JP7249579B2 - 細胞接着基板及びその製造方法 - Google Patents

細胞接着基板及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7249579B2
JP7249579B2 JP2019028233A JP2019028233A JP7249579B2 JP 7249579 B2 JP7249579 B2 JP 7249579B2 JP 2019028233 A JP2019028233 A JP 2019028233A JP 2019028233 A JP2019028233 A JP 2019028233A JP 7249579 B2 JP7249579 B2 JP 7249579B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
self
assembled monolayer
cell adhesion
membrane protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2019028233A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2020130053A (ja
Inventor
奈保子 河西
梓 大嶋
寛 中島
幹太 湊元
弘二 住友
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Mie University NUC
University of Hyogo
Original Assignee
Nippon Telegraph and Telephone Corp
Mie University NUC
University of Hyogo
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Telegraph and Telephone Corp, Mie University NUC, University of Hyogo filed Critical Nippon Telegraph and Telephone Corp
Priority to JP2019028233A priority Critical patent/JP7249579B2/ja
Publication of JP2020130053A publication Critical patent/JP2020130053A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7249579B2 publication Critical patent/JP7249579B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Apparatus Associated With Microorganisms And Enzymes (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Description

本発明は、細胞接着基板及びその製造方法に関する。
平面基板上の細胞の配列固定を目的とするパターニング技術は、人工神経回路の形成や細胞間の相互作用の詳細な検討のために必要かつ重要な要素技術であり、様々な研究がなされている。パターニングを行うために、培養基板上に細胞接着分子等のタンパク質で修飾した細胞接着面と非接着面を設ける方法が知られている(非特許文献1)。
Wei Li, et al., Scientific Reports 5, Article number: 8644 (2015)
しかしながら、培養基板上に修飾する細胞接着分子等のタンパク質は単離精製する必要がある。タンパク質は単離精製の段階で変性したりして機能を失う可能性があり、活性を保持した状態で単離し、基板上に修飾しパターニングすることは困難であるという問題があった。
前記事情に鑑み、本発明は、基板上の所望の位置に固定され且つ活性を保持した膜タンパク質を用いて、細胞のパターニング・固定が可能な細胞接着基板及びその製造方法を提供することを目的としている。
本発明に係る細胞接着基板の一態様は、基板と、前記基板の表面の一部または全部に固定された出芽ウイルス由来の膜タンパク質を備える。
前記基板の表面の一部または全部に自己組織化単分子膜が設けられ、前記自己組織化単分子膜に前記膜タンパク質が固定されていてもよい。
前記基板上には、金属または金属酸化物がパターニングされてパターン層が形成されており、前記パターン層上に前記自己組織化単分子膜が形成されていてもよい。
前記自己組織化単分子膜は、負に帯電していてもよい。
本発明に係る細胞接着基板の製造方法の一態様は、基板の表面の一部または全部に自己組織化単分子膜を設ける工程(A)と、前記自己組織化単分子膜に膜タンパク質を固定する工程(B)とを具備する。
前記工程(B)は、前記膜タンパク質を含む出芽ウイルスを前記自己組織化単分子膜に融合させる工程であってもよい。
前記出芽ウイルスは、膜融合タンパク質を含んでいてもよい。
本発明によれば、基板上の所望の位置に固定され且つ活性を保持した膜タンパク質を用いて、細胞のパターニング・固定が可能な細胞接着基板及びその製造方法を提供することができる。
本発明に係る細胞接着基板の製造方法の一実施形態において、基板の表面の一部に自己組織化単分子膜(SAM)を設ける工程を示す概略図である。 同実施形態の細胞接着基板の製造方法において、自己組織化単分子膜に膜タンパク質を固定する工程を示す概略図である。 本発明に係る細胞接着基板の一実施形態において、パターニングされた金層上に自己組織化単分子膜を形成し、この自己組織化単分子膜に出芽ウイルス(GP64タンパク質を発現)を固定した状態を観察した顕微鏡写真である。 本発明に係る細胞接着基板の他の実施形態において、パターニングされた金層上に自己組織化単分子膜を形成し、この自己組織化単分子膜に出芽ウイルス(Cadm1タンパク質を発現)を固定し、神経細胞の培養を行った状態を観察した図である。 パターニングされた金層上に自己組織化単分子膜を形成し、この自己組織化単分子膜に出芽ウイルス(Cadm1タンパク質を発現)を固定せずに、神経細胞の培養を行った状態を観察した顕微鏡写真である。
<細胞接着基板>
本発明に係る細胞接着基板の一実施形態は、基板と、前記基板の表面の一部または全部に固定された出芽ウイルス由来の膜タンパク質を備える。この細胞接着基板によれば、基板上の所望の位置に固定され且つ活性を保持した膜タンパク質を用いて、細胞をパターニング・固定することができる。
<基板>
前記基板は、細胞への毒性がなければいかなる材質であってもよいが、一般的に半導体用の材料として用いられる材料を使用することができ、例えば、ケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、石英ガラスなどのガラス、単結晶または多結晶のシリコン、シリコン酸化物またはシリコン窒化物などのシリコン化合物、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸窒化アルミニウムなどのアルミニウム化合物、ITO(Indium Tin Oxide)、各種プラスチック、各種樹脂等が挙げられる。前記基板は、これら材質の単体、複合体、または積層体のいずれであってもよい。前記基板の形状は限定されず、矩形状、円形などいかなる平面形状を有していてもよいし、平面状であっても、曲面状であってもよいし、立体形状であってもよい。
<金属または金属酸化物>
前記基板は、無処理であってもよいし、処理されたものであってもよいが、基板上には、金属または金属酸化物がパターニングされてパターン層が形成されていてもよい。基板上に金属または金属酸化物がパターニングされてパターン層が形成されていることにより、さらにそのパターン層上に自己組織化単分子膜を形成することができる。
前記金属または金属酸化物は、細胞への毒性がなければいかなるものであってもよいが、例えば、金、白金、銀、銅、チタン、タングステン、クロム、酸化チタン、半導体等が使用可能であり、単体で用いてもよいし、必要に応じては、合金であっても複合材であってもよい。これらのうち、金は、その表面に自己組織化単分子膜としてのチオール誘導体を共有結合することができるため特に好ましい。
<自己組織化単分子膜>
前記基板の表面の一部または全部には、自己組織化単分子膜(Self-Assembled Monolayer:SAM)が設けられていてもよい。基板の表面の一部または全部に自己組織化単分子膜が設けられていることにより、さらにその自己組織化単分子膜に膜タンパク質を固定することができる。
基板の表面の一部にのみ自己組織化単分子膜が設けられている場合、基板上において自己組織化単分子膜が一定の形状にパターニングされていることが好ましい。基板上に自己組織化単分子膜がパターニングされていることにより、自己組織化単分子膜を介して膜タンパク質を基板上の所望の位置にパターニングすることができ、パターン形状に応じた機能または特性を付与することができる。
自己組織化単分子膜とは、基板の表面に自発的に自己組織化によって高密度・高配向で形成される分子膜をいう。自己組織化単分子膜は、自己組織化単分子膜を含む溶液に基板を浸漬させるだけで容易に基板上に形成することができる。
自己組織化単分子膜は、金属または金属酸化物の表面に選択的に結合可能であることから、基板上に金属または金属酸化物をパターニングしてパターン層を形成しておくことにより、このパターン層上に自己組織化単分子膜が選択的に形成され、自己組織化単分子膜のパターニングが可能になるという優れた効果を奏する。
自己組織化単分子膜は、基板の表面との結合性部位、アルキル鎖、及び機能性部位の3つの部位から基本的に構成されている。自己組織化単分子膜としては、例えば、チオール基を持つチオール誘導体、有機シリコン誘導体、脂肪酸誘導体等が挙げられる。これらのうち、チオール誘導体は、チオール基が金と反応してAu-S結合を形成するとともに、アルキル鎖同士のファンデルワールス力(van der Waals force)によって高い配向性を持つ単分子を形成することができるためより好ましい。チオール誘導体としては、例えば、6-メルカプトヘキサン酸、11-メルカプトウンデカン酸、3-メルカプトプロピオン酸、6-メルカプトヘキサノール、6-アミノ-1-ヘキサンチオールなどが扱い易さおよびコストの面から好ましい。
前記自己組織化単分子膜は、負に帯電していてもよい。この場合、出芽ウイルス上に存在している膜融合タンパク質を用いることにより、この膜融合タンパク質が、負に帯電している脂質膜に優先的に結合し、膜への融合を促進する。そのため、負に帯電している自己組織化単分子膜を利用することで、出芽ウイルスを自己組織化単分子膜に選択的に結合させ、基板上に出芽ウイルスをパターニングすることができるという優れた効果を奏する。
<膜タンパク質>
基板の表面の一部または全部には、膜タンパク質が固定されている。膜タンパク質は、例えば、その一部または全部が出芽ウイルス上の脂質膜に埋め込まれ、前記出芽ウイルスの一部または全部が自己組織化単分子膜上に固定されていてもよい。ここで固定とは、出芽ウイルス(膜タンパク質)と自己組織化単分子膜とが直接的または間接的に結合している状態をいい、例えば、緩衝溶液で洗浄しても分離したり剥離したりしない状態をいう。
膜タンパク質とは、一般に、細胞や細胞小器官などの生体膜に付着しているタンパク質分子であり、脂質膜を貫通する部位を備えた膜受容体をいう。膜受容体は、種々のリガンドを受容する。リガンドとしては、例えば、アミノ酸、低分子の有機化合物、ステロイド、アミノ酸やその誘導体、ペプチド、タンパク質等が挙げられる。膜受容体としては、例えば、1回膜貫通型受容体、4回膜貫通型受容体、7回膜貫通型受容体が挙げられる。
膜タンパク質としては、例えば、細胞接着性タンパク質(Cell Adhesion Molecule:CAM)、イオンチャネル型受容体(Ligand-gated ion channel)、Gタンパク質共役受容体GPCR(G-protein coupled receptor)等が挙げられ、これらのうち、細胞接着性タンパク質(CAM)であることがより好ましい。出芽ウイルスに細胞接着性膜タンパク質を発現しておけば、細胞接着性膜タンパク質の活性を保持したまま基板上にパターニング・固定することができ、細胞と親和性が高い基板の表面を構築することが可能になる。さらに、細胞と親和性が高い基板の表面に細胞を選択的に接着させることで、細胞のパターニング・固定も可能となる。ここで接着とは、細胞接着性膜タンパク質と細胞とが直接的または間接的に結合している状態をいい、例えば、緩衝溶液で洗浄しても分離したり剥離したりしない状態をいう。
前記細胞接着性タンパク質としては、例えば、細胞-細胞聞の接着に関与する、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリー、ネクチン、細胞-基質間の接着に関与するインテグリン、サルコグルカン等が挙げられる。また、細胞-細胞間の結合に関与する、コネキシン、インテグリン、ニューロリギン、ニューレキシン、エフリン、コンタクチン、NCAM、Cadm等が挙げられる。これらのうち、Cadmが好ましく、Cadm1がより好ましい。
膜タンパク質は本発明では特に限定されず、機能が既知のものであってもよく、機能が未知のものであってもよい。機能が未知の膜タンパク質を使用することにより、その膜タンパク質の細胞親和性に関する評価が可能である。
<出芽ウイルス>
前記膜タンパク質は、出芽ウイルス由来の膜タンパク質である。膜タンパク質が出芽ウイルス由来の膜タンパク質であるため、出芽ウイルスを自己組織化単分子膜へ固定することにより、活性を保持した膜タンパク質を、配向を揃えた状態で基板上にパターニングすることができる。
前記出芽ウイルスは、例えば、ウイルス由来出芽ウイルスであってもよい。ウイルス由来出芽ウイルスとしては、例えば、バキュロウイルス由来出芽ウイルス、レトロウイルス由来出芽ウイルス、パラミクソウイルス由来出芽ウイルスなどが挙げられる。これらのうち、バキュロウイルス由来出芽ウイルスであることがより好ましい。
前記ウイルス由来出芽ウイルスは、ウイルスのDNAを含むキャプシドを内包し、脂質膜で覆われた小胞である。ウイルス由来出芽ウイルスは、一般的には表面に膜融合タンパク質を発現し、そのタンパク質を介して細胞へ融合し、エンドサイトーシスによりDNAを細胞へ挿入することにより細胞感染を起こす。一方、バキュロウイルスを用いる場合、遺伝子組換え手法により、膜タンパク質の遺伝子コードを有するトランスファーベクターとバキュロウイルスDNAを昆虫培養細胞へ共導入し、回収精製した組換えバキュロウイルスをさらに昆虫培養細胞へ感染させることで、組換え膜タンパク質を発現した出芽ウイルスを入手することができる(特願2009-30168/特開2009-216704「受容体特異的結合物質測定方法」参照)。この組換え膜タンパク質発現出芽ウイルスには、融合タンパク質も発現していることから、融合タンパク質を介して細胞あるいは脂質膜へ組換え膜タンパク質を挿入することが可能となる。
バキュロウイルスは、環状二本鎖DNAをゲノムDNAとしてもつ昆虫の病原ウイルスである。バキュロウイルスは真核生物を用いたタンパク質の発現系として、大量にしかも生物学的均一性を保持した状態で出芽ウイルスを発現できるため注目されている。簡便なキットが市販され、ルーチンに用いられる技術になりつつある。バキュロウイルスを用いることで、簡便で安価に出芽ウイルスを得ることができる。また、バキュロウイルス由来出芽ウイルスに含まれている膜融合タンパク質はよく知られているタンパク質であるため、融合の条件等が既知であり、脂質膜に融合させる目的のために使用しやすい。
バキュロウイルスとしては、例えば、核多角体病ウイルス(NPV)、グラニュロウイルス(GV)、非閉塞性ウイルス等が挙げられる。これらのうち、核多角体病ウイルスは、感染した細胞の核内に核多角体と呼ばれる封入体を全細胞タンパク質の40~50%に達するほど大量につくるので、バイオテクノロジーに多用されている。
<細胞接着基板の製造方法>
本発明に係る細胞接着基板の製造方法の一実施形態は、基板の表面の一部または全部に自己組織化単分子膜を設ける工程(A)と、前記自己組織化単分子膜に膜タンパク質を固定する工程(B)とを具備する。この細胞接着基板の製造方法によれば、基板上の所望の位置に固定され且つ活性を保持した膜タンパク質を用いて、細胞のパターニング・固定が可能な細胞接着基板を提供することができる。
<工程A>
前記工程(A)は、例えば、自己組織化単分子膜を含む溶液に基板を浸漬させることで行うことができる。
前記基板は、無処理であってもよいし、処理されたものであってもよいが、基板上には、金属または金属酸化物がパターニングされてパターン層が形成されていてもよい。基板上に金属または金属酸化物がパターニングされてパターン層が形成されていることにより、さらにそのパターン層上に自己組織化単分子膜を形成することができる。
基板上に金属または金属酸化物をパターニングする方法としては、例えば、フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィ、電子線描画(電子線直描)、レーザ描画、ナノインプリント、インクジェットプリント(スーパーインクジェット)等が挙げられる。フォトリソグラフィを使用する場合、例えば、基板にフォトレジストをパターニングした後、フォトレジストをパターニングした部分を含む表面に金属または金属酸化物を堆積させ、フォトレジストを除去して、金属または金属酸化物のみを残す方法(リフトオフ)が挙げられる。あるいは、前記のリフトオフ法以外にも、金属または金属酸化物の堆積をフォトレジストのパターニングより前に実施するエッチング法も採用してもよい。
前記金属または金属酸化物を堆積させる方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、無電解メッキ法などが挙げられる。また、複数の異なる種類の金属または金属酸化物を多層状に堆積することも可能である。この場合、下地層として基板材質への密着性に優れた材質を用いることにより、基板への密着性を高めたり、パターンの端面のみ異なる材質を露出させて、パターン端面に、パターン表面とは異なる特性を付与したりすることができる。
自己組織化単分子膜は、自己組織化単分子膜を含む溶液に基板を浸漬させるだけで容易に基板上に形成することができる。
自己組織化単分子膜は、金属または金属酸化物の表面に選択的に結合可能であることから、基板上に金属または金属酸化物をパターニングしてパターン層を形成しておくことにより、このパターン層上に自己組織化単分子膜が選択的に形成され、自己組織化単分子膜のパターニングが可能になるという優れた効果を奏する。
<工程B>
工程(B)は、膜タンパク質を含む出芽ウイルスを自己組織化単分子膜に固定あるいは融合させる工程であってもよい。膜タンパク質を含む出芽ウイルスを自己組織化単分子膜に固定あるいは融合させることにより、活性を保持した膜タンパク質を、配向を揃えた状態で基板上にパターニングすることができる。
出芽ウイルスに発現された膜タンパク質は機能を有しているため、出芽ウイルスを基板上に固定することにより、活性を有する膜タンパク質を基板上に固定することが可能になる。すなわち、出芽ウイルスの脂質膜上に発現した組換え膜タンパク質を、活性を保持したまま可溶化せずに利用することができる。この場合、界面活性剤の混入がないため、安定した脂質膜の系を保持することができる。さらに、出芽ウイルス上の膜に対して膜タンパク質の配向は常に一定であるため、その膜タンパク質の機能を高い効率で利用することができる。
前記方法において、前記出芽ウイルスは、膜融合タンパク質を含んでいてもよい。出芽ウイルス上に存在している膜融合タンパク質は、負に帯電している自己組織化単分子膜に優先的に結合し、膜への融合を促進する。そのため、出芽ウイルスが膜融合タンパク質を含むことで、出芽ウイルスを自己組織化単分子膜に結合させ、基板上に出芽ウイルスをパターニングすることができるという優れた効果を奏する。
膜融合タンパク質は、膜融合誘起能をもつタンパク質であればいかなるものであってもよいが、例えば、GP64、HA、VSV-G、Env等が挙げられる。これらのうち、GP64は、特異的な膜融合誘起能をもつ膜糖タンパク質であるので好ましい。バキュロウイルス由来の出芽ウイルスは、GP64を介して、pH4-5程度の酸性pH環境においてリポソーム等の脂質膜との融合を誘起する。
工程(B)は、膜タンパク質を含む出芽ウイルスを自己組織化単分子膜に融合させずに固定してもよい。例えば、基板の表面の静電的特性を、上述した自己組織化単分子膜を用いることで改変すれば、出芽ウイルスの電荷に応じて、静電気力を利用して基板上に出芽ウイルスを吸着固定させることができる。
また、自己組織化単分子膜を用いると、出芽ウイルスを基板上に化学的に結合させることもできる。これは、末端がカルボキシル基の自己組織化単分子膜を用い脱水反応でタンパク質のアミノ基を結合させる原理で、出芽ウイルスの表面にある膜タンパク質の一部を利用して結合させるというものである。これにより、出芽ウイルスをベシクルの形状のまま基板の表面に固定することができ、出芽ウイルス表面の膜タンパク質も機能を保持したまま基板上に固定することができる。
以下、具体的な実施例を挙げて、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例のみに限定されるものではない。
(実施例1)
図1は、本発明の細胞接着基板の製造方法の実施例1における、基板パターニングのプロセスを示した模式図である。カバーガラス(マツナミ、No.1)をピラニア溶液(濃硫酸および過酸化水素水の混合液)に浸漬し、純水(流水)ですすいだ後、フッ化アンモニウム溶液に浸漬し、純水(流水)ですすぎ、純水中で保管した。
窒素ガスで風乾したあと、ホットプレート上で乾燥させた。フォトレジスト(Microposit S1813(商標名)、Shipley社製)をスピンコートし、ホットプレート上でベークし、溶媒を除去した。フォトマスクを密着させてUV照射を行い、現像液(NMD-3(商標名)、東京応化工業製)により現像をした(図1A)。その後、窒素ガスで風乾し、真空下で保管した。
金属の被覆には、真空蒸着機を用いた。クロム、続いて金をそれぞれ30nm厚、70nm厚蒸着した(図1B)。その後、現像液(NMD-3(商標名)、東京応化工業)によりリフトオフし、窒素ガスで風乾した(図1C)。
さらに、金表面上にチオール分子の自己組織化単分子膜(SAM)を成膜した。金をパターニングした基板に、6-メルカプトヘキサン酸(DMSO溶液)に、窒素雰囲気下で浸漬し、窒素風乾した。図1Dに示すように、金層上にSAMが形成された。
次に出芽ウイルスを前記基板上に固定した。図2に示すとおり、金をパターニングしSAMを形成した基板を酢酸緩衝溶液中に浸漬し(図2A)、その後、バキュロウイルス由来の出芽ウイルスを添加した(図2B、図2C)。出芽ウイルスにはNativeのGP64タンパク質にRFPが繋がった融合タンパク質を発現しているものを用いた。インキュベー卜したあと、基板を酢酸緩衝溶液で洗浄し、リン酸緩衝溶液中で共焦点顕微鏡により観察した(図2D)。
その結果を図3に示す。色の濃い部分は金がパターニングされた部分(「Au」で表示)、色の薄い部分はガラス(「Glass」で表示)、薄い斑点状のシグナルはRFPによる発色、すなわち出芽ウイルスの存在を示している。この結果から、金パターン上に優先的に吸着することが分かった。つまりこの方法を用いることで、出芽ウイルスをパターニングできることが示された。
(実施例2)
本態様の細胞接着基板の製造例を実施例2に示す。
図1の方法により、金パターン層を有する基板を作製し、SAMを形成した。あらかじめカバーガラス(マツナミ社製、No.1)をピラニア溶液(濃硫酸および過酸化水素水の混合液)に浸漬し、純水(流水)ですすいだ後、フッ化アンモニウム溶液に浸漬し、純水(流水)ですすぎ、純水中で保管した。
窒素ガスで風乾したあと、ホットプレート上で乾燥させた。フォトレジスト(Microposit S1813(商標名)、Shipley社製)をスピンコートし、ホットプレート上でベークし、溶媒を除去した。フォトマスクを密着させてUV照射を行い、現像液(NMD-3(商標名)、東京応化工業社製)により現像をした(図1A)。その後、窒素ガスで風乾し、真空下で保管した。
金属の被覆には、真空蒸着機を用いた。クロム、続いて金をそれぞれ30nm厚、70nm厚蒸着した(図1B)。その後、現像液(NMD-3(商標名)、東京応化工業)によりリフトオフし、窒素ガスで風乾した(図1C)。
さらに、金表面上にチオール分子の自己組織化単分子膜(SAM)を成膜した。金をパターニングした基板に、6-メルカプトヘキサン酸(DMSO溶液)に、窒素雰囲気下で浸漬し、窒素風乾した(図1D)。出芽ウイルスには、RFPをCadm1に融合した組換えタンパク質が発現されているものを用いた。実施例1と同様に出芽ウイルスをインキュベー卜することでパターン上に固定した。
さらに、この基板上に神経細胞の培養を行った。細胞はラッ卜大脳皮質由来の神経細胞を用い、培養した。その後PFAを用いて固定し、抗チューブリン抗体(Anti Tubulin Antibody)、Alexa488標識二次抗体で染色を行い、共焦点顕微鏡で観察した。その結果を図4に示す。
図4は、出芽ウイルスを前記方法で固定し、神経細胞を培養した基板であり、図5は、出芽ウイルスを固定していない基板上に神経細胞を培養したものである。図5では、金およびガラス上に細胞体や神経突起がランダムに成長しているのに対し、図4では、神経突起が金層上に接着して成長していることが分かった。このことから、本態様の細胞接着基板を用いることで、神経細胞のパターニングが可能であることが示された。
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
本発明は、基板上の所望の位置に固定され且つ活性を保持した膜タンパク質を用いて、細胞のパターニング・固定が可能な細胞接着基板及びその製造方法を提供することができる。また、この基板により、細胞の人工的なネットワークを作製することもできる。

Claims (4)

  1. 基板と、
    前記基板の表面の一部または全部に固定された出芽ウイルス由来の細胞接着性膜タンパク質を備えた細胞接着基板であって、
    前記細胞接着性膜タンパク質が、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリー、ネクチン、インテグリン、サルコグルカン、コネキシン、インテグリン、ニューロリギン、ニューレキシン、エフリン、コンタクチン、NCAM、又はCadmであり、
    前記基板の表面の一部または全部に自己組織化単分子膜が設けられ、前記自己組織化単分子膜に前記細胞接着性膜タンパク質が埋め込まれており、
    前記自己組織化単分子膜が、負に帯電しており、
    前記細胞接着性膜タンパク質が、前記細胞接着性膜タンパク質を含む前記出芽ウイルスを前記自己組織化単分子膜に固定させることにより、前記自己組織化単分子膜に埋め込まれたものである、細胞接着基板。
  2. 前記基板上には、金属または金属酸化物がパターニングされてパターン層が形成されており、前記パターン層上に前記自己組織化単分子膜が形成されている、請求項1に記載の細胞接着基板。
  3. 基板の表面の一部または全部に自己組織化単分子膜を設ける工程(A)と、
    前記自己組織化単分子膜に細胞接着性膜タンパク質を固定する工程(B)と
    を具備する細胞接着基板の製造方法であって、
    前記細胞接着性膜タンパク質が、カドヘリン、免疫グロブリンスーパーファミリー、ネクチン、インテグリン、サルコグルカン、コネキシン、インテグリン、ニューロリギン、ニューレキシン、エフリン、コンタクチン、NCAM、又はCadmであり、
    前記細胞接着性膜タンパク質が、前記細胞接着性膜タンパク質を含む出芽ウイルスを前記自己組織化単分子膜に固定させることにより、前記自己組織化単分子膜に埋め込まれたものである、細胞接着基板の製造方法。
  4. 前記工程(B)が、前記細胞接着性膜タンパク質を含む出芽ウイルスを前記自己組織化単分子膜に融合させる工程であり、
    前記自己組織化単分子膜が、負に帯電しており、
    前記出芽ウイルスが、膜融合タンパク質を含む、請求項3に記載の細胞接着基板の製造方法。
JP2019028233A 2019-02-20 2019-02-20 細胞接着基板及びその製造方法 Active JP7249579B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019028233A JP7249579B2 (ja) 2019-02-20 2019-02-20 細胞接着基板及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2019028233A JP7249579B2 (ja) 2019-02-20 2019-02-20 細胞接着基板及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2020130053A JP2020130053A (ja) 2020-08-31
JP7249579B2 true JP7249579B2 (ja) 2023-03-31

Family

ID=72261416

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2019028233A Active JP7249579B2 (ja) 2019-02-20 2019-02-20 細胞接着基板及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7249579B2 (ja)

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005214889A (ja) 2004-01-30 2005-08-11 Shibaura Institute Of Technology バイオチップの作製方法及びバイオチップ、並びに、プレ・バイオチップの作製方法及びプレ・バイオチップ
JP2008012444A (ja) 2006-07-06 2008-01-24 Ulvac Japan Ltd 脂質単分子膜の作製方法
US20090092965A1 (en) 2006-03-09 2009-04-09 The Regents Of The University Of California Method and Apparatus for Target Detection Using Electrode-Bound Viruses
JP2009216704A (ja) 2008-02-13 2009-09-24 Liposome Engineering Laboratory 受容体特異的結合物質測定方法
US20110256552A1 (en) 2007-04-12 2011-10-20 Deleris Gerard Method for preparing a substrate for immobilizing a cell, said substrate and uses thereof
JP2018513141A5 (ja) 2015-04-20 2018-07-05
JP2018201422A (ja) 2017-06-06 2018-12-27 日本電信電話株式会社 細胞パターニング用構造体及びその製造方法

Family Cites Families (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ES2939013T3 (es) * 2015-04-20 2023-04-18 Consejo Superior Investigacion Agentes que se unen específicamente al motivo RGD de la cadherina 17 humana, la cadherina 5 humana, la cadherina 6 humana y la cadherina 20 humana

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005214889A (ja) 2004-01-30 2005-08-11 Shibaura Institute Of Technology バイオチップの作製方法及びバイオチップ、並びに、プレ・バイオチップの作製方法及びプレ・バイオチップ
US20090092965A1 (en) 2006-03-09 2009-04-09 The Regents Of The University Of California Method and Apparatus for Target Detection Using Electrode-Bound Viruses
JP2008012444A (ja) 2006-07-06 2008-01-24 Ulvac Japan Ltd 脂質単分子膜の作製方法
US20110256552A1 (en) 2007-04-12 2011-10-20 Deleris Gerard Method for preparing a substrate for immobilizing a cell, said substrate and uses thereof
JP2009216704A (ja) 2008-02-13 2009-09-24 Liposome Engineering Laboratory 受容体特異的結合物質測定方法
JP2018513141A5 (ja) 2015-04-20 2018-07-05
JP2018201422A (ja) 2017-06-06 2018-12-27 日本電信電話株式会社 細胞パターニング用構造体及びその製造方法

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
ACS Cent. Sci. (2017) Vol.3, pp.1198-1207
SCIENTIFIC REPORTS (2015) Vol.5, No.8644, pp.1-8

Also Published As

Publication number Publication date
JP2020130053A (ja) 2020-08-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US11278859B2 (en) Patterning device
Witters et al. Biofunctionalization of electrowetting-on-dielectric digital microfluidic chips for miniaturized cell-based applications
Tender et al. Electrochemical patterning of self-assembled monolayers onto microscopic arrays of gold electrodes fabricated by laser ablation
US9993794B2 (en) Single molecule loading methods and compositions
US20180119172A1 (en) Molecular delivery with nanowires
US20210373002A1 (en) Method for organizing individual molecules on a patterned substrate and structures assembled thereby
AU758630B2 (en) A method for reproducing molecular arrays
US20070196819A1 (en) Patterning Method For Biosensor Applications And Devices Comprising Such Patterns
EP1525473A2 (en) Method and device for protein delivery into cells
JPH10513404A (ja) 化学的に定義されたボディを配向析出する方法
JP7249579B2 (ja) 細胞接着基板及びその製造方法
US20080219959A1 (en) Support Having Nanostructured Titanium Dioxide Film And Uses Thereof
Chen et al. Wafer-scale bioactive substrate patterning by chemical lift-off lithography
KR20100124870A (ko) 산화아연 나노구조체 마이크로패턴 및 그 제작방법
US20220274113A1 (en) Apparatus and methods for manipulating microdroplets
CN104531853A (zh) 经高密度纳米点阵列制备生物大分子单分子芯片的方法
US20150203348A1 (en) Fabrication of nanowire arrays
US9259759B2 (en) Patterning of biomaterials using fluorinated materials and fluorinated solvents
Brizzolara Patterning multiple antibodies on polystyrene
US20100052207A1 (en) Method of Preparing Microarray by Using Optically Transparent Array Mold with Concave Portion
Sahin et al. Rapid Turnaround Fabrication of Peptide Nucleic Acid (PNA)-Immobilized Nanowire Biosensors by O 2-Plasma Assisted Lithography of e-Beam Resists
KR20120048138A (ko) 세포 부착 또는 배양을 위한 미세 패턴화 기판 및 이의 제조방법
EP2100849B1 (en) Method of manufacturing molecular plasmonic nanostructures
Xiao Self-assembly and patterning of hierarchical DNA nanotube microarrays on glass surfaces
Bearinger et al. Biomolecular patterning via photocatalytic lithography

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20190220

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210430

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220323

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220412

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20220609

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220711

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20221018

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20221216

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20230307

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20230310

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7249579

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150