して固定した。ウォーターバスに受器が浸るように位置を決め、ロータリーエバポレーターを回転させ、窒素ガス(1 kg/cm2)を送り込みながら溶媒のクロロホルムを減圧除去した。減圧は、マニュアル操作により、700 mmHg から500 mmHgまで、1-2分毎に、約100 mmHgずつ下げ、次に、500 mmHgから100 mmHgまでは、約50 mmHgずつ下げていき、更に100 mmHgから25 mmHgずつ下げ、最後に10-20 mmHgとした。クロロホルムが除去され薄膜を形成した後、更に30分程度、減圧下に置き、十分にクロロホルムを除去した。減圧を停止し、窒素ガスを送り込み、大気圧まで昇圧した後に、受器を取り外し、内壁と底面にリン脂質薄膜が形成されたスクリューキャップ試験管を取り出した。
リポソームを調製するために使用した脂質は、ホスファチジルコリン(phosphatidylcholine, PC)、ホスファチジルセリン (phosphatidylserine, PS)であった。これらの脂質は、Avanti Polar Lipidsから購入した。
LUV(large unilamellar vesicle)の調製には、逆相蒸発法を用いた(Maezawa,S. , Yoshimura,T. , Hong,K. , Duzgunes,N. , and Papahadjopoulos,D. (1989) Mechanism of protein-induced membrane fusion: fusion of phospholipid vesicles by clathrin associated with its membrane binding and conformational change. Biochemistry 28:1422-1428)。
リン脂質の混合物を溶かしたクロロホルム溶液(約2 ml)を、キャップを外したガラス製スクリューキャップ試験管に入れ、その試験管を熱媒体としてグリセリンを加えたガラス製受器に移し、ロータリーエバポレーターに接続し、680-700 mmHg程度まで適当に減圧して固定した。ウォーターバスに受器が浸るように位置を決め、ロータリーエバポレーターを回転させ、窒素ガス(1 kg/cm2)を送り込みながら溶媒のクロロホルムを減圧除去した。減圧は、マニュアル操作により、700 mmHg から500 mmHgまで、1-2分毎に、約100 mmHgずつ下げ、次に、500 mmHgから100 mmHgまでは、約50 mmHgずつ下げていき、更に100 mmHgから25 mmHgずつ下げ、最後に10-20 mmHgとした。クロロホルムが除去され薄膜を形成した後、更に30分程度、減圧下に置き、十分にクロロホルムを除去した。減圧を停止し、窒素ガスを送り込み、大気圧まで昇圧した後に、受器を取り外し、内壁と底面にリン脂質薄膜が形成されたスクリューキャップ試験管を取り出した。
薄膜状になったリン脂質にジエチルエーテルを10μmol/ml加え、リン脂質を完全に溶解した。リン脂質とジエチルエーテルとの比が1:3となるように、10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)を加えた後、アルゴンガスを封入し、浴槽型ソニケーターで2分間超音波処理をしてw/oエマルジョンを得た。次に、ロータリーエバポレーターでジエチルエーテルを除去した。ゲル状になったリン脂質をボルテックス処理で破砕した後、ロータリーエバポレーターで残留ジエチルエーテルを除去した。リン脂質濃度が10μmol/mlとなるように、上記と同じ緩衝液を加え、ロータリーエバポレーターで完全にジエチルエーテルを除去した。調製したリポソームを0.4μm、0.2μm、0.1μmの順にポリカルボネートメンブレンフィルターで加圧濾過し、リポソームの直径を0.1μmに揃えた。調製したLUVは、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
MLV(multi lamellar vesicle)は、次の方法で調製した。
リン脂質の混合物を溶かしたクロロホルム溶液(約2 ml)を、キャップを外したガラス製スクリューキャップ試験管に入れ、その試験管を熱媒体としてグリセリンを加えたガラス製受器に移し、ロータリーエバポレーターに接続し、680-700 mmHg程度まで適当に減圧して固定した。ウォーターバスに受器が浸るように位置を決め、ロータリーエバポレーターを回転させ、窒素ガス(1 kg/cm2)を送り込みながら溶媒のクロロホルムを減圧除去した。減圧は、マニュアル操作により、700 mmHg から500 mmHgまで、1-2分毎に、約100 mmHgずつ下げ、次に、500 mmHgから100 mmHgまでは、約50 mmHgずつ下げていき、更に100 mmHgから25 mmHgずつ下げ、最後に10-20 mmHgとした。クロロホルムが除去され薄膜を形成した後、更に30分程度、減圧下に置き、十分にクロロホルムを除去した。減圧を停止し、窒素ガスを送り込み、大気圧まで昇圧した後に、受器を取り外し、内壁と底面にリン脂質薄膜が形成されたスクリューキャップ試験管を取り出した。
リン脂質の混合物を溶かしたクロロホルム溶液(約2 ml)を、キャップを外したガラス製スクリューキャップ試験管に入れ、その試験管を熱媒体としてグリセリンを加えたガラス製受器に移し、ロータリーエバポレーターに接続し、680-700 mmHg程度まで適当に減圧して固定した。ウォーターバスに受器が浸るように位置を決め、ロータリーエバポレーターを回転させ、窒素ガス(1 kg/cm2)を送り込みながら溶媒のクロロホルムを減圧除去した。減圧は、マニュアル操作により、700 mmHg から500 mmHgまで、1-2分毎に、約100 mmHgずつ下げ、次に、500 mmHgから100 mmHgまでは、約50 mmHgずつ下げていき、更に100 mmHgから25 mmHgずつ下げ、最後に10-20 mmHgとした。クロロホルムが除去され薄膜を形成した後、更に30分程度、減圧下に置き、十分にクロロホルムを除去した。減圧を停止し、窒素ガスを送り込み、大気圧まで昇圧した後に、受器を取り外し、内壁と底面にリン脂質薄膜が形成されたスクリューキャップ試験管を取り出した。
リポソーム調製用バッファー[10 mM Tris-HCl- 10 mM NaCl (pH 7.5)]を1 ml加え、アルゴンガス(不活性ガス)で置換した後、スクリューキャップをしっかり閉め、ボルテックスミキサー(強度最大)で30秒から1分程度、薄膜が完全に剥がれるまで、ボルテックスし、乳白色のMLV懸濁液(リン脂質濃度 約10 μmol/ml)を得た。加圧濾過器にポリカーボネートメンブレン(孔径0.4 μm)を装着し、MLV懸濁液をアルゴンガスにより加圧濾過した。
MLVを含む濾液に、次のように複数回遠心操作を施し、MLVを精製した。濾液をエッペンドルフチューブに移し、小型冷却遠心機で遠心した(10,000 rpm、20分間、4℃)。得られた遠心上清を別のエッペンドルフチューブに移し、MLV沈殿物は1 mlバッファーを加え再懸濁し、上清と沈殿物の両者に対して同様の遠心操作を行った。次に、上清の再遠心により得られた沈殿物に沈殿物再懸濁液の遠心上清を加えて懸濁し、沈殿物再懸濁液の遠心沈殿物には新たにバッファーを1 ml加えて再々懸濁した。この操作を更に一度行い、得られた各沈殿物にバッファー0.5 mlを加え、それぞれ懸濁し、両者を併せ1 mlのMLV懸濁液を得た。調製したMLVは、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
MLVを含む濾液に、次のように複数回遠心操作を施し、MLVを精製した。濾液をエッペンドルフチューブに移し、小型冷却遠心機で遠心した(10,000 rpm、20分間、4℃)。得られた遠心上清を別のエッペンドルフチューブに移し、MLV沈殿物は1 mlバッファーを加え再懸濁し、上清と沈殿物の両者に対して同様の遠心操作を行った。次に、上清の再遠心により得られた沈殿物に沈殿物再懸濁液の遠心上清を加えて懸濁し、沈殿物再懸濁液の遠心沈殿物には新たにバッファーを1 ml加えて再々懸濁した。この操作を更に一度行い、得られた各沈殿物にバッファー0.5 mlを加え、それぞれ懸濁し、両者を併せ1 mlのMLV懸濁液を得た。調製したMLVは、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
<リポソーム濃度の決定>
リポソームの濃度は、リン脂質濃度で表示した。リン脂質濃度は、リン脂質を過酸化水素と硫酸により湿式分解し、得られた分解液中の無機リンをFiske-Subbarow試薬により発色させることで測定した。まず、サンプルと、コントロールとして使用したKH2PO4溶液とのそれぞれに、4mmolのH2SO4を加え、170℃で30分以上加熱し、空冷した。その後、過酸化水素を6%となるように加え、170℃で30分間加熱した。次に、空冷したサンプル及びコントロールに、0.25N H2SO4に溶解した0.22% (NH4)6Mo7O24・4H2Oをモリブデン酸アンモニウムの最終濃度が0.044%となるように加え、ボルテックスを行い、発色試薬(30mg ANSA(1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸)、1mg Na2SO3)を加えてボルテックスを行った後、沸騰水中で10分間加熱した。空冷したサンプル及びコントロールとして使用したKH2PO4の吸光度を830nmで測定し、サンプル中のリン含量を決定した。
リポソームの濃度は、リン脂質濃度で表示した。リン脂質濃度は、リン脂質を過酸化水素と硫酸により湿式分解し、得られた分解液中の無機リンをFiske-Subbarow試薬により発色させることで測定した。まず、サンプルと、コントロールとして使用したKH2PO4溶液とのそれぞれに、4mmolのH2SO4を加え、170℃で30分以上加熱し、空冷した。その後、過酸化水素を6%となるように加え、170℃で30分間加熱した。次に、空冷したサンプル及びコントロールに、0.25N H2SO4に溶解した0.22% (NH4)6Mo7O24・4H2Oをモリブデン酸アンモニウムの最終濃度が0.044%となるように加え、ボルテックスを行い、発色試薬(30mg ANSA(1-アミノ-2-ナフトール-4-スルホン酸)、1mg Na2SO3)を加えてボルテックスを行った後、沸騰水中で10分間加熱した。空冷したサンプル及びコントロールとして使用したKH2PO4の吸光度を830nmで測定し、サンプル中のリン含量を決定した。
<膜融合測定(R18-dequenching assay)>
融合用緩衝液は、pHに応じて各種のものを用いた。すなわち、pH3.0では10mM CH3COOH-HCl/10mM NaCl、pH4.0−5.0では10mM CH3COOH-CH3COONa/10mM NaCl、pH6.5では10mM MES-NaOH/10mM NaCl、pH7.5では10mM Tris-HCl/10mM NaClの緩衝液を用いた。全ての緩衝液の浸透圧は、適量のスクロースを加えて10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)の浸透圧に揃えた。このとき、浸透圧測定装置オズモスタットTM(ARKRAY)を使用した。
R18は標識膜中では自己消光し、消光度は膜中における存在比に比例する。R18で標識されたサンプルと非標識のサンプルとが融合すると、膜中でのR18の存在比が低下するため、蛍光の回復が観察される。まず、R18で標識されたBVを緩衝液で10倍に希釈し、蛍光セルに入れ、攪拌しながら蛍光光度計(HITACHI F-2500)を使用して蛍光強度を測定した(励起波長560nm、蛍光波長580nm)。次に、非標識のリポソームを蛍光セル中に加え、攪拌しながら50秒間、蛍光強度を測定した。さらに、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを最終濃度が1%になるように加え、攪拌しながら室温で放置し、蛍光強度を測定した。膜の融合速度(%)は、次式に従って算出した。
融合速度(%)=100×(Fs−F0)/(Ft−F0)
ここで、Fsはリポソームを加えて20秒後の蛍光強度、F0はR18標識BVのみの蛍光強度、Ftはポリオキシエチレンラウリルエーテルを加えた後の蛍光強度である。
融合用緩衝液は、pHに応じて各種のものを用いた。すなわち、pH3.0では10mM CH3COOH-HCl/10mM NaCl、pH4.0−5.0では10mM CH3COOH-CH3COONa/10mM NaCl、pH6.5では10mM MES-NaOH/10mM NaCl、pH7.5では10mM Tris-HCl/10mM NaClの緩衝液を用いた。全ての緩衝液の浸透圧は、適量のスクロースを加えて10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)の浸透圧に揃えた。このとき、浸透圧測定装置オズモスタットTM(ARKRAY)を使用した。
R18は標識膜中では自己消光し、消光度は膜中における存在比に比例する。R18で標識されたサンプルと非標識のサンプルとが融合すると、膜中でのR18の存在比が低下するため、蛍光の回復が観察される。まず、R18で標識されたBVを緩衝液で10倍に希釈し、蛍光セルに入れ、攪拌しながら蛍光光度計(HITACHI F-2500)を使用して蛍光強度を測定した(励起波長560nm、蛍光波長580nm)。次に、非標識のリポソームを蛍光セル中に加え、攪拌しながら50秒間、蛍光強度を測定した。さらに、ポリオキシエチレンラウリルエーテルを最終濃度が1%になるように加え、攪拌しながら室温で放置し、蛍光強度を測定した。膜の融合速度(%)は、次式に従って算出した。
融合速度(%)=100×(Fs−F0)/(Ft−F0)
ここで、Fsはリポソームを加えて20秒後の蛍光強度、F0はR18標識BVのみの蛍光強度、Ftはポリオキシエチレンラウリルエーテルを加えた後の蛍光強度である。
<AChRα組換えバキュロウイルスAcNPVの調製>
ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)のクローニングとして、Clontech社のヒト骨格筋cDNAライブラリーを用い、2本のPCR プライマーを用いてAChR α鎖 翻訳領域のクローニングをpfu polymeraseを用いたPCR法により行った。PCR法には、プライマー1(配列番号1:gtagcatatggagccctggcctctcct)と、プライマー2(配列番号2:tttcctcgagtccttgctgatttaattcaatgag)とを用いた。配列のうち、下線部分は付加した制限酵素部位(NdeI及びXho I)を意味する。
得られた1.4kbpのDNA断片をプライマーに付加したNdeI、Xho I 制限酵素部位で消化し、Novagen社pET-30a(+) のマルチクローニングサイトのNde I、Xho I にライゲーションした。得られたクローン(pET/AChRα)をDNAシーケンサーにより塩基配列を決定し、Acc.No.Y00762として登録されているAChRα遺伝子翻訳領域と一致した配列のDNA断片が得られたことを確認した。
ニコチン性アセチルコリン受容体(AChR)のクローニングとして、Clontech社のヒト骨格筋cDNAライブラリーを用い、2本のPCR プライマーを用いてAChR α鎖 翻訳領域のクローニングをpfu polymeraseを用いたPCR法により行った。PCR法には、プライマー1(配列番号1:gtagcatatggagccctggcctctcct)と、プライマー2(配列番号2:tttcctcgagtccttgctgatttaattcaatgag)とを用いた。配列のうち、下線部分は付加した制限酵素部位(NdeI及びXho I)を意味する。
得られた1.4kbpのDNA断片をプライマーに付加したNdeI、Xho I 制限酵素部位で消化し、Novagen社pET-30a(+) のマルチクローニングサイトのNde I、Xho I にライゲーションした。得られたクローン(pET/AChRα)をDNAシーケンサーにより塩基配列を決定し、Acc.No.Y00762として登録されているAChRα遺伝子翻訳領域と一致した配列のDNA断片が得られたことを確認した。
pET/AChRαをテンプレートとしてバキュロウイルストランスファーベクターを作製するために、次のプライマーによりTaKaRa Ex Taq用いてPCR法を行った。プライマーとして、プライマー3(配列番号3:cggaattcgatatggagccctggcctctc)、及びプライマー4(配列番号4:gctctagagctttgttagcagccggatc)を用いた。両プライマーの5’末端側には、それぞれ制限酵素EcoR I及びXba Iの認識部位(下線部分)を付加した。これらのプライマーを用いることにより、pET-30a(+)由来のHis-TagがAChRαのC末端に融合されるので、抗His-Tag抗体によりAChRαの発現確認が容易となる。
得られたDNA断片をEco RI、Xba Iで消化し、BD Biosciences社バキュロウイルストランスファーベクターpVL1392のマルチクローニングサイトのEco RI、Xba I部位にライゲーションした。ライゲーション産物をコンピテントセルに形質転換し、プラスミドDNAを得た。得られたクローン(pVL/AChRα)は、DNAシーケンサーによりAChRα翻訳領域およびHis-Tag配列がpVL1392ベクターに組み換えられていることを確認した。
得られたDNA断片をEco RI、Xba Iで消化し、BD Biosciences社バキュロウイルストランスファーベクターpVL1392のマルチクローニングサイトのEco RI、Xba I部位にライゲーションした。ライゲーション産物をコンピテントセルに形質転換し、プラスミドDNAを得た。得られたクローン(pVL/AChRα)は、DNAシーケンサーによりAChRα翻訳領域およびHis-Tag配列がpVL1392ベクターに組み換えられていることを確認した。
AChRα組換えトランスファーベクターとバキュロウイルスDNAを、Cellfectin Reagent (Invitrogen社) を用いてSf9細胞にコトランスフェクションし、Sf9細胞内での相同組換えによりAChRα組換えバキュロウイルス(AChRα組換えAcNPV)を作製した。得られたAChRα組換えAcNPVを含む培養上清を用いて、新たにSf9細胞に感染させ、抗His-Tag抗体により検出したところ、Sf9細胞とAChRα組換えAcNPV出芽ウイルスにAChRαが発現していた。得られたAChRα組換えバキュロウイルスは、プラーク法により純化し、組換えプロテオリポソーム作製用に供した。
<TSHR組換えバキュロウイルスAcNPVの調製>
甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)翻訳領域のクローニングは、Clontech社ヒト甲状腺cDNAより以下のPCR プライマーを用い、pfu polymeraseを用いたPCR法により行った。PCR法には、プライマー5(配列番号5:agtcggatccaccatgagccggcggacttgct)と、プライマー6(配列番号6:tgttctcgagcaaaaccgtttgcatatactctt)とを用いた。配列の下線部分は、付加した制限酵素部位(BamH I及びXho I)を意味する。
得られた2.3kbpのDNA断片をプライマーに付加したBamH I、Xho I 制限酵素部位で消化し、Novagen社pET-28a(+) のマルチクローニングサイトのBamH I、Xho I にライゲーションした。得られたクローン(pET/TSHR)をDNAシーケンサーにより塩基配列を決定し、Acc.No.A34990として登録されているTSHR遺伝子翻訳領域と一致した配列のDNA断片が得られたことを確認した。
甲状腺刺激ホルモン受容体(TSHR)翻訳領域のクローニングは、Clontech社ヒト甲状腺cDNAより以下のPCR プライマーを用い、pfu polymeraseを用いたPCR法により行った。PCR法には、プライマー5(配列番号5:agtcggatccaccatgagccggcggacttgct)と、プライマー6(配列番号6:tgttctcgagcaaaaccgtttgcatatactctt)とを用いた。配列の下線部分は、付加した制限酵素部位(BamH I及びXho I)を意味する。
得られた2.3kbpのDNA断片をプライマーに付加したBamH I、Xho I 制限酵素部位で消化し、Novagen社pET-28a(+) のマルチクローニングサイトのBamH I、Xho I にライゲーションした。得られたクローン(pET/TSHR)をDNAシーケンサーにより塩基配列を決定し、Acc.No.A34990として登録されているTSHR遺伝子翻訳領域と一致した配列のDNA断片が得られたことを確認した。
pET/TSHRをテンプレートとしてバキュロウィルストランスファーベクターを作製するために、次のプライマーによりpfu polymeraseを用いたPCR法を行った。プライマーとして、プライマー7(配列番号7:agtcggatccaccatgagccggcggacttgct)、及びプライマー8(配列番号8:ttcggaattcgttagcagccggatctcagt)を用いた。両プライマーの5'末端側には、それぞれ制限酵素BamH I及びEcoR Iの認識部位(下線部分)を付加した。これらのプライマーを用いることにより、pET-28a(+)由来のHis-Tag がTSHRのC末端に融合されるので、抗His-Tag 抗体によりTSHRの発現確認が容易となる。
得られたDNA断片をBamH I、EcoR I で消化し、BD Biosciences社バキュロウィルストラスファーベクターpVL1393のマルチクローニングサイト、BamH I、EcoR I部位にライゲーションした。得られたクローン(pVL/TSHR)は、DNAシーケンサーによりTSHR翻訳領域およびHis-Tag 配列がpVL1393ベクターに組み換えられている事を確認した。
TSHR組換えトランスファーベクターとバキュロウイルスDNAとの両者をSf9細胞にリン酸カルシウム法によりコトランスフェクションし、Sf9細胞内での相同組換えによりTSHR組換えバキュロウィルス(TSHR組換えAcNPV)を作製した。得られたTSHR組換えAcNPVをHigh Five 細胞に感染して、抗His-Tag 抗体にて検出したところ、High Five 細胞にてTSHRが発現していることを確認した。
TSHR組換えトランスファーベクターとバキュロウイルスDNAとの両者をSf9細胞にリン酸カルシウム法によりコトランスフェクションし、Sf9細胞内での相同組換えによりTSHR組換えバキュロウィルス(TSHR組換えAcNPV)を作製した。得られたTSHR組換えAcNPVをHigh Five 細胞に感染して、抗His-Tag 抗体にて検出したところ、High Five 細胞にてTSHRが発現していることを確認した。
<CRHR1組換えバキュロウイルスAcNPVの調製>
副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン)放出ホルモン(因子)受容体 (CRHR1)のcDNAは、UMR cDNA Resource Center(現Missouri S&T cDNA Resource Center)から、CRHR1はpcDNA3.1+ベクターに挿入されたプラスミドクローンとして入手した(GB Acc No. AY457172)。CRHR1の5’末端を制限酵素BamH I(タカラバイオ)、3’末端を制限酵素Xba I(タカラバイオ)で切断(37℃、60分)し、等容のフェノール/クロロホルム溶液を加え、5分間、激しく混合した後、遠心操作(12,500×g、5分、4℃)を行い、上層(水層)と下層(フェノール層)とに分離した。そして、DNAが抽出されている上層を回収し、2倍容のエタノールと1/10倍容の3 M 酢酸ナトリウムを加え、遠心分離(12,500×g、10分、4℃)を行い、DNAを沈殿させた。上清を捨て、70%エタノール500 μL加え遠心分離(12,500×g、5分、4℃)しDNAを沈殿させた。上清を捨て、DNAのペレットを乾かした後、TE buffer(10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、pH8.0)に溶き、溶液を常法でアガロース電気泳動した。SYBR Gold nucleic acid gel stain(Molecular Probes)を用いて染色したゲルから、CRHR1に相当するDNAバンド(1248 bp)を切り出した。このゲル片からGFXTM PCR DNA and Gel Band Purification Kit(Amersham)を用いて、DNA断片を精製した。
得られたDNA断片を、BD Biosciences社バキュロウィルストラスファーベクターpVL1393のマルチクローニングサイト、BamH I、Xba I部位にライゲーションした。得られたクローン(pVL/CRHR1)は、DNAシーケンサーにより該配列がpVL1393ベクターのポリヘドリンプロモーター下流に組み込まれている事を確認した。
CRHR1組換えトランスファーベクター(pVL/CRHR1)と、バキュロウイルスDNAとの両者を、Sf9細胞にCellfectin Reagent(Invitrogen社)を用いてコトランスフェクションし、Sf9細胞内での相同組換えによりCRHR1組換えバキュロウィルス(CRHR1組換えAcNPV)を作製した。組換えAcNPVを含む培養上清を用いて、新たにSf9細胞に感染させる操作を、さらに3回繰り返し、培養上清中に含まれる組換えAcNPV 出芽ウイルス量を増幅し、3回目の培養上清を回収、0.22 μmのフィルターで濾過滅菌した後、1 mLずつ分注し、−80℃で保存した。感染細胞へのCRHR1発現は、ウエスタンブロットにより確認した。
副腎皮質刺激ホルモン(コルチコトロピン)放出ホルモン(因子)受容体 (CRHR1)のcDNAは、UMR cDNA Resource Center(現Missouri S&T cDNA Resource Center)から、CRHR1はpcDNA3.1+ベクターに挿入されたプラスミドクローンとして入手した(GB Acc No. AY457172)。CRHR1の5’末端を制限酵素BamH I(タカラバイオ)、3’末端を制限酵素Xba I(タカラバイオ)で切断(37℃、60分)し、等容のフェノール/クロロホルム溶液を加え、5分間、激しく混合した後、遠心操作(12,500×g、5分、4℃)を行い、上層(水層)と下層(フェノール層)とに分離した。そして、DNAが抽出されている上層を回収し、2倍容のエタノールと1/10倍容の3 M 酢酸ナトリウムを加え、遠心分離(12,500×g、10分、4℃)を行い、DNAを沈殿させた。上清を捨て、70%エタノール500 μL加え遠心分離(12,500×g、5分、4℃)しDNAを沈殿させた。上清を捨て、DNAのペレットを乾かした後、TE buffer(10 mM Tris-HCl、1 mM EDTA、pH8.0)に溶き、溶液を常法でアガロース電気泳動した。SYBR Gold nucleic acid gel stain(Molecular Probes)を用いて染色したゲルから、CRHR1に相当するDNAバンド(1248 bp)を切り出した。このゲル片からGFXTM PCR DNA and Gel Band Purification Kit(Amersham)を用いて、DNA断片を精製した。
得られたDNA断片を、BD Biosciences社バキュロウィルストラスファーベクターpVL1393のマルチクローニングサイト、BamH I、Xba I部位にライゲーションした。得られたクローン(pVL/CRHR1)は、DNAシーケンサーにより該配列がpVL1393ベクターのポリヘドリンプロモーター下流に組み込まれている事を確認した。
CRHR1組換えトランスファーベクター(pVL/CRHR1)と、バキュロウイルスDNAとの両者を、Sf9細胞にCellfectin Reagent(Invitrogen社)を用いてコトランスフェクションし、Sf9細胞内での相同組換えによりCRHR1組換えバキュロウィルス(CRHR1組換えAcNPV)を作製した。組換えAcNPVを含む培養上清を用いて、新たにSf9細胞に感染させる操作を、さらに3回繰り返し、培養上清中に含まれる組換えAcNPV 出芽ウイルス量を増幅し、3回目の培養上清を回収、0.22 μmのフィルターで濾過滅菌した後、1 mLずつ分注し、−80℃で保存した。感染細胞へのCRHR1発現は、ウエスタンブロットにより確認した。
<プラーク純化及びウイルス力価の測定>
AChRα組換えAcNPV 、TSHR組換えAcNPV 及びCRHR1組換えAcNPVのプラーク純化及びウイルス力価の測定は、以下のように行った。6穴プレートの各ウェルに1.0×106個のSf9細胞をまき、細胞が底面に付着するのを待って培地を取り除いた。ウイルス液をCarlson液 [0.12M NaCl, 1.4mM CaCl2, 1.7mM NaH2PO4, 2.7mM KCl, 0.5mM MgCl2, 1.4mM NaHCO3, 8g/l Glucose, 5μg/ml Gentamysin](またはSf-900II SFM培地)で段階希釈し、このウイルス液を各ウェルに500μl加え、15分毎にロッキングし、1時間感染させた。感染後、ウイルス希釈液を除去し、0.5%のSeaPlaque agarose(FMC Bioproducts社)を含むSf-900II SFM培地を加え、培地が固化するまで室温に静置した。培地の固化後、27℃で数日間培養した。ウイルス感染細胞が形成するプラークをパスツールピペットにより寒天培地ごと抜き取り、1mlのCarlson液またはSf-900II SFM培地中でピペッティングすることにより、寒天培地中のウイルスを液中に放出させた。得られた単一プラーク由来のウイルス液をSf9細胞に感染させて増殖させた。力価が低い場合には、感染を繰り返して、力価を増幅できる。その後、感染細胞の培養液を回収し、遠心分離(1,700×g、10min)し、上清を0.2μmフィルターにより濾過して得られた濾液を、組換えバキュロウイルスストック液として組換えプロテオリポソーム調製用組換えバキュロウイルス出芽ウイルス調製に供した。ウイルスストック液は、適当に分注し、−80℃で保存した。
分注したストック一本について解凍し、組換えウイルスの力価(Titer)を、上記のウイルス純化と同様の方法でプラーク法を行い、感染後1週間目に形成したプラークを計数することで求めた。
AChRα組換えAcNPV 、TSHR組換えAcNPV 及びCRHR1組換えAcNPVのプラーク純化及びウイルス力価の測定は、以下のように行った。6穴プレートの各ウェルに1.0×106個のSf9細胞をまき、細胞が底面に付着するのを待って培地を取り除いた。ウイルス液をCarlson液 [0.12M NaCl, 1.4mM CaCl2, 1.7mM NaH2PO4, 2.7mM KCl, 0.5mM MgCl2, 1.4mM NaHCO3, 8g/l Glucose, 5μg/ml Gentamysin](またはSf-900II SFM培地)で段階希釈し、このウイルス液を各ウェルに500μl加え、15分毎にロッキングし、1時間感染させた。感染後、ウイルス希釈液を除去し、0.5%のSeaPlaque agarose(FMC Bioproducts社)を含むSf-900II SFM培地を加え、培地が固化するまで室温に静置した。培地の固化後、27℃で数日間培養した。ウイルス感染細胞が形成するプラークをパスツールピペットにより寒天培地ごと抜き取り、1mlのCarlson液またはSf-900II SFM培地中でピペッティングすることにより、寒天培地中のウイルスを液中に放出させた。得られた単一プラーク由来のウイルス液をSf9細胞に感染させて増殖させた。力価が低い場合には、感染を繰り返して、力価を増幅できる。その後、感染細胞の培養液を回収し、遠心分離(1,700×g、10min)し、上清を0.2μmフィルターにより濾過して得られた濾液を、組換えバキュロウイルスストック液として組換えプロテオリポソーム調製用組換えバキュロウイルス出芽ウイルス調製に供した。ウイルスストック液は、適当に分注し、−80℃で保存した。
分注したストック一本について解凍し、組換えウイルスの力価(Titer)を、上記のウイルス純化と同様の方法でプラーク法を行い、感染後1週間目に形成したプラークを計数することで求めた。
<組換えバキュロウイルスAcNPV出芽ウイルスの回収>
AChRα組換えバキュロウイルス(AChRα組換えAcNPV)、TSHR組換えバキュロウイルス(TSHR組換えAcNPV)及びCRHR1組換えバキュロウイルス(CRHR1組換えAcNPV)の出芽ウイルスは、いずれも次の手順により調製した。
Sf-900II SFM培地(Invitrogen社)11 mlを加えたT-75培養フラスコ10個に、継代培養していたSf9細胞懸濁液を各1 ml加えた後、AChRα組換えAcNPV あるいはTSHR組換えAcNPVを感染多重度(MOI)が1となるように感染させた。感染72時間後の細胞培養液を遠心(1,000×g、15 分間、4℃)し、培養上清を細胞沈殿から分離回収した。次に、培養上清を超遠心機(Beckman LP-70:ローターはSW28)を用いて超遠心(40,000×g、30 分間、15℃)し、上清を捨て、得られた出芽ウイルスの沈殿にPBS(pH 6.2)を加えて懸濁した。その懸濁液を、遠心(1,000×g、15 分間、4℃)して不要物である沈殿を除去後、超遠心(40,000×g、30 分間、15℃)し、得られた出芽ウイルス沈殿をPBS(pH 6.2)に懸濁した。
出芽ウイルス懸濁液のタンパク質濃度は、上記<タンパク濃度の測定>に従って、プロテインアッセイ(Bradford法)によりBSAを標準サンプルとして定量した。懸濁液は、氷中に保存した。
AChRα組換えバキュロウイルス(AChRα組換えAcNPV)、TSHR組換えバキュロウイルス(TSHR組換えAcNPV)及びCRHR1組換えバキュロウイルス(CRHR1組換えAcNPV)の出芽ウイルスは、いずれも次の手順により調製した。
Sf-900II SFM培地(Invitrogen社)11 mlを加えたT-75培養フラスコ10個に、継代培養していたSf9細胞懸濁液を各1 ml加えた後、AChRα組換えAcNPV あるいはTSHR組換えAcNPVを感染多重度(MOI)が1となるように感染させた。感染72時間後の細胞培養液を遠心(1,000×g、15 分間、4℃)し、培養上清を細胞沈殿から分離回収した。次に、培養上清を超遠心機(Beckman LP-70:ローターはSW28)を用いて超遠心(40,000×g、30 分間、15℃)し、上清を捨て、得られた出芽ウイルスの沈殿にPBS(pH 6.2)を加えて懸濁した。その懸濁液を、遠心(1,000×g、15 分間、4℃)して不要物である沈殿を除去後、超遠心(40,000×g、30 分間、15℃)し、得られた出芽ウイルス沈殿をPBS(pH 6.2)に懸濁した。
出芽ウイルス懸濁液のタンパク質濃度は、上記<タンパク濃度の測定>に従って、プロテインアッセイ(Bradford法)によりBSAを標準サンプルとして定量した。懸濁液は、氷中に保存した。
<SDS-PAGE電気泳動>
タンパク質サンプルに等量のサンプル緩衝液[114mM Tris-HCl(pH6.8)、3.64% SDS、25.4% glycerol、9% β-mercaptoethanol、0.02% bromophenol blue]を加え、5分間煮沸して変性させた。次に、12%分離用ゲル [12% acrylamide、0.41% bisacrylamide、0.1% SDS、375mM Tris-HCl(pH8.8)、0.01% APS、0.001% TEMED]と濃縮用ゲル [3.89% acrylamide、0.11% bisacrylamide、0.1% SDS、125mM Tris-HCl(pH6.8)、0.01% APS、0.001% TEMED]からなるミニスラブゲルと電気泳動用緩衝液(Running buffer )[0.1% SDS、25mM Tris、52mM glycine(pH8.3)]を泳動槽(ATTO)にセットし、サンプルを濃縮ゲルの注入孔に注入後、ゲル1枚につき30mAの定電流で約60分間通電し、電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルをBio-Safe Coomassie(BIO-RAD)に1時間浸漬し、分離されたタンパク質を染色した。
次に述べる銀染色及びウエスタンブロット分析には、染色前のゲルを用いた。
タンパク質サンプルに等量のサンプル緩衝液[114mM Tris-HCl(pH6.8)、3.64% SDS、25.4% glycerol、9% β-mercaptoethanol、0.02% bromophenol blue]を加え、5分間煮沸して変性させた。次に、12%分離用ゲル [12% acrylamide、0.41% bisacrylamide、0.1% SDS、375mM Tris-HCl(pH8.8)、0.01% APS、0.001% TEMED]と濃縮用ゲル [3.89% acrylamide、0.11% bisacrylamide、0.1% SDS、125mM Tris-HCl(pH6.8)、0.01% APS、0.001% TEMED]からなるミニスラブゲルと電気泳動用緩衝液(Running buffer )[0.1% SDS、25mM Tris、52mM glycine(pH8.3)]を泳動槽(ATTO)にセットし、サンプルを濃縮ゲルの注入孔に注入後、ゲル1枚につき30mAの定電流で約60分間通電し、電気泳動を行った。電気泳動後、ゲルをBio-Safe Coomassie(BIO-RAD)に1時間浸漬し、分離されたタンパク質を染色した。
次に述べる銀染色及びウエスタンブロット分析には、染色前のゲルを用いた。
<銀染色>
銀染色には、銀染色IIキットワコー(Wako)を用いた。まず、SDS-PAGE後(染色前)のゲルを固定液-1に浸漬し、10分間振盪した。次に、固定液-1を捨て、ゲルを固定液-2に浸漬し、10分間振盪した。その後、固定液-2を捨て、ゲルを増感液に浸漬し、10分間振盪した。増感液を捨て、ゲルを脱イオン水で5分間振盪した後、発色液で15分間振盪し、タンパク質を検出した。
銀染色には、銀染色IIキットワコー(Wako)を用いた。まず、SDS-PAGE後(染色前)のゲルを固定液-1に浸漬し、10分間振盪した。次に、固定液-1を捨て、ゲルを固定液-2に浸漬し、10分間振盪した。その後、固定液-2を捨て、ゲルを増感液に浸漬し、10分間振盪した。増感液を捨て、ゲルを脱イオン水で5分間振盪した後、発色液で15分間振盪し、タンパク質を検出した。
<ウエスタンブロット分析>
まず、SDS-PAGE後(染色前)のゲルを転写バッファー(48mM Tris、39mM glycine、20% methanol)に20分間浸漬し平衡化した。トランスブロットSDセル(BIO-RAD)の電極板の間に、転写バッファーに浸漬した濾紙、メタノールに浸漬したpolyvinyliden difluoride(PVDF)膜、ゲル、濾紙の順に陰極から陽極に向かって重ね合わせた。20Vの定電圧で90分間通電し、ゲル中のタンパク質をPVDF膜に転写した。転写後、1%ゼラチンを含むリン酸緩衝塩類溶液(PBS)[20mM NaH2PO4、20mM Na2HPO4、140mM NaCl、(pH7.2)] にPVDF膜を浸漬し、室温で2時間ブロッキングを行った。次に、PVDF膜をPBST [PBS(pH7.2)+0.05% Triton X-100] 溶液で洗浄(5分間×3回)し、1次抗体液中に1時間浸漬させた。その後、PVDF膜をPBST溶液で洗浄(5分間×3回)し、2次抗体液中に1時間浸漬させた。再度PVDF膜をPBST溶液で洗浄(5分間×3回)し、コニカイムノステインHRP-1000キット(生化学工業)を用いて、膜上に転写されたタンパク質を抗体に結合したペルオキシダーゼによる発色反応で検出した。1次抗体液として、PBS(pH7.2)で1000倍に希釈した抗His-Tag抗体(rabbit Anti-His-Tag; MBL)液を用いた。2次抗体液には、PBS(pH7.2)で1000倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG抗体(goat Anti-Rabbit IgG(H+L chain)-Peroxidase; MBL)液を用いた。
まず、SDS-PAGE後(染色前)のゲルを転写バッファー(48mM Tris、39mM glycine、20% methanol)に20分間浸漬し平衡化した。トランスブロットSDセル(BIO-RAD)の電極板の間に、転写バッファーに浸漬した濾紙、メタノールに浸漬したpolyvinyliden difluoride(PVDF)膜、ゲル、濾紙の順に陰極から陽極に向かって重ね合わせた。20Vの定電圧で90分間通電し、ゲル中のタンパク質をPVDF膜に転写した。転写後、1%ゼラチンを含むリン酸緩衝塩類溶液(PBS)[20mM NaH2PO4、20mM Na2HPO4、140mM NaCl、(pH7.2)] にPVDF膜を浸漬し、室温で2時間ブロッキングを行った。次に、PVDF膜をPBST [PBS(pH7.2)+0.05% Triton X-100] 溶液で洗浄(5分間×3回)し、1次抗体液中に1時間浸漬させた。その後、PVDF膜をPBST溶液で洗浄(5分間×3回)し、2次抗体液中に1時間浸漬させた。再度PVDF膜をPBST溶液で洗浄(5分間×3回)し、コニカイムノステインHRP-1000キット(生化学工業)を用いて、膜上に転写されたタンパク質を抗体に結合したペルオキシダーゼによる発色反応で検出した。1次抗体液として、PBS(pH7.2)で1000倍に希釈した抗His-Tag抗体(rabbit Anti-His-Tag; MBL)液を用いた。2次抗体液には、PBS(pH7.2)で1000倍に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)標識抗ウサギIgG抗体(goat Anti-Rabbit IgG(H+L chain)-Peroxidase; MBL)液を用いた。
<組換えプロテオリポソーム調製用組換えバキュロウイルスAcNPV出芽ウイルスの回収>
組換えプロテオリポソームの作製に用いるAChRα組換えバキュロウイルス(AChRα組換えAcNPV)、TSHR組換えバキュロウイルス(TSHR組換えAcNPV)及びCRHR1組換えバキュロウイルス(CRHR1組換えAcNPV)の出芽ウイルスは、いずれも上記<組換えバキュロウイルスAcNPV出芽ウイルスの回収>の手順により回収した。
出芽ウイルス懸濁液のタンパク質濃度は、上記<タンパク濃度の測定>に従って、プロテインアッセイ(Bradford法)によりBSAを標準サンプルとして定量した。懸濁液は、氷中に保存し、適宜、組換えプロテオリポソーム調製に供した。
組換えプロテオリポソームの作製に用いるAChRα組換えバキュロウイルス(AChRα組換えAcNPV)、TSHR組換えバキュロウイルス(TSHR組換えAcNPV)及びCRHR1組換えバキュロウイルス(CRHR1組換えAcNPV)の出芽ウイルスは、いずれも上記<組換えバキュロウイルスAcNPV出芽ウイルスの回収>の手順により回収した。
出芽ウイルス懸濁液のタンパク質濃度は、上記<タンパク濃度の測定>に従って、プロテインアッセイ(Bradford法)によりBSAを標準サンプルとして定量した。懸濁液は、氷中に保存し、適宜、組換えプロテオリポソーム調製に供した。
<組換えプロテオリポソーム調製用多重層リポソーム(MLV)の調製>
リン脂質の混合物として、ホスファチジルコリン(PC ) / ホスファチジルセリン(PS ) = 1:1 (リン脂質総量20 μmol)を用いた。このリン脂質を用いて、上記<リポソームの調製>に記載の方法に従って、MLVを調製した。
リポソーム濃度をリン脂質濃度で表すため、上記<リポソーム濃度の決定>の手順に従い、懸濁液に過酸化水素と硫酸により湿式分解した分解液中の無機リンをFiske-Subbarow法で定量した。こうして調製したMLV懸濁液を、組換えプロテオリポソーム調製に供した。MLV懸濁は、アルゴンガスを充填し、4℃で保存した。
リン脂質の混合物として、ホスファチジルコリン(PC ) / ホスファチジルセリン(PS ) = 1:1 (リン脂質総量20 μmol)を用いた。このリン脂質を用いて、上記<リポソームの調製>に記載の方法に従って、MLVを調製した。
リポソーム濃度をリン脂質濃度で表すため、上記<リポソーム濃度の決定>の手順に従い、懸濁液に過酸化水素と硫酸により湿式分解した分解液中の無機リンをFiske-Subbarow法で定量した。こうして調製したMLV懸濁液を、組換えプロテオリポソーム調製に供した。MLV懸濁は、アルゴンガスを充填し、4℃で保存した。
<組換えAcNPV出芽ウイルスとMLVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>
融合バッファーとして、10 mM CH3COOH-CH3COONa/10 mM NaCl (pH4.0)および10 mMTris-HCl/100 mM NaCl (pH 7.5)あるいは(pH 8.5)にスクロースを添加して浸透圧を調整し、リポソーム調製用バッファーのモル浸透圧(約35 mosmol/l)に合わせたものを用いた。
容器に融合バッファーとAChRα組換えAcNPVまたはTSHR組換えAcNPVの出芽ウイルス懸濁液を加え混合した後、MLV懸濁液を入れ、撹拌子により室温にて10分間撹拌した。この混合液1 mlに対して、最終濃度が、出芽ウイルス量はタンパク質量で10 μg、MLVはリン量で200 nmolとなるように、それぞれを加えた。混合液の全量が1 mlとなるように融合バッファー容量を調整した。
撹拌後の混合液には、組換えAcNPV出芽ウイルスとMLVとが融合した組換えプロテオリオソームが含まれている。この混合液を小型冷却遠心機で遠心(5,000rpm、20分間、4℃)し、遠心上清と組換えプロテオリポソームを含む遠心沈殿物に10倍に希釈したPBS(0.1×PBS、pH 7.2)を加え懸濁した。得られた遠心上清と得られた組換えリポソーム懸濁液は、SDS-PAGEと銀染色に供するまで4℃で保存した。
融合バッファーとして、10 mM CH3COOH-CH3COONa/10 mM NaCl (pH4.0)および10 mMTris-HCl/100 mM NaCl (pH 7.5)あるいは(pH 8.5)にスクロースを添加して浸透圧を調整し、リポソーム調製用バッファーのモル浸透圧(約35 mosmol/l)に合わせたものを用いた。
容器に融合バッファーとAChRα組換えAcNPVまたはTSHR組換えAcNPVの出芽ウイルス懸濁液を加え混合した後、MLV懸濁液を入れ、撹拌子により室温にて10分間撹拌した。この混合液1 mlに対して、最終濃度が、出芽ウイルス量はタンパク質量で10 μg、MLVはリン量で200 nmolとなるように、それぞれを加えた。混合液の全量が1 mlとなるように融合バッファー容量を調整した。
撹拌後の混合液には、組換えAcNPV出芽ウイルスとMLVとが融合した組換えプロテオリオソームが含まれている。この混合液を小型冷却遠心機で遠心(5,000rpm、20分間、4℃)し、遠心上清と組換えプロテオリポソームを含む遠心沈殿物に10倍に希釈したPBS(0.1×PBS、pH 7.2)を加え懸濁した。得られた遠心上清と得られた組換えリポソーム懸濁液は、SDS-PAGEと銀染色に供するまで4℃で保存した。
<組換えウイルス−MLV融合リポソームにおけるSDS-PAGE電気泳動と銀染色>
上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとMLVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>の操作手順に従って調製した。遠心分離後の上清および沈殿物を、上記<SDS-PAGE電気泳動>および<銀染色>により解析した。
上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとMLVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>の操作手順に従って調製した。遠心分離後の上清および沈殿物を、上記<SDS-PAGE電気泳動>および<銀染色>により解析した。
<ビオチン標識大きな一枚膜リポソーム(LUV)の調製>
リン脂質の混合物として、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:COATSOME MC-8181, 日本油脂製)/ジオレオイルホスファチジルセリン−ナトリウム(DOPS-Na:COATSOME MS-8181LS, 日本油脂製)/ビオチン−ホスファチジルエタノールアミン(18:1 Biotin-PE ) = 1:1:0.066 (リン脂質総量20.66 μmol)を用いた。18:1 Biotin-PEには、1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine-N-Biotinyl (Sodium Salt)(Avanti Polar Lipids社製)を用いた。
このリン脂質を用い、上記<リポソームの調製>に記載の方法に従って、LUVを調製した。
次いで、上記<リポソーム濃度の決定>の方法に基づきリン脂質濃度を測定した後、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
リン脂質の混合物として、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:COATSOME MC-8181, 日本油脂製)/ジオレオイルホスファチジルセリン−ナトリウム(DOPS-Na:COATSOME MS-8181LS, 日本油脂製)/ビオチン−ホスファチジルエタノールアミン(18:1 Biotin-PE ) = 1:1:0.066 (リン脂質総量20.66 μmol)を用いた。18:1 Biotin-PEには、1,2-Dioleoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine-N-Biotinyl (Sodium Salt)(Avanti Polar Lipids社製)を用いた。
このリン脂質を用い、上記<リポソームの調製>に記載の方法に従って、LUVを調製した。
次いで、上記<リポソーム濃度の決定>の方法に基づきリン脂質濃度を測定した後、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
<αブンガロトキシン結合測定系の開発1>
αブンガロトキシンは、アマガサヘビが持つタンパク性の毒であり、ニコチン性アセチルコリン受容体に特異的に作用するアンタゴニストである。我々は、アセチルコリン受容体に対して結合する物質モデルとして、αブンガロトキシンを用いた。
ビオチン標識リポソームあるいはPEG被覆ビオチン標識リポソームをPBS(pH7.2)で1.0 μg/mlとなるように希釈し、ストレプトアビジン・コート・マイクロプレート(Streptavidin Coated Microplates)(Thermo ELECTRON CORPORATION)に50μl/wellずつ入れ、4℃で一晩静置し、プレートに吸着させた。サンプルを除去し、吸着していないリポソームを除去するために、PBS で3回プレートを洗浄し後、次に、ブロッキングバッファー(1% ゼラチン, PBS)を350μl/well加え、37℃にて1時間静置してブロッキングを行った。その後、PBST[0.05% Triton X-100,PBS(pH7.2)] でプレートを3回洗浄し、PBSに溶かしたAlexa標識αブンガロトキシンを50μl/well 加え、37℃で30分間反応させた。PBSTで3回洗浄した後に、PBSで1000倍に希釈した抗Alexa-488抗体を50μl/well加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、PBSで10000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体を50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄した後に、100μl o-phenylenediamine/H2O2 solution を加え、37℃で20分間発色させて、2N H2SO4 50μlで発色を停止した。発色した各ウエルの値はマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。
αブンガロトキシンは、アマガサヘビが持つタンパク性の毒であり、ニコチン性アセチルコリン受容体に特異的に作用するアンタゴニストである。我々は、アセチルコリン受容体に対して結合する物質モデルとして、αブンガロトキシンを用いた。
ビオチン標識リポソームあるいはPEG被覆ビオチン標識リポソームをPBS(pH7.2)で1.0 μg/mlとなるように希釈し、ストレプトアビジン・コート・マイクロプレート(Streptavidin Coated Microplates)(Thermo ELECTRON CORPORATION)に50μl/wellずつ入れ、4℃で一晩静置し、プレートに吸着させた。サンプルを除去し、吸着していないリポソームを除去するために、PBS で3回プレートを洗浄し後、次に、ブロッキングバッファー(1% ゼラチン, PBS)を350μl/well加え、37℃にて1時間静置してブロッキングを行った。その後、PBST[0.05% Triton X-100,PBS(pH7.2)] でプレートを3回洗浄し、PBSに溶かしたAlexa標識αブンガロトキシンを50μl/well 加え、37℃で30分間反応させた。PBSTで3回洗浄した後に、PBSで1000倍に希釈した抗Alexa-488抗体を50μl/well加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、PBSで10000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体を50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄した後に、100μl o-phenylenediamine/H2O2 solution を加え、37℃で20分間発色させて、2N H2SO4 50μlで発色を停止した。発色した各ウエルの値はマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。
<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発1>
ビオチン標識あるいはPEG被覆ビオチン標識リポソームをPBS(pH7.2)で1.0 μg/mlとなるように希釈し、ストレプトアビジン・コート・マイクロプレート(Streptavidin Coated Microplates)(Thermo ELECTRON CORPORATION)に100μl/wellずつ入れ、4℃で一晩静置し、プレートに吸着させた。サンプルを除去し、吸着していないリポソームを除去するために、PBS で3回プレートを洗浄し後、次に、ブロッキングバッファー(1% ゼラチン, PBS)を350μl/well加え、37℃にて1時間静置してブロッキングを行った。その後、PBST[0.05% Triton X-100,PBS(pH7.2)] でプレートを3回洗浄し、PBSに溶かしたTSHを50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄した後に、PBSで10000倍に希釈した抗TSH抗体を50μl/well加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、PBSで10000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体を50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄した後に、100μl o-phenylenediamine/H2O2 solution を加え、37℃で20分間発色させて、2N H2SO4 50μlで発色を停止した。発色した各ウエルの値はマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。
ビオチン標識あるいはPEG被覆ビオチン標識リポソームをPBS(pH7.2)で1.0 μg/mlとなるように希釈し、ストレプトアビジン・コート・マイクロプレート(Streptavidin Coated Microplates)(Thermo ELECTRON CORPORATION)に100μl/wellずつ入れ、4℃で一晩静置し、プレートに吸着させた。サンプルを除去し、吸着していないリポソームを除去するために、PBS で3回プレートを洗浄し後、次に、ブロッキングバッファー(1% ゼラチン, PBS)を350μl/well加え、37℃にて1時間静置してブロッキングを行った。その後、PBST[0.05% Triton X-100,PBS(pH7.2)] でプレートを3回洗浄し、PBSに溶かしたTSHを50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄した後に、PBSで10000倍に希釈した抗TSH抗体を50μl/well加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、PBSで10000倍に希釈したHRP標識抗マウスIgG抗体を50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄した後に、100μl o-phenylenediamine/H2O2 solution を加え、37℃で20分間発色させて、2N H2SO4 50μlで発色を停止した。発色した各ウエルの値はマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。
<PEG被覆ビオチン標識大きな一枚膜リポソーム(LUV)の調製>
リポソームを構成するリン脂質の混合物として、特にことわらない限り、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:COATSOME MC-8181, 日本油脂製)/ジオレオイルホスファチジルセリン−ナトリウム(DOPS-Na:COATSOME MS-8181LS, 日本油脂製)/ビオチン−PEG(2000)−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-PEG(2000)Biotin ) = 1:1:0.066 (リン脂質総量20.66 μmol)を用いた。DSPE-PEG(2000)Biotinには、1,2-Disearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine-N-[Biotinyl(Polyethylene Glycol)2000] (Ammonium Salt) (Avanti Polar Lipids社製)を用いた。
このリン脂質を用い、上記<リポソームの調製>に記載の方法に準じて、LUVを調製した。
次いで、上記<リポソーム濃度の決定>の方法に基づきリン脂質濃度を測定した後、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
リポソームを構成するリン脂質の混合物として、特にことわらない限り、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:COATSOME MC-8181, 日本油脂製)/ジオレオイルホスファチジルセリン−ナトリウム(DOPS-Na:COATSOME MS-8181LS, 日本油脂製)/ビオチン−PEG(2000)−ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE-PEG(2000)Biotin ) = 1:1:0.066 (リン脂質総量20.66 μmol)を用いた。DSPE-PEG(2000)Biotinには、1,2-Disearoyl-sn-Glycero-3-Phosphoethanolamine-N-[Biotinyl(Polyethylene Glycol)2000] (Ammonium Salt) (Avanti Polar Lipids社製)を用いた。
このリン脂質を用い、上記<リポソームの調製>に記載の方法に準じて、LUVを調製した。
次いで、上記<リポソーム濃度の決定>の方法に基づきリン脂質濃度を測定した後、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>
融合バッファーとして、10 mM CH3COOH-CH3COONa/10mM NaCl(pH4.0)を用いた。
容器に融合バッファーと、上記<組換えプロテオリポソーム調製用組換えバキュロウイルスAcNPV出芽ウイルスの回収>で得られたAChRα組換えAcNPV、TSHR組換えAcNPVまたはCRHR1組換えAcNPVの出芽ウイルス懸濁液を加え混合した後、上記<PEG被覆ビオチン標識大きな一枚膜リポソーム(LUV)の調製>で得られたPEG被覆ビオチン標識LUV懸濁液を入れ、撹拌子により室温にて1分間撹拌し、60分間静置した。この混合液1 mlに対して、最終濃度が、出芽ウイルス量はタンパク質量で1 μg、LUVはリン量で100 nmolとなるように、それぞれを加えた。混合液の全量が1 mlとなるように融合バッファー容量を調整した。
静置後の混合液には、組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVとが融合した組換えプロテオリオソームが含まれている。それに1 M Tris-HClを加えてpHを7に調製した。得られた組換えリポソーム懸濁液は、免疫測定(ELISA)に供するまで4℃で保存した。組換えプロテオリポソーム融合物には、当初のウイルス量の80%が取り込まれた。
融合バッファーとして、10 mM CH3COOH-CH3COONa/10mM NaCl(pH4.0)を用いた。
容器に融合バッファーと、上記<組換えプロテオリポソーム調製用組換えバキュロウイルスAcNPV出芽ウイルスの回収>で得られたAChRα組換えAcNPV、TSHR組換えAcNPVまたはCRHR1組換えAcNPVの出芽ウイルス懸濁液を加え混合した後、上記<PEG被覆ビオチン標識大きな一枚膜リポソーム(LUV)の調製>で得られたPEG被覆ビオチン標識LUV懸濁液を入れ、撹拌子により室温にて1分間撹拌し、60分間静置した。この混合液1 mlに対して、最終濃度が、出芽ウイルス量はタンパク質量で1 μg、LUVはリン量で100 nmolとなるように、それぞれを加えた。混合液の全量が1 mlとなるように融合バッファー容量を調整した。
静置後の混合液には、組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVとが融合した組換えプロテオリオソームが含まれている。それに1 M Tris-HClを加えてpHを7に調製した。得られた組換えリポソーム懸濁液は、免疫測定(ELISA)に供するまで4℃で保存した。組換えプロテオリポソーム融合物には、当初のウイルス量の80%が取り込まれた。
<αブンガロトキシン結合測定系の開発2(PEGを使用した測定系)>
上記<αブンガロトキシン結合測定系の開発1>において、PEG被覆ビオチン標識リポソームに代えて、AChRα組換えプロテオリポソームを用い、同様の操作を行った。固相ブロック剤として、1%ゼラチンまたは3%ブロックエースを用いた。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い、上記AChRα組換えプロテオリポソームと同様の手順を行い、ウエルの発色を確認した。
上記<αブンガロトキシン結合測定系の開発1>において、PEG被覆ビオチン標識リポソームに代えて、AChRα組換えプロテオリポソームを用い、同様の操作を行った。固相ブロック剤として、1%ゼラチンまたは3%ブロックエースを用いた。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い、上記AChRα組換えプロテオリポソームと同様の手順を行い、ウエルの発色を確認した。
<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発2(PEGを使用した測定系)>
上記<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発1>において、PEG被覆ビオチン標識リポソームに代えて、TSHR組換えプロテオリポソームを用い、同様の操作を行った。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い、上記TSH組換えプロテオリポソームと同様の手順を行い、ウエルの発色を確認した。
上記<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発1>において、PEG被覆ビオチン標識リポソームに代えて、TSHR組換えプロテオリポソームを用い、同様の操作を行った。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い、上記TSH組換えプロテオリポソームと同様の手順を行い、ウエルの発色を確認した。
<αブンガロトキシン結合測定系の開発3(BtPEG量を変化させた測定系)>
組換えプロテオリポソームを調製する際に使用するPEG被覆ビオチン標識LUVを調製するときに、BtPEGの割合を変化させることにより、測定系に与える影響を調べた。具体的には、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.066, 1:1:0.25, 1:1:0.5の三種類の割合のものを用いた。BtPEGの割合を変えた以外は、上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>と同じ手続として、AChRα組換えプロテオリポソームを調製した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
BtPEG量の異なる3種類のAChRα組換えプロテオリポソームについて、上記<αブンガロトキシン結合測定系の開発2>と同じ方法で各ウエルの発色を測定した。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い(但し、BtPEG量は試験した組換えプロテオリポソームと同じとした)、ウエルの発色を確認した。
組換えプロテオリポソームを調製する際に使用するPEG被覆ビオチン標識LUVを調製するときに、BtPEGの割合を変化させることにより、測定系に与える影響を調べた。具体的には、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.066, 1:1:0.25, 1:1:0.5の三種類の割合のものを用いた。BtPEGの割合を変えた以外は、上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>と同じ手続として、AChRα組換えプロテオリポソームを調製した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
BtPEG量の異なる3種類のAChRα組換えプロテオリポソームについて、上記<αブンガロトキシン結合測定系の開発2>と同じ方法で各ウエルの発色を測定した。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い(但し、BtPEG量は試験した組換えプロテオリポソームと同じとした)、ウエルの発色を確認した。
<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発3(BtPEG量の影響を確認した測定系)>
組換えプロテオリポソームを調製する際に使用するPEG被覆ビオチン標識LUVを調製するときに、BtPEGの割合を変化させることにより、測定系に与える影響を調べた。具体的には、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.066, 1:1:0.25, 1:1:0.5 の三種類の割合のものを用いた。BtPEGの割合を変えた以外は、上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>と同じ手続として、TSHR組換えプロテオリポソームを調製した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
BtPEG量の異なる3種類のTSHR組換えプロテオリポソームについて、上記<TSH結合測定系の開発2>と同じ方法で各ウエルの発色を測定した。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い(但し、BtPEG量は試験した組換えプロテオリポソームと同じとした)、ウエルの発色を確認した。
組換えプロテオリポソームを調製する際に使用するPEG被覆ビオチン標識LUVを調製するときに、BtPEGの割合を変化させることにより、測定系に与える影響を調べた。具体的には、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.066, 1:1:0.25, 1:1:0.5 の三種類の割合のものを用いた。BtPEGの割合を変えた以外は、上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>と同じ手続として、TSHR組換えプロテオリポソームを調製した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
BtPEG量の異なる3種類のTSHR組換えプロテオリポソームについて、上記<TSH結合測定系の開発2>と同じ方法で各ウエルの発色を測定した。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い(但し、BtPEG量は試験した組換えプロテオリポソームと同じとした)、ウエルの発色を確認した。
<フリーリポソームの調製>
ベースライン(ノイズ)を低減させる目的でフリーリポソーム(SUV)を添加する系を試みた。そのために使用するフリーリポソームを構成するリン脂質の混合物として、組換えプロテオリポソームを構成するリポソームのリン脂質と同様の成分、すなわちジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:COATSOME MC-8181, 日本油脂製)/ジオレオイルホスファチジルセリン−ナトリウム(DOPS-Na:COATSOME MS-8181LS, 日本油脂製) = 1:1 を用いた。
SUVは、次の方法で調製した。リン脂質を溶かしたクロロホルムをロータリーエバポレーターで減圧還流により除去し、薄膜状になったリン脂質に10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)を1ml加え、ボルテックスを30秒行った。調製したリポソームを、プローブ型ソニケーターで約1分間の超音波処理と氷中における冷却を3,4回繰り返した。リポソーム濃度をリン脂質濃度で表すため、懸濁液に過酸化水素と硫酸により湿式分解した分解液中の無機リンをFiske-Subbarow法で定量した。調製したSUVは、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
ベースライン(ノイズ)を低減させる目的でフリーリポソーム(SUV)を添加する系を試みた。そのために使用するフリーリポソームを構成するリン脂質の混合物として、組換えプロテオリポソームを構成するリポソームのリン脂質と同様の成分、すなわちジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC:COATSOME MC-8181, 日本油脂製)/ジオレオイルホスファチジルセリン−ナトリウム(DOPS-Na:COATSOME MS-8181LS, 日本油脂製) = 1:1 を用いた。
SUVは、次の方法で調製した。リン脂質を溶かしたクロロホルムをロータリーエバポレーターで減圧還流により除去し、薄膜状になったリン脂質に10mM Tris-HCl/10mM NaCl(pH7.5)を1ml加え、ボルテックスを30秒行った。調製したリポソームを、プローブ型ソニケーターで約1分間の超音波処理と氷中における冷却を3,4回繰り返した。リポソーム濃度をリン脂質濃度で表すため、懸濁液に過酸化水素と硫酸により湿式分解した分解液中の無機リンをFiske-Subbarow法で定量した。調製したSUVは、アルゴンガスを充填し4℃で保存した。
<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発4(フリーリポソームを使用した測定系)>
上記<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発2>において、ブロッキングバッファーにてブロッキングを行った後、 PBST でプレートを3回洗浄した。その後、上記<フリーリポソーム>で調製したSUV(1mM、3mMまたは5mM)を加えて37℃にて1時間静置した後、PBSに溶かしたTSHを50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。その後は、<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発2>の操作手順に従い、各ウエルの発色値をマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い、上記TSH組換えプロテオリポソームと同様の手順を行い、ウエルの発色を確認した。
上記<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発2>において、ブロッキングバッファーにてブロッキングを行った後、 PBST でプレートを3回洗浄した。その後、上記<フリーリポソーム>で調製したSUV(1mM、3mMまたは5mM)を加えて37℃にて1時間静置した後、PBSに溶かしたTSHを50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。その後は、<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発2>の操作手順に従い、各ウエルの発色値をマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
コントロールとして、レセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームのみを用い、上記TSH組換えプロテオリポソームと同様の手順を行い、ウエルの発色を確認した。
<副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)結合測定系の開発>
組換えプロテオリポソームを調製する際に使用するPEG被覆ビオチン標識LUVを調製するときに、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.5の割合のものを用い、上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>と同じ手続として、CRHR1組換えプロテオリポソームを調製した。コントロールとして、同じ脂質組成のレセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームを用いた。
CHRH1組換えプロテオリポソームをPBS(pH7.2)で1.0 μg/mlとなるように希釈し、ストレプトアビジン・コート・マイクロプレート(Streptavidin Coated Microplates)(Thermo ELECTRON CORPORATION)に100μl/wellずつ入れ、37℃で1時間静置し、プレートに吸着させた。サンプルを除去し、吸着していない組換えプロテオリポソームを除去するために、PBS で3回プレートを洗浄した後、次に、ブロッキングバッファー(3% ブロックエース, PBS)を350μl/well加え、37℃にて1時間静置してブロッキングを行った。その後、PBST[0.05% Triton X-100,PBS(pH7.2)] でプレートを3回洗浄し、PBSに溶かした500 nM CRFを50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄した後に、PBSで200倍に希釈した抗CRF抗体(ヤギ)を50μl/well加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、PBSで2000, 5000, 10000倍に希釈したHRP標識抗ヤギIgG抗体を50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄した後に、100μl o-phenylenediamine/H2O2 solution を加え、37℃で20分間発色させて、2N H2SO4 50μlで発色を停止した。発色した各ウエルの値はマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。
組換えプロテオリポソームを調製する際に使用するPEG被覆ビオチン標識LUVを調製するときに、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.5の割合のものを用い、上記<組換えAcNPV出芽ウイルスとPEG被覆ビオチン標識LUVの融合による組換えプロテオリポソームの調製>と同じ手続として、CRHR1組換えプロテオリポソームを調製した。コントロールとして、同じ脂質組成のレセプターを発現していないPEG被覆ビオチン標識リポソームを用いた。
CHRH1組換えプロテオリポソームをPBS(pH7.2)で1.0 μg/mlとなるように希釈し、ストレプトアビジン・コート・マイクロプレート(Streptavidin Coated Microplates)(Thermo ELECTRON CORPORATION)に100μl/wellずつ入れ、37℃で1時間静置し、プレートに吸着させた。サンプルを除去し、吸着していない組換えプロテオリポソームを除去するために、PBS で3回プレートを洗浄した後、次に、ブロッキングバッファー(3% ブロックエース, PBS)を350μl/well加え、37℃にて1時間静置してブロッキングを行った。その後、PBST[0.05% Triton X-100,PBS(pH7.2)] でプレートを3回洗浄し、PBSに溶かした500 nM CRFを50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄した後に、PBSで200倍に希釈した抗CRF抗体(ヤギ)を50μl/well加え、37℃で1時間反応させた。PBSTで3回洗浄し、PBSで2000, 5000, 10000倍に希釈したHRP標識抗ヤギIgG抗体を50μl/well 加え、37℃で1時間反応させた。更にPBSTで3回洗浄した後に、100μl o-phenylenediamine/H2O2 solution を加え、37℃で20分間発色させて、2N H2SO4 50μlで発色を停止した。発色した各ウエルの値はマイクロプレートリーダーでA490を測定することで求めた。
試験結果
<野生型AcNPV−リポソーム膜融合条件の検討>
本発明者らは、BmNPVのBVを用いてウイルスとリポソームとの間の融合を試みた結果、BVとリポソームとが融合することを確認した。また、膜タンパク質であるGPIアンカー型膜結合酵素AchEがBV上にディスプレイされることを見出した。さらに、BVとリポソームとの融合を行った結果、AchEが再構成された組換えプロテオリポソームの作製に成功した。このバキュロウイルスを用いた組換えプロテオリポソームの作製過程は図2に示す通りである。
バキュロウイルスエンベロープに存在するgp64は、弱酸性のpHで細胞との融合を誘起することが報告されている(Blissard,G.W. and Wenz,J.R. (1992) Baculovirus gp64 envelope Glycoprotein is sufficient to mediate pH-dependent membrane fusion. J.Virol 66:6829-6835)。そこで、AcNPVのBVとリポソームの融合時のpHによって融合率に変化があるかを調べるために、PC/PS(1:1)の脂質組成のLUVを作製し、融合緩衝液のpHをpH3.0、pH4.0、pH4.5、pH5.0、pH6.5、pH7.5とした場合のBVとLUVとの融合速度を測定した。
結果を図4に示した。図より明らかなように、pH5.0以上では融合速度は低かったが、pH4.0以下では非常に高い融合速度が示され、pHが4程度の比較的穏やかな条件下でウイルスと効率良く融合することが判った。これは、pH5付近を転移点として融合率の変化が起こっており、gp64を介してリポソームとの融合が誘起されたと考えられた。
<野生型AcNPV−リポソーム膜融合条件の検討>
本発明者らは、BmNPVのBVを用いてウイルスとリポソームとの間の融合を試みた結果、BVとリポソームとが融合することを確認した。また、膜タンパク質であるGPIアンカー型膜結合酵素AchEがBV上にディスプレイされることを見出した。さらに、BVとリポソームとの融合を行った結果、AchEが再構成された組換えプロテオリポソームの作製に成功した。このバキュロウイルスを用いた組換えプロテオリポソームの作製過程は図2に示す通りである。
バキュロウイルスエンベロープに存在するgp64は、弱酸性のpHで細胞との融合を誘起することが報告されている(Blissard,G.W. and Wenz,J.R. (1992) Baculovirus gp64 envelope Glycoprotein is sufficient to mediate pH-dependent membrane fusion. J.Virol 66:6829-6835)。そこで、AcNPVのBVとリポソームの融合時のpHによって融合率に変化があるかを調べるために、PC/PS(1:1)の脂質組成のLUVを作製し、融合緩衝液のpHをpH3.0、pH4.0、pH4.5、pH5.0、pH6.5、pH7.5とした場合のBVとLUVとの融合速度を測定した。
結果を図4に示した。図より明らかなように、pH5.0以上では融合速度は低かったが、pH4.0以下では非常に高い融合速度が示され、pHが4程度の比較的穏やかな条件下でウイルスと効率良く融合することが判った。これは、pH5付近を転移点として融合率の変化が起こっており、gp64を介してリポソームとの融合が誘起されたと考えられた。
<組換えAcNPV感染Sf9細胞発現膜タンパク質の解析>
ヒトAChRはα2βγδの5個のサブユニットから成る五量体で、それらが環状に配置してカチオン選択性のイオンチャネルを形成している、分子量約290kDaの糖タンパク質である。図5(Unwin, N. (2005) Refined structure of the nicotinic acetylcholine receptor at 4 angstrom resolution. J. Mol. Biol. 346: 967-989.)に示すように、各サブユニットは1サブユニットあたり4本のαヘリックスが細胞膜を貫通している。これらのサブユニットの中のαサブユニットは分子量約50kDaであり、このαサブユニットが抗AChR抗体との結合部位であると考えられている。
図6(Ando, T., Latif, R., Daniel, S., Eguchi, K., and Davies, T. F. (2004) Dissecting linear and conformational epitopes on the native thyrotropin receptor. Endocrinology 145: 5185-5193.)には、ヒトTSHRの立体構造を膜断面から見たときの模式図を示した。ヒトTSHRはシングルポリペプチドの7回膜貫通タンパク質として合成された後、N末端が細胞外ドメインであるαサブユニット30と膜貫通及び細胞質ドメインであるβサブユニット40の2個のサブユニットとの間の開裂領域50で開裂されレセプターを形成する。分子量は約87kDaである。αサブユニット30に存在するロイシンに富んだ繰返し構造(leucine-rich repeats)60が抗TSHR抗体との反応部位ではないかと考えられている。
ヒトCRHR1は、刺激性三量体Gタンパク質に共役する、7回膜貫通型の受容体である。N末端側41−105残基にホルモン受容体ドメインが存在し、それ以降に7回膜貫通領域が続く。ホルモン受容体ドメインは、同じCorticotropin releasing hormone receptorファミリーであるCRHR2のホルモン受容体ドメインと相同で、第1細胞外ドメイン(ECD1)に相当する。CRHR2のECD1構造は、図7(Grace, C. R., Perrin, M. H., DiGruccio, M. R., Miller, C. L., Rivier, J. E., Vale, W. W., Riek, R. (2004) NMR structure and peptide hormone binding site of the first extracellular domain of a type B1 G protein-coupled receptor. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:12836-12841.)に示される。
ヒトAChRはα2βγδの5個のサブユニットから成る五量体で、それらが環状に配置してカチオン選択性のイオンチャネルを形成している、分子量約290kDaの糖タンパク質である。図5(Unwin, N. (2005) Refined structure of the nicotinic acetylcholine receptor at 4 angstrom resolution. J. Mol. Biol. 346: 967-989.)に示すように、各サブユニットは1サブユニットあたり4本のαヘリックスが細胞膜を貫通している。これらのサブユニットの中のαサブユニットは分子量約50kDaであり、このαサブユニットが抗AChR抗体との結合部位であると考えられている。
図6(Ando, T., Latif, R., Daniel, S., Eguchi, K., and Davies, T. F. (2004) Dissecting linear and conformational epitopes on the native thyrotropin receptor. Endocrinology 145: 5185-5193.)には、ヒトTSHRの立体構造を膜断面から見たときの模式図を示した。ヒトTSHRはシングルポリペプチドの7回膜貫通タンパク質として合成された後、N末端が細胞外ドメインであるαサブユニット30と膜貫通及び細胞質ドメインであるβサブユニット40の2個のサブユニットとの間の開裂領域50で開裂されレセプターを形成する。分子量は約87kDaである。αサブユニット30に存在するロイシンに富んだ繰返し構造(leucine-rich repeats)60が抗TSHR抗体との反応部位ではないかと考えられている。
ヒトCRHR1は、刺激性三量体Gタンパク質に共役する、7回膜貫通型の受容体である。N末端側41−105残基にホルモン受容体ドメインが存在し、それ以降に7回膜貫通領域が続く。ホルモン受容体ドメインは、同じCorticotropin releasing hormone receptorファミリーであるCRHR2のホルモン受容体ドメインと相同で、第1細胞外ドメイン(ECD1)に相当する。CRHR2のECD1構造は、図7(Grace, C. R., Perrin, M. H., DiGruccio, M. R., Miller, C. L., Rivier, J. E., Vale, W. W., Riek, R. (2004) NMR structure and peptide hormone binding site of the first extracellular domain of a type B1 G protein-coupled receptor. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 101:12836-12841.)に示される。
<AChRα組換えAcNPV感染細胞及び出芽ウイルスエンベロープの膜タンパク質分析>
AChRα組換えAcNPVを感染させたSf9細胞の細胞培養液から回収した細胞画分及びBV画分において、SDS-PAGE後に銀染色及び抗His-Tag抗体によるウエスタンブロットを行った。細胞にAChRαが発現され、さらに出芽ウイルスエンベロープ上にもAChRαがディスプレイされていれば、AChRαに付加された6×His-Tagと特異的に結合する抗His-Tag抗体を用いたウエスタンブロットによって、AChRが検出される。
銀染色の結果、図8に示すように、AChRα組換えBV画分において、野生型BV画分には見られないバンドが検出され、それはAChRαの分子量約50kDaに相当する位置であった。従って、出芽ウイルスエンベロープ上にAChRαがディスプレイされたことが判った。
さらに、ウエスタンブロットを行った結果、図9に示すように、BV画分においてAChRαの分子量に相当する位置にバンドが検出され、AChRαが出芽ウイルスエンベロープ上にディスプレイされることが判明した。細胞画分において、AChRαの分子量約に相当する位置にバンドが検出されたが、それ以外の場所にもマルチバンドとして検出された。これは、細胞膜上に発現したAChRαが細胞デブリと凝集したものや断片化したものが泳動されたためと考えられる。これに対して、BV画分ではAChRαの分子量約に相当する位置にシングルバンドとして検出され、出芽ウイルスエンベロープ上にAChRが断片化されたものはなく、全長を保持したAChRαのみがディスプレイされていた。
AChRα組換えAcNPVを感染させたSf9細胞の細胞培養液から回収した細胞画分及びBV画分において、SDS-PAGE後に銀染色及び抗His-Tag抗体によるウエスタンブロットを行った。細胞にAChRαが発現され、さらに出芽ウイルスエンベロープ上にもAChRαがディスプレイされていれば、AChRαに付加された6×His-Tagと特異的に結合する抗His-Tag抗体を用いたウエスタンブロットによって、AChRが検出される。
銀染色の結果、図8に示すように、AChRα組換えBV画分において、野生型BV画分には見られないバンドが検出され、それはAChRαの分子量約50kDaに相当する位置であった。従って、出芽ウイルスエンベロープ上にAChRαがディスプレイされたことが判った。
さらに、ウエスタンブロットを行った結果、図9に示すように、BV画分においてAChRαの分子量に相当する位置にバンドが検出され、AChRαが出芽ウイルスエンベロープ上にディスプレイされることが判明した。細胞画分において、AChRαの分子量約に相当する位置にバンドが検出されたが、それ以外の場所にもマルチバンドとして検出された。これは、細胞膜上に発現したAChRαが細胞デブリと凝集したものや断片化したものが泳動されたためと考えられる。これに対して、BV画分ではAChRαの分子量約に相当する位置にシングルバンドとして検出され、出芽ウイルスエンベロープ上にAChRが断片化されたものはなく、全長を保持したAChRαのみがディスプレイされていた。
<AChRα組換えウイルス−MLV融合リポソームにおける銀染色>
AChRα組換えAcNPVのBVとMLVとを融合させたリポソームを用いて銀染色を行った結果、図10に示すように、リポソーム沈殿画分においてAChRαの分子量に相当する位置に、野生型AcNPVのBV画分には見られないバンドが観察された。融合時に行った遠心分離操作では、BV粒子単体は沈殿しないので、AChRαをディスプレイしているBVがリポソームと融合したことが判った。また、融合用緩衝液がpH4.0の場合とpH7.5の場合の上清画分において、pH4.0の沈殿画分およびpH7.5の上清画分はタンパク質が濃く検出されたのに対してpH4.0の上清画分およびpH7.5の沈殿画分はタンパク質が薄く検出されたため、pH4.0におけるリポソーム沈殿画分にタンパク質成分のほとんどが取り込まれていることが判った。これらの結果より、野生型AcNPV−リポソーム膜融合条件の検討で示された結果と同様に、組換え膜タンパク質でもこの融合条件が最も適切であると見なされた。
AChRα組換えAcNPVのBVとMLVとを融合させたリポソームを用いて銀染色を行った結果、図10に示すように、リポソーム沈殿画分においてAChRαの分子量に相当する位置に、野生型AcNPVのBV画分には見られないバンドが観察された。融合時に行った遠心分離操作では、BV粒子単体は沈殿しないので、AChRαをディスプレイしているBVがリポソームと融合したことが判った。また、融合用緩衝液がpH4.0の場合とpH7.5の場合の上清画分において、pH4.0の沈殿画分およびpH7.5の上清画分はタンパク質が濃く検出されたのに対してpH4.0の上清画分およびpH7.5の沈殿画分はタンパク質が薄く検出されたため、pH4.0におけるリポソーム沈殿画分にタンパク質成分のほとんどが取り込まれていることが判った。これらの結果より、野生型AcNPV−リポソーム膜融合条件の検討で示された結果と同様に、組換え膜タンパク質でもこの融合条件が最も適切であると見なされた。
<TSHR組換えAcNPV感染細胞及び出芽ウイルスエンベロープの膜タンパク質分析>
TSHR組換えAcNPVを感染させたSf9細胞の細胞培養液から回収した細胞画分及びBV画分において、SDS-PAGE後にBio-Safe Coomassie染色及び抗His-Tag抗体によるウエスタンブロットを行った。細胞にTSHRが発現され、さらに出芽ウイルスエンベロープ上にもTSHRがディスプレイされていれば、Bio-Safe Coomassie染色及びTSHRに付加された6×His-Tagと特異的に結合する抗His-Tag抗体を用いたウエスタンブロットによって、TSHRが検出される。
Bio-Safe Coomassie染色の結果、図11に示すように、野生型BV画分において、gp64とウイルスキャプシドタンパク質であるvp39のバンドが検出された。一方、TSHR組換えBV画分において、gp64とvp39のバンド以外にgp64よりも高い分子量の位置にバンドが検出された。これらのデータより、出芽ウイルスエンベロープ上にTSHRがディスプレイされたことが判った。
TSHR組換えAcNPVを感染させたSf9細胞の細胞培養液から回収した細胞画分及びBV画分において、SDS-PAGE後にBio-Safe Coomassie染色及び抗His-Tag抗体によるウエスタンブロットを行った。細胞にTSHRが発現され、さらに出芽ウイルスエンベロープ上にもTSHRがディスプレイされていれば、Bio-Safe Coomassie染色及びTSHRに付加された6×His-Tagと特異的に結合する抗His-Tag抗体を用いたウエスタンブロットによって、TSHRが検出される。
Bio-Safe Coomassie染色の結果、図11に示すように、野生型BV画分において、gp64とウイルスキャプシドタンパク質であるvp39のバンドが検出された。一方、TSHR組換えBV画分において、gp64とvp39のバンド以外にgp64よりも高い分子量の位置にバンドが検出された。これらのデータより、出芽ウイルスエンベロープ上にTSHRがディスプレイされたことが判った。
さらに、ウエスタンブロットを行った結果、図12に示すように、TSHR組換えBV画分においてTSHRの分子量約87kDaに相当する位置にバンドが検出され、TSHRが出芽ウイルスエンベロープ上にディスプレイされることが判明した。一方、細胞画分において、TSHRの分子量より高い位置にバンドが検出された。この理由として、細胞画分では細胞膜上に発現したTSHRが細胞膜等の細胞デブリと凝集を起こし、電気泳動を行った際、アクリルアミド濃度が高い分離用ゲル、すなわち孔が小さいゲルを移動し難かったためと考えた。これに対して、BV画分では細胞デブリを含んでいないTSHRがBV上にディスプレイされたためと考えた。ヒトTSHRは甲状腺細胞膜上に発現された後、2個のサブユニットに開裂するが、異種細胞において発現させた場合、開裂は起こらず単量体のままであることが知られており、上記の結果と一致する。
<TSHR組換えウイルス−MLV融合リポソームにおける銀染色>
TSHR組換えAcNPVのBVとMLVとを融合させたリポソームを用いて銀染色を行った結果、図13に示すように、リポソーム沈殿画分においてTSHRの分子量に相当する位置に、野生型AcNPVのBV画分には見られないバンドが観察された。融合時に行った遠心分離操作では、BV粒子単体は沈殿しないので、TSHRをディスプレイしているBVがリポソームと融合したことが判った。また、融合用緩衝液がpH4.0の場合とpH8.5の場合の上清画分において、pH4.0の沈殿画分およびpH8.5の上清画分はタンパク質が濃く検出されたのに対してpH4.0の上清画分およびpH8.5の沈殿画分はタンパク質が薄く検出されたため、pH4.0におけるリポソーム沈殿画分にタンパク質成分のほとんどが取り込まれていることが判った。これらの結果より、野生型AcNPV−リポソーム膜融合条件の検討で示された結果と同様に、組換え膜タンパク質でもこの融合条件が最も適切であると見なされた。
TSHR組換えAcNPVのBVとMLVとを融合させたリポソームを用いて銀染色を行った結果、図13に示すように、リポソーム沈殿画分においてTSHRの分子量に相当する位置に、野生型AcNPVのBV画分には見られないバンドが観察された。融合時に行った遠心分離操作では、BV粒子単体は沈殿しないので、TSHRをディスプレイしているBVがリポソームと融合したことが判った。また、融合用緩衝液がpH4.0の場合とpH8.5の場合の上清画分において、pH4.0の沈殿画分およびpH8.5の上清画分はタンパク質が濃く検出されたのに対してpH4.0の上清画分およびpH8.5の沈殿画分はタンパク質が薄く検出されたため、pH4.0におけるリポソーム沈殿画分にタンパク質成分のほとんどが取り込まれていることが判った。これらの結果より、野生型AcNPV−リポソーム膜融合条件の検討で示された結果と同様に、組換え膜タンパク質でもこの融合条件が最も適切であると見なされた。
<CRHR1組換えAcNPV感染細胞及び出芽ウイルスエンベロープの膜タンパク質分析>
CRHR1組換えAcNPVを感染させたSf9細胞の細胞培養液から回収した細胞画分及びBV画分において、抗CRHR1抗体によるウエスタンブロットを行った。細胞にCRHR1が発現され、さらに出芽ウイルスエンベロープ上にもCRHR1がディスプレイされていれば、抗CRHR1抗体を用いたウエスタンブロットによって、CRHR1が検出される。
ウエスタンブロットを行った結果、図14に示すように、BV画分においてCRHR1の分子量に相当する位置にバンドが検出され、CRHR1が出芽ウイルスエンベロープ上にディスプレイされることが判明した。細胞画分において、CRHR1の分子量約に相当する位置にバンドが検出されたが、それ以外の場所にもマルチバンドとして検出された。これは、細胞膜上に発現したCRHR1が細胞デブリと凝集したものや断片化したものが泳動されたためと考えられる。これに対して、BV画分ではCRHR1の分子量約に相当する位置に、主にシングルバンドとして検出され、出芽ウイルスエンベロープ上にCRHR1が断片化されたものはなく、全長を保持したCRHR1がディスプレイされていた。
CRHR1組換えAcNPVを感染させたSf9細胞の細胞培養液から回収した細胞画分及びBV画分において、抗CRHR1抗体によるウエスタンブロットを行った。細胞にCRHR1が発現され、さらに出芽ウイルスエンベロープ上にもCRHR1がディスプレイされていれば、抗CRHR1抗体を用いたウエスタンブロットによって、CRHR1が検出される。
ウエスタンブロットを行った結果、図14に示すように、BV画分においてCRHR1の分子量に相当する位置にバンドが検出され、CRHR1が出芽ウイルスエンベロープ上にディスプレイされることが判明した。細胞画分において、CRHR1の分子量約に相当する位置にバンドが検出されたが、それ以外の場所にもマルチバンドとして検出された。これは、細胞膜上に発現したCRHR1が細胞デブリと凝集したものや断片化したものが泳動されたためと考えられる。これに対して、BV画分ではCRHR1の分子量約に相当する位置に、主にシングルバンドとして検出され、出芽ウイルスエンベロープ上にCRHR1が断片化されたものはなく、全長を保持したCRHR1がディスプレイされていた。
<αブンガロトキシン結合測定系の開発>
アセチルコリン受容体への特異的結合物質を測定するシステムとして、αブンガロトキシンを用いた測定系を開発した。
図15には、アセチルコリン受容体が存在しない状態におけるビオチン標識リポソーム(LUV)またはPEG被覆ビオチン標識リポソーム(PEG-LUV)を用いて、発色を測定した結果を示した。但し、固相ブロック剤として、1%ゼラチンを用いた。グラフ1は、αブンガロトキシン、抗Alexa抗体(一次抗体)、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ2は、αブンガロトキシン、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ3は、一次抗体及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ4は、二次抗体を作用させたときの結果をそれぞれ示す。
図に示すように、PEG-LUVは、LUVに比べると、非特異的吸着に基づく発色が大幅に小さくなった。こうして、一次抗体または二次抗体のリポソームへの非特異的な吸着は、脂質膜ブロック剤としてPEGを用いることにより、制御できることがわかった。
アセチルコリン受容体への特異的結合物質を測定するシステムとして、αブンガロトキシンを用いた測定系を開発した。
図15には、アセチルコリン受容体が存在しない状態におけるビオチン標識リポソーム(LUV)またはPEG被覆ビオチン標識リポソーム(PEG-LUV)を用いて、発色を測定した結果を示した。但し、固相ブロック剤として、1%ゼラチンを用いた。グラフ1は、αブンガロトキシン、抗Alexa抗体(一次抗体)、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ2は、αブンガロトキシン、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ3は、一次抗体及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ4は、二次抗体を作用させたときの結果をそれぞれ示す。
図に示すように、PEG-LUVは、LUVに比べると、非特異的吸着に基づく発色が大幅に小さくなった。こうして、一次抗体または二次抗体のリポソームへの非特異的な吸着は、脂質膜ブロック剤としてPEGを用いることにより、制御できることがわかった。
図16には、固相ブロック剤として、1%ゼラチンまたは3%ブロックエースを用いたときの測定結果を示した。データは、プレートに対して、AChRα組換えプロテオリポソーム(AChR-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)を用い、αブンガロトキシン(0.5μM)を作用させて発色させたものを測定した。AChRα組換えプロテオリポソームを用いた場合には、固相ブロック剤がゼラチン及びブロックエースのいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したαブンガロトキシンを測定できることがわかった。また、ゼラチン及びブロックエースのいずれも一次抗体・二次抗体の固相への非特異的な吸着を抑制したが、ブロックエースの効果の方が高いことがわかった。
図17には、BtPEGの量を変化させたときに、AChRα組換えプロテオリポソーム(AChR-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)を用い、αブンガロトキシン(0.5μM)を作用させて発色させたときの発色結果を示した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
AChRα組換えプロテオリポソームを用いた場合には、BtPEGの割合がいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したαブンガロトキシンを測定できることがわかった。また、BtPEGの割合が高くなるにつれて、バックグラウンド値が低くなり、S/N比が向上することが分かった。
AChRα組換えプロテオリポソームを用いた場合には、BtPEGの割合がいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したαブンガロトキシンを測定できることがわかった。また、BtPEGの割合が高くなるにつれて、バックグラウンド値が低くなり、S/N比が向上することが分かった。
<甲状腺刺激ホルモン(TSH)結合測定系の開発>
甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体への特異的結合物質を測定するシステムとして、TSHを用いた測定系を開発した。
図18には、TSHRが存在しない状態におけるビオチン標識リポソーム(Bt-LUV)またはPEG被覆ビオチン標識リポソーム(BtPEG-LUV)を用いて、発色を測定した結果を示した。但し、固相ブロック剤として、1%ゼラチンを用いた。グラフ1は、TSH、抗TSH抗体(一次抗体)、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ2は、TSH、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ3は、一次抗体及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ4は、二次抗体を作用させたときの結果をそれぞれ示す。
図に示すように、BtPEG-LUVは、Bt-LUVに比べると、非特異的吸着に基づく発色が大幅に小さくなった。こうして、一次抗体または二次抗体のリポソームへの非特異的な吸着は、脂質膜ブロック剤としてPEGを用いることにより、制御できることがわかった。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)受容体への特異的結合物質を測定するシステムとして、TSHを用いた測定系を開発した。
図18には、TSHRが存在しない状態におけるビオチン標識リポソーム(Bt-LUV)またはPEG被覆ビオチン標識リポソーム(BtPEG-LUV)を用いて、発色を測定した結果を示した。但し、固相ブロック剤として、1%ゼラチンを用いた。グラフ1は、TSH、抗TSH抗体(一次抗体)、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ2は、TSH、及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ3は、一次抗体及び二次抗体を作用させたときの結果、グラフ4は、二次抗体を作用させたときの結果をそれぞれ示す。
図に示すように、BtPEG-LUVは、Bt-LUVに比べると、非特異的吸着に基づく発色が大幅に小さくなった。こうして、一次抗体または二次抗体のリポソームへの非特異的な吸着は、脂質膜ブロック剤としてPEGを用いることにより、制御できることがわかった。
図19には、固相ブロック剤として、1%ゼラチンまたは3%ブロックエースを用いたときの測定結果を示した。データは、プレートに対して、TSHR組換えプロテオリポソーム(TSHR-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)にTSH(50nM)を作用させて発色させたものを測定した。TSHR組換えプロテオリポソームを用いた場合には、ゼラチン及びブロックエースのいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したTSHを測定できることがわかった。また、ゼラチン及びブロックエースのいずれも一次抗体・二次抗体の固相への非特異的な吸着を抑制したが、ブロックエースの効果の方が高いことがわかった。
図20には、BtPEGの量を変化させたときに、TSHR組換えプロテオリポソーム(TSHR-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)にTSH(50nM)を作用させて発色させたときの発色結果を示した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。
TSHR組換えプロテオリポソームを用いた場合には、BtPEGの割合がいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したTSHを測定できることがわかった。また、BtPEGの割合が高くなるにつれて、シグナル(TSHR-BV融合リポソーム)の値が高くなり、バックグラウンド値(リポソームのみ)は大きく変わらないことから、S/N比が向上することが分かった。
TSHR組換えプロテオリポソームを用いた場合には、BtPEGの割合がいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したTSHを測定できることがわかった。また、BtPEGの割合が高くなるにつれて、シグナル(TSHR-BV融合リポソーム)の値が高くなり、バックグラウンド値(リポソームのみ)は大きく変わらないことから、S/N比が向上することが分かった。
図21には、フリーリポソームを使用した測定系において、TSHR組換えプロテオリポソーム(TSHR-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)にTSH(50nM)を作用させて発色させたときの発色結果を示した。組換えリポソームを製造するときのリポソームのリン脂質の構成として、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.5 のものを用いたときのデータを示した。固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。グラフ1はフリーリポソーム量が1mM(SUV/プロテオリポソーム=10)のときを、グラフ2はフリーリポソーム量が3mM(SUV/プロテオリポソーム=30)のときを、グラフ3はフリーリポソーム量が5mM(SUV/プロテオリポソーム=50)のときを、それぞれ示す。
フリーリポソーム量を増加させるにつれて、バックグラウンド値(リポソームのみ)が低下した。特に、フリーリポソームを50倍量用いたときには、ほぼゼロとなった。こうして、フリーリポソーム量を増加させると、TSHR組換えプロテオリポソームを用いた場合には、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したTSHを測定できることがわかった。また、バックグラウンド値(リポソームのみ)を効果的に低下させ、S/N比が向上することが分かった。
フリーリポソーム量を増加させるにつれて、バックグラウンド値(リポソームのみ)が低下した。特に、フリーリポソームを50倍量用いたときには、ほぼゼロとなった。こうして、フリーリポソーム量を増加させると、TSHR組換えプロテオリポソームを用いた場合には、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したTSHを測定できることがわかった。また、バックグラウンド値(リポソームのみ)を効果的に低下させ、S/N比が向上することが分かった。
<副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)結合測定系の開発>
副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)受容体(CRHR1)への特異的結合物質を測定するシステムとして、CRFを用いた測定系を開発した。
図22には、HRP標識抗ヤギIgG抗体(二次抗体)の希釈率を変化させたときに、CRHR1組換えプロテオリポソーム(CHRH1-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)にCRF(500nM)を作用させて発色させたときの発色結果を示した。組換えリポソームを製造するときのリポソームのリン脂質の構成として、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.5 のものを用い、固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。グラフ1は二次抗体の希釈率が2000倍のときを、グラフ2は二次抗体の希釈率が5000倍のときを、グラフ3は二次抗体の希釈率が10000倍のときを、それぞれ示す。
CRHR1組換えプロテオリポソームを用いた場合には、二次抗体の希釈率がいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したCRFを測定できることがわかった。また、二次抗体の希釈率が高くなるにつれて、シグナル(CRHR1-BV融合リポソーム)の値が低くなるが、バックグラウンド値(リポソームのみ)の値がより低下するため、S/N比が向上することが分かった。
副腎皮質刺激ホルモン放出因子(CRF)受容体(CRHR1)への特異的結合物質を測定するシステムとして、CRFを用いた測定系を開発した。
図22には、HRP標識抗ヤギIgG抗体(二次抗体)の希釈率を変化させたときに、CRHR1組換えプロテオリポソーム(CHRH1-BV融合リポソーム)、またはレセプターを含まないPEG被覆ビオチン標識リポソーム(リポソームのみ)にCRF(500nM)を作用させて発色させたときの発色結果を示した。組換えリポソームを製造するときのリポソームのリン脂質の構成として、DOPC/DOPS-Na/DSPE-PEG(2000)Biotin = 1:1:0.5 のものを用い、固相ブロック剤として、3%ブロックエースを用いた。グラフ1は二次抗体の希釈率が2000倍のときを、グラフ2は二次抗体の希釈率が5000倍のときを、グラフ3は二次抗体の希釈率が10000倍のときを、それぞれ示す。
CRHR1組換えプロテオリポソームを用いた場合には、二次抗体の希釈率がいずれであっても、リポソームのみの場合よりも発色値が高いことから、レセプターに結合したCRFを測定できることがわかった。また、二次抗体の希釈率が高くなるにつれて、シグナル(CRHR1-BV融合リポソーム)の値が低くなるが、バックグラウンド値(リポソームのみ)の値がより低下するため、S/N比が向上することが分かった。
このように本実施形態によれば、放射能を用いることなく、膜受容体に特異的に結合するリガンド及びリガンド様物質(例えば、膜受容体に結合するアゴニスト、アンタゴニストなど)の有無を定性的・定量的に評価可能な物質測定用組換えプロテオリポソームを提供することができた。このプロテオリポソームを用いることにより、容易にELISAプレート及びELISAキットを調製することができる。このELISAプレートは、リガンド及びリガンド様物質を定性的・定量的に測定できる。
Claims (15)
- 膜受容体を発現した組換えバキュロウイルス出芽ウイルスとリポソームとを融合させて製造した組換えプロテオリポソームを固相表面に固定した状態で前記膜受容体に特異的に結合する受容体特異的結合物質を前記膜受容体に結合させた後、この受容体特異的結合物質に対する抗体を作用させて、前記受容体特異的結合物質を測定する受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記膜受容体が、膜貫通型であることを特徴とする請求項1に記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記リポソームが、一枚膜リポソームまたは多重層リポソームであることを特徴とする請求項1または2に記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記リポソームを構成するリン脂質には、リポソーム表面を覆うことで前記受容体特異的結合物質または前記抗体が前記組換えプロテオリポソームに対して非特異的な吸着を行うことを抑制する脂質膜ブロック剤が含有されていると共に、
前記組換えプロテオリポソームと前記受容体特異的結合物質とを接触させる前に、前記固相表面に対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制する固相ブロック剤を用いて前記固相表面をブロックする固相ブロック工程を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の受容体特異的結合物質測定方法。 - 前記脂質膜ブロック剤が、前記リン脂質に共有結合したポリエチレングリコールであることを特徴とする請求項4に記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記ポリエチレングリコールには、ビオチンが結合されており、ポリエチレングリコール−ビオチンであることを特徴とする請求項5に記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記ポリエチレングリコール−ビオチンのモル比率は、前記リポソームを構成するリン脂質の全量に対して、20%以下であることを特徴とする請求項6に記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記固相ブロック剤が、水溶性タンパク質であることを特徴とする請求項4〜7のいずれか一つに記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記水溶性タンパク質が、ゼラチン、ブロックエース(雪印乳業製)、血清アルブミン、スキムミルクからなる群から選択される少なくとも一つのものであることを特徴とする請求項8に記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 前記固相ブロック工程の後に、前記組換えプロテオリポソームと前記受容体特異的結合物質を含みうるサンプルとを接触させるサンプル添加工程を経た後に、前記組換えプロテオリポソームに対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制するフリーリポソームを添加するリポソーム添加工程を含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の受容体特異的結合物質測定方法。
- 請求項1〜10のいずれか一つに記載の受容体特異的結合物質測定方法に用いられる受容体特異的結合物質測定用プレートであって、
前記組換えプロテオリポソームを構成するリポソームのリン脂質には、前記脂質膜ブロック剤が含有されていると共に、この組換えプロテオリポソームが、前記プレート表面に固定化されていることを特徴とする受容体特異的結合物質測定用プレート。 - 前記組換えプロテオリポソームは、前記脂質膜ブロック剤を介して、前記プレート表面に固定化されていることを特徴とする請求項11に記載の受容体特異的結合物質測定用プレート。
- 前記組換えプロテオリポソームは、前記脂質膜ブロック剤のビオチンを介して、前記プレート表面にあるアビジンと結合して固定化されていることを特徴とする請求項11に記載の受容体特異的結合物質測定用プレート。
- 請求項11〜13のいずれか一つに記載の受容体特異的結合物質測定用プレートと、受容体特異的結合物質を含みうる試料を希釈する希釈用緩衝液と、洗浄用緩衝液と、前記受容体特異的結合物質を認識すると共に標識された二次抗体とを備えたことを特徴とする受容体特異的結合物質測定用キット。
- 前記受容体特異的結合物質測定用キットにおいて、前記組換えプロテオリポソームに対する前記受容体特異的結合物質または前記抗体の非特異的な吸着を抑制するフリーリポソームを備えることを特徴とする請求項14に記載の受容体特異的結合物質測定用キット。
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JP2009030168A JP2009216704A (ja) | 2008-02-13 | 2009-02-12 | 受容体特異的結合物質測定方法 |
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JP2008031921 | 2008-02-13 | ||
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2020130053A (ja) * | 2019-02-20 | 2020-08-31 | 日本電信電話株式会社 | 細胞接着基板及びその製造方法 |
CN113945653A (zh) * | 2021-09-27 | 2022-01-18 | 深圳职业技术学院 | 一种芯片式活体固相微萃取装置系统及其用于纳米药物药动学精准分析的方法 |
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2009
- 2009-02-12 JP JP2009030168A patent/JP2009216704A/ja active Pending
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JP7249579B2 (ja) | 2019-02-20 | 2023-03-31 | 日本電信電話株式会社 | 細胞接着基板及びその製造方法 |
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